07 抗血栓薬(経口FXa阻害薬) エリキュース錠 2.5mg/5mg (アピキサバン) 販売開始:2013年2月 ■ 効能・効果 3.血液凝固異常および臨床的に重要な 非弁膜症性心房細動患者における虚血性 出血リスクを有する肝疾患患者[出 脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制 血の危険性が増大する恐れがある。] ■ 用法・用量 4.腎不全(クレアチニンクリアランス 通常、成人にはアピキサバンとして 1 回 15mL/ 分未満)の患者[使用経験が 5mgを1日2回経口投与する。 ない。] なお、年齢、体重、腎機能に応じて、アピ キサバンとして1回2.5mg1日2回投与へ 減量する。 〈用法・用量に関連する使用上の注意〉 ■ 警告 同薬の投与により出血が発現し、重 次の基準の2つ以上に該当する患者は、出 篤な出血の場合には、死亡に至る恐 血のリスクが高く、同薬の血中濃度が上 れがある。同薬の使用に当たっては、 昇する恐れがあるため、1回2.5mg1日2回 出血の危険性を考慮し、同薬投与の 経口投与する。 適否を慎重に判断すること。同薬に ・80歳以上 よる出血リスクを正確に評価できる ・体重60kg以下 指標は確立されておらず、同薬の抗 ・血清クレアチニン1.5mg/dL以上 凝固作用を中和する薬剤はないため、 同薬投与中は、血液凝固に関する検 ■ 禁忌(次の患者には投与しないこと) 1.同薬の成分に対し過敏症の既往歴の ある患者 2.臨床的に問題となる出血症状のある 査値のみならず、出血や貧血などの 徴候を十分に観察すること。これら の徴候が認められた場合には、直ち に適切な処置を行うこと。 患者[出血を助長する恐れがある。] 71 澤田先生から一言 ・ワルファリンとの切り替え時の投与開始・ 中止のタイミングはINRの確認が必須。 ・投 与量の減量は必要ないか、年齢、体重、 腎機能を確認。 ・投 与 中は出 血・貧 血などの 徴 候を十 分 観察。 72 新薬まるわかり 2014 基 礎 編 この薬の特徴は? 適応疾患について ・非弁膜症性心房細動は、速く不規則な心房調律を示す不整脈であるが、心房血 栓が形成されやすく、塞栓性脳卒中のリスクが高いことが知られている。 ・心房細動による塞栓源は左房に形成されるフィブリン血栓であり、抗血小板薬 による予防効果は期待しにくく、抗凝固療法が適応となる。 素である第Xa因子を直接的、可逆的に阻害する。トロンビンの生成とトロンビンに よるフィブリンの生成を妨げて抗凝固作用を示し、血栓の形成を抑制する。 体内動態のポイントは? 腎臓からの消失は? ・腎排泄は全消失の約3割程度の寄与がある。 肝臓からの消失は? ・主にCYP3A4/5によって代謝される。 ・一部は胆汁中に未変化体として排泄される。 ・硫酸抱合にはSULT1A1が関与していると考えられる。 ・臨床において、代謝酵素を阻害・誘導する可能性は低いと考えられる。 P-糖蛋白質などのトランスポーターの関与は? ・P-糖蛋白質、BCRPの基質である。 ・P-糖蛋白質を阻害しないと考えられる。 体内動態の特性は? [脂溶性・蛋白結合性・体内分布など] ・ある程度の脂溶性を示す薬物である(logP=1.65) 。 ・血清蛋白結合率は約87%である。 ・分布容積(Vd)は0.24-0.37L/kgであり、組織移行性は低い。 73 エリキュース錠 作用機序は? ・血栓の形成に関わる血液凝固系のうち、プロトロンビンをトロンビンに変換する酵 [Tmax、Cmax、AUC、全身クリアランス、絶対的バイオアベイラビリティ] ・単回および反復投与時のTmaxは2~4時間であり、速やかに吸収される。 ・臨床用量を含む2.5~10mgの範囲においてCmax、AUCは線形性を示すが、25mg 以上では錠剤からの溶出が不完全となり吸収が低下する。 ・絶対的バイオアベイラビリティは約50%である。 [半減期] ・単回投与したときの半減期は6~8時間、反復投与したときの半減期は8~10時間で あった。 類薬と比較してどこに特徴? ・アピキサバンと同じ効能効果(非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中 および全身性塞栓症の発症抑制)を持ち、作用機序が同じ第Xa因子阻害剤とし てはリバーロキサバンが存在する。リバーロキサバンと比較して腎排泄の寄与 率が小さく、絶対的バイオアベイラビリティも小さい。 ・リバーロキサバンのようにクレアチニンクリアランスごとの投与量設定の必要 はないが、 「80歳以上の高齢者、体重60kg以下、血清クレアチニン1.5mg/dL以上」 の基準のうち、2つ以上に該当する患者は半量に減量する。 ・リバーロキサバンは1日1回投与であるが、アピキサバンは1日2回投与である。 74 新薬まるわかり 2014 実 践 編 薬の注意点を具体例で学ぼう 処方箋チェック CASE1 疑義照会 ワルファリン中止直後に切り替えられた 58歳、男性。非弁膜症性心房細動。病院の循環器内科。 【経緯】 M病院の循環器内科にて非弁膜症性心房細動と診断され、以前よりワーファ リン錠(一般名ワルファリン)などを服 用していた〈処方箋1〉 。しかし、ここ最近 エリキュース錠 のPT-INRは3〜5であり、コントロールが良くなかった。今回、ワーファリン錠から エリキュース錠に変更された〈処方箋2〉 。 〈処方箋1〉M病院の循環器内科(前回の処方) ワーファリン錠1mg 1回4錠(1日4錠) ジゴキシンKY錠0.25 1回1錠(1日1錠) ヘルベッサーRカプセル100mg 1日1回 朝食後 1回1カプセル(1日1カプセル) 28日分 〈処方箋2〉M病院の循環器内科(今回の処方) (1)エリキュース錠5mg 1日2回 1回1錠(1日2錠) 朝夕食後 (2)ジゴキシンKY錠0.25 14日分 1回1錠(1日1錠) ヘルベッサーRカプセル100mg 1日1回 朝食後 1回1カプセル(1日1カプセル) 14日分 75 処方箋チェックのポイント! ワルファリンからアピキサバンへの切り替え方法をチェック。 【解説】 ワルファリンからアピキサバンへ切り替える際には、ワルファリンの投与を中止し た後、PT-INRが2.0未満となったことを確認してから投与を開始しなければならない。 アピキサバンからワルファリンに切り替える際には、PT-INRが治療域の下限を超え るまでは、アピキサバンとワルファリンを併用する。 疑義照会の一例 ・PT-INRを把握できている場合 「今回より、ワーファリンからエリキュースに変更された処方についてですが、ワーファ リンからエリキュースに切り替える際には、ワーファリンの投与を中止した後、PT- INRが2.0未満となったことを確認してエリキュースの投与を開始する必要があります。 患者さんはPT-INRが安定しないので新しい薬に変える、今日もPT-INRは3くらいだっ たとおっしゃっています。念のためPT-INRを確認させていただきたく、ご連絡いたし ました。」 ・PT-INRを把握できていない場合 「今回より、ワーファリンからエリキュースに変更された処方についてですが、ワーファ リンからエリキュースに切り替える際には、ワーファリンの投与を中止した後、PT- INRが2.0未満となったことを確認してエリキュースの投与を開始する必要があります。 患者さんはご自身のPT-INRはわからないとおっしゃっておりますので、PT-INRを確認 させていただきたく、ご連絡いたしました。」 処方医は、アピキサバンとワルファリンの間での切り替え方法について、きちんと 理解していなかった。アピキサバンの処方は中止し、PT-INRが2.0未満に下がってから アピキサバンを開始することとなった。 76 新薬まるわかり 2014
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