<骨粗鬆症の診断・治療における DXA の有効性> 原発性骨粗鬆症について 2012 年度版の原発性骨粗鬆症の診断基準では、 “骨密度の測定部位は原則として、腰椎ま たは、大腿骨近位部とする”とあり、これらの部位で測定が困難な場合は、橈骨、第二中 手骨で測定してもよいとしています。 QUS について “QUS は、骨折リスクを予測し、骨密度との相関性はあるが、骨密度そのものを測定してい るわけではなく、あくまでも脆弱性骨折のリスクを評価する”として “いまだ確定診断の 方法としては確定しているとはいえない”とされています。このため、QUS でリスクが高か った患者に DXA を行うことにより、より正確に診断、治療を開始することができます。 また、骨粗鬆症の診断と治療のガイドライン 2011 年版では、 “脆弱性骨折を有する症例お よび、65 歳以上の女性と 70 歳以上の男性、また危険因子を有する 65 歳未満の閉経後、お よび閉経周辺期の女性と 70 歳未満の男性を対象に腰椎および大腿骨近位部の2部位の DXA が望ましい”とされています。 椎体の骨折の有無により YAM の%や SD 値の治療開始レベルが異なります。無症候性の形 態椎体骨折の鑑別診断の観点からも脊椎 X 線像を確認することが望ましいとされているた め、当センターでも DXA に加え脊椎 X 線像を撮影します。 骨粗鬆症治療中の DXA について 現在の骨粗鬆症治療薬は、主に海綿骨の骨密度上昇が期待されています。中手骨におけ る海綿骨の割合は 2~3%。末梢皮質骨では変化を認めることは困難である。MD 法(Micro Densitometry)の測定精度は 1.5~5%であることから、治療効果の判定には、数年が必要と なり、モニタリングも困難である。 骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン 2011 年版では、“QUS では、踵骨は荷重骨であり、 海綿骨に富んでいることから、薬物治療の効果モニタリングにも適した部位と考えられる が、治療効果の評価における QUS 使用のコンセンサスは得られていない”そのため、DXA で の治療効果の経過観察が有効であると考えられます。 参考文献 1) 宗圓聰, 福永仁夫, 杉本利嗣, 曽根照喜, 藤原佐枝子, 遠藤直人, ... & 友光達志. (2013). 原発性骨粗鬆症の診断基準 (2012 年度改訂版). Osteoporosis Japan,21(1), 9-21. 2) 日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、骨粗鬆症財団 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011 年版 ライフサイエンス出版 用語説明 QUS:定量的超音波法(quantitative ultrasound) 測定装置に足を乗せて、かかとの骨である「踵骨(しょうこつ)の骨密度」を測定 します。X を利用しない測定方法であり、測定自体も安易に行えるため現在でも 広く普及している測定法です。 DXA: (dual-energy X-ray Absorptiometry) 全身や大腿骨頸部、腰椎、前腕などに 2 種類の低エネルギーX 線を照射し、骨密度 の量を検査します。身体部位の骨量を測定することができ、他組織(脂肪など)の影 響を除去し、骨密度測定の指標となる診断方法です。 MD: Micro Densitometry MD 法による測定では、第 2 中手骨(第 2 指の甲にある骨)のレントゲン写真をアル ミニウム板と同時に撮影します。レントゲン写真の陰影濃度をアルミニウム階段 の陰影濃度と比較して、骨密度を測定します。 YAM:Young Adult Mean 若年成人比較% 若年成人の骨密度平均値(腰椎:1.011g/ cm2 ,大腿骨頸部:0.787 g/cm2 )を 100% とし,被検者 の BMD を百分率で表示している。 SD: standard deviation 標準偏差 T スコア: 若年齢の平均 BMD 値(基準値)を 0 として、標準偏差を 1SD として指標を 規定した値をいう。骨粗鬆症診断基準に用いられる。 Z スコア: 同年齢の平均 BMD 値を 0 として標準偏差を 1SD として指標を規定した値を いう。骨粗鬆症診断には用いられない(年齢と共に平均値が下がるため) 診断基準 正常 T スコアが-1SD 以上 骨減少症 T スコアが-1 ~ -2.5SD 骨粗鬆症 T スコアが-2.5 以下
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