© 財団法人地球環境センター(Global Environment Centre Foundation) COP/MOP4&COP14 レポート CDM プロジェクトの地理的分布の不均衡 背景 CDM プロジェクトが特定のホスト国に集中している現状があり、特に中国、インド、ブラジル、メキシコで、 登録プロジェクト数及び発行 CER 量の約 8 割を占めている。このような CDM の地理的分布の不均衡につ いて、様々な方面から問題点として挙げられていた。 COP/MOP1(2005 年 11 月、於 カナダ・モントリオール)は、CDM プロジェクトの地理的に衡平な分布に対 する障壁の是正について言及し、附属書 I 締約国による非附属書 I 締約国支援と能力開発の促進、並び に EB による DNA フォーラムの開催を通じた CDM への幅広い参加の促進などを求めたが、実際には CDM プロジェクト登録数と CER 発行量の増加など CDM が目に見えて拡大していくのとは対照的に、地理 的不均衡は是正されず、逆に顕著さが目立つこととなっていった。 COP/MOP2(2006 年 11 月、於 ケニア・ナイロビ)では、アフリカ地域における CDM プロジェクトの少なさ がクローズアップされ、アフリカにおける CDM プロジェクト数の少なさに対するアフリカ諸国及び後発開発 途上国の不満と、地理的不均衡是正の要望の声が大きい中で、COP/MOP2 は CDM の地理的不均衡是 正に対してより踏み込んだ決定を採択するに至った。COP/MOP は、EB に対して CDM プロジェクトの衡平 な地理的分布の達成促進を継続するよう要請するとともに、EB から報告された衡平な地理的分布に対す る財政的・技術的・制度的障壁に対処する必要性を認識し、同時に開発途上国(特にアフリカ諸国)の CDM 参加を支援するナイロビフレームワーク(Nairobi Framework)を歓迎した。また、附属書 I 締約国に対 しては、非附属書 I 締約国(特に後発開発途上国、アフリカ諸国、及び小島嶼開発途上国)における CDM プロジェクトの開発にかかる経費等について、直接又は政府間機関・非政府組織を通して間接的に、CDM プロジェクトの衡平な地理的分布の達成促進のための更なるイニシアチブ(財政支援を含む)を検討するよ う奨励した。さらに、CDM プロジェクト開発に関する経験・情報の共有などを含む非附属書 I 締約国同士の 協力(いわゆる南南協力)を促し、支援財団等による CDM プロジェクトへの投資オプションの検討を推し進 めることも奨励した。 COP/MOP3(2007 年 12 月、於 インドネシア・バリ)では、2007 年に開設された UNFCCC ウェブサイト内の CDM バザールを歓迎しつつ、後発開発途上国(LDC)における CDM プロジェクトの登録費用及び CER 発行時の収益分担金(Share of Proceeds)の支払を廃止して、LDC における CDM プロジェクト実施を容易 にする決定を下した。さらに、締約国には、非附属書 I 締約国(特に後発開発途上国、アフリカ諸国、及び 小島嶼開発途上国)における開始費用及び実証プロジェクトを含む CDM プロジェクトの開発に対して財政 支援の検討を促した。 COP/MOP4 サイドイベントにおいて 南南協力を通じた LDC での CDM プロジェクト促進の方策についてのサイドイベントが開催され、中国 DNA から CDM ホスト国としての豊富な経験を南南協力を通じて共有するプログラムを行っていることが紹 介された。特に LDC での CDM 促進には、まず国内における制度面の整備(法改正等も含む)を行うことが 重要であると述べ、CDM を資金獲得の目的ではなく、持続可能な開発を達成するためのツールと考える べきであるとした。中国では、CER 収益に課税していて、その税収を基に基金を創設する予定である。さら に、国内各地でプロジェクトオーナーを対象としたトレーニングに資金を投入するなど、積極的に CDM 促 進を行っている。今後は国内 DOE を育てることを重要視している。中国からは LDC、小島嶼国、アフリカ諸 国への支援には喜んで応じる旨発言した。基金を LDC 等での CDM プロジェクト開発支援に利用する予定 があるのかとの聴衆からの質問には、基金はこれから創設されるものであるので、創設されてから検討する と述べるのとどまった。この中国の系統立ったアプローチによるスキームを、世界銀行は賞賛し、南南協力 を通じての経験共有プログラムを推し進めているとのことであった。アフリカ・サブサハラ地域から世銀に多 くのプロジェクトアイデアが持ち込まれるが、そのほとんどが極小規模のものであるとのことで、その点につ いては UNFCCC 事務局からは PoA の活用が期待されるとの見解が示された。 CDM 改革に関するサイドイベントでは、カンボジア政府から CDM はホスト国間(主要途上国と LDC 等) の差異化がなされていない点に触れ、現行 CDM は大規模案件(すなわち 1CER 当たりの取引費用が低い 案件)向けの制度であって、LDC ではそのような大規模案件開発の可能性が低い点が問題であると指摘さ © 財団法人地球環境センター(Global Environment Centre Foundation) COP/MOP4&COP14 レポート れた。(財)地球環境戦略研究機関と共同で EB に提案した LDC の CDM についての改善(2007 年 11 月 及び 2008 年 10 月)は、両方とも EB で認められた。この改善の内容は、LDC の CDM の登録費用の免除、 及び LDC の CDM プロジェクトにかかるレビュー要請期間の短縮である。 アフリカの CDM に関するサイドイベントでは、セネガル政府から、CDM に関する情報の不足、国内法制 の未整備、CDM プロセスの複雑性、プロジェクト規模が小規模にしかならない点、民間部門の資力不足が 問題点であると指摘があった。アフリカでの CDM プロジェクトを増やすための提案として、プログラム型 CDM の促進、国内銀行・地域銀行などの参画、アフリカの民間企業の参加促進、DNA の能力開発、分野 別 CDM アプローチの容認を挙げた。また、アフリカにも CDM ポテンシャルは存在するとして、そのための 環境整備を政府が行う必要があるものの、国内での経験を高め、さらにアフリカ地域の DOE が必要である 述べた。タンザニアやコンゴの発表者も同様の問題点と解決策を指摘した。 COP/MOP4 での結果 これまでの COP/MOP 決定及びそれを受けた事務局等の取組にもかかわらず、CDM プロジェクトの地理 的分布の不均衡が改善されない状況を踏まえて、COP/MOP4 でも議論が行われた。特に、CDM プロジェ クトが少ないホスト国での CDM プロジェクト関連プロセスの簡素化の方法やそれらの国の状況に合わせた 適用方法論の改訂など、より具体的な方策が検討された。この中で、「CDM プロジェクトの少ないホスト国」 をどのように定義するか、について、先進国側の意見に対して、不利益を被りかねない開発途上国側が 様々な対案を出すなど、主張が応酬された。当初の案では「CDM プロジェクト全登録件数の 2.5%未満」と いった文言や、単に「significant underrepresentation」という抽象的な表現などが、オプションとして挙げられ ていたが、これらに対して「10 件未満のプロジェクト」という文言が提案されるなど、意見は収斂する方向に 向かなかった。公開協議では、これらの主張をまとめることができず、非公式協議の中で最終的に決定文 書がまとめられた。 COP/MOP4 の決定(FCCC/KP/CMP/2008/L.6)は、以下のとおりとなった。 • DNA フォーラムを通じた能力開発の促進、附属書 I 締約国の指定国家機関(DNA)と非附属書 I 締約 国の DNA の緊密な協力の促進、及び非附属書 I 締約国の DNA 同士での能力開発活動の推進を、 事務局に要請する(段落 52)。 • DNA と協議を行い、登録済み CDM プロジェクトが 10 件未満のホスト国(特に、LDC、小島嶼国、アフリ カ諸国)における CDM に関するプロセスを、環境十全性を担保しつつ簡素化する方法を開発するよう、 EB に要請する(段落 53)。 • EB 及びその下部機関の作業量を考慮し、CDM において過小評価されている(underrepresented)国で の適用のニーズ及びポテンシャルに基づき、環境十全性を担保しつつプロジェクトタイプを拡大するこ とで、それらの国が CDM ポテンシャルを具現化できるように、新方法論を開発・承認し、既存方法論を 改訂することを促進するよう、EB に要請する(段落 54)。 • 被支援国と緊密な協議を行い、調整の取れた二国間・多国間活動を通じて、特に LDC、小島嶼国、ア フリカ諸国における CDM プロジェクト開発に関する能力開発活動を注視するよう、締約国と国連機関 (特にナイロビフレームワークのパートナー機関)に要請する(段落 55)。 • 国家の買取プログラムを通じた支援や二国間・多国間の能力開発活動を念頭に置きつつ、登録済み CDM プロジェクトが 10 件未満のホスト国(特に、LDC、小島嶼国、アフリカ諸国)におけるプロジェクト設 計書(PDD)の確認・開発を支援し、プロジェクトの有効化審査費用を満たすことを、締約国及び民間組 織に奨励する(段落 56)。 • 特に南南協力・能力移転を通じて、CDM プロジェクトの開発・実施に関する二国間協力を行い、適切な 環境整備を通じて CDM への民間部門の参加を促進することを、締約国に促す(段落 57)。 • CDM プロジェクトの地理的分布の均衡に注意を払って CDM に参画するよう、民間部門を促す(段落 58)。 • 開発途上国での取引費用を抑制し、CDM プロジェクトの均衡分布に寄与することを目的として、開発 途上国に事務所を開設し、パートナーシップを構築することを、DOE に奨励する(段落 59)。 • プロジェクト参加者、利害関係者、専門家に CDM バザールを活用し、その機能性改善に関するフィー ドバックを提供するよう促すとともに、事務局に対しては開発途上国での利用拡大を目的として、CDM バザールの更新を要請する(段落 61、62)。
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