Victorion Report_2006年9月18日号

Victorion Report_2006年9月18日号
ご縁のある方々へ
ビクトリオン榎本成一
○不動産市況と経済情勢について、30年間の不動産実務経験と照らし合わせ
ながら、予測してみました。ご参考になれば大いなる喜びです
1.金利上昇について
2.アメリカ経済の今後
3.為替の変動
4.中国経済
5.法人税と中小企業経営
○金利上昇について
金利が上昇しつつある。但し、主として借りる方の金利である。
不動産を購入し、長期にわたる金融機関からの借金を計画している人にとって
は、金利動向や今後の経済の発展度合いは非常な重要項目であろう。
自民党総裁選に立候補した「谷垣貞一」氏が消費税を10%に上げると宣言し、
他候補は明快なアップ率等を宣言しないものの、国民一般からは「消費税
10%」の公約にさしたる驚きがない。
今後消費税は上がると思っているのである。
レギュラーガソリンの価格が、本日時点で1ℓ140円前後まで上がってきてい
る。
原油価格が上がれば必ず消費者物価の上昇を招くだろう。
となると、金利をさらにどんどん上げていけば折角上昇気流に乗ってきた日本
経済がおかしくなる。
結論として、そんなに金利は上げられないだろうということになる。
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○アメリカ経済の今後
都心部の一等地は相変わらず値上がりしている。それも、A という不動産業者
が買って B という業者に転売し、B がさらに3ヶ月後に C という業者に転売す
るということが、日常的に起こっている。
まさしく、それはバブル時の現象と同じではないかとよく問われる。
ところで、日本の不動産狂乱バブルはどうして発生したかということを考える
と、日銀の金融政策抜きには考えられない。
この問題については、2001年5月14日刊行「円の支配者」
{著者リチャー
ド・A・ヴェルナー_草思社_2100円}に明確に書いてある。
一般的には、金融政策は日本であれば財務省(当時は大蔵省)が決定すると思
われがちであるが、実際は日銀が決めていたということ。それも、日銀生え抜
きの副総裁が決めていたということ。それらの副総裁は「プリンス」と呼ばれ
ていたこと。さらに、リチャード・ヴェルナー氏はそれではキングはとなると、
本書では詳しく書かないと前置きして、アラン・グリーンスパン(アメリカ連
邦制度理事会「FRB」第13代議長)であると書いている。
ちなみに現在の FRB 理事長はベン・バーナンキである。
この「円の支配者」は相当の力作であり、日本人必読の書であると思うので、
ご興味をもたれた方は是非お読みいただきたい。
さて、アメリカの金融政策の元締めである連邦制度準備理事会(いわばアメリ
カの日銀)が世界の金融政策に絶対的な影響を与えていることは、何となく誰
もが感じていると思う。
しかし、アメリカの日銀ともいえる FRB が実は民間銀行であること、そして、
その株主の70%がヨーロッパに本拠を置く法人であるとなると、アメリカの
金融政策を動かしているのが、どこまでアメリカ人なのかも疑問になる。
とにかく、日本の不動産価格が上がるか下がるかは、遠いアメリカ、ヨーロッ
パの金融政策抜きには考えられないということになる。
どうも話が抽象的になってきたから、具体論の少しスケールの大きい外資の影
響事例をご紹介する。JR 恵比寿駅内側(山手線)にプライムタワーという複合
ビルディングがある。
この建物を数年前にモルガンスタンレーが400億円で購入した。
そのプライムタワーが600億円で昨年アメリカの AIG(アリコ、AIU、
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等の保険会社グループ)に売却された。
当時よくあんな高い金額で売れたなと噂されたが、その理由は日本に進出して
きたドイツのハイポ(またはヒュルポ)リアルティという金融機関がノンリコ
ースローンをつけたから成立した。
ノンリコースローンとは、
「借りた金が返せなくなったら担保を黙って持ってい
ってくれ、それで勘弁してくれ」というローンである。
こういう取引を事例として、土地価格が上がった々々と騒いでも、他の不動産
取引総てに当てはまるものではない。
ただ、とにかく「外資」の影響絶大であることは間違いない。
日本経済に決定的に影響するのが「アメリカ経済」であるが、
アメリカ経済を下支えしてきた、住宅景気(購入による景気刺激と値上がりを
見込んで不動産担保ローンをどんどん増やし、買い物をする)も限界に到達し
てきたようだ。
アメリカ経済を考える時、一つ気になるのはアメリカンパワーが衰えてきてい
るのではないかということだ。
今年アメリカで開催された第1回ワールドベースボールクラシックで、優勝し
たのは「王ジャパン」である。
本日時点で、ボクシング世界ヘビー級のチャンピオン(4団体有り、4人いる)
にアメリカ人は一人もいない。かつては、モハメッド・アリ、ジョー・フレー
ジャー、ジョージ・フォアマン、・・・マイク・タイソン etc と錚々たるボクサ
ーが目白押しだったのに。
2年前のアテネオリンピックでも、アメリカの成績は振るわなかった。
スポーツというのは、肉体を露出してオープンに戦うため、ごまかしがききに
くい。案外正確に国民のモチベーションやエネルギーを表すと思う。
また、ビジネスにおいても、アメリカの象徴ともいえる GM やフォードが青息
吐息である。
そろそろ下降線に入ってきているのではないだろうか。
その一つの理由として、アメリカから自由が失われてきていることが挙げられ
る。2001年9月11日のニューヨーク世界貿易センタービルの爆破テロが
原因である。よくアメリカは自由の国であるという。何をやってもいい。極端
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なことをいえば、人を殺してもいい。
「但し、罰せられるよ」という程の自由があるという話だった。
要するにその自由が失われてきている。そして、それがアメリカ人の活力や創
造性を押しつぶしているようだ。
さらにアメリカの財政赤字の拡大がある。世界最大の借金国にして世界で一番
威張っている。ユダヤ教の主経典である旧約聖書には「金を借りた物は貸した
者の僕になる」と書いてあるそうだ。だったらアメリカは日本の僕となるべき
だが、実際は逆である。但し、理不尽は永久には続かないから、そろそろ経済
的におかしくなっても不思議ではない。
◯為替の変動
2004年12月に民主党政治家のパーティがあり、そこに講師として瀬島龍
三氏(元日本陸軍参謀、元伊藤忠商事会長、行政改革における土光敏夫さんの
参謀)が招かれた。私は取引先の紹介でパーティに参加し、瀬島先生のお話を
間近に聞くことができた。
講演後、参加者の一人が来年(2005年)の世界情勢について質問した時、
「原
油と為替が変動する」とおっしゃった。
そして、昨年から原油は値上がりが始まった。今のところ、為替は大きな変動
は見られないが、来年は為替が本格的に変動してくるような気がする。
アメリカの財政赤字がますます拡大し、かつ、アメリカ経済の腰折れが始まる
ような気がする。となると、ドルが下がり、円は高くなるのだろう。
瀬島先生の二つ目の予言は来年的中しそうである。
しかし、日本経済は数々の円高を乗り越えてきているから、そう簡単には沈没
しないだろう。
○中国経済
アメリカへの輸出が低調になれば、中国やアジアにもっと売り込めばいいとな
るが、何といっても中国のお相手は大変である。
北京オリンピックが終われば中国経済は崩壊するとか、空中分解するとかいう
説もあるが、私は崩壊しないと思う。様々な矛盾を含みながら、オリンピック
以後もまだまだ拡大していくだろう。
中国には、現在世界の最先端技術も集まってきている。
IBM がパソコン事業部を中国のレノボという会社に売った。何故、レノボに売
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ったのだろう。
「高い金を提示したから売ったんだ」というだろうが・・・???
である。いずれにしても、中国にはIBM系列の高度なコンピューターノウハ
ウが流出しているのである。
○法人税と中小企業経営
先日、税務署の国税担当の方と話す機会があった。
その時のお話によると、昨年などは税金をまともに払っていない会社、特に小
さい会社は銀行から金を借りられなかったが、最近は分割でも支払っていれば、
銀行が金を貸すようになったという。
そうしないと、中小企業に金が回らないからだそうである。また、銀行も儲か
ってきて手元に貸せる金があるということだ。
銀行から中小企業にも金が回れば、事務所を広げようとか、自社ビルを建てよ
うとか、不動産に対する積極性が出てくるから、動きも活発化するし、一部は
値上がりする。
○諸々の条件を考えていくと、不動産市況は当分順調に推移していくと思う。
了
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