海賊版削除の効果―電子書籍の場合 田中辰雄 Tatsuo TANAKA Keywords:著作権、海賊版、電子書籍、マンガ、ダウンロード 1 目的 本研究の目的は電子書籍を題材にして海賊版の効果を検証することである。いわゆる海賊版が売 上を減らすかどうかについては音楽を中心に研究が多く行われてきたが、電子書籍についての調査 は行われていない。電子書籍についてはさらに音楽より利用可能なデータが乏しいという不利な状 態にある。本研究はマンガというジャンルに絞り、電子書籍における海賊版の被害の状況を検証す る。 2 方法 本研究の調査方法は二つある。ひとつは海賊版サイトを利用する読者 1000 人へのアンケート調 査である。海賊版サイトの利用で正規版の購入が減ったかどうかを直接聞く形をとっている。もう ひとつは、電子書籍のダウンロードサイトへの継続調査である。2015 年 6 月より、継続的にマン ガのダウンロードサイトを調べてどのようなマンガがどれだけアップされているかを調べた。 3 結果 調査の結果、海賊版のダウンロードは正規版の売上を減らす効果と増やす効果の両方が確認出さ れた。海賊版は新刊書の売上を減らすが、既刊書の売上を増やす。前者は海賊版があれば正規版を 買わずに済ますという代替効果であり、後者は海賊版が宣伝効果を通じて売上を増やすという補完 効果である。ユーザアンケートでも両方の効果があることが確認された。 4 結論 海賊版に二つの効果があるなら。海賊版対策は対象を絞る必要がある。削除対象は新刊書の海賊 版に絞ることが賢明である。
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