① - KPC 関西生産性本部

プロダクト差別化の限界を見据えた新たなビジネスモデルの模索について
〜 アフターサービスの事業化 〜
㈱エヌ・ティ・ティ・ドコモ関西支社
本
郷
寛
信
日本ピラー工業㈱
関
阪急電鉄㈱
矢
バンドー化学㈱
関 根 龍 一
晃 宏
守
直
明
Ⅰ.問題意識及び現状と推測
1.問題意識
日本の生産財メーカーにおいては、独自の技術開発と、それを維持する高いサービスレ
ベルによって世界的なマーケットで安定したシェアを築いてきた。
しかし、昨今、中国製をはじめとした安価な製品が台頭し、その圧倒的な価格差と、性
能の向上において急速にシェアを伸ばしてきている。
安価な製品に対して価格での勝負は著しく利益を下げるが、製品での更なる技術革新は
望めるレベルに無い。
このような中で、従来は「販売とセット」という位置づけであったアフターサービス(こ
こでは主に製品のメンテナンス)に着目し、これを独立したビジネスとして切り出すこと
で新たなビジネスモデルが構築できる可能性を研究テーマとしてみた。
2.現状
(1) 競争他社(中国メーカー.etc)の状況
①製品は安価で価格優位性が高い。
②安価ながら品質は向上している。
③アフターサービスの技術はさほど高くない(と想定される)。
(2) 自社(日本メーカー.etc)の状況
①アフターサービスの技術は高い(製品開発と一体で技術を培ってきており、経験による
ノウハウも蓄積されている)。
②自社製品販売のためにアフターサービス自体は無償か実費程度で実施しているケース
が多い。
3.推測
①価格・品質とも製品では競争他社と差別化できないが、アフターサービスの技術では差
別化できるのではないか?
②アフターサービスは「製品を購入してもらう手段のひとつ」とし、アフターサービス
自体で利益を出すことを考えてこなかったのではないか?
Ⅱ.仮説
アフターサービスの技術に競争優位性がある場合、製品と分離した有償サービスとして事業
化できる。
但し、技術とコストにおいてユーザーがサービスの内容に納得する条件下にあることが必要
で、その条件は下記のとおりである。
サービスの技術的な参入障壁が高い。
→技術の専門性等が高く誰でも取り組めるものではない。
ユーザーが自身で行うより低いコストで実現できる。
→ユーザー自身が必要な技術を持っている場合でもコスト
優位性から外注を選択する。
これを下記(図−1)のとおり整理する。
サービスの位置づけと
外注の切り分け
サービスのコスト※
我々の仮説が成り
高
立つと考える分野
(外注が適)
サービスの
技術的には誰でも
必要な技術を提供
できるが、自前では
できる者が限定され
コスト高
自前ではコスト高
技術的参入障壁
技術的参入障壁
低
サービスの
技術的には誰でも
必要な技術を提供
でき、自前の方が
できる者が限定されるが
コスト低
自前の方がコスト低
高
サービスのコスト※
低
(内製が適)
※ユーザーが自前で行う
場合に要するコスト
【図−1】
Ⅲ.仮説検証
1.インタビュー企業
製品技術の専門性が高く、かつ、アフターサービスが既に事業化されているのではない
かと推測される下記2社を選定した。
(1) 東亜バルブエンジニアリング㈱
主にプラント関係のバルブを製造。
従来、メンテナンスは無償または実費程度で行うケースが多かったが、最近では有償
による点検サービスを実施。更に他社製品の点検サービスも有償で実施している。
(2) 日本エレベーター製造㈱
エレベーターメーカー。
法定点検等を含めた頻繁なメンテナンスが必要な業種であり、ユーザーはコスト面か
らメーカー以外にメンテナンスを依頼するケースもある中で、納入先の9割ものメン
テナンスを有償で実施している。
2.インタビュー結果
(1) 東亜バルブエンジニアリング㈱
サービスの概要
・メンテナンスの効率化を図るため「メンテマン」という点検装置を導入(2000年頃)。
・メンテマンの導入によりメーカー側の点検作業が容易になりメンテナンス作業も大
幅に効率化されたが、ユーザー側にも次の新しい価値を提供できることとなった。
①メンテマンは装置を分解することなく点検できるため、装置の稼働停止を最小限
に抑えられる。
②部品の具合を正確に把握できるようになったため、交換時期を予測して予め備え
るという予防・保全が可能となった。
特に②の「予防・保全」という価値についてユーザーの理解を得られた結果、有償
での点検サービスが可能となり、利益を出せるようになった。
(2) 日本エレベーター製造㈱
サービスの概要
・エレベーターのメンテナンスは外注が一般的であり、メンテナンスの受け手として
は、メーカー及びメンテナンス専業会社がある。
・メンテナンス契約の種類は、長期にわたり全てのメンテナンスを固定料金で請け負
うものと、通常は簡易な保守のみを請け負い、これを超えるメンテナンスについて
はその都度別途契約するものがある。採算性は異なるが、いずれも事業として成り
立っている。
・エレベーターには制御系のソフトを中心にブラックボックス化が進行しているもの
もあり、メーカーでないと技術的にメンテナンスが不可能な場合がある。
3.仮説の検証
・東亜バルブエンジニアリング㈱は、これまで無償または実費程度であったアフターサー
ビスに、技術力を活かして新たな価値を付与・提案し、製品とは別に利益を出せるサー
ビスを生み出した事例であり、我々の仮説を裏付けるものと考えられる。
・日本エレベーター製造㈱のインタビュー結果からは、エレベーターのメンテナンスは既
にアフターサービスとして事業が成り立っている分野であることが確認できた。なお、
製品の特性により次の事象(表−1)があることも確認できた。
マンション等一般分野
高層ビル等特殊分野
部品等にも汎用性がありメーカーで
製品のブラックボックス化等により
なくてもメンテナンスを行う場合の
メーカー以外がメンテナンスを行う
技術的参入障壁がさほど高くない。
場合の技術的参入障壁が高い
図−1左上に該当
図−1右上に該当
【表−1】
Ⅳ.結論
・アフターサービスが事業化されている事例はエレベーター業界のように図−1の左上・右
上の象限とも既に存在するため、「アフターサービスが事業化できる」という仮説自体は
自明と考える。
・但し、我々の問題意識から発現している、アフターサービスの技術的優位性を活かした事
業化が行える分野は図−1右上の象限であり、この分野でのどのような取り組みを行える
かがポイントになる。具体的には下記のとおりである(表―2)。
図−1左上から右上への移行
図−1右上での取り組み
(製品の特性によっては)
(メインシナリオ)
日本エレベーター製造㈱の事例のように
東亜バルブエンジニアリング㈱の事例の
製品のブラックボックス化等を進め、左上
ように従来のサービスにない新たな価値
の象限から右上の象限に移行する。但し、 を付与することができれば、技術的優位性
製品とサービスの結びつきが高まるため
を活かしたアフターサービスの事業化が
製品が売れないとサービスが提供できな
可能。
くなる危険性があり課題は残る。
図−1右下から右上への移行
(可能性に留まるが)
今回は事例を検証できなかったが、本当に
−
必要な技術を実はユーザーが持ち得てい
ない場合、その事実を可視化し、技術に見
合うサービスに要するコストは外注の方
が安いということであれば、象限を移行さ
せられる可能性はあると思料する。
Ⅴ.提言
製品の販売利益だけでは今後の競争には勝てない。
勝てる分野を見い出し、切り込んでいくしか生き残る途は無いのである。
日本の各製造業はもっと貪欲にアフターサービスをビジネスとして検証し、深く考えるべき
である。
アイデアで利益を確保していくというのが今後の製造業のテーマになっていくと思われる。
以上