Ⅰ.基本方針 「私たちがつなぐ、次代へ 世界へ」

Ⅰ.基本方針
「私たちがつなぐ、次代へ
世界へ」
2012年度より(一財)日本青年館は国立競技場の改築という国家プロジェクトに協力するため
に青年館の移転に応じる姿勢を確認し、移転予定地における新たな青年館を検討する作業と、関係機
関との間での移転補償をめぐる問題を協議するという両面から進めてきました。2013年9月には、
2020年オリンピック夏季大会が56年の時を経て再び東京での開催が決定され、歓びの声ととも
に移転・建設の動きは本格的に加速していきました。日青協は(一財)日本青年館の姿勢を尊重し連
携を図りながらも、三代目青年館に魂を込めていくことを道府県団とともに確認し、二代にわたり先
輩方の大変な努力と関係機関の多大な支援のもとにつくられた建館の精神をどのように継承し次世代
につたえていくのか、この間道府県団と議論を繰り返し積み上げてきました。そして、2015年3
月31日、二代目青年館は36年の歴史に幕を閉じ、今取り壊されようとしています。
青年団活動の拠点であり、また、様々な市民活動の連帯の場としても社会的な役割を果たしてきた
青年館がない間でも、私たちは決して運動の歩みを止めることはできません。私たちが今なすべきこ
とは、改めて青年団の意義や価値を見つめ、社会に発信することはもちろん、次世代につなげていく
ことなのです。今年度のスローガン「私たちがつなぐ、次代へ 世界へ」には、道府県団とともに建
館の精神を継承し魂を込めていくのだという、私たちの覚悟と決意を込めています。これから201
5年度の青年団運動を進めていくにあたり、私たちが直面している現状を改めて見つめてみましょう。
(社会情勢は2015年4月20日時点の内容です)
1.こんにちの社会情勢
被爆・戦後70年をむかえる今、これまで一度も海外で武力を行使しなかった我が国の姿は大きく
変わろうとしています。この間進められてきた新たな安全保障法制をめぐる与党協議で、集団的自衛
権の行使要件として、安保関連法案の条文に「国民を守るために他に適当な手段がない」との文言を
明記する検討を進めようとしています。また、政府は国際社会の平和と安全を目的に掲げて戦争して
いる他国の軍隊を自衛隊が後方支援する恒久法「国際平和支援法」での国会承認について、
「事前承認
を基本とする」と説明しながらも、国会閉会中や衆議院の解散時には事後承認でも派遣できるとの考
えを示しています。さらに、自衛隊の海外活動が一気に広がる動きもつくられ、5月中旬には安全保
障法制をめぐる関連法案を閣議決定し通常国会に提出する方針です。こうした動きは、これまで不戦
の誓いを立てた先人たちの意思に反するものであり、かつ国民不在の中で有事へ進む可能性がある事
態を決して見過ごすことはできません。
憲法改正に向けた動きも着実に進められています。今国会で初めて衆議院の憲法審査会が開かれま
した。衆参両院に設けられている憲法審査会は、憲法に関する様々な議論の舞台となります。安倍首
相は審査会で憲法改正に向けた議論を進め、2016年夏から遅くとも2017年前半までに改正案
を発議し、国民投票を実施する方向です。改正案では国会や有権者の多数の賛成を得やすいと踏んで
いるものから改憲を進め、9条などの改正に進んでいくねらいが読み取れます。私たちはこれまでの
憲法をめぐる学習を通して、憲法は権力者を縛るものであることを学びました。国民の人権を守り生
活を豊かにするという本来の憲法の在り方に逆らうもので、本番前の肩慣らしとも捉えられる進め方
は、到底受け入れられるものではありません。
沖縄の基地問題が極めて緊迫した情勢を迎えています。名護市長選や沖縄県知事選、そして衆議院
選で示された辺野古移設反対の民意に背き、政府は強権を振るい辺野古基地建設に向けた作業を進め
ています。先般開催された翁長沖縄県知事と菅官房長官との会談で双方の主張が認め合うことはなく、
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平行線に終わりました。現地では今もなお陸上・海上で激しい抗議行動が市民により展開され、情勢
は決して予断を許さない状況です。また、沖縄県民の負担を軽減するための米軍基地の整理縮小が、
何度も県民同士、沖縄県民と政府との対立へと導く構図が繰り返される状況は、決して抑止力や日米
両政府の問題ではなく、苦しい国内事情の問題であることを直視しなければなりません。
新年度に入りようやく成立した2015年度予算は、過去最高の総額96.3兆円で、主には経済
活性化に向けて地方創生や子育て支援、研究開発推進などの分野に重点配分されています。安倍首相
は2015年を「地方創生元年」と位置づけ、取り組みを加速させることを強調しています。政府は
2014年11月に「まち・ひと・しごと創生法」を成立させ「まち・ひと・しごと創生本部」を設
置、また、日本の人口の現状と将来の姿を示し、今後めざすべき将来の方向を提示する「まち・ひと・
しごと創生長期ビジョン(長期ビジョン)
」と、これを実現するための向こう5ヵ年の目標や施策や基
本的な方向を提示する「まち・ひと・しごと創生総合戦略(総合戦略)
」を取りまとめました。政府が
掲げる地方創生のねらいは、地方の人口減少対策と東京一極集中の是正にあります。政府は自治体を
支援するために、総額4200億円にも上る地方創生政策の交付金の配分を決定しました。観光・産
業振興や人材育成の内容のほか、地域での個人消費を拡大し景気を下支えするねらいも含まれていま
すが、こうした交付金の配分内容に対して、これまで政府が行ってきた地域振興策に見られる、いわ
ゆる補助金のばらまきであり、人材面の支援をはじめ中長期的な視点に立った地域再生を後押しする
ものではないと政策自体に警鐘が鳴らされています。日青協はこれまでも若者と雇用の問題を指摘し、
地域で暮らす青年への支援とともに、東京一極集中の社会構造に疑問を投げかけてきました。若者が
ふるさとに残り、ふるさとで働き暮らしていく条件を整えることは、青年団活動の基盤を整備する上
で最も重要です。青年団活動こそ地方創生の原点であるとの認識を持ち、地域の実情を踏まえ、青年
が地域で暮らしていける社会の実現とともに、各自治体が知恵を絞った政策の実現に向け注視してい
きます。
我が国を取り巻く国際関係では、アジア地域をめぐり揺れ動いています。中国とは尖閣諸島や海洋
資源をめぐり対立が深まっているものの、2014年11月に2年半ぶりに日中首脳会談が実現しま
した。一時は偶発的な軍事衝突すら懸念されましたが、首脳会談の開催は関係改善に向けた一歩と期
待されます。また、政府の統計では、2014年の中国からの旅行者数は昨年よりも100万人以上
増加し、過去最高とも言われる年間240万人を記録しました。しかしその一方で、内閣府が201
4年に発表した「外交に関する世論調査」では、中国に対して親しみを感じないと答えた人が83.
1%にも達し、親しみを感じると答えた14.8%を大きく上回っています。また、2015年国交
正常化から50年を迎えた韓国とは、竹島をめぐる領土問題やいわゆる従軍慰安婦問題、靖国神社参
拝などこれまでの歴史認識をめぐる課題を抱えています。国民感情でも同様に、韓国に対して親近感
を感じないと答えた人が66.4%にも上り、親しみを感じると答えた31.5%を上回っています。
これらの反応はいずれも調査開始以来最も高い割合を示し、国民どうしでも決して良好な関係にはあ
るとは言えません。さらにこうした世論を反映してか、日本に暮らす外国人に対して過激なコールや
プラカードで排斥するデモが近年頻発しています。これに対し人種差別に基づく悪質なヘイトスピー
チ(憎悪表現)だとして、国連から規制の勧告を受ける事態にまで発展しました。このような時代で
あるからこそ、国境をこえた対話の必要性を認識しなければいけません。日青協は政情の不安に左右
されない民間交流の在り方を確認し、東アジアの平和と友好をめざし、これまで中国をはじめとする
各国との民間交流を進めてきました。アジア情勢が困難な中にあり、世論が両国に対して親しみを感
じない状況にあるからこそ、青年交流の今日的な意義を踏まえ、国民感情を変えるきっかけとなるよ
う交流を進めていきます。また、昨年度までの2年間の代表交流を踏まえ、韓国最大の青少年組織で
ある韓国青少年団体協議会との相互訪問の交流事業を開始します。
ロシアとの間で抱えている北方領土問題についても、打開の展望は未だ見いだせていません。20
14年はウクライナ問題の影響で交渉の停滞が危惧されましたが、先の日露首脳会談で外交交渉の継
続が合意されました。しかし、政府高官による北方領土への訪問や軍事演習の実施など、ロシアは実
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効支配を強めています。こうした中山口北方担当相は外交交渉を進める上でも国民世論の喚起に努め
たいと発言しました。日青協は長きにわたり他団体と連携しながら北方領土返還要求運動に関わって
きました。国民世論を喚起する上でも民間団体による運動は外交交渉を後押しし問題解決に向けて前
進させる上でより一層求められます。
いわゆるイスラム国をはじめとするイスラム過激派などによるテロ行為は激化し中東地域に限らず
世界を震撼させています。これら組織の首謀者の思想に共感し残虐な行為をつくるテロリストの中に
は、格差と貧困の最中で生きている普通の若者も少なくありません。どんな理由にせよ、テロ行為は
卑劣な蛮行であり正当化できるものではありません。一方で報復する行為もまた戦争を助長し、新た
な犠牲をつくり出しかねません。暴力と憎悪、そして恐怖を連鎖させないために、テロや暴力を生み
出さない社会をめざして、国際社会が一致して対応していく必要があります。
現在地球上には、約17,000発の核兵器が保有されています。核兵器の問題は地球規模の課題
の一つとしても見逃すことはできません。かつて7万発を超えるとも言われた核兵器が大幅に減少さ
れてきた背景には、長きにわたり保有国に核兵器廃絶を訴え続けてきた被爆者をはじめとする市民運
動があります。しかし、人類が未だ核の脅威と隣り合わせにあるという意味では、核兵器の廃絶は全
世界的な課題であることに現在も変わりありません。こうした中、核不拡散条約(NPT)再検討会
議がニューヨークで開かれます。被爆者はこれまでも、二度と同じ過ちを繰り返してはならないと、
他団体や多世代と連帯し核兵器廃絶の行動を進めてきました。被爆者の思いに多くの市民運動が呼応
し連帯した結果、取り組みは益々広がっていきました。こうした運動に後押しされるかのように、2
014年10月の共同声明に国連加盟国の8割が賛同しました。同年12月に開催された国連総会で
は、核兵器禁止条約等の決議が圧倒的多数で可決され、改めて核兵器廃絶が世界の潮流であることを
内外に示しました。しかし、米国やロシアなどの一部の核保有国が反対したほか、我が国も核兵器禁
止条約の交渉開始を求める決議を棄権しています。日青協もかつては被爆者団体と連携し役割の一端
を担ってきました。被爆・戦後70年を控える中、唯一の被爆国として我が国の政府が核戦争の被害
国に相応しい行動をとるよう働きかけていくとともに、私たち青年団も核兵器廃絶を求める行動を身
近なことから地域で進めていくことを呼びかけます。
2.青年や地域を取り巻く現状
戦後未曾有の被害をもたらした東日本大震災は、発生から4年の歳月を経ました。被災した地域に
おける道路、鉄道、港湾などのインフラは概ね整備されつつありますが、農林水産業をはじめとする
地域産業の復旧の道のりは決して短くありません。そうした状況でも、希望を持ち復興の歩みを着実
に進めています。そんな中明らかになったのが、東京電力福島第一原発では地下水の流入などによる
汚染水の問題や、未だ見えない廃炉作業の困難な現状でした。
原発事故により仕事や暮らしをふるさとから奪われた青年や仲間も少なくありません。一方で、原
発周辺の地域で働き暮らしながら、地域をよりよくしていこうと仲間とともに活動に励む数多くの青
年たちも見られます。東京電力福島第一原発事故が収束とはほど遠い現状に直面しているにもかかわ
らず、国は新たな基準のもとで原発の再稼働に向けて動きを加速させています。原子力規制委員会は
鹿児島県薩摩川内市の九州電力川内原発に続き、福井県高浜町の関西電力高浜原発についても再稼働
を認可しました。これに対し福井県や関西の住民らが関西電力高浜原発の再稼働差し止めを求めた仮
処分の申し立てを行い、福井地裁は「再稼働で住民の人格権が侵害される危険がある」として住民側
の主張を認め、原発の運転差し止めを認める判決を下しました。しかし、国は原発再稼働の方向に変
わりはないとしています。日青協は2013年度に東京電力福島第一原発事故の即時収束を求めると
ともに、国内のすべての原発を廃炉にし、国に対しエネルギーをすべて再生可能エネルギーにするエ
ネルギー政策の抜本的な転換を求めていくことを態度として確認しました。引き続き情勢の推移を注
視し、原発再稼働にストップの声を今こそ全国的に広げていく必要があります。
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私たち青年にとって、暮らしと仕事をめぐる問題は深刻な状況にあります。政府の調査によれば若
者の雇用情勢を見ると、24歳以下の完全失業率が2013年には6.9%、25~34歳について
は5.3%と前年よりは回復したものの依然として厳しい状況にあります。アルバイトなどで働くフ
リーターの数は、2013年には182万人となり、前年(2012年)と比べて2万人増加し、少
子高齢化で若者の人口が減り続ける中、正規職員として定着できずにパートやアルバイトといった非
正規職員で働く若者は労働者全体の3分の1を超え、過去最高の水準で推移しています。特に15~
24歳の若年層では、2000年代から大きく上昇する傾向が続いています。また、いわゆる「困難
を抱える若者」は2013年には60万人となり、前年(2012年)と比べて3万人減少していま
す。こうした中、20~34歳の独身男性の3割弱が年収200万円未満とも言われ、結婚も自立も
難しい現実に直面しています。少子高齢化の背景に、正社員になりたくてもなれない、あるいは結婚
したくてもできない若者が増えていることがあげられます。恋愛・結婚は青年期の関心事の一つでも
あり、かつて全国青年問題研究集会のレポートでも、恋愛・結婚にかかわる切実な内容が見られまし
た。こうした問題は個人の問題として内在化させる傾向が見られますが、社会問題として捉えていく
視点も必要です。こんにちでは、低所得であるために将来に夢や希望が持てず自信すら失い、結婚ど
ころか恋愛にすら無関心の若者も少なくありません。内閣府が20~30代男女を対象に実施した「結
婚・家族形成に関する世論調査」によれば、
「交際経験なし」と答えた人が20代男性で39.3%、
男女とも30代後半で「交際経験なし」では、
「今恋人が欲しくない」が約55%と半数を超えていま
す。また、結婚・交際状況を雇用形態別に見ると、正規雇用の方が非正規雇用よりも「既婚」
「恋人あ
り」を合計した割合が多く、この傾向は男性に顕著に表れています。こうした中、現在独身男性の親
との同居が社会問題化しています。親の収入が安定している今は生活に困ることもありませんが、こ
れから安定した仕事に就けたとしても、年金保険料を収めた実績が乏しく、低年金状態になってしま
う人も少なくありません。こうした中でも、消費税の増税や暮らしを取り巻く様々な法改正などによ
り、
生活はより一層苦しくなっている現状があります。低所得であることが様々な負の連鎖をつくり、
若者の中に格差と貧困を拡大させています。こうした負の連鎖を是正し持続可能な社会の基盤をつく
るためにも、地域の中に雇用の機会を若者に増やしていくことが求められます。
若者を大量に採用し、使い捨てるように扱う、いわゆる「ブラック企業」は今では社会問題の一つ
です。政府は2015年2月、これまでの勤労青少年福祉法を青少年雇用促進法と改称し、悪質なブ
ラック企業からの新卒求人をハローワークが拒否することが出来るようにしたほか、企業が離職率な
どの職場情報を就職活動中の学生らに提供するよう促す仕組みを整えました。有識者からは同法の成
立で、ハローワーク新卒求人に対する信用を高めることや職場に対するイメージを持ちやすくするこ
とで、若者の離職率の低下を図ることが期待されると言われています。その一方で、同法の対象が新
卒求人に限定し、中途採用の改善がなされていない点やハローワークが新卒求人を制限することによ
る効果は限定的なものに過ぎない点などがあげられ改善の余地が残されていますが、新卒者を救済す
るセーフティネットとして一定程度期待できるものと言えます。
働くということは、単に生計を立てるだけでなく、自らのライフステージを他者との関わりや労働
を通して築いていくことでもあります。日青協が昨年度実施したつぶやきカードには、職場での有休
未取得や長時間労働、サービス残業、マンパワー不足、パワハラ等々、不毛な労働環境と向き合い悩
む声が聞かれた一方で、
「やりがいを感じる」
「楽しく働いている」
「今の仕事が好き」といった声も寄
せられています。働く上で感じる様々なつぶやきを、地域の青年団活動の仲間と共有することを呼び
かけます。
成人年齢の引き下げに関する法令の見直し作業が、与党の間で進められています。日青協が197
0年代から訴えてきた公職選挙法の選挙権の年齢を引き下げる、いわゆる18歳選挙権は、与野党で
合意し今国会で成立の見通しで、私たちの願いがようやく実現する運びとなりました。経済協力開発
機構(OECD)加盟国で18歳までに選挙権を付与していないのが我が国のみという点で言えば、
法案成立は時代の進歩を促したと言えます。しかし、選挙権の年齢を引き下げるねらいが何であるの
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かという点と、現在の18歳の若者を捉えた時、単に法案成立を是とするのではなく、政治を模擬体
験する場を学校教育の中に採り入れたり、シティズンシップ教育を導入したりするなど、若者の育成
という視点に立ち政治に参画する取組や基盤整備が求められます。2016年に予定されている参議
院選挙からの適用が想定される中、日青協は今後も引き続き動向を注視していきます。また、自民党
は少年法の適用年齢(現行20歳未満)引き下げなどについて検討する作業を進めています。公職選
挙法の改正と連動し、民法の成人年齢引き下げなどとあわせて議論することが予定されています。成
人年齢に関する関連法令は少年法のほか戸籍法や競馬法など200以上にも上り、一つひとつの法律
で権利と義務、人権擁護の点で慎重な議論を求められます。
教育分野の大きな改革として行われた地方教育行政法の改正は社会教育を地域で進める私たち青年
団にとっても看過できません。これまでの教育委員会制度を抜本的に見直し、首長や地方教育行政へ
の国の関与を強化することが、地方の特色をいかした教育行政を推進する上で教育の自治や独立性、
政治的中立性が保障されるのか、住民の学ぶ権利を保障する視点に立ち返り今後の動向を注視する必
要があります。また、社会教育そのものが後退し学校教育に偏重する傾向があります。しかし、人を
育む場を学校という限られた空間だけに求めることには限界があり、学校だけでなく地域や家庭が相
互に連携しあい、社会全体で人を育む視点が重要です。かつて地域には青年団のほか婦人会や子ども
会、老人会と、世代ごとのネットワークがあり、
「遠くの親戚より近くの他人」という言葉に代弁され
るように、それらが相互に連携しあい世代をこえたつながりをつくり地域の教育的機能をも高めてい
ました。こうして地域独自の風土や文化、そしてコミュニティを形成し、地域の中で子どもも育って
いきました。しかし現在は、少子化や核家族化の傾向がいっそう色濃く、人を育むこと自体が市場原
理のもとで展開される現状も否定できません。
世代をこえたつながりを地域に取り戻し、地域の中での教育的機能を復活させていくためにも、私
たちがこれまで培ってきた青年団運動の意義を社会にアピールしていく必要があります。青年団運動
の実践は、どのような時代にあっても地域と青年の願いに基づいています。夏の祭りや冬のサンタを
はじめ、あらゆる青年団の実践は地域とともにあります。仲間や地域の方々と困難を克服したり多様
な意見をまとめたりといった過程は、青年たちにとって民主主義を自ら実践を通して学ぶ場と言って
も過言ではありません。それらのすべてが地域の様々な課題を解決するために主体的に行動する住民
自治の実践につながっていきます。こうした経験を積み重ね、やがて地域の担い手として成長してい
きます。このような青年団活動を通じて培った経験は青年団を卒業した後にもいかされ、たくさんの
先輩たちが各地域や政治の場面でも活躍されています。それぞれの地域には、先送りできない課題が
あらゆる面で噴出しています。だからこそ、ふるさとをこよなく愛する私たち青年団をはじめとする
社会教育の重要性が再認識される必要があります。
3.日青協が取り組む今年度の重点項目
二度目の東京オリンピック・パラリンピックを5年後に控え、我が国のスポーツ・芸能文化を取り
巻く環境もまた、今大きく変わろうとしています。2011年に国民の誰もがスポーツする権利を定
めたスポーツ基本法が制定され、2015年10月には、スポーツ行政の司令塔となる「スポーツ庁」
が文部科学省の外局機関として設置される方針が定まりました。トップレベルの競技選手の育成だけ
でなく、スポーツ人口を全体的に倍増する政策も行われることが決まっています。また、文部科学省
は2014年3月に「文化芸術立国中期プラン」を発表し、2020年をターゲットイヤーに各地の
文化力をいかした取組を進めるための基盤整備をねらいに具体的なロードマップと行動計画をまとめ、
文化芸術に携わる国民を増やす目標を示しました。スポーツ・芸能文化活動に取り組むことは社会教
育の一環であり国民の権利です。こうした中で、私たちは働く若者のスポーツ・芸能文化の普及振興
と地域社会の創造を目的に、道府県青年大会や全国青年大会の開催などスポーツ・芸能文化活動の裾
野をひろげようと取り組んでいます。
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今、私たち青年団は社会の中でどのような位置にあるのでしょうか。青年団のある地域では当然必
要とされ、様々な役割を担っていますが、日本全体を見渡してみると、青年団が衰退もしくは形を変
えてしまった地域も少なくありません。一方で青年団を再生、復活させる動きは近年青年たちが中心
となり見られるのも事実です。私たちは現実と向き合い、地域で輝く後輩たちのために、一人ひとり
の更なる奮起が求められています。
これから約2年半、青年団活動の拠点である青年の城のない活動が始まろうとしています。それは
これまでに経験したことのない日々を共に過ごすことでもあり、幾多の試練が待ちかまえていること
でしょう。しかし今、私たちは時代の転換期に直面し、青年団における戦後第三の高揚期をつくるべ
く、これまでの運動を継承しつつも新たな可能性を次代につなぐチャンスでもあります。
日青協は2012年度に中期3カ年計画検討委員会を設置し、委員会で出された答申を踏まえ「学
ぶ」
「育てる」
「つなぐ」をキーワードにこれまで数多くの改革に着手してきました。今年度はその3
年目にあたり、引き続き改革を進めるとともにこれまでの取組を総括、検証する年でもあります。ま
た、昨年度改正した規約運用の二年目となり、青年団の全国組織として持続可能な組織をめざして本
格的に具体化させていくたいへん重要な年となります。
初代青年館は、明治神宮の労力奉仕に対し皇太子殿下(後の昭和天皇)から賜った令旨を後生に形
として残そうとつくられました。二代目青年館の再建運動は、先輩たちが老朽化に伴い単に近代的な
建物を東京の都心につくろうとしただけでなく、地域青年団を我が国の地域の隅々から再建していこ
うという一大運動でした。そして今、三代目青年館の建設を目前に控え、私たちに求められているの
は何であるか。それは、20年先、50年先、100年先の青年団の姿を想像し、笑顔にあふれた輝
いた未来を後生につないでいくということではないでしょうか。日青協の取組だけでなく、道府県団
や郡市町村団、加盟団、未加盟団、未組織地域等々、地域のすべての青年活動を、青年団の再生にと
どめずに、三代目青年館の再建や東京オリンピック・パラリンピックの成功、そして、日本列島全体
の活性化につなげていきましょう。また、基地問題や憲法問題だけでなく、青年が直面する諸問題に
対し、正しい情報を選択し、正しい認識で向き合う必要があります。そのために青年団運動を通して
多面的な視野を持つ人に一人ひとりがなるよう自覚しましょう。
2015年度は「地域青年教育再生元年」と位置づけ、次の4つの分野において重点的に取り組ん
でいきます。
1)全国青年団種まき運動の展開
2)日本青年館継承募金の展開
3)スポーツ・芸能文化活動の展開
4)被爆・戦後70年のとりくみ
この青年館に込められた歴代の思いを受け止め、新しい館に歴史の重さと今を生きる平成の運動の
魂を込める、それは私たちにしかできない、未来につなぐ大きな足跡でもあります。
私たちには、青年団を未来につなぐ責任があります。改めてそのことを確認し、次の通り今年度の
運動方針を定めます。
4.日青協の総合的な取り組みについて
1)全般的運営について
国立競技場の改築により、日本青年館も休業・解体期間に入りました。日本青年館がない二年間、
日青協にとっても厳しい状況での運営がはじまります。とりわけ財政はたいへん厳しく、2011年
以降から続く赤字決算もふまえ、
日青協運営の見直しは必要不可欠です。
一つ一つの課題に向き合い、
日青協の安定的な運営に努めます。
今年度の執行部体制は総務部・組織部・社会部の三部体制とし、各部に課せられた運動の遂行はも
とより、部をこえて連携連帯していきます。また、様々な情報発信ツールを活用し、執行部内だけで
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なく、道府県団との情報共有にも努めるとともに、継続的な運営方法を模索していきます。
道府県団の財政状況は年々厳しさを増しており、日青協への会費納入に大きな影響を与えています。
しかし、青年団運動の歩みが止まることを防ぐため、厳しい中でも全額納入・一部納入している道府
県団も少なくありません。今年度は、会費未納を減らす運動に取り組みます。また、昨年度に引き続
き、道府県団の新たな財政獲得を目的に、新規助成金の獲得用件などの情報発信を行います。
全国で行う運動を確認し、高めていくためにも機関会議は最も重要な場です。今年度は運動の共有
だけでなく、学習の場を設けます。
また、新しい規約での運用がはじまり二年目を迎えました。持続可能な組織運営をめざした運動を
拡げていくために、賛助会員の獲得に力を入れていきます。
<2015年度諸会議日程>
○第2回理事会
2015(平成27)年10月11日(日)~12日(月)
○第3回理事会
2016(平成28)年3月19日(土)
○第1回理事会
2016(平成28)年3月20日(日)
<2015年度事業計画>
○第46回北方領土復帰促進婦人・青年交流集会
2015(平成27)年7月18日(土)~19日(日)
○第24次植林訪中団
2015(平成27)年9月19日(土)~23日(水)
○第64回全国青年大会
2015(平成27)年11月13日(金)~16日(月)
○第61回全国青年問題研究集会
2016(平成28)年3月 4日(金)~6日(日)
○2015年度青年活動支援者フォーラム 2016(平成28)年3月 4日(金)~6日(日)
2)道府県団と共に歩む
(1)オルグ活動の充実
日青協は道府県団の要求によって生まれた組織であることは言うまでもありません。したがって、
道府県単位で行われている運動を集約し、全国に発信していくことが日青協に課せられた役割です。
全国の運動と各地の運動の合致点を見いだし、より充実した運動を展開していくためにもオルグ活動
は極めて重要です。青年団運動全体を発展させていくためにも、日青協執行部によるオルグだけでな
く道府県団による市町村団オルグの状況などについても確認し、活動の実態を集約していきます。
また、昨年度に引き続き、あらゆる場面をオルグ活動と位置づけ、情報の共有に努めます。これま
で以上に道府県団との出会いの機会を大切にしていくとともに、講師助言者派遣補助制度の活用を呼
びかけます。
(2)全国青年団種まき運動の展開
戦後、10,000以上あった市町村数は、昭和、平成の大合併を経て、現在は1,718まで減
少しました。市町村合併は自治体財政のスリム化や行政の効率化などの利点があるものの、地域コミ
ュニティの希薄化や広域化によるサービス機能低下などの様々な問題を抱えています。とりわけ社会
教育分野においては、公民館の減少や社会教育関係団体の衰退など、地域の中での役割が行政自らの
手によって奪われています。しかし、地域の文化・伝統を守り、次代に受け継いでいくのはまぎれも
なく私たち青年です。自分の生まれた故郷を愛し、地域で青年が生き生きと活動することこそ、地域
が元気になる第一歩だと考えます。
今年度から昨年度まで取り組んできた全国市町村議会への要望活動や政策提言委員会を踏まえ、全
国の仲間とともに日本全国の市町村教育委員会をまわり、あらためて「青年団」の存在を知ってもら
うための「全国青年団種まき運動」を展開します。
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道府県団組織には地元の自治体を、休団状態にある地域には執行部役員が中心になって働きかけ、
初年度である今年度は全自治体の3分の1、3年間で全自治体を訪問することを目標とします。なお、
訪問した地域は日青協ウェブサイトで公開し、全体で共有できるように努めます。
(3)日本青年館継承募金の展開
日本青年館はいつの時代においても青年の要求により建設されてきました。昨年度の定期大会で承
認いただきました日本青年館継承募金運動を、
今年度も継続して取り組みます。この継承募金運動は、
日本青年館を建設するための募金運動だけでなく、初代そして二代目の日本青年館を建てられた諸先
輩方の思いを継承し、次代の後輩たちに三代目の日本青年館を継承させる運動に他なりません。運動
を全体で確認していくためにも、実施要項を軸に今年度は機関会議毎に募金額の集約や、オルグ活動
を通じて募金活動の展開を呼びかけていきます。あわせて、寄付帳の進捗状況も確認し、新たに必要
な場合には早急に対応していきます。
3)日本青年館との連携
2017年度の三代目青年館開業に向けて、昨年度に引き続き移転・建設委員会での協議が行われ
ることとなりました。日青協も委員として引き続き三代目の日本青年館建設に向けた議論の場に出席
します。また、様々な協議の場面においては細心の注意で臨み、これまで以上に日本青年館との連携
に努めます。
全国青年団OB会岩手大会(第34回総会)へ参加し、OB・OGとの情報交換や全国青年会館協
議会と連携を図り、各道府県にある青年会館やOB会、現役の関わりが増えるように努め、多くの先
輩から継承募金などについて、ご指導、ご支援がいただけるように努めます。
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Ⅱ.組織活動方針
1.スポーツ・芸能文化活動の裾野をひろげる取り組み
1)道府県青年大会の拡充
道府県で行う青年大会は、全国青年大会の予選会としてだけでなく、新しい仲間や団体の掘り起こ
し、そこから広がる輪によって組織強化につなげていく重要な役割を持っています。
今年度は道府県団拡充モデル地域からモデル道府県団と名称をあらため、昨年度に引き続き取り組み、
継続的な拡充に取り組みます。あわせて、各道府県の状況に寄り添った大会運営を提案します。なお、
機関会議での報告や、
加盟団メーリングリストを利用して道府県団に取り組み状況の可視化をめざし、
モデル道府県団以外にも大会拡充につながる情報を提供していきます。
2)第64回全国青年大会の開催
全国青年大会は、1952年にサンフランシスコ講和条約の発効を記念して開催して以来、平和で
豊かな地域社会をつくり、スポーツ・芸能文化活動の裾野を広げる目的で継続してきました。
今年度の拡充方針は二本柱で行います。第一は新種目(舞台発表、のどじまん)と要項改正により
出場団体枠が撤廃された芸能文化種目全体の底上げです。芸能文化種目では、これまで取り組んでき
た団体への呼びかけを道府県団に改めて協力を求めるとともに、青年層で活動している合唱団体など
新たな団体を掘り起こし参加へとつなげていきます。第二に、誰もが自由に参加できるダーツの拡充
です。昨年度の大会で一定の成果は得たものの、引き続き拡充の幅を拡げていくことが必要です。
(公
社)日本ダーツ協会と連携した拡充を展開していきます。
また、体育競技会場から芸能文化種目会場までの間で全国青年団物産市を開催できるような仕掛け
のほか、多くの参加者が集える仕掛けを検討していきます。
3)これからの青年大会の将来像
全国青年大会を持続可能とするために、今年度も引き続き剣道種目における(一財)全日本剣道連
盟との共催化をめざします。また、toto助成金の申請に向けた動きを模索します。
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて各界が盛り上がりを見せている今、私
たち青年団も、青年団が63年余にわたり開催してきた全国青年大会の意義を改めて確認し、一人で
も多くの青年が大会に参加できるよう引き続き検討していきます。
2.青年の主体的な学びの取り組み
1)道府県青研の拡充
道府県青研は、県内の青年活動の実践を集約し、仲間と向き合い課題を見いだすことができる場で
す。今年度は、さらに道府県青研が充実していくよう、司会者学習会の推進やレポートの必要性につ
いてオルグなどを通して訴えていきます。また、青研未開催地域には他地域の情報発信などを行い、
当該道府県団とともに開催に向けて取り組んでいきます。
2)第61回全国青年問題研究集会の開催
全国の仲間と真剣に地域や社会を見つめ、語り合い、解決の方向性を見いだすことができるのが全
国青年問題研究集会です。今年度は日本青年館分館である山中湖畔荘清渓(山梨県)で開催し、日本
青年団新聞に掲載された実践や郡市町村・道府県青研で話し合われた課題を全国から集約します。中
でも特に社会に目を向けた実践をより多く集め、分科会を設定できるよう取り組みます。多くの仲間
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と出会い語り合いが持てる場、また一年間の活動を総括できる場をめざします。
3)2015年度青年活動支援者フォーラムの開催
行財政改革による社会教育行政の後退は青年活動や支援者へも大きな影響を与えてきました。今、
社会教育の重要性があらためて見直されています。今年度は、全国青年団種まき運動と連動し、未加
盟・未組織地域の行政や支援者にも参加を呼びかけ、社会教育に携わる方々との連携連帯を深めるよ
う取り組みます。実践者と支援者が集い、共に考え、今後の青年活動発展の一歩となることをめざし、
2015年度青年活動支援者フォーラムを第61回全国青年問題研究集会と併催します。
3.全国に伝え学ぶ取り組み
1)教育宣伝活動の充実
青年団活動を広く地域に伝える教育宣伝(教宣)活動は、組織内の連帯感を高めるだけでなく、地
域の人々に自分たちの存在をアピールし理解や協力を得る手段となります。今年度は日本青年団新聞
やSNSを通じて、全国各地の青年に向け全国の活動情報や教宣活動の必要性を伝えていきます。
日本で唯一の青年団を対象とした全国機関紙である日本青年団新聞は、青年団運動を支え拡げていく
役割を果たしています。今年度も、未加盟・未組織地域を含めた各地の青年活動を発信し、全国の様々
な活動を学ぶことができる紙面づくりをめざします。地域の仲間の思いを引き出し多くの人たちにそ
の思いを伝える役割として、また購読拡大の推進者として、支局員の存在は必要不可欠です。今年度
も各道府県団から1名以上の支局員を募集し、連携して全国の仲間の実践や声を発信していきます。
今年度は、全国の仲間をつなげるため、日青協の諸事業やオルグ活動などを通じて新聞購読を呼び
かけるとともに、購読を利用した還元金制度を周知し、未購読府県団をなくすよう取り組みます。ま
た、新聞発行形態の見直しを模索し、実施していきます。
SNSは、全国の仲間の取り組みや日青協事業の情報を迅速に伝える媒体として必要不可欠です。
今年度もSNS等のツールを活用し情報を発信していきます。
2)仲間の活動から学ぶ取り組み
全国各地の青年活動の集約、未加盟・未組織の新しい実践の発掘を目的に、
「2015年度全国地域
青年『実践大賞』
」を開催します。また、取り組みを通じて、青年団と青年団体の新たなつながりが生
まれ、お互いの協力により新たな実践が生まれることをめざします。
青年団の教宣活動は、機関紙(誌)やユニフォームをはじめ、近年では映像などの取り組みも増え
てきました。各地の教宣グッズを集め展示することで学び合い、お互いに評価しあうことで教宣活動
が更に活発になることを目的として「2015年度全国青年団教宣コンテスト」を開催します。より
多くの人に教宣活動を知ってもらうため、昨年度に引き続きウェブサイトと作品集を作成します。
これらの事業は、第61回全国青年問題研究集会及び青年活動支援者フォーラム内で表彰します。
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Ⅲ.社会活動方針
1.東日本大震災への想いを風化させないために
あの未曾有の大災害から4年余りが経ち、
「復旧・復興」と大きく取り上げられていた世の中の関心
は時間の流れとともに少しずつ薄くなりつつあります。青年団として、また一人の青年として、あの
経験と仲間の想いを風化させず次の世代に伝え続けていくために、今年度も運動を展開します。
昨年度、作製した震災パネル第1部について全国各地での展示を促すとともに、今年度末の完成を
目標にパネル第2部を作製します。第2部では、定点観測的な視点を取り入れて当時の状況や復興・
復旧の現状に加え、青年団の活動を取り入れた内容で作製していきます。また、これまで発行してき
た「生きる」第4号の発刊にむけて、全国組織としてのネットワークを最大限に活かし、青年たちの
互いの学びと成長、そして震災の風化防止につながるよう協力を行います。そして震災を風化させな
いために、
学びの場として被災体験を聞く場をつくり、全国の仲間とともに想いを共有していきます。
2.一人一人が認め合い、平和で豊かな暮らしを営むために
1)青年が前向きに生きていける機会の創出
今年度は全国青年団種まき運動との連携を図り、青年が地域でより前向きに暮らしていけるきっか
けや気づきとなるよう運動を行います。昨年度に集約した勤労青年の生の声「つぶやきカード」に関
しては、仕事に対して明るい話題や意見が多く見られたこともいかし、より前向きに自分自身の仕事
と向き合っていける気持ちづくりを推進していきます。
勤労青年の労働環境の改善にむけて「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」
(就
職連絡会)と連携し、若者の就職保障と働くルールの確立をめざしていきます。
2)平和な社会を継続させる活動の推進
今年度は被爆・戦後70年の節目となります。これまで私たちは各地で様々な平和活動を継続し、
運動を展開してきました。しかし、残念ながら世界中ではこの70年間に多くの戦争や紛争が発生し
ました。このような情勢の中で改めて平和の大切さを考える必要があります。今後も決して原爆や戦
争の悲惨さを風化させることなく、平和の想いを継承していくためにも、理事会をはじめあらゆる機
会で学習する機会をつくり、語り部から被爆・戦後体験を聞く場をつくり学習を進めます。また70
年続いた平和を祈念し次代につなげていくために千羽鶴を使用し平和の大切さを全体で共有する運動
を行います。あわせて、全国各地で現在も取り組まれている平和活動を集約し、全国の仲間と情報の
共有を行います。
3.東アジア社会の友好と協調のために
日本と中国及び韓国との関係は現在も良好とは言えず、民間レベルの交流にあたり情勢により中止
するなど影響を受けています。このような状況だからこそ、国境をこえ私たち青年が中心となり東ア
ジア社会の友好と協調をめざしていく必要があります。
日青協と中華全国青年連合会(全青連)は半世紀以上にわたり青年交流を行っております。今後も
先輩たちが築いてきた関係を大切にするためにも、日青協と全青連が中心となり両国の発展に寄与す
ることができるよう友好関係を継続していきます。その事業の一つとして1992年以降、日中共同
で沙漠緑化事業を実施しています。この事業は両国の青年の交流を深めるだけでなく、沙漠化を少し
でも食い止め、日本へ飛来する黄砂を防ぐ一歩となるばかりか、沙漠地域における生態系の回復とい
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う意味でも中国政府から高く評価されています。日青協では今年度も全青連と連携し第24次植林訪
中団を派遣します。また定期交流として12月に中国青年代表団の受け入れを行う予定です。
2年間にわたり取り組んできた韓国青少年団体協議会(韓青協)との代表交流を終え、いよいよ今
年度より正式に定期交流として行い、日青協より代表団を韓国に派遣することで、両国の信頼や協調
を築く青年交流としていきます。
朝鮮民主主義人民共和国との青年交流は、1979年に当時の朝鮮社会主義労働青年同盟(社労青)
との間で合議書を結び相互交流を行ってきましたが、両国の関係から交流が滞っている状況にありま
す。今年度も在日本朝鮮青年同盟(朝青同)との友好的な関係を継続し、国家間の情勢を注視しつつ、
金日成社会主義青年同盟との交流の可能性を検討していきます。
4.北方領土返還のために
戦後70年は、北方領土が旧ソ連に不法占拠され70年が経過したことをも意味します。元島民の
高齢化は年々深刻な問題となっています。近年、日ロ両国の関係はエネルギー連携などで進展する兆
しも見え、北方領土問題や平和条約締結にむけても外交交渉が行われています。この状況を推進する
ためにも、日青協では他団体とこれまでどおり協調し返還運動を継続させ、青年を中心とした世論の
関心を高めていきます。その運動の一つとして今年度も全国地域婦人団体連絡協議会とともに「第4
6回北方領土復帰促進婦人・青年交流集会」を7月に北海道根室市で開催します。今回も北海道青協
の協力を得て参加しやすい日程を検討し、北方領土を自分の目で見ることができる現地での学習を深
めていきます。また、北方領土返還要求運動連絡協議会の議長団体として、2016年2月7日の北
方領土返還要求全国大会の開催や北方四島ビザなし交流へ参加します。
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道府県団への呼びかけ
1)地域防災について考えよう
2011年3月11日に発生した東日本大震災による地震と津波は、戦後未曾有の大災害と呼ばれ
るように想定外の被害を我が国にもたらしました。内閣府が2013年実施した「防災に関する世論
調査」では、
「災害についての対応を話し合ったことのある人」が35%から63%に大幅な伸びを見
せ、災害対策を「何もしていない人」が過去最低の10%となるなど、国民の防災に対する意識の高
まりが見られました。その一方で、東日本大震災から4年が経過した現在はマスコミで震災について
取りあげられることも格段に減り、被災体験の風化を危惧する声が被災地を中心に強まっていること
も事実です。また、御嶽山の噴火や広島での土砂災害等々、全国的に自然災害が増加している中で、
人々の防災への意識が少しずつ高まっている傾向にあります。
地域防災は地域の担い手である私たち青年世代が、先頭に立って進めていかなくてはなりません。
また、このような震災を予想外と片付けるのではなく、この経験を教訓として受けとめていく必要が
あります。二度と同じような被害を繰り返してほしくないという被災地の仲間の想いに応えるために
も、全国各地で防災についての学習をすすめることを呼びかけます。
2)日本国憲法を読んでみよう
近年、日本国憲法の解釈や改正論議が国会で巻き起こっています。GHQの指導によって進められ
た憲法成り立ちの経緯の是非や時代に即した改憲を訴える動きもある中、1947年5月3日に施行
された日本国憲法はこれまで一度も改正されず今日まで至っています。
日本国憲法の最たる特徴といえるものは、戦争放棄をうたった憲法9条です。これは世界の憲法で
は類を見ないものであり、戦後、日本が一度も戦争を起こさなかった証であるともいえます。しかし、
現在では憲法改正を実現するための手続きを定めた憲法96条の見直しをはじめ、集団的自衛権や国
防軍の保持を明記する動き、また、憲法の柱となる基本的人権の制約条件を、他人の人権を侵さない
限り尊重される「公共の福祉」から、国や社会の利益や秩序が個人の人権よりも大事だという「公益
及び公の秩序」という文言へ改正しようという動きなどが一部の政党からは見られます。
私たちが日本国憲法の改正について判断する前に、まずは今の日本国憲法をあらためて学ぶことか
ら始めてみましょう。それは先の大戦の反省から、世界平和を希求して立ち上がった青年団の一員で
あるからこそ求められるものです。青年一人ひとりが日本国憲法を読み、今の憲法を身近なものとし
て理解し、これからの我が国のあり方を考えていくことを呼びかけます。
3)全国規模の集会に参加しよう
今年は戦後70年を迎え、あらためて戦争について考えなくてはならない年であると言えます。し
かし、戦争体験者の高齢化はより一層すすみ、戦争体験を継承していくための時間は体験者にとって
決して長くはありません。今を生きる私たち青年には、戦争体験を継承し後世へ語りついでいく使命
と役割があります。また、戦争と原発事故を二度と繰り返さないためにも、核兵器廃絶と同時に原子
力についても学んでいく必要があります。日青協では「青年は二度と銃を取らない」ことを青年団の
基本精神に、反核平和の運動を基盤とし、子どもと教育、暮らしと労働の問題などを訴える下記大会
の趣旨に賛同し、道府県団のみなさんに参加を呼びかけます。
○第61回日本母親大会in兵庫
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日本母親大会は全国から毎年延べ2万人の母親・女性が参加します。この大会は1954年3月1
日アメリカがビキニ環礁で水爆実験を行ったことに対する原水爆禁止の訴えを原点としています。
「生
命を生み出す母親は生命を育て生命を守ることをのぞみます」のスローガンを掲げ、日本の女性運動
をリードしてきました。より多くの人と手をつなぎ、活動を広める意味から、第61回日本母親大会
への参加を呼びかけます。また、各道府県や市町村などで開催される母親大会への参加も呼びかけま
す。
期
日:2015(平成27)年8月1日(土)~2日(日)
場
所:兵庫県神戸市
○3・1ビキニデー全国集会への参加
毎年、3月1日に静岡県の実行委員会主催で「3・1ビキニデー全国集会」が開催されています。
1954(昭和29)年3月1日、ビキニ環礁での水爆実験でマーシャル諸島の人々や静岡県焼津の
マグロ漁船第五福竜丸をはじめ、多くの漁船が被爆しました。核兵器の影響、核兵器廃絶の重要性を
学ぶため、集会への参加を呼びかけます。
期
日:2016(平成28)年3月1日(火)
場
所:静岡県焼津市
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参考資料(日青協の態度)
1)エネルギー政策を転換する取り組み
2011年3月11日に東日本大震災によって日本は未曾有の被害に見舞われました。この大災害
によって、東京電力福島第一原子力発電所事故はおき、日本政府が原発推進の根拠としてきた安全神
話は崩れ去りました。3.11以降、原発周辺に住む福島県の人々は、集団移転を余儀なくされ、福
島県をはじめとする多くの地域の第1次産業は放射性物質の影響や風評被害によって大きな打撃を受
けています。日本政府は2011年12月16日に「発電所の事故そのものは収束に至ったと判断さ
れる」と事故収束を宣言していますが、未だ放射性物質の放出は止まっていません。日本全国にある
原発も2012年5月までにすべてが運転を停止しているものの、関西電力の大飯原発3、4号機が
短期的に再稼働したように電力供給の安定性を確保するために再稼働へむけた動きを政府は続けてい
ます。
2013年2月6日には原子力規制委員会より、原発の再稼動をめざすかのような原発の「新安全
基準(骨子案)
」が発表され、複数の原発が安全性検査をすすめています。また、2014年2月25
日に発表された「エネルギー基本計画」では、原発を発電コストが安く、安定的に稼働できる「重要
なベースロード電源」と記しています。しかし、原発から都市部への送電費用、核燃料の再処理問題、
ひとたび原発事故が起きれば莫大な費用がかかることなど、低コストを理由に原発再稼働を推し進め
ることには疑問の目がむけられています。
日青協では、まずは東京電力福島第一原子力発電所事故の即時の収束を求めます。また、国をあげ
ての省エネルギーの取り組みや国内のエネルギーすべてを再生可能エネルギーにする抜本的な政策転
換を求めていきます。原子力に対しては、国内すべての原発を再稼動することなく廃炉にしていくこ
と、40年の運転期間を過ぎた原発が運転延長されることなく原則廃止を守ること、さらには、放射
性物質の除去・被爆治療・廃炉技術の早急な技術開発及び技術向上を求めていきます。
2)領土問題
北方領土のほかに、島根県・竹島、そして沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題で、東アジア情勢が今揺
れ動いています。竹島は1905(明治38)年2月より日本領土に編入され、隠岐の島に住む人々
が漁場としていました。戦後、サンフランシスコ講和条約の中に竹島の文字がなかったために竹島の
帰属が問題とされました。1952(昭和27)年に韓国側が一方的に「李承晩ライン」を宣言し、
漁船などを締め出し、現在も韓国の実効支配が続いていますが、歴史的に見ても日本の領土であるこ
とは明らかです。また、尖閣諸島は日本の明治政府が無主の島であることを確認した上で沖縄県の一
部としており、歴史的、実効的に見ても日本の領土です。
3)消費税について
2014年4月1日、消費税が5%から8%に増税されました。17年ぶりのこの増税に加え、当
初の2015年10月からは延長されたものの、2017年4月には10%まで消費税の引き上げが
計画されています。日青協は消費税が導入された1989年から一貫して反対の態度を明らかにし、
その廃止を求め続けています。消費税は年齢や所得に関係なく同じ税率が課せられる逆累進性の特徴
を持つため、貧困層ほどその負担が大きくなります。また、消費税は税率を上げることが容易であり、
その増益が防衛費の増につながることも懸念されます。歳入不足は、将来健全財政に禍根を残すこと
が明白な赤字国債の発行に頼るのではなく、防衛費の大幅削減や行財政改革の一層の実施、浪費型の
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公共事業の抜本的改善、不公平税制の是正などによって生み出すべきという立場で臨み、現行の中で
最大限是正を求めていくという立場を引き続き堅持していきます。
4)東アジア諸国について
(1)中華人民共和国
日中の青年交流は、日青協の国際交流の中でも最も歴史が長く、他のどの民間団体よりも先駆けて
青年交流を実施してきました。中華全国青年連合会との交流は、日中両国の国交が回復する15年以
上も前の1956年から行われており、日中戦争における被害に対して中国側への謝罪からはじまっ
ています。その後、定期交流というかたちで相互交流が重ねられ、両国の関係改善に寄与し友好を育
んできました。今では国際交流から国際貢献に発展し、中国の沙漠化を防ぐために植林活動が展開さ
れています。
日青協は中国青年との交流をはじめる際に誓った、
「青年は二度と銃をとらない」という日中両国青
年の不戦の誓いに基づいて現在も青年交流をすすめています。それは他のいかなる国との交流におい
ても基本とされるものであり、青年団の基本理念ともいえます。日青協では今後もこの不戦の誓いを
堅持し、世界平和を希求する精神をもって青年交流を図っていきます。
(2)朝鮮民主主義人民共和国
近年、幾度となく朝鮮民主主義人民共和国(以降、共和国)の日本海へむけた中距離弾道ミサイル
発射実験やその可能性が報じられています。これらはこれまでの国連安保理の決議だけでなく、共和
国自らが署名をした日朝平壌宣言にも違反するものです。
日青協はこの間一貫して、こうした共和国の行動に対して、金日成社会主義青年同盟や在日本朝鮮
青年同盟との交流関係を維持しながらも、是々非々のスタンスを明確にし、次のような態度を明らか
にしてきました。
・共和国には、核兵器の開発や製造を直ちに放棄し、核兵器廃絶を願う国際連合安全保障理事会をは
じめとする国際世論に応えうる真摯な行動と最善の決断を求める。
・国際連合安全保障理事会をはじめとした国際世論には、共和国に対し、武力によらない対話による
説得を求める。
・金日成社会主義青年同盟や在日本朝鮮青年同盟に対して、核実験実施に対する日青協の態度を明確
に伝えるとともに、改めて交流目的である「北東アジアにおける真の平和と友好の確立」を再確認
し、両国の青年同士が共通の立場に立ち議論していく。
今年度も、引き続き上記の立場を堅持していきます。
5)日本国憲法について
1947年5月3日、日本の最高法規である日本国憲法が施行されました。この憲法は日本が二度
と戦争に加担しないように、GHQの強力な指導の下で国民主権と戦争放棄、平和国家の設立を基調
として生み出されました。しかし、現在、憲法改正の手続きを定めた憲法96条の改正にむけた動き
や国民投票法案の改正など、国会は憲法改正に舵を切って進もうとしています。また集団的自衛権の
拡大解釈や、国の安全保障の観点から特定秘密保護法が制定されるなど国の防衛を強化しようとする
動きも加速しています。
日青協はこれまで平和憲法擁護の姿勢を示し、青年団活動の目標は「日本国憲法が完全に実現され
た社会」におくこととしてきました。平和憲法ともいえる日本国憲法の理念は、私たち青年団の恒久
的な平和の確立をめざす精神とも一致しており、日青協も核兵器廃絶や戦争放棄を訴え、防衛費の増
強反対と軍縮を国内外に呼びかけてきました。今後も世界の平和と安全のために、平和憲法に基づく
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主体的で対話を軸とした外交を求めるとともに、他国に例のない日本国憲法が守られるようにその姿
勢を堅持していきます。
6)18歳選挙権の実現について
2015年3月、与野党共同で選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が衆議院に
提出されました。早ければ2016年夏に予定されている参議院議員通常選挙から適用されます。
日青協は、
「国際青年の年」日青協宣言で「18歳選挙権の早期実現を強く要求する」と主張し、これ
までも機会あるごとに訴えてきました。労働や納税など社会生活の重要な場においても事実上の成人
として扱われ社会的な義務を負うのであれば、同時に選挙権も与えられるのが当然です。18歳選挙
権はいまや世界140カ国以上で実施され、サミット諸国で実施されていないのは日本だけです。
日青協は前述の姿勢に立ち、学校教育で政治教育がタブー視されることなく取り組まれ、青年が主
権者としての自覚を持ち政治に関心を高める状況をつくることとあわせて、18歳選挙権の実現を求
めていきます。
7)社会教育法改定について
1999年「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」の中で社会教育法の改
定が一括審議され、青年学級振興法の廃止など青年教育に関する記述が一切なくなりました。日青協
は振興法の廃止はやむを得ないとしても、振興法が大切にしてきた理念や措置を社会教育法に組み込
んでいくことが重要であると主張してきました。
多くの青年は自分を見いだせる居場所や、生活の中から実感する自らの課題を学ぶ場として集団活
動や地域活動に大きな関心を寄せています。こうした青年の学習や集団活動に対する自主的な意欲を
尊重し、生活実態に即した具体的な支援策、青年教育を支援するための職員体制とその専門性の確保
がされるよう、日青協は青年教育の重要性を主張していきます。
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