1. ノバデュランについて 1.1 ノバデュランの特徴 ノバデュラン®(NOVADURAN®)は、三菱エンジニアリングプラスチックスが製造・販売するポリブチレンテレフ タレート(PBT)樹脂の商品名である。PBT 樹脂は、テレフタル酸(TPA)またはジメチルテレフタレート(DMT)と 1,4-ブタンジオール(1,4-BG)を重縮合させて得られるポリエステル樹脂で、以下のような特徴を有している。 (1) 機械的特性が優れている。 (2) 耐熱性が優れている。 (3) 結晶化速度が速く、流動性も良好で、成形性に優れている。 (4) 吸水率が非常に小さく、寸法安定性が良好である。 (5) 表面光沢に優れ、着色性も良好である。 (6) 耐油性、耐溶剤性に優れ、ほとんどの薬品に侵されない。 (7) 電気的特性に優れている。 (8) 摩擦・摩耗特性に優れている。 (9) 優れた難燃グレード供給が可能である。 ノバデュランには、非強化、GF 強化、難燃等の各標準グレードの他に、低ガスタイプ、耐加水分解タイプ、低 反りタイプ等、種々のグレードがあり、用途に応じた最適なグレードの選択が可能である。表 1-1 にノバデュラン の代表グレードラインアップを記載した。 分類 特徴 グレード名 非強化 標準 ハイサイクル タフ 柔軟(共重合) 5010R3,5010R5,5010R5L 5010CR2 5010TRXA,5010TRX5 5010R8S,5010R8M,5010R8L 非強化難燃 高靭性(V-2) 難燃(V-0) 非臭素難燃 5010N5 5010N6-3X SEF-500 GF強化 標準 耐加水分解 タフ 耐ヒートショック 低反り 耐電圧 耐トラッキング 5010G15,5010G30,5010G45 5010G30X4 5010GT15,5010GT30 5010GT15X,5010G30TZ 5010F6X4 5010FMT30 5010GP20 GF強化難燃 標準 低ガス タフ 耐トラッキング 低反り 耐グローワイヤー 非臭素難燃 5010GN1-15AM,5010GN1-30AM 5010GN6-15M8AM,5010GN6-30M8AM 5010GN6-15TM4,5010GN6-30TM4 5010GPN33 5010FN2-M9 5830GN6-40 SEF-515,SEF-530 アロイ 良外観 超光沢 低反り・良外観 超低反り・良外観 低反り・低比重 低反り・難燃 5308G30 5308F20 5710G30S2 5710F40 5810G30,5820G30H 5810GN6-30 表 1-1 ノバデュランの代表グレードラインアップ - 1 - 2. 物理的性質 2.1 分子量と溶液粘度 高分子の分子量は一般に、ある幅の分布を持っているため、通常はその平均値を表す平均分子量で代表さ れる。平均分子量は測定方法によっていくつかの種類が存在する。 (1) 数平均分子量(Mn) : 浸透圧測定法、末端基定量法 (2) 重量平均分子量(Mw) : 光散乱法、超遠心法 (3) 粘度平均分子量(Mv) : 粘度法 各平均分子量の間には一般に、Mn<Mv<Mw の関係がある。 PBT の平均分子量測定は粘度法によることが多い。溶液粘度については、固有粘度[η]と分子量 M との間に、 [η] = K・Mα なる関係が知られており、溶液粘度を測定することにより PBT の平均分子量を求めることができ る。例えば、30℃におけるフェノール/テトラクロロエタン(1/1)溶媒中の溶液粘度の場合、K=4.3×10-4、α= 0.76 という値が報告されている。 2.2 比重および結晶性 PBT の比重は結晶相と非晶相で異なり、いくつかの値が報告されている。代表的な値は以下の通りである。 結晶相の比重 1.40 g/cm3 非晶相の比重 1.28 g/cm3 一般成形品の比重 1.31 g/cm3 成形品の比重は結晶化度によって異なるが、PBT の結晶化度は概ね 15~30%程度である。一般的な射出成 形品の比重は、1.31g/cm3 程度とされており、この場合の結晶化度は 28%となる。結晶化度は成形条件等の影響 を受け、低い金型温度でハイサイクル成形した場合には急冷されるため結晶化度は低くなり、逆にゆっくり冷却 された場合には結晶化度は高くなる。また、成形後に高温でアニールを行うと再結晶化が進み、結晶化度が増 大する。 2.3 溶融粘度 PBT は比較的成形時の流動性が良い樹脂である。PBT の溶融状態における粘度または流動性は、流速(せ ん断速度)や圧力(せん断応力)に依存して変化する。溶融粘度はキャピラリーレオメータを用いて測定すること ができる。この測定法では、特定の流出速度(せん断速度)における応力を測定し、せん断速度や温度を変える ことで、種々の条件における粘度曲線(フローカーブ)を得ることができる。ノバデュランの代表的なフローカーブ は以下のようになる(図 2-1、図 2-2)。 - 2 - 10000 10000 キャピラリーレオメータ キャピラリー:φ1×L30mm 流入角:90° 管長補正:なし 1000 溶融粘度 (Pa・s) 溶融粘度 (Pa・s) キャピラリーレオメータ キャピラリー:φ1×L30mm 流入角:90° 管長補正:なし 240℃ 250℃ 260℃ 270℃ 100 10 240℃ 250℃ 260℃ 270℃ 1000 100 10 10 100 -1 せん断速度 (s ) 1000 10000 図 2-1 5010R5 のフローカーブ 10 100 -1 せん断速度 (s ) 1000 10000 図 2-2 5010G30 のフローカーブ 2.4 吸水・吸湿率 PBT は非常に吸水率の低い樹脂で、大気中の平衡吸水率は 0.2%程度である。ただし吸水状態で高温に曝さ れると、水分が微量であっても加水分解により分子量が低下し物性が低下するため、成形前には水分量が 0.02%以下になるまで乾燥を行う必要がある。機能部品等の場合は、水分量 0.01%以下まで乾燥することが望ま しい。 図 2-3 にノバデュランの吸水曲線、図 2-4 に両対数プロットしたものを示す。吸水率と浸漬時間を両対数プロ ットすると、概ね直線に近い関係が得られる。図 2-5、図 2-6 に各種条件下での吸水曲線、および吸水率と寸法 変化の関係を示す。ノバデュランの吸水率は非常に低く、吸水による寸法変化も極めて小さいことがわかる。以 下に他樹脂との吸水率比較を示す。ただし、この吸水率の測定方法は必ずしも吸水率ゼロを基準としていない ため、これら吸水させたものについてカール・フィッシャー法等で水分率を測定すると、以下の数値よりもやや大 きくなる場合がある。 樹脂 吸水率 (%) PP < 0.01 PE 0.04~0.08 PS 0.03~0.04 ABS PMMA 0.2 0.2~0.4 PBT 0.1 PA 1.5~2.3 POM 0.4 PC 0.2 m-PPE < 0.1 - 3 - 0.5 1 23℃水中 100×100×t2mm平板 23℃水中 100×100×t2mm平板 0.4 5010R5 5010R5 5010G30 5010GN1-30AM 0.3 吸水率 (%) 吸水率 (%) 5010G30 5010GN1-30AM 0.2 0.1 0.1 0.0 0.01 0 10 20 30 40 50 60 70 1 10 浸漬日数 (day) 図 2-3 各グレードの吸水曲線 図 2-4 各グレードの吸水曲線(両対数プロット) 0.14 0.8 100×100×t2mm平板 : 5010G30 100×100×t2mm平板 : 5010G30 120℃スチーム 0.7 0.12 60℃水中 0.6 0.10 寸法変化率 (%) 吸水率 (%) 100 浸漬日数 (day) 0.5 0.4 23℃水中 0.3 0.08 0.06 0.04 0.2 23℃×65%RH 0.02 0.1 0.0 0.00 0 10 20 30 40 50 60 70 0 浸漬日数 (day) 図 2-5 各種条件下での吸水曲線 0.1 0.2 0.3 0.4 吸水率 (%) 図 2-6 吸水率と寸法変化 - 4 - 0.5 0.6 0.7 0.8 3. 機械的性質 3.1 引張強度 引張強度は機械的特性の中で、最も基本となる重要な特性である。引張試験で得られる応力-ひずみ曲線 においては、材料によって変形パターンが異なると違った曲線を呈する。 図 3-1 は強化 PBT に見られる代表的な引張応力-ひずみ曲線の形状である。破壊までのひずみが比較的 小さく、直線的に立ち上がってそのまま破断する脆性破壊の形態を示す。一方、図 3-2 は非強化 PBT に見られ る代表的な引張応力-ひずみ曲線の形状である。破壊までのひずみが比較的大きく、延性破壊の形態を示す。 降伏点を過ぎた後にネッキング現象により断面収縮を起こすが、くびれの伝播終了後に再び応力が立ち上がり、 ついには脆性破壊に至る。引張り強さは以下の式で算出される。 引張応力 σ= P/A P : 破壊または降伏荷重, A : 試験片の断面積 降伏点 破壊 応力 応力 破壊 ひずみ ネッキング ひずみ 図 3-1 強化 PBT の引張応力-ひずみ曲線例 図 3-2 非強化 PBT の引張応力-ひずみ曲線例 引張強度には温度依存性がある。高温では強度が低下してひずみが増加する(柔らかくなる)傾向を示し、反 対に低温では強度が向上してひずみが小さくなる(硬くなる)傾向を示す。ノバデュランの代表的なグレードにつ いて、引張応力-ひずみ曲線を図 3-3~図 3-5 に、引張特性の温度依存性を図 3-6 に示す。 一般の成形品にはウェルド部を生じることが多く、ウェルド部においては強度が低下することがある。図 3-7 に PBT のウェルド強さの温度依存性を示す。一般に GF 強化 PBT では、ウェルド部で GF 配向の乱れ等が生じる ため強度が低下する。非強化 PBT では強度低下は小さいが、成形条件や成形品形状によってウェルド部に十 分な圧力がかからない場合等には、ウェルド強度が低下する場合もある。 また、樹脂の流動方向の異方性によっても強度に違いが生じる。流動方向に直角な方向(TD 方向)と平行な 方向(MD 方向)の異方比(TD/MD 比)は 100%を下回り、TD 方向の強度が低くなる傾向がある。非強化 PBT で は比較的異方比は 100%に近い値となるが、GF 強化 PBT では GF の補強効果に異方性があるため、異方比は GF15%強化グレードで 75%程度、GF30%強化グレードで 50%程度となる(図 3-8)。 実製品では前述のようなウェルド部や流動配向の影響による強度低下に注意して設計する必要がある。 - 5 - 200 120 試験方法 : ISO527-1,2 試験速度 : 5mm/min 試験方法 : ISO527-1,2 試験速度 : 5mm/min 180 -40℃ 100 -20℃ 160 0℃ -40℃ 140 23℃ 80 引張応力 (MPa) 引張応力 (MPa) 120 0℃ 60 23℃ 40℃ 100 60℃ 80℃ 80 100℃ 40 120℃ 50℃ 60 80℃ 40 20 120℃ 20 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 0.0 引張ひずみ (%) 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 引張ひずみ (%) 図 3-3 5010R5 の引張応力-ひずみ曲線 図 3-4 5010G30 の引張応力-ひずみ曲線 240 140 試験方法 : ISO527-1,2 試験速度 : 5mm/min 試験方法 : ISO527-1,2 試験速度 : 5mm/min -40℃ 120 200 -20℃ 5010GN1 -30AM 5010G30 23℃ 100 80 引張強さ (MPa) 引張応力 (MPa) 160 50℃ 60 5010G15 120 80℃ 5010R5 120℃ 80 40 40 20 0 0 2 4 6 8 10 0 -80 (23℃) -40 0 40 温度 (℃) 引張ひずみ (%) 図 3-5 5010G15 の引張応力-ひずみ曲線 図 3-6 引張強さの温度依存性 - 6 - 80 120 160 200 試験方法 : ASTM D638 試験速度 : 5mm/min 180 160 引張強さ (MPa) 140 120 80 60 種類 グレード MD方向 曲げ強さ (MPa) 非強化PBT 5010R5 5010G15 5010G30 90 151 204 88 113 111 98% 75% 54% 曲げ弾性率 (MPa) 非強化PBT 5010R5 5010G15 5010G30 2480 5300 9200 2450 3700 4500 99% 70% 49% 5010G30 (非ウェルド部) 5010G30 (ウェルド部) 100 項目 強化PBT 5010R5 (非ウェルド部) (ウェルド部) 100×100×t3mmプレート フィルムゲート 40 20 (23℃) 0 -80 強化PBT TD方向 TD/MD比 -40 0 40 80 120 160 温度 (℃) 図 3-7 ウェルド強さの温度依存性 TD方向 (流動直角方向) 切り出し MD方向 (流動方向) 短冊状曲げ試験片 (100×10×t3mm) 図 3-8 強度・弾性率の異方性 3.2 曲げ強度 曲げ強度の試験方法には 3 点曲げ法と 4 点曲げ法があるが、通常は 3 点曲げ法で測定される。たわみの小さ い場合の曲げ強さは以下の式で算出される。 曲げ応力 σ= 3・P・L P : 最大荷重, L : 支点間距離 2・b・h2 b : 試験片の幅, h : 試験片の厚み PBT の曲げ応力-ひずみ曲線は、引張試験の場合と類似の傾向を示すが、引張試験で見られたネッキング 現象は曲げの場合は見られない。曲げ特性も引張特性と同様に温度依存性がある。また曲げ弾性率は、曲げ 応力-ひずみ曲線の初期直線部の勾配から求められ、材料の剛性を示す指標として使用される。ノバデュラン の代表的なグレードについて、曲げ応力-ひずみ曲線を図 3-9~図 3-11 に、曲げ特性の温度依存性を図 3-12、 図 3-13 に示す。 3.3 圧縮強度 圧縮は引張と荷重方向が逆になるため、圧縮強さは引張の場合と同様に以下の式で求められる。圧縮強さの 温度依存性を図 3-14 に示す。 圧縮応力 σ= P/A P : 破壊または降伏荷重 A : 試験片の断面積 3.4 せん断強度 成形品等をパンチで打ち抜いたり、切断したりする際に要する力をせん断力という。せん断強度の測定は、平 板状試験片の中央部から円板を打ち抜く方法等で測定する。せん断強さは以下の式で求められる。せん断強さ の温度依存性を図 3-15 に示す。 せん断応力 σ= P π・D・h P : 最大荷重 D : 打ち抜き円板の直径 h : 試験片の厚み - 7 - なお、せん断弾性率(横弾性係数)G と引張弾性率(縦弾性係数)E との関係は、ポアソン比ν(PBT の場合 0.35~0.40 程度)を用いて以下のように表される。 E G = 2(1+ν) 3.5 衝撃強度 衝撃強度は高速変形における材料の強度を表す。金属の場合に比べると、プラスチックでは耐衝撃性が問題 となることが多い。代表的な衝撃試験方法としては以下のような方法があるが、通常はアイゾット衝撃試験または シャルピー衝撃試験の測定値を参考とすることが多い。 (1) 振り子の運動エネルギーによる衝撃試験 : アイゾット衝撃試験、シャルピー衝撃試験 (2) 落体の運動エネルギーによる衝撃試験 : 落錘衝撃試験、落球衝撃試験 (3) 高速変形による衝撃試験 : 引張衝撃試験 成形品にノッチ等のシャープコーナーがあると、衝撃を受けた際に応力が集中して破壊起点となり、破壊が起 こりやすくなる。一般に衝撃強度は、ノッチの角度やコーナー部の R に対する依存性(ノッチ感度)が見られるた め、成形品の耐衝撃性を高めるためにはコーナー部に R を取ることが重要となる。PBT の衝撃強さの温度依存 性とノッチ R 依存性を図 3-16、図 3-17 に示す。 280 90 試験方法 : ISO178 試験速度 : 2mm/min 試験方法 : ISO178 試験速度 : 2mm/min -40℃ 80 -20℃ 23℃ 240 0℃ 70 23℃ 200 60 40℃ 曲げ応力 (MPa) 曲げ応力 (MPa) 40℃ 50 40 160 60℃ 80℃ 120 100℃ 30 60℃ 120℃ 80 80℃ 20 100℃ 120℃ 40 10 0 0 0 2 4 6 8 10 12 14 0 1 2 3 4 5 6 7 曲げひずみ (%) 曲げひずみ (%) 図 3-9 5010R5 の曲げ応力-ひずみ曲線 図 3-10 5010G30 の曲げ応力-ひずみ曲線 - 8 - 8 280 200 試験方法 : ISO178 試験速度 : 2mm/min -40℃ 180 試験方法 : ISO178 試験速度 : 2mm/min 5010GN1 -30AM 5010G30 240 -20℃ 160 23℃ 200 140 5010G15 曲げ強さ (MPa) 曲げ応力 (MPa) 120 50℃ 100 80℃ 160 120 5010R5 80 120℃ 60 80 40 40 20 0 -80 0 0 2 4 6 8 10 12 (23℃) -40 0 40 80 120 160 温度 (℃) 曲げひずみ (%) 図 3-11 5010G15 の曲げ応力-ひずみ曲線 図 3-12 曲げ強さの温度依存性 180 試験方向 : MD方向 試験片 : 12.7×12.7×6.35mm 試験速度 : 1mm/min 160 14000 試験方法 : ISO178 試験速度 : 2mm/min 圧縮強さ (MPa) 12000 140 5010GN1 -30AM 5010G30 120 100 80 5010G30 60 40 10000 20 (23℃) 0 曲げ弾性率 (MPa) 0 40 80 120 160 温度 (℃) 8000 図 3-14 圧縮強さの温度依存性 5010G15 6000 70 試験方法 : JIS K7214 試験速度 : 1mm/min 60 4000 せん断強さ (MPa) 50 5010R5 2000 40 5010G30 30 5010R5 20 0 -80 10 (23℃) -40 0 40 80 120 (23℃) 160 0 温度 (℃) 0 40 80 温度 (℃) 図 3-13 曲げ弾性率の温度依存性 図 3-15 せん断強さの温度依存性 - 9 - 120 160 350 試験方法 : ASTM D256 試験方法 : ASTM D256 3.2mmtノッチ付きアイゾット衝撃強さ (J/m) 3.2mmtノッチ付きアイゾット衝撃強さ (J/m) 250 200 150 100 5010G30 50 5010R5 300 250 200 150 100 50 5010R5 (23℃) 0 -80 -40 0 40 80 120 0 0.01 160 0.1 1 ノッチR (mm) 温度 (℃) 図 3-16 衝撃強さの温度依存性 図 3-17 衝撃強さのノッチ R 依存性 3.6 強度に対する GF 含有量の影響 PBT は GF 強化によって強度や耐熱性が大幅に向上する。強度は GF 含有量に応じて向上するが、含有量が 多くなるとその向上度合いは鈍くなる。一方、弾性率はほぼ GF 量に応じて向上する。耐熱性の指標となる荷重 たわみ温度は、GF 量に応じて急激に向上し、GF15%以上では高いレベルを保持する。図 3-18~図 3-21 に静 的強さおよび衝撃強さ、弾性率、荷重たわみ温度の GF 含有量依存性を示す。 14 ノッチ付きシャルピー衝撃強さ (kJ/m2) 300 250 引張/曲げ強さ (MPa) 曲げ強さ 200 150 引張り強さ 100 50 0 12 10 8 6 4 2 0 0 10 20 30 40 50 0 10 GF含有量 (%) 20 30 40 50 GF含有量 (%) 図 3-18 静的強さの GF 含有量依存性 図 3-19 衝撃強さの GF 含有量依存性 250 16000 低荷重 0.45MPa 14000 200 高荷重 1.80MPa 荷重たわみ温度 (℃) 曲げ弾性率 (MPa) 12000 10000 8000 6000 150 100 4000 50 2000 0 0 0 10 20 30 40 0 50 図 3-20 弾性率の GF 含有量依存性 10 20 30 40 GF含有量 (%) GF含有量 (%) 図 3-21 荷重たわみ温度の GF 含有量依存性 - 10 - 50 3.7 耐疲労特性 繰り返し荷重が加わる部品は樹脂の疲労劣化が進むため、樹脂の破壊応力以下の応力で破壊する場合があ る。繰り返し荷重が加わる部品設計では、疲労強度を考慮することが必要となる。図 3-22、図 3-23 にノバデュラ ンの疲労特性を示す。引張りまたは圧縮の一方のみの応力負荷よりも、両方の応力負荷がかかる場合に疲労劣 化は進みやすくなる。両方の応力負荷がかかる場合は、静的な破壊応力に対して半分以下の応力で破壊する ことがわかる。 t=3.0mm 20Hz 50 45 90 圧縮(片振り) 40 25 70 応力 (MPa) 30 圧縮(片振り) 80 引張(片振り) 35 応力 (MPa) t=3.0mm 20Hz 100 60 引張(片振り) 50 40 曲げ(両振り) 引張圧縮(両振り) 15 30 曲げ(両振り):80℃ 10 20 曲げ(両振り):120℃ 5 10 曲げ(両振り) 20 引張圧縮(両振り) 0 1E+4 1E+5 1E+6 0 1E+4 1E+7 1E+5 サイクル数 図 3-22 1E+6 1E+7 サイクル数 5010R5 の疲労特性 図 3-23 5010G30 の疲労特性 3.8 クリープ特性 応力が加わった状態で製品を長時間放置すると、しだいにクリープ変形を生じる。応力の負荷時間が長くなる と、樹脂の破壊応力以下でも破壊する場合がある。定常荷重が加わる部品設計では、クリープによる変形や破 壊に注意する必要がある。 図 3-24、図 3-25 に非強化 PBT(5010R5)と GF 強化 PBT(5010G30)の曲げクリープひずみ特性を示す。クリ ープひずみ量は応力や温度によって異なるが、温度や応力が比較的低い場合は、ひずみ量が応力にほぼ比 例するためクリープ弾性率を用いて表すことができ(図 3-26、図 3-27)、任意の応力についてひずみ量の推測 が可能である。 見かけクリープ弾性率 = 応力 クリープひずみ 温度や応力が非常に高い場合は、ひずみが急激に立ち上がり破壊に至る(加速クリープ)現象が起こるため、 注意する必要がある。図 3-28、29 に非強化 PBT(5010R5)と GF 強化 PBT(5010G30)について、引張クリープの 場合のクリープ破壊曲線を示した。上記のクリープ弾性率による推測が可能となるのは、負荷応力が概ねクリー プ破壊応力の半分以下の場合である。 クリープ特性は材料の弾性率に大きく依存するため、GF 量が多くなるとクリープひずみも小さくなる。図 3-30 にクリープひずみの GF 量依存性を示す。 - 11 - 4.0 1.0 曲げクリープ 15MPa(150℃) 曲げクリープ 0.9 3.5 7MPa(120℃) 45MPa(23℃) 0.8 2.5 7MPa(80℃) 2.0 30MPa(23℃) 1.5 3.5MPa(120℃) 1.0 3.5MPa(80℃) 15MPa(23℃) 0.5 7MPa(23℃) クリープひずみ (%) クリープひずみ (%) 3.0 0.1 1 10 時間 (hr) 100 7MPa(150℃) 0.4 15MPa(23℃) 7MPa(120℃) 7MPa(80℃) 0.3 7MPa(23℃) 0.0 0.1 1 10 時間 (hr) 100 1000 図 3-25 5010G30 の曲げクリープひずみ特性 7000 曲げクリープ 応力 : 7MPa 曲げクリープ 応力 : 15MPa 6000 23℃ 1500 1000 見かけクリープ弾性率 (MPa) 2000 500 23℃ 5000 4000 3000 80℃ 120℃ 2000 150℃ 1000 80℃ 120℃ 0 0 0.1 1 10 時間 (hr) 100 50 0.1 1000 図 3-26 5010R5 の曲げクリープ弾性率 1 10 時間 (hr) 100 1000 図 3-27 5010G30 の曲げクリープ弾性率 100 引張りクリープ 45 引張りクリープ 90 40 80 23℃ 30 25 80℃ 20 70 破壊応力 (MPa) 35 破壊応力 (MPa) 15MPa(80℃) 30MPa(23℃) 0.1 2500 見かけクリープ弾性率 (MPa) 0.5 1000 図 3-24 5010R5 の曲げクリープひずみ特性 3000 15MPa(120℃) 0.6 0.2 3.5MPa(23℃) 0.0 0.7 15 23℃ 60 80℃ 50 40 120℃ 30 120℃ 10 20 5 10 0 0 0.1 1 10 時間 (hr) 100 図 3-28 5010R5 の引張クリープ破壊特性 1000 0.1 1 10 時間 (hr) 100 図 3-29 5010G30 の引張クリープ破壊特性 - 12 - 1000 2.0 曲げクリープ 応力 : 30MPa 温度 : 23℃ 1.8 5010R5 クリープひずみ (%) 1.6 1.4 1.2 1.0 5010G15 0.8 0.6 5010G30 0.4 5010G45 0.2 0.0 0.1 1 10 時間 (hr) 100 1000 図 3-30 曲げクリープ特性の GF 量依存性 3.9 応力緩和 製品に一定応力が加わるとひずみが生じるが、そのひずみ量を一定のまま長時間保持した場合、材料のクリ ープ特性のため次第に内部応力が緩和される。この特性を応力緩和特性という。図 3-31、図 3-32 に非強化 PBT(5010R5)と GF 強化 PBT(5010G30)の引張応力緩和特性を示す。 45 80 引張り試験 温度 : 23℃ 40 35 40MPa 応力 (MPa) 応力 (MPa) 30MPa 20 20MPa 15 80MPa 60 30 25 引張り試験 温度 : 23℃ 70 50 60MPa 40 40MPa 30 20 10 10MPa 20MPa 10 5 0 0 1 10 100 1 1000 10 100 1000 時間 (hr) 時間 (hr) 図 3-31 5010R5 の応力緩和曲線 図 3-32 5010G30 の応力緩和曲線 3.10 耐摩擦・摩耗特性 摺動特性の評価法には、テーバー摩耗、スラスト摺動、ピン-板摺動等、摺動形態に合わせた各種の方法が あるが、ここでは代表的なスラスト摺動試験による PBT の摺動特性の結果を示す(表 3-1~表 3-3)。スラスト摺動 試験では、図 3-33 に示すようなリング状の樹脂成形品または金属部品を用い、面圧をかけた状態で一方を固定 し他方を回転させて摺動特性を評価する。摺動特性を表す代表的な項目としては以下のようなものがある。 (1) 動摩擦係数 : 摺動時に発生する摩擦抵抗の大きさを表す。 (2) 比摩耗量 : 一定条件下での摺動摩耗量を表す。面圧、摺動距離等の条件で規格化した値が用 いられ、摩耗係数とも呼ばれる。 (3) 限界 PV 値 : 摺動時の面圧 P と線速度 V の条件において、成形品が摺動摩擦熱で溶融して試験不 可能となる摺動限界を表す。 - 13 - PBT の動摩擦係数は概ね 0.1~0.4 程度の値となる。摩耗量は対同樹脂(PBT 同士)の場合よりも対異樹脂 (POM 等)の方が小さくなる傾向があるため、条件の厳しい摺動部品では異樹脂の組合せを選定することが望ま しい。対金属摺動では、非強化 PBT に比べて GF 強化 PBT の摩耗量が大きくなりやすい。一方で摺動限界(限 界 PV 値)は対樹脂よりも、放熱性に優れた対金属の方が高くなる。 相手材 自己 汎用POM 鋼 (S45C) 面圧 0.3 MPa 0.3 MPa 0.3 MPa 線速度 0.1 m/s 0.1 m/s 0.1 m/s 5010R5 0.12 0.34 0.30 5010G30 0.15 0.15 0.41 面圧 1.0 MPa 0.3 MPa 0.1 MPa 1.0 MPa 0.3 MPa 0.15 MPa 0.1 MPa 0.05 MPa 1.0 MPa 0.3 MPa 0.1 MPa 線速度 0.03 m/s 0.1 m/s 0.3 m/s 0.03 m/s 0.1 m/s 0.1 m/s 0.3 m/s 0.3 m/s 0.03 m/s 0.1 m/s 0.3 m/s 5010R5 0.02 / 0.02 0.01 / 0.01 0.72 / 0.72 0.01 / 0.03 - 0.00 / 0.05 - 0.01 / 0.10 0.09 / 0.00 0.06 / 0.00 0.02 / 0.00 5010G30 0.68 / 0.68 0.32 / 0.32 0.43 / 0.43 0.01 / 0.06 0.01 / 0.06 - 0.01 / 0.08 - 0.23 / 0.00 0.12 / 0.00 0.09 / 0.00 5010R5 0.08 0.03 1.23 0.65 0.32 5010G30 0.07 0.07 1.10 0.49 0.37 表 3-1 動摩擦係数 相手材 自己 汎用POM 鋼 (S45C) 表 3-2 比摩耗量 (mm3/kg・km): 20hr 実施 線速度 0.1 m/s 0.1 m/s 0.2 m/s 0.5 m/s 1.0 m/s 相手材 自己 汎用POM 鋼 (S45C) 表 3-3 限界 PV 値 (MPa・m/s) ※ 汎用 POM : ユピタール F20-03 ※ 表 3-1~表 3-3 中の値は記載試験片での結果一例であり、 φ20mm 成形品形状や表面状態によって異なる場合があります。 15mm φ26mm 摺動面 回転軸 図 3-33 スラスト摺動試験方法 - 14 - 4. 熱的性質 4.1 融点、結晶化温度、ガラス転移点 一般に PBT の融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解吸熱ピーク位置で求められることが多 く、融点は 224℃程度となる。 PBT の結晶化温度(Tc)も同様に、DSC 測定による結晶化発熱ピーク位置で求められることが多い。Tc はグレ ードによっても異なり、概ねベースレジンの場合で 170~175℃、コンパウンド品で 185~195℃程度になる。Tc の 値は結晶化速度の目安と考えられ、一般に Tc の高いものはより高い温度から結晶化が始まるため、結晶化速度 が大きいと考えられる。PBT は比較的結晶化速度の速い樹脂で、ハイサイクル成形に適している。結晶化速度 の測定にも DSC 等が使用され、DSC を用いた半結晶化時間測定結果では、ポリアセタール(POM)についで結 晶化が速いという結果が報告されている。 PBT のガラス転移点(Tg)は測定法により異なり、37~53℃程度の値が報告されている。 4.2 融解熱、比熱、熱伝導率 DSC 測定で求められる PBT の融解熱および結晶化熱は約 50 J/g 程度となる。コンバウンド品の場合は、GF やその他成分添加の影響で値が小さくなる傾向を示し、GF30%強化 PBT の場合は 35 J/g 程度となる。 比熱も DSC 測定等で求められる。比熱は温度によって変化する(図 4-1)が、実用温度域における PBT の比 熱は 1.2 J/(g・℃)程度となる。この値は一般合成樹脂と大差はなく、代表的な金属(鉄、銅、アルミニウム等)に 比べて約 3 倍に相当する。また比熱の値は結晶化度の影響を受け、結晶化度が高くなると比熱はわずかながら 小さくなる。 PBT の実用温度域における熱伝導率は 0.22 W/(m・K)程度であり、GF 強化 PBT では 0.29 W/(m・K)程度 になる。この値も一般合成樹脂と大差ないレベルであるが、代表的な金属の数百~数千分の一程度であり、金 属に比べると非常に小さい値となる。 9 DSC法(10℃/min) 8 比熱 (J/(g・℃)) 7 6 5 4 3 2 1 0 0 50 100 150 温度 (℃) 200 図 4-1 比熱の温度依存性(5010R5) - 15 - 250 300 4.3 熱膨張係数、PVT 曲線 PBT の線膨張率はやや温度依存性を持つが、23℃において 1.1×10-4(1/℃)程度となる。この値は代表的な 金属の 5~10 倍程度であり、金属に比べるとやや大きい値となる。GF 強化 PBT では線膨張率は小さくなり、流 動配向による異方性が生じるため、流動方向(MD 方向)の線膨張率は金属の値に近づく。図 4-2、図 4-3 に線 膨張係数の温度依存性と GF 含有量依存性を示す。また圧力(P)、体積(V)、温度(T)の関係を表した PVT 曲 線を図 4-4、図 4-5 に示す。 25 12 10 MD方向 (23℃) 5010R5 (TD方向) 5010R5 (MD方向) 15 5010G30 (TD方向) 10 線膨張係数 (10-5/℃) -5 線膨張係数 (10 /℃) 20 8 6 4 5010G30 (MD方向) 5 2 0 0 0 20 40 60 80 100 120 140 0 10 20 温度 (℃) 30 40 50 GF含有量 (%) 図 4-2 線膨張係数の温度依存性 図 4-3 線膨張係数の GF 含有量依存性 1.00 0.85 圧力 P 0.1MPa 40MPa 80MPa 3 120MPa 160MPa 0.85 圧力 P 0.80 比容 V (cm /g) 0.90 3 比容 V (cm /g) 0.95 0.80 0.1MPa 40MPa 80MPa 0.75 120MPa 160MPa 0.70 0.65 0.75 0.70 0.60 0 50 100 150 200 250 300 350 0 温度 T (℃) 50 100 150 200 250 300 350 温度 T (℃) 図 4-4 5010R5 の PVT 曲線 図 4-5 5010G30 の PVT 曲線 4.4 熱変形温度 耐熱性の一つの指標である熱変形温度は、荷重たわみ温度の値がしばしば使用される。PBT は GF 強化によ って耐熱性が大幅に向上する(図 4-6)。PBT の荷重たわみ温度は概ね以下の値となる。 非強化 PBT 応力 (5010R5) 強化 PBT (5010G30) 1.80MPa 54℃ 202℃ 0.45MPa 136℃ 220℃ - 16 - 250 低荷重 0.45MPa 荷重たわみ温度 (℃) 200 高荷重 1.80MPa 150 100 50 0 0 10 20 30 40 50 GF含有量 (%) 図 4-6 荷重たわみ温度の GF 含有量依存性 4.5 熱分解、燃焼性 PBT を融点以上の高温に放置すると、徐々に熱分解が起こる。PBT を成形機シリンダ内で滞留させた場合の 熱分解による分子量低下を、溶液粘度で測定した結果を図 4-7 に示す。温度が高くなるほど熱分解が進みやす くなることがわかる。また熱重量(TG)分析にて、窒素雰囲気下 20℃/min で測定した熱分解開始温度は 390℃ 程度になる(図 4-8)。 100 110 390℃ 80 255℃ 重量保持率 (%) 溶液粘度保持率 (%) 100 90 265℃ 80 60 40 280℃ 20 70 300℃ 0 60 0 2 4 6 8 10 滞留時間 (min) 12 14 50 16 図 4-7 5010G30 の滞留による溶液粘度低下 図 4-8 100 150 200 250 温度 (℃) 300 350 400 450 PBT の熱重量(TG)減少曲線 樹脂の難燃性の尺度としては UL94 規格が代表的である。PBT は UL94 で HB レベルの難燃性を有するが、 難燃グレードでは V-2 や V-0 レベルを達成する。もう1つの難燃性の尺度として、限界酸素指数(LOI)が用いら れる場合もあるが、各 UL 規格レベルに相当する PBT の LOI は概ね以下のようになる。 UL 規格 HB レベル相当(非強化) LOI = 23 程度 UL 規格 HB レベル相当(強化) LOI = 18~19 程度 UL 規格 V-2 レベル相当 LOI = 24 以上 UL 規格 V-0 レベル相当 LOI = 30 以上 PBT の熱分解により発生するガスは、可燃性のテトラヒドロフラン(THF)が主成分である。PBT の引火温度は 概ね 300℃以上であり、発火温度は 400℃以上である。 - 17 - 5. 電気的性質 5.1 絶縁耐力 絶縁耐力の評価法には、絶縁破壊強さや耐電圧の測定があり、前者は後者よりもやや高い値となる。PBT の 絶縁破壊強さは 20MV/m 前後となり、他の汎用エンプラと同レベルである。他材料との比較を図 5-1 に示す。GF 等を含有すると絶縁耐力が向上し、GF 強化系は非強化系に比べて高い値となる。絶縁破壊強さは温度や成形 品厚みに対する依存性がある(図 5-2、図 5-3)。また加水分解等により PBT の分解が起こると、絶縁破壊強さは 低下する。高温放置後、および湿熱処理後の値を図 5-4、図 5-5 に示す。 汎用プラ PVC PP PE PS ABS PMMA 汎用エンプラ PBT PA POM PC m-PPE 熱硬化性樹脂 ゴム 陶器 ガラス 雲母 0 10 20 30 40 50 絶縁破壊強さ (MV/m) 60 70 150 80 図 5-1 各種材料の絶縁破壊強さ比較 30 28 t=1.0mm 5010G30 24 温度 : 23℃ 25 5010GN1-30AM 絶縁破壊強さ (MV/m) 絶縁破壊強さ (MV/m) 26 5010G15 22 20 5010R5 18 16 -60 5010G30 20 5010R5 15 10 5 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 140 0 0.5 160 温度 (℃) 図 5-2 絶縁破壊強さの温度依存性 1.0 1.5 2.0 2.5 厚み (mm) 図 5-3 絶縁破壊強さの厚み依存性 - 18 - 3.0 3.5 24 24 22 18 5010G30X4 20 放置温度 : 150℃ t=2.0mm 絶縁破壊強さ (MV/m) 絶縁破壊強さ (MV/m) 22 5010G30 20 16 14 12 10 8 6 18 14 12 10 処理条件 : 121℃,2atm (100%RH) t=2.0mm 8 6 4 4 2 2 0 5010G30 16 0 0 100 200 300 400 500 600 700 0 図 5-4 高温放置後の絶縁破壊強さ 20 40 60 80 100 120 140 160 処理時間 (hr) 処理時間 (hr) 図 5-5 湿熱処理後の絶縁破壊強さ 5.2 絶縁抵抗 絶縁体に 2 個の電極を設けて電圧を印加した際に、絶縁体を流れる電流は内部電流と表面電流の合計とな る。内部電流に対する抵抗値を体積抵抗、表面電流に対する抵抗率を表面抵抗と呼ぶ。絶縁体である PBT の 抵抗率は高く、室温付近における体積抵抗率は 10-14Ω・m 程度、表面抵抗率は 10-15Ω程度である。他材料との 比較を図 5-6 に示す。これらの抵抗率も温度依存性が見られる。(図 5-7、図 5-8) 汎用プラ PVC PP PE PS ABS PMMA 汎用エンプラ PBT PA POM PC m-PPE 熱硬化性樹脂 ゴム 陶器 ガラス 雲母 1E+06 1E+07 1E+08 1E+09 1E+10 1E+11 1E+12 1E+13 1E+14 1E+15 1E+16 1E+17 体積抵抗率 (Ω・m) 図 5-6 各種材料の抵抗率比較 - 19 - 1.E+15 1.E+17 1.E+16 5010R5 5010R5 1.E+13 1.E+15 1.E+12 1.E+11 1.E+14 1.E+13 1.E+10 1.E+12 1.E+09 1.E+11 1.E+08 -60 5010G30 5010G30 表面抵抗率 (Ω) 体積抵抗率 (Ω・m) 1.E+14 -40 -20 0 20 40 60 温度 (℃) 80 100 120 140 1.E+10 -60 160 図 5-7 体積抵抗率の温度依存性 -40 -20 0 20 40 60 温度 (℃) 80 100 120 140 160 図 5-8 表面抵抗率の温度依存性 5.3 誘電特性 絶縁体に電圧をかけたとき、絶縁体表面に正と負の電荷が発生する現象を誘電分極という。誘電率(ε)はこ の誘電分極の大きさを表し、比誘電率は真空の誘電率(ε0=8.854pF/m)に対する比で表される。電圧として交 流電圧をかけた場合に、印加電圧に対して実電流が遅れる分の位相差(δ)の正接を誘電正接(tanδ)という。 誘電体に高周波交流電圧がかかる場合、ε×tanδに比例した電気エネルギー損失(誘電体損)分の発熱が起 こるため、高電圧や高周波機器の絶縁材料はεや tanδの小さいものが好ましい。 PBT の室温付近 1MHz における比誘電率は 3.2、誘電正接は 0.02 程度である。他材料との比較を図 5-9 に 示す。誘電特性にも温度や周波数に対する依存性がある。(図 5-10~図 5-13) 汎用プラ PVC PP PE PS ABS PMMA 汎用エンプラ PBT PA POM PC m-PPE 0 1 2 3 4 比誘電率 (-) 5 図 5-9 各種材料の誘電率比較 (60~106 Hz) - 20 - 6 7 8 5.0 0.025 周波数 : 10kHz 周波数 : 10kHz 4.8 0.020 誘電正接 (tanδ) 比誘電率 (-) 4.6 5010G30 4.4 4.2 0.015 5010G30 0.010 4.0 0.005 3.8 3.6 0.000 0 20 40 60 80 温度 (℃) 100 120 140 160 図 5-10 誘電率の温度依存性 0 20 40 60 80 温度 (℃) 100 120 160 図 5-11 誘電正接の温度依存性 4.2 0.030 温度 : 23℃ 温度 : 23℃ 4.0 0.025 5010R5 3.8 誘電正接 (tanδ) 5010GN1-30AM 比誘電率 (-) 140 3.6 5010G30 3.4 3.2 0.020 0.015 0.010 3.0 5010R5 2.8 2.6 1E+1 5010GN1-30AM 0.005 5010G30 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 1E+6 1E+7 1E+8 1E+9 0.000 1E+1 1E+10 周波数 (Hz) 図 5-12 誘電率の周波数依存性 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 1E+6 1E+7 1E+8 1E+9 1E+10 周波数 (Hz) 図 5-13 誘電正接の周波数依存性 5.4 耐トラッキング性 絶縁体表面に汚染物質(水,塩分,塵等)が付着した場合、比較的低電圧であってもリーク電流により劣化す る特性をトラッキング特性という。リレーケースやスイッチング基盤等の絶縁体では、耐トラッキング特性が重視さ れる。トラッキング特性の測定法には IEC 法等があり、CTI(Comparative Tracking Index)等の指数で表される。 UL 規格では以下のように、CTI 値によるランク分けがされている。 CTI : 600V 以上 PLC ランク : 0 400~250V 2 250~175V 3 ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ 600~400V PBT の非難燃グレードは概ね PLC1 相当以上の実力を有するが、難燃グレードでは PLC3 相当以下となるも のもある。 5.5 耐アーク性 プラスチックの表面でアーク放電を行うと、アーク熱でプラスチックが劣化し、やがては炭化して導通路を形成 - 21 - しアークが消滅する。このアーク消滅時間がプラスチックの耐アーク性の指標とされる。PBT 非難燃グレードの耐 アーク性は概ね 120sec 以上のレベルだが、難燃グレードでは 120sec 未満となるものもある。表 5-1 に他樹脂と の耐アーク性比較を示す。 樹脂 耐アーク性 (sec) PP > 140 PE > 130 PS > 130 ABS 93 PMMA > 130 PBT 125 PA6 140 PA66 > 140 POM > 240 PC 110 変性PPE 67 表 5-1 各樹脂の耐アーク性比較 5.6 耐コロナ性 導体の一部に電荷が集中すると、その部分に接触する気体が絶縁破壊を起こし、局所的な放電が発生する。 これをコロナ放電という。コロナ放電が起こると酸素原子、オゾン、酸化窒素、イオン類等が生じるため、プラスチ ックの劣化が促進され絶縁破壊に至る。 耐コロナ性は誘電損失の影響を受けやすいため、誘電体損の増大するガラス転移点(Tg)が室温に近い PBT は耐コロナ性があまり良くない。高電圧交流波や連続パルスがかかる電機部品で PBT を使用する際は、コロナ 放電対策に注意する必要がある。 - 22 - 6. 化学的性質 6.1 耐湿熱性 PBT は高温高湿環境下において、加水分解が起こり物性が低下する場合があるため、使用環境を考慮して 注意する必要がある。特に使用環境が厳しい場合は、5010G30X4 等の耐加水分解グレードの使用が望ましい。 図 6-1~図 6-4 にノバデュランの湿熱処理(85℃,95%RH)とプレッシャークッカー試験(PCT)加速処理(121℃, 2atm,100%RH)における強度変化を示す。PCT 処理では上記湿熱処理に比べて、15~20 倍程度の加速試験 になっていることがわかる。 160 160 処理条件 85℃,95%RH 5010G30X4 140 120 140 5010G30X4 120 5010G30 100 5010G15 引張強さ (MPa) 80 5010R5 60 80 40 40 20 20 0 5010R5 60 0 0 400 800 1200 1600 2000 0 20 40 処理時間 (hr) 図 6-1 湿熱処理後の強度変化 100 180 90 80 160 80 70 140 120 80 60 20 40 20 20 10 1200 1600 0 2000 40 引張破壊ひずみ 20 0 0 処理時間 (hr) 図 6-3 湿熱処理後の物性変化 140 引張強さ 30 60 0 160 100 30 引張破壊ひずみ 180 40 80 10 200 120 40 800 140 50 100 400 120 60 50 0 100 処理条件 121℃,2atm (100%RH) 70 引張強さ (MPa) 引張強さ (MPa) 引張強さ 引張り破壊ひずみ (%) 200 処理条件 85℃,95%RH 60 80 図 6-2 プレッシャークッカー処理後の強度変化 100 90 60 処理時間 (hr) 引張り破壊ひずみ (%) 引張強さ (MPa) 5010G30 100 処理条件 121℃,2atm (100%RH) 20 40 60 80 100 120 0 140 処理時間 (hr) 図 6-4 プレッシャークッカー処理後の物性変化 6.2 耐薬品性 PBT は結晶性樹脂であるため耐薬品性に優れており、ほとんどの有機溶剤や油類に対して耐性を持っている。 ただしエステル結合を有することから、強酸やアルカリには侵される場合がある。表 6-1~表 6-2 にノバデュラン の代表的な耐薬品性を示す。 - 23 - 薬品名 グレード 5010R5 5010G30 浸漬温度 浸漬日数 強度保持 重量増加 強度保持 重量増加 (℃) (day) 率 (%) 率 (%) 率 (%) 率 (%) < 無機薬品 > 10%塩酸 23 10%酢酸 23 10%硫酸 23 23 70 36%硫酸 5%アンモニア 23 10%NaOH 23 7 30 7 30 30 30 30 7 30 7 30 96 96 92 91 94 99 92 97 95 94 93 0.2 0.3 0.2 0.4 0.3 0.2 0.3 0.1 0.2 0.2 0.2 95 89 94 89 97 97 84 97 95 34 2 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 1.1 0.1 0.2 1.6 0.9 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 90 77 61 39 97 98 93 87 100 100 78 70 82 73 85 76 83 73 32 33 98 100 100 100 96 100 100 100 0.7 1.3 6.1 11.3 0.2 0.6 0.5 1.0 0.0 0.1 1.0 1.9 1.5 2.6 0.3 0.6 0.8 1.5 27.4 25.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.2 0.0 0.0 99 96 80 62 100 98 96 95 100 98 89 86 91 91 92 91 93 90 55 54 98 100 100 100 100 99 100 100 0.3 0.7 2.9 5.2 0.2 0.3 0.2 0.5 0.0 0.1 0.6 1.1 0.7 1.3 0.3 0.5 0.4 0.8 13.4 13.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.2 0.0 0.0 < 有機薬品 > 酢酸エチル 23 1.2ジクロロエタン 23 テトラクロロエチレン 23 トルエン 23 ヘプタン 23 アセトン 23 クロロベンゼン 23 メタノール 23 メチルエチルケトン 23 塩化メチレン 23 1.4ブタンジオール 23 エチレングリコール (不凍液100%) 23 エチレングリコール:水=1:1 23 イソプロピルアルコール 23 表 6-1 ノバデュランの耐薬品性(その 1) - 24 - 薬品名 グレード 5010R5 5010G30 浸漬温度 浸漬日数 強度保持 重量増加 強度保持 重量増加 (℃) (day) 率 (%) 率 (%) 率 (%) 率 (%) < ガソリン・オイル類 > ガソリン(有鉛) 23 ガソリン(無鉛) 23 レギュラーガソリン(無鉛) 60 ハイオクガソリン(無鉛) 60 レギュラーガソリン:メタノール =85:15 レギュラーガソリン:エタノール =80:20 60 60 23 トランスミッションフルイド 120 150 23 パワーステアリングフルイド 70 150 23 ブレーキフルイド 70 モーターオイル(シェル) シリコンオイル (東レシリコーンSH200) 水溶性切削油 (共石ソウルカットW-11) 23 23 70 23 70 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 7 30 30 7 30 7 30 7 30 7 30 表 6-2 ノバデュランの耐薬品性(その 2) - 25 - 100 100 100 100 - - - - - - - - 100 100 100 100 100 99 99 100 96 99 100 52 100 100 92 87 100 100 100 100 100 100 100 100 100 0.0 0.0 0.0 0.1 - - - - - - - - 0.0 0.0 0.4 0.7 0.9 1.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.6 0.8 0.0 0.0 0.3 0.6 0.0 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.2 0.2 100 100 100 100 89 81 89 81 72 57 80 66 100 100 100 100 100 75 100 100 96 99 100 64 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 0.0 0.0 0.0 0.1 0.6 1.1 0.4 1.0 1.9 3.3 1.1 2.5 0.0 0.1 0.3 0.6 0.6 0.8 0.0 0.0 0.0 0.4 0.4 0.7 0.0 0.0 0.2 0.4 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.2 7. 光学的性質 7.1 光線透過率 PBT は結晶性樹脂であるため一般の射出成形品は不透明であるが、フィルム等の非常に薄いものでは透明 になる場合がある。可視光線の透過率は肉厚に依存するが、非強化 PBT で厚さ 1mm の場合は 20~30%程度で あり、GF 強化系では透過率はやや小さくなる(図 7-1、図 7-2)。透過率は結晶化度の影響を受けるため、成形 条件等によっても変化することがある。また通常の着色品では透過率は非常に小さくなり、通常のブラック色では 100 100 80 80 60 透過率 (%) 透過率 (%) ほぼゼロとなる。 0.5mmt 1.0mmt 40 60 0.5mmt 40 1.0mmt 2.0mmt 20 2.0mmt 20 3.2mmt 3.2mmt 0 0 300 400 500 波長 (nm) 600 図 7-1 光線透過率(5010R5/NA) 700 300 400 500 波長 (nm) 600 700 図 7-2 光線透過率(5010G30/NA) 7.2 耐候性、耐光性 PBT は比較的耐紫外線性に優れているが、太陽光線等の紫外線照射を長時間受けると徐々に分解して劣化 する。太陽光線による劣化特性の評価方法としては、実際に太陽光のもとに暴露させる方法のほか、人工の紫 外線光源を用いた促進試験が行われる。紫外線光源としては、カーボンアークやキセノンアーク等が代表的で ある。試験法としては、屋外での使用を想定した雨有り試験(耐候性試験)と、屋内や直接雨を受けない環境を 想定した雨無し試験(耐光性試験)がある。 図 7-3、図 7-4 に促進耐候性試験(カーボンアーク)と屋外暴露試験による結果を示す。非強化 PBT (5010R5)の引張ひずみ特性の低下を見ると、促進試験では実暴露に比べて 10 倍程度の促進試験になってい ることがわかる。PBT は耐候処理による強度低下は比較的小さいが、引張ひずみは低下が見られる。GF 強化 PBT では強度的な問題を生じることは少ないが、非強化 PBT の場合は許容変位量の低下等に注意する必要が ある。 PBT の耐候性は着色カラーや分子量によって異なる(図 7-5、図 7-6)。一般に無着色(ナチュラル)グレード に比べて、着色(カラー)グレードの方が耐候性に優れる傾向にあり、特に黒色(ブラック)グレードが良好である。 またナチュラルグレードでは着色グレードに比べて、物性低下だけでなく変色等による外観変化も大きくなりや すいため、注意する必要がある。PBT の分子量は大きい方が耐候性が優れる傾向にあるが、流動性は低下する ため、製品設計を考慮してグレード選定する必要がある。 - 26 - 図 7-7、図 7-8 には耐光性試験結果を示す。耐候性の場合と同様に、引張ひずみにおける低下が顕著に見 られ、ナチュラル色よりもブラック色の方が優れる傾向にある。 200 100 200 90 180 80 160 140 70 140 120 60 100 50 サンシャインカーボンアーク BP63℃,雨有り(12/60分) 180 引張り強さ 引張り歪み 160 屋外暴露 (北九州市) 100 引張り強さ 引張り歪み 90 80 5010R5 40 20 40 20 10 20 0 200 400 600 処理時間 (hr) 図 7-3 耐候性(耐候促進試験) サンシャインカーボンアーク BP63℃,雨有り(12/60分) ASTM 4号(1mmt)試験片 70 引張強さ (MPa) 60 5010R3 5010R5 5010R5L 0 200 4 8 12 16 暴露時間 (month) サンシャインカーボンアーク BP63℃,雨有り(12/60分) ASTM 4号(1mmt)試験片 180 20 24 ブラック色 ナチュラル 色 160 30 MFR (g/10min) 5010R3 : 24 5010R5 : 27 5010R5L : 39 10 10 5010G30 0 ブラック色 ナチュラル色 5010R3 5010R 5010R5L 20 20 図 7-4 耐候性(屋外暴露試験) 50 40 30 5010R5 0 引張破壊ひずみ (%) 80 40 60 0 1000 800 50 80 30 5010G30 60 5010R5 100 60 0 70 5010G30 120 140 MFR (g/10min) 5010R3 : 24 5010R5 : 27 5010R5L : 39 5010R3 5010R5 120 5010R5L 100 80 5010R3 60 5010R5L 40 5010R5 20 0 0 0 500 1000 1500 処理時間 (hr) 2000 2500 図 7-5 耐候性へのカラーと粘度の影響 200 0 3000 1000 1500 処理時間 (hr) 2000 2500 3000 図 7-6 耐候性へのカラーと粘度の影響 200 サンシャインカーボンアーク BP83℃,雨無し 180 500 サンシャインカーボンアーク BP83℃,雨無し 180 160 160 引張強さ (MPa) 120 5010G30(ナチュラル色) 100 80 5010R5(ブラック色) 60 引張破壊ひずみ (%) 5010G30(ブラック色) 140 40 140 120 5010R5(ナチュラル色) 100 80 5010R5(ブラック色) 60 40 5010R5(ナチュラル色) 20 5010G30(ブラック色) 5010G30(ナチュラル色) 20 0 0 0 200 400 600 処理時間 (hr) 図 7-7 耐光性(引張強さ) 800 1000 0 200 400 600 処理時間 (hr) 図 7-8 耐光性(引張ひずみ) - 27 - 800 1000 引張破壊ひずみ (%) 40 引張強さ (MPa) 5010R5 80 引張破壊ひずみ (%) 引張強さ (MPa) 5010G30
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