我が国における個人情報保護システムの在り方につ いて (中間報告) 平 成 11 年 11 月 高度情報通信社会推進本部 個人情報保護検討部会 (I) はじめに 1 背景 近 代 国 家 において成 立 した法 制 度 やそこで認 められるようになった権 利 等 の中 には、現 代 国 家 にお いて大 きく変 容 を遂 げたものもある。また、現 代 国 家 において新 たに創 設 された法 制 度 や権 利 もあ る。そのような変 容 をもたらしてきている代 表 的 な例 は、情 報 化 の進 展 である。情 報 化 は、多 くのメリッ トをもたらしている反 面 、いくつかの問 題 を惹 起 しており、その代 表 的 な例 がプライバシー・個 人 情 報 を どのように保 護 するかという問 題 である。 しかし、「情 報 化 」の意 味 によって、それに関 する問 題 の発 生 時 期 も異 なっている。 マスメディアの発 達 によって情 報 量 が飛 躍 的 に増 大 した社 会 (マスメディア情 報 化 社 会 )との関 わり におけるプライバシーの問 題 は、アメリカでは 19 世 紀 末 近 くになって起 こり、比 較 的 長 い歴 史 を有 し ているが、我 が国 では 1960 年 代 に入 ってからようやく本 格 的 に論 じられるようになった。また、 1960 年 代 以 降 においては、コンピュータが情 報 を大 量 に処 理 することができるようになった社 会 (コンピュー タ情 報 化 社 会 )との関 わりにおけるプライバシーの問 題 が注 目 され、さらには、 1980 年 代 以 降 、コンピ ュータ技 術 と通 信 技 術 の飛 躍 的 発 展 とその結 合 によってネット ワーク化 が進 展 し、情 報 量 が増 大 す るとともにその流 通 が国 際 的 にも盛 んになってきた社 会 (ネットワーク情 報 化 社 会 )と関 わるプライバシ ーの問 題 も議 論 されるようになってきた。 これらの問 題 を法 的 にどう捉 えるかということについては、近 代 憲 法 、近 代 法 の成 立 時 には確 立 さ れていなかった問 題 であるだけに、先 進 諸 国 の間 でも一 様 ではなく、とりわけ、我 が国 においては、こ こ 30 数 年 の間 に議 論 されるようになった比 較 的 新 しい問 題 である。 しかしながら、昨 今 の情 報 通 信 関 連 技 術 の発 展 には目 覚 しいものがあり、世 界 的 規 模 のネットワー ク社 会 の中 で、個 人 情 報 の保 護 の必 要 性 は以 前 にも増 して急 速 に高 まっている。また、一 方 で、電 子 商 取 引 等 の発 展 など現 代 のネットワーク社 会 の中 において利 便 性 の高 い豊 かな国 民 生 活 を実 現 していくためには自 由 な情 報 流 通 が不 可 欠 であり、その前 提 として、個 人 情 報 については確 実 な保 護 が図 られなければならない。 2 個 人 情 報 保 護 検 討 部 会 の設 置 の経 緯 平 成 6年 8月 、我 が国 の高 度 情 報 通 信 社 会 の構 築 に向 けた施 策 を総 合 的 に推 進 するとともに、情 報 通 信 の高 度 化 に関 する国 際 的 な取 組 みに積 極 的 に協 力 するため、内 閣 に内 閣 総 理 大 臣 を本 部 長 とする高 度 情 報 通 信 社 会 推 進 本 部 が設 置 された。 平 成 10 年 6月 には、同 推 進 本 部 の電 子 商 取 引 等 検 討 部 会 において、「電 子 商 取 引 等 の推 進 に 向 けた日 本 の取 組 み」がまとめられ、その中 で、プライバシーの保 護 の必 要 性 が以 前 にも増 して急 速 に高 まっている旨 が指 摘 された。 これを受 け、同 年 11 月 、同 推 進 本 部 において、「高 度 情 報 通 信 社 会 推 進 に向 けた基 本 方 針 」が決 定 され、その中 で、プライバシーの保 護 に関 し、「政 府 としては、民 間 による自 主 的 取 組 みを促 進 する とともに、法 律 による規 制 も視 野 に入 れた検 討 を行 っていく必 要 がある。」と指 摘 された。 また、平 成 11 年 4月 には、この基 本 方 針 のアクション・プランが決 定 され、電 子 商 取 引 等 推 進 のた めの環 境 整 備 のうちプライバシー保 護 に関 して、個 人 情 報 保 護 の在 り方 を検 討 するため、平 成 11 年 中 に検 討 部 会 を設 置 することとされた。 一 方 、近 年 、 個 人 情 報 の流 出 や漏 洩 など不 適 正 な取 扱 いの事 例 が明 らかになり、社 会 問 題 化 す るケースが出 てきたこと等 を背 景 として、第 145 回 国 会 における住 民 基 本 台 帳 法 改 正 法 案 の審 議 過 程 において、民 間 部 門 をも対 象 とした個 人 情 報 の保 護 の必 要 性 が強 く認 識 されるに至 り、政 府 として も、総 理 答 弁 において、個 人 情 報 保 護 の在 り方 について総 合 的 に検 討 した上 で、法 整 備 を含 めたシ ステムを速 やかに整 えていく旨 の方 針 を明 らかにした。 このような経 緯 から、平 成 11 年 7月 、高 度 情 報 通 信 社 会 推 進 本 部 の下 に個 人 情 報 保 護 検 討 部 会 が設 置 され、各 省 庁 によるそれぞれの取 組 みの間 の整 合 性 を確 保 する必 要 もある点 などを踏 ま え、民 間 部 門 をも対 象 とした個 人 情 報 保 護 に関 する法 整 備 を含 めたシステムを速 やかに整 えるとの 観 点 から、政 府 全 体 として、個 人 情 報 の保 護 ・利 用 の在 り方 を総 合 的 に検 討 することとされた。 3 個 人 情 報 保 護 を巡 る内 外 の状 況 (1) 諸 外 国 における法 制 化 の動 向 とその方 式 欧 米 諸 国 では、1970 年 代 初 めから個 人 データないしプライバシーを保 護 すること を目 的 とする法 律 が制 定 されるようになり、1999 年 現 在 、経 済 協 力 開 発 機 構 (OECD)加 盟 29 か国 中 、27 か国 に おいて法 律 が制 定 されており、その他 の各 国 でも法 律 が制 定 されている。 これらの法 的 対 応 の方 式 については、第 1に、一 つの法 律 で国 ・地 方 公 共 団 体 等 の公 的 部 門 と民 間 企 業 等 の民 間 部 門 の双 方 を対 象 とするオムニバス方 式 (統 合 方 式 )、第 2に公 的 部 門 と民 間 部 門 とをそれぞれ別 の法 律 で対 象 とするセグメント方 式 (分 離 方 式 )とに分 けることができる。また、第 3 に、それぞれの部 門 について、特 定 の分 野 で保 護 措 置 を講 じるセクトラル方 式 (個 別 分 野 別 方 式 )が ある。オムニバス方 式 の立 法 例 はヨーロッパ諸 国 に多 く、セクトラル方 式 はアメリカに 見 られる。 (2) OECD理 事 会 勧 告 欧 州 のいくつかの国 における個 人 情 報 保 護 のための規 制 の動 きに対 し、国 際 的 なネットワーク化 の 進 展 に伴 って個 人 情 報 の国 際 流 通 を求 める要 請 が起 こり、情 報 の自 由 な流 通 の確 保 とプライバシー の保 護 への配 慮 との調 和 を図 ろうとする観 点 から、 1980 年 にOECDの「プライバシー保 護 と個 人 デー タの国 際 流 通 についての理 事 会 勧 告 」が出 された。 この勧 告 は、加 盟 国 に対 する強 制 力 を有 するものではないが、加 盟 各 国 の国 内 法 の中 で考 慮 する ことを求 めており、その付 属 文 書 「プライバシー保 護 と個 人 データの国 際 流 通 についてのガイドライン」 のうちの第 2 部 「国 内 適 用 における基 本 原 則 」で示 された8原 則 ((まる1)収 集 制 限 の原 則 、(まる 2)データ内 容 の原 則 、(まる3)目 的 明 確 化 の原 則 、(まる4)利 用 制 限 の原 則 、(まる5)安 全 保 護 の 原 則 、(まる6)公 開 の原 則 、(まる7)個 人 参 加 の原 則 、(まる8)責 任 の原 則 )は、後 述 のEU指 令 に も反 映 されており、我 が国 における個 人 情 報 保 護 を考 える上 でも重 要 である。 (3) EU(欧 州 連 合 )の個 人 情 報 保 護 指 令 1990 年 に最 初 の提 案 が出 され、1995 年 に「個 人 データ処 理 に係 る個 人 の保 護 及 び当 該 データの 自 由 な移 動 に関 する欧 州 議 会 及 び理 事 会 の指 令 」として採 択 された。 指 令 (Directive)は、規 則 ( Regulation)のように構 成 国 に直 接 適 用 されるものではないが、構 成 国 を拘 束 し、3年 以 内 に個 人 情 報 保 護 に関 する法 律 の制 定 、又 は改 正 を求 めており、その第 25 条 で は、第 三 国 が十 分 なレベルの保 護 措 置 を確 保 している場 合 に限 って個 人 データの移 転 を行 うことが できる旨 の制 限 を各 国 の国 内 法 で定 めるよう求 めており、現 在 EU各 国 では、これに合 わせた法 律 の 整 備 等 が進 められている。 我 が国 における民 間 部 門 をも対 象 とした個 人 情 報 保 護 に関 する法 整 備 を含 めたシステムの整 備 を 検 討 するに当 たっては、このようなEUの動 向 に対 しても留 意 する必 要 がある。 (4) 我 が国 の状 況 我 が国 においては、国 レベルでは、昭 和 63 年 (1988 年 )に「行 政 機 関 の保 有 する電 子 計 算 機 処 理 に係 る個 人 情 報 の保 護 に関 する法 律 」が制 定 され、公 的 部 門 (国 の行 政 機 関 )のみを対 象 とするセ グメント方 式 をとっている。 地 方 公 共 団 体 レベルでは、平 成 11 年 (1999 年 )4 月 現 在 、23 の都 道 府 県 及 び 12 の政 令 指 定 都 市 を含 め、全 国 で 1,529 団 体 で個 人 情 報 条 例 が制 定 されている。 民 間 部 門 における個 人 情 報 保 護 に関 しては、特 定 の分 野 において刑 法 その他 の法 律 により守 秘 義 務 の規 定 が設 けられているほか、一 部 の法 律 において個 人 情 報 の取 扱 いに関 する規 定 が設 けら れているが、民 間 部 門 全 体 を対 象 としたものはないのが現 状 である。 自 主 規 制 に関 しては、1980 年 代 後 半 からガイドライン等 が策 定 されるようになり、現 在 、行 政 機 関 が示 すものとしては、通 産 省 、郵 政 省 のガイドライン及 びJIS(日 本 工 業 規 格 )があるほか、いくつかの 分 野 において事 業 者 団 体 等 が自 主 的 に定 めたガイドラインもあり、また、策 定 を検 討 中 の分 野 、業 界 等 もある。 このほか、認 証 制 度 に関 しては、現 在 、民 間 や一 部 の地 方 公 共 団 体 において実 施 されている。 4 個 人 情 報 を保 護 するに当 たって考 慮 すべき視 点 (1) 保 護 の必 要 性 と利 用 面 等 の有 用 性 のバランス 我 が国 における個 人 情 報 保 護 のシステムを検 討 するに当 たって、考 慮 すべき視 点 としては、まず、 保 護 の必 要 性 と利 用 面 等 の有 用 性 のバランスがあげられる。 1の背 景 で示 したように、保 護 の必 要 性 そのものが情 報 化 の進 展 の過 程 で生 じてきたものであり、 情 報 化 (個 人 情 報 の利 用 がその一 部 として含 まれる。)に多 くの有 用 性 があるからこそ情 報 化 が急 速 に進 展 し、社 会 の変 容 をもたらし、その結 果 として保 護 の必 要 性 、重 要 性 が生 じている。 したがって、保 護 と利 用 は、本 来 、対 立 的 な関 係 にあるのでなく、調 和 すべきものとして捉 えるべきで あって、保 護 の観 点 から個 人 情 報 の自 由 な流 通 を一 方 的 に否 定 することは適 切 とはいえず、むしろ 重 要 なのは、個 人 情 報 の内 容 及 び利 用 の形 態 、程 度 と個 人 情 報 の保 護 措 置 の内 容 、水 準 との間 に常 にバランスが考 慮 されなければならないことである。 このような観 点 からすると、現 在 の我 が国 においては、既 に社 会 一 般 に広 く個 人 情 報 の利 用 が進 ん でいるにもかかわらず民 間 部 門 をも対 象 とした基 本 的 な原 則 等 が確 立 されていないことは、バランス を欠 いているといわざるを得 ない。 一 方 、個 人 情 報 の利 用 の形 態 やその程 度 は分 野 等 によって様 々であることから 、当 該 分 野 におけ る保 護 と利 用 のバランスの取 り方 、すなわち、その分 野 でどのような内 容 、水 準 の保 護 措 置 を具 体 的 に講 じるべきかについては、当 該 個 別 分 野 の特 性 に応 じて検 討 されるべきである。なお、保 護 措 置 が 必 ずしも一 律 である必 要 がないことと、個 別 の分 野 における具 体 的 な保 護 措 置 の必 要 性 の判 断 とは 全 く別 問 題 であることに留 意 する必 要 がある。 (2) 技 術 革 新 の進 展 等 による個 人 情 報 利 用 の分 野 の拡 大 と高 度 化 今 日 では、情 報 通 信 関 連 技 術 の発 展 により、電 子 化 された情 報 を情 報 通 信 ネットワークを介 して大 量 かつ迅 速 に処 理 することが可 能 になっており、これらを活 用 して、商 取 引 の高 度 化 や社 会 システム の高 度 化 ・複 雑 化 等 が急 速 に進 展 しつつあるが、今 後 ともこの趨 勢 は止 まることなく、将 来 に向 けて さらに続 いていくものと推 測 される。 このような趨 勢 の中 で、個 人 情 報 についても、利 用 分 野 は今 後 ともさらに拡 大 し、利 用 の内 容 、形 態 も一 段 と高 度 化 していくことが予 想 される。 したがって、個 人 情 報 保 護 のシステムを検 討 するに当 たっては、このような今 後 における個 人 情 報 利 用 の分 野 の拡 大 及 び高 度 化 など、今 後 起 こり得 る様 々な状 況 の変 化 に対 して、これらに的 確 に対 応 し得 るような全 体 として柔 軟 なシステムの構 築 を目 指 す必 要 がある。 (3) 国 際 的 な議 論 との整 合 性 近 年 におけるインターネットの急 速 な普 及 、企 業 活 動 のグローバル化 の進 展 等 を契 機 として、国 境 を超 えた個 人 情 報 の流 通 が進 んできていることから、個 人 情 報 の保 護 について、国 際 協 調 を図 って いくことが重 要 な課 題 となっている。 しかし一 方 で、我 が国 の個 人 情 報 保 護 システムを具 体 的 に構 築 していく場 合 には、我 が国 の国 内 的 な特 性 等 がシステムの前 提 として考 慮 されるべきこともまた当 然 であり、この点 、 1998 年 のOECD の「プライバシー保 護 に関 する宣 言 」は、個 人 情 報 の保 護 手 段 については、加 盟 各 国 の異 なる手 段 を認 め合 い、様 々なアプローチ間 で橋 渡 し作 業 をすることが必 要 であるとしている。 このように、我 が国 における個 人 情 報 保 護 システムの具 体 的 内 容 等 を検 討 するに当 たっては、個 人 情 報 を取 り巻 く我 が国 の特 性 を踏 まえつつ、国 際 的 な議 論 との整 合 性 をど のように図 っていくかとい うことについて、今 後 検 討 していく必 要 がある。 5 検 討 経 過 及 び個 人 情 報 保 護 システムの速 やかな整 備 の必 要 性 当 検 討 部 会 は、平 成 11 年 7月 23 日 に第 1回 の会 合 を開 催 して以 来 、合 計 9 回 の会 合 を開 催 し、 精 力 的 な検 討 を行 ってきた。この間 、各 省 庁 や地 方 公 共 団 体 から、行 政 機 関 としての個 人 情 報 保 護 への取 組 みの状 況 や各 分 野 、業 界 等 における取 組 み状 況 についてヒアリングを行 うとともに、民 間 団 体 等 や報 道 機 関 からも個 人 情 報 の保 有 状 況 や保 護 に対 する取 組 みの状 況 、考 え方 等 についてヒア リングを行 った。 当 部 会 としては、極 めて限 られた時 間 の中 ではあったが、各 分 野 、業 界 等 の現 況 等 を踏 まえつつ、 またヒアリングの場 で提 出 された意 見 等 も勘 案 しながら、我 が国 における個 人 情 報 の保 護 と利 用 の 在 り方 等 について、委 員 間 で活 発 な議 論 を重 ねてきた。 現 段 階 においては、さらに詳 細 な議 論 を行 うべき課 題 や、法 制 的 な観 点 から専 門 的 な検 討 を行 うべ き問 題 点 等 がいまだ数 多 く残 されていると認 識 している。しかしながら、個 人 情 報 を取 り巻 く今 日 の社 会 環 境 の急 速 な変 化 を目 の当 たりにし、かつ、個 人 情 報 保 護 の重 要 性 を考 えると、我 が国 における 個 人 情 報 保 護 システムの速 やかな整 備 は、まさに喫 緊 の課 題 である。 このような観 点 から、当 部 会 としては、残 された課 題 、問 題 点 等 については今 後 の検 討 に譲 ることと し、今 回 、個 人 情 報 保 護 システムの基 本 的 な枠 組 み等 に絞 って提 言 を行 うこととした。 (II) 個 人 情 報 保 護 システムの基 本 的 考 え方 1 個 人 情 報 保 護 の目 的 (1)個 人 情 報 の保 護 は、個 人 の尊 厳 が重 んじられるという人 権 の一 部 に由 来 しており、とりわけ、急 速 にネットワーク化 が進 む現 代 社 会 の中 においては、個 人 情 報 は、個 人 の人 格 にも関 わるものとして 適 切 な保 護 が図 られることが重 要 である。 (2)一 方 、適 切 な保 護 のルールの下 、個 人 情 報 の利 用 、提 供 、流 通 等 を図 っていくことは、現 代 のネ ットワーク社 会 の中 において利 便 性 の高 い豊 かな国 民 生 活 を実 現 していくために必 要 となる社 会 的 基 盤 である。また、その適 切 な利 用 等 を通 じて、様 々な社 会 システムの公 正 さを確 保 し、一 層 の公 平 性 、透 明 性 の向 上 を図 っていくことも必 要 である。 個 人 情 報 保 護 の問 題 は、情 報 化 の進 展 により国 民 生 活 の便 利 さ、豊 かさなどの面 においてメリット をもたらしている反 面 、個 人 情 報 が流 通 することによって、自 己 に関 する情 報 の 予 期 しない形 での収 集 、利 用 、提 供 や不 完 全 なままの利 用 、提 供 等 により、不 安 感 や不 快 感 等 を国 民 の間 に生 じさせて いるところにある。 このため、個 人 情 報 の適 切 な保 護 を図 ることはますます重 要 になっているが、一 方 で、適 切 なルー ルの下 、個 人 情 報 の自 由 な流 通 を図 ることは豊 かな国 民 生 活 を実 現 していくための不 可 欠 の条 件 で もある。 したがって、個 人 情 報 保 護 システムは、保 護 と利 用 が調 和 すべき関 係 にあることを念 頭 に、個 人 情 報 の保 護 の必 要 性 とその利 用 の有 用 性 の双 方 に配 慮 した、バランスのとれたものとして構 築 する必 要 があると考 えられる。 このような意 味 で、個 人 情 報 保 護 システムは、いわば社 会 的 基 盤 であると考 えられるとともに、適 切 なルールの下 での個 人 情 報 の活 用 は、今 後 における社 会 システムの公 平 性 、透 明 性 の向 上 等 に積 極 的 に貢 献 でき得 る可 能 性 があり得 ることにも留 意 する必 要 がある。 また、個 人 情 報 の保 護 については、私 生 活 をみだりに公 開 されないという従 来 の伝 統 的 なプライバ シー概 念 と、近 年 の情 報 化 の進 展 した社 会 においてその侵 害 を未 然 に防 止 する観 点 から、自 己 に関 する情 報 の流 れを管 理 (コントロール)するという積 極 的 ・能 動 的 な要 素 を含 むプライバシー概 念 の2 つがあるといわれている。 この2つの概 念 については、憲 法 第 13条 に基 づく権 利 であるとする学 説 があるものの、法 的 な範 囲 、効 果 、手 続 など明 確 にされるべき点 が多 々あるところであり、概 念 の位 置 づけ等 の考 え方 につい ては、今 後 の法 制 的 な検 討 の段 階 において、個 別 法 等 との役 割 分 担 の観 点 も含 め、さらに検 討 する 必 要 がある。 以 上 のように、個 人 情 報 保 護 システムの目 的 の定 め方 については、様 々な論 点 から深 く議 論 すべき 問 題 であるので、法 制 的 な観 点 から検 討 する必 要 がある。 2 保 護 すべき個 人 情 報 の範 囲 個 人 情 報 保 護 システムを構 築 していく場 合 、個 人 情 報 の定 義 及 び保 護 すべき個 人 情 報 の範 囲 を 明 確 にしておくことが必 要 となる。 ア 個 人 情 報 の定 義 個 人 情 報 の定 義 については、「行 政 機 関 の保 有 する電 子 計 算 機 処 理 に係 る個 人 情 報 の保 護 に関 する法 律 」においては、生 存 する個 人 に関 する情 報 であって個 人 が識 別 され得 るものは基 本 的 にす べて含 まれるとの考 え方 であるが、民 間 部 門 の個 人 情 報 の形 態 は様 々であるほか、死 者 の個 人 情 報 をどう考 えるかなどの問 題 もあることから、適 切 な定 義 について検 討 す る必 要 がある。 法 人 その他 の団 体 に関 する情 報 については、基 本 的 には、個 人 情 報 の保 護 の問 題 と法 人 等 の情 報 の安 全 性 や機 密 の保 持 等 の問 題 とは同 一 に取 り扱 うべきではないと考 えられるが、この点 につい ても検 討 する必 要 がある。 イ 保 護 すべき範 囲 保 護 すべき範 囲 の問 題 は、民 間 における個 人 情 報 の利 用 の形 態 が様 々であることから、今 後 にお いて慎 重 に検 討 する必 要 がある。 私 的 目 的 のために私 的 に収 集 、利 用 される個 人 情 報 をどう扱 うかの問 題 があり、基 本 的 にはこれ を対 象 外 とする方 向 が適 切 ではないかと考 えられ るが、一 方 で、私 的 に収 集 されたものであってもこ れを対 価 を得 て他 者 に提 供 する場 合 をどう考 えるかなどの問 題 もあり、これらについて検 討 する必 要 がある。 また、電 子 計 算 機 処 理 による情 報 化 によって個 人 情 報 保 護 の問 題 が大 きく広 がった経 緯 があるこ とから、自 動 処 理 されるものに限 定 するかどうかの問 題 があり、この点 に関 し、今 回 、広 く民 間 部 門 を も対 象 とした保 護 システムの構 築 を検 討 していく場 合 、自 動 処 理 情 報 に限 定 することは保 護 対 象 の 範 囲 として狭 過 ぎるとの意 見 があるほか、民 間 事 業 者 の事 業 活 動 の現 場 における取 扱 いとしても、 自 動 処 理 情 報 かマニュアル情 報 かという線 引 きは、実 態 的 に混 在 していてあまり意 味 がないのでは ないかとの指 摘 もある。 一 方 で、個 人 情 報 保 護 システムを構 築 する以 上 何 らかの限 定 は必 要 であり、特 に、民 間 事 業 者 の 事 業 活 動 等 に不 安 を与 えないよう、個 人 情 報 保 護 システムの目 的 や確 立 すべき原 則 の法 的 効 果 と のバランス等 を踏 まえ、その対 象 範 囲 を明 確 にしておくことは不 可 欠 であると考 えられる。 なお、OECD理 事 会 勧 告 においては、自 動 処 理 情 報 に限 定 することも妨 げないが、マニュアル情 報 についても対 象 としている。また、EU指 令 にお いては、自 動 処 理 される情 報 とファイリング等 により検 索 可 能 な情 報 に止 めている。 以 上 のように、議 論 を尽 くすべき論 点 も多 く、また、確 立 しようとする基 本 原 則 の在 り方 とも関 連 して くるので、法 制 的 な観 点 からさらに検 討 する必 要 があり、現 段 階 においては、保 護 すべき個 人 情 報 の 範 囲 に関 しては、マニュアル情 報 についても対 象 として検 討 すべきであるが一 定 の限 定 は必 要 である と考 えることが適 当 である。 3 個 人 情 報 保 護 のために確 立 すべき原 則 個 人 情 報 を取 り扱 う場 合 の基 本 原 則 を確 立 することが必 要 であると考 えられる。 (個 人 情 報 保 有 者 の責 務 ) (1)個 人 情 報 の収 集 ア 収 集 目 的 の明 確 化 イ 収 集 目 的 の本 人 による確 認 ウ 適 法 かつ公 正 な手 段 による収 集 エ 本 人 以 外 からの収 集 制 限 (本 人 の利 益 保 護 ) (例 外 の例 ) 法 令 の規 定 に基 づく収 集 本 人 の同 意 がある場 合 など 本 項 は、OECD8原 則 のうち、「目 的 明 確 化 の原 則 」及 び「収 集 制 限 の原 則 」に対 応 するものである。 ア及 びイの目 的 明 確 化 及 びウの収 集 手 段 の制 限 は、これらを原 則 とする場 合 にあっては、規 範 とし て要 求 される具 体 的 な内 容 等 が明 確 にされるべきであり、検 討 する必 要 がある。 エの第 三 者 からの収 集 制 限 に係 る原 則 は、個 人 情 報 に関 わる権 利 利 益 の侵 害 が生 じ得 るケース であり、収 集 した場 合 の本 人 通 知 等 本 人 の利 益 保 護 の在 り方 も含 め、その内 容 等 について検 討 する 必 要 がある。 一 方 で、既 に公 にされているものから収 集 する場 合 のほか、緊 急 の必 要 や、生 命 、財 産 等 の安 全 を 守 るために収 集 する場 合 、学 術 的 な調 査 など公 益 を目 的 として収 集 する場 合 など、必 ずしも制 限 を 要 しないと考 えられる様 々なケースが想 定 される。このほか、取 引 の安 全 確 保 のために契 約 の相 手 方 の経 済 的 信 用 に関 する個 人 情 報 を第 三 者 から収 集 する場 合 をどう考 えるかという問 題 もある。 したがって、エの原 則 については、例 示 以 外 のケースに係 る適 用 除 外 につい ても、その要 否 を含 め 検 討 する必 要 がある。 (2)個 人 情 報 の利 用 等 ア 明 確 化 された目 的 外 の利 用 ・提 供 の制 限 イ 目 的 外 利 用 ・提 供 の場 合 の本 人 の同 意 及 び本 人 の利 益 保 護 8原 則 のうち、「利 用 制 限 の原 則 」に対 応 するものである。 個 人 情 報 が収 集 目 的 以 外 の目 的 に利 用 又 は提 供 されることによって生 ずる種 々の問 題 は、個 人 情 報 に関 わる権 利 利 益 の侵 害 が生 じ得 る重 要 な形 態 であるので、このような侵 害 を未 然 に防 止 する 観 点 から、原 則 の内 容 等 について検 討 する必 要 がある。 なお、この原 則 に関 しても、法 令 の規 定 に基 づいて官 公 庁 に個 人 情 報 を提 供 する場 合 のほか、緊 急 の必 要 や、生 命 、財 産 等 の安 全 を守 るために利 用 又 は提 供 する場 合 など、例 外 的 ケースが想 定 されるので、適 用 除 外 について検 討 する必 要 がある。 (3)個 人 情 報 の管 理 等 ア 個 人 情 報 の内 容 の適 正 化 、最 新 化 (取 扱 目 的 に必 要 な範 囲 内 ) イ 漏 洩 防 止 等 の適 正 管 理 8原 則 のうち、「データ内 容 の原 則 」及 び「安 全 保 護 の原 則 」に対 応 するものである。 アは、誤 った個 人 情 報 や古 い個 人 情 報 が利 用 又 は提 供 されると個 人 についての正 しい認 識 が阻 害 され、個 人 の権 利 利 益 が侵 害 されるおそれがあるので、そのための原 則 の内 容 等 について検 討 す る必 要 がある。 あわせて、収 集 目 的 に基 づく利 用 が終 了 した場 合 など、取 扱 目 的 に必 要 な範 囲 内 を越 えた場 合 の 取 扱 いについても検 討 する必 要 がある。 イは、個 人 情 報 の違 法 又 は不 当 な利 用 、提 供 等 を未 然 に防 止 するためには個 人 情 報 の漏 洩 防 止 等 安 全 確 保 のための適 切 な措 置 が必 要 であることから、そのための原 則 の内 容 等 について検 討 する 必 要 がある。 なお、個 人 情 報 の処 理 を外 部 委 託 する場 合 において、受 託 者 においても、委 託 者 が自 ら管 理 する 場 合 と同 様 の保 護 措 置 が必 要 と考 えられるが、当 該 受 託 者 についてまで言 及 するかどうかについて 検 討 する必 要 がある。 (4)本 人 情 報 の開 示 等 ア 個 人 情 報 の保 有 状 況 の公 開 イ 本 人 からの開 示 の求 め ウ 本 人 からの訂 正 の求 め エ 本 人 からの自 己 情 報 の利 用 ・提 供 拒 否 の求 め (イ、ウ、エ共 通 ) 原 則 として応 じなければならない。 期 間 、費 用 、方 法 拒 否 できる場 合 拒 否 の際 のその旨 及 び理 由 の提 示 8原 則 のうち、「公 開 の原 則 」及 び「個 人 参 加 の原 則 」に対 応 するものである。 個 人 情 報 の保 護 を実 効 あらしめるため、特 に自 己 に関 する情 報 の流 れを管 理 するという積 極 的 ・ 能 動 的 な要 素 を念 頭 に置 くものである。 アの公 開 に関 しては、イの開 示 の求 めを本 人 が行 使 し得 るよう、その実 効 性 を確 保 するための原 則 であり、本 人 が自 己 の個 人 情 報 の所 在 を支 障 なく知 り得 るような状 況 が確 保 されることが必 要 であ る。この観 点 から、公 開 する内 容 やその具 体 的 な方 法 等 に関 し、その考 え方 等 について検 討 する必 要 がある。 イの本 人 から開 示 を求 められたときは、合 理 的 な範 囲 内 の期 間 、費 用 、方 法 で応 じれば足 りると考 えられるが、その考 え方 等 について検 討 する必 要 がある。 ア及 びイの原 則 については、現 行 の「行 政 機 関 の保 有 する電 子 計 算 機 処 理 に係 る個 人 情 報 の保 護 に関 する法 律 」において公 益 上 の観 点 や当 該 個 人 情 報 の性 質 上 の観 点 等 から適 用 除 外 されてい るものが数 多 くあるように、保 有 状 況 の公 開 や本 人 からの開 示 の求 めに応 じることが適 切 でないと考 えられる場 合 が種 々想 定 されるので、これらの適 用 除 外 の要 否 について検 討 する必 要 がある。 また、本 人 からの求 めに応 じて開 示 した場 合 、第 三 者 の個 人 や法 人 の正 当 な利 益 を侵 すこととなる 場 合 など、これを拒 否 できることとすることが適 当 な個 別 的 なケースも想 定 されるので、これらの考 え 方 等 について検 討 する必 要 がある。 ウの訂 正 の求 めに関 しては、個 人 情 報 の誤 りが確 認 された場 合 には、基 本 的 にこれを訂 正 すべき と考 えられるが、個 人 情 報 の誤 りについて当 事 者 間 で争 いがある場 合 などもあり、これらの取 扱 いに ついて検 討 する必 要 がある。 なお、訂 正 に関 しては、当 該 個 人 情 報 の2次 、3次 取 得 者 についてどうするかの問 題 もあり、この場 合 、基 本 的 には、直 接 の提 供 先 に対 して提 供 したときと同 等 の手 段 及 び相 当 の方 法 で訂 正 を行 うこ とで足 りるのではないかと考 えられるが、さらに検 討 する必 要 がある。 エの利 用 又 は提 供 の拒 否 の求 めについては、収 集 の際 の本 人 同 意 がなくなった状 態 として他 の原 則 を適 用 することが基 本 であると考 えられるが、本 人 同 意 がいつでも撤 回 できることとなるのは安 定 性 を欠 く結 果 ともなるので、個 別 の事 情 に応 じて拒 否 できる場 合 があり得 るとすることが適 切 であると も考 えられ、検 討 する必 要 がある。 ただし、収 集 の際 に本 人 同 意 がない場 合 については、一 般 的 にはこのよう な事 情 はないことに留 意 すべきであると考 えられる。 イ、ウ、エの当 事 者 が未 成 年 者 等 である場 合 については、原 則 としてその法 定 代 理 人 が本 人 に代 わって求 めることができるとすることが適 当 であると考 えられるが、代 理 人 と本 人 の間 で利 益 が相 反 す るようなケースもあり得 るので、この点 も含 め検 討 する必 要 がある。 イ、ウ、エの求 めについては、国 民 の権 利 を重 視 する立 場 から法 律 上 の請 求 権 として構 成 するべき であるとの意 見 、民 間 事 業 者 等 の実 務 の実 態 を踏 まえて行 為 規 範 に止 めるべきであるとの意 見 、法 制 化 段 階 で検 討 すべき課 題 であって現 時 点 で考 え方 を限 定 するべきではないとの意 見 などがあっ た。この点 については、個 別 法 との役 割 分 担 の観 点 も含 め、法 制 的 に検 討 する必 要 がある。 (5)管 理 責 任 及 び苦 情 処 理 ア 管 理 責 任 及 び責 任 者 の明 確 化 イ 苦 情 処 理 ・相 談 窓 口 の設 置 及 びその適 正 な処 理 アは、8原 則 のうち、「責 任 の原 則 」に対 応 するものである。 個 人 情 報 保 護 の実 効 を上 げるためには、個 人 情 報 を保 有 する事 業 者 が基 本 原 則 を遵 守 していく ことが必 要 である。このため、個 人 情 報 の取 扱 いに係 る管 理 責 任 者 を明 確 にするとともに、管 理 責 任 者 が基 本 原 則 を遵 守 すべき責 任 を負 うことを明 確 にしようとするものである。 イは、8原 則 では明 確 にされていないが、個 人 情 報 保 護 の実 効 性 を確 保 する観 点 から、個 人 情 報 の保 有 者 に対 して、苦 情 処 理 ・相 談 窓 口 の設 置 及 び苦 情 に対 する適 正 処 理 の責 務 を負 わせようと するものである。 個 人 情 報 保 護 の問 題 は、個 人 情 報 の不 適 切 な取 扱 いという事 実 行 為 に起 因 しているので、これを すべて法 的 に解 決 するというよりも、当 事 者 間 での事 実 上 の対 応 等 により解 決 し得 る場 合 も多 いと推 測 されること、また、何 よりも迅 速 な解 決 が望 まれることなどから、苦 情 等 のアクセスポイントの明 示 及 びその適 正 処 理 は問 題 の解 決 に効 果 的 であり、かつ、事 業 者 側 にも過 大 な負 担 とはならないと考 え られる。 ※1 (1)から(5)については、これらを個 人 情 報 保 有 者 に適 用 される原 則 とする場 合 にあっては法 的 に様 々な検 討 課 題 があるので、その適 用 関 係 に係 る考 え方 を全 体 的 に整 理 した上 で、法 制 的 な 観 点 から検 討 する必 要 がある。 ア 個 別 法 等 に基 づき公 益 上 の観 点 等 から個 人 情 報 を取 り扱 う場 合 において、個 人 情 報 に関 する 基 本 原 則 等 を適 用 した場 合 にその事 務 や活 動 に支 障 を生 ずるものなどについては、( 1)から(5)の原 則 の全 部 又 は一 部 の適 用 除 外 について、法 制 的 に検 討 する必 要 がある。 国 の安 全 ・外 交 上 の秘 密 等 に係 るもの、犯 罪 捜 査 ・租 税 犯 則 調 査 ・公 訴 提 起 等 に係 るもの、その他 (参 考 :行 政 機 関 の保 有 する電 子 計 算 機 処 理 に係 る個 人 情 報 の保 護 に関 する法 律 ) イ 次 のような個 別 法 等 に規 定 のない分 野 については、( 1)から(5)の基 本 原 則 のそれぞれについ て具 体 的 にどのような支 障 が生 じるかを検 証 した上 で、憲 法 上 の考 え方 を踏 まえつつ、それぞれの分 野 における個 人 情 報 の利 用 の程 度 と保 護 の現 状 のバランスをも考 慮 しながら、各 原 則 の適 用 除 外 の要 否 等 について、法 制 的 に検 討 する必 要 がある。 報 道 ・出 版 (第 21 条 :言 論 、出 版 その他 一 切 の表 現 の自 由 ) 学 術 ・研 究 (第 23 条 :学 問 の自 由 )など ウ 当 該 個 人 情 報 の性 質 上 の観 点 等 から、( 4)の原 則 に関 して、公 開 、本 人 開 示 等 を行 うことが適 切 でないと考 えられるものについては、その適 用 除 外 について、法 制 的 に検 討 する必 要 がある。 ※2 基 本 原 則 を基 本 法 として立 法 化 する場 合 には、一 般 法 である基 本 法 とこれに対 する特 別 法 と なる各 個 別 法 との関 係 の考 え方 等 を整 理 する必 要 があり、特 別 法 である旨 を 明 確 にするための規 定 の整 備 の必 要 性 等 についても、別 途 検 討 していく必 要 がある。 ※3 未 成 年 者 等 が本 人 同 意 や開 示 等 の求 めの当 事 者 となる場 合 は、本 人 に代 わって法 定 代 理 人 が行 うことができるものとすることが適 当 であるが、このほか、個 人 情 報 の取 扱 いをオンラインによって 行 う場 合 において当 事 者 が未 成 年 者 等 である場 合 をどう扱 うのか、また、未 成 年 者 等 からの個 人 情 報 の収 集 については一 定 の配 慮 がなされるべきことについてどう考 えるかなどの問 題 があり、これらに ついて検 討 する必 要 がある。 (国 民 の責 務 ) (6)国 民 の果 たすべき役 割 と責 務 個 人 情 報 を保 有 する者 が遵 守 すべき基 本 原 則 とあわせて、国 民 の責 務 を明 確 にする必 要 がある。 この場 合 、国 民 においても、他 人 の個 人 情 報 の保 護 に努 力 すべき旨 を明 らかにするとともに、自 らも 自 己 情 報 の適 切 な管 理 について責 任 を有 することを明 らかにしておく必 要 があると考 えられ る。 具 体 的 な定 め方 については、確 立 すべき原 則 の内 容 (目 的 、範 囲 、基 本 原 則 )等 を勘 案 しながら検 討 する必 要 がある。 (国 の責 務 ) (7)国 の果 たすべき役 割 と責 務 ア 必 要 な施 策 を講 ずる責 務 ・法 律 上 の措 置 ・自 主 規 制 等 の促 進 (実 効 性 担 保 措 置 を含 む。) イ 所 管 業 界 について、各 行 政 庁 における苦 情 処 理 ・相 談 窓 口 の設 置 基 本 原 則 とあわせて、個 人 情 報 の保 護 を図 る上 での国 の責 務 を明 確 にしておく必 要 がある。 この場 合 、国 においては、確 立 された基 本 原 則 の趣 旨 にのっとり、必 要 となる法 律 上 の措 置 や自 主 規 制 等 を促 進 するための指 導 、勧 告 、公 表 等 の措 置 を講 ずるよう努 力 すべき旨 を明 らかにする必 要 があると考 えられる。 また、個 人 情 報 の保 護 に関 して、国 民 に対 する啓 発 活 動 及 び教 育 の推 進 等 に努 力 すべき旨 を明 ら かにする必 要 があると考 えられる。 さらに、各 行 政 庁 においては、所 管 業 界 等 に関 する苦 情 処 理 ・相 談 窓 口 を設 置 すべきことを明 確 に しておく必 要 がある。 具 体 的 な定 め方 については、確 立 すべき原 則 の内 容 (目 的 、範 囲 、基 本 原 則 )等 を勘 案 しながら検 討 する必 要 がある。 (地 方 公 共 団 体 の責 務 ) (8)地 方 公 共 団 体 の果 たすべき役 割 と責 務 国 の施 策 ・制 度 の趣 旨 にのっとった施 策 、地 域 の特 性 に応 じた施 策 ・条 例 上 の措 置 ・自 主 規 制 等 の促 進 (実 効 性 担 保 措 置 を含 む。) ・苦 情 処 理 ・相 談 窓 口 の設 置 個 人 情 報 の保 護 を図 っていく場 合 において、地 方 公 共 団 体 が果 たし得 る役 割 も大 きいと考 えられる ことから、個 人 情 報 の保 護 を図 る上 での地 方 公 共 団 体 の責 務 を明 確 にしておく必 要 がある 民 間 分 野 の保 有 する個 人 情 報 の保 護 については、一 部 の団 体 が先 行 して取 り組 んでいるが、確 立 された基 本 原 則 の趣 旨 にのっとり、当 該 地 域 の特 性 等 に応 じた必 要 な施 策 を実 施 するよう努 力 すべ き旨 を明 らかにする必 要 があると考 えられる。 上 記 のような観 点 から、地 方 公 共 団 体 が、指 導 、勧 告 、公 表 等 の措 置 を講 じ、また、地 域 における 個 人 情 報 保 護 に関 する苦 情 処 理 ・相 談 窓 口 を設 置 するに当 たって、国 との役 割 分 担 等 について検 討 する必 要 がある。 具 体 的 な定 め方 については、確 立 すべき原 則 の内 容 (目 的 、範 囲 、基 本 原 則 )等 を勘 案 しながら検 討 する必 要 がある。 (III) 個 人 情 報 保 護 システムの在 り方 1 基 本 的 考 え方 我 が国 において、既 に社 会 一 般 に広 く個 人 情 報 の利 用 が進 んでいる現 状 にかんがみると、民 間 部 門 をも対 象 とした個 人 情 報 保 護 システムの整 備 は喫 緊 の課 題 である。 しかし、民 間 における個 人 情 報 の利 用 の形 態 やその程 度 は分 野 によって様 々であるので、個 別 法 による公 的 関 与 や民 間 における自 主 規 制 など、個 別 分 野 ごとの利 用 の特 性 に応 じた保 護 を図 ってい く手 法 の利 点 を十 分 生 かしていくことが不 可 欠 である。 また、個 人 情 報 利 用 の分 野 の拡 大 及 び高 度 化 など今 後 起 こり得 る様 々な状 況 の変 化 に的 確 に対 応 し得 るような全 体 として柔 軟 なシステムの構 築 を目 指 す必 要 もある。 したがって、我 が国 の個 人 情 報 保 護 システムの在 り方 としては、まず、官 民 を通 じた基 本 原 則 の確 立 を図 ることとし、あわせて保 護 の必 要 性 が高 い分 野 については個 別 法 の整 備 を図 るとともに、民 間 における業 界 や事 業 者 等 の自 主 規 制 等 の自 主 的 な取 組 みを促 進 し、これらを全 体 として組 み合 わ せて最 適 なシステムとして構 築 することを基 本 とすることが適 当 である。 このような観 点 から、我 が国 の個 人 情 報 保 護 システムの中 核 となる基 本 原 則 等 を確 立 するため、 全 分 野 を包 括 する基 本 法 を制 定 することが必 要 である。 2 基 本 法 に盛 り込 むべき内 容 基 本 法 の内 容 としては、「個 人 情 報 保 護 の目 的 」、「保 護 すべき個 人 情 報 の範 囲 」、「基 本 原 則 」及 び「国 民 、国 、地 方 公 共 団 体 の責 務 」を盛 り込 むことが適 当 と考 える。 なお、当 検 討 部 会 の中 において、その他 の事 項 についても種 々の議 論 があったところであり、それら を将 来 において盛 り込 む必 要 性 まで否 定 するものではないが、我 が国 の個 人 情 報 の保 護 及 び利 用 の現 状 を勘 案 した場 合 、分 野 ごとの個 別 法 や自 主 規 制 を生 かしていくことが重 要 であり、かつ、全 体 としての保 護 システムを早 急 に構 築 する必 要 があることなどから、基 本 法 の内 容 については、現 時 点 で必 要 と思 われる事 項 に限 定 して提 言 することがむしろ適 当 であるとの結 論 に達 した。 3 基 本 法 の意 義 個 人 情 報 の保 護 に関 して、民 間 部 門 をも対 象 とし た基 本 的 な原 則 等 が確 立 されていない現 状 にあ る我 が国 において、個 人 情 報 の保 護 の目 的 、範 囲 、基 本 原 則 が明 確 にされることの意 義 は極 めて大 きいものと考 えられる。 すなわち、我 が国 においては、個 人 情 報 保 護 の問 題 はここ 30 数 年 の間 に議 論 されるようになった 比 較 的 新 しい問 題 であるだけに、その重 要 性 は指 摘 されながらも統 一 的 な考 え方 等 が示 されていた とはいえない状 況 であった。 しかし、基 本 法 を定 めることによって個 人 情 報 保 護 の理 念 が明 らかにされることとなり、このことは我 が国 における個 人 情 報 保 護 の概 念 の明 確 化 という意 味 に おいて、大 きな一 歩 となるといえる。 また、個 人 情 報 の取 扱 いに関 して、民 間 部 門 をも対 象 とした一 般 的 な基 本 原 則 等 が明 らかにされ ることは、国 民 一 人 ひとりにとっても、自 らの個 人 情 報 が保 護 されるべきであると同 時 に、他 人 の個 人 情 報 を保 護 しなければならないという現 代 社 会 にとって必 要 不 可 欠 な基 本 ルールが確 立 されることと なる。 さらに、基 本 原 則 等 が確 立 されれば、国 及 び地 方 公 共 団 体 においては、その趣 旨 にのっとり、個 人 情 報 の保 護 のため法 律 上 の措 置 、条 例 上 の措 置 をはじめとして様 々な施 策 を講 じていくこととなるほ か、一 般 多 数 の民 間 の事 業 者 、業 界 においても、基 本 原 則 の遵 守 に向 けた様 々な努 力 が払 われる ことが期 待 されるところであり、これらの結 果 として、我 が国 における個 人 情 報 の保 護 は大 きく前 進 す ると考 えられる。 このような意 味 においても、個 人 情 報 保 護 システムの中 核 となる基 本 法 の制 定 を急 ぐべきである。 ※1 監 督 機 関 について EUにおける「データ保 護 庁 」のようなあらゆる分 野 を通 じた規 制 権 限 を有 する監 督 機 関 の創 設 は、 一 般 多 数 の事 業 者 に対 する規 制 措 置 によって本 来 自 由 であるべき事 業 活 動 を大 幅 に制 約 すること となるなど、我 が国 の現 状 にかんがみると適 切 ではなく、また、行 政 改 革 や規 制 緩 和 の流 れにも反 す るところである。 また、EU各 国 においても、データ保 護 庁 は、まだ十 分 に機 能 、定 着 していないとの指 摘 もあり、この ようなことから、我 が国 においては、基 本 的 方 向 として、これを代 替 し得 る全 体 として実 効 性 ある事 後 救 済 システムの構 築 等 を目 指 すことがむしろ適 切 であると考 えられる。 ※2 全 分 野 を通 じた登 録 ・届 出 制 度 について 民 間 の全 分 野 を通 じて漏 れなく登 録 ・届 出 の義 務 を課 すことは、民 間 事 業 者 に対 して、本 来 自 由 で あるべき事 業 活 動 を大 幅 に制 約 するとともに、大 きな負 担 を課 すこととなり、個 人 情 報 保 護 の重 要 性 を考 慮 したとしてもなお問 題 が多 く、また、行 政 コストも大 幅 に増 大 するので、我 が国 の現 状 にかんが みると現 実 的 ではない。 ※3 全 分 野 を通 じた罰 則 等 について 刑 事 法 の一 般 理 論 として、罰 則 の創 設 には謙 抑 的 であるべきであり、他 の手 段 によっては実 効 性 担 保 が期 待 できない場 合 に限 り、その創 設 を検 討 することが適 切 であると考 えられる。 分 野 を問 わず一 律 に罰 則 等 を設 けることについては、各 分 野 における個 人 情 報 の利 用 の形 態 等 が 様 々であるので、構 成 要 件 の明 確 化 の観 点 から問 題 が多 い。 登 録 制 度 や届 出 制 度 があれば、構 成 要 件 の明 確 化 を図 ることも可 能 ではあるが、前 記 ※2で示 し たように、全 分 野 を通 じた登 録 制 度 や届 出 制 度 は現 実 的 ではない。 全 分 野 を通 じて適 用 する罰 則 等 を創 設 する場 合 は、当 該 規 定 は一 般 多 数 の事 業 者 を対 象 とする ため広 く薄 いものとならざるを得 ないが、その場 合 の抑 止 効 果 には限 界 があり、全 体 としての実 効 性 は必 ずしも高 くない。 広 く薄 い罰 則 であっても、あらゆる分 野 の一 般 多 数 の事 業 者 にとっては、自 由 な事 業 活 動 の阻 害 要 因 となるなど、他 の保 護 されるべき権 利 、利 益 が損 なわれるおそれがある。 以 上 のようなことから、あらゆる分 野 を通 じた一 般 多 数 の事 業 者 を対 象 とする基 本 法 において、罰 則 等 を創 設 することについては、慎 重 に考 えるべきである。 4 個別法等 (1)個 別 法 の整 備 個 別 法 において、個 人 情 報 保 護 のための具 体 的 措 置 の整 備 を図 っていくことは、全 体 として実 効 性 ある個 人 情 報 保 護 システムの構 築 を図 る上 で極 めて重 要 である。 このため、個 人 情 報 が大 量 に収 集 、利 用 され、当 該 個 人 情 報 の内 容 についても機 密 性 が高 く、か つ、漏 洩 の場 合 の被 害 の大 きい分 野 については、個 人 情 報 保 護 の必 要 性 が高 いと考 えられるので、 個 人 情 報 保 護 に関 する法 整 備 を含 めたシステムを速 やかに整 えるとの観 点 から、既 存 の法 規 制 等 について検 討 を加 えた上 で、これらの改 正 も含 め、個 別 法 の整 備 について、別 途 検 討 していく必 要 が ある。 (例 ) 信用情報分野 医療情報分野 電 気 通 信 分 野 など また、個 別 法 において、個 人 情 報 の取 扱 いに関 する規 定 がある場 合 においては、個 人 情 報 保 護 に 関 する基 本 原 則 等 との整 合 性 を図 る必 要 があることから、当 該 法 律 の見 直 し等 の必 要 性 などについ て、別 途 検 討 していく必 要 がある。 (例 ) 「行 政 機 関 の保 有 する電 子 計 算 機 処 理 に係 る個 人 情 報 の保 護 に関 する法 律 」など (2)個 別 法 の在 り方 個 別 法 において、個 人 情 報 の取 扱 いに関 する規 定 等 の整 備 を図 る場 合 にあっては、個 人 情 報 に 関 する基 本 原 則 等 を踏 まえつつ、当 該 分 野 における個 人 情 報 の内 容 や収 集 、利 用 の形 態 、利 用 の 程 度 など、その分 野 の実 態 や特 性 を配 慮 して検 討 していくことが必 要 である。 また、保 護 の必 要 性 と利 用 面 等 の有 用 性 のバランスにも配 慮 する必 要 があるほか、技 術 革 新 の進 展 等 による個 人 情 報 利 用 の分 野 の拡 大 及 び高 度 化 、国 際 的 な議 論 との整 合 性 なども考 慮 する必 要 がある。 保 護 のための具 体 的 措 置 の内 容 等 については、これまでの当 該 分 野 における保 護 に対 する取 組 み等 の実 績 などを踏 まえつつ、可 能 な限 り個 人 情 報 の高 水 準 の保 護 が図 られるよう配 慮 する必 要 が ある。 本 人 からの開 示 、訂 正 の求 めの実 効 性 を確 保 する必 要 性 が高 く、個 人 情 報 の保 有 状 況 を当 該 事 業 者 だけでなく、所 管 の行 政 庁 においても公 開 してお く必 要 があると考 えられるような場 合 には、必 要 に応 じて、そのための個 人 情 報 の届 出 制 、登 録 制 等 の導 入 について、別 途 検 討 していく必 要 がある と考 えられる。 さらに、個 人 情 報 の取 扱 いに関 する規 定 等 について、その実 効 性 を担 保 する必 要 性 が大 きく、か つ、他 の手 段 によっては実 効 性 担 保 が期 待 できないと考 えられる場 合 においては、構 成 要 件 の明 確 化 、他 の分 野 とのバランス等 も勘 案 しつつ、刑 罰 、行 政 罰 、行 政 処 分 等 の規 制 措 置 の設 置 及 び十 分 な監 督 体 制 の整 備 等 について、別 途 検 討 していく必 要 がある。 (3)その他 の法 令 の運 用 等 個 人 情 報 の取 扱 いに関 する個 別 規 定 等 の整 備 までは必 要 としないと考 えられる分 野 における法 令 においても、その運 用 等 に当 たっては、個 人 情 報 保 護 に関 する基 本 原 則 等 の趣 旨 が生 かされるよう な方 向 が望 まれるところであり、当 該 法 令 の趣 旨 の範 囲 内 で、可 能 となる方 策 等 を別 途 検 討 していく ことが望 まれる。 特 に、法 律 上 の処 分 であって当 該 法 律 の規 定 の趣 旨 に他 の法 令 等 に対 する適 合 性 が要 件 とされ ている場 合 など、個 人 情 報 保 護 に関 する基 本 原 則 等 への適 合 性 を当 該 処 分 の処 分 基 準 又 は審 査 基 準 等 の中 に取 り込 むことが可 能 な場 合 においては、基 本 原 則 等 の趣 旨 が生 かされるような方 向 で 積 極 的 に検 討 していくことが望 まれる。 5 自主規制 (1)自 主 的 な取 組 みの促 進 法 的 規 制 については、その性 質 上 、必 要 最 低 限 の規 範 、規 程 とならざるを得 ないのに対 し、自 主 的 な取 組 み(行 政 機 関 によるガイドラインの制 定 、業 界 自 主 規 制 等 )には、一 定 の限 界 はあるものの、 以 下 のようなメリットがある。 ア 当 該 分 野 の業 態 や特 殊 性 等 も考 慮 したきめ細 かな、又 は、高 水 準 の対 応 が可 能 で あり、場 合 により先 進 的 な取 組 みを標 準 化 することも期 待 できること。 イ 法 規 制 の場 合 に比 べ、機 敏 かつ柔 軟 な対 応 が可 能 であること。特 に、技 術 進 歩 や 事 業 形 態 の変 化 が速 くかつ大 きい分 野 にあっては、予 期 しない事 態 に対 する迅 速 な 対 応 が可 能 となること。 ウ 国 民 からの監 視 (社 会 的 評 価 )が厳 しくなり、民 間 企 業 、国 民 の双 方 に意 識 の高 揚 が期 待 さ れること。 エ 規 制 の遵 守 等 の監 視 ・管 理 にかかる行 政 コストが小 さいこと。 したがって、自 主 的 な取 組 みの促 進 は重 要 であり、各 分 野 において、保 護 の水 準 向 上 を目 指 して、 自 主 的 な取 組 みを積 極 的 に促 進 していくことが必 要 である。 (2)自 主 規 制 の在 り方 ア ガイドライン等 自 主 規 制 の手 法 として、行 政 機 関 がガイドラインや規 格 を制 定 し、それを事 業 者 団 体 や事 業 者 が 遵 守 するという手 法 がある。ガイドラインや規 格 の内 容 は、個 人 情 報 保 護 の基 本 原 則 等 を踏 まえつ つ、これを補 完 するようなものとする必 要 があり、さらに、業 種 業 態 の差 異 等 による特 質 が付 加 された ものも検 討 されるべきである。 現 在 、個 人 情 報 保 護 に関 しては、通 産 省 、郵 政 省 のガイドライン及 び JIS(日 本 工 業 規 格 )Q15001 があり、これらについては、その普 及 及 び内 容 の充 実 を図 って いく必 要 がある。 また、事 業 者 団 体 や事 業 者 がガイドラインや規 格 を遵 守 し、自 らの課 題 として積 極 的 に個 人 情 報 保 護 対 策 に取 り組 むことが重 要 であり、このようなガイドラインや規 格 の実 効 性 を担 保 するため、公 的 機 関 等 による広 報 活 動 や、ガイドライン遵 守 企 業 名 等 の公 表 、認 証 制 度 の実 施 など、有 効 な施 策 を講 じる必 要 がある。 なお、事 業 者 団 体 等 が自 主 的 にガイドラインを定 める場 合 も考 えられ、行 政 庁 が制 定 するガイドライ ン等 を補 完 するものとして有 効 な場 合 がある。 イ 認証制度 ガイドラインや規 格 の実 効 性 を高 めるために有 効 な手 法 として、認 証 制 度 (事 業 者 等 の取 組 みの適 切 性 を認 定 し、マーク等 を付 与 する制 度 )があり、現 在 、民 間 や一 部 の地 方 公 共 団 体 が実 施 してい る。 国 民 は、これによって当 該 事 業 者 等 の個 人 情 報 保 護 に関 する適 切 性 を容 易 に確 認 することができ るとともに、事 業 者 等 の側 においても、自 らの適 切 性 を確 認 し、かつ、自 らの適 切 性 をアピールするこ とが可 能 となり、消 費 者 側 の選 択 の要 素 にもなり得 るので、その場 合 事 業 者 の利 益 確 保 が可 能 とな る。 このように、マーク制 度 等 の認 証 制 度 は、個 人 情 報 保 護 の水 準 の向 上 に大 きく寄 与 するものであ り、その一 層 の普 及 と内 容 の充 実 を図 っていく必 要 がある。 ウ 民 間 における紛 争 処 理 機 関 の活 用 個 人 情 報 保 護 の問 題 は、すべてを法 的 に解 決 するというよりも、当 事 者 間 での事 実 上 の対 応 によ り解 決 し得 る場 合 も多 いと推 測 されるが、仮 にそうでない場 合 でも、できるだけ当 事 者 に近 いところ で、かつ、短 期 間 で解 決 されることが望 ましいと考 えられる。 このような観 点 から、事 後 救 済 制 度 として、基 本 原 則 に基 づく各 事 業 者 における苦 情 ・相 談 窓 口 の 設 置 に加 え、民 間 における自 主 的 な紛 争 処 理 の仕 組 みの整 備 が望 まれる。 具 体 的 には、より中 立 性 が高 く、社 会 的 影 響 力 のある事 業 者 団 体 、公 的 機 関 、第 三 者 機 関 等 によ る紛 争 処 理 の仕 組 みを整 備 していくことが必 要 であり、その場 合 、第 三 者 機 関 として非 営 利 団 体 (N PO)等 の活 用 も期 待 される。 ただし、紛 争 処 理 機 関 には、紛 争 当 事 者 の個 人 情 報 に関 する保 護 義 務 など、いくつかの義 務 を法 的 に課 すべきとの議 論 もあり、紛 争 処 理 の仕 組 みの策 定 、紛 争 処 理 機 関 の設 置 等 について、今 後 において、別 途 検 討 がなされるべきである。 6 複 層 的 な救 済 システムの在 り方 の検 討 個 人 情 報 保 護 の問 題 は、個 人 情 報 の不 適 切 な取 扱 いという事 実 行 為 に起 因 しているので、これを すべて法 的 に解 決 するというよりも、当 事 者 間 での事 実 上 の対 応 等 により解 決 し得 る場 合 も多 いと推 測 されること、また、何 よりも迅 速 な解 決 が望 まれることなどから、事 後 的 な救 済 制 度 を充 実 させる必 要 がある。 このため、事 業 者 の苦 情 処 理 ・相 談 窓 口 において対 応 するとともに、民 間 における紛 争 処 理 機 関 の 活 用 を図 るなど、まず当 事 者 に近 いところでの迅 速 な解 決 を図 った上 で、それでも解 決 できない場 合 については、国 の各 行 政 庁 又 は地 方 公 共 団 体 の苦 情 処 理 ・相 談 窓 口 に申 し出 るこ とができ、必 要 に 応 じて国 又 は地 方 公 共 団 体 の所 要 の措 置 が講 じられるよう、その体 制 等 について検 討 する必 要 があ る。 それでも解 決 できない場 合 も想 定 されることから、基 本 原 則 等 の実 効 性 を担 保 するため、最 終 的 に 国 においてこれらを受 け付 け、公 正 ・客 観 的 な立 場 から処 理 する統 一 的 かつ第 三 者 的 な窓 口 の設 置 について検 討 する必 要 がある。 このように、実 効 性 の担 保 の観 点 から、それぞれの段 階 において、事 業 者 、民 間 第 三 者 機 関 等 、地 方 公 共 団 体 、国 、統 一 的 な第 三 者 窓 口 が役 割 を分 担 しつつ、全 体 として効 果 的 に機 能 し得 るような 「複 層 的 な救 済 システム」を構 築 していくことが有 効 かつ適 切 であると考 えられるところであり、その在 り方 や仕 組 みなどについて検 討 する必 要 がある。 7 悪 質 な不 適 正 処 理 等 を行 った者 に対 する制 裁 措 置 の検 討 基 本 原 則 等 に反 したことのみをもって刑 事 罰 等 の制 裁 措 置 を加 えることについては、慎 重 に考 えざ るを得 ないところであり、悪 質 な不 適 正 処 理 等 を行 った者 に対 する分 野 を横 断 した制 裁 措 置 の創 設 については、今 回 、具 体 的 に提 言 することは困 難 であるが、しかしながら、権 利 侵 害 の程 度 が著 しく、 かつ、原 則 違 反 の行 為 の形 態 等 を横 断 的 に捉 えるこ とが可 能 な場 合 等 については、刑 事 罰 等 の制 裁 措 置 を検 討 し得 る可 能 性 もあることから、別 途 検 討 していく必 要 がある。 (IV) 今 後 の進 め方 等 1 法 制 的 な観 点 からの専 門 的 な検 討 のための体 制 の整 備 基 本 法 を制 定 するためには、さらに詳 細 な議 論 を行 うべき課 題 や、法 制 的 な観 点 から専 門 的 な検 討 を行 うべき問 題 点 等 が数 多 く残 されている。 このため、政 府 においては、法 制 的 な観 点 からの専 門 的 な検 討 を行 っていくための「専 門 委 員 会 」 及 びこの問 題 を専 ら担 当 する「担 当 室 」を設 置 するとともに、関 係 省 庁 間 の連 絡 等 を密 にするなど、 今 後 、十 分 な検 討 を進 めていく上 で必 要 となる体 制 整 備 を図 るべきである。 2 国 民 等 の意 見 の聴 取 個 人 情 報 保 護 の問 題 は、広 く国 民 等 全 般 に及 ぶ問 題 であるとともに、国 民 一 人 ひとりにも深 く関 わ る問 題 であるので、当 検 討 部 会 としてこの報 告 において行 った提 言 等 に対 しては、広 く各 界 、各 層 か らの意 見 等 を聞 くことが、今 後 の検 討 に不 可 欠 である と考 えられる。 このため、政 府 においては、いわゆるパブリック・コメント手 続 に準 じて、国 民 等 の意 見 を聴 取 する手 続 を実 施 するよう要 請 する。
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