川越天文同好会 機関紙 平成14年\(2002年\)月日発行

川越天文同好会 機関紙
2014 年(平成 26 年)
2 月 16 日発行
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ No/70 ☆☆☆☆☆☆
小江戸の星
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ KOEDO’s STAR ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ホームページ http://kawaten.kagennotuki.com/
<アイソン彗星>
中村 岳樹
2013 年 11 月 16 日 28h33m-28h46m 1 分 X12 コマ 彗星 コマ中心基準に合成 合計 12 分
30 ㎝反射 F4+MPCC+ST8300M(-30 度)
OAG9+QHY5Ⅱでオフアキシスガイド NJP+AGS-1 自宅天文台にて撮影 ステライメージ7で処理
CONTENTS
【天体ギャラリー】お正月休み太陽観測日記
(山内 拓 )
1∼5
【30 周年記念行事講演会】 川天記念講演会を終えて
(齋藤 裕志 )
6
これからの天文同好会
(谷川 政敏 )
7
30 周年記念行事講演会を終えて
(山内 拓 )
8
☆ 天文オタクの方向性
(松井 茂)
9∼12
☆ スターウォッチング肉眼計測
(谷川 政敏)
13∼17
☆ 【イベント報告】佐藤勝彦先生講演会他
(山内 拓 )
18∼27
編集後記
(
〃
)
28
お正月休み太陽観測日記
山内拓
今年は子供達が受験のため、お正月休み、帰省することもなく遠くに出かけることなく自宅で過ごし
ました。よって太陽撮影が日課でした。
お正月休みにできたことは太陽観測と、小江戸の星の【30周年記念行事講演会を終えて】および【イ
ベント紹介】およびこの記事の執筆と、
WindowsXP の終了を待たずしてへたりで交換となった会社のノートパソコン、XP Professonal から 7
Professonal の移行に伴う office2003 から 2007 へ移行そのため、
「500 円でわかる WARD2007、Excel2007、
Powerpoint2007」3 冊の勉強です。
できなかったことは赤道儀 SXD2 の使い方の習得、その他もろもろです。今頃は導入追尾完了、木星
撮影の予定だったのですが・・・。8 日間とは意外に短いものです。しぶんぎ座流星群の曇りの空振りもき
いたかもしれません(1 月 3∼4 日の極大は期待しましたが、曇りのため観測できず。)
しかしながら、これほど毎日毎日連続で太陽を観測撮影したことはなく(流石、関東の冬、8 日連続
でお日様が撮影できました)満足です。先ずは、びっくりの観測結果をご覧ください。
12 月 28 日
12 月 29 日
12 月 30 日
29、30 日はプロミネンスなく静寂な太陽でした。
1
12 月 31 日
1 月 1 日(太陽からのお年玉)
太陽系の 1/10 に達する巨大プロミネンスに
びっくり、その場で思わず代表谷川さんに
電話で報告、画像を谷川さん・中島さん、関
口さんに報告、関口さんに同好会 HP にアッ
プをお願い、次いで、天文仲間の鎌田さん、
小川さんに報告しました。
これほどの大きさのプロミネンスの発生は
少ないとのこと。しかも絶妙の位置です。
観測冥利に尽きますなあ。よかったぁ!
後日、【イベント紹介】その8の講演会の折、国立天文台の殿岡英顕先生に見ていただきました。
先生は「これほど大きなプロミネンスは珍しいですね。この様に薄く光球と明らかに区別できるプロ
ミネンスは静的プロミネンスであり大きくてもエネルギーは低く、太陽面から離れた磁力線に水素原子
およびチリなどが載つかって Hα 光を発光しているものです。小さいけれども、光球と区別できない濃
い動的プロミネンスの方がエネルギーは高い。フレア現象とはいえないですけど、珍しい大きさです
ね。」と言われました。
2
1月2日
巨大プロミネンス、影も形もなくなりました。
1月3日
左側に黒点が現れ始めました。
1月4日
3
3 日と同様なプロミネンスの状態です。
1月 5 日
黒点の移動で太陽の自転がよくわかります。朝から曇りで雲間の太陽を眺めつつ諦めかけていたら、
夕方になって太陽が完全に雲から出ました。撮れました。
1 月 6∼9 日は、仕方なく会社に行きました。また曇りの日もありました。よって、観測できませ
んでした。すいません。1 月 10∼13 日まで、続けて、観測することができました。黒点がどうなっ
たかをご覧願います。
1 月 10 日
1月 11 日
4
1 月 12 日
1 月 13 日
共通データ
太陽望遠鏡、コロナド ソーラマックス 40+ミード 2 倍ショートバロー
EOSKISSX2 スターショップ新改造による直焦点撮影
表面像 AE -2 or -1 1/3 アンダーで S サイズ 30 枚連写後、Registax6.0 で合成
ウェーブレット処理、PhotoshopEL5 で画像処理
プロミネンス像 マニュアル露出 L サイズ撮影後、PhotoshopEL5 で画像処理
私、遠くに出かけない晴れた休日は決まって太陽撮影です(昨年の観測日数 64 日)。いつもの習慣
で始めた太陽撮影、12 月 28∼31 日は、淡々と進んだのですが、1 月 1 日の“太陽からのお年玉”大
きなプロミネンスに遭遇、びっくりです。
連続で観察すると太陽の自転および活動の様子がよくわかります。
(太陽像は全て正像としました。
正確に南北があってなくてすいません。)
今回の連続した太陽観測により、大野裕明先生、中西昭雄先生が観測の面白さを説かれることがよ
くわかりました。天文学、眼視観望、天体写真、天体望遠鏡、宇宙開発(人工衛星、ロケット)
・・・
天体観測。天文は実に奥が深いですねぇ!
そもそも、お正月というものは地球が太陽を回る公転の区切りです。グレオリオ暦の 1 年は 365.2425
日です。
以上
P.S.この記事、WORD2003 で仕上げました。XP および WORD2003 で私は十分ですが???
5
「川天 30 周年記念行事講演会を終えて」
「天文放浪人」こと齋藤裕志
無事に川越天文同好会 30 周年記念行事も終わり、協力していただいた会員の皆様にはお疲れ様でした。
一時はアイソン彗星の消滅というハプニングのため一般参加者数減の心配があり、また 3 連休と重なり参加者
数は予想を大きく下まわりましたが本来の会員のための目的としては良かったと思います。私が担当した併設
の写真展においては当日、展示ボード自体の強度不足というアクシデントがあり、展示写真パネル落下の危惧
の中、取付けピンの追加で補強しなんとか乗り切る事が出来ました。
(2 枚破損しましたが!)記念行事講演
会では我々、特に 50 才以上の会員に取っては憧れの人である講演者の福島県田村市「星の村天文台」台長の
大野裕明氏の話しが聞け、直に話しが出来たことは大変うれしい事でありました。天文台が震災後、比較的早
くに復興出来たのが全国の支援者の協力に依ることだとか、それも大野台長の人柄のなせるものだと思います。
また、何度お話を伺っても大野氏の会話の旨さには脱帽させられる。下手な政治家よりも話し上手である。慰
労会では閉鎖した白河観測所や藤井氏の事とか、所有している望遠鏡の殆どが藤井氏からのお下がりで、御自
身で買われた事が殆ど無い事など、普段聞けないお話ができて大変に有意義な時間を過ごせました。川越天文
同好会 30 周年記念の節目として大野氏の講演を行った事は非常に良い企画だったと思います。今回は、谷川
氏を中心に各会員が協力して記念行事がうまくいったのだと思います。改めて今後、自分がどう星と向き合っ
て行くのかと考えるきっかけになったと思います。講演会後、遠い昔に買い求めた大野氏の著書「見ておもし
ろい 星雲・星団案内」にサイン(「吾妻山の星の狩人」と書いてある)を戴いた。この本は実際に小望遠鏡で
見た実用的なスケッチ集であり、各口径(6.5cm∼30cm)による見え方をスケッチで表現していて、観望派に
は大いに参考になる本である。最近観望派の私としては、初心に帰りスケッチ等に大いに活用するつもりです。
6
これからの天文同好会
∼30 周年記念行事を終えて
谷川 政敏
これからの川越天文同好会を考えると、幾つかの課題を乗り越える必要があるように思われる。
その中でもこれだけは是非に実現させる必要があると感じるのがコレ!。具体的には
『
共有から共生へ
』
と言う文言がその一つになろうと思う。
現在が良いとか悪いとかと言う単純な問答ではなく、経験しなくては分からん活動を身に付ける
必要を感じる。
例えば、「観測技術の向上を目指して情報交換と講習」・・・これは当たり前の定石中の定石。
ついで、「観測場所とか交通情報の交換」・・・これも普段やってる事の延長で事足りる。
これらは今まで話題になる度に改良もされて来たが、いずれも同好会内部だけの都合でしかない。
では、別の見方をして、「自分だけの満足で済ませて良いか?」となると、これは問題あり!です。
「個人の趣味なんだから勝手にやって何が悪い!」と言う言い分はすでに天文同好会に入る資格無
しであると思いもし、少なくても天文同好会に入会している以上は大変に勿体無い!
『個人主義』の本質とも違い、自分で責任を持てば何でも ok は、今や世間では通用しない社会にな
っているように思う。何かやればどこかに負担が掛かるのに気が付かないで居る人、多いです。 つ
まりは大なり小なり“他人”の範囲と重ならないと暮らしていけないと思うのです。天文趣味も社会
現象、自分の楽しみでありましょうが、家族も親戚もお隣も、、、少しは繋がっている筈です。特に同
じ趣味の仲間の繋がりは女房より強い。。。かもしれません。(笑)
しかし、時は移り「共有」ではなく、社会と繋がって生きる必要性を感
じる最今では、不透明ながらも次の大きな流れとして「共生」を置いてお
きたいと思うのです。
自分だけでやってる趣味と思っても、それはネットで繋がったり、イベン
トで繋がったり、勿論、天文同好会の例会とか観測会、観望会、等々で他
人との交流が有り、これを利用しない手は無い。
以前、天体観測は暗いイメージがあったが、最近は同名の歌まであり、
毎年のようにハイライトとなる現象も多く、その派手さは今や世間の表舞台であります。
根暗だった天文少年達よ(未だに自分では少年だと。。。汗)自分は主役なんだから、今少し取り巻
きではなく自分で主導して社会を動かす努力をして欲しい!そうすれば理念ではなく、本能的意識か
らも自分や他人を動かせる人間になれると思うのです。主張が実現しないと根暗のままです。
それが一緒に生きる事、つまりは「共生」としての活動です。
例えば、天体観測に行く時にちょこっと他の会員に声を掛けるとか、他の天文同好会と繋がる、
異趣味の人に教えを乞う etc、、、と言った行動をとるべきだと思うのです。
既に実践している方も多々あるので今更なのですが、多方面で社会と繋がっておくと良いと思う。
そうするとこれからの人生がより豊かになる事請け合いで、社会への突破孔を天文人生から開くのも
悪くはないと思うのです。
30 周年記念行事は今年で終了するけれども、10 年の計で「共生」は如何でしょうか?
7
了
【30周年記念行事講演会を終えて】
山内
拓
30 周年記念行事は川越クラッセで午後1時から、当会代表谷川さんの挨拶、次いで川崎天文同好会の
渋谷さんの来賓挨拶で始まりました。渋谷さんから「同好会は天文好きが二人いれば発足はできる。し
かし、何十年と続けることは難しくそして素晴らしい。」とのご祝辞を頂きました。まさしくその通り
です、いい言葉です。川崎天文同好会は今年で発足 60 年です。凄いです。その後、当会の 30 年の歴史
について谷川代表がプレゼンにより語られた後、メーンイベントの大野先生の御講演でした。
先生のご講演はご自分の天文と関わって来た経緯、歴代の彗星観察、隕石探索、震災からの星の村天
文台の復興についてなど、厚みのある内容でした。特に、震災を乗り越えて天文台を復興されたご体験
では、地震で星の村 65 センチ主望遠鏡のフォークの軸がぼっきり折れて落下、幸い望遠鏡が落ちたの
は床の鉄骨の間で主鏡の直撃は免れ、鏡には損傷はなかった。鏡は取り出し望遠鏡を再生、再生した望
遠鏡に絆と名付けた。壊れた鏡筒は天文台に地震のモニュメントとして設置されたとのことでした。写
真が生々しく、地震の凄さが伝わって来ました。星の村天文台付近は地盤が 60 センチずれたそうです。
天文に携わってこられた先生の思いおよび情熱が伝わって来る内容でした。大野先生の地震にくじける
ことなく、天文台を再開され、絆望遠鏡を設置されたお話を聴き、大変感心しました。
震災の時は、埼玉も揺れました。長い揺れがおさまり驚いて携帯電話をテレビにして見ると、報道も
パニックの様子、暫くして、燃えるコンビナートの状況、大津波の様子が映し出されました。それから
の毎日は、福島第一原発の事故、メルトダウン、水素爆発、放射性物質漏れ、人的物的被害の甚大さと
続き、埼玉の実生活では、電車が動かない、車にガソリンを入れられない、計画停電などの緊急事態が
続きました。阪神淡路大震災以来の衝撃でした。当事者の方は?と想像すらできません。
川越クラッセでの記念行事が終わり、その後の先生を囲んでの慰労会は楽しく、先生は「天文マニア
の皆さんに囲まれている私は幸せだ。いつまでも元気で若々しく行きましょう。」と言われました。
30 周年記念行事講演会を行うという話を代表の谷川さんに聞いた 1 年ほど前は、私 2007 年入会、入
会 7 年めで全くピンとこなかったのですが、川崎天文同好会の 60 周年記念に出席させていただき、節
目は大切と思いました。天体望遠鏡店で「川越天文同好会の山内です。」と名乗ると「歴史ある同好会
ですね。」と言われます。新入会の頃は???でしたが、入会 7 年めにして歴史あると言われることに慣
れてきました。
講演会当日、私は記録係としてビデオに進行全てを収めました。このビデオを 40 周年、50 周年・・・
で見られるよう、出席していただいた皆様と、会員諸氏の健康を祈ります。天文学では 100 万年以下は
短期間!いつもでも元気で若々しく行きましょう。
何よりも、会員 19 名が出席し、一堂に会しえたことが好ましく思えます。
8
天文オタクの方向性
松井
茂
いろいろな人に趣味は何ですかと聞かれて、天体写真と答えると、
「まあロマンチック」
とか、「高尚な趣味ですね」とかいう返事が返ってくることが多い。しかし、その実態は、
限りなくオタクに近いので、私は、自分のこの趣味を天文オタクと言っている。
すなわち、新月前後の週末は、アストロGPVを見ながらそわそわし、天気がよければ、
ただひたすら空の暗い所に出かけ、望遠鏡とカメラとパソコンをセッティングして、夜通
しパソコンのモニターを見ながら撮影に没頭し、月がでていたり、天気の悪い週末は、撮
影した画像の処理や、機材の手入れをして過ごしてしまうのである。
天文を趣味とする人のタイプはいろいろある。学問を無視したオタク的な発想で、これ
を分類すると、まず、やっていることで分けると、写真派と観望派というのがある。多く
の人は、写真も観望もやるが、どちらかに偏っていることが多い。現地で費やしている時
間を考えると、私は、8:2の割合で写真派である。
写真派は、太陽、月、惑星、星団星雲、彗星、流星など、様々な天体をねらい、できる
だけシャープに、淡い模様や星雲をできるだけ明瞭に写し出すことに心血を注ぎ、すべて
の小遣いを望遠鏡やカメラなどの機材に投資し、ピントやガイドなどの撮影テクニックや
画像処理技術を磨くことに余念がない。
一方、観望派は、天体を見て楽しむことに主眼をおいて、写真は、比較的気楽な撮影手
法で行うことが多い。観望派のよい点は、天気さえよければ常に楽しむことでき、自分が
所有する機材に応じた見え味を楽しむことができることである。写真派は、天気がよくて
も、思わぬトラブルに見舞われ、満点の星空の下、星を見ずに夜を明かしてしまうことも
よくある。
次に、観測対象で分けると、太陽、月、惑星をターゲットにしている太陽系派と、星団
星雲をターゲットにしているディープスカイ派に分かれるような気がする。彗星、流星は、
太陽系の天体だと思うが、どちらかと言えば、ディープスカイ派の領域になっているよう
である。太陽系派は、都会でも楽しむことができるが、シンチレーションに影響を受け、
ディープスカイ派は、空の暗さや透明度に影響を受ける。私は、8:2の割合でディープ
スカイ派である。
ところで、私は、なぜ写真派なんだろう、なぜディープスカイ派なんだろうと、今更な
がら疑問をいだくことがある。
私が写真派になったきっかけは、ハレー彗星が到来したとき、自分が昔天文少年だった
ことを思い出し、ペンタックスの75EDHFという赤道儀付き望遠鏡のセットを買った
のが始まりだった。この望遠鏡にカメラのボディーを付けて、サクラのISO3200の
フィルムを使い、ノータッチガイドで5分撮影したところ、星団星雲の眼視では見えない
ようなディテールが簡単に写し出されたことにある。それ以来、私は、いろいろな星団星
9
雲を写真にとり、そこに写し出されてくる姿を見るのが楽しみになったのである。
また、私がディープスカイ派になった理由は、太陽、月、惑星は、学校の教科書や、図
鑑などで、少年時代からよく見ていたが、星団星雲は、有名なものを除いて、当時の教科
書や図鑑などには載っていないものが多く、メシエやNGCなどの星団星雲を写すたびに、
そこに写し出されてくる姿が新鮮な感動を与えたからである。
しかし、人間の欲望はつきないもので、もっとシャープに、もっと明瞭に写し出したい
という思いがつのり、次々と機材を買い足し、買い換えて行くこととなり、それはヤフー
オークションにはまって益々エスカレートした。赤道儀は、ペンタックスMS3、タカハ
シEM10、EM200、JP、EM400と変遷していき、望遠鏡は、ペンタックス7
5EDHF、105EDEF、100SDUF、タカハシFC50、FC76、FCT1
00、ε160、ε180、MT160、MT200、sky90、FSQ106ED、
ミューロン250、セレストロンC8、C9、C11と変遷していった。
これらの機材の2/3以上は既に手放してしまったが、それでも、我が家には、自分の
部屋は勿論、押し入れにも、機材を収納するスペースがなくなり、新たに買ったら、古い
ものを売らなければならない状況にある。もっともお金(小遣い)の面でも、古いものを
売らなければ、新しいものを買えない状況にある。
しかし、機材が変遷することは、必ずしもよいことばかりではない。1つの機材を使い
こなさない内に、次の機材を買ってしまうため、いつまでたっても、機材に振り回されて
使いこなすことができず、結果的によい写真がとれないという泥沼に陥ったのである。そ
ろそろ、機材を買い換えるのは、やめようと思うこの頃である。
一方、カメラも、最初はペンタックスMEスーパーという35mm版のフィルムカメラ
であったが、そのうち、ペンタックス67になり、次いで、デジカメを経ることなく、冷
却CCDを使い始めてしまった。
零細な特許事務所を営む私は、いつも貧乏暇なしの状態で、なかなか天体遠征に行けな
い時代が長く続いた。観測地で知り合った教師をされている友人が、夏休みになると、乗
鞍に1週間とか8日間とか遠征して天体写真を撮っているのを見て、うらやましくて仕方
がなかった。
そんな中で、都会でも星団星雲の写真が撮れるという触れ込みの冷却CCDに、私は強
い興味をもった。最初に買った冷却CCDは、SBIG社のST7というカメラだったが、
使い方がわからないまま、1年くらいもてあそんでしまい、こんなものがなんで何十万も
するのかと思った。
それでも、当時1,2冊しかなかった冷却CCDの解説本を何度も読み、冷却CCDを
使っている天文マニアのホームページの記事などを参考にしながら少しずつ使い方を習得
し、何とか星団、星雲の写真が撮れるようになった。そうなると、また欲がでてきて、当
時とても高かったST10を購入し、オークションで10万円で買ったMT200にST
10を付けて、天気のよい週末は自宅で星団・星雲を撮像するようになった。
10
我が家は、松戸の郊外とはいえ、南方100mくらいのところにはゴルフ練習場があり、
南西50mくらいのところにはパチンコ店があって、光害がかなりある。そんな中でも、
冷却CCDを使うと、わずか10秒の露出でパソコンのモニターに星団・星雲の姿が浮か
び上がってくる。
ただ、光害地で撮像すると、RGB合成したときの背景の色ムラが激しく、鑑賞に堪え
るきれいな写真にすることはとても難しかった。画像処理に何時間も苦労して、何とか見
られる写真になると、それでもうれしくて、次は何をねらおうかと思うのであった。そん
な状態で、2002年頃から2009年頃までは、遠征をあまりせずに、自宅で撮影して
楽しんでいた。
しかし、何年もやっていると、次第に写したことがある天体ばかりになってしまい、そ
の写りも光害地では限度があると悟るようになった。やはり、空の暗いところで、満天の
星空の下で撮影をしたいと、次第に強く思うようになった。そこで、ミクシイで知った天
文同好会に入れてもらい、時々遠征して撮影するようになった。最近は、観測地で知り合
った行木さんのご紹介で川越天文同好会に入会させていただき、行木さん、持田さん、中
島さん等と一緒に遠征するようになった。
カメラも、フルサイズの冷却CCDであるSTL1100を、円高のときに米国の望遠
鏡ショップから安く購入することができ、今のメインカメラとなっている。
空の暗いところで撮像した画像は、普通にダーク、フラット補正をしてRGB合成して
も、背景の色ムラが非常に少なく、画像処理がとても楽である。しかも、自宅で撮影した
写真より、ずっときれいな写真がとれることがわかった。ただ、それを極めようとすると、
私には、まだ画像処理技術が不足しているようである。画像処理は、私の歳になるとなか
なか習得しずらく、しかもパソコンに向かっての地味な作業となるので、仕事と変わらな
い感じがして、今一つやる気が起こらないのである。
ところで、話が本題から大分それてしまったが、私は、なぜ写真派なんだろう、なぜデ
ィープスカイ派なんだろう。長年天文雑誌を見ていると、私の写真よりもずっとすばらし
い写真がいっぱい掲載されている。今更、私が同じ対象を撮影したって、それよりもよい
写真はできそうもない。撮影地では、私と同じ機材で撮影している人が何人もおり(因み
に持田さんと中島さんと私は、いずれもタカハシのFSQ106EDを使っています)、写
す対象だって同じようなものである。そんな結果が見えているようなことに、なぜ夢中に
なるのだろうか。
私には、よくわからないのであるが、それは、それでも常に新たな発見があるからだと
思っている。天文雑誌や書籍に掲載されている写真を見れば、その天体がどのように写る
かは大体予測することができる。しかし、実際に撮影して見て、それよりもよく写ってい
たり、それには及ばなくても、過去に自分が撮影した写真よりよく写っていたりすると、
それは新たな発見であり、感動である。あるいは、天文雑誌や書籍に掲載された写真は見
たことがあるが、自分では撮影したことのない天体を撮影して、それが思いの外よく写っ
11
ていたりすると、それも大きな感動となる。
天体写真というのは、多分にオタク的であると私は思う。ピントのシャープさ、淡い部
分の写り、色合い等をただひたすら追求して、機材をグレードアップし、チューニングし、
画像処理方法に工夫を凝らして、更によい写真をとろうとする。そんなオタク的な趣味に
大勢のマニアが没頭している理由は、やはり宇宙の神秘さにあるのではないかと思う。大
勢の人が同じ対象を同じような機材で撮影し、その写真が雑誌や書籍やネット上に多数掲
載されていても、自分がその天体を自分の機材で撮影し、そこに写し出されてくる、遙か
彼方の星団・星雲の姿を見ると、マニアは宇宙の神秘に触れるのではないかと思う。少な
くとも、私自身はそんな感じがする。
しかし、そうは言っても、私の天文オタクの方向性は、このままでよいのかということ
も時々考える。もっと気楽にのんびりと天文を楽しむ方向性もあるのではないか。いっそ
のこと、天体写真なんて、面倒で、お金がかかって、神経すり減らす趣味はやめて、観望
派に転向した方がよいのではないかと思うこともたまにある。実際、写真だけでなく、星
団・星雲を肉眼で見たいという思いもあって、たまたまオークションに出されたフジノン
の150mm双眼鏡を買ってしまい、最近は撮影機材と一緒に、その大きくて重い双眼鏡
もできるだけ持ってくるようにしている。撮影の合間に、余力があると、星図を見ながら
天体を導入し、ちょこっと観望もしている。まだ、人間ナビゲーターのようには導入でき
ないのがつらいところだが、観望もまた楽しいものである。
ただ、観望派に転向したら、私のことだから、フジノン双眼鏡にあきたらず、40cm
とか50cmとかのドブソニアンを買って、人間ナビゲーター目指して精進してしまいそ
うである。それはそれで、お金も体力も時間もかかって、とても大変そうである。
何はともあれ、私の天文オタクは当分続きそうである。多分、一生やっていくのかもし
れない。歳をとって、体力が衰えて遠征にも行けなくなったら、自宅のベランダから、冷
却CCDで撮像しながら、若かりし日に空の暗いところで見た満天の星空に思いをはせる
のかもしれない。学問的なことは何もわからないけれど、天文オタクは、宇宙にロマンを
感じる人々の思いがあふれた魅力的な趣味だと思うのである。
12
『スターウォッチング肉眼計測』
谷川 政敏
環境庁主導による『スターウォッチング』が昨年の冬期(平成 25 年冬)を持って終了した。
環境庁のHPでは休止となっている。→http://www.env.go.jp/kids/star.html
私も個人的ながら、川越天文同好会の名目でほぼ全回に参加させて頂いた。
今回、この全国星空継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)は運営が困難を理由に休止と
言う事らしいが、一旦お休みした事業が再び形を変えて再開されるのだろうか?
多分、今までの世情を考えると再開などあり得ないと思っている。
今更ながらにこの計画の概要を紹介すると、
1)夏と冬の 2 回、指定した月の無い夕方に行う。
2)双眼鏡を使い、乙女トライアングルとスバル方形の
中の恒星がどこまで見えるか判定。
3)肉眼により天の川が見えるかを判定。
4)写真により天頂写野内の背景の明るさを計測。
5)地域に密着した活動をした団体や個人を表彰する
制度がある。(やったのか疑問?)と言う物でした。
私は主に2)と3)の手段で観測して来たのだが、正直に申してこの計画は「理論的・現実的な間
違いがあった。」と思っている。
一つは7×50 の双眼鏡が標準の観測器材で、それで見える恒星が何等までなのか判定するのだが、
そもそも点状の恒星像が背景の明るさに埋もれて見えなくなるとはどう言う事かと言って、これは
「背景のノイズに埋もれる閾値を求める」と言う事になるが、単純な話ではない。
多分、「そこまで言わなくても、まずは見て貰う事」を主体にした計画だったと思うのだが、
これは如何にも甘い見通しだったのではなかろうか?要するに良く考察しないでやっちまった計画
だったように思える。
実際、私だけのスコアを見ても、そんなに空の状態が変化したようにはなっていない。
日高市に越して来て数年して計測を開始し、20 年になろうとしているが、空の状態は悪くなったの
ではなく、むしろ右肩上がりに良くなったようにも見える。
これは結果だけ見ると歓迎される事だけれども、実は肉眼で天の川を確認する観測では、明らかに
夜空は明るくなっており、町内の住宅が立ち並ぶとか、バイパスや圏央道が出来て照明が多くなった
事に反比例しているのが判っている。こんな事ならいっそのこと天の川の観察をもっと良くやってお
けば良かったと思いもするが、時すでに遅しである。
ではなぜ限界等級が上がったかと言って、それは空の明るさが安定して来ているせいだと思ってい
る。実際は大気が汚れなくなり、一定の暗さが保たれているとも言える。
年によっては極端に等級が落ちている時期もあるが、これは主に天候が悪く、薄雲が有った事が判っ
ていてもそれしか観測出来る日が無かったので仕方なく採用した値である。
13
と言う訳で最初から疑問を持って臨んだ計画だったが、案の定、全国の観測点の結果をまとめた資料
にも疑問を呈する物が散見され、7×50 双眼鏡で“11 等級後半まで見えた”と称するのがある。
現実とすると、それもありかな?とは思うが、配布された星図にはそんな暗い恒星は幾つも記載され
ていないのでいささか不思議な気がしていた。それの検証の為、川越市で開催された別の現場に出向
いたが、そう言う報告をする観測者は数分で観測を終了していて、大そう驚いてしまった。
観測する事に慣れていない人達が初めて臨むので仕方の無い所ではあるが、当日の私のスコアは
8 等級止まりだったから、とても信じられない現実がそこにあった。
双眼鏡で判定する言うのはピントの合った状態で観測するので、実際にこれをやるなら、理想的に
点像にならない器材。。。そう、例えば肉眼を持って計測する手段があり、星座を構成する星々を見て、
暗い星がどこまでなのかで光害を知る方法があると思う。
どちらかと言うと背景の明るさを主体にして星座が判るか?と言う判定をする事が主体となる。
星座なら簡単な星図とか星座早見がどこにでも在り、広く世の中に普及しているので、あらためて取
り揃える必要も無い位だと思う。これに今までのように等級を振るとか、星座線を入れておいて理解
を助ける程度にすれば、より使える道具が完成する。
余談になるが、写真で計測も方法としては正しいと思うが、こうも銀塩カメラや感材が無くなると同
一性が保てないので手段の崩壊となり、計画の敗因となったと推測するが断りは一言も無い。
14
上の図で左は夏用の乙女トライアングル、右は冬用のスバル方形用の観測星図で実際に使われた。
この星図に記載されている恒星は小数点を除いた等級で示されており、小数点を書かないのは慣例と
なっている事柄で、印刷の汚れを間違って認識しないようにしている。
いずれも暗い恒星は 11 等級まで書いてあり、天体望遠鏡では見えて欲しい気のする明るさではある
が、参考程度にしないと先の間違いとも思える内容になる。
それはさて置き、では肉眼で等級を判定出来るこのような星図は存在するのであろうか?
手持ちの星図を探してみると、最初に思い付いたのは『変光星星図』AAVSO 刊行である。(左図は
㈱誠文堂新光社の転載版)これは暗い
恒星が沢山記載されていて、等級も記
載はあるが暗いのまであり過ぎ、あま
り適さないと判断した。
次に出て来たのが『肉眼恒星図』恒
星社刊で、これはご存じの如く、流星
の経路を直接に書き込むように出来
ていて、観測者が向いた方向を中心に
して記載するようになっている。
出来れば等級も欲しい所だが、残念な
がら記載は無く、追加で等級を入れて
くれたら最適の物が出来そうである。
次に思い付いて『星図星表めぐり』
㈱誠文堂新光社刊から探すと、ありま
した!『シューラー星図』と言うのが
存在し、これは 0.1 等きざみで恒星の
大きさが図示されており、なかなかに
使えそうである。
実際に使うのであれば、これを改良し
て星図中に等級を入れる手もある。
『変光星星図』
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かくして星図が用意出来たとして、
実際の観測場面をシミュレーション
してみると。。。
①1 月の月の無い夜の 21 時頃の空
にオリオンが南中します。
月の大きさや、出とか入りは昨日見
た新聞を覚えています。
②寒風の中、帰宅の遅かった天文
好きのお父さんは夕食を済ませて暗
いベランダに出ます。
通勤に使ったコートなど再び着て
約 10 分間、眼の順応を計ります。
『肉眼恒星図』
③コートのポケットにはシューラ
ー星図の改良版コピーが入れてあり、
早速取り出して赤い光で見ます。
筆記具はスーツにいつも入れている
3 色のグロスです。
④「まずはオリオン三ツ星、四辺形、
冬の大三角。。。これはまともに見えて
いるから星にチェックと、、、」
雲が有るとかだと確認に手間取るで
しょうが、そこはそれ、日頃の訓練で
おおよその位置を覚えています。
⑤「次は大犬の足。。。3等級は
見えている、、、子犬は、、、3等がやっ
とだと、、、スバルも小三ツ星も無理、
、、
飛行機は邪魔だなぁ、、、」
スバルは何となく見えるだけ、残念!
結局、この夜は 3.5 等止まりでした。
⑥「ではでは冬の天の川はと、、、
低い方は近くのビルで無理だが、、、
天頂付近は、、、薄雲みたいだが見える
見える!」
雲との区別は動かない事とその位置
なの、お父さんは知っています。
⑦階下から奥様の声がして「お風呂
ヨー!」と、、
、お父さん、冷えた体を
温めに階下へ降りるのでした。
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この夜の状況を見ていると、今まで有った“双眼鏡”の用意がありません。
いつ晴れて観測に良い状況となるのかは、ほとんどが当日にならないと分からないので、シーズンが
始まると私は三脚に取り付けた 8×50 の双眼鏡(メーカ表示は 7×50 だが、実際に計ると高橋製作
所のアストロノーマは 8 倍なのでした。)を壁に立て掛けて置きました。
何回もやってる人達は大した手間ではないので苦にはなりませんが、これが初心者で、しかも三脚
を使うとかなるとまともに観測するまでに多分、30 分以上は掛かる事請け合いです。
手持ちで観測しても勿論良いのですが、安定して観測するにはやはり三脚が必要と感じ、実際に限界
等級も上がるので、使っている観測者も結構居たようです。
良く聞く変光星の観測者は双眼鏡を使うのは普通の事、明るい光度比較観測では手持ちで充分な
ようです。肉眼で観測する時もありそうで、こんな時は双眼鏡でやってみて、それと較べるとかは
やるのでしょうか?多分、同じ器材を使って結果がばらつかないようにはしていると思います。
彗星観測者は比較星を少しボカして彗星と同じ大きさにして較べる方法を用いますが、今回の『スタ
ーウォッチング肉眼計測』とも呼べるこの方法は彗星観測者と似た方法を用いる事になるのだと思い
ます。
以上がこの観測方法の概要なのですが、最後に利点を上げると、
1)夜空の背景の明るさを直観で計れる。
2)器材が要らない。
3)長い年月に渡る観測には器材を使わないので安定して計測出来る。
4)手軽なのはこれ以上無いだろうと思われる方法である。
5)星座の勉強には最適と思われる。
となり、良い事ずくめではありますが、本来は“星の存在を確認して大気の汚れを推定する”
と言う目的であったので、この主題も少し変更する必要があろうと思われる。つまりは、“星の
見え方を測って夜空の明るさを知る“となるべきだと思う。
大気の汚れ。。。云々は環境庁の主導なので仕方のない口上であるのだが、我々アマチュア天文家
ベースではやはり夜空は暗く、星も見えて欲しい。。。が主題となるべきかと思うのです。
「街灯が欲しい」とかは良く聞くセリフなのですが、防犯上、これは正論であります。
しかし、人間本来の性質?を考えると「夜は暗いもの」と認識しているのが普通ではなかろうか?
文明が発達して動物本来の持っている認識が薄れて行くと、その内にシッペ返しをくらうようにも
思えるし、夜も明るいだけの世界なんて、本能に根ざした性質が狂ってしまい、ろくな事にならない
ような気がする。
今回は方法の間違いが指摘される計画ではあったが、
“大気
の汚れを推定する”に留まらず、
“星が見える夜にする”事も副題として存在していたと私は
思っている。これ即ち、本来の人間原理
に元付くので、将来に別の計画が立てられたら、今度は是非
に『スターウォッチング肉眼計測』とも呼べるようなこの計
画を入れて欲しい気がする。
了
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【イベント報告】
【イベント報告】
報告者
山内
拓
以下、8 件のイベントに参加しました。次ページ以降、時系列で詳細に報告します。
貴重な御講演いただいたことに、この場をかりて、先生方にお礼申し上げます。
その 1.2013 年 9 月 21 日(土曜日)14:30∼17:00 三鷹ネットワーク大学
「三鷹太陽系ウォーク 5 周年キックオフセレモニー」
第一弾「宇宙の不思議アレコレ?」国立天文台長 林正彦先生・三鷹市長 清原慶子氏対談
第二弾「三鷹太陽系ウォークを 10 倍楽しむ方法」鹿児島大学教授 半田利弘先生
その 2. 2013 年 10 月 19 日(土曜日)9:00∼19:00 国立天文台三鷹
「三鷹・星と宇宙の日 2013」
講演「南米アタカマ砂漠から探る超巨大ブラックホールの謎」河野孝太郎先生(東京大学教授)
講演「アルマで解き明かす銀河進化の謎」伊王野大介先生 (国立天文台 准教授)
講演「アルマで迫る惑星誕生の現場」大橋永芳 先生(国立天文台 教授)
その 3. 2013 年 10 月 19 日(土曜日)1830∼20:30 三鷹市芸術文化センター
国立天文台 企画サロン「アストロノミー・パブ」
ガリレオから最新天文学まで∼リユートが響いた星空∼
ホスト 東京大学名誉教授 岡村定矩先生 ゲスト リュート奏者 永田斉子氏
その 4. 2013 年 10 月 20 日(日曜日)13:30∼17:00 かわさき宙と緑の科学館
川崎天文同好会 60 周年記念「記念式典」「市民天文講演会」
「大彗星あらわる∼アイソン彗星を見よう∼」 国立天文台副台長 渡部潤一先生
「おもしろ星空落語」 柳や小ゑん師匠
その 5. 2013 年 10 月 26 日(土曜日)10:00∼15:00 秋葉原 UDX
ビクセンワンダーくらぶ「となカイ」会員限定展示会
天体写真(風景写真)撮影講座 中西昭雄先生
天文シミュレーションソフト「ステラナビゲーター」活用講座
アストロアーツ
その 6. 2013 年 11 月 16 日(土曜日)10:00∼11:00
JAXA角田宇宙センター訪問
その 7. 2014 年 1 月 10 日(金曜日)18:30∼20:00 工学院大学
工学院大学オープンカレッジ
佐藤勝彦の宇宙、S・ホーキングの宇宙−サイエンスカフェ
東京大学名誉教授 佐藤勝彦先生
新宿キャンパス
その 8. 2014 年 1 月 18 日(土曜日)1830∼20:30 三鷹ネットワーク大学
国立天文台 企画サロン「アストロノミー・パブ」
太陽観測衛星「ひので」が見てきたもの
ゲスト 国立天文台ひので科学プロジェクト助教
勝川行雄先生
ホスト 国立天文台ひので科学プロジェクト特定科学職員 殿岡英顕先生
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【イベント報告】
その 1
「三鷹太陽系ウォーク 5 周年キックオフセレモニー」
2013 年 9 月 21 日(土曜日)14:30∼17:00 三鷹ネットワーク大学
第一弾「宇宙の不思議アレコレ?」国立天文台長 林正彦先生・三鷹市長 清原慶子氏対談
第二弾「三鷹太陽系ウォークを 10 倍楽しむ方法」鹿児島大学教授 半田利弘先生
三鷹ネットワーク大学の HP に掲載され、早速申し込みました。
上記講演後の質問時間で、林先生、半田先生に質問しました。
林先生への質問:「現在、ヘリオポーズが太陽系の果てになっていますが、エージワイズ、カイ
パーベルトの広がりは 1 光年と言われています。研究が進むと広がる可能性があるという
ことですが、限界はαケンタウリでしょうか。」
林先生:
「α ケンタウリは他所の恒星系だから、それを超えることはもちろんないですけれども、
エージワイズ、カイパーベルトの解明は楽しみですね。」それから、エージワイズ、カイパー
ベルトが彗星の巣であることの説明をされました。
半田先生への質問:
「川越天文同好会の山内です。天文検定 1 級の試験勉強中です。社会人が天文
学を勉強するのに、いい教材・勉強法はないですか?」
林先生:
「社会人学生問わず誰にでも言えることだけど、天文学の本を幅広く数多く読んで、少し
ずつ少しずつわかっていき、積み上げていくしかない。公式は独学では理解が難しい。学生
は教官がいるが社会人は周りに訊く人がいない。プラネタリウムのある公共施設には天文
学を学んだ人が多いのでいけば質問できると思うので、捜して見ては?」とのことでした。
縣先生もいらっしゃっていました。半田先生の著書を持参し、サイン頂き有意義な一日でした。
その 2
「三鷹・星と宇宙の日 2013」
2013 年 10 月 19 日(土曜日)9:00∼19:00 国立天文台三鷹
講演 「南米アタカマ砂漠から探る超巨大ブラックホールの謎」
河野孝太郎先生 (東京大学 教授)
講演 「アルマで解き明かす銀河進化の謎」
伊王野大介先生 (国立天文台 准教授)
講演 「アルマで迫る惑星誕生の現場」
大橋永芳 先生(国立天文台 教授)
当日の夜、申し込んでおいた東大名誉教授岡村定矩先生のアストロノミーパブの前に気にな
っていた望遠鏡店“スコープタウン”に行こうと思い、前日 18 日に電話したところ、「明日は社
長の大西は国立天文台のイベントで留守ですイベントへ行けば会えますよ。」とのことでした。
それで運よく首記イベントを知り、国立天文台に足を運びました。ラッキーです。
河野先生に「初期宇宙のモンスター銀河での大質量星の爆発的形成と銀河中心に存在する巨
大ブラックホールの形成に関係はありますか?」と質問したところ、
先生は「大いに関係あると思います。、コンピューターシュミレーション中です。講演では詳しく
は申しませんでしたが、それが僕の研究課題の一つです。」と回答いただきました。
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【イベント報告】
大橋先生に「原始惑星系円盤のアルマによる電波解析のお話がありましたが、フォーマルハウ
ト、べガなどの円盤形成終期の星の解析は如何なっていますか?」と質問したところ、
先生は「いい質問です。フォーマルハウトは円盤の角度がかなりの正確さでわかっています。ベ
ガは塵の状況が細かくつかめています。近々、報告の予定ですので楽しみにしていて下さい。」
と回答いただきました。
伊王野先生の講演では、アロマ天文台からの生中継もありました。
アルマに関する素晴らしい講演でした。
ポスターセッションで、東大の土居守先生に COBE と WMAP、プランク衛星の感度の違い、宇宙背
景放射からの宇宙年齢の算出法について質問しました。気さくな方でした。
講演終わり、屋外で、望遠鏡のデモをされていたスコープタウン大沼社長と話しました。
MURAMASA(スコープテック製口径 60 ミリ焦点距離 1000 ミリ屈折鏡)で月の全体像を撮り楽し
んでいること、長焦点なのでバローレンズなしで一眼デジカメの画像素子を一杯に使い直焦点
撮影ができ、口径 60 ミリなので満月でも ND フィルターなしで撮影でき、素晴らしい像が得られ
ることを話したところ、
「MURAMASA の月はいいでしょう。さらに長焦点の口径 60 ミリ焦点距離 1200 ミリアクロマート
鏡筒を作製販売することを考えている。短焦点アポクロマートよりピントの幅の広さ、像のキレ
は上と自信がある。」とコメントされました。
「口径 100 ミリで焦点 1500 ミリのアクロマート出す予定ないですか?」と尋ねたところ
「それは僕が欲しい。長さが限界だし、何本売れるかということもあるし考えてはいない。」
「MURAMASA は惑星では光量不足を感じます。STL80AMAXI は?」と質問したところ
「共同開発先の社長が望遠鏡大好きで自らレンズ研磨されている。STL80AMAXI の惑星像は、80
ミリ径の中で極上。社長やお客様からフローライトの要望があるけれども、スコープタウンは初
心者向けの望遠鏡でやってきたので、さらなる上記機種は悩むところ。」
また、「セット品の価格を抑えるには、アイピースの選択が難しいのでは?最初に買った他社
セット品で付属のプラスチック製アイピースをなくしてしまい、望遠鏡店より、単品の金属製オ
ルソを購入したところ、木星の縞、土星の輪がくっきり・・・」の質問には、
「マニアの方はアイピースを鏡筒と別に買うけど、子供達に“別に”と言うわけにはいかない。
価格は抑えないといけないし。マニア向けのアイピースは、それ相当の金額がするし、悩みの
種。」
・・・個人的には、10cm 屈折およびアポクロの販売、是非お願いしたいです。10cm 屈折は長くても
いいです。いや長い方がよいです。月・惑星には最高です。光学的には全ての収差は、鏡筒を長く
すれば、焦点距離の二乗分の 1 以上で激減するとか?ヘベリウスの空気望遠鏡は口径 20 センチ
焦点距離 46 メートルでした。これはオーバーですが、スキー板と思えば宜しい!のでは?
自らが望遠鏡を愛する技術者が作る望遠鏡、見えないわけがないと思えます。
MURAMASA のオーナーですが、お話を伺って MAXI も・・・。
他のデモで天文検定の話をしたところ、偶然、天文検定 1 級に合格した方(1 回目)と話しをす
る機会を得ました。専門家の方でした。「解いてみましたけれど、今回(2 回目)も 70 点台でした。
大学で天文を専攻し、時事問題なども含め全般詳しくないと厳しい。頑張ってください。」とコメ
ントいただきました。
(最近、2 回目の講評でました。2 級合格者限定試験で合格率 1 回目 1.2%、2 回目 1.1%の難関で
す。合格者、全国で僅か数名です。私も加わりたいと切に思います。2 回目受けましたが、最初の問
題から難しく試験中はイライラでした。3 回目は、近日出版の改定版 1 級問題集の範囲から半分
出題されるとありますが?)
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【イベント報告】
その 3
国立天文台 企画サロン「アストロノミー・パブ」
ガリレオから最新天文学まで∼リユートが響いた星空∼
2013 年 10 月 19 日(土曜日)1830∼20:30 三鷹市芸術文化センター
ホスト 東京大学名誉教授 岡村定矩先生 ゲスト リュート奏者
永田斉子氏
岡村先生がガリレオを題材として、天文学全般について講演されました。
講演後の懇親会で岡村先生と、銀河、ブラックホールおよびインフレーション宇宙論を話題に、
親しく話をさせていただきました。「よく勉強していますね。」の言葉を頂き恐縮でした。東大副
学長を勤められ、天文学会理事長を勤められる先生ですが、小さな望遠鏡を持参され「カバンに
入れて、いつでも星が観れるようにしているんです。皆さんも覗いて見てください。」と気さくで
柔和で温和な方でした。「天文学への招待」など、著書に快くサインを頂き、「シリーズ現代の天
文学 Ⅰ人類の住む宇宙」を薦めて頂きました。
ビールやワインを飲んで嬉しいほろ酔いで帰途に付きました。直前に偶然本屋で見つけた大
人の科学マガジン「東大天文講義 星と銀河と宇宙の進化」に岡本先生、河野先生、土居先生の
記事があり、記事の見出しに先生方のサインを頂き、遠い昔の学生時代に戻ったころのような晴
れ晴れとした気持ちでした。
私の母校山形大学も理学部物理学科の柴田晋平先生が星のソムリエ、星空案内人の資格制度
の確立にがんばっておられます。
私は工学研究科化学工学専攻終了で工学部の出身です。研究および修士論文「石炭モデル化合
物の熱分解反応」をご指導した頂いた千葉耕司先生に、天文学に嵌って検定を受けていることな
どを報告したら、「天文三昧頑張りなさい。」と葉書を頂きました。ありがたいことです。
岡村先生、優しい先生で千葉先生と重なりました。
その 4
川崎天文同好会 60 周年記念「記念式典」「市民天文講演会」
「大彗星あらわる∼アイソン彗星を見よう∼」 国立天文台副台長 渡部潤一先生
「おもしろ星空落語」 柳や小ゑん師匠
2013 年 10 月 20 日(日曜日)13:30∼17:00 かわさき宙と緑の科学館
昨日に続き天文デーです。あいにくの雨ですが、川崎天文同好会の 60 周年記念講演会に出か
けました。ついて 1 時間ほどして、谷川さん、小平さんも到着、記念式典後、国立天文台副台長の
渡部潤一先生の彗星の講演、次いで柳や小ゑん師匠の落語を聴いてきました。素晴らしい会場で、
盛大な 60 周年記念式典でした。
実は渡部潤一先生の講演始めてでした。
先生は、彗星が明るくなるかならないかの予想の難しさについて、ユーモアを交えて語られま
した。聞いていたとおりの聴く人を引き付ける講演でした。ユーモアあるお話の中で、彗星とは
どのような物であるかをしっかり教えていただきました。
講演後の質問時間で「講演の中で彗星の絶対等級で説明されましたが、恒星の絶対等級と定義
が異なると思います。定義を教えていただきませんか?」と質問したら
「その質問、待っていました。」と講演とは別に用意してあったスライドを使われ、「太陽と地球
21
【イベント報告】
が同じ位置にあるとして対象の彗星が 1 天文単位にあるときの明るさ。」と明確な答えを頂きま
した。
次いで、柳や小ゑん師匠の創作落語でした。
30 年以上前の古い話ですが、私、高校時代、課外活動で落語クラブに所属しました。実態は校則
で部活が必須で、(体育会系と違い)部活動をしたくない生徒の集まりでした。顧問は落語家の桂
音也先生、神戸大学卒でアナウンサーから落語家になった変わった経歴の方でした。机の上で背
広姿で正座され“子褒め”など手本を示され、やる気のない我々に熱心に指導されました。卒業
直後、音也先生が脳卒中で倒れそのまま他界されたことを新聞で知り、びっくりしました。その
こともあって、授業のように、初めは柳やこゑん師匠の語りと周りの人の反応を観察していまし
た。しかしながら、師匠の創作落語は星が題材なので段々と引き込まれました。
次いで、お楽しみ抽選会で、当会代表の谷川さんがスコープテックラプトル 60 を引き当てら
れました。上述のように、私はスコープテックの望遠鏡に興味があります。ブルーの鏡筒よいで
すねぇ。“その 2”で報告したように上位機種のスコープテック MURAMASA あるので購入するこ
とはありませんが、羨ましい。前号報告のように、MURAMASA、2013 年夏、スターショップバーゲン
の目玉商品でした。
その後、プラネタリウムで川崎天文同好会の 60 年の歩みを映像で見て、小平さんと帰途に着
きました。
その 5
ビクセンワンダーくらぶ「となカイ」会員限定展示会
天体写真(風景写真)撮影講座
中西昭雄先生 第 1 回 10:30∼ 第 2 回 13:00∼
天文シミュレーションソフト「ステラナビゲーター」活用講座
アストロアーツ 第 1 回 11:30∼ 第 2 回 14:00∼
2013 年 10 月 26 日(土曜日)10:00∼15:00 秋葉原 UDX
ビクセンのトナカイ会員イベントで秋葉原まで出かけました。年会費 1000 円で会員登録する
とカレンダー、SO-TEN-KEN を送ってもらえ、CP+はビクセンブースでお土産貰えます。会員限定イ
ベントまで、やっていただけると幸せです。今回は、お土産に宇宙食「さんまの蒲焼」、ビクセン
特製ファイルシート貰いました。
講演は、天体写真家の中西昭雄先生の天体写真の撮り方の講義とアストロアーツの方のステ
ラナビゲーターによるアイソン彗星のシミュレーションの説明でした。中西先生の講演で印象
に残ったことは、『月の満ち欠けを全て撮り月齢順に並べなさい。曇りの日があるので、完成まで
は苦労するけれど、天体写真および観測の基本が学べます。』一方、ステラナビゲーターは、昨年
の記念版購入したのですが使い方よくわかりません。今の説明も、私には、ちょっとむずかしか
った。
講演終わって、中西先生に、高度の低い月の雰囲気ある撮り方を質問しました。先生の回答は、
・月の雰囲気を出すために、色ありにしたいのなら、ホワイトバランスはデイライトで撮る。
その後、マニュアルで色温度を設定し、見た目および自分のイメージに色を合わせる。
(ホワイトバランスオートで撮ると、補正されて月は白黒になる。よって、最初から白黒で撮る人
が多い。感度が上がるので、高精彩を狙うなら白黒モードがよい。)
・新しいデジ一眼ならなら RAW より JPEG がお勧め。デジタルカメラは新しいものほど鮮明。
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【イベント報告】
特に最近の C 社製はエンジンがよく(何か意図しない限り)プロの私も RAW を使わないことも
多い。
以上が基本で、後はお好みとのことでした。的確なご回答です。
先生のアドバイスから、スコープテック MURAMASA で見た目に近い月、高精細な月が撮り分け
られるようになりました。
また、先生にデジカメの進歩について質問したところ、「古いデジカメを大切に使っている人
がいるけど、新しいのに比べると写りがぼやっとしていることが多いんですよね。デジタルカメ
ラには愛着要らないかな?」
私も、そう思います。ものを大切にすることは大事ですが、技術の進歩のスピードが速いデジ
タルカメラは新しいほどに画像はよくノイズが減ります。ライブビュー撮影の使い勝手のよさ
を知ると後へは戻れませんよね。
アストロアーツの人に、
「私の windows XP ノートパソコン、シングルコア 1.4GHz なのですが、
ステラナビゲーターの動きが重い、新調した方がよいですか。」と尋ねたところ、
「正直、そのスペックではステラナブゲーターは厳しいです。OS は現行 windows 8 ですが、今の
ところ、ステラナビゲーターの相性は 7 の方がいいです。8 で動くようにしたものの、8.1 ではダ
メだったりして、調整に苦労しています。」とのことでした。
この後、ノートパソコン買うことにし、OS:windows 7、CPU:corei5 にしました。
その 6
JAXA角田宇宙センター訪問
2013 年 11 月 16 日(土曜日)10:00∼11:00
私、生業は企業の知的財産部員です。自己研
鑽と企業知的財産部間の親睦のための宿泊
バス部会に参加しました。1 日目、ソニー工
場訪問、ソニー知的財産センター長講演聴
講、1 泊し 2 日めに JAXA 角田宇宙センター
訪問でした。しかしながら、研究交流棟の宇
宙開発展示室のみ施設見学なし、ビデオ鑑
賞および質問時間含め正味 1 時間でした。
正直、物足りなくはありましたが、研修なの
で仕方ありません。
JAXA 角田宇宙センター研究交流棟
(JAXA HP より引用)
しかしながら、JAXA の方に質問し、例えば、日本の HⅡA、HⅡB を有人ロケットとするには、振動
および騒音をクリアしなければならないこと、シャトルおよびソユーズは振動および騒音の対
策がされていることを教えていただきました。また、固体燃料、液体燃料は、バス部会に一緒に参
加された民間企業より供給を受けていることなどがわかりました。
バス内で「JAXA 訪問時間が少ないので、代りに私がお答えします。」と自己紹介していたので、
他社の人から、ISS、スペースデプリおよびスペースガードについて質問を受け、的確に答えたつ
もりです。ライフワークは天文ですから!
会社は定年で終わりが来ますが、天文は私の目の玉が黒い限り続きます。定年後は生業にした
いです。どなたか宜しく。
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【イベント報告】
その 7
工学院大学オープンカレッジ
佐藤勝彦の宇宙、S・ホーキングの宇宙−サイエンスカフェ
東京大学名誉教授 佐藤勝彦先生
2014 年 1 月 10 日(金曜日)18:30∼20:00 工学院大学 新宿キャンパス
インフレーション宇宙論で世界的に著名な佐藤勝彦先生の講演を聴講しました。
講演会のことを知ったのは偶然で「その 8」国立天文台のアストロノミーパブ “太陽観測衛
星ひのでが見てきたもの”の講演者の勝川先生の資料がないかを Google でネット検索していた
ころ、工学院大学オープンカレッジ HP 内の佐藤先生の講演会に偶然ヒットし直ぐに申し込みま
した。当会代表の谷川さんに報告し谷川さんと聴講することになりました。
先生は、ご自分の少年時代から物理学を専攻しインフレーション宇宙論に至るまでを淡々と
語られました。宇宙物理学の第一人者である先生の講演を聴くことができ幸せです。
以下、紹介します。『』内が御講演および質問回答内容です。私の知識および理解力不足のため、
不明瞭、不正確な箇所がありましたら、謹んでお詫び申し上げます。
ご講演内容
先生は香川県坂出ご出身で、『子供の頃は(トランジスタのない時代に)鉱石ラジオ、3 球真空
管ラジオ、5 球スーパー真空管ラジオ、キットのテレビなどを次々と組み立てました。丸亀まで自
転車で部品を買いに行きました。四国で一番若いアマチュア無線家となり、数ワット程度の僅か
な出力でヨーロッパの人とまでも通信できることを不思議に思い、また、敗戦後の予算がなく紙
と鉛筆といった状態でノーベル賞に至った中間子理論の湯川先生に憧れて京都大学の物理学科
に進みました。京都大学は立場の違いによらず、自由に討議ができる校風で、その立場も選挙で
決められることが多く、のびのびとした環境でした。
初めは物理学の興味から、超新星爆発から生まれるニュートリノなど、超新星爆発および中性
子星の物理的解明の研究をしていました。(ノーベル賞の)益川敏英先生から“(電磁気学と弱い
力の統合理論である)ワインバーグ・サラム理論”を研究に適用することを勧められたことがき
っかけで、原子核をなす素粒子より宇宙開闢を解明する研究に移り、インフレーション宇宙論に
想到しました。』
それから、インフレーション宇宙論について語られました。
『インフレーション宇宙論は量子揺らぎにより発生した宇宙が加速的膨張(インフレーション)
をし、真空の相転移により真空のもつ潜在的エネルギーから、とてつもない熱エネルギーが生ま
れビッグバンが始まったというものです。インフレーションにおける量子揺らぎにより発生し
た僅かなでこぼこが種となって銀河などの宇宙の構造ができました。このでこぼこは(ビッグバ
ンの名残である)宇宙背景放射の揺らぎとなり、COBE、WMAP などの観測衛星によって観測されま
す。さらに観測の精度を上げたプランク衛星によって、インフレーションがあったことがさらに
検証できる観測結果が得られることを非常に楽しみとしています。』
物理学について、『観測された現象から理論が生まれ、それが検証されて行くことが物理学の
醍醐味です(恩師の林忠四朗先生は理論と現象が整合性を持つことを検証するについてとても
厳しかった)。例を挙げるならば、中性子星およびブラックホールは理論で予想された天体であ
り、宇宙の膨張、背景放射も理論で予想され、ハッブルおよびペンジュアス、ウィルソンによって
検証されました。(ハッブル宇宙望遠鏡によりかにパルサー(中性子星)もとらえられています。』
東大時代について、『1987 年 2 月 23 日の大マゼラン銀河における超新星爆発 SN1987A は凄い
ことになったと思いました。小柴昌俊先生の研究室でカミオカンデによるデータの解析が進め
られていましたが、物理学の分野ではデータの確証が得られないと発表はできません。データが
発表されない限り、訊かれても発言できませんでした。新聞社等のマスコミも科学系においては、
信用が第一とされています。』と語られました。
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【イベント報告】
質問と回答
(Q が聴講者からの質問で、A が先生のご回答です。)
『Q:ニュートンは木からりんごが落ちるのを見て万有引力を発見したと言われますが、インフ
レーション宇宙論のきっかけは?
A: 1969 年 4 月京大時代に、ワインバーグ・サラム理論などの素粒子の理論と一般相対性理論
をベースにして机の上で計算をしていて加速的膨張に気がつきました。
Q:(私、山内の質問です。)「(私、化学専攻ですが)物理において、量子論および相対性理論など、
先に法則または理論があるのが不思議です。最初、正しい法則および理論をどうして見出せ
るのでしょうか
A:物理の法則は、経験的且つ数学的なものです。ニュートンも「木からりんごが落ちるのを見
て万有引力を発見したわけではなく、それまでの地上での物の運動、および天体の運動の観
測結果などの情報から、運動の法則を数学的に導き出しました。ある現象から法則を見つけ
るとそれが正しいのなら、あらゆる現象に適用できます。しかしながら、ニュートンの運動
の法則は、極端に重力が強い場合、および光の速さで動く物には適用できずに破綻します。
その綻びから、アインシュタインの相対性理論が生まれました。
物理学は、身近な法則を見つけ、その綻びから新しい理論(方程式)が得られ、より深い真
理に達し森羅万象は予言するものです。より深い真理に達することが物理学者の信念です。
私は、超新星爆発から生まれる中性子星およびその自転パルスの遅れが最初の研究テー
マでしたが、それに一般相対性理論を適用すること、益川先生によるワインバーグ・サラム
理論の適用の勧め、ヒッグス粒子、真空の相転移などの現象を加味し、研究の主力が宇宙論
へ移っていきました。
Q:宇宙は何故は始まらないといけなかったのでしょうか
A:1950 年代までは定常宇宙論が主流でした。しかし、(フリードマンの膨張宇宙論に影響を受
けたルメトールにより提唱された)ビッグバン宇宙論が見直され、ジョージガモフが理論的
に予言した宇宙背景放射が 1962 年にペンジュアス・ウィルソンにより発見され、ビックバ
ン宇宙論が主流となりました。よって宇宙に始まりがあったということが事実と言えます。
Q:宇宙の始まりの前に何があったのでしょうか?
A:始まりの前は現在の物理学で扱うことはできません。無からの創生論によれば、創生前は時
間も何もありません。ホーキング博士の虚数時間の導入も、始まった後のことを考える理論
です。将来、始まり前も扱えるようになるかもしれません。
Q:ゼロから無限大のエネルギーが誕生するとは、どういうことですか?
A:量子論において無はゼロ、言い換えれば全くないということではありません。量子論は波の
理論であり、無とは零点振動で絶えず揺らいでいる状態です。
Q:マルチユニバースにおいて、我々の宇宙と太宇宙は次元、構成および物質などは同じなので
しょうか?
A:我々の宇宙は 4 次元ですが小さな次元が存在すると考えられています。超弦理論からマル
チユニバースの存在が予想されるのですが、今はアイデアと思って考える段階です。
インフレーション理論も、アラングース先生と私の発表したものからさらに 100 種類以上
に枝分かれしています。どれが正しい正しくないかは、今後の実証および検証によります。
Q:現在、先生の興味あることは
A:ダークエネルギーの正体です。それとインフレーションとダークエネルギーの関わり。
また、重力と宇宙背景放射の関係について。プランク衛星の成果を期待しています。
25
【イベント報告】
Q:ホーキング博士と知り合ったのは?
A:インフレーション宇宙論の発表後、初めて話すことができました。以後、国際会議で、ケンブ
リッジ大学などで何度も会っています。体は不自由ですが、精神はとても元気な方です。
Q: 研究はトップダウンで進むものなのでしょうか?
A:トップダウンであろうとなかろうと、観測と合わず正しくない理論は捨てられます。理論は
全てチェックがなければなりません。理論やの喜びは観測で実証されることにあり、役立つ
理論はビッグデータを解析し検証したものが多くなる傾向にあります。
Q:佐藤先生の信念は
A:“世界は美しい。美しい法則で世界は動いている。それを見つけるのが科学者の仕事だ”と
いうことです。現実には泥臭いこともありますが、ゴーギャンのシナリオ“われわれはどこ
から来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか”を持って頭の中で考えてい
ます。』
ご講演が終わり、先生の物理学に対するひたむきさがインフレーション宇宙論に至ったと
思いました。ご署名をお願いし、先生が色紙に書かれた言葉は「美は真、真は美」でした。
宇宙の年齢は 137 億年または 138 億年と言われ、天文学では 100 万年以下は短期間です。そ
れにひきかえ人間の寿命はせいぜい 100 年足らずです。宇宙の話をすると“それが何になる”
という人もいますが、役に立つ立たないに関わらず、好きなこと興味あることを考えることは
楽しいものです。天文は、天文学、天体観測、天体写真および機材、終には宇宙開発、ロケット、
SF などをいろいろな物を含みますが、自分の好きなことのみに執着せず、楽しんでまいりたい
ものです。
その 8
国立天文台 企画サロン「アストロノミー・パブ」
太陽観測衛星「ひので」が見てきたもの
ゲスト 国立天文台ひので科学プロジェクト助教
勝川行雄先生
ホスト 国立天文台ひので科学プロジェクト特定科学職員 殿岡英顕先生
2014 年 1 月 18 日(土曜日)1830∼20:30 三鷹ネットワーク大学
太陽観測衛星ひので
(画像および『』内、国立天文台ひので HP より引用、詳しくは「ひのでHP」を参考願います。)
『「ひので」(SOLAR-B)は、ひのとり、ようこうに継ぐ日本で3番目の太陽観測用衛星です。 3 つの
最先端の望遠鏡を使い、約 6000 度の太陽表面(光球)から、数 100 万度以上の 外層大気(コロナ)ま
での領域で、磁場・温度・プラズマの流れを高い分解能・高い 精度で観測を行い、高温コロナ、コ
ロナ爆発現象や磁場とプラズマの相互作用 などの謎の理解に取り組みます。
「ひので」(SOLAR-B)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が 2006 年 9 月 23 日 午前 6 時 36 分 (日本標
26
【イベント報告】
準時)に M-V ロケット 7 号機により打ち上げた科学衛星です。 国立天文台は、搭載される3つの
望遠鏡の開発や衛星全体の開発に、 宇宙航空研究開発機構と協力して取り組みました。 また、3
つの望遠鏡の開発は、アメリカ(NASA)、イギリス (STFC)との国際協力のもとで進められ、米英の関
連研究機関・大学とも協力 を行いました。 』
講演内容
ひのでの超絶な画像を拝見しつつ、勝川先生のプレゼンを拝聴したしました。先生は中学 3 年生
の時、太陽極大時の黒点観察を行ったことから太陽に興味を持ち、学部で電磁流体理解学を勉強し
大学院より「ようこう」「SOHO」「TRECE」などの太陽衛星の観測による研究を行われ、
現在、ひので科学プロジェクトに携わっておられるとのことでした。ひのでは、口径 50cm、可視
光ではHSTに続く解像度を誇ります。ひのでの撮影した動画を用い、息を呑むような粒状斑、エ
バーシェッド流、暗部、斑暗部、輝点およびライトブリッジの経緯を見せて頂きました。黒点の中は
3000 ガウスで黒点は必ずN極とSのペアであり、N極側が小さく、S極側が大きいとのこと。磁場
と温度による黒点および粒状斑の最新の解析の説明においては、磁場があることによって黒点の
周囲で光球内部の光が通り、より温度の高い光球内部が白点となって見えるとのことでした。その
後、殿岡先生が今後の国立天文台の太陽研究の取り組みの説明がありました。
ひのでがとらえた黒点
太陽表面
(JAXA
HP より引用)
気付き
講演時の先生方と聴講者間の質疑応答で、勝川先生より “太陽全てが水素原子核、ヘリウム原子
核および電子がばらばらになったプラズマ状態であると誤解している人が多いが、そうではない”
というご指摘がありました。核融合反応が起こっている中心部のプラズマ 1500 万度と比較すると、
太陽表面の 4000∼6000℃くらいでは水素は分子状態で、プラズマはごく僅かです。太陽 → 核融
合 → プラズマのイメージが強く、(アルゴンプラズマを用いたCrスパッタリングによるCr膜
付けガラス基板としてのBM基板、要するに液晶画面の表面ガラス基板を作る工場のラインスタ
ッフの経験がある)私でも言われて「そうか」です。しかしながら、強力な磁場と、プラズマと水
素分子の間に量子論的揺らぎがあり、太陽内部の強力な磁場によって対流が阻害された部分に黒
点ができ、磁力線の飛び出しによりプロミネンスができるとのことでした。
また、N極、S極が何故わかるか?に対しては、殿岡先生が円偏光フィルターにより、右回りの光
と左回りの光を区別することでわかるとの回答。
(ポジフィルムで風景写真を撮る際、PL フィルタ
ーを使うと、空は青く緑はみずみずしくなり、オートフォーカスではピントのため円偏光フィルタ
ーを使うことが奨励されていました。)偏光について、勉強の必要があります。光は電磁波なので、
なんとなくわかる気もしますが。
講演が終わって、先生方に私の記事「お正月休み太陽観測日記」にコメントを頂きました。勝川先
生に黒点の動きを正確に追尾するにはと質問したところ、「太陽を正確な角度で観測するのは、赤道儀
を使い、回転軸とカメラ角度をあわせること。」とアドバイスいただきました。
最後まで読んでいただきまして有難うございます。
27
編集後記
小江戸の星70号は、表紙はアイソン彗星(中村さん)、記事は【天体ギャラリー】「お正月
休み太陽観測日記」(山内)に続き、【30周年記念行事講演会特集】
「川天記念講演会を終えて」(齋
藤さん)、「これからの天文同好会」(谷川さん)「30周年記念行事講演会を終えて」(山内) 「天
文オタクの方向性」(松井さん)スターウォッチング肉眼計測 (谷川さん)、【イベント報告】佐
藤勝彦先生講演会他 (山内)です。
アイソン彗星は大彗星になることなく、太陽によって昇華されてしまいました。これも天文現
象ですが。パーンスターズ彗星と今年の天文イベントの超目玉だったのですが、ともに大彗星に
なりませんでした。中村さんのアイソン彗星、貴重なお写真です。
私の、「お正月休み太陽観測日記」は、三鷹での講演会で、東京天文台「ひのでプロジエェク
ト」の勝川先生、殿岡先生に手渡しすることができ、天文ファン冥利に尽きます。
30周年記念行事講演会は、大野先生の星の村天文同好会を復興された経緯、および先生の熱意
が伝わる講演でした。講演後の慰労会も盛り上がり、天文の話題は尽きません。
「天文オタクの方向性」は、松井さんの天文オタクとしての意気込みが伝わってまいります。
私は天文学お拓ですが、観望も天体写真も興味あります。太陽と月は機会あれば映像に収めて
ています。よく「観望派ですか、天体写真派ですか。
」と訊かれますが・・・思い起こせば、天文少年
だった子供の頃は将来の夢と訊かれれば天文学者でした。天文に嵌ったきっかけも、2003年に子
供に宇宙図鑑を買ったら、私が子供の頃(1960年代)の図鑑に地球と同じ大きさの岩石惑星と紹
介されていた冥王星が、打って変わってカロンとの二重惑星で月より小さい氷惑星と載っていた
ことです。その後、2006年天文学連合の決定により冥王星は準惑星となりました。天文学の進歩
はたまりません。訊かれれば「天体写真教えて下さいと答えましょう。」
折からの検定ブームに則り、星空検定1級、天文検定2級取得しました(合格率1%台の超難関の
天文検定1級を残しており、合格を夢見て再び受けるつもりです)
。検定の勉強をしていてNETで知
った講演会に通うようになり、子供の頃憧れた天文学者の先生と話す機会が増えました。その紹
介が【イベント報告】です。
天文ファンは、多数を占める眼視派、天体写真派、中数の光学望遠鏡派、少数の天文学派ま
で多種様々です。皆、同じ天文ファン、政治のように派閥で分かれることなく仲良く参りま
しょう。天文同好会は天文ファンとの交流の場でもあり、他同好会との交流も楽しいものが
あります。機会あれば、こぞって参加しましょう。様々な天文ファンと知り合うことによっ
て、天文は楽しくなります。
会員の皆様の投稿お持ちしています。奮って御寄稿願います。原稿は基本ワードで、文字
体は、明朝体、文字サイズ10.5、最後のページは空き(白地)を少なくした構成でお願いしま
す。
しかしながら、野球サッカーファンの人に好きな球団、チームは、好きな選手はと訊かれる
と困りますねぇー。私はマイナーなボクシングファンで、野球サッカーは全くです。「観望
派ですか、天体写真派ですか。」と訊かれることは楽しいですねぇ。先号、紙配布分に6頁が抜け
ていました。謹んでお詫びします。30周年DVDに収められていますのでご容赦願います。
2014年2月16日
28
会報係
山内