2013 年の 中国企業の対外直接投資動向 2015 年 1 月 日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部 中国北アジア課 【免責条項】……………………………………………………………………………………………… 本調査レポートで提供している情報は、ご利用される方のご判断・責任においてご使用くださ い。ジェトロでは、できるだけ正確な情報の提供を心掛けておりますが、本調査レポートで提 供した内容に関連して、ご利用される方が不利益等を被る事態が生じたとしても、ジェトロ及 び執筆者は一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。 ……………………………………………………………………………………………………………… 禁無断転載 はじめに 中国企業の対外直接投資に向けた動きが年々活発化しています。2014 年 9 月に発表された 2013 年の中国の対外直接投資額(ネット、フロー)は、前年比 22.8%増の 1,078 億 4,371 万ドルと 過去最高を更新しました。 地域別ではアジア、中南米向けが牽引役となり、その一方で欧州が押し下げ要因となりました。 業種別では鉱業、金融などの寄与が目立った一方で、製造業はマイナスの寄与になりました。 こうした状況を踏まえ、本報告書では、中国の対外直接投資について、中国各地域の状況、 および投資の受け入れ先である各国・地域の状況について多面的に検証し、世界大で広がる中 国企業の対外展開の現状をレポートしております。 本報告書が日本企業をはじめとする方々のご参考になれば幸いです。 2015 年 1 月 日本貿易振興機構(ジェトロ) 海 外 調 査 部 . 2013 年の中国企業の対外直接投資動向 大連 北京● ● 青島● ●ソウル 武漢● ●東京 ●上海 広州● ●香港 <目次> 1.中国(香港、台湾を含む) 2 年続けて 2 桁の伸びを維持し過去最高を更新(中国) ............................ 1 上海市の 2 桁減が最大の押し下げ要因に(華東地域) .............................. 7 投資額は前年比 53.1%減と大幅落ち込み(遼寧省) .............................. 11 深センの急進が響き、伸び率が縮小(広東省) ................................... 13 北米・欧州地域向けの投資が急増(山東省) ..................................... 16 民営企業の国外進出が活発に(中部地域) ....................................... 18 重慶市が 34.6%の大幅減、四川省は微減(西部地域) ............................ 20 投資総額に占めるシェアは 6 割弱、国・地域別の首位を堅持(香港) ............... 22 大型案件を中心に投資額は過去最高(台湾) ....................................... 24 2.アジア・大洋州(日本、中国を除く) レジャー・観光分野に引き続き集中(韓国) ......................................... 28 対象はハイテク、エネルギー、不動産と多様化(シンガポール) ................... 31 中国からの投資は低迷続きも、自動車を中心に大幅増が確実(タイ) .................... 34 ハイテクやサービス産業など多角化する投資先(マレーシア) ..................... 37 鉱業分野が後退、投資先の業種に広がり(インドネシア) ......................... 41 今後農業分野が拡大する可能性も(フィリピン) ................................. 44 最大の新規投資は中国企業の石炭火力発電所建設案件(ベトナム) ................. 46 民政移管後はアパレルなど労働集約型産業に移行(ミャンマー) ........................ 49 縫製業への進出が活発、投資は急拡大(カンボジア) ................................. 51 大型案件なく前年比 4 割強の落ち込み(インド) ..................................... 53 国別 1 位に、援助の流れが企業進出を後押し(スリランカ) ............................ 55 通信分野が急拡大、国別で初の首位に(パキスタン) ................................. 58 EPZ への最大の投資国に(バングラデシュ) ..................................... 60 農業ビジネスや農地分野への増加が際立つ(オーストラリア) ..................... 63 3.北米 食品分野で過去最大の M&A が成立(米国) ...................................... 66 投資法の改正がブレーキとなり急減(カナダ) ................................... 70 4.中南米 自動車産業やインフラ分野への投資目立つ(ブラジル) ........................... 72 5.欧州・ロシア 大型投資が活発、経済協力も緊密化進む(英国) ................................. 75 投資額は低水準にとどまるも案件数は増加傾向に(ドイツ) ....................... 77 フランス企業買収でアフリカ事業拡大を狙う動きも(フランス) ................... 80 金融・不動産が伸び 20%弱拡大(ロシア) ...................................... 83 6.中東・アフリカ インフラ、エネルギー分野を軸に拡大(イラン) ................................. 86 金融や不動産部門での動き活発(アラブ首長国連邦) ............................. 88 インフラ事業や食品に大型投資が続く(イスラエル) ............................. 91 製造業や通信などへ投資分野の多様化進む(エジプト) ........................... 94 アルジェリアは対アフリカ投資で 2 位の存在感(アルジェリア) ................... 98 投資額は少ないものの関心高まる(モロッコ・チュニジア・モーリタニア) ........ 101 家電や自動車など多分野で投資が拡大(南アフリカ共和国) ...................... 105 7.日本 大幅回復した対日直接投資、残高も増加傾向(日本) ............................ 108 2 年続けて 2 桁の伸びを維持し過去最高を更新(中国) 2014 年 11 月 17 日 北京事務所 (宗金建志) 2013 年の中国の対外直接投資(非金融分野、ネット、フロー)は前年比 22.8%増の 1,078 億 4,371 万ドルと、過去最高を更新した。2002 年に統計を取り始めて以来増加が続いている。地域 別ではアジア、中南米向けが牽引役となる一方で、欧州向けのシェアは縮小した。業種別では 鉱業、金融などの寄与が目立ったが、製造業は押し下げ要因となった。こうした中国企業の動向 を、中国各地と投資受け入れ先の国・地域から報告する。 <2 年連続して世界のベスト 3 入り> 中国の商務部、国家統計局、国家外貨管理局は 9 月 9 日、合同で「2013 年度中国対外直接投 資統計公報」を発表した。2013 年の中国の対外直接投資(ネット、フロー)は前年比 22.8%増の 1,078 億 4,371 万ドルとなった。2002 年の統計開始以来、増加が続いており、2013 年も過去最高 を更新した。同統計公報では 2013 年の対外投資の特徴として、以下の 7 点を挙げている。 (1)2013 年の世界の対外直接投資が前年比 1.4%増となった中、中国の対外投資は前年比 22.8%増の 1,078 億ドルと過去最高を更新し、2 年連続で世界ベスト 3 に入った。 (2)2013 年末時点で、中国の 1 万 5,300 の投資主体が外国で 2 万 5,400 社の企業を設立、その 範囲は前年より 5 ヵ所増え、184 ヵ国・地域に及んだ。2013 年末、中国の対外直接投資(ストック) は 6,605 億ドルで、世界順位は前年の 13 位から 11 位に上昇した。 (3)2013 年の欧州への投資が 15.4%減の 60 億ドルとなった一方、中南米、大洋州、アフリカ、ア ジアがそれぞれ 2.3 倍、51.6%増、33.9%増、16.7%増と順調に拡大した。北米への投資は 0.4% の微増になった。 (4)2013 年末時点で中国の対外直接投資は全ての業界に及ぶ一方、リース・ビジネスサービス 業、金融業、鉱業、卸・小売業、製造業の 5 大産業の投資ストックは 5,486 億ドルに達し、全対外 投資ストックの 83.0%を占め、2013 年投資フローでもシェア 8 割を上回った。 (5)2013 年の中国企業による M&A は件数で 424 件、金額は 529 億ドル、うち直接投資は 338 億ドルで 63.9%を占め、融資は 191 億ドルで 36.1%を占めた。M&A の分野は大業種分類で鉱 業、製造業、不動産業など 16 に及んだ。中国海洋石油(CNOOC)がカナダの石油開発大手ネク センの株式の 100%を取得したプロジェクトが、中国企業の国外 M&A での過去最高額となっ た。 (6)2013 年の地方企業の非金融分野への対外直接投資(フロー)は 6.5%増の 364 億ドルで、全 体の 39.3%のシェアを占め、広東省、山東省、北京市がトップ 3 となった。2013 年末時点で地方 企業の非金融分野対外直接投資(ストック)は 1,649 億ドルで全体の 30.3%となり、初めて 3 割を 突破した。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved 1 (7)2013 年末時点で、非金融分野対外直接投資(ストック)5,434 億ドルのうち、国有企業が 55.2%、非国有企業は 44.8%を占め、非国有企業のシェアが前年より 4.6 ポイント拡大した。2013 年の非金融分野対外直接投資(フロー)の 927 億ドルのうち、国有企業が 43.9%、有限責任公司 (有限責任会社)が 42.2%、股●(にんべんに分)有限公司(株式有限会社)が 6.2%、股●合作 企業(株式合作企業)が 2.2%、私営企業が 2.0%、外商投資企業が 1.3%、その他が 2.2%を占 めた。 (8)2013 年の中国の非金融分野国外企業(中国語で「境外企業」)が実現した販売収入は 14.5%増の 1 兆 4,268 億ドル、投資先で納めた租税は 67.0%増の 370 億ドルとなった。年末時点 の国外企業就業者数は 196 万 7,000 人に達した。うち、外国人を 96 万 7,000 人直接雇用したほ か、先進国では 10 万 2,000 人を雇用した。 <中南米向けが 2.3 倍に拡大> 対外直接投資(フロー)を主要地域別にみると、シェア最大のアジアへの投資は 2012 年(前年 比 42.4%増)に続き 2 桁の伸びを維持したが、シェアは 70.1%と前年に比べ 3.7 ポイント縮小した (表 1 参照)。 その他、中南米向けも 2.3 倍に増え、シェアは 13.3%と 6.3 ポイント上昇した。アフリカ(33.9% 増)、大洋州(51.6%増)、北米(0.4%増)も増加した。一方、欧州だけが 15.4%減少し、シェアが 2.5 ポイント縮小した。 2013 年の伸び(前年比 22.8%増)への寄与度をみると、アジアが 12.3 ポイント、中南米が 9.3 ポイントと目立った。一方、欧州は 1.2 ポイントのマイナスで唯一の押し下げ要因となった。 <製造業が最大の押し下げ要因に> 対外直接投資(フロー)を業種別にみると、2013 年の構成比は依然としてリース・ビジネスサー ビス業の 25.1%が最大だったが、前年比は 1.2%増で全体の伸びを下回り、シェアの低下が続い ている(表 2 参照)。これに鉱業(23.0%)、金融(14.0%)、卸・小売り(13.6%)が続いた。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 2 2013 年の伸び(22.8%増)への寄与度をみると、鉱業が最も大きく 12.8 ポイントとなり、金融(5.7 ポイント)、不動産(2.2 ポイント)、卸・小売り(1.8 ポイント)が続いた。製造業はマイナス 1.7 ポイン トで最大の押し下げ要因となった。 <依然圧倒的存在の中央国有企業> 投資額(非金融分野)を地域別にみると、「中央合計」が 563 億 2,449 万ドルで、「地方合計」の 364 億 1,489 万ドルを上回った(表 3 参照)。もっとも以前から、中国の対外投資の過半を占める のは、地方ではなく中央が実施するものだ。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 3 長期的にみると「中央合計」は 2004 年の 45 億 2,517 万ドルに対し、2013 年は 563 億 2,449 万 ドルと約 13 倍に増加しているものの、直接投資総額に占めるシェアは 2006 年の 86.4%をピーク Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 4 に低下傾向にある(図参照)。 なお、2013 年に地方で最も投資が多かったのは広東省で、前年比 12.4%増の 59 億 4,288 万ド ルとなった。2 位は山東省で 23.4%増の 42 億 6,472 万ドル、3 位は北京市で 2.4 倍強の 41 億 3,010 万ドルとなった。 個別企業の対外直接投資については、ストックのみランキングが発表されており、上位は中央 国有企業で占められている(表 4 参照)。なお中央国有企業とは、国務院国有資産監督管理委 員会(以下、国資委)や銀行監督管理員会、保険監督管理委員会など国務院のその他部署に直 属する国有企業を指す。 中央国有企業のうち国資委直属が 113 社ある。対外直接投資額(非金融分野、2013 年末スト ックベース)トップ 100 社をみると、53 社は国資委直属の中央国有企業だ。トップ 20 社についても、 12 位の広東省深センに本社を置く通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ、2013 年は 24 位)、 15 位の中国中信集団(CITIC)以外は国資委直属の中央国有企業だ(CITIC も中央国有企業だ が、財政部直属)。対外投資において中央国有企業の存在は圧倒的といえる。 このほか、中央国有企業以外では、広東省政府直属の国有企業である広東粤海控股(主要業 務はインフラ建設)が 23 位に、航空・旅行・物流などを幅広く手掛ける海航集団が 27 位に、石炭 大手で山東省政府直属の国有企業である●(六の下に允)鉱集団の持ち株会社の●州煤業が Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 5 28 位にランクインした。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 6 上海市の 2 桁減が最大の押し下げ要因に(華東地域) 2014 年 11 月 18 日 上海事務所 (余慧玲) 2013 年の華東地域(上海市、江蘇省、浙江省)の対外直接投資(非金融分野、ネット、フロー) は、前年比 6.3%減の 82 億 4,801 万ドルとなった。中でも上海市は前年比 19.3%減の 26 億 7,524 万ドルと同地域の最大の押し下げ要因となった。浙江省は 8.2%伸びたものの、2012 年の 27.4%増と比べ、伸び率は大きく鈍化した。 <華東地域全体:前年比 6.3%の減少> 中国の商務部、国家統計局、国家外貨管理局の共同発表(9 月 9 日)によると、2013 年の上海 市の対外直接投資は前年比 19.3%減の 26 億 7,524 万ドルとなった(表 1 参照)。2009 年からの 2 桁台の増加から一転して 2 桁台の減少に転じた。江蘇省も 3.5%減の 30 億 2,001 万ドルと前年 までの増加傾向から減少に転じ、上海市と江蘇省の減少が華東地域の投資額を押し下げた。一 方で、浙江省は 8.2%増の 25 億 5,276 万ドルと、好調だった 2012 年(27.4%増)から伸び幅が大 きく縮小した。このため、2013 年は華東地域全体も 6.3%減の 82 億 4,801 万ドルとなった。 対外直接投資を地域別にみると、華東地域は「地方合計」(前年比 6.5%増の 364 億 1,489 万ド ル)の 2 割以上を占めた。このうち、全国の各省・市別のランキングで江蘇省は 4 位、上海市は 5 位、浙江省は 6 位となった(表 2 参照)。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 7 <上海市:対外直接投資先が先進国に移行> 上海市の 2013 年の直接投資について同市商務委員会の孔福安氏は、上海市の企業は 1999 年からの 5 年間、金融危機の発生・拡大を背景として、先進国における資産購入の縮小、元高・ ドル安、欧米などの対中国投資需要の上昇などの機会を捉え、対外投資を年々加速させ、以下 の 4 つの変化を実現したという。 (1)対外直接投資の相手国が途上国から先進国に移行 (2)投資領域が伝統的な貿易、製造業からサービス業へ移行 (3)投資方式が新規投資から買収・合弁、増資へ移行 (4)国有企業一辺倒だった投資主体が多様化 2013 年の個別投資案件としては、自動車部品メーカー華域汽車系統の子会社に内装品事業 を譲渡すると、米国同業のジョンソン・コントロールズ(JC)が 5 月に発表した。また、発光ダイオ ード(LED)を製造する三安光電は 6 月、米国同業のルミナス・デバイセズの全株式を買収すると 発表した。買収額は 2,200 万ドルで、LED の生産技術力を高める狙いがある。同社は今後、LED メーカーなどと提携して研究開発を進める予定だ。不動産大手の上海緑地集団は 7 月、米国ロ サンゼルスで、サービスアパートメントなどを含む複合施設を建設すると発表した。緑地集団が 米国で不動産開発を手掛けるのは初めて。さらに、メディア・エンターテインメント事業を手掛ける 上海東方明珠は 10 月、米国ゲーム開発企業 Red 5 Studios の株式 20.01%を取得すると発表し た。取得額は 2,400 万ドルで、ゲーム事業に参入し収益拡大を狙う。 日本においては、華東地域最大の電力会社である上海電力が 9 月、東京都に全額出資子会 社「上海電力日本」を設立すると発表した。資本金は 7 億 7,000 万円で、新エネルギー事業を展 開する見込み。 ニュージーランドでは、不動産デベロッパーの上海中房置業が 11 月、同国のリゾート不動産を Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 8 買収した。中国企業が同国のリゾートを購入するのは初めて。同社は今後、数百万元を投じて同 地の開発に着手する計画だ。 <江蘇省:対外直接投資による企業設立数は全国 3 位> 2013 年末までに中国の地方企業の直接投資で設立された企業は 2 万 970 社に達したが、この うち、江蘇省の企業が設立した会社数は広東省、浙江省に次ぎ、全国 3 位に入った(図参照)。 2013 年の個別投資案件としては、アスファルトメーカーの江蘇宝利●(さんずいにがんだれに 力)青が 8 月、カナダの資源開発会社アンテラ・エナジー(Anterra Energy)の株式 17.4%を取得 すると発表した。同社の狙いは出資を通じてアスファルトの原材料となる石油の供給を確保する ほか、海外工場建設の足掛かりとすることだ。また、老舗電動工具メーカーの南京泉峰は 11 月、 ドイツの同業フレックスの全株式を買収したと発表した。フレックス製品の販売拡大や研究開発 に資金を投じる見通し。 エネルギー業では、太陽電池メーカーの江蘇中利電子信息科技が 5 月、環境事業などを手掛 けるイースタジアグループ(東京都港区)と再生エネルギー事業の福山(港区)の 2 社と共同で、 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 9 日本に太陽光発電所を建設すると発表した。2013~2015 年に計 800 メガワット(MW)の太陽光発 電所を建設する計画だ。 <浙江省:卸・小売業が 21.7 倍に、採鉱業もほぼ倍増> 2013 年の浙江省の対外直接投資は、卸・小売業、ビジネスサービス業、採鉱業、製造業など の 14 業種が主で、このうち卸・小売業、ビジネスサービス業、採鉱業の対外直接投資額が前年 比 21.7 倍、21.2 倍、91.8%増と大きく伸びた。 対外直接投資を主要地域別にみると、シェア最大のアジア伝統市場への投資は前年比 46.4% 増となった。その他、欧州、北米向けも活発で、伸び率は前年比 25.5%増、1.5 倍となった。南米 (87.2%増)、大洋州(25.1%増)も増加したが、アフリカは 23.3%減少した。浙江省の対外直接投 資は 141 ヵ国・地域に及び、主に香港、米国、スイス、ドイツに集中しているという。 2013 年の個別投資案件としては、発電設備メーカーの浙江富春江水電設備が 8 月、カナダで 油田開発を手掛ける全額出資子会社を設立すると発表した。新会社は油田開発のカナダ企業レ コ・エナジー(Reco Energy)と提携し、両社はカナダ・アルバータ州の油田を買収する計画。 製造業では、自動車メーカーの吉利汽車が 2 月、スウェーデンのイエーテボリに研究開発拠点 を設立すると発表した。同社は今後、ブラジルに完成車工場を建設し、ブラジル南部と東南部に 販売店を 20 開設する計画もあるという。また、自動車部品大手の万向集団は 3 月、同業大手の 米国 BPI を買収、2013 年に買収した国外企業は、リチウムイオン電池メーカーの米国 A 123 シ ステムズに続く 2 社目となった。 紡績業では、浙江科爾集団が 2013 年 12 月、中国の同業界で初めて米国に工場を設けた。投 資額は 2 億 1,800 万ドル、工場は延床面積約 15 万平方メートルで、このうち 1 期工場は 4 万平 方メートル、年間生産量は綿糸 7 万トン。年間生産量は工場全体が竣工(しゅんこう)すれば 15 万トンとなる予定。また、縫製大手の申洲国際集団は 5 月、ベトナムにニット製品や生地の生産 工場を設けると発表した。土地面積は約 83 万 8,300 平方メートル。稼働後、生産能力は 5 万 5,000 トンに達する見通しだ。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 10 投資額は前年比 53.1%減と大幅落ち込み(遼寧省) 2014 年 11 月 19 日 大連事務所 (高山博) 2013 年の遼寧省の対外直接投資(非金融分野、ネット、フロー)は、件数こそ 2012 年と同水準 だったが、投資額は前年比 53.1%減の 12 億 9,499 万ドルと大幅に落ち込んだ。これは 2012 年 に大型 M&A 案件があったことの反動とみられる。また吉林省は大型 M&A 案件により、2013 年は前年比 2.5 倍の 7 億 5,240 万ドルと過去最高額となった。 <遼寧省:前年の大型 M&A の反動で投資額は半減> 東北 3 省の対外直接投資の金額、件数は表のとおり。このうち、遼寧省の 2013 年の対外直接 投資額が大幅に減少した要因は、2012 年に不動産大手の大連万達集団(以下、万達)が米国 の大手映画館チェーンを約 12 億ドルで買収した大型 M&A 案件による反動とみられる。しかし、 投資分野が商業不動産、造船、送電・変電設備、非鉄金属採鉱、水産養殖、木材加工業など多 岐にわたった結果、省レベル別では上海市や浙江省などに次ぐ全国 8 位となった。 2013 年の案件別にみると、前年に続き目立ったのが万達だ。傘下の大連万達商業地産は、英 国の再開発プロジェクト「One Nine Elms」に 8 億 3,600 万ドルを投じ、高層住宅と最高級ホテルを 建設する。ロンドンの不動産市場は透明性が高く、ランドマーク的な建築物や新たに開発される 土地も多いため、中国から多くの資金が流入している。そのほか万達は、英国最大のヨットメー カーであるサンシーカー・インターナショナルを 5 億 5,000 万ドルで買収した。サンシーカー製のヨ ットは映画「007」シリーズにも登場するなど有名ブランドだ。万達は 2014 年、スペインの首都マド リードの代表的な建物「スペインビル」を 2 億 6,500 万ユーロで買収、高級ホテルの建設など大規 模な再開発を行う計画。欧州で投資統括会社を設立している。 <大連市:資源輸入の拡大を後押しする投資も> 2013 年の大連市の対外直接投資は件数が前年比 7.0%増の 76 件、金額が前年比 48.6%減の 10 億 4,450 万ドルだった。同市の投資件数は遼寧省の 43.7%、金額は 80.7%を占めた。 大連市対外貿易経済合作局によると、中国東北部の企業は広東省広州市や上海市など南方 の企業よりも保守的で、投資受け入れ制度が整備され、進出が比較的容易とされる欧米などの Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 11 成熟市場へ進出する傾向がある。また、子女の教育や将来を考慮して、欧米に投資する小規模 民間企業も多く、2013 年の大連市内の企業の投資先は、香港を除くと約 6 割が欧米だという。 大連市の民間企業の対外直接投資の事例として、ドリルなど切削工具メーカー大手の大連遠 東工具は、米国に切削工具の材料となる非鉄金属を回収・リサイクルする技術の導入を目的と した法人を設立した。新興国の経済成長に伴い、自動車や電化製品などが普及し、非鉄金属の 需要が高まることを見越した戦略だ。また、2016 年のリオデジャネイロ五輪に向けてインフラ整 備が進むブラジルやシェールガス開発が進むカナダなどでの拡販を目指し、切削工具の販売会 社を設立した。 また、国有エンジニアリング企業の大連国際経済技術合作集団は、ケニア、タンザニア、スリラ ンカ、ヨルダンなどで道路や橋などの土木工事を行うエンジニアリング企業を設立した。中国政 府の対外直接投資を推進する政策に基づいて、開発援助というかたちで道路などのインフラ整 備を進め、石油、天然ガス、鉱物など資源輸入の拡大を後押しした投資だ。 大連市対外経済貿易合作局によると、大連市の企業は日本市場を比較的よく理解しており、 日本を投資先に選ぶ企業も多い。2013 年の大連市からの対日投資案件は 5 件で、うち製造業 の 3 件は、鋳物・金型の製造、非鉄金属の表面加工、プラスチック成形などのメーカーだった。 <吉林省:自動車部品の大型 M&A で 2.5 倍に急増> 吉林省の 2013 年の対外直接投資は、車載電装部品メーカーが 2 億 7,000 万ドルでドイツ企業 を買収した大型 M&A 案件に牽引され、前年比 2.5 倍の 7 億 5,240 万ドルと過去最高額となった。 件数は 36.8%増の 52 件だった。投資分野は農業、不動産、鉱業、自動車部品、建材、食品など だった。同省は一汽トヨタをはじめとした自動車関連産業が集積していることから、自動車関連 の投資も増加している。 投資事例をみると、中国国内で「最も創造力を持つ海外進出企業トップ 50」に選出された車載 電装部品メーカーの遼源均勝電子は、コントロールシステムやセンサー、電子制御ユニットなど を開発・生産するドイツのプレー(Preh)を 2 億 7,000 万ドルで買収した。プレーはベンツ、アウディ、 BMW、ゼネラルモーターズ(GM)、フォードなどの高級車メーカーを主要顧客に抱え、次世代自 動車に用いられるスマート空調システムや蓄電池などの研究・開発を行っている。 また、吉林省西部は北朝鮮と国境を接しており、延辺朝鮮族自治州などには朝鮮族が多く居 住していることから、北朝鮮向けの投資案件もみられる。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 12 深センの急進が響き、伸び率が縮小(広東省) 2014 年 11 月 20 日 広州事務所(粕谷修司、河野円洋) 2013 年の広東省の対外直接投資(非金融分野、ネット、フロー)は、実行、契約ベースともに増 加したものの、省全体の 5 割を占める深セン市の投資が減少したため、伸び率は低下した。広 東省企業の対外直接投資の約 6 割が香港向けだが、最近は ASEAN のほか、東欧やアフリカな どへも進出先が広がっている。 <省全体の投資額は 2 桁増を維持> 2013 年の広東省の対外直接投資額(実行ベース)は、前年比 12.4%増の 59 億 4,288 万ドルだ った(表 1 参照)。伸び率が縮小した結果、中国全体に占める広東省のシェアは 6.4%と前年 (6.8%)より若干低下した。契約ベースでは、50%近い伸び率を記録した 2011 年、2012 年より縮 小したものの、20.8%増の 52 億 4,000 万ドルと 2 桁の増加となった。今後の実行額に反映されて いくとみられる。 深セン市の対外直接投資額は 2012 年、2013 年と、広東省全体の 5 割以上のシェアを占めてい る(表 2 参照)。2012 年の投資額は前年の約 3 倍に急増したが、2013 年は前年比 10.7%減の 30 億 814 万ドルと減少に転じた。この減少が広東省全体の伸び率の低下に影響した。 他方、2014 年 2 月 3 日の新華網によると、2013 年に深セン市政府から対外投資の承認を得た 約 700 社の投資先は 45 ヵ国・地域に及び、バイオテクノロジー、医療、電子、通信などの研究・ 開発プロジェクト(再投資を含む)が 143 件、4 億 8,800 万ドルだった。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 13 <省内企業の対外進出に財政支援も> 広東省は 2007 年に発表した「『走出去(対外投資)』戦略の実施の加速に関する若干の意見」 を受け、商務庁など 11 部門で構成される「『走出去』戦略合同会議制度」を立ち上げ、省内企業 が対外投資の際に直面する課題の解決を支援している。また、投資企業に対する行政手続きの 簡素化を図るほか、2007 年から国外の生産拠点や販売網の構築と資源開発企業を支援するた め、毎年 3,000 万元(約 5 億 7,000 万円、1 元=約 19 円)の補助金を拠出するなど財政的な支援 も行っている。 また広東省商務庁は、英国やスペインなどの投資誘致説明会を開催するほか、香港貿易発展 局と共催で香港を起点に国外展開する企業を対象に、香港で投資に向けた実務研修も実施して いる。同研修は企業設立、税務・会計、国外市場でのブランド戦略などに関するもので、15 回目 となる 2013 年の研修には 39 人の企業代表が参加した。 <投資先は香港などアジアが主体> 広東省商務庁によると、2012 年末までの累計で省内 4,290 社が 100 を超す国・地域で現地法 人を設立した。地域別ではアジアへの投資が多く、うち香港が約 6 割を占める。香港向け投資は、 情報収集、融資を目的とした貿易会社や持ち株会社の設立が多く、香港を起点に第三国地域へ 進出する事例が多い。ASEAN 向け投資は、製造業のほか発電、高速道路の建設などインフラ関 連の投資が中心となっている。一方、欧米向け投資は科学技術関連の M&A が多い。日本向け 投資は累計で 23 社、金額も 3,700 万ドルにとどまり、貿易会社のほか、医薬、通信、水産養殖関 連の駐在員事務所の設立が主となっている。 広東省国有資産管理委員会が発行した報告書「広東対外投資新機遇-海外 M&A」によると、 省内の上場企業による国外での M&A 案件は、2008 年から 2012 年上半期にかけて 42 件だっ た。業種別では、金融が 25%余りを占め、鉱業、インターネット、食品・飲料の順となっている。地 域別では、香港をはじめとするアジアが 41%と最も多く、次いでアフリカ(17%)、北米(14%)、オ セアニア(14%)、欧州(12%)、南米(2%)の順だった。同報告書はアジアでの案件が多い理由 について、ASEAN と広東省との間で経済的な補完性があることや、歴史・文化的な近接性があ る点を挙げている。 <ポーランドやウガンダにも進出の動き> 商務部、国家統計局、国家外資管理局が合同で発表した「2013 年度中国対外直接投資統計 公報」によると、同年末時点での対外投資額(ストック)でみた中国の多国籍企業上位 100 社に は、広東省から華為技術(ファーウェイ、12 位、通信機器)、広東粤海(23 位、不動産・インフラな ど)、深業集団(51 位、同)、中興通迅(ZTE、52 位、通信機器)など複数の企業がランクインして いる。 例えば、華為技術は 2011 年以降 3 年間、ニュージーランドで 1 億 3,900 万ニュージーランド・ド ル(約 129 億 2,700 万円、NZ ドル、1NZ ドル=約 93 円)を投資し、同国のブロードバンドの主要 プロバイダーに選出されている。2013 年には同国の超高速データ通信(4G-LTE)の構築プロジ Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 14 ェクトに参入した。このほか、同社は 2013 年に今後 5 年間で英国に 13 億ポンド(約 2,418 億円、 1 ポンド=約 186 円)の投資を行うと発表し、同年 8 月にはロンドンに全世界での財務運用を管理 するリスク管理センターを設置した。 紙巻きたばこの「双喜」ブランドで知られる広東中煙工業は 2013 年 8 月、香港において英国の ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・チャイナなどとの合弁で、中煙英美国際を設立した。同社を起 点に、2016 年までにロシア、ベトナム、カナダ、日本など 21 ヵ国でシェアの獲得を目指す。 不動産開発などを行う聖地集団は 2014 年 6 月、ポーランドにおいてアパレルの展示・輸出・卸 売りセンターを運営する PTAK と、革製品を扱う中国聖地獅嶺皮具城を設立した。ポーランド進 出を決めた理由について同社の林俊董事長は、同国の地理的重要性に着目したという。 また、有機肥料などを生産する広州東送能源集団は 2014 年 8 月、ウガンダにおいてリン酸岩 の総合開発プロジェクトに着手した。同プロジェクト稼働後、化学肥料は年産 30 万トン、レアアー スは 10 万トンに達する見込み。 <日本への投資は 4 件にとどまる> 広東省商務庁によると、2013 年の省内企業による対日投資は 4 件で、2012 年の 5 件から 1 件 減少、金額は 99 万ドルにとどまった。4 件のうち新規投資は 3 件、再投資が 1 件だった。減少し た要因として、同庁公平貿易局の余金富局長は「広東省企業にとって、日本は生産拠点として はコストが高く、メリットがあまりないこと」を一因に挙げた。 個別の案件をみると、2013 年 1 月、通信機器・端末の開発と生産を行う中興通訊の子会社で ある中興昆騰が日本法人の ZTE Quantum Japan を設立した。同社は太陽光発電システムなど 新エネルギーに関する設備の製造・販売・研究開発などを行う。 また 2013 年 8 月には、華為技術の日本拠点であるファーウェイ・ジャパンが東京都内の 2 ヵ所 に分散していた研究開発拠点を、横浜市に集約すると発表した。その理由として、同市には既存 サプライヤーを含む多くの情報通信技術(ICT)企業が集積していること、国内各地のパートナー 企業との交流の利便性を挙げている。今回の集約は同市の「企業立地促進条例」に基づく支援 制度の認定を受けており、法人税と市民税相当額の助成金が 3 年間交付される。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 15 北米・欧州地域向けの投資が急増(山東省) 2014 年 11 月 21 日 青島事務所(蘭海岩、山本諭) 2013 年の山東省企業による対外直接投資(契約ベース、非金融分野、以下同じ)は、件数が 前年比 22.7%増の 443 件、金額が 23.1%増の 45 億 1,200 万ドルだった。特に、北米・欧州向け の投資額が前年の 3 倍以上に急増した。金額では、中国の省・直轄市・自治区別で、広東省に 次ぐ 2 位を維持した。 <年間約 8 億~9 億ドルペースで堅調に増加> 山東省商務局の発表によると、2013 年の山東省企業の対外直接投資は、件数が前年比 22.7%増、金額が 23.1%増だった(表 1 参照)。金額の伸び率は以前に比べ緩やかになっている ものの、ここ数年の増加額は年間約 8 億~9 億ドルのペースで、堅調に増加している。 2013 年の投資先は 2012 年と比較して 7 ヵ国増加し、合計 82 ヵ国・地域となった。威海建設集 団が 500 万ドルを出資してイラクで設立した 100%出資企業が山東省として初の対イラク投資案 件となった。投資額の地域別シェアは、アジア向けが依然として 5 割以上(54.5%)を占め、続い て北米(13.5%)、欧州(9.8%)となっている(表 2 参照)。北米、欧州向けの投資は、投資総額に 占める割合こそ低いものの、前年の 3 倍以上に急増した。その案件例として、青島聖元栄養食 品のフランスでのミルク加工工場の建設が挙げられる。中国では、2008 年のメラミン混入事件の 発生により、国産粉ミルクの安全性に対する不信感が高まり、外国企業が中国市場への攻勢を 強める中、同社は 1 億 125 万ドルを投じ、年間生産量 10 万トンの粉ミルク加工工場をフランスに 建設することにした。フランス産原乳を用い、EU の厳格な基準の下、高品質な粉ミルクを現地生 産し、中国市場に投入する。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 16 <家電大手が欧州・アフリカへ大型投資> 産業別にみると、製造拠点の移転による投資が投資総額の 37.2%を占めた(表 3 参照)。とり わけ青島市に本社を置く家電大手のハイアール(海爾)とハイセンス(海信)の動きが活発だ。こ れまでハイアールは、ドイツで研究開発センター、フランスで販売本部、イタリアで工場を設立し、 欧州での事業体制を整備してきた。2013 年には欧州の家電大手ファゴール(Fagor)と提携し 5,600 万ユーロを出資し(持ち株比率:ハイアール 51%、ファゴール 49%)、ポーランドに冷蔵庫 製造工場を設立した。また、ハイセンスは、南アフリカ共和国にアフリカ最大の家電生産基地と なる家電工業園(敷地面積 10 万平方メートル)を設立し、2014 年 6 月に正式に稼働を開始した。 これまで産業別分類として統計に表れていなかった不動産部門の対外直接投資は、2013 年に 初めてそのデータが発表され、不動産部門が投資全体に占める割合は 5.1%となった。この背景 には中国の富裕層による外国での不動産購入のニーズの高まりや、国内の不動産市場の低迷 によるリスクを避けるために新たな投資先を国外に求めたことがある。具体的には山東省南部 の済寧市にある寧建建設集団によるルーマニアでの住宅投資、ロシア、オーストリア、バングラ デシュでの建設工事の請負が挙げられる。 2013 年の対日投資としては、●(さんずいに維)坊市の歌璽声学(GoerTek)が、香港の歌璽泰 克の名義で 9,950 万円を出資し、エコ・トラスト・ジャパンの持ち株の 74.81%を買収した案件があ る。エコ・トラスト・ジャパンは発光ダイオード(LED)照明を取り扱う会社で、LED 照明関連の知的 財産権および販売ネットワークを持っている強みがある。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 17 民営企業の国外進出が活発に(中部地域) 2014 年 11 月 25 日 武漢事務所(中嶌克彦、熊雲) 2013 年の中部地域の対外直接投資額(非金融分野、実行ベース)は、湖北省が前年比 4.6% 増の 5 億 2,011 万ドル、江西省が 2.1%増の 3 億 8,091 万ドル、河南省が 72.8%増の 5 億 8,971 万ドルと増加する一方、湖南省は 42.7%減の 5 億 6,970 万ドルとなった。2013 年は投資相手国・ 地域と投資分野の拡大、民営企業の積極的な国外進出が目立った。 <湖北省:アフリカにも積極投資> 商務部などによると、2013 年の湖北省の対外直接投資額は前年比 4.6%増の 5 億 2,011 万ド ルだった(表参照)。 湖北省商務庁によると、2013 年に認可された新規投資は 70 件で、うち 40 件がアジア向けだっ た。累計では約 450 件で、投資先は 70 ヵ国・地域。業種は農業、製造業、交通・物流、住宅、鉱 業など多様だ。投資事例として、湖北禾豊粮油集団がモザンビークでコメやサトウキビ、綿花の 生産・販売を行うために投資し、耕地面積は合計 600 ヘクタールに及ぶ。安●(王へんに其)酵 母はエジプトで年間 1,500 トン規模の酵母原料を生産するために、7,500 万ドルを投資した。 湖北省の企業の対外直接投資は近年増加しており、中でも民営企業の投資が目立つ。2013 年の対外直接投資案件の中で、民営企業は 53 社に達したという。 <湖南省:投資先・業種が多様化> 商務部などによると、2013 年の湖南省の対外直接投資額は前年比 42.7%減の 5 億 6,970 万ド ルだった。減少の理由は、2012 年に大型建機メーカーの三一重工がドイツのプツマイスターを買 収した大規模案件の反動によるものだ。 湖南省商務庁によると、2013 年に認可された新規投資は 168 件だった。特徴として、まず投資 先国・地域の拡大が挙げられる。ルクセンブルク、スイス、韓国、ペルー、セルビアなどに広がっ た。また、業種の多様化も挙げられる。その事例として、岳陽科立孚はスイスに高級樹脂合成材 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 18 料の研究開発拠点を設立するために 850 万ドルを投資。湖南爾康製薬はミャンマーの薬用補助 原料の生産拠点設立に 5,000 万ドルを投資した。さらに、民営企業による投資の増加が挙げられ る。その事例としては、湖南国旺によるラオスでのゴム産業園開発、●(米の下に女)底宏誼に よるベトナムでの鉱物開発などを挙げている。 <江西省:鉱物資源開発に加え製造業も好調> 商務部などによると、2013 年の江西省の対外直接投資額は前年比 2.1%増の 3 億 8,091 万ド ルに増加した。同省の投資額全体に占める投資先地域別のシェアは、アフリカが 51.8%、アジア が 19.6%、オセアニアが 14.2%、北米が 8.2%だった。アフリカ向け投資はエチオピア、ケニア、タ ンザニア、南アフリカ共和国など 14 ヵ国、アジア向けはブルネイを除く ASEAN 加盟国に対して投 資協力業務を展開した。 江西省商務庁によると、2013 年の新規投資は 73 件だった。特徴として、鉱物資源開発の勢い が止まらなかったこと、農業部門の投資件数が前年から 4 件増えて 6 件になったこと、ゴムや靴 加工などの製造業が 7 件増の 10 件になったこと、民営企業によるものが 60 件で全体の 82%を 占め、シェアが高まったことを挙げている。 <河南省:買収案件を中心に投資額が急増> 商務部などによると、2013 年の河南省の対外直接投資額は前年比 72.8%増の 5 億 8,971 万ド ルと大幅に増加した。河南省は省内企業の対外直接投資を促し、国外企業の買収や合弁によ るエネルギー資源や農業分野への投資を推進した。 河南省商務庁によると、これまでに河南省から海外に投資した企業は累計で 650 社を超え、投 資先は 80 ヵ国・地域に分布している。投資事例として、双匯集団が 71 億ドルで米食肉加工大手 スミスフィールド・フーズを買収(中国で最大規模の米国企業買収案件)、河南美景集団は 11 億 ドルで米軽飛行機メーカーのムーニー航空を買収(民営企業初の米国航空関連製造企業の買 収案件)、洛陽奕川ニッケルは 8 億 2,000 万ドルでオーストラリアのノースパークス(North Parkes) 銅鉱山の 80%の権益を買収、河南民航発展投資は 2 億 1,600 万ドルでルクセンブルク貨物航空 の株式の 35%を買収した。 2013 年の新規案件のうち 1,000 万ドル以上のものは 69 件。中鉄のウズベキスタンでの鉄道電 化、河南中成機電のボリビアでの金属製品年間 15 万トンの生産などだ。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 19 重慶市が 34.6%の大幅減、四川省は微減(西部地域) 2014 年 11 月 26 日 上海事務所 (余慧玲) 2013 年の西部地域の対外直接投資(非金融分野)は、前年比 33.9%減の 36 億 5,500 万ドルと、 地方全体の伸び率(6.5%増)と比べ大きく低下した。うち、四川省は 1.8%減の 5 億 8,000 万ドル に減少した。重慶市は 34.6%減の 3 億 5,000 万ドルとなり、2012 年の 2 桁増(32.0%増)から一 転して 2 桁台の減少に転じた。 <西部地域の投資額は中国全体の約 1 割> 2013 年の四川省の対外直接投資は前年比 1.8%減の 5 億 8,000 万ドルだった(表 1 参照)。 2012 年は 5.6%増で 6 億ドルを超えたが、2013 年は 6 億ドルを割った。重慶市は 2010 年に前年 の 7.6 倍の 3 億 6,109 万ドルと伸び率で過去最高を記録して以来、2011 年、2012 年と増加し続 けたが、2013 年は 4 年ぶりに減少に転じ、34.6%減の 3 億 5,000 万ドルとなった。 西部地域の対外直接投資額は 33.9%減の 36 億 6,000 万ドルと、地方全体(中央国有企業を除 く)の約 1 割にとどまった(表 2 参照)。うち、四川省は西部地域の 15.8%、重慶市は 9.6%を占め た。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 20 <四川省:ASEAN や南アジア、日韓との関係を強化> 四川省商務庁は 2013 年の四川省の対外直接投資の特徴について、以下を挙げた。 まず、博覧会や商談会などや国際物流網を通じて、中央アジア、南西アジア、EU などの企業と の貿易や投資に関する協力を促進した。さらに、主要貿易パートナーである ASEAN との関係を 強化するために、タイ、シンガポール、インドネシアへの投資を開始し、その他の ASEAN 加盟国 との関係を徐々に構築し、最後に南アジアとの関係を構築する方針で臨んだ。 <重慶市:地方では中国初の対外投資規画を発表> 重慶市政府は 2013 年 9 月、「重慶市対外投資規画要鋼(2013~2017)」を発表した。同要綱は 地方レベルでは中国初の対外投資規画で、同市の企業が海外で不動産やホテルの買収、工場 設立などを行う場合は、この規画に沿って支援を受けることができる。 重慶市対外経済貿易委員会対外投資処の宋剛処長によると、同規画は 2017 年末時点で同市 の海外直接投資を行う企業を 500 社まで増やし、うち 5 社以上を国際的影響力がある多国籍企 業に育成することを目的としている。ちなみに、2012 年までに対外投資を行った重慶市の企業は 累計 255 社に達したという。 業種別には自動車、オートバイ、ハイテク設備や原料加工業の発展を推進する。その手法とし て、国内外の技術的優位性がある企業の買収・合併を通して、組立工場や研究開発機関を設立 することを奨励する。企業間の連携による海外での鉱物資源の探査、技術協力、企業の買収や 合併も奨励する。 <ロシアなどでの工場設立が活発化> 2013 年の四川省と重慶市の企業の対外直接投資は、ロシアなど新興国への工場進出の動き がみられたほか、外国企業の買収もあった。 四川省の石油掘削機大手の四川宏華石油設備を傘下に置く四川宏華集団は 4 月、ロシア政 府系企業など 2 社との合弁で、ロシアに移動式大型掘削装置の生産拠点を設立することで合意 した。年間の生産能力は 28 台、生産額は約 4 億ドルとなる見通し。 重慶市では 2 月、エンジンメーカーの重慶潤通動力が四輪バギー(ATV)などを生産する米国 のデンバー・グローバル・プロダクツ(DGP)を買収した。米国に生産拠点を建設することも検討し ているという。このほか、生活ごみの燃焼処理を行う重慶三峰環境産業集団は、インドのごみ発 電事業に投資した。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 21 投資総額に占めるシェアは 6 割弱、国・地域別の首位を堅持(香港) 2014 年 11 月 27 日 香港事務所 (メーガン・クォック、和瀬幸太郎) 2013 年の中国の対香港直接投資は前年比 22.6%増の 628 億 2,400 万ドルで、中国の対外直 接投資総額に占めるシェアは 58.3%と、国・地域別で首位だった。業種別では、1 位がリース・ビ ジネスサービス業(構成比 28.1%)、2 位が金融業(20.2%)、3 位が卸・小売業(17.3%)となっ た。 <直接投資額は 2 年連続で増加> 中国国家統計局によると、2013 年の中国から香港への直接投資額は前年比 22.6%増の 628 億 2,400 万ドルと、2 年連続の増加だった。2012 年(43.7%増)に比べると増加幅が縮小したもの の、中国の対外直接投資総額に占める香港のシェアは 58.3%と、2 位の EU(4.2%)を大きく引き 離し、2012 年に続いて国・地域別で首位だった。業種別では、リース・ビジネスサービス業、金融 業、卸・小売業、採鉱業、交通運輸・倉庫・郵政業などの順となっている(表 1 参照)。 2013 年末までの累計で、中国企業の直接投資により香港で設立された企業数は 7,000 社を超 えた。香港投資推進局によると、2014 年 1 月時点で香港証券取引所上場企業のうち中国企業は 約 5 割の 810 社を占めた。 <香港の優れた資金調達機能を活用> 中国から香港への投資の多くは、香港を経由して最終的に別の国・地域に投資することが目 的といわれる。香港はカタール、アラブ首長国連邦(UAE)に続き、世界で 3 番目に税率が低い地 域といわれており、税務コストが削減できるほか、利便性の高い資金調達機能も中国企業が香 港を経由して海外投資を行う理由とされる。 2013 年に香港を経由して第三国へ投資した主な事例として、中国海洋石油(CNOOC)によるカ ナダのエネルギー企業ネクセンの全株式取得、中国石油化工集団(シノペック)による米国の石 油・ガス大手アパッチが保有するエジプト油田の一部の資産取得、海航集団によるオランダの TIP トレーラーサービスの買収などが挙げられる。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 22 香港は世界的にも、アジアの金融ハブとして認識されている。2013 年の香港証券取引所の新 規株式公開(IPO)の実績額は世界 2 位で、M&A にも対応できる多額の資金調達が可能な市場 として、中国企業だけでなく先進国の企業にも活用されてきた。そのため、資金調達を行うため に香港に拠点を置く中国企業が多くある。その理由は、中国本土に比べると、香港は資金調達コ ストが低いと同時に、手続きが容易なためといわれている。2013 年に、IPO を通じて香港証券取 引所に上場した中国企業の事例は表 2 のとおり。 一方、資金調達を目的に、香港証券取引所に上場済みの企業を買収する中国企業もある。そ の例として、2013 年、万達集団傘下の万達商業地産は香港の上場企業である恒力商業地産を 買収し、同取引所に上場した。IPO を申請するには証券会社を上場アドバイザリーにして、取引 所の厳しい審査を受ける必要があるなど、費用も時間もかかる。他方、上場企業の買収はこうし た負担を大幅に軽減できるといわれている。今後、中国企業が香港の利便性が高い金融機能を さらに活用していくことも予想される。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 23 大型案件を中心に投資額は過去最高(台湾) 2014 年 11 月 28 日 中国北アジア課 (石川毅、方越) 2013 年の中国からの直接投資額は、前年比 5.4%増の 3 億 4,948 万ドルと、過去最高だった。 中国の製造業による株式投資、銀行の支店設立などの大型案件が中心だった。2014 年 1~8 月 の直接投資額も 3 億 1,931 万ドルとなり、中国の対台湾投資は引き続き堅調に推移している。 <上位 4 案件で投資額の 65%占める> 台湾経済部投資審議委員会によると、2013 年の中国の対台湾直接投資額(認可ベース、注) は前年比 5.4%増の 3 億 4,948 万ドルで、2009 年 6 月の中国本土企業による台湾投資の解禁以 降、最高額となった(図参照)。2013 年の特徴は、投資額上位 4 案件が全体の投資額の約 65% を占めたことだ。 ただし、2012 年の前年比 6.4 倍に比べると、2013 年の伸び率は大きく鈍化した。その理由につ いて、台湾経済部投資業務処は「海峡両岸サービス貿易協定(以下、サービス協定)が大きな議 論を巻き起こし未発効であることから、中国の国有企業が台湾投資を先延ばししている」と分析 している(「工商時報」紙 2013 年 12 月 30 日)。 サービス協定は海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)の後続協定の 1 つで、2013 年 6 月に 締結された。台湾側が 64 項目、中国側が 80 項目の市場開放に合意し、分野は保険、銀行、通 信、建築、観光、医療など多岐にわたっている。しかし、台湾では雇用などが失われるとの懸念 から、これに反対する学生らの大規模な抗議もあり、立法院(国会)での協定承認の見通しが立 っていない。サービス協定が発効されれば、投資が解禁される分野を中心に中国からの投資が 増えることが予想されるため、その動向が注目されている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 24 <規制緩和された LED 分野の投資がトップ> 2013 年の投資事例をみると、最大の案件は中国の発光ダイオード(LED)照明大手である厦門 (アモイ)市三安光電科技が、●(王へんに粲)圓光電の株式の 19.9%(23 億 5,200 万台湾元、約 89 億円、1 台湾元=約 3.8 円)を取得して筆頭株主となった M&A 案件だ(表 1 参照)。同案件は、 2012 年に台湾政府が中国からの直接投資受け入れ規制を大幅に緩和し、太陽電池や LED を含 む 161 分野を解禁したことを受けた投資で、規制緩和後、初の LED 分野での投資となった。また 同案件の投資額は、初の台湾公共建設分野への投資となった 2012 年の政龍投資による陽明海 運から高明貨櫃碼頭の株式取得案件(40 億台湾元)に次ぐ 2 位の規模で、製造業に限定すれば 過去最大の投資額となる。さらに、中国企業による台湾上場企業に対する初めての M&A 案件 でもあり、製品販売地域の相互補完や中台市場の販売拠点の合理化を図ることを目指している (「厦門日報」紙 2014 年 6 月 26 日)。 2013 年の投資額 2 位は、中国でペプシコーラなどの飲料缶を製造する鼎盛集団傘下の香港金 属包装製品が 17 億 6,200 万台湾元で CMP インベストメンツの所有する鼎新金属の全株式 (2,300 万株)を取得した案件だった。3 位は、中国建設銀行の台湾支店開設案件(14 億台湾元) となった。 2014 年 1~8 月の投資額は 3 億 1,931 万ドルとなっている。投資額が最大の案件は、中国銀行 が 2012 年に設立した支店の運営資金として 18 億台湾元を増資した案件だった。そのほか、納愛 斯浙江投資が清掃用品などを製造する台湾妙管家の株式を取得した案件や、中国ビデオカード 大手の七彩虹集団が前年に引き続き承啓科技に対して行った間接投資案件などが挙げられる。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 25 <最大の投資分野は卸・小売業> 台湾経済部投資審議委員会が 2009 年 7 月から 2014 年 8 月末までに認可した中国企業 569 社の対台湾直接投資案件を業種別にみると、卸・小売業が 343 件、投資額 2 億 6,910 万ドルで 最大だ(表 2 参照)。2013 年の投資額上位 10 社(11 案件)のうち、卸・小売業は 4 件だった。個 別の事例としては、前述の七彩虹集団が 2 億 7,400 台湾元で承啓科技の約 1 割の株式を有する 仲捷興業の全株式 750 万株を取得した間接投資や、合衆汽車が自動車の卸売りなどの業務を 行うために、台中衆鈴汽車に増資した案件が挙げられる。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 26 業種別投資案件の 2 位は銀行で 3 件、投資額は 1 億 9,826 万ドルだった。なお、2009 年に中台 間で締結された「金融監督の協力に関する覚書」により、中台の金融機関による相互の支店設 立が解禁された。その後、2013 年に締結された ECFA におけるサービス貿易の早期開放措置 (アーリーハーベスト)において、中国の銀行は台湾で事務所を開設してから 1 年後に支店の設 置を申請できるよう緩和された。これを受け、2012 年には交通銀行と中国銀行、2013 年には中 国建設銀行が相次いで台湾で支店を開設している。 <多方面で進む投資規制の緩和> 台湾は海外からの投資を呼び込むため、多国間の自由貿易協定(FTA)ネットワークの構築を 見据えて、特区に指定した地域から先行的に自由化・国際化を進める政策を展開している。 2013 年 8 月から、台北港(新北市)、基隆港(基隆市)など 6 港と、桃園空港(桃園市)、屏東農業 バイオテクノロジーパーク(屏東県)を自由経済モデル区に指定し、税制の優遇措置や市場開放 などを行う「自由経済モデル区計画」を打ち出している。同計画の第 1 段階は 2013 年 8 月に始 動し、「スマート物流」「国際医療」「付加価値農業」「教育イノベーション」を対象分野とした規制緩 和が進められた。 第 2 段階の緩和は、「自由経済モデル区特別条例」が立法院で承認された後に行われる予定 となっている。承認されれば、上述の地域以外でも各地方政府からの提案で特区の設立が認可 される予定だ。 同計画が本格的に始動すれば、外国籍(中国籍を含む)人材の雇用制限は緩和される。また、 域内での投資案件がモデル事業として承認されると、特区内において投資の制限がなくなる見 込みだ。これにより、中国企業による台湾投資が今後さらに増加することも予想される。 (注)中国からの投資案件には、中国からの直接投資のみならず、香港や英領バージン諸島な どのタックスヘイブンを経由した間接投資も含む。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 27 レジャー・観光分野に引き続き集中(韓国) 2014 年 11 月 28 日 ソウル事務所 (李海昌(イ・ヘチャン)) 2013 年の中国からの直接投資(申告ベース)は、前年比 33.8%減の 4 億 8,119 万ドルと大幅に 減少した。投資先は、業種別ではレジャー・観光分野、地域別では済州特別自治道(済州道)に 集中している。同分野・同地域への集中的な投資に対して、韓国国内では懸念する声が強まっ ている。 <不動産・賃貸と飲食・宿泊のシェアが 64.0%> 韓国産業通商資源部(日本の経済産業省に相当)の発表によると、2013 年の中国からの直接 投資は前年比 33.8%減の 4 億 8,119 万ドルに減少した。要因として、近年続いていた大型投資案 件が 2013 年にはなかったことが挙げられる。2013 年の韓国全体の対内直接投資に占める中国 のシェアは 3.3%と低かった。 業種別にみると、製造業が前年比 73.0%減の 4,521 万ドル、サービス業が 21.7%減の 4 億 3,290 万ドルと不振だった(表参照)。製造業では 2012 年に上位を占めていた金属が 88.1%減、 機械・装置が 91.1%減、繊維・織物・衣類が 87.3%減だった。サービス業は、上位を占める不動 産・賃貸が 24.1%減、飲食・宿泊が 27.2%減となった。これら 2 業種は中国からの直接投資額全 体の 64.0%を占めており、全体の減少に与えた影響が大きかった。 <済州道への投機性資金の集中に懸念も> 中国からの直接投資は、レジャー・観光分野に集中している。また、投資先が済州道(注 1)へ 集中していることも特徴だ。 産業通商資源部は国別の国内投資地域を発表しないため、正確な地域分布を把握することが できないが、各種報道によると、中国投資は済州道に集中しているようだ。例えば、2014 年 8 月 31 日付の「ヘラルド済州紙」は「済州道の外国人所有地の半分を中国人が所有-シェア急増」と の見出しで、「同年 6 月末現在、済州道の全体面積の 0.6%に相当する 1,373 万 8,000 平方メート ルが外国人の所有となっており、このうち 43.1%に相当する 592 万 2,000 平方メートルを中国人 が所有している」と報じた。また、同紙は「特に、2014 年上半期に中国人が取得した済州道の土 地は 277 万 3,000 平方メートルで、2013 年通年の取得分 122 万平方メートルの 2 倍以上」とし、 中国の済州道での土地取得の勢いを紹介した。 このため、国内では済州道における中国資金の急激な流入を懸念する声が出てきている。最 近行われている不動産への投資には、不動産価格の短期的な利益を狙った投機性資金も流入 していることや、中国人が投資したホテルや別荘地への中国人観光客の流入が既存の商圏や 文化を破壊することへの懸念だ(注 2)。また、現在は中国資金の流入と同時に中国人観光客の 来訪で活況を呈しているが、規模が大きいだけに中国資本の中国本土での経営動向に伴い、将 来的にこれらが撤退・減少した際の空洞化を憂慮する声もある。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 28 このような懸念は済州道の政策にも影響を及ぼしている。特に、2014 年 7 月に就任した元喜龍 (ウォン・ヒリョン)知事は、中国資金の集中的な済州道進出にメスを入れることを明らかにしてい る。道議会で具体的な対策を約束したほか、前知事在任時に認可された案件まで再検討すると 表明するなど、中国資本による行き過ぎた投資を抑制する姿勢をみせている。 <2014 年上半期の中国からの投資は前年同期の約 5 倍> このような懸念にもかかわらず、済州道における中国のレジャー・観光分野の投資はしばらく続 くとみられる。韓国全体の 2014 年上半期の中国からの直接投資実績をみると、前年同期比の約 5 倍の 7 億 7,584 万ドルが投資された(表参照)。これは 2013 年通年の実績を既に大きく上回っ ており、中でも不動産・賃貸向け投資が全体の 83.3%を占めている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 29 韓国政府としては、中国からの直接投資誘致を主要政策課題としており、中国政府との協力強 化、民間協力体制の構築、大規模な投資誘致説明会の開催などを推進する予定だ。今後、投資 誘致と、それへの懸念とのバランスを取ることが求められている。 (注 1)済州特別自治道は、2008 年から観光振興などが目的であれば、中国人らが査証なしで入 国できることとしている。 (注 2)中国人の済州道への投資は、ホテル、別荘、ヘルスケアタウンなど、中国人を相手とする ものが多く、韓国人をターゲットにしている同業者にも影響を与えるといわれている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 30 対象はハイテク、エネルギー、不動産と多様化(シンガポール) 2014 年 12 月 01 日 シンガポール事務所(本田智津絵) シンガポールでは近年、東南アジアや国際市場への拠点として進出する中国企業が増加して いる。同国に拠点を置く中国の企業は約 5,200 社。香港を含めた中国からシンガポールへの直 接投資は 2005 年以降、毎年 2 桁の勢いで伸びている。中国からの投資の多くが金融分野だが、 最近ではハイテク企業やエネルギー、不動産など投資対象が多様化している。 <中国企業 5,200 社以上が拠点> シンガポールのリー・シェンロン首相は 2014 年 9 月 16 日、中国の広西チワン族自治区南寧市 で開催された第 11 回中国 ASEAN 博覧会の基調講演で、「2013 年にシンガポールは中国にとっ て最大の投資国であり、2012 年にシンガポールは中国にとって第 5 位の投資先だった」と指摘し、 両国間の深まる経済関係を強調した。リー首相によると、同国には現在、中国の企業 5,200 社以 上が拠点を置いている。 統計庁の最新統計によると、2012 年の中国(香港を除く)からの直接投資残高は 142 億 1,720 万シンガポール・ドル(約 1 兆 2,795 億円、S ドル、1S ドル=約 90 円)と、前年比 4.6%増加した。 また、香港からの直接投資は、前年比 17.9%増の 276 億 6,410 万 S ドルだった。香港を含む中 国からの直接投資は 2005 年以降、毎年 2 桁増で大きく増加している(図 1 参照、2013 年の直接 投資残高は 2014 年 10 月 14 日時点で未公表)。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 31 <人民元のオフショアセンターとして存在感> リー首相が上掲の演説で、中国企業に対してシンガポールを東南アジアや国際市場進出の拠 点として位置付けるよう訴えたとおり、近年、シンガポールに進出拠点を置く中国企業が増加傾 向にある。2013 年 9 月には中国の大手電子商取引アリババ集団が一般消費者向けショッピング サイト「淘宝網(タオバオ)」の事務所を開設した。アリババは 2014 年 5 月にシンガポールの郵便 事業会社シンガポール・ポスト(シングポスト)への 3 億 1,250 万 S ドルの出資を発表し、第 2 位 の株主に浮上した。シングポストの物流網を足掛かりに、東南アジアでの電子商取引ビジネス拡 大を図る考えだ。また、中国の通信機器メーカー小米科技(Xiaomi)の共同創業者、リン・ビン氏 はシンガポールの英字紙とのインタビュー(2014 年 2 月 20 日)で、国際統括本部を設置する計画 を明らかにしている。 統計庁によると、香港を含む中国からの直接投資の内訳では、6 割が金融・保険だ(2012 年時 点、図 2 参照)。2014 年 2 月にはシンガポールは香港に次いで第 2 位の人民元オフショア決済セ ンターとなった。国際銀行間通信協会(SWIFT)が 2014 年 4 月 28 日に発表したレポートによると、 シンガポールでの人民元決済額は 2014 年 3 月、前年同月の 4.7 倍になった。中国人民銀行(中 央銀行)が 2013 年 2 月、中国工商銀行(ICBC)シンガポール支店を中国・香港、台湾以外で初め ての人民元決済銀行に指定して以降、人民元決済が急増している。同国には ICBC や中国銀行、 2014 年 3 月に支店を開設した招南銀行を含め、中国の銀行 7 行が支店を置いている。 また、シンガポールでは金融機関による人民元建ての債券発行も増加しており、2014 年 5 月に は中国海南航空が非金融機関としては初めて 17 億元(約 323 億円、1 元=約 19 円)の人民元 建て社債を発行した。これを皮切りに今後、こうした中国企業による資金調達が活発化すると期 待されている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 32 <民間住宅開発に勢い> 一方、中国企業による投資は多様化しつつある。アリババや小米科技など中国のハイテク系 企業のほか、中国石油化工集団(シノペック)が 2013 年 7 月に同社単独では中国国外において 初となる年産能力 10 万トン規模の潤滑油プラントを開所(投資額:6 億 5,000 万元)するなど、エ ネルギー・資源系企業による投資も活発だ。中国化工集団(ケムチャイナ)は 2013 年 9 月、原油 調達強化のためシンガポールに事務所を設置している。 このほか最近、勢いを増しているのが、民間住宅開発を中心とした中国のデベロッパーの進出 だ。2014 年 8 月に締め切られたシンガポール郊外ポトンパシルの駅近くの商業・住宅複合開発 用途の国有地入札で落札したのは、中国冶金科工集団傘下の MCC ランド(落札額:4 億 7,160 万 S ドル)だった。同入札には 15 社が応札し、最も高額を提示した MCC ランドを筆頭に入札額 上位 4 社が中国のデベロッパーだった。また、2014 年 10 月に締め切られた北部郊外の住宅用 国有地入札で、南山集団(Nanshan Group)が落札した(落札額:1 億 7,357 万 S ドル)。両社のほ か現在、青建集団(Ziangjian Group)やキングスフォード・デベロップメントなどが、シンガポール での郊外を中心とした住宅開発で存在感を高めている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 33 中国からの投資は低迷続きも、自動車を中心に大幅増が確実(タイ) 2014 年 12 月 02 日 バンコク事務所 (若松寛) 2013 年の中国からの直接投資額は 2012 年に続き大幅に減少し、シェアもわずかなものとなっ た。中国企業の直接投資は低迷を続けているものの、2013 年には ASEAN 市場全体を狙う地域 の拠点として、タイに進出する動きもみられ始めた。2014 年に入って自動車産業を中心に国内・ ASEAN 市場を狙う大型投資もみられ、投資額は大幅に増加することが確実となっている。 <2013 年の投資額は大幅減、シェアわずか 1.0%> タイ投資委員会(BOI)によると、2013 年の対内直接投資総額(認可ベース)に占める国・地域 別のシェア 1 位は日本で、2,904 億 9,100 万バーツ(約 1 兆 458 億円、1 バーツ=約 3.6 円)全体 の 60.7%を占めた。一方、中国の投資額は 49 億 9,100 万バーツと前年の 79 億 110 万バーツか ら 4 割近く減少し、シェアも 1.0%にすぎない(図、表参照)。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 34 中国からの投資額は 2010 年にピークの 173 億 1,150 万バーツに達した後、減少傾向が続いて いる。 BOI の統計で、2013 年の中国企業によるタイへの直接投資を業種別にみると、金額ベースで は金属製品・機械が 18 億 4,000 万バーツと最も大きく、次いで化学・紙製品が 18 億 2,000 万バ ーツとなった。金属製品・機械では、トランスミッションなどの自動車部品や建設・掘削機械用部 品などで大型投資があった。また化学・紙製品では、化学肥料製造やプラスチック製品などで多 額の投資を行った企業があった。件数ベースでみても、金属製品・機械が 13 件と最も多く、次い で化学・紙製品が 6 件という結果となった。 <高い賃金や原材料高が低迷の要因> 2013 年に中国は日本に代わり、タイ最大の貿易相手国となった。しかし、直接投資国としての 中国の存在感は薄く、最近では逆に減少傾向にある。中国研究者のソンポ・マナラングサン氏 (パンヤピワット大学総長)は、中国企業のタイへの投資が低迷している要因について、(1)賃 金・離職率が高い、(2)原材料や部品価格が高い(中国に比べ生産量および産業集積が少ない ため)、(3)国内市場の価格競争が激しい、(4)特に巨額の投資を担う国営企業と現地タイ企業 との関係が希薄なこと、を挙げている。 <ASEAN 市場を狙った進出も> 中国の自動車トランスミッション製造大手の陝西法士特汽車伝動集団(Fast Auto Drive Group) は、タイに現地法人を設立した。同社は自動車産業が集積するラヨーン地区に、トランスミッショ ン工場の建設を決め、2013 年 9 月に起工式を行った。同工場は、ASEAN 市場を狙うボルボの商 用車向けに、年間 7 万台のトランスミッション生産を予定している。起工式にはポンテープ前副首 相、BOI 長官らが駆け付け、両国の関係の深さがうかがえるものとなった。起工式で、同社の李 大開・董事長(会長)は、設立されたタイ法人は今後、「2 拠点 3 中心」になると表現。ASEAN 地域 の拠点であるとともに輸出拠点であり、また地域におけるアフターサービス、経営、販売促進の 中心地にもなると述べた。 中国企業の進出は、主に中小企業がタイで調達した原材料(天然ゴムなど)をタイで加工して、 中国向けに輸出するケースが多い。数少ない大企業の進出は、合弁でタイや先進国市場を狙う 目的での進出(インフラ・家電)が大部分だ。当該案件の投資額は 4 億 8,000 万バーツ(2013 年 の中国企業のタイ投資で 2 位の規模)で、日本企業に比べるとまだ規模は小さいが、トランスミッ ションのような高付加価値の製品を生産する中国企業が相手先ブランドによる生産(OEM)・輸出 から脱皮し、ASEAN 市場狙いでタイに進出する動きとして注目される。 <2014 年の投資額は既に前年を上回る> BOI の統計によると、直近の 2014 年 1~8 月の中国企業の投資(認可ベース)は既に 24 件、 215 億 9,000 万バーツに達しており、前年の投資額を大きく上回っている。中国最大手の自動車 メーカーの上海汽車集団とタイ最大の複合企業とされるチャロン・ポカパン(CP)グループとの合 弁会社である SAIC モーターCP は、自動車・部品生産工場建設で 92 億バーツの投資認可を受 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 35 けた。また大手タイヤメーカーの山東玲瓏タイヤの現地子会社 LLIT が東部チョンブリ県のへマラ ート・イースタンシーボード工業団地にタイヤ工場(188 億 6,000 万バーツ、年産能力 1,120 万本) を建設するなど、自動車関連の大型投資が目立っている。 SAIC モーターCP は、タイ国内向けに傘下に収めている英国の MG(モーリス・ガレージ)ブラン ド車を生産するとしており、現地生産によって日系企業が 9 割を占める国内市場に本格的に挑む。 また同社は研究開発施設の設立を示唆し、将来的にはタイをインドネシアやマレーシア向けの 生産拠点とする構想を明らかにしている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 36 ハイテクやサービス産業など多角化する投資先(マレーシア) 2014 年 12 月 04 日 クアラルンプール事務所(新田浩之) これまでの投資残高をみる限り、マレーシアでの中国の存在感は決して大きくない。しかし、 2013 年の中国企業からの直接投資額は製造業の認可ベースでは過去最高を記録し、中国企 業のマレーシアへの関心の高さがうかがえる。投資対象業種の大半はマレーシア政府が重視 する産業で、投資先は製造業だけでなく、サービス業にも広がっている。マレーシアでは中国企 業の投資の増加を歓迎する見方が多いが、一部では中国企業の投資が国内の人材の高度化 に資するのか不安視されている。 <製造業の認可投資額は過去最高> 現在のところ、マレーシア国内における中国の投資面での存在感は小さい。中国がこれまでマ レーシアで積み上げてきた直接投資残高は 2013 年末時点で約 11 億リンギ(約 385 億円、1 リン ギ=約 35 円)と外国直接投資残高全体に占める割合は 0.2%にとどまる(図 1 参照)。特徴とし て、投資の引き揚げが多く、残高が順調には積み上がっていない点が挙げられる。 マレーシアへの最大の直接投資国はシンガポール(807 億リンギ、構成比 18.1%)で、以下、日 本(654 億リンギ、14.7%)、米国(382 億リンギ、8.6%)と続く。マレーシア中央銀行が公表する主 要国・地域の中で、中国の順位は 17 位にとどまる。 マレーシアは国際収支(BOP)ベースでは、国・地域別に業種ごとの直接投資額を公表していな い。製造業への直接投資は認可ベースで、マレーシア投資開発庁(MIDA)が公表している(表 1 参照)。この MIDA のデータによると、2013 年の中国の製造業向け直接投資額は 30 億リンギ(件 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 37 数は 22 件)で、中国の対マレーシア投資としては過去最高を記録した。投資残高の水準は高くな いが、中国企業はマレーシアへの投資に意欲的だ。 製造業への直接投資額を業種別にみると、電気・電子製品が 12 億リンギと最大で全体の 39.8%を占めている。以下、一次金属製品(8 億 5,929 万リンギ)、繊維・同製品(5 億 2,546 万リン ギ)と続いた。 <先端産業への投資が目立つ> 他方、MIDA 公表ではなく、民間報道ベースで具体的な新規投資案件をみると、2011 年は 8 件、 2012 年は 4 件、2013 年は 7 件で、金額はそれぞれ 8 億ドル、2 億ドル、6 億ドルだった(注)。 2013 年の新規投資の中で金額の大きい案件は、太陽光発電製品メーカーのコムテックソーラ ー・インターナショナルが 3 億 7,200 万ドルでサラワク州クチンのサマジャヤ自由工業地域におい て、太陽電池用ウエハー工場を設立する案件(表 2 参照)。以下、通信機器大手の華為技術(フ ァーウェイ)がジョホール州にデータ・物流センターを開設するために 1 億 5,520 万ドルを投資した 案件、そして、福建省の厦門(アモイ)大学がセランゴール州でキャンパスの設置に 3,310 万ドル を投じた案件が続いた。 M&A による中国企業のマレーシア投資は 1 件だけで、12 月に中国のマッサージ機具製造・ 販売会社である厦門蒙発利科技(集団)の香港子会社である蒙発利(香港)が健康器具販売会 社オガワ・ワールドを 2,002 万ドルで買収した案件だ。このように中国企業による投資の主流は グリーンフィールド投資だが、2013 年の投資内容は太陽電池、データセンター、教育分野などで、 マレーシア政府が重視する先端産業向け投資がみられた。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 38 <人材高度化の実現には不安感も> マレーシア政府は、中国からの投資誘致に積極的だ。中国は最大の貿易相手国であるだけに、 投資面でも同国に期待をかける。ナジブ首相は、2014 年 8 月 20 日の中国との国交 40 周年の記 念祝賀会の夕食会で、ASEAN への玄関口、多言語を話す国民の語学力、ビジネスを行いやす い国家といったマレーシアの魅力をアピールし、中国にマレーシアへの一層の投資を促した。 「ニュー・ストレーツ・タイムズ」紙(2014 年 6 月 19 日)によると、ムスタパ国際貿易産業相は、今 後数年間の中国の投資総額を 64 億リンギと見込み、高度な製造・サービス業に投資がなされる とみている。また同相は、中国の直接投資を引き付ける原動力として、両国の経済協力の象徴 であるパハン州のマレーシア・中国クアンタン工業団地(MCKIP)の活用を強調した。 マレーシア経済研究所(MIER)のナンビヤ上席主任研究員は、中国は ASEAN でプレゼンスを 高めることに注力しており、その手段の 1 つとしてマレーシアの活用を考え、マレーシア政府も自 国の経済成長をにらんで、中国のマレーシア重視の政策を好意的に受け止めているようだ、と分 析している。一方で、同氏は中国の投資に懸念も示している。中国企業の投資がマレーシアの 人材育成に貢献しない場合、マレーシアの持続的な成長が阻害される可能性に言及。この点は、 1970 年代に進出してきた日本の電気・電子産業がマレーシアの非熟練労働者を大量に雇用し、 彼らに雇用機会を提供したことが歓迎された時代とは状況が異なる。また、中国からの投資の 増加が他国によるマレーシアへの高付加価値な投資意欲を減退させる可能性にも触れ、同氏は Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 39 マレーシアは中国を重視しつつも、国益全体も考えるべきだと説く。 (注)グリーンフィールド投資のデータは「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙の fDi Markets に基づく。 同データは各種報道資料に基づいており、中にはデータ登録年内に完了していない案件や、FT が独自に投資額を推計した案件も含まれる(2014 年 9 月 12 日時点)。また、M&A データはトム ソン・ロイター(2014 年 9 月 12 日時点)による。各案件の買収完了額。それぞれ報道ベース、完 了ベースであることから、MIDA が発表する投資認可額と数字は乖離することに留意する必要が ある。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 40 鉱業分野が後退、投資先の業種に広がり(インドネシア) 2014 年 12 月 03 日 ジャカルタ事務所 (藤江秀樹) インドネシアと中国の経済関係は、直接投資よりも貿易の方が大きいが、近年はインドネシア の対内直接投資の拡大とともに中国からの投資件数、金額がともに増え、シェアもわずかなが ら増している。業種別でみると、ここ数年首位だった鉱業分野がゴム・プラスチック、金属・機械・ 電機に抜かれて 3 位に後退し、投資は幅広い分野に広がりをみせている。新鉱業法を背景にし た中国企業による製精錬所建設計画などもあり、実現すれば再び鉱業分野の比重が高まる可 能性がある。 <貿易が主体の両国経済関係> 投資調整庁(BKPM)の統計によると、1998 年から 2014 年上半期までの中国からの直接投資 は 127 億 6,163 万ドル(1,144 件)で、全体の 2.4%にとどまり、国別では 16 位となっている。中国 企業のインドネシア進出は、シンガポール、日本、米国、韓国、英国企業などに比べて遅れてい る。 インドネシアと中国の関係は、直接投資よりも貿易が主だ。2013 年のインドネシアの対中輸出 額は、国・地域別で日本に次ぐ 2 位で 226 億 150 万ドル(全輸出に占める割合は 12.4%)、対中 輸入額は 298 億 4,950 万ドル(16.0%)と最も多かった。対中輸出の 36.5%が鉱物性燃料、16.2% が鉱石、スラグ、灰だ。対中輸入では、機械・部品、電気機器・部品、鉄鋼などが上位品目となっ ている。2010 年に発効した ASEAN 中国自由貿易協定(ACFTA)の後押しもあり、中国からの電 気機器・部品の輸入増加が続いている。 一方、近年、インドネシアの対内直接投資が順調に増える中、中国からの直接投資が金額、件 数ともに伸びている。件数は、2010 年(113 件)、2011 年(137 件)、2012 年(190 件)、2013 年(329 件)と増え、2014 年は上半期だけで 259 件だ(表 1 参照)。また、金額は 2012 年の 1 億 4,100 万 ドルから 2013 年は 2 億 9,690 万ドルへと倍増し、2014 年は上半期だけで 2 億 3,110 万ドルとな っており、通年では前年比で倍増する勢いだ。全体額に占める中国からの投資の割合は高くて も 1%程度にすぎない状況が続いていたが、2014 年上半期は 1.6%まで上昇している。 中国からインドネシアへの 2014 年上半期の直接投資額(実行ベース)を業種別にみると、ゴム・ プラスチック(構成比 26.4%)が最も多く、金属・機械・電機(24.5%)が続いた(表 2 参照)。業種別 の伸びをみると商業・修理業、非金属鉱物の増加が目立つ。2011 年には全体の約半分を占め ていた鉱業分野への投資は、2014 年上半期は 15.3%まで落ち込み、順位も 3 位となった。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 41 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 42 <製精錬所建設で投資額は拡大か> 地元報道などにみられる今後の中国企業の進出案件では、実現性や時期などは不明だが、複 数の投資計画が発表されている。 鉱業分野では、2014 年 1 月から導入された未加工鉱物の禁輸政策と製精錬義務を背景に製 精錬所の建設計画が上がっている。この中には中国企業によるものもあり、例えば、南スラウェ シ州南部のバンタエン県に中国企業 8 社がニッケル加工工場を建設し、フェロニッケルやステン レススチールを生産する計画が発表されている。また、地元鉱業チャクラ・ミネラルが浙江保利 鉱業との合弁で、フェロニッケル製精錬所を建設するなど、中国企業による製精錬所の建設が 加速するとみられている。製精錬所建設には巨額の投資が必要であり、実現すれば中国からの 直接投資拡大に大きく寄与するとみられる。 これまで投資案件数・金額ともに少なかった製造業については、増大する中間層と旺盛な消費 市場を狙った中国企業による新規投資や拡張投資が予定されている。例えば、中国家電ハイア ールは三洋電機の白物家電事業を引き継ぎ製造販売を行っていたが、従来は輸入販売してい たスマートフォンの製造拠点を新設する。同様に OPPO ブランドのスマートフォンの輸入販売をし ている中国家電の広東歩歩高電子工業も 2015 年をめどに製造拠点を構える予定だ。家電分野 ではそのほか、大手の四川長虹電器がエアコン新工場を建設し、生産能力を 3.5 倍に引き上げ る。自動車分野では、吉利汽車(Geely)が 2013 年 11 月に西ジャワ州ボゴールで完成車工場を 稼働、中価格帯乗用車「エムグランド」などの販売を始めた。建機分野では、大手の三一重工に よる重機の製造工場稼働が 2015 年末に予定されている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 43 今後農業分野が拡大する可能性も(フィリピン) 2014 年 12 月 01 日 マニラ事務所 (石川雅啓) 2013 年の中国からの投資額は 12 億 4,100 万ペソ(約 32 億 2,660 万円、1 ペソ=約 2.6 円)で、 国・地域別では、前年の 11 位から 13 位へと後退した。特に不動産、金融・保険、ホテル・外食の 分野での落ち込みが目立った。一方、情報・通信は、7,770 万ペソで前年比 3.1 倍となった。前年 には実績のなかった鉱業で 2 億 170 万ペソの投資があった。マニラのアジア太平洋大学のベル ナルド・M・ビレガス教授は、中国の農業分野における投資先が、将来的には東南アジアに向か うとし、フィリピンもそのうちの 1 つになるだろう、と述べた。 <金額は少ないが多分野化> フィリピン国家統計調整委員会(NSCB)によると、2013 年の中国からの直接投資額(認可ベー ス)は、前年比 37.5%減の 12 億 4,100 万ペソで、前年の 11 位からさらに順位を下げ 13 位、構成 比は 0.5%となった。英領バージン諸島などを通じたタックスヘイブンを考慮する必要があるが、 中国による対フィリピン投資の存在感は決して大きくない。 中国からの投資を業種別にみると、情報・通信が 3.1 倍の 7,770 万ペソだった(表参照)。前年 は実績のなかった鉱業は 2 億 170 万ペソで、そのほか、前年には実績のなかったものとして、卸 売り・小売り・車両修繕、輸送・倉庫、電力・ガス関連、芸術の投資額がそれぞれ 2,880 万ペソ(構 成比 2.3%)、1,680 万ペソ(1.4%)、1,530 万ペソ(1.2%)、160 万ペソ(0.1%)だった。一方で、製造 業、不動産、金融・保険およびホテル・外食ではいずれも減少し、それぞれ 7 億 8,930 万ペソ(前 年比 6.5%減、構成比 63.6%)、3,430 万ペソ(95.2%減、2.8%)、1,240 万ペソ(70.7%減、1.0%) および 20 万ペソ(99.9%減、0.02%)だった。 中国からの投資額全体では前年から減少したが、多分野にわたって投資がなされたという点 が 2013 年の特徴だ。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 44 また、フィリピンを訪れた外国人数をみると、韓国が他を圧倒しているが、中国の存在感も大き い。フィリピン入国管理局が発表した 2012~2013 年の国別就労許可発行数では、1 位は韓国で 7,156 人、2 位が中国 4,729 人、3 位がインド 2,455 人、日本は 4 位で 1,836 人だった。フィリピン 観光省の発表によると、2013 年にフィリピンを短期(観光ビザ)で訪れた外国人は、国籍別で中 国(本土)が 42 万 6,352 人で 4 位。1 位の韓国は 116 万 5,789 人、米国(67 万 4,564 人)、日本(43 万 3,705 人)の順だ。 <領海紛争も影を落とす> 最近の中国からのフィリピンへの投資について、アジア太平洋大学のベルナルド・M・ビレガス 教授に聞いた(10 月 10 日)。同教授によると、中国からフィリピンへの投資は、アロヨ政権時代か ら徐々に減っている。昨今の南沙諸島の領海問題を引き金とする両国間の関係悪化が、中国企 業のさらなるフィリピンへの投資に対する躊躇(ちゅうちょ)に拍車を掛けている。近年の中国から フィリピンへの大型投資は 2011 年に行われた送電事業者ナショナルグリッドへの投資だけだ。 しかし 13 億人の人口を抱える中国は、今後の食料安保の面で、将来的に、農業分野での投資 先として新たに東南アジア各国に目を向け、フィリピンも農業分野での投資検討国になるという。 特に、商品価値の高い一次産品であるココナツ、バナナ、パイナップルなど熱帯作物がターゲッ トになるとみられる。農業資源に乏しい中国は、中南米やアフリカからの輸入に頼っているが、こ れらの地域は中国から遠いためフィリピンが新たな食料調達の拠点になり得るという。同教授は 「2015 年の ASEAN 経済共同体(AEC)発足は中国としても機会とみているはずだ」と話している。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 45 最大の新規投資は中国企業の石炭火力発電所建設案件(ベトナム) 2014 年 12 月 02 日 ハノイ事務所 (竹内直生) 2013 年の中国からベトナムへの直接投資は、前年比 6 倍以上の大きな伸びだった。これには 最大の新規投資案件である中国企業の石炭火力発電所建設案件が寄与している。2014 年 5 月 に発生した反中デモの投資への影響は限定的とされ、2014 年に入ってからの投資実績も引き 続き増加傾向にある。 <新規は韓国、シンガポールに次ぐ 3 位> 外国投資庁(FIA)によると、1988 年から 2014 年 9 月 20 日までの中国からの直接投資の累計 (認可ベース、新規・拡張の合計)は 1,065 件、78 億 9,300 万ドルと世界で 9 番目の規模になって いる(表 1 参照)。地域別では、ビントゥアン省(南部)が 20 億 2,700 万ドルと 1 位で、投資総額の 4 分の 1 を占める。これは、中国南方電網、中国電力国際とビナコミン(ベトナム)による、南部ビ ントゥアン省の第 1 ビンタン石炭火力発電所建設案件(20 億 1,833 万ドル)が大きく寄与している。 次いで、2 位以下はラオカイ省(北部)、タイニン省(南部)、クアンニン省(北部)、ビンズオン省 (南部)と続き、中越国境周辺やホーチミン市周辺に集中している。 2013 年についてみると、中国からの対内直接投資は 123 件、23 億 3,900 万ドルとなり、金額が 前年比 6.3 倍と大幅な伸びを示し、国・地域別順位を 4 位(2012 年は 9 位)に大きく押し上げた(表 2 参照)。特に新規投資では、韓国、シンガポールに次ぐ 3 位となった。前述の第 1 ビンタン石炭 火力発電所建設案件の認可によるところが大きく、この案件は 2013 年の新規直接投資の中で 最大となった。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 46 <裾野産業の育成が最優先課題> また、業種別では、環太平洋パートナーシップ(TPP)締結を見据えた繊維・縫製関係の進出も 目立つ。2014 年 5 月には、中国繊維大手の天虹紡織集団(テクスホン)が、香港経由の投資によ りクアンニン省ハイハー工業団地で繊維・縫製関連の工業団地造成を行うと発表した(2 億 1,500 万ドル)。9 月には同団地内で繊維・縫製コンプレックス建設(3 億ドル)の投資許可を取得したこ とも発表した。さらに、工業団地内給電用の火力発電所建設案件も準備中と報道されている。 当地の政府関係者は「(上記のような)一部大型案件を除けば、主に華南地域の中小企業によ る紡績など労働集約型の製造加工業での進出が中心で、規模としては全般に小型のものが多 い」と指摘する。同関係者は中国からの投資に関し、a.中国から持ち込まれる技術や設備が古く、 省エネや環境保護に資するものが少ない、b.一般的に給与水準が低く、管理者のマネジメントが 不十分なことから、労働争議が発生するケースが多い、c.就労許可を取得していない不法就労 者が多い、という 3 つの主な問題点を挙げた。 また、中国企業による投資拡大は、対中貿易赤字拡大の要因になるとの専門家による指摘も ある。機械・設備の導入や原材料調達などは、ほとんど中国本国から行われるためだ。実際に 2013 年の対中貿易赤字額は、236 億 9,500 万ドルと前年比 44.5%も拡大した(表 3 参照)。2014 年に入ってもその傾向は変わっておらず、こうした現状を打開するためベトナム政府は裾野産業 育成を最優先課題の 1 つに掲げている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 47 <越中間の緊張による投資への影響は限定的> 2014 年 5 月に発生した中国の南シナ海掘削に抗議する反中デモにより、中国系企業は放火・ 略奪などの被害を多数受けた上、中国人の死者まで発生する事態となり、工場の一時閉鎖はも とより一時は在住中国人が帰国や近隣国への退避を余儀なくされた。その後も、中国政府がベ トナムとの一部交流活動の停止や国有企業による新規投資の停止を打ち出すなど越中両国の 緊張が高まった。 しかし、政府関係者は「中国からの投資規模はそれほど大きくないため、対外直接投資全般に 与える影響は限定的。むしろ、中国人旅行客の減少に伴う観光業やサービス業などへの影響の 方が大きい」と述べている。2014 年 1~9 月の中国からの投資は、主な迂回投資元である香港、 台湾を含め、いずれも前年同期比で増加傾向にある。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 48 民政移管後はアパレルなど労働集約型産業に移行(ミャンマー) 2014 年 12 月 04 日 ヤンゴン事務所(浜口聡) ミャンマーへの外国直接投資額は、2013 年度(2013 年 4 月 1 日~2014 年 3 月 31 日)は 41 億 710 万ドル(投資件数:123 件)に上り、2012 年度の 14 億 1,950 万ドル(94 件)に比べ金額ベース で約 3 倍に増加した。中国による投資は、軍事政権時代は主に資源開発やエネルギー開発分 野に集中し、金額的にも大きな存在感を示していたが、民政移管後の 2012 年 11 月に新外国投 資法が公布されて以降は大型案件は影を潜め、最近では労働集約的なアパレル、製靴業への 小規模投資が増加傾向にある。 <相対的に低下する中国の存在感> 1989 年度から 2013 年度までの累計外国投資額では、中国が全体の 31.2%を占め 1 位となっ ているものの、2011 年 3 月のテインセイン政権発足以降は、日本や韓国、欧米諸国、近隣 ASEAN 諸国などからの直接投資が増加傾向にあり、かつて圧倒的な存在感をみせていた中国 の割合は相対的に低下している(表 1 参照)。資源・エネルギー分野の大型案件が減少している のが大きな理由で、2013 年度の国・地域別順位では 8 位に低迷するなど勢いを欠いている。 一方、中国での人件費高騰による製造コストの上昇などを受け、中国企業も安価で豊富な労働 力を目当てに生産拠点の移転先としてミャンマーへの投資を増加させている。特に労働集約的 なアパレル、製靴産業への投資が活発となっている。 ジェトロが 2014 年 5 月に発表した「アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較」 調査によると、母数の関係上参考値ベースとなるが、ミャンマーにおける日系企業のワーカー (一般工職)の月額基本給は 71 ドルと、中国の 375 ドルに比べ、2 割程度となっている。労働生 産性やその他のコストを考慮する必要はあるが、労働集約的な製造業にとって、ミャンマーの人 件費は中国企業にとっても魅力となっているようだ。 <16 案件のうち 12 件は縫製関係> 2013 年度のミャンマーへの外国直接投資額(認可ベース)41 億 710 万ドルのうち中国からの投 資額は 5,700 万ドルと、全体に占める割合は 1.4%にすぎない(表 2 参照)。前年度から 86.0%の 大幅減だ。2013 年度の中国の投資案件 16 件のうち、縫製関係(アパレルと製靴業)が 12 件を 占めており、金額的なインパクトは小さいものの、労働集約型産業への中国からの投資はこれ からも増加傾向が続くと予想される。今後、中国での人件費の上昇などもあり、ミャンマーの安価 で豊富な労働力を求め、ミャンマーを投資先の 1 つとして選択する中国企業はさらに増えるとみ られる。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 49 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 50 縫製業への進出が活発、投資は急拡大(カンボジア) 2014 年 12 月 08 日 プノンペン事務所(上田委枝) カンボジアにおいて圧倒的な規模の直接投資を続ける中国。中でも縫製業の進出が活発だ。 中国国内での賃金上昇などの影響を受け投資は急拡大している。 <中国の CIB 投資額は 70%増> カンボジアにおける外国直接投資の統計は、主に 2 種類に分かれている。1 つはカンボジア投 資委員会(CIB)が発表する適格投資案件(QIP)、もう 1 つはカンボジア経済特別区委員会 (CSEZB)が発表する経済特別区(SEZ)への進出案件(同様に QIP)だ。 CIB によると、2013 年の外国直接投資額(認可ベース)は 12 億 3,380 万ドルと前年に比べて 10.0%減少した(表参照)。しかし、中国の投資額は 4 億 4,805 万ドルと 70.0%増加し、2013 年の 投資額トップとなっている。ちなみに、日本は 2,459 万ドルで、中国の約 20 分の 1 にとどまった。 一方で、CSEZB の発表する SEZ 内への投資認可額は日本が 6,438 万ドルとトップに立ち、中国 は 5,090 万ドルだった。 1994 年から 2011 年までのカンボジアにおける中国による投資は、リゾート開発や水力発電設 備など、不動産とエネルギー分野で約 8 割を占めていた。2013 年には両分野での新たな投資は 記録されていないが、中国政府からの優遇借款による橋の建設や水力発電所設置などのインフ ラ整備は現在も進行中だ。 <2013 年は農業分野に 2 件の大型案件> 近年では、アパレル・製靴関連製造業の進出が相次いでいる。2010 年は中国からの縫製業へ の投資が 7 件、1,599 万ドルだったが、2013 年には 39 件、1 億 6,710 万ドルとなり、この 3 年間で 投資額は 10 倍強に増加している。カンボジア縫製製造業協会(GMAC)によると、2014 年 10 月 時点の加盟企業数はガーメント(衣服)工場と履物工場を合わせて 660 社で、そのうち 184 社が 中国企業だ。 縫製業に次いで投資額が大きいのは農業分野だ。2013 年は、件数は 4 件と少ないものの、う ち 2 件が 5,000 万ドルを超える大型投資で、総額では 1 億 4,123 万ドルとなっている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 51 世界銀行は 2014 年 10 月の「カンボジア経済アップデート」報告で、カンボジアの成長エンジン として、縫製、観光、農業、建設の 4 分野を挙げた。ただし、農業分野については以前ほど経済 へのインパクトはないとしている。一方で、縫製業は 2014 年 2 月から月額最低賃金(基本給)が 80 ドルから 100 ドルに引き上げられたものの、今後もカンボジア経済を押し上げる主力産業とな り得ると指摘した。縫製業は不動産、インフラ、農業などに比べて 1 件当たりの投資額が小さく、 進出企業の資本金も 1 億円程度が多い。中国とカンボジア間の経済関係は政府間のみならず、 中堅民間企業レベルでも拡大している様子がうかがえる。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 52 大型案件なく前年比 4 割強の落ち込み(インド) 2014 年 12 月 03 日 ニューデリー事務所(西澤知史) 中国からインドへの直接投資は、両国の貿易額の大きさに比べると極端に少ない。2013 年は 大型案件がなく投資額は前年比 43.0%落ち込んだ。インドは対中貿易赤字のバランスを取る手 段として、中国からの投資受け入れを積極的に行う姿勢を一層強めており、9 月中旬の印中首 脳会談では、中国は今後 5 年間で 200 億ドルの投資をインドに対して行うことを表明している。 <製造業が上位投資案件の 5 割弱> インド商工省産業政策促進局(DIPP)によると、中国からの直接投資額は 2000 年 1 月から 2013 年 12 月までの累計で 3 億 1,305 万ドルで、シェアは対内直接投資総額の 0.164%(国別順 位では 30 位)にとどまる(表参照)。中国企業による、シンガポールやモーリシャスなどを経由し た迂回投資を考慮しても、その存在感は極めて小さい。なお、2012 年以降の投資額が 2000 年 4 月以降の中国からの投資総額の 7 割を占めていることは特徴的だ。 中国からの直接投資の内訳をみると、2013 年は前年比 43.0%減の 7,951 万ドルとなり、過去最 高額を記録した前年から大きく減少した。2012 年には、中国の商用車メーカーで世界最大手の 福田汽車が現地法人へ 9,386 万ドルを出資する案件がみられたが、2013 年にはこうした大型案 件はなかった。 2013 年最大の投資案件となったのは、低品質の鉄鉱石の粉末のパレット化を主要事業とする エックスインディアへの追加投資で、投資総額は 3,284 万ドル。同社は中国企業 4 社、インド企業 2 社、米国企業 1 社による合弁企業で、バンガロールに本社を持つ。今回の投資は中国五鉱集 団(China Minmetals)や山西宏達鋼鉄集団(Hongda Iron & Steel Group)など中国側の出資会 社によるものだった。次いで、上海日立電機(日立アプライアンスが 25%、上海海上集団が 75% 出資する合弁会社)が、グジャラート州の現地法人に 1,361 万ドルを出資した案件がある。同社 はエアコン用コンプレッサーの製造を行う。さらに亜普汽車部件(YAPP Automotive Parts)による 現地法人への追加投資案件(859 万ドル)が続く。同社はチェンナイに保有する工場で自動車用 の燃料タンクを製造する。これらを含めた上位投資案件の業種を分析すると、鉄鋼や自動車部 品などの製造業が全体の 5 割弱を占め最多で、これに医療機器や肥料などの卸売業、金融業 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 53 が続いた。インフラ関連投資は総額の 1 割に満たなかった。 一方、2013 年のインドの対中貿易関係をみると、輸出入を合わせた貿易総額は 660 億 4,100 万ドル(前年比 3.8%減)となり、中国はアラブ首長国連邦を抜いて最大の貿易相手国となった。 対中貿易の内訳をみると、輸出は綿糸、非鉄金属や鉄鉱石などを中心に 145 億ドル(2.6%減)、 輸入は電子機器や一般機械などを主に 515 億ドル(2.5%減)で、インド側の貿易赤字は 370 億ド ル(6.2%減)となった。 <中国は 5 年間で 200 億ドルの投資を表明> 中国の習近平国家主席は 9 月 17~19 日にインドを訪問。インド国内に 2 つの中国企業専用工 業団地を整備することや、今後 5 年間に 200 億ドルの投資を行うことなどを表明した。習国家主 席に同行した 100 社の中国企業はインド企業との間で 24 の覚書(MOU)を締結した。モディ首相 は習主席との首脳会談後にコメントを発表し、「印中が持つ潜在能力を考えると、これまでの経 済関係は互いに公平なものとはいえなかった。私は習国家主席にインドが抱える対中貿易赤字 の現状を訴え、インド企業による中国市場へのアクセスの向上や投資の機会の創出をお願いし た。習国家主席はわれわれの懸念を認識し、必要なサポートを約束してくれた。私は既に中国企 業によるインフラや製造業への投資を奨励している」と述べた。 インドは対中貿易のバランスを取る術として、中国から製造業投資を誘致することで輸入を削 減し、経常赤字を改善したい考えだ。そもそも、インドでは 1962 年の国境紛争以降も依然として 国境線をめぐる中国との緊張状態が続いている。このため安全保障上の懸念を理由に、中国か らの投資受け入れに消極的だったことも事実だ。習国家主席の訪印中にも印中国境のラダック で数百人規模の中国人民解放軍がインド側に侵入する事件があった。しかし、印中の経済関係、 とりわけ貿易関係が緊密さを増す中、インドが対中貿易赤字解消に向けて無策であることは許さ れず、一方で中国がインドからの輸出を急拡大させることが非現実的である以上、インドにとって は中国からの投資受け入れ拡大の道を選ばざるを得ないという現状もある。中国からの投資が 一気に拡大することは想像しにくいが、2012 年以降の投資動向をみると、中国企業によるインド への投資機運が高まり始めている段階といえるかもしれない。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 54 国別 1 位に、援助の流れが企業進出を後押し(スリランカ) 2014 年 12 月 18 日 コロンボ事務所 (小濱和彦) 中国からの対スリランカ直接投資は 2013 年に最高額を記録し、国別順位でも 1 位に躍り出た。 国主導で進められてきた中国からの資金援助の流れが、中国企業のスリランカ進出を後押しす るという構図ができつつあり、中国とスリランカの外交・経済関係は一層緊密さを増している。 <5 年連続トップドナー> スリランカ財務計画省の年次報告書によると、2013 年の中国の対スリランカ援助額(コミットメ ント)は 5 億 1,800 万ドルと前年の 10 億 5,700 万ドルから大きく金額を減らしたものの、アジア開 発銀行などからの多国間援助も含む外国援助総額の 20.7%を占め、中国が 2009 年以降 5 年連 続でトップドナーの地位を維持している(図 1 参照)。 中国の主な開発プロジェクトは、「マータラ~カタラガマ間鉄道延伸プロジェクト」のマータラ~ ベリアッタ間の整備(2 億 8,300 万ドル)、「ハンバントタ港開発プロジェクト・フェーズ 1」の付帯工 事と備品供給(1 億 4,700 万ドル)などだ。日本は中国、インド、欧州の援助額が軒並み落ち込む 中にあってほぼ前年並みで推移し、2 国間ドナーで 2 位(援助総額の 19.9%)につけ、1960 年代 から援助を続けている老舗ドナーとして存在感を堅持している。 <民間の直接投資でも 1 位に> 民間の投資でも中国の存在感が増大している。中国からの直接投資額は、2012 年に前年の 17 倍を超える 1 億 8,500 万ドルを記録、国別順位も 15 位から一気に 3 位に躍進した(図 2 参照)。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 55 2013 年はさらに拡大し、投資額にして 2 億 4,000 万ドル、国別順位は 1 位になった。 ここ数年間の投資の中心は、コロンボ国際コンテナターミナル(CICT)によるコロンボ港でのコン テナターミナル建設案件向けだ。2011 年 12 月から始まった工事は 2014 年 4 月に完工し、投資 総額は 5 億ドルに上る。コンテナ処理能力は 240 万 TEU(20 フィートコンテナ換算)で、世界最大 となる 1 万 8,000TEU 積載のコンテナ船も接岸できる港となった。 これ以外に、中国の通信機器大手中興通訊(ZTE)が、スリランカ最大の通信事業者スリラン カ・テレコム(SLT)の携帯電話子会社モビテル(Mobitel)が手掛ける第 4 世代移動通信システム の基地局と通信施設を整備・建設した。投資額は 4,000 万ドルで、2013 年の通信部門への投資 で最大となった。経済成長に伴い、インフラ分野の整備が中国企業の手によって順調に進んで いる。 <関係深めるスリランカと中国> 2014 年 9 月 16~17 日、中国の習近平国家主席が国家主席としては 28 年ぶりにスリランカを 訪問した。ラージャパクサ大統領との首脳会談後には「両国の戦略的パートナーシップ関係を深 化させるための行動計画」が発表され、27 に及ぶ協定が締結された。そのうち、民間の直接投 資に関連する主な協定は次のとおり。 ○ハンバントタ拠点化開発計画におけるスリランカ向け譲許的融資の枠組み協定 ○南部高速道路の延伸(マータラ~ハンバントタ間の第 4 区間)におけるスリランカ向け譲許的 融資の枠組み協定 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 56 ○ノロチョライ石炭火力発電所の技術協力における覚書 ○コロンボ外郭環状高速道路フェーズ 3 の建設における優遇バイヤーズクレジット貸し付け協 定 ○コロンボ・ポートシティー開発計画フェーズ 1 の条件規定協定 インフラ整備には道路と電力の整備が多いが、その中の「コロンボ・ポートシティー(港湾都市) 開発計画」は新しいタイプの都市開発プロジェクトだ。スリランカの経済発展に伴って、最大都市 コロンボは南アジアにおける物流・商業・観光も含めたビジネスハブになっていくことが期待され ており、施設だけでなく働く人々の住宅用地が必要となっている。一方で、コロンボ市内ではこれ ら大規模都市開発に必要な広大な土地の確保は難しい。 この状況を打開するため、コロンボ・ポートシティー開発計画ではコロンボの沖合を埋め立て て、モナコよりも少し広い 233 ヘクタール規模の人工島を造成し、ドバイのような一大リゾート施 設を建設する予定だ。国有企業の中国交通建設(CCCC)が工事を請け負い、最初の 2 年で沖合 を埋め立て、その後ホテル、高層マンション、レクリエーション施設、ショッピングモール、ゴルフコ ース、ビジネスセンターなどが建設される。完成予定は 2022 年。中国からの投資総額は 14 億ド ルとなり、スリランカの外国投資案件としては最大となる。人工島の所有権については、125 ヘク タールがスリランカ政府、残りの 108 ヘクタールのうち 20 ヘクタールが CCCC、88 ヘクタールが CCCC への 99 年リースとなる。投資規模が莫大であることに加え、領土・主権の観点から中国の 影響力が強まることを憂慮する声もあるが、本プロジェクトはスリランカと中国の外交・経済関係 が緊密度を深める中、中国支援で建設されたハンバントタ港やコロンボ港コンテナターミナルと 同様にマイルストーンとなるだろう。 さらに、首脳会談で習国家主席は自身が提唱する「アジアインフラ投資銀行」の設立メンバー になるようスリランカに求め、ラージャパクサ大統領は賛同の意向を示した。両国間の自由貿易 協定(FTA)締結についても交渉のスピードアップが約束された。2014 年 10 月 28 日付の当地の 各種報道は、財務計画省の財務副長官の発言として、両国間の FTA は 2015 年 6 月に締結され る予定と伝えている。FTA が締結されれば貿易の拡大は加速度を増し、中国企業の活動範囲も より一層広がり、中国からの直接投資増にもつながると期待されている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 57 通信分野が急拡大、国別で初の首位に(パキスタン) 2014 年 12 月 05 日 カラチ事務所 (久木治) 中国にとって地政学上の重要な位置にあるパキスタン。中国はこれまで政治のみならず経済 関係の強化を図ってきた。2013/2014 年度(2013 年 7 月~2014 年 6 月)の中国からの直接投 資額(パキスタン中央銀行、国際収支統計)は 7 億ドルを超え、国別で初の首位に立った。その 投資先は通信分野だった。中国系の地場企業を通じて、中国製スマートフォンが市場に出回っ ており、さらなる普及も見込まれている。 <パキスタンへの直接投資は従来、米英が牽引> これまでの対パキスタン直接投資は、国別ではおしなべて米国と英国が上位を占め、アラブ首 長国連邦(UAE)とスイスが続いてきた。主な投資先の産業は、原油・ガス、通信、金融だ。 2005/2006 年度(2005 年 7 月~2006 年 6 月)以前に、パキスタンへの直接投資額で中国が上 位にランクインすることはほとんどなかった。中国が存在感を示したのは 2006/2007 年度で、7 億 1,200 万ドル(パキスタンへの投資総額の 14.61%)と国・地域別で 3 位に入った。 しかし、それ以降は中国からの投資は低迷を続けた。その間の両国関係においては、2007 年 に自由貿易協定(FTA)が締結され、中国の家電メーカーや自動車メーカーがパキスタンに進出 し、2011 年には人民元とのスワップ協定締結などがあり、2010/2011 年度からは回復傾向がみ られたものの、2012/2013 年度の中国からの投資額は 9,062 万ドルにとどまった。パキスタンへ の投資総額の 6.3%にすぎず、国・地域別では 5 位(ただし、香港は 2 億 4,260 万ドルで 2 位)だ った。 それが、2013/2014 年度におけるパキスタンの対内直接投資総額は 16 億 3,130 万ドルとなり、 そのうち中国からの投資額は 42.9%を占める 7 億 30 万ドルと前年度比で 7.7 倍に膨れ上がり、 初めてシェアで首位に立った(表参照)。 その投資先は全て通信だ。上述の 2006/2007 年度の中国からの直接投資も通信向けだった。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 58 これらの投資効果もあって、パキスタンの過去 5 年間の携帯電話回線契約数は 45%増加の 1 億 3,600 万回線となった。 2013/2014 年度の通信分野への投資額 7 億 30 万ドルのうち、5 億 1,600 万ドルが第 3 世代(3G) と第 4 世代(4G)モバイル通信のライセンス取得に充てられた。今後はパキスタンでも中国製を 含めてスマートフォンの普及がさらに進むとみられる。 2013/2014 年度については、従前の国・地域別の順位と異なる結果が見て取れる。これまで は米国と英国に UAE とスイスが続いていたが、中国と香港の台頭およびスイスの伸びにより、中 国(構成比 42.93%)、香港(13.91%)、スイス(13.87%)の順となり、米国、英国、UAE はいずれも 上位 3 位に入らなかった。その主因の 1 つは、パキスタンの石油ガスだ。この分野には従来、主 に米国と英国が投資してきたが、2011/2012 年度からは香港もこの産業分野に注力し、2012/ 2013 年度および 2013/2014 年度は香港からの投資額のほぼ全額がこの分野に注がれた。ま た、もう 1 つの要因としては、スイスが 2005/2006 年度以降、一貫して金融分野に対して投資を 続けており、2011/2012 年度以降は順調に投資額を増加させていることが指摘される。 <インフラ分野へ投資先が広がる見通し> 2013 年 6 月のパキスタン新政権発足とともに、両国は「パキスタン・中国経済回廊計画」を発表。 2014 年 8 月には 2 回目の中パ協力委員会が開催され、同回廊に関わるプロジェクトとして、道路、 鉄道、港湾などのインフラ整備事業の推進が議論された。 現在、パキスタン所在の中国企業は 45 社で、400 人以上の中国籍の外国人が取締役として登 録されている。今後は通信のみならずインフラ分野へと、中国からの投資先が広がることが見込 まれている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 59 EPZ への最大の投資国に(バングラデシュ) 2014 年 12 月 08 日 ダッカ事務所(酒向奈穂子、倉沢麻紀) 2013/2014 年度(2013 年 7 月~2014 年 6 月)は、中国からバングラデシュへの製造業の投資 が加速し、輸出加工区(EPZ)において最大の投資国となった。EPZ への累積投資額では、韓国、 地場企業に続く 3 位となり、存在感を示している。民間投資の活発化に加え、2014 年 5 月にハシ ナ首相が訪中し、習近平国家主席との会談で、両国の経済関係の強化を合意した。また、イン フラ整備の経済協力や、バングラデシュ、中国、インド、ミャンマーをつなぐ経済回廊の開発を再 確認しており、今後は貿易、投資、人的交流が深化していく兆しだ。 <生産拠点を移す中国の労働集約型産業> バングラデシュ輸出加工区庁(BEPZA)が公表した、EPZ 内への直接投資統計によると、中国 (香港を含む)の 2013/2014 年度の投資額(実行ベース、地場企業からの投資も含む)は、前年 度比倍増の 8,388 万ドルとなった(図参照)。国別では、地場資本、韓国を抜き、最大の投資国と なった。 累積投資額では、韓国(6 億 4,472 万ドル、構成比 20.2%)、地場資本(6 億 2,777 万ドル、19.7%) に次いで 3 位(4 億 5,327 万ドル、14.2%)となり、存在感は大きい。日本(2 億 9,740 万ドル、9.3%) は 4 位で、EPZ の製造業への投資は、中国が日本を上回るペースだ。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 60 EPZ には、87 社(中国 51 社、香港 36 社)が投資しており、業種別にみると、約 6 割の 53 社が アパレル〔布帛(ふはく、注)またはニット製品の縫製、副資材・アクセサリー、帽子など〕。次いで、 靴・皮革製品が多い。少数であるが、電子部品、玩具などがある。 中国での人件費高騰と人手不足によって、労働集約的な中国のアパレル関連企業はバング ラデシュに生産拠点を移行し始めている。今後、中国での人件費の上昇と労働力不足がより深 刻になれば、代替地を求めてバングラデシュへ進出する労働集約的な中国の製造業は増加す ると見込まれる。 <貿易赤字の是正が課題> 現在、中国はバングラデシュにとって最大の輸入相手国だ。バングラデシュ中央銀行によると、 2012/2013 年度の中国からの輸入額は、63 億 2,405 万ドルを記録した。一方、バングラデシュ 輸出振興庁によると、中国への輸出額は 4 億 5,811 万ドルで、58 億 6,593 万ドルの貿易赤字だ。 バングラデシュ政府は中国政府に対し、巨額な貿易赤字の是正を求めている。現在、同国と 中国、インド、韓国、スリランカ、ラオスの 6 ヵ国が加盟するアジア太平洋貿易協定(APTA)にお いて、バングラデシュは対中輸出で 4,788 品目の無関税アクセスを享受できているが、より多くの 品目の無関税アクセスを要求している。 ただ、バングラデシュでは、アパレル以外の裾野産業が十分に確立していないため、現地調 達できない原料や部品は中国などからの輸入に依存するという構造になっており、貿易赤字の 是正には時間がかかりそうだ。 <高まる親密度> 中国は、インド洋への陸路のアクセス確保に余念がなく、バングラデシュを地政学上の重要拠 点として位置付けている。また、バングラデシュも中国によるインフラ分野への経済開発に期待 を寄せ、親密度が高まっている。 ハシナ首相は、2014 年 6 月の訪日直後に訪中し、習国家主席と会談した。習国家主席とハシ ナ首相による共同声明では、2015 年が両国が外交関係を樹立して 40 周年になることに触れ、今 後のさらなる経済関係の強化が期待されると述べ、貿易投資、科学技術、メディア、教育、文化、 人的交流まで含めた包括的な協力を強調した。 <インフラ整備、経済回廊の協力案件が進行> 2 ヵ国間の経済協力の一環として中国は、バングラデシュの 5 つのインフラ案件を実施するこ とに合意した。具体的には、IT インフラの整備、ラッシャンヒ地域での地表水処理設備、カルナフ リ川をまたぐ鉄道と陸橋の建設、チッタゴン~コックスバザール間の新規鉄道建設、一点係留方 式の海上での石油精製所の整備事業だ。 また、最重要議題としてバングラデシュ、中国、インド、ミャンマーをつなぐ経済回廊(BCIM Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 61 EC:Bangladesh-China-India-Myanmar Economic Corridor)開発の重要性を再確認した。各 国の連結性を高め、開かれた投資・生産市場を築くことを目指す。4 ヵ国協力を推進するため、 中国はバングラデシュが第 2 回共同部会(JSG:Joint Study Group)を開くことを歓迎している。 (注)木綿、麻、絹(またはそれらを混合したもの)を原糸とする布、織物など繊維製品の総称。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 62 農業ビジネスや農地分野への増加が際立つ(オーストラリア) 2014 年 12 月 05 日 シドニー事務所(平木忠義) 2013 年の中国からの直接投資額(ネット、フロー)は前年比 43.5%増の 48 億 9,700 万オースト ラリア・ドル(約 4,897 億円、豪ドル、1 豪ドル=約 100 円)と、初めて日本を上回り、米国、英国に 次ぐ 3 位となった。特に、投資残高については 2006 年の 5 億 5,000 万豪ドルから 2013 年には 208 億 3,200 万豪ドルに増加し、7 年間で 40 倍近くに達した。全体に占める割合も 2006 年の 0.1%から 2013 年は 3.3%に拡大している。資源価格下落に伴う資源会社の割安感のほか、食 糧安全保障の観点から農業ビジネスや農地分野への投資の増加が際立っている。 <中国からの投資は 7 年で約 40 倍に> オーストラリア統計局(ABS)が発表した 2013 年の対内直接投資額(ネット、フロー)は、前年比 5.3%減の 526 億 6,700 万豪ドルだった(表 1 参照)。国・地域別では、米国が 58.2%増の 239 億 2,700 万豪ドルで首位、英国が 9.6%増の 113 億 9,900 万豪ドルと続いた。日本は 55.6%減の 45 億 7,500 万豪ドルだった。近年投資額が伸びている中国は 43.5%増の 48 億 9,700 万豪ドルで、 初めて日本の投資額を上回り、投資額シェアで米国、英国に次ぐ 3 位となった。また、投資残高 については 2006 年の 5 億 5,000 万豪ドルが 2013 年には約 40 倍の 208 億 3,200 万豪ドルに急 増し、全体に占める割合も 2006 年の 0.1%から 2013 年は 3.3%に拡大させており、投資分野に おいても中国のプレゼンスの高まりが際立っている。 <不動産や農業ビジネスへの投資はさらに拡大> 外国投資審査委員会(FIRB)の年次報告書によると、2013 年度(2013 年 7 月~2014 年 6 月) の中国からの業種別対内直接投資額(認可ベース)は全体で前年比 2.4%減の 158 億 300 万豪 ドルだった(表 2 参照)。鉱物探査・開発が 21.2%減の 82 億 7,300 万豪ドルとなったことが大きく 影響した。一方、人口増加や中間層の拡大に伴う食文化の多様化などによる食糧安全保障の 観点からオーストラリアの農業ビジネスや農地といった分野への投資が増加するとともに、市場 最低金利を背景とするオーストラリアの住宅市況の活性化が中国からの不動産投資を呼び込ん でいることから、両分野への投資額が大きく拡大している。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 63 中国からの農業分野への投資について、9 月 16 日付「オーストラリアン」紙は「農業分野への投 資ブームが到来した」と報じている。その中で、北京農業産業投資基金(Beijing Agricultural Investment Fund)が玉湖農業投資(Yuhu Agriculture Investment)と共同で設立したジョイントベ ンチャーの北京オーストラリア農業資源共同発展基金(Beijing Australia Agricultural Resource Co-operative Development Fund)を通じて、30 億豪ドル規模をオーストラリアの乳製品、牛肉、 羊肉、水産養殖分野に投資することを明らかにした、と伝えている。この投資について、アンドリ ュー・ロブ貿易・投資相は「地場の酪農農場に対する投資の実施で、乳製品加工、特に乳児用粉 ミルクの生産と中国向け輸出を主眼に置いている」と説明している。 また、同紙は中国の民間企業が北部のダーウィンから南西に車で約 2 時間のエリザベス・ダウ ンズの牧場の土地 20 万 5,000 ヘクタールを 1,200 万豪ドル、牛 9,000 頭を 700 万豪ドルで購入し た、と報じている。これは中国からオーストラリア北部地域に対する最初の牧場投資で、将来的 に拡大するアジア市場を見越した 9,100 万豪ドル規模のダーウィンの食肉処理場の操業開始に 合わせた、との見方を示す一方、購入者がオーストラリアにおいて既にゴルフ場やホテルの経営 に携わっていることから牧場周辺に対する観光施設誘致などの地域活性化も期待されるとして いる。 バーナビー・ジョイス農業相は 9 月 15 日に訪問先の中国で、「もし、両国が 2014 年末までに自 由貿易協定(FTA)を妥結したとしても(注)、FTA はオーストラリアの農家に対して懸念をもたらす ものではない。アジア各国の人口を考えた場合、オーストラリアはアジアの食糧供給地になるこ とはできない。私たちは中国に対して脅威を覚えておらず、中国に対して質の高い食料品を提供 する。現在、オーストラリアでは輸出を含めても 6,000 万人分の食料しか供給できず、オーストラ リアとハルビン市(中国黒龍江省)の人口さえ支えることはできない。たとえ生産が 2 倍の 1 億 2,000 万人分になったとしても、隣国のインドネシアの人口にも満たない」と述べ、FTA が締結さ れたとしてもオーストラリアの農業生産量の限界から農業分野では両国は競合しないとの認識を 示した。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 64 <2014 年上半期は 2 件の鉱業部門の大型案件が主導> プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が 2014 年 9 月に発表した「2014 年上半期の中国 の M&A 動向」によると、中国のオーストラリアでの M&A は 2013 年下半期の 17 億米ドルから 2014 年上半期は 42%増の 24 億米ドルに増加した。このうち、広東省広晟資産経営による、東南 アジアを中心に銅・金採掘を行う資源会社パンオーストの残りの株式 77.2%を 10 億 5,500 万米ド ルで取得した案件と、宝鋼集団とオーストラリアの鉄道貨物輸送会社オーリゾンが共同で石炭・ 鉄鉱石採掘を行う資源会社アクイラ・リソーシズの株式 80.2%を 10 億 4,100 万米ドルで取得した 案件が 88%を占めた。 PwC パートナーのアンドリュー・パーカー氏は「オーストラリアン」紙(2014 年 9 月 17 日)に、「鉱 業部門への投資に対する関心が依然として残っていても、今後は不動産やインフラ、農業、健康、 消費といった分野への投資が拡大するだろう」とコメントし、中国からの投資は鉱業部門のみなら ず不動産や農業分野などの幅広い分野に及んでいくとの見方を示した。また、同氏は「11 月の G20 の開催に合わせた習近平国家主席の訪豪時に妥結する見込みのオーストラリアと中国の FTA は FIRB の審査対象となる投資金額を民間、国有企業を問わず日本、韓国と同等の 10 億 7,800 万豪ドルに引き上げるだろうと多くのアナリストは予測している。北京筋によると、中国は今 後 5 年間で 5,500 億米ドルの M&A を行う予定で、同期間に行われる中国の産業近代化や都市 化は PwC の推計で 11 兆米ドルに上り、オーストラリア経済の約 6 倍の価値がある」としている。 また、「在豪中国大使はこの状況をオーストラリアにとっては金鉱のようなものだと表現している。 この表現はある意味正しく、オーストラリアの外国投資に対するスタンスを正しい方向に導くこと で過去 10 年の間にみられた商品価格ブームと同等もしくはそれを上回る規模の投資の利益を 享受することができる」として、今後予想される中国からの直接投資がオーストラリアに対して大 きな利益をもたらすとの見方を示している。 中国の寧波牛●(女へんに乃)集団(Ningbo Dairy Group)はビクトリア州に 1,500 万豪ドルの投 資を行い、3 つの牧場の購入や改修を実施した。同集団は、現在 1 日 1 万リットルの新鮮な牛乳 をメルボルンやシドニーから中国向けに輸出しており、今後は中国から労働者を派遣して新たな 牛乳加工設備の建設を行いたいが、そのためには規制緩和(労働者の受け入れ基準の緩和) が必要だ、としている。 中国とオーストラリアの FTA 交渉では、中国政府から民間、国有を問わず外国投資審査基準 の最低額の引き上げ(緩和)や中国人労働者の受け入れ緩和を求められており、オーストラリア 政府は難しい判断を迫られていた。 (注)2014 年 11 月 17 日に、オーストラリア・中国 FTA は大筋で合意した。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 65 食品分野で過去最大の M&A が成立(米国) 2014 年 12 月 09 日 ニューヨーク事務所(磯部真一) 2013 年の中国からの対米直接投資は、統計上は減少する一方、個別案件をみると、前年か ら大きく拡大したもようだ。中国企業による米企業の買収として史上最高額となる約 70 億ドルの 案件が食品分野で成立した。そのほかの大型案件はエネルギー分野が占めるが、不動産分野 も伸びが著しい。ただし今後については、2016 年の大統領選挙などに絡んで米政界が対中強 硬姿勢を取り、中国からの投資熱が一時的に弱まる可能性もある。米中が双方向の投資拡大 を目的に交渉を進める投資協定の締結は、2017 年までずれ込むと指摘されている。 <対米投資増加の流れは変わらず> 米商務省の統計によると、中国からの 2013 年の直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー) は前年比 30.7%減の 24 億 1,900 万ドル、投資元をたどる最終受益株主(UBO)の考えに基づい た直接投資残高は 80 億 2,300 万ドルだった(表 1 参照)。米国の対内直接投資全体に占めるシ ェアは、フローが 1.0%、残高が 0.3%と非常に小さい(注 1)。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 66 近年急増する中国企業の対米投資の勢いを捉える上では、米国民間調査会社のローディア ム・グループが公表している「チャイナ・インベストメント・モニター」が参考となる(注 2)。これによ ると、中国企業による対米投資額(引き揚げは含まない)は 2010 年以降、毎年過去最高を記録 している(図参照)。さらに、2013 年に関しては前年比約 2 倍となる 140 億ドルに上った。 米中経済に詳しいアメリカン・エンタープライズ研究所のデレク・シザーズ研究員はジェトロの インタビューに対し、「米国経済の規模に比べて中国からの対米投資の規模は非常に小さい。裏 を返せば伸びしろがあるということで、今後も毎年、前年の実績を塗り替え続けるだろう」と長期 的見通しを語る。しかし一方で、そうした勢いに米中間の政治関係が水を差す恐れは十分あり得 る、と指摘する。シザーズ氏は 2016 年がその節目になるとみる。同氏は「米国で大統領選挙が 開催される 2016 年には米国政治が中国に対して強硬な姿勢を取ることが予想される。そして、 中国側がそうした米国政治の変化を見誤ると、2005 年に中国海洋石油(CNOOC)が石油大手の ユノカルを、2011 年に通信大手の華為技術(ファーウェイ)が通信企業のスリーリーフを、買収し ようとして失敗したようなことが起こり得る」との見方を示す。 <中国からの投資を依然歓迎しつつも警戒> 近年、中国からの投資案件における規模が拡大し、分野も多様化する傾向にある。2013 年も、 この傾向は一層顕著になった。前出の「チャイナ・インベストメント・モニター」によると、2013 年の 中国企業による対米直接投資は、グリーンフィールド案件が 61 件で 8 億 4,400 万ドル、M&A 案 件が 46 件で 131 億 8,200 万ドルとなっている。分野別では、これまでどおりエネルギーが件数、 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 67 金額ともに大きなシェアを占めるが、娯楽・不動産が件数では同等の規模となり、金額でも迫り つつある(表 2 参照)。 食品分野では、双匯国際による米食肉加工最大手スミスフィールド・フーズの買収案件が、中 国企業による米企業の M&A 案件としては過去最高となる約 70 億ドルを記録した。 スミスフィールド・フーズの案件を受けて、一部の米連邦議員が、外国投資委員会(CFIUS)が 審査する基準に食品安全も含めるべきだと主張した。CFIUS は財務省所属の機関で、外国企業 による米企業・資産の買収が米国の安全保障に脅威となるかを審査する。最終的に基準を広げ ることにはつながらなかったが、米国政府の保護主義的な動きとして今後も注目する必要があ る。 シザーズ氏は中国企業が米国で関心を持つ分野について、「米国には中国企業が手にしたい ものが全てそろっている。中でも関心が高いのが技術と土地だ」と分析する。技術に関しては、 必ずしもハイテクに限らず、産業全般を見渡して中国企業が持たない技術なら何でも対象となる とし、最近では、米国が商業生産に成功したシェール層の石油ガス資源の掘削技術に注目して いると指摘する。実際に、ここ数年で中国のエネルギー企業が米国のシェール資源の権益の一 部を買収する事例が目立っている。土地については、米国には商業や農業に使える土地が豊富 に存在し、特に農業に関して中国は、自国の土地を汚染してしまった経緯もある、とした。 シザーズ氏は「さらに加えるとすれば、金融分野も中国企業の関心の的だ」とみる。一般的に 外国企業が金融企業を買収しようとすると大きな反発が起きるが、米国の金融システムは膨大 なので、それほど大きくない案件は簡単に見過ごされるという。「今後もしばらくは、この 3 分野へ の投資が中国企業の主眼となるだろう」と同氏は見通している。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 68 一方で、米国内には急増する中国からの投資を、1980 年代の日本からの投資に重ねて、脅威 とする向きもある。特に、大規模な投資案件などについては米議会が反発を強めることも少なく ない。シザーズ氏はこうした傾向に関して、スミスフィールド・フーズの買収案件を例に取り「本件 における議員の反応には、政治的な人気取りで騒いだという側面と、中国に対して欲しいもの全 てを手に入れられると思うのは間違いだとくぎを刺した側面がある」と分析する。しかし同氏は、 中国企業の対米投資は国内雇用の創出にも寄与する米国経済へのプラス要因だとし、「安全保 障上の問題がなければすぐに許可を出し、むしろ買収後に中国企業が買収企業をどう経営する のかを注視すべきだ」と見解を語った。 <2017 年まで交渉環境整わずの見方> 米中は現在、2 国間投資協定(BIT)の締結に向けて交渉を進めている。米国側は中国のサー ビス産業市場の開放に期待を寄せる一方、中国側はしばしば米国で政治問題化する米企業の 買収について安全弁を確保することが主要な狙いとみられている。2013 年 7 月の第 5 回米中戦 略・経済対話(S&ED)では、中国側が外国からの投資に対する産業の自由化について、ネガテ ィブリスト方式(注 3)を採用すると合意したことで交渉が大きく進展した。さらに同じく 7 月の第 6 回 S&ED では交渉の行程について、「2014 年のうちに協定の主要な問題と協定文書の主な条 項に関する文面を整理すること」「2015 年にはネガティブリストに関する交渉を開始すること」で 合意した。 こうした動きを前向きに捉える向きもある中で、シザーズ氏は米中 BIT 交渉が 2017 年までに妥 結することはないだろうとみる。同氏は「現在、中国の習近平政権は腐敗防止運動の一環で、独 占禁止法に基づく外国企業に対する法執行を強化している。米国企業がこのような不当な扱い を受けている環境下で、交渉がまとまるはずはない。腐敗防止運動が一段落した時が交渉前進 の時機と考えているが、米国大統領選挙のある 2016 年には逆に米政界が中国に強硬な姿勢を 取ると予想される。従って、2017 年までは交渉環境が整わないだろう」とみている。 (注 1)商務省統計は投資案件の積算時期や改定によって数値が大きく異なることがある。 (注 2)同資料は、グリーンフィールド投資では「フィナンシャル・タイムズ」紙のデータベース「FDI マーケッツ」を、M&A 投資ではトムソン・ロイターのデータベース「トムソンワン」をベースとし、そ れに各種ビジネス関連メディアのレポートや産業界から得た情報を追加したもの。 (注 3)例外とする分野以外は全て開放する方式で、指定した分野のみを開放するポジティブリス ト方式と比較して一般的に自由化の度合いが高いとされる。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 69 投資法の改正がブレーキとなり急減(カナダ) 2014 年 12 月 09 日 トロント事務所(小川春香、ジョニー・タン) 2013 年の中国からカナダへの直接投資は、カナダの新投資法に基づく外資規制強化とオイ ルサンド開発の遅延により急減した。カナダの資源開発には外資の受け入れが不可欠である一 方、カナダ側には中国ビジネスに対する警戒感も見え隠れする。 <中国との貿易投資に慎重な姿勢も> カナダの投資法は 2012 年 12 月に改正され、国有企業の対カナダ直接投資に関する規制が 厳格化された。新投資法に基づくと、外国の国有企業によるカナダ企業の買収は原則認めず、 また 3 億 5,400 万カナダ・ドル(約 372 億円、C ドル、1C ドル=約 105 円、導入時 3 億 4,400 万 C ドル)以上の投資案件についてはカナダ政府による定期的な審査が入るなど、その内容は外資 参入を抑制するものとなっている。 この改正が起因して、中国からの 2013 年の投資は件数、金額とも大幅に減少した。カナダ統 計局によると、直接投資残高は増加している(表 1 参照)。しかし、米シンクタンクのヘリテージ財 団の調べでは、中国企業の対カナダ直接投資額(個別案件の積み上げ)は、中国海洋石油 (CNOOC)によるカナダのオイルサンド企業ネクセン(Nexen)の買収があった 2012 年の 215 億 7,000 万ドルから、2013 年は 2 億 2,000 万ドルへと減少した。例年のエネルギー分野一色の傾向 と比べると、他分野における投資が目立っている(表 2 参照)。 新投資法に対する批判の声は多く、ジム・プレンティス・アルバータ州首相(元産業相)は「新 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 70 法は、将来の投資家として国有企業は歓迎しないというメッセージであり、石油ガス分野におけ る中国からの投資を実質的に停止させた」と述べる。さらには、現ハーパー政権の中国に対する 政治的関心の低下が、カナダ企業の中国との貿易ビジネスへの取り組みに対する警戒心を助 長しているともいわれている。カナダ・アジア太平洋財団のユーエン・パウ・ウー特別上級研究員 (前理事長)は、「中国との投資協定発効の遅れや自由貿易推進への関心の欠如が、中国への 懐疑に拍車を掛けている」と政府の姿勢を批判する。 <オイルサンド開発の遅延も要因> オイルサンド開発の遅延も、企業の投資活動衰退の一因だ。カナダにおけるオイルサンド開 発は、管理・運営費の倍増、ロイヤルティー制度の改定、コンプライアンスコストの上昇、環境規 制の厳格化、パイプライン承認の遅延、環境負荷に対する国民の反発、米国や他国との競争の 激化などが足かせとなり、投資が小休止しているか後退する案件が増えている。中国のみなら ず、韓国やサウジアラビアなど他国の企業においても、オイルサンドへの追加投資への関心は 低く、既存案件の効率化と利益率向上が優先課題だ。 その一例として、中国石油天然気集団(ペトロチャイナ)はアサバスカオイル(在カルガリー) のドーバー・オイルサンド・プロジェクトの権益取得を 13 億 2,000 万 C ドルで合意したが、運営会 社の方針変更が原因となって 2014 年 6 月に予定した支払いを延期し、再交渉の結果、最終的な 投資額は 11 億 8,400 万 C ドルと初期の案より縮小した。 また、中国石油化工(シノペック)、中国生活保険グループ、中国銀行、中国投資コープは共 同でサンシャイン銀行の約 58%の株を保有するが、アルバータ州北部ウエスト・エルプロジェクト の運営資金や債務返済に必要な追加投資(推定 5 億 C ドル)を中断。債権者やサプライヤーへ の返済ができず、プロジェクトは一時休止となっている。 シノペックは、50%の権益を保有する原油開発計画ノーザン・ライツ・オイルサンド・プロジェ クトについても全権益を売却し、プロジェクトから撤退することを検討中だ。シノペックは、2005 年 からの 10 年間で合計約 70 億 C ドルをカナダのオイルサンドプロジェクトに投資してきたが、経済 性が芳しくないことを理由に、オイルサンド開発に消極的な姿勢を示すようになっている。一方で、 西海岸ブリティッシュ・コロンビア州における LNG 輸出プロジェクトの進展に伴い、より環境負荷 の少ない LNG 開発に関心を向け、2013 年 4 月にマレーシア国営石油会社ペトロナスが率いるパ シフィック・ノースウエスト・プロジェクトの 15%の権益を新たに取得した。 <中国との投資協定がようやく発効> 他方で、中国との投資促進に向けた動きもみられる。2012 年 9 月に中国とカナダ間で調印さ れた投資促進および保護に関する協定(FIPA)は発効が遅れていたが、調印 2 年後の 2014 年 10 月に発効した。調印時、外国企業の投資を促進させる法的な制約と権利の大枠が固められ、 その後、中国側は批准を終えたものの、カナダ側の批准が遅れていた。野党の新民主党(NDP) はこの公約に対し、「中国国有企業に民間企業と同等の権限を与えるものとなりかねない。中国 にカナダの天然資源へのアクセスと管理を与えることになるだろう」と懸念を示している。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 71 自動車産業やインフラ分野への投資目立つ(ブラジル) 2014 年 12 月 10 日 サンパウロ事務所(辻本希世) ブラジル中央銀行によると、中国からブラジルへの投資は 2007 年以降 2010 年まで急増し、 その後は年間 1 億ドルから 2 億ドルの間の水準で推移している。ただし、中国企業の投資の多く は第三国経由といわれ、実際の投資額ははるかに大きいとみられる。近年の特色として、石油 や鉱業資源関連企業の買収や原料サプライヤーへの投資など第一次産業向けから、通信など のインフラ、資本財、自動車産業向けへの変化が挙げられる。 <中国からの投資の多くは第三国経由> 中央銀行の統計で中国からのこの 10 年の投資をみると、2004 年に 400 万ドル、2005 年に 800 万ドル、2006 年には 700 万ドル前後で推移していたのが、2007 年以降に急増した。ピークの 2010 年には 3 億 9,500 万ドルに達した(図参照)。 中国からの直接投資に限らず、第三国を経由した投資の場合、経由国からの投資と見なされ るため、中央銀行データのみで全容を把握することは困難だ。中国からブラジルへの投資の多く がバージン諸島などの租税回避地域を介して行われているとみられる。 2013 年の国・地域別対内直接投資額は多い順に、オランダ(105 億 1,100 万ドル)、米国(90 億 2,100 万ドル)、ルクセンブルク(50 億 6,700 万ドル)、チリ(29 億 6,300 万ドル)となっている(表 1 参照)。2010 年の投資急増について、中銀データでは 3 億 9,500 万ドルだが、国内大手行の 1 つであるブラデスコ銀行によると、中国(香港を含む)からの投資は 2010 年には 73 億 4,800 万ド ルに上り、2013 年は 2 億 4,500 ドルとしている。2010 年の投資額が大きい理由としては、中国石 油化工集団(シノペック)が、スペインの石油会社レプソルのブラジル子会社の株式 40%を 71 億 ドルで取得したことがあるという。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 72 <人材育成への投資も> ブラジル中国ビジネス協議会の 2014 年 8 月報告書によると、近年は自動車をはじめとした工 業分野や、電力などインフラ分野への投資が目立っている。 事例としては、2012 年 7 月に中国重型汽車が 1 億 5,000 万ドルでトラックのノックダウン工場を 建設、2014 年 8 月には奇瑞汽車が 4 億ドルをかけて中国メーカー初となる自動車工場と隣接地 にエンジン工場(1 億 3,000 万ドル)を新設している。さらに、当地経済紙「エザーメ(EXAME)」は、 安徽江淮汽車が 2015 年に北東部のバイーア州に 10 億レアル(約 460 億円、1 レアル=約 46 円)で年間 10 万台の生産能力を持つ工場を設立する予定、と報じている。 電力インフラ分野では、2014 年 4 月に中国の長江三峡集団がサンマノエルの水力発電事業に おける 3 分の 1 の株式をポルトガル電力公社(EDP)から購入。また、世界最大の電力配送会社 である国家電網はパラ州からサンパウロ州までの送電網プロジェクト入札で、フルナス(Furnas)、 エレトロ・ノルチ(Eletro-norte)とコンソーシアムを組むに当たり、全体の 51%に相当する 45 億 レアルの投資を行った。同社は既にブラジル国内において、総延長 6,000 キロ以上に及ぶ送電 網の運営権を保有している。 2013 年の中国企業の主な投資案件は表 2 のとおり。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 73 中国からの投資は今後も継続しそうだ。2014 年 7 月にはブラジル・中国首脳会議が行われ、 ルセフ大統領と習近平国家主席は 32 項目にわたる合意に調印した、と当地紙は報じている。合 意内容は幅広く、鉱工業やエネルギー、金融など多岐にわたっている。鉄道網建設計画の入札 にブラジル大手ゼネコンと中国企業がコンソーシアムで参加すること、インフラ関連や水力発電 事業でも両国企業が協力することのほか、企業間の協力と交流、技術提携などについても覚書 が交わされ、教育面でも人材育成への投資などが盛り込まれている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 74 大型投資が活発、経済協力も緊密化進む(英国) 2014 年 12 月 11 日 ロンドン事務所(園田早紀) 英貿易投資総省(UKTI)によると、2013 年度(2013 年 4 月~2014 年 3 月)の中国からの投資 件数は前年度比 25.7%増の 88 件だった。2014 年 6 月 17 日にロンドンで行われた英中首脳会 談において、中国への液化天然ガス(LNG)供給、英インフラ整備への中国投資の拡大、英国に おける人民元取引の推進など、経済協力の強化に合意した。9 月 12 日には第 6 回英中経済財 政金融対話を受けて、英国が中国以外で初めて人民元建て国債を発行すると発表するなど、両 国経済は緊密化している。 <中国からの投資件数は国・地域別 6 位> 国民統計局(ONS)による 2012 年(最新)の直接投資統計によると、中国からの直接投資は 1 億 9,300 万ポンド(約 362 億 8,400 万円、1 ポンド=約 188 円)だった(2011 年は非公表、2010 年 は 900 万ポンド)。UKTI によると、2013 年度の中国からの投資案件は前年度比 25.7%増の 88 件で、国・地域別で 6 位だった(前年度 7 位、表参照)。 UKTI などによると、2013 年度の個別案件としては、中国の大手自動車メーカー吉利汽車 (Geely)が「ブラックキャブ」の名称で親しまれるロンドンタクシーを製造するマンガニーズ・ブロン ズを約 1,100 万ポンドで買収した(2 月)ほか、不動産大手の大連万達集団による高級ヨットメーカ ー、サンシーカー・インターナショナルの買収や、中国企業による初の海外高級ホテルとなる 5 つ 星ホテル「ワンダ・ホテル」の建設を含む不動産プロジェクト(総額約 7 億ポンド)があった。10 月 にはジョージ・オズボーン財務相が率いた中国ビジネスミッションで、北京建工集団(BCEG)が、 英建設会社カリリオン、グレーター・マンチェスター年金基金と合弁で、総工費 8 億ポンドと見込 まれる欧州最大級のオフィスビル・複合商業施設マンチェスター空港都市開発を受注した、と発 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 75 表した。 2014 年 1 月には、中国の大手デベロッパーの緑地集団が RAM ビール工場跡地を取得し、英 国初の投資となる住宅や商業施設の開発計画を発表した。6 月には大手生命保険の中国人寿 保険が、ロンドンのカナリー埠頭(ふとう)に位置する面積 9 万平方メートル超の高層ビルの権益 70%を取得した。このように不動産投資が相次ぎ、この傾向は継続する見通しだ。また、9 月に は、中国の複合企業である三胞集団傘下の南京新街口百貨商店が、英老舗百貨店のハウス・ オブ・フレーザーの株式約 89%の取得を完了したと発表。ハウス・オブ・フレーザーの企業価値 は約 4 億 8,000 万ポンドとされ、中国の小売業界では最大規模の外国企業の買収となった。 <ロンドン市場で人民元決済が可能に> 中国の李克強首相は 6 月 16~19 日に英国を公式訪問し、17 日にキャメロン首相との首脳会 談で、エネルギー、金融、インフラなどを中心とした経済分野の協力を強化することで合意した。 とりわけ、英石油大手 BP が 2019 年から 20 年間にわたり、年間 150 万トンの LNG を中国海洋 石油(CNOOC)に 120 億ポンド相当で供給する契約は注目を集めた。金融分野では、アジア以 外で初めてとなる人民元決済がロンドン市場でできるようになり、取扱銀行として中国建設銀行 が指定されたほか、ポンドと人民元の直接取引が可能となった。インフラ分野では、英国の原子 力発電所の新設プロジェクトにおける中国企業の参画促進や高速鉄道新線計画(HS2)を含む 両国の鉄道設計・建設に関する覚書(MOU)を締結するなど、キャメロン首相は中国からのインフ ラ投資を歓迎する姿勢をみせた。同会談で締結された貿易や投資に関する各種契約は総額 140 億ポンドに上った。 両国は投資促進に向けた支援にも積極的に取り組んでいる。その一例として、オリバー・レトウ ィン内閣府政府政策担当相は 3 月 25 日、在北京英国大使館で「中国企業在英国投資ガイド (2014 版)」を発表した。中国国家発展改革委員会対外経済研究所が中心となって作成した同ガ イドは、初の中国企業向け外国投資ガイドだ。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 76 投資額は低水準にとどまるも案件数は増加傾向に(ドイツ) 2014 年 12 月 10 日 デュッセルドルフ事務所(ゼバスティアン・シュミット) 中国企業のドイツへの関心は高い。ドイツ向け直接投資額は低水準にとどまっているものの、 案件数の増加が目立つ。ドイツ企業の買収を通じ、優れた技術とノウハウを獲得することが中国 企業の主な狙いだ。ドイツ企業にも利点は多く、中国企業による買収に決して後ろ向きではな い。 <製造業への投資は引き揚げ超過> ドイツと中国の経済関係は近年、密接になりつつある。貿易の推移をみると、2013 年のドイツ の中国向け輸出額は 670 億 2,500 万ユーロと、2005 年の 212 億 3,500 万ユーロの 3 倍強になっ た(表 1 参照)。輸入額も大幅に増え、2013 年は 737 億 100 万ユーロだった。ドイツにとって中国 は輸出先としては 5 位、輸入先としては 2 位で、最も重要な貿易パートナーの 1 つとなっている。 両国の経済関係強化の象徴として、2014 年 1 月にベルリンで EU 域内初の中国商工会議所が開 設されたことが挙げられる。 両国の投資動向をみると、ドイツ企業の中国向け投資は以前から目立ったが、中国企業のド イツ向け投資額は現在でも低水準にとどまる。ドイツ連邦銀行の 2014 年 6 月の発表によると、 2013 年の中国からの対内直接投資額(ネット、フロー)は 400 万ユーロと、2012 年の 6 億 9,700 万ユーロに比べ大きく減少した(表 2 参照)。 中国からの投資を業種別にみると、法律・会計・特許事務所などを含む専門サービス(5,300 万 ユーロ)と金融・保険(3,600 万ユーロ)を中心に、サービス分野への投資が 4,600 万ユーロとなっ た。製造業への投資は 2012 年に引き続き、引き揚げ超過となった。機械への投資は増加したが、 化学、金属、自動車・同部品などが軒並み引き揚げ超過だった。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 77 <投資案件は 139 件に増加> 中国からの投資額は依然として低水準にとどまっているものの、投資案件数は増加している。 ドイツ貿易投資促進機関(GTAI)のレポートによると、2013 年の中国企業による投資プロジェクト 件数は 139 件と、2012 年の 98 件から増加した。プロジェクト案件を業種別にみると、電子機器・ 半導体が 16%、産業機械が 13%、食品・アルコール飲料を含む消費財が 11%で上位を占め た。 中国企業による最近の投資事例をみると、食品包装メーカー紛美包装(Greatview)が 2013 年 6 月、東部ザクセン・アンハルト州で中国国外初の工場を開設したほか、商用車大手の中国国際 海運集装箱(CIMC)は 2013 年 11 月、経営破綻に陥った消防車メーカーのツィーグラー(Ziegler) を 5,500 万ユーロで買収した。 そのほか、鉄道・自動車用部品メーカー株洲時代新材料科技(Times New Material Technology、 TMT)は 2013 年 12 月、大手自動車部品メーカーの ZF フリードリヒスハーフェンのゴム・樹脂事 業を買収し、新会社を設立することに合意した。2014 年 9 月 1 日からボーゲ・エラストメタル (BOGE Elastmetall)として営業開始したと、「ノイエ・オスナブリュッカー・ツァイトゥング」紙(9 月 1 日)が報じている。経営陣と従業員をそのまま残すという。 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 分 野 の 案 件 も あ っ た。 薄 型 太 陽 光 パ ネ ル メー カ ー の正 泰 太 陽 能 (Astronergy)が 2013 年 12 月、太陽光大手コナジーのドイツ東部ブランデンブルク州フランクフル ト・アン・デア・オーダーにあるソーラーモジュールの生産工場を買収した。この投資は 210 人の 雇用を創出したという。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 78 2014 年に入っても、中国による投資活動は活発だ。電力サービス大手の中国電力建設集団 (パワーチャイナ)が 2014 年 2 月、シーメンスグループの産業用ファンメーカーの TLT ターボを買 収した。 さらに 5 月には、国有企業の中国航空工業集団(AVIC)の子会社 AVICEM が、自動車エンジン 用部品メーカーのハイライト(Hilite)を買収すると発表した。ハイライトはドイツのほか米国と中国 にも拠点を置き、同月時点の従業員数は 1,370 人。ハイライトのカール・ハンマー最高経営責任 者(CEO)は「AVICEM とハイライトは理想的な連携相手だ。AVICEM と一緒になることで現在の勢 いを保ち、持続可能な成長基盤を築く。AVICEM が持っているパワートレインの製品群をわれわ れの優れた技術とノウハウで補完する」と、AVICEM による買収の利点について述べている。 AVICEM はさらに 2014 年 7 月、自動車用トランスミッション部品メーカーのコキ・テヒニク・トランス ミッション・システムズ(KOKI)を買収した。KOKI は買収に関するプレスリリースで AVICEM との提 携について、「欧州においても、自動車市場の成長が著しい中国においても、持続可能な成長と さらなる国際化の基盤となる」と発表した。買収後も、KOKI の現在の拠点、従業員と経営陣はそ のままにするという。 <買収されたドイツ企業にも利点が> 中国企業がドイツ企業を買収する狙いとして、優れた技術・ノウハウや顧客網の獲得のほか、 「メード・イン・ジャーマニー」というブランド力を自社製品に付けることがある。 一方、ドイツでは長年、中国企業による買収が大幅な人員削減や工場の閉鎖につながるとの 懸念が強く、メディアでもネガティブな報道が多かった。しかし、AVICEM の買収事例で紹介したと おり、中国企業による買収をビジネスのさらなる成長と国際化のチャンスとして捉えるドイツ企業 が実際に増えている。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は中国企業に買収されたドイ ツ企業 22 社を対象に、買収に合意した理由や買収後の展開についてヒアリングし、その結果を 2013 年 8 月に発表した。ドイツ企業が買収に合意した理由(複数回答)として、12 社は「成長戦略 を実現するための外部の投資家を探していた」と回答した。そのほか、経営困難に陥った企業や 経営後継者が見つからない企業も買収に好意的だった。8 社は「(企業や事業の)再構成が必要 だった」、3 社は「経営後継者を探していた」と回答。買収後の雇用者数について、7 社は「増加し た」、12 社は「変わりなし」、3 社は「減少した」と答えた。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 79 フランス企業買収でアフリカ事業拡大を狙う動きも(フランス) 2014 年 12 月 11 日 パリ事務所(山崎あき) 2013 年の中国からの直接投資額は約 5 億ユーロの引き揚げ超過になったものの、投資案件 は 33 件と前年の 31 件に続き好調だった。高級ブランドのほか、製造業で事業再編を打ち出した 企業を買収するケースが目立った。フランス企業の買収を通じアフリカ事業の拡大を狙う動きも みられた。 <高級ブランドへの投資が活発> 対仏投資庁(AFII)によると、フランスには既に 310 社の中国企業が進出し、国内でおよそ 1 万 6,000 人を雇用している。2009 年以降、投資案件が急速に増えており、毎年 30 件余りの新規投 資案件がある。2013 年の対仏直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー、第三国経由を含ま ない)は約 5 億ユーロの引き揚げ超過(フランス銀行発表)となったものの、中国企業の対仏投資 案件は 33 件(うち香港が 3 件)と前年の 31 件に続き好調だった。 フランスで中国投資家の関心が高いのは高級ブランド・嗜好(しこう)品だ。ここ数年、中国で人 気のボルドーワインの製造業者を買収する動きが続く。2013 年もシャトー・ルデンヌとシャトー・ ド・リュガニャックが中国企業の傘下になった。ボルドーでは 2008 年以降、80 余りのシャトーが中 国投資家に買収されたという。 パリに店舗を開くことで高級ブランドの確立を狙う企業も出てきた。中国の宝飾ブランド TTF は 2013 年 9 月、高級宝飾商が集まるパリのバンドーム広場に国外初店舗を開設。同社は「パリは 高級宝飾の都として国際的に評価されている。ジュエリーに関わるブランド・マーケティング、デ ザイン、宝飾技術、優秀な人材にアクセスできる戦略的な場所だ」とし、今後 10 年間で 1,000 万 ユーロを投資する方針を示した。 <買収企業を通じて販路拡大> 製造業では販路拡大や技術獲得を目的にしたフランス企業の買収が多い。鋳造製品製造マノ ワール・インダストリーズは 2013 年 6 月、同社が非戦略部門と位置付ける原子力・石油化学・鉄 道向け金属加工事業を中国の鍛鋼製品大手の煙台台海に売却した。マノワール・インダストリー ズはフランスの原発大手アレバの下請け企業の 1 つで、アレバがフランス電力公社(EDF)に納 入する原発用蒸気発生器の部品を製造する。煙台台海は同事業買収により原発向け鋳鍛鋼製 品製造分野で世界大手企業となった。マノワール・インダストリーズのブランド名を使い、欧州の ほかインド、中東などに販路を広げる計画だ。 また中国の馬鞍山鋼鉄は 2014 年 6 月、フランスの鉄道用輪軸製造バルデューヌを 1,300 万ユ ーロで買収したと発表した。バルデューヌはフランス重電・鉄道大手アルストムの TGV などの高 速鉄道向けの輸軸に特化した製造技術を持つ。同社は欧州債務危機に端を発した業績不振で 破産・更生手続きを進めていた。馬鞍山鋼鉄は生産施設の近代化に向け今後 5 年間に 5,000 万 ユーロを投資。欧州向け高速鉄道用輪軸をバルデューヌに統括する。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 80 さらに、今後はフランス企業と組んだ中国企業の第三国への輸出や投資が増えていくとみられ る。原発部門では 2013 年 10 月、EDF、アレバと組んだ中国広核集団(CGN)と中国核工業集団 (CNNC)が、英南西部ヒンクリーポイント C 原子力発電所建設計画の受注に成功している。 <銀行パリ支店がアフリカ関連業務担う> フランスの企業買収を通じアフリカ事業の拡大を狙う動きもある。中国最大のコンテナターミナ ル・オペレーター招商局国際(CMHI)は 2013 年 1 月、フランスの海運・コンテナ運送大手 CMA CGM の子会社ターミナル・リンクの株式 49%を取得すると発表した。南仏マルセイユを本拠地と するターミナル・リンクはアフリカではコートジボワール(アビジャン)とモロッコ(タンジェ、カサブラ ンカ)でコンテナターミナル事業を展開。CMHI はターミナル・リンクを通じ、アフリカ大陸への進出 強化を図る。CMHI は 2006 年にナイジェリア、2012 年にトーゴとジブチでコンテナターミナル事業 に既に参入していた。 空輸部門では、海南航空の親会社である海航集団(HNA グループ)が 2012 年にフランスと北ア フリカの中距離路線を主力とするエーグル・アズール航空に出資、パリを中継地として北京と北 アフリカを結ぶ路線を開設したのに続き、2013 年 8 月にはフランスのパイロット養成校 ESMA を 買収。訓練生の受け入れを中国やアフリカ諸国に広げるなど、アフリカ事業の拡張を打ち出して いる。 中国企業の欧州・アフリカ進出が進む中、中国輸出入銀行は 2013 年 10 月、同行初の国外支 店をパリに開設した。AFII によると、同支店は在仏および在欧中国企業向けの金融仲介業務の ほか、アフリカ・フランス語圏向け貿易・投資ファイナンスを統括。全業務のほぼ 4 分の 1 をアフリ カ関連事業が占めるという。アフリカでは治安悪化に伴い現地での業務遂行が難しい国もあるこ となどから、交通の便が良く、言語を共有するパリへの進出を決めたとしている。 これまでは米国や中東資本が占めてきた高級ホテル業界でも中国資本の進出が目立つ。 2014 年 6 月、香港の投資会社である開源ホールディングスがパリ・マリオット・ホテル・シャンゼリ ゼを 3 億 4,450 万ユーロで買収すると発表した。8 月には高級ホテルを運営する香港&上海ホテ ルズがカタール資本との合弁で、欧州初進出となるザ・ペニンシュラ・パリを凱旋門近くの高級地 区に開設した。世界最大の観光都市パリは高級ホテルの客室稼働率が高いことで知られる。今 後は中国観光客の増加に伴い、4 つ星、3 つ星ホテルにも中国資本が広がっていくとみられてい る。 <中国企業の対仏投資拡大に期待> 全般的に「中国企業の投資はフランスの経済・雇用にプラス」と受け止められている。AFII は在 仏中国企業に関する調査報告書(2014 年 3 月公表)の中で、「大部分の中国投資家は長期的な 視点に立って経営を行い、景気変動など短期的な判断で撤退を決めるようなことはない」と評価 し、在仏中国企業側も「フランスの労働・環境規制を順守している」などとしている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 81 フランス最大手の経済紙「レ・ゼコー」も、2014 年 2 月の「歓迎します! 中国がフランスに投資 するとき」と題した特集記事で中国企業によるフランス企業の買収案件を検証。フランスと中国企 業の提携により「フランス企業は資本と(中国)市場を、中国企業は(フランス企業が持つ)ノウハ ウと新たな販路を獲得することができ、双方にとり有益」と分析した。国内景気の低迷が続き、雇 用情勢に明るい兆しがみられない中、中国企業の対仏投資拡大に期待が高まっている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 82 金融・不動産が伸び 20%弱拡大(ロシア) 2014 年 12 月 12 日 モスクワ事務所(エカテリーナ・クラエワ) 連邦国家統計局によると、2013 年の中国からの直接投資額は前年比 19.6%増の 2 億 5,377 万ドルだった。国別にみた中国の直接投資残高の構成比は 1%強にとどまっており、両国は 2020 年までに中国の対ロシア直接投資が 7 倍に増加することを期待、自動車、資源エネルギー、 交通インフラ整備などの分野に投資拡大の可能性があるとみている。 <2013 年末の中国の対ロシア直接投資残高は 14.9%増> 2013 年の対内直接投資額(届け出ベース、グロス、フロー)は前年比 39.9%増の 261 億 1,800 万ドル。そのうち中国は前年比 19.6%増の 2 億 5,377 万ドルで、構成比は 1.0%だった(表 1 参照)。 業種別にみると、金融業が前年比 72.4%増加し全体の 21.7%、1.9 倍に増えた不動産取引が 19.6%を占め、建設(18.9%)、鉱業(12.9%)、製造業(10.7%)の順となっている。 2013 年末の対内直接投資残高(届け出ベース)は 1,260 億 5,100 万ドルで、前年末比 7.3%減 だった(表 2 参照)。国・地域別ではキプロスが全体の 35.5%を占め、続いてオランダ(18.8%)、ド イツ(10.1%)の順となっている。中国は前年末比 14.9%増の 16 億 7,900 万ドルとなり 11 位、シェ アは全体の 1.3%だった。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 83 <2020 年までに中国の投資額を 7 倍に> 中国の張高麗副首相は、2014 年 9 月に北京で開催された中ロ投資協力委員会で、「中ロ関係 の急速な発展が投資・金融分野での 2 国間協力関係の拡大につながっている」と指摘するととも に、「2014 年も引き続き中国の対ロシア直接投資は活発だ。これまでの中国の対ロシア投資総 額は 320 億ドルに上り、第 4 の投資国となった」と述べた。 同委員会に出席したイーゴリ・シュワロフ第 1 副首相は両国の投資関係拡大について、「ロシア 側は両国の投資関係を拡大させるために、投資意欲のある中国企業向けに新たな分野を用意 し、最も有利な投資条件と金融サービスを提供する予定がある」と述べた(中ロ貿易振興団体通 信 9 月 10 日)。 これに先立つ 2014 年 5 月 16 日、ロシアのアレクセイ・ウリュカエフ経済発展相と中国の高虎城 商務部長は中国(青島市)で APEC 貿易担当相会合に併せて行われた会談で、相互投資がロシ アと中国の経済成長の新たな起点となることを強調した。進行中のプロジェクトにより、中国の対 ロシア直接投資額は 2020 年までに 7 倍になると期待されている。 <自動車や資源エネルギー分野に将来性> プーチン大統領は、2014 年 5 月の中国訪問時の中国メディアとのインタビューの中で、中国と の協力関係拡大はロシアの対外政策の優先事項だと強調した。2 国間の投資の促進に力を入 れる必要があると述べ、将来性のある分野として自動車、農業製品加工、資源エネルギー、交 通インフラ整備などを挙げた。また、カルーガ州にある空港の再建(請負企業はペトロ・へフア)と 同州での自動車部品製造工場の設立(フヤオガラスの自動車用ガラス工場と YAPP の樹脂性燃 料タンク製造工場)を両国の投資協力の成功事例として挙げた(大統領府ウェブサイト 5 月 19 日)。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 84 フヤオガラスは 2011 年 6 月、「自動車用ガラス製造工場の建設プロジェクト実施」についてカル ーガ州と投資契約を締結した。2013 年 9 月には工場の開所式が行われ、製造を開始した。同プ ロジェクトの投資額は 2 億ドルとなった。2014 年に始まった自動車分野における最大の投資プロ ジェクトは、長城汽車のトゥーラ州での自動車製造工場建設だ。同工場はロシア初の中国自動 車メーカーの工場となる。2017 年に稼働予定で、年間生産能力は 15 万台と想定されている。投 資総額は 5 億ドル。 資源エネルギーも中ロ投資の重要な分野だ。中国大手石炭生産企業の神華集団は 2013 年 3 月、各種鉱山事業などを運営するロシアの En+および中国開発銀行と、ロシアにおける石炭、 エネルギー、インフラ関連プロジェクトでの協力について合意し、同年 12 月には、En+傘下のボ ストシブウゴリとシェンフアの合弁企業であるラズレズ・ウゴリがザバイカル地方(シベリア連邦管 区)で石炭採掘権を取得した。 また神華集団は、ロシアの RT・グロバリヌィエ・レスルスィとアムール州での石炭採掘に関する プロジェクトの実施について覚書を締結した。両企業は石炭採掘のほか、沿海地方で「ポルト・ベ ラ」という石炭港ターミナルを建設することで合意した。着工は 2015 年の予定。 中国企業はロシアにおけるインフラ関連プロジェクトにも関心がある。2014 年 5 月、中国鉄建 (CRCC)と香港に本拠地を置く中国国際基金(CIF)は、モスクワ市の地下鉄新線の建設につい てモスクワ市が所有するモスインジプロエクトと契約を締結した。新線の距離は 14.9 キロで、6 駅 が設置される計画だ。2015 年に着工した場合、早ければ 2017 年にも完工する。同プロジェクトの 投資額は 20 億ルーブル(約 50 億円、1 ルーブル=約 2.5 円)となる見込み(ノーボスチ通信 5 月 21 日)。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 85 インフラ、エネルギー分野を軸に拡大(イラン) 2014 年 12 月 16 日 テヘラン事務所(豊永嘉隆) ローハニ政権になったことで、外国企業、特に中国企業と投資家のイランへの関心が高まっ ている。その中心はインフラ、エネルギー分野であり、鉄道電化事業や石油化学事業に進出し ている。今後、核協議が合意に達し経済制裁が解除されれば、直接投資の大幅な拡大が見込 まれる。 <資金と技術の呼び込みに注力> イラン経済財政省・投資経済技術支援機構は、国外からの資金と技術の呼び込みに力を入れ ている。また、同省は第 5 次経済開発計画(2010 年 3 月~2015 年 3 月)に基づき、2015 年 3 月 までに投資促進のための包括パッケージを公表し、投資家支援を強化する方針だ。経済制裁に より、外国企業のノウハウ、サービス、経営管理、技術導入に制限があったことから、イランと国 連安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた 6 ヵ国(P5+1)との核協議が最終的に合意して 経済制裁が解除された場合には、外資による資金や技術の導入が一気に高まるものとみられる。 ファルス通信によると、ベフローズ・アリシリ前副経済財政相(前イラン投資経済技術支援機構総 裁、現同相顧問)は 2014 年 7 月 7 日、2013 年度(2013 年 3 月~2014 年 3 月)の対内直接投資 額は 33 億 1,700 万ドルに達したと発表した。 <大型案件に相次いで参入> 「イランデイリー」紙によると、モハマッド・アリ・アブリシャミ産業鉱山貿易省次官兼イラン中小 企業・工業団地機構総裁は 5 月 7 日、中国はイランの労働力を使って工業団地を建設すると発 表した。この案件は、中国との経済関係強化と生産性向上を目的としており、中国側は建設候補 地を検討しているという。 インフラ分野では、6 月に中国との間で、テヘラン~マシャド間の鉄道電化事業に関して契約が 結ばれた。イラン側は電力、エネルギー、鉄道などのプロジェクトを手掛ける企業 MAPNA、中国 側は台湾の中華汽車工業(CMC)などによる共同事業だとファルス通信は報じている。プロジェ クトは、現行の軌道の補修・建設、高速鉄道用軌道の建設、車両調達などからなり、テヘラン~ マシャド間を現在の 12 時間から 6 時間に短縮、年間 3,500 万人の利用を見込んでいる。工期は 42 ヵ月間の予定。 エネルギー分野では、アッバス・シリモガダン石油省次官兼国営石油化学会社社長と中国側 が 8 月 25 日、中国がカビアン II、ロレスタン、マハバード、タクテジャムシッド、マールブダシュト の 5 つの石油化学事業に出資することに合意し、イラン中央銀行がプロジェクトを承認すれば実 施される、と地元メディアが報じた。事業規模は 20 億ユーロ。中国はイランの同分野への投資に 力を入れており、シュラー、ロルデガン、ハンガン、ガシュサラン、サバラン、サダーフの各プロジ ェクトに出資するとも報道されている。 一方、中国企業のイラン市場からの撤退もみられ、エネルギー分野では、中国国営石油が南 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 86 アザデガン油田から撤退した。同社は 2009 年 10 月、イラン国営石油会社と 25 億ドルのバイバッ ク契約に調印した。契約では生産量を第 1 段階で 1 日当たり 32 万バレル、第 2 段階では 60 万 バレルを見込んでいた。しかし業務が遅れ、2014 年 1 月に石油省は同社に対して 3 ヵ月以内に 業務を改善するよう求めたものの、改善がみられず、4 月 29 日に契約を撤回した。契約では第 1 段階で 185 本の試掘が予定されていたが、7 本が掘削されただけだった。その後は、イランの石 油エンジニアリング開発会社とイラン国営掘削会社がプロジェクトを進めている。 <対中貿易は拡大傾向> 経済制裁に伴い、イランと世界との貿易は縮小傾向にあるが、中国との貿易は拡大傾向にあ る。2013 年度に非石油製品の中国への輸出額は 74 億 3,200 万ドル(2012 年度は 55 億 100 万 ドル)、中国からの輸入額は 96 億 4,900 万ドル(81 億 6100 万ドル)だった。イランは中国にとって 3 番目の石油供給国で、消費量の約 12%を輸入している。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 87 金融や不動産部門での動き活発(アラブ首長国連邦) 2014 年 12 月 15 日 ドバイ事務所(内田政義) アラブ首長国連邦(UAE)への中国企業の進出が増加している。進出企業数は 4,200 社、在留 中国人数は 30 万人ともいわれる。統計で確認できる限りでは中国の対 UAE 投資額は低水準だ が、2013 年以降は金融部門や不動産部門で中国資本の動きが活発だ。UAE 側も世界 2 位の経 済大国である中国との関係強化に積極的で、政府レベルでは戦略的パートナーシップの構築を 推進している。 <中国企業の UAE 進出、急速に拡大> UAE 国営通信によると、UAE に進出している中国企業数は約 4,200 社に上る。ドバイ商工会議 所に照会したところ、同会議所に加盟している中国企業数は 2012 年に 2,200 社、2013 年は 2,530 社、2014 年は 2,885 社と年率 15%前後の高い伸び率を示している。また、中東のハブ港湾となっ ているドバイのジュベル・アリ港に隣接するジュベル・アリ・フリーゾーン(JAFZ)への 2013 年の新 規入居企業数を国籍別にみると、中国は地元 UAE やインドに次ぐ 3 位の 44 社で、近年では JAFZ への主要な投資国に名を連ねる。こうした企業進出の結果、UAE の人口約 900 万人に対し て、UAE 在留の中国人数は 30 万人ともされ、当地において中国人コミュニティーは存在感を増し ている。 しかし、外国直接投資統計ベースで確認できる範囲では中国の占める割合はまだ小さい。UAE 国家統計局によると、UAE の国別直接投資受入額(非居住者による不動産投資を含む)の最新 データは主要 10 ヵ国しか明らかにされていないが、2012 年では、英国、インド、フランス、日本、 米国などとなっており、中国はトップ 10 圏外で金額も公表されていない。 UAE への直接投資は同国 GDP の 9 割以上を構成するアブダビとドバイの両首長国が大半を 占めるとみられる。アブダビ統計センターによると、アブダビ首長国の 2012 年までの直接投資残 高 142 億 2,246 万ドル(非居住者による不動産投資を含む)のうち香港およびマカオを含む中国 が占める割合は 0.4%(5,689 万ドル)にすぎない。日本の 4.5%、韓国の 1.7%に比べると極めて 低水準だ。また、ドバイ統計センターによると、ドバイ首長国の香港を含む中国からの 2011 年の 直接投資受入額は前年比 31.6%減の 12 億 6,271 万ドルとなっており、受入額総額 419 億 4,000 万ドルの 3.0%にとどまる(注 1)。 一方、中国側の統計「2013 年度中国対外直接投資統計公報」によると、中国の UAE 向け直接 投資は増加傾向にあることが確認できる。2013 年は前年比 2.8 倍の 2 億 9,458 万ドルに急増し た。過去数年の推移をみると、2005~2007 年の 3 年間の平均額が年 3,444 万ドルだったのに対 し、2008~2010 年は同 1 億 8,837 万ドル、2011~2013 年の直近 3 年間では同 2 億 3,809 万ドル と年々大きく伸びている。特に、2008 年のリーマン・ショック、2009 年のドバイ・ショックという経済 危機以降に直接投資が急増しており、ストックベースでは過去 3 年で 2 倍、過去 7 年(2006 年比) では 10 倍以上となる 15 億 1,457 万ドルに増加している。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 88 <4 大国有銀行出そろう> 中国企業の対 UAE 外国直接投資については、その業種別動向や個別案件に関する公式資 料・統計が公表されていないことから、全体像の把握は困難だ。報道や個別機関・企業のプレス リリースなどで確認できる範囲では、2013 年の中国資本の動きとして、金融部門と不動産部門 が活発だった。 金融部門では中国工商銀行(ICBC)が中国の金融機関として初めて 2008 年にドバイ国際金融 センター(DIFC)に進出し子会社を設立していたが、2013 年 11 月には ICBC ドバイ支店として業 務を開始、2009 年にはアブダビ支店が卸売銀行業ライセンスを取得した。2013 年 2 月には中国 銀行が中東初の進出先として DIFC に中国銀行中東を開業し、3 月には中国農業銀行が続いた。 4 月には中国建設銀行も DIFC に進出し、4 大国有銀行が DIFC に出そろった。DIFC はドバイを 世界的な金融ハブの 1 つにすることを目指して 2004 年に開設されたフリーゾーンで、各種の優遇 措置が講じられている。日系メガバンク 3 行も DIFC に拠点を持つ。DIFC は 2014 年 5 月にエッ サ総裁率いる使節団を北京に派遣し、中国の財界要人らと会談を行うなど、世界 2 位の経済大 国である中国との関係強化を重視している。 各種報道によると、不動産部門では中国資本がドバイの不動産に対して 2013 年に前年の 3 倍 近い 13 億ディルハム(約 416 億円、1 ディルハム=約 32 円)を投資し、非アラブ諸国としては 7 位に入った。ドバイの不動産市況は 2012 年半ばごろから再び高騰しつつあり、投資目的での購 入が活発化している。大規模な不動産開発に参画する中国企業も現れ始めた。中国建築工程 は 2013 年 6 月、ドバイの不動産投資会社 SKAI ホールディングスが開発する高級ホテル、バイ スロイ・ドバイ・パームジュメイラに出資をすることを発表した。同プロジェクトは総額 10 億ドルに 上り、完成は 2016 年を予定している。中国建築工程は 2005 年にドバイに現地法人である中建 中東を設立し、湾岸地域で住宅や病院、オフィスビルなどを建設してきたが、投資するのは今回 が初めて。また、香港企業の周大福養老産業投資発展が 2014 年 2 月に高級住宅やホテルなど からなるパール・プロジェクトの資産をドバイの不動産デベロッパー、ドバイ・パールから 19 億ド ルで購入したと報じられている。 <両国、戦略的パートナーシップ関係を推進> UAE と中国は 2012 年 1 月に戦略的パートナーシップ協定に調印した。中国の温家宝首相(当 時)の UAE 訪問時に、ムハンマド副大統領兼首相との間で合意したものだ。経済関係では、貿 易・投資の促進のほか、インフラ分野、金融分野、エネルギー分野での協力の推進をうたってい る。同首相の訪問中には、両国中央銀行による貿易・投資促進を目的とした 200 億ディルハムの 通貨スワップ協定、アブダビ国営石油(ADNOC)と中国石油天然気集団(CNPC)による未開発地 域における石油生産プロジェクトでの協力協定など、両国間で複数の覚書(MOU)が締結された。 同年 3 月にはアブダビのムハンマド皇太子が北京を訪問している。 UAE と中国は 1984 年に外交関係を樹立し、2014 年で国交樹立 30 周年を迎える。2014 年 4 月に UAE を訪問した中国外交部の張業遂副部長はムハンマド・アブダビ皇太子との会談で、 「UAE は中東・湾岸地域における中国の重要な戦略的パートナー」とした上で、投資、エネルギ Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 89 ー、インフラなどさまざまな分野での両国間関係を強化し、湾岸協力会議(GCC、注 2)と中国と の自由貿易圏創設を促進したい、と話した。UAE 側も中東地域でのビジネスと観光の両面にお ける自らのハブ機能を強化し、さらなる成長を実現していくために、中国との経済関係強化を重 視しており、両国関係は今後一層の拡大が見込まれる。 (注 1)UAE 全体の 2011 年の外国直接投資受入額は 76 億 7,900 万ドルで、ドバイの受入額を大 幅に下回る。各発行機関により外国直接投資の定義や集計方法が異なるためとみられる。 (注 2)UAE のほか、サウジアラビア、カタール、クウェート、オマーン、バーレーンの湾岸 6 ヵ国か らなる地域協力機構。関税同盟など経済統合を進めている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 90 インフラ事業や食品に大型投資が続く(イスラエル) 2014 年 12 月 16 日 テルアビブ事務所(高木啓) 中国企業がイスラエル国内のインフラ事業を次々に落札している。イスラエル政府は、中国企 業のコストパフォーマンスの高さを評価している。その一方では、国内最大の食品メーカーがそ の管理下に置かれることになるなど、中国企業による積極的な投資を危惧する声も出始めてい る。 <政府は中国企業の仕事の速さを評価> 国内の港湾開発事業に携わる国営イスラエルポートは 9 月 23 日、アシドッド第 2 港建設工事 の入札で、中国ゼネコン大手の中国港湾工程(CHEC)の子会社が落札したと発表した。 地中海に面する港湾都市アシドッドには、2015 年に開港 40 周年を迎えるイスラエル最大の輸 入港があり、欧米からの貨物船や、スエズ運河を経由するアジアからのコンテナ船などが入港す る(図参照)。既存のアシドッド港の年間コンテナ取扱量は 118 万 2,000TEU(20 フィートコンテナ 換算)だ。 イスラエルポートによると、イスラエルの貿易の 9 割以上は港湾を通じて行われており、貿易量 が年々増加する中、現状では寄港できるコンテナ船が限られているため、政府は 2007 年に南部 のアシドッドと北部のハイファにコンテナ船向けの港湾施設の増設を決定した。アシドッド第 2 港 の総工費は 33 億シェケル(約 990 億円、1 シェケル=約 30 円)で、既存の防波堤の延長、港湾 内のしゅんせつのほか、64 万平方メートルの敷地にコンテナターミナルなどを建設する。 中国企業による国内インフラ事業の実績は過去にもある。2010 年に開通したハイファバイパス のトンネル工事は中国土木工程集団(CCECC)が手掛けた。同トンネルは全長 6 キロで、北部の 商業都市ハイファを、市内を通ることなく通過できる。CCECC は現在もイスラエル企業とともに、 北部で鉄道用トンネルの建設工事を進めている。 政府は紅海に面するエイラット港とアシドッド港を結ぶ鉄道の建設も計画しており、これが完成 するとスエズ運河を通らずに地中海から紅海へ抜けることが可能となる。 イスラエルと中国は 2012 年に運輸インフラ事業に関する協力の覚書(MOU)を交わしており、イ スラエル運輸省はエイラットへの鉄道建設を中国国営の中国交通建設(CCCC)に委託したい考 えを示している。その理由について、2012 年当時の主要経済紙は、中国企業には比較的短期間 で事業を仕上げるスピードがあり、過去にネタニヤフ首相が中国の交通運輸相に対して、中国人 の仕事の速さをたたえていた、と伝えた。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 91 <食品最大手の株式の過半が中国企業に売却> 2014 年 5 月にプライベート・エクイティー・ファンドのエイパックス・パートナーズ(英国)は、イス ラエル最大の食品メーカー、テヌーバ(Tnuva)の株式 56%を中国の大手食品メーカー光明食品 に売却することを発表した。 テヌーバの歴史はイスラエル建国前の 1920 年代にさかのぼる。ユダヤ人が営むキブツ(注 1) やモシャブ(注 2)の農家が、農産品の生産、加工、販売を一括するために設立された農業協同 組合連合がその母体で、当初は乳製品、鶏肉、卵、果物、野菜などを扱っていたが、その後、乳 製品事業が伸び続け、製造規模の拡大や競合他社との合併を繰り返して国内トップの乳製品メ ーカーへと成長。2008 年に、エイパックス・パートナーズがテヌーバの株式の過半をイスラエルの オーナーから買収した。 イスラエルは乳製品の消費量が多いが、乳製品の関税が高いことから、消費者の多くは国産 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 92 のチーズやヨーグルトを購入する。2011 年 6 月に発生した物価高騰に対する大規模デモも、チー ズの価格上昇が発端となったほど、イスラエルでは乳製品は一般家庭の食卓に欠かせない国 民食の 1 つになっている。 国内の大手食品メーカーがユニリーバやネスレといった外資系企業に売却されたことはあった が、「イスラエルの食」のシンボルともいえる企業の株式の過半が中国企業に譲渡されたことは、 メディアや国民の間でも大きな反響を呼んだ。 イスラエル諜報機関モサドのハーレビ元長官は「国内最大の食品メーカーを他国の管理下に 置くことは好ましくない」と発言している。また、イスラエルが敵視する国に対して協力をしている とされる中国に港湾や鉄道事業を委託することで、「国家のインフラが中国の管理下に置かれる ばかりでなく、イスラエルと米国の関係にも影響を及ぼす可能性がある」と危惧している。 (注 1)イスラエル特有の共有財産的協同組合であり、ヘブライ語で「集団・集合」を意味する。イ スラエル建国前から、ユダヤ人移民が中心となって設立された。当初は農業を営むキブツが多 かったが、最近では軽工業、ハイテクベンチャー、商業を展開するキブツもある。 (注 2)キブツと同様、イスラエル特有の入植村の一種。共有財産方式のキブツとは異なり、家族 労働力のみで構成された家族経営の農場を、村落単位の協同組合がまとめる形式を取っている。 地方のモシャブでは観光業やワイナリーを展開するところもある。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 93 製造業や通信などへ投資分野の多様化進む(エジプト) 2014 年 12 月 12 日 カイロ事務所(長谷川梢) エジプト中央銀行によると、2012/2013 年度(2012 年 7 月~2013 年 6 月)の中国からの直接 投資額(国際収支ベース、フロー)は 4,880 万ドルと前年度比 33.7%減少し、2013/14 年度も第 3 四半期末時点で 410 万ドルと低迷している。直接投資総額に占める割合も 0.5%と小さい。し かし、近年は投資分野が製造業や通信などへ多様化している。 <タックスヘイブン経由や経済協力の場合も> 2012/2013 年度の対内直接投資総額 96 億 1,400 万ドル(前年度比 18.3%減)のうち中国は 0.5%にすぎない。総額の約半分は英国をはじめとする EU 諸国が、約 20%は米国が占め、統計 上は中国の存在感は薄い(表、図参照)。投資額は低水準で推移しているが、実生活では中国 系ビジネスや中国人を目にする機会は確実に増えている。統計数字と実生活における中国の存 在感にギャップを感じる背景には、中国企業が投資をする際、中国本土から直接ではなくタック スヘイブンを経由する場合や、投資にみえる案件でも実は政府間経済協力の場合もあるといっ た事情が影響しているようだ。このため、必ずしも全ての案件が直接投資統計の数字に直結す るわけではないが、中国企業が関与するプロジェクトが増加し、エジプトにおける中国の存在感 が高まっていることは事実だ。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 94 <中東・北アフリカ市場への輸出拠点に> 報道や各企業の発表資料などによると、中国企業の進出分野は主流だったエネルギー、物流、 建設分野に加え、近年は製造業や通信分野などへの進出がみられるようになった。 製造業では家電大手ハイセンス(海信)が、中東・北アフリカ市場への輸出拠点として約 6,000 万ドルを投資して、2008 年 11 月にカイロの衛星都市である「10 月 6 日市」に液晶テレビのコンプ リートノックダウン(CKD)生産工場(年間生産能力約 10 万台)を開設した。2010 年にはエアコン の生産も開始したとされる(報道ベース)。同社は 2012 年 8 月にはエジプト側パートナー企業で あるシャムス・インダストリアルとの間で、「10 月 6 日市」に家電専用の「ハイセンス工業団地」を 開発する覚書にも調印した。同団地は中東・欧州市場への輸出拠点としての位置付けで、広さ 20 万平方メートル、年産エアコン 50 万台、白物家電 150 万台を予定している。ハイセンス自身も エジプト国内と欧州市場の需要に応えるため、同工業団地にテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機 の工場を設置する計画を発表している。 家電大手ハイアール(海爾)も、2011 年以降エジプトでの工場設立を模索している(同社ウェブ サイト)。2012 年 5 月にはエジプトの販売代理店としてソニーのカメラやプレイステーションなどの 取り扱い実績のある地場のインターナショナル・ビジネス・システムズ(IBS)との独占販売契約を 締結している。 自動車生産でも、中国勢が徐々にエジプトに足場を置きつつある。第一汽車(FAW)は 2014 年 1 月に、約 1 億ドルを投じて地場のニュー・エンジニアリング・カンパニーと FAW などの乗用車、 バス、運搬車両の組立工場を設立すると発表した。中国勢では、吉利汽車(Geely)が 2012 年 10 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 95 月に地場ガッブール・オートと組んで完成車組み立てラインを保有し、高級セダンのエムグランド を年 3 万台程度生産している。報道によると、比亜迪汽車(BYD)が 2009 年末から主力車種「F3」 を組み立てているほか、奇端の「チェリー」や華晨の「ブリリアンス」も現地での組み立てが行わ れている。 通信分野では、華為技術(ファーウェイ)がエジプトを域内の拠点と定め、2012 年 11 月に北アフ リカ総本部としてネットワーク・オペレーション・センター(NOC)をカイロのスマートビレッジに開設 した。NOC は周辺 22 ヵ国の利用者向けに、ネットワークの安定やセキュリティー、商業活動をサ ポートする。このほか、域内技術アシスタンス・センター(TAC)、域内主要プロジェクトをサポート するグローバル・リソース・サービスセンター(GSRC)も開設した。同社は、今後 5 年間で学生や 新卒生、顧客、パートナー向けに、さらなるトレーニングを提供することも計画している。2013 年 にはファーウェイ公認ネットワーク・アカデミー(HANA)をスマートビレッジ内のナショナル・テレコ ミュニケーション・インスティチュート(NTI)に設置。2014 年初めには、ナセルシティの NTI と協力し て、通信分野の最新技術の訓練施設となるファーウェイ公認ラーニング・パートナーズ(HALP)を 開設するなど、エジプト国内に域内の足場を着々と築いている。 <スエズ湾西北・経済貿易協力区へも進出> スエズ湾西北・経済貿易協力区への中国企業進出も増加している。同協力区は 1997 年に中 国・エジプト両政府協力の下に建設が開始され、1998 年には天津発展が 10%を出資して携わっ てきたプロジェクトだ。2006 年 11 月の中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC、北京)における胡錦 濤中国国家主席(当時)の公約に基づき、2008 年 7 月に天津発展が出資額を引き上げて「エジプ ト・天津投資会社」(Egypt-TEDA Investment Group、資本金 8,000 万ドル)を設立したことにより 建設が加速した。同じく FOCAC での公約で、中国企業のアフリカ進出を支援する中国アフリカ発 展基金が天津発展に 2,400 万ドルを出資している。 同協力区は、2012 年末までに全敷地 7 平方キロのうち 1.34 平方キロの造成が完了し、中小企 業を中心に進出が進む。投資額 100 万ドルと小規模だが、アラブの男性の伝統衣装に欠かせな いヘッドスカーフの「カフィーヤ」を製造するエジプト・天津 Yashmagh 繊維も工場を設置している。 2013 年には Jushi エジプト・ファイバーグラス・インダストリーズ(巨石埃及玻璃繊維)、XD 高電圧 機器、牧羊エジプトなどの中国製造業大手 3 社が入居している。Jushi はガラス繊維大手。生産 量 20 万トンのガラス繊維工場を全 3 フェーズで建設予定だ(同社ウェブサイト)。投資額 2 億 2,000 万ドルの第 1 フェーズ(年産 8 万トン規模)は 2014 年 5 月に生産を開始している。今後、3 億ドルを追加投資し、2015 年末までには第 2 フェーズ(8 万トン規模)を、2018 年末までには第 3 フェーズを完成させてフル稼働に入る予定。現在の従業員数は 900 人(うち中国人は 60 人で、 経営陣は 40%がエジプト人)だが、フル稼働時には 1,500 人の雇用を見込んでいる(「チャイナデ イリー・アフリカ」紙 2014 年 9 月 26 日)。 進出企業の国籍の正確な内訳は不明だが、同区ウェブサイトによると 2014 年 9 月時点の進出 企業総数は 58 社、投資額は累計で 6 億 1,000 万ドルとなっている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 96 <投資促進に絡み政府レベルの往来も活発化> 2014 年 6 月、シシ新政権が発足するとすぐに政府レベルの往来も活発化している。 8 月には中国の王毅外交部長(外相)がエジプト新政権との第 1 回戦略対話のためエジプトを 訪問。この際、シシ大統領、シュクリー外相、ナビール・エルアラビー・アラブ連盟事務局長と会 談を行ったほか、同部長と中国側代表団は、ムニール・ファクリー産業・貿易相、シャーキル電力 再生可能エネルギー相、アシュラフ・サルマーン投資相、アル・アハワーニー国際協力相のほか、 運輸省とスエズ運河庁からの代表者とも会談を行った。王部長は、中国には工業、農業、宇宙 産業などさまざまな分野でエジプトに協力していく準備があるとし、中国からの対エジプト投資を 増加させる姿勢をみせた。また、太陽光・風力発電などの再生可能エネルギー分野での将来的 な協力、経済特区の運営などについても意見を交わした。両国の経済協力の強化にも触れ、高 速鉄道を含む鉄道分野や人材育成プログラムの提供についても協議した。 エジプト側も間を置かず、9 月には投資省主催の中国企業向け投資誘致セミナーを天津で開い た。アシュラフ・サルマーン投資相のほか、駐中国エジプト大使、特別経済区庁副総裁も出席し、 上述のスエズ湾西北・経済貿易協力区を中心とするエジプトへの投資呼び込みを行った。セミナ ーでは中国が開発を進めてきた同協力区の拡張(第 2 フェーズ、約 6 平方キロ)に関する署名式 も行われた。 <エジプトの銀行内に中国ビジネスデスク開設> 中国第 2 の商業銀行である中国銀行は 2013 年 5 月、エジプトのコマーシャル・インターナショ ナル・バンク(CIB)内に、中国ビジネスデスクを開設した。CIB はエジプト国内に 155 の本支店網 を有する地場大手民間銀行で、2011 年 6 月には三菱東京 UFJ 銀行とも協働促進に関する覚書 を締結し、行内に日本デスクを設置している。 エジプト・中国の貿易関係の促進、投資環境改善や、ビジネスマッチング支援などは、2006 年 設立のエジプト・中国ビジネスカウンシル(ECBC)が担ってきた。ECBC は中国商工会議所とエジ プトビジネスに関心を持つ団体の間を取り持つリエゾン機能、意見交換、経験の共有、技術移転 の加速、相互利益の保障、観光客の増加促進などの役割を担っている。ECBC のウェブサイトに よると、現在会員数はエジプト側が 68 社、中国側が 43 社に上る。これに加えて 2013 年 12 月に は、エジプト・中国商工会議所も発足し、初会合には、中国側から在エジプト中国大使、商工会 議所会頭のモアターズ・アル・サイード氏、前駐中国エジプト大使であり副会頭のアハマド・リズク 氏のほか両国のビジネス関係者が出席。エジプト側からは、ムニール・ファクリー・アブデルヌー ル産業・貿易相、オサマ・サーレハ投資相(当時)が参加した。 中国政府としても、近年低水準で推移している対エジプト直接投資を活発化しようと動いている もようであり、進出企業への後押しの動きもあるようだ。エジプトの銀行内への中国ビジネスデス クの設置や商工会議所の設置は、今後の中国企業のエジプトでの活動を本格化させることを予 感させる。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 97 アルジェリアは対アフリカ投資で 2 位の存在感(アルジェリア) 2014 年 12 月 17 日 パリ事務所(渡辺智子) 北アフリカの中でアルジェリアは中国からの投資の歴史が最も長く、2012 年以降は中国の投 資先としてアフリカ諸国の中で 2 位となっている。中国は 2003 年以降大型インフラ公共工事の大 半を受注し、同国での存在感を確固たるものとしている。今後は工業への直接投資と技術移転 を積極的に進める意向だ。 <マグレブ諸国の中でアルジェリア向けが突出> アルジェリア商業省の全国商業登録センターに登録している中国企業数は 2013 年 7 月末で 784 社。その数は 1997 年以降 2013 年まで連続して増加しており、特に大型公共工事を中国が 受注した 2003 年から 2007 年に急増した。アフリカ開発銀行によると、アルジェリアで 2003 年か ら 2011 年の間に結ばれたインフラ開発のエンジニアリング契約のうち、約 80%を中国企業が落 札している。 マグレブ諸国向けの世界からの直接投資(2011 年、ストックベース)の内訳は、モロッコが 39.3%でトップ、次いでチュニジアが 26.7%、アルジェリアが 18.5%となっている。中国からの投資 に限ると、マグレブ全体(ここではアルジェリア、リビア、モーリタニア、モロッコ、チュニジアの 5 ヵ 国)への投資の 81.6%がアルジェリア向けとなっている。米シンクタンクのヘリテージ財団の報告 書によると、2012 年には、中国の投資先として、アフリカ諸国のうちアルジェリアがナイジェリアに 次いで 2 位となり、初めて南アフリカ共和国を抜いた。2014 年上半期には中国の対アルジェリア 投資で新規契約の累積総額が 154 億ドルに達し、そのうち 114 億ドルが交通、35 億ドルが不動 産関連への投資だった。 中国商務部はウェブサイトで対外投資計画のある中国企業のリストを公開している。2003 年か ら 2012 年にかけてマグレブ 5 ヵ国への中国投資計画は 145 件あり、このうち 72 件がアルジェリ ア向けだった。2011 年から 2014 年 8 月までに承認された投資計画数は、アルジェリアが 37 件 (表参照)、モロッコが 13 件、チュニジアが 7 件、モーリタニアが 12 件となっており、依然として対 アルジェリア投資が優勢だ。 <近年は通信関連の参入も> このリストによると、中国の対アルジェリア投資分野は、エンジニアリング・建設関連企業が大 半を占めている。 近年の中国企業の対アルジェリア投資の傾向について尋ねたジェトロのインタビューに対して、 フランス社会科学高等研究院(EHESS)の近代・現代中国研究センターのチエリー・ペロー教授 は「中国はあらゆる分野への投資の準備がある。最近の中国の対アルジェリア投資傾向という 問題提起よりも、中国からの投資に対してアルジェリアがどの部門の門戸を開くかという方向で みるべきだ」と話す。アルジェリア政府は、長年自動車や医薬品の分野で中国企業の参入を許 可せず、ルノーやサノフィといったフランス企業を優先してきたが、最近では、第一汽車集団 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 98 (FAW)とアルジェリア企業家の間の合弁事業や、中国の製薬会社とアルジェリア政府の間の協 力プロジェクトで何らかの合意もあり、アルジェリア政府側が中国投資を受け入れる分野を広げ る意向ではないか、と同氏はみている。中国企業の参入例としては、2010 年に通信市場の自由 化が行われた際、アルジェリ・テレコムがネットワークの改善と拡大に中国の華為技術(ファーウ ェイ)を選んだ例がある。2013 年 11 月には郵政・通信技術省との提携により首都アルジェ近郊の シディ・アブデラにある IT 産業集積地にモロッコに次いで 2 番目の通信技術の研修センターを開 設すると発表した。敷地 3,000 平方メートルの規模で、電気通信・情報技術の分野で研修プログ ラムを提供する予定だ。 中国の対アフリカ投資の多くは資源部門に集中し、資源採掘権と交換で資源開発関連のイン フラ投資が行われているが、資源輸出で外貨が潤沢にあるアルジェリアには当てはまらない。同 氏によると、アルジェリアの石油・天然ガス部門も現在は大規模な油田・ガス井の発掘に至らず、 短期的には同部門への中国の投資の可能性は低いという(中国の石油輸入のうち対アルジェリ アのシェアは 0.9%)。 <国有の中央企業が中心> これらの投資企業のうち、中国中央政府の管理監督を受ける国有企業である中央企業(2013 年末で 113 社)の割合(26.2%)が他の途上国(7.5%)、サブサハラアフリカ地域(18.3%)に比べ てもマグレブ地域の場合非常に高くなっている。ペロー氏は「マグレブ地域での中国企業の地位 確立は中央政府の意思であり、中国製品とサービスの提供先として同地域で新しい投資セクタ ーを探している」とみている。 <アルジェリア政府は中国投資を歓迎> 中国は対アルジェリア輸出で 2013 年に初めてトップの座をフランスから奪った。アルジェリア市 場における中国製品は品質に対する批判報道は見られるものの、その存在感は大きい。2014 年 2 月 24 日には両国の国交 55 周年を記念した「中・アルジェリア包括的戦略パートナーシップ 2014-2018」の締結が発表され、両国間の政治対話の強化、経済・科学・技術・軍事・安全とい ったあらゆる分野での協力体制の強化がうたわれた。同パートナーシップ締結後の記者会見で ラムタン・ラマムラ外相と中国の王毅外交部長(外相)は、石油・天然ガス以外の工業分野での 中国のアルジェリアへの直接投資と技術移転を進める意思を明確にしている。 中国投資はアルジェリア経済の成長に寄与しているという見方が主流だが、一方でアルジェリ アの主要課題である高失業率の解決にはつながっていない。中国企業は投資の大半を占める インフラ建設で自国から労働者を連れてくるため、現地に雇用を生まないとして批判されている。 中国対外経済貿易年鑑(2009 年版および 2012 年版)によると、在アルジェリア中国人労働者数 は 2009 年に 4 万 9,631 人とピークとなった後、2011 年には多少減少したものの 3 万 6,562 人を 数えた。大半が中国企業で働く中国人臨時契約従業員だ。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 99 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 100 投資額は少ないものの関心高まる(モロッコ・チュニジア・モーリタニア) 2014 年 12 月 17 日 パリ事務所(渡辺智子) モロッコ、チュニジア、モーリタニア向けの中国の直接投資は金額も少なく、分野も限られてい たが、次第に関心が高まっており、新しい展開がみられそうだ。 <モロッコ:エネルギー分野で初のプロジェクト契約> モロッコの対内直接投資(2013 年、フローベース)の国別シェアでは、歴史的な投資国である フランスが 43%で他国を大きく引き離して首位を守っている。次いでシンガポール、アラブ首長国 連邦(UAE)が 10%で並び、6 位につけるサウジアラビア以外は EU 諸国で、中国は上位投資国 には入っていない。米国シンクタンクのヘリテージ財団によると、2014 年上半期までの中国によ るモロッコ向け新規直接投資契約の累積総額は約 5 億ドルだった。 マグレブ地域の中ではアルジェリアが中国の最大の投資先だが、モロッコへの投資も近年増 加している。2011 年から 2014 年 8 月までに中国商務部で承認された中国企業の対モロッコ投資 計画は 13 件だが、特に 2014 年以降の承認件数が増加している。エネルギー・電力関連および 水産業への進出が目立つ(表 1 参照)。 2013 年 7 月には初めてエネルギー分野で中国のプロジェクト契約が調印された。山東電力建 設第三工程(SEPCOIII)がモロッコ電力水道公社(ONEE)と、北東地方のジェラダ(首都ラバトか ら 530 キロ、アルジェリア国境付近)の石炭火力発電所の新規建設契約に調印。総工費は 30 億 ディルハム(約 390 億円、1 ディルハム=約 13 円)。主に中国輸出入銀行が融資する。稼働は 2016 年第 4 四半期を予定している。また、2014 年 8 月には中国銀行の岳毅副行長(副頭取)お よび中国企業代表団がベンキラン首相と会談し、会談後のプレスリリースでモロッコでの支店開 設へ意欲を示した。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 101 中国の電子メディア、チャイナ・トゥデーの報道によると、在モロッコ中国大使館で把握している 在モロッコ中国企業数は約 30 社にとどまり、その大半が華為技術(ファーウェイ)、中興通訊 (ZTE)など情報・通信セクターだ。その他は、インフラ・公共工事(道路、橋、港)に携わる。これま で入国ビザの取得が難しいなどの理由で中国企業の進出が妨げられていたが、2014 年 3 月か ら中国高官のビザ取得が不要となり、2014 年中には両国間の直行便も開通する予定になってお り、中国からモロッコへのアクセスが容易となる見込みだ。モロッコは中国企業による投資を促進 するため、2014 年 6 月 24、25 日に中国アフリカ投資会合を開催した。 モロッコに進出済みの中国企業の中で成功を収めているのがファーウェイで、2013 年にはモ ロッコの携帯電話市場の 70%のシェアを占め、同年の年間売上高は 1 億 8,000 万ドルで前年比 10%の伸びとなっている。400 人以上を雇用し、75%がモロッコ人だ。2012 年には同社初のフラ ンス語による研修センター「ファーウェイ・モロッコアカデミー」が開設された。 <チュニジア:エビ養殖事業が生産段階に> チュニジアの対内直接投資は生産投資の 10%を占め、輸出の 3 分の 1、雇用の 15%以上を 生み出している。国連貿易開発会議(UNCTAD)の世界投資報告書 2013 年度版によると、チュニ ジアは、外国直接投資(フローベース)で、アフリカ諸国の 11 の主要国に入っている。しかし、対 チュニジア外国直接投資の中で中国が占める割合は小さく、現在、中国投資の目立った動きは 少ない。旧宗主国のフランスや EU 諸国の投資が最も多く、次いで中東産油国が続く。2012 年の 対チュニジア外国直接投資の国別シェアをみると、カタールが 31%で首位を占め、続いてフラン スの 15%、オーストリアの 13%、イタリアの 9%、カナダの 6%、英国、ドイツ各 4%の順。 ヘリテージ財団によると、2014 年上半期までの中国による対チュニジア新規直接投資契約の 累積額は 1 億 1,000 万ドルで、不動産が中心となっている。中国商務部に承認された対チュニジ ア投資計画は、2011 年から 2014 年 8 月までで 7 件のみだ(表 2 参照)。その一方で、2013 年 8 月には両国間でチュニジアにおける農漁業分野での開発協力に関する合意書が調印された。ま た、2012 年に開始されたマディア地方(首都チュニスから 200 キロ、東部海岸地域)におけるエビ の養殖事業は生産段階に入っている。2014 年 4 月には、ビゼルト地方(首都チュニスから 70 キ ロ北西の北部海岸地域)で、市の関係者および農業全国組合の代表と中国の産業界の代表が 同地方の開発に向けた会合を持ったことが報じられている。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 102 <モーリタニア:水産物加工工場を建設し漁業権を獲得> 対モーリタニア外国直接投資総額は、2010 年には 1 億 3,100 万ドル(フローベース)だったが、 2012 年には 120 億 400 万ドルと大幅に増加した。中国も同国への関心は高く、モーリタニア向け の中国投資は 2014 年上半期までの新規直接投資契約の累積額が 11 億ドルとなっている。中国 商務部が承認した中国企業の対モーリタニア直接投資計画は 2011 年から 2014 年 8 月までで 12 件を数え、うち半数は漁業関連の投資となっている(表 3 参照)。 漁業資源がモーリタニア経済にとって外貨獲得の戦略的なチャンスであり、漁業は同国の GDP の 10%、輸出の 35~50%を占め、雇用面でも 36%が漁業に従事している。2010 年に中国 保利集団傘下の中国保利宏東漁業が同国北西部のヌアディブに 1 億ドルの投資を行い、水産 物加工工場を建設する一方で、税制優遇を伴った 25 年間の漁業権を獲得した。しかし、同社の 投資については、生態系を無視した漁業資源の乱獲と漁業就労者の失業問題が指摘されてい る。 <「モロッコの農業技術に関心」の見方も> フランス社会科学高等研究院(EHESS)の近代・現代中国研究センターのチエリ―・ペロー教 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 103 授はジェトロのインタビューに対して、「現時点ではモロッコ、チュニジア、モーリタニアへの特に 目立った中国企業の投資傾向はみられない。中国企業のチュニジア、モロッコへの関心は確か に高まっているが、大方が貿易関係であり、短期的にはその傾向は変わらないとみている。モー リタニアに関しても同様。しかし、モロッコの近代的な農業技術に対する中国の関心には注目す べきで、中国は、EU と自由貿易協定(FTA)を締結しているモロッコを通しての欧州市場展開と、 モロッコの農業技術の中国への移転を視野に入れているようだ」と述べた。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 104 家電や自動車など多分野で投資が拡大(南アフリカ共和国) 2014 年 12 月 15 日 ヨハネスブルク事務所(川上康祐) 中国から南アフリカ共和国への直接投資累計額は 2012 年末に 431 億 5,900 万ランド(約 4,316 億円、1 ランド=約 10 円)となった。2005 年末時点では 3 億 4,000 万ランドだったものが、2008 年から急増した。投資分野は鉱業に限らず、家電や自動車といった製造業や農業、不動産、イ ンフラなど多岐にわたる。近年の投資の特徴とともに、中国企業の南アにおけるビジネスの動き を追った。 <海信が液晶テレビ生産開始> 南ア準備銀行(SARB)によると、南アにおける中国からの直接投資受入累計額は 2012 年末 で 431 億 5,900 万ランドと国別で 5 位。中国企業の投資は鉱業分野を中心に 2008 年以降急激 に増加した(表参照)。最近は鉱業にとどまらず、製造業や農業のほか、不動産などのサービス 業にまで拡大している。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 105 最近の中国企業による南アへの主な投資事例としては、大手家電メーカー海信(ハイセンス) が 2013 年 6 月、ケープタウン郊外で液晶テレビの生産を開始した。経済開発省の発表によると、 同社は老朽化したテデレックスの工場の改修などに約 3 億 5,000 万ランドを投資し、5 年後には 約 1,000 人の雇用を生み出す計画だ。「ウォールストリート・ジャーナル」紙によると、現時点での 生産効率は中国の半分程度だが、中国本土での労働コスト上昇に伴い、中国企業によるアフリ カでの工場建設とアフリカ人の雇用は増加傾向にあるという。 自動車分野では、第一汽車が 1 億ドルを投資し、2014 年 7 月にポートエリザベスのクーハ産 業開発特区でトラックの生産を開始した。同社はこれまで工場建設に 6 億ランドを投資している。 同工場では当初、年間 5,000 台のトラックの生産を予定しており、将来的には 3 万 5,000 台の乗 用車生産を計画している。当初 350 人にとどまるが、今後の自動車生産の拡大に伴い、さらに 600 人の雇用が創出される見通し。 鉄鋼業でも今後の投資に向けた動きがみられる。南ア産業開発公社(IDC)の発表によると、 2014 年 9 月に IDC と河北鋼鉄は、南アの鉄鋼プロジェクトに関する覚書を結んだ。IDC は、南ア の安価な鉄鋼原料を活用して新たに低コストの製鉄所を建設するための事業化調査(FS)を実 施した。同調査によると、第 1 段階では 27 億ドルを投じて 300 万トンの生産能力を、第 2 段階で は 18 億ドルを投じてさらに 200 万トンの生産能力を得る計画だ。今後、河北製鉄がパートナーと なって、詳細な FS を実施することにしている。パテル経済開発相は、鉄鋼製品の調達価格を下 げるため、国内の鉄鋼業において競争環境を整備する必要があるとして、両者間の覚書署名を 歓迎した。 農業分野では、2013 年 8 月、健康食品や介護用品メーカーである完全(中国)日用品(パーフ ェクトチャイナ)が西ケープ州のバル・デ・ビ農園を買収し、南アで中国企業として初のワイン事業 に参入した。同農園の発表によると、この買収には 21 ヘクタールのブドウ畑を含む 25 ヘクタール の農場が含まれる。同社は 2011 年と 2012 年に 280 万本の南ア産ワインを中国に輸出している が、今後はアジア地域に販路を拡大して南ア産ワインを輸出する予定で、輸出量のさらなる拡大 を見込んでいる。 当地のビジネスレポート紙によると、中国の不動産会社である上海証大は 2013 年 11 月、南ア の化学・火薬会社 AECI から、ヨハネスブルク東部の郊外モダーフォンテーンにある 1,600 ヘクタ ールの土地を購入し、開発することを発表した。今後 15 年間で 800 億ランド以上を投資し、金融 ハブや住居、教育・スポーツ施設などから構成される「アフリカのニューヨーク」と称した新都市開 発を計画している。この事業により今後 10 年間で 2 万 2,000 人の雇用創出と、140 億ランドの直 接・間接的な経済効果が見込まれている。 中国企業によるインフラ分野の進出事例では、2014 年 3 月、南ア輸送公社トランスネットの一 般貨物輸送用機関車 1,064 両の入札で、中国企業 2 社などが落札した。トランスネットの発表に よると、599 両の電気機関車を中国南車とカナダのボンバルディアが、ディーゼル機関車 465 両 を中国北車と米ゼネラル・エレクトリック(GE)が受注。今回の入札は南アの機関車の入札史上 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 106 最大の発注車両数であり、費用として 500 億ランドを見込んでいる。また、付随の鉄道、港湾など のインフラ整備に 3,070 億ランドかかる見込みだ。 <中国の生産拠点移転を機に問われる南ア産業政策のかじ取り> 中国企業による労働集約的な非熟練部門の生産拠点移転はアフリカにも向きつつある。 2014 年 9 月に当地で開催された中国・アフリカビジネスフォーラムにおいて、調査会社フロンテ ィア・アドバイザリーのマーチン・デービス社長は「中国では、急速にサービス経済化が進展して おり、製造部門では中国から東南アジアなどへの雇用のシフトが進み、その一部はアフリカにも 移転しつつある」と話した。また、南ア国際問題研究所シニア・リサーチ・フェローのピーター・ドレ ーパー氏は「中国は民間セクターがダイナミックに活動して経済を牽引しているが、南アは国営 企業中心の成長モデルを志向している。南アへ投資を呼び込むためには、民間セクターの投資 環境を改善することが不可欠だ」との問題意識を示し、中国企業による生産拠点移転をチャンス と捉えて産業政策を見直すべきだ、と主張した。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 107 大幅回復した対日直接投資、残高も増加傾向(日本) 2014 年 11 月 27 日 中国北アジア課(箱崎大) 中国企業の対日直接投資は、残高としては日本の投資受け入れ総額の 1%に満たないも のの、増加を続けている。フローの投資額は、2010 年以降いったん減少したが、2013 年 は大幅に回復したもよう。ただし、M&A 型の直接投資は少なかったとみられる。 <日中の統計に大きな開きあるも回復基調は共通> 日本銀行発表の国際収支統計によると、中国からの直接投資(ネット、フロー)は 276 億円だっ た 2010 年以降、2011 年は 89 億円、2012 年は 57 億円と減少傾向にあったが、2013 年は 138 億円に増えた。中国側統計では 2010 年は 3 億 3,799 万ドル、2011 年が 1 億 4,942 万ドル、2012 年が 2 億 1,065 万ドル、2013 年が 4 億 3,405 万ドルなので、日本側統計とは大きな開きがあるが、 日本も中国も 2010 年からいったん減った後、2013 年に大きく回復した点は共通している。 対日直接投資の残高については増加傾向にある。日銀統計によると、2013 年末で 607 億円 (製造業 256 億円、非製造業 351 億円)となった(表参照)。しかし、対日直接投資の残高全体に 占める割合は 0.3%にすぎない。アジアの中でも、シンガポール 1 兆 4,077 億円、香港 5,742 億円、 韓国 2,190 億円、台湾 2,395 億円などに比べて、かなり少ない。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 108 <2013 年は減少に転じた M&A 案件> 中国企業の対日投資としては、2009 年ごろから M&A 案件が増えた。トムソン・ロイターのデー タによると、在中国企業の対日 M&A 件数は 2007 年 4 件、2008 年 3 件と少なかったが、2009 年は 7 件、2010 年には 17 件に増えた。その後は 2011 年が 7 件、2012 年が 9 件だった。しかし、 2013 年は済寧如意投資がレナウンの株式を取得した案件、大連晋●(火へんに文)金属制品が アルミダイカスト事業を運営するタマダイの全株式を取得(三菱マテリアルからの譲渡)した案件 の 2 件にとどまっている。 ジェトロ支援案件や報道によると、2013 年の M&A 以外の対日直接投資としては次のような事 例がある。4 月には、自動車ボディー工程ラインの設計および溶接治具の製造を行う大連奥托 が Auto Tech Japan を設立した。自動車溶接ラインの計画と設計業務、介護用ロボットの新規開 発、新規事業・新商品の研究開発、国際貿易業務を行う。上海電力は 9 月に 100%子会社の上 海電力日本を設立した。日本のクリーンエネルギー発電事業への投資や開発などを日本企業と 共同で進める。同月には、通信インフラの構築・運営・コンサルティングなどを行うテレテックサー ビスが、日本法人のテレテックを設立した。日本の大手通信企業とパートナー関係にある主要顧 客の日本での事業展開を支援する。日本で技術者の採用を積極的に行い、国内での販路拡大 を狙う。 Copyright(C)2015 JETRO. All rights reserved. 109 アンケート返送先 FAX: 03-3582-5309 e-mail:[email protected] 日本貿易振興機構 海外調査部 中国北アジア課宛 ● ジェトロアンケート ● 調査タイトル:2013 年の中国企業の対外直接投資動向 今般、ジェトロでは、標記調査を実施いたしました。報告書をお読みになっ た感想について、是非アンケートにご協力をお願い致します。今後の調査テー マ選定などの参考にさせていただきます。 ■質問1:今回、本報告書での内容について、どのように思われましたでしょ うか?(○をひとつ) 4:役に立った 3:まあ役に立った 2:あまり役に立たなかった 1:役に立たなかった ■質問2:①使用用途、②上記のように判断された理由、③その他、本報告書 に関するご感想をご記入下さい。 ■質問3:今後のジェトロの調査テーマについてご希望等がございましたら、 ご記入願います。 ■お客様の会社名等をご記入ください。(任意記入) 会社・団体名 □企業・団体 ご所属 部署名 □個人 ※ご提供頂いたお客様の情報については、ジェトロ個人情報保護方針(http://www.jetro.go.jp/privacy/) に基づき、適正に管理運用させていただきます。また、上記のアンケートにご記載いただいた内容につ いては、ジェトロの事業活動の評価及び業務改善、事業フォローアップのために利用いたします。 ~ご協力有難うございました~ 「2013 年の中国企業の対外直接投資動向」 2015 年 1 月発行 独立行政法人 日本貿易振興機構 東京都港区赤坂 1 丁目 12 番 32 号 アーク森ビル私書箱 528 号 〒107-6006 電話 (03)3582-5181 (海外調査部中国北アジア課) 禁無断転載
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