2課の解説・補足PDF

2.6.2012
Lektion 2 定冠詞 (bestimmte Artikel)・不定冠詞(unbestimmte Artikel)
1 名詞の性と定冠詞
ドイツ語の名詞は、人名、地名、言語名ではない普通の名詞でも、常に(文頭以外でも)大文字で書き始めます。
Ich bin Student.
Er trinkt Kaffee.
ドイツ語の名詞は、男性名詞、女性名詞、中性名詞の三つのグループに分けられます。
名詞の性に応じて冠詞の形が変わります。例えば
「大学生」を表す Student は男性名詞ですから、der Student
女性形は-in を付けて Studentin で、これは女性名詞なので、die Studentin
生物学上の性別があるような場合は、大体実際の性に従います。性別が考えられないような名詞でも、男性、女
性、中性のどれかに属しています。
父親
der Vater
母親
die Mutter
子供 das Kind
中性名詞には das がつきますが、これらは実際の性に従っていると思われる例です。
机
der Tisch
ドア die Tür
窓 das Fenster
「机」が男性名詞で、「ドア」が女性名詞、
「窓」が中性名詞であることに、何らかの理屈があるわけではありま
せん。また「喜び」は女性名詞 die Freude で、
「苦悩」は das Leid 中性名詞と、形のない感情や状態を表す名詞に
も性があります。これは「文法的に決まっているのだ」と考えた方が良いでしょう。逆に定冠詞の形が違うことを
利点と考えて、名詞を覚える時には、必ず定冠詞を付けて発音し、書いてみると、自然にこの区別が学習できます。
「女の子、少女」を表す Mädchen は中性名詞で、das Mädchen
-chen と か -lein が つ く と 、 「 小 さ な 、 か わ い い ~ 」 を 表 す 名 詞 で 、 必 ず 中 性 と な り ま す 。 特 定 の 語 尾 で 性 が 決 ま る も の は か な り あ り 、 上 記 の
Student---Studentin も、職業、身分、国籍などを表す名詞で、男性形に-in の女性語尾を付けて女性形を作ると女性名詞と決まっています。
また、-heit, -keit, -schaft, -ung などの語尾がついている名詞は女性名詞です die Freiheit「自由」、die Gesellschaft「社会」、die Umgebung「周辺」
2 名詞の「格」と定冠詞の変化
文の中で、名詞を使うと、名詞は文の中での意味に応じた役割を持ちます。これを「格 Kasus」と言います。
日本語では、名詞の後ろに「は、が、の、に、を、から、で、まで…」などの格助詞をつけて、その名詞の文中
での役割を表示しますが、ドイツ語では主として名詞の前にある冠詞類が語尾変化して、格を示します。
1 格「が」
der Vater
die Mutter
das Kind
die Kinder
2 格「の」
des Vaters
der Mutter
des Kindes
der Kinder
3 格「に」
dem Vater
der Mutter
dem Kind
den Kindern
4 格「を」
den Vater
die Mutter
das Kind
die Kinder
ほとんどの男性名詞と中性名詞は、2格で名詞自体も語尾-(e)s を付けて、2格であることを表示します。-s なのか
-es なのか、どちらでも良いのか?についてはいくつかの規則がありますが、まず辞書を引いて確かめてみましょ
う。
では、これらの語尾変化は、どのような機能を持っているのか実験してみましょう。
Der Vater des Vaters schenkt dem Vater den Vater.
「そのお父さんのお父さんは、そのお父さんに、そのお父さんをプレゼントする(?!)
」
*4 つの格が全て使われて、しかも全て定冠詞がついているような文は、実際にはあまりないのですが、定冠詞(の語尾変化)の
機能を学習するために、少し想像力を働かせてみましょう。
日本語では「お父さん」という名詞の後ろに、
「の、は、に、を」などが付いて、その名詞「お父さん」が、文の
中でどんな役目を果たしているのかを表示しています。ドイツ語では冠詞類の語尾の部分が同じ機能を持っている
わけです。
D er Vater d
es Vater s schenkt d
その は お父さん その の
お父さん の 贈る
em Vater d
その に
en Vater .
お父さん その を
お父さん 。
英語では、文の中での役割を表すのは、主として「語順」です(動詞の前にあるから「主語」だ、あるいは直接
目的語は動詞の直後というような語順のことですね)。
「語順」で足りない部分は、前置詞 of, to などで表示します。
その結果、英語は「語順」を変えることがあまりできません。
The father presents the toy to the son. の語順を変えると
The toy presents the father to the son.、意味のわからない文になります。
日本語では語順が比較的自由ですが、これは「は、に、を」などの「格助詞」があるからです。
「そのお父さんは、その玩具を、その息子に贈る」
「その玩具を、お父さんはその息子に贈る」
「その息子に、そのお父さんは、その玩具を贈る」
ドイツ語も冠詞類の語尾変化があるために、語順の変更が比較的自由にできます。ただし、定
定動詞は二番目の位
置と決まっています(平叙文、疑問詞のある疑問文)。このことを「定動詞第二位の原則」といいます(1 課)。
そのお父さんは、その玩具を、その息子に贈る。
Der Vater schenkt dem Sohn das Spielzeug.
その玩具を、お父さんはその息子に贈る。
Das Spielzeug schenkt der Vater dem Sohn.
その息子に、そのお父さんは、その玩具を贈る。
Dem Sohn schenkt der Vater das Spielzeug.
置かれる位置が決まっているものもいくつかあり、例えばドイツ語の2格名詞は、それが修飾する名詞の後ろに置かれます(日本
語と少し異なっていて、英語で of を使った場合と同じ位置にきています)。
その男の娘
die Tochter des Mannes ( the daughter of the man)
3 不定冠詞
定冠詞と不定冠詞の変化の違いは、男性の1格と中性の1・4格で不定冠詞には語尾がない!ことです。
ein△ Vater
eine Mutter
ein△ Kind
eines Vaters
einer Mutter
eines Kindes
einem Vater
einer Mutter
einem Kind
einen Vater
eine Mutter
ein△ Kind
女性の1・4格で、定冠詞の die が eine になる他は、上の表の定冠詞の語尾変化と変わりませんから、覚えるのは
困難ではありません。
むしろ、どのような場合に定冠詞が、どのような場合に不定冠詞が使われるのか?ということの方が簡単ではあり
ません。中学校レベルの英語なら、定冠詞は「その」、不定冠詞は「ひとつの、ある」と訳しておけば済んだのでし
ょうが、本当にそれで良いのでしょうか。
Der Vater schenkt dem Sohn ein Wörterbuch.
「そのお父さんは、その息子に一冊の辞書を贈る」と訳せば、それで良いというのは、教室や試験場の中だけのこ
とで、これではあまり自然な日本語とは思えませんね。日本語では、何を指しているのかを、特に明確にしたい時
に「その」などの指示詞を、そして複数ではないことを明示したい場合に「ひとつの、一冊の」などの数詞をつけ
るので、状況から明らかであれば「お父さんは息子に辞書を贈る」と言ってもよい、あるいはそのように言うのが
普通ですね。逆に、この日本語文のように、なにも指示詞や数詞がついていない時、ドイツ語では定冠詞にすべき
なのか、不定冠詞にすべきかと悩むことになります。「これは辞書です」と言うとき、話している人は、
「辞書」と
言うもののイメージがあって、その中のひとつだ、という意味で発話しているわけで、ドイツ語では
Das ist ein Wörterbuch.
になるわけです。これが「今話していた、その辞書」あるいは「あの有名な辞書」、
「辞書と言ったら、これしかな
いような辞書」などなどだったら:
Das ist das Wörterbuch. になるわけです。
もう一つ例を挙げて説明してみましょう。
例えば教科書の 2 課練習 5 で、つぎのような文がありました。
1. Das ist eine Uhr. Die Uhr ist teuer. これは時計です。 その時計は高価だ。
最初の文では、
「時計と言ってもいろいろあるが、ここにある、これは時計というもののひとつなのだ」と言ってい
るので、不定冠詞がついているわけですね。そこで、話し手と聞き手の間コミュニケーションの場では、決まった、
特定の、ある意味ではほかの数多の時計とは違う唯一の時計になりますから、続く文では定冠詞がついて「その時
計」となるわけです。
また、既出の文で(例えば 1 課練習4の 5. Sie ist Studentin.)ここに冠詞がなくても良いのか悩んだ方もいるよう
ですが、ドイツ語では、国籍、身分、職業などを「誰々は何々です」というように提示する時は、冠詞を付けない
ことになっています。でも状況が違えば、同じような文でも定冠詞や不定冠詞がつくこともあります。例えば、同
僚ととても優秀な学生の話をしていたら、ちょうどそこにその学生がやってきたのなら
Das ist die Studentin.
になるかもしれません。あまりに優秀なので、こちらも「負けそう」になっていたけれど、ある時なぜか、ごく簡
単なことを知らなかったりして、
「ああ、彼女も学生なんだ、私の持っている学生のイメージにあてはまる、学生と
いうものの一人なのだ」と思ったら
Sie ist eine Studentin.
と言うかもしれません。すべては、状況次第なので、そこで、自分は何を言いたいのか、よく考えなければならな
いのです。
不定冠詞、定冠詞などと、英語と同じような名前がついていますが、用法はかなり異なる部分も多いので、注意し
ましょう。