第4930929

JP 4930929
(11)特許番号
特 許 公 報(B2)
(19)日本国特許庁(JP)
(12)
B2
2012.5.16
特許第4930929号
(45)発行日
(P4930929)
(24)登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
平成24年5月16日(2012.5.16)
(51)Int.Cl.
FI
C07H 23/00
(2006.01)
C07H
23/00
CSP A61K 31/7028
(2006.01)
A61K
31/7028
A61K 31/715
(2006.01)
A61K
31/715
A61P 31/00
(2006.01)
A61P
31/00
A61P 31/16
(2006.01)
A61P
31/16
請求項の数4
(全16頁)
(21)出願番号
特願2005-77276(P2005-77276)
(22)出願日
平成17年3月17日(2005.3.17)
国立大学法人埼玉大学
(65)公開番号
特開2006-257028(P2006-257028A)
埼玉県さいたま市桜区下大久保255
(43)公開日
平成18年9月28日(2006.9.28)
審査請求日
(73)特許権者 504190548
(73)特許権者 507219686
平成20年1月30日(2008.1.30)
静岡県公立大学法人
静岡県静岡市駿河区小鹿二丁目2番1号
特許法第30条第1項適用
平成17年3月11日
社
(74)代理人 100109726
団法人日本化学会発行の「日本化学会第85春季年会
講演予稿集1、2」に発表
弁理士
園田 吉隆
(74)代理人 100101199
弁理士
(72)発明者 幡野
小林 義教
健
埼玉県さいたま市桜区宿181−203
(72)発明者 照沼
大陽
埼玉県さいたま市北区日進町1−789
最終頁に続く
(54)【発明の名称】シアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物
(57)【 特 許 請 求 の 範 囲 】
【請求項1】
次式(Ib)又は(Ic)
(R
E
1
1
)2 E
1
{(−R
2
(式中、E
1
及びE
{(−R
−E
2
2
−E
2
)[(−R
)[(−R
6
−S−R
6
7
−A)]3 }4
−S−R
7
−A)]3 }2
(Ib)
(Ic)
は、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一で
も異なっていてもよく、R
7
2
1
は、同一又は異なった炭化水素基を示し、R
2
、R
6
及びR
は、同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Aはシアリルラクトサミン残基である)で表
されるシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物。
【請求項2】
R
1
10
が同一又は異なる炭素数1∼6のアルキル基、フェニル基、ビニル基、又はアルキ
ル基である請求項1に記載のシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物。
【請求項3】
R
2
、R
6
及びR
7
が同一又は異なる炭素数1∼6の直鎖アルキレン基、又はアルケニ
レン基である請求項1又は2に記載のシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物。
【請求項4】
E
1
及びE
2
がケイ素である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシアリルラクト
サミン結合デンドリマー化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
20
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【0001】
本発明は、シアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物及び該デンドリマー化合物を
有効成分として含有する医薬に関する。より詳細には、シアリルラクトサミンを結合させ
たデンドリマー化合物であって、インフルエンザウィルスによる感染阻害活性を有するデ
ンドリマー化合物、及び該デンドリマー化合物を有効成分として含有する医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
デンドリマーとは、ギリシャ語の「dendra」(樹木)を語源とする規則正しく分
岐した樹状高分子化合物の総称である。デンドリマーによる球状のナノメートルスケール
の空間は、様々な官能基を組み込むことで比較的自由にデザイン可能であることから、ナ
10
ノテクノロジーの分野において、新規デンドリマーのデザインが現在盛んに行われている
。
特に、近年、生体機能分野におけるデンドリマーの利用が著しく、生体系における外部
刺激に応答するデンドリマー、DDS(薬物送達システム)に利用可能なデンドリマー、
分子センサーとして機能し得るデンドリマーなど、多面的にその有効性を生かすべく研究
が進んでいる。
【0003】
なかでも、生体に対する外部環境からの干渉、特に、細菌やウィルスなどの感染に対す
る有効な防御ツールとしてデンドリマーの利用は、特に、注目を浴びている。
例えば、腸管出血性大腸菌O−157が産生するベロ毒素による生体への攻撃を有効に
20
防御し得るデンドリマーの開発などが行われている。腸管出血性大腸菌O−157が産生
するベロ毒素は、赤痢菌由来のシガ毒素と類似した細菌毒素のAB5ファミリーに属する
タンパク質である。これらの毒素は、腎臓細胞上のグロボトリオシルセラミド(Gb3、
Galα1−4Galβ1−4Glcβ1−Cer)中のグロボ3糖部分を認識し、接着
することにより細胞内に取込まれ毒性を示すことが報告されている。
【0004】
すでに、本発明者らは、当該グロボ3糖を結合したカルボシランデンドリマー をコア
骨格とするクラスター化合物を合成し、それに強いベロ毒素阻害活性があることを報告し
ている(非特許文献1及び2、並びに特許文献1及び2参照)。
【0005】
30
また、本発明者らは、各種糖鎖含有カルボシランデンドリマー化合物に関する知見に基
づいて(非特許文献3参照)、インフルエンザウィルス等のウィルス表面に存在するヘマ
グルチニンを特異的に接着し、生体に対するウィルス感染を防止し得る物質として、シア
リルラクトース含有デンドリマーを開示した(特許文献2参照)。さらに、生体内におけ
る適合性および安全性に優れたアミド結合を介して糖鎖を結合するデンドリマーの開示も
行っている(特許文献3参照)。
【0006】
【非特許文献1】Matsuoka等,Tetrahedron
: 7 8 3 9 -7 8 4 2
Letters
40
1999
【 非 特 許 文 献 2 】 N i sh i k a w a 等 , P r o c . N a t l . A c a d . S c i . ,
U S A . 9 9 : 7 6 6 9 -7 6 7 4
40
2002
【非特許文献3】Matsuokaら,Bull.Chem.Soc.Jpn.,71:
2 7 0 9 -2 7 1 3
1998
【特許文献1】特開2004−107230
【特許文献2】国際公開公報WO02/02588
【特許文献3】特開2003−212893
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、インフルエンザウィルス等においては、A型、B型などの異な
50
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るタイプによってその有効性に差異が認められており、全ての型に対して共通に効果を示
し、かつ、生体内における適合性および安全性に優れた治療薬の開発が依然として望まれ
ている状況であった。
特許文献2で開示されているカルボシランデンドリマー表層に結合されている糖鎖構造
はシアリルラクトースである。天然においてシアリルラクトースはインフルエンザのヘマ
グルチニンの接着のレセプターとしてよく知られている。しかしながら、ヘマグルチニン
との接着において、より強固な接着活性を有するシアリルラクトサミンを結合させた本発
明に係るデンドリマーは、インフルエンザウィルスの感染抑制効果において、さらに顕著
な効果を示すものであり、本発明の化合物群を含有してなる医薬はウィルスの感染予防、
および治療において極めて高い効果を発揮することが期待できる。
10
よって、本発明は、生体内における適合性及び安定性に優れ、特に、インフルエンザウ
ィルスの感染防御に効果を示すデンドリマー化合物の提供を目的とする。
さらに、本発明は、該デンドリマー化合物を有効成分として含有する医薬の提供を目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記事情に鑑み、生体内における適合性及び安定性に優れ、かつ、全て
の型のインフルエンザウィルスの感染防御に効果を示すデンドリマーの開発において鋭意
研究を行った結果、ヘマグルチニンと強く結合するシアリルラクトサミンを結合させたデ
ンドリマーがインフルエンザの感染を有効に阻害し得ることを見出し、本発明を完成させ
20
るに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、次式(I)
【化2】
(式中、E
1
、E
2
、及びE
3
は、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互い
に同一でも異なっていてもよく、R
を示し、R
2
、R
4
、R
6
及びR
7
1
、R
3
、及びR
5
は、同一又は異なった炭化水素基
30
は、同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Yはシアリ
ルラクトサミン残基もしくは他の官能基であって少なくとも1つはシアリルラクトサミン
残基を示し、lは0∼2の整数であり、m及びnは同一又は異なった0∼2の整数であり
、iおよびkは0または1の数を示し、kが0のときは3−nは1であり、iが0のとき
は3−mは1である)で表されるシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物を提供す
る。
【0010】
また、本発明は、上記式(I)中のE
1
、E
2
、及びE
3
がケイ素であるシアリルラク
トサミン結合カルボシランデンドリマー化合物を提供する。
さらに、上記化合物を有効成分として含有する医薬を提供する。
40
【発明の効果】
【0011】
本発明のシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物は、抗細菌活性、抗ウィルス活
性、特に、抗インフルエンザ活性を有し、かつ、生体内における適合性及び安定性に優れ
た化合物である。
【0012】
本発明のシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物は、高純度標品を比較的少ない
精製ステップにより得ることができるため、コスト的側面においても有用である。
【0013】
上述のごとく、本発明のシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物は、特に、顕著
50
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な抗インフルエンザ活性を有し、生体内における適合性及び安定性に優れ、かつ、高純度
標品を容易に取得することができることから、インフルエンザによる感染予防治療に有効
な医薬の開発に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.シアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物の製造
式(I)中、E
1
、E
2
、及びE
3
は、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり
、互いに同一でも異なっていてもよいが、炭素又はケイ素が好ましく、ケイ素が最も好ま
しい。
【0015】
R
1
、R
3
10
、及びR
5
は、同一又は異なった炭化水素基を示すが、炭素数1∼6のアル
キル基、フェニル基、ビニル基、及びアリル基のいずれかが好ましく、このうち炭素数1
∼4のアルキル基が最も好ましい。
【0016】
R
2
、R
4
、R
6
及びR
7
は、同一又は異なった炭化水素基を示すが、炭素数1∼6の
アルキレン基、及びアルケニレン基のいずれかが好ましく、アルキレン基が最も好ましい
。
【0017】
Yは、特に下記化学式(II)で表されるシアリルラクトサミン残基もしくはその他の
官能基であって、式(I)中少なくとも1つはシアリルラクトサミン残基であり、好まし
20
くは全てのYがシアリルラクトサミン残基である。その他の官能基としては、例えば、ア
セチル基、ハロゲン基、水酸基などが好ましい。
【0018】
【化3】
30
【0019】
lは0∼2の整数が好ましく、m及びnは0∼2のまでの整数が好ましく互いに同一で
も異なっていてもよい。さらに、kは0または1の数を示し、kが0のときは3−nは1
である。
【0020】
式(1)のシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物の構造は、k、l、m、nの
40
組み合わせに応じて種々の構造を取り得るが代表的な化学式は下記のようになる。
【0021】
(R
1
)l E
1
(−R
(R
1
)2 E
1
{ (− R
E
1
{ (− R
2
−E
2
6
−S−R
2
−E
2
)[ ( − R
6
7
−A)3
(Ia)
)[ ( − R
6
−S−R
7
−S−R
7
−A)]3 }4
−A)]3 }2 (Ib)
(Ic)
(式Ia、Ib、IcにおいてAはシアリルラクトサミン残基を示す)
【0022】
本発明の式(I)の化合物は、例えば、次の反応式に従って製造することができる。
50
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【0023】
【化4】
10
【0024】
上記式中、X
1
はハロゲン原子、X
2
は反応脱離性のメルカプト保護基を示し、Yは、
特に式(II)で表されるシアリルラクトサミン残基もしくはその他の官能基であって、
式(I)中、少なくとも1つはシアリルラクトサミン残基であり、好ましくは全てのYが
シアリルラクトサミン残基である。その他の官能基としては、例えば、アセチル基、ハロ
ゲン基、水酸基などが好ましい。
また、Aは、式(II)で表されるシアリルラクトサミン残基である。
R
1
∼R
7
、i、l、m、n及びkは前記と同じである。
【0025】
20
すなわち、式(III)で表されるハロゲン化デンドリマー と式(IV)で表される
スルフィド化合物とを反応させ、必要に応じてシアリルラクトサミン残基の保護基を脱離
させることにより本発明の式(I)の化合物が製造できる。
【0026】
X
1
のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。X
2
の
メルカプト保護基としてはアセチル基等のアルカノイル基、ベンジル基等が好ましい。ま
た、Aの水酸基の保護基としては、アセチル基等のアシル基、ベンジル基、トリメチルシ
リル基等の有機ケイ素等が挙げられるが、アセチル基が好ましい。
【0027】
式(III)のハロゲン化デンドリマー は、例えばトリクロロメチルシランもしくは
30
ジメチルジクロロシラン等のクロロシラン類もしくはクロロメタン類を原料として、グリ
ニャール反応によりアリル基を導入し、ヒドロケイ素化反応もしくはヒドロ炭素化反応、
グリニャール反応を繰り返すことにより式(III)に対応する骨格を形成する。得られ
たデンドリマーの末端アリル基は、ヒドロホウ素化、それに続く加水分解反応により相当
するアルコールへと変換し、次いで常法によりメシル化後、臭化ナトリウム等で処理する
ことにより、末端がハロゲン原子で置換された化合物へと誘導することができる。
【0028】
ま ず 、 L e m i e u x ら ( Can. J. Chem., 60: 63-67, 1982) に よ り 報 告 さ れ て い る 方
法を参考にラクトースを出発物質として6段階の合成反応にて既知化合物であるベンジル
3 , 6 , 2 ’ , 3 ’ , 4 ’ , 6 ’ -ヘ キ サ -O -ア セ チ ル − 2 − ア ジ ド − 2 − デ オ キ シ −
40
ラクトースを合成し、それの3’,4’位選択的なイソプロピリデン保護、およびその脱
保 護 反 応 に よ り グ リ コ シ ル ア ク セ プ タ ー で あ る 1 , 3 , 6 , 2 ’ , 6 ’ -ペ ン タ -O -ベ ン
ジル−2−アジド−2−デオキシ−ラクトースを合成した。また、グリコシルドナーは、
シアル酸の水酸基のアセチル化、カルボキシル基のジアゾメタンによるメチル化、および
1−ドデカンチオールによるグリコシル化反応により合成した。それぞれ合成したグリコ
シ ル ア ク セ プ タ ー お よ び ド ナ ー を N -ヨ ー ド コ ハ ク 酸 イ ミ ド 、 ト リ フ ル オ ロ メ タ ン ス ル ホ
ン酸トリメチルシリルと作用させる事によりシアリルラクトサミンの3糖構造を構築した
。
【0029】
式(III)の化合物と式(IV)の化合物の反応は、例えばナトリウムメトキシド等
50
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の塩基の存在下に行うことができる。また、Aの保護基の脱離は、例えばナトリウムメト
キシド等の塩基を用いた加水分解により行うことができる。
【0030】
得られた本発明の式(I)の化合物は、洗浄、各種クロマトグラフィー、ゲル濾過等に
より精製することができる。
【0031】
2.医薬組成物の調製
本発明の式(I)の化合物は、細菌、ウィルスなどによる感染を効果的に阻害する活性
を有することから、抗ウィルス剤、特に、インフルエンザの予防薬などの医薬組成物とし
て有効に使用することができる。
10
【0032】
本発明のシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物は、生体に対して悪影響を及ぼ
さない医薬組成物の形態で治療薬として使用することができる。通常、そのような組成物
には、シアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物の他、薬剤的に受容可能な担体が含
まれる。
「薬剤的に受容可能な担体」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、
アイソトニックに作用して吸着を遅らせる薬剤及びその類似物を含み、薬剤的投与に適す
る も の の こ と で あ る ( Gennaro等 : The science and practice of pharmacy. Lippincott,
Williams & Wilkins, Philadelphia, PA. 2000) 。 該 担 体 及 び 該 担 体 を 希 釈 す る た め に
好ましいものの例には、限定はしないが、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロ
20
ース溶液、及びヒト血清アルブミンなどが含まれる。また、リポソーム及び不揮発性油な
どの非水溶性媒体も用いられる。さらに、本発明の化合物の活性を保護又は促進するよう
な特定の化合物が、該組成物中に包含されていてもよい。
【0033】
本発明に係る医薬組成物は、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入なども含む)、
経皮及び経粘膜への投与を含み、治療上適切な投与経路に適合するように製剤化される。
非経口、皮内、又は皮下への適用に使用される溶液又は懸濁液には、限定はしないが、注
射用の水などの滅菌的希釈液、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、
グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒、ベンジルアルコール又は他のメ
チルパラベンなどの保存剤、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、
30
塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなどの無痛化剤、エチレンジアミンテトラ酢酸(
EDTA)などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤、塩化ナ
トリウム又はデキストロースなど浸透圧調製のための薬剤を含んでもよい。
pHは塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調製することができる。非経口的
標品はアンプル、ガラスもしくはプラスチック製の使い捨てシリンジ又は複数回投与用バ
イアル中に収納される。
【0034】
2−1.注射可能な製剤
注射に適する医薬組成物には、滅菌された注射可能な溶液又は分散媒を、使用時に調製
するための滅菌水溶液(水溶性の)又は分散媒及び滅菌されたパウダーが含まれる。静脈
内の投与に関し、適切な担体には生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR
EL
T
M
40
(
BASF, Parsippany, N.J.) 、 又 は リ ン 酸 緩 衝 化 生 理 食 塩 水 ( P B S ) が 含 ま れ る 。 注 射 剤
として使用する場合、組成物は滅菌的でなくてはならず、また、シリンジを用いて投与さ
れるために十分な流動性を保持していなくてはならない。該組成物は、調剤及び保存の間
、化学変化及び腐食等に対して安定でなくてはならず、細菌及び真菌などの微生物由来の
コンタミネーションを防止する必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオー
ル(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及
び適切な混合物を含む溶媒又は分散媒培地を使用することができる。例えば、レクチンな
どのコーティング剤を用い、分散媒においては必要とされる粒子サイズを維持し、界面活
性剤を用いることにより適度な流動性が維持される。種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば
50
( 7 )
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、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールなどは
、微生物のコンタミネーションの防止に対して使用可能である。また、糖、マンニトール
、ソルビトールなどのポリアルコール及び塩化ナトリウムのような等張性を保つ薬剤が組
成物中に含まれてもよい。吸着を遅らせることができる組成物には、モノステアリン酸ア
ルミニウム及びゼラチンなどの薬剤が含まれる。
【0035】
滅菌的な注射可能溶液は、必要な成分を単独で、又は他の成分と組み合わせた後に、適
切な溶媒中に必要量の活性化合物を加え、滅菌することで調製される。一般に、分散媒は
、基本的な分散培地及び上述したその他の必要成分を含む滅菌的媒体中に活性化合物を取
り込むことにより調製される。滅菌的な注射可能な溶液を調製するのための滅菌的パウダ
10
ーの調製方法には、活性な成分及び滅菌溶液に由来する何れかの所望な成分を含むパウダ
ーを調製する真空乾燥及び凍結乾燥が含まれる。
【0036】
2−2.経口組成物
通常、経口組成物には、不活性な希釈剤又は体内に取り込んでも害を及ぼさない担体が
含まれる。経口組成物には、例えば、ゼラチンのカプセル剤に包含されるか、加圧されて
錠剤化される。経口的治療のためには、活性化合物は賦形剤と共に取り込まれ、錠剤、ト
ローチ又はカプセル剤の形態で使用される。また、経口組成物は、流動性担体を用いて調
製することも可能であり、流動性担体中の該組成物は経口的に適用される。さらに、薬剤
的に適合する結合剤、及び/又はアジュバント物質などが包含されてもよい。
20
錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ及びその類似物は以下の成分又は類似の性質を持つ
化合物の何れかを含み得る:微結晶性セルロースのような賦形剤、アラビアゴム、トラガ
ント又はゼラチンなどの結合剤;スターチ又はラクトースなどの、アルギン酸、PRIM
OGEL、又はコーンスターチなどの膨化剤;ステアリン酸マグネシウム又はSTRRO
TESなどの潤滑剤;コロイド性シリコン二酸化物などの滑剤;スクロース又はサッカリ
ンなどの甘味剤;又はペパーミント、メチルサリチル酸又はオレンジフレイバーなどの香
料添加剤。
【0037】
2−3.担体
本発明のシアリルラクトサミン結合デンドリマー化合物は、植込錠及びマイクロカプセ
30
ルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを
防ぎ得る担体を用いて調製することができる。エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポ
リグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生物分解性、
生 物 適 合 性 ポ リ マ ー を 用 い る こ と が で き る 。 こ の よ う な 材 料 は 、 ALZA Corporation( Moun
tain View, CA) 及 び NOVA
Pharmaceuticals, Inc.( Lake Elsinore, CA) な ど か ら 入 手
することが可能で、また、当業者によって容易に調製することもできる。また、リポソー
ムの懸濁液も薬剤的に受容可能な坦体として使用することができる。有用なリポソームは
、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジ
ルエタノール(PEG−PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるよう
に、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製される。
40
例えば、抗体のFab’断片などは、ジスルフィド交換反応を介して、リポソームに結合
さ せ て も よ い ( Martin及 び Papahadjopoulos, J Biol Chem. 257:286-288, 1982) 。
【0038】
2−4.投与量
本発明の化合物よる特定の疾患の治療又は予防において、適切な投与量レベルは、投与
される患者の状態、投与方法等に依存するが、当業者であれば、容易に最適化することが
可能である。
注射投与の場合は、例えば、一日に患者の体重あたり約0.1μg/kgから約500
mg/kgを投与するのが好ましく、一般に一回又は複数回に分けて投与され得るであろ
う。好ましくは、投与量レベルは、一日に約0.1μg/kgから約250mg/kgで
50
( 8 )
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あり、より好ましくは一日に約0.5∼約100mg/kgである。
経口投与の場合は、組成物は、好ましくは1.0から1000mgの活性成分を含む錠
剤の形態で提供され、好ましくは活性成分が1.0,5.0,10.0,15.0,20
.0,25.0,50.0,75.0,100.0,150.0,200.0,250.
0,300.0,400.0,500.0,600.0,750.0,800.0,90
0.0及び1000.0mgである。化合物は一日に1∼4回の投与計画で、好ましくは
一日に一回又は二回投与される。
【0039】
2−5.単位投与量
医薬組成物又は製剤は、一定の投与量を保障すべく、均一単位投与量により構成されな
10
くてはならない。単位投与量は、患者の治療に有効な一回の投与量を含み、薬剤的に受容
可能な担体と共に製剤化された一単位のことである。本発明の単位投与量を決定する場合
には、製剤化される化合物の物理的、化学的特徴、期待される治療上の効果、及び該化合
物に特有な製剤化における留意事項等により影響を受ける。
【0040】
3.医薬組成物に関するキット
本発明の医薬組成物はキットの形態で、容器、パック中に投与の説明書と共に含めるこ
とができる。本発明に係る医薬組成物がキットとして供給される場合、該医薬組成物のう
ち異なる構成成分が別々の容器中に包装され、使用直前に混合される。このように構成成
分を別々に包装するのは、活性構成成分の機能を失うことなく長期間の貯蔵を可能にする
20
ためである。
【0041】
3−1.容器
キット中に含まれる試薬は、構成成分が活性を長期間有効に持続し、容器の材質によっ
て吸着されず、変質を受けないような何れかの種類の容器中に供給される。例えば、封着
されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性ガスの下において包装された
バッファーを含む。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポ
リマー、セラミック、金属、又は試薬を保持するために通常用いられる他の何れかの適切
な材料などから構成される。他の適切な容器の例には、アンプルなどの類似物質から作ら
れる簡単なボトル、及び内部がアルミニウム又は合金などのホイルで裏打ちされた包装材
30
が含まれる。他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジ、又はその
類似物が含まれる。容器は、皮下用注射針で貫通可能なストッパーを有するボトルなどの
無菌のアクセスポートを有する。
【0042】
3−2.使用説明書
また、キットには使用説明書も添付される。当該医薬組成物からな成るキットの使用説
明は、紙又は他の材質上に印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD
−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電
気的又は電磁的に読み取り可能な媒体として供給されてもよい。詳細な使用説明は、キッ
ト内に実際に添付されていてもよく、あるいは、キットの製造者又は分配者によって指定
され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよい。
【0043】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1:アクセプターサイト(9)の合成
【0045】
40
( 9 )
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【化5】
10
20
【0046】
1.ラクトースのアセチル化
酢酸ナトリウム(7.56g,92.1mmol)を無水酢酸(191mL,2.00
mol)に懸濁し、110℃に加熱した。そこへラクトース(1)(30.01g,83
.3mmol)を少量ずつ加え3時間攪拌した。反応終了後、放冷し、氷水中に溶液をあ
けて一晩撹拌し、得られた結晶をろ別し乾燥することで、β−アセテート体(2)(52
.4g,93%)を得た。
【0047】
2.ラクタール(4)の合成
β -ア セ テ ー ト 体 ( 2 ) ( 1 7 . 9 6 g , 2 6 . 4 6 m m o l ) に 3 3
30
% 臭 化 水 素 -酢 酸
溶液(30mL)を加え、塩化カルシウム管をつけて遮光し室温で4時間攪拌した。反応
液を氷水にあけ、クロロホルムで抽出を行い、得られた有機層を水、飽和炭酸水素ナトリ
ウム水溶液で2回、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫
酸マグネシウムをろ別しエバポレーターで濃縮し、更に真空ポンプで乾燥することで(3
)を得た。これ以上の精製は行わず、ラクタール(4)合成の原料をして用いた。これに
酢酸(20mL)を加えた溶液を溶液Aとした。
水(67mL)に酢酸ナトリウム(21.76g,265.2mmol)と硫酸銅(2
.02g,8.08mmol)を加え溶解させた後、酢酸(47mL)を加え氷浴で冷却
した。そこに亜鉛(17.47g,267.3mmol)を加えた溶液を溶液Bとした。
40
氷浴で冷却した溶液B中に溶液Aを加え1時間撹拌した。亜鉛をろ別した後、ろ液を酢酸
エチルと水で希釈した。酢酸エチルで抽出を行った後、有機層を水、飽和炭酸水素ナトリ
ウム水溶液で2回、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫
酸マグネシウムをろ別して濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:
酢酸エチル=10:1∼5:1∼4:1∼3:1)で精製し(4)を得た。
収量は、8.38g(14.95mmol)(収率:57%(2steps))であっ
た。
【0048】
3 . ( 4 ) の ア ジ ド ニ ト ロ 化 、 ( 5 ) の 1 -ブ ロ モ 化 及 び ( 6 ) の 1 -ベ ン ジ ル 化
アジ化ナトリウム(1.48g,22.76mmol)と硝酸二アンモニウムセリウム
50
( 10 )
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(IV)(30.27g,55.20mmol)を300ml三口フラスコに入れアルゴ
ン雰囲気にして、−20℃に冷却した。(4)(8.38g,14.95mmol)のア
セトニトリル(71mL)溶液をシリンジを用いて加え−20℃で24時間撹拌した。反
応液を酢酸エチルと水で希釈して、酢酸エチルで抽出を行った。有機層を水、飽和食塩水
で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別して濃縮
乾燥して(5)を得た。
アルゴン雰囲気下で(5)をアセトニトリル(50mL)に溶解させ、そこに臭化リチウ
ム(6.56g,75.5mmol)を加え室温で5時間撹拌した。反応液に酢酸エチル
を加え、飽和食塩水で2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグ
ネシウムをろ別して濃縮乾燥して(6)を得た。
10
アルゴン雰囲気下で(6)をニトロメタン(59mL)に溶解させ、そこにベンジルアル
コール(4.4
mL,42.32mmol)と活性化したDrierite(14.2
g ) を 加 え 室 温 で 1 時 間 撹 拌 し た 。 こ の 溶 液 を -2 0 ℃ に 冷 却 し 、 炭 酸 銀 ( 1 2 . 7 7
g,
2 2 . 7 6 m m o l ) を 加 え -2 0 ℃ で 2 3 時 間 撹 拌 し た 。 ろ 過 を 行 い 不 溶 物 を 取
り除いた反応液に酢酸エチルを加え、飽和食塩水で2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネ
シウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別して濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラ
フィー(トルエン:酢酸エチル=10:1∼5:1∼1:1∼1:2∼0:1)で精製し
(7)を得た。
収量は、9.19g(12.95mmol)(収率:87%(3steps))であっ
た。
20
【0049】
4 . ( 7 ) の 脱 ア セ チ ル 化 及 び 3 ’ , 4 ’ -イ ソ プ ロ ピ リ デ ン 化 お よ び ベ ン ジ ル 化 、 ( 8
) の 脱 3 ’ , 4 ’ -イ ソ プ ロ ピ リ デ ン 化
アルゴン雰囲気下、(7)(2.79g,3.93mmol)をメタノール(18mL
)に溶解させてメタノールメトキシド(0.13g,2.41mmol)を加え、室温で
5 時 間 撹 拌 し た 。 溶 液 を 濃 縮 乾 燥 し ア ル ゴ ン 雰 囲 気 下 に し た 後 、 N , N -ジ メ チ ル ホ ル ム
アミド(22mL)を加え溶解させ、アセトンジメチルアセタール(2.0mL,16.
3mmol)と活性化したDrierite(2.0g)を加え室温で1時間撹拌した。
こ の 溶 液 に ( + ) -1 0 -カ ン フ ァ ー ス ル ホ ン 酸 ( 0 . 8 5 g , 3 . 6 7 m m o l ) を 加 え
80℃で14時間撹拌した。氷浴で冷却した後、炭酸ナトリウム(0.79g,7.49
30
mmol)を加えろ過した。ろ液を濃縮してcrudeを得た。乾燥雰囲気下、ヘキサン
で洗浄した50%油性水素化ナトリウム(2.73
g,113.0mmol)にN,N
-ジ メ チ ル ホ ル ム ア ミ ド ( 2 0 m L ) を 加 え 氷 冷 し た 。 こ れ に 先 の 実 験 で 得 た c r u d e
の N , N -ジ メ チ ル ホ ル ム ア ミ ド ( 3 3 m L ) 溶 液 を 滴 下 し 、 更 に 氷 冷 下 で ベ ン ジ ル ブ ロ
ミド(4.8mL,40.4mmol)を滴下し室温に戻しながら15時間撹拌した。反
応終了後、メタノール(15mL)を加え反応液を濃縮した。残査を酢酸エチルで抽出し
、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを
ろ別して濃縮乾燥して(8)を得た。
(8)に80%酢酸水溶液(40mL)を加え、80℃で15時間撹拌した。反応液を濃
縮後、10:1∼5:1∼4:1)で精製し(9)を得た。
収量は、1.81g(2.22mmol(収率:56%(4steps))であった。
【0050】
実施例2:ドナーサイト(12)の合成
【0051】
40
( 11 )
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【化6】
【0052】
1 . N -ア セ チ ル ノ イ ラ ミ ン 酸 ( 1 0 ) の ア セ チ ル 化 お よ び メ チ ル エ ス テ ル 化 、 ( 1 1 )
10
の 2 -チ オ ラ ウ リ ル 化
N -ア セ チ ル ノ イ ラ ミ ン 酸 ( 1 0 ) ( 1 5 . 0 g , 4 8 . 7 m m o l ) を ピ リ ジ ン ( 1
00mL)に溶解し、氷冷下で撹拌した。無水酢酸(120mL)を滴下後、反応液を室
温に戻して17時間攪拌した。反応液を濃縮し、メタノール(50mL)に溶解させた後
、氷冷しジエチルエーテル(50mL)を加えた。この溶液に氷冷下、ジアゾメタンエー
テル溶液を滴下した。TLCで反応が完全に進行したのを確認した後、酢酸を加え余剰量
のジアゾメタンの処理を行い反応液を濃縮し(11)を得た。
アルゴン雰囲気下、(11)にジクロロメタン(150
mL)を加え溶解させ、ドデ
カンチオール(35.0mL,147mmol)を加え氷冷した。三フッ化ホウ素ジエチ
ルエーテル錯体(37.0mL,292mmol)を滴下後、30分攪拌し室温に戻して
20
6.5時間攪拌した。反応液を氷水にあけクロロホルムで希釈し、水で2回、飽和炭酸水
素ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した
。硫酸マグネシウムをろ別して濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン
:酢酸エチル=5:1∼3:1∼2:1∼1:1∼1:2)で精製し(12)を得た。
収量は、
25.6
g(37.9mmol(収率:78%(3steps))。
【0053】
実施例3:シアリルラクトサミン誘導体の合成
【0054】
【化7】
30
40
【0055】
50
( 12 )
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1.グリコシル化(三糖の合成)
アルゴン雰囲気下、(12)(7.01g,10.4mmol)、(9)(3.95g,
4.83mmol)をアセトニトリル(100mL)に溶解させ、MS3A(12g)を
加 え 、 1 . 5 時 間 攪 拌 し た 。 反 応 液 を − 3 5 ℃ に 冷 却 し 、 N -ヨ ー ド コ ハ ク 酸 イ ミ ド ( 5
.26g,23.4mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(1.
9mL,10.5mmol)の順で加え、2時間攪拌し、トリエチルアミンを加え−35
℃で20分撹拌した。反応液をクロロホルムで希釈し、不溶物のろ過を行った。ろ液を、
飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウ
ム水溶液で2回、飽和食塩水の順で洗浄を行い、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し
た。硫酸マグネシウムをろ別して濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエ
10
ン:酢酸エチル=10:1∼4:1∼1:1∼1:1.5)で精製し(13)を得た。
収量は、
5.04g(3.90mmol(収率:81%)であった。
【0056】
2.(13)の脱アジドおよび脱ベンジル化及びアセチル化
三糖誘導体(13)(1.36g,1.06mmol)をメタノール(6.0mL)に溶
解し、20%水酸化パラジウム/活性炭(1.5g)をメタノール(16.0mL)を用
いて加え、水素雰囲気下で64時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を濃縮後、
ピリジン(2.0mL)、無水酢酸(5.0mL,2.6mmol)を加え、室温で21
時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸
エチル=10:1∼4:1∼1:1∼1:1.5)で精製し(14)を得た。
収量は、0.97g(0.87mmol(収率:83
20
%(2steps))であった
。
【0057】
3.オキサゾリンの合成
ア ル ゴ ン 雰 囲 気 下 、 ( 1 4 ) ( 0 . 8 8 g , 0 . 7 9 m m o l ) に 1 , 2 -ジ ク ロ ロ エ タ
ン(10.0mL)を加え溶解させ、50℃に加熱した。この溶液にトリフルオロメタン
スルホン酸トリメチルシリル(0.22
mL,1.22mmol)を加え50℃で11
時間撹拌した。反応液を氷浴で冷却した後、トリエチルアミ
0
3.90mmol)を加え
℃で20分撹拌し濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メ
タノール=10:1)で精製し(15)を得た。
収量は、0.499g(0.476
30
mmol(収率:60%)。
【0058】
4 . ( 5 ) の 1 -ペ ン テ ニ ル 化
ア ル ゴ ン 雰 囲 気 下 、 ( 1 5 ) ( 0 . 4 9 9 g , 0 . 4 7 6 m m o l ) に 1 , 2 -ジ ク ロ ロ
エ タ ン ( 9 . 0 m L ) を 加 え 溶 解 さ せ 、 ( + ) -1 0 -カ ン フ ァ ー ス ル ホ ン 酸 ( 5 5 . 9 m
g,0.258mmol)を加え室温で1時間、更に75℃で6.5時間撹拌した。氷浴
で冷却した後、トリエチルアミン(0.1mL,0.78mmol)を加え12時間撹拌
後濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1∼1:
1∼0:1∼クロロホルム:メタノール=10:1)で精製し(16)を得た。
収量は、0.451g(0.397
mmol(収率:83%))であった。
40
【0059】
5.(16)のチオアセチル化
アルゴン雰囲気下、(16)(0.451
g , 0 . 3 9 7 m m o l ) を 1 , 4 -ジ オ キ
サン(1.ml)に溶解させ、チオ酢酸(0.6
ml,8.43
mmol)を加え、
50℃に加熱した。AIBN(0.344g,2.10mmol)を加え、80
時間撹拌した。その後、過剰なAIBNを潰すためシクロヘキセン(0.22
℃で3
ml,2
.17mmol)を加え、室温で20分撹拌した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグ
ラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1∼5:1∼1:1∼1:2∼0:1∼クロロ
ホルム:メタノール=20:1)で精製し(17)を得た。
収量は、0.423g(0.350mmol(収率:88%)であった。
50
( 13 )
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【0060】
実施例4:シアリルラクトサミン誘導体のカルボシランデンドリマー骨格への導入反応
以 下 に 示 す 3種 類 の カ ル ボ シ ラ ン デ ン ド リ マ ー 骨 格 を 糖 鎖 導 入 反 応 に 用 い た 。
【0061】
【化8】
【0062】
糖 鎖 導 入 反 応 は 以 下 の ス キ ー ム で 行 っ た ( F a n ( 0 ) 3 -N e u L a c N A c ( O A
c)の合成を例示する)。
【化9】
20
30
【0063】
1 . F a n ( 0 ) 3 -N e u L a c N A c ( O A c ) の 合 成
アルゴン雰囲気下、(17)(0.329g,0.272mmol)とデンドリマー骨
格 ( F a n ( 0 ) 3 -B r : 2 1 . 3 m g , 4 5 . 2 m m o l ) を N , N -ジ メ チ ル ホ ル ム
アミド(0.4ml)に溶解させ、メタノール(0.33ml)を加え室温で30分撹拌
した。そこへナトリウムメトキシドのメタノール溶液(0.07mL,0.28mmol
)を加え室温で47時間撹拌した。反応終了後、酢酸(0.1ml)を加え室温で20分
撹拌した後、濃縮し、残査をピリジン(0.5ml)に懸濁させ、無水酢酸(1.0ml
40
,10.5mmol)を加え室温で一晩撹拌した。反応液を濃縮後、氷水を加えクロロホ
ルムで抽出し、有機層を1N塩酸で1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和食
塩水で1回洗浄を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶液をろ過して
濃 縮 し た 。 残 査 を G P C ( ゲ ル 浸 透 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ) で 精 製 し F a n ( 0 ) 3 -N e
uLacNAc(OAc)を得た。
収量は、0.138g(収率:82%(2steps))であった。
【0064】
2 . D u m b b e l l ( 1 ) 6 -N e u L a c N A c ( O A c ) の 合 成
アルゴン雰囲気下、(17)(0.602g,0.497mmol)とデンドリマー骨
格 ( D u m b b e l l ( 1 ) 6 -B r : 3 8 . 3 m g , 4 1 . 2 m m o l ) を N , N -ジ メ
50
( 14 )
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チルホルムアミド(0.5ml)に溶解させ、メタノール(0.4ml)を加え室温で2
5分撹拌した。そこへナトリウムメトキシドのメタノール溶液(0.13mL,0.52
mmol)を加え室温で35時間撹拌した。反応終了後、酢酸(0.1ml)を加え室温
で30分撹拌した後、濃縮し、残査をピリジン(1.0
2.0
ml)に懸濁させ、無水酢酸(
ml,21.0mmol)を加え室温で一晩撹拌した。反応液を濃縮後、氷水を
加えクロロホルムで抽出し、有機層を1N塩酸で1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で
2回、飽和食塩水で1回洗浄を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶
液 を ろ 過 し て 濃 縮 し た 。 残 査 を G P C で 精 製 し D u m b b e l l ( 1 ) 6 -N e u L a c
NAc(OAc)を得た。
収量は、0.190g(収率:62%(2steps))であった。
10
【0065】
3 . B a l l ( 1 ) 1 2 -N e u L a c N A c ( O A c ) の 合 成
アルゴン雰囲気下、(17)(0.423g,0.345mmol)とデンドリマー骨
格 ( B a l l ( 1 ) 1 2 -B r : 2 5 . 8 m g , 1 4 . 6 m m o l ) を N , N -ジ メ チ ル ホ
ルムアミド(0.4ml)に溶解させ、メタノール(0.31ml)を加え室温で30分
撹拌した。そこへナトリウムメトキシドのメタノール溶液(0.09mL,0.36mm
ol)を加え室温で23時間撹拌した。反応終了後、酢酸(0.1ml)を加え室温で1
5分撹拌した後、濃縮し、残査をピリジン(1.0ml)に懸濁させ、無水酢酸(2.0
ml,21.0mmol)を加え室温で一晩撹拌した。反応液を濃縮後、氷水を加えク
ロロホルムで抽出し、有機層を1
N塩酸で1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回
20
、飽和食塩水で1回洗浄を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶液を
ろ 過 し て 濃 縮 し た 。 残 査 を G P C で 精 製 し B a l l ( 1 ) 1 2 -N e u L a c N A c ( O
Ac)を得た。
収量は、0.111g(収率:51%(2steps))であった。
【0066】
実施例5:シアリルラクトサミン結合カルボシランデンドリマーの合成(脱保護反応)
D u m b b e l l ( 1 ) 6 -N e u L a c N A c の 反 応 式 を 例 示 す る 。
【0067】
【化10】
30
40
【0068】
1 . F a n ( 0 ) 3 -N e u L a c N A c の 合 成
F a n ( 0 ) 3 -N e u L a c N A c ( O A c ) ( 0 . 1 3 8 g , 3 6 . 9 μ m o l )
をメタノール(1.5mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(0.
05mL,0.2mmol)を加え室温で37時間撹拌した後、濃縮乾燥を行い0.1M
水酸化ナトリウム水溶液(0.1mol/L,2.22
mL,0.222
mmol)
を加え室温で47時間撹拌した。濃縮し酢酸で中和後ゲルろ過(Sephadex
G-
2 5 ) を 行 う こ と に よ り 無 機 塩 を 取 り 除 き 目 的 物 で あ る F a n ( 0 ) 3 -N e u L a c N
Acを得た。
50
( 15 )
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収量は、66.2mg(収率:70%)であった。
【0069】
2 . D u m b b e l l ( 1 ) 6 -N e u L a c N A c の 合 成
D u m b b e l l ( 1 ) 6 -N e u L a c N A c ( O A c ) ( 0 . 1 8 6 g , 2 4 . 9
μmol)をメタノール(2.0ml)に溶解させ、ナトリウムメトキシドのメタノール
溶液(0.1mL,0.06mmol)を加え室温で24時間撹拌した後、濃縮乾燥を行
い0.1M水酸化ナトリウム水溶液(0.1mol/L,3.0
mL,0.3
mmo
l)を加え室温で46時間撹拌した。濃縮し酢酸で中和後ゲルろ過(Sephadex
G -2 5 ) を 行 う こ と に よ り 無 機 塩 を 取 り 除 き 目 的 物 で あ る D u m b b e l l ( 1 ) 6 -N
euLacNAcを得た。
10
収量は、0.119g(収率:94%)であった。
【0070】
3 . B a l l ( 1 ) 1 2 -N e u L a c N A c の 合 成
B a l l ( 1 ) 1 2 -N e u L a c N A c ( O A c ) ( 0 . 1 0 3 g , 6 . 9 4 μ m o
l)をメタノール(1.0
mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液
(0.1mL,0.076mmol)を加え室温で21時間撹拌した後、濃縮乾燥を行い
0.1M水酸化ナトリウム水溶液(0.1mol/L,1.7mL,0.17mmol)
を加え室温で43時間撹拌した。濃縮し酢酸で中和後ゲルろ過(Sephadex
G-
2 5 ) を 行 う こ と に よ り 無 機 塩 を 取 り 除 き 目 的 物 で あ る B a l l ( 1 ) 1 2 -N e u L a
cNAcを得た。
収量は、63.3mg(収率:90%)であった。
20
( 16 )
JP
4930929
B2
2012.5.16
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(72)発明者 松岡 浩司
埼玉県さいたま市見沼区春野1−3−1−709
(72)発明者 森 知紀
神奈川県相模原市東林間7−31−1
(72)発明者 鈴木 康夫
静岡県静岡市瀬名1−8−3−102
(72)発明者 郭 潮潭
静岡県静岡市上足洗3−39−6
審査官 瀬下 浩一
(56)参考文献 森 知紀 等,シアリルラクトサミン担持カルボシランデンドリマーの合成研究,高分子学会予
稿集,2004年,Vol.53, No.2 Disk1,5278(2PE175)
森 知紀 等,シアリルラクトサミン担持カルボシランデンドリマーの合成,ケイ素化学協会誌
,2004年,No.21,79(P 49)
(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)
C07H
23/00
A61K
31/7028
A61K
31/715
A61P
31/00
A61P
31/16
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII)