基礎研究成果を事業化することの 魅力と難しさ

基礎研究成果を事業化することの
魅力と難しさ
・・産総研と早大でのベンチャー起業・・
<smips 産学連携分科会>
<smips 産学連携分科会>
2011年12月10日
(株)早稲田総研イニシアティブ
早稲田大学 理工学術院
渡辺純一
基礎研究成果からベンチ
基礎研究成果からベンチャー起業!
起業!
研究者と会社を立ち上げて、
本当に成功できるの??
J. Watanabe
2
本日 ご一緒に考えたいこと
本日、ご一緒に考えたいこと
1.なぜ、そして、いかに公的研究機関や大学
なぜ そ
か
的研究機関や大学
はベンチャー起業に力をいれているのか。
2.先行する成功
2
先行する成功・失敗事例から
失敗事例から、教訓として学
教訓として学
べることは何か。起業リスクをいかにヘッジす
るか。
るか
3.企業が研究機関や大学と連携して研究成果
が
を事業化するために留意すべきことは?
J. Watanabe
3
まず、自己紹介
• 秋田大学大学院修士課程修了(応用地球物理学専攻)
• 伊藤忠商事の事業コンサル会社で海外資源・エネルギー
伊藤忠商事の事業コンサル会社で海外資源 エネルギ
プロジェクト等の企画開発を担当
受託研究 コンサルティングの(株)関西新技術研究所(現、
• 受託研究・コンサルティングの(株)関西新技術研究所(現
KRI)で、機能性・資源素材やエレクトロニクス分野等の新
規事業企画、事業性評価、海外企業との提携プロジェクト
等をリ ド
等をリード
• 特許の資産価値評価サービスを提供する米国ベンチャー
企業の日本法人の立ち上げに参画
• その後、産業技術総合研究所のベンチャー開発戦略研究
センターに招聘され
センタ
に招聘され、複数のハイテク
複数のハイテク・ベンチャーを起業し
ベンチャ を起業し
て経営
• そ
そして今は、早稲田大学と早稲田総研で産学連携と研究
今 、早稲 大学 早稲 総研 産学連携 研究
支援活動を企画し、博士・ポスドク学生を指導
援
ポ ド
J.Watanabe
4
様々な連携支援 業務経験
産・産連携:伊藤忠、KRI
戦略提携 M&A 大手と中小企業
戦略提携、M&A、大手と中小企業
産・官(公)連携:KRI、産総研
公的資金による研究プロジェクト
学 官連携 WRI
学・官連携:WRI
科研費、振興調整費案件獲得
産・学連携:WRI
技術移転 共同研究 受託研究
技術移転、共同研究、受託研究
学 学(公)連携:WRI
学・学(公)連携:WRI
包括連携(農工大、産総研、北京大)
J. Watanabe
5
<公的活動経験>
• 未利用特許等の新規事業化に関する産産連携推進
体制調査検討委員会
体
検 委員 委員
委員(近畿通商産業局
畿
産
1998
年)
• 知的財産権評価指標作成委員会 委員(特許庁 1999
年)
• 技術移転組織に関する検討委員会 委員(工業技術
院 2000年)
年)
• 社団法人 研究産業協会 国際問題委員会 委員(1999
年 2001年)
年~2001年)
• 財団法人 日本産業技術振興協会 産業技術懇話会
委員(2007年 2009年)
委員(2007年~2009年)
• 文部科学省 科学技術振興調整費 審査作業部会
委員(2008年~2011年)
J. Watanabe
6
産業技術総合研究所
と
早稲田大学
<共に、研究成果の社会還元に注力中>
◆ベ
◆ベンチャー起業への取り組み実績は?
起業
り組 実績は
◆なぜ、どう変わろうとしているか?
◆そのためのアクションプランは?
J. Watanabe
7
「WASEDA Next 125」
新教育研究体制の再構築
グローバルキャンパスの形成と地球市民の育成
国際研究大学への飛躍と専門職大学院の充実
学問と社会との対話を通じた社会貢献 文化推進
学問と社会との対話を通じた社会貢献・文化推進
「WASEDA」を支える校友組織と経営基盤づくり
J. Watanabe
8
WRIの事業ミッション
早稲田大学の学術研究活動を
多面的かつ補完的に支援し、
研究大学としての国際展開に貢献するとともに、
研究成果を広く社会に還元する
新システムの構築を主導する。
新システムの構築を主導する
さらに、大学の知を活用した事業化を具現化すべく、
シンクタンク的機能も有しながら、
産業界と大学のグローバルな連携交流活動を
トータルにプロデュースして
大学の研究ポテンシャルの最大化に寄与する。
J. Watanabe
9
WRI Activities
„ Matchmaking
„ Response to inquiries
„ Identify suitable academic skills and staff
„ Research Management
„ Plan and operate research projects: support entire process from writing research
plan to p
p
project
j
management
g
and coordination
„ Support fund raising from industry and government
„ Technology Licensing
„ Support
pp p
patent application
pp
and maintenance for
Waseda inventors
„ Support licensing activities
„ Supervision of royalty payments
„ Exchange Activities
„ Manage internship program for post-docs and graduate students at industrial and
government research organizations
„ Organize
O
i symposia
i and
d workshops
k h
„ Venture Incubation Support
„ On-campus business incubators for Waseda academic staff students to become
entrepreneurs
„ Management guidance and consulting
‐ 10 ‐
新規事業の類型
1.研究と市場の動きを大学の視点でモニ
タ &分析する
ター&分析する
→ 外部環境を予測し、研究を企画する
2.大学と企業を結びつける
→ 人材交流し、共同研究をデザイン
人材交流し 共同研究をデザイン
3.日本企業と海外企業を結びつける
.日本企業と海外企業を結び ける
→ 相互補完する提携策を提案・仲介
4 研究成果を事業化する
4.研究成果を事業化する
→ ビジネスをプロデュースするシンクタ
ンク集団へ
新しい産学連携の仕組み
アプローチ
マッチング
クロージング
個別訪問/セミナー開催 ディスカッションの場を豊富に用意し、マッチング
で誘致
に向けた"設置面積"を高める
柔軟なマッチングスキームを準備
z 契約条項も柔軟に対応予定
早大産学連携プラットフォーム
企業
教授
提案
A
企業
提案
B
企業
企業
教授
企業
企業
教授
企業
ニーズ把握
企業
企業
提案実施
早稲田大学
企業
教授
企業
教授
企業
教授
スキーム構築
産学連携プロデューサー
産学連携
‐ 12 ‐
教授
企業
企業のキー
パーソンと定期
的にディスカッ
ション
アプローチ
企業
企業
マッチング推進
企 業
理念(
や実利)
の共有
企 業
スキームのパターン
他大学、等
“早大産学連携プラットフォーム"に
早大産学連携プラットフォ ム に
参加するメリット
1.参加企業へは、興味のある研究テーマ/教授とディスカッションできる
機会を豊富に提供
z 参加企業にフィットしそうな研究テーマ/教授を、大学側からも選別/提案
参加企業にフ トしそうな研究テ マ/教授を 大学側からも選別/提案
z 複数企業による大きな連携へも発展可能
2.産学連携プロデューサーが参加企業を一貫してサポート
z 教授との日程調整や事前交渉から、議論のファシリテーションまで
z 仲介者として、双方の本音を引き出し、交渉をスムーズ化
- 別の先生への切り替えも、仲介によりトラブルなく可能
3.他大学との連携まで視野に入れる
z 早稲田大学の枠組みを超えた大きな取組の構築を目指す
‐ 13 ‐
平成13年4月、経産省所管の15の国立研究所を
統合して産総研が誕生(日本最大規模の研究型独法)
●「本格研究 を推進
●「本格研究」を推進
●自然科学
●自然科学の6分野をカバー
分野をカバ
基礎研究から製品化までの「本格研究」
産総研第2期:4つのミッション
①持続的発展可能な社会実現への貢献
②産業競争力強化等への貢献
③産業政策の地域展開への貢献
③
④産業技術政策立案等への貢献
14
J. Watanabe
14
研究者数:約2400名
予算規模 約
予算規模:約800億円
億円
最近の産総研のキーワード
◆第二種の基礎研究
◆IPインテグレ ション
◆IPインテグレーション
◆イノベーション・ハブ
◆技術を社会へ
◆産業変革研究イニシアティブ
J. Watanabe
15
産総研の主な技術移転手段
(第3期イメージ)
イノベーション推進本部
ベンチャー開発部
(新産業創出・産業構造改革)
新事業展開
既存ベンチャー・
カ ブアウト
カーブアウト
経営人材投入・強力な支援策
・ハイテク・スタートアップス
ハイテク スタ トアップス
ベンチャー創出
新規創業
産総研技術シーズの
産総研技術シ
ズ
技術移転:3つの手段
知的財産部
産学官連携推進部
既存企業
(新産業創出 産業構造改革)
(新産業創出・産業構造改革)
共同研究
技術研修
受託研究
16
ライセンシング
既存企業
ベンチャ 開発戦略研究センタ の目標
ベンチャー開発戦略研究センターの目標
公的研究機関をベ スとした
公的研究機関をベースとした
ベンチャー創出の一般モデル化
公的研究機関の技術シーズ
をもとにした
日本型ベンチャー創出システムの確立
日本型ベンチャ
創出システムの確立
産総研の技術シーズを産業・
市場に結びつけるメカニズム
J. Watanabe
産総研組織構成の
基本設計見直し
究
改
(研究開発システム改革)
17
ベンチャー開発戦略研究センターの役割イメージ
大学・公的研究機関の研究成果を産業・社会へ橋渡し
ベンチャー開発戦略
研究センタ
研究センター
Take off
産業
××研究部門
製品化
第2種の基礎研究
第1種の基礎研究
大学
J. Watanabe
18
産総研技術移転ベンチャーの創出数
環境・エネルギー
環境
エネルギ
11社
ボトムアップベンチャー
120
タスクフォース発ベンチャー
100
69
50
2011.3末
情報通信
情報通信・
エレクトロニクス
度
20
10
年
09
20
08
20
19
年
度
度
年
度
年
07
年
05
20
計108社 34社
社
37社
度
度
度
20
04
年
度
20
03
年
度
6
40
36
34
32
30
22
16
20
21
13
3
年
02
20
34
年
16
6
ナノテク・
材料・製造
材料
製造
21社
47
06
27
40
68
66
64
60
54
20
60
0
ライフ
サイエンス
84
80
20
102 108
98
92
標準・計測 4社
地質 1社
【産総研技術移転ベンチャーの研究分野】
スタートアップ開発戦略タスクフォース
スタートアップ
開発戦略タスクフォース
(産総研モデルのプレベンチャー制度)
産総研 デ
プ ベ
制度)
ビジネス経験者がチームの「当事者」として参加、
研究者は製品の研究開発に専念
究者は製
究開発 専念
スタートアップ・アドバイザー
(研究者)
(タスクフォースのリーダー)
(産総研が採用するビジネス経験者)
マ ケットニ ズの把握
マーケットニーズの把握
ビジネスプランの作成
販路開拓
技術を
社会へ
20
技術開発チーム
技術的課題の克服
新たな知財の創出
新
な知財 創出
試作品・製品の開発
タスクフォースとは?
大学・公的研究機関が有する特許等の技術
シーズを活用したビジネスモデルを、
スタ トアップ アドバイザ のトップダウンマ
スタートアップ・アドバイザーのトップダウンマ
ネジメントの下で構築するとともに、
ハイテク・スタートアップスの創業に必要な
追加的な研究開発を支援するために
産総研の研究
産総研の研究ユニットに研究開発費を投入。
トに研究開発費を投入
J. Watanabe
21
産総研 新ルールの適用
・企業経験者(=SA)を招聘研究員として処遇
・研究者は代表者(社長)には就任できない
研究者は代表者(社長)には就任できない
・SAが出資した場合は、1年以内に産総研を退職
・「産総研技術移転ベンチャー」という称号を付与
・産総研技術の利用を示すマークを商品に記載
産総研技術の利用を示すマ クを商品に記載
・家賃負担や特許実施料の軽減等で支援
家賃負担 特許実施料 軽減等 支援
・弁護士、会計士等、専門家への相談機会を提供
J. Watanabe
22
SAの要件
1 部下が常にいる環境に慣れすぎていないこと
1.
(事業の開始当初は雑事から戦略策定まで一人で
何役もこなさなければならないため)
大手企業勤務から、人生リスクをかけて転職した
人生リスクをかけて転職した
2 大手企業勤務から
2.
経験があること
自ら多くの意思決定をしなければならないので、指
多
決定を
、指
3. 自
示待ちではないSelf-Independentな仕事環境に慣
れていること
J. Watanabe
23
SAの要件
つづき
づき
3 事業は早い時期に国際展開も考える必要があるの
3.
で、海外の企業とのコミュニケーションの実績がある
こと
技術が想定する事業分野での仕事経験と、取引上
仕事経験と 取引上
4. 技術が想定する事業分野
の人脈・ネットワークを持っていること
5. 発明者とコミュニケーションを取れるレベルの技術
的バ クグ ウ ドを持
的バックグラウンドを持っているか、その役割を果た
るか そ 役割を果た
す人材をリクルートすることができること
J. Watanabe
24
早稲田大学が取り組む
ンチャ 起業の類型
ベンチャー起業の類型
1.
2
2.
3.
4.
教員ベンチャー
(知財活用)
学生ベンチ
学生ベンチャー
(教育)
企業内ベンチャー
企業内
ンチャ
(産学連携)
協定校・公的研究機関等ベンチャー
(学学連携)
5. 海外ベンチャー
(国際連携)
J. Watanabe
25
<事例紹介>
私自身の
産総研における
ベンチャ 起業実績
ベンチャー起業実績
J. Watanabe
26
重視したベンチャーの要件
重視したベンチャ の要件
わかりやすくて明快な事業ミッション
わかりやすくて
明快な事業ミッション
未だ満たされていないユニバーサル・ニーズ
未だ満たされていない
ユニバーサル・ニーズ
特許化され
特許化
され実施
実施できる
できる革新的技術
革新的技術
市場を創造し新たな付加価値を提供
市場を創造
し新たな付加価値を提供
ダイナミックに海外市場へ展開
ダイナミックに
海外市場へ展開
投資家にとって魅力あるリターン
投資家にとって
魅力あるリターン
持続的成長を
持続的成長を可能とする事業展開シナリオ
持続的成長
を
を可能とする事業展開シナリオ
能とする事業展開シ
オ
フロンティア技術でワクワクする起業を!
技術
す 起業
J. Watanabe
27
ビジネスモデルの構築
ビジネスモデルをつくること
ビジネス デルを くる と
= 事業を動かす仕組みを設計
事業を動かす仕組みを設計すること
すること
、
、
そのビジネスを行うにあたり、何に、いくらの
コストをかけ、ユーザーに
コスト
をかけ、ユーザーに何を提供
何を提供するのか。
するのか。
どこから、どのような形で収入
どこから、どのような形で
収入を得るのか。
を得るのか。
そのためには、いかなる差別的機能が必
そのためには、いかなる差別的機能
が必
要なのか
要なのか。
J. Watanabe
28
Q1 価値を提供する相手(顧客)は誰か?
Q2 どこから課金する(収入を得る)か?
Q3 商品やサービスを「顧客」に知ってもらう
商
ビ を「 客 知
も う
ための方法は?(プロモーション手法)
Q4 商品やサービスを「顧客」にどうやっ
商品やサ ビスを「顧客」にどうやっ
て届けるのか?(流通手段)
Q5 商品や材料の仕入れを必要とする
場合、仕入先はどこか?
場合 仕入先はどこか?
安定して仕入れるための方法は?
Q6 コストは、何に、いくらかかるのか?
コストは 何に いくらかかるのか?
Q7 事業の仕組み(商品やサービを
提供し代金を得るまでの流れ)を
図示すると?
起業して経営参画した会社
IQUANTUM Corporation
IQUANTUM Corporation
Fermlab Inc
Fermlab, Inc.
株式会社ファームラボ
アイカンタム株式会社
ESICAT Japan, LLP
Global Health Co. Ltd.
株式会社グローバルヘルス
グ
バル ルス
J. Watanabe
有限責任事業組合
エシキャット・ジャパン
31
各社の主力製品・サービス
全て産総研の発明者が起業に関与し役員に就任
• アイカンタム :精密電子計測システム
• エシキャット・ジャパン :SiCエピタキシャルウェハ
• ファームラボ
ボ :麹菌マイクロアレイ&バイオ・インフォ
ティク 受託解析
マティクス受託解析サービス
• グローバルヘルス :超音波体組成計&健康支援
情報サ ビス
情報サービス
• パルスイムノテック :臨床検査システム
J. Watanabe
32
事例1 アイカンタム株式会社
事例1:アイカンタム株式会社
企業ビジョン
エレクトロニクス分野の先進的な
計測技術の商品化を具現し、
ユーザーにとっての新しい世界を拓き、
普遍的価値を提供する
事業内容
独創的で革新的、かつコスト・パフォーマンスの
高いエレクトロニクス精密計測システムを
日本からグローバル市場に提供し、
先端技術の研究者および産業界のニーズを
ズ
充足して、科学技術研究とビジネスの世界に
新たな価値を創造する。
創
商品
欧米企業が世界市場をほぼ寡占している
「超伝導デバイス・極低温計測・電圧標準システム
等」の計測システム装置事業分野に対し、
学術的成果からみても世界トップレベルの性能を有
する国産技術を用いて、卓越した商品を提供
1.SQUID磁束計用ヘリウム3冷凍システム
1
SQUID磁束計用ヘリウム3冷凍システム
2.液体ヘリウムフリー・プログラマブル電圧標準
システム
3.AC‐DCトランスファー標準システム
保有技術と商品
1 極低温磁気計測技術
1.極低温磁気計測技術
2ケルビン以下の磁化測定を可能にする
プローブ および
全自動ヘリウム3ガス操作システム
2 超伝導デバイス技術
2.超伝導デバイス技術
ジョセフソン電圧標準素子 および
液体ヘリウムフリ の電圧標準システム
液体ヘリウムフリーの電圧標準システム
3.AC-DCトランスファー標準技術
熱電型交直変換素子を用いた
小型・高性能校正システム
J. Watanabe
37
事業の特徴は?
極低温物性における未踏研究領域を拓く
発展途上国と企業に新たな電圧標準の世界を提供
エレクトロニクスと計測標準の両研究部門が支援
市場寡占する米国企業と戦略提携して国際展開
国内外の精密電子計測技術も連続的に商品化
J. Watanabe
38
起業の背景
日本の超伝導デバイス技術および低温・精密
計測技術は世界の学会において高く評価
しかしながら、市場規模が小さいために、
しかしながら
市場規模が小さいために
日本では製品化に結びつかなかった
現在、日本の電圧標準、低温・精密計測に関
するデバイス、システムの入手はほとんどが
輸入に頼っている
J. Watanabe
39
世界における電圧標準システムの供給体制
界
欧州
北米
PTB
液体ヘリウム
使用システム
Prema
NIST
供給
(現状)
ベンチャービジネス (ドイツ)
アジア
液体ヘリウム
使用システム
ベンチャービジネス (米国)
AIST
液体ヘリウムフリー
システム
Hypres
iQuantum
アイカンタム起業の目的
産総研の持つ独創的な研究開発成果
誰からも、どこからも
誰からも
どこからも
入手することができない
「高性能
「高性能電子計測デバイス・システム」を世
計 デバ
を
界市場に!
J. Watanabe
41
アイカンタムと産総研との相互連携
エレクトロニクス研究部門をはじめ、
エレクトロニクス研究部門をはじめ
大学や公的研究機関から生み出される
高度電子計測技術の製品化
市場(顧客)からのフィードバックに
刺激された新たな技術開発
主要メンバー
代表取締役
取締役
取締役
監査役
渡辺純一(CEO)
渡辺純
(CEO)
東海林彰〔工学博士〕(CTO)
白川直樹〔理学博士〕(COO)
田中義紀
技術アドバイザ
技術アドバイザー
佐々木仁〔工学博士〕
技術アドバイザー 葛西直子〔理学博士〕
顧問弁護士
竹岡八重子
起業ベースとなった技術の優位性
(新規性、進歩性、排他性)
(新規性
進歩性 排他性)
• 電気試験所以来の低温物理の伝統に根ざしている。
• 完全にone
完全
and onlyの製品であり、特許で保護され
yの製品であり、特許で保護され
ている。
• Quantum Designでもできなかったことを達成したこ
とにより、彼らからも 目置かれ、同社の全世界的
とにより、彼らからも一目置かれ、同社の全世界的
営業網で販売することに。
• 基礎物性研究のフロンティアを広げることに貢献し
た とで、今後 の測定装置を用 た研究成果が出
たことで、今後この測定装置を用いた研究成果が出
てくるに期待。
J. Watanabe
44
極低温磁気計測システム “iHelium3”
J. Watanabe
45
“PJVS”
PJVS
電圧標準素子チップ
32,7680個の
ジョセフソン素
子が集積されて
いる。
コンパクト
&低価格
1.5 cm
顧客
1 国立標準研究機関
1.
2. 民間企業
認定校正事業者
電気電子産業
●現在の電圧標準システム
●アイカンタム社の電
圧標準システム
J. Watanabe
自動車産業
等
46
納入および受注実績(事業承継前)
iH li 3
iHelium3:
国内5台:東京理科大、筑波大、東北大、大阪府立大、大阪市立大
海外2台:成均館大(韓国)、マックスプランク研究所(ドイツ)
ACDC:
企業:2社
3セット
国立研究所:2機関
3セット
PJVS:
オーストラリア標準研究所(NMIA)
インドネシア標準研究所(KIM LIPI)
インドネシア標準研究所(KIM-LIPI)
アイカンタム事業モデルの特色
特定ニッチ市場に対する高いコストパフォーマン
特定
チ市場に対する高い ストパフ
ン
ス商品の提供
商品ライフサイクルを加味した品揃えの拡充と
段階的投入
製造・販売・アフターケア等での提携関係の
構築(外注&連携委託)
創業段階における不安・課題と解決策
・限られた資本金
→ 確認株式会社としてスタート
・次期製品・サービス内容の検討と探索
→ 技術顧問チームの編成
・経営者候補の不在
→ スタートアップ・アドバイザー
が代表取締役に就任
創業段階における不安・課題と解決策(つづき)
・営業力不足
→ 経産省
経産省への働きかけ、学会人脈の
の働きかけ 学会人脈の
活用、産総研の他の研究ユニット
に協力要請
・販売&フォローアップ体制の不備
→ カンタムデザイン社等、
他社との提携関係の構築
・量産体制の不備
→ 信頼できる外注先の確保と製造
スタッフの段階的雇用
戦略的な販売提携を意図
• SQUID磁束計は米国のQuantum Design社が
市場を独占
• QD社との国際販売提携を決断
• 国際会議(LT24)でジ
国際会議(LT24)でジョント・マーケティング
ント マ ケテ ング
開始
• 特注品はアイカンタムの直販も可能
J. Watanabe
51
J. Watanabe
52
本事業のリスク特性
• ユーザーが大学の研究者や国立標準研究機関に
限定されているので 顧客ターゲットが明確な反面
限定されているので、顧客タ
ゲットが明確な反面、
最大販売台数も予想可能。
• 短期間内でのリピートオーダーは期待薄。
ある程度普及すると販売台数が頭打ちに。
• 消耗品の販売やアフターサービスの提供で収益を
上げる事業モデルではない。
げる事業 デ
な
J. Watanabe
53
リスク回避策
•
産総研、大学、公的研究機関からの電子精密
産総研
大学 公的研究機関からの電子精密
計測関連の研究成果の活用と連携した継続
的な商品化
•
潜在顧客の顕在化のため、販売提携先と協力
潜在顧客の顕在化のため
販売提携先と協力
して、関連学会の併設展示会等で、効率的な
宣伝広告活動を展開(例:SCLSI LT,
宣伝広告活動を展開(例:SCLSI,
LT CPEM)
•
標準品のみならず、カスタムオーダーにも柔軟
標準品のみならず
カスタムオ ダ にも柔軟
に対応し、コストパフォーマンスの高い特注品
を提供
J. Watanabe
54
J. Watanabe
55
リスク回避策
つづき
づき
• 販売提携先に最低販売目標を課し、当社の
直接販売オプ
直接販売オプションも留保し、双方がフェアに
も留保
方が
収益を分配できるような提携関係を締結。
• 販売提携先等からの
販売提携先等からの、ユニ
ユニークな測定システ
クな測定システ
ムの研究開発受託
J. Watanabe
56
将来計画とビジョン(創業当初)
◆自主研究と内外大学・研究機関との連携研究成
◆自主研究と内外大学
研究機関との連携研究成
果を融合した商品企画のアイディア・プール
◆産業界での活躍を目指すポスドクの開発実務ト
レーニングセンター
レ
ニングセンタ
◆企業への研究企画提案と研究・開発サ ビスの
◆企業への研究企画提案と研究・開発サービスの
受託による共同商品開発
◆イノベーティブな精密電子計測システムの
連続的な商品化を仕掛けるインキュベ タ
連続的な商品化を仕掛けるインキュベーター
事例2 エシキ ット ジ パンLLP
事例2:エシキャット・ジャパンLLP
2008年12月、昭和電工株式会社に対して、パワ
2008年12月
昭和電工株式会社に対して パワー半導体向け
半導体向け
炭化ケイ素(SiC)ウェハ基板への薄膜成長サービス事業を譲渡
インパクト
会社概要
□設立日:2005年9月20日
設
年 月
□分野:環境・エネルギー
□事業概要:
炭化ケイ素(SiC)製半導体デバイスを作る
際の中間素材「エピタキシャルウエハ」の
量産・販売。
事業譲渡により 今後のパワ
事業譲渡により、今後のパワー
半導体用SiCエピタキシャル
ウ
市場 成長 拡大
速。
ウエハ市場の成長・拡大が加速。
・パワー半導体として、現在主流のシリコン(Si)
デバイスを凌駕する性能。
安定供給の難しか た当該ウ
におい
・安定供給の難しかった当該ウェハにおいて、
3インチ以上の基板で世界最高水準の均一
性と低欠陥化を実現。
SiCエピタキシャル
ウエハ
J. Watanabe
(3inch) 59
時代のニーズ
エコロジーへの流れ
地球温暖化防止(CO2削減)
省エネ化
グリ ン化
グリーン化
高機能化への流れ
高機能化
の流れ
小型化の流れ
高性能
(超高速・耐高温・高信頼性等)
機器の小型化・部品数削減
ユビキタス社会
J. Watanabe
60
パワーデバイスの適用分野
電力分野での省エネ
エネルギーの電力化率からみて緊急課題
電力エネルギーの制御にエレクトロニクスを応用
(エネルギーエレクトロニクス、パワーエレクトロニクス)
電力変換
(AD, DA変換)
インバータ回路
パワーデバイス
(トランジスタ)
J. Watanabe
61
パワーエレクトロニクスの課題
パワーエレクトロニクス
(高電圧、大電流)
鉄道分野
電力分野
宇宙分野
パワ エレクトロニクスのキ
パワーエレクトロニクスのキー
良いスイッチング素子(インバータ)とは
各種産業分野
On状態:抵抗ゼロ
ゼ
Off状態:抵抗無限大
1.
2.
3.
4.
高い変換効率
大容量
小形・軽量
電磁的にクリーン
1.
2.
3.
4.
自動車分野
耐圧と通電ロス(オン抵抗)は
トレードオフの関係
オン抵抗が小さい
高耐圧
高速・高周波動作
使いやすい
各種分野の
省エネに
大きく貢献
パワーデバイス(トランジスタ)の課題
J. Watanabe
62
SiCデバイスのインバーターへの適用
なぜいいの?
インバーター特性
インバ
タ 特性
SiCデバイス特性
◆高効率
高効
■低損失
■高耐電圧
■高耐熱
■高速スイッチング
◆高出力
◆簡易冷却
◆小型
J. Watanabe
63
ウェハへの要求
要求
・・デバイスメーカーから・・
<バルクウェハ>
<バルクウ
ハ>
◆低価格化 ⇒ デバイス価格
◆無欠陥化 ⇒ デバイス歩留り・高信頼性
◆大口径化 ⇒ 生産設備・取れ数
◆反りをなくす ⇒ 生産性
<エピ>
<
ピ>
キャリア濃度・膜厚均一性
⇒ デバイス均一性
デバイス均 性
J. Watanabe
64
SiC結晶からインバータまで
SiC粉末
インゴット
昇華法
バルクウェーハ
切断研磨
エピタキシャルウェーハ
エピタキシャル成長
SiCエピタキシャル層
SiCバルクウェーハ
イオン注入
ドライエッチ
ライ ッチ
メタル蒸着
アニール
断面図
Cree Inc HPより
Cree, Inc. HPより
インバータ
デバイスモジュール
ダイシング
ボンディング
実装
回路実装
三菱電機 HPより
安川電機 HPより
デバイスチップ
(MOSFET SBD etc )
(MOSFET, SBD etc.)
SiCエピタキシャル成長
優れたSiC素子の作製には:
優れた
素
作製
『低欠陥』、『厚膜』のエピが不可欠
=高品質なエピ膜を高速成膜
特殊CVD法
1500℃以上の高温プロセス
×Si技術の流用
×Si装置の流用 ⇒ 海外装置の新規導入
J. Watanabe
66
有限責任事業組合エシキャット・ジャパン
設立年月
設立年月日:2005年9月20日
年 月
SiCパワーデバイスの実用化促進のため、高品質
SiCエピタキシャルウエハの商用化研究及び製造
技術の確立、試作品及び製品の開発と製造、並び
に試作品の提供を含む販売。
に試作品の提供を含む販売
本社: 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第2
J. Watanabe
67
SiC Epitaxial Wafers
(3inch)
J. Watanabe
68
ミッション
世界最高水準の
SiCエピタキシャル成長技術を用いて
グローバル・ユーザーの多種多様な
要望 要求仕様に柔軟に応えた
要望・要求仕様に柔軟に応えた
「エピ成長サ ビス」を提供して
「エピ成長サービス」を提供して
SiCパワーデバイスの
早期実用化に貢献する
J. Watanabe
69
起業の背景
◆国産技術の結集によるパワーデバイス商用
化に対する期待の高まり
◆国家プロジェクトによる研究成果の蓄積
◆産総研・電中研・昭和電工による共同研究
プロジェクトの推進
◆産総研と電中研による技術的なブレイクス
ルーの実現
◆産総研認定ベンチャー化に向けた連携支援
J. Watanabe
70
協業スキーム
協業スキ
ム
個人組合員
(産総研研究者、電中研研究者、関連有識者)
有限責任事業組合
エシキャット・ジャパン
SiCエピ
供給
お客様
法人組合
合員
技術移転
三者共同研究
昭和電工
電中研
産総研
J. Watanabe
71
有限責任事業組合エシキャット・ジャパンの設立
環境負荷の低減に
貢献するベンチャー
経済産業省
制度に関する相談
産総研
研究者
電中研
研究者
長年に亘る基礎研究
世界に先駆け、炭化珪素(SiC)
世界に先駆け
炭化珪素(SiC)
半導体の実用化を目指す
LLP制度の助言
参加
有限責任事業組合
エシキャット・ジャパン
産総研技術移転ベンチャー
参加
産総研ベ
ンチャー
SA
S
開発戦略
研究セン
ター
国家プロジェクト
国家プ
ジ クト
(1998~2002)
高品質高速の炭化珪素
((SiC)ウェハー成長技術
)
基礎研究を製品まで
引き上げたベンチャー
・シリコン半導体では不可
能な小型・低損失の大容量
パワートランジスタの実現
大きな省エネルギー効果!
経済省と緊密に連携しつつ、出資比率
ではなく、役割に応じた損益配分が可能
なLLP制度の運用をいち早く開始
昭和電工株式会社
(化合物半導体エピタキ
シャルウェハの事業経験)
J. Watanabe
72
構成メンバ
構成メンバー
●産総研研究者・電中研研究者・関連有識者
●産総研研究者
電中研研究者 関連有識者
・・・設立趣旨に賛同した6名の個人
●法人として出資・参画した昭和電工
・・・1名の職務執行者を任命
1名の職務執行者を任命
・7名が“CXO”の肩書きを持ち業務を分担
7名が“CXO”の肩書きを持ち業務を分担
・昭和電工の兼務者が開発・製造を担当
昭和電
兼務者 開発 製造を担当
・産総研と電中研の特許のライセンシー
J. Watanabe
73
なぜLLPか?
◆LLPとは?
Limited Liability
y Partnership
p
法人格無し
◆特徴は?
①有限責任性 ②内部自治 ③構成員課税
◎高い運営ルールの自由度・・・「契約」と「規約」
◎意思決定の迅速化 簡素化
◎意思決定の迅速化・簡素化
◎合議に基づくフェアな利益分配
J. Watanabe
74
株式会社
◆有限責任
◆硬直的な組織運営
◆法人課税
J. Watanabe
75
民法組合
◆無限責任
◆内部自治の柔軟性
◆構成員課税
J. Watanabe
76
LLP
株式会社と民法組合のいいとこ取り
◆有限責任
◆内部自治の柔軟性
◆構成員課税
◆共同事業の要件
・・・債権者保護のため、追加
債権者保護のため 追加
J. Watanabe
77
EPIGRESS社製SiC-CVD装置を導入
J. Watanabe
78
Planetary Reactor
Planetary Reactor
J. Watanabe
79
Products Road Map
2005
2006
Si
f
face
ESICAT
設立
2007
2009
2”・3”
8deg
off
C
face
2008
4”
4deg
off
2”・3”
8deg
off
2”・3”
4deg
off
2”・3
2
3”
4”
4”
4”
onaxis
2”・3
2
3”
4”
三者共同研究
J. Watanabe
80
タイムリーに国際デビュー
ICSCRM2007
International Conference on Silicon Carbide
and Related Materials 2007
世界最大規模のSiC関連国際会議
2007年10月14~19日
2007年10月14
19日
大津プリンスホテル(滋賀)
賀
J. Watanabe
81
2008年12月4日
昭和電工株式会社
有限責任事業組合エシキャット・ジャパン
-将来の市場拡大に対応した事業推進体制を構築-
将来 市場拡大 対応 た事業推進体制を構築
昭和電工株式会社(社長:高橋
昭和電工株式会社(社長
高橋 恭平、以下「昭和電工」)
恭平 以下「昭和電工 )
と有限責任事業組合エシキャット・ジャパン(代表:渡辺純
、以下 シキャット」)は、2008年末までに、 シキャッ
一、以下「エシキャット」)は、2008年末までに、エシキャッ
トが有するパワー半導体用SiC(炭化ケイ素)エピタキシャ
ルウェハー事業を、昭和電工が譲り受けることで合意致
しました。
しました
(中略)
昭和電工およびエシキャットでは パワー半導体用SiCエ
昭和電工およびエシキャットでは、パワー半導体用SiCエ
ピタキシャルウェハー市場の今後の拡大を促進するとと
もに、事業規模の拡大のためには、昭和電工がエシ
キャットの事業を譲り受けて推進することが望ましいと判
事業を譲
推進す
が望
断し、今般の合意に至りました。
J. Watanabe
82
研究者と事業化に取り組んで得た教訓
◆やはり人が重要・・相互理解と補完できる相性が必要
◆なぜ起業したのか、問題発生時に初期動機を再確認
◆学会・研究会は格好のマーケティング・営業機会
◆戦略提携先の選定は事業承継を念頭に
◆研究活動と兼業して起業できたのは特殊なケース
◆コスト意識向上と期限厳守のためには忍耐すべし
◆利益相反性を弁えながら、受委託関係を構築すべし83
キャリアをポ トフ リオで考えよう!
キャリアをポートフォリオで考えよう!
Career Design & Planning = Career
C
Limiting
スキル育成と機会を捕まえることに注力せよ
スキル育成と機会を捕まえることに注力せよ。
「機会」をつかむには、
①正しい場所に正しいタイミングでいる
②自分自身で創り出す
自分のやりたいことに向かってキャリアを積む
『やりたいことをやるのがキャリアだ!』
“夢”と“スキル”と“プロセス”+「出会い」
“夢”と“スキル”と“プロセス”+「出会い
J. Watanabe
84
本日の話が
本日の話が、
公的研究機関や大学等の
研究者の活用
と
研究成果の商業化
のために
少しでもお役にたてば幸いです。
ありがとうございました。
jwatanabe@w-ri jp
[email protected]
J. Watanabe
85