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オランダ
私がずっと行ってみたかった国、オランダ。オランダと言
われてすぐに思い浮かぶのは、風車にチューリップ、サッ
カーでしょうか。ヨーロッパにはイタリアとかフランスとか
メジャーな国があるのに、なんでオランダ?と聞かれること
が多いです。
オランダに行きたかった理由はたくさんありますが、興味
を持ったきっかけは、中学生の時にテレビで見たオランダの
ボルネオ・スポーレンブルグ開発地区でした。運河沿いに発
達した伝統的な住居カナルハウスをコンセプトに開発された
街で、その個性的ながら統一感のある街並みと、そこで丁寧
に暮らすオランダ人の生活を見て、絶対に一度は訪れてみた
いと思うようになったのです。
一棟一棟デザインの違う住宅が立ち並んでいて、まるで美
術館で絵画を楽しむように住宅の外観を楽しめました。
運河側は大きく窓が取られ、その窓の奥には素敵なインテ
リア。カーテンをオープンにしている家が多く、インテリア
にこだわりを持つ人が多いというオランダ人の家の中を垣間
見ることができました。吹き抜けのリビングにドラムセット
が置いてあったり、大きなシャンデリアが吊るされていたり、
屋上には植物があったり、ソファがおいてあったり…当たり
前ですが、住まい手によって様々。
オランダの伝統と、現代建築家の個性と、住まい手の家に
対する愛情が感じられ、なんだか幸せな気持ちになれる街並
みでした。
No.18
運河側から見た街並み
オランダの伝統的な住居 カナルハウス
それから、オランダ特集の雑誌を見る度に買い集め、気が
つけばオランダに関する本は10冊を超えていました。知れば
知るほど興味深い国オランダ。憧れ続けて十数年、やっと夢
を実現できる時がやってきました。念願のオランダ建築を巡
る旅です!!
まずは、やはりダッチ・デザインへのきっかけを作ってく
れたボルネオ・スポーレンブルグ開発地区へ。アムステルダ
ム中央駅からバスで10分の場所にあるアムステルダム湾岸部
のベッドタウンです。あいにくの曇り空でしたが、二次元で
しか見たことがなかった街並みに、とてもワクワクしました。
運河の反対側には建物の写生をしている学生や写真をとっ
ている男性、建築見学をしている団体がいたりと、開発から
10年以上たった今も注目度の高いエリアのようです。この他
にも、この一帯にはいろいろな集合住宅があり、右下の写真
のような大規模な集合住宅もあります。
アムステルダム以外にも、リートフェルトのシュレーダー
邸があるユトレヒト、近代的なビルが立ち並ぶロッテルダム
など、オランダには建築を楽しめる場所がたくさんあるので
すが、一緒に旅行していた旦那が体調を崩してしまい、結局
オランダ建築は半日しか楽しめませんでした。
ボルネオ・スポーレンブルグ島
ここはWEST8というオランダの建築家グループが、90
年代後半にマスタープランを手掛けた地域で、様々な建築家
が設計に参加しました。高密度ながら低層の住戸が計画され
ました。統一感を出すために、3階建てで、大きな吹抜けを
確保する、仕上げには煉瓦や木を使用する等の基本原則のも
と作られています。
私をまだまだ惹きつけてやまないオランダ̶̶ 憧れはさらに
強まるばかりです…。
ミラノサローネ2012
文・杉本
道路側から見た街並み
[特 集]
参考文献:「オランダのデザイン 躍進するコンセプチュアルな思考と手法 建築・プロダクト編」
木戸昌史編、バイインターナショナル、2010
〒541−0054 大阪市中央区南本町4−5−10 TEL.06−6245−9505 「CUE21」編集長:西村 発行/平成24年11月29日
● 家具紀行:アルフレックス
● 裸足の記憶
● おすすめの一冊:「木力検定 ①木を学ぶ100問」
「伊東豊雄読本−2010」
● 木と語り合う:ウェンジ
● 散歩道:オランダ
特集:ミラノサローネ2012
特集
ミラノサローネ2012
2012年のミラノサローネは4/17∼22の6日間開催されま
した。昨年は『50 years young』という50回目に相応しい
タイトルでしたが、今年は『A Milano, Dove, se no ?(ミラノ
以外にどこがあるっていうの?)』というインパクトのあるタイ
トルが会場中にメッセージされていました。
隔年で照明とキッチンの見本市が行われていますが、偶数
年である今年はキッチン(エリアとしてはバスブースもあった)
の年。来場者数は照明とキッチンでは毎回キッチン(クッチー
ナ)の方が多いとされていますが、予想通り昨年比3.1%増の
331,649名、出展社も約2,580社と非常に盛況でした。
国別の来場者数を見てみると、1位イタリア:103,791人、
2位ロシア:21,586人、続いて3位に中国:15,377人(日本
は4,297人)となっており、ここでも中国の急激な経済成長の
様子がうかがえました。
初日、オープン前の見本市会場
そしてこのような彩度の低い空間へ用いられるアクセントカ
す。そして昨年より多く見られるブルーも真っ青というよりトル
ラーには、カラフルで多種多様な色合いが見られ、落ち着い
コ石のようなターキッシュブルーが印象的でした。色味一つ
た空間の中で色を楽しむといった趣向が見られたように思い
とってもメーカーによっては青色の表現を『Deep Blue』
(朝日
ます。毎年、トップブランドのコーディネートにおいても統一感
に輝く北海の海の色)といった、心に残る表現をしているとこ
を出すため多彩な色使いは見られないのですが、今年は上の
ろもありました。
写真で紹介しているように一つのブースに様々な色使いを見
今後注目したいカラーであるピンクは、彩度を抑えた淡い色
ることができました。そしてその中でも多く見られたのがオレ
合いで落ち着いた空間に花を添えるといった使い方が印象的
ンジ・ブルー・ピンクのアクセントカラーです。オレンジ系には
でした。近年、全体的に彩度の低いカラーが主流となっていま
ここ数年、全体的に彩度の低いカラーを使用し、落ち着きのあ
タンジェリンオレンジのようなビビッドな発色のものもあれば、
したが、ビタミンカラーのような色合いが少し増えてきたため
る上品なイメージの空間演出が増加傾向にあり、今年もその傾向
彩度の低い色使いもあり、イタリアならではの演出が見られま
経済とともに人々が活気づければと願います。
【見本市会場(フィエラ)】
木質建材メーカーから見たミラノサローネ特集として、見本市会場で見た今年のインテリアトレンドを
◆コー ディネート ◆ 樹 種トレンド ◆ 塗 装 仕 上 げ ◆ 表 面 意 匠 ◆ デザイン の5つの切り口からご紹介いたします。
2 012 年 インテリアコー ディネート の 傾 向
彩度の低い落ち着いたベースにビビッドなアクセント
が踏襲されていました。空間全体の土台となるベースカラーは下の
写真にあるようにグレー、ホワイト、そして昨年より注目されている
グレージュ。特にグレージュベースは多く見られ、床材・壁材、そし
て家具におけるファブリック・皮など多くの素材に使われていまし
た。いずれも彩度の低い色目が主流で、全体的には尖ったというよ
りも優しく上品な印象の色使いでした。彩度の低いベースカラー
にすることで木質感や金属などの素材感をさらに引き立たせるこ
とができ、空間に馴染みやすくなるという印象も受けます。
グレーベースの空間
1
ホワイトベースの空間
グレージュベースの空間
オレンジ、ブルー、ピンクをアクセントカラーに用いたコーディネート
2
特集:ミラノサローネ2012
樹 種トレンド 傾向
表情豊かな大きな木目、オーク&ウォルナット時代へ
直近5∼6年における樹種傾向としては、どちらかというと
その他の樹種としてはエルム(ニレ)
・パイン・メイプルが目に付き
木目がはっきりしていない散孔材から、散孔材でも比較的木
ました。今年、B&Bがフィエラ会場内にアウトドア家具の展示を
目の出るウォルナットやオークなどの木目がはっきりしている
行っていたのが話題となっていましたが、ミラノサローネでもアウ
環孔材が増えてきていますが、今年もその傾向が顕著に見ら
トドア家具は非常に身近な存在となってきているように思われま
れました。感覚的ではありますが、フィエラのモダン・デザイン
す。アウトドア家具においての樹種傾向は耐水性に優れたチーク
ブースの木質系の家具の8割近くがウォルナットとオークで占
やイロコ(アフリカンチーク)が多く使われていました。場所が変
められていました。
わっても特徴をもった樹種は適材適所に利用されていました。
木質
トレンドの
変遷
チークなど高級材
多樹種展開
ウォルナット
ウォルナット
オーク&ウォルナット
2006年
2007年
2008年
2009年
2011年
されているのが多く見られました。また中には大胆な木目を活
上手く処理をしないとざらつきが残ることが多いのですが、そ
かした家具も多数見られ、通常大きな節の周りは逆目といって
のような細部も滑らかに美しく仕上がっていました。
ウォルナット ゼブラ
チーク
ウォルナット
パーズアイ
鏡面ナット
ウェンジ
マホガニー
黒檀
シタン
ウォルナット
表面意匠
黒檀
ブラックチェリー
竹
オーク
オーク
自然が創りあげたデザイン∼杢とキャラクター∼を大胆に活かす
ウォルナット
塗装の仕上げ方
木そのものの素材を感じられるマット仕上げが進化
昨年は家具の意匠傾向として大胆な木目を使い、やや粗々
補修することでデザインの一部として活用したり、木材のもつ
しかったりエイジング感を出す傾向の家具が多数見られまし
柔らかさをデザインに取り入れたものが多く見られました。本
たが、今年もその傾向は引き続き見られ、空間のアクセントア
当は非常に手間暇かけているが、初見では手を加えていない
イテムとして表現されていました。ただ、昨年と違う点は素朴
のでは?と思わせる素材感を活かした意匠表現がよく見受け
に粗々しいというよりも木材だからできるテクスチャーや見せ
られました。またテーブルの表面や床などのデザインには、昨
家具の仕上げ方としては、素材そのままに近いマットな仕上
輝度の低い塗装をする際、通常表面が白く濁ったように見え
方に注力し、完成度の高いエイジング表現が施されているよ
年も多く見られたラフソーンと呼ばれるノコギリで切った跡の
げと鏡面に近い仕上げに二極化していました。一般的にマッ
てしまうことが多々起こりえるのですが、ミラノで展示されてい
うに、感じました。
ような加工が、もはや一般的な木の意匠表現の一つでもある
トな塗装仕上げと言えば輝度を抑えた塗装のイメージがある
る家具のほとんどの塗装には透明感の高く素材感を損なわな
日本では欠点とされる節も、敢えて隠すのではなく、綺麗に
かのように多用されていました。
かと思いますが、ここで展示されていたマットな仕上げとは本
い素晴らしい塗装が施されていました。またマット仕上げは濃
当に触ってみても塗装しているかどうか分からないぐらいで、
淡問わず、全ての樹種で使用されていました。
まるで銘木を番手の高いサンダーで仕上げたような素材感を
続いて鏡面仕上げですが、輝度が高い塗装はウォルナット
再現していました。
やゼブラといった濃色系の樹種に、淡色系ではメイプルに施
porada
素材そのままに近いマットな塗装(ウォルナット)
3
鏡面メイプル
オーク
ウォルナット
黒檀
鏡面ゼブラ
Molteni&C
節を補修し、デザインとして活用したもの
ラフソーン仕上げのダイニングテーブル
木材の柔らかみをデザインに採用したもの
ラフソーン仕上げの床材
素材そのままに近いマットな塗装(ウォルナット)
4
特集:ミラノサローネ2012
心の豊かさを提供する天然素材のテクスチャー
デザイン 傾 向
ラウンドを用い柔らかく、かつシャープ・無垢の素材で上質感を演出
2012年のミラノサローネ全体を通して感じたことは昨年多く
また、God is in the details(神は細部に宿る)という言葉が
全体的なデザインとしては家具のラインが細く、全体的に丸
素材の組み合わせが多く存在します。今回も木+ガラス、石+
出展されていた、素材の持つ力強さを表現したような少し粗々
ありますが、ミラノサローネを視察すると、細部までこだわった
みを帯びたデザインが多く見られました。
鉄、木+レザーなど多くの組み合わせが見られ、もはやデザイ
しい意匠から、洗練された素材の美しさを、素材ごとに分かり
作品であるからこそ全体が美しく仕上がるのだと改めて気付
丸みを活かしたデザインにおいては全体的に柔らかい印象
ンにおいてのルールかのように感じられます。重要なのは、そ
易く意匠を表現しているものが多くなっている傾向があること
かされました。そして何より展示されている家具は、どれを見
が残るデザインや家具の細部やコーナーの部分に柔らかさを
れぞれの素材の持ち味を活かすという点です。木は木、石は
でした。木材でいうと節や割れなどの木の特性を意匠として
ても細部の造りまで美しく、またその細部へのこだわりを専門
持たせたデザインなど、丸みを取り入れることでソフトな上質
石、ガラスはガラスそれぞれの無垢の素材感を出しきり組み
使っているものも当然見られましたが、それらはほとんど綺麗
知識のない人でも理解ができるように伝えていく流れができ
感を表現しています。また、個性的なデザインで愉しませてく
合わせることで本物ならではの存在感が発揮されています。
に補修等を施し、使い勝手の妨げにならない工夫がされてい
ていることに感銘を受けました。
れたのはedra社のキャビネット。扉は足下のペダルを踏むと開
今回の視察の中で非常に興味深い言葉を聞くことができま
ました。そこには単に節を入れれば木材っぽくなるといった考
く仕組みになっておりピアノのペダルのようでした。表面化粧
した。それは『Material for the design』
(デザインを完成さ
えではなく、木材のキャラクターをデザインとして、どのように
我々もモノづくりの企業としてこれからも素材の持ち味を活か
材にはローズウッド突板を使用。突板の貼りデザインは様々な
せるために最適な素材を選んでいる)という考え方と『Design
使っていけば良いのかという思いが感じられました。天然素
し、細部にまでこだわりを持った製品開発、そしてそのこだわ
ものがあり、象嵌デザインのように表現しているものもありま
utilizing the material』
(素材を最大限に活かすことでデザイ
材が持つテクスチャー、自然が創りあげた模様や造形はいわ
りを住まい手まで伝わる仕組みや仕掛けを考えていかなけれ
した。表面の華々しい意匠とは対照的にコーナー部の納まり
ンを完成させている)というものです。この言葉を聞いてか
ば神様がデザインしたものです。同じ自然の一部である人間
ばならないと強く感じました。今年のタイトルである『A Milano.
は非常に繊細でそのギャップが魅力的なキャビネットでした。
ら、展示品を見るたびに『これはどちらの考え方にあてはまる
にとって、それが心地よく感じないはずがありません。物質的
Dove, se no ?』その意味が帰国後、やっと分かってきた気がし
隅々まで考えつくされたデザインであると考えさせられます。
だろう』と思いをめぐらせながら視察することができました。
な豊かさより精神的な豊かさが求められる時代となった今、そ
ます。短期間でここまでインテリアについて考えさせられる場
れら自然の産物である素材そのものの持つデザインを活かし
所はどこ?ミラノ以外に見つけるのは難しいのではないでしょう
たモノづくりが求められてきているように思います。
か?今から来年のミラノサローネが楽しみになってきました。
また、家具を構成する部材は互いの素材感を生かすため異
1
3
2
1
全体的に丸みを持たせた家具(写真 )
コーナー部分などデザインの細部に丸みを
2 3
持たせた家具(写真 )
異なる素材を組み合わせたデザイン
2
3
(写真 は石と鉄、
写真 は木とレザー、
4
写真 は木とガラス)
4
2
「Material for the design」と「Design utilizing the material」を具現化した展示品。
edra社のキャビネット
扉は足元のペダルを踏むと
開く
デザイン優先
5
素材優先
nendoの個展。会場はミラノの僭主だったヴィスコンティ家の宮殿
文・中田
6
〈 素材へのこだわりとインパクトのある表現 〉
〈“らしさ”を感じるコーディネート 〉
木材の素材選定やデザインに定評のあるRIVA1920
ピニンファリーナの「CAMBINO」というコンセプトカーの
レプリカを木材で。
使用している木材はベネチア運河で長年使われていた船を
泊めるためのオーク製の杭をリサイクルしているそうです。
vitra.
RIVA 1920
〈 培った技術と技のこだわり 〉
部屋の一室をそのまま持ってきたような展示vitra.
Carl Hansen & Son ブース
展示台は床・壁と樹種毎に分かれてお
職人さんによる名作家具Yチェアの座面のペーパー
コードを編むパフォーマンスが行われていました。
座面を編み上げるためには120mものペーパーコード
が必要だそうで、職人さんは約1時間で1脚のYチェア
を編み上げていました。
り、それらに合わせた家具のvitra.らしい
コーディネート。
Yチェアのパフォーマンス
ミラノサロ ーネ2012
フォトコ レクション
〈 会場でみたフローリング 〉
様々なフローリングがブランドの世界観の演出に
一役買っていました。やはり、面積が大きいので印象
を大きく左右します。
〈 日本企業 〉
特集記事で紹介した ほかにも、
刺激を受ける展示が 数多くありました。
ミラノサローネでの日本企業による展示も以前に比べ一般
的になりました。
今年も世界に誇れるジャパンクリエイティブを感じました。
幾何学的な形状の床
“家具が置かれる「日常」”をテーマにした
「KARIMOKU NEW STANDARD」や、大
好評のプレミアム樹種オーダーシリーズ
古材を並べた床
銀色に輝く照りが眩しい染色された床
7
真っ黒に染色したフローリングの一部に革の色・柄をアクセントに
深澤直人氏、ジャスパー・モリソン
氏デザインの家具などマルニコレ
クション
図書館を思わせる空間に、
ソファのようにバスタブが置か
れた「お風呂の新環境」の提案。生クリームを泡立てた
ような、ねっとりとしたきめ細かな泡は、湯気が出ない
ため空気はさらりとして眼鏡も曇らない
展示タイトルは「Photosynthesis(光合成)」。
立体的に組み上げることで下の空間も活かすこと
ができ、太陽が動いても、常にどこかのパネルが
太陽光を浴びて発電する
8
家具紀行
株式会社 アルフレックスジャパン
アルフレックス ショップ 東京
長く使える家具を通じて"豊かな暮らし"を
〒150-0012
東京都渋谷区広尾1-1-40 恵比寿プライムスクェア1F
TEL:03-3486-8899 FAX:03-3486-8898
営業時間:11:00∼19:00
定 休 日:水曜日
http://www.arflex.co.jp/
Riva 1920
アルフレックスジャパンは、1969年の設立以来、日本の風土・価値観・住環境に適したモダン・シン
プルライフを提案し、日本のインテリアシーンを牽引してきた家具ブランドです。シンプルで上質、
時代を問わず長く使える家具を通じて、心豊かに暮らすためのライフスタイル提案を続けていらっしゃ
います。
以前、CUE21第5号で紹介させていただいてから 6 年。
今回はアルフレックスショップ東京 柏木店長にお話を伺いました。
市場は大きく変化してきていますが、
6年前と比べると、御社の中でも何か変化はありますか。
当社がご提案している「長くお使いいただける家具を通
じて、心豊かに暮らすための考え方」は基本的に変わっては
おりませんが、市場経済の変化とともに、以前に比べてお客
様の価値観が随分変わってきているように感じます。4年前
にアルフレックスのソファ専用工場を旭川に設立しました。
当社の強みであるソファを製造し、これまで培った経験をも
とに、ものづくりのノウハウを蓄積して、使い捨ての家具では
なく、これまで以上に長く大切にお使いいただける本当に価
値のあるものを、いかにお買い求めやすい価格でご提供で
きるか、研究を続けています。
お客様に家具を提案する上での考え方を
お聞かせください。
当社の家具は、「長く安心して使える家具」であることを
目指しています。手をかけながら長くお付き合いができるも
の、飽きずに使っていただけることが大きな特 徴です。で
は、そうあるためにデザインはどうあるべきか?長く安心して
使うための設計ができているか?メンテナンスに対する考え
方は十分か?強度は維持できているか?等、我々のポリシー
に反するものはご提供しません。
また、扱うのは家具というモノですが、当社は「モノ売り」
ではなく、お客様のライフスタイルを十分ヒアリングした上
で、空間全体をご提案することが重要だと考えています。そ
のためショールームでは、リビングルームやダイニングルー
ム、ベッドルーム等、シチュエーションの異なる様々な空間を
設え、
「この部屋に帰ってきたい」と思っていただけるような
ご提案を心がけています。お客様との打ち合わせの中では、
「家の中でどのような時間をお過ごしになりたいのか」を、
お伺いするようにしています。
御社の考えのように、実際に
長く使っていただくお客様は多いですか。
そうですね、20∼30年お使いになられた製品をメンテナン
『A・SOFA 10』1986年発表のアルフレックスの代表的ソファ
9
アルフレックスショップ東京
柏木店長
スに出されるケースが非常に増えてきています。お預かりをし
た上で検品を行い、修理の方法などをご提案しております。
「手をかけてでも、まだ使いたい。」と言っていただけるこ
とはとても幸せなことですね。
また、
『NT』という椅子は1977年からデザインの変更等
はしていないのですが、先日、ずっと使ってきた『NT』を嫁
入り道具として持たせたいとの要望があり、革の張り地の部
分を新しいものに変えました。当社の家具は流行を追うもの
ではなく、世代を越えた普遍的なものになりつつあります。
これはブランドの一番大きな特徴のひとつだと思います。
アルフレックスジャパンのオリジナル商品の新作を
発表されましたが、特徴を教えてください。
昨年からアルフレックスのオリジナル製品のイメージが少
しずつ変わってきています。「アルフレックス」のブランドイ
メージは、価格が高く、年齢も50∼60歳代のお客様が多い
という見方もあるのではないでしょうか。そこで、アルフレッ
クスブランド自体に変化をつけ、若い方たちにも親しみやす
いブランドにしていただけるよう35∼45歳の都市部に住むファ
ミリー層に向けた製品づくりを行いました。昨年の新作チェ
アには若手といわれる40代のデザイナー藤森泰司氏を起用
しました。今年の新製品は、さらに若返り30代のデザイナー
坪井浩尚氏、倉本仁氏を起用し、最近では新しい年齢層の
方々にもご来店いただけています。新しいデザイナーはアイ
デアが無限にありますが、そのすべてが最初から家具として
成立するものでもありません。デザイナーと当社の設計・製
造部門は、数年に渡って試行錯誤を繰り返し、最終的に皆
さんに喜んでいただけるような新製品を生み出し続けてい
ます。
ミラノサローネにも出展されているイタリアのブランド
Molteni & C、Riva 1920も取り扱われていますね。
現在、イタリアのブランド「モルテーニ」の取り扱いが一番
新しく、「Riva 1920」や「パオラレンティ」は5年ほどになり
ます。パートナーの特徴はそれぞれにありますが、我々と想
アルフレックスジャパンオリジナルソファ『OMNIO』と
パオラレンティのパーソナルソファ『PLAY』との組み合わせ
『RINN』藤森泰司氏デザイン しなやかで美しいラインを持つチェア
『CELERINA(セレリナ)』 非常に硬い材
であるウェンジのテーブル。シックで落ち
着いた色調の中に美しい木目が見られる
ブラックウォルナット材のテーブルの (上)購入時に付属のオイル仕上げ用 『CLESSIDRA』 シダーコレクションのひとつ。
天板。ショールームでは節ありを確認 メンテナンスキット。
(下)メイプルや 無垢材無塗装仕上げのため香りも楽しめる
することができる
ウォルナットの樹種サンプル
いが同じであること、モノありきではなく生活を重視、華美
なデザインではなく一般の生活の中で使えるものが大前提
です。また、イタリアの長い歴史が加味されており、技術的に
も学ぶところが多いですね。
その中でもRivaはウォルナット、オーク、シダーなどの
木の魅力が感じられますね。
リーヴァは現在ウォルナットがメインになっていますが、
ウォルナットは良材が少なくなってきているとも聞いていま
す。そこでバリエーションを広げ、新しい樹種へも取り組ん
でいます。
ショールームでは、木の特性、木目、節などの特徴をお客
様にご説明した上で選んでいただくことが必要となります。
ほとんどのリーヴァ製品で無垢材を使用しているため、製品
には反りや割れが起こります。ただ、これまで日本に出荷す
る製品は特別に「節なし」の天板のみを作っていましたが、
日本でも無垢材の理解が深まりつつあるため、今年から「節
あり」の天板もお選びいただけるようになりました。特に「節
あり」天板は、1点ずつ異なった表情ですので、実際にショー
ルームで天板をご覧いただき、気に入ったものに脚を付けて
ご納品しています。最近では、荒々しく、素材が感じられる
「節あり」天板を選ばれるお客様も増えてきました。
ライブナチュラルやプレミアムでもウォルナットやオークが
ありますが、コーディネートについてはいかがですか。
実際に納入する場面において、床はウォルナットかメイプル
の床材が多く使われているように思います。ウォルナットだか
らウォルナットで合わせなければいけないということはありま
せんし、なるべく決め事は作らないようにしています。
アルフレックス2012年の新作
(左)『OMEGA』坪井浩尚氏デザイン (右)『JK』倉本仁氏デザイン
また、床材は家具にも大きく影響してきますので、ハウス
メーカーの家具フェアなどでは、プロユーザーの方は床材の
サンプルを必ずといっていいほど持って歩かれていますね。
最後に家具を検討されるお客様に伝えたいことは
ありますか。
家具との付き合いは、今日明日だけのことではなく、1年2
年で終わるものでもありません。出来る限り末長く使ってい
ただきたいと考えています。もちろん家具が主役ではなく、
あくまでそこに住まうご家族が主役ですので、デザイン的な
主張が控えめで、飽きずに手をかけながら使い続けること
ができるものをお勧めしています。ぜひアルフレックスショッ
プにご来店いただき、直接触って、座って当社製品の質感、
使い心地をご体感いただければと思っています。
ご協力ありがとうございました。
取材/文・大西
イタリアのトップブランド『Molteni & C』
アルフレックス
『TAVOLO NAVE』
パオラレンティ
『Heron』アウトドア用チェア
10
人にはたくさんの記憶があります。
そこには、家の中で作られてきた記憶が占める部分も決して小さくはありません。
子どもの頃から家族とともに暮らし育ってきた家の中での記憶。それらのシーンの中には当然、床があったはずです。
靴を脱いで生活する我々日本人の住まいにおける“裸足の記憶”
。
このコーナーでは、床にまつわる様々な“裸足の記憶”の物語をご紹介していきます。
裸足の記憶。
夏休み、おばあちゃんのいる田舎の縁側で食べたスイカ。そのまま寝
そべった縁甲板の感触が気持ちよかった・・・
私が育った実家は電気工事をしていた父が手を加え、カーペットと畳
が広がった昔ながらの住まい。キッチンはクッションフロアで、その
ベタベタとした感触が今も忘れられない。大人になって初めての一人
暮らし。やがて結婚。新しい生活をおくる賃貸マンションには過去の
住人の跡が残るフローリング。磨けば綺麗になるわけでもなく、こんな
ものか・・・と特別な愛着もわかない。
長年、賃貸マンションに暮らし、老後の生活が気になり始めた頃から
「リノベーション」という言葉が気になりだした。仕事柄モデルハウス
に足を運ぶことも多く、新築で家を建てるとなるとそれなりに費用が
かかることもわかっていた。「リノベーション」だと新築に比べ手が
届く範囲で、内装アイテムの選べる自由度が高いことも魅力であった。
築23年中古一戸建てフルリノベーションを決意。妻が好きなダーク
ブラウン系の配色と私が好きなグリーンを取り入れた新しい住まいを
創りたい。こだわりたいのはインテリア。しかし、全体のバランスを
とるなんて素人には到底無理と感じトータルコーディネートをプロに
依頼した。
ダークブラウン系の配色にするためにフローリングはウォルナットを
薦められた。フローリングなんてなんでも良いと思っていた。見せら
れたフローリングサンプルも気に留めることはなく、なんとなくその
フローリングを使うんだなぐらいに感じていた。しかし仕様決めをし
ていたある日、新商品というフローリングサンプルを見せてもらった。
一瞬目が釘付けになった。「本物の木だ」。今までに見たことがあるよ
うでなかった不思議な感覚。これを使いたいと思い、妻に相談すると大
賛成してくれた。
「これが一番良い。気持ちが良い。」と。
家が完成した日。妻と一緒にはじめて足を踏み入れたその瞬間、身震
いをした。妻と私の希望がつまった期待以上の光景に感動し、あの時
このフローリングにして良かったと心から思えた。
仕事から疲れて帰ってくると開放感からかすぐに裸足になりたくな
る。そんな私を受け入れてくれるフローリング。気持ちが良くてつい
すり足になってしまい、汚れを見つけると磨かずにいられない。手入
れをするとそれに応えてくれるかのように切りたての木を感じる。
ふと夏休みの記憶がよみがえり、あの縁甲板の感触を思い出した。
11
12
木と語り合う vol.17
おすすめの一冊
木力検定 ①木を学ぶ100問
編著者:井上雅文・東原貴志
発行所:海青社
定 価:1,000円(税込)
「木には板目と柾目がある」このような木に関す
る基本知識は小中学生の頃の技術の授業で少し習っ
たくらいだったので、入社して間もない新入社員教
育時、「あれ、どっちが板目でどっちが柾目だった
っけ?」というレベルだった私。え、どうしよう。
木のことから勉強しなければ。ということで、手に
取ったのがこの一冊、「木力検定」。
この本を読むと、木の性質から身の回りに溢れて
いる木材の特性を活用した製品について、幅広く知
識を得ることができます。この本の中で、私の興味
を引いたのが、
「木製バットにはメーカーのマークや製品名が
バットの板目面に表示されます。さてなぜでしょう
か?」という問題。木製バットの印字面は基本的に
は板目面だそうです。その理由はバッターがメー
カー名(つまり板目面)を自らの目の前に見るよう
にして構えると、球をとらえるバットの面が木の柾
目面となります。木材の特性として、板目面に比べ
て木の曲げ強度が高い、つまりボールがあたっても
破壊されにくい柾目面でボールをとらえることでバ
ットは折れにくくなるからなのだそうです。野球好
きの私は「なるほど!」と野球観戦仲間に早速小ネ
タとして使おうと思いました。新入社員で木材に関
する知識のない私にとっては、このようなちょっと
した発見が楽しいもので、自分なりに興味のある分
野から木に親しんでいこうと考えています。
本書は木の特徴に関する知識をまとめた問題集形
式となっており、この本を読めば身近な木製商品の
新たな見方が発見できること間違いなしです。
Web上では『木力検定』という検定を無料で受け
ることができるようになっており、話題の一つとし
て試されてはいかがでしょうか。
ウェンジ
産地・分布
中央アフリカ
学 名
Millettia laurentii
分 類
マメ科
樹 高
15∼20m
直 径
0.5∼0.9m
用 途
床材、家具、床柱、楽器
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ウェンジ(Wenge)は、ウェンゲ、ベンゲとも読まれま
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す。黒褐色の象徴的な木で、日本では唐木である紫檀・黒
檀・鉄刀木(タガヤサン)と並び仏壇などに利用されてきま
した。東南アジア産の唐木と違い、こちらはアフリカ産で、
やや繊維は粗い傾向にありますが、硬くて耐久性に優れた木
材です。
■■
ウェンジが注目されるようになったのは10年ほど前に、
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ヨーロッパのデザイナーがこの木材に注目して、家具に使用
したころからです。その黒いスタイリッシュなイメージが、
モノトーンを好むシンプルモダンなインテリアにマッチし、
文・片田
人気が沸騰しました。ただウェンジは、高級材とまではいか
リップルマーク
ないまでもアフリカ材で入手が困難であり、また加工時に割
ガウディの建築内部には、久しぶりに胎内で羊水に
浮かんでいるような心地よさと、+αの「何か」がある。
『胎内感覚の心地よさ』+『何か』
伊東豊雄氏の台中メトロポリタンオペラハウスの完
ウェンジは、辺材は白っぽく、心材は黄褐色の地に黒褐色
■■
よく見かける黒っぽい木製家具は、実際はオーク材を使って
の縞が入っています。その色合いと木目が装飾的な表情を
黒褐色の着色をしているものが多く、よく見ると「ウェンジ
持っており、柱材やカウンターなどで利用される時には、そ
調」と表示されています。「ウェンジ」はスタイリッシュな
の魅力を強調する塗装をかけて使われます。板目の特徴的な
黒の代名詞として使われるほどに、家具業界の中でそのステ
リップルマーク(さざ波模様)は、黒褐色の心材の中に淡い
イタスを短い年月で確立してきました。 柔組織の帯が規則的に配列されているために見られます。ま
成予想画像を見たときも同じ感覚をもった。
た硬いが欠けやすい性質から、ディンプル(目掘れ)がとこ
『胎内感覚』…伊東豊雄氏も対談形式のこの本の中
完成が本当に楽しみな台中メトロポリタンオペラハウス
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れや欠けが起こりやすい性質を持っています。そのせいか、
ろどころ現れることがあります。黒い木の代名詞である
でこのように語っている
ウェンジですが、実際は黄褐色の地を持っていることから、
伊東豊雄読本−2010
「僕には『外部感覚』はないのかも知れません。常
黒を補色して全体を黒いイメージに統一して使われることも
発行者:二川幸夫
発 行:エーディーエー・エディタ・トーキョー
価 格:2,730円(税込)
に何かに囲まれている『内部感覚』を前提に、目線の
あります。黒を補色することは、年月の中で退色して黒が抜
先に光が見える様な状態を希求していた気がします。
」
けて茶色っぽくなるのを目立たなくする効果もあります。
『何か』…例えば、子どもの頃に見た川口浩探検隊
『石造りなのにやわらかい』
の洞窟探検みたいな感じ。ここを抜けると何が待ち受
『これは生命(いのち)の創った家なのか』
けているのだろう。秘宝か?双頭の蛇か?というあの
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ウェンジは謎めいた木です。アフリカ材全般に言えること
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ですが、その立木の姿や、生育の状況、現地での利用のされ
方などの情報がなかなか入手できません。東南アジアの木も
感じである。言葉にするなら『ワクワク感』だろうか。
そうですが、熱帯広葉樹は、派手な色合い・木目を持った個
1985年。こんなナレーションをバックにバルセロナ
にあるアントニオ・ガウディの建築を舞台にしたサン
では『ワクワク感』のベースになっているのは何だ
性豊かなものが多くあり、高級・重厚なイメージで重宝され
トリーのCMがあった。摩訶不思議。そして衝撃。
ろう。おそらく、地球から生まれ出したようなオーガ
ています。後世にかけて、大切に利用していきたいものです。
(YouTube サントリーローヤル ガウディ編で検索)
ニックなフォルムではないだろうか?
伊東氏もよくガウディのこの言葉を引用している。
バイトでせっせとお金を貯めて、 2 年後にはバルセ
ロナに 2 週間滞在していた。
グエル公園・カサミラ・カサバトリョ…
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『そこにある一本の木が自分にとっての先生である』
文・山本
文・脇
参考文献:「新・木のデザイン図鑑」エクスナレッジ
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