フルトヴェングラー・センター会報

第3号
2004年5月発行
フルトヴェングラー・センター会報
The Wil hel m F urtw äng l er Centre of Japan
創設 2003 年 10 月 1 日
名誉会長 エリーザベト・フルトヴェングラー
<会報第 3 号の主な記事>
・センター役員、Elisabeth Furtwängler 夫人訪問とハイデルベルク墓参
・センター制作第 2 回新譜DVD – ヴァーグナー『ラインの黄金』
・フランス協会新譜CD – ブルックナー 交響曲第九番
・没後 50 周年記念連続レコード・コンサートを開催
・フランス協会既発CD 取次ぎのご案内
2004年4月27日から5月4日迄の連休を利用
して、当センター理事2名(中村・鈴木)で、当セ
ンター名誉会長エリーザベト・フルトヴェングラー
夫人訪問、及びハイデルベルク墓参を行いました。
夫人は現在スイス・レマン湖畔の景勝地モントルー
(ジャズ・フェスティバルで有名ですね)の近郊ク
ラランに、フルトヴェングラーが亡くなる直前に買
った自宅にずっと住んでおられます。訪問したのは
2004年4月28日(水)午後4時。ディナーを
一緒にしましょ、というお招きで定刻のちょっと前
にタクシーで到着しました。少し時間が早かったの
で家から少し離れて、全体を眺めていると、タクシ
ーの音を聞き付けて夫人が戸口から出てこられ、あ
の人なつこい表情で、
「車の音がしたので、外に出て
みたんです。どこに行ってしまったのかと思って」
とにこやかに迎えて下さいました。これまでも何度
か電話でお話してはいましたが、直接お会いして、
握手して、本当に感慨無量でした。夫人は既に93
才で、ほんの僅か耳が遠くなってきたとのことです
が、身体壮健、明るく優しく、青々とした芝の植わ
ったやや勾配のついた自宅の庭を、それこそぴょん
ぴょんと跳ねるがごとく案内して下さったり、合わ
せて5時間以上にわたって一緒に、話し、笑い、食
べ、飲み、写真を撮り、何回も手を重ね、歓迎して
下さいました。初めて訪問するフルトヴェングラー
の最後の住処に、ピアノに、ココシュカのタピスト
リー、夫人13歳の時の本当に天使のようにかわい
らしい自画像を見せて下さいました。茶色の可愛い
リスも出てきました。そして、夫人の愛ネコ、
『Tigi』
も。夫人いわく、
「彼女がここを仕切っている女王で
す。私は何の価値もないの。」
クラランの御自宅は La Basset-Coulon といい、地元
では実際の住所より通りがよいとの事です。近くに
は現在の住居を買う以前住んでいたヴィラ・ラムペ
リュア(皇帝荘)があり、夫人はその一部(尖塔)
が見える位置まで庭先を案内して下さり、そうして
どのように現在の家を買う事になったか、細かな経
過をお話して下さいました。皇帝荘が急に売られる
事になり、わずか10日間で幸運にも新しい現在の
家を手に入れられた事などです。しかし、マエスト
ロはこの家に半年しか住む事が出来ずに亡くなって
しまいました。また、マエストロが亡くなってから
それきり他の男性に恋心を抱いた事はない、とのこ
とでした。
(私達が聞いた訳ではありません。)
フルトヴェングラーは「私はジュネーブの湖(レマ
ン湖)の側に留まり、ここで死にたい」と漏らして
いたそうです。次第に難聴が進み、先が長くない、
と悟っていたようだ、との事でした。話は、バレン
ボイムとの最初の出合い、20年前に日本に来た時
の思い出、没後30年のフルトヴェングラー展、講
演会の事など、人の流れで、動きが取れなくなって
しまった事など、志鳥栄八郎氏の写った写真などを
見ながら本当に懐かしそうにお話されました。また、
お金のこともちらっとお話になられ、フルトヴェン
グラーはお金に全く興味がなかった。カラヤンとは
違って、とのことでした。
屋敷にはブレンダさんというイギリス人の極めてユ
ーモラスなお手伝いがおり、この方も生き生きとし
て一部で流れていた根も葉もない噂(二人とも目と
耳が悪くなって、手紙も電話も通じない)を勿論明
確に否定されました。
1
第3号
2004年5月発行
そうそう、お食事は5月の西ヨーロッパの最高の御
馳走、地元の生ハムを添えたフレッシュ・グリーン・
アスパラガスでした。当日はアメリカ・フルトヴェ
ングラー協会の会長デイド・ティエリオット氏(同
氏とも一昨年からずっと親しく交流してきていま
す)も同席し、フルトヴェングラー夫人のもとで、
それぞれ名誉会長を務めるアメリカ・日本の両団体
が一同に会するという歴史的な日となりました。デ
イドが初めて夫人を訪問したのは22歳の時、すな
わち1972年だったそうですから、私達も30年
前にほんのちょっとの勇気と勢いがあればそうなっ
ている可能性もあっただろうな、とちょっとうらや
ましく感じてしまいました。
(今、まだ若い方達、英
語かドイツ語を勉強すれば、そういうチャンスがあ
ります。
)
クラランを離れ、ハイデルベルクに到着したのは2
004年5月1日の午後、EU に新たに10カ国が加
盟した歴史的な日に、ハイデルベルクの
Bergfriedhof(山墓地)に墓参がかないました。筆
者は20年以上前に一度お参りした事があったので
すが、その時にはあったはずの標識はなくなってい
ましたので、記憶と先般墓参された YI 君の話を総合
しつつ探して辿り着きました。ハイデルベルクは美
しい町です。ネッカー川が悠々と流れる両岸に旧市
街とお城、大学、反対側に哲学の道をおき、中世の
面影を意識して残しています。
(但し、ドイツにはそ
ういうところがたーくさんありますが。)その旧市街
の教会の鐘の音の聞こえる墓地に我らの巨匠は眠っ
ています。ドイツに、ハイデルベルクにいかれたら、
是非立ち寄られる事をお勧めします。
(中村政行)
でしたが、その刊行前、RAI は 1959 年に、テープか
ら直接カッティングされた1面約 15 分の金属原盤
による、同じく1面約15分の LP レコード1セット
をエリーザベト・フルトヴェングラー夫人に寄贈し
ました。
今回の音源はその RAI によるオリジナルの LP から、
プロが最良の機器を使用して作製したコピー・テー
プです。一聴して分かりますが、このユニークなテ
ープの音は、現在発売されている他のいかなる LP・
CD よりはるかに自然であり、生々しいものです。
有名なフルトヴェングラーの重厚な低音(例えば、
変ホ長調の開始の和音)や、歌手とオーケストラの
壮麗なバランスをお聞き下さい。 原テープが LP
のコピーであるので、わずかなスクラッチ・ノイズ
が聞こえますが、それとてこのユニークな演奏の質
の高さをいささかも損なうものではありません。
(ヘ
ニング・スミット氏の解説から)
※写真右から Elisabeth 夫人、中村理事、鈴木理事
センター制作第2回新譜が完成!
1953 年ローマ
ヴァーグナー
大変お待たせいたしました。フルトヴェングラー・
センター制作の演奏資料第二弾が、DVD− ビデオ
とDVD− オーディオを一枚のDVDに収録した世
界初のハイブリッドDVD形式で完成いたしました。
曲目は 1953 年ローマ ヴァーグナー「ラインの黄
金」です。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラーは、1953 年 10
月 26 日から 11 月 27 日にかけて、イタリアのラジオ
RAI のために、ヴァーグナーの「ニーベルングの指
輪」全曲を録音しました。 各放送用のテープは、フ
ルトヴェングラー自身および RAI のサウンド・エン
ジニア Corrado Tutino が協力しながら、ゲネプロと
本番からの最良の部分を選びつつ完成されました。
フルトヴェングラーは EMI との4部作録音の契約を
残しながら、1954 年 11 月 30 日に亡くなりましたが、
その直後からこの RAI の指輪を公刊する努力がなさ
れました。EMI による RAI 指輪全曲の最初の公式リ
リースは、それから 18 年後の 1972 年になってから
2
フルトヴェングラー・センターはこの演奏を提供す
るにあたって、世界で初めての試みを敢行しました。
すなわちこの演奏を『1枚のハイブリッドDVD』
として提供する事としたのです。このDVD(1面
1層)には、全曲演奏が2種類、一つはDVDビデ
オ・フォーマット(サンプリング周波数48kHz,
量子化ビット数16ビット)及びDVDオーディ
オ・フォーマット(サンプリング周波数48kHz,
量子化ビット数24ビット)の両方が収録されてい
ます。ですから、どの DVD プレーヤーでも再生可能
ですし、SACD/DVD-A 再生可能なユニバーサル・プレ
ーヤーをお持ちの方は、これも世界で初めて、ハイ
スペックでフルトヴェングラーの演奏をお聞き頂く
事ができます。しかも、中断は一切ありません。音
はオリジナル・テープそのまま、本当にすごいです。
(画像は収録されていません。
) 指輪4部作の放送
は、一日に1幕ずつ放送されたのですが、このライ
ンの黄金だけは、一発勝負の生放送でした。ヴァル
キューレ以降の作品は、ゲネプロと本公演のテープ
をフルトヴェングラー自身の監修の元編集されたテ
ープによって行われましたので、この『ラインの黄
金』を中断なしで聴く事は大きな意味があるのです。
第3号
今回のDVD化にあたってセンターは、
『このかけが
えのない演奏を、演奏・生中継された時のまま一切
の中断なしで提供する』事が最重要な点と考えまし
た。スペックにつきましては全曲約160分超の演
奏時間の制約から、CDを超える規格は確保したも
のの、例えばDVD—
Aが提供する96kHz、24
ビットのような最高規格を採用する事は諦めました。
(それでも DVD 容量のギリギリ迄使い切りました)。
DVD化マスタリングにあたっては、前回WFHC−
001/2、WFHC−
003でその手腕を示された
キング関口台スタジオのマスタリング・グループの
グループ長である安藤明氏に依頼しました。氏は1
949年生まれ、オープンリールやLPの音とはど
ういうものかを熟知する耳を持ち、38cm2トラッ
クのオリジナル・テープの音をこれ以上ない形でデ
ジタル化・完璧に各テープの接続をする事に成功し
ました。センターはこのスリリングな演奏を、是非
中断なくお楽しみ下さる様願っております。
<お申し込み要領>
本DVD専用の郵便振込票によりお申込み下さい。
専用振込票は、本会報に同封しています(ただし、
2004 年 5 月 8 日現在入会の方まで同封)
。
この演奏は、これ迄 DG その他から発売されておりま
したが、残念ながら音質がこもった感じで、今一つ
満足感に欠ける憾みがありました。今回は DG とは異
なった音源が使用されているとのことで、テスト盤
を試聴した限りでは、音質は面目を一新しています。
交響曲『Symphony』の本源的な意味である『さまざ
まな色を持った響きが交り合う』さまがしっかりと
聞き取れる様になっており、フルトヴェングラーの
ブルックナー第9の唯一の録音であるこの演奏が、
良い音で生まれ変わったのは、大きな喜びと言える
でしょう。
1
価格:
郵便局振込日付が2004年5月31日迄
2
の期間限定割引価格:5400円
(ハイブリッド DVD1枚・送料込み)
発送は、5月25日以降、ご入金を確認してから7
日∼10日以内に発送いたします。なお、通常通り、
会員の個人所有を目的とした複数枚のお申し込みも
お受け致しますので、ご希望がある場合はその旨郵
便振込票にご記入いただき、ご送金下さい。
2004年5月発行
さい。
<ご案内>
SWF− 041 (CD1枚)
ブルックナー 交響曲第9番
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
演奏・録音 1944 年 10 月 7 日
ベートーヴェンザール(ベルリン)
価格
¥2300 送料込み、邦訳カードつき
会員個人所有に限り複数枚の申込ができます。
お申し込み要領
本CD専用の郵便振込票によりお申込み下さい。
専用振込票は、本会報に同封しています(ただ
し、2004 年 5 月 8 日現在入会の方まで同封)。
締切り日と納期
郵便局受付日が2004年 5 月31日までの分を以
って今回の募集は締め切ります。CD はフランスから
入荷次第、申込受付順に発送いたします。入荷予定
日は確定していませんが、早ければ5月下旬から入
荷予定です。入荷次第、発送いたします。なお、申
込数量が、入荷数量を超えた場合は、追加入荷まで、
お待ちいただくことになりますが、あらかじめご了
承下さい。
6月1日以降のお申込みの場合、価格は580
0円です。お申込みいただく場合、金額をお間
違えにならないようにお願い申し上げます。
1.
フランス協会が新譜CD「SWF−041」を頒布
フランス協会次回新譜CDの取次ぎ要領が決まりま
したのでご案内申し上げます。
このご案内はフルトヴェングラー・センターを通じ
てフランス協会に入会された『日仏共通メンバー』
に限定して行うサービスです。既に御自分で直接フ
ランス協会に加入しておられる皆様、及びフランス
協会に加入しておられないセンターの会員の皆様に
はお申し込み資格がありませんので、御注意下さい。
2.
また、
『日仏共通会員』の皆様は、このサービスによ
らず直接フランス協会へ申込することももちろん可
能です。申込要領は、フランス協会の次回会報、メ
ールでの連絡、およびホームページの中で、代金の
送金要領とともにいずれ説明されますのでご参照下
フランス協会に未入会のセンター会員の皆様
へ
今後もセンターによるフランス協会盤・書籍等
の購入取次は、センターを通してフランス協会
に加入された『日仏共通会員』に限定して行い
ます。センターのポリシーは、センター会員の
皆様に、直接海外協会の活動にも触れていただ
けるサポートをする事を念頭に置いています
ので、新譜のご案内、新譜・旧譜の購入取次ぎ
等に御興味のある方は、是非御加入される様お
勧め致します。
既に御自分でフランス協会に加入されておら
れるセンター会員の皆様へ
次回会費更新時などにセンターに御連絡下さ
れば、『日仏共通会員』として登録変更をする
方法もありますので、御検討下さい。
レコード・コンサートを開催しました
2004年4月11日(日)、東京・千石の沖ミュー
3
第3号
2004年5月発行
ジックサロンで、没後 50 周年記念 フルトヴェング
ラー・センター第1回レコード・コンサートを催行
しました。プログラムの内容はつぎの通りでした:
第1部
(1) このレコードコンサートについて
(2) ソ連盤発見から ユニコーン UNI まで
(3) 『フルトヴェングラーオデッセイ』
(4) ベルガーかブリームか
第2部
(1) レコード鑑賞 - ベートーヴェン/<第九>
(MK(USSR) 初出版 最初期アコード ГОСТ5
6 D-010851/54)
(2) レコード鑑賞 - バッハ/組曲第 3 番∼アリア
(独 Grammophon 66925~6)
お話と構成:
フルトヴェングラー・センター理事呼川秀邦(劉邦)
(『フルトヴェングラー劇場』支配人)
仏協会既発CD 取次ぎのご案内
∼仏協会々員へのお知らせ∼
当日の模様をビデオ収録致しました。地理的、日程
的などの理由で、当日ご参加いただけなかった皆様
方のために、研究資料として DVD-R に収録して提供
いたしますので、センターまで e-mail、郵便、ファ
ックスでお申込みください。 全体は約150分、
費用は2000円(DVD-R、参考資料+送料)です。
代金は、センターの入会金をお支払い頂いた口座:
本年 2 月に第 1 回目を行いましたところ、非常な反
響をいただきました。締め切り後にも多数の方から
申込やお問い合わせをいただきました。先般、第 1
回目にお申込みいただきました皆様へのお届けを完
了いたしましたので、引き続き 2 回目を行うことに
いたしました。
費用は第 1 回目と同じす。申込要領・代金支払い方
法もほぼ同じです。フランス協会々員の方へは、先
日、同協会々報が届いており、その中に同協会宛て
の申込書用紙が同封されていますので、その用紙に
ご記入いただきまして、フルトヴェングラー・セン
ターまで郵送下さい。5 月末日までにセンター到着
分を以って、締め切らせて頂きます。納品は7月中
旬∼下旬の予定ですが、大幅に変わる場合はご連絡
いたします。
(中島様・東様・横山様は既に申込書を
いただいていますので、内容に変更が無い場合は再
送付していただく必要はありません。
)
今回の申し込み対象はCDと書籍の 2 種類とさせて
頂きます。
書籍の取次ぎ価格は現時点では未定です。ご了承の
上、お申込みいただきますようお願い申し上げます。
なお、この取次ぎサービスによらず、直接皆様から
仏協会へ直接申し込む事ができます。
不明の点がありましたら、ご遠慮なくセンターまで
ご照会下さい。Eメールをご利用いただくのが便利
です。
郵便振替口座:
(加入者名)フルトヴェングラー・センター
(口座記号番号)00240− 9− 111630
(通信欄)
第1回レコード・コンサートDVD−R
1枚
第 2 回レコード・コンサートを開催します
シリーズの第2回を以下の要領で行いますので、お
時間の許す方は是非ご参加ください。
日時:
場所:
2004年5月23日〔日曜日〕
午後1時30分から4時30分まで
沖ミュージックサロン
東京都文京区千石1− 17− 6
都営三田線
千石駅下車
5分
℡03− 3943− 5128
テーマ: 1947年のベルリン復帰コンサート
曲目: ベートーヴェン作曲 交響曲第5番、第6
番、エグモント序曲
音源: チェトラ、及びDG初期LP盤
参加費用:
フルトヴェングラー・センター会報 第3号
発行日 2004年5月13日
発行人 フルトヴェングラー・センター
〒108-0073 東京都港区三田 2-18-9
電話 070-5229-7513 FAX 020-4664-6671
郵便振込口座 00240-9-111630
E-Mail [email protected]
URL furt-centre.com
フルトヴェングラー・センター会員
500円、一般1000円
なお、当日はエリーザベト夫人訪問の御報告ができ
る予定です。
続いて、6月は1943年6月結婚翌日の演奏会(ベ
ートーヴェンの交響曲第4,5番、コリオラン序曲)
などを予定しています。
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