蘭越町

蘭越町
1329
造田和高
1.蘭越町の概要と歴史
1.1 地名の由来
1899 年、尻別村(旧磯谷村、現寿都町の一部)から分村して南尻別村となり、1954 年
12 月 1 日、町制施行にあたって役場所在地が蘭越にあることから町名を蘭越町と改称し現
在に至った。蘭越とは、アイヌ語の「ランコ・ウシ」がなまったもので、
「桂の木の多い所」
という意味である。
図 1 蘭越町の花壇
1.2 蘭越の特色―花のまち
町を花いっぱいにする運動は、花いっぱいの会(会長
金子 一憲)が中心となり活動を行っている。花いっぱい
の会は指導者の養成、研修会の開催、会員の親睦交流に
関する事業を行い、公共花壇への花苗の提供と植込み作
業に取り組み、花いっぱい運動の両輪となって活動を展
開している。また、町コミュニティ運動委員会では花壇
づくりをされている方々(町民)に対してプラグ苗
(164,000 本)を 1 本 1 円で提供している
・花壇コンクール(全町の花壇を審査)7 月下旬
・町内花壇めぐり(バスツアーで花壇めぐり)8 月上旬
・春の花苗づくり教室 3 月中旬
蘭越町の花の見ごろは 7 月下旬から 9 月上旬である。
出典:蘭越町 HP
1.3 町章
右の町章は 1954 年 12 月 1 日に制定された。中央の花は、
図 2 町章
高貴にして優雅な蓉楽蘭の花を図案化し、周囲の円はカタカ
ナの「コ」の字を四つ組み合わせて蘭越としたものである。
町民は常に明るく優雅で気品にあふれた蘭の花のように心美
しく団結し、一円融和の精神で、蘭越町の躍進、発展を表現
したものである。蘭越町は、
「心一つにみんなで創る
希望のまち
共生と
蘭越」をテーマに、いま 21 世紀の幸せづくりを
目指して、その基盤づくりを着々と進めている。
出典:蘭越町 HP
1.4 歴史
1879 年、寿都外三郡役所(寿都・磯谷・歌棄・島牧の各郡)が設置され、尻別はその管轄
となるが、翌年の 1880 年、四か村連合が二か村連合となり、横澗村・島古丹村と、能津登
村・尻別村の 2 か所に戸長役場と戸長が置かれる。しかし、1882 年にふたたび四か村連合
(横澗村・島古丹・能津登村・尻別村)となり、戸長役場を能津登村に置く。1899 年には尻
別村を二分して、南尻別村と北尻別村を置くことが告示される。南尻別村戸長役場、目名(現
名駒)に設置され、業務を開始する。さらに、1902 年、横澗、島古丹、能津登、北尻別の 4 ヵ
村合併して 2 級町村制が施行され、村名を磯谷村とした。
1912 年に山梨団体奥昆布が入地し、開墾に着手する。このあたりから農地開発が盛んに
なる。徳島県人、敦賀新平ら目国内に移住、水田造成に努力する。1918 年には大谷地に前
田村(現共和町)から農家 10 余戸が移住し、造田に努める。 1920 年、大谷地の長谷部佐助
ほか 32 名、かんがい造田の許可を受けて造田に着手する。
1954 年、南尻別村を蘭越村と改称し、同時に町となる。1969 年は小林町長が渡墺し、サー
ルフェルデン市(オーストリア共和国)市役所において、姉妹都市の締結式を行う。1985 年
には「三升漬」が北海道の特産物 100 品目に選ばれ、
「ふるさと小包」となる。さらに町民
憲章、町の花・木を「こぶし」と指定する。この年、蘭越米の 1 等出荷率が約 83%に達し
全道 1 となる。 1990 年、北海道主催第 2 回地場農産加工品コンクールにおいて、
「しめじ、
しいたけ、山菜三升漬」デザイン賞を受ける。1996 年は蘭越町のマスコットキャラクター
に、山口真由美の作品が選ばれ、「らんこし」の「ら」と、町の花木「こぶし」の「ぶ」を
とって「らぶちゃん」とすることに決定する。
2.
蘭越町の地理と気候
2.1 地理
図 3 蘭越町の位置
出典:蘭越町 HP
図 4 蘭越町の位置
出典:農林水産省 HP
蘭越町は、北海道の西部、後志支庁管内の南西部に位置し、周囲をニセコ連峰等の山岳
に囲まれた盆地を形成しており、町の中央を道南最大の河川「尻別川」が東西約 30km に
わたり貫流し、日本海に注いでいる。また、その流域に広がる平坦地は、肥沃で水田の耕
作に適しており、ここで生産される蘭越米は良質美味で道内外で好評を得ている。
蘭越町は北緯 42 度、東経 140 度にあり、東西に 3km、南北に 5km に亘り位置する。総面
積は 449.68km²であり、主な地目別面積は田 35.2km²(7.8%)、畑 9.66km²(2.1%)、宅地
3.19km²(0.7%)、山林 186.82km²(41.5%)、牧場 1.84km²(0.4%)、原野 33.01km²(7.3%)、
雑種地 5.19km²(1.2%)、その他 174.73km²(38.9%)となっている。
2.2 気候
気候は比較的温暖であるが、冬は積雪量が多く、特別豪雪地帯に指定されている。また
豪雨が降ることもあり、1932 年 8 月 4 日 豪雨のため、2 日間の尻別川流域の雨量 72mm
に達した。このため村内各地に洪水が起こり、田畑に大きな被害を受けた。翌 9 月 10 日 ふ
たたび大雨により出水した。1959 年 9 月、豪雨による被害は全町に及び、田畑の埋没など
の被害があった。1961 年 7 月集中豪雨により、床上浸水が約 200 戸、田畑の冠水が 1700
町歩に及び、町内に大きな被害がでた。翌年 1962 年 8 月集中豪雨による被害は、前年を上
まわり、2 日から降り続いた雨は、蘭越で 256mm に達して、名駒における最高水位は 9.12m
を記録した。下のグラフからも夏場(特に 8 月)の雨量が多い事が分かる。
グラフ1 降水量合計(㎜)
300
300
250
250
200
200
150
150
100
100
50
50
00
1月 2月
2月 3月
3月 4月
4月 5月
5月 6月
6月 7月
7月 8月
8月 9月
1月
9月
10
10
月
月
11
11
月
月
12
12
月
月
降水量合計(㎜) 111
111 80.5
80.5 61
61 120
120 67
67 85.5
85.5 186
186 266
266 103
降水量合計(㎜)
103 82
82 197
197 129
129
出典:気象庁 HP より筆者作成
3.蘭越町の人口と世帯数
グラフより総人口は年々減少傾向にある。特に 1965 年と 1970 年の間は大きく減少して
いる。またこの地方は男性より女性の方が、人数が多いことが分かる。世帯数は 1980 年に
ピークに達しているが、全体的に変化は小さい。このことより、この地方の過疎化が懸念
される。若年層の都市への流出により高齢者が多く残ったことと、蘭越町で子供を産む人
が減ったことによる少子化が原因ではないだろうか。
グラフ2 人口(人)・世帯数(戸)
人口(人)・世帯数(戸)
グラフ2
14 000
14 000
12 000
12 000
10 000
10 000
8 000
8 000
6 000
6 000
4 000
4 000
2 000
2 000
0
0
1955年 1960年 1965年
1965年 1970年
1970年 1975年
1975年 1980年
1980年 1985年
1985年 1990年
1990年 1995年
1995年 2000年
2000年 2005年
2005年
総数
総数
13 228 12 508 11 318
11 318 9 406
9 406
8 574
8 574
8 055
8 055
7 553
7 553 6 986
6 986 6 450
6 450 6 215
6 215 5 802
5 802
男性
男性
6 544
6 127
5 641
5 641
4 515
4 515
4 195
4 195
3 893
3 893
3 627
3 627 3 344
3 344 3 101
3 101 3 004
3 004 2 794
2 794
女性
女性
6 684
6 381
5 677
5 677
4 891
4 891
4 379
4 379
4 162
4 162
3 926
3 926 3 642
3 642 3 349
3 349 3 211
3 211 3 008
3 008
世帯数 2 249
世帯数
2 323
2 377
2 377
2 290
2 290
2 269
2 269
2 417
2 417
2 309
2 309 2 289
2 289 2 276
2 276 2 390
2 390 2 242
2 242
出典:国勢調査より筆者作成
4.産業
4.1 蘭越町の産業別人口
グラフ3 産業別人口
グラフ3
産業別人口
第1次産業
第1次産業
819人, 25%
819人, 25%
第3次産業
第3次産業
2037人, 62%
2037人, 62%
第2次産業
第2次産業
423人,
13%
423人, 13%
出典:農林水産省 HP より筆者作成
蘭越町は第 3 次産業が半数を超え、特に多い。次に第 1 次産業、第 2 次産業となってい
る。第 1 次産業は農業、林業、漁業であり、第 2 次産業は製造業、建設業であり、第 3 次
産業は卸売業、光熱水道事業、運輸・通信事業、温泉や飲食店などのサービス業である。
4.2 蘭越町の農業
米政策改革の基本指針となる「蘭越町地域水田ビジョン」を 2004 年 4 月に策定。蘭越町
の基幹産業は農業であり、4 年連続清流日本一に輝いた母なる川、尻別川とその支流流域の
豊かな沃野に広がる水田約 3000ha を有している。高台地帯は果菜類などの畑作を行ってお
り、一部肉用牛・牛乳等の畜産農家もある。代表的な作物は、消費者から「おいしいらん
こし米」としての高い評価を受け、良食味米として全道的に有名な「らんこし米」である。
全体的な傾向としては、稲作中心の経営形態から水田と畑作の複合経営に移行しつつある。
近年の農業を取り巻く国際環境の変化や農作物の価格の低迷など極めて厳しい状況にある
一方、農家戸数の減少により 1 戸当りの経営面積は増加している。パワーアップ事業によ
る基盤整備等生産性の向上に努めるとともに、メロン、イチゴ、アスパラ等振興作物の作
付け戸数・面積が拡大の傾向にあり、さらにトマト、カボチャ、ほうれん草の栽培による
畑作の振興が実を結んできている。
出典:農林水産省 HP より筆者作成
らんこし米が有名なだけに、やはり米の生産額が最も多い事が分かる。次に多い野菜の
内訳は多い順に馬鈴薯、玉ねぎ、トマト、大根となっている。
4.3
農業人口
農家の総人口は 1464 人で男性は 736 人、女性は 728 人であり、男性の方がわずかに多
い。そのうち基幹的農業従事者は男性が 309 人、女性が 266 人の合計 575 人である。基幹
的農業従事者のうち 65 歳未満が 361 人であり、男性は 178 人、女性は 183 人である。こ
れより 65 歳以上では男性の方が多いことが推測される。
図 5 蘭越米商標登録票
4.4 らんこし米
らんこし米は米穀品位格付検査の 1 等米で、北海道の
評価項目で低タンパク米の定義とされる精米タンパク含
有率の 6.8%を下回る米である。また、過剰施肥を抑え、
密植栽培で良食味米の生産につとめている。さらに、北
海道は夏の気候が本州の様にむし暑くなく病害虫の発生
が少ないため本州米に比べ農薬の使用回数が少なく、な
おかつ蘭越米は育てる際、農薬を必要最低限に抑えてい
る。 保冷庫で、1 年中 10 度以下で保存しており、食味
の低下を最低限に抑えることにより自家精米で、注文後
精米発送で新鮮なまま食卓へお届けするサービスも行っ
ている。低タンパクでおいしい「らんこし米」のブラン
出典:蘭越町 HP
ド力を高めるため、町は「らんこし米商標登録票」(シール)を作製し、一定の基準を満た
した産米の販売から使用を認めることになった。品質を保証する目安ができることで、消
費者が安心して「らんこし米」を購入できるようになった。
4.5 漁業
漁業においては、ウニなどの水産資
源の確保をはじめとする栽培供給基地
としての役割を担うべく、長期的視野
に立った経営基盤の確立に努力してい
る。右のグラフからはほっけが多く獲
れていることが分かる。その他の水産
動物はヒラメ・カレイ類、たこ類、あ
わび類などである。
出典:農林水産省 HP より筆者作成
4.6 漁業人口
蘭越町の漁業就業者数は非常に少なく、男性 9 人女性 2 人の計 11 人である。また若者は
おらず、一番若くとも 40 代後半である。さらに、65 歳以上が半数を超えており、漁業にお
いてのさらなる高齢化が非常に懸念される。
5.観光
5.1 観光入込客数
グラフ6
グラフ6
観光入込客数
観光入込客数
1000000
1000000
900000
900000
800000
800000
700000
700000
600000
600000
500000
500000
400000
400000
300000
300000
200000
200000
100000
100000
00
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
1997
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
年
入込客数 601700670600726600757400809200850800800800884300863100852600839900
入込客数 601700670600726600757400809200850800800800884300863100852600839900
出典:北海道庁 HP より筆者作成
グラフ7
グラフ7
月別観光入込客数(千人)
月 別 観 光 入 込 客 数 (千 人 )
140.0
14 0.0
12 0.0
120.0
10 0.0
100.0
80 .0
80.0
60 .0
60.0
40 .0
40.0
20 .0
20.0
0.0
0.0
4月
5月
6月
4月
5月
6月
入 込 総 数 39 .6 89 .7 70 .4
入込総数 39.6 89.7 70.4
内 道 外 客 4.2
11 .3 11 .1
内道外客 4.2
11.3 11.1
内 道 内 客 35 .4 78 .4 59 .3
内道内客 35.4 78.4 59.3
7月
8月
7月
8月
67 .4 11 8.4
67.4 118.4
14 .0 24 .5
14.0 24.5
53 .4 93 .9
53.4 93.9
9月
9月
10 9.0
109.0
18 .3
18.3
90 .7
90.7
10月 11月 12月
10月 11月 12月
94 .1 39 .3 35 .7
94.1 39.3 35.7
15 .0
3.9
3.6
15.0 3.9
3.6
79 .1 35 .4 32 .1
79.1 35.4 32.1
1月
1月
72 .9
72.9
10 .2
10.2
62 .7
62.7
2月
2月
58 .2
58.2
7.6
7.6
50 .6
50.6
3月
3月
54 .3
54.3
6.0
6.0
48 .3
48.3
出典:北海道庁 HP より筆者作成
1997 年から 2002 年にかけて増加傾向にあるが、2003 年に 5 万人減少した。その翌年に
はおよそ 8 万 5 千人増加したが、それを境に次の年からは緩やかな減少傾向にある。1997
年はインターネットに蘭越町のホームページが掲載された年で、それを見た人が観光に訪
れ、観光入込客数が増加したのではないかと考える。最近は減少傾向にあるが、それでも
80 万人を超えている。また、月別に見てみると、夏場が最も多い。それ以外にはゴールデ
ンウィークのある 5 月、お正月のある 1 月も多い。さらに、道外客より道内客が多いこと
も上のグラフから見て取れる。
5.2 観光スポット
5.2.1 大湯沼自然展示館
図 6 杜の大老樹
ニセコの温泉の源泉である大湯沼の紹介をはじめ、周
辺の自然の生態なども学ぶことができる自然研究的実
体験型施設である。施設には 2 つの展示ゾーンと映像
ゾーン、展望コミュニケーションゾーンがある。北海道
最大級の大型ジオラマ模型で紹介する大湯沼のふしぎ
を探り、 100 インチ 8 面のマルチシアターで自然の生
態を学んでニセコの自然博物誌を見学できる。施設内中
出典:蘭越町 HP
央にはシンボル「杜の大老樹」が設置され、自然や生命のすばらしさや尊さ、自然を大切
にする心を語りかける。
5.2.2
貝の館
図 7 チョッカクガイ
貝をイメージしたユニークな外観がひときわ目をひ
く貝の館。約 5 億年前のオルビス紀の海を代表する貝、
オウム貝の祖先であるチョッカクガイの全長 5m大の復
元模型を中央に展示。古代の海が美しく体験できる。全
国五百数十市町村・個人の方々より寄贈された 30,000
個もの貝の内、常時 1,500 種類、5,000 個を展示してい
る。主な展示資料は殻の重さが 194 キロもあるオオジヤ
コガイ、
「世界五名宝」
「日本三名宝」と呼ばれるタカラ
ガイの仲間など世界の珍しい貝が 1,500 種 5,000 点ある。
その他チョッカクガイの模型や、映像学習資料などで、
貝の生態、人間との関わり方などを分かりやすく開設し
ている。
出典:蘭越町 HP
5.2.3 幽泉閣
幽泉閣は、昭和 33 年から営業している蘭越町に古くからある温泉である。地域に密着し
た温泉施設で、町民や近隣町村の利用者の他、夏にはゴルフをされる方、冬にはスキーを
される方が遠方から来られるなど、色々な地域の方々
図 8 幽泉閣
にも愛されている温泉施設である。バリアフリー対応
の客室もある。また、幽泉閣は、
「美人湯温泉」として
有名であり、温泉に入ると肌がすべすべするという事
から、女性に大変人気がある。
『幽泉閣』の名称の由来
は「幽」の字は「奥深い」、「かくれひそむ」といった
意味があり、奥深い温泉、かくれひそむ温泉の意味を
秘め、この名称となった。
出典:蘭越町 HP
5.2.4 大沼
標高 850m、卵形の水面にイワオヌプリや緑の木々を
図 9 大沼
映し出す。ニトヌプリとワイスホルン、イワオヌプリに
囲まれてたたずむ沼で、五色温泉郷から湯本温泉郷まで
の 13.5km の「ニセコ沼めぐりコース」を五色温泉郷側
からスタートすると初めて出合う。湖面には荒々しい山
容を見せるイワオヌプリなど、四季折々に変化する森の
姿を映すが、特に秋の紅葉時期が美しい。エゾサンショ
ウウオが生息している。
出典:蘭越町 HP
参考HP
蘭越町 HP:http://www.town.rankoshi.hokkaido.jp/
Wikipedia:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%98%AD%E8%B6%8A%E7%94%BA
北海道庁 HP:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/
農林水産省 HP:http://www.maff.go.jp/
気象庁 HP:http://www.jma.go.jp/jma/index.html
幽泉閣:http://www7.ocn.ne.jp/~yusenkak/yusenkaku/index.htm