H26-2 シェールガス革命による石油化学産業等への影響可能性調査

シェールガス革命による
石油化学産業等への影響可能性調査
報
告
書
平成27年3月
公益財団法人
ちゅうごく産業創造センター
巻頭言
巻
頭
言
けつがん
これまで採掘が困難とされてきた頁岩(シェール)層に存在する天然ガス等が、2000
年代以降、水平掘削、水圧破砕等の技術進歩により掘削可能となり、米国を中心にシェ
ールガス革命が進展するとともに、国際的なエネルギー供給体制にも大きな変化をもた
らしました。
また、シェールガス革命は、東日本大震災以降、LNG 調達価格の低減が課題である我
が国のエネルギー産業だけでなく、石油化学産業を中心とした素材型産業へも大きな影
響を及ぼす可能性が指摘されてきました。
特に石油化学産業への影響については様々な見解が示される一方で、その実像を捉え
るのは困難な状況にあり、その実像を明らかにする意味でも本調査が実施される運びと
なりました。
本調査結果の一つとして、中国地域の石油化学産業への影響については「まだ実感に
は至らない」ことが確認されるなど、現時点でのシェールガス革命の地域経済への波及
度合については慎重に捉えた方がいいと思われます。さらに、足下では、原油価格が大
幅に下落するなどシェールガス革命を取巻く環境は不確実性を増しています。
その一方、10~20 年単位の長期的な視点ではシェールガス、シェールオイルを含め
た非在来型資源の存在が大きなインパクトを与えることは間違いなく、中国地域の石油
化学産業がそれに備える時間があるうちに対応策に取組むことが不可欠であると考え
られます。
今回の委員会においては以上のような課題に対し、エネルギー産業、石油化学産業、
一般製造業と様々な分野からご参加いただき、各分野におけるシェールガス革命の影響
についてご意見を頂くとともに、コンビナートの将来像、コンビナート競争力維持・強
化の方向性を取りまとめるなど、関係者にとって示唆に富む報告書が完成したのではな
いかと思っています。
本報告書が、中国地域の企業・行政の皆様にとりまして、シェールガス革命のグロー
バルからローカルまでの幅広い影響に関する理解促進や、石油化学産業等を中心した今
後の事業・支援活動の一助となれば幸いです。
最後に、本調査においては、委員の皆様、また調査機関として、公益社団法人中国地
方総合研究センターのご協力をいただきました。さらに、全国・中国地域の企業・行政・
学識者等に対して実施したヒアリング調査は本調査の根幹をなしています。これらの調
査にご協力いただいた関係各位に厚く感謝いたします。
平成 27 年 3 月
「シェールガス革命による石油化学産業等への影響可能性調査」委員会
委員長 稲葉 和也
委員会名簿
シェールガス革命による石油化学産業等への影響可能性調査
委 員 会 名 簿
(委員:所属名の50音順、敬称略)
区 分
氏
名
委員長
稲葉
和也
山口大学 大学院技術経営研究科 教授
副委員長
鈴木
喜久
広島大学 大学院社会科学研究科 准教授
竹内
聡
委 員
(第 1 回委員会)
今井
博文
所 属 ・ 役 職
出光興産株式会社
徳山事業所 管理課長
(第 2~4 回委員会)
委 員
小西
邦彦
岡山県 産業労働部 産業振興課(産業支援班) 総括参事
委 員
押木
俊之
岡山大学 大学院自然科学研究科 講師
委 員
村上
俊浩
中国経済産業局 資源エネルギー環境部 エネルギー対策課長
委 員
石橋
正浩
中国経済連合会 部長
委 員
大井
博文
中国電力株式会社
野中
眞一
委 員
(第 1 回委員会)
三村
エネルギア総合研究所
マネージャー
DIC株式会社 コーポレートマーケティング部 担当課長
智子
〃
主任
(第 2~4 回委員会)
委 員
堀江
卓司
東ソー株式会社 技術センター 生産技術室 主席技師
委 員
錦織
光太郎
株式会社トクヤマ
委 員
井上
茂樹
株式会社日本製鋼所 広島研究所 所長
委 員
岡田
拓也
株式会社日本政策投資銀行
委 員
中村
睦
広島ガス株式会社
委 員
佐藤
敦
丸紅株式会社 中国支社 支社長
委 員
井川
三郎
水島エルエヌジー株式会社
委 員
川崎
雅昭
三井化学株式会社
生産技術研究所
主席研究員
委 員
稲場
荘一
三井物産株式会社 機能化学品本部
シニアマネージャー
戦略企画室
委 員
堀内
太策
三菱重工コンプレッサ株式会社 事業戦略部 部長
委 員
新見
輝夫
山口県 産業戦略部 瀬戸内戦略室
オブザーバー
平岡
憲司
中国経済連合会 部長
徳山製造所 工場管理部 主任
中国支店 次長 兼企画課課長
技術研究所 主任研究員
業務部
副部長
主査
区 分
事務局
氏
名
中野
直文
(第 1 回委員会)
佐原
一弘
所 属 ・ 役 職
公益財団法人ちゅうごく産業創造センター
専務理事
(第 2~4 回委員会)
事務局
楫野
肇
(第 2~4 回委員会)
〃
常務理事
事務局
木村
宜克
〃
調査企画部長
事務局
石岡
孝治郎
〃
調査部部長
シンクタンク
小早川 隆
シンクタンク
柴田
浩喜
〃
情報開発部・部長
シンクタンク
渡里
司
〃
主任研究員
公益社団法人中国地方総合研究センター
事務局長
要約版
調査の目的と報告書の構成
調査目的
これまでは採掘が困難な資源といわれていたシェール層に存在する天然ガスが、
2000 年代以降、技術の進展により掘削可能となり、北米を中心にシェールガス革
命が進展している。
シェールガス革命の日本への影響は、消費段階(素材代替、燃料転換)である石
油化学産業、エネルギー産業等だけでなく、生産段階(掘削装置等)、流通段階(パ
イプライン、輸送船等)など様々な分野に広がることが予想されている。
本調査はシェールガス革命に関連する文献・ヒアリング・アンケート等の調査を
実施し、シェールガス革命が中国地域の産業に及ぼす影響を整理するとともに、地
域の基幹産業である石油化学産業等の中・長期的な展望およびコンビナート競争力
維持・強化のための方向性・取組施策等について提言を行うことを目的とする。
報告書の構成と調査フロー
1.米国におけるシェールガス革命の現状【文献調査】
2.シェールガス革命による国内産業への影響
○国内関連産業の現状【文献調査】
○シェールガス革命等による影響【文献調査】
○シェールガス革命と企業動向【他地域ヒアリング調査】
・シェールガス革命による影響に関するヒアリング調査
・コンビナートにおける企業間連携に関するヒアリング調査
3.シェールガス革命による中国地域産業への影響
○域内関連産業の現状【文献調査】
○域内企業のシェールガス革命の認識・対応状況【アンケート調査】
○シェールガス革命による影響と域内企業等の動向【ヒアリング調査】
4.石油化学・シェールガス関連の研究
○学識者ヒアリング調査【ヒアリング調査】
○新たな化学品原料製造プロセスの展開とシェールガス革命【文献調査】
5.シェールガス革命による影響とコンビナート等の展望
○シェールガス革命の各産業への影響(まとめ)
○コンビナートの競争力維持・強化のためのキーワード
○シェールガス革命とコンビナートの
将来イメージ【参考】
○中国地域におけるコンビナート競争力維持・強化の方向性【SWOT 分析】
シェールガス、シェールオイルとは
けつがん
シェールガス、シェールオイルは頁岩の固い岩盤層(シェール層)
に含まれる天然ガス、石油のことである。水平掘削技術、水圧破砕法
等が開発され、従来経済的に掘削が困難であったシェール層から安価
に掘削できることとなり、開発が一挙に進んだ。
(報告書 P2 参照)
- i -
頁岩(シェール)
1.米国におけるシェールガス革命の現状
(1)米国の天然ガスの生産実績と見通し (報告書 P5 参照)
○米国の天然ガス生産量は、近年の
米国のシェールガス生産量の推移
Bcf/d
シェールガス増産の影響を受け、
平成 26(2014)年には過去最大の
70.2Bcf/d※となった。そのうちシ
ェールガスの生産規模は、
36.2Bcf/d であり、全生産量の半
数以上を占めるとともに、年間
20%以上の大幅な増加となってい
る。
※
Bcf/d=10 億立方フィート/日
資料:EIA,Monthly Dry Shale Gas Production
(2)北米の天然ガス輸出計画 (報告書 P11 参照)
○LNG 対日輸出計画は、テキサス州フ
リーポートにおける 2 件(①大阪ガ
ス・中部電力、②東芝)、メリーラ
ンド州コーブポイント(③住友商
事・東京ガス)、ルイジアナ州キャ
メロン(④三井物産・三菱商事・日
本郵船)
の計 4 件が承認されており、
今後、連邦エネルギー規制委員会
(FERC)による環境面の審査を経
て、平成 29(2017)年から米国産
資料:EIA 資料、市原路子(2014)
「カナダ太平洋岸 LNG 開発
の現状」等
LNG が日本に輸出される予定となっ
ている。
(3)化学品原材料としてのシェールガス (報告書 P19 参照)
【日
本】
石油
ナフサ
C5+, 18%
ブテン類,
8%
ブタジエン,
4%
プロピレン,
14%
【米 国】
水素・メタ
ン, 26%
シェールガス
エタン
ブタジエン,ブテン類, C5+, 2%
プロピレン,
1%
2%
1%
水素・メタ
ン, 13%
生成物
b
エチレン,
81%
エチレン,
30%
- ii -
生成物
○日本をはじめとする東アジアのほとんどがナフサを分解して石油化学品を製造し
ている。その一方、米国や中東では、天然ガスや石油随伴ガスとして得られるエタ
ンを熱分解してエチレンを製造している。
○ナフサとエタンのクラッカー(エチレン製造装置)では生成物は大きく異なり、ナ
フサからはエチレンの他にプロピレン、ブタジエン、芳香族等の様々な化学品が生
成される。エタンからは、エチレンが約 80%生成され、その他のプロピレン、ブ
タジエンの生成量は僅かである
○シェールガスの増産はエタン等の化学原料の増産につながり、米国化学産業の原料
コストの低減をもたらし、コスト競争力で圧倒的な優位となる。
2.シェールガス革命による国内産業への影響
(1)国内関連産業の現状
(報告書
a.エネルギー産業
○東日本大震災後に原子力発電所
P22 参照)
日本の LNG 輸入量と輸入価格の推移
(万トン)
(千円/トン)
100
900
が停止した我が国では、LNG 火力
東日本大震災
による発電量が増加し、LNG 輸入
90
800
80
量が急増している。また、原油価
格に連動している日本の LNG 輸
700
70
入価格は、原油価格の上昇を受
け、高い水準で推移してきた。
60
600
○以上のような状況もあり、平成
23(2011)年の日本の貿易収支は
50
2010年の月平均輸入量:583万トン
500
輸入量(左軸)
40
輸入価格(右軸)
第二次石油危機以来 31 年ぶりに
赤字に転落し、平成 26(2014)
年には過去最大の貿易赤字とな
30
400
2010
11
12
13
14
(年)
資料:財務省「貿易統計」
るなど、安価な LNG の調達は日本にとって重要な課題となっている。
b.石油化学産業
○日本の石油化学産業におけるエ
チレン生産量は平成 19(2007)
千トン
6,000
を記録したものの、それ以降、減
5,000
少傾向にあり、平成 26(2014)
4,000
年の生産量は 665 万トン(生産能
3,000
力 721 万トン)となっている。
2,000
程度で、過去 20 年間ほぼ横ばい
の状況にある。
7,739
7,000
年に 774 万トンという史上最高
○そのうち内需は年間 500 万トン
日本のエチレン生産量の推移
8,000
6,647
1,000
0
60
65
70
75
80
85
90
95
資料:経済産業省「生産動態統計」
- iii -
00
05
10
年
(2)他地域ヒアリング調査
a.シェールガス革命の影響に関するヒアリング調査 (報告書 P46 参照)
〔訪問先:調査研究機関
分 野
エネルギー
産業
エチ
レン
石
油
化
学
産
業
ブタジ
エン・
芳香族
全般
一般製造業
4機関、シェールガス関連企業 4社、行政・支援機関
主 な 意 見
2機関〕
・シェールガス由来の LNG の日本への輸入予定量(輸入量全体の十数%程度)
から、調達価格にある程度の影響を及ぼす。また、調達先および調達価格(米
国ガス価格連動)の多様化により価格牽制効果が働くことを期待。
・シェール由来の石油、LNG、LPG のみならず、石炭、水素、再生可能エネルギ
ーを含めたエネルギー市場・エネルギー政策全般に影響を与える。
・LPG、LNG の価格低減効果をエネルギー利用者全般に広げるための取組み、イ
ンフラ整備等が期待される。
・米国エタンクラッカーは中東並みのコスト競争力を得て、グローバル市場に
おいて圧倒的な優位に。
・米国エタンクラッカーが立ち上がる平成 28(2017)年以降、中南米、さらに
中国へエチレン誘導品の輸出増加が見込まれる。特に中国に関しては石炭を
利用した化学品の生産(CTO)等と併せ、日本からの輸出減少の可能性が高い。
・価格面(エチレン)では、ナフサの独歩高による、ナフサベースの生産者間
の競争激化への対応が必要。
・ライトフィード化によりブタジエン、芳香族等の供給が減少することが見込
まれる。特に自動車用タイヤ需要の増加によりブタジエンの世界的な不足が
懸念される。
・現時点でコンビナートの現場において、シェールガスは身近なものではない。
・一社での対応には限界、様々な形態での連携は必須。
・造船、製鉄(鋼管)分野が有望視されている。造船ではシェール特需という
様相もあるが、ピークを迎えつつある。
・シェールガスの採掘に関連した環境問題へのソリューション対応が有望視さ
れ、今後も要素技術の発掘が期待される。
b.コンビナートにおける企業間連携に関するヒアリング調査 (報告書 P55 参照)
訪 問 先
石油コンビナ
ート高度統合
運営技術研究
組合(RING)
川崎市経済労
働局
国際経
済推進室
活
動
概
要
グローバルな競争環境の激化の中で、石油精製と石油化学等の業種がインテ
グレーションを進展させることにより国際競争力を強化し、安定供給を確保
する「コンビナート・ルネッサンス構想」を具体化するため、経済産業省の
支援のもとで、平成 12(2000)年より RING 事業として取組みを開始。
臨海部地域の「高機能化」、「高付加価値化」、「高効率化」による競争力強
化のために、
「川崎臨海部再生リエゾン推進協議会」、
「臨海部ガイドライン、
地区カルテ」、「京浜臨海部コンビナート高度化等検討会議」等の企業間連
携を促進させる取組みを実施中。
【中国地域への示唆】
①コンビナートの将来像の共有化
②自治体の危機意識と主導的な役割
③行政と企業の相互信頼・補完関係の構築と継続的な支援
④産学官連携における支援機関の役割
⑤事業推進におけるリーダー企業・キーパーソンの存在
- iv -
3.シェールガス革命による中国地域産業への影響
(1)石油化学産業へのシェールガス革命の影響の考察(報告書 P74 参照)
○「エチレン原単位」をベースに、各エチレン誘導品へのエチレン価格低下の影響をみ
ると、中国地域の石油化学産業はエチレン原単位の低い品目のウエイトが高く、関東
地域等と比較して、シェールガス革命の影響は相対的に小さいものと見込まれる。
コンビナート別/誘導品別
エチレン消費量実績
他の原料の
影響大
エチレン価格
低下の影響大
PE:ポリエチレン > EO:エチレンオキサイド > 酢ビ:酢酸ビニル > VCM:塩化ビニルモノマー > SM:スチレンモノマー
(2)中国地域アンケート調査(報告書 P80 参照)
対象:①中国地域の一般製造業およびエネルギー供給企業
②中国地域のコンビナート事業所
有効回答数 186/1,021
有効回答数 23/ 95
【シェールガス革命の影響の有無・影響時期】
①一般製造業等
②コンビナート事業所
無回答
0.5%
既に影響があった
1.6%
判別できない
29.0%
全く影響は及ば
ないと考える
11.3%
まだ影響はなく,
5年以上先でなけ
れば影響はない
と考える
19.4%
4件
既に影響が
あった
16.7%
影響が出ている
と思われることが
ある
3.2%
9件
判別できない
37.5%
まだ影響はない
が,3~5年後に
は影響があると
考える
34.9%
1件
全く影響は及
ばないと考える
4.2%
5件
影響が出てい
ると思われるこ
とがある
20.8%
5件
まだ影響はな
いが,3~5年
後には影響が
あると考える
20.8%
○シェールガス革命の影響は、
「まだ影響はないが 3~5 年後に影響がある」と考え
る企業が多い(一般製造業等 34.9%、コンビナート事業所 20.8%)。
○シェールガス革命の影響分野は、一般製造業等では燃料分野(39.8%)、コンビナ
ート事業所では燃料分野(29.2%)とともに、原材料分野(29.2%)が見込まれる。
- v -
【シェールガス革命の国内需要・国内生産等への影響】
①一般製造業等
0.0%
国内事業所の売上の増加
国内事業所での売上の減少
国内事業所の生産能力の縮小
海外から国内への輸入量の減少
自家発電燃料のガス比率の上昇
40.0%
60.0%
0.0%
国内事業所の売上の増加
14.0%
国内事業所の生産能力の増強
9.7%
国内事業所の生産能力の縮小
1.1%
海外から国内への輸入量の増加
6.5%
1.1%
6.5%
その他
20.0%
無回答
4件, 16.7%
3件, 12.5%
2件, 8.3%
海外から国内への輸入量の減少
0件, 0.0%
0件, 0.0%
その他
55.4%
60.0%
0件, 0.0%
自家発電燃料のガス比率の上昇
13.4%
40.0%
2件, 8.3%
国内事業所での売上の減少
2.2%
国内事業所の生産能力の増強
海外から国内への輸入量の増加
②コンビナート事業所
20.0%
3件, 12.5%
無回答
13件, 54.2%
○国内生産等への影響では、一般製造業等において概ねプラス評価(売上増加・生産
能力増強)であり、コンビナート事業所において概ねマイナス評価(売上減少・生
産能力縮小)がなされ、一部では海外生産シフトを示唆するデータもある。
(3)中国地域ヒアリング調査 (報告書 P101 参照)
〔訪問先:エネルギー 2社、石油・石油化学 7社、一般製造業 4社、行政機関 2機関〕
分 野
シ ェ ー ル ガ ス 革 命 の 影 響
エネルギ
ー産業
石油
・
石油化学
産業
○中国地域においてはシェールガスに限定するのではなく、新たな LNG 調達先・
調達手段の一つとして検討されている段階であり、具体的な調達計画は決定
されていない。
○シェールガスの調達に関しては、輸入価格そのものの直接的な低減効果とい
うよりは、新たな価格方式の出現による価格交渉力の強化、調達地域の分散
化・多様化による安定調達への寄与という2つの効果が期待されている。
○多くの企業が、シェールガス革命の影響として、エタン由来の安価なエチレ
ン誘導品のアジア市場への流入の一方でブタジエン、芳香族の需給逼迫を想
定している。
○しかし、化学製品の需要には様々な要因が影響しており、現時点でシェールガス
革命によるものと判別できるほどの状況にはなっていない。
○掘削・輸送分野への部素材の供給という面で影響を受けている企業はあるも
のの、その市場規模は、影響が懸念されるエチレン誘導品等の市場と比較す
れば非常に小さい。
○(造船業)リーマンショックで大変な打撃を受け、2014 年問題で、先行きを
危惧していたが、シェールガス革命の特需に助けられた面が多い。
一 般
製造業
○(一般機械)石油化学プラント向けコンプレッサが平成 23(2011)年頃から
出始め、海外事業所・工場の設置など事業規模の拡大に大きく貢献。
○(建設業)石油コンビナートの縮小・統合から、メンテナンス業務の縮小を
危惧。一方で、コンビナート遊休地の活用による新規設備投資に期待。
一般製造業
「一部最早
ピークアウト」
石油化学産業
エネルギー産業
>
「目の前の課題」
- vi -
>
「実感に至らず」
4.石油化学・シェールガス関連の研究
(1)学識者ヒアリング調査 (報告書 P110 参照)
ヒアリング先
内
○「資本の壁」を越え「石油-石油化学」の連携・一体化が重要。
「1コンビナート」=「1カンパニー」が最終的に好ましい。
○中国地域では未連携の「石油-石油化学」
、隣接企業の連携、
域内・域外コンビナート間の連携等も視野に入れるべき。
○日本の石化産業の生き残りのためには、
「高付加価値化」と「ボ
リュームゾーン攻略」の「2正面作戦」をとることが重要。
○北米のエタンクラッカーの新設は平成 28(2016)年以降であ
るが、既存のエタンクラッカーも増設や稼働率を上げており、
脅威は既に発生している。
○日本の石油化学産業の強みはオペレーション能力の高さ。こ
の強みの維持、グローバル展開が今後のカギ。
○シェールガス関連では「CNG 自動車」、「還元鉄生産」、「合成
ガス経由化学」、
「メタン直接化学」の4つが有望分野。
○現在のコンビナート連携には電力会社、鉄鋼会社が入ってい
ないことが大きな欠点。
○日本の石油・石化製品が「連産品」であることを意識すべき。
○長期的にはメタン・エタンを出発点とした工業体系が確立さ
れる。ナフサを出発とした、プロピレン、ブタジエン、芳香
族に関連した新たな触媒技術は向う5~10 年の繋ぎの役割。
○自動車産業との摺り合わせの深化、オールジャパン支援体制
の構築が重要。
○C1 化学と重質油の高度利用の研究を実施中。
○シェールガス革命による国内の C1 化学の復権はすぐには難し
い状況。
○触媒研究は1テーマの研究期間が長いため、産学連携による
短縮化等の効果が期待される分野。
一橋大学
大学院商学
研究科 教授
橘川
武郎
和光大学
経済経営学
部 教授
岩間
剛一
早稲田大学
先進理工学
部 応用化学
科 教授
関根 泰
鳥取大学
大学院工学研
究科 教授
片田 直伸
島根大学
総合理工学
部 教授
小俣
容
光司
(2)新たな化学品原料製造プロセスの展開 (報告書 P133 参照)
原
料
企業名
芳香族
容
エタンからプロピレンの製造プロセス
オメガプロセス
軽質オレフィンからプロピレンの製造
JX 日鉱日石
HS-FCC(次世代 FCC)
減圧軽油(VGO)の接触分解
三井化学
Hyper-Ⅲ
エチレンとブテンからプロピレンの製造
DTP プロセス
メタノール(DME)からプロピレンの製造
ETP プロセス
エチレンからプロピレンの製造
BTP プロセス
ブテン類からプロピレンの製造
旭化成ケミカルズ
BB-Flex
ブテンからブタジエンの製造
JX 日鉱日石
HS-FCC(次世代 FCC)
減圧軽油(VGO)の接触分解
三井化学
新規エチレン二量化
エチレンからブテンの製造
三菱化学
BTB プロセス
ブテン類からブタジエンの製造
旭化成ケミカルズ
アルファプロセス
軽質オレフィンから芳香族の製造
Z-Forming Process
軽質ナフサからのガソリン・芳香族製造
FCA プロセス
分解残油の水素化分解によるベンゼンの製造
三菱化学
ブテン
・
ブタジ
エン
内
E-Flex
旭化成ケミカルズ
プロピ
レン
プロセス名
JX 日鉱日石
- vii -
5.シェールガス革命による影響とコンビナート等の展望
(1)シェールガス革命の国内石油化学産業への影響のパス (報告書 P145 参照)
図表6.2
:主なシェールガス革命の影響のパス
シェールガス革命の国内石油化学産業への影響のパス
:その他のパス
〔海外〕
シェール革命による北米
のエタンクラッカーへの
投資拡大
北米(中東)における
エチレン生産コストの
低下・競争力向上
中東における巨大エタン
クラッカーの建設
ブタジエン・芳香族等
の生産量減少
中 国 の 石 炭 化 学
(CTO/MTO) に よ る 生 産 拡
大、技術力向上
中国の経済成長の減速
化学製品需要の減退
中国における北東アジ
アからの化学製品輸入
量の減少
中国等への化学製品の
輸出増大
汎用品の日本への輸出
の可能性
ブタジエン・芳香族等の需給逼迫の
進展・ビジネスチャンスの発生
日本から中国等への化
学製品の輸出減少
×
対応困難の可能性
ナフサ連産品のリバランス
国際競争激化(アジアにおけるナ
フサクラッカー間の競争)
ナフサ連産品(ブタジエ
ン・芳香族等)の生産量
減少
〔国内〕
我が国の国内製造業の生産
拠点の海外シフト等
コスト競争力向上と差
別化・グローバル化
日本での化学製品の需
要の減少
日本のコンビナートの課題
ナフサクラッカーの稼
働率の低下
過剰設備の存在
生産コストの上昇(基礎
品の競争力低下)
生産規模の小ささ
誘導品の競争力低下
設備の老朽化
運転員の高齢化
(2)長期的な視点でのコンビナートの将来イメージ〔参考〕 (報告書 P148 参照)
将来イメージ
①
②
東アジアにおける国
際分業・連携の進展
したコンビナート
非在来型ガス等を有
効利用するコンビナ
ート
③
多様なエネルギーを
集積・変換・供給す
るコンビナート
④
石油を徹底的に利用
するコンビナート
概
要
海外需要を国内生産拠点に取込むという視点から、東アジア全体
を一つのマーケットとして捉え、各国において化学品の国際分
業・連携のもとに操業等を行うコンビナート。
在来型の石油のみならず、北米のシェールガス・オイルや国産の
メタンハイドレートといった非在来型資源等を原料としてうま
く組合せ、化学製品・燃料を製造するコンビナート。
“エネルギー転換センター”としてシェールガス・オイルをはじ
め多様な一次エネルギーを安定的に調達し、水素・電気等の二次
エネルギーだけでなく化学品等にも効率的に「転換」し、地域の
産業界等に低価格かつ安定的に供給していくコンビナート。
研究開発が進展している HS-FCC 等の技術、今後進展が期待され
る「ペトロリオミクス」等の新たなサイエンスに基づき、徹底的
に石油を利用するコンビナート。
(3)コンビナート競争力維持・強化のためのキーワード (報告書 P154 参照)
①企業間連携
②規制緩和・合理化
(コンビナートのコスト競争力の源泉等)
(主な規制と緩和・合理化への動き等)
③研究開発機能
④コンビナートの企業再編
(中国地域におけるシェールガス関連の研究開発機関等)
(組織統合のメリット等)
⑤設備老朽化への対応
(老朽化とシェールガス革命等)
- viii -
(4)日本・中国地域のコンビナートの SWOT 分析(概要) (報告書 P169 参照)
日本
中国
地域
シェール
関連
日本
中国
地域
シェール
関連
【強み Strength】
<知的資本・企業集積の優位性>
【機会 Opportunity】
<連携・ビジネス創出の可能性>
高いオペレーション能力、高機能・R&D
指向、省エネ技術、環境対応技術
多様な企業集積、生産拠点のマザー工場
化の意向、先端実証研究の実績、自家用
発電の規模の大きさ(周南地区)
ナフサの連産性、シェールガス革命の影
響の少ない品目のウエイトの高さ(中国
地域)
【弱み Weakness】
<資源と市場の制約>
石油・石油化学の連携機運の高まり、新たな
高機能品の開発・高機能品のコスト引下げ
瀬戸内海沿岸や東アジア諸国との近接性、
川下産業として国際競争力を有する自動
車産業等の存在
エネルギー調達先の多様化、ブタジエン・
芳香族等の需給逼迫、OCT 技術等のビジネ
スチャンス
【脅威 Threat】
<国際競争・地域間競争の激化>
資源輸入国のハンディキャップ、国産プ
ロセス技術の少なさ、市場構造(品目過
多、過剰品質、高コスト体質)
研究機能の首都圏等に対する劣位、製油
所の閉鎖、未連携の製油所・石油化学プ
ラントの存在
石油を原料とするコスト競争力
国際競争の激化、国内石油化学メーカーの
海外進出、国内需要の縮小を見据えての生
産拠点の統合、技術のコモディティ化
域内需要の縮小や周辺化学企業の工場や
事業所の再編・統合・撤退、コンビナート
生き残りのための地域間競争の激化
北米化学産業のコスト競争力向上、ガス化
学等への対応の遅れ
クロス SWOT
(5)コンビナート競争力維持・強化の方向性と取組施策 (報告書 P173 参照)
方
向
性
企業間連携の進化・拡大
①
中国地域の地理
的特性を活かす
誘導品事業の競争力強化
②
石油化学産業に
おける強みを活
かす
川下産業との連携強化
③
中国地域の産業
集積を活かす
取
組
施
策
a.企業間連携の深化
b.企業間連携の面的拡大
c.芳香族分野における連携
d.広域的な戦略策定・情報発信
(a)地域エネルギー戦略の策定
(b)
「瀬戸内ブランド」等の情報発信
a.主力誘導品事業の競争力強化
b.高付加価値分野の強化、新規成長分野への展開
c.コンビナート外の誘導品企業等の誘致
a.自動車産業との連携
b.周辺分野を含めた擦り合わせ
a.産学官連携による研究開発機能等の向上
コンビナートの競争力維持・強 (a)産学連携の強化 (b)先端・実証研究の支援
化に向けた地域基盤の整備・底 (c)マザー工場への進化
b.人材確保・育成支援
上げ
④
c.企業間連携のための支援
①~③の基盤づ
くり
(a)企業ニーズの汲み上げ
(b)産業支援機能の強化
d.規制緩和・合理化の推進
e.物流基盤の整備
- ix -
- x -
目
次
目
次
1 . 調 査 の 目 的 ........................................ - 1 2 . 米 国 に お け る シ ェ ー ル ガ ス 革 命 の 現 状 ................. - 2 2 . 1 . シ ェ ー ル ガ ス ・ シ ェ ー ル オ イ ル と は 何 か .................. - 2 2 . 2 . 米 国 の 天 然 ガ ス ・ 原 油 の 生 産 実 績 と 見 通 し ................ - 5 2 . 2 . 1 . 天 然 ガ ス の 生 産 実 績 と 見 通 し ............................ - 5 2 . 2 . 2 . 原 油 の 生 産 実 績 と 見 通 し ................................ - 7 -
2 . 3 . 日 米 欧 の 天 然 ガ ス ・ 原 油 価 格 の 推 移 比 較 ................. - 10 2 . 4 . 北 米 の 天 然 ガ ス 輸 出 計 画 ............................... - 11 2 . 5 . 国 際 的 な エ ネ ル ギ ー 供 給 体 制 の 変 化 ..................... - 13 2 . 5 . 1 . エ ネ ル ギ ー 供 給 体 制 へ の 連 鎖 的 波 及 ..................... - 13 2 . 5 . 2 . シ ェ ー ル ガ ス 、 シ ェ ー ル オ イ ル の 開 発 ................... - 16 -
2 . 6 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 の 米 国 経 済 へ の 影 響 ................... - 17 2 . 7 . シ ェ ー ル ガ ス 開 発 の 環 境 へ の 影 響 ....................... - 18 2 . 8 . 化 学 製 品 原 材 料 と し て の シ ェ ー ル ガ ス ................... - 19 2 . 8 . 1 . シ ェ ー ル ガ ス の 成 分 ................................... - 19 2 . 8 . 2 . エ チ レ ン の 製 法 ....................................... - 20 -
3 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 に よ る 国 内 産 業 へ の 影 響 .............- 22 3 . 1 . 国 内 関 連 産 業 の 現 状 ................................... - 22 3 . 1 . 1 . エ ネ ル ギ ー ( LNG 等 ) 調 達 の 現 状 ....................... - 22 3 . 1 . 2 . LNG 火 力 発 電 の 現 状 ................................... - 25 3 . 1 . 3 . 石 油 化 学 産 業 、 コ ン ビ ナ ー ト の 現 状 ..................... - 26 -
3 . 2 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 等 に よ る 影 響 ......................... - 30 3 . 2 . 1 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 の 各 産 業 へ の 影 響 ..................... - 30 3 . 2 . 2 . 原 油 価 格 下 落 に よ る シ ェ ー ル ガ ス 革 命 へ の 影 響 ........... - 39 -
3 . 3 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 と 企 業 動 向 ( 他 地 域 ヒ ア リ ン グ 調 査 ) ... - 46 3 . 3 . 1 . 他 地 域 ヒ ア リ ン グ 調 査 の 概 要 ........................... - 46 3 . 3 . 2 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 に よ る 影 響 に 関 す る ヒ ア リ ン グ 調 査 ..... - 46 3 . 3 . 3 . コ ン ビ ナ ー ト に お け る 企 業 間 連 携 に 関 す る ヒ ア リ ン グ 調 査 . - 55 -
4 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 に よ る 中 国 地 域 産 業 へ の 影 響 .........- 67 4 . 1 . 域 内 関 連 産 業 の 現 状 ................................... - 67 4 . 1 . 1 . エ ネ ル ギ ー 産 業 の 現 状 ................................. - 67 4 . 1 . 2 . 石 油 化 学 産 業 ( コ ン ビ ナ ー ト ) の 現 状 ................... - 69 4 . 1 . 3 . 中 国 地 域 の 石 油 化 学 産 業 へ の シ ェ ー ル ガ ス 革 命 の 影 響 の 考 察 - 74 4 . 1 . 4 . そ の 他 産 業 の ビ ジ ネ ス チ ャ ン ス ......................... - 78 -
4.2.域内企業のシェールガス革命の認識・対応状況
( 中 国 地 域 ア ン ケ ー ト 調 査 ) ............................ - 80 4 . 2 . 1 . ア ン ケ ー ト 調 査 の 概 要 ................................. - 80 4 . 2 . 2 . 回 収 結 果 と 属 性 ....................................... - 80 4 . 2 . 3 . 調 査 結 果 ............................................. - 84 4 . 2 . 4 . 調 査 結 果 の 総 括 ....................................... - 99 -
4.3.シェールガス革命による影響と域内企業等の動向
( 中 国 地 域 ヒ ア リ ン グ 調 査 ) ........................... - 101 4 . 3 . 1 . 中 国 地 域 ヒ ア リ ン グ 調 査 の 概 要 ........................ - 101 4 . 3 . 2 . ヒ ア リ ン グ 調 査 結 果 .................................. - 103 -
5 . 石 油 化 学 ・ シ ェ ー ル ガ ス 関 連 の 研 究 .................. - 110 5 . 1 . 学 識 者 ヒ ア リ ン グ 調 査 ( 石 油 化 学 産 業 、 石 油 化 学 技 術 関 連 ) - 110 5 . 1 . 1 . ヒ ア リ ン グ 調 査 の 概 要 ................................ - 110 5 . 1 . 2 . 主 な 意 見 ............................................ - 111 < 参 考 > 個 別 ヒ ア リ ン グ 内 容 ...................................... - 113 -
5.2.新たな化学品原料製造プロセスの展開とシェールガス革命
- 133 -
5 . 2 . 1 . 新 た な 化 学 品 原 料 製 造 プ ロ セ ス ( 概 要 ) ................ - 133 5 . 2 . 2 . 個 別 の 化 学 品 原 料 製 造 プ ロ セ ス の 研 究 開 発 動 向 .......... - 134 5 . 2 . 3 . 特 許 出 願 動 向 ........................................ - 138 -
6 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 に よ る 影 響 と コ ン ビ ナ ー ト 等 の 展 望 .. - 141 6 . 1 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 の 各 産 業 へ の 影 響 ( ま と め ) .......... - 142 6 . 1 . 1 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 の エ ネ ル ギ ー 産 業 へ の 影 響 ( ま と め ) .. - 142 6 . 1 . 2 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 の 一 般 製 造 業 へ の 影 響 ( ま と め ) ...... - 143 6 . 1 . 3 . シ ェ ー ル ガ ス 革 命 の 石 油 化 学 産 業 へ の 影 響 ( ま と め ) .... - 144 -
6.2.シェールガス革命とコンビナートの将来イメージ〔参考〕
- 148 -
6 . 2 . 1 . コ ン ビ ナ ー ト の 将 来 イ メ ー ジ に つ い て の 想 定 ............ - 148 6 . 2 . 2 . 長 期 的 な 視 点 で の コ ン ビ ナ ー ト の 将 来 イ メ ー ジ .......... - 149 -
6 . 3 . コ ン ビ ナ ー ト の 競 争 力 維 持 ・ 強 化 の た め の キ ー ワ ー ド .... - 154 6 . 3 . 1 . 企 業 間 連 携 .......................................... - 154 6 . 3 . 2 . 規 制 緩 和 ・ 合 理 化 .................................... - 157 6 . 3 . 3 . 研 究 開 発 機 能 ........................................ - 160 6 . 3 . 4 . コ ン ビ ナ ー ト の 企 業 再 編 .............................. - 164 6 . 3 . 5 . 設 備 老 朽 化 へ の 対 応 .................................. - 166 -
6.4.中国地域におけるコンビナート競争力維持・強化の方向性
- 169 -
6 . 4 . 1 . 日 本 ・ 中 国 地 域 の コ ン ビ ナ ー ト の SWOT 分 析 ............. - 169 6 . 4 . 2 . コ ン ビ ナ ー ト 競 争 力 維 持 ・ 強 化 の 方 向 性 と 取 組 施 策 ...... - 173 -
資
料
編 ........................................... - 195 -
1.調査の目的
これまでは採掘が困難な資源といわれていたシェール層に存在する天然ガスが、2000
年代以降、技術の進展により掘削可能となり、北米を中心にシェールガス革命が進展し
ている。
もとより、シェールガスをはじめとするエネルギー資源の開発は、技術革新のみによ
るものではなく、需給や価格などの経済状況や国際情勢などの様々な要因により進めら
れるものである。しかし、シェールガス革命は競合するエネルギーの短期的な変動はあ
るものの、中・長期的には、発電用燃料の調達コスト、エネルギー安全保障等との関係
でエネルギー産業へ影響を及ぼすのみならず、日本の石油化学産業を中心とした素材産
業に直接・間接に大きな影響を与える可能性が高いと考えられる。
また、シェールガス革命の日本への影響は、消費段階(素材代替、燃料転換)である
石油化学産業、エネルギー産業等だけでなく、生産段階(掘削装置等)
、流通段階(パ
イプライン、輸送船等)など様々な分野に広がることが予想される。
このため、本調査はシェールガス革命に関連する文献・ヒアリング・アンケート等の
調査を実施し、シェールガス革命が中国地域の産業に及ぼす影響を整理するとともに、
地域の基幹産業である石油化学産業等の競争力維持・強化のための方向性・取組施策等
について提言を行うことを目的とする。
・調査対象地域
全国・中国地域を対象とする。
- 1 -
2.米国におけるシェールガス革命の現状
2.1.シェールガス・シェールオイルとは何か
けつがん
シェールガス(shale gas)は頁岩(シェール)の固い岩盤層に含まれる天然ガスの
ことである。頁岩は泥土が水底に積み重なって固まった堆積岩であり、堆積面に沿って
薄く層状に剥がれやすいことから、本のページのようであるとして頁岩とされた(図表
2.1)
。
同じく頁岩層に含まれる原油はシェールガスと一緒に産出されるためシェールオイ
ルと呼ばれる。本来は砂岩層にある「タイトサンドオイル」等と合わせタイトオイル
(tight oil)と呼ばれていたが、近年の生産量の増加に伴い、メディア等ではシェー
ルガス≒タイトオイルと扱われることが多い。
シェールガス、シェールオイルは貯留層の低浸透率や流体の高粘性(例えばオイルサ
ンド)等により自噴不可の油・ガスである。従来の工法(地下の貯留層と地表を生産施
設で連結)により自噴可能な油・ガスを在来型というのに対し、非在来型と呼ばれる。
非在来型には、シェールガス、シェールオイルのほか、コールベッドメタン(CBM:石
炭の形成過程で生成されたメタンガスが石炭層中の隙間に吸着したもの)
、タイトサン
ドガス(浸透率の低い砂岩に含まれる天然ガス)等がある。
掘削方法はシェールガス、シェールオイルとも地表下 1,000 ~ 5,000m のシェール層
まで垂直掘削を行い、その後、水平掘進を行う。この工法は、岩石との接触を増し、生
産量を垂直井の数倍にすることが狙いである。
図表2.1 在来型ガス・石油とシェールガス
地表
コールベッドメタン
在来型天然ガス
石油随伴ガス
シール層
石油
砂岩層
タイトサンド
ガス
(シェールガス・シェールオイルを含む)シェール層
資料:EIA HP(http://www.eia.gov/oil_gas/natural_gas/special/ngresources/ngresources.html)
- 2 -
採掘は、頁岩の固い岩盤に高圧液体を圧入、岩石を破砕して割れ目を作り、岩盤内の
油・ガスの流動性を改善する。その上で、高圧液体と併せて粗い砂粒等の保持材を注入
し、割れ目が塞がるのを防止し、頁岩層でのガスの流路を確保する(図表 2.2 水圧破
砕法)
。このような技術が平成 17(2005)年頃から確立され、米国におけるエネルギー
生産が増加してきた。
掘削技術の開発により、従来よりも低コストでガスが採掘できるようになったことか
ら、世界のエネルギー資源の腑存量が見直され、国際的なエネルギー価格やエネルギー
取引に影響が及ぶことを「シェールガス革命」と呼んでいる。
図表2.2 水圧破砕法
水圧破砕水
加圧ポンプ
プロパント挿入
貯蔵タンク
パイプラインへ
廃水処理施設へ
廃水ピット
帯水層
ガス井
ガスがガス井へ
プロパント
割れ目
水平掘り
資料:HP(http://lubbockonline.com/Squeezing_Shale)
シェールオイル地中のシェール層の掘削や水圧破砕によって得られる米国における
リグ(掘削設備)の稼働数についてみると、リーマンショック後の平成 21(2009)年以
外、平成 18(2006)年以降は天然ガスと石油を合わせ 1,600 本以上の高水準を維持して
いる。
シェールガスともに天然ガス液(NGL)の多いガス田では、石油成分が多いことが判
明している。シェールオイルは石油と同価格で取引されるため、新たに掘削されるガス
田では、シェールオイルとともに随伴するシェールガスを掘削することが狙いとなって
- 3 -
おり、ガス価格の低下した平成 21(2009)年頃を契機に天然ガスから石油へのシフトが
みられる(図表 2.3)
。
図表2.3 米国におけるリグ数の推移(1987-2014 年:年末値)
本
gas
oil
2,000
1,800
1,600
316
1,400
1,200
1,000
800
1,317
600
400
200
0
1987
89
91
93
95
97
99
01
03
05
07
資料:Baker Hughes「North America Rotary Rig Count」より作成
- 4 -
09
11
13
年
2.2.米国の天然ガス・原油の生産実績と見通し
2.2.1.天然ガスの生産実績と見通し
米国の天然ガスの生産量は、近年のシェールガスの生産拡大によって過去最高を記録
しており、平成 25(2013)年には 66.8Bcf/d*となった。平成 26(2014)年末には 76.5Bcf/d
と規模が拡大しているが、そのうちシェールガスの生産規模は、40Bcf/d に近づき、LNG
換算では年産 3 億トン近い規模となっている(図表 2.4)
。
図表2.4 米国のシェールガス生産規模の推移(Bcf/d)
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
(注)グラフ上のデータは 2014 年 11 月時点、EIA の公式シェールガスの推定
資料:EIA「Monthly Dry Shale Gas Production」
<参考> 位置図
資料:EIA 資料より作成
*
Bcf/d=Billion Cubic Feet per Day(10 億立方フィート)≒ LNG 換算 770 万トン/年
- 5 -
今後の中長期的な見通しとして、米国の天然ガス生産全体からみると 2040 年には全
生産量の半分以上がシェールガスになると予測されている(図表 2.5)
。
図表2.5 米国の天然ガス生産量の推移と見通し
(兆立方フィート)
(Bcf/d)
約 50%
シェールガス
ガス田
タイトサンドガス
海上ガス田
アラスカ
油田に随伴するガス
コールベッドメタン
資料:EIA「Annual Energy Outlook 2014」
平成 25(2013)年における米国の天然ガス消費量は 71.5Bcf/d(=26.1 兆立方フィー
ト)であり、全世界の消費量の 22.9%を占めており、米国は世界一の天然ガス消費国で
ある(BP, Statistical Review of World Energy 2014)
。
米国における天然ガスの生産量は、シェールガス革命以降、順調に伸びてきており、
平成 25(2013)年には、海外からの純輸入量は、全消費量の 5%にまで減少してきてい
る。今後、平成 27(2015)~平成 32(2020)年には完全に自給国になると予測されて
いる(図表 2.6)
。
図表2.6 米国の天然ガス生産量・消費量と将来予測
(兆立方フィート)
(Bcf/d)
消費
国内生産
純輸出
資料:EIA(2014)
「Annual Energy Outlook 2014」
- 6 -
2.2.2.原油の生産実績と見通し
シェールオイル開発に関しては、シェールガス開発技術の進展に加え、平成 21(2009)
年頃からのガス価格の低下に伴い、相対的に石油価格が割高となったこともあり、その
生産規模拡大に拍車がかかってきた。米国北部からカナダに広がる Bakken、テキサスの
Eagle Ford が代表的な鉱区であり、原油の性質としては比重が小さく粘りけの少ない
中・軽質油(API 比重※ 32 度以上)である。
米国の原油生産量は、シェールオイルの生産拡大によって、平成 25(2013)年には
7.45Mbbl/d※、平成 26(2014)年には 8.64Mbbl/d と増加傾向にある。
シェールオイルの生産規模は、平成 26(2014)年半ばには 3.5 Mbbl/d となり、全生
産量の約4割程度の規模となっている(図表 2.7)
。
図表2.7 米国のシェールオイル生産規模の推移(Mbbl/d)
(百万バレル/日)
資料:EIA,Short-Term Energy Outlook
今後の見通しとして、EIA(米国エネルギー情報局)は「①通常ケース(図表 2.20 左
図:以下「ケース①」
)
」と「②シェール開発・技術革新進展ケース(図表 2.20 右図:
以下「ケース②」
)
」等を想定しているが、
「ケース①」におけるシェールオイル生産量
は 2021 年にピークを迎え生産量は 4.8Mbbl/d となり、原油生産量全体の約半分となる
としている。一方で、
「ケース②」は 2020 年頃以降も増加傾向が続きシェールオイル生
産量は約 8.0 Mbbl/d まで拡大する見通しとなっている。
※
API(米国石油協会)が定めた比重測定単位。水の比重を 10 度とし、数値が高くなるほど軽質となる
※
Mb/d=Million Barrel per Day(100 万バレル)
- 7 -
いずれのケースにしても平成 32(2020)年の米国の石油生産量は、過去最高の昭和
45(1970)年の 9.6 Mbbl/d と同等以上の生産量となると予測している(図表 2.8)
。同
年までにサウジアラビアを抜いて、世界一の産油国に踊り出るとの見通し〔IEA(国際
エネルギー機関)
〕もあり、シェールオイルが世界のエネルギー政策に及ぼす影響は非
常に大きいと見込まれる。
図表2.8 米国の原油生産量の推移と見通し
①通常ケース
②シェール開発・技術革新進展ケース
(百万バレル/日)
(百万バレル/日)
シェールオイル
陸上油田
海上油田
アラスカ
資料:EIA(2014)
「Annual Energy Outlook 2014」
米国における石油の需給状況をみると、ここ数年急激に改善し、対外依存度が平成 17
(2005)年の 60%をピークに、平成 24(2012)年には 40%まで低減している。さらに、
平成 27(2015)年にはさらに 25%となると見込まれている。その後は「ケース①」の
場合は、引き続き対外依存度 30%程度での推移を見込んでいるが、
「ケース②」は平成
52(2040)年頃には完全自給となるとしている(図表 2.9)
。
- 8 -
図表2.9 石油生産量・消費量と将来予測
(百万バレル)
ケース②(点線)
消 費
輸 入
ケース①(実線)
国内生産
資料:EIA(2014)
「Annual Energy Outlook 2014」
- 9 -
2.3.日米欧の天然ガス・原油価格の推移比較
日米欧の天然ガス価格の推移を図表 2.10 に示す。米国の天然ガス価格は、平成
20(2008)年 9 月のリーマンショック直前に、約$9/百万 Btu(Btu:英国熱量単位)
水準まで高騰し、日本や欧州の価格と同様に高い水準で取引されていた。その後、
日米欧ともにリーマンショックの影響で、価格は大きく下落したが、日本と欧州で
は平成 22(2010)年以降、原油価格の上昇に伴って天然ガス価格も上昇してきた。
一方で米国はシェールガス革命の進展により価格が低位で推移している(図表 2.10、
図表 2.11)。
図表2.10
日米欧の天然ガス価格の推移(年平均値)
($/MBtu)
欧州
日本
米国
20
18
16.75
16
14
12
10.46
10
8
6
4.39
4
2
0
1992
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
(年)
14
資料:IMF「Primary Commodity Prices」
ただし、平成 26(2014)年は 7 月以降、原油価格の低下が続いており、平成 26
年 6 月には 1 バレル$105(WTI※)であった原油が年末には 1 バレル$53 にまで低
下している。
表2.11
WTI 原油価格の推移(年平均値)
($/bbl)
100
93.13
80
60
40
20
0
1992
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
(年)
14
資料:IMF「Primary Commodity Prices」
※
ウエスト・テキサス・インターミディエートの略で、西テキサス地方で産出される硫黄分が少なくガ
ソリンを多く取り出せる高品質な原油のことを指す。
- 10 -
2.4.北米の天然ガス輸出計画
かつて米国は大量に天然ガスを輸入する国であったが、シェールガスの生産増大
もあり、現在では LNG 受入基地の稼働率は落ち込む一方で、LNG の輸出プロジェク
トが相次いで持ち上がっている。
米国から天然ガスを輸出するには、米エネルギー省からガス輸出に関する認可を
得る必要がある。申請認可の厳しさは FTA(自由貿易協定)を締結している国向け
と、非締結国向けで大きく異なる。日本は、非締結国であるが LNG 対日輸出計画と
して、これまで、平成 25(2013)年に承認されたテキサス州フリーポートにおける
2 件(①大阪ガス・中部電力、②東芝)、メリーランド州コーブポイント(③住友商
事・東京ガス)、ルイジアナ州キャメロン(④三井物産・三菱商事・日本郵船)で
の計 4 件の LNG 対日輸出計画が承認されており、今後、連邦エネルギー規制委員会
(FERC)による環境面の審査を経て、平成 29(2017)年から米国産 LNG が日本に輸
出されることとなっている。
平成 24(2012)年時点において、北米で計画されている LNG 基地計画を図表 2.9
に示す。米国では、全体として既存インフラを活用した LNG 輸出基地が多く、従来
から天然ガスの産地であるメキシコ湾周辺に多い。
図表2.12
北米における LNG 基地の計画
資料:EIA 資料、市原路子(2012.8)
「カナダ太平洋岸 LNG 開発の現状(JOGMEC)」、村井俊郎・渡辺考(2013.10)
「米国シェール開発の現状について」より作成
- 11 -
一方で、平成 25(2013)年 9 月には、日本とカナダの首脳会談においてカナダ産
シェールガスの日本への輸出について合意がなされた。
カナダではシェールガスの埋蔵地に近い西海岸に輸出基地が集中しており、カナ
ダからは平成 31(2019)年の輸入が目標とされている。米国に続き 2 か国目のシェ
ールガス輸出の合意国であり、日本にとっては天然ガスの調達先が増すことで価格
引き下げが期待される。今後、カナダではシェールガス田から積み出し港までのパ
イプライン敷設、ガスを LNG 化する施設が整備される予定である。
カナダ産、米国産を併せると合計で年間 2,500 万トンの日本への LNG 輸入が見込
まれており、将来、日本の天然ガス年間輸入量の約 3 割は北米産のシェールガスに
よって賄われる可能性がある。
- 12 -
2.5.国際的なエネルギー供給体制の変化
2.5.1.エネルギー供給体制への連鎖的波及
米国においてシェールガスやシェールオイルの生産が増加することにより、国際
的なエネルギー供給体制にも大きな変化が表れている(図表 2.14)。
a.シェールガスによる天然ガス供給体制の変化
(a)米国国内での変化
米国国内では、シェールガス革命により、天然ガスが低価格かつ自給可能なエネ
ルギーとなったため、電力供給の5割程度を占めていた石炭による発電が平成 25
(2013)年には大幅に減少する一方で〔平成 16(2004)年 49.8%→平成 25(2013)
年 39.1%〕、天然ガスによる発電が3割近くにまで増加するなど〔平成 16(2004)
年 17.9%→平成 25(2013)年 27.4%〕、石炭と天然ガスのエネルギーとしての位
置づけは大きく変化している。
近年、石炭よりも天然ガスが利用されるのは、コストの問題に加え、CO2 の排出量
の面からも、天然ガスの方が好ましとされ、この結果、米国では余剰となった石炭
の欧州向けの輸出が増加している。
図表2.13
世界の石炭消費状況
その他
欧州 16.7%
その他ヨーロッ
パ, 10.6%
アフリカ・オセアニア
等, 4.2%
2013年
79億トン
ロシア, 3.0%
5.3%
12.0%
ドイツ, 3.1%
その他北南米,
1.4%
北中南米
12.1%
アメリカ, 10.7%
2.8%
3.3%
1.5%
2009年
67億トン
43.8%
13.7%
5.5%2.5%
9.7%
その他アジア,
5.3%
日本, 2.5%
インド, 10.0%
アジア 67.1%
資料:IEA「Coal Information 2014」
- 13 -
中国, 49.3%
(b)米国国外での変化
カタールなど中東産油国では、米国においてシェールガス革命以前は、米国向け
の輸出増加を見込み、天然ガスの増産に取り掛かっていたものの、米国内で原油生
産量が急増したため、輸出先を原子力発電が停止した日本や、欧州等へ変更するこ
ととなった。
欧州では中東からの天然ガスの輸入拡大の動きがあるものの、石炭が天然ガスよ
り低価格であるため、全体的にはガス発電を減らし、石炭発電にシフトする動きが
ドイツや英国等で見られる。また、天然ガスの最大の輸入元であるロシアの比率を
下げ、中東の比率を上げることで、ロシアの天然ガスの価格支配権が弱まり、多様
なガス価格の決定方式が導入されつつある。
ロシアでは、欧州での天然ガス需要減や中東からの輸入増の影響を受け、価格の
引き下げを求められたこともあり、日本、韓国等の東アジアの国々を新たな天然ガ
スの輸出先として開拓を模索し始めていたが、平成 26(2014)年3月に発生したク
リミア併合により、情勢は不透明となっている。
一方、米国では天然ガス輸出にあたって、基本的に FTA を締結している国以外に対
しては、個々に審査を行うというやや消極的とも見える姿勢を示していたが、政治的
な意図からウクライナ等に天然ガスを供給すべきであるという議論も出ている。
図表 2.14
シェールガス革命によるエネルギー供給体制の変化
資料:経済産業省資源エネルギー庁(2013.5)「国際エネルギー情勢について(総合資源エネルギー調査
会 総合部会 会議資料)」
- 14 -
また、中長期的には、アジアの経済成長に伴うエネルギー需要の増加が見込まれ
ており、アジア向け輸出を視野に入れた、モザンビークなどアフリカ諸国での天然
ガス開発の動きも出ている。
b.シェールオイルによる石油供給体制の変化について
米国においてシェールオイルが増産された結果、米国の石油輸入量も減少傾向に
転ずるとともに(図表 2.9)、米国エネルギーの中東への依存度が大幅に低下する見
込みとなっている。
また、ここ数年、イラン、リビア、エジプト等での政情不安などから供給懸念が
市場で発生しているにもかかわらず、原油相場は$100/bbl 前後で推移してきたが、
米国におけるシェールオイル増産による石油需給の世界的な緩和による影響と考
えられる。
シェールオイルは、通常の製油所で処理するとガソリンや軽油を主に生産できる
ような比重の軽い「軽質原油」であることから、品質が類似する軽質原油を米国向
けに輸出していたアルジェリアやナイジェリアといった産油国が大きく影響を受
けている。
そして米国への輸出が減少した軽質原油は他の受入先を求めるようになってい
る。距離的には、アフリカから距離の近い欧州ということになるが、欧州は債務危
機に伴う経済低迷の問題を継続的に抱え、石油需要が低迷していることもあり、余
剰となった原油はアジア太平洋地域へと向っている。
例えば、日本は平成 24(2012)~平成 25(2013)年には、制裁を受けているイ
ランや紛争状態であるスーダンからの原油輸入の減少に対し、主に中東産油国や東
南アジア諸国等からの輸入増加により対応しているものの、加えて、アフリカ、特
に西アフリカのガボンからの輸入量が増加していることは注目に値する。
また、中国についてもアンゴラ、リビア等のアフリカ産油国からの原油輸入が増
加している。このように、米国でシェールオイルが増産されたことにより、世界の
原油取引の流れが、全体的に欧州側からアジア等の東側にシフトしつつある。
- 15 -
2.5.2.シェールガス、シェールオイルの開発
シェールガス・シェールオイルは米国のみならず、世界中で埋蔵が確認されてい
が(図表 2.15)
、技術的な水準、制度的なコストの低さ、環境問題への対応等の理
由から米国が先行し、他国は簡単に追随できない状況が続いてきた。
しかし、米国のシェールガス革命の恩恵が広く認識され、ロシアや中国でもシェ
ールガス開発の動きが加速しつつある。両国は確認埋蔵量も豊富であり、本格的な
生産が可能になれば世界のエネルギー地図を塗り替える可能性がある。
その一方で、米国国外における賦存状況については精査が必要との見方もあり、
関係国は開発・生産のための技術・産業基盤を確立と併せ、環境面も考慮した事業
推進のための法制・税制の整備等も求められる。
図表 2.15
世界のシェールガスの腑存
資料:EIA/ARI(2013)「World Shale Gas and Shale Oil Resource Assessment」
- 16 -
2.6.シェールガス革命の米国経済への影響
シェールガスの生産拡大の米国経済への影響は多岐に及ぶが、直接的な影響と更
なる影響にわけ、考えられるパスを以下に記載する。影響波及の一般的なイメージ
は図表 2.16 のとおりである。
【一次的影響】
①
雇用・設備投資増加
シェールガスの生産に携わる鉱業と、シェールガス生産による原料低下の大きい
化学産業において特に雇用・設備投資の増加が期待される。
②
企業の収益改善・家計の実質購買力向上
エネルギー価格の低下により、エネルギー消費の多い「輸送」等のセクターを中
心とした企業収益の改善や家計の実質購買力が向上する。
③
貿易収支の改善
貿易赤字の大半を占める原油収支の赤字幅が縮小する。
【二次的影響】
④
製造業の国内回帰
新興国を中心とした海外に生産拠点をシフトしていた製造業が、エネルギー価格
や原材料価格の低下により、重工業を中心に国内回帰の動きを見せる。
⑤
ドル高
貿易赤字の減少とともに経常赤字も減少し、ドル高が進行する可能性がある。
図表 2.16
シ
ェ
ー
ル
ガ
ス
(
オ
イ
ル
)
革
命
天
然
ガ
ス
・
石
油
生
産
増
加
シェールガス革命の米国経済への影響(イメージ)
天然ガ
ス・
原油価格
低下
②企業の収益
改善・家計の
実質購買力向
上
①雇用増加・設備投資増加
原油輸入
減少
③貿易収支
改善
一次的影響
- 17 -
④製造業の国内回帰
経常収支
改善
中東地域
への関与低
下の可能性
⑤ドル高
国防費削
減・財政
収支改善
二次的影響
2.7.シェールガス開発の環境への影響
シェールガス開発は掘削工程を除き基本的に在来型天然ガスと同様の開発プロ
セスであるため(前記の図表 2.1、2.2)
、シェールガス開発の環境影響とは、もっ
ぱら掘削工程における影響となる。よって、シェールガス特有の掘削工程とそれに
付随すると想定される環境リスクは図表 2.17 のとおりとなる。
これらの環境影響の中でも、主要な環境影響は概ね次の3点にまとめられる。第
一に「掘削時の水圧破砕工程に用いられるフラクチャリング流体およびメタンガス
の地下水への混入」、第二に「採掘現場から発生するメタンガスや揮発性有機化合
物の大気への漏えい」、第三に「フラクチャリング流体のシェール地層への圧入お
よび廃水の地中への圧入による微小地震の誘発」である。
シェールガス開発の環境影響については現在も議論が続いており、全てが完全に
解明されているものではない。米国では一部の州において水圧破砕法の使用を禁止
または凍結され、水圧破砕で使用する化学物質の情報開示を義務付ける州もある。
ただし、シェールガス開発による飲料水汚染、メタン漏えい、地震誘発等の環境影
響については、適切な技術の導入と操業(オペレーション)によって十分予防でき
るとの意見も多くある。
図表 2.17
シェールガス開発と環境への影響
シェールガス掘削工程
垂直掘削
(Vertical Drilling)
主な環境影響
騒音・振動・臭気
生産サイト 整備 等 によ
る森林減少
※在来型ガスでも同様の環境影響があり
水汚染
施工不備によるガスや水圧破砕用フラクチャリ
ング流体の地下水脈への混入
水汚染
亀裂が想定以上に大きくなることによって地下
水脈に化学物質やガスが混入
水資源
水圧破砕用の水が農業用水の供給を圧迫
水圧破砕
(Hydraulic
Fracturing)
地震誘発
水圧破砕による高水圧が微小地震を誘発
道路破損・交通渋滞
水運搬用大型ローリー車の頻繁走行
ドリルアウト
(Drill out)
大気汚染
有害ガス・メタンガスの漏えい
水土壌汚染
貯留プールの施工不備による土壌への流出
フローバック水が未処理のまま土壌や河川に放
流
地震誘発
廃水の地下注入が微小地震を誘発
水平掘削
(Horizontal Drilling) 景観が損なわれる
ケーシング
(Well Casing)
パーフォレーション
(Peroration)
フローバック
(Flow back)
資料:日本エネルギー経済研究所(2013)「シェールガス開発に伴う環境影響を鳥瞰する」
- 18 -
2.8.化学製品原材料としてのシェールガス
2.8.1.シェールガスの成分
シェールガスの組成の大部分はメタンであり、次いでエタン、プロパンが主成分
である(図表 2.18)。
図表 2.18
シェールガスの組成
資料:(一財)石油エネルギー技術センター(2012.11)「JPEC news」
メタン主に燃料として用いられる。石油化学原料として利用されるのは主にエタ
ンであり(図表 2.19)
、基礎製品であるエチレンやエチレン系の誘導品であるポリ
エチレン等を製造することができる。
図表 2.19
石油化学製品の製造の流れ
資料:日本政策投資銀行(2013)「シェール・ガス革命の見方(産業界への影響と日本への示唆)」を基
に作成
- 19 -
2.8.2.エチレンの製法
日本をはじめとする東アジアの石油化学はほとんどがナフサを分解(クラッキン
グ)して石油化学品を製造している。欧州でも原料の大部分はナフサクラッカーに
より製造されている。それに対して米国や中東では、天然ガスや石油随伴ガスとし
て得られるエタンを熱分解してエチレンを製造し、ポリエチレンなどの石油化学品
の原料として用いている(図表 2.20)
。
図表2.20
日本・欧州・米国のクラッカー原料
日本
重質
NGL
1% LPG
3%
欧州
ガスオイル
1%
エタン
重質 8%
NGL
2%
米国
ガスオイル
4%
重質
NGL
5%
ガスオイル
7%
ナフサ
9%
LPG
14%
エタン
62%
LPG
20%
ナフサ
69%
ナフサ
95%
資料:石油化学工業協会 HP(http://www.jpca.or.jp/04_f.htm)
ナフサ原料とエタン原料のクラッカーでは生成物は大きく異なる。ナフサクラッカ
ーではエチレンの他にプロピレン、ブタジエン、ブテン、芳香族(ベンゼン、トルエ
ン、キシレン)などの化学品合成に重要な原料が生成されている。それに対しエタン
クラッカーでは、エチレンが約 80%生成される他は水素、メタンが 13%生成されるだ
けであり、プロピレンもブタジエンの生成量はわずかである(図表 2.21)
。
図表2.21
クラッカー原料の違いによる生成物の違い
ナフサクラッカー
C5+
18%
ブテン類
8%
ブタジエン
4%
プロピレン
14%
水素,
メタン
26%
エタンクラッカー
ブタジエン
1%
プロピレン
1%
エチレン
30%
ブテン類
2%
C5+
2%
水素,
メタン
13%
エチレン
81%
資料:室井高城(2013)「シェールガス・オイル革命の石油化学への影響」、S&T 出版
- 20 -
同じエチレンの製造方法ということでは、エタン以外にもシェールガスの成分で
もメタンから合成ガス経由での製法や、中国で大規模に進展されている石炭を原料
とした製法、開発段階ではあるがバイオマスから製造するという方法等もある(図
表 2.22)。
図表2.22
石
油
各種原料からのエチレン等製造ルート
ナフサ
ナフサ分解
エチレン、プロピレン等
エタン
エタン分解
エチレン
天然ガス
(シェールガス)
脱水素
プロパン
プロピレン
メタン
合成ガス
(CO+H2)
石
メタノール
炭
MTO(メタノール to オレフィン)
エチレン、プロピレン
MTP(メタノール to プロピレン)
プロピレン
CTO(コール to オレフィン)
発酵
バイオマス
糖(グルコース)
脱水
エタノール
エチレン、プロピレン等
資料:府川伊三郎(2014)「石炭由来オレフィンの技術と競争力」、化学経済 2014 年 12 月号
- 21 -
3.シェールガス革命による国内産業への影響
3.1.国内関連産業の現状
3.1.1.エネルギー(LNG 等)調達の現状
天然ガスの輸送方法としてはパイプラインで気体状のまま搬送する方法と液化
(LNG 化)して LNG タンカーや運搬車で搬送する方法がある。
平成 25(2013)年の世界の天然ガス貿易量は 1 兆 359 億 m3 であり、パイプライン
によるものが 7,106 億 m3、LNG 化によるものが 3,253 億 m3 である(BP, Statistical
Review of World Energy 2014)
。米国のシェールガスの年間生産量は約 3,200 億 m3
(2013 年)となり、世界の LNG 貿易量の大半を賄える生産規模に拡大している。
日本は世界全体の約 1/3 を占める最大の LNG 輸入国であり、平成 25(2013)年の
輸入量は 1,190 億 m3(図表 3.1)である。
図表3.1
LNG 貿易(2013 年・億 m3)
←輸入
輸出→
日本, 1,190
カタール, 1,056
マレーシア, 338
オーストラリア,
302
韓国, 542
インドネシア,
224
中国, 245
インド, 178
台湾, 172
スペイン, 149
ナイジェリ
ア, 224
その他(輸入),その他(輸出),
777
620
アルジェリ
ア, 149
トリニ
ダードト
バコ, 198
ロシア, 142
資料:BP(2014)「Statistical Review of World Energy 2014」
- 22 -
事業者別の輸入量を見ると、日本の LNG 輸入の大半は電気事業者、ガス事業者に
よるものである。平成 22(2010)年度には全量の 62.8%を電気事業者が、32.7%
をガス事業者が輸入している(図表 3.2)
。
図表3.2
会社別 LNG 輸入量(平成 22(2010)年度)
輸入量(万ト 全 体 に 占 め る 割
合
ン)
東京電力
2,079
29.5%
中部電力
1,045
14.8%
関西電力
479
6.8%
東北電力
288
4.1%
電力会社
九州電力
268
3.8%
中国電力
233
3.3%
四国電力
36
0.5%
東京ガス
1,069
15.2%
大阪ガス
713
10.1%
東邦ガス
303
4.3%
静岡ガス
115
1.6%
ガス会社
西部ガス
40
0.6%
広島ガス
38
0.5%
仙台市ガス局
15
0.2%
日本ガス
12
0.2%
その他
324
4.6%
輸入量計
7,056
100.0%
資料:資源エネルギー庁(2012.1)
「我が国の天然ガス及びその供給基盤の現状と課題(総合資源エネル
ギー調査会総合部会 第 1 回天然ガスシフト基盤整備専門委員会資料)」
区
分
企
業
名
また、東日本大震災後に原子力発電所が停止した日本では、LNG 火力による発電
量が増加し、LNG の輸入量が急増している。輸入原油価格に連動している日本の LNG
輸入価格は、原油価格が上昇している影響を受け、高い水準にある(図表 3.3)
。
図表3.3
日本の LNG 輸入量と輸入価格の推移
(万トン)
(千円/トン)
100
900
東日本大震災
90
800
80
700
70
60
600
2010年の月平均輸入量:583万トン
50
500
40
輸入量(左軸)
輸入価格(右軸)
400
30
2010
11
12
13
資料:財務省「貿易統計」より作成
- 23 -
14
(年)
このように輸入量増大と価格上昇により、平成 23(2011)年の日本の貿易収支は
第二次石油危機以来 31 年ぶりに赤字に転落し、平成 26(2014)年には過去最大の
貿易赤字となるなど、
安価な LNG の調達は日本にとって重要な課題となっている(図
表 3.4)
。
図表3.4
日本の貿易収支の推移
(単位:十億円)
輸出金額
平成 22
(2010)年
67,400
平成 23
(2011)年
65,547
平成 24
(2012)年
63,476
平成 25
(2013)年
69,774
平成 26
(2014)年
73,101
輸入金額
60,765
68,111
70,672
81,243
85,889
うち原油粗油
9,406
11,415
12,248
14,245
13,876
うち石油製品
1,593
2,226
2,461
2,705
2,705
780
892
1,021
1,072
1,087
うち LNG
3,472
4,787
6,001
7,059
7,849
うち石炭
2,111
2,459
2,314
2,307
2,079
6,635
▲2,565
▲6,927
▲11,469
▲12,787
うち液化石油ガス
貿易収支
資料:財務省「貿易統計」より作成
- 24 -
3.1.2.LNG 火力発電の現状
日本では、昭和 48(1973)年の第一次オイルショックを契機として、原子力発電、
石炭火力発電、LNG 火力発電等の石油代替電源の開発が積極的に進められ、電源の
多様化が図られてきた。
そのうち LNG は、昭和 44(1969)年に米国
アラスカ州から購入が開始されて以
来、安定的かつクリーンなエネルギー源としての特性を活かし、特に環境規制の厳
しい都市圏での大気汚染防止対策上、極めて有効な発電用燃料として位置づけられ、
石油代替エネルギーの重要な柱として、その導入が促進されてきた。
近年は、東日本大震災以降、原子力発電所の稼働停止の影響で、代替電源として
の LNG と石油の占める比率が大幅に増している。
その結果、
平成 25
(2013)年度の発電電力量のシェアは、原子力 1.0%、石油 14.9%、
LNG43.2%、石炭 30.0%、水力 8.5%等となっている(図表 3.5)
。
図表3.5
100 (%) 1.2
1.6
20.1 18.5
80
40
6.5
27.2 27.3
30.9
26.4
78.7
13.2
52.2
42.4
34.0 34.3 30.8 30.5
9.4 7.8
62.1 43.1
9.2
24.8 26.5
17.6
26.4
1.5
20
10.7
16.9
29.3 0.1 57.6
60
電源別発電電力量構成比
5.3
3.9
15.4
1.7 1.0 原子力
LPGほか
18.3 14.9
25.6 26.0 29.3 28.6
石油
12.8
11.8 10.3 6.1 6.4
39.5
42.5
43.2 LNG
29.3
23.7 25.9 27.4 28.3 29.3
21.7 22.2 22.4
30.3
25.6 24.5 25.3 25.2 24.9 25.0 25.0 27.6
4.5 9.8
石炭
9.7 13.7 18.4
24.7 20.3
17.4 13.8
11.9 10.0 9.6 8.2 9.1 7.6 7.8 8.3 8.5 9.0 8.4 8.5
水力
0
55
60
65
70
75
80
85
90
95
00
05
資料:電気事業連合会資料
- 25 -
06
07
08
09
10
11
12
13 (年度)
3.1.3.石油化学産業、コンビナートの現状
a.石油化学産業の生産動向
日本の石油化学産業におけるエチレン生産量は平成 19(2007)年に 774 万トンと
史上最高を記録したものの、それ以降、減少傾向にあり、平成 26(2014)年の生産
量は 665 万トン(生産能力 721 万トン:平成 25(2013)年 12 月時点)となってい
る(図表 3.6)。
図表3.6
8,000
日本のエチレン生産量の推移
千トン
7,739
6,647
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14年
資料:経済産業省「生産動態統計」
そのうち内需は年 500 万トン程度で、過去 20 年はほぼ横ばいの状況にある(図
表 3.7)
。
輸出依存度は上昇し、エチレン換算で輸出量は 200 万トン台に達し、輸出比率は
1990 年代半ば以降 20%から 30%に上昇している。また、エチレン換算の輸入比率
も平成 22(2010)年には平成8(1996)年以来 16 年ぶりに 10%を超えている(図
表 3.7)
。これは、内需の縮小とともに、資源保有国のサウジアラビア、中国をはじ
めとする新興工業国で活発な設備投資がなされた結果である。
- 26 -
図表3.7
千トン
8,000
日本のエチレンの生産量・内需・輸出入量の推移
エチレン生産
内需
輸出
輸入
7,739
7,000
6,647
5,742
6,000
5,188
5,000
4,000
3,000
2,391
2,195
2,000
1,000
737
394
0
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14 年
資料:経済産業省製造産業局化学課資料より作成
今後のエチレン生産は、平成 24(2012)年をベースとしてほぼ横ばい(平成 26
(2014)年をベースにすれば減少)となり、平成 29(2018)年には 606 万トンにな
ると見込まれている。エチレンモノマーの内需も同様に推移するため需給バランス
に大きな変動はない。また、エチレン系誘導品の内需は 494 万トンから横ばいであ
り、エチレン系誘導品の需給バランスにも大きな変動はみられない(図表 3.8)
。
図表3.8
日本のエチレン需給の見通し(エチレン換算・万トン)
実績
項
見通し
伸び率(年率)
目
2012 年
2012 年
2013 年
2014 年
2015 年
2018 年
エチレン生産
615
670
665
619
606
▲0.2%
エチレン系誘導品生産
(エチレンモノマー内需)
569
595
-
571
561
▲0.2%
エチレンモノマーの需給バランス
46
74
-
48
45
-
エチレン系誘導品の内需
494
497
519
500
494
0.0%
エチレン系誘導品の需給バランス
75
98
-
71
67
-
→2018 年
(注)エチレンモノマー(モノマー:単量体、ポリエチレン等)
資料:経済産業省製造産業局化学課(2014.4)「世界の石油化学製品の今後の需給動向」より作成
- 27 -
b.コンビナート統合・再編
前述の状況から、国内の石油化学コンビナートでは、高度統合・連携の動きが進
展してきている(図表 3.9)。
図表3.9
日本の製油所とエチレンプラント
○石油精製
原油処理能力
(千 B/D)
立地
製油所
稼働年
鹿島
鹿島石油(JX グループ)
1970
252.5
能力削減
コスモ石油
1963
240.0
2013/7 被災前水準に回復
極東石油工業合同会社
(東燃グループ)
1968
152.0
コスモ石油千葉と連携,能力削減
出光興産
1963
220.0
富士石油
1968
143.0
JX 日鉱日石エネルギー(根岸)
1964
270.0
東亜石油(昭和シェルグループ)
1955
70.0
東燃ゼネラル石油
1962
268.0
東亜石油と連携,能力削減
コスモ石油
1943
112.0
能力削減
コスモ石油
1968
100.0
能力削減
東燃ゼネラル石油
1965
156.0
能力削減
大阪国際石油精製(JX グループ)
1971
115.0
水島
JX 日鉱日石エネルギー
1961
380.2
坂出
コスモ石油
1972
-
2013/7 停止
周南(徳山)
出光興産
1957
-
2014/3 停止
大分
JX 日鉱日石エネルギー
1964
千葉
川崎
四日市
大阪
合計
136.0
備
考
能力削減
東燃ゼネラルと連携,能力削減
能力削減
能力削減
2,614.7
○石油化学
立地
非定修年
エチレン生産能力
(千トン)
エチレンプラント
稼働年
三菱化学№1
1971
-
三菱化学№2
1992
539
2014 年に 50 千t/年(非定修年)増強予定
丸善石油化学
1969
525
京葉エチレンと一体的に運営
京葉エチレン
1994
768
出資割合:丸善石油化学 55%,住友化学
22.5%,三井化学 22.5%(※2014/6 頃変更予
定)
三井化学
1978
612
出光興産
1985
414
住友化学
1967
-
JX 日鉱日石エネルギー
1970
460
東燃化学
1972
540
四日市
東ソー
1972
527
大阪
大阪石油化学
1970
500
三井化学子会社(100%出資)
一体運営(2011/4~),2016/4 に三菱化学の
エチレンセンターに統合し,旭化成は撤去
鹿島
千葉
川崎
三菱化学
1970
493
旭化成ケミカルズ
1972
-
周南(徳山)
出光興産
1968
689
大分
昭和電工
1977
695
水島
合計
(注)灰色塗りは停止または停止予定。下線は変更後の能力
備
2014/5 に停止予定
一体運営(2010/4~)
2015/5 までに停止予定(当初 2015/9),停止
後京葉エチレンからの取引枠拡大
ナフサ輸入を大ロット化
6,762
資料:日本政策投資銀行(2014.4)「製油所とエチレンプラントの連携強化」
- 28 -
考
国内コンビナートでは国際競争力強化に向けて、平成 12(2000)年からコンビナ
ート企業間における共同事業が RING(石油コンビナート高度統合運営技術研究組合)
事業として進められてきた。
さらに、平成 26(2014)年度からは、石油産業構造改善事業としてコンビナート
内に止まらず内外も含めた複数事業者間での設備最適化を行うことが目指されて
いる。
また、国は、平成 26(2014)年に、事業者による事業再編の実施の円滑化のため、
産業競争力強化法第 50 条に基づく石油精製業、石油化学産業に関する市場調査を
実施した。その中では、「資本の壁」や「地理的な壁」を超えた事業再編、生産設
備集約、再編による生産効率の向上等が提言されている。
- 29 -
3.2.シェールガス革命等による影響
3.2.1.シェールガス革命の各産業への影響
a.エネルギー産業等への影響
(a)ガス・電力会社の取組み
シェールガスに関連しては、LPG やコンデンセートが既に輸入されているが、ガ
ス・電力会社は LNG 輸入を目指して、米国における LNG 化のプロジェクトへの参画
や商社等と LNG 購入の契約を締結などにより、2016 年には輸入が開始される見通し
となっている(図表 3.10)。
現在、高価格で LNG を輸入している日本にとって、シェールガスを米国市場価格
に連動し調達することにより、天然ガスの調達コストの低下に繋がることが期待さ
れる。また一部のガス・電力会社には調達コストの低下・安定供給のため、海外の
開発プロジェクトに参画して権益を確保していくなど、攻めの姿勢が見られる。
図表3.10
企業名
東北
電力
東京
電力
東京
ガス
ガス・電力会社のシェールガス調達予定
内
容
米国キャメロンプロジェクトからの LNG の購入に関
して、GDF スエズと売買契約を締結。HH 価格リンク
(2014 年 5 月)。
米国キャメロンプロジェクトからの LNG の購入に関
して、三菱商事と売買契約を締結。HH 価格リンク
(2014 年 4 月)。
アストモスエネルギーより米国産シェールガス由
来の LPG 納入(2014 年 1 月)。
米国キャメロンプロジェクトからの LNG の購入に関
して、三井物産と売買契約を締結。HH 価格リンク
(2013 年 2 月)。
米国キャメロンプロジェクトからの LNG の購入に関
して、三菱商事と売買契約を締結。HH 価格リンク
(2013 年 2 月)。
BP子会社よりシェールガスなど熱量が低い軽質
ガスを調達。一部 HH 価格リンク(2014 年 9 月)。
米国バーネット堆積盆におけるシェールガス開発
事業への事業参加(2013 年 3 月)。
アストモスエネルギーより米国産シェールガス由
来の LPG 納入(2014 年 1 月)。
米国コーブポイントプロジェクトからの LNG の購入
に関して、住友商事(2014 年 4 月に住友商事との共
同事業会社に変更)と売買契約を締結。HH 価格リン
ク(2013 年 4 月)
米国キャメロンプロジェクトからの LNG の購入に関
して、三井物産と売買契約を締結。HH 価格リンク
(2014 年 7 月)。
- 30 -
輸入量
時
期
27 万トン/年
2018 年
~20 年間
30 万トン/年
2022 年
~16 年間
計 20 万トン
2014 年~
2015 年
40 万トン/年
2017 年
~20 年間
40 万トン/年
→
80 万トン/年
(軽質ガス)
60 万~
120 万トン/年
2017 年
~20 年間
2017 年
~17 年間
-
-
計 40 万トン
2014 年~
2018 年
140 万トン/年
2017 年
~20 年間
52 万トン/年
2020 年
~20 年間
図表3.10
企業名
中部
電力
東邦
ガス
関西
電力
大阪
ガス
ガス・電力会社のシェールガス調達予定(続)
内
容
米国サビンパースプロジェクトからの LNG の購入に
関して、米シェニエール・エナジーと売買契約を締
結(2014 年 8 月)。
米国フリーポートプロジェクトへ直接投資 (2012
年 7 月)。
米国キャメロンプロジェクトからの LNG の購入に関
して、三井物産と売買契約を締結。HH 価格リンク
(2014 年 1 月)。
米国サビンパースプロジェクトからの LNG の購入に
関して、米シェニエール・エナジーと売買契約を締
結 (2014 年 6 月)。
米国コーブポイントプロジェクトからの LNG の購入
に関して、住友商事と売買契約を締結。HH 価格リン
ク(2013 年 4 月)。
米国キャメロンプロジェクトからの LNG の購入に関
して、三井物産と売買契約を締結。HH 価格リンク
(2014 年 4 月)。
米国イーグルフォード地区におけるシェールガス
開発事業への事業参加(2012 年 6 月)。
米国フリーポートプロジェクトへ直接投資(2012 年
7 月)。
輸入量
時
期
計 70 万トン
2016 年 7 月
~
2018 年 1 月
220 万トン/年
2018 年~
30 万トン/年
2017 年
~20 年間
40 万トン/年
2016 年前半
~2 年間
80 万トン/年
2017 年
~20 年間
40 万トン/年
2017 年後半
~20 年間
-
-
220 万トン/年
2018 年~
資料:報道資料、新聞情報より作成
ちなみに現在、電力・ガス会社で調達予定が公表されているシェールガスの調達
量は、各社の LNG 全体の輸入量の 10~20%程度であり、調達量は、長期契約の場合、
30 万トン/年からである。この条件を満たす企業はさほど多くなく、図表 3.10 に
記載しているガス・電力会社以外で該当するのは九州電力、中国電力の2社である。
- 31 -
(b)港湾インフラ等への影響
ア.LNG の輸送動向
LNG の輸送に関連しては、2000 年以降、増加傾向にあり、船型も世界的に大型化
の傾向にある。従来、80,000 から 100,000GT※クラスが主流であったが、近年、世
界的に LNG 運搬の標準的な船型は、100,000 から 120,000GT(喫水 11~13m、船幅
40~50m、船長 260~300m程度)クラスに主流が移行しつつあり(図表 3.11)
、LNG
取扱港湾には、これに対応した水深の航路などが求められる(図表 3.12)
。
現在、世界最大の LNG 船は、Q-MAX と呼ばれ、約 160,000GT(喫水 13.7m、船幅
55.0m 船長 345m、積載容量 26 万 m3)となっており、日本にも入港している。
図表3.11
隻
350
世界の LNG 運搬船の動向
14万~16万GT
12万~14万GT
8万~10万GT
~8万GT
10万~12万GT
300
250
200
150
100
50
0
2000
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
年
11
資料:CLARKSON「LNG Trade and Transport」より作成
図表3.12
LNG船の標準船型
総トン数
GT トン
LNG 積載量
全長
(m)
型幅
(m)
満載喫水
(m)
20,000
1~2 万 m3 級
174
27.8
8.4
30,000
4~5 万 m3 級
199
31.4
9.2
50,000
7~8 万 m3 級
235
36.7
10.4
3
80,000
12 万 m 級
274
42.4
11.5
100,000
13~15 万 m3 級
294
45.4
12.1
Q-MAX
26 万 m3 級
345
55.0
13.7
資料:社団法人日本港湾協会(2007)「港湾の施設の技術上の基準・同解説」
※
総トン数(グロストン)~船舶の大きさを示すのに用いる指標
- 32 -
イ.シェールガスの輸送とパナマ運河
現在、米国において日本企業が参加しているプロジェクト(フリーポート、フリ
ーポート拡張、コーブポイント、キャメロン)全てについて、米国エネルギー省か
らの輸出許可が出ており、平成 29(2017)年頃より日本への輸出が開始される予定
である。
これらのプロジェクトの天然ガスを時間・コストを最小化して日本へ輸送するた
めには、LNG 船がパナマ運河を通航する必要があるが、現在のパナマ運河の幅では
大型の LNG 船の通航に対応できない。そこで、平成 27(2015)年末完成を目指して
新設工事中のパナマ運河第三閘門により通航ができるようになる。
拡張後に通航可能な最大船幅は 49mとなる(図表 3.13)
。その結果、標準的な LNG
船を上回る搭載量 165,000m3~180,000 m3 クラスの通行が可能となり、平成 29(2017)
年頃の日本への輸送を見越して、既に日本の造船メーカーに同クラスでの LNG 運搬
船の発注がなされている。
図表3.13
航行可能な
最大船型
パナマ運河の航行可能船舶
現 在
パナマックス
新運河
ポストパナマックス
船
長
294.1m
366m
船
幅
32.3m
49m
喫
水
12.04m
15.2m
資料:国土交通省資料
- 33 -
b.石油化学産業への影響
シェールガスの増産はエタン等の石油化学原料の増産により、米国の石油化学企
業の原料コストの低減という恩恵をもたらしている。シェールガス革命後の米国の
生産コストは革命前と比較して著しく低下しており、石油大国サウジアラビアを下
回るというデータもある(図表 3.14)
。
図表3.14
地域別にみた石油化学製品の生産コスト
346
米国
(シェールガス革命後)
エチレングリコール
高密度ポリエチレン
エチレン
542
323
540
サウジアラビア
713
466
1,419
アジア
2,079
1,760
996
参考:米国
(シェールガス革命前)
1,304
1,009
(ドル/トン)
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
資料:PwC(2012.10)「Shale Gas Reshaping the US chemical industry」
このような外部環境の好転を受け、米国では、化学プラントの設備増強が多く計
画されている(図表 3.15)。
図表3.15
年
2012
2013
2014
2016
企業名
エチレン(KTA)
エタン(KBD)
BASF/FINA
300
18.8
米国テキサス州
Westlake
Dow(restart)
105
390
6.6
24.4
米国ルイジアナ州
米国ルイジアナ州
Equistar
Williams
225
275
14.1
17.2
米国テキサス州
米国ルイジアナ州
Ineos
Equistar
115
45
7.2
2.8
米国テキサス州
米国イリノイ州
Westlake
Equistar
110
385
6.9
24.2
米国ルイジアナ州
米国テキサス州
Dow
Dow
500
700
32
43
米国ルイジアナ州
米国テキサス州
Formosa
Oxy
800
550
50
34.4
米国テキサス州
米国テキサス州
250
1,500
15.6
94
カナダ
米国テキサス州
1,200?
1,000~1,400
75
63~87
Nova
Chevron Phillips
2017
北米の新規増設エタンクラッカー計画
Dow
Sasol
場所
米国テキサス州
米国ルイジアナ州
(注)KTA:1,000 トン/ 年、KBD:1,000 バレル/ 日
資料:伊原賢(2014.4)「シェールガス革命が日本の石油化学産業に及ぼす変革」
- 34 -
このため、将来、エチレン系誘導品では低コストのエチレンを通じて、原料価格
が低下し、国際競争が激しくなることが予想される。エチレン系誘導品のうち、汎
用品は国内プラントよりも大規模で生産効率のよい海外プラントでの生産が主流
になると考えられる。
また、化学原料が天然ガスに移行することにより、新たな課題も発生している。
例えば、従来ナフサから生産されていたブタジエン、ベンゼンなどは、エタンから
は直接生産できない。ナフサクラッカーを代替する形でエタンクラッカーが拡大す
れば、これらの原料の供給力低下による価格上昇が懸念される(図表 3.16)。
図表3.16
日本の石油化学産業への影響
資料:石油化学工業協会(2013.5)
「シェールガスが我が国石油化学産業に及ぼす影響に関する調査研究
結果について」
また、メタンを利用したメタノールに関しても投資計画が相次いでいる(図表
3.17)
。現在、米国のメタノール需要の多くは中南米の天然ガス由来のメタノール
で賄われているが、新規プラントの建設、中南米のプラントの米国国内への移転、
停止していた設備を再稼働等により、北米の供給量は平成 28(2016)年には、米国
の内需を賄う水準に達する。さらに、平成 28(2016)年以降も新たに稼働を予定す
図表3.17
時 期
企業名
米国のメタノールプラント計画
万トン/年
天然ガス消費量
場
所
(MMBtu/日)
2012
オラスコム
75
71,918
米国テキサス州
2013
ライオンデルバセル
78
74,795
米国ルイジアナ州
2014
メタネックス
85
81,507
米国ルイジアナ州
セラニーズ
130
124,658
米国オクラホマ州
メタネックス
88.8
85,103
米国ルイジアナ州
2015
資料:各社資料等より作成
- 35 -
る計画がある。メタン系ではこのほか、窒素肥料用のアンモニア・尿素計画などが
浮上している。
このような状況で、日本企業がシェールガスのメリットを享受する方法としては
米国に生産拠点を置き、シェールガス原料を使用することも考えられる。例えば、
信越化学工業はガス価格下落で、既存の塩化ビニール樹脂の米生産子会社(シンテ
ック社)の利益が急拡大し、塩化ビニール樹脂の設備増強を行うとともに、エチレ
ン工場の新設も予定している。こうした動きは他の化学メーカーにも広がりをみせ
ている(図表 3.18)。
図表3.18
主な日本企業の北米での化学関連投資
(単位:万トン、億ドル)
企業名
立地先
製
品
生産能力
開始年
投資金額
クラレ
テキサス州
PVA 樹脂
4
2014
2
日本合成化学工業
テキサス州
PVA フィルム
1.5
2014
1.5
ルイジアナ州
塩化ビニール等
80
2015
5
ルイジアナ州
エチレン
50
-
-
テキサス州
アクリル樹脂原料
25
2017
5
備
考
デュポンからビニル
アセテート事業を買
収
信越化学工業
三菱ケミカルホー
ルディングス
資料:各社資料等から作成
- 36 -
投資判断検討中
c.一般製造業のビジネスチャンス
シェールガスの生産本格化に伴い、インフラなどの需要が生じており、また事業
展開先として米国の魅力が高まっている。
まず、北米のリグで使用される掘削用機材・部材、プラント建設等に使用される
部材メーカーなどへの需要増加が見込まれる(図表 3.19)
。
図表3.19
区
分
天然ガス関連インフラの投資予測(単位:10 億ドル)
年平均
平成 23(2011)-平成 32(2020)年
平成 23(2011)-平成 47(2035)年
46.2
14.0
97.9
29.8
額
3.9
1.2
16.3
5.6
3.6
12.4
41.7
9.1
4.8
22.1
1.7
0.3
0.2
0.9
輸送幹線
直接供給用支線
井戸元の回収線
コンプレッサー
貯蔵設備
精製設備
合計
98.1
205.2
8.2
資料:INGAA(2011.6)「North American Natural Gas Midstream Infrastructure Through 2035: A Secure
Energy Future」
また、海上輸送のためには LNG タンカーが必要であり、造船企業への発注が活発
化している。さらに、シェールガスを日本に輸送するための現地における LNG 化プ
ラントの建設があり、関連する企業では米国進出を進めている。
さらに、最近ではシェールガス革命に対して、環境保護や安全安心の確保を強め
る規制の動きがある。シェールガス革命の進行で地下水の汚染などの問題が発生し
ている。これらの問題に対するソリューション提供が求められており、排水処理や
掘削用プロパントの分野において高い知見を有する日本企業のビジネスチャンス
となっている(図表 3.20)。
図表3.20
分野
企
業
新日鐵住金
JFE スチール
極東貿易
品目
小口径シームレスパイプ
掘削用機器
本社所在地
東京都千代田区
東京都千代田区
名古屋市中村区
オークマ
愛知県丹羽郡大口町
キタムラ機械
備考
東京都千代田区
森精機製作所
中村留精密工業
シェ
ール
採掘
シェールガスに関連する日本企業
掘削ドリル等の加工機械
富山県高岡市
石川県白山市
牧野フライス製作所
東京都目黒区
滝沢鉄工所
小松製作所
日立建機
ブリジストン
タダノ
建設機械用タイヤ
建設用クレーン
岡山市北区
東京都港区
東京都文京区
東京都中央区
香川県高松市
巴工業
ガスと土砂を分離する遠心分離機
東京都品川区
デンヨー
可搬式発電機
東京都中央区
建設機械
- 37 -
道路整備
超大型タイヤ
図表3.20
企
分野
業
浜松ホトニクス
クレハ
シェ
ール
採掘
シェ
ール
ガス
輸送
住友ベークライト
新東工業
三菱化学
太陽日酸
オルガノ
栗田工業
三機工業
JFE スチール
丸一鋼管
東レ
帝人
東邦テナックス
三菱レイヨン
IHI
日揮
天然
ガス
液化
関連
千代田化工
荏原製作所
日機装
荏原エリオット
三菱重工業コンプレッサ
横河電機
廃水処理
パイプライン用の鋼管
本社所在地
静岡県浜松市
東京都中央区
フェノール樹脂
名古屋市中区
東京都千代田区
東京都品川区
東京都江東区
東京都中野区
東京都中央区
東京都千代田区
フラッグサンド製造装置
輸送用の天然ガス圧力容器
大阪市西区
東京都中央区
大阪市中央区
東京都文京区
東京都千代田区
東京都江東区
液化天然ガスプラント
横浜市西区
超低温ポンプ
横浜市西区
東京都大田区
東京都渋谷区
千葉県袖ヶ浦市
コンプレッサー
広島県広島市
LNG プラント向け制御機器
東京都武蔵野市
東京都港区
LNG タンク
東京都中央区
東京都江東区
住友精密工業
兵庫県尼崎市
LNG 気化装置
神戸市中央区
川崎重工業
東京都港区
三菱重工業
東京都港区
川崎重工業
東京都港区
三井造船
LNG 運搬船
東京都中央区
ジャパンマリンユナイティッド
東京都港区
今治造船
愛媛県今治市
UACJ
LNG 運搬船用鋼板
東京都千代田区
三菱重工業
ガスタービン
東京都港区
三井造船
化学プラント
東京都中央区
東洋エンジニアリング
化学、肥料プラント
千葉県習志野市
クボタ
化学プラント用部品
大阪市浪速区
帝国電機製作所
化学プラント用ポンプ
兵庫県たつの市
森松工業
化学プラント部品(リアクターなど)
岐阜県本巣市
日立造船
化学プラント部品(反応器)
大阪市住之江区
神戸製鋼所
製鉄プラント
神戸市中央区
資料:証券会社 HP、企業 HP などを基に作成
- 38 -
備考
光電子倍増管
ポリグリコール
酸樹脂
東京都品川区
トーヨーカネツ
神戸製鋼所
その
他
品目
地層測定機
掘削機械の樹脂材料
逸泥防止の目止め材
掘削機械の樹脂材料
支持材のコーティング材料
支持材を樹脂コートする機械
亀裂の仮止め材
水圧破砕時に使用される窒素
川崎重工業
石井鐵工所
天然
ガス
運搬
関連
シェールガスに関連する日本企業(続き)
コハク酸樹脂
水処理技術
炭素繊維
クライオジェニ
ックポンプ
3.2.2.原油価格下落によるシェールガス革命への影響
a.価格・生産量の今後の見通し
(a)原油
最新の価格・生産量等の見通しである EIA(米エネルギー情報局)の Short-term
Energy Outlook(平成 27(2015)年3月)では、原油価格(WTI)は平成 27(2015)
年第1四半期には$47.93/bbl と前年の$90~$100/bbl 台から大幅に下落するものの、
それ以降平成 28(2016)年第3四半期まで回復基調をたどり、$70/bbl 台まで持ち
直すこととしている。
一方、米国における原油生産量は平成 27(2015)年前半まで増加傾向をたどり、
平成 27(2015)年後半は一次的に減少するものの、平成 28(2016)年には回復基
調が続き、昭和 45(1970)年に次ぐ史上2番目の生産量となるものと見込んでいる
(図表 3.21)。
ただし、価格については「不確実性が非常に高まっている(very high uncertainty
in the price outlook)
」とのコメントが付記されている。
図表3.21
Mbbl/d
米国の原油生産量・価格の推移
生産量(左軸)
$/bbl
価格(右軸)
11
110
103.35
98.75
100
97.78
10
9.70
9.11
9
8.59
9.35
9.44
9.27
9.34
9.35
9.44
71.00
71.67
67.00
73.16
70
70.33
60.67
8
60
53.00
47.00
7
90
80
8.79
8.11
9.45
50
47.93
40
6
30
Q1
2014
Q2
Q3
Q4
Q1
15
Q2
Q3
Q4
Q1
16
Q2
Q3
Q4
資料:EIA(2015.3)「Short-Term Energy Outlook」
(b)天然ガス
天然ガス価格については、下落率は原油ほど大きくないものの、同じく 2014 年
平均の$4.39/MBtu から平成 27(2015)年には$3.07/MBtu となる。生産量について
は今までの増加ペースが減速するものの、平成 27(2015)年後半以降、年率2~3%
程度の緩やかな増加傾向をたどると見込んでいる(図表 3.22)
。
- 39 -
図表3.22
bcf/d
米国の天然ガス生産量・価格の推移
生産量(左軸)
$/Mbtu
価格(右軸)
80
75
6
5.21
73.18
4.61
73.30
73.84
74.04
74.41
75.14
75.16
75.28
75.93
5
71.30
69.33
70
67.84
4
3.96
3.80
65
2.92
2.93
Q1
15
Q2
3.31
3.13
3.45
3.53
3.65
3
3.27
60
2
Q1
2014
Q2
Q3
Q4
Q3
Q4
Q1
16
Q2
Q3
Q4
資料:EIA(2015.3)「Short-Term Energy Outlook」
(c)見通しの変更点
原油価格下落の影響を確認するため、昨年春公表された EIA の Annual Energy
Outlook(以下「AEO2014」、図表 2.5、図表 2.8)と上述の平成 27(2015)年3月の
Short-term Energy Outlook(以下「STEO 2015 Mar」
)との比較を行う(図表 3.23)
。
図表3.23
①原
米国のエネルギー見通し
油
②天然ガス
STEO2015 Mar(生産量:左軸)
AEO2014(生産量:左軸)
STEO2015 Mar(価格:右軸)
AEO2014(価格:右軸)
Mbbl/d
11
STEO2015 Mar(生産量:左軸)
STEO2015 Mar(価格:右軸)
$/bbl
110
75
AEO2014(生産量:左軸)
AEO2014(価格:右軸)
$/Mbtu
6
bcf/d
100
10
5
90
70
80
9
4
70
8
60
65
3
50
7
40
6
30
2013
14
15
16
60
年
2
2013
14
15
資料:EIA(2014)「Annual Energy Outlook 2014」and(2015.3)「Short-Term Energy Outlook」
- 40 -
16
年
原油の見通しについては、平成 27(2015)年から平成 28(2016)年に価格面に
おいて$90/bbl 台から$50~$70/bbl に下方修正されているものの、生産量に大きな
変更はない。
天然ガスの見通しについては、平成 27(2015)年から平成 28(2016)年の価格
については$3~$3.5/Mbtu 程度と下方修正されているものの、生産量については足
下の平成 26(2014)年の伸びが予測より大きかったことがあり、その後も AEO2014
における生産量を上回って推移すると見込んでいる。
b.原油価格とリグ数
原油価格の下落がシェールガス・オイルの採掘へ及ぼす影響を確認するため、シ
ェールオイルの採算コスト(break even cost)のデータをみる。IEA(International
Energy Agency:国際エネルギー機関)のデータによれば$40/bbl から$60/bbl で
ある事業者が最も多く、原油価格が長期的にこの価格を下回るようであればシェー
ルオイル開発に影響を及ぼすこととなる(図表 3.24)
。
図表3.24
(%)
$100以上
米国のシェールオイルの採算コスト
$80-100
$60-80
$40-60
$40以下
100
80
60
40
20
0
2013
14
15
16
17
18
19 (年)
資料:IEA(2014)「MTOMR2014(IEA 中期オイル・マーケット・レポート)」
また、調査会社の“Rystad Energy research and analysis”によれば、シェー
ルガスの生産コストは、「①生産地域や生産者によって大きく異なる」、「②時間の
経過とともに変化していること」等から正確な把握は難しいとしている。ただし、
割引率 10%で正味現在価値がゼロとなる WTI 価格は 40~80 ドルであり、シェール
層によってバラつきはあるものの、主要なシェール層である Bakken、Eagle Ford
における当該 WTI は 60 ドルを下回るとのデータが提示されている。
- 41 -
図表3.25
原油価格とリグ数の推移(週足)
石油リグ数(左軸)
本
WTI(右軸)
$
1700
110
1600
100
1500
90
1400
80
1300
70
1200
60
1100
50
1000
900
40
2012
13
14
15
年
資料:Baker Hughes「North America Rotary Rig Count」および EIA データより作成
過去の石油のリグ数の推移をみると、原油価格の下落に合わせ、平成 26(2014)
年 10 月をピークに減少傾向にある。ここ数年、石油のリグ数は原油価格の変動か
ら4~6月遅れで変動する傾向にあり、今後更なる減少の可能性がある(図表 3.25)
。
c.米国経済への影響
足下での米国経済への影響については、現時点では統計データ等では把握しづら
いため、直近の「地区連銀経済報告(ベージュブック)※」
〔平成 27(2015)年1月
公表〕による(図表 3.26)。足下の原油生産およびそれに付随する経済活動につい
ては主要なシェール層を抱える、ダラス地区、カンザスシティ地区、ミネアポリス
地区等で減速を示す記述がみられる。何れも減速度合いは軽微と推測される内容で
はあるが、ダラス地区では雇用、商業用不動産、金融等やや幅広い分野での減速と
のコメントがみられる。
先行きについては、原油価格の動向次第では生産・採掘活動の更なる減速を示唆
する記述もあり、先行きの不確実性の高さをうかがわせる。
※
アメリカにある 12 の地区の連邦準備銀行が、それぞれ管轄する地区の経済状況をまとめたもの。表
紙の色がベージュ色であることから、ベージュブックとも呼ばれる。地区のビジネス関係者等のイン
タビュー調査を含むもの。
- 42 -
図表3.26
米国
地区連銀経済報告の原油生産関連のコメント
〔平成 27(2015)年 1 月〕
連銀区域内にある
主な鉱区
報告連
銀
Eagle Ford、
ダラス
Permian
Bakken
ミネアポリ
ス
クリーブラ
内
容
油田サービス需要はやや減少。減少は Permian に集中。
エネルギー企業数社は、新規採用停止とレイオフを実施
オフィスリースは堅調だが、若干の需要減。(不動産)投資家は原油
価格の急落で、様子見姿勢。
石油・ガス産業と取引の多い地域金融起案は、資金需要の減速の兆し
を感じつつある
価格下落を受け、エネルギーセクターは僅かに減速。12 月後半のノ
ースダコタ州とモンタナ州における原油・貸す採掘は 12 月前半に比
べて減少
しかし、ある企業はノースダコタ州に4つのディーゼルと天然ガスの
処理プラント新設を発表
原油価格の下落は、ノースダコタ州とモンタナ州のエネルギー生産地
域において、全般に雇用の減速をもたらした。ただし、雇用環境は依
然タイト
Marcellus、Utica での活動は高水準を維持。
原油と天然ガス価格の持続的な下落は、採掘と生産に下方リスクをも
たらすかもしれない。また、雇用や賃金にどのような短期的影響を及
ぼすか不明確
探鉱企業と生産企業はガルフ・コースト一帯とルイジアナ州で 2015
-
アトランタ 年も採掘活動を続ける計画を共有しているが、より注意深く計画に取
り組みたい意向
エネルギー産業は堅調。石油・ガス生産への投入需要は、原油価格下
落前に開始されたプロジェクトに牽引され強い
-
シカゴ
「価格」と「生産」の典型的なラグを踏まえれば、2015 年第 2 四半
期には石油・ガス生産の減速が始まる
資料:FRB(2015.1)「Summary of Commentary on Current Economic Conditions by Federal Reserve
District」
Marcellus、Utica
ンド
歴史的にも、原油価格が同様に下落した昭和 61(1986)年の逆オイルショック時
には、その影響がエネルギー部門に留まらず、商業用不動産不況へと波及し、S&L
(貯蓄貸付組合)の破綻等の金融危機にまで発展した。
現在の原油価格の低下が一次的なものかトレンドか、また、エネルギー部門に留
まるか他部門に波及するか、シェールガス革命等を背景とした米国経済の好調さが
世界経済の牽引役となっていることもあり、今後の動向への注視が必要である。
- 43 -
d.原油価格の下落とシェールガス革命への影響
シェールガス革命を支える原動力は、同じ一次エネルギーでありながら、安価な
天然ガスと高いオイルが両立していることにある。今後、原油価格が継続的に下落
すれば、シェールガス革命が生み出す富は減少し、シェールガス、シェールオイル
の生産にも影響を及ぼすこととなる。以下、原油価格の下落とシェールガス革命へ
の影響について産業別に概観する。
ア.エネルギー産業
現在、米国における天然ガスの価格は$4/Mbtu 前後で推移しているが、この価格
を原油価格に換算すると$24/bbl 程度である。足下での原油価格の下落は石油と天
然ガスとの価格差を縮小させ、天然ガスへのシフトの流れを減速させる可能性があ
る。
さらに、日本にとって重要なのは、中東、東南アジア等から輸入される LNG 価格
の多くは原油価格〔JCC(Japan Crude Cocktail:全日本輸入原油平均 CIF 価格)
〕
連動であるため、原油価格が下落すれば当該地域からの LNG 価格が下落することと
なる。その結果、シェールガス由来の LNG との価格差が縮小し、シェールガスのメ
リットが薄れることにより、日本におけるシェールガス革命に対する“熱”が一時
的に冷める可能性もある。
原油価格の下落に伴う上流権益の資産価値の低下による減損処理の動きもある
が、長期的には新たな取得費用の低減に繋がる好機ともいえ、引き続きリスクを勘
案しつつ、LNG 調達先の多様化や上流権益確保への取組みを進める必要があると考
えられる。
イ.石油化学産業
米国の化学産業においては、入口(原料)であるエタン価格は概ね天然ガス価格
に連動して動き、出口(製品)の化学製品市場は概ね石油価格に連動して動く傾向
があることが旨味であった。
原油価格の下落により、この入口と出口の差(スプレッド)が小さくなれば、収
益性の低下につながり、米国で予定されているエチレンプラントの建設計画が一次
凍結または中止される可能性もある。そのような場合、シェールガス革命の国内石
油化学産業への影響は減殺されることとなる。
また、現在のリグは石油狙いが多く、随伴してガスが発生するというケースも多
いため、中長期的にシェールオイル(ガス)開発が停滞するようであれば、エタン
供給がタイトとなり、米国の化学産業に原料供給面での影響を及ぼすこととなる。
一方で、天然ガス価格およびそれに連動するエタン価格が引き続き低位で推移す
るようであれば、米国のエタンクラッカーの国際的な競争力は維持されることとな
- 44 -
り、長期的な視点から、ポリエチレンや塩化ビニル樹脂等の誘導品の競争力強化策
として有効であると考えられる。このような誘導品プラントは原油価格の動向を注
視しながら着工の時期を計っていくとの新聞報道もなされている。
ウ.一般製造業
原油価格の下落は掘削業者の採算性を悪化させ、リグ数の減少につながり、シー
ムレスパイプ、掘削用機器、プロパント等のシェールガス採掘関連分野に直接的に
波及することとなる。さらに生産量が減少すれば、投資規模の大きいパイプライン、
圧力容器等の輸送設備、貯蔵設備のインフラ整備にまで影響が拡大する。
また、「ア.エネルギー産業」、「イ.石油化学産業」に記述したように LNG 輸出
や化学分野まで波及がみられるようであれば天然ガス液化関連メーカーや化学プ
ラント関連メーカーまで影響が及ぶこととなる。
- 45 -
3.3.シェールガス革命と企業動向(他地域ヒアリング調査)
3.3.1.他地域ヒアリング調査の概要
他地域ヒアリング調査に関しては、シェールガス革命の影響を把握するための
「①シェールガス革命の影響に関するヒアリング」とコンビナート競争力強化の方
向性として必要性の認識が浸透してきている「②コンビナートにおける企業間連携
に関するヒアリング」を実施した。
3.3.2.シェールガス革命による影響に関するヒアリング調査
a.ヒアリング調査訪問先
シェールガス革命の産業界(エネルギー産業・石油化学産業・一般製造業)への
影響を全般的に把握するため、業界団体およびアナリストに対し、ヒアリング調査
を実施した(図表 3.27
訪問先 No.1~4)
。
さらに、シェールガスに関連して事業として取組みの見られる企業および影響を
受けるであろう企業(図表 3.27
No.5~8)、また、コンビナートに関連して支援
活動を行っている行政・支援機関(図表 3.27
No.9~10)を訪問し、ヒアリング
調査を実施した。ヒアリング調査の実施期間は平成 26(2014)年6月~8月、訪問
先は計 10 先である。
図表3.27
シェールガス革命の影響に関するヒアリング調査
No.
訪問先
訪問先
主な事業概要
調査研究機関
1
独立行政法人
2
公益法人
B法人
石油等の技術開発、調査研究
3
公益法人
C法人
電力関連の調査、試験
4
金融
D銀行
金融機関(融資業務,投資業務,その他業務)
A法人
石油・天然ガス関連の技術開発
シェールガス関連企業
5
商社
E社
総合商社(鉄鋼製品、金属資源、プロジェクト、機械・
輸送システム、化学品、エネルギー等)
6
エネルギー
F社
石油事業,エネルギーソリューション事業等
7
エネルギー
G社
石油事業等
8
造船
H社
船舶,浮体式石油貯蔵施設等の設計,製造
行政機関・支援機関
9※
川崎市経済労働局 国際経済推進室
行政機関(コンビナート支援)
10※
石油コンビナート高度統合運営技
術研究組(RING)
石油コンビナート高度統合運営技術に関す
る試験研究、技術向上、実用化
(注)No.9.10.に関してはコンビナートにおける企業間連携に関するヒアリングと併せて実施
- 46 -
b.ヒアリング調査項目
各訪問先への主なヒアリング項目は図表 3.28 のとおりである。
図表3.28
○動
シェールガス革命の影響に関するヒアリング調査
向
(a)価格・生産・輸出等の動向・見通し
○シェールガス革命の影響と対応
(b)エネルギー産業
(c、d)石油化学産業
(e)一般製造業
○支援策
(f)産学官連携等による支援
(g)特記事項(中国地域に関連したコメント等)
- 47 -
主なヒアリング項目
c.調査結果
(a)天然ガス・石油の価格・生産・輸出等の動向
・シェールガス由来の LNG の日本への輸入予定量(輸入量全体の十数%程度)か
ら、調達価格にある程度の影響を及ぼす。また、調達先および調達価格(米国
ガス価格連動)の多様化により価格牽制効果が働くことが期待される。
図表3.29
区分
世
界
米
天
然
国
ガ
ス
日
本
欧
州
世
石
油
界
米
天然ガス・石油の価格・生産・輸出等の動向
内
容
〔価格〕
・アジア、欧州、北米の天然ガス価格差は際立つ。(3.公益法人 C 法人)
・日本が$16/MMBTU で米国$4/MMBTU 程度。日本に輸出する場合には液化費用、輸送費
用を加えると$10 程度。欧州向けはもう少し輸出費用が安くなる。
(8.造船 H 社)
・
(シェールガスの価格は)石炭価格等の他の石化資源との競合度合による。
(6.エネ
ルギー F 社)
〔生産量〕
・2012→2013 年の増産量は世界3位。2017 年頃から米国が純輸出国になると想定
されている。(2.公益法人 B 法人)
・2012 年→2014 年で 56%増加。要因はシェールガス生産の増加であり、2018 年頃
には純輸入国→純輸出国に転ずる。輸出先は極東、欧州。(8.造船 H 社)
・年々、生産シナリオの上方修正が続く。(3.公益法人 C 法人)
・2012 年に 9.7Tcf(兆立方フィート)、2040 年には 19.8Tcf に増加し、ガス生産量
に占める割合も 40%から 53%に伸長。(5.商社 E 社)
・高く売れればいくらでもガスは出てくる。(6.エネルギー F 社)
〔価格〕
・シナリオは複数あるが LNG 調達価格は全体で 7~15%程度低減が見込まれる。
(4.
金融 D 社)
・多様な調達先を持つことによる牽制機能、油価リンクから HH 価格リンク、LNG
調達ソースを変える調達価格の分散・多様化は重要。(5.商社 E 社)
〔輸入量〕
・2014 年 7 月時点で合計 1,500 万トン/年が確定。(2.公益法人 B 法人)
・シェールガスに関連して公表ベースの米国からの LNG 輸入合計量は、国内 LNG 需
要の 12%程度を占める。(5.商社 E 社)
〔価格〕
・石油価格準拠の合理性が失われる。(1.独立行政法人 A 法人)
〔生産〕
・シェールオイルは API 比重 39~40 と超軽質。世界的に軽質油の需給が緩み、重
質油がタイトに。(10.RING)
〔生産〕
・2012→2013 年の石油増産量は世界最大。2040 年時点で内需の3割程度の輸入が
残ると見込むが、現状はそれを上回るペースで増産。(2.公益法人 B 法人)
〔輸出〕
国 ・アジアでの需要の高まりを受け、原油輸出をいずれ解禁するのではないか。(6.エ
ネルギー F 社)
- 48 -
(b)シェールガス革命の影響と対応(エネルギー産業等)
〔燃料代替〕
・シェール由来の石油、LNG、LPG のみならず、石炭、水素、再生可能エネルギ
ーを含めたエネルギー市場・エネルギー政策全般に影響を与える。
・LPG、LNG の価格低減効果をエネルギー利用者全般に広げるための取組み、イ
ンフラ整備等が期待されている。
図表3.30
シェールガス革命の影響と対応(エネルギー産業等)
区分
内
容
〔全般〕
世 ・シェールガスはエネルギーに関する将来の見通しを不確実にする一要素。将来のエネル
ギーに関連したシナリオが2つあり、体制維持的なシナリオでは天然ガス利用が中心と
なり、体制改革的なシナリオでは天然ガスの利用も伸び悩み、再生可能エネルギーが中
心に。(6.エネルギー F 社)
〔石炭〕
界
・米国の余った石炭が東海岸から欧州に輸出されるので、世界全体では CO2 削減の効果は
ない。西海岸に港湾が整備されれば、アジアにも米国炭が輸出される可能性。
(3.公益法
人 C 法人)
〔石油〕
・原油の輸出が原則不可能であることが、米国の石油精製会社にとって石油製品輸出増加
のインセンティブとして働く。メキシコ湾岸から直にアクセスできる大西洋市場への輸
出が盛ん。(2.公益法人 B 法人)
・軽質なシェールオイル増産が続くことにより、軽質対応可能な原油トッパーを増設。た
だし、重質原油処理に適した装置が主体の米国内製油所で処理することには限界。(2.
米
公益法人 B 法人)
〔発電〕
・天然ガス価格が下落したことで、ガス火力による発電量が大きく伸びている。一方、石
国
炭火力発電ではオバマ政権の排出規制が強化され発電量の減少が著しい。
(4.金融 D 社)
・オバマ政権が実際は元々石炭が嫌いなところに持ってきて、シェールガス革命があり、
石炭いじめに拍車がかかった。石炭・ガス・石油が自給できるようになった米国のエネ
ルギー政策における自由度は非常に高い。(3.公益法人 C 法人)
・米国の原子力発電や再生可能エネルギーの開発は後退。(1.独立行政法人 A 法人)
・原子力発電は、政府支援によって何とか計画が進展しており、シェールガス革命が阻害
要因ではない。(3.公益法人 C 法人)
〔石油〕
・米国から軽油やナフサ留分の南米への輸出が増加しており、日本からの輸出は減少。
日
(10.RING)
〔その他〕
本
・LPG に関しては既にアジア・日本市場の流入が開始。LPG が安価で調達できればオペレー
ションコストを下げることが可能。ただし、一社での対応は困難。(7.エネルギー F 社)
・水素を入れたエネルギーポートフォリオが出来れば、シェールガスの輸入に関しても戦
略的に対応できるのでは。(9.川崎市)
- 49 -
(c)シェールガス革命の影響(石油化学産業等)〔素材代替〕
〔C2(エチレン)〕
・米国エタンクラッカーは中東並みのコスト競争力を得て、グローバル市場におい
て圧倒的な優位となる。
・米国エタンクラッカーが立ち上がる平成 29(2017)年以降、中南米、さらに中国
へエチレン誘導品の輸出増加が見込まれる。特に中国に関しては石炭を利用した
化学品の生産(CTO)等と併せ日本からの輸出量は減少する可能性が高い。
・価格面(エチレン)では、ナフサの独歩高による、ナフサベースの生産者間の競
争激化への対応が必要。
〔C4~(ブタジエン、芳香族等)〕
・ライトフィード化によりブタジエン、芳香族等の供給が減少することが見込まれ
る。特に自動車用タイヤ需要の増加によりブタジエンの世界的な不足が懸念され
る。
〔全般〕
・現時点でコンビナートの現場において、シェールガスは身近なものではない。
図表3.31
シェールガス革命の影響(石油化学産業等)
区分
内
容
〔C1(メタノール)〕
・競争力が優位に。(5.商社 E 社)
・石油精製業者がメタノールプラントの建設や企業出資を検討中。(2.公益法人 B 法
人)
〔C2(エチレン)〕
・競争力が圧倒的優位に。(5.商社 E 社)
米
・エチレン生産原料の約7割がエタンであり、$200/トン程度。ナフサ $800/トンと比
較すると圧倒的に安い。(10.RING)
・圧倒的な競争力。エタンクラッカーの新設計画もあり、供給量が増加。余剰分が中
南米に向かい、さらにはアジア(中国)に向かう。(4.金融 D 社)
国
〔C3(プロピレン)〕
・ライトフィード化による生産量減少を PDH(プロパン脱水素)が補う形でバランス
均衡。(5.商社 E 社)
〔C4~(ブタジエン、芳香族等)〕
・ライトフィード化に伴う Cracker からの生産減少によりタイト化。(5.商社 E 社)
・製油所でもアロマティクス等の石化製品原料を増産していく動き。(2.公益法人 B
法人)
- 50 -
図表3.31
シェールガス革命の影響(石油化学産業等)
区分
内
(続き)
容
〔全般〕
・全般的にアゲインストである。原油からの製造を基本としており、原油価格は相対
的に高いため、産業は淘汰される。(1.独立行政法人 A 法人)
・触媒技術等による高機能材料開発も言われるが、これまでの半導体産業と同様、生
産コストの安価な国にすぐに生産シフト。(1.独立行政法人 A 法人)
・シェールガスでは作れない製品(重い留分)については付加価値が上がる可能性。
軽い留分では価格が下がるが、重い留分で取り戻すというシナリオが描けると良い。
(7.エネルギー F 社)
〔C2(エチレン)〕
・汎用品(エチレン等)については圧倒的な劣位。(10.RING)
・輸出の減少もあり 2020 年頃にはエチレン生産量は 500 万 t またはそれ以下に。
(4.金融 D 社)
・エタンクラッカーに加え、中国の CTO(Coal to Olefin)等競争力の高い新規参入の
日
増加により、ナフサの独歩高。その結果、ナフサベースの PE(ポリエチレン)生産
者間の競争が激化。(5.商社 E 社)
・ただし、北東アジアのナフサクラッカーが限界供給者として価格を決定するため、
ナフサクラッカーのキャッシュコストを下回るような価格が継続するような事態に
はならないと予想。(5.商社 E 社)
・輸入という点では、海外メーカーにとっては日本の市場自体は魅力的ではない。
(4.
金融 D 社)
・PE(ポリエチレン)は差別化が困難であることから、流動性は高い。(5.商社 E 社)
本
〔C3(プロピレン)~〕
・ナフサの副産物で出てこないプロピレン、ブジエタン、ベンゼン等では勝負は可能。
(2.公益法人 B 法人)
・日本も LPG、C4 を原料化することを考えるべき。(10.RING)
〔C4~(ブタジエン、芳香族等)〕
・ナフサ連産品のうち C4 以降がタイトになる状況も。(4.金融 D 社)
〔コンビナートにおける現状〕
・価格面では、ナフサとの競争ということでプレッシャーはあるが、シェールガスが
必ず輸入されるという前提での検討はおこなっていない。(7.エネルギー F 社)
・
「京浜臨海部コンビナート高度化等検討会議」の事務局であるが、シェールガスに関
してはまだ検討テーマとなっていない。(9.川崎市)
〔その他〕
・燃料としてだけでなく、リフォーミングにより水素が安価に製造可能。脱硫等への
使用により、オペレーションコストの低減可能。(7.エネルギー F 社)
- 51 -
(d)シェールガス革命への対応(石油化学産業等)
・需給構造の変化に伴い、国内ナフサクラッカーの稼働率の低下が見込まれる中、
需給がタイトとなる C4 以降への対応が必要。
・一社での対応には限界、様々な形態での連携は必須。
図表3.32
シェールガス革命への対応(石油化学産業等)
内
区分
容
〔C4~(ブタジエン、芳香族等)への対応〕
・原油および原料の多様化~精製設備の高度化、重質原油やシェール関連で輸入可能な
コンデンセート(天然ガスの採収にあたり地表において凝縮分離した軽質液状炭化水
素)の調達・処理(割安の重質油を手当し、付加価値を付ける)、石化原料の多様化
石
油
化
学
産
業
等
で
の
今
後
取
る
べ
き
対
応
促進。(10.RING)
・エタン由来で生産されない芳香族等を米国に輸出。特徴ある石油コンビナート(芳香
族特化型、重質油処理特化型)の構築。(10.RING)
〔企業間連携〕
・一社単独での対応には限界、地域の一体化、連携が不可欠。石油・石化の連携は必須。
重質油分解型の製油所のウエイトを高め、石化と連携。(10.RING)
・製油所とエチレンプラントの連携強化。「上流」、「下流」一体となった、生産計画、
エネルギー計画を策定・運営。(4.金融 D 社)
・今後、「製油所」-「エチレンプラント」は地域別に分かれていき、基幹となる製油
所が残る。(4.金融 D 社)
・縦の連携~ 現在別会社である「製油所」と「石油化学」、「基礎品」と「誘導品」の
連携(5.商社 E 社)
・コンビナート内の電力・ガス会社との連携。(10.RING)
〔コンビナート間連携〕
・コンビナート間で原料や留分をやりとりすることも有効。(10.RING)
・特区(コンビナート)と特区(コンビナート)を連携させる仕掛けがあってもいい。
メリットが出れば行政も乗ってきやすい。(4.金融 D 社)
〔コンビナー企業の再編〕
・「基礎化学」と「機能化学」での再編。企業単位ではなく、地域毎の再編。(4.金融 D 社)
〔研究開発〕
・石油化学に関連しては現状の要素技術を基に機能化学品等の新素材の開発、新事業の
展開を図ることを期待。(3.公益法人 C 法人)
〔海外展開〕
・競争力ある原料(海外進出)と差別化された技術の融合。(5.商社 E 社)
〔人材育成等〕
・横の連携~ 人材育成等を含めたプラントトラブルの発生等の安全神話崩壊への対応。
(5.商社 E 社)
- 52 -
(e)シェールガス革命の影響と対応(一般製造業)
・造船、製鉄(鋼管)分野が有望視されている。造船等ではシェール特需という様
相もあるが、ピークを迎えつつある。
・シェールガスに採掘に関連した環境問題へのソリューション対応が有望視され、
今後も要素技術の発掘が期待される。
図表3.33
シェールガス革命の影響と対応(石油化学産業等)
区分
内
容
〔造船〕
・LNG 市場拡大は続き、LNG 運搬船に関しては 2013 年→2025 年
世
界
273 隻の需要増。
(8.
造船 H 社)
・中国の LNG 輸入量の増加に伴い運搬船の竣工数も増加。技術的にも三井造船が技
術指導するなど、対応できる状況になりつつある。(4.金融 D 社)
〔鉄鋼〕
米
・電炉での還元剤として天然ガスを利用することによりコスト低減。品質面での変
化はないため日本の鉄鋼業への影響は小さい。(4.金融 D 社)
国
・メキシコ湾向け大深水用シームレス鋼管の需要あり。ただし、アンチダンピング
措置により、米国現地での関連投資を進める。(4.金融 D 社)
〔全般〕
・
(シェールガス関連では)金融(フィナンシャル・テクノロジー)、化学、自動車、
船舶が技術優位性を持つ。(1.独立行政法人 A 法人)
・プラス面ではパイプ(鋼管)、船舶等が影響を受けるのではないか。
(4.金融 D 社)
・誇るべきは技術者自体のオペレーション能力の高さ。(3.公益法人 C 法人)
・波及産業の裾野は広い。最も有望な分野はパイプライン等の輸送関連。掘削用の
日
鋼管やパイプ等の掘削用部材・機器、環境問題の発生が考えられるデポ関連や造
船。
(2.公益法人 B 法人)
〔造船〕
・米国シェールガス由来の LNG プロジェクトに必要な LNG 船隻数は 27 隻。円高によ
る競争力の低下等により新規受注が低迷していたが、シェールガス由来の LNG 運
本
搬船を特需と捉え、受注体制の強化、経営統合を踏まえた事業所間での連携によ
る効率的な生産に取組み。自社方式のメリットをアピール。(8.造船 H 社)
〔商社〕
・川上のガス権益から川下の化学品に至るバリューチェーン(開発・生産事業、液
化・タンクターミナル事業、化学品製造事業、LNG 輸出等)の構築に取組み。各々
の業界のトッププレーヤーとパートナーシップを構築。(5.商社 E 社)
〔環境〕
・有望な技術は水処理等の環境技術(膜技術等)。(3.公益法人 C 法人)
- 53 -
(f)産学官連携等による支援
・支援策については研究開発支援、人材育成・確保支援、販路開拓等について多く
コメントがあった。
図表3.34
区分
産学官連携等による支援
内
容
全般
・現地の取引交渉等において強気で交渉できるリスクをとる役割。
(1.独立行政法
人 A 法人)
・石油産業自体が学の支援をもらい成長する産業。(7.エネルギー F 社)
研究
・(ガス)利活用技術の開発支援。(1.独立行政法人 A 法人)
・米国では、オイルショック以降、地道に掘削技術等も含めエネルギー技術全般
の開発支援に取組んできた。それが近年の外部環境の変化(原油高等)により、
花開いた。日本では少しの浮き沈みで技術開発へのスタンスが変わる。米国の
ような継続的な支援が必要。(3.公益法人 C 法人)
開発
支援
人材
育成
・
確保
支援
販路
開拓
・
輸出
支援
・「石化の下流で軽質留分を増やす技術」、「パイプラインの敷設工期短縮のための工
法」
、
「エタンの液化」等の有望な技術に対する開発の支援。
(2.公益法人 B 法人)
・学問だけでなく、コンビナートの現実に密着した上での、研究・提言。
(10.RING)
・RING 事業に参画することによりノウハウが拡がり、人材育成にも貢献している。
(10.RING)
・人材育成等を含めたプラントトラブルの発生等の安全神話崩壊への対応。
(5.商社 E 社)
・オーガナイザーの役割。下流等、リスクマネーの大きなところへは民間単独で
売り込みに行っても相手にしてもらえない。(2.公益法人 B 法人)
・政府補助による情報交換。(2.公益法人 B 法人)
規制
緩和
・
再編時
等
の支援
・呼び水としての補助金。地域単位での再編であれば特区扱いし、会計・償却の
特例を設ける。また、再編を調整する行司役として官の役割が期待される。
(4.金融 D 社)
・雇用調整という点では中央より地方の方が対応しやすい。(4.金融 D 社)
・荷役の単位共通化。(4.金融 D 社)
・夜間荷役、外国人労働力に関連した規制の緩和。(5.商社 E 社)
インフラ
・インフラ強化~自家発消防のとりまとめ(ドイツで成功)。(5.商社 E 社)
・シェールの輸入・貯蔵のためのタンク等のインフラ整備は一つの企業で対応す
るのは難しい。(7.エネルギー F 社)
整備
(g)特記事項
図表3.35
区
分
中国
地域
関連
その他
中国地域等に関連したコメント
内
容
・ブロック間での取組みに関しても「石油産業構造改善事業」の仕組を利用でき
る可能性。中国地域と九州地域の連携にも期待。中国地域内では宇部と周南、
麻里布等との連携期待。(10.RING)
・周南と大分を繋ぐ西瀬戸内構想とかあってもいい。(4.金融 D 社)
・産官連携という点では岡山県・倉敷市と水島コンビナートは良い事例。
(10.RING)
・シェールガスのみならず、メタンハイドレード等の開発に目を向けなければな
らない。(1.独立行政法人 A 法人)
- 54 -
3.3.3.コンビナートにおける企業間連携に関するヒアリング調査
コンビナート競争力強化のため各地区において企業間連携(高度統合化)が進展
しているが、その取組状況を把握するためヒアリング調査を実施した。
コンビナートにおける企業間連携の推進機関は全国・各地区に設置されているが
(図表 3.37)
、そのうち全国でも先導的な役割をはたしてきた「石油コンビナート
高度統合運営技術研究組合(RING)
」と各地区の中でも取組みの進展がみられる「川
崎市(京浜臨海部コンビナート高度化等検討会議
事務局)」を訪問し、中国地域
へのインプリケーションを取りまとめる。訪問時期は平成 26(2014)年8月。
図表3.36
コンビナートにおける企業間連携の推進機関
○全国
組
織
名
構
石油コンビナート高度統合運営技術研究組合
(RING)
成
委
員
設置年
平成 12
企業 26 社
(2000)年
○各地区
地区
千
葉
川
崎
四日市
組
織
名
エネルギーフロントランナーちば推進
委員会
京浜臨海部コンビナート高度化等検討
会議
四日市市臨海部工業地帯競争力強化検
討会
構
成
委
員
企業 11 社、県、学識者
企業 14 社、国、県、2 市、
NPO
企業 13 社、県、市
大
阪
堺・泉北ベイエリア新産業創生協議会
企業 11 社、府、2 市
水
島
水島コンビナート発展推進協議会
企業 11 社、国、県、市
周
南
周南コンビナート活性化推進懇談会
企業 5 社、市
大
分
大分コンビナート企業協議会
企業 12 社、県、市
- 55 -
設置年
平成 18
(2006)年
平成 20
(2008)年
平成 23
(2011)年
平成 18
(2006)年
平成 23
(2011)年
平成 24
(2012)年
平成 24
(2012)年
a.調査訪問先と事業概要
調査訪問先と訪問先の事業概要をまとめると図表 3.37 のとおりとなる。
図表3.37
No
コンビナートにおける企業間連携に関するヒアリング
訪問先
.
石油コンビナ
ート高度統合
運営技術研究
組合(RING)
1
(石油コンビナ
ート高度統合
事
業
概
訪問先
要
・グローバルな競争環境の激化の中で、石油精製と石油化学等
の業種がインテグレーションを進展させることにより国際競
争力を強化し、安定供給を確保する「コンビナート・ルネッ
サンス構想」を具体化するため、経済産業省の支援のもとで、
平成 12(2000)年より RING 事業として取組みを開始。
・
「RING 事業」の次には「コンビナート連携事業」が行われた。
「コンビナート連携事業」はアウトプットを早く出すことを
主眼におき、石油精製を中心としたコンビナートの域内連携
を強化し、特長あるコンビナートを構築するための事業を推
進。
・中国地域の水島地区や周南地区では、
「RINGⅠ」から「コンビ
ナート連携事業」まで、石油・石化等企業が連携し、経済産
する試験研
業省の支援、自治体の後押しをもらいながら活発な事業展開
究、技術向上、
を実施。
実用化)
運営技術に関
・現在では、コンビナート内外の複数製油所等の統合型運営に
基づく、高付加価値な石油精製・石油化学等設備の共用・増
強・集約化や、非効率設備の廃棄等による設備最適化を促進
する、
「石油産業構造改善事業」を推進中。
川崎市経済労
働局
国際経済推進
2
室
(行政機関:コ
ンビナート支
援)
・臨海部地域の「高機能化」、「高付加価値化」、「高効率化」に
よる競争力強化のために、
「川崎臨海部再生リエゾン推進協議
会」、「臨海部ガイドライン、地区カルテ」、「京浜臨海部コン
ビナート高度化等検討会議」等の企業間連携を促進させる取
組みを実施中。
・現時点でコンビナート内の企業間連携は「重質油分解装置の
一体運用」、
「水素の有効利用による CO2 排出量の削減」等の取
組みが進展。
・今後は、スマートコンビナートの実現を目指し、水素エネル
ギーの利活用を計画。臨海部自体が機能更新していく中で、
不要となったインフラ(パイプライン等)を最大限に活用す
るモデルを目指す。
- 56 -
b.調査結果
(コンビナート競争力強化を中心に、シェールガス革命に関する影響に関してもヒア
リング実施)
(a)石油コンビナート高度統合運営技術研究組合(RING)
訪問日
平成 26(2014)年 8 月 27 日(水)
所在地
東京都港区西新橋 2-19-5 カザマビル 6 階
○日本の石油コンビナートの状況
・石油精製の国際競争力に向けて、エネルギー供給構造高度化法の告示に基づく装備
率の達成のために、平成 25(2013)年度末までに原油処理能力の削減や閉鎖が行
われてきたが、更に、現状の精製設備能力 395 万バレル/日を平成 29(2017)年3
月までに 40 万バレル/日削減することにつながるエネルギー供給構造高度化法の
新たな判断基準の策定がなされ、施行の段階に入っている。
・また、最近の石油化学では、三菱化学が鹿島地区のエチレンプラントの1系を停
止して2系に集中して設備増強するなどの動きもあるように、日本のエチレン生
産能力が 700 万トン/年以下になってきている。平成 27(2015)年4月には水島
地区の旭化成ケミカルズと三菱化学のエチレンプラントが集約化される予定で
ある。更に、千葉地区では平成 27(2015)年9月に住友化学のエチレンプラント
が停止される予定である。
・このような状況下で、一社単独では限界があり、会社を越えたコンビナート地域の
一体化、すなわち石油精製同士の連携、石油精製・石油化学の連携、その他エネル
ギー産業(電力・ガス)との連携、統合運営により、どのように付加価値・エネル
ギー効率を高め国際競争力を強化するかがますます重要になってきている。
○RING について
・「石油コンビナート高度統合運営技術研究組合(RING:Research Association of
Refinery Integration for Group-Operation)」は製油所や企業の枠組みを越え
た、複数製油所間や石油化学等の異業種間における高度な一体的運営に関わる技
術開発事業を進めるため、平成 12(2000)年に設立された。現在、組合員は 26
社、内訳は石油精製 10 社、石油化学 12 社、ガス・環境4社で構成される。
・グローバルな競争環境の激化の中で、石油精製と石油化学等の業種がインテグレー
ションを進展させることにより国際競争力を強化し、安定供給を確保する、いわゆ
るコンビナート・ルネッサンス構想を具体化することになった。経済産業省の支援
のもとで、平成 12(2000)年より RING 事業として研究開発事業に取組んだ。
- 57 -
・RING 事業(平成 12(2000)~平成 21(2009)年度)はⅠ~Ⅲ期にわたって実施
したが、当初からⅠ、Ⅱ、Ⅲを想定したものではない。RINGⅠでは5地区5テー
マで技術開発事業に取り組んだが、石油・石化が同じ場で議論をし、技術的な追
従も行う中で、新たな課題形成がなされていったところに大きな意義がある。
RINGⅠでは統合基盤の整備がなされ、続いて統合高度化、環境対応に係る RING
Ⅱ事業へ、更に、全体最適の RINGⅢ事業に繋がっていった(図表 3.39)
。
・
「RING 事業」の次には「コンビナート連携事業(平成 21(2009)~平成 25(2013)
年度)
」が行われた。「RING 事業」は「技術開発」が伴うことが必須であり、「世
界で初めての技術」に挑戦的に取組み成果をあげてきた。一方で、「コンビナー
ト連携事業」はアウトプットを早く出すことを主眼におき、石油精製を中心とし
たコンビナートの域内連携を強化し、特長あるコンビナートを構築するための事
業を推進してきた。中国地域の水島地区や周南地区では、「RINGⅠ」から「コン
ビナート連携事業」まで、石油・石化等企業が連携し、経済産業省の支援、自治
体の後押しもいただきながら活発な事業展開を行ってきた。
図表3.38
RING 事業・コンビナート連携事業の取組み
資料:石油コンビナート高度統合運営技術研究組合資料より作成
○コンビナート連携に関する取組み
①RINGⅠ(平成 12(2000)~平成 14(2002)年度)
・RINGⅠの特徴はコンビナートの「統合の基盤づくり」として、「点」から「線」、
「線」から「面」へと広げ、企業の垣根を越えていこうとするものである。高付
加価値生産、高効率生産に係る高度統合運営技術開発の取組みをとおして、現場
レベルだけではなく、経営面でも貢献していくものである。
- 58 -
・複数の製油所間や異業種間における移送システム、統合制御システム等、一体運
営の基盤確立に向けた技術を開発した。
例えば、水島地区「先端的総合生産管理システム技術開発」の取組みは、水島港
を隔てて立地する製油所・石化工場が一体運営を目指し、多数の原料・半製品等
流通を最適化するために、各工場の生産計画と連携し、各社の生産装置等が相互
に有効活用できる総合生産管理システムと、原料・半製品等の移送・融通システ
ム技術を開発するものであった。この事業を契機として、JX 日鉱日石エネルギー
の誕生や、水島地区の更なる連携に繋がっていったものであり、日本におけるグ
ローバルな拠点としてのスタートがなされたといっても過言ではない。
②RINGⅡ(平成 15(2003)~平成 17(2005)年度)
・RINGⅡの特徴は「統合高度化」、「環境対応」であり、環境低負荷高度統合技術開
発として5地区7テーマに取組んだものである。RINGⅡではコンビナートにおけ
る副生物の高度化、エネルギー最適利用の促進等を中心とした統合技術の開発が
行われた。これらの取組みテーマの多くが、RINGⅠに関連したメンバーの自主的
な研究活動から出てきているものである。
・例えば、鹿島地区「分解オフガス高度回収統合精製技術開発」は、FCC(接触分
解装置)からの未利用の副生ガスからオレフィン留分の回収を行い、石油化学原
料として精製・利用するというものである。
③RINGⅢ(平成 18(2006)~平成 21(2009)年度)
・RINGⅢの特徴は「全体最適」を目的として、コンビナート企業間の機能を高度に
統合し、単独企業のみでは達成困難な高効率生産、高付加価値化学原料の製造等
を進めるための高度融合技術の開発を目指したものである。
・例えば、水島地区「石油・石化原料統合効率生産技術開発」は、コンビナートの
石油・石化原料多様化、ベストミックスのため、新たにコンデンセート(ガス田
から液体分として採取される原油の一種)を一括して脱硫、精製処理し、ナフサ
やガスオイル等のエチレンクラッカー原料および芳香族生産のための改質装置
原料を高効率で安定的に製造し、最適供給する技術を開発する。併せて、コンビ
ナート全体最適化のための効果的な留分活用の研究、開発を行うものである。
④「コンビナート連携事業」
(平成 21(2009)~平成 25(2013)年度)
・「コンビナート連携事業」は、中東・インド・中国等における大規模製油所の新
増設、国内石油需要の大幅な減少などの状況下で、我が国製油所の抜本的な競争
力の強化が急務であり、生産の最適化を通じた競争力強化を目指したコンビナー
ト域内における石油と石化等異業種との連携に向けた取組みを、経済産業省の支
援を受けて行ったものである。
・迅速なインテグレーション成果を目指し、コンビナート域内における石油と石化
- 59 -
等異業種との連携に向けた事業の取組みを促進してきた。例えば、知多地区「コ
ンビナート水素回収・燃料連携事業」ではジャパンエナジー(現 JX 日鉱日石エ
ネルギー)知多製油所で自家燃料としている水素を回収・高純度化し、出光興産
愛知製油所へ供給する一方で、これにより不足となる自家燃料を補うため、出光
興産から分解重油、ブタンを供給するというものである。このための設備を設置
することで、水素製造装置の稼動低減、分解重油の有効活用ができ、原油処理量
削減、石油の安定供給を図ることができる。
⑤「石油産業構造改善事業」(平成 26(2014)年度~)
・本年度からは日本の石油コンビナートが国際競争をする上での前提条件の不利を
克服すべく、コンビナート内外の複数製油所等の統合型運営に基づく、高付加価
値な石油精製・石油化学等設備の共用・増強・集約化や、非効率設備の廃棄等に
よる設備最適化を促進する、
「石油産業構造改善事業」を推進している。
・コンビナートの複数の製油所・石化工場等のグループで、事業再編・統合運営に
よる設備の廃棄・増強・共用化等を通じた生産性向上を目指す「コンビナート設
備最適化」に向けて、経済産業省からの支援を受けて事業の促進を図るものであ
る。
○RING 事業の拡がり
・RING 事業の拡がり・効果は以下の3つが挙げられる。
①情報の集中と新たな智恵と創造
・石油・石化・化学・ガス等が同じ土俵で議論することによって、具体的な智恵を
出し合う場となっている。
②新技術への挑戦、地球環境問題にも迅速な取組み
・RING 事業に参画することによりノウハウが拡がり、新たなテーマ発掘等の企画に
繋がるとともに、人材育成にも貢献している。挑戦的な取組みにより、RING 事業
のいくつもの世界初めての技術開発に結びついた。
③RING 事業が契機となり、石油会社同士、石油・石油化学会社の事業連携や統合に
発展
・RING 事業の実施をとおして、中国地域で言えば水島地区の石油・石油化学事業が
一体運営する契機にもなっている。RING 事業への参画により視野がグローバルに
広がるとともに、国際競争力の強化のための連携や統合運営への新たな取組みへ
と繋がっていく。
○コンビナート国際競争力強化の方向
・コンビナート国際競争力強化の方向については、特に以下の2つが重要である。
①原油および原料の多様化
・精製設備の高度化、重質原油調達・処理、石化原料の多様化促進 等
- 60 -
②石精・石化の高度インテグ推進および異業種との連携拡大
・コンビナート内外での連携、統合型運営
・企業間連携によるオンパーパスプロセスの開発・設置
・石精・石化と電力、ガス等との連携および地域共生
などを通し、
“高効率、高付加価値設備の共用・増強・集約化による設備最適化”
を図り、一層の生産性向上とともに高機能化学・高付加価値化を目指す。
○シェールガスの影響
①石油精製業への影響
・「シェール革命」で日本の石油精製業は、まずシェールオイルに大きく影響を受
ける。日本の輸入原油の API 比重は、主に「軽質(API 比重 34~38)」~「中質
(API 比重 29~33)
」と呼ばれるものを処理しているが、一方、シェールオイル
は API 比重 39~40 と超軽質であり、ナフサ、灯油、軽油留分が多い。
・米国では、シェールオイルの生産により、西アフリカ、ナイジェリア等からの軽
い原油の輸入が減少し、米国をはじめ世界的に軽質油の需給が緩み、重質油がタ
イトになるというのが一般的なシナリオがある。ただし、従来、米国は重質油を
南米、メキシコから輸入していたが、最近では、カナダからの供給も増加してお
り、一概には言えない状況もある。
したがって、日本も割安の重質油を手当し、付加価値を上げるための手立てが必
要であり、そのための設備最適化や高度化は今後も不可欠である。
・日本の石油製品の輸出としては、軽油等をアジア中心に輸出しているが、南米へ
の輸出も少なからずある。米国では原油の輸出は禁止されているが、製品の輸出
は禁止されていないので、軽油等の南米への輸出が増加しており、輸送費の関係
もあり、日本からの輸出は減少している。
②石油化学産業への影響
・米国においては、エチレン生産の原料の約7割が主にシェール由来エタン(C2)
であり、価格も$200/トン程度と、ナフサ $800/トンに比較すると圧倒的に安い。
日本も割安なシェール由来の LPG(C3、C4)を原料化することを考えるべきであ
る。最近の動きでは西海岸から LPG を日本へ輸出するという話もあるようである。
・エタン原料からはほとんど生産されない、プロピレン、ブタジエン、アロマに関
連して新たな増産技術の開発・導入が期待される。これらの製品を効率的に生産
して競争力を強化すべきである。
・汎用品(エチレン等)については圧倒的な劣位となるので、高付加価値化のため
のバリューチェーンを構築すべきである。
③シェールガスへの対応
・国内コンビナートでのシェール革命への対応という観点からみても、石油・石化
の連携、統合運営は必須である。重油分解型の製油所と石化を結びつけるという
- 61 -
ことを念頭に置くべきである。スタンドアロンになっている室蘭、苫小牧、仙台、
根岸、和歌山、麻里布も広域的に石化との連携を図ることができると考える。
・鹿島、千葉、水島地区のエチレンプラント集約化や能力削減の動きは、石化が世
界の中でどのように戦っていくかということであるが、付加価値の高い機能性化
学品に重点を置いていこうとしている現れでもある。
・また、単独のコンビナート内だけではなく、コンビナート間で原料や留分をやり
とりすることも有効である。当初の RING 事業を越えた広域連携である。ブロッ
ク間での取組みに関して「石油産業構造改善事業」の仕組を使える可能性もある。
中国地域と九州地域間とか、中国地域内では宇部と周南、麻里布等との連携に期
待したい。
④シェールガスと RING 事業
・過去の RING 事業において、シェールによる影響への対応として適するものは多
くある。例えば中国地域では周南地区「コンビナート原料副生成物マルチ生産技
術開発」でブタン(C4)をエチレン生産の原料にした取組み等が該当する。
米国から原油は輸出できないが、LPG、コンデンセートは輸出できるので、その
関連の事業も該当する。原料多様化は日本の宿命である。
⑤行政等に求める支援・規制緩和
・地方行政との関わりという点で一番いい例は、岡山県、倉敷市と水島コンビナー
トの関係ではないかと思う。金銭的な支援ではなく、総合特区の立ち上げ等にも
みられるように、民間と行政が一体となった取組みがある。民間・行政とも人の
入れ替わりがあるが、国際競争力の強化に向けたコンビナートの連携活動が停滞
しないよう相互に叱咤、協働する関係が構築されているのではないか。
また、神奈川県、川崎市も同様に熱意を持ってコンビナートの連携・統合に向け
て協働する姿勢が強くなっている。
自治体の長が先頭にたって、コンビナートへの関心とともに支援の姿勢を示すと
いうことも重要であると考える。
⑥産学官連携での対応の可能性(「学」に期待すること)
・コンビナート統合という点では、単に学問だけでなく、コンビナートの現実に密
着した中で研究・提言いただくことが、一層の具体化に結びつくと考える。
- 62 -
(b)川崎市経済労働局国際経済推進室(コンビナート支援)
訪問日
平成 26(2014)年 8 月 28 日(木)
訪問地
東燃ゼネラル石油株式会社川崎工場
(川崎市川崎区浮島町 7 番地 1 号)
○川崎市の取組み(グリーン関連)
・平成 26(2014)5月に「川崎市グリーン・イノベーション推進方針」を策定し、
川崎市の環境関係の部署、環境局(規制関係)、上下水道局(水ビジネス)、経済
労働局(環境産業担当)、総合企画局(スマートシティ、水素ネットワーク)の
4つの局の取組みを一つにまとめ、推進方針に基づき、取組みを行っている。
・平成 27(2015)年2月以降に「グリーンイノベーションクラスター」を本格的に
発足させる予定であるが、事前に東京大学 後藤 芳一 教授に座長になってい
ただき、コアメンバー(20 団体程度)で検討を始めている。産業界を代表して川
崎工業振興倶楽部会長の東燃ゼネラル石油㈱ 川崎工場長、神奈川県、関東経済
産業局等、にも参加していただいている。今後も NEDO、JICA を活用し、学識者
と連携しながら検討を進めていく。クラスターの中で、水ビジネス、コンビナー
ト、水素等の研究会を作り支援していきたいと考えている。
○川崎市の臨海部の取組み
・川崎市の臨海部に関しての取組みは、「京浜臨海部コンビナート高度化等検討会
議」を含め、
「NPO 法人 産業・環境創造リエゾンセンター(理事長 東京工科大
学 足立 芳寛 教授)」を中心に、ワーキングを作り推進してきた。例えば、
その結果、東京電力 川崎火力発電所からの蒸気をコンビナート企業に供給して
いる。この取組みでは横浜国立大学 佐土原 聡 教授に支援いただいた。
・臨海部の大きな課題は、10 年位前までは、工場が海外などへ移転し、大きな遊休
地が出来てしまうのではないかというものであり、そうならないよう取組みを続
けてきた。具体的には敷地の外の部分で、道路の問題、防災、船舶の入港に支障
になる送電線の撤去・地中化など企業の抱える課題に一つ一つ対応しないと川崎
に残っていただけないという視点で取組みを進めてきた。また、臨海部の現状・
課題を共有化するために「川崎地区カルテ(図表 3.39)」を作成した。
・浮島地区の隣の殿町地区では、かつていすゞの工場があったエリアでライフサイ
エンスの拠点形成を進めている。40ha ぐらいの跡地に、空港に近いという優位性
を活かし、高齢化に対応するという中で、研究開発拠点を誘致について戦略的に
取組んでいる。
○「京浜臨海部コンビナート高度化等検討会議」
・川崎臨海部を中心とするコンビナートにおいて、国際競争力の強化を図るととも
に、二酸化炭素の排出抑制など地球環境問題への積極的な対応が必要となってき
たが、事業活動の効率化や省エネルギー等の取組みは、既に個別企業レベルで進
められていることから、企業や業種の垣根を越えて立地企業間の連携を図ること
- 63 -
図表3.39
川崎臨海部地区カルテ
資料:川崎市説明資料
により、コンビナートの高度化を推進することが重要となってきた。
・そこで神奈川県、川崎市、臨海部の素材・エネルギー関連企業等では、生産活動
の効率化や資源・エネルギーの有効活用に繋がる企業間連携の取組みを検討し、
事業化をめざす検討組織を立ち上げた。
・個別のテーマに係る活動はワーキンググループ形式で行われるが、各ワーキング
グループごとにリーダー企業主導で運営をお願いしている。テーマも時期によっ
て異なってきている。浮島の水素の有効活用に関しては東燃ゼネラル石油㈱と JX
日鉱日石エネルギー㈱で進めてもらったものであり、ユーティリティの共有化に
関しては JFE スチール㈱に、LNG 冷熱の活用に関しては東京ガス㈱にリーダーに
なってもらっている。
・新しいテーマがあれば今後ワーキングを作っていきたい。シェールガスに関して
はまだ検討のテーマになっていない。
- 64 -
c.他地域ヒアリングにおける企業間連携における示唆
「石油コンビナート高度統合運営技術研究組合(RING)」、「川崎市(京浜臨海部
コンビナート高度化等検討会議
事務局)」のコンビナートにおける企業間連携に
関する取組み・支援における特徴的な項目を抽出する。
(a)コンビナートの将来像等の共有化
(川崎市)
・京浜臨海部コンビナート高度化等検討会議において将来像とロードマップ
を作成するとともに、具体的な取組みとしてワーキンググループにおいて
「パイプライン等の連携」、
「石油残渣からの DME 製造」、
「未利用エネルギ
ーの利用」等に取組み。
・平成 25(2013)年には千代田加工建設との包括協定の締結、「川崎臨海部
水素ネットワーク協議会」を設置、同年9月には国に「水素エネルギーフ
ロンティア国家戦略特区」を申請。
(b)自治体の危機意識と主導的な役割
(RING)
・自治体の長が先頭にたって、コンビナートへの関心とともに支援の姿勢を
示すということも重要。
(川崎市)
・臨海部の大きな課題として、工場が海外移転し、大きな遊休地が出来てし
まうことを危惧。敷地の外の部分で、道路の問題、防災、船舶の入港に支
障になる送電線の撤去・地中化など企業の抱える課題に一つ一つ対応しな
いと企業が地元に残らないという視点で取組みを進展。
(c)行政と企業の相互信頼・補完関係の構築と継続的な支援
(RING)
・地方行政との関わりという点で一番いい例は、岡山県、倉敷市と水島コン
ビナートの関係。金銭的な支援ではなく、総合特区の立ち上げ等にもみら
れるように、民間と行政が一体となった取組みがある。
・民間・行政とも人の入れ替わりがあるが、国際競争力の強化に向けたコン
ビナートの連携活動が停滞しないよう相互に叱咤、協働する関係が構築さ
れている。
(川崎市)
・臨海部の現状・課題を関係者が共有化するために「川崎地区カルテ」を作
成し、継続的に取組みを推進。
- 65 -
(d)産学官連携における支援機関の役割
(川崎市)
・川崎市の臨海部に関しての取組みは、行政と企業を結ぶ中間的な存在とし
て、
「NPO 法人
産業・環境創造リエゾンセンター」を中心に、ワーキング
を作り推進。(図表 3.41)
。
図表3.41
協働事業名
京浜スマー
トコンビナ
ートの構築
事業
かわさきコ
ンパクト
防災計画と
防災訓練
リエゾンセンターが関与する協働取組事例
概
要
・スマートコンビナート構想に基づく協働
(経済活性化、環境保全、企業連携による生産性向上・効率化)
・京浜臨海部における企業間連携(京浜臨海部コンビナート高度化等検
討会議)
・リエゾンセンターの会員企業も含め 10 社以上の企業が参加
・水素の有効活用による CO2排出量の削減(2社連携)
・重質油分解装置の一体的運用(3社連携)
・製鉄高炉スラグのセメントへの活用(2社連携)
・火力発電所から周辺事業所への蒸気供給(10 社連携)(15 年契約)
・「臨海コンビナート都市連携シンポジウム」の主催(5回開催)
・全国各地のコンビナート関係者の参加(鹿島・京葉など)
・国連グローバルコンパクトの川崎市版(平成 18(2006)年から)
・川崎市行政環境局のサポート
・ビジネスコンパクトへの、リエゾンセンター会員企業への参加促進
(実績7社)
・リエゾンセンター自身も、市民コンパクトに参加
・川崎臨海部防災協議会へ会員企業とともに参画
・地域防災力の充実強化について行政・企業間の連携
・企業情報の提供の場
資料:NPO 法人産業・環境創造リエゾンセンター
事業報告等より作成
(e)事業推進におけるリーダー企業・キーパーソンの存在
(RING)
・RING 事業の実施をとおして、中国地域で言えば水島地区の石油・石油化学
事業が一体運営する契機にもなっているが、キーパーソンが存在した。
(コンビナート検討会議(事務局:川崎市、神奈川県))
・個別のテーマに係る活動はワーキング形式で行われるが、各ワーキングご
とにリーダー企業主導で運営を依頼。テーマも時期によって異なってきて
いる。
- 66 -
4.シェールガス革命による中国地域産業への影響
4.1.域内関連産業の現状
4.1.1.エネルギー産業の現状
a.LNG 関連設備の状況
中国地域においては、柳井(山口県)、水島(岡山県倉敷市)、廿日市(広島県)
等に LNG 受入基地が存在しており、LNG が輸入され、電気事業者、ガス事業者等に
供給されている(図表 4.1、4.2)。
図表4.1
LNG 基地・パイプライン等の現状
320,000kl(2 基)
資料:資源エネルギー庁(2012.1)「我が国の天然ガス及びその供給基盤の現状と課題(総合資源エネルギー調査会総
合部会 第 1 回天然ガスシフト基盤整備専門委員会資料)」より作成
図表4.2
基地名
所在地
中国地域の LNG 基地
(kl)
合計
基数
稼働年
区分
合計容量
所有者
水島エルエヌジー
水島 LNG 基地
岡山県
(JX 日鉱日石エネルギー、
中国電力)
320,000
2
2006 年
1 次基地
廿日市工場
広島県
広島ガス
170,000
2
1996 年
1 次基地
柳井基地
山口県
中国電力
480,000
6
1990 年
1 次基地
築港工場
岡山県
岡山ガス
7,000
1
2003 年
2 次基地
資料:東京ガス IR 資料
- 67 -
また、電力会社の所有する LNG 基地の近辺には LNG 火力発電所が立地しており、
長期的にも石油・石炭等からの転換が図られている(図表 4.3)
。ただし、中国電力
の電源設備に占める LNG 火力設備の割合は増加傾向にあるものの、平成 26(2014)
年度(推定)で 15%程度であり、全国の 28%程度と比較して低い状況にある。
図表4.3
県
岡山
山口
電力会社
LNG 火力発電設備の状況
発電所名
認可最大出力
(万 kW)
水島 1 号
28.5
平成 21(2009)年
石炭から転換
水島 3 号
34.0
平成 18(2006)年
重原油から転換
玉島 1 号
35.0
平成 26(2014)年
重原油から転換
柳井 1-1~2-2 号
140.0
資料:中国電力(株)
備
考
「PR BOOK 2014」
b.LNG 調達の現状
中国地域の LNG 輸入量は、日本全体の輸入量の 3.7%(平成 26(2014)年)を占
め、増加傾向にある。輸入価格(単価)は、全国同様、リーマンショックによる大
幅な下落以降、東日本大震災等の影響もあり、上昇傾向となっている(図表 4.4)。
輸入量を基地別でみると輸入量は柳井基地が多いもの、火力発電所の燃料が LNG
に転換している水島基地の増加幅が大きい。平成 26(2014)年は近隣発電所(玉島
1号)の燃料転換のあった水島基地が増加傾向にあるとともに、廿日市、柳井基地
も前年並の輸入量となっている。
図表4.4
①輸 入 量
350 万トン
柳井
廿日市
中国地域の LNG 輸入量と輸入価格の推移
②価
格(CIF)
水島
334
311
300
259
250
232
167
143
38
82.7
80
77.1
60
35
50
36
35
34
40
71
89
97
108
65
09
10
11
12
13
132
30
20
0
2008
89.4
35
38
42
柳井
70
152
155
100
廿日市
168
156
50
269
水島
90
284
167
200
150
273
千円/トン
100
14年
資料:財務省「貿易統計」より作成
- 68 -
2008
09
10
11
12
13
14
年
4.1.2.石油化学産業(コンビナート)の現状
中国地域の石油化学産業の主な生産拠点として、岡山県の水島地区と、山口県と
広島県にまたがる岩国・大竹地区、山口県の周南地区の3つのコンビナートがある。
a.水島地区
岡山県南中央部の瀬戸内海沿岸に位置する水島地区の工場立地は、昭和 30 年代
からの水島港の整備や岡山県の積極的な誘致によって本格化した。三菱石油、日本
鉱業(いずれも現 JX 日鉱日石エネルギー)の大手2社の石油企業をはじめ、総合
化学メーカーが相次いで進出し、石油化学コンビナートが形成され、西日本最大級
のコンビナートとして役割を担ってきた。
現在、水島地区ではエチレン、プロピレンを生産する旭化成ケミカルズと三菱化
学の2つのエチレンセンター、これらの基礎製品の供給を受けて誘導品を生産する
多数の化学メーカーが立地している(図表 4.5、4.6)
平成 28(2016)年 4 月には旭化成ケミカルズの設備を廃棄し、三菱化学の設備に
集約することに合意している。集約後には両社が折半で出資する株式会社を設立し、
エチレン設備を共同運用する。これにより水島地区のエチレン生産能力は現在の 93
万トン/年から 57 万トン/年(非定期修理年)となる予定である。
図表4.5
旭化成ケミカルズコンビナート(水島)
〔エチレン生産能力 443 千トン/年〕
*
(注)企業名の青はオンライン、緑はオフライン
資料:石油化学工業協会(http://www.jpca.or.jp/62ability/0plant.htm、平成 25(2013)年 7 月現在)
*
数値は定修実施年ベース。以下同様
- 69 -
図表4.6
三菱化学コンビナート(水島)
〔エチレン生産能力 431 千トン/年〕
(注)企業名の青はオンライン、緑はオフライン
資料:石油化学工業協会(http://www.jpca.or.jp/62ability/0plant.htm、平成 25(2013)年 7 月現在)
b.岩国・大竹地区
山口県と広島県にまたがる旧陸軍燃料廠の跡地に三井石油化学(現 三井化学)
が国内最初のエチレンプラントを開始したのは昭和 33(1958)年のことである。岩
国は戦後の三井グループが総結集した基地であり、石油化学第一期計画で形成され
たエチレン分解センターであった。
昭和 37(1962)年に隣接する大竹地区に工場が拡張され、山口・広島両県にまた
がる現在の形となっている。特定産業構造改善臨時措置法に基づき昭和 60(1985)
年にエチレンプラントを一旦休止し、その後、平成元(1989)年に一度は運転が再
開されたものの、平成4(1992)年の定修から操業が再び停止され、そのまま廃棄
となっている。現在、エチレン等は他地域から調達することによってエチレンセン
ターとしての機能は維持されている(図表 4.7)
。
- 70 -
図表4.7
三井化学コンビナート(岩国・大竹)
(注)企業名の青はオンライン、緑はオフライン
資料:石油化学工業協会(http://www.jpca.or.jp/62ability/0plant.htm、平成 25(2013)年 7 月現在)
c.周南地区
山口県東南部に位置する周南地区は、戦前から旧海軍燃料廠を中心に化学や鉄鋼
などの工場が数多く立地する県内有数の工業地帯であった。当時この地区での化学
工業の中心は日本曹達工業(大正7(1918)年設立、現 トクヤマ)と東洋曹達工
業(昭和 10(1935)年設立、現 東ソー)であり、両者ともガラス原料となるソー
ダ灰やカセイソーダ、セメントなどを主に製造していた。
戦後、昭和 32(1957)年に出光興産徳山製油所が操業を開始し、昭和 39(1964)
年には出光石油化学(現 出光興産)が設立された。周辺の総合化学メーカーであ
る東ソーやトクヤマ等とパイプラインを連結することで、大規模な石油化学コンビ
ナートを形成している(図表 4.8)
。
平成 26(2014)年3月には徳山製油所の原油処理機能を停止したが、輸入ナフサ
でエチレン装置を稼働できる体制が整備されている。
- 71 -
図表4.8
出光興産コンビナート(周南)
〔エチレン生産能力 623 千トン/年〕
(注)企業名の青はオンライン、緑はオフライン
資料:石油化学工業協会(http://www.jpca.or.jp/62ability/0plant.htm、平成 25(2013)年 7 月現在)
d.最近の動き
〔水島地区〕
水島地区では平成 25(2013)年から、JX 日鉱日石エネルギーの流動接触分解装
置(FCC)から出る C4 留分を旭化成ケミカルズ、三菱化学のナフサクラッカーの分
解原料として使用するといった取組みを行ってきている。
平成 28(2016)年4月からの旭化成ケミカルズのエチレン設備を廃棄し、三菱化
学のエチレンセンターに集約する取組みでは、主にエチレン、プロピレン、副産物
としての C4、分解ガソリン(C5、ベンゼン、トルエン、キシレン、C9 などの混合
物)、粗水素やその他の副生ガス(メタン、エタン、プロパン)など、ヘビーエン
ドな製品が集約対象となっている。
さらに、旭化成ケミカルズは先端技術分野における試験設備を導入し、水島地区
を新規事業の育成拠点にするとしている。また、海外での低燃費タイヤ用の合成ゴ
ムなどの工場建設に合わせ、価格競争が激しい汎用品から高付加価値品へのシフト
を鮮明にし、同社の世界各地の工場に新たな技術を提供する「マザー工場」の役割
を持たせることとしている。
さらに、水島地区における副生ガスの有効利活用も考慮に入れ、将来の二次エネ
ルギーとなる水素融通に向けた研究会が平成 26(2014)年夏から発足している。
- 72 -
〔周南地区〕
周南地区では、出光興産徳山製油所が原油処理機能を平成 26(2014)年3月に停
止した。現時点では、石油製品の物流拠点(油槽所)として入出荷設備を増強し、
化学事業の主力拠点として、敷地内の化学工場で輸入ナフサの調達量拡大等による
エチレン生産を強化する取組みが行われている。
さらに、出光興産徳山事業所では、LNG 輸入や発電設備などを備えた総合エネル
ギー基地としての役割が検討されている。具体的には「徳山エネルギーゲート」と
して、電力会社やガス会社、コンビナート立地企業等を対象に様々なエネルギー・
原料を供給する拠点としての役割が検討されているとの新聞報道もなされている。
また、出光興産は、カナダ西海岸において現地企業と共同で LNG 生産・輸出計画
を進めており、平成 29(2017)年以降の日本への輸出を目指している。このため、
将来、周南地区を国内の LNG の受入基地として確立していくことも一つの方策として
考えられる。
- 73 -
4.1.3.中国地域の石油化学産業へのシェールガス革命の影響の考察
a.エチレン誘導品について
(a)エチレン価格低下による誘導品コストへの影響
シェールガス副生エタンによるエチレン価格の影響と誘導品との関係をみると、
誘導品の原材料コストに対するエチレンコストの割合は「エチレン原単位」に応じ
て低下する。各エチレン誘導品へのエチレン価格低下の影響を比較すると、ポリエ
チレンがエチレン価格低下の影響をダイレクトに受けるのに対し、エチレンとその
他の化学品の合成により製造されるポリ塩化ビニル、ポリスチレン等は相対的に影
響が低いことが分かる(図表 4.9)
。
図表4.9
エチレン価格
低下の影響大
主なエチレン誘導品のエチレン原単位
主なエチレン誘導品
他の原料の
影響大
エチレン
原単位
その他主な原単位
ポリビニルアルコール
1.27
ポリエチレン
1.00
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)
0.85
酢酸ビニル樹脂・酢ビモノマー
0.65
エチレングリコール
0.59
酢酸
0.47
ポリ塩化ビニル(PVC)・塩ビモノマー
0.45
塩素 0.57
ポリスチレン(PS)・スチレンモノマー
0.27
ベンゼン 0.75
PET 樹脂・繊維
0.14
パラキシレン 0.55
資料:重化学工業通信社(2014)「2015 年版
メタノール 0.57
日本の石油化学工業」より作成
シェールガス革命の価格への影響で、エチレン、メタノールは低下する一方で、
芳香族、ブタジエンは上昇することが見込まれる。よって、芳香族を使用するポリ
スチレンや PET(ポリエチレン テレフタラート)等はエチレン価格の低下の影響が
芳香族価格の上昇により軽減・相殺される可能性がある。
図表4.10
シェールガス革命による化学品価格への影響度合い
(他地域ヒアリング等より)
エチレン ↓↓ > メタノール ↓ > プロピレン → > 芳香族 ↑ > ブタジエン↑↑
価格低下
価格上昇
(さらに、シェールガスで電力料金も低下すれば塩素も安くなる)
- 74 -
(b)各コンビナートのエチレン誘導品の構成
これらを踏まえて各コンビナートのエチレン誘導品の構成をエチレン消費実績
で見ると以下の「図 4.11
コンビナート別/誘導品別
エチレン消費量実績」のと
おりとなる。
図表4.11
コンビナート別/誘導品別
PE
0%
20%
30%
VCM
40%
28.6%
鹿島
50%
100%
23.1%
17.8%
44.8%
59.2%
水島
90%
37.8%
17.7%
29.2%
大阪
80%
5.4% 0.9% 5.2% 14.8%
46.2%
四日市
70%
29.3%
52.5%
川崎
その他
SM
60%
33.2%
56.1%
千葉
16.7%
22.9%
30.5%
岩国
周南
酢ビ
EO
10%
エチレン消費量実績(平成 25(2013)年)
13.8%
62.9%
58.1%
大分
全国
44.9%
23.1%
7.1%
13.4%
3.8%
22.7%
15.2%
11.5%
エチレン価格
低下の影響大
他の原料の
影響大
PE:ポリエチレン > EO:エチレンオキサイド > 酢ビ:酢酸ビニル > VCM:塩化ビニルモノマー > SM:スチレンモノマー
資料:重化学工業通信社(2014)「2015 年版
日本の石油化学工業」より作成
このグラフはシェールガス革命によるエチレン価格低下の影響が大きいと思わ
れるものを、左から品目別(ポリエチレン→エチレンオキサイド→・・・・)に並
べたものであるが、千葉地区や川崎地区といった南関東地域のコンビナートでは相
対的にエチレン価格低下の影響が大きい品目(ポリエチレン)のウエイトが高いこ
とが分かる。
一方、中国地域のコンビナートでは、周南地区において、相対的にエチレン価格
低下の影響が少ない品目(VCM:塩化ビニルモノマー、SM:スチレンモノマー)の
ウエイトが高い状況となっている。
b.中国地域と関東地域の比較
地域全体で比較を行うため、鉱工業生産指数を用いる。中国地域の鉱工業生産指
数(平成 22(2010)年)により化学工業全般の構成をみると、エチレンと塩素の合成
物である二塩化エチレンやシェールガス革命で需給の逼迫が見込まれる合成ゴム
- 75 -
図表4.12
化学品の生産ウエイトと化学工業(医薬品等除き)に占める割合
※棒グラフ(左軸)は中国地域の鉱工業生産指数(平成 22(2010)年)の鉱工業生産指数全体に占める品目別ウエ
イト(化学工業に限らず、全ての鉱工業生産。母数 10,000)。折れ線グラフ(右軸)は同鉱工業生産指数のうち
化学工業(医薬品等除き)に占める品目別ウエイトを左の品目から累計したもの。
(10,000 分の)
生産ウエイト
200
化学品に占める割合(医薬品等除き:累計)
100%
180
90%
160
80%
140
70%
120
60%
100
50%
80
40%
60
30%
40
20%
20
10%
0
0%
二合塩スア塩ポか酢パ高ポメエポ触ジポポプ酸複塩キブポ純ア酸メポ合合合酸ア酸エカブ純シイりホ窒石塩ポカエフ活メ硫クウ液塩フ水
塩成化チク素リ性酸ラ純リタチリ媒フリリロ化合化シタリベニ化チリ成成成化ン素ポプタトクソんル素油酸リーピル性チ酸レレ体化ェ
素
プビピ第肥ビレジアンリチルアオブアプモ キロンルロプ酸マ 樹 プボクオ炭ル オタ塩メノ
化ゴビレリガエソビキ度スクレエ ェ
エヘロ リ 脂 ロンロロ エ ソン素チー
ロスチーニシテチリンチ ニ
ロニレ二料ニンエミゼンタイセクタセロニ シラ・
エムニン
ル
ブ
ピブルカ チ ーフ レル
チ ルモニ レダルレレレル レ メピルン鉄 ル ンドン ンソタタノトピア 樹クチンキピ ン
ブー ーンレ
樹
トォ ン樹
レ モノト ン モンフン酸 ン タレア
レラヒー ル
脂タレ サル
系
脂
リ
チルノ
ノ タ エ テ ンンル
ンッドボ ケ 油ー
ン ノマ
ン
脂
ムン ンア
樹
ー
ル
ー
ル
マ ル
マ ル ス レ ジ コ
ル
ム
グクリン ト
脂
ル
ン
ー
ケ
ー
ー 酸 テ フ
ン
コ
リ
成
ー
ル
ト
ル タ イ
コ
形
ル
ン
ー
モ レ ソ
材
ノ ー シ
ル
ア
料
マ ト
…
ー
図表4.13
品
鉱工業生産指数
目
化学工業(医薬品等除き)
化学工業(医薬品等除
き)に占める割合
関東地域との比較
中国地域の主な生産拠点
中国
地域
関東
地域
二塩化エチレン
13.5%
1.5%
トクヤマ(徳山)、東ソー(南陽)
合成ゴム
8.8%
7.4%
日本ゼオン(徳山、水島)、東ソー(南陽)、旭化成ケミカルズ(水島)
塩化ビニルモノマー
6.5%
-
スチレンモノマー
4.8%
4.6%
旭化成ケミカルズ(水島)、出光興産(徳山)、太陽石油(宇部)
アクリロニトリル
3.8%
1.1%
旭化成ケミカルズ(水島)
塩素ガス
3.4%
0.5%
ポリエチレン
3.4%
9.3%
か性ソーダ
3.3%
1.2%
酢酸ビニルモノマー
3.2%
-
パラキシレン
3.1%
2.6%
高純度テレフタル酸
2.8%
-
ポリスチレン
2.4%
3.0%
PS ジャパン(水島)
メタクリル酸エステルモノマ ー
1.9%
-
三菱レイヨン(大竹)
エチレン
1.9%
7.3%
東ソー(南陽)、トクヤマ(徳山)
関東電化工業(水島)、日本製紙ケミカル(岩国)、東ソー(南陽)、トクヤマ(徳
山)、岡山化成(水島)
〔低密度〕日本ポリエチレン(水島)、三井・デュポンケミカル(大竹)、東ソー(南
陽)
〔直鎖状低密度〕日本ポリエチレン(水島)
〔高密度〕日本ポリエチレン(水島),旭化成ケミカルス(水島),三井化学(大竹)
岡山化成(水島)、関東電化工業(水島)、東ソー(南陽)、トクヤマ(徳山)
日本合成化学(水島)、クラレ(岡山)
JX 日鉱日石エネルギー(水島)、水島パラキシレン(水島)、出光興産(徳山)
三井化学(岩国)、水島アロマ(水島)
旭化成ケミカルズ(水島)、出光興産(徳山)、三菱化学(水島)
資料:中国経済産業局、関東経済産業局「鉱工業生産の動向」、重化学工業通信社(2014)
「2015 年版
学工業」より作成
注:医薬品等は除く。塗りは特徴のある点を示す
- 76 -
日本の石油化
等のウエイトが高い状況にある(図表 4.12)。一方、関東地域はポリエチレン、エ
チレンのウエイトが高く、前項の比較同様、中国地域は関東地域と比較して、シェ
ールガス革命の影響が相対的に小さいものと見込まれる(図表 4.13)
。
c.芳香族・ブタジエンの生産能力について
シェールガス革命により芳香族は需給の逼迫が見込まれているが、中国地域には石
油精製設備で重質ナフサの接触改良により抽出されるもの(改質系)、エチレンセン
ターでナフサ分解によるもの(分解系)、鉄鋼メーカーのコークス炉ガスから抽出さ
れる3種類の生産設備があり、全国の2~3割程度の生産能力を有している(図表
4.14)。特に水島地区は全国で千葉地区に次ぐ二番目の生産規模を有している。
また、同じく需給の逼迫が見込まれるブタジエンについては水島地区、周南地区に
工場があり、全国の3割程度の生産能力を有している。ちなみに、最近、全国的には
ブタジエンに関して、ナフサクラッカーの副生 C4 留分に依存せずに増産を図るため
の新たな製造技術(OCT:Olefin Conversion Technology)の開発が進展している。
図表4.14
中国地域における芳香族・ブタジエンの生産能力(全国割合)
ベンゼン(B)
トルエン(T)
中国地域
22.3%
中国地域
27.0%
その他
73.0%
その他
77.7%
キシレン(X)
ブタジエン
中国地域
22.2%
中国地域
31.3%
その他
68.7%
その他
77.8%
資料:重化学工業通信社(2014)「2015 年版
日本の石油化学工業」より作成
- 77 -
4.1.4.その他産業のビジネスチャンス
広島の三菱重工コンプレッサ(三菱重工業の 100%出資会社)では米国にコンプ
レッサ販売・サービス会社である「MHI コンプレッサ・インターナショナル」
(本社:
テキサス州ヒューストン)を設立し、平成 24(2012)年 10 月から営業を開始して
いる。三菱重工コンプレッサにとって、米国はコンプレッサ事業の 20%のシェアを
持つ国であり、シェールガス生産の拡大により、LNG の積出し設備等、ガス関連プ
ラントやエチレン生産などの化学プラントの新設が相次いでいることから、これに
伴うコンプレッサ需要の増加をターゲットとして活動している。
また、掘削ドリル等の加工機械においては滝沢鉄工所(岡山市北区)などの加工
機械メーカーの海外進出がみられる。
加えて、域内のエネルギー関連施設工事に携わる企業では、今後、シェールガス
革命に伴う LNG 関連施設の設置工事やガス発電所の建設関連工事部門での受注増加
が期待されている。このようにシェールガス革命はガスの掘削や輸送関連機器を中
心に域内の一部、関連する企業にビジネスチャンスを生み出している(図表 4.15、
4.16、4.17)。
図表4.15
用
途
シェールガスに関連する中国地域企業(新聞情報等より)
企
業
名
場
所
製
品
(掘削装置のシリンダー等の加工用)
研削盤
(ドリルの部品や配管をつなぐねじ
を加工する)工作機械
シギヤ精機製作所
広島県福山市
滝沢鉄工所
岡山市
宇部興産
宇部市
防爆用フィルター
JFEスチール
広島県福山市
UOE管
神鋼特殊鋼管
山口県下関市
シームレスステンレス鋼管
東洋鋼鈑
山口県下松市
エアバルブ
石油化学
三菱重工コンプレッサ
広島市
(化学プラント用)コンプレッサ
プラント
日本製鋼所
広島市
造粒機
向け
米子製鋼
鳥取県米子市
大型コンプレッサの部材
佐々木造船
広島県大崎上島町
LPG運搬船
シンコー
広島市
船舶用ポンプ
掘削用
資機材
運搬船
資料:新聞情報等
- 78 -
図表4.16 LPG運搬
(佐々木造船)
図表4.17
資料:佐々木造船 HP
シームレスステンレス鋼管
(神鋼特殊鋼管)
資料:神鋼特殊鋼管 HP
- 79 -
4.2.域内企業のシェールガス革命の認識・対応状況(中国地域アンケート調査)
4.2.1.アンケート調査の概要
域内産業への影響について、アンケート調査により実態把握を行った。
a.調査対象
①域内に本社を持つ製造業及びエネルギー供給企業(域内本社を有する企業で資本
金上位より約 1,021 社、②「中国地域のコンビナート事業所」を除く)
②中国地域のコンビナート事業所(95 事業所)
b.調査手法
郵送発送・郵送回収
c.設問フロー
図表 4.18 に、①域内に本社を持つ一般製造業、エネルギー供給企業(以後、「一
般製造業等」とする)への設問フローを示す。なお、②中国地域のコンビナート事
業所を対象としたアンケートでは、全般的な設問フローは一般製造業向けと同様で
あるが、問1は除いている。
4.2.2.回収結果と属性
a.回収結果
発送・回収結果は図表 4.19 から 4.21 に示すとおりであり、全体として一般製造
業・エネルギー供給企業の回収率は 18.2%、コンビナート事業所の回収率は 25.3%
となった。
なお、回答結果の構成比に関しては、項目ごとに四捨五入しているため合計は必
ずしも 100%にならない場合がある。
- 80 -
図表4.18
Q1
一般製造業等向けアンケートの設問フロー
シェールガスの認知度
あり
Q2
シェールガス革命の影響の有無
Q3
影響分野
Q4
原料等の調達価格への影響
Q5
国内需要・国内生産等への影響
Q6
海外需要・海外生産等への影響
Q7
影響への取り組みの有無
なし
ない・不明
あり
Q9
川上・川下分野への影響
Q8
取組内容
Q10 将来の天然ガス価格の見通し
(3~5 年後,6~10 年後)
Q11
産学官連携支援への期待
Q12
自由意見
Q13 企業属性
①社名
②所在地
③業種
④従業員数
⑤北米支店・系列会社の有無
⑥自家発電の保有状況→あり→燃料
⑦回答者氏名・役職、連絡先(TEL、E-mail)
⑧インタビューの可否
(注)アンケート調査票については資料編参照
コンビナート事業所を対象としたアンケートでは、問1は除いている。
- 81 -
図表4.19
発送数内訳
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
一般製造業等
89
89
294
412
137
割合
8.7%
8.7%
28.8%
40.4%
13.4%
コンビナート事業所
-
-
28
12
55
割合
-
-
29.5%
12.6%
57.9%
計
1,021
100.0%
95
100.0%
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
無回答
計
一般製造業等
11
25
52
75
16
7
186
図表4.20
割合
5.9%
13.4%
28.0%
40.3%
8.6%
3.8%
100.0%
回収数内訳
コンビナート事業所
0
0
9
3
12
-
24
図表4.21
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
計
一般製造業等
12.4%
28.1%
17.7%
18.2%
11.7%
18.2%
割合
0.0%
0.0%
37.5%
12.5%
50.0%
-
100.0%
回収率
コンビナート事業所
-
-
32.1%
25.0%
21.8%
25.3%
b.企業規模
回答企業・事業所の従業員規模は図表 4.22 のとおりである。一般製造業等では、
「51 人~100 人以下」の企業が 44.6%と最も多く、コンビナート事業所では「301
人以上」が 54.2%(13 件)で最も多い。
図表4.22
従業員規模
一般製造業等
301人以上
15.6%
無回答
1.1%
コンビナート事業所
21人~50人以下
3.2%
2件
20人以下
8.3%
2件
21人~50人以下
8.3%
2件
51人~100人以下
8.3%
101人~300人以下
35.5%
51人~100人以下
44.6%
13件
301人以上
54.2%
(注)コンビナート事業所のグラフについては件数も示す。以下、同様
- 82 -
5件
101人~300人以下
20.8%
c.業種
業種についてみると、図表 4.23 のように、一般製造業等では食料品製造業
(14.0%)
、輸送用機械器具製造業(11.8%)、一般機械器具製造業(11.3%)が多
く、コンビナート事業所では化学工業が 58.3%(14 件)と半数を超えている。
図表4.23
業種
一般製造業等
0.0%
5.0%
コンビナート事業所
10.0%
食料品製造業
飲料・たばこ・飼料製造業
14.0%
2.7%
1.1%
パルプ・紙・紙加工品製造業
化学工業
非鉄金属製造業
1件, 4.2%
輸送用機械器具製造業
1件, 4.2%
その他
無回答
3.2%
4件, 16.7%
0件, 0.0%
5.4%
1.6%
窯業・土石製品製造業
5.4%
1.1%
1.6%
金属製品製造業
8.1%
一般機械器具製造業
11.3%
電気機械器具製造業
4.8%
0.5%
輸送用機械器具製造業
精密機械器具製造業
1件, 4.2%
5.9%
プラスチック製品製造業
電子部品・デバイス製造業
80.0%
3件, 12.5%
鉄鋼業
2.7%
印刷・同関連業
非鉄金属製造業
60.0%
14件, 58.3%
石油製品・石炭製品製造業
4.8%
木材・木製品製造業
鉄鋼業
40.0%
3.8%
衣服・その他の繊維製品製造業
ゴム製品製造業
20.0%
化学工業
1.6%
繊維工業
家具・装備品製造業
0.0%
15.0%
11.8%
0.5%
その他
無回答
5.9%
2.2%
d.その他環境
企業の環境について図表 4.24 に示す。北米での系列支店・事業所を持っている
一般製造業等は 3.2%と少ない。一方でコンビナート事業所では3分の1の企業(8
件)が北米の支店・事業所を有している。また、自家発電設備については、一般製
造業等の 16.7%、コンビナート事業所では半数の事業所が保有している。
図表4.24
その他操業環境
一般製造業等
件数
北米での系列支店・事業
所
自家発電設備
コンビナート事業所
構成比
件数
構成比
あ り
6
3.2%
8
33.3%
な し
175
94.1%
16
66.7%
5
2.7%
0
0.0%
あ り
31
16.7%
12
50.0%
な し
148
79.6%
12
50.0%
7
3.8%
0
0.0%
無回答
無回答
- 83 -
4.2.3.調査結果
a.シェールガスの認知度
一般製造業等におけるシェールガスの認知度では、「関心があり、よく知ってい
る」もしくは「やや関心はあり、冒頭で書かれている程度(=シェールガス革命に
ついての概要説明:資料編に掲載)のことは知っている」企業をあわせると、既に
一定の関心を持っていた企業が 79%であり、認知度は高いことがわかる(図表 4.25)
。
図表4.25
シェールガスの認知度(一般製造業等)
あまり知らないが
今回,関心を
持った
11.8%
知らない。当社と
は全く関係ないと
無回答
考える
1.6%
7.5%
関心があり,よく
知っている
11.3%
やや関心はあり,
冒頭で書かれて
いる程度のことは
知っている
67.7%
b.シェールガス革命の影響
シェールガス革命の影響は図表 4.26 のとおりであり、一般製造業等において「既
に影響があった」もしくは「影響が出ていると思われることがある」企業はあわせ
て 4.8%にとどまり、34.9%の企業では「まだ影響はないが3~5年後に影響があ
ると考える」と回答している。
コンビナートの事業所では「既に影響があった」もしくは「影響が出ていると思
われることがある」という回答はあわせて 37.5%(9件)である。一方で、「まだ
影響はないが3~5年後に影響があると考える」事業所も 20.8%(5件)であり、
「影響が出ていると思われることがある」という回答割合と同数で最も多い。
図表4.26
シェールガス革命の影響
一般製造業等
無回答
0.5%
既に影響があった
1.6%
判別できない
29.0%
全く影響は及ば
ないと考える
11.3%
コンビナート事業所
4件
既に影響が
あった
16.7%
影響が出ている
と思われることが
ある
3.2%
9件
判別できない
37.5%
まだ影響はない
が,3~5年後に
は影響があると
考える
34.9%
まだ影響はなく,
5年以上先でなけ
れば影響はない
と考える
19.4%
1件
全く影響は及
ばないと考える
4.2%
- 84 -
5件
まだ影響はな
いが,3~5年
後には影響が
あると考える
20.8%
5件
影響が出てい
ると思われるこ
とがある
20.8%
図表4.27
シェールガス革命の影響(一般製造業等)
既に影響があった
影響が出ていると思われることがある
まだ影響はないが,3~5年後には影響があると考える
まだ影響はなく,5年以上先でなければ影響はないと考える
全く影響は及ばないと考える
判別できない
無回答
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
100.0%
食料品製造業(N=26)
飲料・たばこ・飼料製造業(N=3)
繊維工業(N=7)
衣服・その他の繊維製品製造業(N=9) 11.1%
木材・木製品製造業(N=5)
家具・装備品製造業(N=2)
パルプ・紙・紙加工品製造業(N=5)
印刷・同関連業(N=11)
化学工業(N=6)
16.7%
プラスチック製品製造業(N=10)
ゴム製品製造業(N=3)
窯業・土石製品製造業(N=10)
鉄鋼業(N=2)
非鉄金属製造業(N=3)
金属製品製造業(N=15) 6.7%
一般機械器具製造業(N=21) 9.5%
電気機械器具製造業(N=9)
電子部品・デバイス製造業(N=1)
輸送用機械器具製造業(N=22) 9.1%
精密機械器具製造業(N=1)
その他(N=11) 9.1%
無回答(N=4)
一般製造業等における業種別回答をみると図表 4.27 のとおりであり、各業種で
母数は少ないものの、既にシェールガス革命の影響がみられる業種は、一般機械器
具製造業である(9.5%)
。これは広島県、山口県の企業であり、他の設問の回答か
ら判断してシェールガスによりプラスの影響を受けている企業が 1 社、マイナスの
影響を受けている企業が 1 社である。
これ以外の業種でシェールガスの影響が出ていると考える企業は、化学工業
(16.7%)
、衣服・その他の製品製造業(11.1%)、輸送用機械器具製造業(9.1%)、
その他の業種(エネルギー供給企業等
9.1%)、金属製品製造業(6.7%)である。
また、県別の回答をみると、図表 4.28 のとおり、島根県を除いた県では「まだ
影響はないが3~5年後に影響があると考える」企業が多い。
一方で、コンビナート事業所では、水島コンビナートにおいて影響を感じている
事業所が多く、山口県では「判別できない」とする事業所が多い。
- 85 -
図表4.28
シェールガス革命の県別影響
一般製造業等
上段:件数
下段:%
全
既に影
響があ
った
影響が
出ている
と思われ
ることが
ある
まだ影響はな
いが,3~5 年
後には影響
があると考え
る
まだ影響はな
く,5 年以上先
でなければ影
響はないと考え
る
全く影響
は及ばな
いと考え
る
判別でき
ない
3
1.6
1
1.9
1
1.3
1
6.3
0
0.0
6
3.2
1
1.9
3
4.0
2
28.6
65
34.9
4
36.4
8
32.0
21
40.4
24
32.0
8
50.0
0
0.0
36
19.4
2
18.2
5
20.0
13
25.0
14
18.7
2
12.5
0
0.0
21
11.3
2
18.2
2
8.0
4
7.7
10
13.3
1
6.3
2
28.6
54
29.0
3
27.3
10
40.0
12
23.1
23
30.7
4
25.0
2
28.6
既に影
響があ
った
影響が出
ていると
思われる
ことがあ
る
まだ影響は
ないが,3~5
年後には影
響があると考
える
まだ影響はな
く,5 年以上先
でなければ影
響はないと考え
る
全く影響
は及ばな
いと考え
る
判別でき
ない
4
16.7
2
22.2
2
16.7
5
20.8
4
44.4
1
33.3
-
5
20.8
1
11.1
2
66.7
2
16.7
-
1
4.2
1
8.3
9
37.5
2
22.2
7
58.3
合計
186
100.0
11
100.0
25
100.0
52
100.0
75
100.0
16
100.0
7
100.0
体
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
無回答
無回答
1
0.5
1
14.3
コンビナート事業所
上段:件数
下段:%
全
合計
24
100.0
9
100.0
3
100.0
12
100.0
体
岡山県
広島県
山口県
無回答
-
(注)鳥取県、島根県は対象無し
c.影響分野
シェールガス革命の影響分野としては図表 4.29 のとおりであり、一般製造業等
ではシェールガス使用分野で、燃料への影響が生じると考えられている。
一方でコンビナート事業所では燃料とともに原材料への影響が考えられており
(ともに7件ずつ)
、主なその回答先は石油精製業である。
図表4.29
影響分野(複数回答)
一般製造業等
0.0%
20.0%
シェールガスの使用(燃料)分野
39.8%
シェールガスの使用(原材料)分野
シェールガスの掘削分野
シェールガスの流通分野
その他
無回答
コンビナート事業所
40.0%
16.1%
2.7%
9.1%
60.0%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
シェールガスの使用(燃料)分野
7件, 29.2%
シェールガスの使用(原材料)分野
7件, 29.2%
シェールガスの掘削分野
0件, 0.0%
シェールガスの流通分野
0件, 0.0%
5.9%
その他
40.9%
無回答
- 86 -
4件, 16.7%
9件, 37.5%
<参考>影響分野の例〔調査票(設問)に記載〕
・シェールガスの使用(燃料)分野:発電用燃料、自動車燃料等
・シェールガスの使用(原材料)分野:化学製品〔エチレン(基礎品・誘導品等)〕、鉄鋼(還元剤)、
化学プラント向け設備等
・シェールガスの掘削分野:掘削装置、掘削装置用部品の工作機械、鋼管、化学物質、廃水処理等
・シェールガスの流通分野:輸送タンク(炭素繊維)、LNG 運搬船、港湾設備、液化設備等
その他の回答としては、コンビナート事業所でベンゼン等のマーケットでの影響
といった具体例があげられていた。
d.原料等の調達価格への影響
原料等の調達価格へのシェールガス革命の影響についてみると、図表 4.30 のと
おり一般製造業等、コンビナート事業所ともに「エネルギー調達価格の低下」とい
う回答が最も多い(一般製造業等 30.1%、コンビナート事業所 20.8%)。ついで一
般製造業等では「国内からの原材料調達価格の低下」を 21.0%の企業が見込んでお
り、コンビナート事業所では「海外からの原材料調達価格の低下」16.7%(4件)
の事業所で見込まれている。素材型企業の立地するコンビナートでは、相対的にシ
ェールガス由来の原料からダイレクトな影響が想定されている。
図表4.30
原料等の調達価格への影響(複数回答)
一般製造業等
0.0%
20.0%
国内からの原材料調達価格の低下
国内からの原材料調達価格の上昇
無回答
60.0%
0.0%
国内からの原材料調達価格の低下
国内からの原材料調達価格の上昇
3.8%
20.0%
海外からの原材料調達価格の上昇
0.5%
エネルギー調達価格の低下
30.1%
その他
4.8%
44.6%
40.0%
60.0%
1件, 4.2%
2件, 8.3%
海外からの原材料調達価格の低下
12.4%
エネルギー調達価格の低下
その他
40.0%
21.0%
海外からの原材料調達価格の低下
海外からの原材料調達価格の上昇
コンビナート事業所
4件, 16.7%
0件, 0.0%
5件, 20.8%
2件, 8.3%
無回答
11件, 45.8%
一般製造業等で影響のある原材料・エネルギーについての具体的な回答をみると、
以下のようにまとめられ、ガス価格への影響を最も強く考えており、ついで電力価
格に影響が生じると考える企業が多い。
・ガス価格:低下8件、変動9件
・電力価格:低下8件、変動2件
・エネルギー調達価格:低下4件、変動1件
・原油価格:上昇3件、低下1件、重油価格の変動2件
・原材料価格の変動5件、石化誘導品(ポリエチレン等)価格の低下5件
(注)変動とは価格が低下か上昇か不明な回答を示す
コンビナート事業所においても石炭、原油、重油、天然ガスといった化石燃料に
影響が及ぶと回答されており、燃料価格全般に影響を与えると考えられている(図
表 4.31)。
- 87 -
図表4.31
区
影響のあるエネルギー・原材料(コンビナート事業所)
分
内
容
所在地
C 重油、再生重油
石炭
自家発電燃料として使用している石油コークスの価格下落
調達先の拡大や価格指標、受入品質の多様化に伴う発電用燃料としてのL
NG調達価格の低下を期待している
天然ガス、H2 製造
石油を含む化石燃料価格
ナフサクラッカーより生ずる原材料の上昇(需要バランス変化に伴う)
当社では原油を原材料としているが、中東産油国の動向、投機に大きく影
響を受ける為、現時点でどのように推移するか予想する事は難しい
ベンゼン・ブタジエン価格の上昇
エネルギー
原材料
岡山県
広島県
山口県
岡山県
山口県
e.国内需要・国内生産等への影響
国内需要・国内生産等へのシェールガス革命の影響についてみると図表 4.32 の
とおりであり、一般製造業等では「国内事業所の売上の増加」を 14.0%の企業が見
込んでおり、これに伴い「国内事業所の生産能力の増強」を図る企業が 9.7%とな
っている。
コンビナート事業所では、
「国内事業所での売上の減少」が 16.7%(4件)、「国
内事業所の生産能力の縮小」が 12.5%(3件)となっている。
図表4.32
国内需要・国内生産等への影響(複数回答)
一般製造業等
0.0%
コンビナート事業所
20.0%
国内事業所の売上の増加
国内事業所での売上の減少
国内事業所の生産能力の増強
国内事業所の生産能力の縮小
1.1%
海外から国内への輸入量の増加
6.5%
1.1%
その他
20.0%
6.5%
無回答
4件, 16.7%
3件, 12.5%
2件, 8.3%
0件, 0.0%
自家発電燃料のガス比率の上昇
0件, 0.0%
その他
55.4%
3件, 12.5%
無回答
このように国内への影響では、一般製造業等においてはビジネスチャンスと捉え
プラス評価であり、コンビナート事業所において競争環境の激化と捉え、マイナス
評価がなされている。
その他の回答として、一般製造業等でボイラー燃料のガス比率の上昇などがあげ
られているものの、多くは無回答となっている。
また、一般製造業等において影響を受ける製品等についての主な回答は次のよう
にまとめられる。
- 88 -
60.0%
0件, 0.0%
海外から国内への輸入量の減少
13.4%
40.0%
2件, 8.3%
国内事業所での売上の減少
9.7%
自家発電燃料のガス比率の上昇
0.0%
国内事業所の売上の増加
14.0%
海外から国内への輸入量の増加
海外から国内への輸入量の減少
60.0%
2.2%
国内事業所の生産能力の増強
国内事業所の生産能力の縮小
40.0%
13件, 54.2%
・プラスチック容器や繊維製品等の化学製品:4件
・掘削装置の部品:4件
・ガス供給体制:3件
・燃料転換:2件
・LNG 運搬船部材:2件
一方でコンビナート事業所における回答では各社の製品にプラス、マイナスの影
響が及ぶことが懸念されており、「国内事業所の売上の増加」はベンゼン関連でみ
られる。
f.海外需要・海外生産等への影響
海外需要・海外生産等へのシェールガス革命の影響についてみると、図表 4.33
のとおりであり、一般製造業等では、「国内事業所から海外への輸出量の増加」が
6.5%であり、ついで「海外事業所の売上の増加」が 4.3%となっている。
コンビナート事業所では、
「海外事業所の生産能力の増強」を 12.5%(3件)の
事業所が見込んでおり、海外事業所の売上の増加」が 8.3%(2件)である。
図表4.33
海外需要・海外生産等への影響(複数回答)
一般製造業等
0.0%
海外事業所の売上の増加
海外事業所の売上の減少
国内事業所から海外への輸出量の増加
国内事業所から海外への輸出量の減少
海外事業所の生産能力の増強
海外事業所の生産能力の縮小
その他
コンビナート事業所
20.0%
40.0%
60.0%
0.0%
80.0%
海外事業所の売上の増加
4.3%
海外事業所の売上の減少
0.5%
6.5%
国内事業所から海外への輸出量の増加
国内事業所から海外への輸出量の減少
1.1%
海外事業所の生産能力の増強
2.7%
海外事業所の生産能力の縮小
0.5%
その他
16.1%
無回答
71.5%
20.0%
40.0%
60.0%
2件, 8.3%
1件, 4.2%
0件, 0.0%
1件, 4.2%
3件, 12.5%
0件, 0.0%
5件, 20.8%
無回答
14件, 58.3%
その他の回答では、コンビナート事業所では収益の減少(1件)があげられていた。
影響の具体的内容として、一般製造業等では、コストダウンによる価格競争力の
上昇(4件)が最も多くなっており、コンビナート事業所では、フェノール樹脂接
着剤への影響、化学品等の海外生産シフトの加速といった回答がみられた。
国内需要・国内生産等への影響と海外需要・海外生産等への影響の回答の関係に
ついて図表 4.34 でみると、一般製造業等では「国内事業所の売上の増加」とする
企業では「海外事業所の売上の増加」、「国内事業所から海外への輸出量の増加」と
いう回答が多い。また、「国内事業所の生産能力の増強」とする企業では「海外事
業所の売上の増加」が多い。このように、海外需要の高まりとともに国内事業所の
売上増加が考えられている。
コンビナート事業所では、「国内事業所の生産能力の縮小」は「海外事業所の売
上の増加」、「海外事業所の生産能力の増強」を伴っており(ともに1件)、今後の
海外生産へのシフトの可能性がうかがえる。
- 89 -
80.0%
図表4.34
国内需要・国内生産等への影響別海外需要・海外生産等への影響
一般製造業等
上段:件数
下段:%
全
海外事
業所の
売上の
増加
合計
体
国内事業所の
売上の増加
国内事業所の
売上の減少
国内事業所の
生産能力の増強
国内事業所の
生産能力の縮小
海外から国内へ
の輸入量の増加
海外から国内へ
の輸入量の減少
自家発電燃料の
ガス比率の上昇
その他
無回答
186
100.0
26
100.0
4
100.0
18
100.0
2
100.0
12
100.0
2
100.0
12
100.0
25
100.0
103
100.0
海外事
業所の
売上の
減少
8
4.3
5
19.2
1
25.0
5
27.8
1
8.3
-
国内事業所
から海外へ
の輸出量の
減少
国内事業所か
ら海外への輸
出量の増加
1
0.5
1
25.0
1
50.0
-
12
6.5
5
19.2
3
16.7
6
50.0
1
4.0
1
1.0
海外事業
所の生産
能力の増
強
2
1.1
1
25.0
1
5.6
-
海外事業
所の生産
能力の縮
小
5
2.7
2
7.7
1
25.0
2
11.1
1
50.0
1
8.3
-
1
0.5
1
50.0
-
その他
30
16.1
6
23.1
1
25.0
4
22.2
3
25.0
3
25.0
17
68.0
2
1.9
無回答
133
71.5
11
42.3
1
25.0
6
33.3
3
25.0
1
50.0
8
66.7
7
28.0
100
97.1
コンビナート事業所
上段:件数
下段:%
全
海外事
業所の売
上の増加
合計
体
国内事業所の
売上の増加
海外事
業所の
売上の
減少
国内事業所
から海外へ
の輸出量の
減少
海外事業
所の生産
能力の増
強
その他
無回答
24
2
1
1
3
5
14
100.0
8.3
4.2
4.2
12.5
20.8
58.3
2
-
-
-
-
2
-
100.0
-
-
-
-
100.0
-
国内事業所の
売上の減少
4
-
1
1
-
-
2
100.0
-
25.0
25.0
-
-
50.0
国内事業所の
生産能力の縮小
3
1
-
1
1
-
1
100.0
33.3
-
33.3
33.3
-
33.3
海外から国内へ
の輸入量の増加
2
-
-
1
1
-
-
100.0
-
-
50.0
50.0
-
-
その他
無回答
3
-
-
-
-
3
100.0
-
-
-
-
100.0
-
13
1
-
-
1
-
11
100.0
7.7
-
-
7.7
-
84.6
(注)国内需要・国内生産等への影響の回答として「国内事業所の生産能力の増強」、「海外から国内への輸入量の
減少」、「自家発電燃料のガス比率の上昇」は無い。また、海外需要・海外生産等への影響の回答として、「国
内事業所から海外への輸出量の増加」、「海外事業所の生産能力の縮小」は無い
- 90 -
g.影響への取組み
シェールガス革命の影響に対する取組み(対応)についてみると、図表 4.35 の
とおりであり、「既に取組みを行っている企業」及び「まだ取組みは行っていない
が、近々取り組む予定である」企業をあわせると、一般製造業等では 4.9%、コン
ビナート事業所では 20.9%(計5件)となる。
最も多い構成比の回答は一般製造業等、コンビナート事業所、ともに「影響が明
確になった際に取り組む」
である
(一般製造業等 37.1%、コンビナート事業所 25.0%
(6件))
。
図表4.35
影響への取組み
一般製造業等
コンビナート事業所
まだ取り組みは
行っていないが,
近々取り組む予
定である
2.2%
既に取り組みを
行っている
2.7%
無回答
40.9%
影響が明確
になった際に
は取り組む
37.1%
取り組む予定は
ない
17.2%
4件
既に取り組みを
行っている
16.7%
10件
無回答
41.7%
3件
取り組む予定は
ない
12.5%
- 91 -
1件
まだ取り組みは
行っていないが,
近々取り組む予
定である
4.2%
6件
影響が明確に
なった際には取り
組む
25.0%
h.取組内容
影響に対する具体的な取組内容は図表 4.36 のとおりであり、関連製品の製造・
開発や販売についての取組みがみられる。
図表4.36
分類
具体的取組内容
一般製造業等
コンビナート事業所
①北米での工場建設,②国内事業所の競争
力強化(広島県)
燃料(LNG)噴射弁(岡山県)
製造・開発
エネルギー
調達
設
備
①LNG 運搬船船型開発,②LNG を燃料とし
たエンジン、船型の開発(広島県)
①化学プラント(エチレン、肥料)向けコ
ンプレッサ・タービンの増産、生産能力向
上②LNG ブランド向けコンプレッサ・ター
ビンの高性能化、新機種開発(広島県)
LPG から LNG へ切替え、主要エネルギーを
全て LNG に切替える工事をする
現在 LNG:LPG=8:2(岡山県)
エネルギー源の変更(機械、ボイラー等の
変更)(広島県)
ボイラーを重油から天然ガスに切替えた
(岡山県)
LNG,PUMP の販売促進(広島県)
販
売
全
般
①設備投資が減少する顧客から他の顧客
へのシフト,②LNG 発電所関連の業務の受
注強化(山口県)
安価なエネルギーの輸入/提供(山口県)
一部の事業所において、シェールガスを含
むメタン濃度の高い LNG 燃料を使用できる
よう、設備改造を検討している(広島県)
ユーザーへの価格上昇について理解を求
める(化学原料を用いて最終製品を製造す
る事業所:岡山県)
①シェールガス採掘時使用量が拡大する
事が見込まれる製品の販売強化,②シェー
ルガス革命により不足すると思われる C4
以降の原材料の安定調達の検討(山口県)
シェールガス革命が、事業に与える影響に
ついて調査検討している(広島県)
注:1 セルが 1 社の回答
i.川上・川下分野への影響
原材料調達先や製品販売先に対する影響についてみると図表 4.37 のとおりであ
り、一般製造業等の 36.6%、コンビナート事業所の 50.0%で関連する他企業への
影響があると回答されている。
図表4.37
川上・川下分野への影響
一般製造業等
コンビナート事業所
無回答
2.2%
10件
わからない
41.7%
ある
36.6%
わからない
52.2%
ない
9.1%
2件
ない
8.3%
- 92 -
12件
ある
50.0%
具体的な影響についての回答をみると、一般製造業等では、川上分野でのエネル
ギーコストの低減により、川上から調達する原材料価格低下を見込む企業が多い
(回答 58 件中 28 件:50%)
。
コンビナート事業所では、ガス、電力における価格低下という回答がみられる(10
件中5件)。他方でコンビナートの縮小により、川上企業からの原料供給を不安視
する見方が 10 件中4件あげられている。
j.将来の天然ガス価格の見通し
将来の天然ガス価格の見通しについてみると図表 4.38 のとおりであり、5年後
(平成 31(2019)年頃)には安くなると考える企業は、一般製造業等で 37.1%、
コンビナート事業所で 33.3%(8件)であり、3~4割の企業、事業所が近い将来
の天然ガス価格低下を見通している。
また、10 年後(平成 36(2024)年頃)までには、一般製造業等で 47.3%、コン
ビナート事業所で回答者のうち 62.5%が天然ガス価格の低下を見込んでいる。
図表4.38
将来の天然ガス価格の見通し
3~5年後(平成 29(2017)-平成 31(2019)年頃)
一般製造業等
コンビナート事業所
無回答
3.2%
わからない
19.9%
上昇している
11.8%
5件
わからない
20.8%
安くなっている
37.1%
1件
上昇している
4.2%
現状を維持している
28.0%
1件
無回答
4.2%
8件
安くなっている
33.3%
9件
現状を維持して
いる
37.5%
6~10 年後(平成 32(2020)-平成 36(2024)年頃)
一般製造業等
コンビナート事業所
無回答
4.8%
7件
わからない
29.2%
安くなっている
47.3%
わからない
28.5%
現状を維持して
いる
10.8%
2件
現状を維持して
いる
8.3%
上昇している
8.6%
- 93 -
15件
安くなっている
62.5%
一般製造業等において、自家発電設備の有無と天然ガス価格の将来見込みとの関
係をみると、図表 4.39 のとおりであり、自家発電設備が「ある」場合は「ない」
場合に比べて、将来の天然ガス価格が「安くなっている」、「現状を維持している」
という各回答構成比の差が大きくなっている(3~5年後:あり 51.6%-22.6%
=29.0%、なし 35.8%-28.4%=7.4%、6~10 年後:あり 64.5%-6.5%=58.0%、
なし 45.3%-11.5%=33.8%)
。
これにより、自家発電設備を有する企業の方が天然ガス価格の低下に対して明る
い見通しを持っていると考えられる。
コンビナート事業所では母数が少ないことからこうした傾向はみられない。
図表4.39
自家発電設備保有別将来の天然ガス価格の見通し
3~5年後・一般製造業等
上段:件数,
下段:%
合 計
あ り
な し
無回答
全体
安くなっている
現状を維持している
上昇している
わからない
無回答
186
69
52
22
37
6
100.0
37.1
28.0
11.8
19.9
3.2
31
16
7
2
6
-
100.0
51.6
22.6
6.5
19.4
-
148
53
42
19
29
5
100.0
35.8
28.4
12.8
19.6
3.4
7
-
3
1
2
1
100.0
-
42.9
14.3
28.6
14.3
6~10 年後・一般製造業等
上段:件数,
下段:%
合 計
あ り
な し
無回答
全体
安くなっている
現状を維持している
上昇している
わからない
無回答
186
100.0
88
47.3
20
10.8
16
8.6
53
28.5
9
4.8
31
100.0
148
100.0
20
64.5
67
45.3
2
6.5
17
11.5
1
3.2
13
8.8
7
22.6
44
29.7
1
3.2
7
4.7
7
100.0
1
14.3
1
14.3
2
28.6
2
28.6
1
14.3
- 94 -
k.産学官連携等による支援への期待
シェールガス革命に関して期待する産学官連携等による支援について は図表
4.40 のとおりであり、一般製造業等、コンビナート事業所ともに、ガス発電設備へ
の転換や LNG 受入基地拡充等の「設備投資支援」が最も多く、次いで化学技術、掘
削技術等に関連した「研究開発支援」となっている。
図表4.40
産学官連携等による支援への期待
一般製造業等
コンビナート事業所
人材育成・確保支援
4.3%
研究開発支援
10.2%
1件
無回答
4.2%
販路開拓・輸出支援
2.7%
無回答
15.1%
3件
研究開発支援
12.5%
1件
販路開拓・輸出支援
4.2%
6件
ない
25.0%
設備投資支援
17.2%
2件
人材育成・確保支援
8.3%
9件
設備投資支援
37.5%
ない
40.3%
2件
その他
8.3%
その他
5.4%
「その他」では、一般製造業等では、シェールガス革命の影響に関する幅広い情
報提供が3件、水素に関する研究が1件であった。なおコンビナート事業所ではそ
の他の記入はなかった。具体的支援内容の記入についてみると図表 4.41 のとおり
でとなっている。
図表4.41
分類
研究
開発
支援
具体的な支援内容
一般製造業等
コンビナート事業所
①シェールガス革命による燃費削減効果,②安
全なエネルギー開発,③シェールガス掘削に対
する環境への影響(岡山県)
シェールガスに関する化学技術の開発(岡山
県)
シェールガスに関する化学技術の開発(岡山県)
シェールガスに関する化学技術の開発(岡山県)
シェールガス革命に起因して必要となる技術開
発の支援(山口県)
LNG 運搬船の技術開発(広島県)
シェールガスに関する化学技術開発(広島県)
人材
育成
・
確保
支援
販路開拓・
輸出支援
①シェールガスを使用する部品(シェールガ
ス)の法規、規格の知識・取得,②シェールガ
スの特性を考慮出来る人材育成(岡山県)
シェールガス掘削に関連した人材育成・確保
(広島県)
コンプレッサ・タービン等の回転機械に関連す
る人材(設計技術者)の育成・確保(広島県)
輸送方法の改善、保管方法の改善(岡山県)
- 95 -
安価に供給出来る販路開拓支援(山口県)
図表4.41
分類
具体的な支援内容(続き)
一般製造業等
コンビナート事業所
使用燃料をガス化(天然ガス,LP ガス)する場
合の設備更新支援(鳥取県)
エネルギーが重油・電力から天然ガスに変わる
ことによる設備投資支援(島根県)
LNG を安価に仕入れる為の受入設備への投資支
援(岡山県)
LNG 基地拡充の為の支援が求められる(山口県)
シェールガス対応設備の拡大(広島県)
設備
投資
支援
①シェールガスによる火力発電事業育成,②発
電設備新設援助(広島県)
燃料転換等にかかる設備投資への支援(広島県)
シェールガスに対応する為の設備投資支援策等
を期待する(広島県)
原油価格等に影響があれば、発電用燃料として
変更が必要(設備投資)(広島県)
効率的設備機器の開発支援(山口県)
情報
提供
シェールガス革命による印刷・製本業界への影
響に関する情報(岡山県)
中小企業経営に与える影響等幅広い情報提供を
お願いしたい(岡山県)
シェールガス革命の影響に関する情報提供(岡
山県)
シェールガス革命の進捗状況について、中国地
域の強み(製造業、コンビナート等)を活かす
為のポイントを絞った適宜・適確な情報発信(岡
山県)
シェールガスによる資材等コストへの影響(広
島県)
どの様な有効活用策があるか等の情報提供(広
島県)
シェールガス革命の影響に関する情報提供(特
に石油化学製品及び燃料の価格影響)(山口県)
全般
シェールガスの普及を速くすることにより、エ
ネルギー価格が下がる方法を実行する事(岡山
県)
ナフサクラッカー需給バランスの見通し等情報
提供(岡山県)
シェールガス革命の影響に関する情報提供を期
待している(広島県)
①高付加価値製品製造へのシフト,②国内独立
系製造者(プラント)の既存コンビナートへの
移転、集約支援,③安価なエネルギー輸入の為
のインフラ整備(山口県)
注:1 セルが 1 社の回答
ちなみに、シェールガス革命の影響別に産学官連携等による支援への期待につい
てみると、図表 4.42 のとおりであり、一般製造業等では、今後の影響の想定の有
無に関わらず「ない」とする回答が多い。
コンビナート事業所では影響を「判別できない」事業所が「ない」と回答をして
いる。
- 96 -
図表4.42
影響別産学官連携等による支援への期待
一般製造業等
上段:件数
下段:%
合計
全体
186
100.0
既に影響があった
影響が出ていると
思われることがある
まだ影響はないが,
3~5 年後には影響
があると考える
まだ影響はなく,5
年以上先でなけれ
ば影響はないと考
える
全く影響は及ばな
いと考える
判別できない
無回答
研究開
発支援
人材育成・
確保支援
販路開拓・
輸出支援
海外生産拠
点設置支援
設備投
資支援
24
12.9
9
4.8
7
3.8
1
0.5
32
17.2
10
5.4
75
40.3
28
15.1
3
100.0
6
100.0
65
1
33.3
10
1
33.3
4
3
-
1
16.7
16
1
16.7
3
1
16.7
21
1
33.3
3
50.0
8
100.0
15.4
6.2
4.6
-
24.6
4.6
32.3
12.3
36
3
2
1
1
7
1
17
4
100.0
8.3
5.6
2.8
2.8
19.4
2.8
47.2
11.1
21
100.0
54
100.0
2
9.5
8
14.8
1
4.8
1
1.9
1
4.8
2
3.7
-
2
9.5
6
11.1
1
4.8
4
7.4
11
52.4
25
46.3
3
14.3
8
14.8
1
100.0
-
-
-
-
-
-
-
1
100.0
その他
ない
無回答
コンビナート事業所
上段:件数
下段:%
全体
既に影響があった
影響が出ていると
思われることがある
まだ影響はない
が,3~5 年後には
影響があると考え
る
まだ影響はなく,5
年以上先でなけれ
ば影響はないと考
える
全く影響は及ばな
いと考える
判別できない
研究開
発支援
合計
人材育成・
確保支援
販路開拓・
輸出支援
海外生産拠
点設置支援
設備投
資支援
その他
ない
無回答
24
100.0
4
100.0
5
100.0
5
3
12.5
2
50.0
1
20.0
-
2
8.3
1
25.0
1
20.0
-
1
4.2
-
-
9
37.5
1
25.0
2
40.0
3
2
8.3
1
20.0
-
6
25.0
1
1
4.2
1
100.0
-
-
-
-
60.0
-
20.0
20.0
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1
100.0
9
100.0
-
-
1
11.1
-
1
100.0
2
22.2
1
11.1
5
55.6
-
また、県別の産学官連携等による支援への期待の回答をみると、図表 4.43 のとお
りである。
- 97 -
図表4.43
県別産学官連携等による支援への期待
一般製造業等
上段:件数
下段:%
全
体
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
無回答
合計
研究開
発支援
人材育成・
確保支援
販路開拓・
輸出支援
海外生産拠
点設置支援
設備投
資支援
その他
ない
無回答
186
100.0
24
12.9
9
4.8
7
3.8
1
0.5
32
17.2
10
5.4
75
40.3
28
15.1
11
100.0
25
100.0
52
100.0
75
100.0
16
100.0
1
9.1
3
12.0
3
5.8
14
18.7
3
18.8
4
7.7
4
5.3
-
1
4.0
3
5.8
2
2.7
1
6.3
1
1.3
-
2
18.2
4
16.0
9
17.3
13
17.3
3
18.8
7
13.5
1
1.3
-
7
63.6
12
48.0
20
38.5
29
38.7
7
43.8
1
9.1
5
20.0
6
11.5
11
14.7
2
12.5
7
100.0
0
0.0
1
14.3
0
0.0
0
0.0
1
14.3
2
28.6
0
0.0
3
42.9
ない
無回答
コンビナート事業所
上段:件数
下段:%
全
体
岡山県
広島県
山口県
合計
24
100.0
9
100.0
3
100.0
12
100.0
研究開発
支援
人材育成・
確保支援
販路開拓・
輸出支援
3
12.5
2
22.2
1
8.3
2
8.3
2
22.2
-
1
4.2
1
8.3
海外生産拠
点設置支援
(注)鳥取県、島根県は対象無し
- 98 -
-
設備投
資支援
9
37.5
3
33.3
6
50.0
その他
2
8.3
1
33.3
1
8.3
6
25.0
2
22.2
1
33.3
3
25.0
1
4.2
1
33.3
-
4.2.4.調査結果の総括
シェールガス革命の影響・対応等に対してアンケート結果は以下のように整理で
きる。
①
一般製造業等でのシェールガスの認知度は約 80%である。
②
シェールガス革命の影響は、「まだ影響はないが 3~5 年後に影響がある」と
考える企業が多い。
③
一般製造業等ではシェールガス革命は燃料分野での影響が生じると見込ま
れている。コンビナート事業所では燃料分野とともに原材料分野での影響が生
じると見込まれており、石油精製業の回答が主である。
④
一般製造業等、コンビナート事業所ともに、「エネルギー調達価格の低下」
が最も予見されている。
⑤
国内の影響として、一般製造業等では「国内事業所の売上の増加」、「国内事
業所の生産能力の増強」を見込む回答が多く、概ねプラス評価。一方でコンビ
ナート事業所では「国内事業所での売上の減少」、「国内事業所の生産能力の縮
小」を見込む回答が多く、概ねマイナス評価。
⑥
海外からの影響として、一般製造業等では「国内事業所から海外への輸出量
の増加」、
「海外事業所の売上の増加」を見込む回答が多い。一方でコンビナー
ト事業所では、「海外事業所の生産能力の増強」、「海外事業所の売上の増加」
を見込む回答が多く、一部には海外生産シフトの可能性を示唆する回答もある。
⑦
影響に対して一般製造業等の約5%、コンビナート事業所の約 20%(5件)
で対応を実施中もしくは実施予定としている。ただし、一般製造業等、コンビ
ナート事業所、ともに「影響が明確になった際に取り組む」とする回答が最も
多い。具体的な取組内容をみると関連製品の製造・開発や販売促進などでの取
組みが見られる。
⑧
原材料調達先や製品販売先への影響では、一般製造業等の約 40%、コンビナ
ート事業所の半数で、影響があると見込んでいる。多くの一般製造業等では、
燃料価格の低下により川上企業で生産コストが削減され、結果、川上企業より
調達する原材料の価格が低下することを見込んでいる。
- 99 -
⑨
将来の天然ガス価格の見通しでは、一般製造業等、コンビナート事業所、と
もに3分の1が、3から5年後(平成 29(2017)~平成 31(2019)年頃)に
は「安くなっている」とみている。また、6から 10 年後(平成 32(2020)~
平成 36(2024)年頃)に「安くなっている」とする回答割合は更に増加する(一
般製造業約 50%、コンビナート事業所約 60%(15 件))。このように今後、天
然ガス価格は低下すると見込まれている。また、一般製造業等においては自家
発電設備を保有する企業のほうが、保有していない企業に比べて、天然ガス価
格の低下に明るい見通しを持っている。
⑩
影響に対する産学官連携等による支援への期待では、発電設備転換や LNG 受
入基地拡充等のため「設備投資支援」が最も多く、次いで化学技術関連等の「研
究開発支援」となっている。また、具体的な支援に関する回答をみると、情報
提供に対するニーズも高いことがうかがえる。
- 100 -
4.3.シェールガス革命による影響と域内企業等の動向(中国地域ヒアリング調査)
4.3.1.中国地域ヒアリング調査の概要
a.調査訪問先
中国地域におけるシェールガス革命の産業界への影響を全般的に把握するため、ア
ンケート回答企業を中心にエネルギー産業・石油化学産業・一般製造業企業へのヒア
リング調査を実施した(図表 4.44)。また、コンビナート支援状況等を把握するため、
行政機関に対しヒアリング調査を平成 26(2014)年9月~12 月の間に実施した。ヒ
アリング先は計 15 先である。
図表4.44
No.
域内企業等へのヒアリング調査 訪問先
訪問先
事
業
概
要
エネルギー産業
1
A社
ガス事業、ガス工事等
2
B社
電気事業、総合エネルギー供給事業等
石油・石油化学産業
3
C社
化成品・樹脂等
4
D社
石油精製・石油化学製品の製造・販売等
5
E社
石油精製等
6
F社
化成品・樹脂等
7
G社
機能化学品事業、基礎化学品事業、石化事業等
8
H社
化成品、特殊品等
9
I社
石油化学事業、機能商品事業等
一般製造業
10
J社
化学プラントのメンテナンス、産業機械等
11
K社
コンプレッサ、駆動タービン等の設計・製作・販売等
12
L社
LPG 運搬船・化学品運搬品等
13
M社
金属工作機械製造業、工作機械の改造修理業等
行政機関
14
岡山県
行政機関
15
山口県
行政機関
(注)石油化学メーカーでは現時点でシェールガスの影響を事業上想定していないため、ヒアリング不可
となった企業が複数あった
- 101 -
b.調査項目
各訪問先への主なヒアリング項目は図表 4.45 のとおりである。
図表4.45
中国地域ヒアリング調査 主なヒアリング項目
(企 業)
①事業概要
②シェールガス革命の認識
③シェールガス革命の影響
④シェールガス革命への対応
⑤地域経済・企業への影響・関係性
⑥産学官連携等による支援
(行政機関)
①コンビネート関連の施策・取組み
②シェールガス革命の認識
③企業等への要望事項
- 102 -
4.3.2.ヒアリング調査結果
a.シェールガス革命の影響の概況
シェールガス革命の事業への影響(現状・今後)を取りまとめると図表 4.46 のと
おりとなる。特に石油化学産業での素材代替における影響が中国地域においては実感
できる状況にはないことがうかがえる。
図表4.46
No.
シェールガス革命の影響の概況(現状・今後)
訪問先
現状の影響・対応
今後の影響・対応
エネルギー産業
1
A社
2
B社
影響について調査検討中
新たな調達ソースの一環として検
討中
(価格低減・安定調達への寄与を
期待)
(価格低減・安定調達への寄与を
期待)
石油精製・石油化学産業
3
C社
掘削分野で少しだけ影響
-
4
D社
エネルギーの輸入・提供に関す
る検討・取組みを実施中
-
5
E社
掘削・輸送分野等で影響あり
3~5年先の話?
6
F社
現時点ではない
-
7
G社
現時点ではない
-
8
H社
現時点ではない
9
I社
現時点ではない
自家発燃料として石炭からのシフ
トは容易ではない
ひとまず3~5年先の話?
一般製造業
10
11
J社(プラントメンテナンス)
K社
(一般機械:コンプレッサ)
12
13
L社(造船)
M社
(一般機械:工作機械)
-
コンビナート縮小を加速化さ
せ、売上減少
事業拡大に大きく貢献
海外事業展開を推進
「化学分野」は本年度でピーク
特需はあった
ほぼピーク
海外進出工作機械メーカーか
らの波及効果あり
- 103 -
今後はメンテナンス等にも注力
-
b.分野別影響
分野(エネルギー産業、石油化学産業、一般製造業等)別にシェールガス革命の影
響、対応、課題、支援策等の要望について取りまとめる。
(a)域内エネルギー産業への影響(燃料代替)
図表4.47 域内エネルギー産業への影響
内
容
・全国的には電力・ガス会社とも平成 28(2016)~平成 29(2017)年からのシェ
ールガスの輸入が計画されているものの、中国地域においてはシェールガスに
影
限定するのではなく、新たな LNG 調達先・調達手段の一つとして検討されてい
る段階であり、具体的な調達計画は決定されていない。
・シェールガスの調達に関しては、輸入価格そのものの直接的な低減効果という
よりは、新たな価格方式の出現による価格交渉力の強化、調達地域の分散化・
響
多様化による安定調達への寄与という2つの効果が期待されている。
シェールガスに固執する訳ではないが、無視できない大きい存在に。
・軽質 LNG の導入にあたっては、設備改修や運用面で見直しが必要になる。ガス
会社では熱量調整、電力会社ではバーナー等の燃焼装置を改良する必要がある。
対
電力会社においては一部発電所において軽質ガスへの対応可能な発電設備への
改修工事が既に実施されている。
・シェールガス価格は現在の Henry Hub 価格ベースでは、液化・輸送コストを考
慮しても、従来の原油価格連動より高い経済性が見込まれているが、改修費用
応
や調達可能量を勘案して総合的に判断する必要がある。
・インフラ面では LNG 基地において LNG の効率的な輸送に資する輸入設備の工事
が行われている。
課
題
要
望
・
意
見
・LNG 普及に向け基地受入後の流通という点では、広島県、山口県の需要過疎地域
ではパイプラインが敷設されておらず、“ミッシングリンク”が存在している。
〔インフラ整備・規制緩和〕
・港湾関係のインフラ整備支援・規制緩和
〔その他〕
・環境面を考慮した、LNG 内航船の普及
- 104 -
等
(b)域内石油化学産業への影響(素材代替・燃料代替)
図表4.48 域内石油化学産業への影響
項
目
素材代替
影
(化学製品)
響
内
容
・多くの企業が、シェールガス革命の影響として、エタン由来の安価
なエチレン誘導品のアジア市場への流入の一方でブタジエン、芳香
族の需給の逼迫を想定している。
・しかし、化学製品の需要には様々な要因が影響しており、現時点でシェ
ールガス革命によるものと判別できるほどの状況にはなっていない。
・石油化学分野における素材代替よりも掘削・輸送分野への部素材の
供給という面で影響を受けている企業はある。ただし、その市場規
模は、影響が懸念されるエチレン誘導品等の市場と比較すれば非常
に小さい。
影響のパスは想定されるも、実感には至っていない。
燃料代替
(自家発)
対
素材代替
(化学製品)
応
燃料代替
(自家発)
課
素材代替
(化学製品)
題
燃料代替
(自家発)
・エネルギー源として石炭の比率の高い中国地域においては、LNG 価格
の直接的な低下よりも、シェールガスの供給増による石炭価格への
波及・低下を期待するケースも少なくない。
・(シェールガス革命への直接的な対応というわけではないが、)継続
的な取組みとしてコンビナート競争力強化策を実施している。
・シェールガス革命により影響を受ける品目に関連した新たな触媒技
術の開発は域外で実施されている(ヒアリング先以外では域内での
同技術の実証実験等の事例あり)。
・自家発等のエネルギー源として利用の意向はあるものの、一企業が
調達するのは困難な状況。
・企業間連携を拡大する余地
(コンビナート内、コンビナート外近隣企業との連携)
・設備の老朽化、需要に対する生産能力の限界
・運転員の高齢化、技術伝承
・ガスパイプラインの敷設が不十分
〔企業間連携支援〕
要望・意見
・企業間連携の場の設定 ・企業間連携を促進する設備投資支援
(コンビナート内で原材料・エネルギーを高度利用、安定供給・融通する
ための設備投資、連携独立系プラントの移転費用等)
〔インフラ整備〕
・原材料輸入、製品輸出のための港湾関係のインフラ整備
・天然ガス普及のためパイプライン敷設、LNG 基地拡充、共同調達のた
めの支援
〔研究開発支援〕
・高付加価値品へのシフトのための研究開発支援
・CO2 関連、ガス化学関連の研究開発支援
・先進的な水素エリア確立といった他施策とのコラボレート
〔情報提供〕
・化学品の市場動向、新たな技術開発動向、米国のシェール開発動向等の
情報提供
〔規制緩和〕
・工場設備改修・拡充時の規制緩和 等
- 105 -
(c)一般製造業等への影響
図表4.49 域内一般製造業への影響
項目
内
容
・(造船業)リーマンショックで大変な打撃を受け、2014 年問題で、先行きを危惧し
ていたが、シェールガス革命の特需に助けられた面が多い。
・(一般機械①)石油化学プラント向けコンプレッサが平成 23(2011)年頃から出始
海
外
め、海外事業所・工場の設置など事業規模の拡大に大きく貢献。
・(一般機械②)掘削関連製品を製作する工作機械メーカーの北米進出に伴い円筒研
影 需
削盤の需要が発生。
響 要 ・ただし、運搬船、石油化学プラント関連の新設需要は本年度がピークとの見通し。
・
シェールガス特需は一巡の様相。恒常的な需要への対応やメンテナンス需要への
対
シフトが見込まれる。
応
国
内
・(建設業)石油コンビナートの縮小・統合から、メンテナンス業務の縮小を危惧。
一方で、コンビナート遊休地の活用による新規設備投資に期待。
需
地域経済への影響が大きい分野であり、地域コンビナートに関連した新たな方向
要
性が提示されることを期待。
・人員不足による機会損失、産業衰退の懸念
造船業:高齢化・若年層の域外への流出
課
一般製造業:グローバル人材、石油化学の専門知識を持った人材等
の地方における確保の困難さ
題
建設業:建設作業員の人手不足
・長期的なエネルギー政策の不透明感よる対応の困難さ
・為替レートに大きく業況が左右される収益構造
〔規制緩和・人材育成・確保〕
要
望
・
意
見
・海外需要への迅速な対応を図るための支援
(輸出手続の緩和、専門人材・グローバル人材確保の支援)
・高齢者の技能伝承
・産業間の労働力移動のための支援(成長産業への人材移動)
〔全 般〕
・地域エネルギー戦略の策定
等
図表4.50 ヒアリング調査におけるシェールガス革命の影響の域内波及度合い(イメージ)
「一部最早
ピークアウト」
石油化学産業
エネルギー産業
一般製造業
>
「目の前の課題」
- 106 -
>
「実感に至らず」
c.行政機関の取組み
各県のコンビナートの立地状況等も踏まえ支援施策を展開・検討している。会合等
においてシェールガスの影響をうかがわせる発言等はなかった。
(a)コンビナート関連の取組み
(岡山県)
水島コンビナートは岡山県の製造品出荷額の半分を占め、県経済の中核を担って
いる。平成 19(2007)年にはアジア有数の競争力を持つコンビナートをめざし「水
島コンビナート国際競争力強化ビジョン」を策定し、さらに、当該ビジョンの具体
的な取組として、平成 23(2011)年には「ハイパー&グリーンイノベーション水島
コンビナート総合特区」の指定を受けた。
総合特区の戦略としては3つあり、「①バーチャル・ワン・カンパニーの実現」、
「②水島港ハイパーロジスティックス港湾戦略」、「③グリーンイノベーションコン
ビナート戦略」からなる。それぞれの戦略に基づく、規制緩和や支援措置の実現に
よる立地企業の操業環境の向上を支援している。
平成 26(2014)年度からは、新規事業への参入、国内複数拠点の集約化、生産量
増大に伴う新たな拠点の整備を行う企業を対象にコンビナート企業の遊休地の利活
用につながる、
「拠点工場化等投資促進補助金」を設け、工場集約化や成長分野への
参入を目指した拠点整備を後押ししている。
(山口県)
平成 25(2013)年4月に「山口県産業戦略本部」
(以下「本部」
)を設置し、行政
と企業等が一体となって産業戦略を統括的・総合的に推進している。さらに、本部
での意見や提言をもとに、同年7月、「やまぐち産業戦略推進計画」(以下「推進計
画」)を策定した。
「推進計画」の5つの「重点戦略」のうち、
『国際競争に打ち勝つ「瀬戸内産業再
生戦略」』には、「物流拠点港湾の機能強化」、「工業用水の安定供給」等のプロジェ
クトを掲げている。
「瀬戸内産業の再生」を一丁目一番地に掲げていること自体、産
業戦略上、瀬戸内コンビナートの重要性を伺わせる。
平成 25(2013)年には「物流拠点港湾の機能強化」、「工業用水の安定供給」等、
特にハード面での着実な進展がみられたこともあり、今後は本部の会合等で意見の
あった「企業間連携」について、複数のコンビナートが瀬戸内沿岸に立地する山口
県固有の状況や、各コンビナートでのこれまでの取組み、企業構成等を踏まえた上
で、企業の主体的な取組が促進されるよう、検討を進めたいと考えている。
- 107 -
(b)取組み概要(まとめ)
各県の取組みをまとめると図表 4.51 のとおりとなる。
図表4.51 取組み概要(まとめ)
項
目
県(組織)
現状の取組み
(コンビナート
関係)
企業ニーズの
把握機関
今までの
成果
企業間連携
(次ステップ
含む)
今後の
取組み
(検討中含む)
シェールガス
の認知度
内
岡山県
(総合政策局 政策推進課
産業労働部 産業振興課)
・「水島コンビナート総合特区」の
取組みを通じ、規制緩和や税制、
財政支援による操業環境の向上
を支援中(平成 23(2011)年~)
・水島コンビナート発展推進協議会
・総合特区検討ワーキンググループ
・企業ニーズに基づく規制緩和等を
実現化
・水素・オフガスハイウエイ構想の
推進
・マザー工場化への支援
等
容
山口県
(産業戦略部 瀬戸内戦略室)
・
「やまぐち産業戦略推進計画」におい
てコンビナートを含む「瀬戸内産業
再生戦略」を策定・実施中
(平成 25(2013)年~)
・「山口県産業戦略本部」会合
・同 分野別会合「瀬戸内産業」
・ハード面(港湾、工業用水等)での
施策の進展
・県内コンビナートの連携の場作りの
検討
・総合特区構想に基づく戦略の推進
・企業ニーズの把握継続
・企業ニーズの把握継続
・会合等でのシェールガスに関する
企業のコメントはなし
・本部会合や企業訪問の中で、シェー
ルガス革命を強く意識する意見等は
聞いていない
【コラム「水素とシェールガス」
】
○米 国
シェールガス開発はエネルギーコスト等の直接的な削減だけでなく、副産品として
良質な水素が大量に入手可能となり、産業ガスとしての水素製造や今後の水素燃料電
池の燃料コスト削減にも貢献する。
米国エネルギー省は、こうした流れを受け、平成 25(2013)年5月に新たな官民
パートナーシップである H2USA(プロジェクト)を立ち上げた。この組織は燃料電池
自動車等への輸送用エネルギーとして水素インフラの整備を推進し、手頃な価格でク
リーンな水素燃料を供給することを目指している。
○日 本
平成 26(2014)年4月に閣議決定された第4次エネルギー基本計画では「技術革
新が進んできていることから、水素をエネルギーとして利用する“水素社会”につい
ての包括的な検討を進めるべき時期に差し掛かっている」と認識されている。また、
- 108 -
同年6月には同計画をもとに、
「水素・燃料電池戦略ロードマップ」が策定され、今
後の水素社会実現に向けて、3つのフェーズに分けて取組みを進めていくこととされ
ている(図表 4.52)。
図表4.52 水素・燃料電池戦略ロードマップ概要
資料:水素・燃料電池戦略協議会(2014.6)
「水素・燃料電池戦略ロードマップ概要」
○地域での取組み
各地域においても水素社会の実現に向けた独自の取組みがなされており、官民が連
携して推進されている。中国地域では、周南コンビナートのある周南市で、「周南市
水素利活用協議会」が設置されており、平成 26(2014)年 4 月には「周南市水素利
活用構想」が策定されている。同市では中四国で初となる水素ステーションの整備が
進んでおり、周南コンビナートで苛性ソーダ製造の際に副生される水素を活かしたま
ちづくりが推進されている。また、水島コンビナートでは「水島コンビナート総合特
区水素利活用研究会」が設置され、コンビナート内における水素・オフガスネットワ
ークの構築に向けて技術的・制度的課題や先進事例の研究が行われている。
首都圏では空港リムジンバスやタクシー等で燃料電池自動車や燃料電池バスによ
る関連事業が進められているほか、京浜コンビナート(川崎市)ではスマート・コン
ビナートを目指して、コンビナート企業間における水素融通が行われコスト削減とと
もに CO2 削減に寄与している。また、水素は水を電気分解することで製造でき、バッ
テリーよりも長期エネルギー保存が可能であるため、今後の再生可能エネルギーの余
剰電力貯蔵手段としても注目されている。
今後、水素需要の拡大とともに、瀬戸内海沿岸にコンビナートを有し、温暖で日射
量の多い中国地域がクリーン・エネルギーである水素の国内製造拠点となることが期
待される。
- 109 -
5.石油化学・シェールガス関連の研究
5.1.学識者ヒアリング調査(石油化学産業、石油化学技術関連)
5.1.1.ヒアリング調査の概要
学識経験者に対しシェールガス革命に関連し、産業界の採るべき方向性、技術動向
を把握するためのヒアリング調査を実施した。
実施期間は平成 26(2014)年9月~11 月、ヒアリング先は計5名(石油化学産業
関連2名、石油化学技術関連3名)である(図表 5.1)
。
図表5.1
No
学識者ヒアリング調査
訪問先
.
訪問先
事業概要
石油化学産業関連
a
b
一橋大学
橘川
武郎 教授
和光大学
岩間
大学院商学研究科
経済経営学部
剛一 教授
経営史・エネルギー産業論
資源エネルギー論
石油化学技術関連
c
早稲田大学
先進理工学部
応用化学科
関根 泰
教授
触媒・資源化学プロセス
鳥取大学 大学院工学研究科 化
d
学・生物応用工学専攻
片田 直伸
e
島根大学
小俣
触媒化学(固体触媒)
教授
総合理工学部
光司 教授
触媒・化学プロセス
- 110 -
5.1.2.主な意見
a.一橋大学 大学院商学研究科 橘川 武郎 教授
≪主な意見≫
・シェールガスのエネルギー調達という点で北東アジアにおける連携の可能性。
・
「資本の壁」を越え「石油-石化」の連携・一体化を進めることが重要。LLC 等
の活用により、コンビナートごとに1カンパニーにしていくことが好ましい
・中国地域では未連携「石油-石化」隣接企業の連携、域内・域外コンビナート
間の連携、海外コンビナートとの連携も視野に入れるべき。
・日本の石化産業の生き残りのためには、
「高付加価値化」と「ボリュームゾーン
攻略」の「2正面作戦」をとることが重要。
・コンビナートは二度と作れない希少な財産。行政も住民に、コンビナートの重
要性をアピールすべき。
b.和光大学 経済経営学部
岩間 剛一
教授
≪主な意見≫
・北米のエタンクラッカーの新設は平成 28(2016)年以降であるが、既存のエタ
ンクラッカーも増設や稼働率を上げており、脅威は既に発生している。
・日本の石油化学産業の強みはオペレーション能力の高さ。この強みの維持、グ
ローバル展開が今後のカギ。
・シェールガスを使って「何が出来るか」
、「何が出来ないか」の棲み分けを明確
化し、産業戦略に繋げていくことが重要。
・産学連携によって、ナフサという複雑な構造を持った原料でしか作れない高機
能な化学品を製造することが必要。
c.早稲田大学 先進理工学部応用化学科
関根 泰 教授
≪主な意見≫
・エチレンの原料であるエタンは天然ガス価格で動き、エチレン価格自体は石油
価格で動くという歪みが発生している。
・シェールガス関連で重要と考えられるのは「CNG 自動車」
、「還元鉄生産」、「合
成ガス経由化学」
、
「メタン直接化学」の4つ。
・現在のコンビナート連携には電力会社、鉄鋼会社が入っていないことが大きな
欠点。
・日本の石油・石化製品が「連産品」であることを意識すべき。
・中国地域においては電力会社が音頭を取り、瀬戸内エネルギー戦略を策定すべ
き。
- 111 -
d.鳥取大学 大学院工学研究科 化学・生物応用工学専攻
片田 直伸 教授
≪主な意見≫
・シェールガス革命は石油会社、石油化学会社の経営に大きな影響を及ぼす。国
際化に対応してきた石油化学会社でもシェールガスへの対応を明確化している
のは、数少ない。そういった点では非常に心もとない。
・長期的にはメタン・エタンを出発とした工業体系が確立される。
・ナフサを出発とした、プロピレン、ブタジエン、芳香族に関連した新たな触媒
技術は向う5~10 年の繋ぎの役割。
・自動車産業との摺り合わせの深化、オールジャパン支援体制の構築が重要。
e.島根大学 総合理工学部
小俣 光司
教授
≪主な意見≫
・C1 化学と重質油の高度利用の研究を実施中。
・シェールガス革命による国内の C1 化学の復権はすぐには難しい状況。
・触媒研究は1テーマの研究期間が長いため、産学連携による短縮化等の効果が
期待される分野。産学連携は双方にメリット。
- 112 -
<参考>個別ヒアリング内容
(a)一橋大学 大学院商学研究科
訪問日
橘川
武郎 教授
平成 26(2014)年 9 月 24 日(火)
○シェールガス革命について
・シェールガス革命が可能となったのは「水平
掘削」
、
「水圧破砕」
、
「マイクロサイズミック」
の3つの技術革新による。埋蔵量自体は中国
の方が上回るが、米国でシェール革命が可能
となったのは豊富な「水」を確保できる点と、
輸送インフラとしてのパイプラインが国内
いたるところに敷設されているためである。
次のシェール革命の場所は、アルゼンチン、
一橋大学 大学院商学研究科
ポーランドと言われている。
橘川 武郎 教授(HP より)
・一昨年9月にはシェールガス革命発祥の地と
もいえるダラス近辺の Barnet のシェールガス田を現地見学した。
昨年3月には Dry
から Wet へのガス田のシフトしていることもあり、Eagle Ford 等を見学した。シ
ェールガス革命を理解するには現地を見ることを勧める。
○エネルギー産業への影響と対応
【影響】
・エネルギーとしてのシェールガス革命としては、LNG に目が行きがちであるが、実
は「シェール LP ガス革命」でもある。LNG は平成 29(2017)年頃からの輸入開始
であるが、LPG は既に輸入が開始されている。現時点で価格面での影響は専ら産業
用に限られており、
「安い玉」は家庭用に回っていないのが問題である。
・民間備蓄が法律で定められているのは石油と LP ガスであるが、LP ガス 50 日分「民
間備蓄義務量軽減」の前提として小売価格の面での低廉化という話もあり、今後の
動向が注目される。
【対応】
・エネルギー調達価格という点では、ガス輸入国である北東アジア(日本、韓国、台
湾、中国等)が力を合わせてバイイングパワーを発揮すれば、調達価格の引下げも
可能ではないかと考える。
・インフラ的に、良好な港湾や広大なタンクヤードを確保することの困難な日本に
LNG ハブターミナルの設置は見込めないが、韓国ではタンク等の建設が予定され、
その役割を担うことが可能である。一方、日本は LPG のハブ運用できる施設が十分
にある。このようにシェールガス関連のエネルギー調達という点で北東アジアにお
ける連携の可能性がある。
- 113 -
【中国地域のエネルギー政策】
・地域地域にエネルギー事情には特徴があり、中国地域は石炭の利用に強みを持つと
考える。東日本大震災以降、現在まで電気料金の値上げはされておらず、工場誘致
という点でも、中国地域に有利に影響しているのではないのか。
・個人的には三隅2号機だけでなく上関も石炭発電でいいのではないのかと思ってい
る。また、IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電技術)と CO2 分離・回収を組み合わ
せた方向への発展性を持つ、IGCC(石炭ガス化複合電技術)の大崎クールジェンに
も注目している。
・周南地区で話が上がっている LNG の受入基地については、港湾の規模という面で他
地域に劣っている印象を受ける。大分地区のように Q マックスサイズ(世界最大級
の LNG 船)受入可能でないと厳しい。例えば大分地区で一旦切って、周南地区へ輸
送ということになるのではないか。規模的には、東燃ゼネラルの現在使用されてい
ない静岡県清水港地域も有望ではないかと思う。
○石油化学産業への影響と対応
【影響】
・米国におけるシェールガスの価格は$4~5/MBTU。シェールガスから作られるエタ
ンを原料としたエチレン(C2)はほぼ中東並みのコストとなっており、ポリエチ
レン等の分野では優位な状況になっている。
・ポリプロピレン(C3)ではC2 のように圧倒的なメリットはないが、世界的には
中国等の CTO(Coal to Olefin)等の脅威も大きい。
・日本のようにナフサクラッカーはC2、C3 分野で厳しくなる。ナフサ連産品であ
るC4~C8(C4~C5:特殊ゴム原料、C6~C8:芳香族)はショートする見込み
であり、C4~C8 に日本の石油化学産業の生き残りの鍵がある。
【対応】
①石油・石化の連携・一体化
・そのためには、簡単ではないが「資本の壁」を越え「石油(R)-石化(C)」の
連携・一体化を進めることが重要である。ベンチマークとなるのは台湾の麦寮(フ
ォーモサプラスチック)、インドのリライアンスである。これらは「1コンビナー
ト」=「1社」で運営しており、新規参入の際に既存メーカーの主力製品を対象と
せず、C4~C8 にウエイトを置き、生産を行っているのが特徴である。
・「壁」という点では経済産業省の「建物の壁」というものもある。産業競争力強化
法 50 条による石油業界の再編に乗り出したが、別館(資源エネルギー庁)は「石
油(R)」業界の再編、(本館の)経済産業省製造産業局は「石化(C)」業界の再
編を目指している。本当は「石油(R)-石化(C)」を繋げることが重要である。
ただし、直近、石油・石化共、業況は必ずしも悪くないので、連携の意欲が低下気
味なのは残念なことである。
- 114 -
・また、今回のエネルギー供給構造高度化法では対象を、
「重質油分解装置の装備率」
から「残油処理装置の装備率」とし、新たに「流動接触分解装置(FCC)」、
「重油直
接脱硫装置」
、
「溶剤脱れき装置」も算出式の分子に含めたことは好ましいことであ
る。
<参考>図表5.2 エネルギー供給構造高度化法(関係部分)
旧判断基準
対応期限
②分母:トッパー(公称能力削減
は不可)
装備率
改善率
平成 29(2017)年 3 月末
平成 26(2014)年 3 月末
①分子:RFCC、Coker、H-Oil
装備率の定義
新判断基準
(可及的速やかに)
①分子:RFCC、Coker、H-Oil、FCC、重油直
接脱硫装置、溶剤脱れき装置
②分母:トッパー(公称能力削減も可)
装備率
目標改善率
45%以上
45%未満
13%以上
10%以上 13%未満
30%以上
45%以上 55%未満
11%以上
13%以上
15%以上
55%以上
10%未満
目標改善率
9%以上
①共同対応の場合:複数企業で 1 つの能力
を削減した場合、その削減量を当該企業
事業再編促進
(親子会社または兄弟会社はグル
ープ対応可能)
間で融通できる。
②グループ会社対応の場合:共通の子会社
を有する複数の親会社が当該子会社をグ
ループ化する場合、共通の子会社の分
子・分母を任意の割合で案分できる。
資料:資源エネルギー庁「石油天然ガス小委員会」資料より作成
・コンビナートの運営形態についても、
「1コンビナート」=「1社」が理想である。
「資本の壁」があるため会社単位での経営統合は難しいと思うが、LLC(Limited
Liability Company)等の活用により、コンビナートごとに1カンパニーにしてい
くことが好ましい。
・
「石油(R)-石化(C)
」の連携については、地区地区によって状況が異なる。千
葉地区の場合、エチレンセンター5つ、石油精製4社あり、組み合わせは多い。鹿
島地区・水島地区は1対1で比較的明確である。大分地区も1対1であるが、RING
にも参加していない状況であるので、連携は容易ではない。
・コンビナート再編というと必ず地方側(例えば「工場長」)の権限が限定的という
問題が挙がってくる。企業毎、事業所のランク等によって権限の状況は異なるが、
本社側が継続的に関与し、再編に関与していくことが不可欠である。ただし、JX
日鉱日石は水島地区(地方)から発足したということを忘れてはいけない。
・そういう意味では「本社:東京」-「現場」という関係でなく、各コンビナートに
本社があり、世界中の情報を取ってくような状況になれば望ましい。地方に本社が
あってもいい。トヨタ自動車もそうである。
- 115 -
②中国地域における「石油-石化」の連携
・中国地域の水島地区では「石油(R)
」同士、
「石化(C)」同士は連携しているが、
「石油(R)-石化(C)
」連携が弱い。
・連携という観点では周南地区が「石油(R)-石化(C)
」とも1社で運営され、
先行していた。コンビナートからのパイプが市街地の下を通っている地区は、な
かなかない。ただし、今年の3月でトッパー(常圧蒸留装置)が止まったのは残
念なことである。
・周南地区は石油コンビナートというよりも塩素コンビナートという様相であり、
シェールガスの影響は大きくないのではないのか。それよりも、
「宇部興産」-「西
部石油」
、
「三井化学」-「JX 日鉱日石 麻里布」の連携の余地があると考える。
・コンビナート内での連携に加え、周南地区と水島地区といったコンビナート間の
連携も有り得る。少し視野を広げれば大分地区、さらに韓国の蔚山(ウルサン)・
麗水(ヨス)等も対象となってくるのではないか。中国地域と韓国は距離が近い。
③「2正面作戦」
・米国・中東・新興国等へ進出して国際競争力を強め、ボリュームゾーンに攻め込
まない限り、日本の石化産業に未来はない。海外進出により国際競争に勝ち抜き
企業が成長することができれば、「本社機能の拡大」、「R&D 機能の強化」
、「高付
加価値品生産への特化」
、あるいは「マザーファクトリー化」などの様々な経路を
通じて、日本国内の仕事(雇用)も増える。
・また、現在、石油化学関連で一番儲かるのは、米国でエタンクラッカーを運営す
ることである。エチレン価格はガス価格ほど低下しておらず、スプレッドが稼げ
る。
・そのうえで医薬品など高機能な商品を展開する。それが総合化学に求められるコ
アコンピタンスである。米国は中東に比べカントリーリスクや人員確保といった
問題も少ないことも利点である。
・ただし、現時点でエチレンプラントを米国で計画しているのは、信越化学工業に
限られ、更にプラントの規模も大規模とは言えない。そういう意味では日本の総
合化学メーカーにも果敢に挑戦してもらいたい。
・以上のように、日本の石油化学産業の生き残りのためには、
「高付加価値化」と「ボ
リュームゾーン攻略」の「2正面作戦」をとることが重要である。
○シェールガス革命の影響への支援策
〔国・地方行政等に求められる支援策〕
・コンビナートは二度と作れない希少な財産であり、関係者がその認識を持つべき
である。仮に新しいコンビナートの可能性があるとすれば、北九州の「ひびき」
ぐらいである。行政も一般の人に(コンビナート企業が納める税金が)税収全体
に占める割合等を示し、コンビナートの重要性をアピールすべきである。
- 116 -
・具体的な支援策としては税制面(法人税の減税、原料非課税の維持等)での支援、
港湾規制(夜間着桟橋規制等)の緩和、事業連携・転換の支援、それに伴う雇用
の確保等が挙げられる。
・また、中国地域が特に誇るべき点は特に瀬戸内地域での「産業」と「自然」の調
和ということではないか。世界遺産に申請するに値する。
〔産学官連携による対応〕
・産学官連携という点では、稲葉先生のような化学産業等の研究者が増え、石油化
学コンビナートへの理解が深まれば好ましい。
・また、人材面では従前から行われている石化工場のオペレーターの育成・教育等
にも引き続き取り組んでもらいたい。さらに、
「工場萌え」により、コンビナート
に興味を持ってくれる人もいるので、女性・若年者の労働力確保に繋げてもらい
たい。
- 117 -
(b)和光大学 経済経営学部 岩間 剛一 教授
訪問日
平成 26(2014)年 11 月 21 日(金)
○シェールガス革命について
・シェールガス革命は私の予想より米国では2か
ら3年早く進み、日本では2から3年遅れてい
る。中国、ポーランドでも思っているほど進行
しているわけではない。
・5から 10 年単位ではシェールガス革命の進行を
推定するのは困難であるが、埋蔵量から考えれ
ば超長期的には影響を及ぼすことは間違いない。
中国でのシェール開発の進捗がここ数年のリス
ク要因になるのではないか。
和光大学 経済経営学部
岩間 剛一
教授(HP より)
・足下のガス価格は今月$4/Mbtu 台に戻っている。これを石油換算すると$24/bbl
位である。現在、北海ブレントが$80/bbl であるため、4 倍程度の価格差がある。
○米国の石油化学産業の状況
〔シェールガスとの関連〕
・シェールガス革命は従来、エネルギーの世界の話であったが、1年位前から石油
化学産業へも影響を与えるようになってきている。エタンクラッカーによるエチ
レン生産である。この動きは予想より2から3年年早かった。ダウ・ケミカルが
年間 150 万トン、世界最大級のエチレンプラントを建設することとした。
・日本は 13A という天然ガスを使用している。これはメタンだけでは熱量が少ない
ためプロパンやブタンを混ぜて高熱量にして都市ガスや発電用に使用している。
一方、米国ではエタン等が混ざり高熱量になるとパイプラインのコンプレッサが
損傷するため、
エタンは基本的には邪魔者で、フレアとして燃やして捨てていた。
捨てていたものでエチレンが製造できるので、生産コストはゼロという感覚であ
る。
〔シェールオイルとの関連〕
・米国の原油生産量も(ガス同様)増加傾向にあり、平成 25(2013)年には 1,000
万 bbl/day を超えており、足下でのシェールオイル生産量は 450 万 bbl/day にな
っている。その結果、世界的な原油価格の下落の要因ともなっている。
・米国は昭和 45(1970)年に 1,000 万 bbl/day を超える世界一の産油国となったが、
平成 25(2013)年に大産油国に返り咲いた。平成 20(2008)年のオイルピーク論
は完全に覆された。
・米国で、ここまで原油生産量が増加すれば、ナフサを原料としたエチレン生産も
可能であるが、ガス価格と原油価格が乖離した現状では、価格の高いエチレン生
- 118 -
産は無駄である。
・米国国内でさらにシェールオイル生産が増大し、米国だけ原油価格が安くなれば、
ナフサクラッカーによる石油化学が成立する可能性があるが、その確率は非常に
低いと考える。原油は常温常圧で液体であるため、輸送が簡単であり、国際商品
として貿易され、
国際価格に収斂し、米国だけ価格が安くなることは考えにくい。
一方、天然ガスは常温常圧で気体であり、液化に関連するコストがかかるため地
理的な分断が起こりやすい。
〔米国 石油化学産業の競争力〕
・日本の石油化学の原料がナフサであり、原油価格と連動することと比較すると、
中東の石油や北米のシェールに随伴してくるガスで、捨てていたものであり、実
質的に生産コストゼロである。エチレンだけで作れる汎用品の分野では日本は圧
倒的に不利になる。
・新設のエチレンプラントの竣工は平成 27(2016)年以降であるが、既存のエチレ
ンプラントも増設や稼働率を上げてシェールガス由来のエタンを多く使用として
いる。エチレン汎用品においては脅威になってくる。
・中東でのエタンの価格は、例えば、国営石油会社サウジアラビコ社から住友化学
は$0.75/Mbtu(石油換算 $4.5/bbl 市場価格の約 1/20)で調達している。ただ
し、中東のエチレンプラントは米国のエチレンプラントほど脅威ではないと考え
る。
・石油化学は高度なオペレーションを必要とするが、中東は技術者の水準や経験か
ら日本の石油化学に匹敵する品質の製品を作るにはかなり時間がかかる。一方、
米国の場合にはエクソン・モービルやシェブロン等は日本の石油化学メーカーよ
り技術的に勝る部分が少なくない。米国でエチレンプラントの建設は大きな脅威。
○国内石油化学産業への影響と対応
【影響】
・足下、エチレンの需給が逼迫し、ナフサ価格とエチレン価格の差が大きく、石油
化学会社は利益が出せる状況にあるが、円安により円建てナフサ価格が上昇し、
非常に厳しい状況にある。長期的には日本の石油化学産業は汎用品の価格勝負で
は勝てない。
・シェールガスを使ってもナフサを基準にして、高い化学品が流通するのではない
かという考えもあるが、これほど中東、米国で安価なエタンクラッカーが立ち上
がってくると、汎用品の部分では価格の下落は起きてくる。
・日本の石油化学市場は、世界第3位の規模であり、巨大な国内市場に守られてき
た。また、石油化学製品は嵩張るため輸送コストが高く、海外から低価格品が流
入しにくい。汎用品に関しては、地理的に韓国からレジ袋が入ってくる程度。
(シ
ェールガスにより製造された製品が)メキシコ湾から輸入されることはない。そ
- 119 -
もそも国内市場が過当競争でマージンが小さいこともあり、海外企業にとって魅
力的ではない。
・ただし、その他のアジア大洋州にはシェールガスを利用した安価な石油製品が流
入すると思われる。
・国内市場は守られているが、そこに安住していてはいけない。国内市場規模も小
さくなってきている。ハイスペックの製品でどのように強みを発揮していくかが
重要になってきている。
【対応】
〔国内需要〕
①国内における石油化学産業は、
自動車、家電製品への素材を提供する分野として、
エチレンプラントの存続が不可欠である。国内需要と海外に輸出できる高機能化
学品分のエチレン生産能力は必要である。
⇒国内生産量は内需 500 万トン+外需 100 万トン程度(機能性化学製品、中国向け
等)になると予測。
②エチレンメーカーにも規模の経済性により競争力確保が求められ、提携・統合の
必要である(130 万トンクラス)
。複数の石油化学企業の事業統合により最適なエ
チレンプラントのオペレーションを可能とする。
③石油精製企業と石油化学企業の戦略的連携の深化により、80%の稼働率でも利益
が出る体制を構築する。
④高コストのナフサを原料にどのように付加価値の高い化学製品を生産するかが重
要。ナフサでなければ出来ないものに注力する。
⑤研究開発拠点は引き続き日本に残す。マザー工場として日本に残す。開発期間を
短縮するため、先端的技術を持つベンチャー企業の内外における買収。石油化学
は研究開発で一歩先んじることが重要である。
⇒単なるエチレンバランスだけでなくマザー工場化に資する統合・再編が必要。
研究開発資金の配分も強みを活かす領域(機能性化学等)に重点的に。
〔海外需要〕
①200 万tの国内余剰生産能力をアジア市場への輸出に振り向けるための、マーケ
ティング力と技術力の向上を行う。
②世界的にも基礎化学品から機能性化学品への比重のシフトが顕著である。日本独
自の機能性化学製品(エンジニアリング・プラスティック)の研究開発の継続に
より、アジア市場での優位性の維持が求められる。
③安いエチレンを利用して、自らが得意な製品を製造する。また原料地立地を念頭
- 120 -
に、安価なシェールガスを原料とした石油化学プラントを立地する。
④日本で培った石油化学技術とエンジニアリング技術によりアジア、中東における
事業展開を推進する(石油精製と一体化した効率的な事業展開、メンテナンス&
オペレーション技術の強みを活かす)。
⇒競争相手は同様の状況にある韓国のナフサクラッカー。
○シェールガス革命の影響への支援策
〔国・地方行政等に求められる支援策〕
〔産学官連携による対応〕
・シェールガスを使って何が出来るか、何が出来ないか棲み分けを明らかにしてい
くことではないか。そうすれば産業戦略が立てられる。出来ないことが分かれば
日本企業の強みにもなる。
・汎用品における価格競争への対応が難しいとなると、産学連携によって、ナフサ
という複雑な構造を持った原料でしか作れない高機能な化学品を製造する必要が
ある。
・ただし、量が“はける”ものでないといけない。日本でよく失敗するケース。単
に研究だけでなく、市場のニーズを反映して、作っていくことが必要である。
○中国地域について
・石油化学産業は裾野が広く、雇用創出力がある。中国地域産業に占めるウエイト
も高く重要な産業であり、地域の将来を考えれば競争力強化は不可欠である。
- 121 -
(c)早稲田大学
訪問日
先進理工学部応用化学科 関根 泰 教授
平成 26(2014)年 11 月 20 日(木)
○研究内容

触媒化学:非在来型触媒反応と水素製造・
天然ガス転換

水素/合成ガス製造のための非在来型触媒
システム開発

炭化水素転換のための触媒開発

常温常圧で作動する電子励起触媒プロセス
早稲田大学
先進理工学部応用化
学科 教授 関根
泰(HP より)
○石油産業について
・輸入額と業界売上の関係を見ると、石油産業は、原油 12.2 兆および原油留分 1.7
兆円を輸入し、20 兆円の売上となっており、原料比率が他業種に比べて高い。一
方で、設備投資額で見ると、石油産業の設備投資は 900 億円程度であり、全体と
して縮退気味で、新しい展開が図られていないことが分かる。
・このような中、石油産業が直面する大きな流れが二つあり、一つはシェールガス
革命であり、もう一つは「ナフサクラッカーの統合・閉鎖」である。
○シェールガス革命の状況
①天然ガスの状況
・世界のガスの流れを見ると、産出国・地域としては、ロシア、中東、北米、アジ
アの四極である。北米の産出量の 1/3 から 1/2 はシェールガスであり、世界最大
の産ガス国となっている。
・消費国・地域としては、欧州、米国、アジアの三極であり、北米では 10 円台/Nm3
でパイプラインが繋がり、ロシアはドイツにパイプライン(ノルド・ストリーム)
で 30 円/Nm3、日本へは LNG で 60 円/Nm3 で供給されている。
・ガス用途は世界で異なり、北米はこれから化学向けという話もあるが、日本での
用途は発電と都市ガスであり、
圧倒的に発電が多い状況にある。イランなど中東、
インド、ブラジル、アルゼンチン等では天然ガス自動車でも使用されている。
②石油化学への影響
・原油は世界共通の「WTI」
、
「ドバイ」、
「北海ブレント」という価格指標があり、連
動している。一方、ガスは「HH(Henry Hub)価格」のみ世界のガス価格と乖離し
て動いている。エチレン、ベンゼンは油価リンクしている。
・エチレン、プロピレン、ベンゼン、ブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン
の価格動向を CIF(運賃・保険料込み・指定仕向港)もしくは C&F(CIF の保険が
適応されない条件)ベースで見ると、派手に変動しているのはブタジエンだけで
- 122 -
あり、どの品目も世界のどこから調達(米国、欧州、中東)しても価格はほぼ同
じでる。
・天然ガス価格は、地理的な条件で大きく価格が異なるが、石油価格の主要指標は
同様に推移し、エチレン価格も CIF ならどの地域でも同じ価格になっている。一
方で、エチレンは安いエタンクラッカーでの製造が主流となってきている。ここ
が歪んだ構造の根っこになっている。
・天然ガスが安いだけなら問題にならなかったが、エタンは天然ガス価格で動き、
エチレンは石油価格で動く。しかも C&F で動くとなると、ナフサクラッカーを動
かしてエチレンを製造しようということにはならない。
○シェールガス革命における有望分野
①4つの有望分野
・メタンの利用先として一般に考えられているのは「発電(Combined Cycle & Gas
Turbine 単独)
」
、
「都市ガス」であるが、日本が見逃しているのは「製鉄(還元鉄)」、
「CNG 自動車」の分野である。さらに、世界がやりたいと思いながら、未だ上手
くいっていないのが「メタン直接転換化学」であり、これからのマーケットであ
る。
・
「発電」
、
「都市ガス」において、前者(「発電」
)はタービン温度 1,700 度級が実現
しつつあり、いずれも技術的に大きな伸びシロは見込めない。伸びシロが見込め
るのが「還元鉄生産」
、
「CNG 自動車」、「合成ガス経由化学」
、「メタン直接転換化
学」の4つである。
②製鉄(還元鉄生産)
・「還元鉄生産」は神戸製鋼の子会社 MIDREX が有力な技術(直接還元鉄生産プロセ
ス)を有している。世界的に還元鉄による生産は粗鋼全体に対して5%程度であ
るが、今後伸びが見込まれる。MIDREX とシーメンスが米国にプラントを建設し、
製造された還元鉄はヨーロッパに輸出される予定となっている。
・日本がシェールガスのポジティブな恩恵を受ける可能性のある分野である。
③CNG 自動車
・
「CNG 自動車」は完全に日本が出遅れている分野である。一般的に CNG とガソリン
の by-fuel で利用されている。現在、全世界の自動車の2%が CNG 自動車である
が、イランでは約4割、中国でも 110 万台(平成 22(2010)年)普及している。
パキスタン、インド、アルゼンチン、ブラジルでも普及している。北米でもイン
フラが整備されればあっという間に普及する可能性がある。
- 123 -
④ガス転換化学(合成ガス経由化学、メタン直接転換化学)
[技術動向]
・ここ1年、ガス化学の顕著な動きは、北米で「メタノール」、「アンモニア」のプ
ラントが立ち上がっていることである。非常にベーシックな技術を北米で展開す
るのは驚きである。
・メタンは化学的な利用方法としては、通常、水蒸気改質もしくは部分酸化で合成
ガスにすることが考えられる(合成ガス経由化学)。また、研究ベースでは、中国
が発祥であるがメタンの「芳香族化」などがある。この分野は日本でもレベルが
上がってきている。また、夢の技術と呼ばれるのはメタンを直接カップリングし
てエチレン等を生成することである。合成ガスを経ず、直接、メタノール、DME
にするのも夢の反応である(メタン直接転換化学)。
<参考>図表5.3 メタンからの化合物の生成プロセス(イメージ図)
直接合成(選択的酸化)
メタノール
高温
水蒸気改質
メタン
部分酸化反応
合成ガス
(CO+H2)
FT法
炭化水素
直接生成(酸化カップリング)
○合成ガス経由化学
[水素]
・水蒸気改質自体は水素を作る技術として 70~80 年代に確立した技術である。ただ
し、規模が小さくなると熱効率が下がるという難点がある。
・水素は簡単に作れるという状況ではあるが、
「水素が運べない」ということに対し、
国の SIP プロジェクト(戦略的イノベーション創造プログラム)の中でエネルギ
ーキャリアのプロジェクトが立ち上がっている。有機ハイドライド、NH3、液体水
素などが提案されている。内閣府は 2020 年の東京オリンピックを目途に、世界に
先駆け、水素社会のショーケースにしたいとしている。入口側の水素の一つのオ
プションとしてシェールガスから製造される水素も視野に入れる必要がある。
[メタノール]
・LNG が日本に最初に輸入される際には、LNG にするか、メタノールにするか議論と
なった。最終的に LNG となったが、メタノール輸入国となる選択肢もあった。一
- 124 -
方、現在、中国はメタノールを自国で製造するとともに輸入もしてプロピレンを
製造(MTP:Methanol to propylene)しようとしている。今後、メタノールは世
界中で奪い合いになるのではないか。エネルギーとしても化学原料としても今後
大きく動いていく。
・北米でシェールガス由来のメタノールプラントが立ち上がるのにはそのような背
景がある。今までの燃料としてパイプラインで送るとか LNG 化するという世界に、
まずメタノールを作ろうという流れが勃興しつつある。日本は全然タッチできて
おらず、メディアでは報道されていない。中国、北米がエネルギー、原材料の面
でメタノールに舵を切る中、日本は大丈夫なのかという思いはある。
[GTL、DME]
・メタンから FT(フィッシャー・トロプシュ)法で GTL(Gas to Liquid)を作る場
合、部分酸化で6割、FT で6割、最終的には 3 割程度しか熱量を捕捉できない。
水蒸気改質して熱回収して、合成ガスにし、メガメタノール化すれば 6 割ぐらい
になる。
・DME(ジメチルエーテル)もいいオプションであったが、日本はこの分野は事実上捨
てた。北海道
白糠に 100t/day の実証プラントを建設したが、今は解体されてい
る。結局、スプレーの推進剤にしか使えなかった。中国には全体で数百万 t/year
のプラントがあり、LPG 代替としても使われている。
[合成ガス経由化学(まとめ)]
・合成ガスを経由する化学としては、合成ガスを作るのは力技でどうにでもなるが、
酸化法でつくると(熱的なロスが多く)勿体ない、改質をするには熱交換が十分
に行えるメガプラントでないと効率が悪い、FT にすると油になるが日本ではディ
ーゼル用の軽油は自家用車ではあまり使われていない。
○メタン直接化学
[技術動向]
・メタンからエチレンを製造する「酸化カップリング(OCM 法)」では、Na-W-Mn/SiO2
が一番の触媒であるが、
これまでに稼働できたのはイランの「酸化カップリング」
のパイロットプラント程度である。流動床、800℃でオペレーションしているが収
率が2割以下である。
「酸化カップリング」が発見されて 30 年経つがまだ基礎研
究レベルである。
・最近、注目されているのは「臭化物」である。メタンと臭素を反応させ、それをハ
ロゲン化したものを、ゼオライトでカップリングして使う。臭化メチルは反応性が
いいので、オレフィン等に持っていきやすい。ただし、これも 30 年前の技術であ
る。かつては、臭素をリサイクルして使用する技術が成熟しなかったが、最近では
整ってきた。
・また、メタンの「芳香族化」もある。元々は中国発祥の技術であるが、モリブデ
ンカーバイドを仕込んだ MFI というゼオライトを使用する。一時期は北海道大学、
- 125 -
最近では産業技術総合研究所で研究が行われている。水素と芳香族が出るので反
応としては好ましいが、高温の熱源が必要となることやゼオライトがすぐ閉塞す
るため、移動層 2塔で再生しながら使用しなければいけない。移動層で再生し、
その熱で、FCC のように回すのが理想形である。ただし、まだ萌芽的な技術レベ
ルである。
[メタン直接転換化学(まとめ)
]
・直接転換についても様々なものがあるが、一長一短といった状況である。
○ガス転換化学(合成ガス経由化学、メタン直接転換化学:まとめ)
・
「合成ガス経由化学」については欧米の化学メーカーが先行し、日本に優位性があ
るという状況にはない。
「メタン直接化学」については誰もうまくいっていないの
で、技術を創れば勝つことも可能かもしれない。
○シェールガスへの対応
①石油化学メーカーの戦略
・日本企業もエタンクラッカーからのエチレン調達を念頭に、
「三量化して芳香族」
、
「二量化してブテン、脱水素してブタジエン」、
「二量化してエチレンと反応させ
てプロピレン」等の研究・開発をおこなっている。エチレンは日本企業も目を向
けているが、メタノールを考えている人が少ないのは問題であると思う。
・商業化に向けて MTP をしようという人は日本には少ない。北米・中国ではエチレ
ンのみならずメタノールスタートの化学に舵を切っている。
・石化メーカーも原材料国立地による海外への生産シフトを図る企業もあれば高機
能化で対応していく企業もある。ただし、ナフサクラッカーを国内でのみ展開し
ているような企業が今後どのように生き残っていくのかは心配である。
②コンビナートでの対応策
・国内のコンビナートの対応については、監督官庁が想定するコンビナート連携に
は電力会社、鉄鋼会社が入っていない。ユーティリティにおける連携でも、各社
から実績・ニーズ等の数値が上がってこないし、コンビナート全般で、無駄なく
丁寧に発電し、余った熱も利用するという体制になっていない。
・化学系では RING 事業の実績もあるが、やはり電力会社、鉄鋼会社が入っておらず、
コンビナートの中でベストミックスがされていない。鉄鋼会社のように高温の製
造プロセスを持ち、高度なエネルギーマネジメントを行っているが、その一方で
多くの熱は蒸気で逃げている。それに対し化学企業は興味を持っていない。伸び
シロは残っていると思っており、非常に勿体無い。
・また、日本の石化製品が「連産品」であることを大事にした方がいいとも思って
いる。シェールガスの輸入はその繋がりを切断するため、新たな繋がりを創造す
る必要がある。そのままであれば、レジ袋、ゴム一つ作れなくなってしまう。今
- 126 -
までの化学では石油、鉄鉱石、石灰石、水、空気とうまくバランスがとれていた
が、シェールガスの輸入はそのバランスを変えてしまう。
○産学官連携、支援策について
①産学官連携について
・企業との共同研究も複数行っているが、大学は基本的に学生が研究という題材を
ベースに、人が育っていく場所、教育機関であり、技術開発する場所でないと考
えている。研究を題材として人が育っていく中で、偶然にも見付けた面白いもの
があれば論文となるし、企業が面白いと思うものが使ってもらえばいいというス
タンスである。かつて大学発ベンチャーを立ち上げたことがあり、その経験によ
り、現在のような考えに至った。
・産学官連携も結局、
「人」対「人」である。全国の TLO(技術移転機関)がうまく
機能していないのもそこに理由があるのではないか。研究者の顔が見えない状況
では難しい。
②行政の支援策
・行政の役割は重要ではあるが、基本的には「ファンディング」と「規制」の世界
であるので、プレイヤーである技術者同士が腹を割って話し合える環境を作るこ
とが重要ではないか。
○中国地域について
・中国地域に生産拠点のある化学メーカー(特に本社が東京の企業)も、近隣の石
油・化学メーカーがなくなれば、地域から退出する可能性がある。税金が安いと
いった誘引がなければ継続的にいる理由はない。ずっといたいと思える環境を維
持しなければならず、その環境作りの根っこができるのは地域経済の雄である電
力会社ではないか。
・電力における石炭の利用率が高い中国地域はカーボン系への親和性があると考え
られる。電力会社が音頭を取りつつ石油会社、鉄鋼会社、化学会社と共同で水島
~宇部の範囲で(さらに四国の対岸を加え瀬戸内圏に広げ)
、石炭、石油、ガス等
の資源のベストミックスの絵を描いてもいいのではないかと思う。距離にして
200 から 300km であろうから、パイプでつなぐも陸送するもいろいろ出来るであ
ろう。さらに、IGCC(石炭ガス化複合発電)の大崎クールジェンというショーケー
スも中国地域には出来る。簡単なことではないであろうが、電力会社には頑張っ
てもらいたい。
・中国地域はそれなりの需要規模もあり、日本屈指の工場群もある。新幹線、高速
道路と交通インフラも充実し、気候も温暖であり恵まれている地域であり、大消
費地中国、
石油化学の盛んな韓国と距離的にも近い。今後の発展に期待している。
- 127 -
(d)鳥取大学 大学院工学研究科 化学・生物応用工学専攻 片田 直伸 教授
訪問日
平成 26(2014)年 11 月 18 日(火)
○研究内容
・触媒化学:ゼオライトをはじめとする固
体酸触媒を用いる未利用資源の有用物質
への転換等の研究を行っている。
○シェールガス革命の影響と対応
①シェールガス革命の認識
・従来の中東での巨大エタンプラント、中
鳥取大学 大学院工学研究科
国の CTO に、シェールガス革命が加わる
ことにより、
中国の需要の減退と合わせ、
片田 直伸
教授
今までの個別対応ベースでは済まない段階を迎えている。対応を間違えると会社
の経営に大きな影響を及ぼす。
・
「汎用品」から「機能品」への動きはあるものの、化学メーカーの売上の多くを占
めるのがポリエチレン、ポリプロピレンといったポリマーという現実があり、そ
の部分がシェールガス革命の影響を大きく受ける。
・日本の石油化学(エチレン、プロピレン等)に対する需要が無くなれば、日本で製
油するメリットが無くなり、トッパーも止めざるをえない。ピッチカーボンや芳香
族も製造されなくなり、多くの産業に影響を及ぼすこととなるのではないか。
②シェールガス革命への対応
〔対応の状況〕
・石油メーカーは専ら受身で、新しいものに手を出す方向にならなかったが、石油
化学メーカーは国際的に事業展開を行ってきた。その石油化学メーカーでもシェ
ールガスへの対応を明確化しているのは、数少ない。そういった点では非常に心
もとない。
・ここに来てシェールガス革命に対応出来ていない理由の一つとしては、国内では
「石油」
、
「ガス」
、
「電力」
、
「化学」
、「エンジニアリング」等をそれぞれ分けて事
業運営を行ってきたことがある。日本では「石油」企業はガソリンスタンドの運
営が主力業務であるが、欧米の「石油」企業、エクソン・モービル、シェブロン、
アモコ、シェル等では上流から化学誘導品の最後まで事業の対象としている。欧
米では「石油」と「化学」分野の両方を持ち、触媒開発も行うとともに、コンビ
ナート内でも「石油」と「化学」を分けて考えていない。例えば、エクソン・モ
ービルはゼオライト触媒の分野では巨人である。日本の「石油」メーカーの触媒
技術は遅れているといわざるをえない。
- 128 -
・海外メーカーと競争するためには「石油」、
「ガス」、
「化学」、
「エンジニアリング」
の敷居をばらして取り組む必要がある。
〔新たな触媒技術の開発〕
・最近ではエタンから製造されないブタジエン、芳香族等をエチレンから製造する
触媒技術の研究が盛んであり、研究補助も付きやすい状況にある。ただし、エン
ドユーザーは従来のナフサ連産品自体を求めているわけではなく、その機能を求
めているのであり、10 年たてばエタンを出発点とし芳香族を経由せず直接、最終
製品を製造するガス化学の体系、メタン・エタンに適した工業体系が出来る。
・エタンを出発点とするガス化学で生産されないものに対する対応としては2つの
流れがある。基本的には石油の有効利用であり、シェールガス革命に対して少し
は対応できるが、根本的には勝てない。
a.触媒によりナフサから産出される品目(プロピレン、イソブテン、ブタジエ
ン)の収率を変える
b.エチレンからプロピレン、ブテン、ブタジエンを製造する
・エチレン→プロピレンの技術についても 20 年来研究され、ある程度技術は確立し
ている。ただし、これらは向こう5~10 年の技術に過ぎない。当面隙間を探して
研究開発をしているのが現状である。
・現在、石油出発だから PET の製造は難しいが、10 年、20 年の単位で考えれば、同
等もしくはそれ以上の機能を有する樹脂をメタン・エタン出発で製造することは
可能となるのではないか。
〔個別企業の対応の方向性〕
・シェールガスを日本に輸入して化学製品を生産するということは政治的にも、コ
スト面でも事実上ありえないとなれば、その対応は2つである
a.消費地に近いところで、適した炭素源で化学品を生産
b.シェールガスにひれ伏す
aの場合を日本(および東南アジア)に当てはめて考えれば、結果としては、現
状の中東の石油を原料として継続使用するということになる。石炭は環境面での問
題があり、全面的に戻るということはありえない。
bの場合は、日本で化学製品は製造せず、北米に進出し、国内で培ったエチレン
を出発とする触媒技術を活用する企業も出てくると思うが、
「おいしい」ところは先
行者の欧米メーカーが押さえているのではないのか。
- 129 -
〔地域経済・コンビナートの生き残り策〕
・個別の企業に対しては海外進出という方法があるが、地域経済・コンビナートで
の生き残りを考えると、長期的には東アジア〔中国・台湾・韓国・
(将来的には北
朝鮮)等〕において政治的な安定性を確保しつつ、東アジア全体を一つのマーケ
ットとして各国で国際分業を行うという考えも成り立つのではないか。
・巨大市場を対象に中国はポリエチレン等の汎用品、日本は量が少なくても高付加
価値品に特化するといった分業体制である。そのためには国内において石油精製
後のナフサをスタートとした石油化学の品揃えに固執する必要はない。サウジア
ラビアから中間留分だけを輸入したり、シンガポールで製油してナフサだけ輸入
するということもあり得る。
・現状、化学分野では川下に行けば行くほど競争力が確保できている状況にある。
ポリプロピレンでまだ優位性があり、ABS 樹脂などはかなりの競争力を有してい
る。日本の成型技術と合わせるなどすれば、更に優位性が高まると見込まれる。
そういう意味でもトッパーが止まっても過度にナーバスになる必要はない。儲か
るところだけやると割切りがあってもいいのではないか。
○有望な技術分野
・メタン・エタンからスタートして付加価値の高い製品を作る技術を開発すること
が重要である。ただし、エタンをスタートとする技術は向こう5年以内、メタン
からスタートする技術は向う 10 年以内に開発する必要がある。
出口をプロピレンとするのは世界中やっているのでベンゼン、パラキシレンを製
造する技術が有望ではないか。一足飛びにフェノール、テレフタル酸が製造でき
れば面白い。
・また、旭化成ケミカルズが CO2 からポリカーボネートを製造する技術を開発して
いるが、CO2 からスペシャリティケミカルで一定の生産量が出るものも有望ではな
いか。
・ある意味、基本に立ち返るが、石油の有効利用や重油を減らしてガソリン・ナフ
サを増やすことも有効である。有効利用率を上げればその分 CO2 も削減できる。
経産省主導で JPEC(石油エネルギー技術センター)が行っている研究開発もこの
流れにある。
○企業間連携・産学官連携
〔石油と化学の連携〕
・「石油」と「化学」の関係では、
「化学」の関係者は優れた触媒技術を有していな
がら、上流の「石油」の知識が乏しい。「石油」の関係者は化学反応を知らない。
それぞれがお互いの知識を身につけることで効果的な連携ができるのでないか。
そのうえでトッパーをいくつ残すのか適切な量を考えればいい。
- 130 -
・一方でトッパーが止まればガソリン等をどうするかという問題になってくるが、
国内需要分に関しては世界需要の 1/60 と捉え、場合によっては国民の生活水準を
落とさないためにも税金を投入する手法もあるのではないか。
・また、ポリマー技術も国民の生活水準の向上に大きく寄与している技術であり、
世界的に生活水準が向上すれば日本の技術への需要が高まる。このような点から
もコンビナート存続の支援をする意味もある。
〔川下産業(自動車産業)との連携の強化〕
・中国地域の場合にも大いに当てはまるが、川下産業との連携という点では日本で
唯一競争力が残っている産業である自動車メーカーと摺り合わせを深化させるべ
きである。化学メーカーとの関係では触媒分野は取引規模が小さいので、結局、
プラスチック分野になる。
・化学メーカー側では、会社の壁があり、既に市場に出ている車を分析し、ウレタ
ンを供給しているが、自動車メーカーは化学側がウレタンしか供給してくれない
から、使用しているのかも知れない。
「本当はこうしたい」というレベルまで掘り
下げて対応しなければ、自動車産業も半導体産業のようになってしまうのではな
いか。オールジャパンで自動車メーカーの要望を実現するプラスチックを作り、
世界をリードしてもらいたい。欧米では自動車メーカーよりも化学メーカーの方
が力関係的に強いが、日本では、幸か不幸か逆の立場である。
・自動車の原料が地産地消であったり、研究開発が同じ地域で行われることも地域
経済に貢献するのではないか。
・このような支援体制の構築は、横並びの意識の強い民間からは言い出しにくい。
行政が主体となり、単なる場作りではなく、技術の目利きの出来る化学会社の OB
をヘッドハントして、効果的な企業の組み合わせをコーディネートしてもらいた
い。
〔産学官連携について〕
・産学官連携に関しても「石油」-「大学」、
「化学」-「大学」の共同研究でなく、
「石油」-「化学」-「大学」という組み合わせでなければ効果的ではない。主
役は「産」-「産」連携であり、それを学官がサポートすることが重要ではない
か。
・補助金・国プロで経済産業省と文部科学省のルールが異なっており、非合理的な
ルールも見受けられる。この辺りは改善してもらいたい。
- 131 -
(e)島根大学 総合理工学部 小俣 光司 教授
訪問日
平成 26(2014)年 11 月 18 日(火)
○研究内容
 有機資源をエネルギー資源に変換する触媒の開発
 温暖化ガスから合成ガス(CO、H2)の製造
 CO、CO2 からのメタノール合成(人工光合成)
 バイオエタノールからのオレフィン合成
 自動車排ガス触媒の開発
 環境浄化用光触媒の開発
島根大学 総合理工学部
 水素化精製触媒の開発
小俣 光司 教授(HP より)
○シェールガス革命、コンビナート競争力強化との関連
・メタンハイドレ-ドに関連して、メタンの改質触媒等の研究も行っている。
・シェールガス革命によって C1 化学の復活の可能性が言われるが、オイルショック
以降に C1 化学、DME(ジメチルエーテル)
、GTL(Gas to Liquid)などの大型プロジ
ェクトが一時盛り上がったものの、研究の難易度や石油価格の下落から実用化に
至っていない。この反動から研究者もいささか臆病になっているというのが実態
ではないか。
・重質油の高度利用に関しては重要なテーマであるにも関わらず、大学の研究者が
減っているため自分の研究テーマとして取組み始めた。水素化分解、脱メタル反
応について, 基礎的なところを検討している。
○産学官連携策による支援
・触媒の研究(特に寿命の検討)には長い時間がかかり、研究成果がすぐに出ない。
産学連携により Win-Win の関係が構築できれば有り難い。産のニーズはなかなか
伝わってこないので、
行政・支援機関に効果的なコーディネート活動を願いたい。
- 132 -
5.2.新たな化学品原料製造プロセスの展開とシェールガス革命
5.2.1.新たな化学品原料製造プロセス(概要)
石油化学原料としての資源に乏しい日本では資源を有効活用するための研究開発
に取組み、新たな触媒プロセスの研究開発が進められており、研究開発に取り組む体
制は化学品製造業で構築されている。
これまで、省資源国であることに端を発して進められてきていた化学品原料での研
究だが、今日のシェールガス革命により、研究の重要性は高まってきている。国内に
蓄積された先進的な研究シーズは、今後の日本において、シェールガスを含めたエネ
ルギー資源の持続的な利用に寄与するものと考えられる。以下に代表的な化学品製造
プロセスの開発状況についてとりまとめる(図表 5.6)
図表5.6
原 料
企業名
旭化成ケミ
カルズ
プロピ
レン
日本企業で開発・開発中の主な化学品製造プロセスの開発
プロセス名
E-Flex
オメガプロセス
JX 日鉱日石
エネルギー
HS-FCC
(次世代 FCC)
三井化学
Hyper-Ⅲ
DTP プロセス
三菱化学
ETP プロセス
BTP プロセス
ブテン
・
ブタジ
エン
旭化成ケミ
カルズ
BB-Flex
JX 日鉱日石
エネルギー
HS-FCC
(次世代 FCC)
三井化学
新規エチレン二量化
三菱化学
BTB プロセス
旭化成ケミ
カルズ
アルファプロセス
芳香族
JX 日鉱日石
エネルギー
Z-Forming Process
FCA プロセス
内
容
エタンからプロピレン
の製造
軽質オレフィンからプ
ロピレンの製造
減圧軽油(VGO)の接触
分解
エチレンとブテンから
プロピレンの製造
メタノール(DME)から
プロピレンの製造
エチレンからプロピレ
ンの製造
ブテン類からプロピレ
ンの製造
ブテンからブタジエン
の製造
減圧軽油(VGO)の接触
分解
エチレンからブテンの
製造
ブテン類からブタジエ
ンの製造
軽質オレフィンから芳
香族の製造
軽質ナフサからガソリ
ン・芳香族製造
分解残油の水素化分解
によるベンゼンの製造
開発および実用化状況
等(報道資料等より)
実用化検討中
平成 18(2006)年より水島
製造所で商業運転
水島製油所で実証セミ商業
施設が平成 26(2014)年 3
月まで稼働。平成 27(2015)
年度には商業化を目指す。
触媒外販方針
ライセンス供与に向けた営
業活動中
ライセンス供与に向けた営
業活動中
ライセンス供与に向けた営
業活動中
水島製造所に実証プラント
建設検討
水島製油所で実証セミ商業
施設が平成 26(2014)年ま
で稼働。平成 27(2015)年
度には商業化を目指す。
工業化に向けた技術開発中
ライセンス供与に向けた営
業活動中
平成 5(1993)年より水島製
造所で商業運転
太陽石油㈱四国事業所で平
成 22(2010)年度導入
平成 8(1990)年に技術開発
済み
触媒・プロセスの研究開発
中
資料:各種報道資料、室井高城(2013)「シェールガス・オイル革命の石油化学への影響」、S&T出版より作成
- 133 -
5.2.2.個別の化学品原料製造プロセスの研究開発動向
a.次世代 FCC(JX日鉱日石エネルギー)
図表5.7
燃料油の需要が伸び悩んでいる一方でプロ
ダウンフロー反応器による
プロピレン生産プロセス
ピレン、ブテンなどライトオレフィン系の石
油化学の基礎原料では需要が堅調であること
から、JX日鉱日石エネルギーではライトオ
レフィン生産プロセスを開発している。
中でも、KFU(キングファハド石油鉱物資源
大学)
、Saudi Aramco との共同研究の下、JX
日鉱日石エネルギーが開発した次世代 FCC で
ある HS-FCC(High Severity Fluid Catalytic
Cracking:高過酷度流動接触分解)はライト
オレフィン系材料の収率を従来よりも高める
技術となっている(図表 5.7、5.8、5.9)
。
通常、原油からの精製では、ライトオレフ
ィン系材料の増加に伴い、ガソリンの収率が
減少するが、HS-FCC ではガソリン収率の低下
資料:JX 日鉱日石エネルギー(株)HP
も抑えられている。
これまで、サウジアラビアの国営石油会社
図表5.8
水島製油所のセミ商業施設
アラムコ社において重質油処理量 30 bbl/day
(プロピレン生産量 1,400 トン/年)の実証
装置が整備され、平成 15(2003)年から平成
17(2005)年まで実証が行われた。その後、
重質油処理量 3,000bbl/day(プロピレン生産
量 140,000 トン/年)のセミ商業装置が水島
製油所で建設され、平成 23(2011)年から実
資料:JX 日鉱日石エネルギー(株)HP
証運転が行われている。
HS-FCC
図表5.9 プロセス別収率表
プロピレン
ブテン
ガソリン
mass%
mass%
mass%
25
19.5
29
合計
mass%
73.5
優位性
mass%
10
プロセス A
プロセス B
23
18
17.3
14
23.1
27
63.4
59
Base
(-4)
プロセス C
16.7
14.6
26.6
57.9
(-6)
資料:JX 日鉱日石エネルギー(株)HP
- 134 -
b.E-FLEX,BB-FLEX(旭化成ケミカルズ)
ナフサを原料とする国内のエチレンプラントの国際競争力の低下を危惧して、旭
化成ケミカルズでは、これまで、エチレンプラントで副生するものの燃料として用
いられていたエタンに注目し、エタンをナフサ代替原料として利用できる技術の開
発を行ってきている。このプロセス技術は、E-FLEX と呼ばれ(図表 5.10)
、プロセ
スに必要なゼオライト系触媒の製造方法の開発、小型実証化設備の運転について、
平成 21(2009)年から平成 23(2011)年にかけて NEDO((独)新エネルギー・産業
技術総合開発機構)
の実用化研究フェーズ「エタンからのオレフィン製造技術開発」
として研究開発がなされた。研究目標とした 1B 流動床 1 パスでのプロピレン収率
27%となり、従来よりも高い収率が達成されている。
この他、旭化成ケミカルズではブテンからブタジエンを製造する BB-FLEX プロセ
スの実証も進められている(図表 5.11)
。BB-FLEX プロセスは現在、海外プラントで
の導入検討が図られる段階になってきている。また平成 26(2014)に水島製造所に
年産能力1万トンの実証設備の建設が予定されている。
図表5.10
E-FLEX の概念
資料:「NEDO 省エネルギー技術フォーラム 2012」発表資料
図表5.11 E-FLEX/BB-FLEX の利用方法
資料:NEDO(2012)「省エネルギー技術フォーラム 2012」発表資料
- 135 -
c.ETP,BTP,BTB プロセス(三菱化学)
三菱化学では、三菱グループが得意とするゼオライト技術を生かしてゼオライト
系の触媒を開発してきた。その代表例が LP ガスの収率を向上させるためエチレンを
プロピレンに変換する触媒開発(ETP、図表 5.12)やブテン類をプロピレンに変換
する触媒開発(BTP)である。
天然ガス、石炭、重質油、バイオマスなどからの合成ガスを原料として触媒反応
を利用して液化石油ガスを製造するための技術として注目されており、これまで経
済産業省「石油ガス合成技術開発事業」プロジェクト(平成 17(2005)~18(2006)
年度)等で研究がなされてきている。
ETP プロセスの研究では DME(またはメタノール)転化率 100%、エチレンの転化
率 40%以上、プロピレン選択率 46%以上が達成されている。また、BTP プロセスの研
究では DME(またはメタノール)転化率 100%、C4+ブテン類の転化率 40%以上、プロピ
レン選択率 70%以上、
(プロピレン+エチレン)選択率では 95%以上が達成されてい
る。こうした研究から平成 17(2005)年度に三菱化学
水島事業所にベンチ試験設
備が設置された経緯がある。
また、通常、ブタジエンはナフサ分解から得られる C4 留分から抽出する。ブタ
ジエン抽出後の C4 留分の約 30%を占めるブテン類は種々の用途に使用されるが、
燃料やナフサクラッカー原料として消費されることが多かった。この点に着目し、
ブタジエンの製造技術として、ブテン類を原料としてブタジエン 2 を製造すること
が開発されている。
図表5.12
ETPプロセス
資料:瀬戸山亨(2013.12)「原料多様化と機能化学品が求める革新技術(Spring-8 利用推進協議会 講演
会資料)
」
- 136 -
d.新規エチレン二量化触媒,新規脱水素触媒(三井化学)
三井化学では、シェールガス革命により、影響を受けると考えられるエチレン誘
導品の高付加価値化を狙って「エボリュー」
(メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエ
チレン(LLDPE)
)の増強を図っている。千葉県の市原工場で平成 27(2015)年から、
食品包装などに使う高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)を代替する新グレード商品
である「エボリューE」が量産される計画であり、海外では、平成 27(2015)年か
ら稼動するシンガポール新工場で生産拠点として稼働させる検討が行われている。
今後の価値が高まることが期待されるブタジエンの製造については、エチレンを
高活性・長寿命を持つ触媒により、ブテンに変換するエチレン二量化触媒、及び従
来よりも高活性かつ高選択率によりブテンからブタジエンを製造する脱水素触媒へ
の研究開発が行われている(図表 5.13)
。こうした取組みにより、国内のナフサク
ラッカーの国際競争力を強化していくことが考えられている。
図表5.13
新規エチレン二量化触媒,新規脱水素触媒 反応の概略
-H2(脱水素)
(エチレン二量化)
ブタジエン
C4H6
ブテン
C4H8
エチレン
C2H4
プロピレン
C4 H6
資料:三井化学ホームページ資料を基に作成
- 137 -
5.2.3.特許出願動向
a.プロピレン
プロピレンの国内特許の出願状況についてみる。
「プロピレンの製造方法」という
キーワードを含み、
「ポリプロピレン」を除く検索により、昭和 63(1990)年から
平成 25(2013)年までの出願特許として 105 件が抽出される(図表 5.14)
。
出願人の上位 10 社をみると、三菱化学の 46 件を筆頭に、旭化成ケミカルズ 22
件、三井化学 12 件、住友化学 9件、トヨタ自動車 7件、産業技術総合研究所 7
件、東京工業大学 7件、日揮㈱ 件、ライオンデルケミカルテクノロジー(米国) 6
件、アルコケミカルテクノロジィ(米国) 4件となっており、石油化学企業につい
で研究機関、米国の化学企業が名を連ねている。
出願件数の動向をみると、近年では平成 23(2011)年に 14 件とピークとなって
いる。プロピレンは、シェールガス革命に関連して、エタンを起源とするエチレン
由来では製造ができない誘導品である。このため、今後、エチレンの供給が増加し、
ナフサが相対的に少なくなった場合には高付加価値化するのではないかと予想され
ている。このため近年での出願数増加は注目される。
図表5.14 プロピレンの製造方法の特許出願動向
(件数)
16
14
14
12
11 11
10
11
9
8
7
7
7
6
6
5
4
4
4
3
2
2
1
1
1
1
0
(年)
(注)平成 27(2015)年 2 月 3 日現在
資料:パテントインテグレーションによりデータ抽出の上作成
ついで、出願内容についてみると、ゼオライト触媒に関するものが 105 件中 22
件(21%)と最も多く、ついでメタノールもしくはジメチルエーテルを用いるもの
が 16 件(15%)となっている(図表 5.15)
。
- 138 -
図表5.15
プロピレンの製造方法における出願内容(N=105)
プロピレン製造が
間接的に関わる
もの
28
ゼオライト触媒
22
メタノールorジメ
チルエーテル
16
その他
10
プロパン
4
シリカ
4
エチレンとプ
ロピレンの収
率バランス
5
エタノール
5
エチレン,触媒
6
イソプロパノール
5
資料:パテントインテグレーションによりデータ抽出の上作成
b.ブタジエン
ブタジエンの国内特許の出願状況についてみる。
「ブタジエンの製造方法」という
キーワードを含み、
「ポリブタジエン」を除く検索により、平成 3(1991)年から平
成 25(2013)年までの出願特許として 45 件が抽出される(図表 5.16)
。
出願人の上位 10 社をみると、三菱化学の 14 件を筆頭に、エスケーイノベーショ
ン 11 件、旭化成ケミカルズ 9件、エスケーグローバル 件、エスケーエナジー 5
件、バイエルアクチェンゲゼルシャフト(ドイツ) 4件、昭和電工 3件の順であ
り、次いで isr、三井化学、ソルヴェイ・スペシャルティ・ポリマーズ(イタリア)
、
ダイキン工業が各社2件ずつとなっている。国内特許では日本の石油化学企業とと
もに韓国の SK グループが名を連ねている状況である。
近年では、平成 22(2010)年が 12 件と出願数のピークとなっている。
ブタジエンもプロピレン同様、今後の高付加価値化が予想されることから、近年の
出願数増加にはシェールガス革命と何らかの関連があるのではないかと推測される。
- 139 -
図表5.16
(件数)
ブタジエンの製造方法の特許出願
14
12
12
10
10
8
6
6
5
4
2
2
1
1
1
2
1
1
2
1
0
1991 1992 1993 1999 2003 2004 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
(年)
(注)平成 27(2015)年 2 月 3 日現在
資料:パテントインテグレーションによりデータ抽出の上作成
図表5.17 ブタジエンの製造方法の出願内容(N=45)
ブタジエン製造が
間接的に関わる
もの
8
接触酸化脱水素
反応
13
その他
10
触媒
11
流動層反応
3
資料:パテントインテグレーションによりデータ抽出の上作成
- 140 -
6.シェールガス革命による影響とコンビナート等の展望
本章では、まず、これまでの全国・中国地域における実態調査を踏まえたシェール
ガス革命の各産業への影響のまとめを行う。続いて、学識者ヒアリング調査をベース
とした「コンビナートの将来イメージ」を参考に提示する。さらに、「コンビナート
の競争力維持・強化のためのキーワード」を整理したうえで、日本・中国地域のコン
ビナートのSWOT分析により、今後のコンビナート競争力維持・強化に向けた方向性を
抽出するとともに、取組施策を併記することにより結びとする(図表6.1)。
図表6.1 これまでの調査と最終提言への流れ
2.米国におけるシェールガス革命の現状【文献調査】
3.シェールガス革命による国内産業への影響
3.1.国内関連産業の現状(エネルギー産業、石油化学産業)【文献調査】
3.2.シェールガス革命等による影響
(エネルギー産業・石油化学産業・一般製造業への影響、
原油価格下落による影響)
【文献調査】
3.3.シェールガス革命と企業動向
(研究機関、エネルギー産業、石油化学産業、一般製造業、行政機関等)
【他地域ヒアリング調査:①シェールガス革命による影響に関するヒアリング調査
②コンビナートにおける企業間連携に関するヒアリング調査】
4.シェールガス革命による中国地域産業への影響
4.1.域内関連産業の現状(エネルギー産業、石油化学産業)
【文献調査】
4.2.域内企業のシェールガス革命の認識・対応状況
ヒアリング先の抽出
(エネルギー産業、石油化学産業、一般製造業)
【アンケート調査】
4.3.シェールガス革命による影響と域内企業等の動向
(エネルギー産業、石油化学産業、一般製造業、行政機関)
【ヒアリング調査】
5.石油化学・シェールガス関連の研究
5.1.学識者ヒアリング調査
(石油化学産業、石油化学技術、掘削技術関連)
【ヒアリング調査】
5.2.新たな化学品原料製造プロセスとシェールガス革命と【文献調査】
6.シェールガス革命の影響によるコンビナート等の展望
6.2.シェールガス革命と
コンビナートの将来イメージ
6.3.コンビナートの競争力維持・強化のためのキーワード
〔参考〕
6.4.中国地域におけるコンビナート競争力維持・強化の方向性【SWOT 分析】
6.1.シェールガス革命の各産業への影響(まとめ)
- 141 -
6.1.シェールガス革命の各産業への影響(まとめ)
6.1.1.シェールガス革命のエネルギー産業への影響(まとめ)
シェールガス革命が我が国のエネルギー産業に与える影響としては、東日本大震
災以降エネルギー源としての重要性が増す LNG に対する調達コストの直接的な低減
効果に加え、新たな供給源として北米が加わるということに大きな意味がある。具
体的には、世界的な需給緩和や既存の天然ガスとシェールガスとの競合関係の形成、
北米天然ガス価格(Henry Hub)連動契約など LNG 価格フォーミュラの多様化等によ
る価格牽制機能の発揮から LNG 価格全般の低下が見込まれている。
シェールガス革命がエネルギー産業に及ぼす影響として従来と異なる点はガス会
社、電力会社が積極的に天然ガスの上流権益に進出している点である。従来、日本
企業にとって LNG 輸入は価格決定方式等の面において硬直的なビジネスであったが、
米国から日本への LNG 輸出事業への関与は、そういった制限は少なく、より柔軟に
事業展開が可能となる。また、このような事業経験とノウハウの蓄積が長期的な LNG
調達コストの低減に寄与することが期待される。
中国地域においてはシェールガスの輸入に関してはガス会社、電力会社とも社内
において検討・調査中であり、具体的な調達計画が策定されている状況とはなって
いない。しかし、効率的な LNG 輸入ための桟橋等のインフラ整備、軽質ガスへの対
応のための、設備改修等が行われており、その環境は整備されつつある。他地域と
比較すればシェールガス調達に向けた取組みは遅れているものの、後発者としてシ
ェールガス革命がもたらす LNG 取引の世界的な変化・リスク要因を幅広く・的確に
捉え、より最適な LNG 調達および価格ポートフォリオを形成することが求められる。
また、中国地域のアンケート・ヒアリング調査では自家用発電のユーザー側から
も、安価な天然ガスへの期待とともに、シェールガス革命により米国等で余剰とな
った石炭への価格波及についても注視が必要との声もあった。
中国地域は他地域と比較し、電源構成という点では天然ガスの比率が低く、石炭
の比率が高いといった特徴を有している。LNG に先行して輸入が開始されている LPG
と併せ、環境負荷の低いエネルギーとして、受入基地、パイプライン等のインフラ
整備や石炭との混焼ガス発電設備の設置・切換への補助等も含めシェールガス革命
の効果を地域に波及させる取組みの進展が期待される。
- 142 -
6.1.2.シェールガス革命の一般製造業への影響(まとめ)
一般製造業の関連では、米国におけるシェールガス開発の本格化や LNG 輸出事業
の立ち上がりに伴いプラント建設や資機材などの関連需要が生じている。下流分野
においてもプラント建設・装置の需要も発生している。
これらのインフラ需要はかなりの規模〔2035 年まで累計では、掘削分野 1.2 兆ド
ル、輸送分野 2,000 億ドル(出典:IEA)
〕で発生するが、
「既にピークを迎えつつあ
る分野」と「今後、需要の拡大が見込まれる分野」とに分かれる。
LNG・LPG 運搬船、石油化学プラント向け事業は本年度もしくはここ数年のうちに
ピークを迎えることが見込まれるが、ヒアリング調査等で有望市場として挙げられ
ていた廃水処理など環境関連インフラの需要については、米国政府の規制次第で、
今後、本格的な需要が発生する可能性がある。
中国地域におけるシェールガス革命の影響は、一般製造業を対象に実施したアン
ケート調査では、専らエネルギー調達価格・原材料価格の低下であり、国内・海外
需要の拡大に伴うビジネスチャンスとして、直接的・派生的な影響が確認できたの
は掘削用機材(掘削装置の部品を製作する工作機械)、運搬船(LPG 運搬船)、石油
化学プラント設備(コンプレッサ)等の分野であった。
「アンケート調査」回答先への「ヒアリング調査」の結果、石油化学プラント設
備(コンプレッサ)に関しては北米で海外事業を直接展開し、同分野での高いシェ
アを確保するとともに、国内生産拠点側でもマザー工場としての明確な役割分担の
もと、地元関連会社等への波及効果があったことが確認できた。ただし、積極的に
北米等での事業展開を行っているのは数社に限られ、地域全般がシェールガス革命
の恩恵に多く与っていないのが現状である。
このような状況に対し、域内一般製造企業は今後成長が見込まれる分野〔環境、
製鉄分野等〕を中心に産学連携等により要素技術の発掘を図り、新たな案件の獲得
に繋げるとともに、海外事業基盤の構築、技術のデファクトスタンダード化を図る
ことにより、米国だけでなく世界のシェールガスに関連した高成長の果実を能動的
に取込んでいく姿勢が求められる。
さらに、造船業のようにアジア勢との競争にさらされ、厳しい環境下にある分野
においては、シェールガス革命による特需を梃子として、世界的な競争力を取戻す
ことが期待される。
また、これらの実現のためには販路開拓、情報提供、人材面での支援等を求める
声があった。特に人材面では海外事業展開における専門・グローバル人材の確保の
困難さが問題点として挙げられ、関連分野から当該成長分野への労働力の円滑な移
動のための支援も期待される。
- 143 -
6.1.3.シェールガス革命の石油化学産業への影響(まとめ)
シェールガス革命の国内石油化学産業への影響をまとめると P145「図表 6.2
シ
ェールガス革命の国内石油化学産業への影響のパス」のとおりとなる。
シェールガス革命により米国のエタンクラッカーは中東並みのコスト競争力を獲
得し、グローバル市場で圧倒的に優位な状況となる。その結果、エタンクラッカー
の新増設が完了する平成 29(2017)年以降、
「中南米」さらに日本の主たる輸出先
である「中国」へのエチレン誘導品の輸出増加が見込まれる。
その結果、日本からのエチレン誘導品の輸出が減少するとともに、汎用品に関し
ては米国製のエタン由来の誘導品や中国市場で押し出された韓国・台湾等のナフサ
クラッカーの「玉」が日本にも輸入される可能性が一部指摘されている。
このように、米国のエタンクラッカーと比較し価格競争力において劣位にある日
本の石油化学産業はエチレン世界市場の限界供給者として同様な状況にある「北東
アジアのナフサクラッカー」間の競争に晒されることとなる。
また、シェールガス革命の影響は、従来の中東のエタンクラッカー、中国の石炭
化学(CTO)と価格競争力という面では同様の脅威であるが、北米の化学産業の技術
水準の高さ、オペレーション能力の高さという点で、従来と次元の異なる脅威であ
るとの指摘もある。
以上のような国際競争の激化により国内ナフサクラッカーの稼働率が低下し、そ
の結果、エチレン製造コストの上昇を招くとともに、川下領域に位置する誘導品等
の価格にも影響を及ぼすことが懸念される。
一方でシェールガス革命の影響によりエタンからは生成されない、ブタジエン・
芳香族等に関しては需給が逼迫することとなるが、国内設備の稼働率低下は、シェ
ールガス革命により「ビジネスチャンス」の発生する領域においても生産量を減少
させるとともに、誘導品群全般の競争力を低下させる等、負の連鎖を引き起こす恐
れがある。よって、日本の石油化学産業はこのビジネスチャンスにも対応できるよ
う、製油所等と連携しつつナフサ連産品のリバランスにも取組む必要がある。
また、日本の石油化学産業は長期的に「国内製造業の海外シフトによる国内需要
の減少」
、
「過剰設備の存在」から、稼働率が低下するとともに、
「生産規模の問題」
、
「設備老朽化から来るメンテナンス費用の増大」等から価格競争力の低下が懸念さ
れてきたが、シェールガス革命の波及効果はこの流れを加速させる可能性がある。
さらに、技術面では天然ガス価格の低下はメタン・エタンを出発とした新たなガ
ス化学体系を勃興させ、日本の石油化学技術の蓄積を陳腐化させる恐れもある。
- 144 -
:主なシェールガス革命の影響のパス
図表6.2 シェールガス革命の国内石油化学産業への影響のパス
:その他のパス
〔海外〕
シェール革命による北米
のエタンクラッカーへの
投資拡大
北米(中東)における
エチレン生産コストの
低下・競争力向上
中東における巨大エタン
クラッカーの建設
ブタジエン・芳香族等
の生産量減少
中 国 の 石 炭 化 学
(CTO/MTO) に よ る 生 産 拡
大、技術力向上
中国の経済成長の減速
化学製品需要の減退
中国における北東アジ
アからの化学製品輸入
量の減少
中国等への化学製品の
輸出増大
ブタジエン・芳香族等の需給逼迫の
進展・ビジネスチャンスの発生
日本から中国等への化
学製品の輸出減少
コスト競争力向上と差
別化・グローバル化
×
対応困難の可能性
ナフサ連産品のリバランス
国際競争激化(アジアにおけるナ
フサクラッカー間の競争)
ナフサ連産品(ブタジエ
ン・芳香族等)の生産量
減少
〔国内〕
我が国の国内製造業の生産
拠点の海外シフト等
汎用品の日本への輸出
の可能性
日本での化学製品の需
要の減少
日本のコンビナートの課題
ナフサクラッカーの稼
働率の低下
過剰設備の存在
- 145 -
生産コストの上昇(基礎
品の競争力低下)
生産規模の小ささ
誘導品の競争力低下
設備の老朽化
運転員の高齢化
図表6.3
内
需
国内石油化学生産におけるリスク(マイナス)要因
↓
輸
入
↑
・シェール由来の汎用品の流入
・産業空洞化、少子高齢化
・アジアの玉の流入
国内生産
↓
・ナフサクラッカーの稼働率低下
輸
出
↓
・中国市場におけるシェール由来の汎用品による代替
・中国経済の減速
・中国増産(CTO/MTO)、自給化
技
術
・ガス化学体系の勃興
このような状況に対し、日本の石油化学産業はその強みであるオペレーション能力の
高さを維持しつつ、当面の競争相手である北東アジアのナフサクラッカーに対するコス
ト面での優位性の確保を図るとともに、差別化・グローバル化に取組むことが求められ
る。中国地域においても掘削分野への部素材の供給を除けば、現時点でシェールガス革
命による影響が明確に確認できる状況にはなく、掘削分野における影響、今後影響が大
きいとされるエチレン誘導品の分野と比較すれば微小である。
ただし、シェールガスを含め非在来型ガスの埋蔵量を考えると長期的には影響を及ぼ
すと考えられ、また、その影響度合いも線形ではなく突発的に“ジャンプ”する可能性
は十分にある。
シェールオイルの動向等も含め石油化学産業の先行きは不透明感を増しているもの
の、今後とも、コンビナートの効率的な運用のための内外での連携拡大、中長期的な視
点での産学連携による研究開発等の動き等を継続・加速することが求められる。
以上のような状況で、対応の方向性を付記すると P147「図表 6.4 シェールガス革命
の国内石油化学産業への影響のパスと対応の方向性」のような図になる。
- 146 -
:主なシェールガス革命の影響のパス
:その他のパス
図表6.4 シェールガス革命の国内石油化学産業への主な影響のパス
と対応の方向性
:対応の方向性
〔海外〕
シェール革命による北米
のエタンクラッカーへの
投資拡大
北米(中東)における
エチレン生産コストの
低下・競争力向上
原料地立地
中東における巨大エタン
クラッカーの建設
中 国 の 石 炭 化 学
(CTO/MTO) に よ る 生 産 拡
大、技術力の向上
中国の経済成長の減速
化学製品需要の減退
中国等への化学製品輸
出量の拡大
:対応による派生
汎用品の日本への輸出
の可能性
高い OP 能力による海外展開
ブタジエン・芳香族
等の生産量減少
中国における北東アジ
アからの化学製品輸入
量の減少
ブタジエン・芳香族等の需給逼迫の進
展・ビジネスチャンスの発生
ナフサ連産品のリバランス
日本から中国等への化
学製品輸出量の減少
石油・石化の連携
国際競争激化(アジアにおける
ナフサクラッカー間の競争)
海外マーケティン
グ能力の向上・販
路開拓
×
新たな触媒技術の開発
対応困難の可能性
ナフサ連産品(ブタジエ
ン・芳香族等の)の生産
量減少
〔国内〕
原料の多様化
研究開発機能の向上
(マザー工場化、高付加価値化)
我が国の国内製造業の生産
拠点の海外シフト等
日本での化学製品の
需要減少
独立系の製造業者の移転
遊休地・余剰人員の発生
成長分野への人材シフト
コスト競争力向上と差
別化・グローバル化
日本のコンビナートの課題
ナフサクラッカーの稼
働率の低下
生産コストの上昇(基礎
品の競争力低下)
コンビナートにおける組織再編、
設備のスクラップ・アンド・ビルド
過剰設備の存在
- 147 -
誘導品の競争力低下
効率的な運用のためのコンビナ
ート内外での連携拡大
生産規模の小ささ
設備の老朽化
インフラ整備・規制緩和
運転員の高齢化
オペレーション能力の維持のための教育
ための
6.2.シェールガス革命とコンビナートの将来イメージ〔参考〕
6.2.1.コンビナートの将来イメージについての想定
シェールガス革命の石油化学コンビナートへの影響に関しては現時点で実感でき
る状況にはなく、シェールガス革命を踏まえた短・中期的な視点でのコンビナート像
は想定しづらいのが現実である。
そこで、参考として、アナリスト・学識者へのヒアリング調査等においてシェール
ガス革命のコンビナートへの影響が大きいものとして示唆のあった市場構造の変化、
技術革新等を基に、長期的な視点でのコンビナートの将来イメージを想定する(図表
6.5)
。以下の4イメージを取上げる。
図表6.5 シェールガス革命と長期的な視点でのコンビナートの将来イメージ
コンビナートへ長期的に影響を及ぼすで
あろう項目(ヒアリング調査より)
<参考>長期的な視点での
コンビナートの将来イメージ
世界的な化学製品の需給構造の変化
a.東アジアにおける国際分業・連携の
進展したコンビナート
国内市場の低迷、石油製品・石油化学製
品の高付加価値化の必要性
b.非在来型ガス等を有効利用するコン
ビナート
エネルギー供給体制の変化(非在来型資
源の生産量増加と在来型資源の供給体制
への影響)
c.多様なエネルギーを集積・転換・供
給するコンビナート
新たな石油化学・ガス化学関連の技術開
発の進展
d.石油を徹底的に利用するコンビナー
ト
環境制約の高まり、省エネ対応の必要性
- 148 -
6.2.2.長期的な視点でのコンビナートの将来イメージ
a.東アジアにおける国際分業・連携の進展したコンビナート
海外需要を国内生産拠点に取込むという視点から、東アジア全体を一つのマーケ
ットとして捉え、各国において化学品の国際分業・連携のもとに操業等を行うコン
ビナート。
このコンビナートはエチレン系誘導品の世界需要の 1/3 を占める(平成 30(2018)
年見通し)東アジアという巨大市場(図表 6.6)に対し、シェールガス革命により価
格低下の影響のあるポリエチレン等の汎用品については相対的に競争力のある中国
は CTO 等による生産拡大により対応しつつ、日本はある程度の市場規模量が確保でき
る高付加価値品にシフトするといった国際的な分業体制が構築される。
また、国内各地区においても芳香族特化等の特長あるコンビナートの構築を目指す
ものである。
(経済産業省が平成 26(2014)年 11 月に公表した報告書によれば、中国におけるポ
リエチレン自給率は CTO による生産拡大をベースに現在
57%→平成 42(2030)年
71%に向上と予想。
)
例えば、高付加価値品(機能性化学品等)は、単に利益率が高いというメリットだ
けではなく、一般に小型薄型製品で輸送コストが小さく、技術保護の必要性が高い等
の理由からも、日本国内生産した上で輸出するというスタイルを取ることが可能な事
業であり、国内での研究開発投資の余地も大きい。
図表6.6 平成 30(2018)年 エチレン系誘導品の需要見通し
(単位:百万t)
CIS 3.7
EU
中国
42.9
22.2
中東
13.0
アフリカ 5.5
4
.
5
インド
10.6
韓
国
4
. 4.5
韓国
5
世界需要の
約 1/3
日本
4 4.9
4
.
.
5
ASEAN
5
8.2
資料:経済産業省(2014)
「世界の石油化学製品の今後の需要」より作成
- 149 -
北中南
米
39.7
さらに、川下ユーザーとの密なコミュニケーションが重要という性格も併せ持つこ
とから、韓国・台湾・中国の電気機械産業といった顧客との接近性という優位性もあ
り、分業が成り立つ可能性がある。
また、エネルギー分野の面でも、バーゲニングパワーの発揮等のため、シェール由
来の LPG、LNG の東アジア各国による共同調達・融通、ハブ港湾施設の設置等の面で
も協力関係の構築が期待される。
b.非在来型ガス等を活用するコンビナート
在来型の石油のみならず、北米のシェールガス・オイルや国産のメタンハイドレ
ートといった非在来型資源等を原料としてうまく組合せ、化学製品・燃料を製造す
るコンビナート。
このコンビナートでは従来の石油化学技術に加え、メタン・エタンを出発するガス
化学技術が展開されているとともに、その両者のつなぎ役として、研究開発が進行し
ているオレフィンコンバージョン技術の実装が見込まれる。
現在注目されている日本近辺でのメタンハイドレート開発が実現・活発化すれば、
この流れが加速される。ガス化学においては、例えば、シェールガスやメタンハイド
レート等から既に実証化の行われている GTL(Gas to Liquid)技術や C1 化学技術等
を用い、燃料油・化学品が製造されると予測される(図表 6.7)
。
その結果、幅広い技術を備えることにより、原料市況・需要の変動に対し柔軟性を
持って対応できるコンビナートとなる。また、開発した技術を海外展開し、上流権益
の確保と合わせ、新たなサプライチェーンを構築することも考えられる。
図表6.7 天然ガスの転換利用技術
FT 合成
合成ガス
(CO+H2)
FT 合成油
メタノール合成
メタノール
MTO,MTP
エチレン、プロピレン
DME 合成
DME
天然ガス
(メタン)
C1 化学
アルコール、アルデヒドなど
脱水素カップリング
脱水素炭素化
酸化カップリング
資料:社団法人日本エネルギー学会
DTO,DTP
エチレン、アセチレン、ベンゼン
カーボンナノチューブ
エタン、エチレン
天然ガス部会(2008)
「天然ガスのすべて」
、コロナ社
- 150 -
c.多様なエネルギーを集積・変換・供給するコンビナート
シェールガス・オイルをはじめ多様な一次エネルギー(石油・石炭・LNG・LPG 等)
を安定的に調達し、燃料油・水素・電気・都市ガス・LP ガス等の二次エネルギーだ
けでなく化学品等に効率的に「変換」するとともに、地域の産業界、社会に対し低
価格かつ安定的に供給していくコンビナート。
このコンビナートでは、単に上記のように専ら輸入される一次エネルギーを二次エ
ネルギーに変換する“変換センター”としての役割だけでなく、コンビナート内にお
ける企業間連携により、各プロセスで発生する残渣等の付加価値の低いものに関して
も集約・一括処理され、地域の需要に応じた二次エネルギーへの効率的な変換を可能
とする体制が構築されている。
さらに、このコンビナートは電力の安定供給や水素社会への水素供給にも貢献する。
電力供給ではガス化複合発電(IGCC)や水素タービン発電により発電効率を最大化し、
余剰電力は水素キャリア等の形で貯槽されるなど、コンビナートは分散型のエネルギ
ー供給基地として地域社会へも貢献していく。
また、CO2 回収・貯蔵(CCS)を組合せることや、化学品分野でも一部 CO2 を原料と
した製品を製造し、CO2 の発生を抑制する等の取組みの進展も期待される。
<参考>図表6.8
多様なエネルギーを集積・転換・供給するコンビナート(イメージ)
【IGCC+CCS】
【水素発電】
資料:米国エネルギー省資料
資料:三菱重工業資料
【CO2 を原料とした化学品の製造】
資料:NEDO(2014)「二酸化炭素原料化基幹
化学品製造プロセス技術開発」
事業説明図
- 151 -
d.石油を徹底的に利用するコンビナート
現在、研究開発が進展している HS-FCC 等の技術をはじめ、今後進展が期待される
「ペトロリオミクス」等の新たなサイエンスに基づき、徹底的に石油を利用・制御
するコンビナート。
平成 27(2015)年2月現在、石油価格は弱含みの状況にあり、シェールオイル革
命に伴う中長期的な原油需給の改善・安定のトレンドが継続するようであれば、国内
においても、これまでの「脱石油政策」から、より石油の有効利用を促進する機運が
高まる可能性がある。
また、一次エネルギーとしての石油は調達時の地政学的リスクが高い一方で、発
電・送電での損失(電力分野では、9.8EJ/年の一次エネギー源から 3.6EJ/年の電力
を得るに留る)、自動車等での使用におけるエネルギー損失についても大幅な削減が
望まれてきた。
一方、石油化学産業の強みは「ナフサクラッカーから出てくるものの多様性」や「ナ
フサクラッカーから出てくるものを包括的に使いきる」ところに競争力があり、さら
なる効率性の向上を目指し、次世代FCC等の研究開発が行われている。将来的にはこ
の流れを究極化した「石油の徹底的に利用するコンビナート」が想定される。
このコンビナートは石油の有効利用という点では現在の延長線上にあるもの、例え
ば、現在、研究開発が行われている「ペトロリオミクス」と呼ばれる石油を分子レベ
ルでとらえる解析技術等を活用することにより、不要な副反応生成物がゼロ、エネル
ギー消費の無駄ゼロなど高度な省エネ、効率化によるコスト削減が可能となる異次元
なコンビナートでもある(図表6.9)
。
図表6.9
ペトロリオミクス(イメージ)
重質油の詳細組成分析を行うための分画前処理方法
資料:一般財団法人石油エネルギー技術センター
常圧残油の詳細組成分析結果(例)
ホームページより
- 152 -
図表6.9
ペトロリオミクス (イメージ) (続)
ペトロリオミクス
○ペトロリオミクス= “Petroleum” + “Omics” の造語(類似語:Genomics)
○原油の組成を分子レベルで解明し、石油精製プロセスでの反応を解析・予測する方法論。
石油精製技術は、原料(原油)の分子レベルでの解析・反応予測等を経ずに、経験知をベ
ースに発展してきた技術。そこに客観的分析と理論を与えることにより、既存の設備を大
幅な設備投資を行うことなく短期間で高度化できる可能性がある。
(例)脱硫や分解に用いる触媒の能力向上、劣化抑制・長寿命化
設備運転条件を反応予測に基づき最適化
石油化学との連携(インテグレーション)の推進
→いずれも精製プロセスの大幅なコスト削減、競争力強化につながる可能性がある。
資料:一般財団法人石油エネルギー技術センター
ホームページより
- 153 -
6.3.コンビナートの競争力維持・強化のためのキーワード
シェールガス革命への対応のためのコンビナート競争力維持・強化のためキーワー
ドとして、ヒアリングで多く挙げられた「①企業間連携」、
「②規制緩和・合理化」、
「③研究開発機能」
、
「④コンビナートの企業再編」、
「⑤設備老朽化への対応」を整理
しておく。
6.3.1.企業間連携
a.コンビナートのコスト競争力の源泉
石油化学産業は他の製造業、特に組立加工型と異なり、原材料であるナフサを出発
点として、様々な生産工程を経て、多種多様な化学製品を製造する産業である(図表
6.10)。その結果、それぞれ独立して生産される方法と比較して費用を少なくするこ
とができる「①範囲の経済」が働きやすい分野である(図表 6.11)
。
図表6.10
「石油化学産業」と「組立加工型産業」の比較
石油化学産業
汎用樹脂
ナフサ
原料
組立加工型産業
→
自動車
(部品・部材)
芳香族など
製品群
原料
→
単独製品
また、石油化学産業は装置産業でもあるため、生産能力の高いプラントほどコスト
を低減することができるという「②規模の経済」が働きやすい分野でもある。
日本の石油化学産業は、従来、ナフサ原料のエチレンプラントの優位性である「①
範囲の経済」に大きく依存していた。この理由は原油輸入国であることに加え、また
更なる「②規模の経済」を追求するには 90 年代以降の不況により資金面で制約が大
きかったことも原因として考えられる。
ただし、現在、欧米の化学企業等が世界的規模でシェールガス等の上流分野を含め
事業ポートフォリオを最適化するなど、国際競争力を高めている中、我が国の石油化
学企業も、国内生産を維持するためには、
「①範囲の経済」
、「②規模の経済」を一社
単独で追求するのではなく、複数の企業、異業種間の連携にすることによって、維持・
高める戦略が求められる。
- 154 -
図表6.11
「規模の経済」と「範囲の経済」
「①規模の経済」
:製造業においては装置
「②範囲の経済」
:製造業において複数の
産業で働きやすく、石油化学産業におい
生産物を同時に生産する方が、独立に生産
ては生産能力が高いプラントほど平均コ
する場合よりも費用が低減することがで
スト費用が低下させることができる。
きる。
「①規模の経済」
「②範囲の経済」
生産量
A
B
生産方法
b
a
C
↓
↓
X
a+b
生産量 X=A+B+C
C(X)<C(A)+C(B)+C(C)
生産量は一致、上は独立生産
下は結合生産
C(a,b)<C(a)+C(b)
b.企業間連携の分野
ヒアリング調査をもとに企業間連携の可能性をまとめたものが、
「図表 6.12
コ
ンビナートにおける企業間連携の分野(例)
」である。原料調達~製造、エネルギー、
インフラ、人材とハード面(設備)~ソフト面(知的資本)までその連携の可能性
は多岐に渡る。
「原料最適化」
、
「製造最適化」といった連携施策は大きな効果が期待できる一方
で、企業間の利害調整が難航することもあり得る。そのような場合、
「設備(インフ
ラ等)共有化」等の固定費削減やナレッジの共有化など本業以外の合意形成しやす
い分野から実績を重ねることも一つの方策と考えられる。
- 155 -
図表6.12 コンビナートにおける企業間連携分野(例)
項
目
方向性
具体例
原料、副生成物、未利用留分融通・有効活
用、配管網の充実・未利用配管の利用、原
料共同調達
①
原料最適化
・原料の種類と数量の最適化
・原料の輸送距離の最短化
②
製造最適化
・コンビナートの全体最適化
・バリューチェーンの構築
生産計画・投資計画の共有化、生産管理シ
ステムの構築、石油留分のカットポイント
の最適化、副産品のトレードオフの最適化
③
エネルギー
共有化
・エネルギー企業等との連携
(電気、蒸気、冷熱等)
・未利用エネルギーの利用
ユーティリティの共有、コジェネの規模拡
大、副生ガスの利用、共同子会社の設立
④
設備(インフ
ラ等)共有化
・固定費削減
⑤
ナレッジの
共有化
・安全・経営の質の向上
⑥
情報発信
・技術優位性のアピール
桟橋、タンク、テクニカルサービス、自家
発消防等の共有
労務およびメンテナンス等の最適化
成功事例の共有化、安全に関する教育、人
材育成
地域ブランドの確立、環境技術(CO2 削
減等)等の海外への情報発信
c.企業間連携の範囲・領域
連携の範囲・領域としては、地理的な視点としては単独のコンビナート内での企
業連携だけではなく、近隣コンビナート間の連携、サプライチェーン的な視点とし
ては川下企業のニーズ反映のための連携等も求められている(図表 6.13)
。
図表6.13 企業間連携の範囲・領域(例)
視
点
コンビナート内
連携
地理的な
視点
コンビナート隣接
エリアとの連携
コンビナート外
エリアとの連携
コンビナート間
連携
サプライチ
ェーン的な
視点
内
容
・「石油」-「石油化学」の連携
・電力会社・製鉄会社との連携
(フルセットコンビナートの場合)
・コンビナート隣接の「石油」-「(石油)化学」の連
携(例:「宇部興産」-「西部石油」
)
・独立系化学企業との連携
・同一地域内、他地域コンビナートとの連携
(例:「水島」-「周南」
、
「大分」
)
・東アジアコンビナートとの連携
(国際的な分業体制も念頭に)
・周辺技術(成型技術等)を含めた優位性の確保
・川下産業のニーズの把握
- 156 -
6.3.2.規制緩和・合理化
a.主な規制
コンビナートの競争力維持・強化のためには安全性等を確保したうえで、社会環
境の変化を踏まえた規制の緩和・合理化も必要である。ヒアリング調査の際にコン
ビナートに関連する主な規制として言及のあったものは「図表 6.14 コンビナート
における主な規制の例」のとおりである。
図表6.14 コンビナートにおける主な規制の例
関係法
規制内容(影響)
〔所管官庁〕
港湾
港則法
〔国土交通省〕
危険物積載船の夜間着桟、荷役(積込み、積卸作業などのこと)開
始、離桟が禁止されているため、コンビナートのバース(岸壁)の
効率的な運用が阻害される。
土壌
土壌汚染対策法
〔環境省〕
事業者が土地の形質を変更する際、当該事業者には一定要件の下で
土壌汚染の調査及び汚染除去義務が課されている。このため、コン
ビナートに立地する企業にとって、工事の届出にかかる事務負担、
汚染物質の量が基準値を超えた場合の処理や保管場所確保にかか
るコスト負担等の影響がある。
事業所の配置
石油コンビナート等災
害防止法(レイアウト規
制等) 〔総務省〕
消防法〔総務省〕
工場立地法、
〔経済産業省〕
事業所のレイアウト(施設ごとの距離、敷地面積、通路の配置など)
について各種の基準が定められているため、敷地の利用方法が限定
されるほか、法施行(昭和 51(1976)年)以前に設置した建物・
設備のスクラップ・アンド・ビルドが制約される。
危険物に関する各種施設や導管について、他の設備と一定の保安距
離をとることが求められている。そのため、用地確保の必要性や、
導管を最短ルートで敷設できないといった影響が生じる。
事業所の面積に対し、生産施設の上限比率や、環境施設(緑地等)
の下限比率が定められている。そのため、敷地の利用方法が制限さ
れる。
メンテナンス
高圧ガス保安法、コンビ
ナート等保安規則
海外で利用されている建設基準や強度評価基準が国内の基準に反
映されていないため、国内での建設コストやメンテナンスコストが
海外と比べ割高となっている。
〔経済産業省、厚生労働省〕
また、ヒアリング調査では規制緩和等ではないものの、複数の自治体に跨るコン
ビナートについては窓口が複数あることによる手続の煩雑さや法律等の解釈・運用
等の違いについてのコメントがあり、関係者間の調整が期待される状況もうかがえ
た。
- 157 -
b.「構造改革特区」と「総合特区」
実際のコンビナートでの規制緩和に対するニーズはさらに細かく、多岐に及ぶ。
このように実情に合わなくなった国の規制に対し、平成 14(2004)年以降、コンビ
ナートを抱える多くの自治体が構造改革特区制度等(中国地域では水島地区の「水
島港国際物流・産業特区」
、周南地区の「環境対応型コンビナート特区」)を活用し、
規制緩和に取組み、併せて全国展開されてきた(図表 6.15)
。
図表6.15 石油化学コンビナートに関連した構造改革特区
国際環境特区(川崎)
外国人研究者受入れ促進、外国
人の入国、在留申請の優先処理
環境対応型コンビナート特区
(周南)
自家発電力施設を活用した電力
の自由化。
水島港国際物流・産業特区
土地利用や港湾関係の諸規
制について規制の特例
鹿島経済特区
電力の特定供給事業の許可対
象の拡大、可燃性ガスの圧縮に
おける含有酸素量変更、高圧ガ
ス設備の開放検査期間の延長
京葉コンビナート活性化特区
ボイラー及び第一種圧力容器
における開放検査周期の延長
大分臨海コンビナート活性化
特区
特別管理産業廃棄物の運搬に
係るパイプライン使用の特例
技術集積活用型産業再生特区(三重)
石油コンビナート等災害防止法レイ
アウト規制の効率化、港湾業務の強化
を図るための関税法規制の効率化
資料:内閣府資料より作成
現在、コンビナートの規制緩和という点では、岡山県では総合特区制度(
「ハイパ
ー&グリーンイノベーション水島コンビナート総合特区」)を活用し、成果をあげて
いる(図表 6.16)。
総合特区制度は「官」以外の主体が有する知見・アイデアやノウハウの積極活用
が意図された制度であり、申請等にあたり「協議会」を通じて地域がコンビナート
の将来に関するグランドデザインを描き、それを共有化することは重要なプロセス
と思われる。そのような将来像の共有のもと、実態に即した企業ニーズの掘り起こ
しを進め、その必要性を具体的に中央にアピール・実現化することにより、
「競争力
強化実現の突破口」となることが期待される。
- 158 -
図表6.16
ハイパー&グリーンイノベーション水島コンビナート総合特区
3つの戦略
バーチャル・ワン・カンパニーの
実現
グリーンイノベーションコンビナート
◇コンビナート全体を一つの企業と見なし、
規制緩和と財政支援で企業間連携を実現し、
高効率・省資源型コンビナートを構築します。
◇規制緩和と投資促進策によってタイムリー
な事業展開を支援し、西日本一の素材供給基
地として環境・エネルギー分野のマザー工場
化等、産業集積を図ります。
ガス
蒸気
電気 etc
石油
会社
電力
会社
自動車
会社
戦略
の融通
など
次世代自動車
化学
会社
鉄鋼
会社
LED
液 晶
3つの戦略を国と地域の
協働プロジェクトとして
推進します
Liイオン電池
太陽電池
など
水島港ハイパーロジスティックス
港湾戦略
◇インフラ整備と規制緩和によって、国際バルク戦略
港湾に選定された水島港を利用する多くの船舶の輸
送効率を改善します。
資料:岡山県資料
c.
「企業実証特例制度」と「グレイゾーン解消制度」
規制・制度の緩和・合理化に関しては、平成 26(2014)年初めに施行された競争
力強化法には「企業実証特例制度」や「グレイゾーン解消制度」が設けられている。
「企業実証特例制度」は企業単位で規制の特例措置を適用する制度であり、また、
「グレイゾーン解消制度」は、事業者が新たな事業活動を行うに先立ち、あらかじ
め規制の適用について政府に照会し、規制の適用の有無について回答を受ける制度
である。
グレイゾーン解消制度については三菱化学と旭化成ケミカルズがエチレンセンタ
ー集約時の高圧ガス保安法に関する照会を行うなど活用がみられる。今後も、事業
や設備の集約や統合において、既存制度や規制がそのような実態を想定しないこと
が有り得るが、このような制度の活用により、円滑な経営判断、迅速な対応に資す
ることが期待される。
- 159 -
6.3.3.研究開発機能
a.中国地域における化学分野の研究機関
ヒアリング調査ではシェールガス革命への対応として、高機能品の研究開発機能
の強化、国内工場のマザー工場化への対応等が挙げられたが、それらの対応の中心
として期待される研究機関の中国地域における立地状況は「図表 6.17
中国地域の
化学関連の研究機関」のとおりである。
図表6.17
企業
中国地域の化学関連の研究機関
研究所名
所在地
ケミカルズモノマ
ー・触媒研究所
岡山県
倉敷市
新規および基礎研究開発
ケミカルズ化学
プロセス研究所
岡山県
倉敷市
新規および基礎研究開発
関東電化
工業
水島開発研究所
岡山県
倉敷市
クラレ
くらしき研究セ
ンター
岡山県
倉敷市
化学、高分子の研究など
日本合成
化学工業
機能フィルムセ
ンター
岡山県
倉敷市
EVOH(エチレン-ビニルア
ルコール共重合体).の樹脂
加工技術開発
大竹研究所
広島県
大竹市
新素材、新規機能材料や機能商
品、製造プロセスの開発、次世
代基盤技術・基礎化学研究、バ
イオテクノロジーの研究
生産技術研究所
広島県
大竹市
新しい製造プロセスの開
発、生産技術の高度化
岩国研究センタ
ー
山口県
岩国市
高分子化学と複合材料の研
究
旭化成ケ
ミカルズ
三菱レイ
ヨン
帝人
徳山総合研究所
トクヤマ
RC研究所
山口県
周南市
山口県
周南市
主な研究対象
-
現事業関連の研究開発
材料の分析・解析、製品
の安全性、品質調査
研究費※
研究所数
中国地域
全国
〔ケミカル部門全体〕
研究開発費:151 億円
(対売上高 1.9%)
2/9
〔グループ全体〕
研究開発費:8.9 億円
(対売上高 2.9%)
〔グループ全体〕
研究開発要員:876 名
研究開発費:171 億円
(対売上高 4.1%)
〔グループ全体〕
研究開発費:30 億円
(対売上高 2.7%)
1/3
1/3
1/4
〔グループ全体〕
研究開発費:151 億円
(対売上高 3.1%)
注:2011 年度
2/4
〔グループ全体〕
研究開発要員:1,600 名
研究開発費:322 億円
(対売上高 4.1%)
1/9
〔グループ全体〕
研究開発費:87.9 億円
(対売上高 3.0%)
2/3
有機合成、医・農薬、プラ
スチック加工技術、触媒な
〔グループ全体〕
プロセス技術研究所
どの研究開発
研究開発要員:905 名
宇部興産
2/3
研究開発費:139 億円
エネルギー・環境・工学分
医薬研究所
山口県
(対売上高 2.1%)
野に関わる無機材料の研究
無機機能材料研究
宇部市
開発
所
資料:重化学工業通信社資料(2014)
「2015 年版 日本の石油化学工業」
、各社有価証券報告書等より作成
※中国地域のデータはとれないため全国のデータを参考に記載
有機化学研究所
山口県
宇部市
- 160 -
図表6.17 中国地域の化学分野の研究機関(続き)
研究所数
企業名
研究所名
主な研究対象
所在地
研究費※
中国地域
全国
有機化成品事業、機能材料
事業、ゴム・ペースト塩ビ
事業、ビニル・イソシアネ
ート基盤技術など既存事
業の強化、ならびに情報・
電子関連材料、環境・エネ
ルギー関連製品、特殊ポリ
マー製品などの研究開発
既存プロセス改良、合理
化、新プロセスの工業化、
プラント建設のためのエ
ンジニアリング業務と環
境保安技術の支援
山口県
周南市
南陽研究所
東ソー
山口県
周南市
技術センター
〔グループ全体〕
研究開発要員:860 名
研究開発費:125 億円
(対売上高 1.6%)
2/4
資料:重化学工業通信社資料(2014)
「2015 年版 日本の石油化学工業」
、各社有価証券報告書等より作成
※中国地域のデータはとれないため全国のデータを参考に記載
これらの研究機関の立地の意味合いを大きく二つに分けると、①意思疎通・情報
流通の円滑化から、本社機能(経営トップや管理部門)との近接性が重要である基
礎研究等を行う研究機関と、②既存事業との関連性からの工場への近接立地(工場
敷地内に併設や周辺地域に設置)が重視され、相対的に短期志向の研究開発や工程
開発などの生産技術開発を行う機関ということになると考えられる。
一般的に企業における研究開発は長期的なテーマが減少し、短期的な研究開発に
シフトする傾向にあるが、産学連携等により外部資源を効果的に活用しつつ、基礎
研究から製品開発まで継続的な研究体制を維持することが期待される。
また、中国地域の研究機関の数を他地域と比較したのが「図表 6.18 化学企業の
研究機関数と化学製品生産ウエイト」である。関東地域(茨城県、千葉県、神奈川
県)、中部地域(愛知県)
、関西地域(京都府、兵庫県)が当地域と比較して研究機
関が多い状況がうかがえる。
図表6.18
化学系の企業の研究機関数と化学製品生産ウエイト
16 社
20%
15
(左軸)
研究所数(右軸)
(右軸)
化学製品生産ウエイト(左軸)
18%
14
16%
12
11
10
14%
9
12%
8
8
10%
7
6
6
6
8%
5
4 4
4
3
2
2
4
4
2
2
1
6%
3
4%
2
1
1
1
1
1
1
0
2%
0%
北 青 岩 宮 秋 山 福 茨 栃 群 埼 千 東 神 新 富 石 福 山 長 岐 静 愛 三 滋 京 大 兵 奈 和 鳥 島 岡 広 山 徳 香 愛 高 福 佐 長 熊 大 宮 鹿 沖
海 森 手 城 田 形 島 城 木 馬 玉 葉 京 奈 潟 山 川 井 梨 野 阜 岡 知 重 賀 都 阪 庫 良 歌 取 根 山 島 口 島 川 媛 知 岡 賀 崎 本 分 崎 児 縄
道 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 都 川 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 府 府 県 県 山 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 島 県
県
県
県
資料:重化学工業通信社資料(2014)「2015 年版 日本の石油化学工業」および経済産業省データより作成
- 161 -
上述の本社、既存工場との近接性の他にも情報源の蓄積・人材確保の容易さが影
響していると考えられる。
b.研究機関の地域経済への影響
研究機関の立地は、研究成果を用いた域内工場での化学製品の製造による地域産
業の活性化という大きな意義を有するとともに、研究活動の実施を通じた支援サー
ビス業などへの波及効果がある。さらに、地域において生み出された知識が、当該
研究機関だけでなく、同業企業や関連企業にも市場を経由せずに広まる知識のスピ
ルオーバー効果があり、地域のイノベーション力を高めるという視点もある。知識
のスピルオーバーは、域内企業の研究開発を促進するとともに、
「知識が集積する地
域」としてのイメージの創出を通し、更なる産業・地域の活性化に繋がるという好
循環が期待される。
一方で、石油化学産業の研究機関は、エチレンセンターの再編・集約化が進展し、
新たな研究機関の誘致が困難となることが見込まれる。ヒアリングでは研究機関の
独立性、市場ニーズとの距離等についての言及もあったため、既存の研究機関にお
いては「経営戦略と技術戦略の一体化」を図りつつ、各社の成長戦略やコンビナー
トの将来像と整合性のとれた、効果的な研究開発プロジェクトが組成されることが
期待される。
c.シェールガスと研究開発(化学産業以外)
シェールガスに関連しては化学産業分野だけでなく、掘削、天然ガス自動車、製
鉄(還元鉄)など新たな技術開発が期待される分野が少なくない。そこで、前述の
P37「図表 3.21 シェールガスに関連する日本企業」を参考に、有望分野に関連し
た中国地域における企業の研究機関を「全国試験研究機関名鑑(文部省科学技術・
学術政策局 監修)
」を基に記載したのが、以下の「図表 6.19 中国地域のエネルギ
ー産業関連の研究機関」
、
「図表 6.20 中国地域の一般製造業関連の研究機関」であ
る。
〔中国地域におけるシェールガス関連分野として可能性のある主な研究機関〕
①エネルギー産業
エネルギー産業の研究機関については、ガス会社、電力会社の研究所が域内に存
在するが、ヒアリング調査の際、
「
(シェールガスとはいえ)重質、軽質の差こそあ
れ、メタンを主成分とした天然ガスには変わりないため、新たな研究開発の余地は
少ないと思われる」とのコメントもあった。
- 162 -
図表6.19 中国地域のエネルギー分野の研究機関
研究所数
企業名
研究所名
所在地
主な研究対象
研究費
中国地域
全国
広島ガス
中国電力
技術研究所
エネルギア
総合研究所
広島県
海田町
広島県
東広島市
ガス利用技術、
環境技術
電気のコストダウ
ン安定供給技術、環
境技術、情報・通信
技術、電気高度利用
技術
〔グループ全体〕
研究開発費:1.5 億円
1/1
(対売上高 0.2%)
〔グループ全体〕
研究開発費:47 億円
(対売上高 0.4%)
1/1
資料:各社有価証券報告書・HP等より作成
②一般製造業
中国地域にはシェールガスに関連する鉄鋼、工作機械、化学プラント関連企業の
研究機関が立地している。これらの企業に限らず、新たな要素技術の発掘を図り、
シェールガス開発分野における技術のデファクトスタンダード化を図ることが期待
される。
図表6.20
中国地域の一般製造業の研究機関
研究所数
企業名
研究所名
所在地
主な研究対象
研究費※
中国地域
全国
〔グループ全体〕
研究開発費:336 億円
(対売上高 1.1%)
〔グループ全体〕
研究開発費:5.6 億円
(対売上高 2.5%)
スチール
岡山県倉敷市
研究所
広島県福山市
技術部
岡山市北区
CNC 旋盤、マシニン
グセンタ等に係る
新製品開発
岡山研究室
岡山市南区
鉱山廃水などの処
理、土壌浄化に伴う
水処理
-
三菱重工業
広島研究所
広島市西区
日本製鋼所
広島研究所
広島市安芸区
化学プラント、風力
機械、製鉄機械、橋
梁等の開発
成形加工プロセス
の研究開発、新素材
の開発
〔グループ全体〕
研究開発費:1,385 億円
(対売上高 4.1%)
〔グループ全体〕
研究開発費:38 億円
(対売上高 2.0%)
三菱日立パワ
ーシステムズ
(旧 バブコ
ック日立)
呉研究所
広島県呉市
化学プラント、発電
用・一般用ボイラプ
ラント
-
JFE スチール
滝澤鉄工所
-
DOWA テクノエ
ンジニアリン
グ
資料:全国試験研究機関名鑑(文部省科学技術・学術政策局 監修)
、各社有価証券報告書等より作成
※研究費については中国地域のデータはとれないため全国のデータを参考に記載
- 163 -
2/5
1/1
1/1
1/6
1/3
1/1
6.3.4.コンビナートの企業再編
a.統合の進展と組織形態
現在、石油化学産業では国内生産拠点の統廃合を自主的に進めつつあり、平成 28
(2016)年には千葉地区と川崎地区を除き「1コンビナート」=「1エチレンセン
ター」になる予定であり、コンビナートの競争力強化のために製油所との連携の深
化が議論されてきている。
そのような流れの中、ヒアリング調査においてはコンビナート内の組織について
もさらに統合を進め、海外コンビナートと同様に、石油・石油化学を含め「1コン
ビナート」=「1組織(カンパニー)」が好ましいとの意見が複数あった。水島地区
の総合特区のような「バーチャルワンカンパニー」を経て、最終的な組織形態とし
ても1組織(カンパニー)を目指すというものである。
また、その組織形態についても、組織の規律保持に関する法律の干渉度合が低く
(迅速な意思決定が可能)
、営利目的の度合いの高い LLC(合同会社)、LLP(有限責
任事業組合)が好ましいとされた(図表 6.21)
。
実際に水島地区、千葉地区におけるエチレンセンターの統合においては、複数の
企業が共同で税制上でもメリットのある LLP を設立し、一部の生産施設を当該 LLP
に移管し、事業運営を統合する取組みが始まっている。
図表6.21
株式会社 LLC、LLP の比較
株式会社
法人格の有無
構成員の責任
内部
自治
原則
機関
損益の分配
あり
有限責任
必要・意思決定が迅速
でない
出資比率のみ
適した形態
大規模
LLC
(合同会社)
あり
有限責任
任意・迅速な意思決
定可能
自由・貢献度に応じ
て分配などが可
小規模
LLP
(有限責任事業組合)
なし・課税のメリット
有限責任
任意・迅速な意思決定
可能
自由・貢献度に応じて
分配などが可
期間限定
b.組織統合のメリット
コンビナート内の組織統合により「企業間連携」の項目にもあったように効率的
な生産・コスト競争力強化策の迅速な意思決定・実施に繋がることが見込まれる
(P157「図表 6.12
コンビナートにおける企業間連携分野(例)
」
)。原料使用のオ
プションの拡大、石油留分の徹底的な活用、コンビナート内に潜在化しているエネ
ルギー源の経済的な活用等をはじめメリットは大変大きい。
また、人的・技術的交流の深化という面でもメリットが多くあるのではないかと
考えられる。学識者ヒアリング調査では『「化学」の関係者は優れた触媒技術を有し
ていながら、上流の「石油」の知識が乏しい。
「石油」の関係者は化学反応を知らな
い』状況が危惧される一方で、RING 事業に関連しては、(石油・石油化学等の異業
- 164 -
種が参加する RING 事業は)ノウハウの蓄積、人材育成の面での大きな成果があった
とのコメントもあった。
このような状況を踏まえ、コンビナート内での組織統合等により、
「石油」
、
「石油
化学」の人事配置を含めた人的交流の進展、更なる石油・石油化学両面での知識・
経験の蓄積により、生産・設備投資面での最適化、新たな技術革新に繋がることが
期待される。
c.エチレンプラントの集約・再編
学識者・アナリスト等へのヒアリング調査ではコンビナートを跨いでエチレンプ
ラントを集約・再編し、規模拡大を求める声が多くあった一方で、
「コンビナートで
一つとなったエチレンプラント」を閉鎖することは川下の誘導品プラントとの関係
から、短期的には困難であるとの意見もあった。
また、コンビナート関係者へのヒアリング調査ではコンビナートにおける他企業
への配慮、共存意識の強さがうかがえ、この共存意識の強さは企業間連携への大き
な誘因となるものと感じられた。その一方で相互依存関係により成立しているコン
ビナートにおいては企業の撤退や事業の縮小を十分想定しておらず、中長期的なコ
ンビナートの集約・再編に向けて予見可能性の低さから迅速な意思決定や利害調整
の支障となり得ることも指摘された。
さらに、コンビナートを跨ぐエチレンプラントの集約・再編に関しては、単にオ
レフィンバランスによらず、高付加価値品・機能性化学品へのシフト、国内マザー
工場化に資する集約・再編を求める声が多くあった。このコメントは誘導品分野に
おける競争激化による川下分野の淘汰・選択が、川上分野(エチレンプラント)の
集約・再編に影響を及ぼす可能性を示唆しているとも考えられる(図表 6.22)
。
図表6.22
エチレンプラントの集約・再編と川下分野の影響(イメージ)
誘導品の
競争激化
誘導品の
選択と集
中が加速
誘導品構
成のアン
バランス
が発生
国際競争
力のある
誘導品の
選択
誘導品にお
ける合従連
衡・プレイ
ヤーの淘汰
エチレンプ
ラント保有
の意義を再
検討
誘導品(川下)事業の淘汰
エチレン
プラント
の集約・
再編
基礎品(川上)事業の再編
- 165 -
6.3.5.設備老朽化への対応
a.設備老朽化とトラブル
日本ではコンビナートを形成してから
40 年以上が経過しており(図表 6.23)
、
他地域・中国地域ヒアリング調査においても、設備老朽化による影響を懸念する声
が多くあった。設備老朽化に伴う劣化・腐食は、生産効率の低下にとどまらず、大
事故に発展する危険があるが、その一方で、特に石油コンビナートに敷設された保
温配管は厖大な長さに及ぶことから検査も抽出で行わざるを得ないのが実態であり、
腐食の発生場所の発見や予測も困難であるとの指摘があったことも確かである。
図表6.23
エチレンプラントの稼働時期(現存するプラント)
年
稼働年数
48 47
1966
67
46
45
44
43
42
41
40
38
37
36
35 … 29 … 22
21
20
68
69
70
71
72
73
74
76
77
78
79 … 85 … 92
93
94
稼働時期
年
※
千
葉
(
住
友
化
学
)
周
南
(
出
光
興
産
)
千
葉
(
丸
善
石
油
化
学
)
大
阪
(
大
阪
石
油
化
学
)
水
島
(
三
菱
化
学
)
川
崎
(
J
X
日
鉱
日
石
)
※
鹿
島
1
(
三
菱
化
学
)
※
水
島
(
旭
化
成
ケ
ミ
カ
ル
ズ
)
大
分
(
昭
和
電
工
)
四
日
市
(
東
ソ
ー
)
千
葉
(
三
井
化
学
)
千
葉
(
出
光
興
産
)
鹿
島
2
(
三
菱
化
学
)
川
崎
(
東
燃
化
学
)
千
葉
(
京
葉
エ
チ
レ
ン
)
※鹿島1(三菱化学)は平成 26(2014)5 月に停止済。千葉(住友化学)は平成 27(2015)5 月、水島
(旭化成ケミカルズ)は平成 27(2015)4 月に停止予定
資料:重化学工業通信社「日本の石油化学工業 50 年データ集」より作成
b.中国地域のコンビナート設備老朽化の現状
機械、設備等は、減価償却期間を経過すると償却コストは不要となるが、耐用年
数を超えたことにより、故障の発生率、メンテナンスコストが増大する。
周南地区・水島地区ともコンビナート立地当初から稼働している設備は、40 年以
上が経過し(図表 6.23)
、減価償却が終了しているという点ではコストが低く抑え
られているというメリットがあるものの、一方では老朽化により、発電設備などユ
ーティリティ設備を含め効率、安全性、メンテナンス等の点からコストアップ要因
- 166 -
図表6.24 化学工業の出荷額に対する有形固定資産の比率
39.3%
40%
34.0%
35%
31.1%
31.3%
29.4%
30%
平均
25%
23.3%
24.8%
21.7%
デ
ー
タ
な
し
20%
15%
10%
鹿島
千葉
川崎
四日市
大阪
水島
岩国大竹
周南
大分
資料:経済産業省「工業統計表(平成 23 年)
」 ※鹿島(鹿島市・神栖市)千葉(市原市・袖ヶ浦市)
川崎(川崎市)四日市(四日市市)
、大阪(堺市・高石市)
、水島(倉敷市)、周南(周南市)、大分(大分市)
となっていることも考えられる(参考に各コンビナートが存する化学工業の出荷額
に対する有形固定資産の比率を図表 6.24 に記載)
。
ユーティリティ設備において中国地域の各地区の主要石油・石油化学企業の汽力
発電設備の状況を見ても、水島地区において 40~50 年を経過した設備(ボイラー・
タービン)の割合が高く(図表 6.25)、今後早晩リプレイス期を迎えることが見込
まれる。
図表6.25
発電設備の状況(主要石油・石油化学企業の汽力設備)
50年以上
100%
40~50年
30~40年
7.7%
20~30年
10~20年
0~10年
10.2%
31.8%
11.9%
80%
9.6%
60%
55.4%
73.5%
19.7%
31.8%
40%
20%
0%
4.5%
4.5%
29.3%
13.8%
6.1%
12.3%
18.2%
12.2%
19.4%
10.8%
8.2%
ボイラー
タービン
水島地区
9.1%
ボイラー
タービン
周南地区
※比率は出力(Kw)等ベース
資料:一般社団法人火力原子力発電技術協会(2011)
「火力・原子力発電所設備要覧」より作成
- 167 -
また、アンケート調査結果によれば、シェールガス革命の影響は 3~5 年後(平成
29(2017)~平成 31(2019)年)に現れるとの回答が最も多かった。
アンケート調査の結果は、米国でシェールガス由来の石油化学プラントが本格的
に立ち上がる時期とも一致するが、このようなシェールガス革命の影響と日本側に
おけるエチレンプラントも老朽化の進展による経済性低下等の複合的な要因が重な
るようであれば、エチレンプラントのスクラップ&ビルドの議論に影響を及ぼす可
能性もあると考えらえる。
- 168 -
6.4.中国地域におけるコンビナート競争力維持・強化の方向性
6.4.1.日本・中国地域のコンビナートの SWOT 分析
中国地域のコンビナートの競争力強化の方向性を導出するため、今までの文献・
アンケート・ヒアリング調査から日本・中国地域のコンビナートの状況について
SWOT 分析を行う。
日本の石油化学産業を中心としたコンビナートに共通した一般的な項目および中
国地域のコンビナートついて特徴的な項目について SWOT 分析の手法を用い、「強み
(Strength)
」
・
「弱み(Weakness)
」、および周辺環境の現状(
「機会(Opportunity)」
・
「脅威(Threat)
」
)を取りまとめると P171「図表 6.26 日本・中国地域のコンビナ
ートの SWOT」のとおりとなる(図表 6.26 中の〔日本〕は全国的な共通項目、
〔中国
地域〕は中国地域に特徴的な項目を表す)
。
なお、概要は以下「a.強み」~「d.脅威」のとおりである。
a.強み(Strength)
【知的資本・企業集積の優位性】
日本全般の「強み」としては、高いオペレーション能力、高機能・R&D 指
向が強みとして挙げられ、中国地域においては、生産拠点のマザー工場化の意
向、コンビナートにおける多様な企業集積(石油・石油化学・鉄鋼等)
、自家用
発電の規模の大きさ(周南)
、先端実証研究の実績などが挙げられる。
また、シェールガスとの関連した「強み」ではシェールガスからは製造でき
ない品目を産出するナフサの連産性が挙げられ、中国地域においてはシェール
ガスの影響を受ける品目の生産ウエイトの低さ、今後、需給が逼迫する可能性
がある芳香族の生産規模等が「強み」となり得ると考えられる。
b.弱み(Weakness)
【資源と市場の制約】
日本全般の「弱み」としては、資源の面では、シェールガスとの比較にもな
るが、石油を原料とするためのコスト競争力、資源輸入国のハンディキャップ、
国産プロセス技術の少なさ等が挙げられる、市場の面では「品目過多」
、
「過剰
品質」、
「高コスト体質」等が挙げられる。
中国地域においては研究機能の首都圏等に対する劣位、製油所の閉鎖、未連
携の製油所・石油化学プラントの存在等が「弱み」となり得ると考えられる。
- 169 -
c.機会(Opportunity)
【連携・ビジネス創出の可能性】
「機会」に関しては、連携・ビジネス創出がキーワードとなり、日本全般と
しては石油・石油化学の連携の機運の高まり、新たな高機能品の開発・高機能
品のコスト引下げが機会となってくるものと考えられる。
中国地域にとっては瀬戸内海沿岸や東アジア諸国との近接性が挙げられる。
川下産業として国際競争力を有する自動車産業等が存することも「機会」とし
て考えられる。
また、シェールガスに関連した「機会」としては、エネルギー調達先の多様
化に加え、ブタジエン・芳香族等の需給逼迫、オレフィンコンバージョン技術
等の新たな技術に関連したビジネス創出が期待される。
d.脅威(Threat)
【国際競争・地域間競争の激化】
シェールガス革命による北米化学産業のコスト競争力向上を含めた国際競
争の激化、国内石油化学メーカーの原料地立地・市場立地による海外進出や、
国内需要の縮小を見据えての生産拠点の統合等も「脅威」として挙げられる。
また、技術面では技術のコモディティ化、シェールガスに関連してはガス化学
等への対応の遅れも「脅威」となり得ると考えられる。
中国地域においても域内需要の縮小や周辺化学企業の工場や事業所の再
編・統合・撤退、コンビナート生き残りのための地域間競争の激化が「脅威」
として挙げられる。
- 170 -
図表6.26 日本・中国地域のコンビナートの SWOT
コンビナート競争力維持・強化のためのプラス要因(貢献)
【強み
内
Strength】~知的資本・産業集積の優位性~
原料 ○〔日本〕ナフサの連産性
○〔日本〕省エネ技術、環境対応技術
○〔日本〕高度な運転・保守技術、運転員の教育レベル
技術・
○〔中国地域〕先端技術の実証試験の実施、生産拠点のマザー工場化の意向
設備
○〔中国地域〕芳香族の生産規模の大きさ(水島)
○〔中国地域〕自家用発電の規模の大きさ(周南)
○〔日本〕高機能品、R&D オリエンテッド
○〔日本〕ある程度の規模の内需 ○〔日本〕円安による輸出競争力の向上
製品・ ○〔中国地域〕相対的なシェールガス革命の影響の少ない品目のウエイトの高さ
市場 〇〔中国地域〕オンリーワン・ナンバーワン誘導品の存在
〇〔中国地域〕東アジア有数の苛性ソーダ・塩ビモノマーの生産拠点、有機化学と無
機化学の融合(周南)
○〔中国地域〕水素活用の取組みの進展
○〔中国地域〕多様な企業集積(石油・石油化学、鉄鋼、電力等)
その他 ○〔中国地域〕エチレンプラントの連携・統合進展(水島)
○〔中国地域〕RING 事業等への参画実績
部
要
因
【機会
【弱み
◇〔日本〕エネルギー調達先の多様化、価格低下の期待
◇〔日本〕オレフィンコンバージョン技術の展開
◇〔日本〕石油・石油化学の連携の機運の高まり
◇〔日本〕新たな高機能品の開発・高機能品のコスト引下げ
◇〔日本〕C4・芳香族の需給逼迫、ビジネスチャンスの可能性
◇〔日本〕新興国市場の成長 ◇〔日本〕総合エネルギー産業の展開
◇〔中国地域〕環境・エネルギークラスター形成の動き
◇〔日本〕産業観光、工場夜景等を通じたコンビナートに対する関心の高まり
◇〔中国地域〕北東アジアコンビナートとの近接性
◇〔中国地域〕瀬戸内海沿岸での石油・化学系企業の立地(四国・九州地域)
◇〔中国地域〕地域を牽引する川下企業(自動車産業等)の立地
◇〔中国地域〕行政機関のコンビナート支援の機運の高まり・規制緩和の取組みの進展
◇〔中国地域〕
(コンビナート外の)独立系化学プラントの存在
Weakness】~資源と市場の制約~
●〔日本〕石油を原料とするコスト競争力、資源輸入国のハンディキャップ
原料 ●〔日本〕上流分野への事業展開のなさ
●〔日本〕国産プロセス技術の少なさ ●〔日本〕生産施設の経年劣化
●〔日本〕海外大手化学メーカーに比して規模小・体力小
技術・
●〔中国地域〕研究機能の首都圏等に対する劣位
設備
●〔中国地域〕製油所の閉鎖
●〔中国地域〕未連携の製油所・石油化学プラントの存在
●〔日本〕品目過多、過剰品質、高コスト体質
製品・
市場
●〔日本〕運転員の高齢化
●〔中国地域〕工業用地の制約(拡張やレイアウト変更等への対応上の制約)
その他 ●〔中国地域〕港湾設備の規模の小ささ・利用規制
Opportunity】~連携・ビジネス創出の可能性~
【脅威 Threat】~国際・地域間競争の激化、技術の陳腐化~
◆〔日本〕シェールガス革命による北米のコスト競争力向上
◆〔日本〕原料立地・市場立地での生産による石油化学企業の海外進出
◆〔日本〕技術優位性の低下(技術のコモディティ化)
、技術の陳腐化
◆〔日本〕ガス化学への対応の遅れ
◆〔日本〕石油・石油化学業界の業界再編の動き
◆〔日本〕汎用品による代替 ◆〔日本〕川下産業のガラパゴス化
◆〔日本〕新興国メーカーの追随・模倣、国際的な競争の激化
◆〔日本〕国内での供給過剰、市場縮小(顧客企業の海外進出・人口減少等)
◆〔中国地域〕域内最終需要の乏しさ
◆〔日本〕各種の法規制によるスクラップ・アンド・ビルドの制約
◆〔日本〕アジアにおけるハブ港湾・貯蔵施設等の整備
◆〔日本〕地球温暖化等の環境問題対応に伴う影響、エネルギー政策の不透明感
◆〔日本〕国内におけるコンビナート間の競争激化
◆〔中国地域〕産学官、企業間ネットワーク支援組織の脆弱性
◆〔中国地域〕周辺化学企業の工場や事業所の再編・統合・撤退
コンビナート競争力維持・強化のためのマイナス要因(障害)
- 171 -
外
部
要
因
図表6.27
日本・中国地域のコンビナートの SWOT とコンビナート競争力維持・強化の方向性
日本・中国地域の SWOT 整理
中国地域のコンビナート競争力維持・強化の方向性
◇〔日本〕石油・石油化学の連携の機運の高まり
1.企業間連携の深化・拡大
~中国地域の地理的特性を活かす~
◇〔日本〕C4・芳香族の需給逼迫、ビジネスチャンスの可能性
◇〔中国地域〕環境・エネルギークラスター形成の動き
◇〔中国地域〕瀬戸内海沿岸での石油・化学系企業の立地(四国・九州地域)
●〔日本〕石油を原料とするコスト競争力、資源輸入国のハンディキャップ
●〔中国地域〕未連携の製油所・石油化学プラントの存在
●〔中国地域〕港湾設備の規模の小ささ・利用規制
◆〔日本〕新興国メーカーの追随・模倣、国際的な競争の激化
◆〔日本〕国内での供給過剰、市場縮小(顧客企業の海外進出・人口減少等)
2.誘導品事業の競争力強化
~石油化学産業における強みを活かす~
○〔中国地域〕相対的なシェールガス革命の影響の少ない品目のウエイトの高さ
○〔中国地域〕自家用発電の規模の大きさ(周南)
◇〔日本〕C4・芳香族の需給逼迫、ビジネスチャンスの可能性
◇〔中国地域〕
(コンビナート外の)独立系化学プラントの存在
◆〔日本〕汎用品による代替
◆〔日本〕新興国メーカーの追随・模倣、国際的な競争の激化
◆〔日本〕技術優位性の低下(技術のコモディティ化)
、技術の陳腐化
◆〔日本〕国内での供給過剰、市場縮小(顧客企業の海外進出・人口減少等)
◆〔中国地域〕周辺化学企業の工場や事業所の再編・統合・撤退
3.川下産業との連携強化
~中国地域の産業集積を活かす~
○〔中国地域〕多様な企業集積(石油・石油化学、鉄鋼、電力等)
◇〔日本〕新たな高機能品の開発・高機能品のコスト引き下げ
◇〔中国地域〕地域をけん引する川下企業(自動車産業等)の立地
◆〔日本〕技術優位性の低下(技術のコモディティ化)
、技術の陳腐化
◆〔日本〕川下産業のガラパゴス化
○〔中国地域〕先端技術の実証試験の実施、生産拠点のマザー工場化の意向
◇〔中国地域〕行政機関のコンビナート支援の機運の高まり・規制緩和の取組みの進展
●〔日本〕運転員の高齢化
●〔中国地域〕研究機能の首都圏等に対する劣位
●〔中国地域〕工業用地の制約(拡張やレイアウト変更等への対応上の制約)
●〔中国地域〕港湾設備の規模の小ささ・利用規制
◆〔日本〕技術優位性の低下(技術のコモディティ化)
、技術の陳腐化
◆〔日本〕国内におけるコンビナート間の競争激化
◆〔中国地域〕産学官、企業間ネットワーク支援組織の脆弱性
- 172 -
4.コンビナートの競争力維持・強化に向けた地域
基盤の整備・底上げ
6.4.2.コンビナート競争力維持・強化の方向性と取組施策
前項で作成したコンビナートの SWOT をもとに中国地域のコンビナート競争力維
持・強化の方向性として4項目を抽出した。
a.企業間連携の深化・拡大~中国地域の地理的特性を活かす~
b.誘導品事業の競争力強化~石油化学産業の強みを活かす~
c.川下産業との連携強化~中国地域の産業集積を活かす
d.コンビナート競争力維持・強化に向けた地域基盤の整備・底上げ
さらに、それぞれの方向性に取組施策と結びつけると、図表 6.28 のようになる。
以下、個別の取組施策を説明する。
図表6.28
方
向
方向性と取組内容
性
a.企業間連携の深化・拡大
~中国地域の地理的特性を活かす~
取 組 施 策
(a)企業間連携の深化
(b)企業間連携の面的拡大
(c)芳香族分野における連携
(d)広域的な戦略策定・情報発信
ア.地域エネルギー戦略の策定
イ.
「瀬戸内ブランド」等の情報発信
b.誘導品事業の競争力強化
~石油化学産業における強みを活かす~
(a)主力誘導品事業の競争力強化
(b)高付加価値分野の強化、新規成長分野へ
の展開
(c)コンビナート外の誘導品企業等の誘致
c.川下産業との連携強化
~中国地域の産業集積を活かす~
(a)自動車産業との連携
(b)周辺分野を含めた擦り合わせ
(a)産学官連携による研究開発機能等の向上
ア.産学連携の強化
d.コンビナートの競争力維持・強化に
向けた地域基盤の整備・底上げ
イ.先端・実証研究の支援
ウ.マザー工場機能の向上
(b)人材確保・育成支援
(c)企業間連携のための支援
ア.企業ニーズの汲み上げ
イ.産業支援機能の強化
(d)規制緩和・合理化の推進
(e)物流基盤の整備
- 173 -
a.企業間連携の深化・拡大
(a)企業間連携の深化
中国地域のコンビナート関係者へのヒアリング調査において、国際競争力を有す
る効率的な生産体制を構築するために、業種や資本の枠組みを越えて、製油所間、
化学プラント間、または、異業種間において、高度な事業連携・一体運営を行うこ
とが必要であるとの認識が広がりをみせていることが確認できた。今後、実際の取
組みにより、企業関係者間の更なる信頼関係が構築され、コンビナート全体最適へ
の共通認識が浸透することにより、さらなる取組みの加速に繋がることが期待され
る。
中国地域においても、従来より水島地区、周南地区において石油コンビナート高
度統合運営技術研究組合(RING)事業への参画がなされ(図表 6.29)、水島地区に
おいては当該 RING 事業が新日本石油(新日本石油精製の親会社)と新日鉱ホールデ
ィングス(ジャパンエナジーの持株会社)の経営統合による JX 日鉱日石エネルギー
誕生の契機になったともいわれている。地域の取組みが全国的な経営統合へと波及
図表6.29
地
区
時期(年度)
事業名
RINGⅠ
先端的総合生産
管理システム技
術開発
(平成 12(2000)
~
平成 14(2002))
RINGⅡ
(平成 15(2003)
~
平成 17(2005))
水
島
地
区
中国地域における RING 事業等への参画状況
RINGⅡ
(平成 15(2003)
~
平成 17(2005))
RINGⅢ
(平成 18(2006)
~
平成 21(2009))
コンビナート連
携石油安定供給
対策事業
(平成 21(2010)
~
平成 24(2013))
副生炭酸ガス冷
熱分離回収統合
利用技術開発
熱分解軽質留分
統合精製処理技
術開発
コンビナート原
料多様化最適供
給技術開発
コンビナート高
度統合生産連携
事業
概
要
複数の製油所と複数の石油化学工場間
で、各工場の既存の生産管理システムを
連結し、多数の原料・半製品等の流通を
最適化する技術開発
石油精製の水素製造装置から生産される
水素・炭酸ガス混合ガスから、LNG(液化
天然ガス)冷熱を用いて高純度水素の製
造と液化炭酸ガスの分離を効率的に行
い、大気に排出している炭酸ガスの削減
を図るとともに、コンビナートのエネル
ギー使用量の低減を可能にする技術開発
石油精製および石油化学の熱分解装置か
ら生成する軽質留分中に含まれる硫化物
等の不純物を蒸留・吸着等により効率的
に除去し、クリーンガソリンや石油化学
の原料等に精製処理して有効利用するた
めのプロセスの技術開発
コンデンセートを精製処理し、ナフサや
ガスオイル等のエチレンクラッカー原料
および芳香族生産のための改質装置原料
を高効率で安定的に製造し、最適供給す
る技術を開発コンビナート全体最適化の
ための効果的な留分活用の研究、開発
水島港を隔てた製油所と石油化学事業所
間でコンビナートの統合一体運営による
高効率化・高付加価値化を目指し、LP
Gから自家燃料用重油まで多くの留分を
相互に融通
- 174 -
参加企業
新日本石油精製、
ジャパンエナジ
ー、旭化成ケミカ
ルズ、山陽石油化
学、三菱化学
新日本石油精製、
ヴイテック、三菱
化学
ジャパンエナジ
ー、旭化成ケミカ
ルズ、山陽石油化
学
新日本石油精製、
ジャパンエナジ
ー、三菱化学、旭
化成ケミカルズ、
山陽石油化学
新日本石油精製、
ジャパンエナジ
ー、三菱化学、旭
化成ケミカルズ
図表6.29
地
区
時期
(年度)
RINGⅠ
(平成 12(2000)
~
平成 14(2002))
周
南
地
区
RINGⅡ
(平成 15(2003)
~
平成 17(2005))
中国地域における RING 事業等への参画状況(続)
事業名
概
要
コンビナート操
業情報システム
技術開発
コンビナート内の事業に関わる情報を一
元的に管理・提供することにより、コン
ビナート全体の高効率省エネルギー運転
を可能とする技術の開発、使用されてい
ない既存の配管の再活用技術の開発
コンビナート原
料副生成物マル
チ生産技術開発
幅広い種類の原油を選択処理したり、副
生する軽質オレフィン留分から、環境低
負荷の燃料やクリーン溶剤等をフレキシ
ブルに製造可能な生産システムの技術開
発およびコンビナート内で生じる多様な
廃棄物の再資源化を可能とする回収利用
システムの研究開発
参加企業
出光興産、帝人フ
ァイバー、東ソ
ー、トクヤマ、大
陽日酸、日本ゼオ
ン、三井化学
出光興産、帝人フ
ァイバー、東ソ
ー、トクヤマ、徳
山オイルクリー
ンセンター、大陽
日酸、日本ゼオ
ン、日本ポリウレ
タン工業、三井化
学
資料:石油コンビナート高度統合運営技術研究組合資料より作成
した事例であり、中国地域が誇るべき実績でもある。
引き続き、原料・製品・副生物の有効利用・相互融通等により原料最適化、製造
最適化に努めるとともに、従来の RING 等における石油と石油化学との枠組みにとど
まらず、電力、鉄鋼、ガス等を含めたエネルギー共有化等の連携施策の進展も期待
される。
中国地域の RING 事業においては新興国の経済成長により原材料の確保が困難に
なることを見込み、石油・石油化学原料の多様化等にも取組んできた。水島地区の
RINGⅢ事業ではこれまで国内では活用が進んでこなかった、コンデンセートの活用
やコンビナート全体最適化のための留分活用が行われ、周南地区での RINGⅠ事業で
は LPG(ブタン)の石油化学原料化の研究開発が行われた(図表 6.29 網掛け部分)
。
現在、シェールガス革命との関連では現在、LNG や石油に先行し、既に LPG やコ
ンデンセートが輸入されているが、水島地区、周南地区での RING 事業はこのような
時流に適合するものである。中国地域においても将来的にはこれらの技術・連携実
績をもとに、シェールガス由来の原料の活用等も含めコンビナートの原料多様化・
最適化への取組みの進展が期待される。
(b)企業間連携の面的拡大
企業間連携においては、コンビナート内における連携だけでなく、中長期的には
連携の動きを面的に拡大していくことも重要である。
ヒアリング調査では中国地域の強みは岡山県~山口県の 200~300km の間に複数
のコンビナートが点在していることであり、これらを線で結ぶことにより、他地域
のコンビナートに対し優位性を確保すべきとの意見が多くあった。さらに瀬戸内エ
- 175 -
ウルサン
ヨ
ス
リア、最終的には東アジアのコンビナートである蔚山、麗水(韓国)等まで広げる
べき(図表 6.30)とのコメントも複数あった。
現在の「コンビナート全体最適」の流れを深化させることに加え、中国地域にお
けるコンビナート間の連携や瀬戸内エリアまで広げた「地域全体最適」に向けた連
携の視点での、原料の有効利用・相互融通、付加価値生産性の向上により競争力維
持・強化を達成していくことも中長期的には重要であると考えられる。
図表6.30
企業間連携 地理的な視点(イメージ図)
(エチレンプラント)
SK エネルギー 92 万トン/年
大韓油化 46 万トン/年
(エチレンプラント)
麗川 NCC
191 万トン/年
湖南石油化学 102 万トン/年
LG
87 万トン/年
東アジア(韓国)との連携
bbbbbbbbbbbbbb
蔚山
瀬戸内連携
麗水
中国地域内連携
資料:経済産業省(2014)
「世界の主要石油化学プラント」
(データ部分)
(c)芳香族分野における連携
シェールガス革命によりブタジエン・芳香族の需給が逼迫すると見込まれている
が、このような状況に対し石油と石油化学が連携しつつナフサ連産品のリバランス
に対応していくことが重要となってくる。石油側では「①石油精製能力の維持」、
「②
収益強化」につながるとともに、石油化学側でも「①原料融通・調達の強化」、「②
投資負担の軽減」につながり、Win-Win な関係が構築できると考えられる。
例えば、中国地域の芳香族の生産能力は全国の2~3割程度であり、特に水島地
区は石油精製設備とナフサクラッカーを合わせ、日本で第2位の生産能力を有して
いる。石油と石油化学が連携しつつ、生産規模を活かすといった相乗効果が期待さ
れる。
- 176 -
図表6.31
芳香族関連の生産設備の立地状況
出光興産
西部石油
東燃ゼネラル石油
JX 日鉱日石エネルギー
三菱化学
JFE ケミカル
JX 日鉱日石エネルギー
太陽石油
東燃ゼネラル石油
コスモ松山石油
NS スチレンモノマー
JX 日鉱日石エネルギー
資料:重化学工業通信社資料(2014)
「2015 年版 日本の石油化学工業」より作成
さらに、中国地域の近隣地域に目を向けると九州地区(大分)、四国地区(松山、
今治)、関西地区(堺、和歌山)の瀬戸内海沿岸エリアにも生産設備がある(図表
6.31)。これらを合わせると全国の約半分の生産能力を有する設備が立地しており、
(図表 6.32)この集積を活用する方向性もある。例えば、瀬戸内海沿岸エリアに立
地する芳香族を生産企業が連携し、輸出に関する共同輸送、各事業所間・系列誘導
品工場への相互融通などによる競争力強化が考えられる。
図表6.32
ベンゼン(B)
芳香族関連の生産能力の状況
トルエン(T)
キシレン(X)
中国地域
22.3%
その他
44.9%
その他
56.3%
中国地域
22.2%
中国地域
27.0%
瀬戸内海
沿岸
21.5%
その他
53.3%
瀬戸内海
沿岸
28.1%
資料:重化学工業通信社資料(2014)
「2015 年版 日本の石油化学工業」より作成
- 177 -
瀬戸内海
沿岸
24.6%
また、芳香族分野では製鉄会社もサプライヤーとして加わってくるのも特徴で
ある。
従来、
製鉄会社との連携は温廃熱やスラグの活用が主に検討されてきたが、
芳香族分野での連携の輪に加わる可能性があるのではないかとも考えられる。
(d)広域的な戦略策定・情報発信
ア.地域エネルギー戦略の策定
中国地域ヒアリング調査においては、石油化学関連および一般製造業の企業か
ら、LNG の活用等も含めエネルギー政策の不透明感から企業活動への影響を懸念
する声があった。
そこで、コンビナート連携の広域化の動きに合わせ、中国地域さらに瀬戸内海
エリアを対象に国際情勢や国際競争下での環境変化に応じ、石油、石油化学、電
力、鉄鋼等の企業等を中心に石炭、石油、ガス等の一次エネルギーのベストミッ
クス等の地域エネルギーの最適化を図る「地域エネルギー戦略」の策定が期待さ
れる。さらに、最適化を実現するための技術開発等も含め、関係者が将来展望を
共有化するとともに、地域産業界全般に対しても“見える化”することが重要で
はないかと考えられる(図表 6.33)
。
また、本戦略の策定プロセスにおいて、コンビナート間のエネルギー供給面で
の連携に加え、現在、中国地域では調達が具体化されていないシェールガス等の
非在来型ガスについても、その価格低減効果をエネルギー利用者全般に広げるた
めの取組みやパイプライン等のインフラ整備等に向けた議論が深まることが期待
される。
図表6.33
地域エネルギー戦略(イメージ)
天
然
ガ
ス
中国地域の概要・課題
世界・日本の概要
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
今後のロードマップ
2015
2020
2030
2050
シェール・・
パイプライン・・・
ガス混燃発電・・・・・
今後の課題・開発の方向性
技術開発動向・中国地域の競争力
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
- 178 -
イ.「瀬戸内ブランド」等の情報発信
「瀬戸内」というキーワードに対しては、ヒアリング調査においては『中国地
域が特に誇るべき点は特に瀬戸内地域での「産業」と「自然」の調和であり、世
界遺産に申請するに値する』とのコメントがあった(図表 6.35)
。
現在、
「食」
、
「文化」などの分野において瀬戸内エリア特有の資産をもとに、創
意工夫によって開発された商品・サービスに対する「瀬戸内ブランド」が制定さ
れている。同様に、地域で形成が期待される環境・エネルギークラスターや島嶼
部で実証実験が行われている石炭火力発電の実現へのプロジェクト(大崎クール
ジェンプロジェクト)等と併せ、工業版の環境調和型「瀬戸内ブランド」の確立
や環境・エネルギー技術のショールームとしての先進性を国内・世界に情報発信
していくことも有効ではないかと考えられる。また、中国地域の温暖な気候や風
水害・地震の少なさ等のセールスポイントと合わせ情報発信することにより国内
外からの企業誘致等の好循環の発生が期待される。
図表6.34
瀬戸内エリアでの「産業」と「自然」の調和(イメージ)
「周南エリアの紹介 ~工場群と瀬戸の海~瀬戸内海の自然と、西日本最大のコンビナート
群が不思議な調和を見せるエリアです」(山口フィルムコミッション)
瀬戸内海の自然と、西日本最大のコンビナート群が不思議な調和を見せるエリアです。
- 179 -
b.誘導品事業の競争力強化
(a)主力誘導品事業の競争力強化
誘導品事業の競争力強化を図ることはエチレンプラントの高稼働率の維持等につ
ながり、コンビナート全般の競争力向上につながる。また、今後、変動する内外の
環境変化に対応するため、
コンビナートにおける企業再編・統合の可能性があるが、
P165「c.エチレンプラントの集約・再編」で述べたように、川下分野の淘汰・選
択が、川上分野(エチレンプラント)の集約・再編に影響を及ぼし、誘導品の強い
コンビナートが地域間競争を生き残ると思われる。
石油化学コンビナートでは、かつてはコンビナート内で多様な誘導品をそろえる
ことが戦略となっていたが、今日では、コンビナート毎に生産の主体となる誘導品
の絞り込みが進展している。
例えば、周南地区においては、主要なエチレン系誘導品のうち塩化ビニルモノマ
ーが6割程度を占めるとともに、東アジアトップクラス、国内の最大の生産能力を
有し、他地区への供給基地ともなっている。このため当地区では、こうした特性(強
み)を生かして、塩化ビニルモノマーの競争力を一層強化して行く方向が考えられ
る。
シェールガス革命の関係でも塩化ビニルモノマーはエチレン原単位の関係から相
対的に影響の小さい分野であり、優位性を維持・向上することが期待される。
そのためには、原料である苛性ソーダ、塩素の製造コストの約3割にあたる原塩
の電気分解に必要な電力コストの低減に向けた取組み、例えば、コンビナート企業
同士による共同発電、電力の相互融通、省エネ・低炭素化技術を有する地場企業と
の連携強化等が効果的であると考えられる。
また、港湾インフラを整備し、大型船舶の入港による発電用の石炭や原塩等の輸
入コスト、生産量の2~3割にあたる輸出のための輸送コストの低減に向けた取組
みの進展も期待される。
(b)高付加価値分野の強化、新規成長分野への展開
ヒアリング調査等の結果、シェールガス革命の影響が最も大きい品目はエチレン
誘導品のうちエチレン原単位が高く、グレード的には汎用品に属する部分のもので
あった。
このようなシェール由来のエチレン誘導品への影響を回避するためには、高付加
価値分野の強化を図るとともに新規成長分野への展開が重要である。例えば、エチ
レン系であっても低密度・高密度ポリエチレン(LDPE、HDPE)等ではなく直鎖状低
密度ポリエチレン
(LLDPE)
の特殊性の高い誘導品等の品目へのシフトが考えられる。
- 180 -
また、シェールガス革命の影響による需給が逼迫するブタジエン・芳香族等の分
野の強化、さらに川下に目を転じて、機能性化学品等の強化・展開等を図ることが
求められる(図表 6.35)
。
<参考>図表 6.35 高付加価値分野の強化、新規成長分野への展開に向けた主な投資
企業名
所在地
クラレ
旭化成ケミカルズ
三菱ケミカル HD
岡山
水島
大竹
東ソー
南陽
日本ゼオン
徳山
三菱ケミカル HD
三井化学
住友化学
旭化成ケミカルズ
宇部興産
東レ
カネカ
日本ゼオン
JSR
-
大牟田
大江
(愛媛)
大分
川崎
千葉
堺
栃木
石川
滋賀
高砂
富山
四日市
山梨
概
要
中 国 地 域
PVA 繊維パイロット設備立ち上げ
先端技術試験設備建設
車部品用炭素繊維原料(プレカーサー)設備増強
ハイシリカゼオライト製造設備増強
ウレタン樹脂向け触媒設備新設
カーボンナノチューブ製造設備建設
中 国 地 域 以 外
太陽日酸子会社化
メガネレンズ材料プラント新設
時期
〔年(西暦)
〕
2014
-
2014~2015
2014
-
2015
2014
2015
LiB セパレータ生産設備増強
2014~2015
フルミオキサジン(大豆用除草剤)製造設備増強
水添エラストマー生産能力増強
工学用新規透明樹脂生産プラント新設
LiB セパレータ製造設備設置
ポリエチレンフィルム生産能力増強
炭素繊維樹脂含浸シート生産設備増強
ITO フィルム製造設備増強
抗体医薬品精製用プロテイン A 担体大型生産設備導入
液晶テレビ用位相差フィルム第 5 系列目増強
半導体材料開発用クリーンルーム棟増設
リチウムイオンキャパシタ量産工場新設
2014~2015
2015
2015
2014
2015
2015
2014
2015
2015
2014
2014
資料:各社IR資料、新聞資料等より作成
さらに、中国地域のコンビナートでは周南地区での多結晶シリコン、窒化アルミ
ニウム、水島地区での窒化ガリウムなどの素材を世界的なシェアで供給しているが、
立地企業が、蓄積する技術等を活用し、新素材を世界に供給し続けることで、オン
リーワン・コンビナートとしての存在感を高めていくことも重要である。
以上のような誘導品事業における二つの競争力強化施策である「(a)主力誘導品
事業の競争力強化」と「
(b)高付加価値分野の強化、新規成長分野への展開」の関
係は、「
(a)
」が主に生産規模が活かせるボリュームゾーン対応であるのに対し、
「(b)
」が利益率の高いニッチ市場に対応しており、コンビナート競争力維持・強
化のためには両面からのアプローチが、当面効果的であると考えられる。
- 181 -
ただし、P149 コンビナートの将来イメージ「a.東アジアにおける国際分業・
連携の進展したコンビナート」で示したとおり、長期的には「ボリュームゾーン対
応」から「高付加価値分野の強化」へと軸足のシフトが図られるものと見込まれる。
また、誘導品事業の強化のためには、国内において、研究開発機能の一層の強化、
生産技術の更なる向上、グローバル市場のニーズを迅速に捉えて事業展開できるた
めの生産体制等の構築も必要であると考えられる。
(c)コンビナート外の誘導品企業等の誘致
コンビナート内において企業間に連携の余地があるとはいえ、サプライチェーン
上にある企業群が一定のエリアに集積するとともに、パイプラインで結ばれること
によりシナジーが発揮されることも確かである。
ただし、今後、コンビナート内の企業統合や事業撤退等によりコンビナートに遊
休地が生じる可能性があるが、遊休地の発生は単に当該企業分の出荷額の減少とい
った影響だけでなく、
「二度と作れない稀少な財産」といわれるコンビナート全体の
競争力低下に繋がる危険性を孕んでいる。生産活動、雇用等の面からも地域経済へ
の影響が甚大である。
このような場合、コンビナート全体の競争力維持のため、遊休地等へ新たな企業
を誘致し、
“コンビナート再構築”を行うことが重要である。企業にとってもインフ
ラが整備され、原材料等の調達面でのメリットが大きいコンビナートへの立地は魅
力的ではないかと考えられる。
そのうち、誘致実現性やコンビナート機能の維持・強化という観点からすれば、
特に近隣エリア、県内にあるコンビナート外の企業、例えば、独立系誘導品企業等
図表6.36 中国地域の移転立地状況(平成 21(2009)~平成 25(2013)年)
2件
県内移転 3 件
1件
県内移転 4 件
県内移転 18 件
1件
県内移転 31 件
1件
県内移転 6 件
域外へ
3件
域外より
資料:経済産業省「工場立地動向調査」
- 182 -
1件
域外より
の設備更新時期を捉え、コンビナート内への移転に向けたアプローチを行うことが
効果的と見込まれる。中国地域のヒアリング調査ではコンビナート外の企業とも連
携を拡大するコメントもありコンビナート企業側のニーズにもかなっていると考え
られる。
また、同時に移転のための補助金、不動産取得税・登録免許税等の税制上の優遇
措置による誘因の付与も、遊休期間の短縮化に資すると考えられる。
近年の中国地域の移転立地の動向をみると、県外、域外からの移転立地は稀で、
県内での移転が大半であり(図表 6.36)
、現実性の高い近隣エリアの企業等の移転
に向けた効果的なアプローチが期待される。
- 183 -
c.川下産業との連携強化
(a)自動車産業との連携
ヒアリング調査では、石油化学産業の生き残りのためには国際競争力のある川下
産業との連携を強化し、川下産業のニーズに沿った部品・部材等を供給することに
より互いの競争力を高めることが不可欠であるとの指摘があった。
中国地域において国際競争力がある組立加工型の産業といえば、自動車産業であ
り、地域で製造される自動車の部品・部材の材料が「地産地消」であったり、その
ための研究開発が同地域で行われることは、地域経済に大きく貢献するものと見込
まれる。
今後、米国等では、自動車の燃料規制強化への対応が厳しくなるため、自動車メ
ーカーは燃料改善に向けて努力せざるをえない状況となる。その対策としてエンジ
ンのダウンサイジングなどとともに、軽量化に取組むことにより、金属やガラスな
どこれまで使用していた重い材料からポリエチレンやポリプロピレン等の軽い樹脂
への代替が進み、
樹脂の構成比率がさらに高まるとみられる(図表 6.37、
図表 6.38)
。
図表6.38
図表6.37 普通・小型乗用車における原材料構成比
昭和 48
(1973)
昭和 57
(1983)
平成 4
(1992)
平成 13
(2001)年
その他
塩化ビニール
%
構成樹脂の構成比
ABS樹脂
ポリウレタン
ポリエチレン
ポリプロピレン
10
鉄 鋼
非鉄金属
81.1
76.0
72.3
73.0
(アルミ等)
5.0
5.6
8.0
7.8
合成樹脂
2.9
5.7
7.3
8.2
8
※
6
?
4
2
その他非金
属(ガラス等)
11.0
11.7
12.4
11.0
0
1973
83
92
2001 年
現在
資料:一般社団法人日本自動車工業会(2001 年で調査は中止)
※個別の車種で合成樹脂構成比 10%以上を示すデータはあり
シェールガス革命によりエチレン、
(プロパン脱水素等による)プロピレンが含ま
れる化学製品の低価格化が進行すれば、樹脂等の材料代替の動きを後押しする可能
性がある。また、同じ樹脂の中でもブタジエンやベンゼンの需給逼迫を懸念し、ABS
樹脂等からその他の樹脂へシフトする可能性がないとも言えない(既に食品業界で
はポリスチレン系の樹脂からエチレン系の塩化ビニル樹脂に切り替わる動きもあ
る)。このような動きを先取りすることが重要である。
ただし、自動車分野での素材代替のためには、これまで使っていた材料よりも安
価になるだけではなく、他の樹脂や無機物とのアロイ化(二種類以上の原料をまぜ
て、双方の特性を補うような性質を持つ「原料」を作り出す技術)
・複合化等により、
- 184 -
従来使用していた材料の機能と同等以上となることが必要である。加えて素材を組
み合わせるための接合技術、一括成形技術など、これまでの自動車製造の概念とは
異なる技術開発も不可欠である(図表 6.39)
。
図表6.39 プラスチックへ代替するための技術革新
部位
現在の材料
問題点
実現すべき革新技術
フロアパン
スチール
熱可塑性 CFRP 一括成形
外板
スチール
窓
ガラス
二色射出圧縮
成形(型内接
着)
座席
スチール、ウレタン
フォーム
車輪
ゴム、スチール
高重量
高重量、
スペアタイヤ
課
題
熱膨張差のある樹脂
間の接着〔信頼性弾性
樹脂、熱接着〕
長繊維強化熱
可塑性樹脂
強度・剛性〔最適設計
リブ構造〕
超耐候・ハードコ
ートポリカーボネート
耐擦傷性〔超硬度表面
処理、超撥水処理〕
FRP+繊維ネットなど
快適性〔人間工学的設
計〕
非空気充填型(ノンパンク タイヤ)
ホイール・樹脂スポーク一体構造
耐久性〔樹脂や構造の
最適化〕
資料:公益社団法人新化学技術推進協会(2013)
「化学経済が目指す5ヶ年の化学技術戦略」
(b)周辺分野を含めた擦り合わせ
以上のような素材代替は、
サプライヤーである化学会社等が自動車メーカーと「擦
り合わせ」しながら試行錯誤を行わないと進展しないが、
「擦り合わせ」しながらの
研究開発は日本企業が得意とするところであり、シェールガス革命がもたらす素材
代替の動きを日本企業がリードすることが期待される。特に化学産業は、自動車産
業と主体的に連携し、周辺分野である部材加工産業や加工機械産業等を巻き込んで
技術革新を牽引することが重要であると考えられる(図表 6.40)
。
さらに、自動車産業との連携の基盤強化のためには、前項「
(c)コンビナート外
の誘導品企業等の誘致」等に加え、部材加工産業や加工機械産業等を含めサプライ
チェーン上の幅広い関連分野企業の立地を促進し、産業集積を拡大することが効果
的であると考えられる。
また、
「擦り合わせ」期間の円滑化・短縮化や性能評価・安全評価分野等における
高額な試作機器や評価設備の重複投資の排除のためにも地域の公設試験研究機関等
による支援が求められる。
- 185 -
図表6.40 周辺分野を含めた擦り合わせ(イメージ図)
コンビナート
周辺技術
(成型・加工技術等)
設
備
製
品
製油所
原油
エチレンプラント
ナフサ
オレフィ
ン・BTX
誘導品プラント
モノマー
ポリマー
部材
石油-石化オペレーションの統合
連
携
の
視
点
(
例
)
汎用品のコスト低減
高付加価値化・差別化・ニッチ化
川下企業のニーズの反映
- 186 -
川下産業
(自動車等)
d.コンビナートの競争力維持・強化に向けた地域基盤の整備・底上げ
(a)産学官連携による研究開発機能等の向上
ア.産学連携の強化
学識者ヒアリング調査では触媒技術の研究開発に関連して、
『大学単独での研究
ではスピードに難点があり、スピードアップの図れる産学連携(共同研究)は効
果的』といったコメントもあった(図表 6.41)。そのため、地域における効率的
な研究開発のための産学連携に向けたコーディネート機能の充実や「企業間連携
の面的拡大」に対応し、産学連携の広域化が期待される。
また、今後のコンビナートにおける企業間連携の進展を考えれば、研究開発分
野における産学連携に関しても従来の「石油企業」-「大学等」or「石油化学企
業」-「大学等」ではなく、
「石油企業」-「石油化学企業」-「大学等」といっ
た三者連携を推進することも効果的ではないかと考えられる。
図表6.41 ヒアリング調査における産学連携に関するコメント
他地域ヒアリング調査
・米国では、オイルショック以降、掘削技術等も含めエネルギー技術全般の開発支援に地
道に取組んできた。それが近年の外部環境の変化により、シェールガス革命ということ
で、花開いたのではないか。日本では少しの浮き沈みで技術開発へのスタンスが変わる
という印象がある。米国のような継続的な支援が求められる(公益法人 C法人)
。
学識者ヒアリング調査
・触媒の研究(特に寿命の検討)には長い時間がかかり、研究成果がすぐに出ない。
産学連携により Win-Win の関係が構築できれば有り難い。産のニーズはなかなか伝
わってこないので、行政・支援機関に効果的なコーディネート活動を願いたい(島
根大学
小俣教授)。
・産学官連携に関しても「石油」-「大学」
、
「化学」-「大学」の共同研究でなく、
「石
油」-「化学」-「大学」という組み合わせでなければ効果的ではない。主役は「産」
-「産」連携であり、それを学官がサポートすることが重要ではないか(鳥取大学
片田教授)
。
・産学官連携という点では、化学産業等の研究者が増え、石油化学コンビナートへの
理解が深まれば好ましい(一橋大学
橘川教授)
。
・企業との共同研究も複数行っているが、大学は基本的に学生が研究という題材をベ
ースに、人が育っていく場所、教育機関と考えている(早稲田大学
関根教授)
。
イ.先端・実証研究の支援
石油化学産業は技術力が競争力に大きく影響する産業であるため、研究開発が
重要である。日本の石油化学産業の強みの一つは研究開発志向・技術開発力であ
り、シェールガス革命の関連ではオレフィンコンバージョン技術やガス化学技術
の分野等において研究開発要素が残されており、研究課題の解決により、新たな
製造技術を確立していくことが望まれる。
- 187 -
一方で、欧米の化学企業と比較すると研究開発の規模が小さく、しかも複数の
国内企業が先端的分野の開発を競っているため、結果的に国内で重複投資による
非効率が生じている可能性もある。さらに、研究開発費の高額化の流れ、特に設
備費の多くかかる技術の実証化研究段階等では、企業だけでは負担が大きいこと
が考えられ、オープンイノベーションの推進や、プロジェクトの効果的支援が期
待される。
ウ.マザー工場への進化
コンビナート企業へのアンケート調査ではシェールガスの影響への対応として
「国内拠点の生産能力の縮小」とともに「海外拠点の生産能力の増強」等を想定
している企業もあり、今後の海外への生産拠点のシフト、コンビナートの空洞化
などが懸念される状況がうかがえた。
シェールガス革命の影響や国内需要が伸び悩む中で、引き続き国内生産拠点を
維持するためには、グローバル需要を取り込むための礎としてマザー工場へと進
図表6.42
企
中国地域に関連した化学企業のマザー工場化の動き
業
内
容
水島製造所の研究開発インフラの整備に 100 億円を投入。老朽化した研究
旭化成ケ
所を再構築するとともに、次世代プロセス技術の実証プラント2基を建設。
ミカルズ
水島はナフサクラッカーをはじめ生産設備の停止を相次ぎ計画しており、
敷地の半分が遊休地となるが、集中投資を断行し、マザー工場として再建。
公表時期
平成 27
(2015)年
1月
石油樹脂や熱可塑性エラストマーの研究開発を担う総合開発センター(神
日本
ゼオン
奈川県川崎市)を水島工場へ移設。生産・研究一体化の一環で、水島工場
平成 26
の既存施設を活用するとともに重合実験ができる設備も新設。C5 ケミカ
(2014)年
ルで海外展開を検討しており、水島工場はグループのマザー工場としての
役割を強化し、研究開発の底上げを図る。
プリンター用トナーの研究施設を総合開発センター(神奈川県川崎市)か
ら徳山工場に移設。研究と生産の一体化で研究開発効率の向上を図る。ト
ナープラントの隣接地に研究棟を新設。工場敷地内に研究拠点を置くこと
で製品開発のスピードアップや生産トラブルへの迅速な対応につなげる。
海外プロジェクト支援グループを新設。次期中期経営計画などで検討する
宇部興産
6月
合成ゴムの海外拠点設置をにらんだもので、国内からエンジニアらを派遣
し、円滑な立ち上げに向けたサポートを実施する。成長著しい中国・アジ
ア市場で迅速な供給ができるような支援体制を整えていく。
平成 26
(2014)年
1月
平成 26
(2012)年
11 月
ポリエステル繊維を生産する徳山事業所を閉鎖し、規模が大きい松山事業
所やタイの工場に生産を集約。同社はタイをポリエステル繊維やアラミド
(参考)
帝人
繊維などの素材生産にとどまらず、加工品生産拠点や研究開発機能も置く
一大拠点とする意向。
松山事業所には素材の基礎研究から製品開発までを一貫して手掛ける「商
品開発センター」
(仮称)を新設する。
資料:新聞資料等
- 188 -
平成 26
(2014)年
11 月
化することが不可欠であり、他地域ヒアリング調査、学識者ヒアリング調査おい
ても国内生産拠点の今後の方向性として多くの言及があった。中国地域の化学企
業においてもマザー工場化の動きがみられるが(図表 6.42)、実際このような取
組みを広げる必要がある。
マザー工場への進化のためには、前述の「①新技術を生み出す研究開発」に加
え、「②最新の生産・省エネ設備を持つトップランナーとしての拠点」、二つを融
合したうえでの「③最高の生産ノウハウを確立した拠点」
、さらに、これを成熟さ
せて「④海外拠点への移転支援、海外拠点のバックアップをする拠点」の確立が
必要である(図表 6.43)
。
図表6.43 マザー工場への進化(イメージ)
①新技術を生み出す研究開発
融合
確立
②最新の生産・省エネ設備を持つ
トップランナーとしての拠点
③「①と②を融合し、最高の生産ノウハウを確立した拠点」
成熟
④「上記のノウハウを成熟させ海外拠点への移転支援、海外拠点のバックア
ップをする拠点」
また、マザー工場への進化のステージに合わせ、例えば、国内拠点のマザー工場
化の局面においては「マザー工場化のための設備投資支援」
、海外拠点の移転局面を
見据えての「海外事業展開を担う人材の育成支援」
、海外展開後の国内側の再投資の
ための「海外利益の国内還流策の強化」等といった支援も期待される。
(b)人材確保・育成支援
今回のシェールガス革命影響調査においては、人材確保・育成の観点からは、一
般製造業において「専門・グローバル人材確保の困難さ(中国地域ヒアリング調査:
一般機械)
」
、
「域外への若年労働者の流出(中国地域ヒアリング調査:造船)」が問
題視されるとともに、
「シェールガス掘削に関連した人材育成・確保(アンケート調
査)」等のニーズが挙げられた。
また、石油化学産業分野では、中国地域ヒアリング調査において、高齢技能者か
ら若年者への技能伝承の取組み、設備老朽化、技術高度化が進捗する下での安全運
転、メンテナンス等に関連した技能者養成の取組みの進展が確認できた。日本の高
いオペレーション能力を支えている大きな要因は、高い教育水準による優秀な人材
確保とその後の育成であるともいえる。
今後ともこの優位性を維持するために、「人材確保・育成」は重要な項目であり、
採用活動や働きやすい環境づくりなどの各企業による取組みに加え、コンビナート
- 189 -
企業、自治体、教育機関が相互に連携し、取組みを行うことが考えられる(図表 6.44)
。
例えば、人材確保の面では最近減少傾向にある工業高校の学生等の「技能者の卵」
を対象としたコンビナートへの理解促進のための取組み(インターンシップ、工場
見学等)人材育成の面では基礎的・共通的な分野(安全、危機管理、マネジメント
分野等)教育の実施等が考えられる。
例えば、人材育成の面では岡山県の山陽技術振興会が製造現場の高度な運転や安
全に関連する中核人材を育成するため「山陽人材育成講座」を開講し、県外・域外
からも受講者がみられるなど、地域全般におけるニーズは高いと考えられる。
このような取組みが域内全般に展開され、各コンビナートからの参加することに
より、域内他地区の状況・風土の違いなどを実感し、将来的なコンビナート連携意
欲の刺激となることが期待される。
図表6.44 コンビナート全体としての人材確保・育成の例(ヒアリング調査等より)
人 材 確
保
・地元工業系高校・高専を対象としたインターンシップ
コンビナート・業界
に対するイメージ
の形成
・地元工業系高校・高専への出前授業・工場見学
・地元大学への寄付講座の設置
等
<参考>図表6.45
70
工業高等学校生の生徒数と比率の推移
生徒数(右軸)
万人
比率(左軸)
14%
13.4%
60
12%
62.4
50
10%
7.9%
40
30
26.0
20
8%
6%
4%
10
1955 60
65
70
75
80
85
90
95 2000 05
10
2%
13 年
資料:文部科学省「学校基本調査」
・企業 OB 人材等の活用
・人材ミスマッチの解消
等
人 材 育
成
・基礎的・共通的な分野(安全、危機管理、マネ
ジメント分野等)での養成研修の実施、域内へ
の展開
・石油・石油化学企業の人的な交流等の促進
等
- 190 -
蓄積された技能・経験の
活用
域内他地区の状況、風
土の違いなどを実感、
将来的なコンビナー
ト連携意欲の刺激
また、人材育成の面では、企業 OB 人材等が培ってきた技能・経験・ノウハウを
活かすことも有効である。例えば、上述の「山陽人材育成講座」は企業 OB 人材の
長年の経験等に基づくカリキュラムにより指導がなされている。
産業支援機関、産業支援型 NPO 等は多くの企業 OB 人材で構成されているが、コ
ンサルティング会社や人材育成会社と比較し、費用面で低廉であり、これらの組
織の専門性やネットワークを活用することにより、人材面での企業の多様なニー
ズに対応することも考えられる。
(c)企業間連携のための支援
ア.企業ニーズの汲み上げ
コンビナートにおける企業間連携の必要性の認識は高まっているものの、一方
で歴史的な背景のあるコンビナートが、企業、業界の壁を越えた連携・統合に進
むのは簡単なことではなく、民間の自発的なインセンティブによる連携・統合の
限界を指摘する声もあった。
また、コンビナートにおける連携は石油、石油化学といった従来業種の連携だ
けではなく、新たな分野での連携・事業創出にあたっては電力、鉄鋼等との異業
種や広域での協業も必要となってくる。そこで、地元行政機関や産業支援機関が
中心となり、産学官連携や企業連携などで主体的な役割を果たし、企業の競争力
維持・強化をサポートする事が従来以上に求められる。
他地域ヒアリング調査で訪問した、神奈川県の京浜臨海部では、企業連携のた
めの場である協議会、検討会といった企業間連携の場の創設に加え、川崎市、神
奈川県や産業支援機関(
「NPO 法人産業・環境創造リエゾンセンター:以下「リエ
ゾンセンター」
)等の積極的な関与により、立地企業と自治体との良好な関係が構
築されている。
中国地域においてもこうした事例を参考にしつつ、徹底した企業ニーズの汲み
上げによる効果的・継続的な施策の展開とそれを可能とする地域の実情に応じた
体制整備(場づくり)が期待される。
イ.産業支援機能の強化
コンビナート内の企業はライバル関係である場合も多く、利害関係のある際に
しか行政と接触を志向しない企業も存在し、企業間連携の実現が困難な状況も発
生するかもしれない。
そのような中、企業間連携を円滑に進めるためには、仲介役(行政・産業支援
機関)がそれぞれに対し、Win-Win の関係が構築できるスキームを提案できる専
門性を有するとともに、その提案を可能とする企業との信頼関係や繋がりが必要
となってくる。
- 191 -
図表6.46 産業支援機関の役割(イメージ)
産
化学分野のイノ
ベーションの意
義の共有
コンビナートの
将来ビジョンの
共有
機動性向上・低下防止
支援
目的意識
の切換え
機関
官の補完・
先取機能
学
官
例えば、前述のリエゾンセンターは、企業メンバー(コンビナート企業 12 社)と
行政 OB により結成され、長期的な関係から信頼感が形成されるとともに、理事長は
大学教授を兼任し、専務理事は行政 OB である等、その専門性を活かして、企業・行
政・大学等に対し様々なアドバイスを提供している。また、この組織の役割は行政
のサポートに留まらず、水素の活用、川崎メカニズムの提案等を通じて、社会ビジ
ョンの先取りを意識し、行政の動きを先導している。
以上のリエゾンセンターは「企業」に対しては機動性向上・低下防止を働きかけ、
「行政」に対しては官の補完・先取機能を担い、
「大学等」に対しては目的意識の切
換えを図っている(図表 6.46)
。
中国地域においても、コンビナートにおける連携に向け、
「行政」-「企業」、
「企
業」-「企業」等を結ぶ産業支援機関等の中間的な組織の機能強化を図ることが期
待される。
(d)規制緩和・合理化の推進
規制緩和・合理化については総合特区制度に基づく取組みや「企業実証特例制度」
等の新制度が創設されるなど進展がみられる。今後も時代の変化や技術の進歩に応
じ規制の再検討を行うことにより、企業の事業運営や技術開発等への影響を必要最
小限とする視点が求められている。
特にコンビナートにおいては、引き続き企業間連携の進化・拡大等に対応した規
制緩和・合理化も期待される。現在の法体系は基本的に個社を対象としたものであ
り、加えて多種多様な法規制の存在により複雑化・細分化している。
このよう複雑な体系をシンプルな法体系へと転換し、規制のミニマム化・権限の
一元化を図るとともに、地域特性に応じた法体系へと変換することや、さらにはコ
- 192 -
ンビナート全体を一つの企業体とする「みなし規定」等が有効ではないかと考えら
れる。例えば、環境等に関連する規制において「みなし規定」が導入されることに
より、コンビナート共同体の中での自己管理による柔軟で現実的な規制対応が可能
となり、企業間連携の促進・効果の最大限の発揮等につながると期待される。
(e)物流基盤の整備
経済のグローバル化が進展する中、原材料やエネルギー資源の輸送量は年々増加
しており、海上輸送の効率化の観点から、バルク貨物輸送船の大型化が世界的に進
展している。
一方で中国地域を含め我が国のバルク貨物については大型船への対応が十分とは
言えず、相対的に不利な事業環境による国内コンビナートの競争力低下等が懸念さ
れている。このような状況を打破する意味でも、引き続き大型バルク貨物輸送船の
入港が可能な大水深国際バルクターミナルの拠点的整備を行うことが期待される。
また、シェールガスとの関連ではポストパナマックスサイズや Q-MAX サイズへの対
応も国内他地域との競争という観点からも重要となってくると考えられる。
さらに、中国地域には複数のコンビナートが存在しているが、これらの産業集積
を有機的に結び付け、競争力維持・強化するための根幹をなすのは、海上・陸上交
通等の物流基盤であり、コンビナート連携の面的拡大と合わせ、各地区での必要に
応じ港湾等の機能強化が求められる。さらに、瀬戸内エリアという点では、現在埋
没しつつある航路機能の回復・強化を推進し、航路体系の再構築を図ることも今後
の連携上重要であると考えられる。
<参考>図表6.47 主要港湾(コンビナート関係)の施設現況
〔平成 24(2012)年 10 月現在〕
コンビナート
港湾
鹿島
水深(m)
公共
民間その他
鹿島港
10
22
千葉
千葉港
12
20
川崎
川崎港
14
26
四日市
四日市港
14
22
大阪
堺泉北港
12
20
水島
水島港
10
17
岩国大竹
岩国港
12
-
周南
徳山下松港
14
11
大分
大分港
14
27
資料:中国電力(2013)「中国地域の経済と地域開発」および各県資料
- 193 -
参考文献
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室井高城(2013)
『シェールガス・オイル革命の石油化学への影響』
、S&T 出版
- 194 -
資料編
資 料 編
- 195 -
「シェールガス革命」に関するアンケート
ご協力のお願い
平成26年7月
拝啓
公益財団法人
ちゅうごく産業創造センター
(実査担当:公益社団法人
中国地方総合研究センター)
時下ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
当センターの事業運営につきましては、平素より格別のご高配を賜り厚くお礼申し
あげます。
現在、当センターでは産学官関係者による委員会のもと、
「シェールガス革命による
石油化学産業等への影響可能性調査」を実施しております。
米国発の「シェールガス革命」は、日本のエネルギー産業のみならず、石油化学産業
を中心とした素材産業に大きな影響を与える可能性があります。さらに、生産(掘削装
置等)、流通(パイプライン、輸送船等)分野においてもビジネスチャンスが期待され
ています。
こうした状況を踏まえ、本調査では、「シェールガス革命」による中国地域の産業
全般への影響を整理するため 、アンケートを実施することといた しました。
特に、本調査においては、アンケート 結果を踏まえ、中国地域の 産業振興の可能性
および産学官連携による支援策につきまして、 検討することとしております。
つきましては、ご本務ご多忙の折、誠に恐縮ではございますが、調査の趣旨をご理
解いただき、アンケート調査にご回答くださいますようよろしくお願い申しあげます。
敬
※
具
アンケート調査の回答にあたっての留意点、お問い合わせ先等については、 2 ペ
ージ、3 ページに記載しておりますので、ご確認ください。
- 196 -
「シェールガス革命」に関するアンケート
米国では新たなガス掘削の技術革新により,2005 年頃から地中深くシェール層に貯留されてい
る天然ガス(シェールガス)を採掘することが可能となりました(図1参照)。これにより,かつ
て大量の天然ガス輸入を行っていた米国は近い将来,輸出国になる見込みです。
生産量の増大するシェールガス等を含め、天然ガスを液化し、米国から日本に輸出するプロジェ
クトが、今年2月、許可されたことにより,日本への液化天然ガス(LNG)の輸入は 2017 年頃
には開始される予定です。カナダからの輸入も含めると,年間約 2,500 万トンの LNG が北米から
日本に輸入される見込みとなり,現在,日本の LNG 年間輸入量が約 8,700 万トンであることから,
輸入の約 3 割が北米産となる可能性があります。
通常の天然ガス田
シェールガス田
(US$/100 万 Btu)
20
18
日本
16
米国
14
欧州
12
10
通常の天然ガス
8
6
4
2
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
0
シェールガス
図1
通常の天然ガスとシェールガス
図2
日米欧の天然ガス価格の推移
このように米国に端を発した世界の天然ガスの供給構造は今日大きく変わりつつあり,「シェー
ルガス革命」と呼ばれています。
米国ではシェールガスの生産により,天然ガス価格が低下しています(図2参照)。日本での天
然ガスは約6割が発電用,約3割が民生用として使われており,今後,日本にとって天然ガスの輸
入先の選択の幅が広がり,天然ガス価格の低下も期待されます。
また,「シェールガス革命」は国内の石油化学産業を中心とした素材産業に大きな影響を与える
可能性があるとともに,北米向けの掘削設備の関連部材やパイプライン,輸送船等を生産する製造
業ではビジネスチャンスとして期待されています。
[調査実施機関(お問い合わせ先)]
[調査委託機関]
■公益社団法人 中国地方総合研究センター
■公益財団法人 ちゅうごく産業創造センター
担当:渡里(わたり),柴田(しばた)
担当:調査部
広島市中区小町 4-33 中電ビル 3 号館 5F
石岡
広島市中区小町 4-33 中電ビル 2 号館 2F
TEL:082-245-7900(代表)
TEL:082-241-9920
FAX:082-245-7629
E-mail:[email protected]
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[本アンケート調査について]
■
ご回答いただいた内容は,すべて統計的に処理し,他の目的に使用することはありません。また,本調
査結果は,平成 27(2015)年 5 月頃に,調査委託機関である公益財団法人 ちゅうごく産業創造センター
のホームページ(http://ciicz.jp/)において掲載する予定です。
■
本アンケート調査は,調査委託機関である公益財団法人 ちゅうごく産業創造センターから委託をうけた
公益社団法人 中国地方総合研究センターが実施してします。調査票の記入に際し,不明な点などがござい
ましたら,公益社団法人 中国地方総合研究センターまでご連絡ください。
■
本アンケート調査は,中国地域 5 県の製造業等,約 1,000 社を対象に実施しています。
■
「シェールガス革命」に関連して貴社の生産、売上、資材調達等への影響、ガス価格の見通し、産業支
援策等についておうかがいしております。該当する部門の責任者の方,またはそれに準ずる方にご回答い
ただきたく存じます。
■
ご回答は公益社団法人 中国地方総合研究センターの「個人情報保護方針」に基づき,外部に情報流出す
ることのないよう,厳重に管理・保管いたします。
■
調査票は,平成26年8月12日(火)までにご記入の上,同封の返信用封筒にてご返送ください(切
手を貼る必要はございません)
。また,FAX,E-mail でのご返信でも結構です。
問1 シェールガスについて,どのようなガスかご存じでしたか(○印は1つ)
。
1.関心があり,よく知っている
2.やや関心はあり,冒頭で書かれている程度のことは知っている
3.あまり知らないが今回,関心を持った
4.知らない。当社とは全く関係ないと考える
問2 「シェールガス革命」は,今後,日本の産業に様々な影響を及ぼすと考えられます。貴社にとっ
ての影響の兆しは見られますか(○印は1つ)。
1.既に影響があった
2.影響が出ていると思われることがある
→問3以下をお答えください
3.まだ影響はないが,3~5 年後には影響があると考える
4.まだ影響はなく,5 年以上先でなければ影響はないと考える
5.全く影響は及ばないと考える
→問9に進んでください
6.判別できない
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問2で1~4と回答された企業にうかがいます。
問3 貴社の事業に関連してどのような分野で影響が考えられますか(該当するものすべてに○印)
1.シェールガスの使用(燃料)分野 【例:発電用燃料、自動車燃料等】
2.シェールガスの使用(原材料)分野
【例:化学製品〔エチレン(基礎品・誘導品等)
〕、鉄鋼(還元剤)
、化学プラント向け設備等】
3.シェールガスの掘削分野
【例:掘削装置、掘削装置用部品の工作機械、鋼管、化学物質、廃水処理】
4.シェールガスの流通分野
【例:輸送タンク(炭素繊維)
、LNG運搬船、港湾設備、液化設備等】
5.その他(
)
問4 貴社の原材料等の調達価格への「シェールガス革命」の影響と具体的品目等についてお教えくだ
さい(該当するものすべてに○印)
。
1.国内からの原材料調達価格の低下
4.海外からの原材料調達価格の上昇
2.国内からの原材料調達価格の上昇
5.エネルギー調達価格の低下
3.海外からの原材料調達価格の低下
6.その他(
)
影響のある原材料・エネルギーは具体的に何でしょうか?
記入例)5.原油価格の先物価格上昇に伴う発電用燃料としての原油価格上昇
問5 貴社の国内売上・国内生産等への「シェールガス革命」の影響について具体的にお教えください
(該当するものすべてに○印)
。
1.国内事業所の売上の増加
5.海外から国内への輸入量の増加
2.国内事業所での売上の減少
6.海外から国内への輸入量の減少
3.国内事業所の生産能力の増強
7.自家発電燃料のガス比率の上昇
4.国内事業所の生産能力の縮小
8.その他(
)
影響をうける製品等は具体的に何でしょうか?
記入例)1.国内事業所におけるガス発電設備用装置の売上増加
問6 貴社の海外売上・海外生産等への「シェールガス革命」の影響について具体的にお教えください
(該当するものすべてに○印)
。
1.海外事業所の売上の増加
5.海外事業所の生産能力の増強
2.海外事業所の売上の減少
6.海外事業所の生産能力の縮小
3.国内事業所から海外への輸出量の増加
7.その他
4.国内事業所から海外への輸出量の減少
(
影響をうける製品等は具体的に何でしょうか?
記入例)3.海外へのガス発電設備用装置の輸出量増加
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)
問7 「シェールガス革命」の影響に対して,貴社では何か取組みを行っていらっしゃいますか(○印
は1つ)
。
1.既に取組みを行っている
2.まだ取組みは行っていないが,近々取り組む予定である
3.影響が明確になった際には取り組む
→問8以下をお答えください
→問9に進んでください
4.取り組む予定はない
問7で1または2と回答された企業にうかがいます。
問8 何に対するどのような取組みかを具体的にお書きください。
記入例)どのような燃料でも対応できるように自家発電設備の更新を検討している。
シェールガスの採掘に関連する新製品開発を行っている。
シェールガスを原料とする新製品開発を検討している。
全ての方にうかがいます。
問9
貴社の川上分野(原材料調達先)
・川下分野(製品販売先)へ「シェールガス革命」の影響はあ
るとお考えでしょうか(○印は1つ)
。
1.ある
2.ない
3.わからない
(影響がある場合)具体的にどのような影響が考えられますか?
問 10 日本の天然ガス価格は今後どのように推移すると考えますか。3~5年後,6~10 年後の見
通しをお教えください(○印はそれぞれ1つ)。
①3~5年後(2017~2019 年頃)
②6~10 年後(2020~2024 年頃)
1.安くなっている
1.安くなっている
2.現状を維持している
2.現状を維持している
3.上昇している
3.上昇している
4.わからない
4.わからない
(参考)天然ガス価格の変動要因
低下要因:生産量の増大(
「シェールガス革命」の進展等)、新興国経済の停滞、為替:円高
代替エネルギー(石油、石炭)の価格低下、調達先の多様化
等
上昇要因:シェールガスの日本への輸出停滞、新興国経済の成長、為替:円安
代替エネルギー(石油、石炭)の価格上昇、CO2 排出量の少ないエネルギーへの転換
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等
問 11 シェールガスに関して,中国地域における産学官連携等による今後の産業支援にどのような役
割を期待されますか。最も重視する役割をお選びください。
1.研究開発支援
6.その他
2.人材育成・確保支援
(
3.販路開拓・輸出支援
7.ない
)
4.海外生産拠点設置支援
5.設備投資支援
期待する支援内容を具体的にご記入ください
記入例)「シェールガス革命」の影響に関する情報提供
シェールガスに関する化学技術の開発
シェールガス掘削に関連した人材育成・確保
問 12 その他,
「シェールガス革命」が地元産業に及ぼす影響や国の産業政策等についての意見などが
ありましたらご自由にお書きください。
記入例)関連事業拡大に伴う雇用者の増加が期待される。
北米とのビジネス拡大により来訪者の増加が見込まれる。
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問 13 貴社名,ご回答者,ご連絡先などについてお教えください。
① 貴社名
② 所在地
③ 業種
(○は1つだけ)
④ 従業員数
1.食料品製造業
2.飲料・たばこ・飼料製造業
3.繊維工業
4.衣服・その他の繊維製品製造業
5.木材・木製品製造業(家具を除く)
6.家具・装備品製造業
7.パルプ・紙・紙加工品製造業
8.印刷・同関連業
9.化学工業
10.石油製品・石炭製品製造業
11.プラスチック製品製造業
12.ゴム製品製造業
13.なめし革・同製品・毛皮製造業
14.窯業・土石製品製造業
15.鉄鋼業
16.非鉄金属製造業
17.金属製品製造業
18.一般機械器具製造業
19.電気機械器具製造業
20.情報通信機械器具製造業
21.電子部品・デバイス製造業
22.輸送用機械器具製造業
23.精密機械器具製造業
24.その他(
)
1.20 人以下
2.21 人~50 人以下
3.51 人~100 人以下
4.101 人~300 人以下
5.301 人以上
⑤ 北米での支店・
系列企業の有無
1.あり
2.なし
1.あり→燃料は何でしょうか?→
2.なし
(複数回答可)
1.石炭
2.重油
3.ガス
4.バイオマス
5.太陽光
6.風力
7.水力
8.その他
(具体的にお書きください)
ご氏名
お役職
TEL
E-mail
⑥ 自家発電設備の
保有
⑦ ご回答者
⑧ 後日インタビュ
ーは可能でしょ
うか?
☆☆☆☆☆
1.都合があえば可能
ご協力ありがとうございました
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2.難しい
☆☆☆☆☆
シェールガス革命による
石油化学産業等への影響可能性調査
報 告 書
平成 27 年 3 月 31 日
編集・発行
1版1刷
公益財団法人ちゅうごく産業創造センター
〒730-0041
広島市中区小町 4 番 33 号 中電ビル 2 号館
TEL(082)241-9927(代) FAX(082)240-2189
URL http://ciicz.jp/
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