波動工学-6.doc 09/04/13 76
6 TEM 線路
下図に示すように、電磁波を利用して信号を伝送する伝送線路にはさまざまなものがある。
3 章で学んだ(a)の自由空間中の平面波も伝送線路を伝搬する信号の一種と考えることがで
きる。本章では特に、下図(a),(b),(c)に代表されるような TEM 線路について学ぶ((d)-(i)の
ようなより一般の伝送線路についてはここでは割愛する)
。
本章を学ぶことによって、ミクロに電磁気学現象を記述するマクスウェルの方程式と高周
波回路理論の分布定数線路などの項目で習う電信方程式との関係が明確になる。
PEC(金属)
波数ベクトル
k
PEC
E
PEC
H
PEC
(a) 自由空間
(b) 平行二本線路
(レッヘル線路)
(c) 同軸線路
PEC
PEC
(e) 円形導波管
(f) マイクロストリップ線路
スロット
PEC
誘電体
誘電体
誘電体
PEC
(d) 方形導波管
PEC
誘電体
(g) ストリップ線路
(トリプレート線路)
誘電体2
誘電体1
(h) スロット線路
(i) コプレーナガイド
(j) 光ファイバ
波動工学-6.doc 09/04/13 77
6.1 Maxwell の方程式から電信方程式を導出
Maxwell の方程式から電信方程式を導出する1。
TEM 波(transverse electric magnetic wave)
ある方向に E と H のいずれの成分も存在しない。つまり、伝搬方向に垂直な断
面内のみに電界と磁界が存在する。
Ez = 0
Hz = 0
他にも、導波路(d)-(j)などは E z = 0 and H z = 0 では表しきれず、
一般の導波路構造を網羅するには次のようなモードが必要となる。本
講義では TEM 波のみ説明する。
TE 波(transverse electric wave), H 波 E z = 0
TM 波(transverse magnetic wave), E 波 H z = 0
ハイブリッド波(hybrid wave) E z ≠ 0 and H z ≠ 0
∇ × H = jωεE
∇ × E = − jωµH
①
②
①より、
1
H ⋅ dl
∆S →0 ∆S ∫C
jωεE z = lim
E z ≡ 0 より
∫ H ⋅ dl = 0
C
→ ∇t × H = 0
③
同様に、
H z ≡ 0 より
∫ E ⋅ dl = 0
C
→ ∇ t × E = 0 (保存場) → E = −∇V (電磁気学の知識) ④
y
dl
C
z
1
後藤尚久、電磁波工学演習、3 章、昭晃堂、昭和 56 年
x
波動工学-6.doc 09/04/13 78
ところで、
xˆ
yˆ
zˆ
∂H y
∂H x
∇ × H = ∂ / ∂x ∂ / ∂y ∂ / ∂z = − xˆ
+ yˆ
+ zˆ (?)
∂z
∂z
=0 (Q②′より)
Hx
Hy
0
ここで、 zˆ × H = − xˆH y + yˆ H x より
∇×H =
∂
zˆ × H
∂z
∇× →
∂
zˆ × となった
∂z
∂
(zˆ × H ) = jωεE
∂z
⑤
∂
(zˆ × E) = − jωµH
∂z
⑥
n̂′
n̂
#1
r̂
V
I
dr
ẑ
Q
0
I
#2
-Q
dl
⑤に n̂ ⋅ ( nˆ = zˆ × rˆ )を施し、導体#1 の周囲で線積分
∫ εE ⋅ nˆdl = Q
#1
∫
#1
[C/m]
nˆ ⋅ ( zˆ × H )dl = − ∫ zˆ ⋅ (nˆ × H )dl = − zˆ ⋅ ∫ (nˆ × H )dl = − zˆ ⋅ I = − zˆ ⋅ ( zˆI ) = − I
#1
#1
∂
(− I ) = jωQ
∂z
⑦
⑥に n̂′ ⋅ ( nˆ = zˆ × rˆ )を施し、導体#1∼#2 まで線積分
∫
#2
∫
#2
#1
#1
µH ⋅ nˆ′dr = Φ [Wb/m]
nˆ′ ⋅ ( zˆ × E )dr = ∫ E ⋅ (nˆ′ × zˆ )dr = ∫ E ⋅ rˆdr = V
∂
V = − jωΦ
∂z
#2
#2
#1
#1
⑧
波動工学-6.doc 09/04/13 79
ところで、
Q = CV
Φ = LI
を⑦, ⑧に代入して、
∂
I = − jωCV
∂z
∂
V = − jωLI
∂z
C=
(電信方程式)
Q ∫#ε1 E ⋅ nˆ dl
= #2
V
∫ E ⋅ rˆdr
#1
#2
Φ
∫ µH ⋅ nˆ′dr
L = = #1
I
zˆ ⋅ ∫ (nˆ × H )dl
#1
CL = εµ を導出
CL =
∫ εE ⋅ nˆdl
#1
#2
∫
#1
E ⋅ rˆdr
∫
×
#2
#1
∫
#2
#1
N
µH ⋅ nˆ′dr
D
zˆ ⋅ ∫ (nˆ × H )dl
#1
⎧ 1 ∂
⎫
(
zˆ × E )⎬ ⋅ nˆ ′dr
⎨
⑥より #1
⎩ − jω ∂z
⎭
1 ∂ #2
1 ∂ #2
(
=−
nˆ′ × zˆ ) ⋅ Edr = −
E ⋅ rˆdr
∫
jω ∂z #1
jω ∂z ∫#1
N
µH ⋅ nˆ ′dr =
∫
#2
D
⎫
⎧ 1
∂
(
zˆ ⋅ ∫ (nˆ × H )dl = zˆ ⋅ ∫ nˆ × ⎨
zˆ × E )⎬dl
#1
#1
⑥より
⎭
⎩ − jωµ ∂z
∂
1
zˆ ⋅ nˆ × ( zˆ × E ) dl
=
− jωµ ∂z ∫#1 =( nˆ⋅E ) zˆ −( nˆ⋅zˆ ) E
=
ここで、
∂
∇ × ⑥ より、
∂z
∂
∂
1
1
zˆ ⋅ ∫ (nˆ ⋅ E) zˆdl =
E ⋅ nˆ dl
#1
− jωµ ∂z
− jωµ ∂z ∫#1
波動工学-6.doc 09/04/13 80
∂2
∂
∂
zˆ × ( zˆ × E ) = − jωµ ( zˆ × H ) = − jωµ ( jωεE ) = ω 2 µεE
2
⑤より
∂z
∂z
∂z
⎞
⎛
∂2 ⎟
⎜
zˆ× ⎜ zˆ× 2 E ⎟ = k 2E
A ⎜ B ∂z
⎟
C
⎠
⎝
( zˆ ⋅
∂2
∂2
ˆ
ˆ
ˆ
E
)
z
−
(
z
⋅
z
)
E = k 2E
2
2
∂z
∂z
( A ⋅C ) B
( A ⋅B ) C
∂2
E + k 2E = 0
∂z 2
(波動方程式)
⑨
& f ( z ) とおくと、
E≡E
∂2
f + k 2 f = 0 , f = e − jkz + R e + jkz
∂z 2
∂
1
1
& ∂ f
H=
zˆ × E =
zˆ × E
− jωµ ∂z
− jωµ
∂z
df
= − jk (e − jkz − R e + jkz )
dz
∫
#2
#1
N
µH ⋅ nˆ′dr = −
D
zˆ ⋅ ∫ (nˆ × H )dl =
#1
1 ∂ #2
1 ∂f # 2 &
ˆ
⋅
=
−
E
r
dr
E ⋅ rˆdr
jω ∂z ∫#1
jω ∂z ∫#1
1 ∂
1 ∂f &
E ⋅ nˆ dl =
E ⋅ nˆ dl
∫
#
1
− jωµ ∂z
− jωµ ∂z ∫#1
よって、
1 ∂ #2
E ⋅ rˆdr
∫
εE ⋅ nˆdl
#1
j
z
∂
ω
∫
∫ E ⋅ nˆdl ×
CL = ##12
×
= εµ ##21
1 ∂
∫#1 E ⋅ rˆdr − jωµ ∂z ∫#E1 ⋅ nˆdl
∫#1 E ⋅ rˆdr
−
∂f # 2 &
E ⋅ rˆdr
∂z ∫#1
= εµ
∂f &
ˆ
E
n
d
l
⋅
∂z ∫#1
■
波動工学-6.doc 09/04/13 81
6.2 電磁界断面成分のポテンシャルによる表現
& f (z )
E=E
H=
1 ∂f
&
zˆ × E
− jωµ ∂z = H&
(⑥より)
& = 0 なので、ポテンシャル V を導入できる。
④より、 ∇ t × E
& = −∇V = − xˆ ∂ V − yˆ ∂ V
E
∂x
∂y
∂2
∂2
∂2
∂2
2
&
∇ ⋅ E = −∇ V = − 2 V − 2 V = 0 ,
V + 2V =0
∂x
∂y
∂x 2
∂y
2
2
& = −∇U = − xˆ ∂ U − yˆ ∂ U = − yˆ ∂ V + xˆ ∂ V = zˆ × E
& , ∂ U + ∂ U =0
H
∂x
∂y
∂x
∂y
∂x 2
∂y 2
→ U ,V はラプラスの方程式の解(調和関数)である。
複素関数の応用
W ( z ) = W ( x, y ) = U ( x, y ) + jV ( x, y ) , z = x + jy
y (Im)
という複素関数を考える。
⎧ ∂W ∂U
⎪⎪ ∂x = ∂x +
⎨ ∂W ∂U
⎪
=
+
⎪⎩ ∂y
∂y
∂V
∂x
∂V
j
∂y
j
x (Re)
複素数の意味で微分可能と言うには、複素平面上でどの方向からの微分も等しくなければ
ならない。つまり、実部 x 、虚部 jy に沿った微分係数も等しくなければならないので、
∂W
∂W
=−j
が成り立つ。従って、微分可能ならば次のコーシー・リーマンの関係が成り
∂x
∂y
立つ。
⎧ ∂U ∂V
⎪⎪ ∂x = ∂y
⎨ ∂U
∂V
⎪
=−
⎪⎩ ∂y
∂x
⑩
(コーシー・リーマンの関係)
⑪
→複素関数 W ( z )
= W ( x, y ) は単なる 2 変数関数ではなく、この関係を満たさなければならない。
→この性質がもたらすもの( U ,
⑩, ⑪式を辺々掛け合わせると、
V
は自動的に 2-D ラプラスの方程式を満たす)。
波動工学-6.doc 09/04/13 82
∇U ⋅ ∇ V = 0
→ 電界と磁界は直交
⑩, ⑪式を U ,V について解くと、
⎧ ∂2
∂2
+
V
V =0
⎪ ∂x 2
∂y 2
⎪
⎨ 2
2
⎪∂ U + ∂ U =0
⎪⎩ ∂x 2
∂y 2
任意の複素関数 W ( z ) で写像されたとき、実部 U ( x, y ) と虚部 V ( x, y ) は両方ともラプラスの
方程式を満たす。
ポテンシャルを用いた電界・磁界の表現
⎛
∂
∂ ⎞
E = (e − jkz + R e + jkz )⎜⎜ − xˆ V − yˆ V ⎟⎟
∂x
∂y ⎠
⎝
H=
=
1 ⎧
∂
∂ ⎞⎫
− jkz
+ jkz ⎛
⎨− jk (e − R e )⎜⎜ − yˆ V + xˆ V ⎟⎟⎬
− jωµ ⎩
∂x
∂y ⎠⎭
⎝
⎛ ∂
ε − jkz
∂ ⎞
(e − R e + jkz )⎜⎜ xˆ V − yˆ V ⎟⎟
µ
∂x ⎠
⎝ ∂y
∂2
∂2
ただし、 2 V + 2 V = 0
∂x
∂y
波動工学-6.doc 09/04/13 83
6.3 進行波と特性インピーダンス
&
E = (e − jkz + R e + jkz )E
H=
ε − jkz
&
(e − R e + jkz )H
µ
R = 0 、つまり進行波(traveling wave)のとき、
& e − jkz
E=E
H=
ε & − jkz
He
µ
R
これを③, ④に代入して、
E × ẑ = −
H × ẑ =
µ
H
ε
0
z
ε
E
µ
→ 電磁波の平面波と同じで、 E , H , 進行方向 ẑ は右手系を成して直交している。また、
E /H =
η=
µ
= η という比になっている。
ε
µ
[ Ω ]: 波動インピーダンス(wave impedance)
ε
#2
V
∫#1 E ⋅ rˆdr
Z= =
I zˆ ⋅ ∫ (nˆ × H )dl
#1
=
Z=
∫
#2
#1
E ⋅ rˆdr
⎛
ε ⎞⎟
}dl
zˆ ⋅ ∫ { nˆ × (E × zˆ )⎜⎜ −
#1
µ ⎟⎠
= ( nˆ ⋅ zˆ ) E − ( nˆ ⋅ E ) zˆ ⎝
=
∫
#2
#1
E ⋅ rˆdr
ε
(nˆ ⋅ E)dl
µ ∫#1
=
V
1 Q
⋅
=
η ε
L
[ Ω ]: 特性インピーダンス(characteristic impedance)
C
µε
C
=
CL
L
=
C
C
波動工学-6.doc 09/04/13 84
TEM 線路の特性インピーダンスの計算例
同軸ケーブル
r
C の計算
a
ガウスの法則
ε,µ
∫∫ D ⋅ dS = ∫∫∫ ρdV より、
S
V
Q
εEr ⋅ 2πr = Q
Q
Er =
2πεr
b
V = ∫ Er dr =
a
C=
b
-Q
Q
[log r ]ba = Q log b
2πε
2πε
a
2πε
Q
=
V log b
a
L の計算
∫
アンペアの法則 H ⋅ dl =
C
dD
⋅ dS より、
S dt
∫∫ i ⋅ dS + ∫∫
S
H ϕ ⋅ 2πr = I
Hϕ =
Φ
b
I
H
2πr
J
I
Φ
I
b
= ∫ H ϕ dr =
log
µ a
a
2π
L=
b
b
Φ µ
log
=
I 2π
a
∴ LC = εµ
L
Z=
=
C
log
b
µ
a
ε 2π
-I
a
E
波動工学-6.doc 09/04/13 85
【参考(発展):複素関数を利用した C の計算】
Im
対数関数 w = log z を考える。
w = log z = log( z e jθ ) = log z + log(e jθ )
= log z + jθ
実数
z
y
z
純虚数
θ
x
Re
Im
2π
Im
w = log z
b
a
Re
z = ew
log a log b
z-plane
A
w
ψ
z
B 等角写像
A′
Re
w-plane
ψ
B′
右図の平行平板コンデンサの静電容量
C =ε
S
2π
2πε
=ε
=
d
log b − log a log b
a
(ただし、写像しても C は変化しないと仮定。→本当は証明しなければならない)
波動工学-6.doc 09/04/13 86
コーヒー ブレイク(様々な等角写像)
上の同軸ケーブルの問題は等角写像を用いる必要もなく解ける問題であったが、複素関
数の等角写像(conformal mapping)の性質をうまく利用すると、思った以上に様々な問題が
解ける。しかし、いくら様々な問題が解けるといっても、世の中にある問題の中では非常
に限られたものしか解けないことに変わりはない。実用的にはポテンシャルが満たすラプ
ラスの方程式を有限要素法などのシミュレータを用いて数値的に解く方法が用いられる
(しかし、シミュレータの信頼性を確認するために、これらの基礎知識が必要であり、直
感的に理解して設計するためにもやはり基礎知識が必要になる)。
以下に等角写像で解けるいくつかの例を示す。グラフィックの作成には Mathematica の
Graphics→ComplexMap パッケージを用いた。
くさび
(1) 楔 (wedge) [1, p.66]
w= zp , p =
nπ
( n = 1,2,3, L )
2π −ψ
8
4
6
3
4
2
2
1
0
0
z
-2
w
-4
-2
-6
-3
-6
-4
-2
0
(2) 平行板の端部効果 [3-6]
w = z + ez
2
4
6
8
ψ
-1
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
波動工学-6.doc 09/04/13 87
10
4
7.5
5
2
2.5
0
0
z
-2.5
w
-2
-5
-7.5
-4
-7.5
-5
-2.5
0
2.5
5
7.5
10
-4
-2
0
2
4
(3) 薄板の端 [2, pp.84-85]
w= z
10
20
7.5
15
5
10
2.5
5
0
0
z
-2.5
w
-5
-5
-10
-7.5
-15
-7.5
-5
-2.5
0
2.5
5
7.5
10
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
(4) 2次元双極子の場 [2, p.85]
w = 1/ z
10
1
7.5
0.75
5
0.5
2.5
0.25
0
0
z
-2.5
w
-0.25
-5
-0.5
-7.5
-0.75
-7.5
-5
-2.5
0
2.5
5
7.5
10
-0.75 -0.5 -0.25
0
0.25
0.5
0.75
1
波動工学-6.doc 09/04/13 88
[参考文献]
[1] 稲垣直樹、電磁気学、コロナ社
[2] ファインマン・レイトン・サンズ著、ファインマン物理学、p.85、岩波書店
[3] 末松安晴、電磁気学、共立出版社
[4] 藤原毅夫、複素解析の技法、共立出版
[5] 今井功、等角写像とその応用、岩波書店
[6] 佐々木達治郎、等角写像の応用、現代工学社
波動工学-6.doc 09/04/13 89
平行2本線路
平行2本線路はレッヘル線路、あるいはフィーダと呼ばれることもある。
r
I
-I
d
l
r
d >> r
L の計算
∫
∫∫ i ⋅ dS + ∫∫
アンペアの法則 H ⋅ dl =
C
Hϕ =
I
2πl
Φ
d
µ
= ∫ H ϕ dr =
L=
r
S
S
dD
⋅ dS より、
dt
I
d
I
d
log × 2 = log
2π
l
π
r
Φ µ
d
= log
I π
r
C の計算
LC = εµ (TEM 線路一般に成り立つ)より、
C=
Z=
εµ
L
=
εµ
µ
d
log
π
r
L
=
C
µ
ε
log
π
=
πε
log
d
r
d
r
波動工学-6.doc 09/04/13 90
コーヒー ブレイク(同軸ケーブルとレッヘル線路)
TEM 線路の中でも、同軸ケーブルとレッヘル線路は構造が簡単なのでよく用いられる。
レッヘル線路は外部からのノイズの影響を受けるが、同軸ケーブルは静電気(周波数 0)に
対しては静電遮蔽する構造になっており、高周波の電磁界に対しても外部導体の厚さが表
皮の厚さ(5 章)と同じ程度、あるいはそれ以上ならば内部に入り込まず、影響が少ない。特
性としては同軸ケーブルの方がいいが、どちらを用いるかは値段、用途との兼ね合いで決
まる。地上波テレビ放送の受信では屋上にあるアンテナから受信した電波を室内に引き込
む必要があり、部屋にはアンテナに繋がる端子が付いている。その端子からテレビへの接
続ケーブルとして、昔は平行2本線路が安いのでよく使われたが、最近は特性がいいので
同軸ケーブルが使われることが多い。
一般に市販されている同軸線路は規格に沿ったものが売られており、特性抵抗は 75Ωと
50Ωのものがよく用いられている。75Ωという値はダイポールアンテナの入力インピーダ
ンスに合わせるのが目的で規格化されたそうである。一方、固体ポリエチレン(比誘電率
2.25)を使う 50Ωのケーブルは表皮効果による損失を最小にするように得られた値だそう
で あ る [1] 。 簡 単 に 導 出 す る と 、 表 皮 抵 抗 Rs は 表 皮 の 厚 さ δ =
2/(ωµσ ) を 用 い て
Rs = 1 /(δσ ) で あ る 。 半 径 a の 内 導 体 表 面 で 消 費 さ れ る 電 力 は
R
I2
= s I 2 。よって、同様に外導体の損失を計算し、全体の
2πa 2πa
R ⎛1 1⎞ 2
損失を計算すると WL = s ⎜ + ⎟ I となる。伝送電力 IV が同じときの損失を評価するの
2π ⎝ a b ⎠
2πaRs I s = 2πaRs H ϕ = Rs
2
⎡R
で、 WL = ⎢ s
⎣ 2π
2
⎡
⎤
⎢ 1⎛b ⎞ ε 1 ⎥
⎛1 1⎞ 1⎤
IV として IV =一定、および外導
⎜ + ⎟ ⎥ IV = ⎢ Rs ⎜ + 1⎟
b⎥
⎝a b⎠ Z⎦
⎢ b ⎝ a ⎠ µ log ⎥
a⎦
⎣
体の半径 b =一定の下で WL が最小となる条件を考える。WL の中で変化するのは x = b / a の
みであり、( x + 1) / log x の最小値を求めると 3.59112 である。この値を用いて特性インピー
log
b
µ
a = η 0 log(3.59112) ≅ 51.14 [Ω] となる。
ダンスを計算すると、 Z =
2π
ε 2π
2.25
レッヘル線路の特性インピーダンスは 300Ωのものがよく使われる。
[参考文献]
[1] “どうして 50Ωなの?”, EDN Japan, p.128, 2001.6
波動工学-6.doc 09/04/13 91
6.4 電信方程式
I (z)
V (z)
L ∆z
C∆z
I (z + ∆z)
V (z + ∆z)
∆z
キルヒホッフの電圧則より、
V ( z + ∆z ) = V ( z ) − jωL∆zI ( z )
V ( z + ∆z ) − V ( z )
= − jωLI ( z )
∆z
∆z → 0 とすると、
dV
= − jωLI
dz
キルヒホッフの電流則より、
I ( z + ∆z ) = I ( z ) − jωC∆zV ( z + ∆z )
I ( z + ∆z ) − I ( z )
= − jωCV ( z )
∆z
∆z → 0 とすると、
dI
= − jωCV
dz
まとめると、次の電信方程式(telegraph equation)が得られる。
⎧ dV
⎪ dz = − jωLI
⎨ dI
⎪ = − jωCV
⎩ dz
⑧
⑨
電気回路学で学ぶ分布定数線路の理論は空間に回路定数が分布するモデルが出発点となる
が、それが Maxwell の方程式から導かれることは前節までで述べた通りである。
波動工学-6.doc 09/04/13 92
I を消去する。 ∂⑧ / ∂z より、
d 2V
dI
= − jωL = − jωL(− jωCV ) = −ω 2 LCV
2
dz
dz
d 2V
+ ω 2 LCV = 0
2
dz
V = V1e − jβz + V2e + jβz
( β = ω LC )
これを⑧に代入して、
(
1 dV
1
=
− jβ V1e − jβz + jβV2e + jβz
− jωL dz − jωL
V
V
= 1 e − jβ z − 2 e + jβ z
L
L
C
C
V
V
= 1 e − jβ z − 2 e + jβ z
Z
Z
I=
)
L
[ Ω ]: 特性インピーダンス(characteristic impedance)
C
βz = 2π となる z が波長 λ に相当するので、
Z=
λ=
2π
β
[m]: 波長(wavelength)
このように、分布定数線路の性質を ( L, C ) のパラメータでなく、 ( Z , β ) の組で表現するこ
とも可能である。前者は一次定数と言われ、回路的な考えを用いて設計するのに有用であ
る。後者は二次定数と言われ、波動的な性質を直感的に理解するのに有用である。
反射係数と定在波
V = V1e − jβz + V2e + jβz
= V1e − jβz + RLV1e + jβz
= V1e − jβz (1 + RL e + j 2 βz )
波動工学-6.doc 09/04/13 93
I=
V1 − jβz V2 + jβz
e
− e
Z0
Z0
=
V1 − jβz RLV1 + jβz
e
−
e
Z0
Z0
=
V1 − jβz
e (1 − RL e + j 2 βz )
Z0
z = z における反射係数 R = RL e + j 2 βz
V = V1e − jβz (1 + R)
V
I = 1 e − jβz (1 − R)
Z0
Z ( z) = Z0
1+ R
1 + RL e + j 2 βz
= Z0
1− R
1 − RL e + j 2 βz
電圧定在波比: VSWR =
Vmax 1 + R I max
=
≡ρ
=
Vmin 1 − R I min
λ
2
=
π
β
V1 (1 + R )
V1
I1 (1 + R )
I1 (1 − R )
V1 (1 − R )
I1
z
0
波動工学-6.doc 09/04/13 94
負荷が接続された線路
Z
I
Z0 , β
これらは集中定数
線路(長さ 0)
V
ZL
z=0
V = V1e − jβz + V2e + jβz
V
V
I = 1 e − jβ z − 2 e + jβ z
Z0
Z0
z = 0 における条件より、
V
I
=
z =0
V1 + V2
= ZL
V1 V2
−
Z0 Z0
V2
V1 Z L
=
= z L : 規格化インピーダンス
V2 Z 0
1−
V1
1+
V2
≡ R (反射係数, 負荷接続点 z = 0 での反射係数)
V1
1+ R
= zL
1− R
z −1
R= L
zL + 1
V = V1 (e − jβz + R e + jβz ) = V1e − jβz (1 + R e j 2 βz )
V
V
I = 1 e − jβ z − R e + jβ z = 1 e − jβ z 1 − R e j 2 β z
Z0
Z0
(
)
(
)
z
波動工学-6.doc 09/04/13 95
1 + R e j 2 βz
Z ( z) = Z0
1 − R e j 2 βz
Z 1 + R e j 2 βz
z( z) =
=
Z 0 1 − R e j 2 βz
1/4 波長線路
λ 1 + R e j 2 β ( z − λ / 4 ) 1 − R e j 2 βz
1
=
z(z − ) =
=
j 2 β ( z − λ / 4)
j 2 βz
4 1− Re
1+ Re
z( z)
→ある位置から λ / 4 離れた位置の規格化インピーダンスは逆数となる。例えば、Z L が
容量性のときは λ / 4 離れた位置では誘導性となり、 Z L が誘導性のときは λ / 4 離れた
位置では容量性となる。このように、分布定数線路では長さのある線路を繋いだだけ
で回路の性質が大きく変わってしまうが、逆にこれを応用して回路を構成する。
半波長線路
1 + R e j 2 β ( z − λ / 2 ) 1 + R e j 2 βz
z(z − ) =
= z( z)
=
2 1 − R e j 2 β ( z − λ / 2 ) 1 − R e j 2 βz
λ
→ある位置から λ / 2 離れた位置の規格化インピーダンスは同じになる。
定在波のグラフィック
電圧・電流の時間波形はそれぞれ v(t , z ) = Re[V e
jω t
] , i (t , z ) = Re[ I e jωt ] で計算できる。
電圧・電流の包絡線はそれぞれ V , I で計算できる。
波動工学-6.doc 09/04/13 96
(1) 無反射(進行波)
zL = 1, R = 0 , ρ = 1
n
( t = n(T / 8) )
0
1
2
3
4
5
6
7
電圧定在波
λ
電流定在波
波動工学-6.doc 09/04/13 97
(2) 短絡(short)
z L = 0 , R = −1 , ρ = ∞
n
( t = n(T / 8) )
0
1
2
3
4
5
6
7
電圧定在波
λ
電流定在波
波動工学-6.doc 09/04/13 98
(3) 開放(open)
zL = ∞ , R = 1 , ρ = ∞
n
( t = n(T / 8) )
0
1
2
3
4
5
6
7
電圧定在波
λ
電流定在波
波動工学-6.doc 09/04/13 99
(4) 負荷
zL = 2 , R = 1/ 3 , ρ = 2
n
( t = n(T / 8) )
電圧定在波
λ
0
1
2
3
4
5
6
7
電流定在波
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