ハイレゾ環境を手に入れる! 第1章 USB ヘッドホン&アンプを 手作りする醍醐味 高分解能ディジタル音源と PC オーディオ自作時代 佐藤 尚一 Hisakazu Satou インターネットから音楽データをダウンロードして聴くのが当たり前 の時代です.特集では,高精細なハイレゾ音源を再生する D-A 変換の利 用技術とヘッドホンを鳴らすアンプの作り方を詳しく解説します. メディアの移り変わり→今,ハイレゾに注目が集まる 1920年ごろ 1940年∼ 1980年∼ 10 インチ 非接触媒体の開発が進み,クラシックの長 時間演奏を収録できるように約 74 分の再生 が可 能な CD が 1982 年にリリー スされ, 新譜以外にも,過去の資産を複数統合して 収録した製品も多くリリースしている. 12 インチ 10 インチ 蓄 音 機 の 時 代 に 利 用 さ れ て い た SP フォーマットは大きさや回転数もいろい ろあった.また,大半は落とすと割れる 素材が使われていた.片面に 1 曲という 収録が多かったので 4 枚を 1 組にするよ うなまとまった形態で発売されることも 多く, 「アルバム」の起源となった. 4 電気で動くレコード(バイナル)プレーヤが一般的になり,レコードも割れにくい素 材が使われるようになった.大きさは様々で,10 インチの時代から両面で約 30 分 間の再生が可能な 12 インチ LP レコードの時代に入っていく.レコード溝の振幅の 大きい低音と高域のノイズ対策などのためにイコライザ特性の標準化も 1950 年中 ごろに行われた.外形として 16 インチ /16 回転という長時間再生が可能な製品も あった.また,オートチェンジャに利用するため「シングル」 (45 回転)という愛称 ドーナツ盤は現在でも健在である. 第 1 章 高分解能ディジタル音源と PC オーディオ自作時代 No.4 特集 完全ディジタル ! ダイレクト USB ヘッドホン 日本でも本格的なハイレゾの 時代がやってきた. mora(http://mora.jp/) サイトのトップページ ハイエンドのオー ディ オ・ メー カ LINN は,2006 年にハイレゾの音源 のダウンロード販売を開始した.そ して,2009 年,将来性を見据えた 結果 CD プレーヤの生産を停止した. 2013 年 10 月,ソニーはハイレゾ音 源のダウンロー ド・ サー ビスのス タートとともに,ハイレゾ対応機器 を一斉にそろえて販売を開始した. iTunes Store(Apple) ▶同じようなサービス Xbox Music(日本マイクロソフト) Amazon MP3 音楽ダウンロード(アマゾン) ▶聞き放題のサービス Spotify(月額制と広告付きの無料ストリーミング) Sony Music Unlmited(定額制) 一部ハイレゾのデータもある LP レコード EP レコード CD プレーヤ,カセット・テープ・レコーダのポータブル機器 が販売されるようになって,音楽が個人ベースで室内から室外 に持ち出されるようになった.オーディオ・ブームは過ぎ去 り,個人がヘッドホン経由で音楽を聴く時代に入っている. 16 ビット再生の CD の規格ができた当時から技術の進歩は著 しく,最近の録音スタジオでは 24/32 ビット&ハイサンプリン グの A-D コンバータ機器を使うことが一般的になってきた. No.4 物理媒体は 今後も続く ハイレゾ CD/DVD ハイレゾ専門のダウン ロード・サイト e-onkyo music (http://www. e-onkyo.com/) その他に,ototoy(http://ototoy.jp/) ,HQM STORE(http://hqm-store.com/) ,LINN RECORDS(http://www.linnrecords.com/) , HDtracks(https://www.hdtracks.com/) , eclassical(http://www.eclassical.com/)を 第 7 章で紹介 5 ディジタルの利便性がユーザの心をとらえた 1990 年代から音楽の聴き方が変わった… 手のひらに入ってしまう コンパクト・ディスク. 曲の編集ができる,文字入力 ができるなど,ポータブル CD プレーヤに比べて利便性 が追加された 圧縮ファイルではあるが, 100 曲以上入るところから スタートし,数万曲入る モデルも出てきた.特徴は メディアを交換しなくて よいところ. ネットから 1 曲単位で購入 ができ,PC とポータブル・ プレーヤと共有ができる 何 ゾって ハイレ 1990 年代 MD 登場 2000 年ごろから. ハードディスク,メモリ・オーディオ ? 新型 の水 着 ? 2005 年 iTune Music Store 日本でスタート 人々の心をとらえたのは,ディジタルの利便性だった. 物理媒体の購入ではなく,Youtube やインターネットの無料ストリーミングなどでも音楽を聴くようになった. ほんの一部だがハイレゾというカテゴリが生まれてきた ハイレゾは高価 CD よりよい音で音楽が 聞けますが,高価です. デバイスが高いんですよ ! PC オーディオ・ユーザが育ってくる. 多くはヘッドホンで音楽を聴いている. ヘッドホン・アンプに興味津々. 中身はディジタル・ デバイス. 時間が経つと, デバイスは安価になる 原価は下がる ほとんどのデバイスは,インターネット・ ショップや ebay などで入手できる. プリント基板も,フリーの CAD ツール を使いこなせると,少量発注もできる. 2012 年暮れに,USB DAC で ハイレゾの大きな規格である DSD の USB 伝 送 方 式が決まり一 斉に 製品が出てきた.PCM のハイレゾ を含め,一気にレベルアップした 6 第 1 章 高分解能ディジタル音源と PC オーディオ自作時代 ハイレゾ対 応 機 器を自 分で作る ことができる時代がきた. 高価なオーディオ機器でも,自作 で使う DAC デバイスは同じ製品. No.4 特集 完全ディジタル ! ダイレクト USB ヘッドホン ハイレゾ(High Resolution Audio)とは,大きな入れものである ディジタル・オーディオは,時間と電圧で信号を分割している. ● 電圧方向は 2 N で分割されるので ● 誤ったイメージ 電圧(音圧) イ 電圧方向に 2(ビット数)分割 16ビットでも216=65,536もの 分割数になる 時間 Nビット数 時間軸方向に1秒当たりサンプリング周波数分割 画像のピクセルとは異なる fs(Hz) つまり… 10 5 タテ,ヨコのビット数が分割数 CD の 規 格 は,LP レ コ ー ド時代に比べれば,雑音も 少なく,長時間のデータを 保存できるようになった. ハイレゾ 分割細かさ fs 48kHz 96kHz × 2倍 ……… 8=256倍 N 16ビット 24ビット × 2 ……… 12 6 標準 ハイ・ ビット 512倍 最初の民生向けディジタル・オーディオである DAT/CD の規格. 48kHz(DAT) ,44.1kHz(CD) ・16 ビットを標準とする. 「標準」よりf s ,N の大きい規格をハイレゾと呼ぶが,各社の定義は異なる. 通常,f s >88.2kHz(44.1kHz × 2),N >24 ビットとなる. このように,ハイレゾとは,入れ物の大きさの違いだけだが… ハイ・ サンプリング ハイレゾの規 格に収 納 で き る デ ー タ は,CD に比べて比 較にならな いほどたくさんに! 自然界や楽器の音は,DAT のような規格(16 ビット) には入りきらないほどの音 量レベル差がある CD の規格に入れるには, 微妙なデータは捨てられて しまうかもしれない ハイレゾの録音システムだと,自 然界のいろいろな帯域を,ほぼ全 部収録できる可能性が高いし,配 信時もハイレゾだと,欠落する データも少ないかもしれない 倍音多し No.4 7 「ハイレゾ対応 USB 直結完全ディジタル・ 自作するハイレゾ対応装置 ミュージック・サーバ」 「DSD(1ビットΔΣ) アシンクロナス・モード対応 ハイレゾ対応 USB 直結 完全ディジタル・ ヘッドホン Audio DSP オーバサンプリング & インターポーレー ション 7 バンド・パラメトリック・イコライザま たは 5 バンド・バイクワッド IIR フィルタ クロスオーバ・フィルタ ダイナミック・レンジ・コンプレッサ ハイパス・フィルタ ディジタル信号処理によるボリューム & ミュート ΔΣ変調 マルチコイル・ドライバ 第3章では, 実際にどのようなデータがPC (ホスト) から送られ,アシンクロナス・モードではどうい うやり取りが行われているかを詳細に解説. USB ケーブルを流れる ハイレゾ・データが どのようなものかは, 第 2 章で解説. PC だけでなく,スマホや タブレットでもハイレゾ 音源が再生できる. 第 4 章では,ヘッドホンの内部構造と測定まで を含めた解説. ① ハウジングに プリント基板 を取り付ける ② バッフル をねじで 固定する ③ 各ケーブル 2 芯のコード白 をはんだ 付けする 2 芯のコード橙 Dnote 搭載 プリント基板 4 芯のコード青 ハウジング 完全ディジタル・ヘッド ホンは組み立て式 8 第 1 章 高分解能ディジタル音源と PC オーディオ自作時代 4 芯のコード白 4 芯のコード橙 4 芯のコード黒 No.4 特集 完全ディジタル ! ダイレクト USB ヘッドホン ヘッドホン」 「手のひらに乗るマイコン・ボード Raspberry Pi で 対応USBヘッドホン・アンプの製作」 ● ダウンロード・データは PC がなくてもハイレゾ再生ができる装置を作る 低価格で入手できる Raspberry Pi マイコン・ボードをミュージック・サーバに仕立てよう ! Raspberry Pi が ミュージック・サーバ Linux 上 に MPD(Music Player Daemon) 無線 ルータ 止めてある PC スマホで操作 や Web サーバなど必要なもの一式がまと められていて簡単に Raspberry Pi をミュー ジック・サーバに仕立てられるディストリ ビューション Volumio を用いた. 第 6 章でインストールと使い方を解説 ● DSD(1 ビットΔΣ)対応 USB ヘッドホン・アンプの製作 第 5 章では,機能ブロックごとにモジュール化した 基板構成でアップグレードやカスタマイズにも容易 に対応できる構造を狙った DSD 対応の DAC& ヘッ ドホン・アンプを作る.各モジュールは同じ形状. 32 ビット・データに対応できる DAC チップ PCM 1795 を使用し,ヘッドホン・アンプは OP アンプの 後ろに強力なバッファ LME49600 を用いた. DSD のプレーヤは Foobar2000 を用い,必要なド ライバ類のインストールも丁寧に説明. ケースに入れた状態 第 5 章で使った各モジュール 制御ボード 電源ボード DAC ボード ヘッドホン・アンプ・ ボード ◀ DSD/PCM 対応ボード イタリアの Amanero 社 COMBO384 USB DDC モジュール No.4 9 ① USB DAC の再生設定を,ディジタル音源に合わ Audio Application Audio data HAL ユーザ・モード カーネル・モード Mac OS X Core Audio 32ビット浮動小数点 (Mac OS X内部表現) USB Audio Driver Mix buffer(32ビット浮動小数点) USB DAC対応 フォーマットへ変換 Sample buffer(USB DAC Spec.) USB OUT 96 USB DAC (USBデバイス) 図 2-19 Mac OS X 内部のオーディオ・データ処理 Mac OS X では,オーディオ・データ(16 ビット整数形式な ど)を,すべて 32 ビット浮動小数点形式へ変換して扱うしく みとなっており,原理的にこの変換処理を迂回することがで できない.32 ビット浮動小数点形式は,仮数部が 24 ビット なので,24 ビット整数形式であれば,ビット・パーフェク ト転送が可能となる. DAC 対応形式(16 ビット整数形式など)へ変換してか ら USB 転送を行います. 例えば,32 ビット整数形式の PCM データを再生し た場合,OS 内部で 32 ビット浮動小数点形式に変換さ れるため,USB DAC 側が 32 ビット整数形式に対応し ていてもビット・パーフェクトで渡すことができませ ん.ただ,32 ビット浮動小数点形式は,仮数部が 24 ビットなので,24 ビット整数形式の PCM データであ れば情報の欠落なく,相互変換が可能です. この事実を利用して,次のルールによりオーディオ 再生制御を行うことで,カーネル内部のミキシング処 理を抑制し,最大 24 ビットのビット・パーフェクト 転送が可能となります. せる 量子化ビット数,サンプリング周波数の合わせこ 量子化ビット数,サンプリング周波数の合わせこ みが発生するとビット・パーフェクトが達成できま せん.ディジタル音源と USB DAC 再生設定を一致 させておくと,変換処理が不要となるため,この問 題を回避できます. ② hog モードを有効にする オーディオ再生中に,ほかのアプリケーションが オーディオ再生中に,ほかのアプリケーションが オーディオ再生を行うとミキシングされてしまい ビット・パーフェクトが達成できません.hog モー ドを有効にすると,ほかのアプリケーションからの オーディオ出力を禁止できるため,この問題を回避 できます. 2-5 DSD の転送方式 DSD 音 源 を 転 送 す る 方 法 と し て は,DoP 方 式 と ASIO native 方式があります. ● DoP(DSD Audio over PCM Frames) 方式 Playback Design 社の Andreas Koch 氏を中心とし たメンバにより規格化された方式で,下記 URL より 仕様書を入手できます[参考文献(18) ]. h t t p : / / d s d - g u i d e . c o m / d o p - o p e n standard ◆ パケット・フォーマット DoP 方 式 で は, 図 2-20 の よ う に 24 ビ ッ ト PCM フ レ ー ム 内 に 8 ビ ッ ト DSD マ ー カ と 16 サ ン プ ル(16 ビット)の DSD データを最上位ビットから時系列順に 格納して,通常の PCM 再生と同じ方法で USB DAC へ転送します. データを受け取った USB DAC 側は,この DSD マー カをチェックして,PCM or DSD どちらのデータか を判別し,再生制御を行います.DSD マーカの値は, 0x05,0xFA となっており,1 サンプルごとに切り替 える仕様となっています.DSD マーカの値は,間違っ て DoP 非対応の USB DAC で再生しても機器故障など keyword Core Audio Mac OS X に搭載されているオー ディオ,および MIDI を扱うための機能の総称. オーディオ・ユニット Core Audio で,エフェ AUHAL ユニット マイクや USB DAC など,オー ディオ機器制御を行うためのオーディオ・ユニット. HAL ハ ー ド ウ ェ ア 抽 象 化 層(Hardware クト処理などディジタル・オーディオ処理を行うソ フトウェア・プラグインのこと. Abstraction Layer)のこと.Mac OS Xは,HALによ りオーディオ機器を統一的に扱えるようにしている. 22 第 2 章 ハイレゾ USB D-A コンバータのメカニズム No.4 DSDデータの値 特集 完全ディジタル ! ダイレクト USB ヘッドホン 1 チャネル分の PCM フレーム 1 0 時間 1001011010010101 16サンプルの DSDデータを 最上位ビットから 時系列順に並べる …… dm77 dm6 … dm1 dm0 t0 DSDマーカ(0x05 or 0xFA) t1 t2 … 2チャネルDSDデータを,2チャネル24ビットPCMフレーム(サブスロッ ト 4 バイト)に DoP 方式で格納したときの USB パケット・ダンプ.太線 枠が 1 チャネル分の PCM フレームとなっており,PCM フレーム二つご t14 t15 DSDデータ16サンプル 最下位 ビット 図 2-20 DoP 方式の 1 サンプル DoP 方式では,24 ビット PCM フレーム内に 8 ビット DSD マーカと 16 サンプル(16 ビット)の DSD データを最上位ビットから時系列順に格納 して転送する.USB DAC は,この DSD マーカを判定することで,DSD or PCM の再生制御を行う. の障害が発生しないよう小さな音となるように配慮さ れています. 例 え ば,2 チ ャ ネ ル DSD デ ー タ を,2 チ ャ ネ ル 24 ビット PCM(サブスロット 4 バイト)へ DoP 方式で格 納する場合,PCM フレーム二つごとに DSD マーカを 切り替える動作となります(図 2-21). ◆ 再生周波数 24 ビット PCM 1 サンプル当たり,1 ビット DSD 16 サンプルを格納できるので,DoP 方式では下記サンプ リング周波数で転送することになります. DSD64… DSD64…・24ビット,176.4kHz(=2.8224MHz÷16) DSD128…24ビット,352.8kHz DSD128…24ビット,352.8kHz(=5.6448MHz÷16) ◆ マーカ判定処理 DoP 方 式 の オ ー デ ィ オ・ デ ー タ は, 通 常 の PCM データとしてとりうる値なので,仕様書では,下記の ようなアルゴリズムで,PCM or DSD 判定を実装す ることが推奨されています. ▶ ▶ DSD マーカが 32 サンプル連続で検出された場 合,DSD 再生へ切り替える ▶ ▶ 1 チャネルでも DSD マーカ以外のデータが検 出されたら,PCM 再生へ切り替える 例えば,DSD64 を 24 ビット(サブフレーム 3 バイ ト) ,176.4kHz で転送する場合,1 秒間に 1M バイト以 上(= 2 チャネル× 24 ビット /8 × 176400Hz)のデータ No.4 DSDマーカ 0xFA とに,DSD マーカ(0x05,0xFA)を切り替えているようすがわかる. 24ビットPCMフレーム 最上位 ビット DSDマーカ 0x05 図 2-21 DoP 方式の USB パケットをダンプした例 を処理する必要があります.このデータをリアルタイ ムに PCM/DSD データへ選り分ける必要があるため, 高速なマーカ判定処理が必要となります. ◆ PC 側再生処理について DoP 方式では,マーカ含めて 24 ビットのビット・ パ ー フ ェ ク ト 転 送 が 必 要 と な り ま す. そ の た め, Windows,Mac OS X では下記オーディオ再生に対応 したアプリケーションにて DoP 再生を実現すること になります. Windows Windows ………… WASAPI( 排 他 モ ー ド ),ASIO, カーネル・ストリーミング Mac Mac OS X ……… Core Audio また,DSD 音源にはマーカは含まれていないので, 再生アプリケーション側でマーカを付ける必要があり ます. ● ASIO native 方式 ASIO 2.1 より,DSD データを扱えるように API 仕 様が拡張されました.ASIO は API 仕様のみの規定と なっているので,ASIO ドライバの実装方法について は,メーカに委ねられています.そのため,ASIO ド ライバから USB DAC 機器へ DSD データを届けるし くみについては,機器メーカによって異なります.こ の仕様は一般に公開されていません. 国 内 で は, イ ン タ ー フ ェ イ ス( 株 )が DoP/ASIO native に対応したソリューションを販売しています . http://www.itf.co.jp/prod/audio_ http://www.itf.co.jp/prod/audio_ solution/dsd-usb-streaming 参考文献 参 考 文 献の一 覧はトラ技エレキ工 房 No.4 サポー ト・ ペー ジ (http://www.eleki-jack.com/eleki-koubou/) に 掲載してあります. 2-5 DSD の転送方式 23 PC からボイス・コイルまでディジタルで! 第3章 ハイレゾ音源を耳元で! 完全ディジタル USB DAC アンプ IC Dnote 落合 興一郎 Koichiro Ochiai 本章では,96kHz/24 ビット PCM のハイレゾ音源まで対応し,USB イ ンターフェースで PC やスマホとつないでフル・ディジタルでヘッドホン (Digital Signal Processing for ( スピー カ )を駆 動する IC Dnote( * 1) Digital Speaker)を紹介します. 複数のボイス・コイルをもつマルチ・コイル・スピーカをディジタ ル・データのまま駆動できるのが特徴ですが,内部に搭載した DSP によ るイコライザを使って特性を変更すること(ソフトウェアは開発中)がで きるので,自分に合ったヘッドホンにすることができます. 3-1 ディジタル信号でスピーカを直接駆動します.ここで 使われるスピーカは従来のシステムで使用されるス ピーカのように一つのボイス・コイルを内蔵するので はなく,図 3-3 に示すように複数のボイス・コイルを 内蔵しています. 例えば,3 ビットでスピーカを駆動するとします. それぞれのボイス・コイルは+端子と−端子をもつの で,0(スピーカへの入力信号は+端子:0,−端子: 0) ,1(スピーカへの入力信号は+端子:1,−端子: 0) ,− 1(スピーカへの入力信号は+端子:0,−端 子:1)の 3 種類の組み合わせをもち,3 コイル分すべ てを足し合わせると,ゼロを中心に± 3 のディジタル 信号を入力していることになります. これでは音が出るようには思えませんが,実際には スピーカのもつインダクタンス成分によるローパス・ フィルタ効果と,スピーカ自身がもつ機械的な動作に Dnote を使ったオーディオ・ システム ここではフルディジタル・スピーカ,フルディジタ ル・ヘッドホンの構成や特徴などを解説していきたい と思います. 図 3-1 に示すのは,私たちが普段よく目にする従来 のスピーカを使ったオーディオ・システムです.何ら かのメディアに記録されたディジタル・オーディオ・ データは,ディジタル信号処理,D-A 変換,フィルタ リング,アナログ・アンプやディジタル・アンプによ る電力増幅を経て,アナログ信号をスピーカに入力 し,電気信号を空気振動に変換することで実際に音と して聴くことができます. 図 3-2 に Dnote を使ったオーディオ・システムを示 します.信号ラインにアナログ回路がなく,複数の 入力:音楽再生 プレーヤ アナログ 1.8V/3.3V 3.3V/5V 5∼10V 5∼20V 信号処理回路 (ディジタル) D-A コンバータ (DAC) ボリュームや セレクタ・ アンプ パワー・ アンプ (AB級,D級) スピーカや ヘッドホン 出力 図 3-1 従来のオーディオ・システム PCM 信号を信号処理し D-A 変換してアナログ回路やフィルタを通過してパワー・アンプに入力される.D 級アンプの場合は,アナログ信号を PWM 変 調して 1 ビットのディジタル信号に変換しLC フィルタでアナログ信号に変換する. (* 1): Dnote を設計・製造する(株)Trigence Semiconductor(以下,トライジェンス)は,フルディジタル・スピーカ駆動のための信 号処理技術を開発し,駆動用 IC の製造および販売を行う産学連携の半導体ベンチャ企業.トライジェンスが特許を保有するこの技術は 「Dnote」として登録商標されている. 24 第 3 章 完全ディジタル USB DAC アンプ IC Dnote No.4 特集 完全ディジタル ! ダイレクト USB ヘッドホン Appendix2 ハイレゾ音源の再生環境…Windows/Mac OS X/iOS/Android 私たちが普段使っているオーディオ機器はハイレゾ 音源を再生できないことが多く,音源を入手する場合 にはファイル・サイズが大きいこともあり,ネット経 由でダウンロードする必要があります.そのファイル を PC 上で再生する際には,図 1 に示すようにハイレ ゾ対応の再生プレーヤと USB DAC(USB 入力が可能 で,アナログ・ラインもしくはヘッドホン出力をもっ た機器)が必要になります. そのため購入機器や再生プレーヤの選択,機器同士 の接続で煩雑さを感じる,置き場所に困る,複数の電 源を確保しにくいという方も多いと思います.今回紹 介する Dnote7U を内蔵したヘッドホンは,図 2 のよう に PC やポータブル・オーディオ機器(スマートホン を含む)と USB ケーブルで接続するだけで,ハイレゾ 音源を再生することができます.また,単に再生する だけではなく I2C 経由で内蔵する Dnote7U に様々な設 定を行い,世界に一つしかない「My ヘッドホン」を作 ることができます. パソコンやスマートホンを含むポータブル・オー ディオ機器で,ハイレゾ音源を再生するには次に示す 条件を満たすことが必須です. ▶ ▶再生機器が USB ホスト機能に対応している. ▶ ▶搭載されている OS,もしくはアプリが USB オーディオ出力に対応している. ▶ ▶再生用のソフトウェアが,ハイレゾ音源の フォーマットに対応している. 一般的なパソコン(Windows OS,Mac OS)は,こ 落合 興一郎 Koichiro Ochiai れらを意識することなく USB 端子に接続しインス トールされている再生プレーヤで音楽を聴くことがで き ま す が, ポ ー タ ブ ル・ オ ー デ ィ オ 機 器(Android OS,iOS)は,様々な制限があり,特定の条件下での 再生となります.本項では,様々な機器でハイレゾ音 源を再生可能であることや,より高音質な再生方法が あることを知ってもらい,いつでもどこでもハイレゾ 音源を楽しむ方法を紹介します ● PC でのハイレゾ音源の楽しみ方 Windows では音楽再生用のソフトとして Windows Media Player(WMP)が,Mac では iTunes がインス トールされています.例えば Windows では Dnote7U 内蔵のヘッドホンを USB 端子に接続し,コントロー ルパネルのサウンドの項目から,サウンド・デバイス の と こ ろ を「Dnote Digital Speaker」に 選 択 す る と WMP で再生できます(図 3). しかし,PC の設定によっては本来のハイレゾ音源 の性能を出し切れていない可能性があります.ここ で,パソコンに保存されている音楽データが,USB ハイレゾ・ オーディオ・ プレーヤ ヘッドホン スマート ホン ヘッドホン 図 2 Dnote7U 内蔵のヘッドホンの接続例 スピーカ USB バス・パワーで動作し USB オーディオ入力に対応するため,ケー ブルを接続するだけで再生が可能になる. ハイレゾ・ オーディオ・ プレーヤ USB DAC スピーカ・ アンプ スマートホン ヘッドホン USB DAC内蔵 ヘッドホン・アンプ 図 1 一般的な機器の接続例 ハイレゾ音源を楽しむためには USB DAC が必要となり煩雑さが伴う. 携帯する際にも電池が必要になることが多い. No.4 図 3 サウンド・デバイス(左)の選択と Windows Media Player (右)での再生 PC でのハイレゾ音源の楽しみ方 57 このPDFは,CQ出版社発売の「トラ技エレキ工房 No.4」の一部見本です. 内容・購入方法などにつきましては以下のホームページをご覧下さい. 内容 http://shop.cqpub.co.jp/hanbai/books/MTR/MTRZ201403.htm 購入方法 http://www.cqpub.co.jp/order.htm
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