- 4 - 『ドラえもんの最終回』について

『ドラえもんの最終回
ドラえもんの最終回』
最終回』について
65 回生 川戸 基
タイトルを見て、いまいちピンと来ない方が殆どでしょう。ドラえもんの最終回は多くのドラえもんファンの待望す
るところであり、様々な終劇が予想されてきました。そのあまりにも謎に包まれた最終回は、もう何年もの間、都市伝
説として噂されています。
1.藤子・F・不二雄による最終回
そもそもドラえもんは 1970 年頃、小学館系列の雑誌で連載が始まりました。学年誌(小学~年生)にも掲載されてい
たのですが、当時『小学五年生』にはドラえもんは連載されていませんでした。なので、進級して『小学五年生』を読
み始める読者のため、
『小学四年生』の三月号には、区切りとして最終話的な話が描かれていたのです(勿論次の『小学
四年生』四月号にはドラえもんは引き続き掲載されています)
。しかし、後に『小学五年生』
、
『小学六年生』にも掲載が
拡大したため、この様な「最終回的な話」が書かれたのは二度だけでした。
『小学四年生』に掲載されたその二作のタイトルは、それぞれ「ドラえもん未来へ帰る」
、
「ドラえもんがいなくなっ
ちゃう!?」というものです。それぞれについて少し粗筋を説明します。
「ドラえもん未来へ帰る」
(
『小学四年生』1971 年三月号掲載)
未来から過去に時間旅行に来た旅行者のマナーが非常に悪く、過去への時間旅行が未来で禁止されてしまいます。す
なわちそれはドラえもんも未来へ帰らなくてはならないという事を示し、のび太は泣いて止めようとしますが、結局帰
ってしまう、という悲しいストーリー。
「ドラえもんがいなくなっちゃう!?」
(
『小学四年生』1972 年三月号掲載)
のび太は自転車に乗れず、いつもの様にドラえもんに道具を借りに行きます。そして、のび太の自立心を養うため、
ドラえもんは未来に帰らなくてはならなくなりました。泣いて止めるのび太に、ドラえもんの回収に来たセワシは、ド
ラえもんは故障したと説明します。するとのび太はその嘘を素直に信じ、ドラえもんの為に我慢すると言ったのです。
ドラえもんはそれを聞いて感激し、正直に事の顛末をのび太に話し、のび太もそれを受け入れ、ドラえもんはそのまま
未来へと帰って行きました。自転車の練習を一生懸命するのび太をセワシとドラえもんは未来から見守る、という結末
です。
この二作はどちらもてんとう虫コミックス未掲載作品です。そして「ドラえもん未来へ帰る」をリメイクした話が、
ドラえもんを代表する感動話である、
「さようなら、ドラえもん」と「帰ってきたドラえもん」です。ドラえもんの中で
この話が一番好きだ、という方も多数おられるでしょう。僕もその一人で、あの話を読むたびに泣きそうになります。
ご存じない方のために粗筋を書いておきます。
「さようなら、ドラえもん」
(
『小学三年生』1974 年三月号、てんとう虫コミックス 6 巻掲載)
のび太はジャイアンにいじめられ、いつも通りドラえもんに頼ります。この時、ドラえもんから用事で未来に帰らな
くてはならないと告げられ、のび太は必死に止めますが、両親に説得され、受け入れるしかありませんでした。そこで、
のび太を一人残しておいて大丈夫なのか、苛められないかと気を揉むドラえもんを、のび太は、せめて安心させてやろ
う、心置きなく未来に帰らせてやろうと決心します。お別れの前夜、ドラえもんとのび太は散歩に出かけます。気丈に
振る舞うのび太の姿にドラえもんは感激して泣いてしまい、泣き顔を見られたくないドラえもんは、のび太と一度別れ
ます。その時のび太は、寝ぼけて町を徘徊するジャイアンに遭遇、喧嘩を吹っ掛けられ、一度ドラえもんの助けを呼び
そうになりますが、思い直し、自力でジャイアンに勝ってドラえもんを安心させてやると決めたのです。ドラえもんが
のび太の声を感じて、のび太を見つけたとき、そこにはボロボロになりながらジャイアンにしがみつくのび太の姿が。
のび太は自力でジャイアンに勝ったのです。ドラえもんは涙を流し、のび太が布団に入った後も枕元で見守りました。
次の朝、のび太が目を覚ますと、そこにはもうドラえもんの姿はありませんでした。
「帰ってきたドラえもん」
(
『小学四年生』1974 年四月号、てんとう虫コミックス 7 巻掲載)
ドラえもんのいない日々を過ごすのび太。ジャイアン達によるいじめもまだつづいていました。ある日ジャイアン達
にドラえもんを見た、と言われ、はち切れんばかりに歓喜し家に飛び帰るのび太。しかしどこを探してもドラえもんの
姿は見つかりません。何と実は、エイプリルフールの嘘だったのです。あまりにも残酷な嘘をつかれたのび太は、
「どう
しても我慢できなくなった時はこれを開けて」とドラえもんから渡されていた、ドラえもんの形をした箱を開けます。
すると中には、飲むと言ったことが全て嘘になる、
「ウソ 800(エイトオーオー)
」が。のび太はそれを飲んで空き地のジ
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ャイアンとスネ夫に復讐に行きます。しかし散々仕返しをしたものの、のび太は虚しくなってしまいます。のび太は家
に帰り、
「ドラちゃんは見つかったの?」と聞く母に対して、
「ドラえもんはもう二度と帰って来ないんだから」
、
「二度と
会えないんだから」と言います。その時奇跡が。部屋に待っていたのはドラえもん。のび太の発言が嘘になって、ドラ
えもんが帰ってきたのです。のび太は「うれしくない。これからまた、ずうっとドラえもんといっしょに暮らさない。
」
と、逆さ言葉で泣きながら再会を喜びました。
粗筋を書くつもりが殆ど全容を書いてしまいました。すみません。それだけこの話が好きなんだということでご理解
ください。補足説明ですが、藤子先生は当時他にも連載を抱えており、
「さようなら、ドラえもん」を最終回として連載
を終了する予定だったのですが、
『小学三年生』三月号が出て次の連載を考えている間も、ずっとドラえもんのことが頭
から離れず、
「帰ってきたドラえもん」を描いたそうです。
他にも、各学年誌の連載終了の時に描かれた話も実質的に最終回となるのですが、やはり上の四話が内容的にも『最
終回』と呼ぶにふさわしい作品と言えるでしょう。
2.その他都市伝説など
やはり最初に思い浮かぶのは、田嶋・T・安恵と名乗る男性
作家によって描かれた「のび太がドラえもんの開発者」説で
しょう。最初はただの同人誌として発売されましたが、原作
に極力画風を近づけたクオリティーの高さなど評判も高く、
同人誌としては異例の 13380 部を売り上げたそうです。
これを藤子・F・不二雄先生作の真の最終回だと勘違いして
小学館に問い合わせする件数があまりに増えすぎたため、最
初は黙認していた小学館も、著作権侵害を通告しました。同
人誌の在庫は全て没収、同人誌販売による利益も小学館に返
還されました。
この最終話の粗筋を説明します。
――いつも通り、ドラえもんに泣きついて道具を出してもらおうとするのび太、しかしドラえもんは動きません。ドラ
ミに聞いてみるとバッテリー切れが原因とのこと。しかしネコ型ロボットのバックアップ用記憶メモリーは耳に内蔵さ
れており、耳のないドラえもんは電池を換えてしまうと記憶を失ってしまうというのです。バックアップの方法も分か
りません。開発者を呼ぼうにも超重要機密事項で分かりません。選択肢は二つ、このまま電池を換えて、新しく生活を
やり直すか、もしくは未来の技術に期待して待ち続けるか。そこでのび太は、自らの手でドラえもんを直すことを決意
するのです。猛勉強の末、トップクラスのロボット工学者になり、静香と結婚します。そしてある日、妻の静香の前で、
記憶を保ったままの修理に成功したドラえもんのスイッチを入れます。ドラえもんの製造者が明かされていなかったの
は、それがのび太だからだったのです。
僕もこの話は実際に読んだことがありますが、本当に絵のクオリティーは高いです。僕みたいな素人目からしてみれ
ば、のび太の話す時の身振り手振りなど原作にそっくりで、話の内容も素晴らしいと思います。
しかし、
「ドラえもんは食事をすることによりエネルギーを得るのでバッテリー切れは有り得ない」
、
「以前医者が、
『耳
なんて所詮飾りだからね』と言っている」
、など多くの点で批評されています。言われてみればこの作品には、原作に矛
盾する点も多々あります。
また、他にも都市伝説的に生まれてきた最終回として、のび太が植物人間状態になる話があります。これと上記のス
トーリーはチェーンメールとして出回ったこともありました。この「のび太植物人間」説は 1986 年頃、子供たちの間で
流行った都市伝説でした。これはモノによって少しずつ内容が違うのですが、その中で僕が知っているものを書きたい
と思います。
ある日、のび太が交通事故に遭い、入院します。手術には巨額のお金が必要で、両親にはとても用意できませんでし
た。そこでドラえもんが未来のリサイクルショップで持っている道具を全て売り、それで得たお金で一番大きなダイヤ
を買い、現代に戻ってそれを売る、という方法で手術代を用意します。しかし、手術の成功率は極めて低く、結局失敗
し、のび太は植物人間状態になってしまいます。こればかりはドラえもんもお手上げで、のび太を守るためにやって来
たのに何もできない自分が情けなく、誰とも喋らなくなります。そして母、玉子はというと、ショックでおかしくなっ
てしまい、病院のベッドで横たわるのび太につきっきりで話しかける生活を送っていました。
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ジャイアン達がお見舞いに来て、ドラえもんを励まします。
「元気出せよ」
、
「のび太は死んだわけじゃないぜ」
。する
と、ドラえもんがやっと口を開き、
「みんな…ありがとう」と言ったかと思えば堰を切ったように泣き始め、そして決意
した顔でこう言ったのです。
「パパ、ママ、僕、のび太くんが行きたい所に連れて行ってあげたいんだ」
。みなも同じ意
見でした。ドラえもんは一つだけ売らずに取っておいた道具、どこでもドアを取り出し、のび太を背負ってどこに行き
たいか聞きました。勿論返事はありませんが、しかし、のび太がその時微かにほほ笑んだのをみな確かに見ました。ド
ラえもんはそれで全てを理解し、ドアを開けてのび太を天国へと連れて行ったのです。
またも粗筋ではなくなってしまいました。しかしこれも創作であるとは言え、涙を誘います。僕はこれを書きながら
今、ディスプレイの前で泣くのをギリギリで我慢しています。このストーリーに関しては、藤子・F・不二雄先生が「流
言飛語で根拠のないデマ」
、
「ドラえもんはそんな悲観的な終わりにするつもりはない」と正式にコメントを発表する事
態にまで発展しました。
他にも、
「未来の世界は機械帝国に支配されており、ドラえもんは機械帝国のスパイで、機械帝国に対抗する集団のト
ップであるのび太のもとに送られてきた」とする説など、様々なものがあります。しかし、本当の最終回は亡くなられ
た原作者、藤子・F・不二雄先生の胸の中だけにあるのです。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。文章が稚拙なところが多々あるでしょうが、すみません頑張って読んで下さい。
部誌の記事、何を書こうかな~と思っていて、Google に「ドラえもん」と何となしに入力してみると、検索候補の一
番上に「ドラえもん 最終回」と出ていたのでそれでやっちゃった…というのは嘘です。前述しましたが、僕の一番好
きな話、
「さようなら、ドラえもん」と「帰ってきたドラえもん」について書きたいな、と思っていろいろ思索を巡らし
ているうちにこのテーマに辿り着いた訳です。
しかし調べてみると色々あるものですね。藤子先生が亡くなられた日の深夜、突然アニメが放映された、という都市
伝説もあります。その内容はひたすら歩くのび太の後姿で、最後に、
「行かなくちゃ」と言ってフェードする、というも
のだそうです(ある意味いい話かもしれないけど怖えぇ…)
。ここまで色々作られてきたのも、ドラえもんの人気の証拠
ですよね。そしてそれは、のび太とドラえもんの美しい、純粋な友情があってこそのものですよね。
それでは、最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
By 藤子先生と誕生日を同じくする部員 K
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