通期決算ブリッジレポート

ブリッジレポート(8848) 2013 年 5 月 18 日
Bridge Report
レオパレス21(8848)
会社名
証券コード
市場
業種
社長
所在地
事業内容
深山 英世社長
http://www.bridge-salon.jp/
決算月
HP
株式会社レオパレス21
8848
東証 1 部
不動産業
深山 英世
東京都中野区本町 2-54-11
アパートの建築請負と賃貸を中心に、住まいに関するサービスをワンストップ
で提供。全国に約 55 万室のアパートを管理。
3月
http://www.leopalace21.co.jp
- 株式情報 -
株価
発行済株式数(自己株式を控除)
534 円
DPS(予)
211,543,595 株
配当利回り(予)
0.00 円
-%
EPS(予)
52.00 円
時価総額
112,964 百万円
PER(予)
10.3 倍
ROE(実)
売買単位
29.0%
BPS(実)
100 株
PBR(実)
274.80 円
1.9 倍
*株価は 5/17 終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。ROE、BPS は前期末実績。
- 連結業績推移 -
決算期
(単位:百万円、円)
売上高
営業利益
経常利益
当期利益
EPS
DPS
2010 年 3 月(実)
620,376
-29,727
-33,831
-79,075
-521.91
0.00
2011 年 3 月(実)
484,390
-23,607
-31,808
-40,889
-261.03
0.00
2012 年 3 月(実)
459,436
4,585
2,349
1,588
9.40
0.00
2013 年 3 月(実)
454,222
7,413
11,091
13,335
74.50
0.00
2014 年 3 月(予)
467,400
14,100
12,200
11,000
52.00
0.00
*予想は会社予想。
株式会社レオパレス21の 2013 年 3 月期決算概要について、ブリッジレポートにてご報告致します。
1. 会社概要
2. 特長と強み
3. 2013 年 3 月期決算概要
4. 2014 年 3 月期業績見通し
5.今後の注目点
1
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今回のポイント
・13/3 期は、売上高は建築請負事業の減収などで、前期比マイナス。賃貸事業の収支改善、販管費の低
減などで営業利益は計画比ではマイナスだったが、前期比では大幅な増益だった。円安の進行による為
替差益、法人税等調整額等の影響もあり、経常利益、当期純利益は計画比、前期比とも大幅増だった。
・新中期経営計画「Creating Future」の 2 年目である 14/3 期は、前期において構築した成長に向けた土台
の上で、新たな成長ステージを具現化する年と位置付けている。小幅増収ながらも、賃貸事業の収支改善
が続き、大幅増益を見込む。前期に発生した為替差益、法人税等調整額を見込んでいないため、純利益
は前期比マイナスを予想。
・2 期連続の黒字化を達成、空室損失引当金に依存しない営業黒字の通期達成は、大きな進捗と評価でき
る。ただ、住宅着工も回復傾向がみられるものの、少子高齢化・人口減少という今後の厳しい環境に現時
点で変化がある訳ではない。全国 55 万戸というストックを活かした太陽光発電事業、蓄積されたノウハウ
を輸出する海外事業に続く新たな取り組にも注目したい。
1.会社概要
保有地の有効活用を望む土地オーナーに対し、賃貸アパート等の建築と建築後の管理・運営を代行する「一括借上
げ」を業界で初めて導入。売上はアパート入居者からの受取家賃とアパート等の建築請負が中心。全国 3 大都市圏
(東京圏、名古屋圏、大阪圏)を中心に、2013 年 3 月末時点で 546,204 戸を管理。
2012 年 11 月には賃貸事業の海外(韓国)進出を決定。太陽光発電関連事業にも注力。
【ビジネスモデル】
保有地の有効な活用方法を求める土地オーナーに対し、賃貸アパート等の建築および建築後の一括借上げを提案
する。
一括借上げとは、賃貸住宅の建築から管理運営まで、オーナーのアパート経営を総合的に支援するシステムで、具
体的には入居者募集、オーナーに対する賃料支払いや管理・修繕など、本来オーナーが行うべき業務を同社がアウ
トソーサーとして代行してオーナーの負担を軽減し、かつ安定収入の確保に貢献するもの。
同社とオーナーとの契約期間は最長 30 年で、空室の有無に限らず一定期間は固定家賃をオーナーに払うもの。当
初の固定家賃期間終了後は、原則として 2 年毎に周辺の家賃相場実勢をベースに契約を更改していく。
「賃貸事業」における同社の売上は、入居者からの家賃収入となり、オーナーへの支払家賃が売上原価となる。
アパートの「建築請負事業」も主要収益源。
(同社資料より)
2
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固定家賃期間に想定以上の空室が発生した場合、「逆ザヤ」が発生することとなる。
空室発生の抑制(入居率の向上)と適正家賃の獲得が同社の収益向上のための最重要ポイントとなっている。
「新規オーナーの開拓による賃貸アパート建設の供給増加と、入居者の安定的な獲得による家賃収入増大」が同ビ
ジネスモデルにおける収益拡大ストーリーであったが、2008 年のリーマンショックを受けた企業収益の急速な悪化か
ら各企業における人員削減が増加。同社においては法人契約物件を中心に退去が増加したため「逆ザヤ」となり、
賃貸事業の収益が悪化した。また金融機関のローン審査が厳格化したことでアパートの新規供給も急減し、建築請
負事業も大きな影響を受け、収益は低迷した。
こうした状況を受け、一括借上げの基本的な枠組みは維持しつつも、
「請負事業の縮小:高い入居率が見込めるエリアに絞り込んで新規供給」
「賃貸事業の収益改善:賃貸原価の削減、適正家賃の実現」
「一括借上げを行わない施設の建築請負」
「入居者満足度向上のための物件価値向上」
といった施策を取り込み、安定収益獲得のためのストックビジネスへの転換を進めている。
【市場環境】
日本のこれからの人口動態は、同社を取り巻く事業環境に以下の 2 つの面から影響を与えることになるものと考えら
れる。
① 世帯数動向
国立社会保障・人口問題研究所の推計(2013 年 1 月)によれば、2010 年に 5,184 万世帯だった日本の一般世帯総数
は 2019 年に 5,307 万世帯でピークに達し、その後 2035 年には 4,956 万世帯まで減少するが、単独世帯に限れば
2010 年 1,679 万世帯から増加が続き、2035 年には 1,846 万世帯に達し、総世帯に占める割合は 2010 年の 32.4%か
ら、2035 年には 37.2%に上昇する。
<日本の世帯数の将来推計>
*2013 年 1 月推計:国立社会保障・人口問題研究所資料より
*2010 年以降は推計。単独世帯比率は右軸。
② 住宅着工戸数
一方、住宅着工戸数は減少傾向がより明白になっている。
着工戸数のピークは総数で 1990 年の 170 万戸、貸家で 1987 年の 85 万戸だったが、2011 年にはそれぞれ 83 万戸、
28 万戸へと急減している。消費税率上昇前の駆け込み需要から 2013 年度は総数 90 万戸台に回復すると見られて
いるが、中長期的には今後も減少傾向が続くと一般的には予想されている。
3
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単独世帯数の増加は、従来からワンルームを中心に事業展開してきた同社にとってはビジネスチャンスの広がりと
も考えられる。
従来の若年層中心から、高齢者まで対象を広げて、いかにしてニーズを取込んでいけるかがカギとなるだろう。
しかし、新規住宅着工の減少など同社を取り巻く事業環境は現時点では決して楽観できるものではなく、同社ではこ
の現実をしっかりと認識したうえで後述する「新中期経営計画」を策定した。この中計によって土台構築を進めながら
次の成長戦略を策定する考えだ。
【同業他社】
「賃貸住宅の一括借上げ」というビジネスモデルの観点からは以下の各社が比較対象となる。
企業名
市場
(1766)東建コーポレーション
東証 1
79,899
236,824
7,654
4,848
43,931
16.5
1.8
(1878)大東建託
東証 1
798,848
1,251,000
88,000
55,000
186,592
14.5
4.3
JQ
11,275
27,907
1,027
637
1,891
17.7
6.0
東証 1
112,964
467,400
14,100
11,000
58,151
10.3
1.9
(3276)日本管理センター
(8848)同社
時価総額
売上高
営業利益
純利益
純資産
PER
PBR
*業績は今期予想。純資産は前期末。単位:百万円。PER および PBR は倍。時価総額は 2013 年 5 月 17 日終値ベース。
黒字定着、新株予約権の行使に伴う純資産の増加などを投資家が評価し、時価総額は前回レポート作成時からは
大きく増加し、東建コーポレーションを逆転した。ただ、PER ではまだ同業他社と比べても、市場平均(東証 1 部 約
18~19 倍)と比べても下回っており、株価評価をもう一段高めるには、安定した収益性の継続等が必要と思われる。
【事業内容】
「賃貸事業」、「建築請負事業」、「ホテル・リゾート事業」、「シルバー・その他事業」の 4 事業から構成されている。
中心事業は「賃貸事業」、「建築請負事業」で両事業による売上構成比は約 96%にのぼる。
<賃貸事業>
売上高 383,574 百万円、セグメント利益 8,687 百万円
(2013 年 3 月期実績。)
同社の主力事業。建築請負したアパート等の一括借上げによる賃貸物件の賃貸及び管理等を行っている。
賃貸サービスの契約形態には、利用料月払いで初期費用の負担を軽減した「賃貸契約」と、利用料は一括前払いで
全室家具・家電付き、水道・光熱費不要の「マンスリー契約」の 2 種類がある。
同社の売上は入居者からの受取家賃。オーナーへの支払家賃が売上原価となる。
<建築請負事業>
売上高 53,369 百万円、セグメント利益 2,747 百万円
(2013 年 3 月期実績。)
アパートなどの建築請負を行っている。近年は、同社が一括借上して賃貸及び管理を行う賃貸物件に加え、商業施
設や介護施設など同社が一括借上げしないアパート以外の請負にも前期から取組んでいる。
また、太陽光発電システムの販売にも力を入れ、2013 年 2 月からは「屋根借り太陽光発電事業」も開始した。
<ホテル・リゾート関連事業>
売上高 6,657 百万円、セグメント利益 -1,005 百万円
(2013 年 3 月期実績。)
海外子会社レオパレスグアムコーポレーションを通じてグアム島でゴルフ場や野球場などのスポーツ施設やホテル、
コンドミニアムなどのリゾート施設を運営している。
また、国内では全国 8 か所でホテルを運営している。
同事業は、賃貸事業、建築請負事業という同社の主力事業の拡大をサポートするという側面も有している。
例えば土地のオーナーへ提案営業を行う際、ホテルを運営しているという認知度や信頼度から商談がスムーズに進
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むケースも多いということだ。
損益計算上の利益はマイナスとなっているが、営業 CF はプラスを維持しており減損処理のリスクは現時点では小さ
い。
<シルバー事業その他>
売上高 10,620 百万円、セグメント利益 -706 百万円
(2013 年 3 月期実績。)
「あずみ苑」の名称で、関東 1 都 6 県で 58 棟の「有料老人ホーム」、「デイサービス」、「ショートステイ」、「グループホ
ーム」の運営、訪問介護・居宅介護支援など、地域社会に根差した介護事業を行っている。
また、子会社を通じて賃貸入居者向けに家財の少額短期保険を提供している。
介護施設については、マーケットが拡大する中で確実に需要を取り込むためにも、新規施設の展開を検討します。
2.特長と強み
「3 大都市圏への集中」
全国 546,204 戸の管理戸数(2013 年 3 月末)の内、東京圏 36%、名古屋圏 16%、大阪圏 14%と合計で約 70%が 3
大都市圏に集中。
この 3 大都市圏は人口流入が続いており、人口が集中するエリアに管理物件を集中させることで高い入居率を維持
している。
「高い商品開発力」
「ロフト付き」「一括借上げ」「マンスリー」「ブロードバンド装備」「家具・家電付き」という仕組みを業界で初めて導入し
たことに現れているように、同社は時代のニーズに対応した新しい商品や仕組みを開発することに力を入れている。
家具・家電付き、自分好みの部屋にすることができるマイコレプラン、コンフォートプランといったお部屋カスタマイズ、
セキュリティなど、入居者の目線に立ったサービスやシステムの導入を入居率向上に結び付けている。
お部屋カスタマイズ
(同社資料より)
「ワンルームの優れた商品性」
同じ面積の土地にファミリータイプの住宅を 1 軒たてるよりも、入居率を一定程度に保つことができればワンルーム
の方が通常は家賃総収入は多くなるため、土地オーナーの収益性は高くなる。
また、同社の管理物件が集中する都会には狭小地が多い。ファミリータイプでは建設自体難しい場合でも、ワンルー
ムであれば柔軟な設計が可能であり、土地オーナーに有効なソリューションを提供することができる。
「全国規模での事業展開」
2013 年 3 月末現在で全国に直営 174 店、FC192 店の合計 366 の店舗を有している。このどこの店舗からでも全国ど
この物件も契約することができるため、大学入学、入社や転勤などの際の利便性の高さを入居者に提供することが
できる。
また全国規模で遊休地や土地オーナーの属性など豊富な土地情報を保有しており、この情報をベースに様々な提
案を行うことができるのも同社の大きな特長となっている。
5
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3.2013 年 3 月期決算概要
(1)連結業績
(単位:百万円)
12/3 期
売上高
13/3 期 計画
13/3 期 実績
計画比
前期比
459,436
463,900
454,222
-2.1%
-1.1%
売上総利益
55,864
60,900
57,713
-5.2%
+3.3%
販売管理費
51,278
52,900
50,299
-4.9%
-1.9%
営業利益
4,585
8,000
7,413
-7.3%
+61.7%
経常利益
2,349
6,100
11,091
+81.8%
+372.1%
当期純利益
1,588
5,500
13,335
+142.5%
+739.2%
減収も入居率向上などで収益性が改善。円安効果などもあり、大幅な増益を達成。
売上高は建築請負事業の減収などで、前期比マイナス。計画比でも未達だったが、賃貸事業の収支改善、販管費の
低減などで営業利益は前期比では大幅な増益だった。円安の進行による為替差益 55 億円、法人税等調整額 -46
億円等で、経常利益、当期純利益は計画比、前期比とも大幅なプラスだった。
(2)セグメント別動向
(単位:百万円)
売上高
12/3 期
賃貸事業
セグメント利益
13/3 期
増減率
12/3 期
13/3 期
増減率
380,307
383,574
+0.9%
5,248
8,687
+65.5%
62,913
53,369
-15.2%
4,309
2,747
-36.2%
ホテルリゾート事業
6,228
6,657
+6.9%
-1,663
-1,005
-
シルバー・その他事業
9,987
10,620
+6.3%
-892
-706
-
-
-
-
-2,415
-2,308
-
459,436
454,222
-1.1%
4,585
7,413
+61.7%
建築請負事業
調整額
損益計算書計上額
<賃貸事業>
 契約形態の切り替え(マンスリーから一般へ)が進んだこと、新規入居募集が計画未達だったことなどから、前
期比増収だったが、計画比では 30 億円のマイナス。
 2013 年 3 月期の平均入居率は計画 83.0%に対し 82.94%とほぼ計画通りだったが、前年 81.16%を 1 ポイント
以上上回った。新年度のスタート 2013 年 4 月は 83.32%で、前年同月を上回り好調なスタートとなっている。2014
年 3 月期の平均入居率目標は 85.0%としている。
 入居率の改善を受け、空室損失引当金は計画 25 億円に対し、52 億円の戻入となったが、当期営業利益は 86
億円だったので、同社が目標としている「空室損失引当金なしでの営業黒字」を通期で達成した。
 法人営業の強化により、法人契約戸数は 2013 年 3 月末 228,708 戸で前年度末比+4.3%増加した。全契約戸数
に占めるシェアも 49.4%と前年度末比約 2%上昇した。364 名の専門部隊によって「重点取引先の深耕」と「新規
低利用取引先の開拓」をテーマに、業種に偏りのない営業を推進し、社宅コスト改善の提案を行っている。
 外国人契約戸数は 2013 年 3 月期末 9,517 戸で前年度末比 +15.3%と順調に拡大し、東日本大震災前の水準
まで回復した。中国 4 支店、韓国 3 支店、台湾 1 支店の合計 8 つの海外支店に加え、LAM(Leopalace Alliance
Members)スクールによって、外国人留学生が現地でインターネットを通じた契約可能なシステムを構築し、利便
性を高めたことに加え、円安も追い風となった。
 2013 年 3 月期末の賃貸店舗は前期比 +17 店舗の 374 店舗。内、直営が 182 店舗(国内 174 店舗、海外 8 店
舗)。400 店舗体制構築を目指している。
 部屋を入居者が自分好みに変えられる「お部屋カスタマイズ」を当期初より開始したが、TV を始めとした各メデ
ィアで取り上げられたこともあり、2013 年 3 月末の累計契約数は 5,714 件と急増。利用者の 50%は女性であり、
新しい顧客層の開拓に繋がった。
 物件価値向上施策としてセキュリティシステム設置済アパートの拡大に力を入れているが、2013 年 3 月末で設
置戸数は 136,107 戸、累計売上高 208 億円となった。設置率は 24.9%。計画を上回るペースとなっている。2015
6
ブリッジレポート(8848) 2013 年 5 月 18 日
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年 3 月末 19 万戸、設置率 35%を目標としている。女性単身者および大手企業の寮・社宅ニーズが強い。
<建築請負事業>
 2 ケタの減収・減益となった。引き続き受注エリアを絞り込み、供給抑制を行っているが、担当営業員数が約 250
名までに減少したことから、アパート受注が計画通り進まなかった。現時点では組織強化を図り、営業員は 420
名まで回復している。足下 2013 年 4 月の受注高は 78 億円と、前年同月の 45 億円を大きく上回っている。前第
4 四半期(2013 年 1-3 月)から、増大傾向に入っており、この勢いを継続していきたいと考えている。
 三大都市圏を中心に、高い入居率が見込めるエリアに支店を配置している。2013 年 4 月末の支店数は、全国
54 支店。
 創業 40 周年を記念した「アニバーサリー・モデル」として、同社の強みであるロフトを活かした木造 2 階建て賃貸
住宅「DUAL-L」を 2012 年 5 月に、女性を意識した大容量収納の造作家具付アパート「Arma-L(アルマーレ)」を
2012 年 12 月より販売を開始した。また、「日本の住まいを新しく、快適に」をテーマに、2013 年 4 月より鉄骨ブレ
ースの賃貸併用住宅「Smaio(スマイオ)」を販売開始した。
 2013 年 4 月以降販売のアパートに標準仕様として、防音配水管と高遮音界壁に加えて、一般的な木造建築より
2 ランク以上遮音性能を向上させた「ノンサウンドフロア」を「ノンサウンドシステム」として採用し、商品の品質
(特に遮音性)の向上に注力している。
 当期から建築請負を開始した高齢者施設・店舗等事業用建物は、高齢者施設で売上 15 棟、16 億円、商業施設
で売上 5 棟、1 億円という実績だった。2014 年 3 月期は高齢者施設 売上 38 棟、38 億円、商業施設 売上 20
棟、6 億円を計画している。
 建築請負事業における物件価値向上施策として太陽光発電システムに注力している。2013 年 3 月末時点での
太陽光パネル設置棟数は累計 5,931 棟で設置率は 27.1%。発電容量は 64 メガワットで、これは、一般家庭約 2
万世帯分の電力に相当する。2013 年 3 月期の受注および売上実績はそれぞれ 176 億円、172 億円と前年を上
回った。
 こうしたオーナー設置の太陽光発電に加え、2012 年 9 月より「屋根貸しモデル」を採用した実証実験として、福
島県内の管理物件 67 棟に一般家庭約 400 世帯分の電力需要に相当する約 1.2 メガワットの仮想メガソーラー
を構築した。同事業のために設立した発電事業子会社「株式会社レオパレス・パワー」がアパートオーナー所有
の同社管理物件の屋根を借りて賃貸料を支払い、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を活用し売電
収入を得る。また、富士通との共同実証により、発電量・日射量・温度などの情報を収集・分析し、培った発電条
件等のノウハウをもとに「屋根貸しモデル」を通じた更なる住宅用太陽光発電の普及促進に努めることを狙いと
している。
 2013 年 2 月から、上記福島での実証実験を全国規模で展開する「屋根借り太陽光発電事業:ルーフメガソーラ
ープロジェクト」をスタートさせた。発電事業主体の SPC(特別目的会社)を設立し、事業パートナーである三菱
UFJ リース(株)が必要設備をリース。オムロンフィールドエンジニアリング(株)が、運用・保守・発電量のモニタリ
ングを行い、レオパレス 21 が設置工事を実施する。SPC はオーナー所有の管理物件の屋根を借り、太陽光発
電システムを設置し、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に基づき発電された電力を電力会社に売電
し、オーナーに毎月一定の屋根賃貸料を支払う。全国で 7,000 棟の設置を目指す。発電容量は 100 メガワットで、
一般家庭約 3 万世帯分の電力需要を賄う計画。売上計上時期は未定だが、事業全体で総額 300 億円規模の売
上を想定している。
<ホテル・リゾート事業>
前期は東日本大震災の影響を受けたが、今期は国内外ともに稼働率、売上・利益は順調に推移した。
<シルバー事業>
ショートステイの稼働率が前期を若干下回ったが、その他のデイサービス、有料老人ホーム等(グループホーム含
む)は好調で、収益は改善傾向。早期黒字化を目指している。
(3)その他新規事業動向
◎韓国合弁会社「ウリレオ PMC」の設立。
2012 年 11 月 1 日、韓国トップの住宅管理業者「ウリ管理株式会社」と韓国で合弁会社「ウリレオ PMC」を設立し、韓
国において共同で賃貸事業を展開することを発表した。賃貸契約形態の移行に伴って今後成長が予想される韓国
7
ブリッジレポート(8848) 2013 年 5 月 18 日
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賃貸市場にいち早く進出するもので、韓国ではまだ例のない企業による体系化された賃貸サービスを提供する。
現在市場調査中で、今下期より本格的に始動する。
◎韓国・台湾で賃貸仲介事業を開始
韓国・台湾で、日本人および日系企業向けの現地不動産仲介事業を開始した。日系企業から多くの問い合わせを受
け事業化したもので、2012 年 11 月に韓国の1支店、2013 年 3 月に台湾の1支店でサービスをスタートした。
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー
◎財政状態
12 年 3 月末
(単位:百万円)
13 年 3 月末
12 年 3 月末
現預金
41,477
56,681
売掛金
4,541
4,360
完成工事未収入金
買掛金
13 年 3 月末
2,791
2,670
工事未払金
13,313
14,307
1,004
2,231
短期有利子負債
46,265
15,374
18,997
12,772
未払金
14,208
13,252
流動資産合計
83,061
90,896
前受金
58,301
49,036
建物・構築物
55,116
54,740
145,524
105,144
土地
82,105
80,780
長期有利子負債
2,040
31,500
2,906
1,798
退職給付引当金
8,041
8,634
投資有価証券
6,489
7,176
空室損失引当金
19,207
13,950
長期前払費用
18,295
8,127
長期預り敷金保証金
9,853
8,984
固定資産合計
181,659
170,705
長期前受金
42,680
32,357
資産合計
264,783
261,649
固定負債合計
前払費用
リース資産
流動負債合計
負債合計
純資産合計
負債純資産合計
10 年 3 月末
11 年 3 月末
12 年 3 月末
85,427
98,353
230,951
203,498
33,831
58,151
264,783
261,649
13 年 3 月末
自己資本
70,890
33,025
33,804
58,133
自己資本比率
17.9%
11.1%
12.8%
22.2%
有利子負債残高
56,481
39,888
48,305
46,874
現預金
72,431
40,674
41,477
56,681
NDE レシオ
-0.23
-0.02
0.20
-0.17
*有利子負債はリース債務含まない。*NDE レシオ=(有利子負債―現預金)/自己資本
第三者割当による第 1 回~第 3 回の新株予約権全ての行使が完了し、資本金および資本剰余金が合計で 126 億円
増加した事、当期純利益の計上で利益剰余金が 133 億円増加した事などにより、純資産が 243 億円増加。
負債面では、空室損失引当金は収益改善と残存期間経過により 52 億円の戻入(減少)となった。有利子負債を 14
億円削減したことなどで負債合計は 274 億円減少。この結果、自己資本比率は約 10%上昇し、NDE レシオも大幅に
改善した。
◎キャッシュ・フロー
(単位:百万円)
12/3 期
13/3 期
増減額
営業キャッシュ・フロー
-3,174
6,069
+9,243
投資キャッシュ・フロー
-3,537
-6
+3,531
フリー・キャッシュ・フロー
-6,711
6,063
+13,314
財務キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物期末残高
7,245
9,148
+1,903
40,877
56,381
+15,504
業績向上で営業 CF、フリーCF は大きく改善し、4 期ぶりに黒字化を達成した。資本増強、借入返済で財務 CF も黒字
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ブリッジレポート(8848) 2013 年 5 月 18 日
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幅が拡大した。
4.2014 年 3 月期業績見通し
(1)連結業績
(単位:百万円)
13/3 期 実績
売上高
構成比
14/3 期 予想
構成比
前期比
454,222
100.0%
467,400
100.0%
+2.9%
売上総利益
57,713
12.7%
69,000
14.8%
+19.6%
販管費
50,299
11.1%
54,900
11.7%
+9.1%
営業利益
7,413
1.6%
14,100
3.0%
+90.2%
経常利益
11,091
2.4%
12,200
2.6%
+10.0%
当期純利益
13,335
2.9%
11,000
2.4%
-17.5%
小幅増収ながらも、賃貸事業の収支改善が続き、大幅増益を見込む。
売上高は賃貸、建築請負とも今期も継続的な拡大を目指している。売上増と粗利率改善により、営業利益、経常利
益は増益を計画しているが、2013 年 3 月に発生した為替差益 +55 億円、法人税等調整額 -46 億円を見込んでい
ないため、純利益はマイナスを予想。
新中期経営計画「Creating Future」の 2 年目である今期は、前期において構築した成長に向けた土台の上で、新た
な成長ステージを具現化する年と位置付けている。
(2)セグメント別動向
(単位:百万円)
売上高
13/3 期
賃貸事業
建築請負事業
ホテルリゾート事業
シルバー・その他事業
調整額
損益計算書計上額
セグメント利益
14/3 期(予)
増減率
13/3 期
383,574
389,000
+1.4%
53,369
61,100
6,657
6,700
10,620
10,500
14/3 期(予)
増減率
8,687
15,000
+72.7%
+14.5%
2,747
3,500
+27.4%
+0.6%
-1,005
-700
-
-1.1%
-706
-600
-
-
-
-
-2,308
-3,000
-
454,222
467,400
+2.9%
7,413
14,100
+90.2%
<賃貸事業>
平均入居率目標は前期比約 2%上昇の 85%。空室損失引当金は、これまでと同様、期間経過分の 25 億円戻入の
み計画。販管費の増加を計画しているが、売上増、収益性改善でカバーし、大幅な増益を予想している。
<建築請負事業>
配置転換や新入社員の配属など営業体制の強化は既に完了しており、引き続き高入居が見込めるエリアに絞って
アパートの受注に力を入れる。また、介護施設・商業施設の受注、太陽光発電システムの拡大にも注力する。
その他、ホテル・リゾート事業、シルバー事業等は原価低減による赤字幅圧縮に努力する。
5.今後の注目点
リーマンショックによる事業環境の急激な変化に苦しんだ同社だったが、建築請負物件の絞り込み、物件価値向上
による高入居率の実現という事業戦略の転換が功を奏し、2 期連続の黒字化を達成することができた。空室損失引
当金に依存しない営業黒字を通期で達成できたことも、大きな進捗と評価できるだろう。
今期も引き続き収益性の改善が見込まれるようだが、アベノミクス効果による景気回復が期待され、住宅着工も回復
傾向がみられるものの、少子高齢化・人口減少という今後の厳しい環境に現時点で変化がある訳ではない。
全国 55 万戸というストックを活かした太陽光発電事業、蓄積されたノウハウを輸出する海外事業に続く新たな取り組
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ブリッジレポート(8848) 2013 年 5 月 18 日
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にも注目したい。
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