電磁波工学 第9回 アンテナ (基本性質、利得、インピーダンス整合、指向性、実効長) 柴田幸司 講義ノート アンテナとは 無線機器の信号(電磁波) を空間に効率よく放射した り、空間にある電磁波を無 線機器に導くための部品 →より長距離での通信の為 非共振型アンテナ ホーン(ラッパ) パラボラ レンズ 非共振型アンテナの動作原理 ホーンアンテナ パラボラアンテナ 入射角と反射角が等しい →すべて前方に進む鏡面 →幾何学的に理論値を 計算(幾何光学近似) レンズアンテナ 斜入射による屈折 →レンズ面を一方向に進む →利得大 ホーンが 小さいの でビーム が広がっ てしまう 導波路がテーパ状に広がること により反射させることなく開口面 まで伝搬させ、平面波に変換 パラボラの局面により光線的に 電磁波の伝搬方向を正面に向 けることにより平面波に変換 レンズによる屈折および光路 長差により、電磁波を平面波 に変換 平面波・・・伝搬方向との直交面に位相がそろった電磁波 特徴 ・広帯域であるが、体積が大きい ・高効率(開口面積あたりの利得が大きい) →細い電線やストリップなどに電流を流さないために電界が集中せず 導体損や誘電体損が少ない 共振型(定在波)アンテナ 共振を起こしているアン テナは磁界になりやすい 金属 モノポール ダイポール 八木・宇田 ループ 金属パターン 誘電体 マイクロストリップ マイクロストリップ・アレイ 共振型(定在波)アンテナの動作原理 オープン g 4 g 4 g 2 ダイポールアンテナ 0 0 2 4 電界・電圧 オープン (電界・電圧 最大) 0 4 ショート マイクロストリップアンテナ g 電界・電圧 オープン 2 実際には 若干外側 →端部効果 {磁界ショート} →磁気壁 単一周波数にて共振現象によりエネルギーの増大した 電磁界が磁流マイクロストリップの上下部から放射 電流 単一周波数において電線上に共振現象を起 こした電流が磁界となってアンテナから放射 0 c0 f0[GHz] λ0[m] 0 4 f0 0.3 1.0 電圧ショート 3.0 0.1 c0 3108 [m/s] なので全反射 30.0 0.01 電圧オープンなので全反射 電界 [V/m] 磁界 [A/m] 空間を伝搬するに従い、平面波に変化していく 共振型アンテナの特長: 狭帯域、体積が小さい 電流ショート(I=0) 0 0 2 4 0 電流オープン (アンテナ先端からは 開放されて見える) 4 共振状態 (エネルギーが閉じ込められた状態) 電流 電界 磁界 磁界 アンペア ファラデー アンペア マクスウエル 基本特性 ・放射パターン[dB] 電磁波エネルギーの放射角度特性 ・利得[dBi] 基準アンテナに対する電力の増加度 (大きいほど遠くまで通信できる) ダイポール :2.15dBi ホーン :20dBi パラボラ :30dBi ・効率[単位なし] 無損失を仮定した理論的な最大利得との比 マイクロストリップアレイ :20% パラボラ :50% アイソトロピック(等方性)アンテナと絶対利得 放射電界強度 その方向への 放射電力 微小電流切片の場合 アイソトロピック 入力電力を球の 表面積で割った値 微小電流素子の指向性 絶対利得(dBi) 相対利得(dBd) P Gi t Pi P Gd t Pd まずアイソトロピックアンテナ自身の利得は 等方性アンテナとの比 ダイポールアンテナとの比 小文字 P Gi 10 log10 t Pi 1 10 log10 1 0[dBi] 1 と定義する。するとGiとGdとの間には 以下の関係がある Gi [dBd] 0[dBi] 2.15[dBi] 10 log10 1 0 Gi Gi Pt 1 Pi 1 1 Gi 10 log10 0[dBi] 1 Pt 10 10 Gi 10 log10 10[dBi] Pi 1 1 放射指向性 放射電界強度と放射指向性との間 には なる関係があるので、入力電力Pinについても と変形される。 電流の振幅 θ 指向性の 計算法 利得と開口能率(効率)および寸法との関係 アンテナの開口利得(開口面積に対する理想的な利得)は L1 A L1 L 2 L2 4 A Gt 20 なる面積について 面積に比例 となり、対数で表せば 波長の2乗に反比例 G0 10 log10 Gt となる。 λ0 λ0×λ0=λ02 λ0 3 108 0.0125m 12.5mm これより、24GHzにおける開口能率に対する利得は 0 24 109 なので L2[mm] G0[dBi] (100%) G0[dBi] (50%) G0[dBi] (20%) 100 100 29.06 26.05 22.07 200 200 35.08 32.07 28.09 L1[mm] となる。 開口面積: opening space 各種アンテナの実効面積 ダイポール マイクロストリップ ループ マイクロストリップアレイ ホーン パラボラ 実効面積が大きいほど多くの平面波を取り込むことができる ローブの定義 携帯電話基地局の 垂直面内指向特性 0dB 上下方向ヌル点 (先端の電流0) -3dB 等方向 横方向に最大 (根元の電流最大) E面 ダイポールアンテナの指向特性 0dB -3dB アンペア 一様磁界 半値角 0 0dB 0dB -3dB -3dB H面 E面 ホーンアンテナの指向特性 0 半値角 半値角 0 H面 アンテナの放射抵抗と入力インピーダンス 電磁波が空間に放射時において、空間のインピーダンスとは異なる値のアンテナ 自身の抵抗値(特性インピーダンス)を持つ →その給電線の取り付け部から見たインピーダンスを入力インピーダンスと呼ぶ ストリップ幅が狭い場合 g 0 2 2 共振周波数 にて 75Ω 1200Ω ダイポールアンテナ 終端オープンのマイクロストリップ線路 ストリップ幅が広い場合 g 2 インピーダンス 半分 金属 300Ω マイクロストリップアンテナ モノポールアンテナ 入力インピーダンスの決まり方 ~マイクロストリップ・アンテナの場合~ g 2 Ref ある線路の幅に対して 線路インピーダンスが 決定(幅が広いほど低 インピーダンス) 基板内部の電界強度 は両端で最大(イン ピーダンスも最大) その給電端からみた インピーダンス(抵抗 値)が入力インピーダンス 幅が狭いほど、端部での入力インピーダンスは高くなる。 アンテナの給電と整合 アンテナから電磁波を放射させるためエネルギーを供給する給電線の取り付けが 必要 アンテナ・給電線共に75Ωの場合 給電線が50Ωの場合 50Ω 75Ω 75Ω Z0=75Ω 75Ω 負荷抵抗 Zo β 2 g において Z0=50Ω 負荷抵抗 Zo β RL=75Ω RL Z 0 0 RL Z 0 RL=75Ω RL Z 0 75 50 0.2 RL Z 0 75 50 20%が 反射 アンテナの整合法 g Z0=50Ω 4 RL=75Ω 61.24Ω Z t Z 0 RL g 4 Z0=50Ω Zt=61.24Ω Zo β Zt β Ref2 負荷抵抗 RL=75Ω Ref2 電源 方向 電源 方向 スミスチャートによるインピーダンス整合 50Ω 75Ω Z=0Ω 荷 負 Z=∞ 荷 荷 負 負 電源 方向 1 1.22 Z=∞ 向 方 1.22 まず、61.24Ωから75Ωを見た 規格化インピーダンスは 0.818 Z=0 1 Z=0 向 方 向 方 Z=∞Ω となるから、これに相当 75 1.22 する0.25分波数を電源 61.24 方向に回すと0.818となる。 一方、50Ωの給電線から61.24Ωの方向(つまり負荷方向)を見た規格化イン ピーダンスはRef1点において 61.24 1.223 なので、この点の入力規格化インピーダンス0.818はRef2点にて 50 不連続によって変換され、0.818×1.223=1.00となり、中心に戻る。つまり整合さ れる。 集中定数による変成器1 2個のLと1個のCにより整合 Zo=75Ω L 図に示す回路において、特性インピーダ ンスがZ0である平行2線と負荷インピー 負荷抵抗 ダンスがRのアンテナとを整合させるの に必要なLおよびCの値を求めよ。ここで R=50Ω Z0>Rとする。 C L 方針1 Refから負荷側を見た入力インピーダンスを求め 方針2 それがZ0と等しい条件より方程式を作り 方針3 その方程式の実部、虚部が等しいという条件より 2つの方程式を抽出する。 Ref 方針4 LまたはCを消去して一方を求め、この値を他方に代入 してL,Cが決定 図において、Refから負荷側をみたインピーダンスをZ1とすると Z1 1 1 R j 2L 1 1 j C より Z1 1 1 jC R j 2 L だから、これを整理する ために、まず分子・分母 にR+jωLを掛けて Z1 R j 2L R j 2L R j 2L 1 jC R j 2L 1 jCR j 2 2 2 LC 1 2 2 LC jCR ・・・(1) となる。一方、Refから電源方向みたインピーダンスはZ 0=75Ωだから R j 2 L Z0 2 (1 2 LC ) jCR ・・・(2) となる方程式を得る。(2)式について、C,Lを求めるために実部と虚部とに整理すれば R j 2L Z 0 1 2 LC jCR 2 R j 2L Z 0 Z 0 22 LC Z 0 jCR より ・・・(3) を得る。(3)式を満足するために両辺の実部と虚部とがそれぞれ等しいとおけば R Z 0 Z 0 22 LC Z 0 22 LC Z 0 R および ・・(4) j 2L Z 0 jCR および 2 L Z 0CR より、これらを整理して ・・(5) なる2つの方程 式を得る。 そこで(5)式を(4)式に代入すれば Z 0CR Z 0 2 C Z0 R 2 2 より Z 0 2C 2 R Z 0 R 2 ・・(6) となる。ここで、C>0であるから、Cについて整理すれば Z0 R C 2 2 Z0 R 2 より C Z0 R Z0 R 1 2 2 R Z0 R Z0 [F] ・・(7) を得る。次に、Lを求めるためには(7)式を(5)式に代入すれば Z0 R 1 R Z0 R 1 2 Z0 R 2L Z0 R R Z0 R R R 1 R Z 0 R となるので 1 L R Z 0 R [H] 2 ・・(8) を得る。よって、図において(7)、(8)を式を満足する式の素子値を選べば良い。 集中定数による変成器2 平衡・不平衡の変換も兼ね備えた回路 2C1 Zo=50Ω C1 2L1 2L1 L2 2 R=75Ω L2 2 2C1 具体的な定数は 安達宏,“空中線および電波伝搬”,東京電機大学出版局,pp69-70. 参照 マイクロストリップアンテナの整合 300Ω 50Ω 交流電圧源 電源抵抗 負荷抵抗 R0 Z0 Zt RL=300Ω g 4 Z t Z 0 RL であるから、Z0=50Ωでは Z t 50 300 122.5 となる。 アンテナの実効長 電流分布 h 4 たとえば、高さがλ/4の垂直接地空中線 (アンテナ)には、図に示すような波高値Iの 電流が分布する。そこで、この電流分布を平 均化させた時の高さを実効長と定義してみる。 x 4 C I cos 2 x h=0 x=0 A B モノポールアンテナの場合を例にこれを求めてみよう。x=0からx=λ/4にかけて の余弦の面積をまず求めると 余弦の面積 ABC /4 0 2 I I cos xdx 2 2 sin /4 x 0 I 2 2 sin sin 0 4 I 2 I I sin 0 (1 0) sin 2 4 2 2 となる。 よって、アンテナの実効長はこの面積を電流の波高値であるIで割ることによって x 4 2 I cos x C he 余弦の面積 ABC I により求めることが出来る。すなわち、 he I x=0 h A B I he 2 I 2 であって、λとhには なる関係があるから、与式に 4h を代入すれば 4 he 4h 2h 2 を得る。 問題1 50Ωの同軸線路に75Ωのアンテナを損失無く接続するための整合回路は何Ω にすれば良いか? 問題2 50Ωの同軸線路に75Ωのアンテナを接続した時の反射係数Γを求めよ 問題3 パラボラアンテナに入射する平面波について、その後の波の軌跡を書き、動作 原理を説明せよ 問題4 24GHzにおける、図の寸法のアンテナの理想的および各開口能率に 対する利得を求めよ アンテナの開口利得(開口面積に対する理想的な利得)は L1 A L1 L 2 L2 4 A Gt 20 なる面積について 面積に比例 となり、対数で表せば 波長の2乗に反比例 G0 10 log10 Gt となる。 λ0 λ0×λ0=λ02 λ0 これより、24GHzにおける開口能率に対する利得は 0 なので 3 10 0.0125m 12.5mm 9 24 10 8 L2[mm] G0[dBi] (100%) G0[dBi] (50%) G0[dBi] (20%) 100 100 29.06 26.05 22.07 200 200 35.08 32.07 28.09 L1[mm] となる。
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