自動車市場における 新商品開発 ①―――研究の目的 ②―――はじめに 1.自動車市場の歴史 2.日本車の歴史 ⑤―――高級車のイメージ調査 1. 高級車イメージアンケート調査 2. 因子分析 ⑥―――知覚マップによるイメージ分析 3.日本の自動車市場の問題点 1. 知覚マップ作成 4.若者の車離れ 2. 各車の評価 5.世帯別の自動車に対する意識 3. 空白地帯の発見 6.若者の車離れ解消に向けて 4. 市場機会 7.外国の自動車市場 ③―――仮説 1. 仮説 ⑦―――考察 ⑧―――結論 団塊ジュニア世代は高級車を購入 する 2. 団塊世代 団塊ジュニア世代 3. 独身男性 4. なぜ団塊ジュニア世代なのか 5. 車種設定の理由 6. 仮説まとめ ④―――アンケート実施 1. 高級車か普通車か 2. アンケート結果について 3. 結果から読みとれること 岩佐凌 高野里紗 笠原麻里 田中理恵子 工藤佑介 坪井佳乃 坪井班 ① 研究の目的 私たちは、今回の研究の対象財として自動車を選 んだ。2009 年の金融危機を境に国内自動車市場が 減退している。その原因の一つに「若者の自動車 離れ」があげられる。そこで私たちは、どうした ら若者は自動車を購入するのか、学生に向けた自 動車をマーケティングしようと考えた。そこで私 たちは「自動車業界を理解し、不景気による自動 車販売の不況を打破する新しい次世代自動車を考 える」ということを今回の目的とした。後述する が、若者を対象とした自動車を提案する過程で、 経済的な問題もあり若者に自動車を購入してもら うのは現実的に難しいと考え、経済的にも余裕の 出てくる団塊ジュニア世代の独身男性にターゲッ トを変更して新しい自動車を提案する。 ② はじめに 1.自動車市場の歴史 自動車とは、原動機の動力によって陸上を走行す る車両のうち、軌条によらずに運転者の操作で進 路と速度を変えることが出来る乗り物のことを言 う。最初の自動車は蒸気機関で動く蒸気自動車で、 1769 年にフランス陸軍の技術大尉ニコラ=ジョゼ フ・キュニョーが製作したキュニョーの砲車であ ると言われている。イギリスでは 1827 年ごろから 定期バスとして都市部および、都市間で広く用い られ、1860 年ごろにはフランスでも用いられるよ うになった。1885 年に、フランスのレオン・セル ボレが開発し 1887 年に自動車に搭載したフラッ シュ・ボイラーにより蒸気自動車は 2 分でスター トできるまでに短縮された。1986 年にはガソリン 自動車の原点である「ベンツ パテント・モトー ルバーデン」が登場した。1900 年ごろには、石炭 の代わりに石油を使った蒸気自動車、ガソリン車、 電気自動車という三つの選択肢があった。この頃 は蒸気自動車の方がガソリン自動車よりも騒音が 少なく運転が容易だったためアメリカ合衆国では 1920 年代後半まで蒸気自動車が販売されていたが、 1897 年のフランスでの自動車レースでガソリン自 動車が蒸気自動車に勝利し 1901 年にはアメリカ のテキサスで油田が発見されてガソリンの供給が 安定する一方、電気自動車や蒸気自動車は構造上 の問題でガソリン自動車を越えることができず、 20 世紀初頭には急速に衰退していった。日本に自 動車が普及したのは 1904 年。第二次世界大戦後に はヨーロッパ各国でも自動車が爆発的に普及し 人々の生活のための車へと変化していった。1955 年、高度成長期に入り、通産省「国民車構想」を きっかけに自動車メーカー各社の競争が激しくな り自動車が一般家庭にも身近な存在となっていっ た。1973 年、オイルショックをきっかけに「省エ ネルギー」という新たな課題が自動車に課せられ た。1997 年にはガソリンを燃料とし、燃費もガソ リン車と比べて良いハイブリッドカーが登場する など自動車はさらに進化し続けている。 2.日本車の現状 日本の自動車産業は電気と並ぶ日本の主力産業の 一つである。しかし近年、日本の自動車メーカー を取り巻く環境は極めて厳しくなっている。 一つ は国内販売の不振である。国内販売は 05 年以降5 年連続で減少し、国内事業の黒字化の目安とされ る 500 万台を下回る状態が続いている。 主な理由は人口減少による市場の縮小、景気低迷、 若者の自動車離れなどのライフスタイルである。 各社とも国内需要の開拓に力を入れているものの、 人口減少が中長期的に続くだけに今後も国内販売 台数の大きな伸びは期待できそうにない。 また国内だけでなく海外での販売も苦戦している。 調査会社フォーインのデータを基にした推計によ ると、それまで 30%を超えていた日本車(外資系 の三菱ふそうトラック・バス、UD トラックスを除 く 10 社)の世界シェアは 11 年には 26.5%にまで 落ち込んでいる。11 年の世界販売台数では米 GM が4年ぶりに首位に返り咲き、2位には初めて 800 万台を超えた独フォルクスワーゲン(VW)が浮上。 トヨタは3位に後退している。さらに欧州や韓国 勢などのライバルメーカーに比べて、新興国市場 の攻略に出遅れたことも大きく影響している。自 動車産業の市場はここ数年で新興国の自動車市場 が急拡大している。2009 年には中国における販売 数が米国を抜き、世界最大の自動車市場に躍り出 た。しかし日本のメーカーは欧米では販売実績が あるが新興国市場の開拓がこれからである。低燃 費で故障の少ない日本車は欧米市場で広く評価さ れているが、新興国では性能以上に価格が重視さ れる傾向があり、従来の車種がそのまま受け入れ られるとは限らない。欧州や韓国勢が、現地消費 が求める性能、装備、価格などきめ細かく把握す るためのマーケティングにも力を入れているが、 この点でも日本は出遅れているのである。 そこですでに日本の各社は新興国市場での巻き返 しに出ている。トヨタやホンダは部品の現地調達 を徹底した低価格のアジア専門車をインドに投入。 三菱自動車は欧州の自動車生産から撤退する一方 でタイに低燃費小型車工場を建設するなど新興国 市場へのシフトを本格化している。 表 1 で示すように 2011 年まで低水準の推移を見せ ていたが 2012 年に入りアベノミクスがもたらし た経済効果や円安の影響もあり、各社業績を回復 し日本の自動車メーカーに明るい兆しが見えてき ている。特に現在小型の低燃費車が人気を集める 中、軽自動車は 4,2%増で全体に占める軽の割合は 40,1%に達している。軽以外はエコカー補助金終 了による反動減で 5,4%減り二年ぶりに落ち込ん だ。 ■表―――1 _______________ 2003 年度から 2013 年度上期(4~9 月)の新車 販売台数 3. 日本の自動車市場の問題点 日本の自動車市場は販売台数、自動車保有台 数の減少など、景気低迷の原因は前述したとお り(1)市場の縮小(2)景気低迷(3)若者の車離 れの 3 つである。 (1)市場の縮小 少子高齢化が進み人口が減少した。都市部への人 口集中も挙げられる。90 年代から首都圏の人口流 入はバブル崩壊後に一旦落ち込んだものの、95 年 以降は再び 10 万人前後の流入が続いている。自動 車を買う必要のない人口が増えてきているのであ る。特に電車、バス、飛行機などの交通機関の発 達した都心部では車を所有する必要性は薄れてい る。 (2)景気低迷 急激な円高で輸出競争力が相対的に下がったこと や、2011 年の東日本大震災とタイ大洪水の影響で 部品の調達が滞り、減産を余儀なくされたことが あげられる。 (3)若者の車離れ 2000 年初頭から若者層の自動車離れが叫ばれるよ うになった。その主な要因は経済的理由、ライフ スタイルの変化、市場縮小である。 4.若者の車離れ 自動車市場の販売不振の原因三つの中で、市場縮 小、景気低迷はマーケティングで改善することは できないが若者の車離れは本研究で改善できると 考えたため、次に若者の車離れについて詳しく言 及する。 (1)経済的理由 若者の所得の減少や雇用の不安定化などによる購 買力の低下が挙げられる。若者の就労は非常に不 安定になっている。一年を通して勤務した人の数 は 1995 年にピークとなり、以降 2006 年まで一貫 して減少している。2005 年以降は 1 年を通じて勤 務した給与所得者は 3 人に 1 人のレベルまで低下 している。こうした若者の不安定な就労の増大は 派遣労働の規制緩和と繋がっている。そのため若 者層の個人消費が大きく低迷し数十万円単位の高 額消費が厳しくなったのである。また、自動車に 金がかかりすぎているのも問題である。高額な車 両価格と維持費が容易に賄いきれなくなっている。 自動車税、重量税、所得税などの税金、自動車賠 償責任保険を含めた自動車保険、燃料代、駐車場 賃貸料金、車検費用など、自動車を所有、利用す るには莫大な費用がかかる。 (2)ライフスタイルの変化 移動手段が多様化したことにより自動車を持つメ リットがなくなった。また、携帯電話やパソコン、 ゲーム機などの趣味が多様化したことも原因の一 つである。 (3)市場の縮小 単身、夫婦のみ世帯の増加、特に親と同居してい る独身層の新車購入率が極端に低下している。そ して少子高齢化社会に代表されるように、そもそ も若者の割合が年々減少している。 実際に若者と車の関係を調べたデータでは、20 歳 代学生男性で、車を運転しない人は 45%。420 歳 代でも有職者になると運転しない割合 25,5%まで 減少するが 30 歳代以上の男性有職者と比べると低 いという結果が出ている。 5. 世帯別の自動車に対する意識 自動車保有率を世帯別にみると 30 歳未満、30 歳 代では 1999 年から 2009 年の 10 年間に 2 人以上 の世帯よりも単身世帯の方が大幅に減少している。 これは、二人以上の世帯、特に夫婦と子供から成 る世帯などは、同一目的地に複数人で移動する機 会が多く、コストや利便性の観点から公共交通機 関よりも自家用車を選択することが多いと推測さ れる。 また、運転免許の保有率では、若者の保有率は他 の年齢層が上昇しているのとは対照的に微減の傾 向にある。20 代では 1991 年に 74,2%であった免 許保有率が 2011 年には 63,5%まで減少している。 ただし 2011 年時点でも全国においては 20 代の 8 割以上、30 代においては 9 割以上の者が免許を保 有していることから、若者の免許保有率は依然と して高い水準にあると言える。また、10 代及び 20 代で免許保有率の低下が見られることについても、 他の年齢層の免許保有率が上昇していることから 現在の若者についても取得年齢の後ろ倒しが起こ っている可能性もあり、免許取得意向が弱まって いると一概に言うことはできない。 6. 若者の車離れ解消に向けて 若者は経済的な理由や日常的な移動目的で車を保 有する必要性が低下しているために自動車の保有 意欲が減退している。また、免許を保有すること は将来的に車を運転する機会に備えてのことであ ることを踏まえると、単発的な機会に自動車を利 用しようとしている若者の意欲はあると考えられ る。しかし、私たちは若者離れを解消するために 経済的な理由をマーケティングで改善することは リスクが高いと考えた。そこで次に外国車に目を 向けてみた。 7. 外国車の現状 日本では 1965 年に自動車の輸入が自由化されて 以降年間の新規登録台数は数万台規模で推移して いたが、1980 年代後半からバブル期に入り急激に 増加し高級車ブームを巻き起こした。表 2 を見る と、1996 年には史上最高となる 42 万 7525 台でピ ークを迎えたが、2 年後の 1988 年には 27 万 5869 台まで減少した。ファミリー向けの乗用車として ツーリングワゴンや SUV、ミニバンが人気を得た 影響がある。それ以後は日本車の販売と同様、ゆ るやかな減少傾向となっている。しかし 2012 年に は 15 年ぶりに輸入車の登録台数が 30 万台を突破 した。外車が売れた主な理由としては、3,11 の影 響で国産車の生産が出来ない隙を突いたこと。日 本の車がガラパゴス化している間に外国の技術が 進んだこと。円高ユーロ安を生かした販促戦略に 出たこと。首都圏と地方の経済格差の拡大がした こと。エコカー減税対象車の拡充が成功したこと が挙げられる。ブランド別ではフォルクスワーゲ ン(VW)が 13 年連続の首位で、2 位はメルセデス・ ベンツ、3 位は BMW とドイツ勢が続いている。 また現在アベノミクスの影響で高級車が売れてい る。このまま景気が上がれば高級車市場は増加す ると考えられる。 ③ 仮説 1. 仮説 する 団塊ジュニア世代は高級車を購入 「団塊ジュニア世代は高級車を購入する」 。これは 私たちが立てた仮説である。私たちは車市場に絞 った。先の説明の通り高級車市場は外国産の自動 車メーカーに席巻されている。2012 年の売り上げ 台数はメルセデスベンツ(7.3%増)、BMW4 万 万 1635 台(13.1%増)、アウディ2万 5188 台(12.7% 増)。*カッコ内は前年との売り上げ台数。日本の 高級車はトヨタのクラウン、日産のフーガのみが 発売されておりこれらの車種の売り上げ台数は外 国産のメーカーの売り上げ台数よりもはるかに少 ない。トヨタ・クラウン1万 7895 台、日産・フー ガ 5606 台。 ここで車を買う消費者をセグメントごとに分けて いく。私たちが考えたセグメントは、 ・男性、女性 ・年齢、年代 ・収入 ・居住地(都内、郊外、千葉、埼玉、神奈川など) ・既婚、未婚 ・子持ち、子なし ・車 初購入か二代目購入か ・勤務地との距離 の八つである。私たちは仮説の段階で男性、年齢、 未婚の三つのセグメントにターゲットを絞ること にした。 まず男性に絞った理由について。私たちの班員の 女性人に聞いてみたところ、ほとんどの班員が車 には興味がないと答えていた。そして一部のファ ンを除いて女性は高級車に興味はないと仮定した。 この仮説はのちにアンケートで実証された。 2.団塊世代 団塊ジュニア世代 次に年齢について。私たちは 10 年ごとの年代に分 けて考えてみた 20 代、30 代、40 代、50 代、60 代といった具合だ。20 代は高級車を買う能力がな いと判断し対象から外した。またいくつかの文献 からもいまの 20 代は高級志向があまりないとあっ た。30 代は既婚者・子持ちが多く彼らはファミリ ーカーを好むのではないかと考えた。40 代は子供 が高校・大学に入る時期で金銭的に高級車を選ぶ 人は少ないのではないかと考えた。50 代と 60 代 は団塊の世代を含み、さらに子育てもひと段落し ているので持て余したお金の使い道に困っている のではと考えた。ここまで考えて年代別にセグメ ントした場合 50 代、60 代にターゲティングした ら高級車が売れるのではと考えた。 3.独身男性 次に既婚・未婚についてターゲティングしていく。 既婚、未婚者について調べていると面白い記事が あった。 1975 年までは未婚率は五割以下であり、半数以上 は結婚していた。しかし、1980 年のデータでは 55%になり、未婚者が多数派になった。そして 2005 年には未婚率が 73%になり、四人に一人がし か結婚しない時代になった。 また、下のデータから 25 から 29 歳男性の未婚率 が高いことがわかる。30 代の前半・後半の未婚率 も 2005 年でそれぞれ 47.7%・30.9%といずれも高 水準である。 次 50 代から 60 代、いわゆる団塊世代についてま とめてみる。 4.なぜ団塊ジュニア世代なのか 団塊の世代とは、一般に日本において、第一次ベ ビーブームが起きた時期に生まれた世代。第二次 世界大戦直後に生まれて、文化的な面や思想的な 面で共通している戦後世代のことである。第一次 ベビーブーム世代とも呼ばれる。日本経済におい ては第二次世界大戦後の高度経済成長、バブル景 気と失われた 20 年開始までの時代経験を共にして おり、その突出した人口構成から良くも悪くも日 本社会のありように多大な影響を及ぼしている世 代である。 私たちは団塊の世代をターゲットにして高級車を 売り込めば売れるのではないかと先ほど述べたが、 調べていくにつれ団塊の世代は高級車をもはやス テータスだと思わないことがわっかった。ガリバ ー自動車流通研究レポートによると現在の団塊の 世代よりもむしろ団塊ジュニア世代の方が高級車 を好む傾向があることが分かった。 団塊世代の実に 51%が、高級車を別にステータス だとは思わないと答えている。今まで一生懸命働 き、乗りたい車にも乗り、子供も巣立っていった 今、別に高級車だとかステータスだとかにこだわ ることもなくなるという心境なのだろうか。 逆に、団塊ジュニア世代は「一部の超高級外車は ステータス」という答えが 30%弱。クルマに対し て夢を抱くのは、むしろ 30 代前後の団塊ジュニア なのである。 団塊の世代よりも団塊ジュニア世代のほうが高級 車を好むのではないか私たちは考えた。 団塊ジュニア世代について簡単にまとめておく。 団塊ジュニア世代は毎年 200 万人以上生まれた世 代であり、世代人口は団塊の世代(第一次ベビーブ ーム世代。1947 年~1949 年生まれ)に次いで多い。 イチゴ世代とも呼ばれるが、この世代が 1980 年代 後半に 15 歳を迎えた時期に使われた語である。こ の「団塊ジュニア」という言葉は、内閣府の国民 生活白書でも使われている。 「団塊ジュニア」とい う名称であるが、第一生命経済研究所「ジェネレ ーション Y を解く鍵」には、母親の 50%が、父親 の 70%以上が戦前または、戦中生まれであるそう だと書かれている。 (江崎正志[2005])最も広義では、 1970 年代生まれの世代を 「団塊ジュニア」 と呼ぶ。 これは、第二次ベビーブームに当たる 1970 年代前 半生まれと、団塊世代の子供世代に当たる 1970 年 代後半生まれを一括している。理由としては高卒 の結婚時期に比べ、大卒は 4 年以上遅れるため子 供は 1970 年代後半となる。 「団塊の世代」とは、戦後の第 1 次ベビーブーム (1947~49 年)に生まれた約 680 万人をさす。総人 口の 5.3%を占め、前後の世代より 2 割も人口が多 い。間もなく 60 歳定年を迎えて退職金を手にし、 子育ても終わってミニバンを「卒業」するこの世 代は、高級車の有力な購買層とされている。 そこで私たちは NTT レゾナントと共同で、団塊世 代がどんなクルマに乗りたいのか調べた。第 2 次 ベビーブームの「団塊ジュニア」世代 (1971~74 年生まれ)にも同じ質問をしてみた。 その結果、 「高級乗用車に魅力を感じる」団塊世代 は 21%だけ。 「超高級の国産車や輸入車には魅力を 感じる」人を加えても 34%で、ジュニア世代の 36%より少なかった。逆に「魅力を感じない」人 は団塊世代の 23%にのぼり、ジュニア世代より 6 ポイントも多かった。 このことから、団塊ジュニア世代の方が団塊世代 よりも高級車に魅力を感じているということがで きる。 5.車種設定の理由 私たちのアンケートでは、メルセデスベンツ、B MW、アウディ、クラウン、フーガ、ポルシェの 六項目の車種についてアンケートをとった。日本 の高級車市場の上位五つがメルセデスベンツ、B MW、アウディ、クラウン、フーガであるからだ。 ポルシェに関しては認知度が高い高級車であり、 先に挙げた五つの高級車とは違う性質があると考 えたため今回のアンケートに参考程度に入れてみ た。 6.仮説まとめ 高級車市場には外国産の企業が席巻しているため 日本のメーカーにも参戦のよちがあると私たちは 考えた。 その理由は二つある。一つはそもそも日本の高級 車というものがトヨタのクラウンと日産のフーガ しかないこと。二つ目が日本の自動車メーカーの 技術力は海外のメーカーと比べてそん色なく、ブ ランド力さえあれば国内市場を巻き返せると考え たからだ。 いくつものセグメンテーションから上記の理由よ り私たちは、男性、独身、団塊ジュニア世代にタ ーゲットを絞る。年代ごとのターゲティングをす る段階で 30 代既婚者が一番車を買うタイミングで はという考えもある。たしかに既婚で子持ちであ れば子供のためや家族旅行時など様々な場面で自 動車が必要になってくる。子供を連れて電車に乗 れば他の乗客に迷惑がかかるかもしれないし、駅 から遠ければ歩くこともできない。子供が小さけ ればベビーカーも積むことができるし、様々な場 面で他の交通手段よりも自動車を選ぶメリットが 存在する。しかし私たちが今回この世代の既婚者 を仮説の段階でターゲットから外したのには他の 理由がある。それはここでいう車とは一般にファ ミリーカーだがこの市場というのはすでにトヨタ、 ホンダ、日産から多くの車が発売されており、ま た価格帯も 100 万円台から 400 万円台まで占拠さ れており比較的マーケティングされつくされてい ると考えた。ここに挙げるだけでもトヨタからア イシス、アルファード、ウィッシュ、ヴェルファ イア、ヴォクシー、エスティマ、シエンタ、ノア の八種類。ホンダからオッデッセイ、ステップワ ゴンン、ステップワゴンスパーダ、ストリーム、 フリード。日産からエルグランド、セレナ、ラフ ェスタ、ウイングロード、その他二種である。こ こまで見て、私たちはこのファミリーカー市場は 寡占化が進んでいると考えた。そのため方向性は 30 代の既婚よりも未婚にしたらどうかと考えた。 先ほども示したように 30 代、未婚の男性は以前よ りも増えている。一概に言えることではもちろん ないが、30 代で未婚であればお金がかかるところ はあまりない。 そしてさらにここの世代(団塊ジュニア世代)の特徴 として先ほどあげたブランド志向性の強さがる。 団塊世代はいまさら高級車買ったところでステー タスにならないと考える一方、この団ジュニア世 代のおよそ半数は高級車をステータスと考えてい るのだ。もちろん、団塊世代と団塊ジュニア世代 では収入差があるだろう。しかし未婚の男性であ れば高級車に手を出さないこともないのではない だろうか。というより、おそらくここの世代の未 婚男性が現在高級車(外国産)を買っていると私た ちは考えた。ここに対する文献は現時点で見つか っていない。 ここまでのことから私たちは、団塊ジュニア世代 は高級車を買うという仮説をたてた。 ④ アンケート実施 1. 高級車か普通車か 私たちは、20 代から 60 代の男性に向けて、アン ケートを行った。アンケート目的は、「高級車に 需要があるかどうか」とともに、私たちが設定し た仮説「団塊ジュニア世代の独身男性は、高級車 を購入する」という仮説が正しいか調査すること が目的である。この仮説が正しいものなのかを判 断するアンケートの質問は以下の 4 項目である。 一つ目は、「年齢」。二つ目は、「既婚であるか・ 未婚であるか」。三つ目は、「高級車、普通車ど ちらに乗りたいか」。四つ目は「自動車を選択す るうえで、何を重視して選択を行うか」。これら 4 項目を仮説が正しいかどうかの判断材料とする。 アンケート集約期間は、10 月中の一か月間で実施 した。また、アンケート集約数は 40 人、年齢層も 仮定した通り、20 代から 60 代とさまざまである。 2.アンケート結果について アンケートの質問の一つ目、「年齢」の内訳は、 20 代 10 人、30 代 11 人、40 代 12 人、50 代 5 人、 60 代 2 人である。二つ目の「既婚であるか・未婚 であるか」という質問に対しては、既婚者 24 人、 未婚者 16 人という結果であった。 年齢別の内訳は、 20 代が既婚者 2 人・未婚者 8 人であり、30 代が既 婚者 7 人・未婚者 4 人、40 代が既婚者 7 人・未婚 者 5 人、50 代が既婚者 5 人・未婚者 0 人、60 代が 既婚者 2 人・未婚者 0 人である。 三つ目の「高級車、普通車どちらに乗りたいか」 という質問に対しては、高級車に乗りたいと答え た人数は 24 人であり、逆の普通車に乗りたいと答 えた人数は、16 人であった。年齢別、既婚・未婚 の内訳は、以下の通りである。20 代の既婚者すべ てが高級車ではなく、普通車に乗りたいと答えた。 20 代の未婚者のなかで高級車に乗りたいと答えた 人数は 3 人であり、普通車に乗りたいと答えた人 数は 5 人であった。よって既婚者・未婚者、合計 して 20 代の高級車に乗りたいと答えた人数は 7 人、 普通車に乗りたいと答えた人数は 3 人であった。 30 代の既婚者のなかで高級車に乗りたいと答えた 人数は 6 人であり、普通車に乗りたいと答えた人 数は 1 人であった。30 代の未婚者のなかで高級車 に乗りたいと答えた人数は 3 人であり、普通車に 乗りたいと答えた人数は 1 人であった。よって既 婚者・未婚者、合計して 30 代の高級車に乗りたい と答えた人数は 9 人、普通車に乗りたいと答えた 人数は 2 人であった。40 代の既婚者のなかで高級 車に乗りたいと答えた人数は 6 人であり、普通車 に乗りたいと答えた人数は 1 人であった。40 代の 未婚者のなかで高級車に乗りたいと答えた人数は 4 人であり、普通車に乗りたいと答えた人数は 1 人であった。よって既婚者・未婚者、合計して 40 代の高級車に乗りたいと答えた人数は 10 人、普通 車に乗りたいと答えた人数は 2 人であった。50 代 の既婚者のなかで高級車に乗りたいと答えた人数 は 2 人であり、普通車に乗りたいと答えた人数は 3 人であった。また 60 代の既婚者のなかで高級車に 乗りたいと答えた人数は 0 人であり、普通車に乗 りたいと答えた人数は 2 人であった。割合にする と 20 代のなかで高級車に乗りたいと答えた人の割 合は既婚者が 0%、未婚者が 37.5%であった。20 代全体では高級車に乗りたいと答えた人数の割合 は 30%であった。30 代では高級車に乗りたいと答 えた人の割合は既婚者が約 85.7%、未婚者が 75% であった。30 代全体では高級車に乗りたいと答え た人数の割合は約 81.8%であった。40 代では高級 車に乗りたいと答えた人の割合は既婚者が約 85.7%、未婚者が 80%であった。40 代全体では高 級車に乗りたいと答えた人数の割合は約 83.3%で あった。50 代のなかで高級車に乗りたいと答えた 人の割合は 40%であった。60 代では 0%であっ た。 四つ目の「自動車を選択するうえで、何を重視し て選択を行うか」という質問に対しては以下の通 りの答えが出そろった。20 代はデザイン、普通の 車、高級車以外、トランクの広さ、何人乗れるか、 運転席以外の席の広さ、座り心地があげられ、複 数意見に見た目があげられた。30 代でも見た目、 運転しやすさがあげられた。40 代はトヨタ以外、 クオリティー、乗りやすさがあげられ、複数意見 に運転しやすさがあげられた。50 代ではコスパ、 ライクスタイルに合ったもの、フィーリング、高 級感、メンテナンス、頑丈があげられた。60 代で はエコ、安全性があげられた。 3.結果から読みとれること 質問の三つ目から読み取れるように、最も高級車 に乗りたいと答えている世代は 40 代であり、これ に続いて 30 代である。両世代とも 8 割を超えてお り、他の代とは群を抜いていることがわかる。30 代 40 代は、団塊ジュニア世代である。このことに より、「団塊ジュニア世代は高級車を購入する」 という仮説が正しいということわかる。しかし、 既婚者と未婚者の割合を見てみると、30 代は既婚 者既婚者が約 85.7%、未婚者が 75%、40 代は既婚 者が約 85.7%、未婚者が 80%と両世代とも既婚者 と未婚者の割合には大した差がない。このことか ら仮説では「団塊ジュニア世代の独身男性は、高 級車を購入する」というように、独身男性に絞っ ていたが、独身男性と絞らなくても良いことわか った。この二つのことをまとめると仮説として「団 塊ジュニア世代の独身男性は、高級車を購入する」 ということをあげていたが、結果から「団塊ジュ ニア世代、30 代~40 代が高級車に乗りたい」とい うことが事実である。 四つ目の質問から読み取れることは、20 代や 30 代といった比較的若い世代は見た目、デザインな どの外装が車を選択するうえでの判断基準になっ ている。しかし、30 代から 40 代になるにつれて 見た目が重要視されなくなり、運転しやすさ、乗 りやすさなどといった車の外見だけではなく、車 の操作性についても判断の基準となる。50 代~60 代ではエコ、安全性、メンテナンスなど車との付 加価値なものが判断の基準になっている。 ■表―――2 _______________ ⑤ 高級車のイメージ調査 1.高級車イメージアンケート調査 ここまでに普通車と高級車について、世間一般の 人々はどちらを好むのかということを調査と分析 をしてきた。そこで次に、普段、接する機会の少 ない高級車に対して、世間一般の人々はどのよう なイメージを抱いているのかを知ることで、現在 の高級車市場において顧客によって作られたイメ ージ調査から見えるニーズの空白地帯の発見を試 みる。空白地帯にこそ未だ知られていない属性を 兼ね備える新製品開発のヒントがあるのではない かと考えたためである。そのため、統計的データ 分析が可能なソフトウェア SPSS を使用して因子 分析を行い、知覚マップを作成し、先ほど設定し た 6 車種のイメージから読み取れる、高級車のイ メージ調査を実施する。 アンケート項目は大きく分けて、乗りやすさ、性 能、機能、デザイン、ステータスについての 5 つ について聞くもので、調査対象者は、幅広い年代 からの高級車のイメージを知るために、20 代から 50 代の男性 40 名とする。 アンケート調査方法は、6 車種それぞれに関するイ メージを、前述した 5 つの項目をさらに細かく分 けた全 22 項目を使って調査していく。全 22 項目 に関して、質問ごとに 5 段階評価で当てはまるも の 1 つに丸をつけてもらう形式をとる。 このアンケート結果を、SPSS に入力することで、 質問項目からわかる因子の抽出を行うため、因子 分析を行っていく。因子分析のプロセスとして、 因子抽出後に出た因子に因子名をつけ、最終的に 6 車種についての知覚マップを作成し、6 車種からわ かる高級車のイメージ把握と、それらのイメージ から読み取ることのできる、顧客ニーズの傾向と 空白地帯の発見を行っていく。 共通性の発見その 1 ■表―――3____________ 共通性の発見その 2 2.因子分析 初めに、全 22 項目それぞれの間の共通性の発見を 行う。共通性を出すために因子抽出を行うと、表 3 のように、共通性の低い 0.4 以下の因子が 4 つ抽 出されるため、これらを除外して再度、18 項目で 因子抽出を行う。すると、最終的に、表 4 のよう な結果となり、0.4 以下の因子が無くなるため、18 項目で因子分析を進めていく。 次は共通性の高い 18 項目に関して、因子抽出後の 説明された分散の合計を出すことで、有効ないく つかの因子に大きく分ける作業をする。実際に出 た、因子抽出後の説明された分散の合計は、表 4 のようになる。 ■表―――4______________ ■表―――5 ______________ 因子のスクリープロット 説明された分散の合計 最後に、抽出した 4 つの因子について、1 つ 1 つ見 ていく。 1 つ 1 つの因子について見ていくことで、その因子 の特徴やどのような項目同士に相関が強く見受け られるのかがわかる。 抽出後の説明された分散の合計を出すと、今回の 因子分析においては大きく分けて 4 つの因子に分 けることができる。これら 4 つを因子として確定 して良いのか、しっかり確認するために、因子の スクリープロットによって因子数の確定を行う。 実際にアンケート結果より導いたスクリープロッ トは、表 5 のようになっている。 スクリープロットでは、固有値 1 以上のものを因 子として扱う。また、1 以上であったとしても、グ ラフの傾斜がなだらかなものは因子としない。 表☆4 をみてわかるように、グラフの傾斜が急にな だらかになる、5 以下の因子は今回は因子として含 めない。 結果、説明された分散の合計で出てきたように、4 つの因子数に分けて考えていくことを確定する。 ■表―――6________________ 回転後の因子行列 上の表 6 を見ていくと、因子が 4 つに分類されて おり、分類の方法としては、上から順に値をみて いくと、似たような大きさの数値が出ているもの 同士の相関が強く、1 つの因子として考えられてい る。 1 つ目の因子は優越感、乗車(保有)してうれしい、 乗車(保有)して自慢したい、そもそも乗車してみ たい、恋人を乗車させたい、見た目そしてスタイ リッシュなデザインかという項目が含まれている。 これらは他人から見た評価や見た目などを気にし ているため、ステータス因子と名づける。スタイ リッシュなデザインまでを第 1 因子とした理由は、 上から順に因子行列を見ていくときに、スタイリ ッシュなデザイン 0.765 に対し、次の広さという 項目 0.004 と極端に数値が下がるため、ここをボ ーダーとする。 2 つ目の因子は広さ、疲れやすさ、収納力、静かさ、 耐久性そして椅子の座り心地という項目が含まれ ている。これらは自動車の機能を表している項目 であるため、機能因子と名づける。椅子までを第 2 因子とした理由は、上から順に因子行列を見てい くときに、椅子 0.527 に対し、次のブレーキの利 きが 0.308 と極端ではないにせよ数値が下がるた め、ここをボーダーとする。 3 つ目の因子はブレーキの利きとステータスとい う項目が含まれている。これらは車体それ自体に ついての性能的部分を表しているため、車体因子 と名付ける。 ステータスを第 3 因子とした理由は、 ステータス 0.589 に対し、次の色が 0.381 と数値 が下がるため、ここをボーダーとする。 4 つ目の因子は色、燃費、環境配慮という項目が含 まれている。これらは項目の内容通りに、環境配 慮などをしっかり考えている自動車としてのイメ ージがついていると思われるため、環境因子と名 付ける。 このように、因子の内容まで 1 つ 1 つ見ていくこ とでその因子の特性や特徴を見極めていくことで、 高級車のイメージに影響している要因を探るヒン トを得た。 しかし、3 つ目の因子である車体因子はブレーキの 利きとステータスという、関係性が薄いと思われ る項目がそろってしまうという結果になったため 信憑性にかける結果であると判断し、今回の因子 分析においては除外項目と考える。そのため、ス テータス因子、機能因子、環境因子の 3 つで知覚 マップの作成を行う。 ⑥ 知覚マップによるイメージ分析 1.知覚マップ作成 ■表―――7___________________________ ステータス因子と機能性因子の知覚マップ 因子分析を行い、x 軸を機能性因子、y 軸をステー タス因子に設定して知覚マップを作成したところ、 上の表 7 のような結果が得られた。レクサス、ク ラウン、フーガの国産車は、ステータスは低いが、 機能性が高いということが分かった。それに比べ、 ポルシェ、BMW、ベンツの外国車はステータスが 高いということが分かった。その中でも、BMW、 ベンツはステータスとともに、機能性も高いイメ ージであるということが読み取れる。 国産車であるレクサス、クラウンはフーガに比べ、 ステータス因子が高く、お互い近い位置にあるこ とから競合同士であるということが読み取れる。 外国車は、BMW、ベンツが近い位置にある。 両車ともステータス、機能性ともに高い位置づけ であり、3 車の外国車の中でこの 2 車は機能性も備 えている競合同士であることが分かる。 次に、ポルシェの位置に注目した。ポルシェは他 の車に比べ、ステータスのみが高い位置にいるこ とから、機能性では他車に比べて劣るが、ステー タスの高さという分野に特化することで他車との 差別化を図っていることが読み取れる。 この知覚マップは、BMW は一番右上にあることか ら、この 6 車の中で最もステータス因子、機能性 因子を兼ね備えたイメージであることが分かった。 ■表―――8_____________________________ ステータス因子と環境因子の知覚マップ うイメージであった。そして、総合的に見ると、 BMW が 3 つの因子が平均的に高いため、両方の 知覚マップで右上に位置していた。このことから, イメージを持たれていることが分かる。 では、どのようなイメージを持たれることが高級 車の満足度に結びつくのだろうか。 2.各車の評価 そこで、20 代~60 代までの 40 名の男性を対象に アンケートを実施し、これら各 6 車に対する満足 度評価を 100 点満点で尋ね、検証した。 ■表―――9 6 車の満足度評価平均点 次に、x 軸を環境因子、y 軸は変えずステータス因 子に設定し、再び知覚マップを作成した。そこで は上の表 8 のような結果が得られた。レクサス、 クラウン、フーガの位置関係では x 軸を機能性因 子とした表 7 の知覚マップとの大きな差は見られ なかった。 この 3 車では、やはりレクサスがステータス、環 境因子ともに高いイメージであることが読み取れ る。しかし、表 7 に比べ、3 車すべて同間隔の位置 にいることから 3 車とも環境配慮という点で競合 同士であることが分かる。 そして、外国車のステータスが国産車に比べ、高 いイメージであるということは表 7 から得た結果 と変わらないが、x 軸を環境因子で知覚マップを作 製したことにより、表 7 の結果とは大きな違いが 得られた。まず、ポルシェは機能性に比べて中央 に近づいたものの、左寄りであることから、 機能性、環境性よりもステータスに特化したイメ ージが強い。次に、表 7 では、ステータス、機能 性とも高い位置にいたベンツだが、環境因子で知 覚マップにすると環境性が低い位置であることが 分かる。このことからベンツは、機能性は重視さ れているイメージではあるが、環境には備えがな いイメージであることが分かる。BMW においても、 環境性は表 7 の知覚マップの機能性に比べ、中央 寄りであることから、環境性よりも機能性である というイメージが強いということが分かった。 このような結果を得て、外国車は全体的に見て環 境性イメージが低いということが言える。 ここまで、二つの知覚マップについて考察してき たが、これらの知覚マップからは全体的に外国車 は国産車に比べ、ブランド力がありステータスが 高いイメージであることが言える。それに比べ、 機能性、環境性では国産車の方が優れているとい アンケート結果から、各車に対する満足度ととも に、この評価と知覚マップとの関係からどのイメ ージが高級車において必要とされているかが読み 取れる。 アンケートの結果は、一番満足度が高い車が BMW で平均 71.4 点、次がレクサスで 69.9 点、次はベン ツで 68.0 点、ポルシェ 66.4 点、クラウン 63.4 点、 フーガが唯一 50 点台で 58.9 点と最下位であった。 これを見ると、表 8、表 9 の知覚マップでステータ ス因子、機能性因子、環境因子が平均的に高い位 置にあった BMW が 1 位である。このことから、 これらの 3 つの因子が高いことが高級車に対する 消費者の満足度を満たす上で必要とされているこ とが分かった。次に、2 位であったレクサスにおい ては、ステータスこそ外国車に比べて劣るが、そ の他 2 つの機能性因子、環境因子ともに高い位置 にあることから同様にこれらの因子が必要とされ ていることが分かった。 また、二つの知覚マップよりポルシェは他の車と 比べ、ステータスが高いとされていたが、この順 位を見ると 4 番目の満足度であるという結果から、 ステータスが高くても機能性か環境性、どちらか が備わっていない車では消費者の満足度を十分に 満たすことが出来ないのではないかということが 考えられた。 このアンケートで得られた評価と二つの知覚マッ プより、ステータス、機能性、環境性が満たされ ている高級車が消費者の満足度を満たすことにお いて必要であることが分かった。 では、それらを満たす高級車は存在するのか。 3.空白地帯の発見 まず、表 7 の知覚マップでは、ステータス、機能 性ともに高い位置に BMW が存在するため、両方 の因子が高い位置に空白が存在しない。また、そ の他の場所にある空白では、消費者の満足度を高 めるために必要な因子水準に達していないと考え た。 次に、表 8 の知覚マップを見ると、ステータス因 子、環境因子が高い右上の位置にどの車にも当て はまらない空いた場所が存在することが分かる。 ここを空白地帯とする。 (表 10 参照) ■表―――10________________ 空白地帯の発見 この表 10 から、これら各 6 車の代表的な高級車の 中にはステータスが高く、環境を配慮した車が存 在しないことが分かる。 そこで、ここに位置する高級車を開発することで、 他車との差別化が可能になるのではないかと考え た。 4.市場機会 空白地帯の発見により、私たちが設定した各 6 車 には存在していない新たな市場を見つけ出すこと ができた。 ■表―――11________________ 市場機会の発見 この表 11 の☆印にあるように、ステータス因子、 環境因子ともに高い位置を市場機会とし、それら の因子に重点を置いた高級車を開発することで他 車との差別化を図る。 では、この市場に消費者の求めるニーズはあるの か。 まず 4 章で検証した「高級車と普通車、どちらに 乗りたいか」というアンケートにおいて、他の世 代に比べ、団塊ジュニア世代である 30 代~40 代 の多くが「高級車」という回答であった。そして、 その団塊ジュニア世代は、仮説で述べたように高 級車にステータスを感じるという意見が団塊世代 に比べ多かった点から高級車「ステータスが高い」 ということにニーズがあると言える。また、環境 性という点では外国車で環境因子が高かった BMW、国産車で環境因子が高かったレクサスとも に満足度評価で上位であったため、消費者の満足 度を満たすためには環境性が必要とされているこ とが分かった。 このような理由から、知覚マップ上で発見した市 場機会にニーズがあると考えた。 これを踏まえると、団塊ジュニア世代の男性をタ ーゲットとした高級車の新製品開発では、ステー タスを保持しつつ、環境に配慮した高級車提案す ることで他車との差別化を図り、消費者のニーズ に応えることができる。 今後、今回発見した市場機会に本当にニーズがあ るのかを調査し、選好される製品となるための研 究を行う。 ⑦考察 前章で市場機会を発見することができ、この市場 が消費者のニーズに合致しているということが判 明したので、この章では、発見した市場にどうい った製品を送り込んでいけばよいのかについて考 えていこうと思う。 まず、高級自動車市場においてステータスを維持 しつつ、環境配慮を考えているブランドメーカー は存在するのか調べてみたところ、どのメーカー も今の時代ではたしかに環境に配慮した傾向が強 くなっているということがわかった。 国産車ではトヨタ自動車の高級車ブランド、レク サスの GS シリーズが 2006 年 7 月の段階で、ハイ ブリッド車の販売台数がガソリン車の販売台数よ り多くなっていた。レクサスの GS 合計で見ると、 月別の販売台数は減少傾向であるが、そのうちの ハイブリッド仕様の販売台数は注文が多く生産が 追いつかない状況が続いていたようである。ガソ リン価格の高騰の影響もあり、高級車市場での環 境への配慮、低燃費車への関心は高まっているこ とは間違いないと思われる。トヨタによると、GS の同年 7 月の販売台数はガソリン車が 359 台、ハ イブリッド車は 464 台であった。ガソリン車に比 べて 3 割増しの成績である。これだけエネルギー 価格が高くなっている今、環境配慮の製品や、エ ネルギー効率の高い製品は確実に注目を浴びてい る 。 レ ク サ ス の LS シ リ ー ズ の 中 で も 特 に LS600h/600hL は車内の静粛性は日本のショーフ ァードリブンでは最高級の位置づけとなるトヨタ センチュリーに一歩譲るものの、メルセデスベン ツ S クラスを超えると言われている。静粛性の向 上にはノイズリダクションアルミホイールなど路 面からのノイズの侵入を軽減させるホイールなど も採用されており、国内ではセンチュリーに比べ CO2 排出量が少ないことから環境に配慮した総理 大臣専用車としても使用されているぐらいである。 ショーファードリブンとしての品格はセンチュリ ーには及ばないが、後席や車内の快適性は国産車 トップクラスであり、ハイブリッドカーとして環 境にも配慮された高級車と言える。 外国車では、前章の知覚マップを見ていただくと 分かるように環境配慮に対するイメージはあまり 良くないようである。首都圏の女子大生を対象に したアンケートで「彼氏に乗ってほしい車」の第 1 位がホンダのフィットという結果であった。学校 に迎えに来られるにしても、今はフェラーリだと か、ポルシェ、ベンツだとかで来ようものなら、 「空 気の読めない恥ずかしい大人」と言われてしまう。 今の時代、「高級車」ではなくて、「こんな時代に 燃費が悪い車」というイメージが強い。 そんな外国車だが、環境配慮を重視した新車開発 は着々と進んでいる。環境技術で後れをとってい るといわれたポルシェは最近、「インテリジェン ト・パフォーマンス」というスローガンを打ち出 している。このスローガンは、 「より少ない燃料で より大きなパワー」 「より高い効率とより低い CO2 排出量」という理念を込めたものだという。これ まで高出力エンジンなど高性能を追求してきたポ ルシェにとっても、環境配慮は重要なブランド要 素であることを物語っている。2012 年に市販され た PHEV(プラグイン・ハイブリッド)のスーパーカ ー、 「918 スパイダー」は、レースカー「RS スパ イダー」に使われている 3.4L V8 エンジンを流用 したミドシップ(車体の中心付近にエンジンを配置し た構造)。量産モデルでも 9200 回転まで軽く上がる 高回転タイプのエンジンで、最高出力は 500ps に もなる。カーボンボディとレース用エンジンを持 ちつつも、実は立派なプラグイン・ハイブリッド システムを持つエコカーなのである。 エンジンの出力は 7 速 PDK(2 ペダルのツインクラ ッチ・トランスミッション)を介してリアタイヤで路 面に伝達される。一方で、電気モーターはフロン トタイヤに内蔵されており(インホイールモーター)、 エンジンで駆動するリアと合わせた四輪駆動が可 能だ。ブレーキ時には 2 つの電気モーターが発電 機(回生ブレーキ)となってエネルギーを回収する。 2 つ搭載されたモーターの出力は合計で 218ps。つ まり、エンジンとモーターを合わせて駆動すると 最高 700ps という、まさにレースカー並みのパフ ォーマンスを発揮する。ちなみに水冷式リチウム イオンバッテリーは座席後部に収まっている。リ チウムイオンバッテリーの容量は不明だが、エン ジンを止めてモーターだけでも約 25km の EV 走 行が可能だという。そこから想像すると、容量は 5kWh 程度でなかろうか。外部充電により、買い 物程度の距離なら十分 EV として使える。エンジ ンとモーターの併用による欧州複合モード燃費は 33km/L。走行 1km あたりの CO2 排出量に換算す ると、なんとわずか 70g である。重いバッテリー やモーターを搭載していても、カーボンモノコッ クという軽量ボディであるため車両重量は 1490kg と 1.5t を下回る。スーパーカーとしては異 例の軽さだ。そのため、0-100km/h 加速は 3.2 秒 と世界最速クラスである。 最高速度は 320km/h だ。 1 周約 20km の独ニュルブルクリンク・サーキット でのラップは 7 分 30 秒を切る。つまり、同社のス ーパーカーの代表である「カレラ GT(7 分 33 秒)」 を上まわる。速さも燃費も世界一を目指している のである。 「918 スパイダー」はエンジンとモータ ーの組み合わせ方で 4 種の走行モードに切り替え られる。燃費とパフォーマンスがバランスした「ハ イブリッドモード」 、走行性能を重視した「スポー ツハイブリッドモード」 、サーキット走行など最大 のパフォーマンスを発揮するための「レースハイ ブリッドモード」 、そして電気モーターだけで走行 する「E-ドライブモード」の 4 つだ。エコとスピ ードが共存する“肉食系”PHEV である。 また、アンケートでも一番点数が高く、知覚マッ プでも一番環境面で評価を得ていた BMW は環境 配慮の部分に懸念がない。今年 BMW がニューヨ ークでデジタルプロジェクションを活用した電気 自動車のプロモーション活動を行った。シックス ス・アヴェニューを走る 25 万台ものさまざまな種 類のクルマが、BMW の電気自動車にリアルタイム で変わり、映し出されていく。このキャンペーン 中、わずか 1 週間の間に 25 万台を映し出すことに 成功。将来的にこれだけの電気自動車に乗り換え ることで、 5 億円ほどガソリン代が節約となり、 130 万 t もの CO2 削減にもなるようである。環境への 配慮もしっかりと伝えつつ、新しいかたちで電気 自動車のプロモーションを行っている。さらに、 最近自動車分野での量産採用が始まりつつある炭 素繊維強化樹脂(CFRP)。 炭素繊維強化樹脂(CFRP)とは、アルミや鉄とい った金属以上の強度と、樹脂系材料であることに よる軽量性を備えた素材である。ゴルフクラブ、 テニスラケット、釣り竿などに広く利用されてい る。2013 年後半に発売する電気自動車(EV) 「BMW i3」 のコックピットに CFRP を採用する BMW は、 同様に最新鋭航空機「B787 ドリームライナー」の 機体の大部分を CFRP で製造しているボーイング と、CFRP のリサイクル技術で提携することにも なっている。現在、CFRP を用いた製品を開発す る上で課題となっているのが、製造段階で発生す る大量の廃材や最終製品を廃棄する際の対応であ る。特に、航空機の機体や、自動車のコックピッ トともなると、処理すべき CFRP の量は膨大であ り、これらをリサイクルする技術が重要になって くるのだが、BMW は、 「共同研究を通じて、両社 は航空業界と自動車業界のノウハウを融合し、 CFRP を使った持続可能な生産を実現できるよう になる」と述べている。ボーイングも、 「今回の合 意は、炭素繊維の利用および最終用途を促進・開 拓する上で極めて重要な一歩になる。炭素繊維で 作られた製品は最終的な廃棄に関する計画を策定 しておかなければならないが、ボーイングとして はリサイクルによって新しい製品に活用する方法 を模索したいと考えている。BMW との提携は、そ の目的を達成する上で役立つ」とコメントしてい る。この 2 社の協業により、環境面だけでなく軽 量・高強度・防腐食・耐振動といった機能面でも 他のブランドメーカーからとび抜けることとなる であろう。 ⑧結論 今回ターゲットを団塊ジュニア世代と設定し、こ の世代は高級自動車をステータスとみなすのでは ないかという仮説に対してアンケートにより実証 することができた。しかし、独身男性と設定した 部分は仮説と違う結果となり、独身男性に絞る必 要はないということが分かった。また、第 6 章で アンケート結果をもとに SPSS を使用し、知覚マ ップを作成することで市場機会を発見することが できた。ここから読み取れることを念頭に消費者 ニーズに合わせた製品を開発すればよいことが分 かった。ステータスを保ちつつ、環境を配慮した 高級車について調べていくうちに最近の高級車は 環境への配慮を重視していることも分かり、私た ちが発見した市場機会の消費者ニーズに一番近い ブランドメーカーは BMW であった。ドイツの高 級車と日本の高級車はステータスの面でかなりの 差が生まれている。両者比べると、日本の高級車 は「これから高級車をつくる」と先に線引きした 点が異なる。既存の高級車メーカーを上回る技術 力と品質で消費者を納得させる必要があったが、 そこで力が及ばなかったと考えられているようで ある。 現地化と小型化の戦略で一歩出遅れた点を敗因と して挙げる分析も有力だ。レクサスは米国での販 売台数が半数以上を占めているが、現地化努力は ドイツメーカーに比べ 20 年近く遅れている。ベン ツと BMW は既に 1990 年代初めに現地工場設置を 計画し、90 年代半ばから後半にかけ、現地でスポ ーツ多目的車(SUV)を生産してきた。レクサスは 2015 年にようやく米国で「ES」モデルのみを現地 生産する計画だ MW は昨年、米国での販売台数の 94%を現地で生産した。 金融危機以降、燃費など実用性を重視するように なった消費者のニーズの変化を速やかに読み取れ なかったとの指摘もある。11 年時点で BMW が生 産する高級車は 4 台に 1 台が小型車だったが、レ クサスは 10 台に 1 台にとどまった。レクサスの大 量リコール(回収・無償修理)で、日本の高級車メ ーカー全体に対する消費者の信頼度が低下したせ いもあるが、根本的には日本メーカーが急変する 市場に対応できなかった面があると分析する人も いる。 ただ、これからは高級車に対するイメージが昔と は変わってきているということにも注目したい。 ステータスとして高級車をみている団塊ジュニア 世代の考え方が変わってくるかもしれない。 「生活 費に占める自動車関連費に関する調査」より、ガ ソリンの高騰について意識しているか尋ねたとこ ろ、ガソリンを入れるたびに意識している人が約 7 割、マスコミに取り上げられたときに意識する人 が約 2 割と合わせて 9 割以上の人が意識しており、 ガソリン価格への関心の高さが伺える。また、今 後自動車を購入する場合、価格以外に何を重視す るか尋ねたところ、5 割以上の人が「燃費」と答え た。これは「外観」「メーカー・ブランド」「安全 性」など、従来重要視されてきたものより 25 ポイ ント以上高くなっており、ドライバーがガソリン 高騰の影響を受けており、価値観が少しでも安く 自動車に乗ろうとしている気持ちが伺える結果と なった。また、環境への配慮は約 1 割の人が重視 すると答えるにとどまった。以上のことから、現 在は環境への配慮という名目よりも自分のオサイ フ事情に配慮して「燃費」の良いハイブリッドカ ーを購入する人が増える恐れがある。また、今後 はハイブリッドカーの枠にとらわれず、燃料電池 の車など新しい技術の自動車の販売時にも「燃費」 のよさなど経済的なポイントが一番重要視される 時代が予想される。 高級自動車を開発する際に本当に重要視しなけれ ばならないことを見つけられるかが今後の課題で ある。 参考文献 「MarkeZine 編集部+[2013]+『若者の車離れは本当 か?』+翔泳社」 「江崎 正志+[2005]+『ジェネレーション Y を解く鍵』 +第一生命経済研レポート」 (Work-Life 調査団[2007] ) (金垠廷 [2013]) (Thomas L. Friedman[2000]『レクサスとオリーブの 木――グローバリゼーションの正体(上・下)』草思社)
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