働く女性の妊娠・出産・育児に対する不安に 影響を与える要因に関する研究

高知大学看護学会誌
原著
働く女性の妊娠・出産・育児に対する不安に
影響を与える要因に関する研究
大西昭子
)
吾妻
(高知大学大学院医学系研究科看護学専攻
要
健
)
)
、高知大学医学部看護学科
)
)
旨
妊娠中の女性の妊娠・出産・育児に対する不安や働く女性のサポート体制の現状を明らかにす
るため、平成
性(
年
月
日
平成
年
月末までに母子健康手帳の交付を受けた
名)を対象とし質問紙調査を行った。回答が得られた
歳
平均年齢
歳で、就労継続群は
名(回収率
市在住の女
%)を分析した。
であった。結果、母性健康管理に関する制度は
認知度が低く、利用可能な制度が少なかった。更に多変量解析の結果、妊娠・出産・育児の
目に対する不安に共通して 高齢 、妊娠・出産には
の気苦労 、出産・育児には
出産には
初産
身体的な状態 、育児には
妊娠の計画性 、妊娠・育児には
就業上の問題 、妊娠には
夫や妊婦の喫煙
項
家庭内
医師および実母のサポート 、
が有意に関連していた。以上から、働
く女性が安心して妊娠・出産・育児に向かうためには、職域や行政等の社会全体の総合的なサ
ポート体制が不可欠である。
キーワード 妊娠、出産、育児、不安
現勤務先
南国市役所
受付日
高知県南国市大
甲
年 月
日
受理日
年
月
日
高知大学看護学会誌
巻 号(
【緒
)
言】
ぼ台形に近づいた形をとっている。 市にお
いても同様に、女性の就業率は平成
現在、日本社会の少子高齢化は諸外国と比
調査において
%であり、平成
年国勢
年度の国
較しても急速に進んできている。日本の合計
勢調査と比較すると 字型の大きな落ち込み
歳の
は見られず、妊娠・出産・育児期にも就労を
低下が著しく、晩婚化の傾向が窺える。この
継続する女性が増加していることが窺える。
背景には、日本の女性の社会進出が飛躍的に
そこで、本研究では、女性の就労率が高い
伸びてきたことがあげられる。その中で、女
高知県の特色を生かし、妊娠期にある女性の
性のニーズは多様化し、 結婚して家庭に入
心身の健康状態や周囲からのサポートなどに
ということだけではなく、 社会の中で
ついて、就労の有無による差異を明らかにす
役割を持ち、働きながら妊娠・出産・育児に
ると同時に、妊娠・出産・育児に対する不安
向かうことができる ことが女性の生き方の
の要因を検討し、女性が働きながら安心して
選択肢のひとつとなった。しかし、働く女性
妊娠・出産・育児に向かうことができるため
の妊娠・出産を考えた場合、制度としては
に有用なサポートを検討することを目的とし
あっても気兼ねなどの心理的要因や経済的な
て実施した。
特殊出生率を年齢階級別にみると
る
要因、制度の周知など、まだまだ運用上の課
【研究方法】
題が山積している。日本の女性の働き方の特
徴は、いったん、妊娠・出産・育児のために
離職する傾向があり、年齢階級別労働力率を
みると 字型を描く特徴がある。しかし、高
歳で
知県は
国
%)、
%、全国
歳
%(高知県
歳で
%、全
% (高 知 県
%)全国平均を上回り、
年前の国勢調査時と比較すると
ち込みが回復しているため、
歳の落
字型からほ
.研究対象者および調査期間
妊娠期にある女性を対象とするため、
市内在住の女性で、調査期間中に母子健康
手帳の交付を受けたもの(
名)を対象
とした。調査票は、平成 年
月
成 年
日
平
月末までの期間、対象者に対して
配布した。
働く女性の妊娠・出産・育児に対する不安に影響を与える要因に関する研究(大西・吾妻)
.調査方法
る・不安なしと回答したものを
不安なし
今回の研究は、質問紙法にてデータの収
群 と定義した。さらに、妊娠に対する不
集を行う量的研究による横断調査である。
安、出産に対する不安、育児に対する不安
市保健福祉センターにおいて母子健康手
の 点について、就労継続群と非就労群の
帳交付時に自記式無記名の調査票( 妊娠
群でそれぞれ関連する事柄を抽出し、そ
中の女性の心身の健康状態について )を
の特徴を比較検討した。最終的に、妊娠・
配布した。調査票は、後日、対象者自身か
出産・育児に対する不安に影響を与える要
ら研究者に郵送してもらう形で回収を行っ
因を総合的に評価するために、妊娠・出
た。調査内容は本人の属性として、年齢、
産・育児に対する不安をそれぞれ従属変数
妊娠週数、婚姻状況、同居家族、就労の有
とし、クロス集計で有意差の認められた要
無、出産回数を取り上げた。次いで、既往
因を独立変数として、二項ロジスティック
疾患の有無、喫煙状況(本人および同居家
回帰分析を行い、要因を検討した。統計学
族)、妊娠に付随する症状の有無、妊娠し
的検討については、比率の有意差検定には
たときの気持ち、妊娠した時期、妊娠に対
する不安、妊娠中の相談相手の有無、情報
検定を用い、
以下の数値の場合には
の直接確率計算法を用い、更に平
検定
収集先、家事支援の有無、出産に対する不
均年齢、妊娠週数の有意差検定には
安の有無、出産時の支援の有無、育児に対
を用いた。また、妊娠前後での平均喫煙本
する不安の有無、育児支援の有無、両親教
数の比較には対応のある 検定を用いた。
室受講の有無、妊娠に関連する診断・治療
なお、統計解析ソフトは
を用い、統計学的有意水準は
の有無、精神的な状況、就労の希望等につ
いて対象者全員に質問した。さらに就労女
とした。
性には、職業、雇用形態、夜勤の有無、通
.倫理的配慮
%
勤手段、通勤時間、妊娠前後の勤務時間、
研究対象者に対しては書面上にて調査の
産前休暇制度、退職予定の有無、健診休暇
趣旨および方法、個人情報の保護、問い合
制度、通勤緩和制度、相談担当者の配置制
わせ先等について明記し、説明の上、同意
度、休憩の有無、配置転換制度、有害業務
を得た。また、調査機関に対しては、文書
への従事の有無、不安や抵抗感、生きがい
にて研究の意義を説明し、許可を得た。調
等について質問した。
査票は、自記式質問紙とし、答えたくない
.分析方法
内容については解答しなくても可とし、対
回収された調査票に回答があったものを
象者からの問い合わせ時にもその旨を説明
対象に、今回の分析対象者の特徴を把握し
した。調査票は無記名とし、個人が特定さ
た。次に、対象を就労継続群と非就労群(妊
れることがないよう配慮し、その旨を書面
娠により離職したものも含む)の 群に分
上に記載した。研究への参加については個
け、心身の健康状態、周囲からのサポート
人の自由参加意思を尊重し、個々の返信用
の状況など妊娠・出産・育児に関する事柄
封筒にて回収を行った。回収後は、プライ
の比較検討を行った。この際、妊娠・出産・
バシー保護のため、データの管理は厳重に
育児に対する不安の有無については、それ
行い、
保管場所については施錠を徹底した。
ぞれ強い不安がある・不安があると回答し
たものを 不安あり群
に、不安が少しあ
高知大学看護学会誌
表
巻 号(
)
対象者の属性および結婚 就労 喫煙の状況について(
平均年齢
歳
年齢分布
歳未満
歳
歳
歳
歳以上
歳( 歳
(
(
(
(
(
)
)
)
)
)
(
(
同居家族
夫
子ども
義父母
実父母
(
(
(
(
)
)
)
)
現病歴
あり
(
)
就労について
以前から仕事はしていない (
妊娠をきっかけに仕事をやめた (
現在も仕事をしている
週
前期(
中期(
後期(
不明
出産回数
回
回
回
回
不明
週(
)
(
)
)
)
(
(
(
(
)
)
)
)
(
(
(
(
(
)
)
)
)
)
名(回収率
回答が得られた
原因は、調査項目が非常に多かったこと
やプライベートな部分に関わる内容で
あったことが影響していると考えられ
た。回答者の属性は、表 に示す通りで
歳
あった。まず、平均年齢は
歳で、
%が既婚であった。同居家族
で は、 夫 と 同 居 し て い る 割 合 が 多 く
%)
、核家族世帯が大半を占めて
(
おり、妊娠後も仕事を継続していた者が
名(
夫
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
(
(
)
)
妊婦
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
(
(
)
)
同居家族
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
(
(
回が
回が
本
本
妊婦
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
本
本
週で、
出産回数は、
名(
名(
%)で多く、次いで
%)であった。現病歴が
%と極少数であった。
.就労継続群の特徴
本
本
]
本
本]
)の属性は、表
就労継続群(
に示す通り、平均年齢は
( 歳
就労有無別の対象者の属性
週
あったものは
喫煙者の平均喫煙本数
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
)であった。また、平均妊
娠週数は、
)
)
夫
%)
を分析の対象とした。回収率が低かった
週)
)
)
)
通のうち、
調査期間中に配布した
喫煙の状況
表
果】
.対象者の概要
)
既婚
その他
平均妊娠週数
【結
歳)
婚姻状況
妊娠週数の分布
)
就労継続群(
年齢
歳
歳
歳)で、平均妊娠週数は
)
非就労群(
)
歳
歳
週
週
婚姻の有無
妊娠週数
第
子の割合
喫煙の状況
夫
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
(
(
)
)
(
(
)
)
妊婦
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
(
(
)
)
(
(
)
)
同居家族
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
(
(
)
)
(
(
)
)
喫煙者の平均喫煙本数
同居家族
夫
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
本
本
妊婦
喫煙歴あり
妊娠中も喫煙あり
本
本
夫
子ども
本
本
本
本
]
本
本 ]
(
)
(
)
本
本
]
本
本 ]
本
本
(
)
(
義父母
(
)
(
実父母
(
)
(
)
)
)
,
,
働く女性の妊娠・出産・育児に対する不安に影響を与える要因に関する研究(大西・吾妻)
週
週、初産は
名(
では事務職
名(
%であった。職業
%)と専門・技術職
%)が多かった。雇用形態では、
常勤が 名(
名(
%)、非常勤・パートが
名(
%)
、 分からない が
であった。
)配置転換制度
易な作業への業務転換や他部署への異動制
妊娠に関する各種制度の実態については
度 の 有 無 に つ い て は、 あ り
%)
、 なし
以下の通りであった。
(
)産前休暇制度および退職予定
からない が
産休制度の利用意向については、就労継
名中、 取らない が
名(
%、
そのうち退職予定 名)、 分からない
名(
名(
%)であり、 取得予定
が
が
名(
%)が
あり
と答えた。
)妊婦健診を受けるための休暇制度
なし
が
が
名(
名(
%)
、 分
%)であった。
比較検討
就労継続群と非就労群の属性(年齢、婚
有意差が見られなかった。サポート体制の
比較では、就労継続群は、妊娠中の相談相
)
、出産時のサポート(
手(
名(
名(
名(
名
.就労継続群と非就労群のサポート体制の
)
、出産後の育児に関するサポート
妊婦健診を受診する際の休暇制度が利用
可能かについては、あり が
が
が
姻状況、妊娠週数、出産歴)については、
%)であった。退職予定に対して
は、
%)
妊娠中の女性に対して、負担の少ない軽
%)であった。
続女性
名(
%)
、
%)、 分からない
)の項目において、非就労群と
(
比較して義母をサポートしてくれる人とし
%)であった。
て回答する割合が有意に高かった。
)通勤緩和制度
.妊娠に対する不安に影響を与える要因の
高知県では通勤に際しては公共交通機関
検討
の利用が少なく、自家用車での通勤が目立
)就労継続群
割近くの妊婦が通
就労継続群
つ。今回の調査でも、
名中、回答項目に不備の
勤に自動車を利用していたが、制度の利用
あった 名を分析対象から除外し、
が 可 能 か に つ い て は、 あ り
ついて検討を行った。
不安の有無の内訳は、
%)
、 なし
(
からない が
が
名(
勤時間でみると、片道
名(
が
名
%)
、 分
不安あり群 が
名に
名、 不安なし群 が
%)であった。通
名であった。両群の属性(年齢、妊娠週数、
分以上かかるもの
出産回数)
には有意差は認められなかった。
が 割以上であった。
)健康管理等の相談担当者
まず、 不安あり群 では
名(
%)
が、一方、不安なし群 では
名(
%)
職場内で、自身の健康管理等について相
が既婚であり、婚姻していないものは妊娠
談できる担当者の配置の有無については、
に対する不安がある割合が有意に高かった
あり
(
が
名(
%)、 なし
%)、 分からない が
名(
が
名
%)
るものが 不安あり群 では
不安なし群 では
であった。
)勤務中の休憩
名(
名(
%)
、
%)であり、
家庭内に気苦労がある場合、妊娠に対する
勤務時間内に体調が優れないときは、休
憩することができる制度の有無について
は、 あり が
)
。また、家庭内に気苦労があ
(
名(
%)、 なし が
不安を訴える割合が有意に高かった(
)
。
さらに、夫が妻の妊娠前に喫煙していた
高知大学看護学会誌
もの(
巻 号(
)
)および妊娠前に喫煙歴が
)、妊娠中に夫が喫煙
ある妊婦(
)および本人
を続けているもの(
い割合が有意に高かった(
妊娠に関する情報収集先にインターネッ
ト を あ げ た も の は、 不 安 な し 群
)において、妊娠に対する不安があ
る割合が有意に高かった。また、妊娠に附
随する症状では、妊娠に対する不安がある
)
と回答したものほど、倦怠感(
)、不安感(
次に、妊娠中の相談相手に実母と答えた
不安あり群
では
名(
であったのに対し、 不安なし群
名(
%)
では
談できているものほど妊娠に対する不安が
)
。
.出産に対する不安に影響を与える要因の
検討
)就労継続群
名中、回答項目に不備の
あった 名を分析対象から除外し、
名に
ついて検討を行った。
不安の有無の内訳は、
不安あり群 が
名、 不安なし群 が
出産回数)
には有意差は認められなかった。
まず、 不安あり群 では、 名(
%)
が既婚であるのに対し、 不安なし群
ないと答える割合が有意に高かった(
)
。また、妊娠に関する情報の入手先
については、妊娠・出産・育児の経験者で
)や義母(
%と有意に高かった(
名であった。
両群の属性
(年齢・妊娠週数・
%)であった。妊娠中に実母に相
ある実母(
では
就労継続群
)を訴える割合が有意に高かった。
ものは
では
%と少数であったが、 不安あり群
が妊娠中 も 喫 煙 を 続 け て い る 場 合(
や情緒の不安定(
)
。
)
、
)、専門の医師(
は
名(
で
%)が既婚であった。婚姻
)や夫と同居して
しているもの(
)ほど、出産に対する
いるもの(
)
不安がないと回答する割合が有意に高かっ
からの情報提供やサポートが期待できるも
た。また、家庭内に気苦労がある場合、出
のが、 不安なし群
産に対する不安を訴える割合が有意に高
友人(
で有意に高かった。
就労面では、現在の仕事について生きが
いを感じ、充実感を得ている者ほど、妊娠
)と答える
に対する不安がない(
)
。
かった(
さらに、妻が妊娠する以前に夫が喫煙し
ていたもの(
)および夫が妻の妊
)
割合が有意に高かった。
娠中も喫煙を継続していること
(
)非就労群
が出産に対する不安と関連がみられた。ま
一方、非就労群
名についても就労継続
た、出産に対する不安があるものほど、目
)・不安感(
群と同様の検討を行った。不安の有無の内
眩(
訳は、 不安あり群 が
緒の不安定(
が
名、 不安なし群
名であった。両群の属性のうち年齢、
)・情
)を訴える割合が有
意に高く、倦怠感を感じているものも多い
)
。出産時のサポー
妊娠週数には有意差は認められなかった
傾向にあった(
が、初産は 不安なし群 が
トの有無や支援者の内訳では、特に有意差
名(
であったのに対し、 不安あり群
名(
%)
では
%)と有意に多かった。また、非
就労群でも、妊娠に対する
では既婚率が
不安なし群
%であったのに対し、 不
安あり群 の既婚率は
は確認されなかった。
次に、
専門職と比較して事務職の方が 不
安あり群 で有意に多かった(
)
。
また、仕事について生きがいを持ち、充実
%であり、婚姻
感を得ている者ほど、出産に対する不安が
しているものほど、妊娠に対する不安がな
な い と 回 答 す る 割 合 が 有 意 に 高 かっ た
働く女性の妊娠・出産・育児に対する不安に影響を与える要因に関する研究(大西・吾妻)
(
)。
どもが欲しいと思っていなかったものほど
)非就労群
出産後の育児に対する不安を訴える割合が
一方、非就労群
名についても就労継続
群と同様に検討を行った。不安の有無の内
訳は、 不安あり群 が
が
名、 不安なし群
名であった。両群の属性のうち、年齢・
)
。
有意に高かった(
さらに、出産後の育児に不安のあると回
答した妊婦は、産前休暇の取得予定の割合
)
。また、業
が有意に低かった(
妊娠週数では有意差は認められなかった。
務内容として時間に追われる作業に従事し
まず、 不安なし群
ているものに育児に対する不安があると回
の既婚率が
し、不安あり群 の既婚率が
%に対
%であり、
非就労群においても婚姻しているものほど
)非就労群
)
。喫煙
名についても就労継続
一方、非就労群
出産に対する不安はないと回答するものの
割合が有意に高かった(
群と同様に検討を行った。不安の有無の内
の有無と出産に対する不安の有無について
訳は、 不安あり群 が
の関連性は、確認されなかった。
が
次に、支援者に友人・知人をあげた比率
は、不安なし群 が
不安あり群
は
%だったのに対し、
%であり、出産に対
名、 不安なし群
名であった。
両群の属性のうち、
年齢・
妊娠週数・出産回数・婚姻状況には有意差
は認められなかった。次に、出産後の育児
に対する支援では友人や知人をあげた割合
する不安があるものほど、出産時に友人の
が、 不安なし群 では
支援が得られると回答する割合が有意に高
た の に 対 し、 不 安 あ り 群
い傾向にあった(
)。
(
.出産後の育児に対する不安に影響を与え
る要因の検討
名(
%)であっ
では
名
%)であり、出産後の育児に対する
不安があると回答したものほど友人や知人
から育児に対するサポートが得られる割合
)就労継続群
就労継続群
)
。
答する割合が有意に高かった(
が有意に高かった(
名を分析対象として検討を
)
。
.妊娠・出産・育児に対する不安の総合的
行った。不安の有無の内訳は、不安あり群
な検討
が 名、不安なし群が
名であった。両群
さらに、妊娠・出産・育児に対するそれ
の属性(年齢、妊娠週数、出産回数)は、
ぞれの不安に影響を与える要因について多
有意差は認められなかった。また、 家庭
変量解析を行った。まず、妊娠に対する不
内に気苦労はない と回答したものが
安に影響を与える要因を総合的に評価する
不
安なし群 で有意に高かった(
)
。
次に喫煙状況では、妻の妊娠前に夫が喫煙
していたもの(
)および夫が妻の
妊娠中に 喫 煙 を 継 続 し て い る も の (
ために、 妊娠に対する不安
を従属変数
とし、独立変数にはクロス集計で有意差の
認められた項目である、年齢(
歳未満、
歳未満、
歳以上)・就労継続・非
)が育児に対する不安があることと
就労・初産経産(妊娠回数)・職種・夫の
関連がみられた。妊娠が判明したときの気
同居・妻が妊娠する前の夫の喫煙歴・妊婦
持ちとして、こどもが欲しいと思っていな
の妊娠前の喫煙歴・妊娠中の夫の喫煙・妊
で
婦の喫煙・不安感の有無・情緒の不安定の
名(
%)であるのに対し、 不安あり群
有無・倦怠感の有無・妊娠した時の気持
では
名(
ち・家庭内に気苦労がある・相談相手に実
かったと答えたものは
不安なし群
%)であった。妊娠時に子
高知大学看護学会誌
巻 号(
)
母を選択・相談相手に義母を選択・実母か
中
名(
%)
、 不安要因なし
らの情報収集の有無・医師からの情報収集
中
名(
%)
、全体では
の有無・切迫早産の経験の有無・入院治療
(
の経験の有無・中腰作業の有無・生きがい
する不安に有意に関与していた要因とし
の有無をカテゴリー化した独立変数とし、
て、 目眩あり (
二項ロジスティック回帰分析を行った。そ
内容が接客のように神経を使う作業 (
、
の結果、
得られた予測値の正答率は、 妊娠に対す
る不安要因あり の
名中
名(
不安要因なし で
名中
名(
名中
全体では
名(
%)
、
%)
、
%)であった。
名
名中
名
%)であった。最終的に、出産に対
)
、
となり、分析モデルより
で
)
、 仕事の業務
歳以上 (
)
、 妊娠に
対して、その時期を気にしていなかったと
)
、職種が専門職ではない
回答(
(
)
、 切迫の経験 (
産 (
)、 初
)
、 家庭内に気苦労あり
(
)が確認された。
最終的に、妊娠に対する不安に有意に関与
そして、出産後の育児に対する不安に影
していた要因として、 妊娠に対して、そ
響を与える要因を総合的に評価するため
の時期を気にしていなかったと回答 (
に、 育児に対する不安 を従属変数とし、
)
、 相談相手に実母がいない (
クロス集計で有意差の認められた項目であ
)
、
る、年齢(
歳以上 (
に気苦労あり (
情報なし (
)、 家庭内
)、 医師からの
)が確認された。
歳未満、
歳未満、
歳
以上)・就労継続・非就労・初産経産(妊
娠回数)・婚姻の有無・既往疾患の有無・
次に出産に対する不安に影響を与える要
妻が妊娠する前の夫の喫煙歴・妊婦の妊娠
因を総合的に評価するために、 出産に対
前の喫煙歴・妊娠中の夫の喫煙・妊婦の喫
する不安 を従属変数とし、クロス集計で
煙・妊娠した時こどもがほしかったかどう
有意差の認められた項目である、年齢(
か・家庭内に気苦労がある・産休制度の利
歳未満、
歳以上)・就労
用の有無・時間に追われる仕事に従事をカ
継続・非就労・初産経産(妊娠回数)・職
テゴリー化した独立変数とし、二項ロジス
種(専門職)・婚姻の有無・夫の同居・妻
ティック回帰分析を行った。その結果、
歳未満、
が妊娠する前の夫の喫煙歴・妊婦の妊娠前
、
の喫煙歴・妊娠中の夫の喫煙・妊婦の喫
となり、分析モデルより得られた予
煙・不安感の有無・情緒の不安定の有無・
測値の正答率は、 育児に対する不安要因
目眩の有無・妊娠した時の気持ち・家庭内
あり の
に気苦労がある・妊娠は辛く苦しい・切迫
なし で
早産の経験の有無・入院治療の経験の有
名中
無・産休制度の利用の有無・接客等の仕事
育児に対する不安に有意に関与していた要
に従事・生きがいの有無をカテゴリー化し
因として、 家庭内に気苦労がある (
名(
名(
%)
、 不安要因
%)
、全体では
%)であった。最終的に、
煙している妊婦 (
分 析 を 行っ た。 そ の 結 果、
となり、
分析モデルより得られた予測値の正答率
は、 出産に対する不安要因あり
名中
名(
)
、 妊婦の喫煙歴 (
た独立変数とし、二項ロジスティック回帰
、
名中
の
名
(
)
、
歳以上
)
、 仕事の業務内容に時間に追
われる作業がある (
(
)
、 喫
)
、 夫の喫煙歴 (
)
、 初産
)、 産
働く女性の妊娠・出産・育児に対する不安に影響を与える要因に関する研究(大西・吾妻)
休制度の利用なし (
)が確認さ
れた。
務を他者に代わってもらうことに対しての
不安や抵抗感を
割の就労継続女性が持っ
ていた。制度の浸透にあたっては、雇用者
【考
察】
側の母性保護施策に対する理解や意識付け
を高めることにより、制度が職場内で明確
.就労女性に対する母性健康管理制度の普
に位置づけられると同時に女性が制度を利
及の程度について
用しやすくなるような職場の雰囲気や職場
今回の調査から、母性健康管理に関する
内での協力体制、事業所全体の理解という
各種制度は、その周知徹底や職場の体制整
備が不十分な現状であることが分かった。
視点も不可欠であることが分かった。
更に職場の配置転換制度は
割弱が利用
関連して、妊娠を機に仕事を辞めたものお
できない状況であった。その理由には、事
%に
務職が多く、もともと身体的な負担の少な
が奈良県下で行っ
い軽易な作業が多い等の影響も考えられ
た調査では、妊娠判明後の就労継続には個
た。しかし、一方で専門職も多く、負担が
人的要因と職場の理解や雰囲気、雇用形態
大きい仕事でも、その業務内容の専門性等
割)などの職場
により替わりがいないために妊娠中も従事
要因が関連することが明らかになってい
せざるを得ない状況も現場にはあるのでは
る。特に、職場の状況については、 育児
ないかと考えられたが、その要因について
育
は今回の調査では明らかにできなかった。
児制度などの説明があった職場 に有意な
具体的な背景については今後の検討課題で
関連がみられ、職場の雰囲気では周囲の理
ある。
解や協力が得られるものが関連していたと
.妊娠・出産・育児へのサポートの状況に
よび今後、退職予定のあるものは
( )
のぼっていた。鴻池ら
(アルバイトの退職率が
と出産について相談相手がいる職場
述べられている。今回の調査では職場に健
ついて
康管理等の相談担当者の配置がないものは
就労女性に対するサポートの特徴につい
割以上にのぼった。さらに妊婦健診を受
て前原( )は、特に働く女性の場合、地域
けるための休暇の取得や通勤緩和の制度に
での生活時間が短いために地域のサポート
ついては、調査時点における認知度が特に
を受けにくく、サポートをするものは親・
低かった。理由として、妊娠前期の女性が
姉妹などの血縁者が多く、特に情報サポー
約
割を占めていたことが考えられる。し
トに乏しいと指摘している。一方、米山(
)
かし、制度の効果的な運用面から考えると
の調査では、フルタイムの就労女性より専
妊娠初期からの活用が望ましく、妊娠した
業主婦の方が、母親、友人からのサポート
女性が働くことを継続していくための支援
が得られにくいという結果が出ている。さ
制度の浸透には課題が残されている状況が
らに、丸( )が行った、乳幼児期のこども
浮き彫りになった。母性健康管理制度等に
をもつ母親のソーシャルサポートについて
ついては、女性自身による請求が必要であ
の調査では、母親が就業している場合、専
り、女性が必要な時期に自分で選択し、活
業主婦と比較して、夫および近所の人から
用することができるような情報提供に努め
のサポートが有意に低かったと述べてい
ることが望ましい。反面、今回の調査では
る。今回の調査でも同様に就労継続群は、
妊娠したことによって今までできていた業
妊娠・出産・育児の全ての過程において、
高知大学看護学会誌
巻 号(
)
非就労群と比較して義母のサポートをあげ
非就労群は近所のサポートが、就労継続群
るものが多かった。一方、非就労群は、出
では義母のサポートが得られやすいという
産時や育児などといった実質的なサポート
特徴がみられた。
については、隣人等からの支援をあげるも
以上のことから、女性が働きながら安心し
のが多いという特徴が示された。妊娠・出
て妊娠・出産・育児に向かうためには、一連
産・育児などの話題や情報提供は、生活圏
の過程を通して、職場や家族を含めた地域全
域である地域の中の繋がりが不可欠であ
体のサポート体制、情報提供のシステム、母
る。働く女性には、身近なサポート体制の
性健康管理制度の適切な運用など社会全体の
構築に向けた支援が必要であると同時に、
総合的なサポート体制の構築が不可欠であ
生活基盤となっていく家庭の安定が必要で
る。
あると考える。
【謝
【結
辞】
論】
今回の研究にあたりまして、快くアンケー
今回の研究の結果、以下のことが考えられ
トにご回答いただきました女性の皆様方なら
びに、多大なご協力をいただきました 市保
た。
妊娠中就労を継続している女性は、職場で
健福祉センターや関係機関の職員の皆様方に
の母性健康管理に関する各種制度につい
深く感謝し、お礼を申し上げます。また、本
て、認知度が低く、利用可能な制度が少な
研究をまとめるにあたり、ご指導いただきま
かった。
した高知大学医学部看護学科甲田茂樹教授に
妊娠・出産・育児に対する不安の
共通して、 高齢
項目に
心から厚く御礼申し上げます。
が影響を与えていた。
【引用文献】
妊娠・出産に対する不安には、 妊娠の計
画性 が影響を与えていた。
妊娠・育児に対する不安には、 家庭内の
気苦労 が影響を与えていた。
出産・育児に対する不安には、 初産
)鴻池義純他
企業における母性健康管理
の取り組みの状況と取り組みに対する就
就
業上の問題(職種・接客・時間に追われ
る・産休制度) が影響を与えていた。
妊娠に対する不安には、医師の情報 や 身
近なサポート(実母) が影響していた。
労女性の評価,平成
,
研究抄録集,
)前原澄子
年度産業保健調査
.
働く女性への社会的支援,公
,
衆衛生, ( )
)米山万里枝他
妊婦の就労状況とサポー
出産に対する不安には、 身体状況(切迫
ト・ネットワークおよびメンタルヘルス
早産・眩暈) が影響を与えていた。
,
について,母性衛生, ( )
育児に対する不安には、妊婦の喫煙 や 夫
)丸光恵他
乳幼児期の子どもをもつ母親
の喫煙経験 が影響していた。
へのソーシャルサポートの特徴,小児研
妊娠・出産・育児に対するサポートでは、
,
究,( )
.