群馬県立産業技術センター研究報告(2004) ラベルプリンタの自動印刷プログラムの開発支援 石黒 聡† Development Support of Automatic Print Program in Label Printer Satoshi ISHIGURO 当センターで開催した平成15年度研究開発要員研修 FA 技術研究課程「Visual Basic 利用技 術」を受講した企業の方から、Visual Basic を利用してラベルプリンタの自動印刷を行い業務の 効率化を図りたいという相談があった。ラベルプリンタのメーカーからインターネットで公開さ れている開発キットを利用して、Visual Basic でラベルプリンタの自動印刷プログラムを開発支 援し、業務の効率化を行うことができた。 キーワード:ラベルプリンタ、自動印刷、Visual Basic 1 2 はじめに 業務の現状把握 センターで開催した平成15年度研究開発 相談企業に訪問し、担当の方から現状の業 要員研修 FA 技術研究課程「Visual Basic 利 務の流れを説明していただいた。業務の流れ 用技術」を受講した企業の方から、以下のよ は、以下のとおりである。 うな相談が寄せられた。 ①営 業 か ら 送 ら れ て く る 病 室 名 デ ー タ フ ァ 病院のナースコールの病室表示ボードを製 イル(Excel ファイル)を印刷する 造しており、病室名ラベルに専用の印刷機「ラ ② 印刷した紙を基に、病室名の文字により4 ベルプリンタ」を使用し印刷している。現在 種類のラベルのテンプレートに分類する 従業員が納入データとして送られてくる ③ 分類した病室名データを、専用のソフトを Excel ファイルのデータをラベルプリンタ専 使い4種類のテンプレートに手入力する 用のソフトに手で病室名を入力し、必要な病 ④4 種 類 の テ ン プ レ ー ト の 病 室 名 を 印 刷 す 室名を印刷している。 毎日この作業を行っているが、2時間程度 かかるため、この作業を Visual Basic を使っ て自動化し業務の効率化を図りたいという相 談であった。 る ⑤ 印刷された病室名ラベルを Excel ファイル のデータと照合し、印字ミスを確認する ⑥ 梱包し、納入先ラベルを貼る ラベルプリンタは、専用のソフトからのみ Visual Basic からラベルプリンタを印刷制 印刷が可能で、Excel 形式のファイルをサポ 御できるかどうかがポイントであったが、ラ ートしていない。そのため、Excel のデータ ベルプリンタのメーカーのホームページから、 を印刷し、このデータを専用ソフトに手入力 開発キットをダウンロードできることがわか するという作業が発生してしまう。また、手 り、自動印刷プログラムの開発支援ができた 入力しているため、入力ミスが起こることも ので、その概要を報告する。 あり、印刷したラベルと Excel ファイルのデ ータを照合する必要がある。このような作業 を行っているため、2時間程度かかっている †企画情報グループ ことがわかった。 Visual Basic プログラム ActiveX コンポーネント Windows OS 入力 印刷 Excel ファイル ラベル 図1 プログラムの構成 写真1 ラベルプリンタ 3 3.1 プログラムの開発 プログラムの設計 業務の流れを基に、Visual Basic で自動化 するためにプログラムの設計を行った。設計 は、プログラムの入力と出力、内部処理に分 けてまとめた。 図2 自動印刷プログラムの実行画面 ○入力 ・Excel ファイル(病室名) ○出力 ・病室名ラベル ○内部処理 ・Excel ファイル名の取得 ・病室名データ ・テンプレートファイル ・印刷する Excel のセル番号 ・Excel ファイルから病室名を読み込む処理 写真2 自動印刷した4種類のラベル ・ライターへ印刷する処理 ・リストボックスに病室名を登録する処理 3.2 プログラムの開発 ② 病室名の文字により、4種類のテンプレー トに分類し、リストボックスに表示する インターネットで公開されているラベルプ ③ 印刷ボタンを押すと、4種類のテンプレー リンタの開発ツールは、Visual Basic で利用 トを基に、ラベルプリンタにラベルを印刷 できるように部品化(ActiveX コンポーネン する ト化)されている。Visual Basic から ActiveX 自動印刷したラベルを写真2に示す。 コンポーネントを呼び出すことで、簡単に印 刷を制御することができる。プログラムの構 4 開発した結果 成を図 1 に、開発したプログラムの画面を図 2に示す。 プログラムの動作手順は以下のとおりであ 自動印刷プログラムから Excel ファイルを 読み込み、病室名の文字により4種類のテン る。 プレートに分類して、ラベルプリンタに自動 ① 読込ボタンを押すと、病室名データが保存 印刷することができるようになった。このプ されている Excel ファイルを読み込む ログラムにより、従業員の作業の流れが以下 のようになった。 業負担が減り、別の作業が行えるようになっ ① 自動印刷プログラムを起動する た。また、自動印刷プログラムについては、 ② 営業から送られてくる Excel ファイルを読 相談者の方が使いやすいように、さらに自分 み込み、印刷ボタンを押す ③ 梱包し、納入先ラベルを貼る でカスタマイズされており、研修開催による 技術移転もできていると考えられる。 プログラム開発前との作業工程を比較する 他の営業所でも同じラベルプリンタを使っ と、6工程あったものが3工程に減らすこと ているため、今後は各営業所に配布して業務 ができた。1ファイルの作業時間について比 の効率化を行う予定ということである。 較すると、57分かかっていた作業が5分に 短縮することができたということである。 今回のように、センター職員で対応可能な プログラムの開発でも企業の方の相談によっ ては、大幅な業務効率化の支援ができること 5 まとめ ラベルプリンタの自動印刷プログラムを開 が分かった。 参考文献 発支援することで、ラベル印刷の作業時間を 大幅に短縮することができた。そのため、今 まで印刷作業を担当していた従業員の方の作 1) 松田 猛:Visual Basic 6.0 300の技 (19 99)、技術評論社
© Copyright 2024 Paperzz