4.1 現地調査対象国の選定

農業生産環境対策事業
4.有望な肥料原料産出国の探索
本章では既往統計資料等を基にした分析により、有望な肥料原料産出国を探索し、現
地調査対象国2カ国及び文献調査対象国を選定する。さらに、文献調査対象国について
は、国の概況、投資環境、開発動向等の調査結果を記述する。
4.1 現地調査対象国の選定
4.1.1
選定の視点
現地調査対象国の選定にあたっては、本事業の目的に照らし合わせて、わが国にと
って新規の調達国であることが基本的な条件である。さらに、表 4.1-1 に示すような
視点により選定することとした。
表 4.1-1 調査対象国の評価の視点
項目
評価の視点
埋蔵量
鉱山開発状況
埋蔵量が報告されているか。
鉱山や開発・生産に必要なインフラが整備されているか。
わが国が参入する余地があるか。
他国により独占されていないか。
投資環境が整備されているか。
生産量は自国の消費量を上回っているか。
わが国での利用に適した品質があるか。
陸上輸送コスト、海上輸送コストは安価か。
政権の安定性、政策継続性、戦争・内乱・テロ等の危険性はどうか。
参入余地
投資環境
輸出余力
品質
輸送コスト
地政学的リスク
4.1.2
埋蔵量等の状況
リン、カリそれぞれについて、主要国の埋蔵量、生産量、輸出量、消費量等につい
て整理した。リンについては表 4.1-2 に、カリについては表 4.1-3 にそれぞれ示す。
4.1.3
生産・開発の状況
リン、カリそれぞれについて、主要国の開発動向や生産動向について整理した。リ
ンについては図 4.1-1 に、カリについては図 4.1-2 にそれぞれ示す。
- 24 -
60,200
1,800
2,466
5,281
2,237
26,400
2200000
1,800,000
1,500,000
1,500,000
1,400,000
シリア
ヨルダン
南アフリカ
アメリカ合衆国
ロシア
6,350
2,697
650
7,398
5,000
2,800
850
700
340,000
180000
180,000
100,000
100,000
82,000
60,000
5,000
イスラエル
セネガル
チュニジア
エジプト
オーストラリア
トーゴ
カナダ
- 25 -
鉱床の報告がある国
―
―
―
―
―
―
―
―
―
ニュージーランド
ウガンダ
マリ
モザンビーク
2
1
―
―
パキスタン
インドネシア
―
2
―
フィリピン
ナミビア
2
―
ブルキナファソ
―
4
―
タイ
―
8
―
タンザニア
サウジアラビア
30
―
イラク
―
30
―
コロンビア
―
30
―
ジンバブエ
モンゴル
38
40
―
スリランカ
35
45
―
ナウル
―
300
―
北朝鮮
―
330
―
イラン
ペルー
400
チリ
600
―
825
―
フィンランド
―
1,225
―
カザフスタン
ベネズエラ
1,230
―
インド
ウズベキスタン
2,000
1,443
―
―
埋蔵量の報告がない ベトナム
が、生産量の報告が
メキシコ
ある国
10,000
1,300,000
ブラジル
アルジェリア
23,000
生産量 (2009)
USGS MYB 2009
(鉱石1,000t)
3,700,000
資源ポテンシャル
経済埋蔵量
USGS MCS 2011
(鉱石1,000t)
50,000,000
埋蔵量の報告がある モロッコ
国
中国
国名
―
―
―
―
―
―
―
―
―
0.2 米国
764.7(2007) インド(2007)
0.5 インド
2,053.6 インドネシア
689.4 ポーランド
65.3 スペイン
901.8 インド
1.7 パラグアイ
1,701.6 リトアニア
247.4 カナダ
25.1 日本
4,296.8 インド
2473.0(2008) レバノン(2008)
619.3 ブラジル
882.6 韓国
10,254.2 アメリカ
リン鉱石輸出入の状況
輸出量
主要輸出先
(2010)
(2010)
(鉱石1,000t)
(鉱石1,000t)
34.8%
27.1%
30.0%
30.1%
33.3%
26.7%
32.0%
25.7%
28.9%
38.3%
37.8%
31.7%
12.1%
28.8%
23.3%
36.4%
22.9%
52.0%
30.0%
―
―
―
―
―
0.7 マレーシア
0.0 ケニア
―
―
―
―
―
―
―
―
―
0.0(2008) 南アフリカ(2008)
―
0.0(2007) ロシア(2007)
10.8 日本
0.2 インド
0.0(2009) 中国(2009)
―
―
1.4 エクアドル
0.0 ザンビア
0.4 ボリビア
618.0 米国
0.0(2009) ドイツ(2009)
―
―
0.7 パキスタン
0.1(2009) ブラジル(2009)
―
52.0 ノルウェー
195.3 トルクメニスタン
0.8(2009) タイ(2009)
0.1 グアテマラ
30.0% $23,587,560 (2009) インド(2009)
28.6%
35.3%
23.0%
30.0%
29.7%
30.8%
27.4%
35.4%
36.5%
28.9%
36.2%
30.7%
41.8%
30.0%
29.9%
32.0%
品質 (2009)
USGS MYB 2009
P2O5(%)
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
0.0
0.0
7.7
0.2
0.0
0.7
0.0
0.7
0.0
0.4
241.0
0.0
0.6
0.1
52.0
84.9
0.2
0.1
$18,327,500(2009)
0.2
583.7
0.2
959.6
419.0
37.6
308.3
1.6
651.6
116.2
25.0
2,933.1
621.1
144.0
655.1
2,683.1
主要輸出先輸出量
(2010)
(鉱石1,000t)
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
0.2
9.1
7.0
54.2
19.0
158.4
62.5
日本への輸出量
(2010)
(鉱石1,000t)
―
―
―
―
―
0
6
4
326
0
0
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
507
0
98%
662%
5328%
3094%
12759%
80%
928%
229%
449%
1192%
2839%
141%
1%
5%
0%
17%
54%
4%
24%
9%
11%
29%
12%
171%
75%
479%
1073%
9%
221%
87%
36%
15000000%
―
―
948
61
13
255
15
18
200
41
96
100
53
343
67
187
63
26
7282
196
689
562
0
657
227
41
6
6
2800
393
3336
181
86
19
12800
リン鉱石生産量
/リン肥料消費量
(2009) FAOSTAT
(P2O5換算1,000t) [%]
リン肥料消費量
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
円借款
&技術協力
○
○
○
○
○
○
○
○
○
技術協力
可能
日本との既存協力関係
輸入原料安定確保調査等事業
表 4.1-2 リンの主要国
農業生産環境対策事業
表 4.1-3 カリの主要国
資源量
国名
輸出入量
消費量
経済埋蔵量
生産量
輸出量
主要輸出先
主要輸出先
日本への
消費量
2009
2009
2010
2010
への輸出量
輸出量
2009
K2O kt
K2O kt
肥料 kt
肥料 kt
肥料 kt
K2O kt
日本との
協力関係
円借款&
技術
技術協力
協力
埋蔵量の報告のある国
カナダ
4,400,000
4,318
15,488.4
ロシア
3,300,000
3,727
9,222.5
アメリカ
9122.4
6.8
108
インド
2517.6
50.7
271
ベラルーシ
750,000
2,485
6,946.8
ブラジル
1941.1
2.2
773
ドイツ
150,000
1,800
3,647.2
ブラジル
967.3
0.0
363
中国
210,000
3,000
82.9
ベトナム
30.9
8.4
4,021
米国
130,000
700
3,272.0
ブラジル
741.2
466.4
3,407
40,000
683
862.6
インド
307.3
19.5
484
○
イスラエル
40,000
2,100
4.1
○
チリ
70,000
692
1,162.2
300,000
385
21.8
ヨルダン
ブラジル
ウクライナ
チリ
パラグアイ
4.1
―
18
426.2
―
278
14.4
0.0
2,394
○
○
○
○
埋蔵量の報告がないが、生産量の報告がある国
スペイン
―
435
618.4
英国
―
427
3.8
ウクライナ
―
12
2.2
オランダ
144.5
―
166
アイルランド
1.8
―
263
リトアニア
1.3
―
73
○
○
鉱床の報告がある国
モンゴル
―
―
―
0
オーストラリア
―
―
―
0.7
東ティモール
―
0.5
―
52
カザフスタン
―
―
0.2
ウズベキスタン
0.1
―
1
○
ラオス
―
―
タイ
―
―
1.4
ラオス
エチオピア
―
―
0.1
アラブ首長国連邦
エリトリア
―
―
アルゼンチン
―
―
―
―
―
―
0.5
パラグアイ
- 26 -
―
―
―
―
○
0.9
―
168
○
0.1
―
0
○
―
0
○
―
14
○
―
0.3
トーゴ
- 27 -
【開発】
豪企業によりオフショア鉱床
(73.9Mt、20.57% )F S 調査中
南アフリカ
イラク
シリア
サウジ
アラビア
ヨルダン
タンザニア
ジンバブエ
ナミビア
ブルキナファソ
マリ
エジプト
イスラエル
ウガンダ
チュニジア
アルジェリア
【開発】
豪企業が開発中。
カナダ企業が探鉱中。
セネガル
モロッコ
【生産拡大】
モロッコO C P は年産
28Mt→54Mtに2015年までに
増強見込み
【生産拡大】
Y araによりS iilinjarvi鉱山拡張
(1Mt→1.3Mt)
スリランカ
インド
パキスタン
ベトナム
ロシア
フィリピン
北朝鮮
【開発】
豪 Minemakersが北部準州Wonarah
鉱山(606Mt、15.7% )開発中(アジア、
NZ 向け)
カナダ
メキシコ
米国
40,000鉱石1,000t
20,000
10,000
1,000
【開発】
NZ C hatham R ock P hosphate社
が南島オフショア鉱床開発中
【開発】
・豪 Aguia R esources が北東部パライバ州で試掘
・Vale子会社がミナスジェライス州でリン鉱石
2.2Mtとリン酸1.4Mt生産プラント開発開始
【生産拡大】
Mos aicはフロリダ州で
鉱山拡張計画
ニュージーランド
ナウル
【開発】
S unkar R es ources は北西部
C hilis aiプロジェクトで資源量評価を
実施
オーストラリア
インドネシア
中国
モンゴル
【開発】
ベルギー系企業が東部の鉱山の開
発計画(資源量:>230Mt)
【再開】
リン鉱山・リン酸プラント再
開計画(資源量1,700Mt、
21% とも言われる)
イラン
タイ
カザフスタン
ウズベキスタン
フィンランド
【生産拡大】
K az phos phate L L C . により、リン鉱
石生産拡張(1Mt→2Mt)、リン酸生
産拡張(180kt→360kt)
チリ
ペルー
ブラジル
ベネズエラ
コロンビア
輸入原料安定確保調査等事業
図 4.1-1 リンの開発動向
スペイン
英国
【開発】
英本拠とするS irius Minerals 社
が、Y orkプロジェクトで掘削開始
カザフスタン
- 28 -
ラオス
中国
モンゴル
【開発】
P otash Westが西オーストラリアで
試掘開始(50~70Mt)
【開発】
カナダ企業Allana P otas hがD allolプ
ロジェクトF S 調査に向け、鉱区取得
ヨルダン
イスラエル
ウクライナ
ベラルーシ
エチオピア
ドイツ
【開発】
豪企業により開発中
【開発】
中国Q inghai Ins titute of S alt L akes が鉱山開発中
カナダ
米国
K2O1,000t
4,000肥料1,000t
2,000
1,000
500
【開発】
・ValeがMendoz a地区の鉱山開発
(R io C oloradoプロジェクト)
・豪O rocobreが北西部L i‐K プロジェ
クトF S 調査中(4.4Mt)
【開発】
豪Aguia R es ources が南
東部で掘削開始
【開発】
・ユタ州で米Mes a E xplorationが鉱
山開発中
・アリゾナ州で米P as s port P otash
が鉱区拡張
【生産拡大】
P otash、Mos aic、Agriumは
いずれも生産能力拡大中
【開発】
カナダ企業E ncanto P otas hが、サ
スカチュワン州のMuskowekanの
資源量評価(1.44Mt、18.6% )
【開発】
豪G eneral Mining社が北西部で掘
削開始
オーストラリア
ロシア
チリ
アルゼンチン
ブラジル
農業生産環境対策事業
図 4.1-2 カリの開発動向
輸入原料安定確保調査等事業
4.1.4
調査対象国の選定
前項までの情報をもとにして、表 4.1-4 に示す国を調査対象候補国として整理した。
このうちオーストラリアとモンゴルについては、リンとカリの両方の埋蔵が見込ま
れること、わが国から比較的近いことから、現地調査の対象国とした。調査結果は、
次章以降に整理する。
カザフスタン、サウジアラビア、ナミビア、ラオスについては、文献により基礎情
報(国の概況、投資環境、開発動向等)を調査することとした。調査結果は、次節以
降に整理する。
ニュージーランド、ウガンダ、マリ、タイ、エチオピア、アルゼンチンについては、
埋蔵量の報告がなされているものの、わが国から遠いため輸送コストの面で不利であ
ること、住民による反対運動など今後の開発に対して明確な障害が存在すること、詳
細な情報入手が困難であること等により、調査対象からはずした。
- 29 -
農業生産環境対策事業
表 4.1-4 調査対象候補国
国名
調査
対象
資源
種別
オーストラリア
現地
調査
リン
カリ
モンゴル
現地
調査
リン
カリ
カザフスタン
文献
調査
リン
カリ
サウジアラビア
文献
調査
リン
ナミビア
文献
調査
リン
ラオス
文献
調査
カリ
ニュージーランド
-
リン
ウガンダ
-
リン
マリ
-
リン
タイ
-
カリ
エチオピア
-
カリ
アルゼンチン
-
カリ
状況
• わが国から比較的近く、良好な関係である。
• 資源国として投資環境等が整備されている。
• リンとカリの両方の資源を有する。
• リンは、主に北部で複数プロジェクトが進行している。
• カリは、西部で開発の動きがある。
• わが国から近く、良好な関係である。
• リンとカリの両方の資源を有する。
• リン資源量は豊富にあると見られる。
• カリは鉱床情報に乏しい。豪企業が開発に乗り出して
いる。
• リンとカリの両方の資源を有する。
• リンは、国営企業によりすでに生産されている。また、
英企業による開発計画がある。
• カリは、西部の複数の鉱床において、豪企業により開
発が実施されている。
• わが国との関係は良好かつ密接。
• 資源量は豊富と見られるが、内陸部のため輸送コスト
がかかる。
• 一部鉱山ではリン鉱石と生産されており、リン酸プラ
ントもある。
• わが国から遠く、輸送コストがかかる。
• 鉱床はほとんどオフショアのため、開発・生産コスト
がかかると考えられる。
• 豪企業がすでに開発に参入している。
• わが国から比較的近い。
• 首都ビエンチャン付近にカリ鉱床があり、中国が既に
開発に参入している。
• NZ 企業が開発中。
• オフショア鉱床のため開発・生産コストが高いと考え
られる。
• ベルギー系企業が開発計画あるといわれているが、鉱
床等の情報が不足している。
• 豪企業とカナダ企業がそれぞれ開発しているといわれ
ているが、鉱床等の情報が不足している。
• Norsk Hydro が開発しているが、2008 年以来、住民に
よる激しい反対運動が続いている。
• Dallol 地域で NorskHydro が排他的開発権を取得し、現
在開発中。
• ブラジル、豪がそれぞれ開発または調査に参入してい
る。
- 30 -