ダウンロード - 太平洋セメント

CSR
REPORT
2016
TAIHEIYO CEMENT CORPORATION
Corporate Social Responsibility Report 2016
▶
G4-1, 2, DMA
セメント産業の社会的機能
セメント産業は、主に 2 つの社会的
な役割があります。
Top Commitment
2つの
「社会的機能」
を遂行し、
2050年を拓く。
一つは「社会基盤を構築するための
基礎資材を安定的に供給すること」、
もう一つは「セメントの生産技術を活
かして、様々な廃棄物・副産物を、安
全かつ大量にセメントの原燃料として
リサイクルし、社会の資源循環に貢献
すること」です。
この 2 つの社会的機能を環太平洋地
太平洋セメント株式会社
代表取締役社長
02
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
域で担い、社会に安全と安心を提供
るには、戦略的に国内外の生産と供給
し、持続可能な発展に寄与していくこ
のバランスを取っていく必要がありま
とが、太平洋セメントグループの目指
す。「太平洋セメント」という社名の
す社会的価値の創出であり、成長戦略
通り、日本も含め環太平洋の生産拠点
です。
間でトレーディングを行い、
「環太平
洋トータル」での成長を目指します。
「17中期経営計画」の始動
経済成長を続ける新興国に対し当社
方の改革」は、中期経営計画の「従業
グループが目指す貢献は、セメントや
員全員によるイノベーションへの取り
2015 年 度 よ り、2017 年 度 ま で
資材の安定供給だけにとどまりませ
組み」の実践であり、業務効率化と同
の 3 年間を実行期間とする「17 中期
ん。新興国においても工業化・都市化
時に、ワーク・ライフ・マネジメントや女
経営計画」を開始しました。これは、
の進展によって顕在化している資源エ
性活躍推進にもつながる施策です。
2020 年代半ばの「ありたい姿・目指
ネルギー制約問題や廃棄物処理問題
性別、国籍、価値観等を超えて公正
す方向性」として掲げた「グループの
に、日本で長年にわたって鍛えてきた
に処遇され、活躍できる職場環境をつ
総合力を発揮し、環太平洋において社
廃棄物・副産物のセメント資源化技術
くることで、労働生産性を上げて組織
会に安全と安心を提供する企業集団」
を展開し、これらの環境課題解決へ寄
力を高めるには、国内人口が 1 億を切
を実現するための第 1 ステップです。
与することも、セメント産業だからこ
る 35 年後を見越して今から改革に着
2015 年度は、公共投資が減少傾向
そ可能な社会的貢献であり、中長期的
手していかなくてはなりません。女性
にあったことから、セメントの国内需
にグローバルにおける中核事業の一つ
活躍について、長期数値目標を公表し
要が減少しました。一方で海外におい
として大きく育つと確信しています。
対策を進めているのも、人材の蓄積に
ては、米国の景気回復、ベトナムや
2050 年の未来に、環太平洋地域が
は長い年月がかかるからです。従業員
フィリピンの旺盛な内需により、販売
持続可能な資源循環型社会として成長
が未来を託すに相応しい活力ある組織
量が増加しています。この「国内需要
を遂げるために、当社グループの技術
を目指します。
減・海外需要増」というトレンドは、
をさらに高度化させていきます。ま
そして「現場の安全」は、
「社会に安
長期的にも重視すべき事業環境の一つ
た、装置産業であることの利を活か
全と安心を提供する」ことを目指す当
と捉えています。
し、工場の様々なインフラ設備を活用
社グループの存立の基盤を成すもので
した新たな事業を育てることも視野に
す。すべてに優先する最重要テーマと
入れていきます。
して、引き続き万全を尽くします。
2050年の未来が持続可能な
資源循環型社会であるために
「人材」という
2015 年の世界人口は約 73 億人で、
重要な資源の強化と蓄積
2015 年 は、 国 連「 持 続 可 能 な 開
2050 年には 97 億人を超すと言われ
る一方で、国内人口は現在の約 1 億 3
千万人から約 9,700 万人になると予
「世界を変革する」
取り組みへの参画
グループとしての「総合力」を高め、
「環太平洋地域トータル」で事業を展
発目標(SDGs)
」や COP21 における
「パリ協定」など、世界が連携して取り
測されています。世界人口は 3 割以上
開していくには、グループ各社が「個」
組んでいくべき挑戦が相次いで採択さ
増加し、国内人口は 3 割近く減少する
の強さを最大限に発揮するとともに、
れた年でした。
のです。
各社が有する多様な経営資源の共有が
太平洋セメントグループも、グロー
不可欠です。中でも「人材」という重
バル社会の一員として、これらの「世
要な資源を、長期的な視点で育成し、
界を変革する」取り組みに、事業活動
適材適所に配置するためのグループ・
を通じて参加していきます。
このような社会構造の変化に対応す
マネジメントが、今後の課題と捉えて
います。
また 2015 年度より「全社業務効率
化の推進」
を開始しました。この「働き
さらに 50 年後、100 年後の持続可
能な地球の未来を拓くため、太平洋セ
メントグループは、2 つの「社会的機
能」の遂行に邁進します。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
03
グループ経営理念
▶
G4-56
※
太平洋セメントグループは、持続可能な地球の未来を拓く先導役をめざし、
経済の発展のみならず、環境への配慮、社会への貢献とも調和した事業活動を行います。
行動指針
会社としての行動のあり方
▶
G4-56
・ 太平洋セメントグループとして総合力を発揮し、企業価値の最大化を目指します。
・ 地球環境との調和に努め、循環型社会の実現に向け積極的に貢献します。
・ 法令等を遵守するとともに、社会の良識に則って行動します。
・ 広く社会とのコミュニケーションを行います。
・ 技術の更なる研究・開発に努め、優れた製品・サービスを社会に提供します。
・ 国際的な企業として、グローバルな視野で発想し行動します。
・ 事業環境の変化に即応し、柔軟に行動します。
・ 一人ひとりが社内外に通用する人材となることを目指します。
・ 人権を尊重し、安全で健康な職場づくりに努めます。
2002年 6月に制定した太平洋セメントグループの経営理念は、
当社が加盟するWBCSDの共通理念「持続可能な発展」の実現を目指して、
経済、環境、社会のトリプルボトムラインを経営の機軸に据えることを宣言しています。
2002年12月には、グループ経営理念を実現するために
9項目からなる太平洋セメントの行動指針を定め実践に努めています。
CONTENTS
Top Commitment
…………………………………… 02
グループ経営理念・行動指針 / CONTENTS ……… 04
太平洋セメントグループの事業概況 …………………… 06
セグメント別事業活動 …………………………………… 08
太平洋セメントグループのバリューチェーン …………… 12
第12回ステークホルダー・ダイアログ CSR 情報開示のありかたを考える。……… 16
特集01 フィ
リピンの明日をともにつくる。……… 20
特集02
04
私たちの「ごみ」を「資源」に。……… 22
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
各分野における取り組み
マネジメント ……………………………………………… 26
環境への取り組み ………………………………………… 36
社会との取り組み ………………………………………… 50
WBCSD-CSIに基づく主要業績評価指標
(KPI)……… 66
WBCSD-CSIに基づく主要業績評価指標
(KPI)
の
第三者保証報告書 ………………………………………… 67
編集方針・報告対象範囲・GRIガイドラインへの準拠・
お問い合わせ先 …………………………………………… 68
第三者意見 ………………………………………………… 69
※ 各項目の見出し部分に、GRIガイドラインの開示項目番号(例:G4-1)を記載しています。
太 平洋セメントグループの未来
ありたい姿・目指す方向性(2020年代半ば)
グループの総合力を発揮し、
環太平洋において社会に安全と安心を提供する企業集団を目指す
[CSR目標 2025]
Ⅲ ダイバーシティ
Ⅰ 災害防止
0
死亡災害
女性
件
採用比率
女性
CO₂
Ⅱ 温室効果ガス排出 抑 制
10
%以上削減
従業員比率
新任管理職の
※ ネットCO₂排出原単位
2000年度比
女性比率
30
10
10
%以上
%以上
%以上
●対象範囲
Ⅰ 当社グループ各事業所(含む海外)
における従業員、協力会社従業員
Ⅱ 当社及びグループ
(含む海外)のセメント製造拠点
Ⅲ 単体
タイヘイヨウセメントフィリピンズ
[CSR目標2025]
項目
目標(到達年度:2025年度)
目標到達方針
対象範囲
死亡災害ゼロ
①全ての従業員、関係会社従業員、協力会社がPDCAサイクルを
自己完結できる安全活動の推進
②
「挟まれ・巻き込まれ」
、
「墜落・転落」災害撲滅へ向けての職場環境整備強化
当社グループ各事業
所(含む海外)におけ
る従業員、協力会社
従業員
Ⅱ 温室効果ガス排出抑制
2025年度までに2000年度比で
ネットCO₂排出原単位を10%以上削減
①更なる資源循環型社会構築への貢献推進
・セメント製造における従来型廃棄物・副産物の利用技術の国際展開推進
・代替エネルギーを中心とした処理困難廃棄物の処理技術開発の推進
②更なる省エネルギーの推進
・省エネルギー設備の導入並びに廃熱発電等の自家発電設備増設
・再生可能新エネルギーを中心とした省エネの更なる推進
③ 革新的セメント製造技術等、地球環境負荷低減に向けた研究開発の推進
・新規技術開発、並びに実用化へ向けての推進
当社及びグループ
(含
む海外)のセメント
製造拠点
Ⅲ ダイバーシティ
・女性採用比率の向上:
①適正な人材ポートフォリオの構築にむけて、
総合職採用における女性採用比率を30%以上とする。
女性の積極採用
(アトラクション)と定着
(リテンション)を
・適正な人材ポートフォリオの構築:
促進することとし、そのための施策を推進
女性従業員比率を10%以上とする。
②生産性の向上と、多様な人材の能力を最大限発揮できる組織を構築するために
・女性管理職登用の推進:
ワーク・ライフ・マネジメントを促進することとし、そのための施策を推進
新任管理職登用に占める女性割合10%を目指す。
Ⅰ 災害防止
単体
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
05
太 平 洋セメントグループの事 業 概 況
▶
G4-3, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 13, 17, EC1, LA1, LA12
会社概要(2016年3月31日現在)
商号
設立
資本金
本社所在地
従業員数
売上高
子会社
関連会社
太平洋セメント株式会社
1881年5月3日
862億円
〒135-8578 東京都港区台場2-3-5 台場ガーデンシティビル
連結:12,574人 単体:1,697人(出向含まず)
連結:8,353億円 単体:3,006億円
198社(うち連結子会社121社、持分法適用子会社9社)
102社(うち持分法適用関連会社40社)
❶
❾
[本社/支店]
❶ 北海道支店
❷ 東北支店
❸ 本社/東京支店
❹ 関東支店
❺ 中部北陸支店
❻ 関西四国支店
❼ 中国支店
❽ 九州支店
[研究所]
中央研究所
❷
[グループ生産拠点]※
株式会社デイ・シイ
明星セメント株式会社
敦賀セメント株式会社
山陽白色セメント株式会社
[セメント工場]※
❾ 上磯工場
大船渡工場
熊谷工場
埼玉工場
藤原工場
大分工場
❽
日本:売上高
(2015年度連結)
❹
❺
❻
❼
75.4%
❸
部門別売上高構成比
(2015年度連結)
(年度)
2012
2011
人
安全
売上高
2013
7,425
非 財 務 情 報(対象組織に関する詳細はP.68)
経済
2014
百万円
日本:従業員数
(2015年度連結)
59.1%
財務情報
2015
629,672
(百万円)
835,359
300,642
842,848
312,712
840,288
346,044
747,616
300,359
死亡災害件数
(年度)
その他:6.7%
2025 0
建材・建築土木:
9.0%
CSR目標2025
2015
環境:8.2%
セメント:
67.6%
資源:8.5%
4
2014
2013
2
1
2012
727,849
273,184
(件)
5
2011
6
■ 連結 ■ 単体
経常利益
親会社株主に帰属する当期純利益(連結)
・
当期純利益
(単体)
(年度)
2015
(百万円)
36,214
2014
2011
67,890
39,469
2013
2012
60,225
48,821
69,590
32,667
29,416
18,496
22,908
36,404
26,326
2014
27,406
2013
2011
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
(百万円)
2015
2012
■ 連結 ■ 単体
06
(年度)
22,767
44,114
35,223
11,329
15,102
7,845
休業災害度数率 WBCSD
(年度)
(/100万人時)
2015
2014
2013
1.18
0.88
0.77
2012
2011
17,029
■ 連結 ■ 単体
1.23
1.05
米国:売上高
(2015年度連結)
12.9%
アンカレッジ
20.9%
シアトル
ポートランド
モハベ
ストックトン
ラスベガス
タイヘイヨウセメントUSA
オログランデ
太平洋水泥
(中国)
投資
東海
秦皇島
南京
上海
深圳
香港
台北
台中
ハノイ
高雄
ギソン
バンコク
ニントゥイ
ホーチミン
セブ
シンガポール
太平洋セメント本社
百万円
米国:従業員数
(2015年度連結)
寧越
大連
107,680
2,633
人
リリトー
ロサンゼルス
タイヘイヨウシンガポール
レイ
その他のエリア:売上高
(2015年度連結)
11.7%
98,007
百万円
●
◆
◆
◆
▲
▲
その他のエリア:従業員数
(2015年度連結)
2,516
20%
人
持株会社
セメント工場※
セメント工場
クリンカ粉砕工場※
駐在員事務所
セメントターミナル
※ WBCSD-CSIのKPIデータ取得対象(2015年度)
経 営 計 画 17中期経営計画(2015〜2017年度)
環境
多様 性
ネットCO₂排出原単位削減率
(2000年度比) WBCSD
女性従業員比率
(年度)
CSR目標2025
2025
(%)
10.0
2015
2014
5.9
2014
2011
10.0
5.7
5.7
2011
4.9
5.3
(%)
2015
15.5
15.1
2014
14.9
15.7
2013
15.7
16.5
2012
15.5
16.5
14.8
15.5
■ 代替燃料 ■ 代替原料
11.2%
12,574 人
既存事業の強化と
成⻑戦略の策定・実⾏
国家的プロジェクト
への対応
経営基盤の強靭化
─ 経営の根幹強化 ─
研究開発の強化
災害防止 温室効果ガス排出抑制 ダイバーシティ
女性:1,404 人
総数
永続的発展を⾒据え、徹底的なコスト削減による事業
の強靭化を⾏い、収益基盤の強化と財務体質の更な
る改善を強⼒に推進する。
CSR目標2025
男女別従業員数
(連結)
(年度)
社会基盤産業として、国⼟強靭化
(ナショナル・レジリ
エンス)
に向けて、資材提供・技術開発を通して安全・
安⼼社会の確⽴に貢献する。
事業戦略
5.5
2012
5.7
(%)
7.0
2013
6.8
代替原燃料の使用率 WBCSD
2011
CSR目標2025
2025
5.9
2012
単体
(年度)
2015
2013
基本⽅針
将来の環境変化を先取りし、あらゆる角度からのイノ
ベーションを図り、成⻑に向けて前進する企業集団を
構築する。
17 中 期 経 営 計 画:経 営目標
2015年度実績
2017年度⽬標
売上⾼営業利益率
7.2%
8.4%以上
ROA
(経常利益)
5.9%
7%以上
経営⽬標達成のガイドラインとして下記の3項目を設定
男性:11,170 人
88.8%
収益⼒の
創出・向上
柔軟かつ強靭な
財務体質の構築
株主還元の
充実
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
07
セグメント別 事 業 活 動
▶
G4-2, 4, EC2, EC7
セメント事 業
し、高度で安定した品質を維持してい
事 業内容
◦国内における普通ポルトランドセメントをはじめとする多種多様な
セメント・固化材・地盤改良材・生コンクリート等の製造・販売
◦全国のセメント物流拠点による供給・サービス提供
ます。また、他産業では処理困難な廃
棄物・副産物のさらなるセメント原
燃料利用に取り組んでいます。
販売では、
「顧客満足度の向上」を
最重要課題と捉え、営業・技術担当を
はじめ各部門が連携して顧客要求事項
製品・技術による貢献
建屋内での保管に努め、悪臭の拡散、
への迅速かつ適切な対応を図っていま
高品質で多様な建設資材を供給す
飛散の防止を図っています。製造段階
す。技術部門は、製品の品質保証活動
ることによって、安全 ・ 安心な社会資
ではエネルギー使用の効率化、大気汚
のほか、製品使用に関する技術的要望
本の構築に貢献することを目指して
染物質の排出削減のため、キルンの安
への対応やお客様の技術力向上の支援
います。
定運転や環境保全設備、省エネ設備
等幅広い業務を行っています。
の導入に努めています。また、NOx、
事業活動における取り組み
SOx、ばいじん、ダイオキシンなどの
る」をモットーに、グループ会社、協
測定を行い、結果を開示しています。
力会社を含む安全の体制整備・活動を
廃棄物・副産物をセメントの原燃料
物流段階でも、船舶・トラックへの省
推進しています。さらに、多様性と人
として利用することで地球環境保全と
エネ設備導入や往復輸送などによる
権を尊重し、長期的な人材の育成にも
資源循環型社会の実現に寄与してい
CO₂ 排出量削減に取り組んでいます。
注力しています。
【環境】
ます。廃棄物 ・ 副産物の受け入れにあ
たっては、事前に受け入れに伴う影響
08
現場では「安全はすべてに優先す
工場では、住民説明会・工場見学会
【社会】
の開催、施設の住民利用開放、地域祭
評価を行い、使用時には厳格な管理の
物流拠点整備や輸送力の強化によ
礼への参加など、地域とのコミュニ
もと、操業の安定と環境汚染物質を放
る 製 品 の 安 定 供 給 に 努 め て い ま す。
ケーションや貢献にも努めています。
出しないよう努めています。廃棄物は
ISO9001 による品質管理体制を構築
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
▶
G4-2, 4, EC2, EC7
資源事業
事業内容
◦セメント原料、土木建築・鉄鋼・化学用途等の石灰石製品・骨材供給
◦汚染土壌処理等の土壌ソリューション事業
◦機能性マテリアル事業
石灰石鉱山
製品・技術による貢献
建設現場等で発生する建設発生土の
事業活動における取り組み
事業の中核となる鉱山においては、
維持するため、必要に応じ外部の有識
者を交えた研究会を立ち上げ、長年に
セメント資源化のほか、セメント資源
その開発から終掘に至るまでの各段階
わたり活動を続けています。こうした
化が困難な汚染土壌の処理提案および
において、安全の確保と環境への負荷
取り組みと併せ、鉱山の周囲を一段高
土壌の重金属類不溶化に高い能力を発
低減に努めています。各鉱山の取り組
く残して採掘することで、景観保護に
揮する「デナイトシリーズ」の販売を
みは立地条件によって様々ですが、環
配慮した鉱山もあります。また生物多
行っています。また LED の原材料と
境に配慮し、大気汚染、水質汚濁、騒
様性保全の問題にもいち早く取り組
なる「チッカライト®」やパワー半導
音、振動といった鉱害の防止に努める
み、希少植物のバイオ技術による保護
体用単結晶原料となる「超高純度炭化
とともに、客土と植栽による鉱山の緑
育成で成果を挙げてきました。
ケイ素」の製造販売など、環境ニーズ
化を推進しています。安全面では、採
に対応する商品を提供しています。
掘跡地、たい積場、残壁等の安定性を
環境事業
事業内容
◦セメント製造工程の特性を活かした高度な廃棄物処理サ-ビス
(セメント資源化システム)
の提供
◦保有資源を活用した環境関連商品の開発・販売
廃棄物の受入場
製品・技術による貢献
硫材として火力発電所に販売するだけ
事業活動における取り組み
セメント資源化システムでは、様々
ではなく、その副産物として発生する
環境ビジネスにかかわる企業グルー
な種類の廃棄物や他産業から排出され
石膏をセメント原料として引き取るこ
プとして、コンプライアンスやリス
た副産物を安全かつ大量に再資源化す
とで循環を形成するなど、資源循環型
ク・安全管理を重視し、取引先や地域
ることが可能であり、廃棄物や副産物
社会の構築に貢献しています。
住民の皆様にも安心・信頼していただ
を資源としてリサイクルすることは、
また、グループ内の水関連技術を結
けるよう努めています。廃棄物の取り
最終処分場の延命効果があるととも
集させ、水のろ過・浄化の分野におい
扱いでは「廃棄物受入活用マニュア
に、天然資源の枯渇防止など、環境負
ても環境問題の解決に貢献するよう事
ル」を定め、セメント製造工程への影
荷の低減に寄与しています。
業化を進めています。
響がないことや事故防止、環境保全を
環境関連商品では、石灰石を排煙脱
確認しています。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
09
▶
G4-2, 4, EC2, EC7
海外事業
事業内容
◦環太平洋地域におけるセメント、生コン、骨材事業
◦セメント製造技術に基づく省エネ、環境負荷低減のソリューション提供
タイヘイヨウセメントフィリピンズのオペレーションルーム
製品・技術による貢献
米 国 で は 西 海 岸 各 州 で セ メ ン ト、
を展開しています。
また、国内外の生産拠点からのセメ
ロを増設し、世界の市場ニーズに応え
ています。
生コン、骨材事業などを展開、中国
ント輸出、三国間貿易など、海外物流
ではセメント製造販売の合弁会社 3
ネットワークを活かしたセメントト
社 を 運 営 し、 セ メ ン ト 製 造 技 術 を
レーディング事業を推進しています。
ベースとした省エネ、環境事業の展
海外市場では、CO₂ 排出等の環境規
ステークホルダーとの相互コミュニ
開も図っています。東南アジアでは、
制強化により、スラグやフライアッ
ケーションや地域課題への対応を行っ
ベ ト ナ ム で セ メ ン ト・ 生 コ ン 事 業、
シュを利用した混合セメントが主流と
ています。具体的には、奨学制度、地
フィリピンでセメント事業、パプア
なっています。シンガポールのセメン
域の医療やインフラ構築の支援などに
ニ ュ ー ギ ニ ア で 輸 入 ク リ ン カ 粉 砕、
トターミナルに、現地の品質規格や使
取り組んでいます。
タイで鉱産品の仕入・販売等の事業
用環境に合わせた混合セメント用サイ
事業活動における取り組み
海外グループ会社各社では、様々な
建 材・建 築 土 木 事 業
建設現場の多種多様なニーズに応え
る土木・建築資材の製造・販売ならび
に建設工事等を行っています。
を取り扱い、当社グループ独自のネッ
トワークで提供しています。
また地盤改良工事や耐震補強工事を
土木・建築資材としては、高機能プ
行うとともに、コンクリート構造物を長
レミックス製品やコンクリート用混
寿命化させる診断・補修事業も数多く
和材をはじめとするセメント系製品、
の実績を重ねており、社会インフラの
ALC(軽量気泡コンクリート)パネル
長期にわたる安全・安心な利用に貢献
や舗装ブロック等のコンクリート製品
するために積極的に取り組んでいます。
不動産の活用、スポーツ施設運営、
倉庫事業、各種エンジニアリング事
事業活動を展開しています。
保険代理業を担う不動産事業、運輸・
業、情報処理事業等の多岐にわたる
表面平滑塗装ALC「セグエンテ」
その 他 事 業
10
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
▶
G4-2, 4, EC2
研究開発
研究開発の目的
◦既存事業の持続的成長に貢献する研究開発
◦成長分野(海外・資源・環境・建材)
のエンジンとなる研究開発
◦地球環境負荷低減に寄与する研究開発
◦国家的プロジェクトやインフラ保全に貢献する技術開発
幅広い分野の研究開発を推進
研究開発活動の状況
情報を活用したコンクリートソリュー
セメント分野では、品質の維持・向
ション(CS)活動を進めるとともに、
上を重点課題とし、先進的な品質予測
世界最高強度セメント系結合材の研究
システムの開発をはじめ、製造におけ
開発や、診断・補修技術等の安全・安
るコスト低減や環境保全、省エネ化、
心なインフラ基盤に貢献する技術開
CO₂ 排出量低減などの研究開発に取り
発、コンクリート舗装の普及活動にも
組んでいます。
注力しています。
コンクリート分野では蓄積した技術
■ 研究開発費の内訳(2015年度連結)
セメント・
コンクリート
建材・
建築土木
458
環境
904
2,192
合計
4,228
(単位:百万円)
資源
中央研究所正面玄関前のコンクリート舗装技術の展示
海外分野では、グローカル戦略のも
環境分野においては、処理困難廃棄
と、現地市場に対応したセメント・コ
物の再資源化技術や希少資源回収技術
ンクリートを設計・提供できるシステ
の開発に加え、排水の浄化・リン回収
ムの開発および環境保全・負荷低減の
等のアクア事業関連、放射性物質除去
技術支援を進めています。
技術の開発にも取り組んでいます。
資源分野では、中空粒子や高純度炭
建材・建築土木分野では、グループ
化ケイ素といった保有資源の高付加価
開発シナジーの拠点となるよう取り組
値化を目指した機能性マテリアルの開
みを進めています。
発および不溶化材等の汚染土壌対策技
674
術の研究開発を推進しています。
世界最高の圧縮強度を発現するコンクリートの開発
2
自由な形状が得られる通常の型枠への流し込みで、世界最高記録となる圧縮強度 464N/mm(普通鋼材の強さに
比べて2 倍以上)のコンクリートを開発しました。新しいセメント材料と製造法を発明し、硬化した内部の微細空隙
を極限まで減らすことで、今までにない超高強度を発揮するコンクリートです。同じ重さに耐えることができるコン
クリートの断面積は飛躍的に減少し、コン
クリート構造物の超軽量化が可能になるた
め、さらに高いビル、さらに長い橋などが
実現できます。また、耐久性も極めて高く、
革新的かつ長寿命のコンクリート構造物を
実現できる新しい建設材料として、実用化
を目指した研究開発を進めています。
約100トンの重さに耐えるコンクリートの断面積の比較
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
11
▶
G4-2, 12, 14, 18, 19, 20, 21, 24, 25, 26, 27, 48, DMA
太平洋セメントグループの
バリューチェーン
火力発電所から発生する石炭灰を引き取り、
セメント工場へ安定供給する役割と、
石炭灰を有効に活用して多様な商品を
供給する役割を担う物流拠点。
発電所
石灰石鉱山
●
採掘した石灰石は
セメントの主原料や
排ガスの SOx 除去に
使用される。
●
アッシュセンター/資源センター
●
石炭火力発電所から発生する大量の石炭灰は
セメントの粘土原料の代替物として、
排ガスの SOx 除去の副産物である石膏は
セメントの凝結調節材として活用。
死亡災害ゼロを目標とし、
労働安全衛生を徹底。
OSHMS の運用をすべての
セメント工場・鉱業所で展開。
※ OSHMS:労働安全衛生マネジメントシステム
●
セメント供給
セメント製造工程がグループの
CO₂排出量の大部分を占めるため、
最重要環境課題として
削減に取り組んでいる。
社会インフラ整備に欠か
せないセメント。「安全・
安心な社会基盤の構築」を掲
セメント工場
げ、製品・サービスの提供
を通じて社会の動脈機能
を担う。
石炭輸送
海外から多く石炭を輸入。
● 地域密着型産業として地域参画、
工場周辺地域で積極的に雇用し、
● アメリカ西海岸、中国、そして東南アジア。 地域活性化に尽力。
環太平洋にビジネス拠点を置き、
新興国の技術者養成も行っている。
海外拠点
ごみ焼却施設
● 都市ごみ焼却灰を
セメント原燃料として利用。
:太平洋セメントグループ
:組織外
製鉄所
●:主要な環境課題に対応した事例
●:主要な社会課題に対応した事例
主なステークホルダー
● 鉄鉱石の精錬で発生するスラグ、
鉄さい等の副産物をセメント原料や
混合材として使用。
太平洋セメントグループの主なステークホルダー
太平洋セメントグループは、様々なス
ステークホルダー
テークホルダーからの期待・要請に応え
資本提供者
株主・投資家
金融機関
て責任を果たし、直接的・間接的に良好な
お客様
セメント販売店
(生コン会社、
建設会社、発注者)
廃棄物排出事業者
関係を築き続けることを目指しています。
太平洋セメントグループの事業の特性
や環境を踏まえ、特定した主なステーク
ホルダーは右表の通りです。
サプライヤー
12
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
◦本支店営業窓口 ◦ユーザー会・工業会
◦技術情報誌、商材カタログ ◦技術講習会 ◦HP ◦労使協議会・労使説明会 ◦研修 ◦相談・通報窓口 ◦HP・イントラネット ◦社内報 ◦CSRレポート 従業員
社会
主なエンゲージメント機会 ◦各種報告書発行(有価証券報告書、アニュアルレポート、CSRレポート等)
◦HP・IRサイト ◦IR活動 ◦各種調査への回答
操業地域コミュニティ
◦説明会・報告会・見学会・環境モニター制度
◦社会貢献活動 ◦CSRレポート ◦ダイアログ
行政
◦各種届出 ◦CSRレポート ◦ダイアログ NGO/NPO
◦各種会議・集会 ◦各種調査 ◦ダイアログ ◦社会貢献活動
取引企業
(調達)
◦調達説明会
協力企業
(構内作業)
◦安全衛生協力会
2013年度に特定した当社グループの重要課題について
2015年度に、前回と同じ3ステップを経て見直しを行いました。
STEP 01
課題の特定
当社グループのバリューチェーンを俯瞰し、
環境・社会の側面における重要な課題を整理しました。
海運
●
●
省エネルギー技術を導入した船舶を新造就航させ、
既存の船舶には省エネ運航を推奨。
海運や鉄道輸送を行うことで、
工場周辺地域の交通渋滞発生緩和に繋がる。
上・下水処理場
● セメントユーザーに対して
各種ユーザー会・工業会を設置・運営し、
事業の活性化や技術支援を行う。
● 上下水汚泥をセメント原燃料として利用。
廃棄物処理業者
● 自動車解体時に発生する
破砕残さ(ASR)
などの廃棄物を
セメント原燃料として使用。
● セメントの安定供給のため、
各輸送機能の管理・強化を行う。
サービスステーション
生産されたセメントを
生コンクリート工場やユーザーへ
供給するための輸送基地。
建設現場
●
資源循環
セメント供給だけでなく、
建設発生土を受け入れて、
セメントの原材料として
資源化処理を行っている。
産業廃棄物や都市ごみ等
を大量かつ安全にリサイク
ル資源として代替原燃料化で
きるのがセメント産業の大
きな特長。現代社会の静
脈機能を担う。
本社/中央研究所
生コン車
●
本社では行動指針・CSR目標2025 に基づきマネジメント。
陸運
人権・多様性の尊重、長期的な人材育成と公正な評価、
● 往復輸送の計画実施や
ワーク・ライフ・マネジメント実現に向けた各種制度整備を推進。
エコドライブ・エコタイヤ等の
中央研究所では、社会のニーズに応える製品・サービスの研究開発に励む。
省エネ装備の導入を奨励。
生コン工場
生コン工場
太平洋セメントの原料調達から生産、製品の輸送・販売、廃棄・再資源化に至る事業活動のプロセス
(バリューチェーン)
は世界に広がっています。
私たち太平洋セメントは、社会からの期待と要請に応え責任を果たすために、環境や社会に関する様々な課題に向き合い、持続可能な社会の実現に取り組んでいます。
経済
主な期待・要請 社会
環境
◦経営の安定性・成長性
◦安定的な利益還元 ◦情報開示
◦適切な経営資源配分
◦情報開示
◦製品の安定供給 ◦高付加価値製品
◦廃棄物処理の経済効率向上
◦製品・サービスの品質・安全性の維持
◦製品使用情報の提供
◦製品使用技術支援 ◦苦情対応
◦環境機能製品の提供
◦廃棄物処理の環境負荷低減
◦正当な対価の支払
◦人権の尊重 ◦多様性の尊重 ◦差別の撤廃、公正な評価、機会均等
◦労働安全の確保・労働環境の整備 ◦技能開発・キャリア形成の支援 ◦対話機会の確保
◦環境配慮経営の推進
◦社会資本構築への貢献 ◦製品・サービスの品質・ 安全性の維持 ◦雇用創出 ◦人権と地域の尊重 ◦社会貢献活動 ◦地域防災への貢献 ◦情報開示
◦地域の環境負荷低減 ◦地球温暖化対策
◦資源循環への寄与 ◦エネルギー効率向上
◦水資源の適正利用 ◦生態系の保全
◦情報開示
◦対等で公正な関係 ◦人権の尊重 ◦労働安全の確保・労働環境の整備
◦環境配慮の正当な評価 ◦環境対策の支援 ◦環境配慮経営の推進
◦社会費用負担
◦納税
◦活動支援・協賛
◦正当な対価の支払
◦適切な経営資源配分
◦情報開示
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
13
STEP 02
優先順位付け
サステナビリティ上の各種課題を、国際的なガイドラインやステークホルダーからの情報ならびに当社の事業内容から抽出し、
太平洋セメントグループの重要テーマとは何かを検討したうえで、
社内の協議によって優先順位付けを行い、11の重要課題を特定しました。
■ 太平洋セメントグループの重要テーマ
経済
●事業活動を通じて経済的価値を創出し、社会に適切に分配する
環境
経済
●事業活動に伴う環境影響の低減に努め、人間活動と自然の共存を目指す
社会
環境
●セメント生産の機能を活かし、資源循環型社会の形成に貢献する
●製品・サービスの供給を通じて、社会の環境負荷低減に貢献する
社会
●グループの存立の基盤をなすものとして、現場の安全を維持する
●稼動と物流を維持して高品質な製品を安定的に供給し、社会インフラ構築に貢献する
●持続可能な社会形成の根幹となる原則として、人権と多様性を尊重する
●地域コミュニティのニーズに対し、事業特性を活かした参画を行い、地域とともに成長する
STEP 01および02の作業にあたって以下を参照しました
●環境汚染防止
●経済的価値の
・ ISO26000
保全・修復
●地球温暖化防止
・ AA1000SES
(AA1000 ステークホルダー・エンゲージメント基準)
サービスの提供
●生物多様性の
・ GRIサステナビリティ・レポーティング・ガイドライン
「G4」
●環境配慮型製品・ ●労働安全衛生
最重要
・ ESGに関する調査・評価
・ 社内アンケート、ヒアリング
サステナビリティ上の各種課題
●水資源の適正利用
●公正な取引
●化学物質の適正管理
●腐敗防止
●環境関連法令遵守
●輸送・移動による環境影響の緩和
●マーケティング・
コミュニケーション
●人材育成
●個人情報保護
●ワーク・ライフ・マネジメント
●情報開示
●健全な労使関係
●知的財産の管理と活用
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
ステークホルダーにとっての重要性
(社会からの期待度)
・ 外部有識者、アドバイザーの意見・助言
14
●地域コミュニティへの
参画と尊重
・ステークホルダー・ダイアログ
・ CSRレポートアンケート
創出と分配
重要
環
●エネルギーと
資源効率の向上
(資源循環の促進)
●多様性と機会均等
●製品の品質・
安全性の維持と
●人権の尊重
最重要
太平洋セメントグループによって生じる影響の重要度
(課題への貢献/影響度および自らの成長への寄与/リスク度)
安定供給
■ 太平洋セメントグループの重要課題とアプローチ
カテゴリー
重要課題
主な影響の範囲
太平洋
セメント
経済
経済的価値の
創出と分配
環境
環境汚染防止
生物多様性の保全・修復
工場周辺地域
環境配慮製品・
サービスの提供
社会
多様性と機会均等
製品の品質・
安全性の維持と安定供給
地域コミュニティへの
参画と尊重
人権の尊重
STEP 03
P.06-07
P.62-65
P.38-41,47
産業界
【 体 制 】
・
「環境経営委員会」を設置
地域廃棄物関連施設
・全工場・本社・支店・中央研究所で ISO14001を運用
工場周辺地域
労働安全衛生
社会
【 方 針 】
・17中期経営計画
(2015~ 2017年度)に基づく
事業活動を展開
産業界
・
「環境経営方針」
地域廃棄物関連施設 【 方 針 】
・WBCSD-CSI
「CSI憲章」
地球温暖化防止
活動報告
バリューチェーン
社会
エネルギーと
資源効率の向上
(資源循環の促進)
マネジメントアプローチ
【活動評価】
・
[CSR目標 2025]
・
「CSI憲章」に基づくグループ環境目標および KPI
・
「環境経営委員会」によるモニタリングとレビュー
P.38-39,47
P.44-45
P.42
P.46,52,53
協力会社
【 方 針 】
・
「安全保安衛生方針」
【 体 制 】
・
「安全保安衛生委員会」を設置
・全工場・鉱業所で OSHMSを運用
【活動評価】
・
[CSR目標 2025]
・協力会社を含む安全保安衛生データのモニタリング
P.60-61
【 方 針 】
・
「人材開発基本方針」
【 体 制 】
・多様性に関する基本方針
・長期的な人材育成制度、公正な評価制度、
働きやすい職場環境を整備
【活動評価】
・
[CSR目標 2025]
・多様性に関する数値目標
・各種人事データのモニタリング
P.56-59
セメントユーザー
社会
【 方 針 】
・
「品質方針」
【 体 制 】
・製品の開発・設計・製造の ISO9001による一元管理 ・TBC活動
(太平洋ブランド・セメント・コンクリート
P.50-53
活動)による技術支援活動
【活動評価】
・品質関連の指摘・問い合わせデータの分析 ・製品の安全性に関するデータのウェブ開示
工場周辺地域
【 方 針 】
・
「グループ行動指針」
「CSR基本方針」で
「社会とのコミュニケーション」を重要課題と特定
【 体 制 】
・
「ステークホルダー・コミュニケーション委員会」に
よる全社活動の推進
【活動評価】
・全社活動計画に基づく進捗管理と情報の共有
P.62-65
協力会社
【 方 針 】
・
「人権・労働慣行基本方針」
【 体 制 】
・
「人権・労働慣行委員会」による全社活動の推進
・相談窓口
【活動評価】
・全社活動計画に基づく進捗管理、
労使協議会における交渉・意見交換
P.56
妥当性の確認
特定した課題について、
STEP 04
レビュー
発行レポートについて毎年度レビューを実施しています。
「当社グループの重要な課題が網羅されているか」
「ステークホルダーの期待が反映されているか」
を
十分に吟味した上で、最終的に決定しました。
◦ 組織内
➡当社全従業員へ冊子配布、アンケート実施
➡
「CSRレポート編集タスク
フォース会議」における検討
➡
「CSR経営委員会」における
報告・承認
➡レポート説明会を全事業所・工場で巡回開催
(2015年度は計21回)
◦ 組織外
➡有識者による第三者意見
➡CSRレポートアンケート
➡外部アドバイザーのレビュー
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
15
第12回ステークホルダー・ダイアログ
▶
G4-26, 27, 43
北林 勇一
The 12th
太平洋セメント
代表取締役 専務執行役員・経営企画担当
Stakeholder
Dialogue
CSR 情報開示の
ありかたを考える。
河口 真理子氏
(大和総研 調査本部 主席研究員)
大和総研の企業調査、大和証券グループ本社
CSR室長、大和総研環境・CSR調査部長を経て
現職。専門分野はCSR、
ESG投資、
エシカル消費
等。社会的責任投資フォーラム共同代表理事。
企業は様々なステークホルダーに対し、事業活動が環境・社会・経済へ与える影響について
説明責任の遂行を負うとともに、CSR情報開示を通じて企業価値を伝達することで、外部評価の向上を目指しています。
太平洋セメントのCSR情報開示は、このような目的を果たせているのでしょうか。
情報ニーズと対応をめぐる課題について意見交換を行いました。
ダイアログの内容は、イントラネットに公開して全従業員での共有を図り、CSR活動の推進に活用しています。
(2016年4月14日開催。文中敬称略)
2015年に起きた時代の大転換
16
の指標に入れるようになったということです。この動
きは欧米ではすでにかなり普及しています。一方、日
司会:企業の情報開示を巡る最近の大きな出来事に
本では現在、試行錯誤が始まったという段階ですが、
ついてお話を伺いたいと思います。
今後大きなうねりとなると思われます。
河口: 一つは、世界最大の運用機関で日本の年金
後藤: もう一つは、9 月に国連で「SDGs(持続可
基金のリーダー、年金積立金管理運用独立行政法人
能な開発目標)
」が採択され、さらに12 月に気候変
(GPIF)が2015 年 9 月に責任投資原則(PRI)に署名し
動に関し「パリ協定」が採択されたことが挙げられる
たことが挙げられます。PRIとは、投資(株を買う、お
のではないでしょうか。この協定によりCO₂はもう
金を貸す)するにあたって投資先企業の環境・社会・
無限に出し続けることはできない、排出が著しく制限
ガバナンス(ESG)に対する取り組み状況を考慮する
される方向にベクトルが変わったのです。投資側の変
というものです。このことにより、投資の世界が様変
化のお話がありましたが、産業界も動きはじめていま
わりしています。つまり今までは投資といえば財務情
す。例えばトヨタ自動車は、
「2050 年に製造から走
報のみで判断されていたものが、財務情報をつくるも
行、廃棄に至るまでCO₂ゼロを目指す」という長期
ととなる事業基盤(ESG)に関する状況も投資先評価
目標を含む「環境チャレンジ2050」を出しました。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
松島 茂
太平洋セメント
取締役 常務執行役員・CSR担当
後藤 敏彦氏
(サステナビリティ日本フォーラム 代表理事)
環境経営学会会長、グローバル・コンパクト・
ネットワーク・ジャパン理事、社会的責任投資
フォーラム理事・最高顧問、グリーンファイナ
村上 智美氏
ンス推進機構理事、環境省の複数委員会の座
(みずほ情報総研 環境エネルギー第2部 シニアコンサルタント)
長・委員を歴任。
企業の環境戦略・中期環境計画の策定などCSR・環境経営、情報
開示に関するコンサルティングのほか、環境省・経済産業省等の
情報開示・企業評価関連政策策定支援業務等を担当。環境コミュ
ニケーション大賞選考WG委員ほか。
司会:堀江 美保氏
サスティービー・コミュニケーションズ
シニアコンサルタント
投資家側がESGを評価する力をつけていくと、企業
達」という「背後霊」が付いていると申しております。
側はそれに耐えうる情報開示・対話ができなければ
日本人は目標=必達と捉え、長期目標なんてできない
評価されない時代に突入していくでしょう。2015 年
と反応しがちです。しかしトヨタさんは、これから調
は、CSRのピボタル・イヤー(方向転換の年)
、として
達や社会システムの変革まで、いろいろな方にお願い
記憶されるのではないでしょうか。
しながらイノベーションを起こしていかなければなら
ない。簡単にはいかないが、何としてもがんばるため
にも思い切って出しましたとおっしゃっていました。
長期的な目標設定と道筋を
語ることが求められている
北林:トヨタさんの「環境チャレン
明確な裏付けはなくてもゴールを示すことに対する社
会の捉え方が変わってきていると思います。
松島:当社のIRでも今までの関心は
ジ 2050」 は す ご い な と 感 心 し ま す。
財務的なことばかりでした。ところが
私たちは、経営理念の具現化を目指す
先日、海外投資家からのインタビュー
過 程 と し て、 中 期 で 見 た「CSR 目 標
での質問は、地球温暖化対策について
2025」という定量目標を2015 年度
の具体的な数値目標とか、コーポレー
に設定しました。10 年後については、ある程度の裏
トガバナンス基本方針の導入やその改善点といった
付けを持っているので定量目標として示すことができ
ESG 関連が主で、ESG 評価のニーズが高まっている
ます。投資家あるいは社会は、さらに長期の話を期待
ことを改めて肌で感じました。
しているのだと思いますが、到達できるという見通し
がない中でそれを示すのは難しいと感じています。
村上:環境や社会の課題が、経営で本当に重視す
べき事項になってきたのだということ、ここで意識を
後藤:私はよく、日本企業が目標をつくる時「必
変えてそのような新しい社会ニーズに対応していくこ
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
17
とが求められている
循環型社会に向けた貢献もしていることを発信してい
ということなのだろ
かなければならないと感じました。
うと思います。パリ
協定の2℃未満とい
北林:東日本大震災の時には、被災した大船渡工
う目標を達成するに
場を復旧し、災害廃棄物 100 万トンを受け入れてセ
は、社会やビジネスの仕組みそのものを変えていかな
メント資源化処理を行いました。大量の災害廃棄物を
いと成り立ちません。社会が持続可能な方向に向かっ
受け入れて地域復興に必要なセメントをつくるという
て進んでいる中で、企業はどういう方向感でその流れ
循環は、セメント産業にしかできません。そういう機
に乗ってチャンスをつかむのか、というところに投資
能が行政に理解され、大規模災害が起きた時は優先的
家の目線が向くようになってきています。だから企業
に災害廃棄物を受け入れる協定を自治体と結んでい
に長期的な成長とリスク対応の方向性を示すことが期
ます。これは、我々に廃
待されるわけです。
棄物をセメント資源とし
て使ってきた実績と技術
セメント会社は何を語るべきか
があるからこそ可能な社
会貢献です。
司会:セメント会社の業種特性を踏まえると、より理
解・評価されるには、どのような情報開示が有効で
しょうか。
村上:CSRというと、
負荷を減らすことにどれ
だけ努力をしていますという方に視点が行きがちです
河口:気候変動対策のため、とにかく脱炭素が叫
が、セメント産業の社会的な価値をもっとアピールさ
ばれています。セメントは製造時にCO₂をたくさん
れるとよいのではないでしょうか。まず業界の特性を
出してしまうけれど、人々の安全・安心な社会基盤を
理解してもらうこと。次に生み出している価値はきち
つくるのに不可欠な素材です。気候変動は深刻な脅威
んと伝えること。災害廃棄物の再利用の話が出ました
ですが、生物多様性の危機や、異常気象に対抗できる
が、コンクリート構造物には寿命があって、50 年後、
強靭な都市づくりも同様に重要です。車やエネルギー
100 年後には一度壊さないといけない。そういう意
は代替できるものがあるのでそちら
味では都市はある種、将来的な廃棄物の塊でもありま
にシフトできますが、インフラ素材
す。長期的な社会の資源循環の中にセメント業界とそ
としてセメントに代わるものはない。
の技術を位置付けることができれば、それも社会的な
これを社会的にどう評価するのか、
価値を示すことになると思います。
セメント事業の意義をどう捉えてい
くかが重要だと思います。セメント
北林:コンクリートは、100 年以上も持つ素材で
業界としてできるCO₂の削減努力は
すが、寿命以前に大抵建て替えられています。ただ今
もちろんしていくけれど、ほかの社
のご意見のように「壊されてもまたコンクリ−トの原
会的な価値を見せていくという問題
料として再生され使われています」という視点も大事
提起もありなのではないでしょうか。
なのかもしれません。
北林:これだけの機能を持ち大量供給できるもの
として、代替物はないですね。
松島:しかし代替物がないからと従来型のセメン
後藤:山をどんどん削ってセメントをつくって
トでよしとはせず、より環境負荷を減らすために、廃
CO₂を出しているというのが、残念ながら世の中が
棄物や副産物を原燃料として投入する技術を磨いてき
セメント会社に抱いているイメージかもしれません。
ました。セメント製造のリサイクル機能によって資源
18
「セメント会社」のイメージを変える
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
「循環型社会のキープレイヤー」として、社会の動脈
と静脈を担っていることを理
解してもらいたいわけです
が、こんないいことをやって
いますと言うばかりでは宣
伝になってしまいます。御社
は環境会計の中で見なし効
果というものを計算しておられますが、このような価
北林:当社のCSRレポートは環境レポートから出
値評価をもっと出していかれるのもよい手段かもしれ
発し、その延長線上で情報開示を進めてきたため、社
ません。
会に何を貢献しているのかということをうまく訴求で
きているとは言えないかと思います。
「なぜそれが重
河口:ブランディングという意味では、
「セメント」
要なのか」
「 それが達成できるとどんな会社になるの
という社名をいっそやめてしまうというのもよいのか
か」を訴求できるよう、読み手の目線で考えていきた
もしれません。セメントを最終製品として、社会の廃
いと思います。
棄物を循環させているとなると、単なる「セメント会
社」ではなくて、
「セメントもやっている会社」です
よね。CO₂が非常に大きな環境課題という流れの中
で、セメント産業というビジネスモデルにおける環境
価値とは何かを、逆に社会に打ち出して、世の中の一
般常識の中に入れ込んでいく必要があると思います。
セメントはあまりにも当たり前で身近なので、まった
く違う業態、成長産業として捉えなおすことができる
ことを訴求する努力が必要なのだと思います。
松 島: セ メ ン ト は 基 本 的 に
BtoB の商品なので、一般市民の
個人や投資家などに産業の意義を
深く理解いただくには、工夫が必
要であると感じています。
ダイアログを読んで 〜太平洋セメント従業員の声〜
企業価値の評価に ESG の視点が不可欠であるとい
う流れが始まっていることが、非常に強く伝わって
村上:御社のレポートをご覧に
きました。CSR 情報の開示において、セメント産業
なる方や投資家に向けて、
「なぜそ
の社会的な価値のアピールを意識して取り組んでい
れが重要なの?」
「 それが達成でき
かなければならないと感じました。
るとどんな会社になるの?」とい
うことを丁寧に説明していくと、IRの方もより説明し
セメント産業の社会的価値アピールのために「セ
やすくなるのではないでしょうか。もしかしたら社内
メント」という社名をやめるというブランディング
でもそのあたりを十分に落とし込みきれていないのか
はとても面白いアイディアだと思いました。このく
もしれません。そこを皆さんで共有することがCSRの
らい飛びぬけたアピールをしていかないと、世間の
ステップになるように思います。
イメージを変えることはできないのかも知れません。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
19
01
02
03
04
05
07
06
09
08
▶
G4-EC7, SO1
特集01 Building Better Communities
※1
フィリピンの明日をともにつくる。
7,107 もの島からなるフィリピン共和国。中でも
観光産業で栄えるセブ島の、フィリピン第二の都市で
あるセブ市近郊で、タイヘイヨウセメントフィリピン
の需要量 (2,430 万トン)は 2010 年の 1.5 倍を超え
ました。今後、さらなる需要が見込まれています。
伸び続ける需要に応えるため、2015 年に新クリ
ンカ粉砕ミルを増設し、セメント生産能力は従来の
ズ(TCPI)は操業しています。
フィリピンは太平洋上の台風の通り道に位置するた
約 1.7 倍(年間 240 万トン)に、さらに工場専用の港
め、台風被害やエルニーニョ現象による干ばつ等、特
も拡張し、輸送船の入港を 5 隻から
に地球温暖化による異常気象の影響にさらされていま
10 隻にするなど、設備増強を図っ
す。フィリピン政府は 2010 年に「災害リスク軽減・
ています。また「2016 年工場管理
※2
管理法」を制定し、
「レジリエントなまちづくり」
目標」の基本方針の一つに「教育研
に取り組んでいます。防災のためのインフラ強化や経
修の拡大」を設定し、操業の基盤と
済成長によるセメント需要は高まっており、2015 年
なる人材育成に注力しています。
新設された粉砕ミル
01:フィリピン人に人気のバスケットボール。写真はTCPIのセメント寄付により修繕したバスケットボールコート 02:現地で雇用された女性従業員が多く働き、活気溢れ
るセブオフィス 03:発展が著しいセブ市街とは対照的に豊かな自然と美しい海が残るセブ島 04:山岳地域のバランガイ ※3 から見たTCPIの工場と鉱山 05:TCPIが
セメントを供給し、敷設された山岳地域の道路 06:現地法人であるSolid Earth Development Corporation(SEDC)が管理する鉱山。珊瑚起源の石灰石で柔らかく純度
が高い。石灰岩以外の雑岩がほとんどなく、ほぼすべてをセメント原料として使用可能 07:セブ市につながる工場前の幹線道路。交通量が多く、セブ市周辺の発展の著しさが
伺える。TCPIはセメント供給によってインフラ構築を支援 08:工場全体のオペレーション管理を行う中央監視室 09:TCPIが支援した井戸で水を汲む少女
※1 タイヘイヨウセメントフィリピンズの経営理念 ※2 大規模災害等が起きても社会システム機能を速やかに回復させるため、防災・減災対策を進めること
※3 バランガイ:村、地区を表す最小の地方自治単位
20
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
高校・大学時代に奨学金支援を受けていたルー
チェルさん(写真中央)とご両親。8人兄弟の長
女として生まれ、現在は会計士として働いてい
ます。成績優秀者のみが受けることのできる奨
学金制度は奨学生たちに誇りと夢を与えます。
2005年に制度を設けて以来、のべ152名(中・高
校生131名、大学生21名)を支援してきました。
2016年現在、13のバランガイの計62名を支援
しています。
事業活動を支える人材の力を伸ばす
正確で効率的なオペレーションを維持してこそ、高
品質の製品の安定的な生産が成り立ちます。若い世代
への知識・技術の承継を目標に掲げ、2016 年 1 月に
トレーニングセンターを開設しました。担当業務だけ
でなく工場全般のオペレーションを横断的に理解し、
不衛生状態によって起きる感染病の終息・予防のため、TCPIの産業医が中心となり各バ
ランガイを巡回して対処法のレクチャーと石鹸配布を実施しています。さらに小学校へ
の手洗い場寄付、公共の場への井戸や給水システムの設置によって、水へのアクセスを
可能にし、衛生状態の改善に努めています。経過は各バランガイのヘルスワーカーがモ
ニタリングし、産業医に報告する仕組みです。地域行政とも連携し、複数の支援活動を効
果的に組み合わせて、地域の課題解決に取り組んでいます。
工場のあるサウスポブラシオン地区のバランガイ
議長と評議員の皆様。定期的な話し合いにより地域
のニーズを汲み取り、SDMPプログラムの支援内
容を決定。
周囲の従業員を先導して現場を統括できる技術者の育
成を目指しています。現在は座学をメインに業務を行
いながら製造部スタッフおよび機械・電気系従業員が
各々のカリキュラムに沿った教育を受けており、定年
の一環として、工場周辺地区の中・高校生、大学生を
後に再雇用した現地のベテラン技術者が講師として活
対象に、それぞれの学校を卒業するまで継続的に奨学
躍しています。さらに部門ごとに通常業務内での技術
金を授与しています。奨学生を対象にしたリーダー
指導を盛り込んだ目標を設定し、OJT による人材教
シッププログラム等の開催により、住む地域の違う奨
育についても強化しています。
学生同士のつながりも生まれています。フィリピンの
将来を担う世代にも無限の可能性を信じて成長しても
トレーニングセン
ターでの受講風景。
100名 以 上 の 従 業
員が専門分野につ
いて学ぶ。
らいたいと、我が子を見守るように様々な面から支援
しています。また、学校や医療センターの建設や設備
補修、道路の舗装等、地域インフラの向上のためにセ
メントの寄付を続けていることも、セメント会社なら
ではの取り組みです。
地域の未来を支える次世代を支援する
TCPI は、 利 益 の 一 部 を 地 域 支 援 に 拠 出 す る
SDMP( 地域開発プログラム ) を運用しています。そ
VOICE
TCPI は事業を通じて、セメントの供給によるイン
フラ構築と、SDMP による地域参画という 2 つの側面
の社会的機能を担い、これからもよりよい社会づくり
を目指します。
「人を育てる」
ことを通じて、地域とともに成長を目指します。
セメント事業は地域密着型の産業です。同じ場所で長いスパンで操業するには、操業地域から認められ、
必要とされる企業であることが重要であり、
「フィリピンとともに生きていく」というマインドで積極的に地
域参画に取り組んでいます。高品質のセメントの生産は、高度な技術力を持つ人材を確保・育成してこそ維
持できます。現地人材は重要な戦力です。いわば「ものづくりは人づくり」なのです。同様に、フィリピン
の未来をつくるのも人の力だと思います。自社、そして操業地域の「人を育てる」ことを通じて、広くフィ
リピンの明日に貢献し、地域とともに成長していくことを目指します。
タイヘイヨウセメントフィリピンズ 社長 浅見
賢志
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
21
04
03
05
06
02
01
07
08
▶
G4-EN27
特集02 ∼セメント工場における廃棄物の再資源化∼
私たちの「ごみ」を「資源」に。
私たちは、一人 1 日あたり約 1kgもごみを出してい
源消費や温室効果ガス排出を抑制します。
ます 。廃棄物処理で全国的に問題となっているのが
※
最終処分場の逼迫です。最終処分場の新設は難しく、
別の方法で処分場の延命化を図る必要があります。廃
自治体の問題解決に貢献
棄物の焼却により減容化を図る方法は以前から取られ
北海道札幌市でも最終処分場の延命化が切実な課
ていましたが、近年、廃棄物を「資源」として捉える
題であったため、太平洋セメントから上磯工場(北斗
動きがあります。その一つが、一般家庭ごみの焼却灰
市)での焼却灰の受け入れを提案しました。2008 年
を埋め立てずにセメントの原燃料として利用する「セ
度から受入量 100 トン未満で試験的に開始し、2013
メント資源化」で、人口の多い都市部で取り組みが始
年度から本格導入されました。年々受け入れ量を増
まっています。
やし、2015 年度には 1.5 万トンを受け入れ、札幌市
太平洋セメントでは廃棄物の焼却灰を受け入れ、有
のリサイクル・最終処分場の延命に貢献しています。
用物を回収してリサイクルし、残った焼却灰をセメン
2016 年現在、道内で焼却灰を受け入れているのは上
ト原燃料として再利用しています。これにより最終処
磯工場のみです。2014 年から道内・本州の複数都市か
分場への埋め立ては活用できない不燃物のみになり、
らの受け入れも開始し、貢献の範囲を広げています。
大幅な削減が可能です。さらに、天然資源の代わりに
太平洋セメントは、これからも地域の「資源循環の輪」
焼却灰を投入することで、セメント製造による天然資
をつなぎ、持続可能な都市の発展を支えていきます。
01:函館貨物ターミナル駅にて、都市ごみ焼却灰の入ったコンテナを専用貨車からコンテナ集配車にシフト 02:上磯工場と峩朗鉱山をつなぐベルトコンベアーと交差する
北海道新幹線。橋脚には上磯工場のセメントを使用 03:海上桟橋の安全パトロール 04:全行程を集中運転監視する中央制御室 05:300年分の鉱量を有する峩朗鉱山の
山頂から眺める上磯工場遠景。峩朗鉱山では年間約700万トンの石灰石を採掘 06:120余年の歴史を有し、東日本最大の生産規模を誇る上磯工場 07・08: 札幌貨物ターミ
ナル駅から函館貨物駅ターミナルへ、都市ごみ焼却灰の専用コンテナを運ぶJR貨物の電気式ディーゼル車
※ 環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成26年度)」
22
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
焼却灰はコンテナに積み込まれ、清掃工
場からJR貨物ターミナルまでトラッ
クで運ばれます。ターミナルでJR貨物の
電気式ディーゼル車(通称:エコパワー
レッドベア)にバトンタッチされ、札幌
から函館まで鉄道輸送されます。
回収された都市ごみは清掃工場へ運ばれます。札
幌市の白石清掃工場では、ごみを焼却する際に発
生する熱を利用して発電。施設の電力をまかない、
余剰電力は電力会社に売電しています。ごみを燃
料と捉え、有用な副産物として電力を生み出すこ
とが可能に。
都市ごみ
焼却場
札幌市では年間約60万トンのご
みが排出されます。ごみの焼却に
より発生する焼却灰の処理方法
は「埋立」と「セメント資源化」
。
焼却灰のセメント資源化を現在
のペースで10年間継続すると埋
立処分量を15万トン減少するこ
とができ、処分場を約2年間延命
化できる計算です。
セメントがつくる
資源循環
都市
都市から出たごみから
セメントを生産。
そのセメントがまた都市
に運ばれて、社会インフ
ラを構築しています。
鉄道輸送は交通渋滞の
解消、CO₂排出量の削
減、大量輸送が可能な
点で優れています。ま
たトラック輸送の場
合、冬の路面凍結による遅延が北海道
ならではの課題ですが、鉄道輸送では
定時性が確保されます。
上磯工場
セメント工場における廃棄物
リサイクルの特徴
・2次廃棄物の発生がない
・無害化処理される
・天然原料を削減できる
・温室効果ガスを削減できる
・地域循環型社会構築への貢献
上磯工場から全長2kmにわたっ
て延びる専用海上桟橋(写真上)
VOICE
ターミナル駅
行政と民間の連携で
循環型社会の実現を目指します。
工場内の都市ごみ焼却灰の受入ヤードと設備(写真上、写真左)
上磯工場では現在、年間3.5万トンの都市ごみ焼却灰を受け入
れる能力を有しています。
VOICE
資源として利用し尽くし、
循環型モデル構築に貢献します。
札幌市では、一般廃棄物処理基本計画「スリムシティさっ
もうこれ以上は使えないと廃棄された物の中からさらに
ぽろ計画」を掲げ、家庭から出る一人 1 日あたりの廃棄ご
有用物を取り出し、その上で、最後の焼却灰もセメント原
み量 380gや最終処分量 2 万トン減量を目標として、様々な
料とする技術は、セメント製造過程で異物混入を防ぐ技術
取り組みを行っており、その一つとして焼却灰のセメント
を高度化し、応用させたものです。上磯工場のセメント製
資源化を行っています。この取り組みにより都市ごみが資
造が札幌市の課題解決に貢献できたことは、大変な喜びで
源化され、結果として最終処分場の延命化を図ることがで
す。廃棄物処理は地味な仕事ですが、地球の未来を考える
きるのは、大変意義のあることと考えています。2015 年
うえでなくてはならない仕事です。都市から出たごみから
度は、リサイクル可能な焼却灰 1.5 万ト
セメントをつくりだし、そのセメントが
ンを太平洋セメントで処理していただき
また都市に運ばれてインフラの資材とし
ました。今後もさらなるごみの減量・リ
て活用される、この循環型モデルの構築
サイクルに努めますが、行政の力だけでは
にかかわっていることを誇りに思います。
実現できません。引き続き廃棄物処理に
今後はさらなる焼却灰受け入れの拡大を
かかわる事業者の方々と連携しながら、
図り、より広域にわたる、より末永い貢
循環型社会の形成に力を尽くします。
献を目指します。
札幌市環境局 環境事業部 施設管理課
施設計画係長 犬伏
哲浩様
北海道支店 環境事業営業部長 高砂
宏
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
23
持続可能な地球の未来を拓くために。
各分野における取り組み
マネジメント 26
環境への取り組み 36
社会との取り組み 50
24
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
上磯工場
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
25
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
CSRマネジメント
※ 関連するSDGsのアイコンを表示しています(詳細はP.68を参照)
。
「持続可能な地球の未来を拓く先導役をめざす。」
このグループ理念の実現を目指して、
部門横断的に課題の共有と活動に取り組む推進体制として「CSR経営委員会」
を設置し、
事業活動と一体化したCSR推進活動に取り組んでいます。
太平洋セメントグループ
CSR理念体系
▶
G4-56, DMA
グループ経営理念は、事業活動を行うにあたり指針
グループ
経営理念
ありたい姿・
目指す方向性
とする最上位の概念です。
「行動指針」は、グループ経
営理念を受け、より具体的に行動の指針を表したもの
行
です。
動
指
17中期
経営計画
CSR目標
2025
事業戦略
針
経営基盤の強靭化
また、グループ経営理念を踏まえた未来像として、
2020 年代半ばの「ありたい姿・目指す方向性」を設
定しました。これらはグループの価値観・方向性を定
性的に示しています。
中期経営計画は3 年間の経営戦略と経営目標であ
り、
[CSR 目標 2025]は長期的なCSR 定量目標です。
この2つの定量目標を両輪として「ありたい姿・目指
す方向性」の実現を目指しています。
※ グループ経営理念:P.04、行動指針:P.04、[CSR目標2025]:P.05に掲載
CSR経営推進の基本方針
▶
G4-56, DMA
当社は、経営理念の具現化および行動指針の実践に
関する基本的事項を定め、当社が事業内外において社
会的責任に則った活動を推進し、社会および当社の持
続可能な発展を追求することを目的とするCSR 要綱
【 CSR経営推進の基本方針 】
1. 当社の経営理念・行動指針を踏まえ、目指すべき理
想の CSR 経営を明確にし、CSR に基づいた事業活動
の進展を図る。
2. コンプライアンスを最重視する企業風土を醸成し、
全役員・従業員が常に主体的に最適な判断を行うこ
とを志向する。
3. 環境保全・人権擁護・地域貢献等が当社の社会的使
命であると認識した経営を行う。
4. CSR の重点課題について、積極的に取組み、適正な
優先順位付けと資源配分を行う。
5. CSR 経営推進の状況を踏まえ、ステークホルダーに
対して適切な情報開示・コミュニケーションを実践
し、信頼関係を構築する。
6. CSR 経営推進を当社グループ全体の活動として位置
付け、グループ企業全社に周知徹底する。
を定め、CSR 経営を推進しています。また、本要綱に
CSR 経営を推進するための基本方針を定めています。
取締役会
CSR経営の推進体制
▶
G4-34, 35, 36, 37, 44, 45, 46, 48, DMA
社長を委員長とし、取締役会直属で全取締役がメン
監査部
監査
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
グループ 会 社
専門委員会
に対し最も関連の強い部署が事務局となっています。
全事業所
環境経営委員会
ます。各専門委員会は担当役員が委員長を務め、課題
ステークホルダー・
コミュニケーション委員会
CSR 経営委員会の傘下に7つの専門委員会を設けてい
・人権 ・環境 ・消費者課題
・人権
・労働慣行 ・コミュニティ参画および発展
品質管理委員会
ます。CSRの個別課題により具体的に取り組むため、
委員長:社長
事務局:総務部 CSR推進グループ
安全保安衛生委員会
項の審議とCSR 活動実施状況のレビューを行ってい
・組織統治
・公正な事業慣行
人権・労働慣行委員会
CSR 経営委員会は、全社 CSR 実施計画等の重要事
CSR経営委員会
情報セキュリティ委員会
を設置し、CSR 経営を推進しています。
ISO26000
社会的責任の
中核主題
リスク管理・
コンプライアンス委員会
バーであり部門横断的に構成される「CSR経営委員会」
26
■ CSR経営の推進体制(CSR経営委員会と専門委員会)
CSR マネジメント
CSR研修・教育
コーポレート・
ガバナンス
リスクマネジメント
コンプライアンス
持続可能な発展に向けた国際的な活動に取り組んでい
▶
G4-43
ます。
新入従業員研修、新入従業員フォローアップ研修(2
CSI は、世界中のステークホルダーとの対話を踏ま
年目)
、キャリア開発研修(10 年目前後)
、新任管理職
えたセメント産業の持続可能性に関する調査研究に基
研修等の各階層別研修において、CSR に関する教育
づき 20 年間のビジョン「自主行動計画」を策定し、
を実施しています。人権などの CSR の個別課題に関
2002 年にコアメンバー 10 社の共同コミットメント
する教育は個別の委員会が実施しています。また、グ
として公表しました。
ループ会社を含めたトップ層に対し、年 1 回 CSR 関連
「自主行動計画」では、気候変動への対応、原燃料の
の研修を実施しています。さらに、2015 年度も、全
効率的利用、大気汚染物質の排出削減、生物多様性、
事業所を巡回し CSRレポート説明会を実施しました。
水問題、安全衛生やサプライチェーンマネジメントな
ど重要課題ごとに作業部会を設置し、メンバー共同で
それらの課題に対する主要業績評価指標(KPI:2015
■ トップ層研修開催実績(2015年度)
開催日
2015年
12月9日
参加社数
104社
年度実績はP.66参照)やガイドラインの開発を行って
テーマ
・ ハラスメントのない職場づくりのために
・ リスク新時代における経営層の役割
います。また、各社が独自に排出量の削減などの目標
を設定・公表し、持続可能な社会の構築に取り組んで
■ CSRレポート説明会開催実績(2015年度)
開催日
2015年
10月〜12月
います。
開催場所
参加人数
・ 本支店、工場、研究所など21カ所
822名
特に地球温暖化問題への対策では、世界のセメン
ト会社共通の「CO₂ 排出量算定報告基準(CO₂・エネ
ルギープロトコル)」を開発し、CO₂ 排出量とエネル
ギー使用に関する信頼性の高い情報を収集する体制を
整えました。さらに、グローバルなデータベースを構
築し、CO₂ 排出量ならびにエネルギー使用に関する
データを公表しています。CSI の取り組み課題は、当
社においても重要な経営課題と認識し、取り組みに努
めています。
● 東京人権啓発企業連絡会への参画
当社は「東京人権啓発企業連絡会」に参画していま
す。同団体は、1979 年 11 月に発足し、東京に本社を
CSRレポート説明会(本社開催)
置く企業を主体に 125 社(従業員約 100 万人、2016
外部団体との協働
年 5 月現在)で組織され、「自主的運営と全員参加の精
▶
G4-14, 15, 16
● WBCSD-セメント産業部会
当社は、2000 年よりWBCSDのセメント産業部会
神」を基本理念として、企業の立場から同和問題をは
じめ、様々な人権問題の解決に向けて取り組んでいる
任意団体です。
(CSI=Cement Sustainability Initiative)のコアメ
ンバーとして、世界の 23 社のセメント企業とともに
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
27
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
2015年度CSR活動の主な実績
▶
G4-27
判定
関連
ページ
○
31-33
○
33
・荷主として事故防止と重大事故発生時の連絡体制をトラック輸送協力会や船舶オペレータ
会議で周知徹底
・船舶の重大事故想定訓練を当社配船担当も参加し実施、連絡体制の手順を確認
(11月)
○
32
・当社管理の設備および土地の所管部を確定するとともに管理指針を策定し、周知
・鉱山・採石計33事業所においてリスクへの体制強化、豪雨発生時の警戒基準・対応マニュアル整備など
○
32
・暴動・テロ対応マニュアルを作成
○
○
32
計画
活動主体
実績
リスク管理•コンプライアンス委員会
1.PDCAサイクルによるグループ会社も含めた推進活動の継続的改善:新たなリスク課題への対応と既存課題への取り組み強化
・大気汚染:水銀に関する水俣条約対応
・情報リスク:誹謗・中傷、悪評の流布対策
(情報セキュリティ委員会)
・輸送中の事故対策
・遊休設備の管理不足対策
・豪雨・洪水・内水氾濫対策
・暴動・テロ対策
・地震・津波対応
・財務コンプライアンス対策
組 織 統 治 / 公 正 な事 業 慣 行
・PDCAサイクルによる推進活動の継続的改善
・水銀対策会議を組織。・水銀低減対策について検討、インプット低減と排出低減装置のテスト実施
・ソーシャルメディアサービス
(TwitterやFacebook等)
をモニタリングし、当社関連の書込
み増加を自動的に検出するシステムの運用開始。
「炎上」に備え、リスク対応フロー図を作成、
通報窓口を周知
・本社と工場・支店が連携した初動対応訓練のあり方等に関する意見交換実施(10月)
・全事業所に安否確認方法・シェイクアウト訓練の紹介および津波避難場所選定と周知徹底の
依頼を実施
(11月)
32
○
32
○
32
○
31-32
・改定版行動基準ケースブックをグループ会社含めて配布、周知・徹底
・工場・支店のリスク管理
・コンプライアンス推進者に「リスク情報に対する的確な対応手順の習得」研修会実施
○
54
○
32
・未実施/来年度は地震・津波リスク対策に包含して取り組む
×
32
○
33
△
33
○
33
○
33
・人事部中心に収集・運用方法決定。総務部:特定個人情報関連規定策定。経営企画部:システム仕様設計
・社有携帯電話紛失3件
(2014年度3件)
。改めて全事業所へロックの徹底を通知
○
33
【研修別受講者数】
①ハラスメント特別研修:1,885名、②トップ層研修:132名、③新入従業員研修:89名
(内、
関係会社:3社9名)
、④フォローアップ研修(入社2年目): 79名、⑤コミュニケーション+
OJT実践研修(入社5年目):18名
(内、関係会社:2社14名)
、⑥キャリア開発研修(主任・副
主管昇格者): 63名、⑦新任管理職研修: 32名、⑧職長研修:17名、⑨テクノスクール特別
講義: 6名、⑩DVD研修教材の事業所巡回:ハラスメント・メンタル各1巻の事業所巡回
○
56
○
56
○
27
○
58
○
58
○
56-59
○
56-57
・
「関係会社派遣監査役のための監査マニュアル」の一部改訂
(4月)
、経理担当者会議において
教育実施
(11月)
・子会社の基本的な会計処理の統一
(6〜9月)
「太平洋セメントグループ経理規程」
作成
(12月)
・リスク対策取組計画事業所自主点検実施
(10月)、A,B評価合計94%事業所と昨年度
(92%)
を上回る進捗、また、グループ会社のリスク対策取組計画で昨年度C,D評価となったテーマ
の今年度計画への織込みを確認
2. コンプライアンス意識の一層の徹底
・教育・研修および情報提供の実施
・内部通報に対する的確な対応手順の習得
3.緊急時における迅速、且つ適確な対応
・工場での重大災害を想定した緊急事態対応訓練
活動主体
情報セキュリティ委員会
1.「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)」体制の強化と継続運用・改善:単体情報セキュリティの維持管理とグループ情報セキュリティ体制の強化
・発生したセキュリティ問題に迅速・適切に対応
・臨時委員会開催を必要とする重大な障害、セキュリティ事故無
・サーバ脆弱性への対応:対象20台の対応を完了
・災害復旧訓練(年2回)
・バックアップセンター起動訓練実施
(6月)
:起動時間を短縮。災害復旧訓練実施
(3月)
・グループ会社情報セキュリティレベル調査とフォロー
・104社+上場5社調査実施、平均2.8
(前回2.7)点。全社に書面にてフォロー、個別訪問フォ
ロー4社実施
2. 安全・事故・障害対策の計画的実施、情報セキュリティ関連案件の実施によるセキュリティレベル向上
・2015年度情報セキュリティ関連3案件の計画的実施
・2016年度情報セキュリティ関連投資計画の立案
・外部の専門家による脆弱性診断
・
「データセンターネットワーク障害対策」
、
「インターネット出口対策」
、
「バックアップセン
ター増強」完了
・
「シングルサインオン更新」
、
「LAN整備
(本社、中央研究所)
」の2案件立案承認
・実施時期変更
(2016年度)
3.教育・研修・啓発の実施:グループ会社含めた従業員個々のセキュリティ意識の向上
・各階層別教育、研修での教育の定期実施
・従業員教育(セキュリティニュース公開+e-ラーニング)定期実施
・グループ会社へのセキュリティ啓発資料配布
・各階層別教育にて情報セキュリティ教育を実施。
(年7回)
・e-ラーニング4回実施。その他、不審なメールや標的型攻撃に関する注意喚起、情報セキュ
リティ月間等、随時全社に通知
・
「情報漏洩対策のしおり」
「ソーシャルメディアマナーガイド」を配布
4. 情報セキュリティの保持状況のモニタリングと評価:定期モニタリングによる適正利活用の推進、情報セキュリティ内部監査の実施
・インターネット、パソコンの不適切利用モニタリング
・書面監査の全事業所、実地監査の2事業所実施
・定常運用にてファイル送信等を監視
・書面監査を全事業所で実施、実地監査を大船渡工場、中部北陸支店で実施
5.「個人情報保護マネジメントシステム」
の継続的運用・改善
・マイナンバー制度への迅速・確実な対応
・マネジメントシステムの継続的実践と充実
活動主体
人権・労働慣行委員会
1. グループ会社も含めた「人権意識」
の高揚と継続的研修の実施
・社内研修・啓発
人権/労働慣行
・グループ会社の研修・啓発
・人権啓発企業連絡会
・各階層従業員研修支援: 関係会社7社に対して研修実施
・関係資料の定期的提供: 東京人権啓発企業連絡会発行の冊子「明日へ」および「障がい者の
公正採用等法改正」に関する情報を年2回、関係会社107社に送付
・東京人権啓発企業連絡会:各種研修・グループ会・専門委員会などにのべ84日参加
・大阪同和問題企業連絡会:各種研修・グループ会など案内を受けた諸会合にすべて参加
2.グループ会社も含めた障がい者雇用の推進
・法定雇用率2%達成
・グループ会社の障がい者雇用支援
・2.26%で法定雇用率達成
・特例子会社支援、定期的採用、既存採用ソースの関係維持と新規ソースの開拓実施等の取り組みを実施
・グループ人事推進会議にて「障がい者の状況報告」と題した情報提供と雇用推進の要請を実施、
同会議に先だちグループ会社の障がい者雇用の実態を調査
3.人権・労働慣行関連課題への取り組み
・女性活躍推進に向けた積極採用、定着
・新教育体系に基づく教育研修、グローバル人材育成
28
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
・ダイバーシティ推進室を設置、女性WGを編成し、女性活躍推進に向けた各種取り組みを推進
【CSR目標2025の進捗状況】
①総合職採用における女性比率30%以上:2016年4月入社 32.7%
②女性従業員比率10%以上:2013年11月5.4%⇒2015年11月6.4%
③新任管理職登用に占める割合10%:2015年3月 3.85%、2016年3月 0%
・海外トレーニー制度:1名(米国)
、語学留学制度:2名(米国1名、中国1名)の海外派遣を実施
コーポレート・
ガバナンス
CSRマネジメント
実績
判定
関連
ページ
・各種統計等の情報発信により啓発、注意喚起を行い、各事業所・関係会社への取
り組みに反映
①死亡災害:4件 ②休業災害件数:38件 ③休業率:0.448%
×
60-61
○
60-61
○
60-61
○
60-61
○
60-61
○
60-61
・内部監査を実施(10-11月)
・外部審査:不適合0件、観察事項1件、システムの有効性を確認
○
50
・3件見直し・仕上出荷セメント集中化リスト(rev38、39)。・敦賀セメント集中化リスト
○
50-51
・製品の安全性確保:社内基準クリア(微量成分、放射能濃度社内基準の100%順守)
・緊急連絡体制の周知
(6月実施)
。
・品質異常初動対応訓練実施
(11月)
・品質異常訓練実施を工場へ周知
○
51-52
○
50
・対象リストを抽出 。
・品質保証体制の整備継続
○
50
・セメント製品
①重大クレーム: 0件
②苦情クレーム: 7件
③品質異常 :20件
△
50
○
50-51
○
36-37
○
○
36-37
36-37
○
36-37
○
38-39
○
38
・排出実態調査の継続、原燃料水銀インプット調査、水銀低減装置の検討、各工場
への水銀規制関係情報発信
○
ー
・環境月間の取り組み実施(社長メッセージ、ポータル環境サイト充実、節電の実施、
生物多様性に関する意識啓発等)
○
37
・従業員意識調査を実施(回答率86%)、コミュニケーション活発化推進活動は効果ありと評価
○
59
・CSRレポート事業所説明会([CSR目標2025]説明含む)を21カ所で実施822名参加
○
27
計画
活動主体
リスクマネジメント
コンプライアンス
安全保安衛生委員会
1. 安全保安衛生データの収集とフィードバック
①安全1/当社グループ死亡災害:ゼロ[CSR目標2025]
②安全2/当社休業災害件数:前年度
(42件)
以下
③衛生/当社在籍従業員の休業率:0.3%台
2. 安全保安管理特別強調事業所制度の確実な運用
人権/労働慣行
・グループ会社3社を各所管部が安特指定し、
活動の成果を確認して解除
・
「安全保安管理特別強調事業所」の指定、取り組み、解析および特別指示実
・グループ会社1社を新たに安特指定に準ずる対応に指定
施で、早急かつ確実な改善
・死亡災害が発生したグループ会社を安特指定し指導中
3. 災害防止の横展開
・災害報告による各事業所・関係会社への再注意喚起類似災害防止指示
・バラ車からの転落事故防止策としてTCC安全設計基準を見直し。セメント工場の設備改
善を完了。グループ会社等は来期中完成できるよう予算化。・セメント工場にて「ちょっ
と待て!指差唱和」運動展開、休転中の災害は実質的にゼロを達成。・重機死亡災害を受
けて「重機による作業」のリスクアセスメントをセメント工場から展開。・足場関係安衛
則改定,化学物質のリスクアセスメント,ストレスチェック義務化等、法改正や国からの
要請に対し、積極的に教宣。・必要時、所管部から関係会社へ注意喚起通知を出状。・死亡
災害多発により、委員長名で「注意喚起ならびに緊急安全総点検の依頼の件」を出状(2月)
4. 日常の啓発注意喚起・意識の高楊
・国の行事および社内安全・衛生活動における文書を発信し、各事業所・関 ・主管部ごとの安全保安衛生方針周知。・全国安全週間・鉱山保安週間メッセージ周知
係会社に周知徹底
・全国労働衛生週間メッセージ周知。・所管部ごとの年末年始無災害運動メッセージ周知
・全国鉱山保安表彰「鉱山保安推進協議会会長賞」
受賞など外部表彰、
社内表彰事例
・表彰関係の事例を他事業所・関係会社に広く紹介
を社内報等で紹介
・全災害の発生状況および注意内容を社内掲示板および労働災害情報DBにて発信
・全労働災害の紹介と注意喚起および各主管部による通達等により災害防
・重大災害および災害多発時の通達。
・法改正および国の通達に基づく対応
止活動
・委員長通達およびこれに呼応した各所管部の通達指示
活動主体
品質管理委員会
1. 品質マネジメントシステム:QMSの維持、改善
・マニュアル、規程類の運用徹底、
外部認証機関審査
2. 品質保証規程:内容の見直し
・試験頻度の妥当性検証
3. 品質リスク管理:顧客ニーズに即した製品品質の確保
・個別の品質コンプライアンス・リスクへの対応
・緊急時対応マニュアル整備
4. グループ会社対応:品質保証体制の確立
人権/環境/消費者課題/コミュニティ参画および発展
・グループ会社の対象リストレビュー、品質保証体系整備拡充
5. 品質異常、苦情、クレーム対策:顧客満足度向上への取り組み
・苦情クレーム・品質異常件数削減
(目標値対象:セメント製品)
①重大クレーム:年間ゼロ件
②苦情クレーム:10件/年
(2012-2014年平均の20%減)
③品質異常 :16件/年
(2012-2014年平均の20%減)
・グループ会社の課題把握、リスク低減策と対策の具現化
活動主体
環境経営委員会
・関連製品
①重大クレーム:0件
②苦情クレーム:7件
③品質異常 :1件
・他社事例を契機とした試験データ偽装に関する調査完了
・不当景品類及び不当表示防止法対応
1. 全社EMSの推進
・EMS目的・目標の設定、計画と運用推進および評価
・EMS適用範囲見直しに関する対応
・EMS担当者の選任と教育の充実
・ISO規格改正に伴う移行に向けた対応
・内部環境監査実施 (指摘4件、
観察事項11件)
・サーベイランス
(2-3月)
実施。
不適合:0件、
観察事項:8件
・環境マネジメントマニュアル改訂および、その他規定類を改訂
(11月)
・EMS内部監査員養成教育の実施
(8月:29名受講)
・マニュアル改訂のためのギャップ分析を実施(3月)、2017年6月末までに環境
マニュアルを改訂すべく、準備中
2. 地球温暖化対策への対応
・温室効果ガス排出抑制
[CSR目標2025]
ネットCO₂排出原単位で2025年度までに2000年度比10%以上削減
・目標達成に向けての計画検討 【ネットCO₂排出原単位削減率】当社およびグ
ループ
(含む海外)
:2000→2014年-6%(削減率 -0.43%/年)
①セクター別ベンチマーク 3,891MJ/t以下
(出荷含む)
:2014年度実績 3,852MJ/t
(対
・温暖化対策に関する社外への報告と連携
2013年比 -20MJ/t)/②2020年度セメント製造用エネルギー原単位を2010年度実績
①省エネ法、温対法/②低炭素社会実行計画、業界自主行動計画フォロー
から-39MJ/t:2014年度実績対前年-13MJ/t(業界) -18MJ/t(当社)/③2015~19
アップ/③埼玉県地球温暖化対策実行計画 第二計画期間
年度温室効果ガス排出量を基準年(2005~07年)比-13%:2014年度実績-14.3%
3. 環境リスク(大気汚染)
への取り組み
・排ガス中の水銀規制を想定した対策の立案
4. 環境に関する教育・啓発・情報
・地球環境にかかわる情報収集と提供
活動主体
ステークホルダー・コミュニケーション委員会
1. 社内コミュニケーションの活発化
・従業員の意識の改革
・経営方針浸透
・中計をテーマとして役員と語る会を18カ所で実施参加1,110人
・活発化のための取り組み課題・施策の抽出
・社内報編集委員とのダイアログの計画と実施(3月)と解析実施
・当社活動周知
2. グループ会社へのCSRの浸透・展開
・グループ会社へのCSR展開体制の構築
3. CSRレポートの制作・発行
・2015年版和文9月末、英訳10月末発行
活動主体
その他
・
「グループトップ層向けCSR研修」の実施
・グループ会社地域社会関係情報定期報告の実施
(年2回)
・グループ法務懇談会の開催
○
○
59
55
・CSR展開体制設計終了、実施はCSR経営委員会傘下WGで来年度から、グルー
プ会社トップ層講演会で説明
○
26-27
・GRI-G4コア準拠:和文9月、英訳10月発行、
Webサイト更新、環境コミュニ
ケーション大賞審査委員会特別優秀賞受賞
○
55
・12月実施(104社参加)
○
27
・4月、10月実施
・4月(81社・89名)、12月(98社・111名)実施
○
○
ー
33
※ 実績欄は、各専門委員会の2016年3月末の実績報告を記載。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
29
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
コーポレート・ガバナンス
コーポレート・ガバナンスの強化は、企業価値を高め、株主の皆様をはじめ、
すべてのステークホルダーに対する責任を果たすために不可欠です。
信頼される企業として、さらなる経営の健全性確保に取り組んでいきます。
太平洋セメントグループの経営体制
▶
に提案し、取締役会が審議し適切に決定した上、株主
G4-34, 35, 38, 39, 40, 44, 45, 46, 49, 51, 52, 53
総会に上程し、その決議をもって選任されています。
なお、監査役の指名にあたっては、社長があらかじめ
● コーポレート・ガバナンス体制
2015 年 12 月 22 日に制定したコーポレートガバナ
ンス基本方針に則り、コーポレート・ガバナンスの継
続的な充実に取り組むことにより、当社の持続的な成
長と中長期的な企業価値の向上に努めています。
経営機構は、取締役会と監査役会を基本としていま
社外監査役を含む監査役会の同意を得た上で取締役会
に提案します。
そのほかに CSR 経営委員会を設置し、事業活動のあ
り方を CSR の観点から見直し、コーポレート・ガバナ
ンスの強化を図っています。
す。また、
執行役員制度を導入し、経営の意思決定およ
2015 年度は取締役会を 15 回開催し、そのうち全
び監視・監督機能と業務執行の分離に努めています。
員出席とならなかった取締役会は1回(欠席取締役1
取締役は代表取締役 2 名および独立社外取締役2名
名、欠席監査役1名)でした。
(うち1名は女性)を含めて 13 名、執行役員は取締役
兼務者10名を含めて23名で構成されています。監査
● 役員報酬に関する事項
役は 4 名で、そのうち独立社外監査役を 2 名選任して
取締役および監査役の報酬は、
株主総会の決議により
います。なお、監査役室を設置し、室長以下 3 名の体
それぞれの報酬の限度額が決定されています。各報酬
制で事前情報の提供など、監査役の業務を全般的に補
額については、取締役は取締役会の決議に、監査役は監
助しています。また、監査部を設置して内部監査を実
査役の協議により決定しています。社内取締役の報酬
施し、改善すべき事項を明らかにした上で、社長宛に
は固定報酬と変動報酬で、社外取締役および監査役の
監査結果の報告を行い、内部監査の実効性をより高め
報酬は固定報酬のみで構成されています。2015 年度の
ています。
取締役の年間報酬総額は773 百万円(対象:14 名)、監
取締役および監査役候補は、コーポレートガバナン
査役の年間報酬総額は74 百万円(対象:7 名)でした。
ス基本方針に則り、社長が社外取締役を含む取締役会
内部統制システム
■コーポレート・ガバナンス体制図
▶
株主総会
選任・解任
選任・解任
監査
監査役会
選任・解任
連携
会計監査人
補助
取締役会
監査役室
(経営の意思決定・監督)
監査
報告
選定・解職・監督
選任・解任
代表取締役
役付執行役員
報告
CSR
経営委員会
経営会議
(重要案件の審議)
決裁・指示・監督
執行役員
本社、支店、工場、研究所
(業務執行)
30
監査
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
監査部
※高度な専門性
などが要求され
る意思決定や業
務執行にあたっ
ては、常 任の法
律顧問をはじめ、
顧問法律事務
所 、経 営コンサ
ルタント等、専門
家のアドバイス
を受けています。
G4-46
「内部統制システム構築の基本方針」に基づき、①業
務の効率性、②リスク・コンプライアンス、③財務報告の
観点から内部統制システムを構築し、諸活動の充実に
取り組んでいます。当社は、本方針に則り2015 年度の
財務報告にかかわる内部統制は有効であるとの内部統
制報告書を作成し、監査法人より同報告書が適正であ
るとの意見表明がなされています。なお、本基本方針に
則った、業務の適正を確保するための体制の運用状況
の概要を、2015 年度の事業報告より記載しています。
コーポレートガバナンス基本方針/コーポレート・ガバナンスに関する報告書
■http://www.taiheiyo-cement.co.jp
会社情報→コーポレートガバナンス
CSR マネジメント
コーポレート・
ガバナンス
リスクマネジメント
コンプライアンス
リスクマネジメント コンプライアンス
法令遵守およびリスク管理は、事業活動の基盤です。
事業の健全性と持続可能性を維持・向上させるために、より実効性の高いリスク管理活動、
グループ会社も含めたコンプライアンスの徹底に取り組んでいます。
リスク管理・コンプライアンスの基本方針
▶
G4-56, DMA, SO4
にある社会通念やグループ経営理念、当社行動指針、
社内諸規程の遵守を含むものとなっています。
● リスク管理基本方針
当社においてひとたび重大なリスクが顕在化すれ
ば、当社の経営資源が損なわれるだけではなく、当社
を取り巻くステークホルダーにも悪影響を与え、信頼
関係が崩壊し、社会的な信用を失墜するなど、極めて
深刻な影響がもたらされるおそれがあります。
このため、事業を継続し持続的に発展することを目
的として、以下の通りリスク管理にかかわる基本方針
を定めリスク管理体制を整備するとともに、実効性あ
【 コンプライアンス基本方針(要旨) 】
◦ 経営理念、行動指針、社会規範の遵守
◦ 社内諸制度・規程の整備と周知徹底
◦ グループ各社の連携と教育・啓発活動推進
◦ 問題発生時の適切な対応と施策打ち出し
◦ 必要な情報の適時・適切な開示とコミュニケーション
◦ 国際基準・ルール遵守と現地文化・習慣尊重
◦ 反社会的勢力・団体の不正・不当な要求拒否
るリスク管理活動を推進し、重大なリスクの低減と顕
在化したリスクによる損失の最小化に努めています。
リスク管理・コンプライアンス推進体制
▶
【 リスク管理基本方針 】
1. 当社は、製品・サービスの品質と安全性を確保し、従業員
および家族の生活と安全を守り、ステークホルダーから
一層の信頼を得るため、リスクの予防と低減に努める。
2. 当社は、事業活動を取り巻く様々なリスクを適切に
管理するための体制を整備する。
G4-46, 47
リスク管理・コンプライアンス推進の最高責任者は
社長であり、社長より指名された統括責任者(総務部
担当役員)が、組織的かつ計画的にリスク管理・コン
プライアンス活動を推進するため、
「リスク管理・コ
ンプライアンス委員会」を主宰・運営しています。 同委員会は、方針の展開、全社リスクの洗い出しと
3. 当社は、計画・実践・評価・是正のサイクルを通じて
リスク管理を推進する。
特定、PDCA サイクルによるリスク管理活動ならびに
リスクが顕在化した際に迅速かつ適切に対処する。
4. 当社は、
コンプライアンスを推進する役割をはじめ、リスク管
5. 当社は、当社グループ各社と連携し、事業環境の変化
に伴い新たに生じるリスクを機敏に感知し、太平洋
セメントグループとして迅速かつ適切に対処するた
めの体制を構築する。
理・コンプライアンスに関する規定の制定や改訂、従
業員への啓発・教育推進など、当社グループ全体のリ
スク管理・コンプライアンス推進の中核を担っていま
す。2015 年度は委員会を4回開催しました。
同委員会のもと、各事業所やグループ会社に、それ
ぞれ「リスク管理・コンプライアンス責任者」と「リ
● コンプライアンス基本方針
スク管理・コンプライアンス推進者」を置き、リスク
当社は「行動指針」において“法令遵守と社会の良
管理・コンプライアンス推進に関する具体的な取り
識に則り行動する”ことを宣言し、コンプライアンス
組みを行っています。また、グループとしてのリス
はCSR 経営の基盤と捉え、2005 年 3 月に「コンプラ
ク管理とコンプライアンスを確かなものとするため、
イアンス基本方針」を公表、併せて「コンプライアン
当社はグループ会社に様々なサポートを提供してい
ス規程」を制定しました。当社の「コンプライアンス」
ます。
の定義は、狭義の法令遵守にとどまらず、法令の背景
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
31
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
その結果、①大気汚染、②誹謗・中傷、悪評の流布、
■ リスク管理・コンプライアンス推進体制
③在庫管理の適正化、④納期・性能未達、⑤遊休設備
最高責任者:社長
統括責任者:総務部担当役員
リスク管理・
コンプライアンス委員会
委員長:統括責任者
(総務部担当役員)
委 員:本社各事業所長
の管理不足、⑥豪雨・洪水・内水氾濫、⑦地震・津波、
評価制度
(是正制度)
事務局:
総務部
全社リスク対策活動に加え、当社が 2015 年度に実
(従業員)
(従業員)
リスク 対 策 取 り 組 み 状 況 報 告
リスク管理・
コンプライアンス責任者
リスク管理・
コンプライアンス推進者
(内部通報制度)
リスク管理・
コンプライアンス責任者
リスク管理・
コンプライアンス推進者
(内部通報制度)
グループ会社
ンスの 10 種類の全社リスクを特定しました。
● リスク対策活動
年度取り組み計画
本社各事業所
(研究所含む)
工場・支店
⑧暴動・テロ、⑨輸送中の事故、⑩財務コンプライア
リスクの洗い出し・評 価
リスク管 理の実 践・教 育
管理対象:グループ会社98社
(2016年4月現在)
リスク管理・コンプライアンス推進活動
▶
施した主なリスク対策活動は以下の通りです。
■ リスク管理・コンプライアンス推進活動(2015年度)
主なリスク
主な活動
・
「全社リスクの洗い出し・評価」を基に、
以下の全社リスク対策を立案・実施
①大気汚染 ②情報リスク
(誹謗・中傷、悪評の流布)
⑤遊休設備の管理不足 ⑥豪雨・洪水・内水氾濫
⑦地震・津波 ⑧暴動・テロ ⑨輸送中の事故
⑩財務コンプライアンス
全社リスク・
対策活動
従業員の
不正・犯罪
・
「行動基準ケースブック」改訂版をグループ会社含む
全従業員に配付
・e-ラーニングによる教育研修を全従業員対象に毎月
実施
地震
・本社-各工場・支店の連携した初動対応訓練のあり方
等に関する意見交換を実施
・上記意見交換を踏まえ、安否確認方法・シェイクアウ
ト訓練の紹介や津波避難場所の選定・周知徹底を含
むフィードバックを実施
法令違反
・不当要求対応に関するビデオの巡回上映を全事業所
にて実施
G4-58, SO4
● 全社リスクの洗い出し・評価
2013 年度に本社・工場・支店の 38 事業所を対象
として全社リスクの洗い出しを実施しました。
● 緊急事態対応
2015年度は緊急情報が10件ありましたが、緊急対
策本部を設置し対応するべき案件はありませんでした。
■ 全社リスクの洗い出し・評価手順
事業環境の分析
内部環境および外部環境の変化を分析
(SWOT分析)
定性リスク評価
リスク管理・コンプライアンスの効果的な実施のた
め、グループ会社のリスク管理・コンプライアンス責
今後新たに発生するリスク、今後増大するリスクを把握
任者および推進者を対象とした研修を実施していま
リスク分類表に基づくリスクの洗い出し
す。2015 年度は、
「リスク情報に対する的確な対応手
161のリスク分類/ワーストシナリオを起案/
Man, Machine, Media, Managementの4Mの視点からワーストシナリオの
発生原因を特定/発生可能性、影響度、対策度からリスクを定量評価
新規・強化対策を立案・実施
32
● リスク管理・コンプライアンス推進研修(グループ会社対象)
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
順の習得」として、通報で寄せられる様々なリスク情
報に対する初動対応の基本を身に付ける研修を、12 月
に実施しました。
コーポレート・
ガバナンス
CSR マネジメント
● グループ法務懇談会(グループ会社対象)
■ 内部通報制度
指示
社 長
報告
指示
総務部担当役員
報告
総務部
保護
2015 年度は以下のテーマで実施しました。
調査対応
当者による懇談会を 2005 年度から開催しています。
社外窓口
共有する場として、グループ会社の経営層・法務担
報告
社内窓口
通報
通報者
違法行為
ため、法令改正への対応などを中心とした法務情報を
発見
企業経営にかかわる重要な法律への理解を深め、グ
ループ会社のコンプライアンス体制整備の一助とする
リスクマネジメント
コンプライアンス
■ グループ法務懇談会開催実績(2015年度)
開催回
開催日
参加人数
テーマ
第22回
2015年
4月17日
81社
89名
・独占禁止法処罰の今
・企業法務弁護士の使い方
・取引基本契約書確認時の注意点
第23回
2015年
12月10日
98社
111名
・営業秘密の基礎
~営業秘密を守り活かすために~
・点検 下請法・景品表示法
情報セキュリティ
当社では、情報資産のセキュリティを確保するた
め、
「情報セキュリティ管理規程」を制定し、これに基
づく管理体制のもと、積極的に情報セキュリティ保持
活動に取り組んでいます。
2015 年度は、強化取り組み事項として、
「データセ
ンターネットワーク障害対策」、「インターネット出口
● 内部通報制度
社内手続に則った報告・申し出に適正に対処すると
ともに、「コンプライアンス・ホットライン」を設置
しています。通報受付窓口は社内(総務部 CSR 推進グ
ループ )
、社外(弁護士事務所)にあります。 社内では、担当者だけが入室できる施錠された専用
対策」、「バックアップセンター増強」に取り組みまし
た。情報セキュリティに関する重大な事故等は 2015
年度もありませんでした。
■ 情報セキュリティ体制
CSR経営委員会
(情報セキュリティ最高責任者:社長)
の部屋に専用回線の電話・FAX と専用アドレスのパ
ソコンを設け、通報の守秘を担保しています。グルー
情報セキュリティ委員会
プ会社従業員も当社の窓口への通報を可能とし、連結
情報セキュリティ統括責任者
ガバナンスの強化、制度の実効性向上と各社の負担軽
情報セキュリティ担当責任者
評価・指導
減を図りました。
また、この制度を利用したことを理由として通報者
に不利益な取り扱いがなされないよう、
「内部通報制
度運用規程」に定めています。さらに、2015 年 1 月
各事業所
グループ会社
情報管理責任者(事業所長)
情報取扱責任者(業務部長・選任者)
にはこの規程を改定し、顕名(所属・氏名を明らかに
する)に加え、匿名(所属・氏名を秘匿する)による通
報も可としました。
なお、2015 年度の通報実績は0 件でした。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
33
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
知的財産の保護と活用
内特許出願件数(2014 年度実績)の関係は、全業種を
対象としたグラフの近似式の傾きが 0.9 であるのに対
● 知的財産方針
して一般化学業界の傾きは 2.4 と大きく、発明創出効
当社は、事業戦略・研究開発戦略とベクトルの合った
果が高い業種であり、その中でも当社(赤丸)は平均以
知的財産活動を展開し、知的財産による太平洋セメント
上の位置を占めており、研究開発投資が有効に発明に
グループの収益向上に貢献することを知的財産基本方
結びついています。
針としています。
● 知的財産管理体制
■ セグメント別国内特許出願件数
(件)
300
当社では、
「知的財産権取扱規程」を制定し、これに
250
基づく管理体制のもと知的財産活動に取り組んでいま
200
す。知的財産部は本社と中央研究所に部員を配置し、
本社では主に管理業務、中央研究所では出願、権利化、
調査業務を行っています。また、事業部門、中央研究
所に知的財産業務の窓口として知的財産推進者を配置
し、知的財産部と連携し戦略的に知的財産活動を推進
セメント
環境
資源
単体
建材
セラミックス・エレクトロニクス
その他
279
212
205
197
2011
2012
181
150
100
50
0
2013
2014
2015(年度)
セラミックス事業を他社へ譲渡したため、2014年度以降、関連特許の出願は
ほとんどありません。
しています。さらに、定期的に主要グループ会社の知
的財産担当者を招集して情報交換や勉強会を行うとと
もに、個々の業態に応じた指導を行い、グループ会社
の知的財産活動の推進にも取り組んでいます。
■ 国内保有特許権のセグメント別割合(2015年度) 単 体
セラミックス・
エレクトロニクス
その他
3%
2%
建材
● 保有知的財産の概略
2015 年度末時点での当社の出願中特許は 644 件、
3%
合計
セメント
985件
環境
44%
33%
資源
保有特許権は 985 件、登録商標は250 件です。また、
15%
グループ全体での保有特許権は約 1,700 件です。
保有特許権についてはセメント分野が多くを占めて
いますが、ここ数年、当社の事業戦略・研究開発戦略
に対応して環境、資源分野の出願比率が高くなってき
■ 研究開発費に対する国内特許出願件数
(件)
10,000
ました。また、ビジネスとして収益拡大につなげるに
は、1つの特許だけではなくその周辺技術についても
特許化する必要があるとの方針から、
「特許網の強化」
を図っています。2015 年 6 月、当社は「圧縮強度
500N/mm² クラスを発現する新しいセメント材料」
についてプレスリリースし、2015 年度は、これに関
連する多数の特許を出願しました。
一般化学分野の企業を対象とした、研究開発費と国
34
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
y = 2.4379x
R²= 0.8037
当社
1,000
100
10
1
1
10
100
1,000
年間研究開発費
(億円)
知的財産経営に関する実態調査
(2015年11月)
」
(日本知的財産協会)を元に当社で作成
CSR マネジメント
● ライセンス関連活動
コーポレート・
ガバナンス
リスクマネジメント
コンプライアンス
● 教育・啓発
自社の事業活動に強みを発揮することを優先に研究
知的財産意識啓発のため、研究部門と技術開発部門
開発を行っていますが、有用な技術を他社にライセン
を中心に国家資格である知的財産管理技能検定の受験
スすることにも前向きに取り組んでいます。もちろ
を推奨しています。また、日本知的財産協会の講習会
ん、自社事業に貢献することが見込まれる場合は、他
の利用や、中央研究所および本社での社内研修の開催
社からライセンスを受けることもあります。
など、従業員の教育・啓発にも力を注いできました。
2015 年度は表に示すような研修を実施し、グループ
● 知的財産リスク対策
会社・当社ユーザーも含めて 273 名の参加がありま
知的財産の取得・管理は、「知的財産の取得・管理
した。研修を通じて従業員の知的財産に関する意識を
指針」
(経済産業省)に沿って独自に作成した「知的財
高めるとともに、権利侵害リスクや他社による自社権
産戦略ガイドライン」を指針とし、個々の事業の実態
利侵害発見への意識の教育・啓発を図りました。上述
に即した知的財産戦略の展開を図っています。
の知的財産担当者による情報交換や勉強会の実施も含
出願後の特許などの知的財産は、知的財産部のデー
タベースによって一元管理されています。
め、グループ全体としての知的財産管理・活用力の向
上を図っています。
他社権利への侵害性などに対しては、選択的な特許
■ 知的財産に関する社内研修体系
情報の定期的回覧、問題特許監視制度、特許確認制度
高
特許権侵害防止研修
等によって日常的にリスク防止を図っています。ま
レベル
た、後述の社内教育により従業員の意識付けの徹底を
図っています。これまでに知的財産権侵害で訴えられ
特許調査研修
明細書作成研修
工場・支店研修
事業に支障の出た事例はありません。
入門研修
営業秘密の管理や技術流出の防止などに関しては、
低
それぞれ 「情報セキュリティ管理規程」、「文書管理規
程」 を定めて運用しています。また、技術流出の防止
に関連して、特許出願を行うか、ノウハウとして秘匿
するかの判断の指針となる 「ノウハウ判断ガイドライ
ン」 を 2007 年度に作成し、運用しています。
グループ会社については、
「知的財産権取扱規程」の
整備、あるいは発明者との譲渡契約の締結を徹底する
ように指導し、これらの整備・指導を完了しています。
新入従業員
中堅技術者
リーダー
部長
■ 知的財産研修開催実績(2015年度)
研修内容
(単位:名)
参加人数
従業員
グループ会社
ユーザー等
合計
入門
16
17
20
明細書作成
13
12
0
25
145
33
0
178
侵害防止
特許法改正
合計
53
17
0
0
17
191
62
20
273
一方、国内のみならず海外へのライセンスも戦略的
に行っていることから、海外ライセンスのリスク対策
にも注力しています。アジア新興国については、ライ
センサーが品質・性能保証の義務を負うなど、法制度
が日本と異なります。社内での周知のほか、各国に詳
しい専門の弁護士と連携しながら、リスクの回避方法
を検討しています。
明細書研修会
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
35
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
環境マネジメント
環境経営委員会を設置し、社内横断的に環境戦略を立案し、積極的に環境問題の解決に取り組んでいます。
2009年4月には、工場個別で進めていた環境マネジメントシステムを統合し、
全社環境マネジメントシステムとしてISO14001の認証登録を受け、環境パフォーマンスの向上に努めています。
環境経営方針
全社環境マネジメントシステム
(EMS)
▶
G4-DMA
▶
G4-DMA
当社は環境経営方針に、汚染防止にとどまらず、循環
当社は、1997年6月から工場単位のISO14001の認
型社会の構築、地球温暖化防止、環境負荷低減、水資
証登録を開始し、1999年までに全工場が認証登録を受
源保護や生物多様性といった社会的な環境問題への積
けました。2009年4月には、工場単位のマネジメントシ
極的な取り組みを重要な経営課題と位置付けて、環境
ステムだけでは不十分と考え、工場だけではなく本社・
パフォーマンスの向上に取り組んでいます。
支店・中央研究所にまで適用範囲を広げた全社EMSを
構築し、
(一財)建材試験センターにてISO14001認証
【 環境経営方針 】
太平洋セメントは、社会的な環境問題への積極的な
取り組みを重要な経営課題と位置付け2006年1月に
「環境経営方針」を制定しました。以下の6項目に重点的
に取り組むとともに、国際社会から地域社会までの広
範なステークホルダーとコミュニケーションを図り、
WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)セ
メント産業部会の一員として、持続可能なセメント産業
の在り方を追求していきます。
2006年1月制定
2012年4月改定
1. 環境に配慮した事業活動
事業活動における環境影響を適切に評価し、環境管理の徹
登録を受けました。2015 年 3 月には全社として第 2
回目の更新審査を受け認証登録を継続しています。
● EMS体制
トップマネジメント(生産部担当役員)が委員長を
務める「環境経営委員会」を組織し、環境経営におけ
る最高意思決定機関としています。環境経営委員会の
下、工場部門、鉱業所部門、支店の管理を本社所管部
が行う「アンブレラ方式」を採用しています。
■ 全社EMS体制図
底ならびに環境負荷の低減に役立つ製品・技術の開発と採
環境経営委員会
用により、環境効率の向上に取り組む。あわせて地域社会
の一員として、良好な環境の保全に努める。
事業活動において適用を受ける環境に関連する法規制な
らびに当社が同意するその他要求事項を確実に遵守する。
3. 資源循環型社会への貢献
セメント産業固有の能力と機能を活かし、産業や生活から
発生する廃棄物等をセメント原燃料として資源化する。
所管部
2. 環境法規制等の遵守
生産部環境管理グループ
生産部、鉱業部、総務部、
セメント事業本部・管理部、営業部、
資源事業部、環境事業部
各工場
各鉱業所
トップマネジメント
生産部担当役員
EMS事務局
その他
本社
事業所
各支店
中央
研究所
4. 地球温暖化問題への積極的な取り組み
事業活動全体にわたり一層の省エネルギー化を推進する
とともに、社会全体の温室効果ガス排出削減に繋がる技術
開発に挑戦する。
5. 国際協力
当社が保有する環境保全や省エネルギーならびに廃棄物
等のリサイクルに関する技術の海外への移転と普及を促
進する。
6. 自然保護への取り組み
自然との共生に役立つ製品と技術を提供するとともに、自
然保護活動に取り組む。
■ グループ環境目標 WBCSD
CO₂排出削減目標
当社ならびにグループのセメント製造に伴うCO₂排出を
ネットCO₂排出原単位で2025年度までに
2000年度比で10%以上削減します。
[CSR目標2025]
主要大気汚染物質の削減目標
当社ならびにグループのセメント製造拠点において
キルン主煙突から排出される
NOx、SOx、ばいじんの排出原単位(g/t-clinker)
を
2010年度のレベルに維持します。
36
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
環境マネジメント
地球温暖化防止
資源循環の促進
生物多様性の保全
水資源の適正利用
環境負荷の低減
環境配慮型の製品・
技術サービス
事業の
マテリアルバランス
環境会計
環境法令遵守の状況
● グループの取り組み状況
国内外の当社グループのセメント会社は、それぞ
れ 環 境 保 全 に 取 り 組 ん で い ま す。2015 年 度 現 在、
▶
G4-EN29, EN34
● 環境事故
ISO14001 の認証工場で製造されるセメントは、全
2015 年度も当社では、罰金・科料を受けるような
製造量の 95%以上に達しています。ISO の認証を受
法令等の違反はありませんでした。また、工場敷地外
けていない工場においても、独自の EMS を運営して
に影響の出た可能性のあった環境事故もありませんで
います。米カルポルトランド社は、米国環境保護庁
した。
とエネルギー省が環境経営に優れた企業を表彰する
● 環境事故対策
Energy Star の 優 秀 賞 を、
2016 年度で 12 年連続受賞
各工場では、環境事故を想定した「緊急時対応計画」
しています。
を作成しています。そして、定期的に地元消防署と協
力した消防訓練、環境事故発生時の影響緩和措置、行
Energy Star 授賞式
政への通報などの訓練を行っています。
● 環境苦情
● 内部環境監査
2015 年度も、当社の全事業所を対象として内部環
利用する廃棄物・副産物の多様化と増加に伴い、環
境に配慮する事項が増加しています。屋内型置き場や
境監査を実施しました。
本年度の監査の重点観察項目には、共通事項として
密閉式受入設備の設置増設ならびに煙突の改良など、
法令およびその他の要求事項の順守評価の確認、外部
各種の環境対策を実施することにより環境影響の低減
コミュニケーションの確認を、工場特定事項として環
に努めています。寄せられた環境情報に対しては、で
境不適合に関する是正・予防処置のフォロー状況、緊
きる限り速やかに現地に出向いて、状況を確認すると
急事態への対応状況を特定しました。監査の結果、総
ともに、原因を調査し状況を説明の上、当社に起因す
指摘件数は15 件(内改善要求したもの4 件)
、改善要求
る場合には改善策を実施しています。
した 4 件については、すべて是正処置を講じました。
2015 年度にセメント工場に寄せられた環境情報は
19 件で、うち 10 件は当社に原因のある環境苦情とし
て対応しました。
● 環境教育
当社では、6 月の環境月間にあわせ社長メッセー
ジの発信やポータルサイトに設けた環境のページで
各種の教材の提供を通して環境に関する啓発ならび
に教育を、グループ会社を含め奨励しています。そ
■ 環境苦情件数の推移
15
の開催、美化運動などに
10
取り組んでいます。2015
5
年度も、グループ会社を含
0
め200 件以上の活動が行
われました。
大気・粉じん
(件)
20
れぞれの職場で環境に関する DVD の視聴や講演会
単体
12
2011
騒音
水質
悪臭
その他
10
10
2012
振動
7
7
2013
2014
2015 (年度)
重油流出防止訓練
(熊谷工場)
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
37
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
地球温暖化防止
当社グループの主要な温室効果ガス排出は、セメント製造に伴うものです。
この課題対応のために、
[CSR目標2025]
において、セメント製造にかかわるCO₂排出削減目標を掲げ、
セメント工場での排出を自らの努力により削減することに焦点を当て温室効果ガス排出削減に取り組んでいます。
温室効果ガス排出状況と長期定量目標設定
CO₂ の削減では、省エネルギー設備の導入やキルン運
G4-14, EN15, EN16, EN17
転の安定化・効率化によるエネルギー消費削減を推進
国内当社グループ会社のうち、
「地球温暖化対策の
するとともに、さらに廃棄物やバイオマス由来のエネ
推進に関する法律」に準じて事業者別温室効果ガス
ルギーの使用により化石エネルギーの使用を減らす等
排出量が公表されている会社(発電事業会社を除く)
の対策を進めています。また、原料の石灰石の脱炭酸
の総排出量に占めるセメント製造会社分は約 94%
に伴う CO₂ の削減では、脱炭酸のないリサイクル資
(2013 年度)でした 。また、当社の温室効果ガス排
源の原料活用を進めています。電力からの CO₂ の削
▶
※
出量のうち、サービスステーション、本支店、特定荷
減では、廃熱発電の導入を進めています。
主、購入電力にかかわる部分は約 5%(2015 年度)で
2015 年度のネット CO₂ 排出原単位は、クリンカ
した。また、セメントの Scope3 の試算(下流はセメ
焼成熱量を削減し、廃棄物由来エネルギーの利用率を
ントが中間製品のため計算せず)では、その排出量は
増加させたものの、混合材利用率の低下などにより
Scope1,2 の約 4.5%(2015 年度)でした。
2014 年度と同じ 692kg-CO₂/t-cementitious とな
このように、当社グループの事業活動より排出さ
れる温室効果ガスの大部分を、セメント製造に伴う
CO₂ が占めています。そのため、[CSR 目標 2025]
りました。しかし、生産量が約 0.5% 減少したため排
出の絶対量も約 0.5% 減少しました。
WBCSD-CSI に お け る 当 社 の 削 減 目 標 と し て
において「セメント製造にかかわるネット CO₂ 排出
「2015 年度までにネット排出原単位を 2000 年度比
原単位を 2000 年度比 10% 以上削減します。」とい
で4.5% 削減する。」と掲げていました。これに対し削
う長期定量目標を設定し、セメント工場での排出削
減率は5.9% となり、超過達成することができました。
減に取り組んでいます。
また、当社グループ内に、埼玉県目標設定型排出量
取引制度、カリフォルニア州キャップ & トレード型排
出量取引制度の対象工場があり、目標削減量達成に向
■ セメント製造によるネットCO₂排出原単位および排出量 WBCSD
排出原単位
(千t)
42,000
725
けて活動を推進しています。さらに自主的な取り組み
700
として、経団連自主行動計画ならびにWBCSD-CSIで
675
取り決めた削減活動に対応しています。
650
※海外の関係会社は、主にセメント製造会社であるため、国内よりも、よりセメント製造
会社のCO₂排出が全体に占める割合が多いと考えています。
排出量
(kg-CO2/t-cementitious)
699
694
31,512
32,019
686
32,225
692
692
32,116
31,946
34,000
30,000
26,000
625
0
38,000
2011
2012
2013
2014
0
2015 (年度)
参照ガイドライン:WBCSD-CSI「セメントCO₂・エネルギープロトコル Ver.3」
セメント製造工程における取り組み
▶
38
G4-EN3, EN5, EN6, EN18, EN19
● キルン運転の安定化・効率化と廃熱発電の利用
セメントは 1,450℃という高温での焼成が必要な
2015 年度の当社グループのセメント製造会社の
こと、焼成過程の化学反応により原料である石灰石が
クリンカ焼成熱量原単位は、3,288MJ/t-clinker と
脱炭酸(CaCO₃ → CaO+CO₂)することなどから、製
2014 年度より17MJ/t-clinker 減少しました。これ
造過程で多量の CO₂ が発生します。セメント製造に
によりネットCO₂ 排出原単位が0.2% 減少(石炭の排
伴い発生する CO₂ の約 35% がエネルギー、約 55%
出係数 0.096kg-CO₂/MJとして換算)したと試算さ
が原料の脱炭酸、約 10%が電力使用によるものです。
れます。また、廃熱発電による発電量(セメント製造
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
環境マネジメント
地球温暖化防止
資源循環の促進
生物多様性の保全
水資源の適正利用
での使用量)は494GWhで、消費電力の約 10.3%に
なりました。外部の火力発電(排出係数を0.69t-CO₂/
MWhと設定)から購入した場合に比較し約 34.1 万ト
ンのCO₂ 排出を削減したと試算されます。
13.2
15.5
14.9
13.4
12.7
13.3
2011
2.0
2012
2.3
2013
2.3
2014
2.2
2.2
2015 (年度)
参照ガイドライン:WBCSD-CSI「セメントCO₂・エネルギープロトコル Ver.3」
3,288
3,305
■ 石灰石の代替原料によるCO₂排出原単位の削減 WBCSD
2,900
2,829
2,700
2011
2,803
2012
2,814
2,771
2013
2014
2,779
2015 (年度)
参照ガイドライン:WBCSD-CSI「セメントCO₂・エネルギープロトコル Ver.3」
排出原単位削減量(kg-CO2/t-clinker)
10
7.8
7.7
2011
2012
9.2
7.3
7.0
5
0
■ 廃熱発電量 WBCSD
2013
2015 (年度)
2014
参照ガイドライン:WBCSD-CSI「セメントCO₂・エネルギープロトコル Ver.3」
発電量
電力代替率
(GWh)
600
487
400
515
456
10.0
9.4
10.5
(%)
15
494
496
10.2
10.3
10
輸送部門での取り組み
5
200
0
12.8
バイオマスエネルギー
15.7
15.5
14.8
15
0
3,100
0
代替化石エネルギー
全キルンエネルギーに対する比率
(%)
20
5
うち、化石エネルギー分
3,286
事業の
マテリアルバランス
環境会計
■ 代替化石・バイオマスエネルギー使用率 WBCSD
10
■ クリンカ製造のための熱量原単位 WBCSD
熱量原単位(MJ/t-clinker)
3,500
3,321
3,316
3,300
環境配慮型の製品・
技術サービス
環境負荷の低減
2011
2012
2013
2014
0
2015(年度)
参照ガイドライン:WBCSD-CSI「セメントCO₂・エネルギープロトコル Ver.3」
▶
G4-EN17, EN19, EN30
当社の原燃料および各種製品の輸送は、輸送会社に
委託しており、当社は特定荷主の立場から CO₂ 排出
削減に取り組んでいます。主な取り組みとして、ト
ラック部門においては、往復輸送の計画的実施やエコ
● 代替エネルギー・代替原料の使用
当社グループでは、廃タイヤ、廃プラスチック、
ドライブを奨励するとともに、各車両にデジタルタコ
メーター、エコタイヤ等の省エネ装備の導入を奨励し
廃油、木屑などを代替エネルギーとして、また、鉱
ています。船舶部門においては、多くの省エネルギー
さいなど CaO を含む副産物・廃棄物を石灰石の代
技術を導入した船舶を新造就航させるとともに、既存
替として利用し、セメント製造の CO₂ 排出を削減し
の船舶においても省エネ運航を奨励しています。
ています。
2015 年度は当社グループのキルンで使用するエネル
ギーの約 15.5%を代替化石エネルギーとバイオマスエ
2015 年度は CO₂ 排出量が 2014 年度より約 10%
減少しました。これは、主に輸送量が約 7% 減少した
ことによります。
ネルギーでまかないました。また、代替原料使用により
ネ ッ ト CO₂ 原 単 位 が 約 7.0kg-CO₂/t-cementitious
減少しました。この代替エネルギー・代替原料の使
■ 輸送手段別CO₂排出量(2015年度) 単 体
輸送手段
輸送量
(千t)
平均輸送距離
(km)
輸送トンキロ
(千tkm)
CO₂排出量
(千t)
用により CO₂ 排出量を約 220 万トン削減(石炭の排
船舶
17,755
463
8,226,363
104
出係数 0.096kg-CO₂/MJ として換算)したと試算さ
トラック
13,281
54
715,470
42
貨車
5,072
27
139,307
3
合計
36,108
251
9,081,140
149
れます。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
39
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
資源循環の促進
当社は、あらゆる産業から排出される廃棄物や副産物をはじめとして、家庭から排出される廃棄物まで
セメント製造設備で安全かつ大量にセメントへとリサイクルする
「セメント資源化システム」
を通じて、
多くの産業や地域社会とつながりを持ち、資源循環型社会の構築と促進に取り組んでいます。
産業界との資源循環
確保が厳しい状況にあります。特に大都市圏を中心と
▶
G4-EN27
した各自治体では「ごみ処理問題」が悩みの種になっ
ており、今後ますます深刻になるものと予想されま
● 電力会社との資源循環
当社は、石炭火力発電所から発生する大量の石炭灰
す。当社グループでは、社会のニーズに合わせた3つ
を引き取り、セメント原料である粘土の代替として使
の都市ごみ資源化システムを推進し、地域社会の資源
用するとともに、さらなる有効活用を目的としてアッ
循環の形成と環境問題の解決に取り組んでいます。
シュセンター 事業を展開しています。また、石炭を
※
燃やすと有害な硫黄酸化物が発生しますが、その除去
材(排煙脱硫材)として石灰石粉末を供給し、排煙脱硫
材と反応してできた石膏もセメント原料として有効活
用しています。
※アッシュセンター: 収集運搬(積替保管)機能と中間処理(粉体混合)機能とを併せ持
つ物流拠点で、火力発電所から発生する石炭灰を引き取り、セメント工場へ安定供給
するという役割と、石炭灰を有効に活用して、ユーザーニーズに合った多様な商品を
供給するという役割を担っています。
◦エコセメントシステム
エコセメントとは、都市ごみ焼却灰を主原料としてつく
られる新しいタイプのセメントです。都市ごみ焼却灰など
の廃棄物をエコセメント1トンあたり 500kg 以上使用し
ています。
◦灰水洗システム
灰水洗システムは、都市ごみ焼却灰を前処理(焼却主灰
の異物除去、ばいじんの含有塩素の水洗除去)し、既存のセ
メント工場でセメント原料として利用するシステムです。
● 製鉄会社との資源循環
製鉄会社では、鉄鉱石から鉄をつくる過程で、鉄鉱
石中に含まれる不純物を除く精錬工程があります。当
社は、この精錬工程で使用される石灰石粉末や生石灰
を精錬材として供給しています。また、精錬後に発生
するスラグ・鉄さいなどの副産物をセメント原料や混
合材として使用しています。
◦AKシステム
家庭から排出されたごみや事業系一般ごみそのものを、
ごみ資源化キルンを利用して生分解反応(発酵)させ、既存
のセメント工場でセメント原燃料としてリサイクルするシ
ステムです。
■ 産業との資源循環
● 建設発生土の資源循環
従来処分場に廃棄されていた土壌をセメントの原材
料として有効活用することにより、建設発生土のリサ
イクルに貢献するとともに処分場の延命にも寄与して
火力発電所
石炭灰
石灰石粉末
て請け負える体制を整え、さらに建設発生土の発生地
スラグ、
鉄さい、
高炉ダスト等
アッシュセンター
セメント工場
■ 地域社会との資源循環
普通セメント工場
と全国展開している各工場とを有機的に結びつける中
間基地を整備し建設発生土の資源化に努めています。
わたしたちの生活
都市ごみ
地域社会との資源循環
G4-EN27
都市ごみの多くは焼却され、その焼却灰は最終処分
場に埋め立てられていますが、現在では最終処分場の
40
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
AKシステム
灰水洗システム
セメント工場で都市ごみ
そのものを普通セメントの
原燃料としてリサイクル
セメント工場でごみ焼却
灰を普通セメントの原料
としてリサイクル
清掃工場
普通
ポルトランド
セメント
(JIS R 5210)
太平洋
セメント
エコセメント工場
エコセメントシステム
▶
製鉄所
石膏
います。当社は、環境省指定調査機関の認定を取得
し、調査から工事、物流、工場での処理までを一貫し
石灰石粉末、
生石灰
エコセメント工場でごみ焼却灰をエコセメント
原料としてリサイクル
焼却灰
生コン工場
コンクリート製品工場
エコセメント
(JIS R 5214)
エコ
セメント
環境マネジメント
地球温暖化防止
資源循環の促進
生物多様性の保全
廃棄物・副産物のセメント資源化実績
▶
水資源の適正利用
環境負荷の低減
環境配慮型の製品・
技術サービス
事業の
マテリアルバランス
環境会計
G4-EN1, EN2, EN3, EN27
当社は、廃棄物・副産物をセメントの原燃料として再利用す
■廃棄物・副産物の使用原単位推移
るセメント資源化を進めています。このことは、最終処分場の
原単位
(kg/t-セメント)
500
延命、天然資源の枯渇防止、温室効果ガスの排出抑制、汚染
400
物質の大気への排出の低減に寄与しています。2015 年度は、
300
セメント生産量の減少ならびに混合セメントの需要減少によ
200
り、資源化した廃棄物・副産物は昨年より約388 千トン減少し
単体
409.9
429.5
430.1
427.9 407.4
2011
2012
2013
2014
267.3
100
0
6,567 千トンとなりました。セメント1トンの製造で407.4kg
2000
2015(年度)
の廃棄物・副産物を再資源化したことになります。
■セメント製造工程と利用廃棄物・副産物
トラック
原料ミル
石灰石
貨車
仕上ミル
ロータリーキルン
各種原料
船
原料調合・粉砕工程
焼成工程
仕上工程
出 荷
石灰石・鉄原料等を調合
・乾燥し、原料ミルで粉砕
します。
予 熱した 後 、ロータリー
キルンで 焼 成します。そ
の 後 急 冷し、クリンカと
いう半製品ができます。
クリンカに少量の石膏を
添加し、仕上ミルで粉砕し
てセメントが完成します。
こうしてつくられたセメ
ントは、船・トラック・貨車
で出荷されます。
原料
石膏
燃料
スラグ粉、
フライアッシュ
利用廃棄物・副産物例
原料
高炉スラグ、石炭灰、汚泥スラ
ッジ、非鉄鉱さい、製鋼スラグ、
建設発生土、鋳物砂
都市ごみ焼却灰、飛灰、廃白土、
下水汚泥
廃油、廃プラスチック、廃タイヤ、
木くず、廃パチンコ台、RDF
(都
市ごみ)
、再生油、BOF
排脱石膏、化学副産石膏
混合材
<参考>
セメント1tの製造に必要な原料
石 灰 石 類:1,100 kg
粘 土 類: 220 kg
60 kg
け い 石 類:
30 kg
鉄 原 料 他:
35 kg
石 膏:
石 炭 等: 110 kg
電
力: 105 kWh
■ 主な廃棄物・副産物の使用量と原単位
(2015年度) 単 体
廃棄物・副産物
産業系
生活系
総合計
石炭灰(含むJIS灰)
高炉スラグ
副産石膏
未燃灰、ばいじん、ダスト
汚泥、スラッジ
建設発生土
廃油
木くず
廃プラスチック
その他
小計
上・下水汚泥+下水汚泥焼却灰
都市ごみ焼却灰
一般廃棄物+その他
小計
原料系廃棄物
燃料系廃棄物
使用量
(t)
2,004,488
1,227,694
563,889
461,387
398,811
373,753
128,607
121,742
118,999
693,142
6,092,512
349,263
106,195
19,091
474,549
6,567,061
6,054,941
512,121
原単位
(kg/t-セメント)
124.4
76.2
35.0
28.6
24.7
23.2
8.0
7.6
7.4
43.0
378.0
21.7
6.6
1.2
29.4
407.4
375.7
31.8
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
41
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
生物多様性の保全
事業者にとって、事業活動における生物多様性の保全は重要な課題です。
セメント・資源事業の中で、自然と生きものに数多くふれあいながら、人間活動と自然の共存を目指して、
厳しい法令基準の遵守をはじめとする生物多様性の保全活動に取り組んでいます。
事業活動と生物多様性のかかわり
▶
調査・開発
◦環境影響評価
操業(採掘)
◦希少動植物保護
◦公鉱害の防止
G4-EN11, EN12, EN13, MM1, MM2
終掘(跡地整備)
◦鉱山緑化
◦跡地利用
最近の環境影響評価実施例
活動事例
緑化実績
・藤原鉱山再開発工事
(2012年2月)
現在事後調査実施中
・大船渡鉱山新規開発工事
(2011年6月)
現在事後調査実施中
・三輪鉱山、藤原鉱山における自生希少植
物の保存、増殖活動
・諸法令、地域公害防止協定に基づく騒
音、粉塵、水質汚濁防止実施
・アニマルパスウェイの確保
・鳥類の営巣地保護
・種子吹付:15,000m²、苗木植栽:4,000本
※2015年度当社グループ石灰石鉱山実績
● 環境影響評価
跡地利用
・メガソーラー事業
(当社社有地8.5ha)
※関西太平洋鉱産
(株)
管理跡地
● 水資源保護
セメントの製造は、その主原料である石灰石を鉱山
鉱山の採掘では、植物のみでなく河川、湧き水などの
で採掘するところからはじまります。鉱山での採掘は
水資源の保護を通じても、生物多様性への配慮を目指し
地表を掘削するために、少なからず自然環境や景観に
ています。水資源保護の観点から、鉱山から排出される
影響を与えています。当社では単に鉱山を掘削し、開
湧き水、雨水は調整池を通し、外部への影響を最小限に
発するというものではなく、地域の生態系の保全に配
しています。一部の鉱山では生活用水用の井戸を掘削し、
慮し、かつ地元の振興を図っていくことが重要である
地元へ生活用水として供給しています。
と考えています。
この基本的な考え方に基づき、地方行政、地域社会、
学識者との意見交換を踏まえつつ、
● 鉱山緑化
採掘過程で形成される階段状の岩盤の斜面部分、い
環境影響を最小化できるよう保全
わゆる「残壁」については、形成した段階で可能な限
対策を検討・実施し、持続可能な
り緑化する努力を続けています。掘削した表土等の堆
鉱山開発の実現を目指しています。水生生物の調査
積場についても、すぐに形状を変えない場所について
は植栽をしています。埼玉県秩父市の武甲山にある武
● 希少植物保護
甲鉱業(株)においては、協力会社関係者とともに植樹
埼玉 県 秩 父 市 の 武 甲山にある 秩 父 太 平 洋 セメン
活動を実施し、鉱山の開発と緑化に対する理解向上を
ト
(株)の三輪鉱山では、1972 年から武甲山に自生する
図っています。植栽する植物はその山にもともと自生
希少植物の保護育成に取り組んでいます。鉱山内の「植
している植物を基本とし、周囲の環境との調和を図っ
物園」では、65 種類の希少植物を地元の専門家等の協
ています。現在、採掘が終了している鉱山はありませ
力を得ながら保存するとともに、増殖を行っています。
んが、採掘が終了した鉱山は、可能な限り採掘前の自
併せて1995 年からは当社中央研究所で、チチブイワザ
然環境に近い状態に回復する計画となっています。
クラ、ミヤマスカシユリ、2011年からアツモリソウ、フ
キヤミツバなどの、絶滅危惧種のバイオ技術による保
▶︎WBCSD-CSI「鉱山修復に関するガイドライン」に
存・増殖、自生固体の遺伝的多様性の検証に関する研究
基づくKPI(主要業績指標)はP.66に記載
・開発を継続しています。
42
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
環境マネジメント
地球温暖化防止
資源循環の促進
生物多様性の保全
水資源の適正利用
環境負荷の低減
環境配慮型の製品・
技術サービス
事業の
マテリアルバランス
環境会計
水資源の適正利用
将来顕在化する可能性のある課題として、
リスク分析、水使用状況の把握を開始しています。
水リスク分析
水資源の適正利用
▶
G4-EN9
▶
G4-EN8, EN22
当社グループのセメント工場の水リスクを、Water
現況では地域社会との水資源をめぐる特段の懸念事
Risk Filter を用いて分析した結果、全工場の平均
項が予見されていないので、生産効率化の観点から取
(Cementitious 生 産 量 を 加 味 し た 加 重 平 均 ) の 総
水量の削減に努めています。また、地域とのコミュニ
合流域評価点は、2.5 と大きなリスクはないものと
ケーションを密にして、地域の水資源へのアクセスと
評価されました。最も総合流域評価点が高いものは
適正利用に貢献しています。
※
4.0( 最高 5.0) で 2 工場ありました。これらの工場で
中国の江南小野田水泥有限公司では、揚子江沿いに
生産されているセメント量は、全工場の生産量の約
工場がありますが、工場周辺地域はまだ市水道による
5% でした。しかし、これらの工場においても現場の状
水供給の範囲外にあります。そこで、工場用水として
況分析では、差し迫った状況は見られませんでした。
揚子江より取水した水を浄化し工業用水・従業員飲料
※Water Risk Filter:世界自然基金
(WWF)
が開発した水リスクマップ。水資源不足、
洪水、干ばつ、水量の季節変化、水質等の物理的リスク、規制リスク等による事業影響
を評価する。
水として利用するほかに、約 5 千人の周辺地域にも飲
料水として供給しています。フィリピンのタイヘイヨ
ウセメントフィリピンズでは、工場用水用に掘った井
水使用の状況
▶
G4-EN8, EN9, EN10, EN22
セメント工場で使用される水の多くは機器や排気ガ
戸から地域へ上水供給を行っています。
■ 水使用の状況 WBCSD
ス、自家発電の冷却用です。工場からの排水は、これ
ら冷却水で水質汚濁防止法上の汚水ではありません。
19,997
15,394
13,717
14,216
17,358
18,329
2,986
2,996
3,037
44
42
0
淡水の総取水量
37,242
35,791
35,083
海水の総取水量
150,402
151,535
148,836
187,644
187,325
183,918
淡水の総排水量
14,632
14,253
13,871
海水の総排水量
150,402
151,535
148,836
165,034
165,787
162,707
ています。場内で使用する淡水 ( 生活雑排水を除く )
その他
総取水量
2015 年度の淡水の総取水量は約 3,500 万 m³、海
水の総取水量は1億5千万m³です。海水は、臨海にあ
る工場の発電の冷却用に使用され、そのまま海に戻さ
2015年度
地下水
用水
はすべて循環使用し、取水量の低減と排水による水域
2014年度
表層水
臨海にある工場では、自家発電の冷却に海水を使用し
汚染の防止に努めています。
(単位:千m³)
2013年度
総排水量
参照ガイドライン:WBCSD-CSI「水使用データの算定報告規準Ver.1.0」
れます。淡水の排水量は約 1,400 万 m³で、約 2,100
万 m³ の淡水が工場で使用されたことになります。し
かし、この水は、製品等の原料等になったわけではな
く、機器やガスの冷却に使用され蒸発により大気へ放
■ 淡水取水原単位 WBCSD
(m3/t-cementitious)
1
出されたものです。
2015 年 度 は、 セ メ ン ト 1 ト ン を 製 造 す る の に
0.801
0.770
0.760
2013
2014
2015
0.5
0.760m³ の淡水を取水しました ( 取水原単位 )。デー
タを取りはじめた 2013 年度から比べると淡水の取
0
(年度)
水量は、約 220 万 m³ 減少し、淡水の取水原単位は約
5.1% 減少しています。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
43
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
環境負荷の低減
当社は、環境汚染の防止、資源の有効利用、廃棄物の削減、化学物質の適正な管理など、
地域環境の保全と環境への負荷を低減する活動を続けています。
環境汚染防止
● 水質汚濁防止
▶
G4-EN21
● 大気汚染防止
セメント製造における主な大気汚染物質は、セメン
トキルンの燃焼排ガスに含まれるNOx、SOx、ばいじ
んです。これらを適正に管理するため、排ガス中の排
出濃度を連続監視することにより適正運転に努めると
同時に、脱硝装置の強化、排ガス処理装置のバグフィ
ルター化などの排出量削減対策を進めています。
NOx、SOx、ばいじんの排出原単位を2015 年度ま
でに2010 年度比で5% 削減することを目標に取り組
んできました。SOxとばいじんは、目標を達成しまし
たが、NOxは、わずかながら増加してしまいました。
ています。また、油タンク、酸・アルカリタンク等の
周りには防液提を設け、さらに公共水域への排水ルー
トには、沈殿地(槽)
、油水分離槽、油膜検知器、pH
測定器、懸濁物質検知器を設置して、汚染物質の漏洩
対策を講じています。
■ 工場の水循環フロー例
置場等
場内
雨水
■ 主要汚染物質の排出原単位 WBCSD
■ NOx
(左軸)
■ SOx
(右軸)
■ ばいじん
(右軸)
(g/t-clinker)
1,500
(g/t-clinker)
1,300
1,000
85
62
500
0
1,289
1,249
1,150
1,404
47
2010
58
43
64
55
2011
2012
100
75
50
2013
2014
冷却水
沈殿槽
油膜検知器・
濁度計・pH計
河川
水路
冷却塔
自家発電
海域
150
1,342
50
海水
セメントキルン
回収水槽
自家発電
循環水
油水
分離槽
側溝
散水
機器冷却他
用水槽
と」として大気汚染物質の排出制御に努めます。
しており、公共水域への排水を最小限にするよう努め
河川水
新たな目標を「2010 年度の排出レベルを維持するこ
ト工場では、受け入れた水資源を循環水として再利用
補給水
排出の程度が低位にあることから、2016 年度以降の
汚濁防止法に規定される汚水ではありません。セメン
地下水
操業や測定のばらつきにより、値が若干上下すること、
当社の水域への排水は、ほとんどが冷却水等で水質
43 42
50
0
2015(年度)
● 土壌汚染防止
2000 年度にセメント工場敷地内で土壌汚染の可能
性がある場所について、専門コンサルタントによる土
地履歴等の調査を行い、リスク評価を実施していま
す。その後順次、リスクの高い場所から優先してボー
参照ガイドライン:WBCSD-CSI「排出物質モニタリング Ver.2.0」
リング調査を行って、土壌汚染の有無を確認していま
す。調査の結果、処置の必要性が発見された所には、
■ モニタリング比率 WBCSD
(%)
100
75
96.4
99.8 96.4
62.8
99.9
63.4
50
99.6
99.6
99.9 99.9
99.9
99.9
また、廃棄物置き場からの浸潤水や油タンク、酸・
55.1
52.6
54.0
2011
2012
2013
2014
2015 (年度)
■ NOxの連続測定器を導入しているキルンにより製造されたクリンカ量の割合
■ SOxの連続測定器を導入しているキルンにより製造されたクリンカ量の割合
■ ばいじんの連続測定器を導入しているキルンにより製造されたクリンカ量の割合
44
アルカリタンク等からの漏洩液の浸透防止を行い、土
壌汚染の防止に努めています。
25
0
必要な対策を順次実施しています。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
環境マネジメント
地球温暖化防止
資源循環の促進
生物多様性の保全
水資源の適正利用
廃棄物の削減
環境負荷の低減
環境配慮型の製品・
技術サービス
事業の
マテリアルバランス
環境会計
化学物質の適正管理
▶
G4-EN23
● 工場・鉱山での取り組み
▶
G4-EN23
● PRTR(化学物質排出移動量届出)
セメント工場や鉱山では、発生した廃棄物を工場内
当社では、熊谷工場に設置した都市ごみ焼却灰を水
でセメント原料として再利用することで外部に処理委
洗する設備が化管法、PRTR 制度届出対象に該当して
託する廃棄物量を削減しています。また、キルンレン
います。水域へのダイオキシン類と塩化第二鉄の排出
ガのクロムフリー化を進めることなどで最終処分(埋
の届出量は次の通りです。
立)する廃棄物量の削減にも取り組んでいます。廃棄
物の主なものは鉱山の採掘に伴う残土です。
物質
■ 廃棄物最終処分量
2014年度
2015年度
0.010
0.0020
0.0034
160
160
148
204
200
0
塩化第二鉄
(kg)
258
単体
排出届出量
2013年度
ダイオキシン類
(mg-TEQ)
(t)
300
100
■ ダイオキシン類・塩化第二鉄の排出届出量
45
38
2011
2012
● PCB廃棄物管理
28
2014
2013
2015 (年度)
当社は、2001年 6 月に制定されたPCB 特別措置法
に基づき、全国 43カ所で保管しているPCB 廃棄物の
● サービスステーションでの取り組み
適正保管・処分状況を確認し、毎年届出を行っていま
サービスステーションでは、セメント品種の入れ替
す。2006 年に日本環境安全事業(株)と処理委託契約
えなどで発生するサイロ内の残余のセメントを工場に
を結び、保管しているPCB 廃棄物の計画的処理を進め
戻し、セメントの原料として再生利用することで外部
ています。
委託する廃棄物量を削減しています。
■ 入れ替え品の再生率
(%)
100
75
2015年度には、熊谷工場、秩父太平洋セメント(株)
三輪鉱業所、神戸サービスステーションなど保管して
単体
93.5
77.4
あったコンデンサ113 台を処理しました。2016 年度
88.2
95.6
には、西多摩鉱業所に保管のコンデンサ1台を処理す
る計画です。
50
■ PCB廃棄物の状況
25
0
2012
2013
2014
2015
(年度)
廃棄物
コンデンサ
● オフィスでの取り組み
当 社 の 特 例 子 会 社である太平洋 サービ ス
( 株 )で
は、紙の再生設備を導入し、当社の使用済みコピー用紙
2014年度末
保管
単体
(単位:台数)
2015年度
新規対象
2015年度
処理実績
2015年度末
保管
2016年度
処理計画
121
6
113
14
1
0
0
0
0
0
安定器
273
0
0
273
0
合計
394
6
113
287
1
トランス
の再生利用をしています。2015年度はA4 換算で約58
万枚を再生しました。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
45
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
環境配慮型の製品・技術サービス
▶
G4-EN27
環境保全に取り組む社会のニーズに対し、
これまで培ってきたセメントおよび関連技術が持つ優位性を活かし、
省資源やCO₂削減に貢献する環境配慮型の製品・サービスを提供しています。
● 液状化対策用の地盤改良工法「NJP-Dy工法」
[小野田ケミコ
(株)]
東日本大震災以降、将来予測される首都直下地震、
南海トラフ地震などの巨大地震への対応策の一つとし
● 造園・緑化資材「グランドカバープランツ」
[太平洋マテリアル
(株)]
「グランドカバープランツ(以下 GCP)
」とは、地表を
覆うように生育する植物の総称で、
「グランドカバー」
、
て、既設護岸の液状化対策工事が首都圏を中心に実施
「地被植物」
、
「下草」とも呼ばれています。GCPは景観
されており、全国にその気運が高まってきています。
の演出はもとより、土壌の乾燥・流出防止、雑草の侵
「NJP-Dy 工法」は、超高圧噴射撹拌を用いた大口径
入・生育防止に効果があり、緑地管理費の低減に役立
改良が可能な地盤改良工法で、液状化対策用として開
ちます。また、建築物の屋上等への施工により、空調
発されました。施工時の変位が少なく、改良に伴う排
エネルギーの低減が期待できます。当社は協力生産農
泥量が従来工法に比べ 1/3 程度に低減されているな
家と連携し、全国各地の植栽工事の現場(公園、道路、
ど、環境に対する負荷の少ない工法です。
オフィスビル、マンション、住宅、工場等)に納入して
本工法は既設護
います。近年はBtoCの
岸の液状化防止対
取り組みとして、ネット
策 と し て、 首 都 圏
ショップ「お台場ガーデ
や近畿圏などの数
ンクラブ」で、より多く
多くの工事で採用
のお客様へ商品を提供し
されています。
「NJP-Dy工法」による淀川水系防潮堤補強工事
● 屋久島の水資源を利用したエコな「水力発電」
[屋久島電工(株)] ています。
GCPを植栽した都市公園
● 全地盤対応型起泡剤「TS-foam」
[太平洋シールドメカニクス
(株)]
「水力発電」は、ほとんどCO₂が発生しないクリー
「TS-foam」はシールドトンネル構築の一工法であ
ンな再生可能エネルギーです。当社は鹿児島県屋久島
る気泡シールド工法に用いられる起泡剤です。同工法
の8千mm/年に達する降雨を活用し、約3億kWh/年
では起泡剤で作られた気泡をシールドマシン前面に注
の水力発電を行っています。その電力の75%は社内
入して掘削面を安定させながら掘進します。本起泡剤
で炭化ケイ素※の製造に使用し、残りの25%は島内の
は生成気泡が高発泡倍率(10~30 倍)を有するととも
一般民需用として供給しています。尚、島内の一般民
に安定しているため、起泡剤水溶液の濃度調整より、
需のほぼ全量を当社が供給しています。これらの取り
粘性土から礫質土まで幅広い地盤に対応できます。ま
組みによる屋久島島内のCO₂ 発生低減効果は、約 20
た、掘削排出土が海面埋立てさ
万 t/ 年です。これからも地域と地球の環境保全に配慮
れる場合の水生環境への影響を
した 企 業 活 動 を 通
考慮し、従来のAOS ※系起泡剤
じて、地域社会の持
に比べて、掘削排出土の界面活
続 的 発 展 に 貢 献し
性剤成分の海水への溶出率を約
ていきます。
1/10に低減し、良分解性を付
与する等、環境負荷に十分に配
ダム全景
(溢水時)
※炭化ケイ素(SiC):非酸化物セラミックスの一種で、高硬度で耐熱性、耐久性に優れるこ
とから耐火材や研磨・研削材のほか、セラミックスや半導体の材料として使われています。
46
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
慮しています。
※AOS:アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム
「TS-foam」気泡作成状況
環境マネジメント
地球温暖化防止
資源循環の促進
生物多様性の保全
水資源の適正利用
環境負荷の低減
環境配慮型の製品・
技術サービス
事業の
マテリアルバランス
環境会計
環境会計
当社では事業活動に伴う環境負荷の把握と併せて、環境保全に要したコストを網羅的に抽出することで、
事業活動や設備投資の費用対効果を的確に評価できると考え、環境保全のコストと効果を集計しています。
■ 環境保全コスト
単体
▶
分類
内訳
事業エリア内コスト
公害防止コスト
地球環境保全コスト
資源循環コスト
上・下流コスト
管理活動コスト
研究開発コスト
社会活動コスト
環境損傷対応コスト
G4-EC2, EN31
(単位:百万円)
主な取り組みの内容
水質汚濁防止ほか
廃熱発電設備ほか
廃棄物処理コストほか
原燃料リサイクルコストほか
環境マネジメントほか
セメント製造プロセス革新ほか
工場見学対応ほか
汚染負荷量賦課金ほか
合計
13年度
1,964
795
937
231
1,639
42
249
0
2
3,896
投資額
費用額
14年度 15年度 13年度 14年度 15年度
2,868
3,589 15,291 15,383 15,540
1,944
2,617
6,926
6,582
6,681
779
917
7,638
8,098
8,271
144
54
727
703
588
2,026
1,732
5,766
5,218
4,922
75
68
352
509
364
295
426
486
660
699
0
0
28
22
25
33
1
123
99
72
5,297
5,815 22,046 21,891 21,622
(単位:百万円)
項目
13年度 14年度 15年度
当該期間の
投資額の総額
当該期間の研究
開発費の総額
16,875 21,462 22,744
969
1,109
1,065
● 「セメント資源化システム」の取り組みによる外部経済効果の算定
当社では、外部からの廃棄物利用拡大に伴う社会的
な環境負荷低減効果を貨幣価値に換算し、「外部経済
一種のみなし効果ですが、2015 年度は958 億円の
インパクト
インべントリ
2015 年度は、セメント生産量の減少と廃棄物・副
産物の使用原単位の減少により、経済効果が対前年比
効果」 として評価しています。
■ 外部経済効果(2015年度) 単 体
社会的効果を上げたと認識しています。
▶
約 6%減少しました。
G4-EC1, EC2
削減量( t )
インベントリ
設定市場価格
(円/t)
外部経済効果
(億円)
地球温暖化
CO₂
2,948,632
818
24
エネルギー資源枯渇
原油
267,016
18,400
49
鉱物資源枯渇
天然原料
4,957,928
1,000
50
廃棄物
5,565,456
15,000
835
最終処分場枯渇
合計
958
(億円)
1,200
1,021
1,017
958
2013
2014
2015(年度)
900
600
0
外部経済効果の算定方法について
◦当社で他産業の廃棄物リサイクルを行わない場合に、社会全体が受ける環境影響を独自の方法で算定したものです。
◦WBCSD-CSIのCO₂プロトコルで収集したデータ等から廃棄物 ・ 副産物を使用したことによる化石エネルギーや天然原料の使用削減量を計算しました。
◦削減量(環境保全効果)に、当社で設定した市場価格を乗じて経済効果に置き換えています。
それぞれのインベントリの市場設定価格は2000 年度から据え置いていますが、設定の根拠は以下の通りです。
CO₂:炭素税 3,000 円 /t、原油:輸入価格、天然原料:購入価格(仮定)
、廃棄物:管理型処分場の処理費用(首都圏)
◦この算定方法による外部経済効果のうち、一部は当社損益に反映されています。
プロジェクト別環境会計
大船渡工場 可燃性混合廃棄物破砕設備新設工事
▶
G4-EC2, EC7, EN31
大船渡工場では、廃棄物処理能力増強のため、硬質、軟質廃プラや木屑等の建設系可燃廃棄
物の破砕設備を新設しました。この設備により 10,000t/ 年の可燃性混合廃棄物が処理可能
となります。この処理により、埋立処分場の延命、化石燃料使用削減に貢献しています。
大船渡工場 新設破砕設備
投資額:約2.3億円
埋立処分場延命効果:約2億円/年
(埋立処分費用20,000円/tとして計算)
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
47
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
事業のマテリアルバランス
▶
G4-8, 9, 17, 23, EN1, EN2, EN3, EN15, EN16, EN21, EN22, EN23
当社は、低炭素社会の実現と資源循環型社会の構築に貢献すべく、
事業活動における様々な環境への影響を把握、管理し、製造プロセスで発生した熱を廃熱発電で回収したり、
廃棄物、副産物を原燃料として使用するなどの努力を続けています。
I N PU T
エネルギー
原料
石炭
(t)
2,327,736
石灰石
(t)
37,491,514
306,728
27,744
1,143,819
5,252
軽油
(kℓ)
19,300
(t)
天 粘土
然
(t)
資 けい石
源
石膏
(t)
灯油、
その他
(kℓ)
14,731
その他
(t)
石油コークス
(t)
重油
(kℓ)
18,496
594,000
廃棄物燃料
(t)
購入電力
(MWh)
101,621
鉄原料
(t)
276,976
廃
副産石膏
(t)
491,043
棄
物
・ フライアッシュ・石炭灰
(t)2,162,904
副
産
(t)
774,793
物 高炉スラグ
563,145
60,000
50,000
53,752
30,000
20,000
10,000
2011
発電
2012
2013
うち上水(千m3)
耐火物
(t)
9,766
うち工業用水(千m3)
3,686
うち河川水(千m3)
9,313
うち地下水(千m3)
6,019
粉砕媒体
鋳鋼品
(t)
1,067
潤滑油
薬品類
(kℓ)
4,118
その他
(t)
9,747
2014
うち雨水(千m3)
378
うち海水(千m3)
148,017
44,497
250,000
200,000
30,000
150,000 140,300
20,000
100,000
10,000
50,000
0
2015
(年度)
347
(千m3)
40,587
39,950
40,000 38,869
40,000
0
3,498
48,155
50,000
61,213
61,655
167,760
火薬
(t)
■ 水資源投入量
(千t)
78,093 79,334
70,000
添加剤等
(t) 10,061
■ 総物質投入量
■ 総エネルギー投入量
80,000
用水
用水計
(千m3)
1,982,981
その他
(t)
(千GJ)
材料
2011
2012
2013
石炭・石油コークス・用水等
2014
2015
(年度)
0
2011
154,377
2012
174,938 174,289 167,760
2013
電力
発電所
資源
電力
軽油・火薬等
骨材等
鉱山
セメント
石炭・購入電力・添加剤等
石灰石等天然鉱物
石灰石等製品
セメント工場
環境
廃棄物・副産物
アッシュセンター
48
排煙脱硫材等
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
フライアッシュ製品等
サービスステーション
2014
2015
(年度)
環境マネジメント
地球温暖化防止
資源循環の促進
生物多様性の保全
水資源の適正利用
環境負荷の低減
環境配慮型の製品・
技術サービス
事業の
マテリアルバランス
環境会計
●集計範囲: 当社単体の鉱山・工場と、当社に原料を供給している以下の子会社鉱山
(8社9鉱山)
と発電事業を行う
関係会社(2社)において、セメント、資源、環境、発電の4事業を対象として集計しています。
三輪鉱山
(埼玉県) 秩父太平洋セメント株式会社
叶山鉱山
(群馬県) 秩父太平洋セメント株式会社
土佐山鉱山(高知県) 高知太平洋鉱業株式会社
土佐発電所
(高知県) 土佐発電株式会社
糸魚川発電所
(新潟県)糸魚川発電株式会社
大船渡鉱山(岩手県) 龍振鉱業株式会社
武甲鉱山(埼玉県) 武甲鉱業株式会社
御堂鉱山(埼玉県) 秩父鉱業株式会社
藤原鉱山(三重県) 株式会社イシザキ
新津久見鉱山(大分県)大分太平洋鉱業株式会社
田海鉱山(新潟県) 明星セメント株式会社
OU T PU T
CO 2排出量
NOx排出量
CO2(千t)
14,976
※
うち購入電力分
(千t)
197
廃棄物等の排出量
NOx (t)
24,780
※
(t)
10,000
11,508 12,593
14,983 13,467 14,976
30,000
20,000
21,768
2011
2012
2013
2014
2015
0
(年度)
2011
※セメント・発電事業のみ
(購入電力分は除く)
0
1,074
2011
2,331
2,010
672
2012
2013
0
2015
(年度)
45
38
2011
2012
2014
2015
(年度)
500
400
300
200
100
0
379
334
2011
475
434
2013
※セメント・発電事業のみ
(購入電力分は除く)
0.06
2014
2015
(年度)
2013年度 2014年度 2015年度
調査対象キルン数
(基)
排ガス平均濃度
(ng-TEQ/m3N[O2=12%])
総排出量(g-TEQ)
2014
2015
(年度)
161,217
うち海水
(千m3)
148,017
うち淡水
(千m3)
12,933
うち生活雑排水
(千m3)
ダイオキシン類排出量
ダイオキシン類※
(g-TEQ/年)
28
2013
排水
(千m3)
334
284
2012
258
水域への排出量
ばいじん※
(t)
(t)
2,457
2014
※セメント・発電事業のみ
(購入電力分は除く)
(t)
1,000
2013
2012
ばいじん排出量
2,010
3,000
204
200
100
SOx排出量
SOx※
(t)
2,000
18,438
180,884
最終処分量
(t)
300
25,388 24,480 24,780
10,000
5,000
0
28
金属くず等有価物
(t)
(千t)
20,000
471
うち最終処分量
(t)
※輸送によるCO2は別途算出
(P.39参照)
15,000
外部処理委託廃棄物等
(t)
※セメント・発電事業のみ
(購入電力分は除く)
12
12
12
0.002
0.002
0.001
0.10
0.07
0.06
267
(千m3)
200,000
165,485 161,217
149,715 162,590
150,000 134,670
100,000
50,000
0
2011
2012
2013
2014
2015
(年度)
発電事業
電力
[売電]
(MWh)
1,842,970
資源事業
骨材
(t)
8,156,898
石灰石製品
(t)
7,728,473
その他
(t)
113,205
セメント事業
ポルトランドセメント
(t) 12,682,792
混合セメント
(t)
セメント系固化材
(t)
クリンカ
[輸出用等]
(t)
1,918,370
624,326
事
業
別
製
品
1,942,846
環境事業
排煙脱硫材
(t)
233,841
フライアッシュ製品
(t)
141,206
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
49
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
〜 お客様とともに 〜
品質・技術・研究開発
当社は100年以上にわたるセメント製品の製造によって培ってきた製造・品質管理技術により、
製品に対する安全・安心を保証する取り組みを推進しています。
品質保証に取り組む姿勢を明らかにした品質方針のもと、業界トップクラスの品質を維持し、
国内外の市場における当社ブランドの信頼に応えるべく、システムおよび製品の継続的な改善を行っています。
品質方針
営業・技術担当が窓口となって情報収集し、これら情
G4-DMA
報を分析・改善してフィードバックするように努めて
当社は1998 年の太平洋セメント発足時に経営方針
います。近年では国内だけでなく、海外のお客様にも
に基づいて品質方針を定め、この品質方針を組織全体
高品質の製品をご利用いただくために、国内と同様に
に周知するように取り組んでいます。品質方針を実現
現地のニーズを製品品質に取り込み、各輸出先に応じ
するため、従業員一人ひとりが品質方針に基づいた活
たきめ細かい製品づくりも行っています。
▶
動を行うことで、確かな技術と品質保証体制を確立し
これらの取り組みによって、太平洋セメント発足当
て高品質な製品・サービスを提供し、お客様に信頼さ
時に40~60 件 / 年発生した品質課題が、ここ数年は
れ、期待される企業であり続けるように努めています。
20~30 件 / 年まで低減できています。品質課題につ
いては、2012~2014 年度間の平均件数 33 件 / 年に
対して、毎年 20%減を目標にして2015 年度から活動
【 品質方針 】
ユーザーニーズに即した品質設計を追求し、
品質保証を確実に行い、顧客満足度の向上を図る。
を開始しました。初年度は潜在的な品質リスクも積極
的に抽出して課題として取り組んだことから、32 件発
生し目標を達成することができませんでした。それぞ
れの課題について原因追求と対策を徹底し、さらなる
品質マネジメントシステム
品質保証体制の確立を目指していきます。
G4-DMA, PR1
また、2013 年度から当社製品だけでなくグループ
当社では品質保証活動の取り組みとして、
「各種セ
会社の製品についても品質保証体制の拡充を推進して
メント製品、各種クリンカ製品、各種セメント系固
います。各部門横断に活動を進め、重要課題の抽出や
化材製品の設計・開発および製造」を登録範囲とし
解決、あるいは社会的に大きな影響を及ぼした品質事
て、品質マネジメントシステムの国際規格 ISO9001
故に対する検証に取り組むことで太平洋ブランドへの
▶
(JIS Q 9001)の認証を(一財)建材試験センターより
取得しています。グループ会社を含めた国内外のセメ
ント製造事業所におけるISO9001取得率は90%と
信頼感と顧客満足度の向上を図っていきます。
■ QMS概念図
なり、ISO9001の要求事項である「トップマネジメ
ントの責任」
、
「業務の継続的改善」
、
「顧客満足度の向
お客様
上」への取り組みを充実させています。また、改正規
格 ISO9001:2015への移行に向けて本年度から準備
を開始し、2017 年度末までの導入を目指しています。
品質要求
製品・技術サービス
営業部門
営 業
研究・開発部門
● 顧客との関係の強化
「顧客満足度の向上」への取り組みを最重要課題と
捉え、各部門間で定期的な情報交換・連絡を実施し、
品質要求事項に応じた品質設計
しています。お客様よりいただいた製品品質、デリバ
リー等のサービスに関する要望は、支店・営業所等の
50
品質要求事項の明確化
品質要求事項のレビュー
お客様の要求に応える品質重視の製品づくりを徹底
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
試製・評価
資材調達
流 通
技術サービス
出荷検査
製造部門
●製造条件管理
●工程内での品質つくり込み
●工程内検査
受入検査
品質・技術・
研究開発
セメントの安全性
公正な取引
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
情報開示
社会との
コミュニケーション
安全で健康な
職場づくり
■ 「普通ポルトランドセメント」の微量成分含有量の推移(単位:mg/kg)
1987年度
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
平均
-
453
403
449
377
421
最大
-
503
543
583
418
522
おり、社会資本整備に欠かせない建設材料であるセメ
最小
-
412
266
352
321
376
ントについてもその例外ではありません。静脈産業で
平均
-
73
67
69
75
74
全クロム 最大
-
81
81
81
86
81
最小
-
58
59
55
65
61
平均
17.4
7.2
5.8
6.0
7.4
7.4
最大
32.3
8.8
6.6
7.2
8.6
10.6
最小
5.3
6.1
5.4
5.1
6.1
5.7
平均
556
430
474
526
540
529
最大
1,059
547
682
689
711
659
最小
137
176
284
403
412
436
平均
221
63
63
62
61
62
最大
668
99
105
97
85
80
最小
18
44
42
40
42
45
平均
122
155
142
189
183
216
最大
233
246
224
277
281
355
最小
17
104
88
131
131
133
平均
17
10
10
12
12
10
最大
39
24
26
25
30
17
最小
2
2
3
4
5
4
平均
-
0.5>
0.6
0.6
0.7
0.6
最大
-
0.5>
0.6
0.6
0.8
0.7
最小
-
0.5>
0.5>
0.5>
0.5>
0.5>
1.8
▶
G4-PR1
昨今、あらゆる製品に対し安全・安心が求められて
あるセメント業界では、天然資源の代替として古くよ
り高炉スラグ、石炭灰、副産石膏などの産業系廃棄物・
副産物を活用しており、当社の場合も都市ごみセメン
ト資源化システムの技術開発による生活系廃棄物のほ
フッ素
水溶性
六価
クロム
亜鉛
か、建設発生土、建設廃材などのセメント資源化を実
施しています。廃棄物をセメント工場に受け入れるに
鉛
あたっては、廃棄物の搬入・一時保管は密閉型のト
ラックや置き場を使用するなど、飛散防止や悪臭防止
銅
を図り、周辺地域や工場内の環境保全に努めています。
また、廃棄物に限らず天然原料にもクロム、鉛など
ヒ素
の重金属類が微量に含まれていますが、セメント工場
では廃棄物の受入量増加に対応して微量成分の管理強
セレン
化を行っています。新規の廃棄物の受け入れにあたっ
ては発生元情報、化学成分、試験使用結果に基づく三
平均
1.5
3.0>
3.2
3.0>
1.8
カドミウム 最大
2.6
3.0>
4.0
3.0>
3.0
3.0
最小
0.6
3.0>
3.0>
3.0>
1.0>
1.0>
平均
- 0.005>
0.008
0.008
最大
-
0.005>
0.011
0.011
0.008
0.005>
最小
-
0.005>
0.005>
0.005>
0.005>
0.005>
段階の検査を行い、製品の品質や周辺環境に影響を及
ぼさないことを確認した後に受け入れ可否の最終判断
水銀
を行うなどルール化を徹底しています。
■ 「普通ポルトランドセメント」の微量成分含有量
SDS、ラベル表示による情報提供
▶
G4-PR1, PR3
セメント製品をより安全にご使用いただくため、危
険有害性情報を記載した SDS(安全データシート)を
ホームページに公開しています。
また、「労働安全衛生法の一部を改正する法律」に
より、セメント製品の袋・フレコン等の包装容器への
ラベル表示が義務化となりました。当社では、法改
正以前の努力義務の時点からラベル表示対応を開始
し、ラベル表示された袋・フレコンへの切替を順次
行っています。今後も情報を正確に広く伝えること
によって、使用者の安全・健康および環境保全に努め
ていきます。
0.006 0.005>
土の含有量範囲※
(mg/kg)
1,600
1,500
900
800
700
600
500
400
300
200
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
1
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
棒グラフは当社2015年度の平均
529
421
216
74
62
10
(7.4)
0.6
1.8
0.005
フッ素 全クロム 亜鉛
(水溶性六価クロム)
鉛
銅
ヒ素
セレン カドミウム 水銀
※ 出典:H.J.M.Bowen著、浅見輝男・茅野充男訳『環境無機化学』
(博友社、1983年)
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
51
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
放射能事故に対する製品の安全性の確保
▶
今後もコンクリート舗装の普及に取り組むととも
G4-PR1, PR3
東京電力(株)福島第一原子力発電所の放射能事故の
影響により、2011 年にセメントの原料として使用し
ていた一部の産業廃棄物について高濃度の放射能物質
に、人々に安全と安心を与える社会基盤の構築を目
指して、活動を継続していきます。
※早期交通開放型コンクリート舗装:生コン工場で汎用的に用いられている材料で製造
された高い強度レベルのコンクリートで、交通開放に時間がかかるという従来のコン
クリート舗装の課題を解決したもの。
が検出されました。当社は、使用するセメントの原燃
料の放射能濃度を厳重に管理することで、国が定める
各種ユーザー会・工業会活動
安全基準 を確実に下回るセメント製品を出荷する体
※
制を整えており、その測定値については定期的にホー
▶
G4-PR3
当社では、セメントユーザーにおける事業の活性
ムページに掲載するなど情報公開に努めています。
化、技術競争力の構築等を支援するため、各種ユー
※ 2011年5月以降、国がセメントの放射能濃度にかかわる安全基準について、クリア
ランスレベルを100Bq/kg以下と定めています。
ザー会・工業会を設立・運営しています。このうち最
大規模のユーザー会である「太平洋セメント生コン
セメント製品の放射能測定結果について
会」では、全国で 10 地区の地区生コン会を設立し、各
■http://www.taiheiyo-cement.co.jp
地区で特定テーマ活動を行うことで会員相互の技術交
舗装コンクリート普及拡大への取り組み
流を図っています。
G4-PR3
また、プレキャストコンクリート分野での取り組み
コンクリート舗装は、アスファルト舗装と比較し
として、同業メーカー間の相互発展を目的として、
「太
て耐久性が高くライフサイクルコストが低減できるこ
平洋セメント舗装ブロック工業会」
「
、スプリットン工業
と、環境負荷低減に効果があること、材料の安定供給
会」などを設立して積極的な技術支援を行っています。
▶
が可能であることなどを理由に、近年、その性能が見
直されています。当社は、社会的貢献度の高いコンク
リート舗装への理解促進と普及拡大を目的とし、セメ
ント協会や生コンクリート工業組合との共催による公
■ 生コン会活動の一例(特定テーマ活動)
地区
北海道
東北
内容
特殊コンクリートの出荷実績調査
コンクリート強度コンテスト
(申告目標強度)
開施工を行っています。早期交通開放型コンクリート
東京
生コン工場での安全意識と労働環境向上を目的とした安全パトロール
舗装※を自社施設の改修工事等に積極的に採用し、そ
関東
特殊コンクリート標準化に向けた取り組み
北陸
高機能AE減水剤の使用による暑中コンクリート対策実機試験
の工事を発注者や施工者に公開するものです。
中部
コンクリート強度コンテスト
(申告目標強度)
また、当社埼玉工場の正門前の埼玉県日高市の所有
関西
コンクリート強度コンテスト
(申告目標強度)
地をコンクリートで舗装しました。同地は小学生の通
四国
工程データに関するアンケート調査
中国
コンクリート強度コンテスト
(申告目標強度)
九州
社内標準化および品質管理推進にかかわる教育訓練の実態調査
学時の集合場所として使用されていますが未舗装で、
周辺には物流倉庫が多数あり、大型車の往来も多いこ
とから凹凸が多数あり、雨天時には大きな水たまりが
できていました。地域参
舗装用ブロック製品を製造・販売する会員会社 23
画の一環として、通学の
社と太平洋セメントグループ 6 社が、新製品・新技術
安全に寄与するため、日
の開発、内外の情報収集、技術研修会の開催など、積
高市の許可を得て実施し
極的に活動し、業界全体の発展を目指しています。
ました。
52
● 太平洋セメント舗装ブロック工業会の取り組み
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
埼玉工場の施工状況
最近では、2020 年のオリンピック・パラリンピッ
品質・技術・
研究開発
公正な取引
情報開示
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
安全で健康な
職場づくり
社会との
コミュニケーション
ク東京開催の課題の一つに挙げられている沿道の環境
の分析により、FA の特性をより高精度に解析できる
改善に取り組んでいます。猛暑での観客の安全性確保
のが特長で、FA の品質変動支配因子の解明や、品質の
を目的に、歩道の温度低
迅速予測手法構築へ応用が期待されます。今後、注目が
減をブロック舗装技術で
高まる混合セメントにおいても、
「品質の太平洋」を目
実現するために各種検討
標に掲げて品質のさらなる向上を実現していきます。
を行っています。
■ 粒子解析技術の概要
歩道温度を測定し、猛暑に対応する技術を研究
電顕分析
化学組成から粒子の種類を特定
画像解析
● スプリットン工業会の取り組み
個数・形状データから
体積割合、比表面積、粒度分布
などを算出
スプリットンブロックを製造・販売する正会員 11
社、賛助会員のマシンメーカー2社と太平洋セメント
で、河川護岸や道路法面で使用される積みブロック製
20 ㎛
粒子種ごとの解析により
FAの特性をより高精度に把握可能
フライアッシュの断面組織
品の技術開発を中心に活動を行っています。
最近では、河川護岸に求められる明度低減に積極的
● 栄養供給骨材「マンテンマル ®」の開発
に取り組み、課題であった
栄養供給骨材「マンテンマル ®」は、海洋生物の栄
小口止め部の特殊ブロック
養成分となるアミノ酸を含む球状の基材をセメント
を開発し、テクスチャーの
でコーティングして成型した資材です。マンテンマ
統一感のある景観性豊か
ルを海中に設置すると、資材から供給されるアミノ酸
な 護 岸を提 案しています。
スプリットンブロックを使用した河川護岸
に誘引されて、魚や貝などが集まってきます。さら
に、魚介類の餌となり光合成により水質も浄化する藻
研究開発の推進
類の生長を促進し、良好な海洋環境を形成します。近
年、日本では沿岸海域における藻場や干潟の減少など
中央研究所と各事業部門との密接な連携のもと、セ
の環境悪化により、漁業生産量が減少傾向にありま
メント・コンクリートを中心に、周辺分野である資源、
す。当社ではアクア事業とし
環境、建材、建築土木分野まで幅広く展開しています。
て水処理ビジネスを展開して
セメントコーティング
アミノ酸基材
おり、その一つとして沿岸海
● 混合セメントの新規品質管理・解析方法の開発
混合セメントの重要な品質管理項目の一つである混
域の環境改善に貢献する技術
開発を行っています。
マンテンマル ® の外観と断面
和材比率に関して、従来法では比率の直接的な検査は
困難でした。この度、粉末 X 線回折法による鉱物相の
新規定量技術を適用し、工場の自動分析システムで運
■ 沿岸海域での実証実験
(個体数)
用可能な方法を構築したことで、混和材比率を直接的
400
に自動で検査できるようになりました。また、成分が
300
複雑で品質変動が大きいフライアッシュ(FA)の品質
200
解析法の構築にも取り組んでいます。電子顕微鏡分析
100
に画像解析を組み合わせた粒子解析技術は、粒子単位
0
軟体動物門
環形動物門
節足動物門
脊椎動物門
その他
384
247
マンテンマル®
砕石
(比較)
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
53
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
〜 お取引様とともに 〜
公正な取引
当社は、持続的発展のためには、お取引先をパートナーとして信頼関係を構築し協働していくこと、
加担の防止やお取引先の持続的発展への取り組みに対する配慮が重要と考えています。
基本的な考え方
まず、独占禁止法の三本柱である「私的独占」
「不当
な取引制限(カルテル)」および「不公正な取引方法」
お取引先をともに成長するパートナーと考えていま
を中心に独占禁止法の概要を説明し、そして、独占禁
す。お互いの信頼関係を構築し協働していくために、
止法上の問題となる行為を「べからず集」の形で挙
公正な契約に基づいた取引を行うことはもとより約束
げ、従業員が具体的にイメージできるように解説して
の遵守を推進していきます。公正な取引を確かなもの
います。
とするため、行動基準の「社外との誠実な関係づくり」
2015 年度も引き続き、ケースブック、マニュアル
を題材としたe-ラーニングを月 1 回のテスト形式で当
の項では、
①談合やカルテルなどのない、公正な市場取引、入
社全従業員(グループ会社等への出向含む)を対象に
実施しました。
札を実施します。
②協力会社との適性で透明なパートナーシップを保
持します。
【 太平洋セメント行動基準 】
③公正 ・ 公平に取引先を選定します。
④節度ある接待 ・ 贈答を行います。
⑤正直で誠実な、宣伝広告 ・ 表示 ・ 説明を行います。
⑥お客様の声に適切に対応します。
⑦政治 ・ 行政との透明な関係を保ちます。
⑧事業を展開する地域の文化、習慣を尊重します。
と定めています。
お取引先との信頼関係を築く源は、従業員一人ひと
りの行動にあると考え、従業員に各種ツールを通して
公正な取引の推進を促しています。
取引に関するコンプライアンス教育
▶
G4-S04
● 行動基準ケースブックの配布
一人ひとりの行動のよりどころとして制定した「行
動基準」に公正な取引に関する項目を設けています。
[目指す方向性]
私たちは、「社会基盤の整備、資源循環の促進、そして
地域社会の活性化を支える」太平洋セメントグループ
の一員として、自ら考え行動します。
[公正さの追求]
私たちは、常に公平で公正な姿勢を保ちます。
[社外との誠実な関係づくり]
私たちは、様々な関係者に対し誠実・公正に対応します。
[連携と協調の職場づくり]
私たちは、働く仲間を大切にし、ともに成長していくこ
とを目指します。
[会社資産・情報の適切な使用]
私たちは、重要な経営資源である会社資産や情報を、適
切・適正に取り扱います。
[役職者の率先垂範]
役員をはじめとする役職者は、この行動基準の実現が
自らの役割であることを認識し、職場に浸透するよう
自ら行動します。
行動基準に沿って具体的にどのように行動すればよい
か個々の事例を示した「行動基準ケースブック」を作
成し、全従業員に配布しています。
● 独占禁止法遵守マニュアルの配布
取引に関するコンプライアンスを徹底するために
「独占禁止法遵守マニュアル」を作成し全従業員に配
布しています。
54
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
行動基準ケースブック、
独占禁止法遵守マニュアル
品質・技術・
研究開発
公正な取引
情報開示
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
安全で健康な
職場づくり
社会との
コミュニケーション
〜 投資家とともに 〜
情報開示
当社の活動をご理解いただくために、様々な媒体を通じての情報発信に努めています。
また、お寄せいただいたご意見や情報は日頃のIR活動や経営に役立てています。
情報開示方針
環境・社会の3 側面から企業の持続的可能性を評価す
る社会的責任投資(SRI)の代表的な指標です。
2007 年 5 月に制定した「情報開示方針」に則り
企業情報を適時・適切かつ公平に開示しています。
● 「CSRレポート2015」が環境コミュニケーション大賞
2015 年度は 21 件のニュースリリースを行いました。
審査委員会特別優秀賞受賞
ニュースリリースは、過年度分も含めて当社ホーム
環境省主催の「第 19 回環境コミュニケーション大
賞」において、当社 CSR レポートが「審査委員会特別
ページでご覧いただけます。
優秀賞」を受賞しました。2014 年度の「優良賞」に
IR活動
続く受賞となりました。
当社は株主・投資家の皆様に向けた適時・適正な情
各種情報公開ツール
報開示に努めています。機関投資家の方を対象とし
た年 2 回の決算説明会では、経営トップが経営方針な
● ホームページ
どを直接お伝えしています。2015 年度も、個別ミー
ニュースリリースや製品・サービスの情報はもとよ
ティングの実施や証券会社が主催する IR カンファレ
り、採用情報や研究開発部門の情報も掲示しています。
ンスに参加しました。また投資家の方々のご要望に応
じて、生産現場である工場や鉱山の見学会なども随時
実施しています。
IRツールとして年 1 回発行しています。当社の財務
状況を当該年度のトピックスとともに掲載しています。
■ IR活動(2015年度) 単 体
活動
回数
決算説明会
個別ミーティング
会社施設見学会
証券会社主催IRカンファレンス
● アニュアルレポート
出席者数
2
181
207
295
3
12
2
13
● 技術情報誌「CEM'S」
当社製品ユーザー向けに技術情報誌「CEM’S」を
年 4 回発行しています。セメント・コンクリート、建
材、環境関連の技術動向の解説、時流に即した研究開
発、最新の施工事例等を紹介しています。
● 太平洋セメント研究報告
アナリスト向け
施設見学会
当社における研究開発の成果についてまとめたも
ので年 2 回発行しています。バックナンバーの一部は
ホームページでもご覧いただけます。
外部からの評価
● 社内報「Taiheiyo」
● DJSI Asia Pacificに2014年・2015年選定
年 6 回発行しています。マネジメントの経営方針や
「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデック
事業方針、グループのイベント情報、従業員の声等を
ス(DJSI)
」のアジア・太平洋版「DJSI Asia Pacific」の
掲載しています。社内だけでなく、地域社会やマスメ
構成銘柄に2 年連続で選定されました。DJSIは経済・
ディアへも配布しています。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
55
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
〜 社会・従業員とともに 〜
人権・多様性の尊重、活気ある職場づくり
当社は、人権・多様性の尊重は持続可能な社会形成の原則であると認識しています。
この原則のもと、人材の育成、女性の活躍推進、雇用の多様性、ワーク・ライフ・バランスの実現に配慮した
施策の導入などに取り組み、従業員一人ひとりが成長する働きやすい職場づくりに努めています。
人権・労働慣行基本方針
■ 社内研修と標語参加実績(2015年度) 単 体
▶
社内研修と標語
G4-DMA
当社は、人権・多様性の尊重は持続可能な社会形成
の原則であると認識し、世界人権宣言、ILO 労働基準
等を考慮し、2015 年 4 月に人権・労働慣行基本方針
参加実績
本社階層別人権研修
304名
事業所人権研修(特別研修を含む)
2,368名
関係会社トップ層研修
132名
人権週間標語参加(従業員・家族)
1,519点
を策定しました。
● 人権に関する相談窓口の運用
【 人権・労働慣行基本方針 】
1. 人権尊重は経営基盤であるとの認識のもと、人権問
題の解決に努めます。
2. 多様性を尊重し、一切の差別・ハラスメントを認めま
せん。
3. 国際規範や各国の法令・労働慣行を踏まえ、労働者の
権利を尊重し、雇用において差別的取り扱いを行わ
ないとともに機会均等に努めます。
4. 安全と健康に配慮した労働条件や職場環境の整備に
努めます。
5. 一切の児童労働および強制労働は認めません。
全事業所に配置しているセクシャル・ハラスメント
相談窓口員や人権啓発推進委員を通じて人権侵害事案
発生防止のための啓発活動や苦情対応などの活動を
行っています。
■ セクシャル・ハラスメント相談窓口
社内
全事業所にセクシャル・ハラスメント相談窓口員を配置
(46名)
社外
「21世紀職業財団ハラスメント相談窓口」に電話とウェ
ブ相談による対応を委託
人材の育成と評価
人権尊重
▶
G4-DMA, LA10, LA11
G4-58, DMA, HR2
当社は従業員を当社グループの持続可能な発展を支
人権・労働慣行基本方針の下、従業員一人ひとりの
える最も重要な経営資源「人財」と捉え、国籍や性別
行動の規範となる「行動基準」
(P.54に記載)に、
「人権
などにかかわりなく多様な個性・価値観を持った人材
を尊重し、国籍、性別などによる差別をしません」
「ハ
の個々が能力を最大限に発揮するよう「人材開発基本
ラスメントのない職場をつくります」などの項目を掲
方針」に則る長期的な人材育成制度と公正な評価制度
げ、従業員はもとより事業活動に関係する人々の人権
を整備しています。
▶
を尊重するよう取り組んでいます。
● 人権啓発活動
人権尊重の基盤は教育にあると考え、人権啓発活動に
取り組んでいます。2015年度は、従来の階層別研修、関
係会社トップ層研修等に加え「ハラスメント特別研修」を
全事業所で実施しました。グループ会社に対しても、人
権研修支援、人権啓発の冊子配布、情報提供を行ってい
ます。2015年度の研修支援実績は、のべ10社6研修40
名でした。さらに、人権週間では、協力企業も含めた従業
員およびその家族を対象に人権啓発標語の募集を行い、
人権啓発の推進に努めました。
56
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
【 人材開発基本方針 】
社内外に通用する人材の育成を目指します
1. 人材開発はOJTとこれを補完するOFF-JTを基本と
します
2. それぞれの分野および階層において次代を担う後継
者を育成します
3. 常にグループ経営を視野に入れ行動する人材を育成します
4. 世界に通ずるグローバルな人材を育成します
5. CSR推進の積極的な活動を通じ、環境への配慮、社会
への貢献が出来る人材を育成します
6. 自己啓発により、意欲溢れる視野の広い従業員とな
ることを支援・促進します
品質・技術・
研究開発
● 人材の育成
公正な取引
情報開示
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
安全で健康な
職場づくり
多様性の尊重
当社は、階層別集合教育やグローバル人材の育成
等、全社横断的施策とともに、組織活性の礎となる
「個」の能力開発に主眼を置いた仕掛けについても企
図し、自主性・自立性を醸成する個人学習の機会を提
社会との
コミュニケーション
▶
G4-DMA, LA10, LA12
● 女性の活躍推進
女性の活躍推進は、イノベーティブな労働力創出の
ための当面最大の課題と捉え、取り組んでいます。
供することによって従業員の伸長意欲をかきたて、仕
2015 年 7 月にダイバーシティ推進室を設置すると
事や教育を通じて従業員がキャリアの柱を主体的に見
ともに、諸施策(主に従業員の定着(リテンション)策)
出す風土づくりを推進しています。
の検討のため女性従業員の意見を取り入れる場として
また、全従業員を対象に年 1 回、自己のキャリア形
女性ワーキンググループを発足させました。その検討
成、希望勤務地、家庭の事情などを申告する自己申告
結果を提言にとりまとめ、経営層へ報告するとともに
制度を実施し、従業員が長期にわたって定着し、能力
全従業員へ冊子として配布しました。さらに、2016
を最大限に発揮できる環境の整備に努めています。
年 4 月に施行された、女性の職業生活における活躍の
推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく一般事
期待人材像
人材育成の観点から、新生太平洋セメントの創出という企
業変革に向けた期待人材像と求める要素三点を次のとおり
とします。
当社グループの持続的成長を担う、自負と使命感に溢れた人材
❶成長戦略の推進役として
「豊かな構想力」
「逞しい推進力」
「アグレッシブな姿勢」を有する人材
業主行動計画にも、この提言を反映しています。ま
た、日本経済団体連合会が推し進める「女性活躍アク
ション・プラン」に基づく取り組みにも参画し、自主
行動計画を公表しています。
当社はこれからも女性活躍に向けた目標 ( 内容は
[CSR 目標 2025]
(P.05 に記載)に取りまとめられて
❷グローバルに活躍できる人材
います ) を達成すべく、女性の職域拡大と女性管理職
❸グループ経営に貢献できる人材
育成の環境整備に真摯に取り組んでいきます。当社の
女性従業員比率を 2020 年までに 10% 以上とするこ
教育体系については当社ホームページをご参照ください。
■http://www.taiheiyo-cement.co.jp
CSRの取り組み→ CSRレポート→資料編
とを目指して、女性の採用を積極的に行っており、
「女
子学生のための仕事説明会」を実施するなど採用面で
の取り組みの結果、Gコース(総合職)に占める女性比
率は 2016 年 4 月入社では約 33%となっています。
● 人事評価制度
当社の人事評価制度は処遇を過度に意識しない育
成型評価システムを全従業員に導入し、被評価者への
フィードバックを通じて評価への納得性を高めると同
時に、育成のポイントなどについて、評価者と被評価者
の間の意見交換をより重視する仕組みとしています。
評価・育成スキルのさらなる向上と評価者のマネジ
メント力向上を目的とする「マネジメント(人事評価)
研修」を 2007 年度より実施しており、2015 年度ま
でにのべ約 600 名が受講しています。
「女性活躍法に基づく一般事業主計画」については
当社ホームページをご参照ください。
■http://www.taiheiyo-cement.co.jp
CSRの取り組み→社会との取り組み→人材
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
57
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
● 障がい者雇用の推進
年度からは4 期目となる「一般事業主行動計画」を策
当社は、2000 年度に「障がい者雇用促進委員会」
定し、諸施策への取り組みを行っています。
を設置し、新卒定期採用や特例子会社を3社設立する
など改善に取り組んできました。2015 年 6 月時点の
障がい者雇用率は2.26%、2015 年の年間平均雇用率
は2.29%となり、9 年連続で法定雇用率を達成してい
ます。2016 年度入社は障がい者の新卒採用もあり、
一般事業主行動計画
計画期間:2015年4月~2017年3月までの2年間
目標1 年次有給休暇の取得促進のための措置を実施する
対策
施等により、年次有給休暇取得率の向上を図る
2016 年 6 月時点での報告は2.37%となり法定雇用率
目標2 働き方の見直し・仕事と育児の両立に資する多様な
を達成しています。
■ 障がい者雇用率の推移
(各年6月1日の実績)
雇用率
(%)
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0
1.49
1.85
1.69
2.05
1.76
2.15
労働条件の整備に努める
当社
2.26
1.82
対策
単体
民間企業平均
2.37
2012
2013
2014
労使による専門委員会等を通じた多様な労働条件
のあり方の検討を進め、ワーク・ライフ・マネジメ
ント実現のための労働条件整備に努める
1.88
法定雇用率2.0%
(2013年3月まで1.8%)
0.82
2000
年休奨励日の設定、年次有給休暇の計画的付与の実
2015
2016 (年)
● 柔軟な働き方の実現
当社は、就業に関する様々な制度を導入し、従業員
各々のワーク・ライフ・マネジメントを実現するため状
● 定年後再雇用制度
況に合わせた柔軟な働き方の実現に取り組んでいます。
厚生年金支給開始まで希望者全員を原則再雇用し、
支給開始後も労使で協定した再雇用基準に照らして
65 歳まで再雇用しています。再雇用先をグループ会
社まで広げ、再雇用者の職場確保に努めています。
働きやすい職場づくり
柔軟な働き方を可能とする主な制度
◦フレックスタイム制度
◦裁量労働制度
◦年次有給休暇の半日単位での取得制度
◦特別積立休暇(有効期間経過後の年次有給休暇積立)
◦リフレッシュ制度
◦コース別人事管理制度(地域限定勤務) など
● ワーク・ライフ・バランスの取り組み
◦ 育児・介護に対する支援
当社では、育児・介護休業の当初 5 日間有給化や子
の看護休暇・介護休暇に半日使用を認めるなど、育
■ 休暇および労働時間の状況
項目
育児休業取得者数:( )内は男性人数
育児休業取得率(女性)
児・介護を目的とした休業・休暇の取得支援を行って
年次有給休暇取得率
いるほか、休業を希望しない従業員に対しても支援す
時間外労働
(月平均)
単体
2013年
6
(2)
2014年
11
(6)
2015年
6(3)
100%
100%
100%
68.6%
72.3%
73.2%
17.5時間 17.7時間 17.3時間
る措置(フレックスタイム制・短時間勤務・始終業時
刻繰上げ繰下げ)を制度化しています。
● ボランティア活動の支援
◦ 次世代育成支援対策推進法に基づく取り組み
58
当社では、2012年6月より「ボランティア休暇制度」
「次世代育成支援対策推進法」に基づき、2005 年度
を制定し、従業員の自発的なボランティア活動を支援し
より「一般事業主行動計画」を策定しています。2015
ています。2015年度までにのべ29 名が取得しました。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
品質・技術・
研究開発
公正な取引
情報開示
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
安全で健康な
職場づくり
社会との
コミュニケーション
従業員の状況
● メンタルヘルスケア
当社全従業員対象のメンタルヘルスチェックを実施
タルヘルス不全予防を目的とした研修会も実施してい
ます。従業員とその家族も利用できる太平洋セメント
健康保険組合が契約するカウンセリング等をはじめ
単体 連結
しています(2015 年度受診率 89.2%)
。また、メン
▶
■ 従業員の状況
(2015年度末)
女性
従業員
臨時従業員
従業員
臨時従業員
男性
120
7
1,404
259
G4-10
(単位:名)
合計
1,577
34
11,170
685
1,697
41
12,574
944
※ 従業員数は就業人員であり、臨時従業員数は年間の平均人員の外数
としたメンタルヘルスサポートシステム(無料相談窓
健全な労使関係
口)も設置しています。
▶
● 従業員意識調査
G4-11, LA8
当社の従業員の労働協約の対象者に対する労働組合
従業員の働きがい向上のため、2013 年度に引き続
加入率は 100%です。相互信頼・相互理解を基本と
き第 2 回の従業員意識調査を 2015 年 11 月に実施し
した労使間における交渉・意見交換の場である「労使
ました。
「役員と語る会」等の施策により、レベルが良
協議会」
「労使説明会」を随時開催しています。2015
好とまではなりませんでしたが、
「役員の信頼度」など
年度は 48 回開催し、いわゆる交渉だけではなく、会
の項目で大幅な改善が見られました。また、この質問
社業績の説明、賃金・賞与の改定、制度・規程の改訂
表には記述欄を設け、人権侵害やコンプライアンス違
等幅広いテーマを取り上げ、会社と労組が互いに意志
反の可能性のある事案など匿名で報告できるようにし
を疎通させることを目的としています。また、労使協
てあります。
議会の諮問機関として 4 つの専門委員会を設置し積極
的な交渉・意見交換を図っています。
■ 従業員意識調査結果
仕事のやりがい
総合
コンプライアンス
心身の不調
3.0
2015年度
2013年度
職場の活性度
4.0
5.0
お客様志向
人事制度
役員の信頼度
■ 専門委員会の目的
委員会名
目的
人事・処遇制度
専門委員会
人事・処遇制度全般についての見直し検討を目的に設置。
雇用・就業形態
専門委員会
雇用・就業形態が多様化する中で人事・労務管理の運用に
関する検討を目的に設置。
労働時間
専門委員会
労働時間および労働時間管理等に関する問題点、労働時
間法制に対する対応についての検討を目的に設置。
ダイバーシティ
推進専門委員会
雇用の多様化を進めていく上で必要となる諸施策の検討
を目的に設置。
経営層と従業員の直接コミュニケーション コミュニケーション活発化推進活動の一環とし
て、2015 年度も役員と従業員の直接対話の場とな
る「役員と語る会」を設けました。当社全事業所
18カ所で「17中期経営計画」をテーマとして開催
し、1,110 名が参加しました。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
59
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
〜 従業員とともに 〜
安全で健康な職場づくり
「働く仲間の安全と健康の確保」が企業存立の基盤をなすものと捉え、
サプライチェーンなどを含めた労働災害の撲滅と快適な職場環境の実現を目指し、
組織的な安全保安衛生活動を継続的に推進しています。
安全保安衛生方針
指導を行っています。
▶
G4-DMA
当社の安全保安衛生方針を次の通り定めています。
本方針の精神に則り、本社と事業所では年度ごとに安
全(保安)衛生管理方針を策定し活動しています。
2002 年にOSHMS ※の運用を開始し、2003 年から
は、すべてのセメント工場・鉱業所で展開しています。
※OSHMS
(Occupational Safety and Health Management System)
:1999年に
厚生労働省が示した指針。連続的かつ継続的な安全衛生管理を自主的に行うことによ
り、事業所の労働災害の潜在的な危険性の低減、および快適職場を促進させる仕組み。
■ 安全保安衛生体制
【 安全保安衛生方針 】
全社安全保安衛生委員会
[委員長]
安全担当役員
太平洋セメント株式会社は、従業員の安全と保安および
健康の確保が企業の存立の基盤をなすものと認識し、労
働安全衛生法及び鉱山保安法の精神に基づき労働災害
及び職業性疾病の発生を防止するために適切な経営資
源を投入し、以下の基本方針を効果的に実施していくこ
ととします。
本社各部門
本社・
中央研究所
各工場
各支店
東京支店
安全衛生委員会 安全衛生委員会 安全衛生委員会
安全衛生委員会
各鉱山
保安委員会
関係会社
安全衛生委員会
保安委員会
● 安全作業責任者認定制度 基本方針
1. 労働災害ゼロを目指し、労使協力の下に安全保安衛
生活動を推進します。
2. 安全保安衛生関係諸法令を遵守するとともに、当社
で定めた安全保安衛生管理規程と事業所で定めた安
全保安衛生規定類に基づき、従業員と協力会社の安
全保安衛生を確保します。
3. 労働安全衛生マネジメントシステムの実施及び運用
を積極的に推進し、設備の本質安全化並びに教育訓
練や啓蒙活動を継続的に実施し安全保安衛生水準の
向上に努めます。
4. 全社と事業所の安全保安衛生委員会を通して技術の
進歩及び安全保安衛生の新しい知識情報に適応し、
職場環境と作業方法を継続的に改善します。
5. 全社と事業所及びグループ関連会社の安全保安衛生委
員会のリーダシップで労働災害撲滅活動を進め、太平洋
グループ全体の安全保安衛生の確保を推進します。
労働災害の削減には、リーダーの能力アップが必要
と考え、認定者のみを作業グループのリーダー(安
全作業責任者)とする「安全作業責任者認定制度」を
2007 年度より運用しています。2015 年度からは工
場での認定講習の受講資格を労働安全衛生法に規定す
る「職長教育」の修了者に引き上げて、さらなるレベ
ルアップを図って運用しています。
● 労働災害データベースの運用 類似災害を防止するため、当社とグループ会社、臨
時を含むすべての協力会社の労働災害を 4M(人、設
備、作業方法、管理)の分類に沿って不安全行動・状
態の原因を分析し、対策内容を記した労働災害検討書
を整理したデータベースを2008 年度から運用してい
ます。
安全保安衛生体制
▶
G4-DMA
工場・鉱業所・支店の事業所別に「安全(保安)衛生
委員会」を開催し、それを統括する本社では安全担当
役員を委員長として「全社安全保安衛生委員会」を設
置しています。ともに労使双方の代表で構成していま
す。また、全社安全保安衛生委員会では当社に限らず
グループ会社の安全に対してもデータの収集ならびに
60
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
■ 労働災害データベースへの労働災害登録件数
(件)
120
■死亡 ■休業 ■不休
114
110
89
90
98
101
60
30
0
2011
2012
2013
2014
2015 (年度)
品質・技術・
研究開発
安全保安衛生の実績
公正な取引
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
情報開示
安全で健康な
職場づくり
社会との
コミュニケーション
158 名の参加者が高所、回転体、電気、玉掛け等の危
▶
G4-LA6
険を体感しました。
2015 年度は、不安全行動による災害をなくすた
め、セメント工場において「ちょっと待て!指差唱
● 衛生管理
和」キャンペーンなどを展開し効果を上げました(直
当社の全従業員を対象に年 1 回の労働安全衛生法に
轄セメント工場の労災実績:2014 年度 18 件に対し
基づく健康診断を実施しています。受診率は、2015
2015 年度は 10 件)
。しかし、グループ全体で見ると
年度も 100% でした。また、健康維持増進のための講
死亡災害が前年度の 2 件から 4 件に増加、災害件数全
習会や社内報での情報発信を行っています。
体は前年度と同数と、災害を減少させることができま
せんでした。災害が多発した関係会社には安全指導を
強化し、関係会社に対しても緊急安全総点検を要請し
ました。
▶︎安全に関する実績数字はP.66に記載
■ 休業率の実績
休業率
単体
(単位:%)
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
0.411
0.531
0.570
0.547
0.439
● アスベストによる健康障害について
当社における健康障害の発生状況については、当社
● 安全体感教育 元従業員で労災認定を受けて死亡した方が 42 名、同
一人ひとりの安全に対する感性を高めるため、身近
な作業における危険を仮想体験させる安全体感教育を
じく労災認定を受けて現在治療中の方が 5 名となって
います(2016 年 5 月 31 日現在)。
推進しています。2011 年度からは、同じ工場で働く
また、当社ではアスベスト使用製品の製造に携わっ
仲間が一度に多く受講でき、認識を共有できる利点を
た方および工場勤務者 OB を中心に継続的に健康診断
考慮し、社外講師による安全体感出張教育を輪番制で
を実施しています。なお、これまで近隣住民の方から
実施しています。
の健康異常のお申し出はなく、近隣住民の方を対象と
2015 年 度 は、11 月 5、
した健康診断は実施していません。
6日の2日間にわたり熊
詳細については当社ホームページをご参照ください。
谷 工 場 で 開 催 し ま し た。
工場と協力業者合わせて
高所からの落下衝撃体験訓練
■http://www.taiheiyo-cement.co.jp
CSRの取り組み→ CSRレポート→資料編
役員による工場巡回安全点検
当社のセメント工場で、トップが直接現場を見て指導する「率
先垂範」の具現化を目的に、工場関係の役員が、休転に合わせ安
全パトロールを実施しています。また、この機会に従業員ならび
に協力会社の責任者等を集め、会社の安全に対する取り組み状
況等を説明する安全訓話を実施し、改めて「安全第一」について
の意識改革を図っています。
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
61
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
〜 社会とともに 〜
社会とのコミュニケーション
▶
G4-EC7
国内外の各拠点において、事業活動を行うのみならず、地域コミュニティのニーズに対して、
太平洋セメントグループの事業特性を活かした様々な参画を行い、
地域とともに持続的な成長を目指しています。
■ 主な活動実績(2015年度)
テーマ
地域環境
保全
活動項目
年間実施回数
住民説明会
39
環境報告会
9
環境モニター制度
清掃活動
森林や地域の自然保護活動
地域文化・
交流の
活性化
地域の発展
工場・鉱山見学
施設開放
災害支援
158
19
265
1,975
イベントの主催・参加・協力
76
資材の提供・重機の貸出
30
地域医療支援
19
地域産業振興の支援
その他
教育・
人材育成
44
154 ◦近隣地区・委員会への報告会
◦環境モニター会議
◦報告会・懇親会
◦拠点周辺の道路・河川等の清掃活動
1,239
◦地域の清掃活動への参加
◦苗木の植樹、間伐等の森林保全活動への参加
178
◦地域の農地保全活動の支援
68
8,361 ◦近隣の児童・生徒・住民・行政等の工場・鉱山見学
16,234 ◦学校や地域の活動にグラウンド・体育館・会議室等を開放
3,241
技術者養成
10
インターンシップ・職場体験
38
その他
12
◦少年野球等スポーツ大会の主催
◦スポーツ大会・地域の祭り・行事等への参加・協力
36 ◦地域の公共広場・道路・水路整備への資材提供・重機貸し出し
216
5
1
活動事例
776 ◦廃棄物処理に関する説明会
◦無料医療診断・治療薬配布の実施
◦構内をドクターヘリポートとする協定
40 ◦地域産業振興支援活動への参加・協力
11
奨学金制度
被災地支援ボランティア
参加者数
71 ◦経済的困窮地域への支援活動
62 ◦拠点周辺地域の経済的に困窮している学生を支援する奨学金制度
◦コンクリート技術学校の無償開設
◦技術指導プログラムの実施
◦国内外インターンシップの受け入れ
383 ◦大学生の技術指導
◦職場体験・鉱山研修
100
2
地域環境保全
● 環境コミュニケーション 積極的な情報開示とコミュニケーションによる透明
性の向上は、地域に対する責任の一つと捉えていま
す。新規事業開始や採掘区域の変更の際は、地域の
80 ◦地域学校建設への資材提供
◦支援団体への参加
55 ◦被災地域の公民館用地へ社有地を無償貸借
◦被災地ボランティア活動
しています。同プラントは野生動物も数多く生息する
環境保護指定エリアに隣
接しており、周辺環境の
保全活動や操業状況を説
明し、地域との相互理解
を深めています。
工場見学
(米国カルポルトランド社)
方々を対象に説明会を開催しています。リサイクル資
源の受け入れ状況や排ガス測定値なども定期的に報告
しています。また、工場近隣にお住まいの方々に環境
日高市内を流れる小畔川の保全活動として、地元の
情報を寄せていただく環境モニターを依頼し、工場周
漁業協同組合が河原の整備やナマズ・フナの稚魚放流
辺の環境情報の迅速な把握・対応に努めています。さ
などに取り組んでおり、埼玉工場も協力しています。
らに工場を中心とした各事業所では、児童・生徒を中
活動は 2016 年度で 7 年
心に、近隣の方々、従業員家族、行政関係者、企業等
目を迎え、一時弱体化し
に対し見学会を実施しています。
た同河川の生態系も回復
例えば、米国カルポルトランド社のデュポン骨材プ
ラントでは、周辺住民の方々の工場見学を年 1 回実施
62
● 地域河川の生物多様性をより豊かに
(埼玉工場)
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
しています。
日高市小畔川への稚魚の放流
品質・技術・
研究開発
公正な取引
● 地域の農地保全活動への支援協力
(藤原工場)
藤原工場周辺は山間農地で、田んぼの畦畔が急傾斜
情報開示
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
安全で健康な
職場づくり
社会との
コミュニケーション
●地域行政と連携した廃棄物のセメント原燃料化
(中国 江南小野田水泥有限公司)
で除草作業に苦労している地域です。農地保全の支
江南小野田社は、中国南京市の公安(日本の警察に
援として、畦畔に植える「ヒメイワダレソウ」の苗を
あたる)から、押収した遊技台(パチンコ台等)約 2 ト
2011 年度より提供しており、2015 年度は市内 20
ンの廃棄処分を依頼されました。通常は埋め立てられ
地区に提供しました。ヒ
るところ、適正な処理を
メイワダレソウの植栽に
行い、セメント原燃料と
より雑草が抑制され、除
して資源化しました。こ
草作業の軽減、景観向上
の取り組みは地元テレビ
に効果があります。
植栽によって整備された農地
● 高知県「協働の森づくり」事業参加
局でも報道されました。
セメント原燃料として投入される遊技台
地域文化・交流の活性化
(土佐事務所、高知太平洋鉱業(株))
2011 年から高知県「協働の森づくり」事業に参画
● 地域への体育館の開放(上磯工場)
しています。2016 年 3 月に従業員 24 名が参加し、高
上磯工場では体育館を地域に開放しており、少年
知市森林組合の方による指導の下、森林保全には不可
やシニアの野球チームに利用されています。特に冬
欠な間伐の体験を行いました。間伐体験終了後には、
季は雪で屋外での練習ができないため、貴重な練習
地元有志の婦人会「花菖蒲」の皆様の地元食材による
場となっています。また、上磯工場は毎年夏に「秋
手作り料理をいただきな
葉神社少年野球大会」を
がら地域住民の方々との
主催し、近隣の少年野球
交流を深めることができ
チームが練習の成果を発
ました。
揮する大きな舞台を提供
森林保全に欠かせない間伐を体験
● 鉱山の緑化
(中国 大連小野田水泥有限公司)
大連小野田社の玉山石灰石鉱山は周辺に多くの住宅
が建設され、典型的な都市型鉱山です。周辺環境への影
響を最小限に留め、地域との共生を図ることを方針と
し、鉱山緑化に取り組んでいます。大連の気候に適し、
緑化の効果がよいイタチハギを植樹しています。2014
年 度 まで に 海 抜148m~
工場主催の少年野球大会で優勝したチーム
● 「三陸・大船渡夏まつり」に参加(大船渡工場)
地域との交流を深めるため様々な地域行事に参加
しています。2015 年 8 月に開催された「三陸・大船
渡夏まつり」では、「市民道中踊り」に従業員 60 名
が踊り手として参加しました。数週間前から練習を
重ね、揃いの浴衣、法被
に草履姿で千人規模の踊
124m部の緑化を完了し、
り手と輪をつくり、大い
2015年度は新たに112m
に盛り上げました。
部において約4,000m²を
整備しました。
しています。
揃いの法被で踊る太平洋セメントチーム
鉱山の残壁に沿って植樹された苗
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
63
マネジメント
環境への取り組み
社会との取り組み
● 工場参観デイの開催(熊谷工場)
地域の発展
熊谷工場では、近隣地域の方々を対象に、体験型の
工場見学会「工場参観デイ」を開催しています。例年
● 熊谷市より消防団協力事業所に認定(熊谷工場)
200 人近い親子が参加し、
「今まで壁の内側で何をし
熊谷工場は、2015 年 3 月に熊谷市より消防団協力
ているのか分からなかったセメント工場が身近になっ
事業所の認定を受けました。災害発生時に消防団員で
た」と大好評です。地域に
ある従業員の消防団出動を認め、訓練などの消防活動
開 か れ た セ メ ン ト工場を
参加に積極的に協力している事業所を認定する制度
目指す重要なコミュニケー
で、熊谷市内の事業所と
ション機会として、引き続
き実施予定です。 して2 番目に認定されまし
親子で工場内を探検
た。今後も地域防災の拠
点として積極的な貢献を
● 地域へのグラウンド開放
(大分工場)
目指します。
熊谷市消防団協力事業所認定式
大分工場の千怒グラウンドを開放しています。野球
人口が多い津久見市で重宝され、その他多種のイベ
● 無料医療診療の実施
ントに使用されています。2015 年度は幼稚園の運動
(フィリピン タイヘイヨウセメントフィリピンズ)
会、盆踊り大会、少年野球など、のべ110 回、1,980
工場周辺の 12 地区を対象として、2006 年度から
人に利用いただきました。
地域住民の方々の無料医療診療を実施しています。こ
安全に気持ちよく利用いた
れまでのべ約 18,000 人に行いました。2015 年度は
だけるよう、草刈、土の耕
トンゴ、サウスポブラシオン、ティヌブダンの 3 地区
運、防球ネット等の維持管
理に努めています。
開放されたグラウンドで活動するソフト
ボールチーム
で、合計約 1,900 人が受診し、治療薬や老眼鏡を無料
で配布しました。フィリピンは経済的理由から適切な
医療サービスを受けるこ
● 燕山大学日本語演劇会の審査員として参加
とが難しい方も多く、地域
(中国 秦皇島浅野水泥有限公司)
住民や行政から大変感謝
秦皇島浅野社は設立当初から、通訳・採用・従業
されています。
無料医療診療に集まった地域の方々
員の日本語教育等により、地元の国立燕山大学と交
流があります。同大学日本語学科の学生が学習の成
果を演劇や合唱で披露する日本語演劇会が開催され、
2015 年度も審査員を務め
2016 年 1 月に、ギソンセメント社ならびに日系企業 9
社は、ニンビン省タムディエット町の小中学校に、手洗い
ました。その他、日本語ス
場を備えた水洗トイレを寄贈しました。同校のトイレは屋
ピーチ大会や同大学生の
根もなく腐食が進行しており、衛生環境は劣悪な状態で
工場見学会等、様々な交流
を実施しています。
● 小中学校へのトイレの寄贈(ベトナム ギソンセメント)
日本語を学ぶ学生による日本語演劇会
した。 清潔なトイレは、 感
染症・下痢の防止に貢献し、
子どもたちの就学率向上に
もつながります。
日本大使館も参加し開催されたトイレ施
設引き渡し式
64
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
品質・技術・
研究開発
公正な取引
情報開示
人権・多様性の尊重、
活気ある職場づくり
安全で健康な
職場づくり
社会との
コミュニケーション
教育・人材育成
130 名の工場見学を受け入れました。
● 海外インターンシップの受け入れ
(中央研究所)
● コンクリート技術者の育成(ベトナム ギソンセメント)
中央研究所では海外大学からのインターンシップ生
経済成長に伴い、インフラ整備が活発に行われてい
受け入れを積極的に行っています。2015 年度はカナ
るベトナムでは、優れたコンクリート技術者の確保が社
ダから1名、インドネシアから2名、中国から1名の
会的な重要課題となっています。ギソンセメント社は
計4名を受け入れました。
コンクリート技術学校を無償で開設し、ベトナム人技術
約 10 カ月の研修期間中、
者の養成に力を注いでいます。これまで、ハノイ市、ビ
専門分野の技術研修のほ
ン市、ダナン市、ニャチャン市およびホーチミン市周
か、日本の社会人生活も
辺で運営してきました。特にホーチミン市では、コン
体験し、文化の違いなど
実験に取り組む海外からのインターン生
相互理解を深めました。
クリート配合等の基礎知識の習得を目的とする初級者
コースだけでなく、特殊コンクリートや耐久性等の知識
を習得する上級者コースも開設しています。卒業者数
● 大学生への生コンクリート技術指導
は2016 年 3 月現在、のべ1,204 名となりました。今後
(東北支店・東北太平洋生コン(株)・国際企業(株))
も人材の育成を通じてベトナムの発展を支えます。
毎年 5 月、日本大学工学部建築学科 2 年生の学生へ
生コンクリート技術指導を行っています。大学 4 年間
の中で唯一コンクリートに触れる貴重な時間です。実
習では実際に使用される生コンクリートの基礎知識の
習得を目的としています。
コンクリート技術学校で学ぶ受講生の記念撮影
2 日間で約 250 名の学生
が参加し、スランプ試験、
被災地支援
空気量試験、塩分測定、供
試体の作製までの流れを
熱心に学ぶ大学生
学びました。
● 東日本大震災「IPPO IPPO NIPPONプロジェクト」
への参加(太平洋セメント(株))
当社は、経済同友会による東日本大震災の復興支援
● セメント工場見学および実習の受け入れ
プロジェクト「IPPO IPPO NIPPON」
に参加していま
(パプアニューギニア PNG太平洋セメント)
す。同プロジェクトは、真に必要とするところに寄付
PNG 太平洋セメント社では、周辺の工業系大学・専
を届けるプラットフォームで、「人づくり」
「経済活性
門学校から工場実習や工場見学を受け入れています。
化」をテーマに、専門高校への実習教
当社が位置するLAE市はパプアニューギニア第 2の都
材の提供など中長期的な支援活動を
市ですが、製造工場が少な
行っています。
く、見学等の要請を多く受
けます。2015年度は、9名
の工場実習(品質管理、機
械整備、車両整備)
、のべ
工場見学に参加した地域の学生
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
65
WBCSD-CSIに基づく主要業績評価指標(KPI)
▶
G4-EN2, EN3, EN5, EN8, EN18, EN19, EN21, LA6, MM2, SO1
CSI の各メンバー会社は CSI 憲章で、セメント産
業における優先的に取り組むべき課題の実績につ
びに目標は次の通りです。
この中で「気候変動防止に関するマネジメント」
、
いて、CSI で開発した指標に基づき公表すること、
「排出物のモニタリングと報告」、
「安全衛生」、
「水使
CO₂ 排出ならびに主要大気汚染物質については削
用」の項目についての実績は KPMG あずさサステ
減目標を定め、その達成に取り組むことを約束して
ナビリティから第三者による限定的保証を受けてい
います。この指標に基づく当社グループの実績なら
ます。
CO₂排出削減目標
当社ならびにグループのセメント製造に伴うCO₂排出を
ネットCO₂排出原単位で2025年度までに
2000年度比で10%以上削減します。
[CSR目標2025]
主要大気汚染物質の削減目標
当社ならびにグループのセメント製造拠点において
キルン主煙突から排出される
NOx、SOx、ばいじんの排出原単位
(g/t-clinker)
を
2010年度のレベルに維持します。
※1
■ 2015年度CSIにおける主要業績評価指標(KPI)
気候変動防止に関するマネジメント(CO₂排出・エネルギー使用)
2013年度 2014年度 2015年度
代替原料の利用
2013年度 2014年度 2015年度
排出インベントリを作成するためにCSI CO₂・エネルギープロトコル・ガイドラインを使用している施設の数
排出インベントリを作成するためにCSI CO₂・エネルギープロトコル・ガイドラインを使用している施設の割合
(%)
総排出量
年間CO₂排出量
(百万トン/年)
ネット排出量※2
総排出
※3
(kg-CO₂/t-cementitious)
Cementitious製品 トンあたりのCO₂排出量
ネット排出原単位
購入電力からのCO₂排出量
(百万トン/年)
クリンカ製造のための熱量原単位
(MJ/t-clinker)
代替燃料の比率:キルン使用熱量に占める代替燃料の熱量の割合
(%)
バイオマス燃料の比率:キルン使用熱量に占めるバイオマスの熱量の割合
(%)
クリンカ/セメント係数:CSI CO₂・エネルギープロトコル・ガイドラインにしたがって算出したクリンカ使用量とセメント製造量の比率(%)
代替原料の比率:セメント・クリンカ製造用全原料使用量に占める代替原料の割合
(%、乾燥重量ベースで算出)
安全衛生
22
100
33.6
32.2
715
686
1.6
3,286
13.4
2.3
83.9
16.5
2013年
死亡災害
直接雇用の従業員の死亡件数
(件)
直接雇用の従業員の1万人あたりの死亡災害度数率
間接雇用の従業員
(協力企業と下請企業)
の死亡件数
(件)
第三者
(雇用関係になし)
が含まれる死亡件数
(件)
休業災害
直接雇用の従業員休業災害件数
(件)
直接雇用の従業員の災害度数率
(100万人時あたり)
間接雇用の従業員
(協力企業と下請企業)
の休業災害件数(件)
22
100
33.4
32.1
720
692
1.7
3,305
12.7
2.2
83.9
15.7
2014年
22
100
33.3
31.9
721
692
1.6
3,288
13.3
2.2
84.1
15.1
2015年
1
2.18
1
0
0
0
1
0
0
0
1
0
8
0.77
9
9
0.88
13
12
1.18
5
排出物質のモニタリングと報告
2013年度 2014年度 2015年度
地域社会への影響
2013年度 2014年度 2015年度
連続・不連続測定にかかわらず、モニタリングシステムを有するキルンで製造されたクリンカ量の割合
(%)
NOx
主要排出物質について連続測定器を導入しているキルンにより製造されたクリンカ量の割合
(%)
SOx
ばいじん
NOx
総排出量
(t/年)
SOx
ばいじん
NOx
排出原単位
(g/t-clinker)
SOx
ばいじん
地域社会が関与する計画がある事業所の割合
(%)
鉱山に対して適切な修復計画がある操業中の事業所の割合
(%)
生物多様性の課題に取り組んでいる操業中の事業所の数
水使用
取水量
(千m 3)
排水量
(千m 3)
100
99.6
55.1
99.6
51,430
2,539
1,981
1,289
64
50
100
100
4
淡水
海水
淡水
海水
100
99.9
54.0
99.9
55,503
2,947
1,969
1,404
75
50
100
100
4
100
99.9
52.6
99.9
53,019
1,712
1,674
1,342
43
42
100
100
4
2013年度 2014年度 2015年度
37,242
35,791
35,083
150,402 151,535 148,836
14,632
14,253
13,871
150,402 151,535 148,836
※12015年度のKPI の収集報告は、WBCSD-CSI「セメント CO₂・エネルギープロトコル Ver.3.1」、
「原燃料の選択と使用 Ver.2.0」、
「セメント産業の安全報告 Ver.4.0」、
「排出物質モニタリングVer.2.0」、
「鉱山修復に関するガイドライン」、
「水使用データの算定報告規準Ver.1.0」の各ガイドラインによる。なお、集計対象としている子会社
ならびに関連会社のデータも所有割合によらず100%繰り入れています。
※2 ネット排出:総排出から代替燃料由来の排出を差し引いた値
※3 Cementitious製品:クリンカと混合材の合計
66
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
WBCSD-CSIに基づく主要業績評価指標
(KPI)
の第三者保証報告書
▶
G4-33
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
67
▶
G4-17, 28, 29, 30, 31, 32, 33
編集方針
報告対象範囲
当社のCSR活動をステークホルダーの皆様にご報告するとともに、広く
[対象期間]
ご意見をいただき、活動と開示の充実を図るコミュニケーションツール
2015年度
(2015年4月1日~2016年3月31日)
を目指しています。2016年版は、以下のような試みを行いました。
一部対象期間外の活動内容も時期を明示して掲載しています。
◦前半パート
(P.02-23)は、CSR活動報告のサマリーとしてもご覧い
[対象組織]
ただけるよう編集し、後半パート(P.24-69)では、各分野の活動を
太平洋セメント
(株)
単体を中心に、グループ会社を含みます。
「当社」と
報告しています。
記載の場合は単体を指し、グループ会社にかかわる事項は社名を明記し
◦レポート冒頭は、P.04-05で当社グループが目指す「未来」
、P.06-
ています。
07で「現在」を俯瞰するよう構成しました。P.06-07の「現在」は
「ダッシュボード」ページです。事業概況、財務・非財務の両側面の
◦定量情報の対象組織
パフォーマンス推移と長期目標を統合的に捉え、当社グループの状
連結および以下の3区分で集計しています。区分①・②は、集計範囲の
況を示す「計器盤」としての機能を目指しています。
アイコンを各データに表示しています。
◦GRIガイドラインG4に基づくマテリアリティのレビューを実施し、
重要課題の更新を行いました。
区分①
◦
「CSR情報開示のあり方」をテーマにダイアログを実施しました。
◦活動報告に、GRIガイドラインの開示項目番号と関連するSDGsの
アイコンを表示しました。
単体
太平洋セメント
(株)
単体
区分② WBCSD
WBCSD※1-CSI※2 のKPIのデータ収集範囲:P.07に記載
[参照したガイドライン]
区分③
(その他)
GRI「サステナビリティ・レポーティング・ガイドライン第4版(G4)
」
・事業のマテリアルバランス
(P.48-49)
、廃棄物最終処分量
(P.45)
:
環境省「環境報告ガイドライン2012年版」
P.49に記載
環境省「環境会計ガイドライン2005年版」
・死亡災害件数(P.06)、労働災害データベースへの労働災害登録件数(P.60)
:
当社グループ各事業所
(含む海外)
における従業員、協力会社従業員
[発行時期]
2016年9月
(前回発行:2015年9月、次回発行予定:2017年9月)
[SDGsのアイコン表示について]
※1 WBCSD
(World Business Council for Sustainable Development)
:持続
可能な発展のための世界経済人会議。約200社の国際的な企業をメンバーとし、持
続可能な社会形成のために様々な活動を行っている。
※2 CSI
(Cement Sustainability Initiative)
:セメント産業部会
2015年9月に国連総会で、持続可能な発展のために世界が共有して取
り組む17のゴール「持続可能な開発目標(SDGs)」が設定されました。
本報告書に記載された定量指標を除く記述情報が会社の関連情報と整
このようなグローバル社会の要請に対し、当社グループの各分野の活
合しているかについても、
(株)
サステナビリティ会計事務所による保証
動を確認し、関連するゴールのアイコンを各ページに表示しました。
を実施しています。
GRIガイドラインへの準拠
本報告書は、GRI「サステナビリティ・レポーティング・ガイドライン第4
版
(G4)
」の「中核
(Core)
」に準拠しています。本報告書がG4の開示枠組
みに沿って作成されていることについて、
(株)
サステナビリティ会計事
務所
(所在:東京都千代田区)
による第三者チェックを受けています。GRI
ガイドライン対照表については当社ホームページをご参照ください。
■http://www.taiheiyo-cement.co.jp
CSRの取り組み→ CSRレポート→資料編
Web掲載情報 以下の情報をホームページに掲載しています。 http://www.taiheiyo-cement.co.jp
CSRの取り組み
CSRレポート
お問い合わせ先 太平洋セメント株式会社
資料編
・廃棄物・副産物使用量推移
・人材教育体系図
・アスベストによる健康障害の発生状況
・GRIガイドライン対照表
総務部CSR推進グループ
Tel:03-5531-7335 Fax:03-5531-7552 E-mail:[email protected]
68
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
◦見通しに関する注意事項
本レポートに掲載されている計画、見通し
に関する内容については、現時点で入手
可能な情報に基づき判断した予想であり、
リスクや不確定要因を含んでいます。した
がって、掲載された将来の計画数値、施策
の実現を確約したり、保証するものではあ
りません。
第三者意見
▶
G4-26, 27
ステークホルダー・ダイアログの記事のなかで、先進的
株式会社日本総合研究所 理事
足達 英一郎
な自動車メーカーの長期目標が引用されていますが、それ
氏
は「目標=必達」という捉え方を変換したということ以上
に、炭素制約を前提に排出総量の議論を避けては通れなく
なった時代が到来したことを意味していると考えます。
国が排出総量削減を目指している一方で、各企業は排出
原単位削減のみを目指すという状況に存在するギャップを
どう解消するのか。
「パリ協定」後に、グローバル企業に対
昨年に引き続き、太平洋セメントグループの CSR レポー
トを拝読しました。本書冒頭の Top Commitment で、
する世の中の目線は大きく変化したといえるでしょう。
太平洋セメントグループの CSR レポートは、この数年
COP21 における「パリ協定」に言及したうえで、
「太平洋
で、ほぼそのスタイルとコンテンツが定型化されてきてい
セメントグループも、グローバル社会の一員として、これ
ますが、こうした時代の変遷に伴う世の中の期待に、正面
らの『世界を変革する』取組みに、事業活動を通じて参加
から応えようとする開示部分を増やすことも有効でしょ
していきます」と記述されている点にまず注目しました。
う。例えば、社会基盤を構築するための基礎資材の安定提
世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて 2℃より
供と資源の社会循環という社会的機能を、定量的に徹底検
十分低く保つことを目的に、温室効果ガスに関し主要排出
証し解説するなどが一例です。また、わが国セメント業界
国を含むすべての国が削減目標を 5 年ごとに提出・更新す
のエネルギー効率が世界で断然のトップ水準にあるなどの
る世界の枠組みが動き出したことは、真に画期的な出来事
国際比較も、説得力を増すでしょう。
です。
個別事項としては、実際の取り組み実績に関しては①
国際エネルギー機関(IEA)では、気温上昇を 2 度未満に
廃棄物・副産物の使用原単位が 2015 年度は 2011 年度
抑制するには、温室効果ガスの大気中濃度を 450ppm に
の水準以下に低下してしまった点(41 頁)、②労働災害
抑える必要があるとしています。英国の非政府組織は、こ
登録件数が横ばいである点(60 頁)がやや気がかりでし
の 場 合 の CO₂ 換 算 累 積 量 は 約 3,000Gt-CO₂ で、2015
た。また、開示に関しては①連結子会社全体での目標
年までに既に 2,002Gt-CO₂ が排出されたと推定してい
の設定や KPI の把握がなされている項目が総じて少ない
ます。つまり、気温上昇を 2 度に抑えるためには、残り
点、② 2015 年度 CSR 活動の主な実績に上げながら関連
998Gt-CO₂ しか排出できないというわけです。これが
ページでの記載が全くない項目がある点(29 頁)がやや気
「炭素予算(Carbon Budget)」と呼ばれる排出上限であ
がかりでした。次年度に向けた取り組みの強化と、開示の
り、
「時代は炭素制約経済に突入した」といわれる所以と
拡充をお願いいたします。
なっています。
ご意見をいただいて
足達先生には昨年に引き続き当社の取り組みをグローバルな枠 組みから評価いただき、ありがとうございます。
パラダイムシフトの中、我々が創造している社会価値の科学的な定量評価による情報発信を、より一層進めることが
社会の理解を得るために必要なことを認識しました。また、その定量評価の結果をもって冷徹な自己評価が必要なこ
とも認識しました。これらは、セメント産業の特性上、必ずしも簡単なことではありませんが、常に前進させてまい
ります。現在の取り組みのパフォーマンスが十分でないこと、取り組みをグループ全体へ拡大
すること、などのご指摘に対しても、成果を目に見える形で報告できるよう努力いたします。
今後もセメント産業に対する社会の期待に応えられるようステークホルダーとのコミュニ
ケーションに努めてまいります。本レポートの読者の皆様からも忌憚のないご意見を賜りま
すようお願い申し上げます。
CSR推進担当 取締役 常務執行役員 松島
茂
TAIHEIYO CEMENT CSR REPORT 2016
69
この印刷物に使用して
いる用紙は、森を元気
にするための間伐と間
伐材の有効活用に役立
ちます。
板橋福祉工場
(東京都)
は、身体障がい
者の就労・社会的な自立を目指し運営
されています。
( ISO9001および情報
セキュリティマネジメントシステム取得)
16090027SuT