光化学スモッグ情報など

第1
1
大気汚染状況調査(光化学スモッグ情報など)
測定局の概要
大田区では、区内の大気汚染の状況を把握するために、住宅地などの一般環境地域
に 5 か所、主要な道路沿道に 3 か所の測定局を置き、常時測定を行っている。
(1)測定地点
図 1 に測定局の配置図を、表 1 に測定局名と所在地を示す。
図1
表1
測定局の配置図
測定局名と所在地
測定局名
所在地
① 中央
大森西一丁目 12 番 1 号
大森地域庁舎
② 雪谷
東雪谷三丁目 6 番 2 号
雪谷特別出張所
千鳥三丁目 7 番 5 号
こども発達センターわかばの家
④ 六郷
東六郷二丁目 3 番 1 号
東六郷小学校
⑤ 京浜島
京浜島二丁目 10 番 2 号
京浜島会館
⑥ 大森西
大森西二丁目 2 番 1 号
プラムハイツ大森西
東六郷一丁目 12 番 6 号
特別養護老人ホーム大田翔裕園
矢口一丁目 2 番 6 号
池上警察署矢口地域安全センター脇
一般環境 ③ 矢口
道路沿道 ⑦ 東六郷
⑧ 東矢口
39
(2)測定項目
表 2 に測定局ごとの測定項目を示す。
表2
測定局ごとの測定項目
測定項目
紫外 線
湿度
温度
風速
風向
浮 遊 粒子 状 物 質
炭 化 水素
光化学
オ キ シダ ン ト
一酸 化炭 素
道路沿道
窒素 酸 化 物
一般環境
二酸 化硫 黄
測定局名
① 中央
○
○
-
○
○
○
○
○
○
○
○
② 雪谷
-
○
-
○
○
○
○
○
-
○
-
③ 矢口
○
○
-
○
-
○
○
○
-
-
-
④ 六郷
○
○
-
○
-
○
○
○
-
○
-
⑤ 京浜島
○
○
-
○
○
○
○
○
-
○
-
⑥ 大森西
-
○
-
-
-
○
○
○
-
-
-
⑦ 東六郷
-
○
-
-
-
○
○
○
-
-
-
⑧ 東矢口
-
○
-
-
-
○
○
○
-
-
-
(3)測定期間
平成 26 年 4 月 1 日(火)
~
平成 27 年 3 月 31 日(火)
40
2
測定結果
(1)年平均値の経年変化(昭和 60 年度~平成 26 年度)
ア
一般環境
SO2、NO2、OX:ppb
SPM:μg/m3
NMHC: ppmC
70
0.70
SO2
60
NO2
NMHC
0.60
OX
50
SPM
SPM
0.50
NMHC
40
0.40
NO2
30
0.30
Ox
20
0.20
SO2
10
0.10
0
0.00
60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26
年度
SO2:二酸化硫黄、NO2:二酸化窒素、Ox:光化学オキシダント
SPM:浮遊粒子状物質、NMHC:非メタン炭化水素
図2
イ
一般環境測定局の経年変化
道路沿道
120
NO2:ppb
SPM:μg/m3
NO2
SPM
100
SPM
80
60
NO2
40
20
0
60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26
年度
NO2:二酸化窒素、SPM:浮遊粒子状物質
図3
自動車排出ガス測定局の経年変化
41
(2)光化学スモッグ
光化学スモッグの原因である光化学オキシダントの濃度が高くなると、目やのどの
痛みといった症状が出るほか、植物への被害などの影響が見られる。
区では、平日、光化学オキシダントの濃度が高くなった場合の緊急時の対策として、
光化学スモッグ注意報※1の発令や、光化学スモッグ学校情報※2の提供を行っている。
平成 26 年度に注意報を発令した日数は 2 日、学校情報を提供した日数は 2 日だっ
た。
表3
※1
※2
年度別発令日数
年度
学校情報
0.100ppm 以上
注意報
0.120ppm 以上
警報及び重大緊急報
0.240ppm 以上
平成 22 年度
2
3
0
平成 23 年度
3
0
0
平成 24 年度
4
1
0
平成 25 年度
7
1
0
平成 26 年度
2
2
0
光化学オキシダント濃度の 1 時間値が 0.120ppm 以上となり、気象条件からみてその状況
が継続すると認められるときに発令
光化学オキシダント濃度の 1 時間値が 0.100ppm 以上となり、気象条件からみてその状況
が継続すると認められるときに提供(児童・生徒の光化学スモッグによる被害を未然に防
止するため、学校等に対して提供する情報)
(3)環境基準
環境基準の達成状況を表 4~7 に示す。
表4
測定局
二酸化硫黄
有効測定
日数
測定時間
1 時間値が
0.1ppm を
超えた時間数
日
時間
時間
環境基準適合状況
日平均値が
環境基準の
日平均値が 0.04ppm を超えた
長期的評価による
0.04ppm を
日が 2 日以上
日平均値が 0.04ppm を
超えた日数 連続したことの
超えた日数
有無
日
有× 無○
日
中央
360
8548
0
0
○
0
矢口
364
8689
0
0
○
0
六郷
364
8675
0
0
○
0
京浜島
362
8545
0
0
○
0
42
表5
二酸化窒素
環境基準適合状況
測定局
有効測定
日数
測定時間
日
時間
環境基準の
環境基準値に 98%値評価による
適合した
日平均値が
日数の割合
0.06ppm を
超えた日数
1 時間値の 日平均値の 日平均値が
年平均値
最高値
0.06ppm を
年間 98%値 超えた日数
ppm
ppm
ppm
日
%
日
中央
361
8568
0.022
0.090
0.048
0
100.0
0
雪谷
362
8580
0.019
0.092
0.043
0
100.0
0
矢口
356
8478
0.019
0.107
0.039
0
100.0
0
六郷
353
8438
0.022
0.130
0.044
0
100.0
0
京浜島
361
8555
0.029
0.093
0.054
2
99.4
0
大森西
361
8582
0.035
0.128
0.058
6
98.3
0
東六郷
362
8580
0.027
0.110
0.051
1
99.7
0
東矢口
362
8595
0.028
0.136
0.049
0
100.0
0
表6
昼間
測定
時間
時間
測定局
光化学オキシダント
昼間の
昼間の
1 時間値の 1 時間値の
年平均値
最高値
ppm
ppm
環境基準適合状況
昼間の 1 時間値が
0.06ppm を超えた時間数
時間
中央
5384
0.028
0.134
278
雪谷
5265
0.032
0.157
479
矢口
5385
0.032
0.132
436
六郷
5378
0.029
0.130
292
京浜島
5395
0.025
0.138
211
表7
浮遊粒子状物質
環境基準適合状況
測定局
有効測定
日数
測定時間
日
時間
環境基準の
日平均値が
日平均値の
1 時間値が
日平均値が
3
長期的評価による
0.10mg/m
を超えた
年間 2%
0.20mg/m3 を 0.10mg/m3 を
日平均値 0.10mg/m3 を
日が 2 日以上連続
除外値
超えた時間数 超えた日数
したことの有無
超えた日数
時間
日
有× 無○
mg/m3
日
中央
356
8651
0
0
○
0.057
0
雪谷
363
8698
0
0
○
0.065
0
矢口
363
8701
0
0
○
0.066
0
六郷
362
8697
0
0
○
0.065
0
京浜島
362
8695
0
0
○
0.067
0
大森西
361
8675
0
0
○
0.059
0
東六郷
359
8641
0
0
○
0.063
0
東矢口
354
8548
0
0
○
0.067
0
43
環境基準とは、生活環境を良い状態に保ち、健康を守っていくうえで維持されるこ
とが望ましい基準である。二酸化硫黄、光化学オキシダント、二酸化窒素、浮遊粒子
状物質、一酸化炭素、微小粒子状物質(PM2.5)に、環境基準が定められている。なお、
工業専用地域、車道、その他住民の生活実態のない地域では、この基準は適用されな
い。
表 8 に環境基準値を、表 9 に環境基準の評価方法を示す。
表8
環境基準値
物質名
二酸化硫黄
光化学オキシダント
二酸化窒素
浮遊粒子状物質
一酸化炭素
微小粒子状物質
環境上の条件
1 時間値の 1 日平均値が 0.04ppm 以下であり、かつ、1 時間値が 0.1ppm 以下であること。
1 時間値が 0.06ppm 以下であること。
1 時間値の 1 日平均値が 0.04ppm から 0.06ppm までのゾーン内又はそれ以下であること。
1 時間値の 1 日平均値が 0.10mg/m3 以下であり、かつ、1 時間値が 0.20mg/m3 以下であること。
1 時間値の 1 日平均値が 10ppm 以下であり、かつ、1 時間値の 8 時間平均値が 20ppm 以下であること。
1 年平均値が 15μg/m3 以下であり、かつ、1 日平均値が 35μg/m3 以下であること。
表9
環境基準の評価方法
項目
評価方法
短期的評価 測定を行った日の1時間値の1日平均値または各1時間値を環境基準と比較して評価。
二酸化硫黄
年間の1時間値の1日平均値のうち高いほうから2%の範囲にあるものを除外した最高
長期的評価 値を環境基準と比較して評価(ただし、1日平均値が環境基準を超える日が2日以上連
続した場合は、環境基準未達成となる。)。
短期的評価 測定を行った日の昼間(5時~20時)の各1時間値を環境基準と比較して評価。
光化学オキシダント
長期的評価
短期的評価
二酸化窒素
長期的評価
年間の1時間値の1日平均値のうち低いほうから98%に相当する値を環境基準と比較し
て評価。
短期的評価 測定を行った日の1時間値の1日平均値または各1時間値を環境基準と比較して評価。
浮遊粒子状物質
年間の1時間値の1日平均値のうち高いほうから2%の範囲にあるものを除外した最高
長期的評価 値を環境基準と比較して評価(ただし、1日平均値が環境基準を超える日が2日以上連
続した場合は、環境基準未達成となる。)。
短期的評価
一酸化炭素
微小粒子状物質
(PM2.5)
測定を行った日の1時間値の1日平均値または8時間平均値を環境基準と比較して評
価。
年間の1時間値の1日平均値のうち高いほうから2%の範囲にあるものを除外した最高
長期的評価 値を環境基準と比較して評価(ただし、1日平均値が環境基準を超える日が2日以上連
続した場合は、環境基準未達成となる)。
短期基準に
年間の1日平均値のうち低いほうから98%に相当する値を環境基準と比較して評価。
関する評価
長期基準に
測定を行った日の1年平均値を環境基準と比較して評価。
関する評価
44
3
大気汚染常時監視測定結果
大気汚染の状況は、環境基準が定められている大気汚染物質について、住宅地域等
に設置している一般環境大気測定局(以下「一般局」とする)5 局と沿道に設置して
いる自動車排出ガス測定局(以下「自排局」とする)3 局で測定を実施した。
(1)二酸化硫黄
項
目
結
果
経年での状況
年平均値として 0.003~0.005ppm であり、大きな変化はない。
環境基準
短期的評価、長期的評価ともに全局で基準を達成。
季節的変動は、7 月にピークが見られるが、大きな変動ではない。
その他
経時変化は、日中にやや高くなる傾向が見られるが、大きな変動では
ない。
(2)窒素酸化物
ア
一酸化窒素
項
目
経年での状況
環境基準
結
果
年平均値として、0.005~0.013ppm(一般局)
、0.017~0.026ppm(自排
局)であり、経年での大きな変化はなく、前年と比べると若干減少。
基準値は設定されていない。
季節的変動は、全局 11~2 月にかけて高くなり、12 月がピークである。
その他
ピーク月は、年平均値に対して 2 倍近い値に上昇する。
経時変化は、午前中の濃度が高く、5~9 時にピークが見られる。
イ
二酸化窒素
項
目
経年での状況
環境基準
果
年平均値として、0.019~0.029ppm(一般局)
、0.027~0.035ppm(自排
局)である。経年での変化はほとんどない。
長期的評価において、全局で基準を達成している。
顕著な季節的変動は見られないが、8 月は全局で減少している。
その他
ウ
結
経時変化は、1 日を通して大きな変動は見られない。
窒素酸化物
項
目
結
果
年平均値として、0.023~0.043ppm(一般局)
、0.045~0.061ppm(自排
経年での状況 局)であり、経年での大きな変化はなく、一酸化窒素が減少している影
響で前年と比べると若干減少している。
環境基準
基準値は設定されていない。
測定局では、通常一酸化窒素より二酸化窒素の割合が多い。しかし、
その他
冬季は、地上の気温が低く対流が起こりにくいため、大気が上昇しにく
い。そのため、自排局では自動車からの排出量の影響が大きい一酸化窒
素の割合が多くなることが起きている。
45
(3)光化学オキシダント
項
目
経年での状況
環境基準
結
果
年平均値として 0.025~0.032ppm であり、大きな変化はない。しかし、
平成 23 年度にわずかな減少が見られた。
短期的評価において、全局で基準未達成。
(0.06ppm を超えた日数:66~98 日(時間数:211~479 時間))
光化学スモッグ学校情報(基準濃度 0.1ppm)の提供回数は、過去 5 年
間では 2~4 回であった。しかし、平成 25 年度は 7 回と大幅に増加した。
平成 26 年度は 2 回と平年並みとなった。
同様に注意報(基準濃度 0.12ppm)は 0~3 回のところ、平成 26 年度
その他
は 2 回であった。
また、光化学スモッグ注意報の基準濃度の 0.12ppm を超えた時間数は、
平成 25 年度は 5~20 時間であったのに対し、平成 26 年度は 3~9 時間
に減少した。
(4)炭化水素(非メタン炭化水素及びメタン)
項
目
結
果
非メタン炭化水素の年平均値は 0.20ppmC であり、平成 24 年度以降ほ
経年での状況 ぼ横ばいとなっている。
メタンは、ほぼ横ばいで経年による変化はほとんどない。
(1.93ppmC)
環境基準
基準値は設定されていない。
光化学オキシダントの環境基準(0.06ppm)に対応する非メタン炭化水
素の濃度が指針値で決められており、その上限値となる 0.31ppmC(午前
6~9 時の 3 時間平均値)を超えた日は 3 測定局平均で 47 日となった。
季節的変動について、非メタン炭化水素は 11~12 月にピークが見られ
その他
る。メタンは年間を通して大きな変化は見られない。
経時変化について、非メタン炭化水素は 10~18 時に高い値を示してい
る。その中で 13 時(昼休みの時間帯)に値が低くなっており、このこ
とから産業活動による影響が大きいことが予測される。メタンは 1 日を
通して大きな変化は見られない。
46
(5)浮遊粒子状物質
項
目
結
果
年平均値は、一般局:0.023~0.028mg/m3、自排局:0.021~0.031mg/m3
であり、一般局、自排局ともに平成 25 年度と比べ横ばいから若干の増
加が見られるが、平成 22 年度からの 5 年間のスパンで見る限り、大き
な変動は見られず、ほぼ横ばいとなっている。
経年での状況
[年平均値の推移]
(mg/m3)
年度
環境基準
H22
H23
H24
H25
H26
一般局
0.025
0.025
0.023
0.025
0.025
自排局
0.025
0.027
0.023
0.027
0.025
短期的評価、長期的評価ともに全局で基準を達成。
平成 25 年度は、安定した夏型の気候の影響が大きかったこともあり、
その他
環境基準を達成できない測定局が多かった。しかし、平成 26 年度は全
局で達成した。
季節的変動について、例年夏季の 7、8 月に高くなる傾向にある。
4
まとめ
(1) 測定項目は光化学オキシダントを除き、環境基準を全て達成した。年平均値は大
きな変化はない。
(2) 浮遊粒子状物質の年平均値は、ディーゼル車対策の実施から減少してきたが、こ
の 5 年間はほぼ横ばい状況である。現対策での一定の到達点に至っているか否かに
ついて、引き続き常時監視の結果を注視していく。
(3) 大田区及び東京都は、光化学オキシダントの原因となる炭化水素の削減や、PM2.5
の主要な原因の一つである VOC 削減対策に力を入れている。光化学オキシダントは
気候の影響も大きい。このため、温暖化により気温が 35℃以上となる日が多くなる
ことが予想される今後は、更なる VOC をはじめとする化学物質対策を行い、大気汚
染の減少につなげる必要がある。
47
5
用語の解説
(1)大気を汚す主な物質
ア
硫黄酸化物
石油などの硫黄を含む燃料を燃やした時に発生する刺激性の強いガスである。硫
黄酸化物は、二酸化硫黄と三酸化硫黄および、三酸化硫黄が大気中の水分と反応し
て生じる硫酸ミストを含めたものである。
イ
窒素酸化物
大気中での燃焼にともない、空気中の窒素と酸素が結びついて発生する。一酸化
窒素と二酸化窒素をあわせたものを窒素酸化物という。
ウ
光化学オキシダント
窒素酸化物と炭化水素が大気中で紫外線があたると、化学反応を起こしてできる
酸化力の強い物質の総称。光化学スモッグの原因物質でもある。
エ
浮遊粒子状物質
空気中に浮かんでいる粉じんのうち、直径 10 マイクロメートル以下の粒子状の
物質のことである。
オ
微小粒子状物質(PM2.5)
空気中に浮かんでいる粉じんのうち、直径 2.5 マイクロメートル以下の粒子状の
物質のことをいう。
カ
一酸化炭素
燃料などの不完全燃焼によって発生する物質である。
キ
炭化水素
炭素と水素からできている化合物の総称である。非メタン炭化水素は、窒素酸化
物と光化学反応を起こして光化学スモッグの原因である酸化性物質を作る。
ク
揮発性有機化合物
大気中に排出され、または飛散した時に気体である有機化合物と定義される。英
語の頭文字を取って VOC(Volatile Organic Compounds)と記載される場合が多い。
48
(2)その他
ア
ppm
容量比を表す単位で、1ppm とは、空気 1 立方メートル中に汚染物質が 1 立方セン
チメートル含まれる場合をいう。ppm は「part per million」の略称で、100 万分
の 1 のことをいう。
イ
ppmC
大気中の炭化水素の容量比を表す単位で、1ppmC とは、空気 1 立方メートル中に
炭化水素をメタンに換算して 1 立方センチメートル含まれる場合をいう。
ウ
mg/m3
1 立方メートルの空気に 1 ミリグラムの汚染物質が含まれること。
エ
1 時間値
大気汚染物質濃度の 1 時間の平均値。
オ
日平均値
大気汚染物質濃度の 1 時間値の 1 日分の平均値。
49