心の健康都市研究(2) - 株式会社建設技術研究所

心の健康都市研究(2)
ケアの個別アプローチを可能にする
メンタルヘルス支援システムの概念化と成立要件
金子
学
修士(保健学) 株式会社建設技術研究所 国土文化研究所
(〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-15-1)
E-mail: m-kaneko @ctie.co.jp
社会の精神健康問題は、個人の総合的な健康と広く関わるだけでなく、罹患者増による社会負担の増加
や労働生産性の低下等、その影響は社会場面に関わっており、その改善が急がれている.2001年より本格
化された精神健康支援は一定の効果はあったが、更なる抑止を高めるには多くの課題が指摘されている.
本研究では、現状の支援方法の改善を図るため、心理教育的なプロセスを導入した介入法等を用いて個
人へのケア・アプローチを可能にするような支援システムの概念化と、このシステムを仮説としてシステ
ムの実効性を得るために必要なEBMやソリューションに関する研究課題を取りまとめた.
Key Words : Mental health Support, Individual care approach, Psycho-education, self-awareness theory
1. はじめに
進んでいるガイダンス等の一次支援は、メンタルヘルス
知識を普及し社会理解を高めた.しかしながら、このよ
抑うつを代表症状とする日本社会におけるメンタル
うなガイダンス方式自体が一過的になりやすいため、並
ヘルス問題は、精神疾患を理由とする休職休学の発生の
行実施されるアセスメントも一過的であり、メンタルヘ
高水準を維持する等、深刻度が増している.また、罹患
ルスの継続的な変化観察ができない等、不調者への早期
者の増加による社会負担の増加や労働生産性の低下等、
支援・介入の必要性や、支援・介入システムづくりの重
その影響の広がりは産業、学校等の多くの社会システム
要性が指摘されている3)にも関わらず、結果として個々
の場面に関わる問題であり、その解決が急がれている.
人への細かな予防アプローチが進んでおらず、支援の仕
更には、ストレス問題の本質は、現代病といわれる慢性
組み全体が有効に機能していない側面がある.
炎症疾患等の身体症状や、依存等の行動症状と深いつな
本研究では、上記の問題の改善を図る一助として、
がりがあることが指摘されていて、保健対策全般の根幹
心理の技術化の視点から、個別アプローチ機能を持つメ
に関わる問題との指摘もなされている.
ンタルヘルス支援システムの開発とその実効性を検証し
日本の産業労働分野におけるメンタルヘルス対策は、 たい.具体的には、1)現状のシステムが抱える問題を整
2000年頃から本格化し、職場における心理社会ストレス
理するとともに、2)健康観の捉え方や抑うつ等の臨床像
対策やメンタルヘルス支援に関連する個人や組織の労務
の心理学的な視点を踏まえた解決手法を検討し、3)個別
1)
問題の対策 が示され、保健対策やEAP(従業者支援プロ
アプローチを可能にする支援システムの在り方を仮説と
して上程する.その上で、4)支援システムを成立させる
グラム)事業の一環等として大規模の事業所を中心に進
ための根拠づけとなる研究課題の明示と、5)個人や集団
められてきているが、それらの状況を抑止し、現状を改
における臨床効果の検証を進めたい.
善するところには至っていない.
2)
本稿では、1)2)についての研究の考え方を明示すると
厚労省報告 によれば、多くの事業所が予防段階にお
共に、3)の仮説ととなる支援システムと、4)システム
けるメンタル対策の必要性を認識しながら、不調者への
成立に必要なソリューションを示して研究上の課題を明
対応の知識の不足や対応時間、事業所規模に依存する専
らかにするところまでの序論について述べる.
任者等、多くの課題を抱えて、実施できない企業(特に
中小規模)も多くみられる.対策実施の事業所の多くで
36
2. メンタルヘルス支援の現状と問題点
よる認知や行動変容支援が重要な役割を持つが、そのよ
うな支援がなされていない実態がある.
以上のような現状から、実質的な治療段階である二次
支援以前についての問題点を整理する.
この項では、支援システムの現状における課題を抽
出すべく、前掲文献とともに、企業へのメンタルヘルス
対策や EAP 支援を実際に行っている事業者へのヒアリン
グを実施し、それらを踏まえた問題点を取りまとめる.
(2) 一次支援プログラムに関わる諸課題
(1) 支援段階における現状と問題
a)一次予防支援(guidance,assesssment)
この支援段階は、従業員個人がストレスやメンタル
ヘルスに関する知識を得て、現在の仕事や人間関係の中
での自らの悩みやストレスにいかに気づくかといった意
識化を促進し、重症化の予防を進めるための支援段階で
ある.そのため、ストレスやメンタルヘルスに関わる教
育研修・ガイダンス(E-ラーニングを含む)とともに、
心理尺度等の質問紙によるストレスチェック等のプログ
ラムが一般的に行われている.しかし、これらのプログ
ラムが一過的なものになりやすいことに加え、多くの事
業所において十分な時間が確保できないこと等を背景と
して、一過的であるが故にアセスメントの継続性も確保
されず、個々人へのきめ細かなアプローチができない等
の多くの問題が指摘されている.
b) 二次予防支援(care)
この段階では、ケアの必要性があると考えられる対
象者に対して支援を行うことによって、早期の回復を目
指したり、より重症化している場合に休職等の制度を適
用したり、医療機関や心理専門家の派遣等の専門的支援
を行う段階である.
しかし、実際には上記のような一次支援が一過的な
ものであったりして、二次支援以前の予防的措置が充分
になされていないため、周囲からの申し出や自ら状況を
認識した人等、重症化したことによって顕在化するよう
な形で、二次支援に至る人が五月雨式に現出する状態を
招くために、結果として、二次支援ではそういった人々
に対する実質的な“治療(treatment)”段階になって
いる現状がある.
c) 三次予防支援(rehabilitation)
一度、休職措置を取った職員の回復プログラムや職
場復帰プログラムの実施を行う支援段階となる.近年は、
いろいろな理由で長期休職する場合もあって実質的な復
職が難しい等、回復プロセスと支援策についての改善を
指摘する声がある.
特に、今日の主要な対応となっている休職措置と医
療的な治療は、一定期間では身体の回復には効果的であ
っても、社会復帰するためには休息よりも心理背景にあ
る恐怖心を低減してソーシャルスキルを高めること等が
必要であるため、それ以前の段階での心理学的介入法に
37
前掲の「メンタルヘルス対策中間報告」によれば、
一次支援を実施した多くの事業所が研修・ガイダンス
方式によって、ストレスやメンタルヘルスに関して知
識の普及や社会的理解を高めた側面があり、このよう
な研修が一定の効果を上げたことは評価されている.
一方で、これらの研修方式が、多くの事業所において
対面式かつ単回的に実施されることが多いことから実
施方法上の限界があり、課題が指摘されている.
1)まず、ガイダンス1回当たりの時間が限られるため、
一次支援の重要な柱である心理アセスメントを十分に
実施できない点である、アセスメントのための心理尺
度は、基本的に一つの尺度は一つの概念しか測定しな
い.そのため、a)で述べたように、本来的に保健ケア
を必要とする層は、抑うつ等の顕在症状だけではなく、
認知行動特性や体験記憶の資源性等の多様な心理尺度
を使ったアセスメントを行う必要がある.しかし、時
間制限がある研修形式では、限られた心理尺度の使用
にならざるを得ないという問題がある.更には、この
ような尺度法による質問は「慣れ」や「会社に対して
望まれる回答」をする等、恣意的になりやすく精度の
高いアセスメントができない問題もある.
2)更に、このような研修形式は単回実施が多く、一過
的なものになりやすいため、心理アセスメントを継続的
に行うことが出来づらい点がある.一次支援でのアセス
メントは、疾患レベル以前の潜在レベルの個人を検出す
ることだけでなく、本来の保健的ケア、つまり、それ以
前の潜在的な増悪可能性を持つ個人を予測し、個別アプ
ローチによるケアを行うことによって、増悪者を抑止す
る目的がある.しかし、実際の一次支援では、一過的に
行われるため、個々人への継続的なアセスメントが行え
ず、事前の予測(弁別)が機能していない問題がある.
3)本来の一次支援機能を果たすには、単なる知識教
育のような形だけではなく、ある程度、情報刺激とな
って人の内面に触れ、各自の生活状況や出来事を振り
返るような曝露効果を伴う心理体験的(心理教育的)
アプローチによる介入プログラムによって各自の気付
きを進めることが重要であるが、現状の一次支援プロ
グラムでは、受動的になりやすいために、知識や情報
の伝達効果はあっても、受講する個々人の心理内面に
触れて自らの生活環境を振り返ってストレスやメンタ
ルヘルスについて感じたり、考えたりするための刺激
機会として機能していないという最も重大な問題があ
り、1)2)のようなアセスメント段階での問題に限らず、
ガイダンスを含む一次支援プログラム全般の介入方法
に解決や改善の必要があることが指摘されている.
(3) 個別アプローチを可能にする仕組みの必要性
一次支援の役割であるガイダンス―アセスメントと
二次支援の役割であるケアという言葉の概念から、現状
の制度の仕組みとしての連携性が確保されているように
見えるが、一次と二次の間に受ける側の大きな意識の谷
(キャズム(Chasm))が存在している.
キャズムとは、技術の普及(RogerE.M.,1962)やマーケ
ティング(Moore,G.1991)において、積極的購買層であ
る Early Adopters(初期採用者)と Early Majority(早
期追随者)の間に存在する購買動機の違いを示した言葉
である.Early Adopters が自分の興味や先端流行への興
味から進んで購買していくのに対して、Early Majority
では、社会の中の時流となってから購買する層であり、
能動的な動機や意思が全く異なることを意味する.
一次支援の対象は悩みや問題、それらの気付きの有
無に関係なく、広く一般の人が前提となるが、二次支援
では、既に増悪症状が顕在化した人を前提とした実質的
な治療段階の支援であるために、その中間にあるべき
「悩みや問題を“潜在的”に抱える人自身への気付きを
促したり検出したりして、個人自らがそれらの解決に取
り組めるような、“個々人への(治療でない)予防的な
メンタル・ケア(本質的なケア)”を進めるような個別
アプローチの仕組みが無いことが、メンタル問題の増悪
を抑止できない原因の一つではないかと考えられる.
って意味が異なる.
したがって、生命にとっての真の情報とは、本質的
にはその生命の生存あるいは死亡の可能性を同時に表す
ものであるが、健康や病気の概念は社会的な立場を反映
するため、情報化する場合には観測者が見る方向が生じ、
Positive(生存方向)側を情報化される場合とNegative
(死亡方向)側を情報化される場合の2つの方向性が発
生する(図-1).
観測者
観測位置
(生命体)
生
快
情報
(意味)
現象
事実
死
不快
図-1 情報(意味)の成立要件
4)
(J.ホフマイヤ― の指摘に基づき筆者が作成)
(2) 観測位置の違いによる健康概念の違い
上記の考え方に基づき、現代の多様な健康概念を1)観
測位置と2)情報化方向の2つの軸により分割したマトリ
クスを使って、ゲシュタルト的に整理した(図-2).
a) 医療・医学モデル
右上の概念は、いわゆる一般的な健康-病気の概念
である.この時の健康(Health)とは、疾患(Disease)や障
害(disorder)でないこと、つまり「生物的社会的に異常
がない状態=正常」であり、観測位置は「正常な集団の
中の人=社会構成員としての一人(社会から逸脱してい
ない人)」の立場であって、伝統的な医学・医療の健康
モデルである.
b) 医療人類学・医療心理モデル
一方で、Illnessという病気概念がある.これは、疾
患そのものを指すのではなく、ある人が疾患等によって
仕事や家事等の生活行動が出来なくなったような状態=
“病”を指す.このような病気に置かれた当事者を観測
位置として、生活上の抱える悩みや問題に焦点を当て、
その人にとって望ましい悩みや問題解決を進めることに
よって得られる健康状態をWellnessという.これは医療
人類学や医療心理学(Medical-Psychology)における健康
モデルであり、置かれた人の健康や障害レベルに拠らな
い自己報酬的な獲得を目指した健康モデルである.
c) 健康社会学・健康心理モデル
上述のことは、決して病気や障害を抱える人だけ当
てはまる問題ではなく、社会に生きる多くの人の問題で
3. 健康概念から見た個人に対するケアの意味
ところで、近年、健康や病気(不調)に関わる概念
には、様々なものが議論され、多様な概念が取り扱われ
ている.ここでは、検討上の混乱を避けると共に、心理
社会的ケアの正確な必要性を示すため、“情報(意
味)”が成立する過程の考え方を踏まえた各種の健康や
幸福の概念を整理するとともに、それらに基づいた本研
究でいう本来的な保健ケアの対象の考え方について検討
する.
(1) 情報の成立と観測位置
ホフマイヤ― J. (2005)によれば、ある現象に情報
(意味)が生じるには、それを観察する位置があること
を前提にしているとされる.つまり、同じ現象を捉えて
いても、それがどこからの視点で観測されたものかによ
38
ある.ストレス等の異常心理研究の第一人者であったセ
リグマン M.(1998)は、社会生活を営む一般市民を考え
た時、多くの市井の人が問題や悩みを抱えながら生活し
ており、むしろ真に健康である人のほうが稀であり、そ
こに向かうために支援を行うべきであるとした.この時、
上述と同様に、社会的地位や所得レベルに拠らず、個人
にとってのより良い悩みや問題解決によって得られる健
康状態をWell-Beingとした.これは健康社会学や健康心
理学(Positive Psychology)における健康モデルで、WellBeingは、健康以外にも安心・安定・安寧・福祉・健全
等の多様な“良い状態の持続”を指すものであって、幸
せ(Happiness)とは異なり(Wilson,1967)、主観的に感じ
る幸福感(Sumner 1996)であり、今日では広汎な研究分野
において主観的幸福感(Subjective Well-Being:SWB)とい
う社会情報として取り扱われるために組織や集団を対象
として測定されるものである.
点であった個別アプローチの実現には、多様な健康価値
であるウェルビーイングを獲得するような、“個人の内
的世界を支えるケア”手法の検討が必要と考えられる.
(4) 本研究における研究対象の捉え方
上記の多様な健康概念に基づくと、ある集団をケアの
必要性の観点から分類すると、次のような3つグループ
化を考えることができる(表-1).
① ウェルビーイング層
② 潜在的増悪可能性層(潜在的ケア必要層)
③ 抑うつ等のメンタル増悪顕在化層
研究対象とする
集団の階層(群)
ウェルビーイング層
潜在的増悪予見層
(潜在的ケア必要層)
増悪顕在化層
観測者の位置・立場 社会の中の一人(マジョリティ)
c)健康社会学・健康心理モデル
情報化
の方向
Positiv
e
ウェル
ビーイン
グ(主観
幸福感)
ウェルネ
ス(自己報
酬的)
健康・
ヘルス
(正常)
個人の
苦しみ
・悩み
(主観世界)
ウェルビー
イング=
適応
要求達成
(他者
報酬的)
b)医療心理
モデル
ウェルネス
健康・正常
疾患・障害・
異常
病・苦しみ
c)健康心理
モデル
ウェルビー
イング
悩み・問題
表-1 集団のメンタルヘルス階層の設定
a)伝統的な医療・医学モデル
社会で生きる
多く の
一般の人々
a)医学モデル
疾病
障害
(異常)
そこで本研究では、この3群を研究対象として捉え、
メンタルヘルス支援における問題を検討したい.具体的
には、2.(3)で述べたような問題を踏まえれば、i)一次
支援段階においては、どのような方法でこれらの3群に
予見的に弁別するのか、ii)二次支援以前の個別アプロ
ーチによるケアを行う対象には、②が該当することにな
るが、該当する人々に対してどのような介入プログラム
を実施するのか等のクリアすべき課題がある.
Negative
不適応
者・要求
未達成者
=問題・
病理
b)医療人類学・医療心理モデル
d)ヘルシズムモデル(恐怖モデル)
個人的(マイノリティ)
図-2 観測位置と情報化による健康概念の違い
4. 潜在的ケア必要層(群)の心理臨床像
(3) 個人の内面を支えるケアの重要性
このような考え方に基づくと、個人にとっての“メ
ンタルの回復”には、a)から見た場合の「病理域からの
帰還」という“マイナスの是正”という側面だけでなく、
b)やc)のような「多くの人々にとってのウェルビーイン
グ、あるいはウェルネス」という“プラス面としての健
康の増進”を進めるという両面の意味がある.
したがって、個人の「メンタルヘルスの不調」に対
して、その人にとっての危機で、社会に適応するために
どう危機を回避するかという“社会から見たケア”を考
えるだけでなく、潜在的にであれ、その人にとっての本
当のウェルビーイングな生き方への機会と捉えられるよ
うな認知変容により生きるということへの希望を持って
行動変容を果たすことで、初めて社会の中での役割を果
たすことに、個人の中の思いとしてつながっていくもの
と考えられる.そのような意味で、支援システムの問題
39
前述のように、個別アプローチを実現するには、ま
ず個人の内的世界を支えるケア手法が必要である.ど
のような方法による支援や介入が、より効果的な個別
アプローチを実現するのだろうか.この章では、メン
タル増悪顕在化の症例として抑うつの心理臨床像に検
討し、これに基づいて支援・介入を必要とする人々の
認知的な特性を検討すると共に、それらの人々を検出
したり、ケアを実施するための心理学的ソリューショ
ンについて検討する.
(1) 抑鬱症状を呈する人の心理臨床像
まず「人が自己表現できる(アサーティブネス)」
ことは、周りを恐れておらず、したがって周りの察しを
求めなくて良いという心理を持つことを意味している.
反転的に、自己表現を抑制しなければならない状況とは
周りに恐れや恐怖があり、無意識の察しを求める傾向が
強くなることを意味する.
宗像らによれば、重度な抑うつを発症する人は、生
来の特性的な不安を抱きやすい(損害回避、長期リスク
志向)気質を持っていて、人が自分を見てくれているか
や察してくれているかという意識を、不安傾向が低い人
と比べて持ちやすい特性がある.そのような人が周囲の
状況から自己表現を抑制して、察してもらいたいという
期待や要求が満たされないストレス状態が長期に続き、
自己葛藤(Self-Confrontation)が大きくなって、問題
解決が不能となる段階で、情動の発露として抑うつ(脳
のブレイクダウン)に至るとされる.つまり、ある環境
下で、人が長期に無力感を感じることによって発症する
ものであり、身体防衛的で、時間蓄積性を持った病理と
考えられる.
このように、ストレスとは、環境変動に対する人
(生体)の適応反応であり、それ自体が健康問題を引き
起こすものではない.変動への適応処理がうまくいかず、
不適応状態が持続したり、過剰適応が著しくなった場合
に精神化や身体化、行動化等の健康問題として現れる.
ただし、企業文化や人間関係等の実際の環境がスト
レスフルである場合と、発症する人の成育歴を背景とし
た認知特性(思い込み)がストレスを高めて不適応を強
化する場合、相互に影響する場合等、本人と環境の相対
的な関係によって生じるものであるので、関係性につい
ての臨床的検討が不可欠である.
(2) 潜在的ケア必要層の認知的特性
人の感情とは、自分に起きた出来事に対して抱く期
待や要求を引き出すためのサインである.自分にとっ
て不快な出来事にはネガティブな感情認知が起こるの
は、本当は自分はどうしたい、どうしてほしいという
期待や要求を抱くからである. 従って、ポジティブな
感情はもちろんのこと、ネガティブな感情でさえも、
それを知覚することは、人という生体の営みを維持成
立させる上で重要な反応である.
しかし、人は環境に適応するため、長期にストレス
が続く時、感情を抑圧したり、麻痺や低下をさせて感
情自体を知覚しないようにするといった心的防衛機制
(Klein,M 1970)をとって、環境に適応しようとする反応
を行うことがある.そして、結果としてこのような精
神症状として現れたり、あるいは心身症等の身体疾患
として顕在化したり、あるいはストレスを解消するた
めに酒やギャンブル等の種々の嗜癖(依存)を持つよ
うな行動症状として生活上の問題を抱える等、様々な
健康問題となって現れることが知られている.
(1)で示した症例では、環境に適応するために自己抑
制的な行動を続けストレスを蓄積する段階において、
本来はストレスの背後になんらかの感情を感じていた
はずであるが、それを長期にわたって抑圧したり、否
認した結果、疾患として発症に至ったと考えられる
以上のことから、2.(2)で述べたような潜在的なメ
ンタルヘルス増悪の可能性を抱える人、つまりは二次
支援段階以前に保健ケアを必要する対象とは、なんら
かの症状の顕在化された人ではなく、無症状であって
もストレスやその背後にある感情を抑圧したり、知覚
低下している人であると考えられる.
5. 課題解決のための支援システム像
これまで述べた従来支援システムやプログラムに関わ
る諸問題、多様な健康概念に基づいた保健的ケアの対象
者像等を踏まえ、それらを解決するための心理学諸理論
と心理療法技法を援用し、必要(全体仮説)となるメン
タルヘルス支援システムを検討する.
(1) メンタルヘルス支援システム構築の条件
これまで述べた内容から、研究で構想する支援の仕組
みや各支援段階における介入プログラムを改善するため
の条件を、以下のように整理する.
・ケアを効果的に行えるような個別アプローチが可能と
なるように、現状の仕組みを変更し、一次支援と二
次支援の間に新たな支援段階を仮想する.
・一次支援においては、個々人の心理状態へ体験的に、
自らへの気付きや自覚化が引き出されるような心理
教育的な介入プログラムを実施すると共に、それら
の介入から得られる主観情報に基づいて心理アセス
メントしウェルビーイング、潜在的ケア必要、顕在
化の弁別する.
・新たな支援段階におけるケア対象者は、長期ストレス
による感情や知覚の低下や麻痺、それによる認知の
歪等の問題が考えられるため、それらをセルフケア
として進めることができるようなウェブで実施でき
るような心理療法技法の援用を考える.
・同時に新たな支援段階のケアに用いるセルフケア心理
療法の効用と限界を踏まえ、ケア対象となっている
個々人の心理変化を、述懐される個別のエピソード
を参照せずに観測できるようなモニタリング法を考
えて、重度な場合の医療機関や心理専門機関への照
会等の二次支援への誘導ができるようなアルゴリズ
ムを構築する.
(2) メンタル支援システムの構成変更
上記のように、現状の一次支援と二次支援の中間に
40
って重要なことじゃない」とか「今のは無かったことに
しよう」等と不快な気持ちを避けようとする.
このように、自覚化が強まることによって、理想の
自分と現実の自分が一致すれば理想の自己への注意が高
まり、自己理解への促進効果とともに自尊感情の増大効
果(快体験)が生じる.不一致が大きくなると、現実の
自己への注意が高まり、自尊感情の低下(不快体験)に
よる注意の転換や同調行動の促進(現実を理想に近づけ
ようとすること)が生じる.この自己観察的な心の働き
によって、その人の感情や認知、それに基づく行動動機
を引き起こす効果(過程)を、自己状態理論あるいは自
己注意理論(Duval,S.&Wicklund,R.A.1972, Buss,A.H.1980,
Gibbons,F.X.1990)という.
ただし、自覚化は自己対峙することになるため、自
己葛藤が大きくなることから、通常は心的防衛機制が働
きやすく、スムーズな回答を引き出すことが難しい問題
がある.前述のような特殊な場面では自覚化が自動的に
促進されるが、集団が対象の平時実施において、作用の
実現を図るか課題が残る.
b)筆記療法‐言語化による癒しと回復‐
自分が抱えている悩みや問題・トラウマ、他人に対し
て持つ秘密は、長くストレスを抱える.このような事に
対する自らの心の内観を進め、自由想起による述懐や筆
記を通じて言語化することは、遂げられない思いに埋も
れていた情動を掘り起して解き放ち、思いを完結させる
ことによって、長期ストレスを低減する効果がある.ペ
ネベーカーJ.(2000)による筆記療法(Jurnal-thrapy,
Writing-care)は、このような作用を狙ったセルフケア
の心理療法として、多くの先行研究からストレス低減等
の心理効果、また、それに伴って悪性新生物等の慢性疾
患の身体症状低減等、多くの症例に対する効果が報告さ
れている.
ただし、筆記療法は内観あるいは内省の深さが癒しを
導く効果と関連する.そのため、問題意識が深まらない
対象者等、やり方によって効果が左右されるものであり、
内観過程をナビゲートするための方法が必要となる.
c)本研究で援用する心理療法および技法
本研究に適用する心理療法では、これまで述べた心
理理論および心理療法を組み合わせて作用を有効化にし
ながら、実施上の課題を解決するような方法化を図る必
要がある.
ここで、心理療法には、相談者の自由想起の話を共
感的に傾聴して、相談者自身も気づいていない潜在的な
思いを、自身で言語化(顕在化)してもらうように進め
る来談者中心療法等の支持的療法と、過去のトラウマ体
験にまつわるイメージ(表象)を用いた系統的脱感作を
行って、様々な症状を引き起こすトラウマの影響力を段
新たな支援の段階を仮想的に設定することによって、二
次支援の前段階においてケアと回復(状態変化によって
は二次への誘導)を進めるような個別アプローチを前提
としたシステム構成へ変更する(図-3).
なお、本研究では一次支援および二次支援の中間に
位置づけられる支援段階を“1.5 次支援”と仮称する.
また、二次支援で行うケアは実質的な治療段階であるた
め、実施内容を“トリートメント”とし.個別アプロー
チを実現するための一次及び 1.5 次支援での教育支援や
介入プログラムを総称して“ケア”と定義する.
一次支援
一次支援
回
復
1.5次支援
二次支援
三次支援
現状の支援段階
手法の
限界
弁
別
二次支援
三次支援
変更後の支援段階
図-3 現状課題を踏まえた支援段階の変更
(3) 研究に適用する心理学諸理論並びに心理療法技法
4.で述べたように、一次支援、1.5次支援に限らず、
検査だけをして病気か否かを弁別しコンプライアンスを
守らせるようなトップダウン型のケアではなく、自らの
ウェルビーイングを高める生き方への機会になるような
ボトムアップ型のケア実現の視点から、ある個人が置か
れた環境(ストレス)と自らの気持ちや感情、認知への
刺激と気付きや自覚化を促進するための心理諸理論と介
入に用いる心理療法と技法について検討する.
a)自己状態理論と自覚化作用
我々が普段生活する場合、多くの時間をネット等の
メディアや周囲の人や風景等の自分以外の外部情報に注
意を向けているが、群衆の面前でスピーチをしたり、鏡
の前で化粧をする時は自分自身を意識せざるを得なくな
る場合がある.このような自分の内面に意識を向けるこ
とを「自覚」という.そして、スピーチが成功したり、
魅力的に出来れば、自分の能力や資質に納得したり、自
信を持つような自尊感情が高まる.しかし「なかなかう
まく話ができない」とか「他の人にくらべて魅力的じゃ
ない」とネガティブに考えた時は「次はなんとかうまく
できるように頑張ろう」と思うか、あるいは「自分にと
41
階的に弱めていくエクスポージャー法(曝露療法)等の
行動療法がある.エクスポージャー法では、「過去のト
ラウマ」を「現在の体験」として仮想的に言語化して貰
い、トラウマ状況を知覚的、認知的、感情的に思い出し
てイメージ化・言語化するために強い不安や恐怖が伴う
場合がある.クライエントが情緒不安定になったりパニ
ック状態を呈す時にはエクスポージャー法を中止して、
共感的支援を伴う支持的療法へと切り替えることを行う.
効果的な心理療法とは、この 2 つの介入法を状況に応じ
て折衷して用いるものである.
構造化連想法(宗像 1997)は、相談者の自由な述懐
を引き出す支持的療法の側面とトラウマ記憶等の重度な
心理問題を解決するための行動療法の側面を統合するた
め、非構成的エンカウンター(構成的でない自由想起の
質問)と構成的エンカウンター(構成的で曝露効果を伴
う質問)を、イメージ情報を介することで、相談者の防
衛機制を取り払い、矛盾なく思いを述懐できるようにシ
ステム化した心理療法である.
この構造化連想法の基本技法である「自己イメージ
法」は、相談者の自由想起エピソードを、色彩や風景、
身体等のイメージ情報へ転換することで、相談者の心的
防衛を感じないで、エピソードの背後にある気持ちや感
情、その背後の期待や要求を述懐できるようにした技法
である.また、このようなエピソードの感情や期待を明
確化することによって、反転的に自己イメージ(自己像
の評価)を引き出すことによって、自己意識理論で示し
た自覚化を導くため、行動や目標の自己決定を進める作
用によって、カウンセリング効果を高める技法である.
以上のことを踏まえ、本研究では本技法を援用した介
入プログラムを検討する.
(4) 仮説となるメンタルヘルス支援システム
以上のことから、本研究で考える自覚化プロセスを
用いた体験的介入プログラムを導入して、個別アプロー
チによるケアを可能にするメンタルヘルス支援システム
は次のような構造と仕組みを持つものとなる(表-2).
弁別群
1.5 次支援
二次支援
イング
支援・介入内容
述懐等の言語
セスを導入
化を通じた心理
した心理学
的介入法と
アセスメン
潜在的増悪
予見群
ケアによるメン
タル回復、ウェ
ルビーイング
トによる予
継時観測による
見的弁別
変化対応
顕在群
(増悪群)
(2) 支援システムの支援段階での機能要件
仮説となる支援システムの成立は、各支援段階にお
いて次の作用が成立することである.そこで、仮説を検
証するための研究課題を設定するための前提条件として
以下のように整理する.
a) 一次支援では、自覚化プロセスを導入した心理教育
的アプローチによる介入プログラムを実施するととも
に、介入によって検出された情報から個々人のメンタ
ルヘルス測定行う.測定結果に応じて、3群に弁別し、
潜在的ケア必要群は b)へ、顕在化群は c)への誘導とサ
ポートを行う.
b) 1.5 次支援では、a)で弁別した潜在的ケア必要群に対
して、筆記療法等のセルフケア法による介入プログラ
ムを継続的に実施する.また、その情報に基づいた対
象となる個々人の心理の継時観測を実施して、セルフ
ケア法の限界等の予想される観測結果に基づいて c)へ
の誘導やサポートを実施する.
c) 従来の二次支援と同様のトリートメント段階となる
ため、心理専門機関による重度レベルに対応した心理
的介入の実施や医療機関への照会を行う.
個人や集団メンタル増悪の抑止やウェルビーイング向
上への効果や影響を明らかにするには、表-3に示したよ
うなシステム構成の疫学的な成立が前提となるため、表
-3に示したような個別の研究課題を合わせて検討する必
要がある.
これまで述べた問題点やケアの考え方、ケア対象の特
性等を踏まえ、(1)で述べたような各支援段階での機能
を前提条件とすると、研究課題は次のようになる.
ウェルビー
自覚化プロ
(1) システム実用化に向けた機能要件検討の必要性
5.(4)で示したメンタルヘルス支援システムを実用化
するためには、機序に基づく機能要件を明らかにして、
このようなシステム・アプローチによる支援手法が、個
人や集団のメンタル増悪の抑止やウェルビーイング向上
へ何らかの効果や影響を明らかにする保健学的な検証を
進める必要がある.
本項では、システムの支援段階での機序に基づいた
機能要件を検討するとともに、研究上、検証する必要性
がある事項について取りまとめる.
(3) 各支援段階を成立させるための検証事項
上記の各支援段階が成立するためには、各支援段階を
連携するソリューションや、そのソリューションを成立
させるEBMが必要となる.
本研究の全体仮説である支援システムがもたらす、
表-2 本研究における支援システム概要
一次支援
6. 支援システム実用化の機能要件と検証事項
治療と社会
的ケア(休
職措置、医
療機関、心
理臨床専門
機関等)
→
42
的回復やウェルビーイングの増進を進める.しかし、
介入法として用いるこれらの心理療法には、深刻なト
ラウマを抱える等の重度な心理問題を改善することが
困難であるため、より重度な人への介入には効果を表
さなかったり、認知が深まらないケースもあり、手法
としての限界性も踏まえる必要がある.そのため、
個々のエピソードに触れずに、外部からも心理変化を
モニタリングして、上記のようなケースが想定される
場合に、対応を取る必要がある.
そこで、実際の症例比較調査を実施して、このよう
な仕組みの前提となるモニタリング法の仮説形成を図
るとともに、検討事項Ⅱの結果を踏まえた重度対応を
決める弁別システムアルゴリズムの検討を行う.
d) 検証事項Ⅳ
検証事項Ⅰ~Ⅲまでの検討から成立するメンタルヘ
ルス支援システムを、集団や組織に適用した臨床調査を
実施して、個々人のメンタルヘルス改善等の介入効果と
ともに、適用した集団の生産性の向上等の組織効果につ
いて検討する.
表-3 支援システムを成立させるための課題
一般の集団および組織
一
次
・自覚化プロセスを導入し
た心理教育的介入プログラ
ムの実施
・メンタル群の弁別とケア
必要群、顕在化群への誘導
とサポート
1
.
5
次
・潜在的ケア必要群に対し
て、筆記療法を用いたセル
フケア療法継続実施
・実施している個人の状況
変化の継時観測結果に応じ
た支援・誘導
二
次
・従来のメンタルヘルス支
援システムと同様のトリー
トメント段階
・一次支援および1.5次支援
で重度判断がなされた対象
者の心理専門機関による治
療レベルの心理介入や医療
機関への導入.
作用関係
支援段階
仮説のメンタルヘルス支援
システムの各支援段階にお
ける機能
支援段階を成立させるため
のEBMとソリューション
(検討課題)
→ ・心理尺度を用いた集団の
メンタル原因分布設定
・原因分布に基づくケア対
← 象を含む弁別群の設定
・心理療法から検出される
主観情報が有するメンタル
ヘルス弁別能の妥当性
・上記に基づく心理アセス
←
メント法の開発
→
・セルフケア法による心理
→ 療法の限界を踏まえたによ
るモニタリングの妥当性
・モニタリング結果の弁別
← システムアルゴリズム開発
・支援システムを用いた場
合の個人のメンタルヘルス
→ 改善効果
・集団や組織へのウェルビ
ーイング向上の可能性
7.結びと今後の課題
a) 検証事項Ⅰ
ある情報の出現は、どの程度個人の病気(健康)を
予測するか.情報の確からしさを検証する等の疫学研究
法を実施するには、前提となる「集団における病気(健
康)の頻度分布」を定めておく必要がある.
検証事項Ⅰでは、Ⅱの前提根拠となる“集団におけ
るメンタルヘルスに関するウェルビーイング(健康)-
不調(病気)”という頻度分布と、それらの頻度分布に
基づいた表-1に示したようなメンタルヘルスの3階層の
設定方法について検討する.
b) 検証事項Ⅱ
一次支援で実施する心理療法を援用した介入プログ
ラムから検出される情報因子を使った心理アセスメント
法の開発を行う.そのため、まず研究Ⅰのメンタルヘル
ス頻度分布で構成される集団への介入調査を行い、メン
タルヘルス水準と心理療法の効果と影響について理論整
合性を検証する.その上で、取り上げた情報因子がどの
程度ウェルビーイング(あるいは不調)を確率予測する
かという一般化可能性について根拠づけを行う.
それらの結果を根拠に基づいて、表-1のメンタルヘル
ス3階層を弁別するためのアセスメント法を開発する.
c) 検証事項Ⅲ
1.5次支援では、対象となる潜在的ケア必要群に、秘
密の告白等の言語化と内観的作用をもたらす心理療法
によるセルフケアを継続的に実施して、上記群の予防
以上のように、本論文では、現状の保健対策を踏まえ、
集団から個々人の状況に応じた個別アプローチを可能に
するメンタルヘルス支援システムの概念化を示した.そ
れらを成立させるための機能要件についての検討ととり
まとめを行った.
6.(3)のⅠ~Ⅲについては、過年度までの研究におい
て調査研究を行い明らかにしたので、過年度までの報告
を参照いただきたい.
本研究は、これらを踏まえたシステム(β版)を用
いた検証事項Ⅳの介入調査による臨床研究が残されてい
る.ここでは、今後の課題として調査の実施方法、並び
に実施上の課題について取りまとめを行う.
(1) 臨床調査における検証内容
支援システムを活用した精神保健対策全体の効果で
あれば、それらの全体過程を介入策として調査するデザ
インが考えられるが、本研究で示した支援システムの主
な機能は、二次支援手前までの一次介入並びに中間介入
による多様なレベルのメンタルヘルス状態の人の自覚化
と検出が目的となる.
従って、本システムで行うべき臨床調査の目的は、
a) 一次支援介入はケア対象を適正に弁別しているか?
b) 1.5 次支援介入プログラムを含む支援の段階化、つ
まりはシステム自体が集団の精神保健に果たす影響
43
(3) 調査対象と課題
調査の疫学的視点から重要なことは、比較する群の
等質性の確保である.一方で、実際の依頼が可能な企業
等の集団では、事業所や職種の文化的背景の違いが大き
く影響することが考えられるため、これらの問題を低減
し、かつ調査に必要な対象人数を確保する観点から、病
院看護職等、特定の層に対しての臨床調査実施を進める
ものとする.
について明らかにすることになる.
(2) 実施手順
上記を踏まえて、図-4 のような手続きでの調査デザ
インを検討する.
a) 調査対象全体に対して、一次支援介入プログラムを
実施をして、対象の潜在的ケア必要群を検出する.
b) 潜在的ケア必要群の対象者をランダム化して、以下
の 1.5 次支援並びに二次支援の介入効果を比較するた
め、2 つの介入群と対照群の 3 群に割り付ける.
① 仮説とするシステム適用(長期)群
② 仮説とするシステム適用(基本)群
③ 悲嘆エピソードの述懐継続群(レファレンス群)
④ 出来事のみの述懐継続群(プラセボ群)
⑤ ベースライン群
c) それぞれの群の介入を実施後、a)の一次支援時の介
入プログラムを用いた心理アセスメントを、直後、
一箇月後、三箇月後に実施する.
謝辞:本研究に際し,宗像恒次筑波大学名誉教授、針尾
大嗣摂南大学准教授、川野雅資元東京慈恵会医科大学教
授、株式会社マインドセットプレース代表取締役社長松
本敦子氏に有益な助言を賜りました.ここに記して,深
く感謝申し上げます.
参考文献
1)
2)
日本労働研究機構:メンタルヘルス対策に関する研究-
対策事例・欧米の状況・文献レビュー・調査結果-,
pp.160-166, 日本労働研究機構, 2001
厚生労働省労働基準局:職場におけるメンタルヘル
ス対策検討会報告書,厚生労働省,2012
横山和仁他:労働者のメンタルヘルス不調と早期支援・
介入の在り方に関する研究報告書 厚生労働省, 2011
4) J.ホフマイヤ―(松野孝一郎訳):生命記号論,pp. 25-46,
青土社,2005
5) 西垣通著:基礎情報学―生命から社会へ, pp.41-63, NTT 出
版, 2004
6) 中川米造,宗像恒次著:医療・健康心理学,pp.55-88, 福村
出版, 1989
7) H.スィーガル著(岩崎哲也訳):メラニークライン入門,
pp.40-86, 岩崎学術出版, 1997
8) J.W.ペネベーカー著(余語昌夫監訳):オープニングアッ
プ 秘密の告白と心身の健康, pp.40-86, 北大路書房 2000.
9) S.J.レポーレ,J.M.スミス著(余語真夫監訳):筆記療法
トラウマやストレスの筆記による心身健康の増進, pp 75-92,
北大路書房, 2004.
10) 宗像恒次著:SAT療法, pp.42-61,金子書房,2006
3)
図-4 支援システムによる介入研究デザイン
(2014. 12. 19 受付)
CONCEPTUALIZATION AND ESTABLISHMENT REQUIREMENTS OF MENTAL HEALTH
SUPPORT SYSTEM THAT ALLOWS FOR INDIVIDUAL CARE APPROACH
Manabu KANEKO
Mental health problems of society such as reduced growth, increased burden on patients, social labor
productivity, the impact has been involved in social situations; improvement must quickly be realized.
Since 2001, there has been some serious impact in mental health assistance, many challenges have
pointed to further strengthen deterrence. In this study, in order to support the improvement of the methods
of the present concept of the support system, for example, to make health care methods, we examine the
introduction of personal use of psychological interventions in the education process. The system
summarizes the research questions and obtains EBM of the effectiveness of the system as required for a
hypothetical solution.
44