GPS(全地球的測位システム)の補助的利用による RNAV進入方式

GPS(全地球的測位システム)の補助的利用による
RNAV進入方式(空港)の導入について
平成17年1月18日 航空局技術部運航課
管制保安部保安企画課
1 GPS利用による飛行方式
近年、多くの航空機にGPS受信機が搭載されつつあり、地上の航空保安無線施設
(VOR/DME等)による運航方式と併せて、GPSの補助的利用による運航方式が導入
されつつある。
平成16年3月には、函館及び那覇空港に既存の進入ルート上をGPSを利用して飛
行することを基本とした『GPSオーバーレイ進入方式』を導入したところである。
空港の進入部分にGPSを利用する運航(GPSオーバーレイ進入方式)については、
導入後約1年が経過したこと等から、今般、地上の航空保安無線施設による進入方式
に加え、GPSの補助的利用による進入方式を新たに設定して、これに沿って進入
する『RNAV(GPS)進入方式』を導入することとする。
なお、今回1月20日に導入する空港は、現在、『GPSオーバーレイ進入方式』が設定
されている函館、那覇空港に加え、特に適合機が多数就航し、かつ導入効果も期
待される新千歳空港の3空港とする。また、新潟空港についても、本年5∼6月を目
処に導入準備を進めることとする。
[導入計画]
2)
(現在) 平成16年3月18日 GPSオーバーレイ進入方式 導入(函館、那覇)
3)
(新規) 平成17年1月20日 RNAV(GPS)進入方式 導入(新千歳、函館、
4)
那覇)
2 導入効果
『RNAV(GPS)進入方式』の導入により、導入空港においては、飛行の安定性、経済
性、利便性の観点から、以下のような効果が期待されると考えられる。
(1) 進入ルートの改善により、飛行の安定性向上、パイロットのワークロード軽減等
につながる。
(2) 運航条件の改善により、就航率の向上、定時性の向上等につながる。
(3) [上記1、2の結果、] 飛行時間短縮、使用燃料削減、CO2削減に寄与する。
2.
なお、新千歳、函館、那覇、新潟の各空港における導入効果を別表に示す。
3 今後の展開
今後、RNAV(GPS)進入方式の設定対象空港を順次拡大(展開)していくこととする。
空港の選定にあたっては、現在、非精密進入方式が設定されている国内全空港を検討
対象とし、空港毎の立地条件や障害物件状況、適合機数を把握した上で、導入効果や運
航ニーズ、受入体制等を勘案し、優先順位付けを行いつつ展開していくこととする。
なお、今般、わが国で初めて進入部分にRNAV運航方式を導入することとなるが、進入
部分を含め、全飛行フェーズにおけるRNAV運航方式の導入展開計画については、別途、
「RNAV連絡協議会」において検討を進めているところ。[H16.8.9公表資料参照])
(別添)
GPSの補助的利用によるRNAV(GPS)進入方式(非精密進入)
導入効果
・進入ルートの改善(オフセット角の改善 等)
・運航条件の改善(最低降下高度、着陸時の最低気象条件の改善)
・[上記の結果、] 飛行時間短縮、使用燃料削減、CO2削減
(1)現行
①既存施設による従来型の進入方式
GPS
VOR/DME
VOR/DME
滑走路
②GPSオーバーレイ進入方式
VO
R/
DM
E
滑走路
経路
既存施設(VOR/DME等)により設定された
経路を計器進入。
(2)新規
RNAV(GPS)進入方式
VO
R/
DM
E
経路
既存施設(VOR/DME等)により設定された
①の経路を、GPSから得られる位置情報を
参考にしつつ計器進入。
[備考]GNSSを利用した進入方式
GPS
GPS
MTSAT
VOR/DME
滑走路 VOR
/D
ME
滑走路
経路
既存施設(VOR/DME等)により設定された
経路とは 異なる経路 を、GPSから得られる
位置情報を参考にしつつ計器進入。
参考
MSAS
GPSとその補強システム(MSAS)から得ら
れる位置情報等を利用して計器進入。
将来のGNSS運航方式に対応するもの。
③ M S A S ( MTSAT Satellite Based Augmentation
①GPS(Global Positioning System:全地球的測位シ System:運輸多目的衛星用衛星航法補強システム):
ステム):アメリカ合衆国国防総省により運用される人工 GPSから測位情報を受信して航行しようとする航空機
に 対し 、GPSの精度や信頼性を向上させるための補
衛星を使用した測位システム。
強 情 報 を 運 輸多目的衛星(MTSAT )を中継し て提供
②VOR/DME(VHF Omnidirectional Radio Range
するためのシステム。
/Distance Measuring Equipment : 超 短 波 全 方 向 式
無線標識施設/距離情報提供装置):超短波無線を使用 ④GNSS(Global Navigation Satellite System:全地
して、航空機に方位と距離情報を提供する施設。これによ 球的航法衛星システム):人工衛星を用いて全地球的に
り航空機は、自機の正確な位置が把握できるため、航空 利用することが可能な航法のための測位システム。GPS
等の衛星測位システム、MSAS等の補強システム及びそ
路等のルートを飛行できる。
れらの受信機から構成される。
(別表)新千歳/函館/那覇/新潟空港におけるRNAV(GPS)進入方式の導入効果
新千歳空港
函館空港
那覇空港
新潟空港(予定)
表
:オフセット角(正対進入)、最低降下高度、最低気象条件 の改善
:オフセット角、最低降下高度、最低気象条件(一部機材) の改善
:オフセット角(正対進入) の改善
:オフセット角(正対進入)、最低降下高度、気象条件 の改善
新千歳/函館/那覇/新潟空港における進入ルート及び運航条件の改善状況
運航条件の改善
最低降下高度
最低気象条件(着陸時の飛行視程)
現行→導入後
効果
現行→導入後
効果
700m
620ft→500ft
120ft 2500m→1800m (*1)
新千歳 19L
300m
1700m→1400m (*2)
-
1400m→変更なし (*3,*4)
函館
30
700ft→600ft
100ft 1800m→1600m (*1)
200m
1400m→変更なし (*2,*3,*4)
-
480ft→変更なし
- 2500m→変更なし (*1)
那覇
18
8°→ 0°
8°
-
1800m→変更なし (*2)
正対
1600m→変更なし (*3,*4)
進入
200m
新潟
10
3°→ 0°
3° (予定)720ft→680ft 40ft (予定)3600m→3400m (*1)
200m
(予定)2600m→2400m (*2)
(予定)
正対
200m
(予定)2000m→1800m (*3)
進入
200m
(予定)1600m→1400m (*4)
*1:B747、B777、B767、A300 等、 *2:A320、MD80、MD90 等、 *3:DHC8、YS11 等、 *4 : C172 等
空港名
RWY
進入ルートの改善
オフセット角
現行→導入後 効果
9°→ 0°
9°
正対
進入
28°→ 15° 13°
[参考]
経路
進入
終
最
オフセット
滑走路
中心線
VOR/DME
図1.オフセット角
VOR/DME進入
RNAV(GPS)進入
改善VIS
接地点
進入灯
現状VIS
現状MDA
改善MDA
MDA:Minimum Descent Altitude〔最低降下高度〕
VIS:Visibility〔(飛行)視程〕
図2.運航条件の改善
最低降下高度(MDA)
が下がれば
最低気象条件(VIS)
も改善される
【従来の経路】
非効率的
洋上:27本
HF通信(音声)
効率的
【衛星導入後】
MTSAT
(運輸多
目的衛星)
衛星(MTSAT)による洋上管制
縦間隔の短縮により、ルート上の
処理容量が 約3倍に
更に、横間隔の短縮により、
処理容量は 約4~5倍に
GPS
経路数も増加
非効率的
航空路:約500本
効率的
VOR/DME
VOR/DME
空域の容量拡大・有効利用
(洋上):
MTSAT導入後、管制縦間隔を現行
の120又は80マイルから50マイル、
更に30マイルとし、最終的に管制横
間隔を50マイルから30マイルとする
RNAVを順次導入・展開。
スカイハイウェイ計画(平成19年度)
西行き一方通行化
複線 化
洋上
航空路
空港周辺以外
【現行システム】
【RNAV経路】
移行
中・長期の
計画が必要
(航空路):
(イメージ)
現行のRNAV経路(36本) 一定高度以上をRNAV専用空域
を拡充し、H19年度には一定 スカイハイウェイ(RNAV空域)
FL290以上
高度以上をRNAV専用空域・
経路とする全国的航空路再編
を行う(スカイハイウェイ計画)。
FL290未満
VOR、RNAV空域
東行き一方通行化
ターミナル
進 入
空港周辺
非効率的
ターミナル:約800本
FL290未満
効率的な上昇/降下
効率的
到着経路
柔軟な
経路設定
非効率的
進入:約500本
出発経路
効率的
VOR/DME
MTSAT
GPS
GNSS
VOR/DME
滑走路 VOR
/D
ME
経路
VO
滑走路 R/DM
E経
路
MSAS
RNAV経路
(ターミナル):
H16年9月に、5空港(函館、
大阪、高松、福岡、鹿児島)での
評価運用を開始。
その後、航法性能を規定した
新しいRNAVの導入を検討中。
今回の導入(位置付け)
(進入):
現在、GPSオーバーレイ進入方式を運用中。
今後、H16年度内に、RNAV(GPS)進入方式
を導入し、順次展開するとともに、MTSAT等を
利用したGNSS運航方式も順次導入・展開。
GNSS(Global Navigation Satellite System):全地球的航法衛星システム
「
RNAV連絡協議会」
を設置し、RNAV展開計画(
ロードマップ)
を策定
(参考)RNAV運航の現状と導入展開計画 羽田の再拡張等による将来の航空交通量の増大等に
<H16.8.9付公表資料を時点修正>
対応するため、RNAVの計画的な導入・展開は必須。