CeraNews 2014年1号 整形外科医療状況の情報誌 特集: 人工関節周囲感染症 www.ceranews.com CeraNews 2 目次 特集: 人工関節周囲感染症 寄稿 3 Andrej Trampuz, MD, and Olivier Borens, MD, PhD インプラント関連感染症: 圧倒的な力を持つ細菌? あるいは回避可能な合併症? 6 Javad Parvizi, MD, PhD, FRCS、Thorsten Gehrke, MD, PhD 両氏へのインタビュー 人工関節周囲感染症国際コンセンサス会議 ― 概要 9 Thorsten Gehrke, MD, PhD, Javad Parvizi, MD, PhD, FRCS 人工関節周囲感染症:ベアリング表面の影響 11 ベアリングタイプと人工股関節周囲感染症 12 人工股関節におけるテーパー: 外科医は何に注目するべきなのか? 17 セラミック・コンポーネント破損後の再置換術における ベアリング・カップル選択 20 セラミック・オン・セラミック カップリングにおいて メタルイオン放出は懸念材料となるのか? 22 人工股関節置換術で使用される金属コンポーネントに関連する 病理学的知見の管理におけるベアリング交換 24 臼蓋形成不全(DDH)患者における ハード・オン・ハードベアリング・カップル2,395例のサバイバル分析 28 Heinz Mittelmeier Research Award 30 Javad Parvizi, MD, PhD, FRCS Rihard Trebše, MD, PhD他 教育 Leslie F. Scheuber, Sylvia Usbeck, Florence Petkow 教育 Robert Streicher, PhD他 基礎科学 Alina Beraudi,PhD他 インプラント病理学 Sylvia Usbeck 研究 Kusaba A, MD, PhD他 授賞 新着情報 Cover: Biofilm on Implant Surface (SEM) Source: A. Trampuz, MD, Charité Berlin, Germany You can download PDFs with additional information to the articles in this issue via the QR codes. All articles are online at www.ceranews.com CeraNews 1 / 2014 股関節全置換における最新のセラミック・オン・セラミックベアリング・ カップルの臨床失敗分析 Jan-M. Brandt, PhD 書籍の紹介 最新ニュース 学会・ワークショップ 31 32 32 Published by: Chief Editor: Your contact: CeramTec GmbH Medical Products Division CeramTec-Platz 1–9 D-73207 Plochingen, Germany Phone: +49 7153 611-828 Fax: +49 7153 611-950 [email protected] www.biolox.com Sylvia Usbeck Dieter Burkhardt Vice President Sales and Marketing Phone: +49 7153 611-485 E-mail: [email protected] Concept and editing: Sylvia Usbeck Florence Petkow Leslie F. Scheuber Layout and production: LoopKomm Infomarketing GmbH Phone: +49 7634 55 19 46 E-mail: [email protected] Paul Silberer Vice President Sales Phone: +49 7153 611-522 E-mail: p.silberer@ceramtec 寄稿 3 読者の皆様へ 関節置換術におけるバイオマテリアルの開発と普及により、治療方法は飛躍的な躍 進を遂げました。一方、未解決問題も数多く存在しています。その一例として、高頻 度で発生するインプラント不具合要因の一つ、異物関連感染症があります。 現在のレジストリ・データでは、初回人工股・膝関節置換術における感染率は2%を超 えており、さらに再置換術では有意に高い感染率が示されています。人口構成の変化によ る関節置換術の増加、さらに診断方法の進歩による人工関節周囲感染症の増加が予想され ます。予防手段を追加しても、感染率を低下させることはできません。以上の諸要因によ り、将来一層重症度の高い人工関節周囲感染症に直面せざるを得ないのは明らかであり、 診断・治療面における効率的なコンセプトの開発が急務になっています。 人工関節感染症は、関節形成術の成功を阻む合併症であり、発症患者に対する影響は深 刻で、社会・経済的問題にも発展しえます。感染症の平均発症年齢は71歳です。人工関 節感染症は患者の生活の質を著しく低下させます。発症後の患者は慢性疼痛と可動制限に 苦しみ、通常は二回の追加手術を余儀なくされ、骨や筋肉、軟部組織へのダメージにつな がります。多くの場合は、数週間から数ヶ月に及ぶ再入院ということになります。入院生 活、手術、麻酔、可動制限により、患者は多剤耐性菌に曝され、二次的ないしは致死性合 併症(肺動脈塞栓症、カテーテル関連敗血症、抗生物質による下痢、褥創等)も懸念され ます。ゆえに、あらゆる手段を尽くして感染症のリスクを最小化し、兆候を探知して、す でに発症した患者に対しては効率的な治療に全力をつくす必要があります。 現在のところ、人工関節周囲感染症治療に対し、関連分野の知識をベースに作成され た、標準的な治療アルゴリズムは存在していません。非感染性の合併症との鑑別診断に必 要な臨床症状は明確に定義されておらず、診断・適切な抗生物質選択・観血的治療の基準 については、未だに議論が続いています。エビデンスに基づき一般的なコンセンサスがえ られたガイドラインは確定していません。持続性あるいは再発性感染症の患者は複数回の 手術を避けられないため周囲組織のダメージ(例:拘縮、骨欠損、軟部組織欠損)や関節 固定術、切除関節形成術(ガードルストーン術)あるいは切断術に至ることもあります。 持続性感染症患者の場合には、慢性疼痛による精神的ストレスに曝されることも少なくあ りません。このように感染症への対策は緊急課題になっています。 Javad Parvizi(Rothman Institute, Philadelphia)とThorsten Gehrke(Helios Endo-Klinik, Hamburg)主催によるThe International Consensus Meeting on Peripros- thetic Joint Infection(2013年フィラデルフィアにて開催)において、現時点で得られ た人工関節周囲感染症関連の知識について発表・議論がされたものの、効果的あるいは新 しいコンセプトによる観血的治療、抗生物質治療に関する統一的な見解を得るにはいたり ませんでした。従って、長期的成功率90%以上(即ち、感染症と疼痛からの解放と機能回 復)に導いてくれる明確な治療コンセプトは未だ確立されていません。 細菌・真菌のバイオフィルム形成に関連する諸問題は、今日に至るまで軽視されてきま した。インプラント表面上の微生物が、ここでは重要な役割を演じています。微生物は抗 生物質や人体免疫防御システムを拒絶するバイオフィルムを形成します。バイオフィルム の治療には疫学的、病因学的、診断・治療学的観点から関連各分野の知識を動員すること CeraNews 1/ 2014 4 寄稿(続き) が必要です。治療における長期的成功への唯一の手段は、外科学、微生物学、感染症学、 薬理学の各分野における専門知識を融合させる以外にありません。 細菌性ゆるみの実症例数は正確には把握できていません。細菌性ゆるみは無菌性ゆるみ と誤診されることが多々あるためです。1996年に行われた研究では、無菌性ゆるみと診 断された症例の切除検体のうち76%は培養が陽性でした。我々自身の研究においても、無 菌性ゆるみによる症例の約25%に感染症が存在したことが明らかになっています。 ベアリング・カップルの種類別にみた感染率を調査したretrospective studyにおいて は、調査対象や他のパラメータ(例:手術時間、手術手技、輸血の有無、術中手術室への 人の出入り頻度)によって信頼性に幅がでてしまいます。インプラント表面病原菌の定量 的・質的評価を行うための超音波処理やPCR法といったインプラント上のバイオフィルム に対する感受性テストが実行されないことも多々あります。同じ理由で、ジョイント・レ ジストリをベースにした評価は、細菌感染に対する情報が共に不十分であるため、信頼性 に限界があり結果が正確ではない可能性があります。それゆえ、バイオマテリアルの感染 症抵抗力に関して、有効な結果を出せる新しい科学的アプローチが必要とされます。 インプラント機能の温存はもとより、感染症予防と治療成績の向上を達成するために は、臨床と基礎(材料学)との連携が不可欠になります。この目標に向かっての研究推進 の一助となることを願って、今号のCeraNewsは人工関節周囲感染症を特集しています。 Andrej Trampuz, MD Olivier Borens, MD, PhD 文献 Perdreau-Remington F, Stefanik D, Peters G, Ludwig C, Rütt J, Wenzel R, Pulverer G. A Four-Year Prospective Study on Microbial Ecology of Explanted Prosthetic Hips in 52 Patients with “Aseptic” Prosthetic Joint Loosening. Eur J Clin Microbiol Infect Dis 1996(5):160-165 Portillo ME, Salvadó M, Alier A, Sorli L, Martínez S, Horcajada JP, Puig L. Prosthesis Failure Within 2 Years of Implantation Is Highly Predictive of Infection. Clin Orthop Relat Res 2013,471(11):3672-3678 International multicenter 前向き研究:コラボレーション参加のお誘い European Implant Cohort Study(EICS)は国際的な多施設前向き研究であり、対象 に含まれるのは、ヨーロッパ全土と他大陸の約100か所のセンターでのPJIの5,000名の患 者です。この研究への皆様のご参加を募っています。 研究の目的は、微生物学、外科学、局所的・全身的な抗菌治療、さらには長期の機能・感 染症の結果に関するデータ収集を行って、臨床的成功とQUALITY OF LIFEの改善をもたら す要素を決定することにあります。 当プロジェクトは骨や関節、インプラント感染症の分野における革新的な医学研究、専門 教育、患者ケアを支援しているPRO-IMPLANT Foundation(www.pro-implant-foundation.org)によって資金援助を受けています。PRO-IMPLANT Foundationはベルリン州政 府認可の非営利団体であり、学術・産業界と緊密に連携して、国際的な専門ネットワーク形 成を目指しています。 コラボレーションに興味のある方は、下記アドレスにご連絡ください。 Andrej Trampuz, MD E-mail: [email protected] Olivier Borens, MD, PhD E-mail: [email protected] 5 Andrej Trampuz, MD はドイツ、ベルリンにある Charité-University Medicineの感染症学教授、臨床 コンサルタントであり、ま た、Infectious Diseases Research Laboratoryにおい て所長を務めている。1994 年スロベニアのUniversity of LjubljanaにおいてMDの 学位、さらに1997年に内科 学会より専門医の学位、2001年には感染症学会よ り専門医を取得。2001年から2004年にかけてアメ リカ、ミネソタ州ロチェスターにあるMayo Clinic で博士課程修了後のフェローシップ期間を過ごし、 摘出インプラントの超音波処理法を確立した。その 後、スイスのUniversity Hospital Basleで研究グル ープを創設、2009年には同じくスイスのUniversity Hospital Lausanneに移り、2013年にドイツ、ベル リンのCharité-University MedicineにおいてInterdisciplinary Septic Unitの責任者に任命された。 氏の研究は、インプラント関連感染症における診 断・治療の新手法の開発・検証であり、動物モデ ル、抗菌剤耐性の出現、新たな診断法開発等も範疇 に入る。氏は、ヨーロッパと他大陸に存在する100 を超す病院・研究所から感染した人工関節を摘出・ 研究するEuropean Implant Cohort Study(EICS) の創設者の一人でもある。さらに、インプラント関 連感染症を含む臨床トライアルの主席研究者も務め ている。著作は、バイオフィルム、インプラント感 染症、微量熱量測定(マイクロカロリメトリ)、超音 波処理法、迅速な微生物学的診断に関する査読あり 論文96編、成書のチャプター6編に及ぶ。 スイスのLausanne大学病院Interdisciplinary Septic Surgery Unitの責任者であるOlivier Borens, MD,PhDと共に、氏はベルリンで人工関節周囲感染 症についての学術的ワークショップを運営。(www. pro-implant-foundation.org)。Charité病院で は、European Society for Clinical Microbiology and Infectious Diseases(ESCMID, www.escmid.org)のCollaborative Centerとして骨関節感 染症の臨床オブザーバー制度を設置している。 連絡先: Andrej Trampuz, MD Charité–University Medicine Berlin Center for Musculoskeletal Surgery Head of the Septic Surgery Unit Mittelallee 4 D-13353 Berlin Germany Phone: +49 30 450 515 073 Fax: +49 30 450 515 905 E-mail: [email protected] Olivier Borens, MD, PhDは、スイ ス、Lausanne大学 病院のDepartment of Septic Surgery の部長、さらには、 De p artme nt f or the Musculoskeletal Systemの中の Orthopaedic-Trauma Unitの責任者 である。University of Baselにて医学を修 め、LiestalとLausanneの病院では整形外 科と外傷外科を専攻、ニューヨークのHospital for Special Surgeryでの1年間のフェ ローシップの後は、寛骨臼・骨盤の外傷学 と筋骨格系感染症、特に関節置換後の症例 を重点的に研究。 自身の部局を、European Society for Clinical Microbiology and Infectious Diseases(ESCMID)の整形外科感染症リ ファレンス・センターとし、ヨーロッパ、 北米、南米さらにはオーストラリアからの 関係者を受け入れている。また、Olivier Borens氏は積極的に学術分野の活動に携わ り、国内外の学会から定期的に招待を受け て研究成果を発表している。おもな研究課 題は、人工関節周囲感染症の予防・診断・ 治療、バイオフィルム、局所的抗生物質、 外傷学における最小侵襲手術である。 氏はEuropean Trauma Society(ETS), Swiss AO Trauma Committeeの会員で あり、さらにEuropean Bone and Joint Infection Societyの理事でもある。学部学 生の教育や大学ならびに大学院生の医師ト レーニングにも積極的に協力。これまでの 著作出版物は、60を超えるジャーナルの記 事をはじめとして成書のチャプター、abstractなど多数にわたる。 連絡先: Olivier Borens, MD, PhD Service d'orthopédie et de traumatologie CHUV Avenue Pierre Decker 4 CH-1011 Lausanne Switzerland Phone: +41 21 314 27 52 Fax: +41 21 314 27 55 E-mail: [email protected] CeraNews 1/ 2014 6 特集:人工関節周囲感染症 インプラント関連感染症: 圧倒的な力を持つ細菌? あるいは回避可能な合併症? Javad Parvizi, MD, PhD, FRCS、Thorsten Gehrke, MD, PhD 両氏へのインタビュー インプラント手術件数増加に伴い、合併症発症件数が増加 するのは自然の成り行きである。インプラント関連感染症 は、関節全置換術後に起こる合併症の中で、対処が最も困難 な症状の一つと認識されている。感染症は、対応を間違えば 重大な結果になりかねない存在として、外科医と患者の前に 立ちはだかる。整形外科の世界で恐れられる所以である。π 初回インプラント術後5年以内に再置換術を要する原因の トップが、インプラント関連感染症だとする研究結果もみら れる。関節置換術における術前・術中・術後のケアは進歩を 遂げているにも拘わらず、有意の感染率低下は、過去20年 間、確認されていない。関節全置換術における品質改善が感 染症低下に有効であったとは、到底言えない。 感染症の最前線に構える最大の敵は、抗生物質に対し、驚 異的な増強をとげた細菌耐性である。我々が対峙しているの は多剤耐性菌であり、既知のものでは、メチシリン耐性黄色 ブドウ球菌や表在性ブドウ球菌、さらに現在台頭しつつある のが、対処困難度・脅威度の増した3MRGNと4MRGN菌 である。これらはグラム陰性桿状菌として知られた多剤耐性 菌であり、3-4個の既知の抗生物質グループに耐性を有し ているため、医学界としては実質的に防御の術が無いという 現状である。 このような症例に対する唯一の策は、全身的な感染症予防 か十分な治療である。この十分な治療とは、人工関節周囲感 染症の場合、感染部位の軟部組織と骨の徹底的なデブリード マンを含んでいる。すなわち、周囲組織にとっては壊滅的な 結果となる可能性もある。 この問題についての理解度を深めるために、International Consensus Group on Periprosthetic Joint Infectionのオ ーガナイザーで、フィラデルフィアにあるRothman Instituteの教授であるJavad Parvizi氏とドイツ、ハンブルグに あるHelios Endo-KlinikのThorsten Gehrke氏に、この複雑 なテーマについて幾つかの質問を行った。 International Consensus Group on Periprosthetic Joint Infectionは2013年8 月1日に会合を開きました。このConsensus Groupの目的を教えてくださいますか? Thorsten Gehrke:Dr.Parviziと私はこうしたタ イプの学会をオーガナイズしようというアイディ アに思い至りました。これは必要なことなので す、というのも現在、予防・診断・治療に関する 国際的基準は無く、科学的エビデンスも入手不可 能であり、人工関節周囲感染症治療についてあま りにも不確定な事が多すぎる、といった状況が世 界各国で続いています。 エビデンス-レベル-1の臨床研究(前向き無 作為研究)の実施を正当化するのは極めて困難か つ倫理的な問題もあるため、エビデンスが無いの であれば、少なくともコンセンサスを得るべきだ という結論に至ったわけです。Delphi・メソッ ドを活用しました。すなわち、入手可能な科学的 データと関連出版物があって、それに基づく一つ の課題において大多数の専門家の意見が一つに集 約するならば、コンセンサスが得られたと解釈し たわけです。 Javad Parvizi:このコンセンサス活動を形成 するために、およそ60か国、500人の専門家に 連絡し、15のワーキング・グループを作りまし た。この問題の様々な側面を解決していくため です(例:定義、予防、診断、洗浄法、デブリ ードマン、スペーサー等)。ワーキング・グル ープは3,500編超の医学出版物を検討し、その 結果、24,000通超のe-メールのやりとりが行わ れました。グループ全体で220を超える疑問を 集積しました。2013年8月初めにフィラデル フィアで開催されたInternational Consensus Meetingでは、これが組織全体に提示され投票 に付されました。 医学文献によって人工関節感染症の定義が異なっ ています。インプラント関連感染症の診断が正確 だと見なしてよいのはいつになるのでしょうか? Javad Parvizi:コンセンサスの一部として、専 門家の85%が次の基準を満たしている場合、イ ンプラント関連感染症が確認されたとみなすこ とに同意しています。 7 ⃝人工関節周囲検体において同一表現型細菌が最 低2回培養陽性となったことが確認できる、あ るいは ⃝関節と交通する瘻孔の存在 ⃝下記の基準の内、少なくとも3個がエビデンス として確認できること。 -血清中の血沈(ESR)とC反応性蛋白(CRP) の上昇 -関節液中の白血球(WBC)数の増加あるい は -白血球エステラーゼ試験陽性 -関節液中の好中球割合の増加(PMN%) -人工関節周囲組織所見が感染を示唆 -一回のみ培養陽性 感染症は早期と遅発性に分類されることが多いの ですが、現在のレジストリ・データに含まれてい るエビデンスによれば、感染症は以前に考えられ ていたよりかなり遅い時期にも起こりえるとのこ とです。この分類法は最新の知識に基づいて更新 されているのでしょうか? Thorsten Gehrke:人工関節周囲感染には多く の分類法があり、各々が異なる基準を設けてい ます。最もシンプルで理にかない、従来から使 われている分類法が早期と遅発性の感染に分ける 方法です。術後早期感染は関節置換術後3週間以 内、あるいは最初の兆候出現後3週間以内のもの です。それ以降に現れるすべての感染症は遅発性 感染と呼ばれており、数年あるいは数十年のスパ ンで血行性感染により発症する可能性があるもの を含んでいます。 早期感染においては人工関節温存を試みるのが 正しく、遅発性感染においては人工関節、すべて の異物、感染した骨や軟部組織を除去すべきだと いう点でコンセンサスが得られています。この点 については世界中で同意が得られました。 人工関節周囲感染症の臨床所見は明確でないこと もあります。先生方の病院では、所見決定にそれ ぞれに標準化したアルゴリズムを作成されている のですか? Javad Parvizi:人工関節周囲感染症を治療する 機関はすべて、診断・治療アルゴリズムはもとよ り、一般的な基準に従って行動すべきです。我々 の病院では、所見の臨床的決定は以下のように行 います。 まず原則として痛み-感染症における最も重要 な症状-を訴えていること。症状の無い期間を経 た後、突然痛みが起こる場合は特に疑わしいケー スと言えます。ついで理学的所見をとります。当 該関節に赤み、腫脹、熱、滲出物形成等の感染症 の局所症状がみとめられると、次の手段として推 奨しているのは、血清中の炎症パラメータ測定で す。原則的にはCRP数値測定で充分なのですけ れど。それと同時に、感染症が疑われるすべての 症例において当該関節に穿刺を行います。穿刺目 的で特別に設えられた部屋か、あるいは無菌状態 の手術室で行うことが必要です。穿刺標本は、可 能な限り迅速に、一番近くにある条件を備えたラ ボに運ばなければなりません。これができないの であれば、小児用血液培養瓶に一時保存すること をお奨めします。 Thorsten Gehrke:成長速度が緩やかな病原菌 をも検知するためには、穿刺標本を最低14日間 は培養状態に置くべきです。また、穿刺前の少 なくとも10-14日間は、患者に対する抗生物質 投与を控えなければなりません。臨床的、血清学 的見地から人工関節周囲感染症の疑いが濃厚であ ったにも拘らず、培養が陰性を示した場合には、 オープンバイオプシーを推奨します。より精度が 高まるからです。すべての人工関節周囲感染症の 約98%が、このアルゴリズムに従うことで診断 可能となります。 ここ最近、人工関節周囲感染症の予防・診断・治 療に対する戦略に変化はあったのでしょうか? そして、先生方はその結果をどう評価しておられ ますか? Javad Parvizi:私の個人的な見解ですが、過去 数年間で予防・診断・治療の戦略が良い方向に前 進したのは明らかです。ほとんどの病院が、専門 家組織によって開発されたアルゴリズムに従って 行動しています。人工関節周囲感染症は、関節置 換術関連で最も深刻な合併症として近年、研究・ 精査の対象となってきているので、ほとんどの国 で治療目的のセンターが設立されています。 ですが、我々は未だ、こうした戦略の初期段階 に留まっているのです。特に進捗が今ひとつの国 で、処置の基準になるアルゴリズム設定や治療指 針の実行を行っていく中で、何か役に立てればと 思い、去年8月のコンセンサス・ミーティングを 企画しました。その結果、人工関節周囲感染症 治療にあたる医療専門家にとって良い指針が打 ち出せたのです。 感染症にまつわる複雑な問題をコントロールする ために、将来の股関節・膝関節置換術における初 回および再置換インプラント製造はどうあるべき でしょうか? 何かしらの科学的アプローチがあ るのでしょうか? Thorsten Gehrke:世界のインプラント製造業 者は少なくとも20年間にわたり、抗菌あるいは 無菌のインプラント表面処理(コーティング) の研究を進めてきました。近年、抗菌コーティ ングにおいて将来性があるのではないかと思われ る手法がいくつか開発されました。こうした手法 で増えているのは、インプラント表面感染に対す る保護役としての銀イオン使用です。銀に対する 菌の耐性獲得はほとんどなく、銀には毒性がある ものの、ボーンイングロースが良いという利点が あります。現時点では、少なくとも実用に関して は、エビデンスに基づいた科学的アプローチは初 歩段階のものしかありません。ですが、インビト ロ検査結果と理論的考察については、かなりの数 が出ています。ただ、意義あるインビトロ検査結 CeraNews 1/ 2014 8 特集:人工関節周囲感染症 果はまだほとんどありません。近年になってよう やく、がん患者に関しては、治療・予防において 将来有望と思える結果が示されました。 人工関節周囲感染症は医師と患者の間に緊張関係 を生み出すこともあります。先生の臨床経験から 他の先生方に対し、感染症患者への対処法につい て何かアドバイスがあれば、教えていただけます か? Javad Parvizi:効果的で究極の、そして唯一正解 と言える方法は、人工関節周囲感染合併症にオー プンに向き合っていくことです。患者には感染症 の可能性について可及的速やかに伝えた上で、適 切な診断を受けさせるようにしなければなりませ ん。そのためには、患者に包み隠さずすべてを正 直に伝えた上で、話し合うことが必要です。非難 は時間の無駄でしかありませんし、意味の無いこ とです。世界中のほとんどの手術室は衛生基準を 満たしているからです。一般に人工関節周囲感染 症は運命的なものと考えるべきです。外科医や治 療を行った医者を責めていいのは、診断や術後治 療が迅速さを欠いた場合、あるいは経過を静観す るというアプローチが取られた場合のみです。秘 訣は、正直に話すのが一番の解決法ということで すね。 著者の連絡先: Javad Parvizi, MD, PhD, FRCS Department of Orthopaedic Surgery Jefferson Medical College Thomas Jefferson University, Philadelphia Vice Chairman of Research, Rothman Institute Director, Clinical Research, Rothman Institute 925 Chestnut Street 5th Floor Philadelphia, PA 19107 USA Phone: +1 800 321-9999 E-mail: [email protected] Thorsten Gehrke, MD, PhD Medical Director Helios Endo-Klinik Holstenstraße 2 D-22767 Hamburg Germany Phone: +49 40 31 97-1233 Fax: +49 40 31 97-1900 E-mail: [email protected] Javad Parvizi, MD,PhDはイギリ スのUniversity of Sheffieldで医学を 学んだ。その後、 アメリカ、ミネソ タ州ロチェスター のMayo Clinicで整 形外科研修の傍ら、 分子生物学修士号 を取得。現在、ア メリカ、フィラデルフィアのRothman InstituteでVice Chairman of Researchな らびにDirector of Clinical Researchを務 める。整形外科医としてのJavad Parvizi氏 の専門は、骨盤・股関節・膝関節の再建術 であり、特に若年層における股関節温存療 法、さらに人工関節周囲感染症には特別な 関心を寄せている。 Thorsten Gehrke, MD, PhDはド イツ、ハンブルグ にあるHelios Endo-KlinikのMedical Directorならびに Hip Department の責任者を務めて いる。Helios Endo-Klinikは、International Society of Orthopaedic Centers(ISOC)に加盟 しているドイツで唯一のクリニックであ る。氏の専門分野は、股関節・膝関節手 術、スポーツ医学、さらに感染例に対する 再置換術、非感染性のfailureに対する再置 換術におよぶ。氏に対する国内外の評価は 高く、とりわけ感染症と一期的再置換にお いての評価は際立っている。 氏は、American Knee Society, European Bone and Joint Infection Society等、国 内外学会に属し、上海、河北省(中国)、ボ ゴタ(コロンビア)、チリ、クウェートの大 学で、名誉教授ならびに客員教授、ブエノ スアイレス(アルゼンチン)、サンチアゴ (チリ)では、准教授を務めている。解剖 学、スポーツ医学から関節置換術の臨床研 究に至るまで様々な題材について、ジャー ナル記事、本のチャプター等の執筆物多数 が出版されている。 特集:人工関節周囲感染症 9 International Consensus Meeting on Periprosthetic Joint Infection(人工関節周囲感染症国際コンセンサス会議) 概要 Thorsten Gehrke, MD, PhD, Javad Parvizi, MD, PhD(イギリス外科医師会会員) 人工関節周囲感染症(PJI)は、深刻な合併症 の可能性もあり、整形外科において依然大きな 課題となっている。現場の整形外科医たちは戦 略を駆使して手術部位感染(SSI)を最小限に留 めるべく、懸命に努力を重ねてきた。こうした 戦略の数々において、レベルの高いエビデンス の裏付けがあると考えられるものもあるが、多 くの場合、科学的根拠が無いか稀薄である。ゆ えに、PJIの予防・管理に向けた方策には世界的 に大きなばらつきが見られる。 待機的人工関節置換術に層流式無菌室を使用す べきか。セメントスペーサに加える抗生物質の量 と質はどうすべきなのか?再置換術の最適時期を 決定するにあたり、どのような基準を設けるべき か?洗浄・デブリードマンの適用・禁忌は何か。 関節内の洗浄・デブリードマンをどの程度試みた 後に切除関節形成術(Girdlestone)を考える必 要があるか。整形外科界ではこうした問題に日 々直面している。 整形外科界では、レベルの高いエビデンスの重 要性を理解し、その創出に可能な限り取り組んで いる。また、レベルの高いエビデンスの創出が困 難であったり、そうした試みをすべきでない医療 的側面も存在するという認識もある。こうした認 識のもとに開催されたのが人工関節周囲感染症国 際コンセンサス会議である。整形外科、感染症、 筋骨格系病理学、微生物学、麻酔学、皮膚科学、 核医学、リウマチ学、筋骨格系放射線学、獣医外 科、薬学をはじめ様々な分野からの代表者や整形 外科感染症に関心を抱く多数の科学者がフィラデ ルフィアを訪れ、2013年7月31日から8月1日 まで開催された同会議に参加した。参加者たちの 目的は実体験に基づく入手可能なエビデンスを評 価することにあった。もし十分なエビデンスがな いということになれば、SSI・PJI管理のための現 行の取組みについてコンセンサスを形成すること になっていた。これをやり遂げるには10ヶ月に 及ぶ膨大な準備作業が求められた。その間、裏付 けに必要なあらゆる情報を収集した。代表者たち が提起した問題に対するエビデンスを求めて手を 尽くし、3,500以上の文献を吟味した。エビデン スが入手可能な場合にはそれを評価した。医学文 献で十分な裏付けが取れないような問題について は、52ヶ国と100余の諸団体からの400人を超 える代表者が持ち寄った叡智を評価・結集し、そ の結果を提示して代表者のコンセンサス投票にか けることとなった。 代表者たちは互いの意思疎通を図るために設け られた専用ウェブサイト(www.ForMD.com) を通じて準備作業に逐一関わった。この間、同 ウェブサイト上では25,000件を上回る意見交 換が行われた。コンセンサス文書はデルファイ 法(delphi technique)を用いて作成された。 その中心的役割を果たしたのはコンセンサス文 書作成の専門家として世界に名高いWilliam L. Cats-Baril博士である。 コンセンサス形成に至るまでの全過程を通じ て、ステークホルダー(利害関係者)を可能な限 り網羅し、複数のフォーラムへの参加を認め、広 範囲にわたって文献の評価に取り組んだ。取り扱っ たテーマは次の通りである。SSI・PJI増加に伴う 共存症の緩和と啓蒙、術野皮膚処理、予防的抗生 剤投与、手術室環境、無輸血治療、人工関節の選 択、PJI診断、創傷管理、スペーサー、洗浄・デ ブリードマン、抗菌薬療法と再置換のタイミン グ、一期的再置換と二期的再置換、真菌性ある いは非定型PJIの管理、経口抗菌薬、遅発性PJIの 予防、その他。人工関節の選択確実に患者ケアが 改善できるよう、コンセンサスステートメントに ついては全て各分野の専門家が中心となって厳格 な審査を行った。 文献を分析し、コンセンサスステートメントの 一次案をまとめ終えると、米国ペンシルベニア州 フィラデルフィアのThomas Jefferson Universityで学会が行われ、300名を超える代表が実際 に顔を合わせた。活発な議論が行われ、課題・コ ンセンサスステートメントの評決が行われた。代 表たちがまず顔を合わせたのは7月31日で、小 規模のワーキンググループに分かれて議論を行 い、見解に相違点があれば解決し、それぞれのス テートメントの最終案をまとめた。コンセンサス ステートメントの手直しを終えて、その最終案を まとめると、同日夜にオーディエンスレスポンス システムに送付し、翌日の投票に備えた。2013 年8月1日、代表たちは総会議場で一堂に会し、 提示されている207件のコンセンサスステートメ ントの評決を行った。評決は電子キーパッドで行 CeraNews 1/ 2014 10 特集:人工関節周囲感染症 われ、コンセンサスステートメントへの賛成、反 対、棄権を投じることができた。コンセンサス の程度は次のような基準で判断された。1単純 多数:コンセンサス成立せず(50.1~59%の賛 成)、2多数:弱いコンセンサス(60~65%の 賛成)、3大多数:強いコンセンサス(66~99 %の賛成)、4全会一致:100%の賛成。207件 のステートメントの内、「全会一致」となったの は一件のみで(手術室への出入りの制限)、202 件が「大多数」(強いコンセンサス)となり、2 件で弱いコンセンサスが成立し、コンセンサス が成立しなかったのはわずか2件だった。 まとめられた文書1-3はこの活動に献身的に携 わった連絡担当者、指導者、代表者が費やした 膨大な時間と労力の成果である。この活動を通 じて公にされたいわば「ベストプラクティスガイ ド」が今後多くの患者の支えになることは確実で ある。ただ、この文書に記載されている内容は筋 肉骨格系感染症の患者を抱える現場の医師にとっ てあくまでも指針であることは明確にしておかな ければならない。すなわち、 「標準的治療」とみ なすべきではない。個々の患者に関する意思決定 に際しては医師が自らの英知と臨床的洞察力を発 揮しなければならない。その結果、状況によって はこの文書の内容とは異なる治療を行う必要が生 じる可能性もある。 参考文献 1 Parvizi J, Gehrke T, Chen AF. Proceedings of the international consensus on periprosthetic joint infection. Bone Joint J 1;95-B(11):1450-2, 2013 2 Cats-Baril W, Gehrke T, Huff K, Kendoff D, Maltenfort M, Parvizi J. International consensus on periprosthetic joint infection: Description of the consensus process. Clin Orthop Relat Res Oct 2013 (E-Pub). 3 http://www.msis-na.org/international-consensus/ 特集:人工関節周囲感染症 11 人工関節周囲感染症: ベアリング表面の影響 Javad Parvizi, MD, PhD(イギリス外科医師会会員) 人工関節周囲感染症(PJI)は、その 転帰が深刻で発生率も上昇しているた め、整形外科学で脚光を浴び、ここ10 年間の課題の一つとなっている1。数多 くの研究が行われ、PJIの重要なリスク ファクターのいくつかが明らかになって いる。先ごろフィラデルフィアで開催さ れた国際コンセンサス会議では、入手可 能な文献の評価が行われ、人工関節置換 患者自身に関わるものでPJIの素因とな る主な問題として以下のものが明らか になった。既往手術歴、コントロール不 良の糖尿病(グルコース>200mg/Lあ るいはHbA1C>7%)、栄養不良、病 的肥満(BMI>40kg/m2)、活動性肝疾 患、慢性腎疾患、過剰な喫煙(1日1箱 超)、過剰なアルコール摂取(週40単位 超)、静注薬物乱用、直近の入院歴、リ ハビリ施設への入所延長、男性、外傷後 関節炎診断、炎症性関節症、罹患関節に おける術前処置、重篤な免疫不全2-5。 人工関節置換患者自身に関わる要因な らびに環境要因は数多くあるが、それら とPJIの関連は次第に明らかになってき ている。しかし、様々な人工関節バイオ マテリアルの使用とPJIの関連はまだ十 分に解明されてはいない。PJIは感染症 を惹き起こす微生物が人工関節の表面に 付着してバイオフィルムを形成すること が原因である。したがって、付着する微 生物の親和力がバイオマテリアルの表面 によって異なることが予想される。しか し、様々なバイオマテリアルがPJIに影 響を与える可能性について研究した臨床 データが少なく、この問題の研究は付着 する微生物の親和力国際コンセンサス会 議の作業グループが入手可能な医療文献 に基づいて下した結論によれば、人工関 節コンポーネントが(抗生物質を含有し ない)セメント固定であるか、セメント レス固定であるかによって、PJIの発症 率が変化するわけではなく、セメントレ ス固定の表面上のヒドロキシアパタイト もPJIの発症率には影響しないと思われ る。同作業グループはベアリング表面の タイプと術後PJIの関連の可能性も分析 したが、グループメンバーの78%が、 メタル・オン・メタル ベアリング表面 使用によるPJI発症率の上昇が入手可能 なデータにより確認された、と考えた。 MoMベアリング表面を使用すると術 後PJIの発症率が高くなる可能性がある が、これについては様々な理由が考えら れる。例えば、MoMベアリング表面の 破損が局所組織有害反応(ALTR)なら びに広汎軟部組織破壊をもたらす可能性 があり、これが細菌繁殖に好都合な環境 となっているとも考えられる6。Hosman らによって実施された体系的調査による と、メタル粒子には免疫システムを低下 させる働きがあって細菌が繁殖するた め、MoMベアリング表面から放出され たメタル粒子はPJIの潜在的リスクを高 める7。 問題として残るのはその他のベアリン グ表面もまたPJIの発症率に影響を与え るかどうかである。我々はこの問題に 強い関心を抱き、種々のデータベースを 渉猟し、パターンとして可能性のあるも のを探した。まず分析の対象にしたのが Nationwide Inpatient Sample(NIS) で、これは全保険団体を網羅した入院患 者ケアのデータベースで一般に公開され ているものとしては全米最大である。そ のデータ収集は毎年約800万件の入院事 例をもとに実施しており、全米の病院で 治療を受けた患者のほぼ20%に相当す る 8。感染症の定義にICD-9コードを用 いて分析した結果、セラミック・オン・ ポリエチレンベアリングの患者(0.87 %)あるいはセラミック・オン・セラミッ クベアリングの患者(0.54%)と比較 すると、メタル・オン・ポリエチレン ベアリングの患者では感染症発症率が高 い(1.1%)ことが分かった。Rothman Instituteのデータベースについても同様 の調査を行った結果、セラミック・オ ン・ポリエチレンベアリングにおける PJI(Musculoskeletal Infection Soci- etyの基準に基づく定義による)9の発症 率0.4%に対して、メタル・オン・ポリ エチレンの場合は0.8%であることが明 らかになったが、これは統計的に有意な 差ではない。我々の調査結果には限界が あることは承知している。それはNISの データも我々の組織のデータも多変量解 析を施していないことに起因する。例え ば調査結果は、メタル・オン・ポリエチ レンベアリング表面で手術を受けている 患者よりセラミックベアリング表面で手 術を受けている患者のほうが若くて合併 症の率も低いということを反映している 可能性がある。しかしながら、発見され たパターンは興味深く、さらに究明する 価値がある。したがって、我々は、素デ ータが収集でき、ベアリング表面のタイ プとその術後におけるPJIとの関連の可 能性を探ることができる、多施設共同 研究の実現性を評価しているところであ る。 参考文献 1 Ghanem E, Jaberi F, Parvizi J. Periprosthetic infection in a nutshell. Am J Orthop 36(10): 520-525, 2007 2 Parvizi J, Gehrke T, Chen AF. Proceedings of the international consensus on periprosthetic joint infection. Bone Joint J 1;95-B(11):1450-2, 2013 3 Cats-Baril W, Gehrke T, Huff K, Kendoff D, Maltenfort M, Parvizi J. International consensus on periprosthetic joint infection: Description of the consensus process. Clin Orthop Relat Res Oct 2013 (E-Pub). 4 www.rothmaninstitute.com/internationalconsensus 5 Proceedings of International Consensus Meeting, Ed: Parvizi J, Gehrke T. Data Trace Publishing Company, ISBN 978-15400-147-1 6 Judd KT, Noiseux N. Concomitant infection and local metal reaction in patients undergoing revision of metal on metal total hip arthroplasty. Iowa Orthop 31:59-63,2011 7 Hosman AH, van der Mei HC, Bulstra SK, Busscher HJ, Neut D. Effect of metal-on-metal wear on the host immune system and infection in hip arthroplasty. Acta Orthop 81(5): 526-534, 2010 8 http://www.hcup-us.ahrq.gov/nisoverview.jsp 9 New definition for Periprosthetic Joint Infection. Workgroup convened by the Musculoskeletal Infection Society. J Arthroplasty 26(8): 1136-8, 2011 CeraNews 1/ 2014 12 特集:人工関節周囲感染症 ベアリングタイプと人工股関節周囲感染症 Rihard Trebše, MD, PhD1, Vesna Levašič, MD1, Ingrid Milošev, PhD1, Simon Kovač, MD 1 キーワード ・人工関節周囲感 染症 ・ベアリング・カッ プル ・再置換 ・股関節全置換術 Valdoltra Orthopedic Hospital, Jadranska cesta 31, SLO-6280 Ankaran, Slovenia 序論 毎年、整形外科用インプラントによって世界中 で270万人の患者に機能改善と痛みからの解放が もたらされている。しかしながら、関節置換後 の感染症(PJI)および骨折固定術後の感染症発 症は、高罹患率、高死亡率、高額医療費へと直 結する可能性がある1,2。 インプラント件数の増 加およびフォローアップ期間の長期化により、 人工関節関連感染症発症率もまた上昇しかねな い 3,4,5。 慢性的な人工関節関連感染症に対する 微生物学的治療は侵襲性があり、壊死組織のデブ リードマンに伴ってインプラントとセメントを摘 除する必要頻度が増える。そのため、長期間にわ たって抗菌療法をすることになり、二期的再置換 という転帰に至る6,7,8,9,10,11,12。また、急性期の PJIならば侵襲性の少ない一期的再置換、デブリ ードマン、固定によって治療されるケースもある が、このタイプの治療は骨感染症専門家チームの いる医療機関に限定されるであろう13。 現在、人工股関節全置換(THA)における 摺動面は、金属部(通常は鋳造コバルトCo28 Cr6Mo合金、適合規格:ASTM F799, ASTM 1537, ISO 5832)がプラスティックポリマー(ほ とんどの場合、多種の超高分子量ポリエチレ ン)(メタル・オン・ポリエチレン:MoP)ある いは、多種のクロスリンクポリエチレン(MoXPE) と接合しているケースが圧倒的に多い。他のタ イプのベアリングも広く使われており、セラミッ ク・オン・ポリエチレン(CoP)、セラミック・ オン・クロスリンクポリエチレン(CoXPE)、 メタル・オン・メタル(MoM)、セラミック・ オン・セラミック(CoC)などがある。新しい タイプのベアリングが導入されてTHAの寿命が 長くなっている。インプラントのゆるみはポリ エチレン粒子誘因性骨溶解がカップあるいはステ ムの周囲に発生することが通常原因となっている が、新しいタイプのベアリングがこのゆるみを防 止しているためである14。 各種ベアリングの機能全般に関する研究結果は 多数発表されてはいるものの15,16、ベアリングタ イプがTHA感染症発症に及ぼす影響をテーマに したものは皆無である。多種ベアリングシステ ムの破損率関連情報を収集するTHAレジストリ ーはあったが17、破損様態に関する報告は認めら れない。このレジストリーで再置換率が最も低 くなっているのはMoM(1.6%:初回手術6,119 例中、再置換術96例)とCoC(2.9%:初回手術 25,918例中、再置換術750例)である。 我々は1990年代以降、一連のMoM THA分析 にあたり、我々は感染症診断にゆるやかな基準 を用いていたが、4.2%という憂慮すべき感染症 率に注目した18。感染症による再置換率は全体と して約1.5%であるから、ベアリングタイプがPJI 率に影響していた可能性があると結論付けた19。 材質と方法 ベアリングの組み合わせによりPJI発症率に差 異が生じることを探るため、我々は2002年に創 設されたValdoltra Arthroplasty Registry20の データを分析した。このデータベースを使って 2002年1月1日から2012年12月31日までに THAを施術した患者すべてを拾い上げ、インプ ラントしたベアリングタイプにしたがってグル ープ分けし(表1)、ベアリングタイプごとの深 部感染症による再置換率を割り出した。11年の フォローアップ期間中、初回THAはMoPグルー プで4,770関節、MoXPEグループで2,813関 節、MoMグループで72関節、CoPグループで 512関節、CoXPEグループで376関節、CoCグ ループで1,323関節、感染症のため再置換した THA数はMoPグループで30関節、MoXPEグルー プで29関節、MoMグループで0関節、CoPグルー プで3関節、CoXPEグループで0関節、CoCグ ループで6関節であった。グループごとに感染 症による再置換率を計算し、カイ二乗検定を行っ た。MoMグループはほかのグループと比較して 対象者の数が少なすぎるため、統計分析から除 外した。 次の基準のうち少なくとも一つに該当する場 合、人工関節感染症と診断した。 1.関節液あるいは術中組織検体の培養二つ以上 における同一菌の増殖 2.穿刺液あるいは術中組織の感染所見(医師の 判断による) 3.ホルマリン固定された術中切除片の病理組織 における急性期炎症所見(病理学者の判断に 13 よる) 13 4.関節と交通する瘻孔 統計分析 統計分析はIBM SPSSのバージョン19を使 用 して実施した。グループ間の差異を分析する ため、カイ二乗検定および両側t検定を実施し た。再置換率の最も低かったグループ(CoXPE)とその他4グループを有意水準p=0.05とし て比較した。 結果 感染率はMoPベアリングの患者4,770人の 0.63%、MoXPEベアリングの患者2,813人 の1.63%、CoXPEベアリングの患者376人 の0.00%、CoCベアリングの患者1,323人の 0.45%であった。MoMベアリングの患者72人 は、患者数が少なくデータに偏りがあるとみな して除外した。MoPベアリングとCoXPEベアリ ングの患者およびMoPベアリングとCoCベアリ ングの患者の間で感染率に統計的有意差が認め られた。CoXPEベアリングとCoCベアリングに はいかなる統計的差異も認められなかった。 考察 術中に創部感染、とくに異物の存在下におい て、人工関節周囲組織が病原体を完全に排除す る能力には限界がある21。生体分子(タンパク質 など)ならびに細菌や患者の宿主細胞などの生 体自体がバイオマテリアル表面に付着すること は、バイオマテリアルの挙動にとって重要な意 味を持つ22-24。細菌が迅速かつ強固に付着すると 同時に患者の宿主細胞の付着が不十分な場合に インプラント関連感染症をおこす可能性がある ことが提唱されている(「レース・フォー・ザ・ サーフェス(race for the surface)」仮説)25。 微生物の量と毒性が生体防御反応を上回ると顕性 感染症が発生する。続いて一般的にはバイオフィ ルムが形成される。細胞外高分子物質であるバイ オフィルムは食菌作用、補体、抗菌薬26から対し て病原菌を保護する。 PJIが発生した場合の臨床症状は、他の感染症 と同様、患者の防御反応と病原菌の毒性強度に より異なる。異物の存在ならびに細菌が形成す るバリアであるバイオフィルムによって、PJI は他の感染症とは異なり、根治が困難になる。 ここで考えられるのは両極端のシナリオである が、PJI症例のほとんどはこの両極端の範囲内で 発生する。患者の免疫系が強く、作用している 細菌の毒性が非常に低ければ、無症状感染症が 持続する。すなわち、宿主の防御システムがバ イオフィルムで装備した細菌を制御していると いうことである。したがって、無症状感染症は持 続するが、防御系が脆弱化しない限り顕性化する ことはない。無菌と想定された症例において高感 度診断ツールを用い、細菌の存在を明らかにした 状態/ ベアリング MoM CoXPE CoC 再置換なし 72 376 1,317 0 0 6 72 376 1,323 再置換 計 CoP MoP 509 4,740 3 MoXPE 2,784 30 29 512 4,770 2,813 表1:調査期間内に実施されたベアリングタイプ別の股関節インプ ラント数およびPJIによる再置換数 研究によって、この極端なシナリオが裏付けられ た27,28。 一方、防御システムが弱い場合には、毒 性の細菌が致死性劇症敗血症を引き起こす可能 性がある。宿主の防御力と病原菌の毒性との力 関係で、PJI症例のほとんどが二つのシナリオの 間の何処かに位置づけられる。 その結果、感染症の中には臨床上顕在化するこ とのない症例や、早晩無菌性のゆるみとされてし まう症例も出てくることが予想される 24,29,30。こ うした不顕性感染症の発生率は不明であるが、 見かけ上無菌性とされるゆるみのうち実際には 感染性のゆるみであるものが5%台であることは 看過できないとする研究もある 28。こうした症例 では患者の防御反応と細菌の毒性因子が恒常的 に均衡を保っている可能性があると考えること ができる。こうした均衡状態は長期にわたるこ ともあれば、何かのきっかけで局所的あるいは 全身的に免疫機序が弱まって崩れることもある だろう。すなわち、Toll様受容体(TLR)関連な どの自然にある非特異的機序および抗体性免疫な どの特異的機序が働いて非常に軽度の感染症をコ ントロールし、均衡の障害となるものが出現しな いかぎり、一定期間この状態が継続する可能性を 示唆している。 起こりうるかもしれない多様な臨床的転帰を鑑 みれば、不顕性感染症の可能性を認識しておくこ とは重要である。 この考えを支持する流れも出てきている。先に 示したように、再置換術後に起こる感染症の発症 率は診断ツールの性能次第で変わる。摘出インプ ラントの超音波処理により、感染と診断される率 が増加した。すなわち従来考えられていた以上に 感染性failureは実際には多かった、ということ であろう31。PCR技術など、より高感度の診断法 を用いることで感染症関連再置換の数はさらに 増加するものと見込まれる32。 炎症性疾患などの全身性疾患ならびに副腎皮 質ホルモン、生物学的製剤、化学療法薬など免 疫抑制を誘発する治療剤は感染症発症率の増加 と関連があり、無症候性PJIを症候性にする可能 性がある。 このようにベアリングタイプは局所的、さらに は全身的に宿主防御機能に影響する可能性があ る。ベアリングから摩耗粉が発生して局部組織 CeraNews 1/ 2014 14 特集:人工関節周囲感染症 に影響を与えるというのが反応機序の典型であ ると我々は予想している。粒子の量、大きさ、 形状、化学成分によって影響は変わる。複数の 研究により33,34、 ベアリングによっては人工関節 周囲のスペースに有意に高いレベル、あるいはそ れ以上のレベルの血中メタルイオン(コバルト、 クロム、チタニウム、バナジウム)の存在が示さ れている。 インビトロ検査により、高レベルのメタルイオ ンがリンパ球に与える毒性効果と、メタル過敏性 を起こす患者がいることが実証されている35。 粒子が異なると生物学的活性も異なり、それに ともないマクロファージ活性化ならびに骨溶解形 成への性向も異なることが知られている36,37。 セ ラミック粒子が最も生物学的忍容性が高いとす る研究もある37。一方、金属粒子の腐食生成物は 深刻な局部組織の障害を誘発する可能性があり38、 患者によっては偽感染症あるいは偽腫瘍を発症 する場合もある。セラミックやメタルと比較する と、ポリエチレン摩耗粉の相対的な生物学的忍容 性は、両者の間に位置する。 Toll様受容体もまた金属イオンに対する局所免 疫反応低下の発生機序に関係している。Pajarinnenの論文39によれば、マウスの骨に異物とくに メタル摩耗粉が存在すると、TLRの刺激に対する 反応が抑制される。自然免疫反応、獲得免疫反応 のいずれにおいてもTLRは重要な役割を果たして いるため、両反応もTLRの機能が抑制されると低 下する。低下がなければ恒常的に制御可能であっ たはずの軽度感染症が免疫抑制環境において発症 しやすくなる。 金属イオンは抗原提示細胞(APC)を活性化 し、これがMHCペプチドおよび共起刺激分子の 発現を高める。しかし、この反応の結果は共起 刺激分子がどのタイプのT細胞受容体に働きかけ るかによって決まる。 ベアリングから発生した粒子に起因する局所 的・全身的環境における免疫学的変化の全体像 は詳らかになっていない。しかし、重大な障害 が実際に発生して、局所的・全身的免疫機序に変 化が起こって相対的免疫不全の状態を誘発し、そ の結果、感染症率が高くなることを示す証拠は増 えている40,38,41。 (Figure1)メタルイオンが 人工関節周囲組織に及ぼす深刻な影響について は、Konttinenがその概要を述べている38。 臨床的に顕性化したPJIの発症にメタルイオン の発生が影響を与えていると思われる。(とくに MoMインプラントにおいては)おそらく摺動面 がメタルイオンの主要発生源であると考えられる が、最近ではテーパー接合部の重要性も認知され てきている。テーパーは、特に大径ヘッドでトル クが高くなるような状況下においては、隙間腐食 を起こしやすい43。 我々の研究では、摺動面にメタル・コンポー ネントを含んでいるインプラントは、セラミッ ク・オン・セラミックやセラミック・オン・ポ リエチレンのベアリング使用のものより感染が 発生しやすいという結果であった。後者では、 ベアリングからのメタルイオン発生は皆無で、 テーパー接合部より微量の発生がみとめられる のみである。主要な研究結果ならびに検証中の 仮説においては、1990年代以来我々が扱った 一連のMoM症例にみられる高い感染率と合致す る18,44。 しかしながら、直接の因果関係は未だ証 明されていない。 我々の研究には短所がある。研究の実施に際し て対象となった医師は全て同じ病院で手術を行っ ているが、医師による手術手技ならびに患者選択 方法のバリエーションは避けられなかった。ベア リング選択適応は必ずしも一貫していなかったの で、セレクション・バイアスも研究結果に影響し ているかもしれない。比較集団の年齢、一次診 断、活動レベルの同質性の確認は行われなかっ た。 Fig.1:メタル粒子のマクロファージに対する複合多重作用:食菌作用による活 性化、TLRならびにマクロファージの直接的活性化、Tリンパ球の多クローン性 活性化、細胞内腐食による組織浸透圧の上昇42 こうした短所はあるものの、研究結果ならびに 文献で得られた状況証拠は我々に疑念を抱かせ、 ベアリングの組み合わせがPJI発症に及ぼす影響 についての研究継続を正当化するものであった。 15 著者の連絡先 Rihard Trebše, MD, PhD Orthopedic Hospital Valdoltra Jadranska cesta 31 SLO-6280 Ankaran Slovenia 電話:+386 5 6696115 ファックス:+386 5 6696185 E-mail: [email protected] 文献 1 Sculco TP. 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J Bone Joint Surg Am 1999;81:1434-45 8 Westrich GH, Salvati EA, Brause B. Postoperative infection. In: Bono JV, McCarty JC, Thornhill TS, Bierbaum BE, Turner RH (eds.). Revision total hip arthroplasty. New York, Springer-Verlag 1999;371-90 9 Rand JA. Sepsis following total knee arthroplasty. In: Rand JA (ed.). Total knee arthroplasty. New York, NY: Raven Press 1993;349-75 10 Lonner JH, Barrack R, Fitzgerald RH Jr, Hanssen AD, Windsor ER. Infection in total knee arthroplasty: part II. Treatment. Am J Orthop 1999;28:592-7 11 Fitzgerald RH Jr. Infected Total Hip Arthroplasty: Diagnosis and Treatment. J Am Acad Orthop Surg 1995;3:249-62 12 Gillespie WJ. Prevention and management of infection after total joint replacement. Clin Infect Dis 1997;25:1310-7 13 Trebše R (ed.). Infected Total Joint Arthroplasty: The Algorithmic Approach. Springer-Verlag, London 2013 14 Willert HG, Semlitsch M, Buchhorn G, Kriete U. Materialverschleiß und Gewebereaktion bei künstlichen Gelenken. 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Pathogenesis of foreign body infection. Evidence for a local granulocyte defect. J Clin Invest 1984 April;73(4):1191-1200 22 Chehroudi B, Ghrebi S, Murakami H, Waterfield JD, Owen G, Brunette DM. Bone formation on rough, but not polished, subcutaneously implanted Ti surfaces is preceded by macrophage accumulation. J Biomed Mater Res A 2010;93:724-37 23 Brunette DM. Principles of cell behavior on titanium surfaces and their application to implanted devices. In: Titanium in Medicine, Eds. Brunette DM, Tengvall P, Textor M, Thomsen P. Springer-Verlag, 2001;486 24 Darouiche RO. Role of Staphylococcus aureus surface adhesins in orthopaedic device infections: are results model-dependent? J Med Microbiol 1997;46:75-9 25 Gristina AG, Naylor P, Myrvik Q. Infections from biomaterials and implants: a race for the surface. Med Prog Technol 1988-1989;14(3-4):205-24 26 Donlan RM. New approaches for the characterization of prosthetic join biofilms. 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Incidence of low-grade infection in aseptic loosening of total hip arthroplasty. Acta Orthop 2010 Dec;81(6):667-73 (ISSN: 1745-3682) 31 Trampuz A, Piper KE, Jacobson MJ, Hanssen AD, Unni KK, Osmon DR, Mandrekar JN, Cockerill FR, Steckelberg JM, Greenleaf JF, Patel R. Sonication of removed hip and knee prostheses for diagnosis of infection. N Engl J Med 2007:357:654-63 32 Kobayashi N, Procop GW, Krebs V, Kobayashi H, Bauer TW. Molecular identification of bacteria from aseptically loose implants. Clin Orthop Rel Res. 2008;466:1716-1725 33 Dunstan E, Sanghrajka AP, Tilley S, Unwin P, Blunn G, Cannon SR, Briggs TW. Metal ion levels after metal-on-metal proximal femoral replacements: a 30-year follow-up. J Bone Joint Surg Br 2005;87:628-31 34 Milošev I, Pisot V, Campbell P. Serum levels of cobalt and chromium in patients with Sikomet metal-metal total hip replacements. J Orthop Res 2005;23:526-35 35 Hallab NJ, Anderson S, Stafford T, Glant T, Jacobs JJ. Lymphocyte responses in patients with total hip arthroplasty. J Ortop Res 2005;2:384-391 36 Ingram JH, Stone M, Fisher J, Ingham E. The influence of molecular weight, crosslinking and counterface roughness on TNF-alpha production by macrophages in responseto ultra high molecular weight polyethylene particles. Biomaterials 2004;25:3511-3522 37 Germain MA, Hatton A, Williams S, Matthews JB, Stone MH, Fisher J, Ingham E. Comparison of the cytotoxicity of clinically relevant cobalt-chromium and alumina ceramic wear particles in vitro. Biomaterials 2003;24:469-79 38 Konttinen Y, Pajarinen J. Surgery: Adverse reactions to metal-on-metal implants. J Nat Rev Rheumatol 2013;9:5-6 39 Pajarinen J, Cenni E, Savarino L, Gomez-Barrena E, Tamaki Y, Takagi M, Salo J, Konttinen YT. Profile of toll-like receptor-positive cells in septic and aseptic loosening of total hip arthroplasty implants. J Biom Mat Res A 2010;94 A:84-92 40 Gibon E, Goodman S. Influence of wear particles on local and systemic immune system. In: Trebše R (ed.). Infected Total Joint Arthroplasty: The Algorithmic Approach. Springer-Verlag, London 2013 41 Pajarinen J, Takakubo Y, Mackiewicz Z, Takagi M, Jämsen E, Sheng P, Konttinen YT. Biomaterial–host interactions in aseptic and septic conditions. In: Trebše R (ed.). Infected Total Joint Arthroplasty: The Algorithmic Approach. Springer-Verlag, London 2013 42 Wang JC, Yu WD, Sandhu HS, Betts F, Bhuta S, Delamarter RB. Metal debris from titanium spinal implants. Spine (Phila Pa 1976). 19991;24:899903. Hedberg Y, Hedberg J, Liu Y, Wallinder IO. Complexation- and ligand-induced metal release from 316L particles: importance of particle size and crystallographic structure. Biometals 2011;24:1099-114 43 Virtanen S, Milošev I, Gomez-Barrena E, Trebše R, Salo J, Konttinen YT. Special modes of corrosion under physiological and simulated physiological conditions. Acta Biomaterialia 2008;4:468-476 44 Milošev I, Trebše R, Kovač S, Coer A, Pišot V. Survivorship and retrieval analysis of Sikomet metal-on-metal total hip replacements at a mean of seven years. J Bone Joint Surg Am 2006;88 6:1173-82 Rihard Trebše MD,PhDは整形外 科医でスロベニアの Orthopaedic Hospital of Valdoltra, Department for Bone Infectionsの 部長である。Slovenian Orthopaedic Societyの会長、さ らにはEuropean Hip Societyのスロベニア代表を務めてい る。 Rihard Trebšeはその手術数がTHAで 1,500、再置換THAで350、TKAで1,000、 UKAで230、TSAで210を超えてお り、200症例を超える整形外科感染症の治 療を行っている。 研究分野としておもに取り組んでいるの は、人工関節周囲感染症である。博士論文 のテーマは「機器の固定と特定抗生物質療 法による整形外科機器関連感染症の治療」 である。現在も進行中の複数の研究プロジ ェクトでは、手術時抗生剤の術中組織培養 に対する影響および内毒素が人工関節のゆ るみに果たす役割を中心に調査を進めてい る。また、メタル・オン・メタルの股関節 全置換術におけるアレルギー反応について も研究を行っている。 European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases(ESCMID)やEuropean Study Group for Implant Associated Infections(ESGAI)な ど、複数の専門家団体のメンバーである。 講演も多数手掛け、学術誌や学術書にも 広く論文を発表している。Acta Orthopaedica、Rheumatology、The Journal of Medical Case Reports、European Journal of Clinical Microbiology and Infectious Diseaseなど多くの学術誌で査読を務 めている。 連絡先 Rihard Trebše, MD, PhD Orthopedic Hospital Valdoltra Jadranska cesta 31 SLO-6280 Ankaran Slovenia 電話:+386 5 6696115 ファックス:+386 5 6696185 E-mail: [email protected] 教育 17 人工股関節におけるテーパー: 外科医は何に注目するべきなのか? Leslie F. Scheuber, Sylvia Usbeck, Florence Petkow 人工股関節におけるモジュラー原理 現代の股関節置換術の基盤を成すのは、モジュ ラー構造である。このモジュラー構造、特に様々 なネック長のステムと大腿骨ボールヘッドの組み 合わせが、手術中の患者個々の状況に柔軟に対応 していける手段として受け入れられている。モジ ュラー性により、外科医は患者本来の関節を最適 な状態に再構築し、かつ最善の生物力学的状態を 生み出すことが可能となる。また、モジュラー・ テーパー固定により、メタルとセラミックのよう な異なる材質の連結も可能になる。テーパー・ロッ キングは製造過程においても、実用段階において も使用可能であることが実証されている。さらに 強みとなるのは、これが腐食防止作用のある高度 の安定性を有していることである。再置換術の際 には、メーカーの使用説明に従い、ロック固定を 緩めて大腿骨ボールヘッドを置換することも可能 である。 テーパー固定の歴史 関節置換術において馴染みの深い存在である、 大腿骨ボールヘッドとステム間のテーパー固定 は1970年代初頭に、ビジネスパートナーである S u l z e r A G(人工関節メーカー、スイス、WinterthurのZimmerの前身)とFeldmühle AG(セ ラミック・メーカー、ドイツ、Plochingenの CeramTec GmbHの前身)の二社により開発さ れた。その目的は、セラミック大腿骨ボールヘッ ドとメタル・ステムの間に信頼性、耐久性を兼ね 備えた固定状態を実現することであった。Dörre 氏ら1はセラミック・ボールヘッドとメタル・テー パー間の圧力嵌め連結(テーパー・ロッキング)を 特に重視した:テーパー固定を伴う股関節置換術 は1974年に初めて患者に対し行われた。この テーパー固定原理はスイス特許(No. 1060601) によって保護された。1990年代になると、統 一テーパー(The Eurotaper)をInternational Organization for Standardization(ISO, document ISO/TC130/SC4N117)で規格化しよう との努力があったが、成功しなかった。ステム・ テーパーには未だに規格がない。インプラント・ メーカーはそれぞれのスペックでテーパー使用 を続けており(例:様々な12/14テーパー)、幾 何学的形状、構造、表面特性などが異なってい る(Fig.1) 。ネック長(s, m, lとxl) (Fig.4)に 関しても標準化されておらず、メーカーによって 数ミリの差異がみられることもある。 インプラント・テーパーの特色 テーパー固定は、ステム・テーパーと大腿骨ボール ヘッドにあるテーパー(ドリル・ホール)から構 成されている。各テーパーはそれぞれの特性を備 えている(Fig.2a-b)。例を挙げれば、テーパー 角、径、真直度、真円度、表面特性等であり、い ずれもコンポーネントとの組み合わせ精度におい て重要な要素である。テーパー・ロッキングを確 実なものにするためには、大腿骨ボールヘッドと ステム・テーパー間におけるテーパー固定の嵌合 が非常に重要である。 適合性 特筆すべきであるのは、外科医が組み合わせて 使用できるのは、インプラント・メーカーが適合 可能である2とした置換術用ステムと大腿骨ボー ルヘッドに限られるということである。インプラ ント・メーカーはステム・テーパー/大腿骨ボー ルヘッドの組み合わせ情報をリリースした上 で、コンポーネントを病院に供給する責任を負っ ている。外科医は、使用説明書やその他記載物で メーカーが承認・提示している組み合わせの詳細 に従わなければならない。関節置換術コンポー ネント (Fig.3)間での適合可能な組み合わせ を遵守しない場合には、例えば、関節の幾何学的 形状によるレッグ長への影響、軟部組織緊張や、 さらには有害組織反応(偽腫瘍)を伴うメタル摩 耗増大や早期のインプラント不具合等の臨床結果 が出る可能性も排除できない。 メタアナリシスの結果、この問題に関する研究 は不十分であることが分かっている。関節置換術 コンポーネントと適合不十分なテーパー・ロッキ ングの力学的挙動に関する情報は、ラボの研究結 果によって明らかになる可能性がある。 CeraNews 1/ 2014 教育 Fig.1:“12/14” と明示されているテーパー各種 5°40` 0ª 5°40` 0ª 5°40` 0ª 5°40` 0ª 5°40` 0ª 5°40` 0ª 5°40` 30ª 5°40` 0ª5°40` 30ª 5°40` 30ª 5°40` é 12.41 é 0ª12.41 é 12.41 é 12.41 5°2` 0ª 5°2` 0ª30ª5°2` 0ª 5°2` 0ª é 12.70 é 12.70 é (5.675°) 12.70 é é 12.51 12.70 (5.66667°) (5.66667°)(5.66667°) (5.66667°) é 12.51 é 12.51 é 12.51 12.41 é 12.41 é 12.41 é (5.66667°) (5.66667°) (5.675°) (5.675°) (5.66667°) (5.66667°) (5.675°) (8.03333°)(8.03333°) (8.03333°) (8.03333°) 5°40` 0ª 5°40` 0ª 5°40` 0ª 5°40` 5°37`0ª 46ª5°37` 46ª 5°37` 46ª 5°40` 5°40` 0ª 5°40` 0ª 5°40` 5°37`0ª46ª 5°40` 0ª0ª 5°40` 0ª 5°40` 0ª 5°40` 0ª é 12.50 12.57 12.57 é (5.66667°) 12.57 é (5.66667°) 12.57 é (5.66667°) é 12.50 é (5.66667°) 12.50 éé (5.66667°) 12.50 (5.66667°) (5.66667°) (5.66667°) é 11.0 11.0é 11.0 é 12.53 é (5.66667°) 12.53 é é 12.53 é 12.53 (5.62944°) (5.62944°) (5.62944°) (5.66667°) (5.62944°) (5.66667°) (5.66667°) é 12.41 11.0 出典:CeramTec Fig.2a/2b:インプラント・テーパーの特徴 真直度 真円度 真円度 18 角度 真円度 直径 真直度 出典:CeramTec 略称 明細 TGP テーパーゲージ面 TGD テーパーゲージ径 TA テーパー角 TL テーパー長 TCR テーパー面取り部/半径 TSR テーパー表面粗さ TS テーパー真直度 TR テーパー真円度 TGL テーパーゲージ長 TED テーパーエンド径 TSCD テーパー鋭角径 Fig.3:適合可能性についての一例:セラミック大腿骨ボールヘッドと適合可 能であることを証明された二つのテーパー。双方とも名目上は同じ12/14テ ーパーとされている。 凹み:メタル・テー パーとセラミック大 腿骨ボールヘッドと の衝突 出典:CeramTec Fig.4:様々な長さのネック 12/14 S 12/14 M 12/14 L 12/14 XL 出典:CeramTec 19 テイクホーム・メッセージ ~覚えておいていただきたいこと~ ⃝統一の、標準化されたステム・テーパーは存在しません。 ⃝ステム・テーパーの多くが ”Eurotaper 12/14” と呼ばれていますが、これは一般的なサイズ名 称に過ぎず、他社メーカーの関節置換術コンポーネントとの適合性を示すものでもなければ、メ ーカーによるステム・テーパーのスペック情報を表したものでもありません。 ⃝従って、12/14 EurotaperあるいはStandard Taper12/14といった名称について、メーカー に必ず確認してください! ⃝大腿骨ボールヘッドとステム・テーパーが適合可能かどうかの確認は絶対に必要です! 語彙集 Eurotaper(ユーロテーパー) 人工股関節においての標準規格を表す用語ではない。 テーパー 円錐形あるいは円錐台形状をした機器 テーパー径/円錐形テーパー(例12/14あるいは10/12等) 二つの径を持つ面の間の距離が特に定められておらず、最小テーパー 径・最大テーパー径についても曖昧で不正確なサイズ定義を有するテー パーを、シンプルに説明したもの。 テーパー角 軸方向に対する円錐の正確な傾斜角 参考文献 1 Dörre E, Dawihl W, Altmeyer G. Dauerfestigkeit keramischer Hüftendoprothesen. Biomedizinische Technik 1977; 22(1-2):3-7 2 Willi R, Rieker C , Thomsen M, Thomas P. AE-Manual der EndoprothetikHüfte und Hüftrevision, Springer Verlag Heidelberg:57 3 Bisseling P, Tan T Lu Z, Campbell PA, Susante JLC. The absence of a metal-on-metal bearing does not preclude the formation of a destructive pseudotumor in the hip – a case report. Acta Orthop 2013;84(4):437-441 追加参考文献 Hernigou P, Queinnec S, Lachaniette Flouzat CH. One hundred and fifty years of history of the Morse taper: from Stephen A. Morse in 1864 to complications related to modularity in hip arthroplasty. International Orthopaedics (SICOT) 2013; 37:2081-2088 謝辞 Wolfgang Zitzlaff, Tina Mirus, Ines Feistel (CeramTec GmbHデザイン部) の各氏の広範にわたる情熱的なサポート に対し、著者は感謝の意を表する。 テーパー径 円錐形の一定の高さにおける正確な呼び径あるいはテスト径 大腿骨ボールヘッド最小限の定義 例:32 12/14 M O 5°46′は、以下の数値を持つ大腿骨ボールヘッ ドを定義する: ⃝ボール径=32mm ⃝テーパー径: テーパー始まり=約12mm テーパー終わり=約14mm ⃝ネック長=M(中) ⃝テーパー角=5°46′ インプラント・メーカーは、インプラント・タイプに対応して使用可 能なセラミック大腿骨ボールヘッドを製造しなければならない。 真直度 この用語は、軸方向における円錐形表面上のすべてのラインの真っ直 ぐさを表している。 真円度 この用語は、あらゆる断面周囲の丸さを表す。 表面粗さ╱構造 この用語は、機器表面の特性とパラメータを表す。 CeraNews 1/ 2014 20 教育 セラミック・コンポーネント破損後の再置換術における ベアリング・カップル選択 Robert Streicher, PhD1, Leslie F. Scheuber1, Sylvia Usbeck1, Christian Kaddick, PhD2, Martin Hintner2 1 2 2013年10月16-19日 にアメリカ、パームビ ーチで開催されたThe 26th Annual Congress of the International Society for Technology in Arthroplastyで展示さ れたポスター#2427 摘要は ISTAの ウェブサイト www.istaonline.org で閲覧可能。 (登録の必要あり) CeramTec GmbH, Plochingen, Germany EndoLab GmbH, Thansau / Rosenheim, Germany 序論 トライボロジー的観点ならびに臨床経験から、 股関節全置換術(THA)において希少な事例で はあるが、セラミック・コンポーネント破損が発 生した場合、セラミック・オン・セラミック ベ アリングが治療の最善策である。 破損したセラミック・コンポーネントの微小 なセラミック砕片が関節包内に残る可能性があ り、それがPEライナーに埋め込まれてしまう恐 れもある。 目的 このインビトロ研究で初めて、セラミック third-body砕片が存在する状態で、PEライナー 付きのセラミックとメタルの大腿骨ボールヘッ ドをテストし、その摩耗挙動比較を行った。 セラミック砕片third-bodyを用いた汚染環 境、すなわちPEライナーへのセラミック砕片埋 入、持続的な亜脱臼状態を人工的に作成し、破 損したセラミック・コンポーネントを再置換し た後に想定される最悪のシナリオをシミュレー ションした。 材質と方法 ア ル ミ ナ ・ マ ト リ ッ ク 複 合 体 ( A M C ; B I OLOX®delta,CeramTec,Germany)のセラ ミック大腿骨ボールヘッド(∅32mm)をPE およびクロスリンクPEライナーとの組み合わ せでテストし、同径のメタル大腿骨ボールヘッ ド(CoCrMo)と比較した。臨床使用を想定し て、すべてのPEライナーをテーパー固定により Ti-6Al-4Vメタル・シェルに固定した。テスト はISO 14242-1に基づき、股関節シミュレー タ(EndoLab, Germany)を使用して行った。PE ライナー上で負荷移動が起きるメイン・エリア をテスト前に特定しておき、その対応箇所にお よそ2mm径(最大5mm)のアルミナ・セラミ ック砕片(BIOLOX®forte,CeramTec,Germany)を注入した。検体を解剖学的に正しい位置 に設置し、臼蓋ライナーを内側-外側面におい て傾角45° に保ってテストを実行した。テストの 間、シミュレータ・テスト室で使用されている試 験液(ウシ血清)の一部として、関節エリアにア ルミナ・セラミック砕片の追加注入を行った。す べての標本を500万回サイクルに至るまでテスト を行った。材質表面に対する損傷は目視で評価し た。ボールヘッドの摩耗量は損失重量から算出し た。 結果 メタル大腿骨ボールヘッドは高摩耗率を有す ることが判明した。XPEライナーと組み合わせ たセラミック大腿骨ボールヘッドと比較した場 合、1,010倍の高率、従来型PEライナーと組み 合わせたセラミック大腿骨ボールヘッドと比較 した場合、560倍の高率となった。メタル大腿 骨ボールヘッドに従来型とクロスリンクのPEラ イナーを組み合わせて使用したところ、ライナー 表面に明らかなスクラッチが見られたが、セラミッ ク大腿骨ボールヘッドに装着されたライナー表 面のスクラッチは、有意に少なかった。 考察と結語 この研究により、セラミック・コンポーネント 破損後に推奨されているセラミック・オン・セラ ミック以外に、セラミック・オン・PEとセラミッ ク・オン・クロスリンクPEベアリング・カップ ルもまた、実現可能性を有する治療オプション であることが実証された。セラミック関節コン ポーネント破損後のセラミック大腿骨ボールヘッ ド使用は、third-body摩耗に起因する摩耗と摩 耗関連合併症を最小限にとどめる。このインビ トロ研究と臨床所見の結果に基づくと、セラミッ ク破損後のメタル大腿骨ボールヘッドの関節使 用は、いかなるタイプのPEライナーと組み合わ せても、禁忌と考えられる。 21 文献: 1 Allain J et al. Revision Total Hip Arthroplasty Performed After Fracture of a Ceramic Femoral Head: A Multicenter Survivorship Study. J Bone Joint Surg Am 2003;85:825–830 2 Gozzini PA et al. Massive wear in a CoCrMo head following the fracture of an alumina head. Hip Int 2002;12(1):37–42 3 Hasegawa M et al. Cobalt-chromium head wear following revision hip arthroplasty performed after ceramic fracture – a case report. Acta Orthopaedica 2006;77(5):833–835 4 Kempf I et al. Massive Wear of a steel ball head by ceramic fragtments in the polyethylene acetabular cup after revision of a total hip prosthesis with fractured ceramic ball head. Acta Orthop Trauma Surg 1990;109:284–287 5 Matziolis G et al. Massive metallosis after revision of a fractured ceramic head onto a metal head. Arch Orthop Trauma Surg 2003;123(1):48–50 6 Traina F et al. Revision of a Ceramic Hip for Fractured Ceramic Components. Scientific Exhibit at the 78th AAOS Annual Meeting, San Diego, 2011 7 Thorey F et al. Early results of revision hip arthroplasty using a ceramic revision ball head. Semin Arthro 2011;22(4):284–289 8 Oberbach T. et al. Resistenz von Dispersionskeramiken gegenüber Dreikörperverschleiß. Abstract, Deutscher Kongress für Orthopädie und Orthopädische Chirurgie 2007 9 Pandorf T. et al. Abrieb von großen keramischen Gleitpaarungen. 55. Jahrestagung der Vereinigung Süddeutscher Orthopäden, Baden-Baden, 26.-29. April 2007 10 Trebše R et al. Clinical results after revision total hip arthroplasty for fracture of ceramic bearing surfaces. Abstract, 10th Congress of the European Hip Society, 2012 セラミック・ボールヘッド破損の際に行われたMoP治 療。セラミック破損後のMoP関節使用は禁忌とされて いる。セラミック粒子がPEインサート関節表面に付 着し、その結果メタル大腿骨ボールヘッドの重度破損 やメタローシスを誘発する可能性がある。 (出典:Stephan Horn, MD, ドイツ、ミュンヘン のHospital Barmherzige Brüder, Department of Orthopaedicのご厚意により掲載) 11 Hintner M et al. What an Orthopedic Surgeon Should Know: Selection of a Bearing Couple in Case of Revision After a Fractured Ceramic Component. Semin Arthro 2012;23:241-247 12 Traina F et al. Revision of Ceramic Hip Replacements for Fracture of a Ceramic Component. J Bone Joint Surg Am 2011;93:e147(1-9) 13 Sharma OP et al. Severe Metallosis Leading to Femoral Head Perforation. Orthopedics 2013;36(2):e241-e243 14 Fard-Aghaie MH et al. Traumatic Ceramic Femoral Head Fracture: An Initial Misdiagnosis. Open Orthop J 2012;6:362-365 15 O’Brien ST et al. Abrasive Wear and Metallosis Associated With Cross-Linked Polyethylene in Total Hip Arthroplasty. J Arthroplasty 2013;28(1):17-21 16 Pazzaglia UE et al. Cobalt, chromium and molybdenum ions kinetics in the human body: data gained from a total hip replacement with massive third body wear of the head and neuropathy by cobalt intoxication. Arch Orthop Trauma Surg 2011;131:1299-1308 17 Zywiel MG et al. Fatal cardiomyopathy after revision total hip replacement for fracture of a ceramic liner. J Bone Joint Surg Br 2013;95-B:31-37 18 Rizzetti MC et al. Loss of sight and sound. Could it be the hip? Lancet 2009;373:1052 19 Wittingham-Jones P et al. Fracture of a ceramic component in total hip replacement. J Bone Joint Surg Br 2012;94-B:570-573 20 Oldenburg M et al. Severe cobalt intoxication due to prosthesis wear in repeated total hip arthroplasty. J Arthroplasty 2009;24(5):825.e15-20 21 Ikeda T, Takahashi K, Kabata T, Sakagoshi D, Tomita K, Yamada M. Polyneuropathy caused by cobalt-chromium metallosis after total hip replacement. Muscle and Nerve, 42(10):140-143 22 Marques PMDC, Félix A, Alpoim B, Rodrigues ME, Sá P, Oliveira C, Rodrigues FL, Gonçalves P, Costa M, Rodrigues A. Fracturing of revision of a cobalt-chrome femoral head after fracturing of a ceramic femoral head, with diffuse metallosis. Rev Bras Ortop 2013;48(2):204-208 著者の連絡先 Robert Streicher, PhD CeramTec GmbH Medical Products Division CeramTec-Platz 1–9 D-73207 Plochingen Germany E-mail: [email protected] www.biolox.com [Free full text (pdf), English/Portuguese: http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid= S0102-36162013000200204] 23 Nho JH, Park JS, Song US, Kim WJ, Suh YS. Ceramic Head Fracture in Ceramic-on-Polyethylene Total Hip Arthroplasty. Yonsei Med J 2013;54(6):1550-1553 [Free full text (pdf): http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/ articles/PMC3809873/] 24 Traina F, Fine M, Martino Di A, Faldini C. Fracture of Ceramic Surfaces Following Total Hip Replacement: A Systemic Review. BioMed Res Int. Epub 2013 Jun 13 [Free full text (pdf): http://0-www.ncbi.nlm.nih.gov.elis. tmu.edu.tw/pmc/articles/PMC3697280/ CeraNews 1/ 2014 22 基礎科学 セラミック・オン・セラミック カップリングにおいて メタルイオン放出は懸念材料となるのか? Alina Beraudi, PhD1,2, Dalila De Pasquale1,2, Barbara Bordini1, Simona Catalani, PhD3, Susanna Stea, PhD1, Aldo Toni, MD1,4 1 2 3 4 Medical Technology Laboratory, Rizzoli Orthopaedic Institute, Bologna, Italy Lab. Prometeo-RIT, Rizzoli Orthopaedic Institute, Bologna, Italy Unit of Occupational Health and Industrial Hygiene, Department of Medical and Radiological Sciences and Public Health, University of Brescia, Italy Department for Orthopaedic-Traumatology and Prosthetic Surgery and Revisions of Hip and Knee Implants, Rizzoli Orthopaedic Institute, Bologna, Italy 序論 キーワード: ⃝クロムイオン ⃝セラミックス ⃝ ICP-MS ⃝トライボロジー BIOLOX ® ファミリーの新しいメンバー、BIOLOX®deltaは、均等に分散させたジルコニア粒 子とストロンチウム・ヘキサアルミン酸塩血小板 を含有したセラミック混合材質であり、破損に対 する耐性、強度、摩耗耐性のいずれもが、アルミ ナ単体の場合よりも上回っている。股関節置換術 装置への使用に際し、高い人気を博している;市 場導入時より、260万個のBIOLOX®delta大腿骨 ボールヘッド、さらに110万個のインサートが世 界各国でインプラントされている。 メタル・オン・メタル股関節装置には、クロム ならびにコバルト・メタルイオン放出が判明して いるものがあり、毒性効果をもたらすことも示さ れている。BIOLOX®deltaもまた、3価のクロム イオンを含有しており、アルミナ・マトリック スの中で3価アルミニウムイオンとランダムに置 換している。アルミナ格子と強固に結びついて はいるが、クロムイオンが最終的に体内に放出 されているのかどうかは実験的に証明されていな い。BIOLOX®deltaがイオン放出に関して完全に 生体適合性が有するのであれば、メタル・ベース のベアリング・カップルに替わる秀逸な選択肢と なりえる。 目的 本研究の目的は、患者の血液、赤血球、尿を 分析することにより、セラミックBIOLOX®delta ベアリングにおけるクロムイオンの生体内放出 を探知することである。 方法 BIOLOX ®delta-BIOLOX ®deltaカップリング による股関節全置換術を受けた患者20人(患者 群)と人工関節をインプラントされていない被 検者21人(コントロール群)を対象とし、過去 に何らかの形でクロム曝露経験のある者は除外 した。 血液サンプルは、バタフライ・ニードルを使 用して橈骨静脈から採取した。最初に採取した 3mlを廃棄した後、全血、血清、赤血球を得る ためにサンプル採取をさらに行った。無菌的尿 サンプル(10ml)を採取し、統一のサンプルポッ トに回収した。全サンプルは分析までの間、 -20℃で凍結保存した。ダイナミック・リアク ション・セル(DRC)-誘導結合プラズマ質量 分析(ICP-MS分析)が測定のために使用され た。検量線用溶液とサンプル溶液を蠕動ポンプで 噴霧室に注入した。バッチごとに汚染への補正対 策として、空試料を使用した。 血液、血清、尿に対するG-EQUASの認証標準 物質(環境上ならびに労働安全上)より得られた 平均値に基づき、本メソッドの精度を決定した。 結果 患者グループは女性10人、男性10人から構 成されており、平均年齢は59.9歳、平均体重は 71kgであった。15名が32mmの大腿骨ボール ヘッド、5名が36mmの大腿骨ボールヘッドを 使用していた。フォローアップは6-63か月後 の間に行われた。 コントロール・グループは女性7人、男性14 人から構成され、平均年齢57.2歳、平均体重 75kg、インプラントを装着している者はいなかっ た。 患者グループにおけるCrイオン値は以下の通 り;平均血液において0.21㎍/l(SD 0.09)、血 清において0.21㎍/l(SD 0.12)、正常化赤血球 において0.13㎍/l(SD 0.09)、正常化尿におい て0.12㎍/l(SD 0.13)であった。 コントロール・グループにおけるCrイオン値 は以下の通り;平均血液において0.22㎍/l(SD 0.14)、血清において0.17㎍/l(SD 0.08)、正常 化赤血球において0.13㎍/l(SD 0.11)、正常化 尿において0.07㎍/l(SD 0.08)であった。 ラボ基準値は、血液0.1-5.0㎍/l、血清0.1-0.5 ㎍/l、正常化赤血球0.14-4.58㎍/l、尿0.05-2.2 ㎍/lであった(Fig.1a-d)。 結論 患者グループ、コントロール・グループにお けるすべての血液、血清、尿、赤血球(六価ク ロムのマーカ)サンプルは、分析を行ったラボ 設定の内部基準範囲内にあるレベルのクロムを 含有していた。電力解析は充分であると示され た(95%)。 本研究により、BIOLOX®deltaセラミックスが イオン放出という点において安全であり、メタ ル・カップリングに替わる秀逸な選択肢である ことが示された。 23 Chromium concentration in whole blood 全血におけるクロム濃度 a) 5.0 0.8 23 µg/l 0.6 0.4 0.2 0 Patients 患者群 Controls コントロール群 Chromium concentration in erythrocytes 赤血球におけるクロム濃度 b) 4.5 0.8 µg/l 0.6 28 0.4 0.2 0 c) 1.0 Patients 患者群 Controls コントロール群 Chromium concentration in serum 血清におけるクロム濃度 0.8 µg/l 0.6 0.5 0.4 0.2 0 d) 1.0 Patients 患者群 Controls コントロール群 Chromium concentration in urine (normalized) 尿におけるクロム濃度(正常化) クレアチニン µg/gr creatinine 0.8 0.6 10 0.4 41 0.2 32 0 Patients 患者群 Controls コントロール群 Laboratorio di Tecnologia Medica in Bologna イタリア、ボローニャにあるLaboratorio di Tecnologia Medica(医療技術研究所)の使 命は、筋骨格系疾病の予防、診断、治療、観 察、機能回復に役立つあらゆる革新的技術を開 発、実証して臨床治療に適用することである。 整形-外傷外科、人工関節外科、股関節・膝 関節置換外科と協力し合いながら、Dr. Aldo Toniの指揮のもと、研究所は臨床・研究ユニッ トを結成している。 研究所の構成メンバーは、およそ40名であ り、スタッフには上級・下級研究員はもとよ り、学部学生・院生も含まれている。組織は 5つの研究ユニットに分かれている。 Susanna Stea, PhDが率いるBiology Unit は、下記に掲げたテーマについての研究を行っ ており、中にはRizzoli Institutesの内部、なら びに外部の研究機関と協力しながら進めている ものもある。 ⃝SEM - EDS(走査型電顕-エネルギー分散型 X線分析装置)や形態学的分析を用いた、人 工関節装着患者の関節液や組織内に存在す る摩耗粉の分離 ⃝ICP - AES(誘導結合プラズマ分光解析)を 用いた、人工関節装着患者の頭髪に含有さ れるメタルイオンの測定分析 ⃝骨組織形態計測 ⃝人工関節装着患者の関節液中のサイトカイ ン量 ⃝人工関節周囲軟部組織の組織学-摩耗の量的 評価 ⃝摘出インプラントポリエチレン標本における 結晶化度と酸化生成物の定義 ⃝健常骨組織と病的状態にある骨組織、インプ ラント関連の他のバイオ材質における微小硬 度の評価 ⃝骨のホメオスタシスインビトロ評価のための 骨細胞培養 著者の連絡先 : Susanna Stea, PhD Medical Technology Laboratory Rizzoli Orthopaedic Institute via di Barbiano, 1/10 I-40136 Bologna Italy Phone: +39 051-6366861 Fax: +39 051-6366863 E-mail: [email protected] 謝辞 Fig.1:全血(a)、赤血球(b)、血清(c)、尿(d)におけるクロムイオン・ レベルは、分析を行ったラボ設定の内部基準範囲内にある。 この研究は、CeramTec GmbHにより一部資金援助を受けまし た。また、Italian Ministry of Healthからの助成金に対しても、 心より感謝の意を表します(Grant RF-20)。 CeraNews 1/ 2014 24 インプラント病理学 人工股関節置換術で使用される 金属コンポーネントに関連する 病理学的知見の管理におけるベアリング交換 Sylvia Usbeck著 過去数年の間に、人工股関節置換手術におけるメタル(CoCrMo)コンポーネント関連の広範にわ たる病理学的所見に関する症例報告数が増加した。成功したはずの股関節置換術の手術部位周辺に原 因不明の痛みや腫脹がみとめられたら、外科医はメタル・コンポーネントを可能性ある原因の一つと して意識する必要がある。しかし、多くの症例報告書においては、メタルあるいはPE破片の有無およ び量の測定あるいは分析が行われていないため、研究は限界であり、この状況下ではまだ、明確な結 論を出せないことを示している。 真性糖尿病、自己免疫疾患および低pHに関連する他の炎症性疾患などの患者の素因が、高血糖症 やあるいはpHの変動によって引き起こされた局部環境条件の変化の影響を受けるメタルインプラン トの腐食挙動に影響するかどうかはまだ調査されていない。歯科インプラントに関しては、最近発表 された研究において、このことはすでに実証されている。 また、関節置換術におけるメタル破片に対する有害反応、腐食現象、インプラントに対するアレル ギー反応、および人工関節周囲感染症についても、患者特有の要因を十分考慮した上で、理論的な考 察および調査を行わなくてはならない。問題が複雑であるため、医学、歯学および材料科学等、多方 面の専門家間の協力体制を構築して初めて、根本的な知識集積が期待される。 症例報告 MoXPEとMoP THAに関連する病理学的知見の管理におけるベアリング交換 Maoら(オーストラリア)は、固定状態良好 て、前外側部に柔軟な、軟部巨大軟部組織腫瘤 mm)を受けた71歳女性患者の大転子偽腫瘍形 包全体、短外旋筋群および中臀筋の腱部におよぶ なセメント非使用MoXPE THA(ヘッド径3 2 成を術後7年時点で診断した。著しい表面腐食 がボール・ネック接合部に認められた。液体で 満たされた20cmの大転子滑液包を手術中に発見 した。 患者のインプラントは、成功裏にCoCベアリ ングカップル(ヘッド径32mm)に再置換され た。術後の合併症はなかった。著者らは、現在患 者は全く無症状であると報告した。同患者はその 後、滑液包の再発はなく、全身的に良好で痛みも なかった。 Scullyら(米国)は、固定状態良好なハイブ リッドMoXPE THA(ヘッド径32mm)関連炎 症性偽腫瘍の術前症状、画像結果および手術所見 について考察した。術後約7年から2年間、80 と体液の貯留が明らかになった。手術中、股関節 広範な壊死が認められた。臼蓋窩と大転子周囲で 空洞病巣を持つ壊死性骨を発見した。著者らは、 ヘッド・ネック接合部に腐食を認めた。術中、関 節鏡を用いて観察を行ったところ、メタル大腿骨 ヘッド内のトラニオン沿いの表面腐食と破片が明 らかになった。関節包と短外旋筋群は損傷が著し く、最低限の修復のみを行った。メタル大腿骨ボ ールヘッド(32mm)をセラミック大腿骨ボー ルヘッド(BIOLOX ® delta、36mm)に再置換 し、XPEインサートを交換した。著者によれば、 術前の症状は完全に消失したとのことである。患 者には脱臼に関しても問題があったため、将来的 に拘束型ライナーに再置換することが計画されて いる。 歳男性患者は、右股関節に進行性鈍痛と、徐々に Walshら(カナダ)は、セメント非使用MoXPE とメタルアーチファクト低減シーケンス M R I によっ 組織病理学的変化に関連した、典型的な骨盤外炎 大きさを増す軟部組織の突出を訴えた。身体所見 THA(ヘッド径36mm)後のALVALと一致する 25 症性偽腫瘍について報告した。著者らは、MoX- インプラントのゆるみは認められなかった。MRI sensitivity)が原因であることを確認した。 腫瘤があることが明らかになった。生検で、マク PEベアリングカップルに対する過敏性(hyper 術後約2年で、合併症を有する79歳男性患者 が臀部の腫瘤の肥大化と疼痛、食欲不振、体重 減少を訴えた。放射線検査においては、カップ 移動や過度の摩耗は認められなかった。設置角 は46°、前傾角は24°、ステムの前捻角は、15°で あった。軟組織腫瘤の生検が行われた。組織学的 所見が炎症性偽腫瘍と一致し、同患者は、再置換 術を受けた。著者らは、カップは良好に固定され ており、ステムのテーパーに損傷がなかったと報 告した。MoXPE関節はCoCベアリングカップル と交換された。摘出された金属製大腿骨ボール ヘッドおよびXPEインサートに異常な摩耗は認 められなかった。 術後の合併症はなく、同患者は完全に無症状に なった。1年後のフォローアップで、同患者の術 前の症状は完全に消失したことが確認された。 Picardoら(イギリス)は、ALVALの組織学 的特徴を持つMoP偽腫瘍について説明した。著 者らは、セメント非使用MoP THA(ヘッド径 28mm)の術後5年後に、骨盤まで拡大した偽 腫瘍を発症した71歳女性患者の症例について報 告した。偽腫瘍は、大腿静脈を圧迫し、深部静 脈血栓症を引き起こした。臨床所見は、鼠径部の によって、インプラント周囲に4.3cm×5.2cmの ロファージ浸潤物とリンパ球浸潤物を伴う壊死細 胞が認められた。患者は再置換術を受けた。術中 所見で、密集した黄灰色の大きな炎症組織が股関 節にまで拡大し、カップを取り囲む様子がみとめ られた。著者らは、PEインサートが多少摩耗し ていたと指摘した。組織学的検査で、メタル摩耗 粒子は発見されなかった。著者らは、患者は通常 量のメタル破片に対する過敏性を有していた可能 性を示唆した。腫瘤は摘出された。組織のサンプ ルにより、偽腫瘍と一致する所見が明らかになっ た。カップを交換し、MoPベアリングカップル をCoCベアリングカップル(ヘッド径40mm) に再置換した。CoCベアリングカップルへの再 置換が行われたが、合併症も起きず、症状の消失 につながった。著者らは、患者の回復が順調であ ると報告した。患者は、有害反応や合併症なしに 順当に回復した。CoC THAが問題を解決したと 考えられる。 「セラミック・オン・セラミック ベアリング表面への再 置換により、問題の原因が取り除かれ、6ヶ月後のMRI で、偽腫瘍が繊維化されていることが確認され、いかなる 症状もみとめられなかった。」 – Picardoら, p.764 痛み、3cmの脚長差および触知可能な腫瘤であ り、歩行距離の制限を認めた。エックス線検査で 症例報告 MoM人工股関節置換手術に関連する病理学的知見の管理におけるベアリング交換 Algarniら(カナダ)は、MoM THA(ヘッ ド径28mm)の術後5年後にiliopsoas bursal 反応が認められた。設置位置不良のカップを摘 cystic lesionを発症した59歳女性患者の症例に 出し、MoMベアリングカップルをCoCベアリン グカップル(BIOLOX®delta)に再置換し、結果 していた9cm×4cm×4cmのiliopsoas bursal 完全に消失した。1年後のフォローアップで、患 ついて報告した。MRIにより、大腿静脈を圧迫 cystが明らかになった。穿刺液のメタルイオン 濃度測定により、高濃度のクロム(83μg/g) とコバルト(17μg/g)が検出された。これら は極めて良好であった。術後、患者の術前症状は 者が合併症や有害反応の兆候がないことが確認さ れた。 の所見と、不適当なカップ位置がEdge loading と過剰なメタル摩耗粉の発生原因となった事実に 基づき、著者らは、金属破片に対する炎症反応が 原因であると示唆した。術中所見では、極度に炎 「本症例において、著者らは、患者が比較的若いこと、 症を起こし、金属で汚染された滑膜と、灰色の乳 さらにクロム、コバルトのメタル粒子ならびにイオンによ 兆候はなかった。著者らは、貯留液のドレナー リエチレンベアリングではなくセラミック・オン・セラミッ 状の液体がみとめられた。頭頸接合部に腐食の る負担を低減させることを理由として、メタル・オン・ポ ジ、可及的な滑膜切除および滑液包部分切除を クベアリングを選択した。」 行ったと報告した。摘出した嚢胞の組織学的検 – Algarniら, p.1069 査で、ALVALの兆候および異物に対する典型的 CeraNews 1/ 2014 26 インプラント病理学(続き) Kempら(イギリス)は、MoM HRに代えて 大 径 CoCハイブリッドTHAを行うことにより、 3件の偽腫瘍形成症例において、関連する軟部 組織反応の急速な消失が臨床的にも、MRI所見に おいても確認された、と報告している。 すべての症例において、診断は、ALVALであっ たことが組織学的に確認された。 MoM HR手術の6年後に、49歳女性患者の 左大腿部の表面組織に、痛みを伴わない20cm× 8cmの軟部組織腫瘤が見つかった。術中所見で は、肥大した滑液包、腸腰筋腱の肥厚およびス テムのゆるみが認められた。広範囲にわたる病 変の創面切除は行われなかった。MoM HRに代 えてCoCハイブリットTHAを実施した。 MoM HRの6ヶ月後に、52歳女性患者は、右 鼠径部、臀部および大転子に痛みをおぼえ、18ヶ 月経過するまでに腸腰筋のインピンジメントの 兆候に進行した。術中所見では腸腰筋中から骨 盤まで拡大した巨大偽腫瘍およびステムのゆる みが認められた。軟組織腫瘤の部分切除が行 わ れ た 。 M o M H R に 代 えてC oC ハイブリット THAを実施した。術後6ヶ月のMRI検査で殿筋 の萎縮が認められたが、識別可能な病変はなかっ た。 MoM HR手術の63ヶ月後に、58歳女性患者 は、左股関節に激しい痛みを感じるととも に 、 鼠 径 部 に 大 き な 腫 脹を発見した。MR I で 8cm×5.5cmの壁が薄い嚢胞構造がみとめられ た。初回手術から66ヶ月後に再置換手術を行っ た。術中所見では、股関節前方に液体で満たさ れた壊死塊があり、大腿神経下から大腿部内側 面まで拡大していることが確認された。MoM HRに代えてCoCハイブリッドTHAを実施した。 鼠径部腫脹は消失し、11ヶ月後のMRI検査で病 変の著しい縮小が明らかになった。 すべての症例の再置換手術において、創面切 除は限定的であった。患者のインプラントを CoCハイブリッドに再置換するTHAが行われ た。すべての症例で、腫脹の急速な臨床的消失 が認められた。骨盤まで拡大した巨大偽腫瘍の 52歳女性患者の症状改善はその後も続き、病変 は消失した。著者らは、比較的良性の嚢胞性腫 脹から骨溶解や広範な組織壊死に及ぶ病変重症 度の明確な変化に注目した。同氏らは、初期段 階においては、MoMベアリングカップルをCoC ベアリングカップルに再置換する際、軟部組織 の創面切除に対して保存処置的アプローチをと ることにより、回復時間は短くなり、またそれ が適切な選択肢であるように思われると指摘し た。 Rajpuraら(イギリス)は、ALVALが原因で 失敗(failure)したMoM人工股関節置換術(主 にHR)を受けた13名の患者(男性:8名、女 性:5名)についての症例を述べた。著者らによ ると、軟部組織損壊程度によっては、再置換術 の難度が高まる場合もあるとのことである。同 氏らの意見では、軟部組織欠損は骨欠損より懸 念材料となる。 初回手術時の患者の平均年齢は56(22~67) 歳であった。平均フォローアップ期間は21(12 ~40)ヶ月であった。ALVALの診断が組織学的 に確認された。全患者が原因不明の鼠径部の痛み を経験していた。4例に大転子部に腫瘤を、1例 に再発性巨大滑液包腫瘤を、3例に「グライディ ング(grinding)」、 「ロッキング(locking)」、 「グ レイティング(grating)」などの機械的異常 を、3例に再発性の脱臼を、1例に坐骨神経麻 痺を認めた。放射線検査の結果、3例にカップ のゆるみを、2例に頚部の骨菲薄化を認めた。術 中の所見で広範にわたる軟部組織壊死(6例)、 滑液包の腫脹およびクリーム状の茶色の液体が認 められた。6例の患者に軟部組織の損壊が認めら れた。骨溶解はほとんど認められなかった。どの 患者にも可視できるメタル片はなかった。著者ら は、手術所見は典型的で、症状はベアリング表面 の交換後概ね消失したと指摘した。 再手術は術後平均45(15~87)ヶ月で行わ れた。1,213例中12例に再置換術を行った。1 例に対して滑液包の腫脹と外転筋壊死が広範囲 にわたっていたため、人工関節の抜去のみ行っ た。著者らは、このような再置換症例ではMoM ベアリングカップルを使用すべきでないと強調 し、インピンジメントあるいは設置位置不良が 原因でALVALが起こった場合、コバルトとクロ ムに対する感作が要因として排除できないこと を指摘した。 10例の患者にCoCベアリングカップル(ヘッ ド径:36mm) 、2 例の患者にMoPベアリングカッ プルを使用した。即座に痛みが改善したと全患者 が報告した。著者らは、手術後も5例の患者に軽 い痛みが残っていたが、手術前の症状よりかなり 改善したと指摘した。その他の術後合併症は報告 されなかった。著者らは、広範囲にわたる軟部組 織損傷の症例における長期転帰は依然として不透 明であると結論付けた。 Werleら(カナダ)は、両側MoM HRを受け た45歳女性患者について報告した。同患者は、 左股関節の動きの制約と左大腿部の痛みと徐々に 大きさを増していく腫脹を訴えていた。検査では 腸腰炎あるいはインピンジメントの兆候は認めら れなかった。MRI検査により、坐骨神経を覆って いる18cm×9cm×5cmの偽腫瘍が認められ、 坐骨神経の感覚異常の原因が明らかになった。 病変に対してインプラントの交換と偽腫瘍の切 除を行った。MoM HRに代えてCoC THAを実施 した。著者らは、患者の術前症状が完全に消失 し、メタルイオンレベルが基準値に戻ったこと で右側MoM HRは良好に機能していることが示 唆されると報告した。 略語 文献 Algarni A, Huk OL, Pelmus M. Metallosis-induced Iliopsoas Bursal Cyst Causing Venous Obstruction and Lower-limb Swelling After Metal-on-Metal THA. Orthopedics 2012;35(12):1066-1069 27 AAOS 米国整形外科学会 ALTR 局所組織有害反応 ALVAL 非感染性リンパ球優位血管炎関連病変 Kemp MA, Mitra A, da Costa TM, Spencer RF. Bearing exchange in the management of pseudotumours. Ann R Coll Surg Engl 2013;95:266-270 AMC アルミナマトリックス複合材料 Mao X, Tay GH, Godbolt DB, Crawford RW. Pseudotumor in a Well-Fixed Metal-on-Polyethylene Uncemented Hip Arthroplasty. J Arthroplasty 2012;27(3):493.e13-493.e17 APC 抗原提示細胞 CoC セラミック・オン・セラミック Picardo NE, Al-Khateeb H, Pollock RC. Atypical pseudotumour after metal-on-polyethylene total hip arthroplasty causing deep venous thrombosis. Hip Int 2011;21(6):762-765 CoCrMo コバルト・クロム・モリブデン CoP セラミック・オン・ポリエチレン CoXPE セラミック・オン・XPE Rajpura A, Porter ML, Gambhir AK, Freemont AJ, Board TN. Clinical Experience of Revision of Metal on Metal Hip Arthroplasty for Aseptic Lymphocyte Dominated Vasculitis Associated Lesions (ALVAL). Hip Int 2010;21(1):43-51 Cr クロム CRP C反応性蛋白 Scully WF, Teeny SM. Pseudotumor Associated With Metal-on-Polyethylene Total Hip Arthroplasty. Orthopedics 2013;36(5):e666-e670 DDH 臼蓋形成不全による変形性股関節症 DGOOC ドイツ整形外科および整形外科手術学会 DKOU ドイツ整形外科および外傷学学会 DRC ダイナミック・リアクション・セル EBJIS ヨーロッパ骨関節感染症学会 EICS ヨーロッパインプラントコホート研究 ESCMID ヨーロッパ臨床微生物学および伝染性疾患学会 ESGAI ヨーロッパインプラント関連感染症研究会 ESR 赤血球沈降速度 ETS ヨーロッパ外傷学会 HR 股関節表面再建術 ICP-MS 誘導結合プラズマ質量分析法 Walsh AJ, Nikolaou VS, Antoniou J. Inflammatory Pseudotumor Complicating Metal-On-Highly Cross-Linked Polyethylene Total Hip Arthroplasty. J Arthroplasty 2012;27(2):324e5-324e8 Werle J, Bali K. Pain and swelling after MoM THR. SICOT Newsletter No.135, 2013:9 [The full version of this case report can be found on the SICOT website www.sicot.org/?d_page=690. Login required] 追加文献 Almousa SA, Greidanus NV, Masri BA, Duncan CP, Garbuz DS. The Natural History of Inflammatory Pseudotumors in Asymptomatic Patients After Metal-on-Metal Hip Arthroplasty. Clin Orthop Relat Res 2013;471(12):38143821 Asencio G, Essig J, Nourissat C. Abnormal local tissue reaction after total hip arthroplasty with a modular Co-Cr femoral piece. Paper 269, SOFCOT 2011 Campbell P, Shimmin A, Walter L, Solomon M. Metal Sensitivity as a Cause of Groin Pain in Metal-on-Metal Hip Resurfacing. J Arthroplasty 2008;23:1080-1085 Cooper HJ, Della Valle CJ, Berger RA, Tetreault M, Paprosky WG, Sporer SM, Jacobs JJ. Corrosion at the Head-Neck Taper as a Cause for Adverse Local Tissue Reactions After Total Hip Arthroplasty. J Bone Joint Surg [Am] 2012;94:1655-1661 ISOC 国際整形外科センター学会 ISTA 国際人工関節技術学会 MHC 主要組織適合性遺伝子複合体 MoM メタル・オン・メタル MoP メタル・オン・ポリエチレン MRI 磁気共鳴映像法 MoXPE メタル・オン・XPE NIS 全国入院患者サンプル PCR ポリメラーゼ連鎖反応 PE ポリエチレン PJI 人工関節周囲感染症 Jameson S, Ramisetty N, Langton D, Webb J, Logishetty R, Nargol A. ALVAL: Diagnosis, incidence and treatment in contemporary metal-on-metal bearings. Paper F 11, EFORT 2008 SEM 走査電子顕微鏡法 SSI 手術部位感染 Kawakita K, Shibanuma N, Katsumasa T, Nishiyama T, Kuroda R. Large Diameter Metal-on-Metal Total Hip Arthroplasty. J Arthroplasty 2013;28(1):197e1-197.e4 TCR T細胞受容体 THA 人工股関節置換術 THR 人工股関節全置換術 TKA 人工膝関節全置換術 TLR トール様受容体 TSA 人工肩関節全置換術 UKA 膝関節片側顆部置換術 WBC 白血球 XPE クロスリンクポリエチレン Fujishiro T, Moojen DJF, Kobayashi N, Dhert WJ, Bauer TW. Perivascular and Diffuse Lymphocytic Inflammation are not Specific for Failed Metal-on-metal Hip Implants. Clin Orthop Rel Res 2011;469(4):1127-1133 Harvie P, Giele H, Fang C, Ansorge O, Ostlere S, Gibbons M, Whitwell D. The treatment of femoral neuropathy due to pseudotumour caused by metal-on-metal resurfacing arthroplasty. Hip Int 2008;18(4):313-320 Kosukegawa I, Nagoya S, Kaya M, Sasaki K, Sasaki M, Yamashita T. Revision Total Hip Arthroplasty Due to Pain From Hypersensitivity to Cobalt-Chromium in Total Hip Arthroplasty. 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Orthopaedic Surgery, Showa University, Fujigaoka Hospital, Yokohama, Japan トライボロジー的観点から見ると、若く活動的 なDDH患者であっても、CoCベアリングカップ ルを使用することで人工股関節の長期耐用がみこ まれる。DDH(CroweⅠ~Ⅳ)患者における CoCベアリング・カップルについては、多数の 症例から得た中長期的調査結果に関する学術発表 は僅かしか存在していない。最近の研究成果とし ては、ベルリンで2013年10月25日、German Congress of Orthopaedics and Trauma Surgery(DKOU:ドイツ整形外科手術および外傷 手術学会)で草場 敦MD, PhDによって発表され たものがある。座長らは博士の発表が今学会のハ イライトとなったことを認めた。 プル(28mm, Sikomet®, Endoplus AG)が 479の股関節に、ハイカーボンMoMベアリン グ(28mm,Metasui®, Zimmer AG)が73の股 関節にそれぞれ使用された。手術時の患者平均年 齢は、57歳であった。平均フォローアップ年数 は5.3年(0.1~15.5年)であった。手術前診断 は全例臼蓋形成不全による二次性変形性股関節症 で、このうち155関節は骨切り術後(Fig.1)で、 また関節は未整復の先天股脱(CroweⅣ) (Fig. 2)であった。再置換術をエンドポイントとす るサバイバル・レートの決定にはKaplan-Meier 法とログランク検定を用いた。. 要旨 X線写真ではCoCベアリング・カップルの患者 に骨溶解は認められなかった。一方、ハイカー ボンMoMベアリング・カップルとローカーボン MoMベアリング・カップルの股関節にはそれぞ れ1関節(1.4%)と40関節(8.4%)の骨溶解 が認められた。CoCベアリング・カップル(28 mm, BIOLOX ® forte)を使用した股関節2関 節(0.1%)初回置換術中使用した不適切な手術 ツールに端を発するセラミック・インサートの 破損を認めた。ローカーボンMoMベアリング・ イントロダクション 今日にいたるまで、若くて活動的な二次性変形 性股関節症の患者に対する初回セメントレス人工 股関節全置換術について、その中長期的調査結果 を多数の症例で示したデータはほとんどなかっ た。インプラントの骨溶解率低減ならびにサバ イバル期間の長期化を狙って、我々はハード・ オン・ハードベアリング・カップル を使用してきた。本研究の目的はそ 1 の再置換率および合併症発生率を分 析することにある。 結果と結論 2 方法 1997 - 2012年にかけて1,879人 の患者に対しインプラントされたハー ド・オン・ハード ベアリングカッ プルによる2,395症例のセメント レス股関節置換の臨床結果ならび にX線検査結果を評価した。アル ミナセラミック製のCoCベアリ ング・カップルが1,814の股関節 に(CeramTec GmbH製造BIOLOX ® forte28mmと32mmがそ れぞれ1,772と42の股関節に)イ ンプラントされた。2011年からは ジルコニア強化型CoCベアリング・ カップル(32mm, B I O L O X ®delta, CeramTec GmbH)が29の 股関節にインプラントされた。ロー カーボンMoMベアリングカッ Fig.1:手術前診断:骨切り術後155関節 Fig.2:手術前診断:CroweⅣ(47関節) 29 カップルについては、合併症(メタローシス、 超過敏反応、骨溶解)のため股関節24関節で再 置換が必要となった。ハイカーボンMoMベアリ ング・カップルについては、メタローシスによ り股関節1関節(1.4%)で再置換術が実施され た。5年後のサバイバル・レートはCoCおよび ハイカーボンMoMベアリング・カップルで100 %、ローカーボンMoMベアリング・カップルで 99.8%であった。10年後のサバイバル・レー トはCoCベアリング・カップル99.4%、ハイカー ボンMoMベアリング・カップル96.4%、ローカー ボンMoMベアリング・カップル96%であっ た。14年後のサバイバル・レートはCoCベアリ ング・カップル98.2%、ハイカーボンMoMベア リング・カップル96.4%、ローカーボンMoMベ アリング・カップル80%であった。 今回の一連の症例で、破損の原因として人工 関節周囲骨溶解が認められなかったのはCoCベ アリング・カップルのみであった。 (Fig.3)追加 の長期的データは現在作成中である。 結果:骨溶解 Result: Osteolysis 有病率(%) Prevalence (%) 0 0 Ø 32mm 2mm CoC CoC, , 32mm径CoC Alumina matrix composite アルミナ・マトリックス・コンポジット ®delta) (BIOLOX®delta) (BIOLOX Ø 28mm 8mm CoC CoC, , 28mm径CoC Alumina アルミナ ®forte) (BIOLOX®forte) (BIOLOX 0 p=0,000 t=89,74 0 Ø 32mm 2mm CoC CoC, CoC, 32mm径CoC Alumina アルミナ ®forte) (BIOLOX®forte) (BIOLOX 草場敦MD,PhD(日 本)は海老名総合病 院リウマチ科部長。 日本リウマチ学会指 導医・評議員で日本 整形外科学会認定 医である。German Orthopaedic Society(DGOOC) およびInternational Society for Technology in Arthroplasty(ISTA)の 会員でもある。博士は日本人外科医として はただ一人、German Orthopaedic Societyの年次総会で毎年発表を行っている。英 語あるいはドイツ語での成書、論文、発表 多数。博士は日本とドイツで医師免許を取 得。CroweⅣDDHや再置換などの困難な症 例においても、「ベアリング・カップル優 先」というのが、股関節置換術におけるポ リシーである。 連絡先 草場敦博士 〒243-0433 神奈川県海老名市河原口1320 海老名総合病院 人工関節・リウマチセンター 電話:+81-462-33-1311 ファックス:+81-462-32-8934 E-mail:[email protected] Ø 28mm 8mm mm MoM 5.0 28mm径MoM low-‐carbon (Sikomet®) ) ローカーボン(Sikomet® Ø 28mm 8mm mm MoM 1.4 28mm径MoM high-‐carbon (Metasul®) ハイカーボン(Metasul® ) Fig.3:CoCベアリング・カップルにおいては、骨溶解によるfailureは皆無であっ た。 CeraNews 1/ 2014 30 HEInz MITTElMEIER RESEARCH AWARD CoCベアリング・カップルにおける摩耗の研 究にHeinz Mittelmeier Research Award カナダ、ウィニペグのConcordia Joint Replacement Group (CJRG) 、 Biotribology Team、テクニカルディレクター、Jan-M. Brandt, PhDは、 2013年10月25日、ドイツ整形外科・外傷外科学学会(German Congress of Orthopaedics and Traumatology、DKOU)においてHeinz Mittelmeier Research Awardを授与された。 ドイツ整形外科学会(The German Society of Orthopaedics and Orthopaedic Surgery、DGOOC)は博士の「最新のセラミック・オン・セ ラミックを使用した人工股関節における臨床的失敗(failure)の分析」に ついてその功績を讃えて本賞を授与した。賞金5,000ユーロと共に贈られ た本賞はCeramTecの寄贈によるものである。 研究のテーマとなったのはセラミック・オン・セラミックベアリング・ カップル(BIOLOX®delta, BIOLOX®forte, CeramTec GmbH)による人 工股関節置換における生体内摩耗である。この研究のため、Brandt博士と その研究チームは34のエクスプラントを分析した。博士は、カップ設置が 急峻すぎるとstripe wearが発生し、理想的な潤滑状態であっても金属転移 によってマイナスの影響を受ける可能性があるとの結論に達した。 要旨 THAにおける最新のセラミック・オン・セラミックベアリング・ カップルの臨床失敗分析 THAにおけるセラミック・オン・セラミックベアリング・カップルの失 敗分析は生体内摩耗挙動を見極めるために実施された。エクスプラント34 例の分析では表面変化の定量的評価、表面の粗さならびに真円度の測定、 電顕像評価などを行った。 セラミック大腿骨頭およびインサートの表面変化度合いは、インプラン ト期間と相関関係にあった。また、セラミック大腿骨頭の線摩耗は、金属 転移ならびに線状摩耗(stripe wear)度合いとも相関関係があった。カッ プ設置角が45度以上である場合、セラミック・インサートの表面変化は 2.2倍であることが観察された。この場合セラミック大腿骨頭の線摩耗率は 25.5±21.3μm/年であった。これはカップ設置角が45度以下の場合におけ る4.2±2.3μm/年の6倍であった。セラミック・オン・セラミックベアリ ング・カップルへの金属転移は最適な潤滑状態を損なう可能性があり、加 えてカップ設置が急峻であると、線状摩耗(stripe wear)に至る可能性も ある。 Orthopedic Innovation Centre(カナダ、ウィニペグ)では10年間に 815のセラミック・オン・セラミックベアリング・カップル(BIOLOX ® forte)がインプラントされた。このコーホートの内、9名の患者に再置換 が行われた。サバイバル・レートは98.9%である。したがって、セラミッ ク・オン・セラミックベアリング・カップルは若くて活動的な患者にとっ て今後も安全な選択肢となる。 Jan-M.randt,PhD は2009年からカナ ダ、ウィニペグの Concordia Joint Replacement Group(CJRG)、 Biotribology Team のテクニカルディレ クターを務めてい る。2009年、カナ ダのUniversity of Waterlooで、人工膝関節のトライポロジー 挙動に関する論文により、博士号を取得し た。 Brandt博士はUniversity of Manitoba, Department of SurgeryのAssistant Professorで、Canadian Orthopaedic Associationの会員であり、カナダ、ウィニペグ のOrthopaedic Innovation Centerでテク ニカル・コンサルタントを務めている。 CJRGのBiotribology Teamは、工学研究 に基づく医療技術発展の推進をその使命と してきた。Orthopaedic Innovation Centre(OIC)との連携により、CJRGはエ クスプラント・分析室、シミュレータ ー、FEA、ラピッドプロトタイピング、測 定装置など最新鋭の施設を使用することが できる。 連絡先 Jan-M. Brandt, PhD Concordia Joint Replacement Group 1155 Concordia Avenue Suite 310 CA-Winnipeg, MB R2K 2M9 Canada E-mail: [email protected] www.orthoinno.com 新着情報 31 書籍の紹介 セラミック・インプラントの取扱い:ポケットガイド / eブック 初回手術におけるセラミック・インプラントの取扱い臨床ガイド ブックが2014年第4四半期にSpringerから出版されます。このポ ケットガイドは、整形外科医向きに書かれたもので、総合的な情報 を手早くお届けいたします。ガイドとして役立つよう工夫されてお り、プライマリーケアにおけるセラミック・インプラント取扱いの ための価値ある情報が分かりやすくコンパクトにまとめられていま す。 このポケットガイドには英語版とドイツ語版があります。 The International Consensus Meeting on Periprosthetic Joint Infection 抄録 2013年7月31日と8月1日、米国フィ 達成された業績について、最新の知見を参加者が体系的に ラデルフィアで、世界中から400人を超 まとめました。 える整形外科医が参加してThe Interna議事録(完全版)はEFORTウェブサイト tional Consensus Meeting on Periprosthetic Joint Infectionが開催され (https://www.efort.org/wp-content/uploads/2013/10/Philaました(座長:Javad Parvizi MD, PhD, delphia_Consensus.pdf)から無料でダウンロードできます。 FRSCS(アメリカ)、Thorsten Gehrke MD, PhD(ドイツ)。人工関節周囲感染 症の予防、診断、治療およびこの分野で 筋骨格系感染症:原理・予防・診断・治療 Swiss Society for Orthopaedics and Traumatology(swiss orthopaedics)は2006年に「筋骨格系感染症」 Grundlagen, Prophylaxe, Diagnostik und Therapie 専門家グループを立ち上げました。同グ ループは専門的な訓練・経験を積んだ感 染症スペシャリストおよび微生物学者と 学術的な連携を図っています。 2013年からこの専門家グループは研 修用として、また、重要な局面での指針 として、整形外科外傷医、感染症スペシャ Infektiologischer Pass リストのすべてを対象に参考図書を提供 しています。具体的な症例について重要 な情報を直ちに知ることができるよう、 個々の局面でどう手を打つべきか指針と して示してあります。筋骨格系感染症の 原理・予防・診断・治療を解説し、こう した感染症の治療によく見られる誤りに ついても分かりやすくコンパクトにまと めてあります。本書は、整形外科医、感 染症スペシャリストのグループそれぞれ が待ち望んでいた、両者間の緊密な協力 Infektionen des Bewegungsapparates Herausgegeben durch die Expertengruppe „Infektionen des Bewegungsapparates“ der Schweiz. Gesellschaft für Orthopädie und Traumatologie (swiss orthopaedics) und der Schweiz. Gesellschaft für Infektiologie SGInf (Swiss Society for Infectious Diseases). Deutsche Erstausgabe im Eigenverlag swiss orthopaedics. Grandvaux 2013 uk* Krea** Andere Parameter** für Verlaufskontrollen bei orthopädischer Infektbehandlung mit Antibiotikatherapie. Durch den Patienten bei allen Konsultationen mitzubringen! Geb Name / / Diagnose Antibiotika-Allergie Informationen für den Arzt Bei diesem Patienten haben wir einen Knochen- bzw. Gelenksinfekt operativ saniert und eine Antibiotikatherapie eingeleitet. Um den Verlauf der Therapie zu kontrollieren, sind wir auf die lückenlose Dokumentation der laborchemischen Parameter angewiesen. Wir bitten Sie höflich in regel mäßigen Abständen Laborkontrollen durchzuführen und die Werte auf den nachfolgenden Seiten einzutragen. Bei Fragen stehen wir Ihnen gerne jederzeit zur Verfügung. Sollten aufgrund der klinischen Zeichen oder der Laborwerte Änderungen in der Antibiotikatherapie notwendig werden, sind wir gerne bereit dies interdisziplinär (Orthopäden und Infektiologen) zu besprechen und Therapieempfehlungen abzugeben. Faxen Sie als Grundlage Seite 2 und 3 dieses Passes an den für die Behandlung verantwortlichen Arzt (s. unten). n CRP, Leukozyten alle n Leberwerte (ASAT, ALAT, alk. Phosph.) alle bei Anwendung von Rifampicin, Chinolon, Fusidinsäure, Daptomycin Wochen bestimmen Wochen bestimmen n Kreatinkinase alle Wochen bestimmen n Nierenwerte (Krea, Harnstoff) alle Wochen bestimmen bei Anwendung von Daptomycin n Quick (bei antikoagulierten Pat.) alle Wochen bestimmen bei Anwendung Rifampicin engmaschige Kontrollen, cave bei Absetzen von Rifampicin n Andere alle Wochen bestimmen n Clostridien Antigen-Test nur bei Auftreten von Durchfall unter Antibiotikatherapie 00 Differenzierung und rotes Blutbild, u. Nierenwerte unter Antibiotikatherapie auf S. 1 cher und italienischer Sprache bezogen werden bei: D-61273 Wehrheim, [email protected] 体制が、患者にも見える形で進んでいくことの重要性を説 いています。 このハンドブックは現在ドイツ語版のみであり、Infectious Disease Passportが付いています。その用途ならびに発行者について は同書を参照ください。『筋骨格系感染症』の英語版は欧州で今年 出版の予定です。 ハンドブック(無料)とInfectious Disease Passportの注文はこち らから。 Schweizerische Gesellschaft für Orthopädie und Traumatologie (swiss orthopaedics) E-mail: [email protected] www.sgotssot.ch Heraeus Medical GmbH Philipp-Reis-Str. 8/13 D-61273 Wehrheim Germany E-mail: [email protected] (> 3 Entleerungen von flüssigem Stuhl / Tag) Für die Behandlung verantwortlicher Arzt Stempel Name Telefon Fax E-Mail Seminars in Arthroplasty 2013年第4号 (出典:Elsevier) 本誌のダウンロードは 学術誌Seminars in Arthroplasty(Dr. Seth Greenwald編集)では www.semarthroplasty.comから。 (ダウンロードには登録が必要です。) テーマごとに総合的かつ最新の概説をご 覧いただけます。2013年第4号ではセ ラミックの最新情報の他、腐食、インプ ラント病理学、インプラントアレルギー 問題、BMI/標準体重がインプラント選 択、関節置換術の転帰に及ぼす影響な ど、関節置換術で議論されることの多い 問題を掲載しています。 CeraNews 1/ 2014 32 新着情報 最新ニュース 学会・ワークショップ CeraNews Online 人工関節感染症に関する 学術的ワークショップ CeraNewsは整形外科医のための確かな情報源としての地位を世界 的に確立しました。年2回10か国語で発行され、部数は20,000を超 えています。2014年からは新たに現代的な装いで発行されるととも に、デジタル版でもご覧いただけます。従来の論文に加えて、ビデ オ、ピクチャーギャラリー、動画などマルチメディアな内容も合わせ てお楽しみください。 今まで通りハードコピーをご希望の方は、メール([email protected]) またはファックス(075)502-0487 までお知らせください。 新登場 PR O - IMPLANT F o u n d a t i o n(ベル リン、Charité-University Medicine) は2 0 1 4 年 に 3 つ の 学 術 的 ワ ー ク シ ョ ッ プ(使用言語:英語)を予定しています。 ここで取り上げられるのは、診断から内 科・外科治療まで、人工器官周囲感染症に 関するあらゆる問題です。専門家による報 告、症例についての議論、実践的な体験型 ワークショップなどが行われます。European Implant Cohort Study(EICS)の報 告もあります。 開催日程:2014年3月20~21日、 CeraNews Online 5月15~16日、9月18~19日 開催場所:ドイツ、ベルリン 詳細ならびにオンライン登録はこち らから。 www.pro- Implant-foundation.org www.ceranews.com/plus www.ceranews.com 中南米CCJR会議:終わりなき旅 CCJRは、2014年9月17日から20日まで、ブラジル、イグアス・ フォールにて中南米CCJR会議:「終わりなき旅」を開催することを ここに謹んでお知らせいたします。BIOLOX ® Academy後援により Advanced Bearing Symposium(座長:Javad Parvizi MD, PhD, FRCS.)も開催いたします。 詳細についてはこちらをご覧ください。 www.biolox-symposium.com www.ccjr.com 論文募集 German Society for Orthopaedics and Orthopaedic Surgery (DGOOC) は2014年度Heinz Mittelmeier Research Award(副賞 5,000ユーロ)の授与を行います。CeramTec GmbH寄贈による本 賞は、バイオセラミック分野の研究開発ならびに人工関節置換の摩 耗・断裂関連の諸問題やセラミック・インプラント由来の臨床的転帰 に関する諸問題について優れた業績をあげた40歳以下の医師、技師、 科学者に贈られます。 DGOOCへの論文提出は2014年8月31日までの消印有効です。賞の授与は 2014年10月28日から31日までベルリンで開かれるGerman Congress for Orthopaedics and Trauma Surgery (DKOU) の場で行います。 応募手続きの詳細についてはこちらまで。 Deutsche Gesellschaft für Orthopädie und Orthopädische Chirurgie e.V. (DGOOC) Langenbeck-Virchow-Haus Luisenstr. 58/5 D-10117 Berlin, Germany 電話:+49 3084 71 21 31 ファックス:+49 3084 71 21 32 E-mail: [email protected] www.dgooc.de European Bone and Joint Infection Society(EBJIS) 第33回年次 総会 第33回EBJIS年次総会(オランダ、ユト レヒト2014年9月11~13日)では、筋骨 格系感染症における今日的課題(同感染症 の原理・診断・治療、バイオフィルム、微 生物学など)について各方面からの意見を 集め、討議します。 詳細ならびにオンライン登録はこちらから。 www.ebjis.org/ EFORTトライボロジー・デー トライボロジー・デーは第15回EFORT 会議(ロンドン2014年6月4~6日 座 長:Karl Knahr, MD)の場で6月4日に開 催されます。インプラント材質に関する最 新情報、ならびに股関節および膝関節置換 における摩耗関連の諸問題を中心に開催さ れます。 詳細ならびにオンライン登録はこちらから。 www.efort.org/tribology2014 文責(新着情報): S. Usbeck, L.F. Scheuber, F. Petkow Ceranews 整形外科医療状況の情報誌 この用紙をFAX番号:075-502-0487(日本国内)まで御送り下さい。 更に詳しい情報を希望: Safety Reminder BIOLOX® Inserts 1. Position the cup in the Lewinnek‘s Safe Zone illustrated. Avoid The use of a trial head is using ceramic inserts required because the use when the cup is actual retroof an ceramic head for trailing can modify verted. 2. Remove osteophytes in order to avoid impingement. 3. Ensure that the cup and insert are compatible. 4. The cup has to be clean and dry before placing the insert. Liquids and fat are not compressible and have to be removed from the cup. Die hart/weich Gleitpaarungen Keramik/Polyethylen (PE), Keramik/Crosslinked Polyethylen (XPE), Metall (CoCrMo)/XPE wurden hinsichtlich möglicher Auswirkungen von Keramikpartikeln auf das Abriebverhalten (Dreikörperverschleiß) untersucht. Liner handle (curved) BIOLOX® ceramic insert The stem taper could become damaged intraoperatively by surgical instruments. Safety Reminder 2. Trial reduction with trial femoral ball head only Material und Methode Make sure that third body particles (soft tissue, fat, cement or bone fragments, etc.) are not trapped in between the connection of the stem and ceramic ball head tapers. 4. Correct handling of the BIOLOX® femoral ball head 5. To protect the cup, place a swab into it and removePlace shortly femoral ball before placing headthe with clean, dry inner taper by insert. 6. When using an insertion instrument, please follow its instructions for use carefully. 7. In order to check that it is correctly seated, run the finger Fixation of the femoral ball around the rim the impacting head of by gently on the plastic femoral ball insert. 8. Fixation of the insert is achieved by impacting with the appropriate impactor in axial direction. directly with the metal 9. Never strike the hammer. ceramic insert directly with a metalDohammer. not use any BIOLOX® 10. Check the right position of the insert in the cup after fixation. (e.g. X-ray) gently turning it. 5. Fixation of the BIOLOX® femoral ball head head impactor (multiple times are permitted) in an axial direction. Never strike the femoral ball head 6. Avoid intraoperative damage as well. Crosslinked UHMWPE 32 mm, UHMWPE 32 mm Fremdpartikel: Aluminiumoxidkeramik (Al2O3)-Partikel (BIOLOX®forte) Connector 9 1st step 4th step Versorgung nach Keramikfraktur Abriebvolumen (mg/Mio. Zyklen) Abriebvolumen (mg/Mio. Zyklen) 3 316 2 0,5 0 Abrieb Me/XPE 0 316 ± 47 315 1 Abrieb Ke/PE (XPE) Metall/XPE-Gleitpaarung im Simulator mit Keramikpartikeln bis 5 mm 315,5 1,5 316 ± 47 1 Keramik/KeramikGleitpaarung im Standard-Simulator nach ISO 14242-19 < 0,1 0,5 Keramik/PEGleitpaarung im Simulator mit Keramikpartikeln bis 5 mm 0,56 ± 0,21 0 Keramik/XPEGleitpaarung im Simulator mit Keramikpartikeln bis 5 mm 0,31 ± 0,17 Fretting and Corrosion at Modular Junctions Can ceramics address this clinical issue? 0,56 ± 0,21 0,56 ± 0,21 0,31 ± 0,17 0,31 ± 0,17 0 September 2013 Abb. 2: Punkte 1–5, an diesen Stellen wurden Al2O3-Partikel vor Testbeginn eingebracht Abb. 3: Oberfläche BIOLOX®delta nach 5 Mio. Zyklen Abb. 4: Oberfläche XPE Insert nach 5 Mio. Zyklen Abb. 7 2. Die zweitbeste Versorgungsmöglichkeit ist aus tribologischer Sicht die Keramik/PE-Gleitpaarung (UHMWPE oder XPE). 3. Die Verwendung der Metall/PE-Gleitpaarung nach Keramikfraktur ist kontraindiziert.1–5 Keramikpartikel können in das PE-Insert eingepresst werden und zur hochgradigen Zerstörung des Metallkugelkopfes führen (Abb. 7–8). Abb. 8 Klinische Erfahrungen bestätigen die Testergebnisse.7 Für die Versorgung nach Keramikfraktur stehen BIOLOX®OPTION-Kugelköpfe aus dem Material BIOLOX®delta zur Verfügung. Abb. 7–8: Metallose, 1,5 Jahre nach Metall/PE-Versorgung bei Keramikfraktur (Quelle: Prof. C. Lohmann, Orthopädische Universitätsklinik Magdeburg) CeramTec-Platz 1–9 Fax: +49 7153 611 950 • Make sure that the metal shell is clean and not damaged. [email protected] • Do not use an insertion instrument for impaction. www.biolox.com Comprehensive library, all about BIOLOX® ceramics, with helpful animations and videos for your clinical practice on USB stick 0,5 9 Metall/XPE-Gleitpaarung Metall/XPE-Gleitpaarung 316 ± 47 im Simulator mit im Simulator mit Keramikpartikeln Keramikpartikeln bis 5 mm bis 5 mm 315 Keramik/PE- Keramik/PEGleitpaarung Gleitpaarung 1 Keramik/XPEKeramik/XPEim Simulator mit im Simulator mit Gleitpaarung Gleitpaarung Keramikpartikeln Keramikpartikeln im Simulator mit bis 5 mm bis 5 mmim Simulator mit Keramikpartikeln Keramikpartikeln 0,5 bis 5 mm bis 5 mm Literatur: 1 Allain J et al. Revision Total Hip Arthroplasty Performed After Fracture of a Ceramic Femoral Head: A Multicenter Survivorship Study. J Bone Joint Surg Am 2003;85:825–830 2 Gozzini PA et al. Massive wear in a CoCrMo head following the fracture of an alumina head. Hip Int 2002;12(1):37–42 3 Hasegawa M et al. Cobalt-chromium head wear following revision hip arthroplasty performed after ceramic fracture – a case report. Acta Orthopaedica 2006;77(5):833–835 4 Kempf I et al. Massive Wear of a steel ball head by ceramic fragtments in the polyethylene acetabular cup after revision of a total hip prosthesis with fractured ceramic ball head. Acta Orthop Trauma Surg 1990;109:284–287 5 Matziolis G et al. Massive metallosis after revision of a fractured ceramic head onto a metal head. Archives of orthopaedic and trauma surgery. 2003;123(1):48–50 6 Traina F et al. Revision of a Ceramic Hip for Fractured Ceramic Components. Scientific Exhibit at the 78th AAOS Annual Meeting, San Diego, 2011 7 Thorey F et al. Early results of revision hip arthroplasty using a ceramic revision ball head. Seminars in Arthroplasty, 2011 (in press) 8 Oberbach T. et al. Resistenz von Dispersionskeramiken gegenüber Dreikörperverschleiß. Abstract, Deutscher Kongress für Orthopädie und Orthopädische Chirurgie 2007 9 Pandorf T. et al. Abrieb von großen keramischen Gleitpaarungen, 55. Jahrestagung der Vereinigung Süddeutscher Orthopäden, Baden-Baden, 26.–29. April 2007 CeramTec GmbH Medical Products Division Fax: +49 7153 611 950 • Make sure [email protected] that the ceramic insert and the cup are compatible. the position of the acetabular cup and its function • Make sure www.biolox.com is thoroughly checked by using a trial insert. • Don’t combine products from different manufacturers. CeraFacts 315,5 315 1 Abrieb Ke/Ke 316 315,5 1. Von den bislang untersuchten Gleitpaarungen weisen Keramik/Keramik-Gleitpaarungen ein sehr geringes Abriebvolumen auf (Abb. 5) 9. Aus tribologischer Sicht stellt die Keramik/Keramik-Gleitpaarung die beste Versorgung nach Keramikfraktur dar.8 3rd step D-73207 Plochingen, Germany Phone: +49 7153 611 828 Always remember • Carefully assemble the components. • Confirm proper assembly and then impact. This information does not replace the instructions for use. The Information given in the instruction for use is binding and must always•be Carefully observed. (October 2012) assemble 316 A Resource Booklet Abb. 1: Zwischen den Gleitflächen eingebrachte Keramikpartikel während des Tests Medical Products Division • Make sure that the taper surfaces are clean and not damaged. 0–1,0 Mio. Zyklen 1,0–5,0 Mio. Zyklen Primärversorgung AbriebvolumenAbriebvolumen (mg/Mio. Zyklen) (mg/Mio. Zyklen) 22ndnd step CeramTec-Platz 1–9 • Make sure that the ceramic ball head taper and the stem taper are compatible. Comprehensive library, all about BIOLOX® ceramics, with helpful animations and videos for your clinical practice on USB stick VersorgungVersorgung nach Keramikfraktur nach Keramikfraktur Abb. 5: Primärversorgung Abb. 6: Versorgung nach Keramikfraktur CeramTec GmbH Always remember CeraFacts Keramik/PE und Keramik/XPE Die Testergebnisse mit Keramik-Fremdpartikeln zeigen, dass die Gleitpaarungen Keramik/PE und Keramik/XPE Versorgungsmöglichkeiten nach Fraktur einer Keramikkomponente darstellen, um abriebbedingte Probleme durch Dreikörperverschleiß und damit verbundene Komplikationen gering zu halten. Bei der Ke/XPE-Gleitpaarung war das Abriebvolumen des Kugelkopfes um den Faktor 1000 geringer als im Vergleich zur Me/XPE-Gleitpaarung (Abb. 6). EineAbrieb QuanKe/Ke Abrieb Ke/PE tifizierung des Abriebs der PE- und XPE-Inserts war aufgrund der (XPE) Abrieb Me/XPE eingebrachten Keramik-Fremdpartikel nicht möglich. Nach 5 Mio. istZyklen die Integrität beider Oberflächen weiterhin gegeben und 0–1,0Zyklen Mio. Zyklen 0–1,0 Mio. 1,0–5,0 Mio. Zyklen 1,0–5,0 Mio. Zyklen somit die Funktionalität der Gleitpaarung gewährleistet (Abb. 3–4). Das Abriebverhalten von BIOLOX®delta- und CoCrMo-Kugelköpfen in Verbindung mit PE- u. XPE-Inserts wurde im Hüftgelenksimulator Primärversorgung Primärversorgung Abrieb Ke/Ke Abrieb Ke/Ke (Endolab® Rosenheim) getestet. Vor Testbeginn wurdenAbrieb Al2Ke/PE O3(XPE) -PartiAbriebvolumenAbriebvolumen (mg/Mio. Zyklen) (mg/Mio. Zyklen) Abrieb Ke/PE (XPE) 3 Abrieb Me/XPEAbrieb Me/XPE 3 kel in die korrespondierenden Inserts eingebracht (Abb. 2). Während des Tests wurden weitere Keramikpartikel mittels der Testflüssigkeit 2 2 (Kälberserum) den Gleitpaarungen zugeführt (Abb. 1). Die Gleitpaa- 1,5 1,5 rungen durchliefen jeweils 5 Millionen Testzyklen. Die Tests wurden Abrieb Ke/Ke Abrieb Ke/Ke 1 entsprechend den Normen ISO 14242 Part 1 und 2 durchgeführt. Die 1 Keramik/KeramikKeramik/KeramikAbrieb Ke/PE Abrieb Ke/PE Gleitpaarung im Gleitpaarung im (XPE) (XPE) 0,5 Schädigung der Gleitpaarungsoberflächen wurde visuell beurteilt. Die 0,5 Standard-Simulator Standard-Simulator nach ISO 14242-1 nach ISO 14242-1 Abrieb Me/XPEAbrieb Me/XPE Abriebmessung erfolgte gravimetrisch. < 0,1 < 0,1 0 0 Mounting Device 1, 3, 6, 7, 8, 9, 10 Figure Source: CeramTec 2 Figure Source: Prof. A. Kusaba (2009) 4, 5 Figure Source: Prof. H. Kiefer (2011) 4, 5 Figure Source: CeramTec Aluminiumoxid-Matrix-Verbundwerkstoff (BIOLOX®delta), CoCrMo Inserts: Schlussfolgerung femoral ball heads that have been autoclaved and rapidly cooled, dropped to the floor, damaged or previously used. 1, 2, 3, 6 Figure Source: Prof. D. Höntzsch (Tübingen, Germany) Resultate Kugelköpfe: Zwischen den Gleitflächen wurden Keramik-Fremdpartikel bis 5 mm eingebracht, um das Abriebverhalten bei simuliertem Dreikörperverschleiß zu testen (Abb.1–2). the surface finish of the stem taper. 3. Careful cleaning and drying of the stem taper NEW Gleitpaarungswahl bei Revision nach Keramikfraktur BIOLOX® Ball Heads 1. Use taper protective cap and do not remove until immediately prior to placement of the trial femoral ball head. D-73207 Plochingen, Germany Phone: +49 7153 611 828 the components. CeraScience Printed in Germany·Stand: Oktober 2011 • Don’t combine products from different manufacturers. • Do not use any BIOLOX® femoral insert that have been autoclaved and rapidly cooled, dropped to the floor, damaged or previously used. This information does not replace the instructions for use. The Information given in the instruction for use is binding and mus must always be observed. (October 2012) CeraFacts USBメディアライブ ラリー(アニメーショ ン、手術実演、ビデ オ) Safety Reminder(A4) BIOLOX®インサートやBIOLOX®大腿骨ボールヘッ ドをインプラントする場合 に外科医が注意すべきこと 情報(A4) セラミック破損後の モジュラー関節にお BIOLOX®ライナーの挿 再置換用ベアリング・カッ けるフレッティングと腐 入器具についての情報 プルの選択肢(A4) 食-セラミックスはこの 臨床課題を解決できる のか? リソース・ブッ クレット available as PDF available as PDF available as PDF available as PDF 人工関節置換術におけるセラミックスに関する学術論文に関心があるので電話あるいはEメールでの連絡を希望。 新たな医療用アプリケーションに関心があるので“BIOLOX® family – the future in your hand” の送付と電話あ るいはEメールでの連絡を希望。 CeraNewsをEメール(PDF)で受け取ることを希望。 CeraNewsを冊子で受け取ることを希望。 氏名 : ふりがな : 役職・ポジション : 所属診療科 : 病院/勤務先名称 : 勤務先住所 : 〒 勤務先電話番号: 勤務先Fax番号: eメールアドレス: スマートフォンを持っていますか? タブレットPCを持っていますか? はい はい □iPhone □iPad □Android □その他 □Blackberry 株式会社ウップス □いいえ □いいえ セラムテックGmbH Medical Products Division Japan Office TEL :(075) 581-1380 FAX :(075) 502-0487 e-mail : [email protected]
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