ベースラインの状況 チュニジアの国立森林・放牧地資源データ(IFPN

ベースラインの状況
チュニジアの国立森林・放牧地資源データ(IFPN、1989∼1995 年)の初版によると、チ
ュニジアの植被面積は約 574.4 万ヘクタールであり、そのうちの 97 万ヘクタールは自
然林および人工林、74.3 万ヘクタールはアフリカハネガヤ属の草地(Esparto grass 群系)、
396 万ヘクタールは自然の放牧地となっている。
砂漠地帯とサハラ地域を除くチュニジアの自然植被は国全体の面積の 11.6%と推定さ
れている。地域別で見ると、北部地域は 15%、中部地域は 10%、南部地域は 1%、であ
り、国土の 50%を占めるサハラ地域では、自然植被は 1%以下でしかない。表−1はチ
ュニジアの土地利用・植生タイプ別の面積とその割合、表−2はチュニジア国内の天然
林で見られる主な植物群集の一覧である。
表−1
チュニジアの主な植生群
植生タイプ
面積(ヘクタール)
割合
Maquis および garrigues の高木
132,898
0.80%
Maquis および garrigues の低木
194,849
1.18%
その他の森林
502,990
3.04%
天然林の合計
830,737
5.02%
3,687
0.02%
743,306
4.49%
3,338,965
20.16%
45,788
0.28%
528,055
3.19%
46,228
0.28%
4,706,029
28.42%
140,800
0.85%
4,774,023
28.83%
水地帯および湿地帯
393,421
2.38%
造成地(一部緑地あり)
179,639
1.08%
砂漠
5,536,946
33.42%
総計
16,561,595
100.00%
草地と短茎草原地帯
Esparto grass
放牧地の他の植生タイプ
河岸植生
複合ステップ・粗放な農業
他の植生群
放牧地の合計
人工造林地
耕作地
表−2
主な群集
チュニジアの天然林における主な植物群集
面積
(ヘクタール)
注釈
利用法
Aleppo pine 系統
400,000
森林 50%と garrigues50%
木材、放牧、NWFP、砂防
Cork Oak 系統
90,379
6 万 379 ヘクタールの森林と
3 万ヘクタールの maquis
コルク、NWFP、放牧
Thuya de Berbérie 系統
33,000
中高木林と garrigues
木材、放牧、砂防
Kermes oak 系統
10,000
頻繁に外来種と交配
木材、NWFPs、砂丘の固定、観光
Zéen oak 系統
6,414
Kroumirie の高地に生育
木材、NWFPs、放牧、観光
Quercus illex 系統
5,000
ドーサルとテルの山頂に生育 木材、NWFPs、放牧、木炭
Maritime pine 系統
3,930
極めて局地的(タバルカ西部)木材、NWFPs、放牧
Artrophylum sp.の放牧地
869,100
Esparto grass ステップ
743,300
Artemisia 複合ステップ
446,000
Anthyllis sericea のステッ
プ
417,200
NWFPs、放牧、砂防
荒廃著しい。25 万ヘクタール
飼料、NWPS、砂防
以下が生産的
荒廃著しい。30 万ヘクタール
飼料、NWPS、砂防
以下の残余
飼料、NWPS、砂防
チュニジア国内の天然林において見られる代表的な樹種は Pinus halepensis、 Quercus
suber、 Quercus merbekii、 Juniperus oxycedrus、 Cupressus sempervirens、 Tetraclinis
quadrivalvis、 Quercus afares、 Pinus pinaster、 Quecus illex 等である。これらは純粋な、
あるいは他種と交配した形で見られる。Quercus suber、Quercus merbekii および Pinus
pinaster の自然林はチュニジア北部の Kroumirie-Mogods 地域に局在している。Pinus
halpensis の自然林は、
「ドーサル」周辺と高地のステップをはじめとする国の中央部お
よび南部に自生している。自然の針葉樹林は自然林地の 55%である 45 万 7,000 ヘクタ
ールを占める。自然の落葉樹林は全林野面積の約 22%に相当する 17 万 9,000 ヘクター
ルを占めており、maquis-garrigues は林野面積の 23%である 19 万 4,000 ヘクタールを占
めている。
チュニジアの植林 CDM 担当者が CDM 植林の候補地としてあげた北部のビゼルテ県で
は、灌漑施設等が整って恒常的に農業生産が行われているような場所が植林地に転用さ
れる可能性はほとんどない。従って CDM 植林が実施可能な場所としては平地以外の丘
陵地が候補となり、
そのような場所の植生は Maquis および Garrigues 林で覆われている。
従ってこの Maquis および Garrigues 林がビゼルテ県での標準的なベースラインとなる。
Maquis および Garrigues 林は地元住民によってヤギや羊の放牧地として利用されている
ので、植林を進めるに当たっては地元住民との調整が不可欠である。また放牧に付きも
のの火入れも度々行われ、これによって Maquis および Garrigues 林が延焼の被害を受け
る事例も多いので、このような山火事に対するリスクも念頭に置く必要がある。