情報教育 新教科「情報」の指導についての一試み − 科目「情報A」の指導資料の作成を通して − 宮城県蔵王高等学校 角谷 敦子 概 要 本研究は普通教科「情報」を指導するに当たっての一試みである。普通教科「情報」 は必履修教科であり「情報A」 , 「情報B」 , 「情報C」の3科目で構成されている。こ れらのうち,コンピュータや情報通信ネットワークの活用経験が浅い生徒でも,十分 履修できることを想定した「情報A」に研究を絞り,年間指導計画,指導展開例及び 補助教材を作成し,それに基づく評価の在り方を例示した。 1 主題設定の理由 平成 15 年度から実施される高等学校における普通教科「情報」創設の経緯は,平成8年 7 月の中央 教育審議会第一次答申「21 世紀を展望した我が国の教育の在り方について」までさかのぼることがで きる。この答申では, 「普通科については,学校や生徒の実態等に応じて情報に関する教科・科目が履 修できるように配慮する」と述べられている。 その後, 平成9年 10 月に情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する 調査研究協力者会議(以下情報教育調査研究協力者会議と略称する)がその第一次報告「体系的な情 報教育の実施に向けて」をまとめた。この報告では,情報教育の目的を「情報活用の実践力」 , 「情報 の科学的な理解」 , 「情報社会に参画する態度」の三つの観点に整理し,これらの観点を,小学校,中 学校,高等学校のそれぞれの発達段階に応じて,体系的に育成することについて提言している。高等 学校については, 「普通教育に関する教科として教科「情報(仮称) 」を設置し,その中に科目を複数 設定する(いずれも2単位程度) 」とある。 さらに,平成 10 年 7 月の教育課程審議会答申「幼稚園,小学校,中学校,高等学校,盲学校,聾学 校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」では, 「高等学校においては,情報手段の活用を図 りながら情報を適切に判断・分析するための知識・技能を習得させ,情報社会に主体的に対応する態 度を育てることなどを内容とする教科「情報」を新設し必修とすることが適当である」と述べられて いる。 これらの答申等を踏まえ,平成 11 年3月,高等学校学習指導要領が発表され,すべての生徒に履修 させる必履修教科としての普通教科「情報」が新設された。高等学校学習指導要領では,普通教科「情 報」の目標を「情報及び情報技術を活用するための知識と技能の習得を通して,情報に関する科学的な 見方や考え方を養うとともに,社会の中で情報及び情報技術が果たしている役割や影響を理解させ, 情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる」とし,概容は以下の通りである。 普通教科「情報」は「情報A」 , 「情報B」 , 「情報C」の3科目で構成され,そのうち1科目を選択 して履修する。いずれも標準単位数は2単位である。 各科目は,次のような生徒が履修することを想定している。 「情報A」は,コンピュータや情報通信 ネットワークなどの活用経験が浅い生徒でも十分履修できることを想定している。 「情報B」は,コン ピュータに興味・関心をもつ生徒が履修することを想定している。 「情報C」は,情報社会やコミュニ ケーションに興味・関心をもつ生徒が履修することを想定している。また,「情報A」は総授業時間の 二分の一以上,「情報B」及び「情報C」は三分の一以上を実習に配当することになっている(文献[2] 参照) 。 この3科目は,生徒の中学校段階におけるコンピュータや情報通信ネットワークを活用した学習経 − 1 − 新教科「情報」の指導についての一試み 験の差が大きいことと,高等学校段階では,生徒のコンピュータへの興味・関心が一層明確となり,多 様化してくることを考慮して用意されている。また,情報教育調査研究協力者会議第一次報告におけ る「情報教育の目的」の三つの観点のうち, 「情報A」は「情報活用の実践力」,「情報B」は「情報 の科学的な理解」 , 「情報C」は「情報社会に参画する態度」にそれぞれ重点を置いた科目である(文 献[2]参照) 。 いずれの科目を履修しても,これら三つの観点について,最低限の内容が身に付くよう配 慮されている。 また,情報教育は変化の著しい分野であるが,情報モラルのように,基本的に大きな変化 がないものもある。不易と流行を意識させながら指導していくことが特に重要であると考える。 平成 14 年度から小・中学校の新学習指導要領が実施され,小学校では「総合的な学習の時間」や各 教科の授業において,中学校では「技術・家庭科」や各教科の授業において,本格的に情報教育が取 り組まれることになる。しかし,系統的・体系的な情報教育が確立されていない現在,高等学校に入学 してくる生徒の習熟度も十分なものとは言えない。 このような状況から「情報A」を履修する学校が多くなると考えられる。 平成 13 年 11 月に宮城県教育研修センターが実施 した 「平成 13 年度コンピュータ整備状況等に関する 専門代替 22.1% 調査」によれば, 「情報A」を履修予定に考えている 学校が多いという結果が出ている(図1) 。 しかし,授業を実施するに当たり,生徒が興味・関 情報C 心をもち,充実感を味わえる学習課題や授業展開を 3.2% 考える必要がある。また,技能や知識だけにとらわ 情報B れない評価の工夫等,解決すべき問題が山積してい 1.1% る。 情報A これらのことを踏まえ,普通教科「情報」 ,科目「情 73.7% 報A」の目標「コンピュータや情報通信ネットワー クなどの活用を通して,情報を適切に収集・処理・発 信するための基礎的な知識と技能を習得させるとと 図1 本県高校の普通教科「情報」履修予定科目 もに,情報を主体的に活用しようとする態度を育てる」(文献[1]引用)が達成できる年間指導計画,指 導展開例及び補助教材を作成し,授業の手掛かりにしたいと考え,本主題を設定した。 2 研究目標 高等学校における普通教科「情報」 ,科目「情報A」の年間指導計画,指導展開例及び補助教材を作 成し,それに基づく評価の在り方を探る。 3 研究方法及び内容 3.1 文献研究 「情報教育」の先行研究や先行実践例等を参考にすることで,高等学校における普通教科「情報」, 科目「情報A」の年間指導計画,指導展開例及び補助教材の作成,それに基づく評価の在り方を探る際 の手掛かりとする。 3.2 理論研究 文献研究を基に,以下の点について研究を進める。 (1) 生徒が系統的・発展的に学習できる年間指導計画を作成する。 (2) 生徒にとって興味・関心がもてる学習課題を考え,指導展開例や補助教材を作成する。 (3) 教科「情報」の評価の観点及びその趣旨を考慮した,評価の在り方を探る。 − 2 − 新教科「情報」の指導についての一試み 4 研究の概要 4.1 「情報A」の年間指導計画 表1は, 「平成 12 年度 新教科「情報」現職教員等講習会 テキスト(1)」 , 「「情報A」の年間指 導計画例」の単元名・項目名を入れ替え,系統的・発展的な学習ができるように工夫して,作成した。 表1では「情報A」を2単位,年間 70 単位時間で実施することとし,授業の1単位時間を 50 分と想 定した。 表1 科目「情報A」の配当時間表例 単元名 1 情報 を活用す るための 工夫と情 報機器 2 情報 の収集・発 信と情報 機器の活 用 3 情報 の統合的 な処理と コンピュ ータの活 用 4 情報 機器の発 達と生活 の変化 配 当 2 2 実 習 1 1.5 2 2 2 2 2 2 2 1.5 1.5 1 1 0.5 1 1 個人情報の漏出,著作権 出会い系サイト,コンピュータウイルス プレゼンテーションソフトの基本操作 プレゼンテーションソフトで制作物作成,発表 自己評価,相互評価 制作物修正,発表,自己評価,相互評価 2 2 6 2 1 1 4.5 1 2 1 ディジタルカメラの活用 画像編集ソフトによる画像加工,画像処理 はがき作成 ディジタルビデオカメラ,ストリーミング技術 サウンド活用法 アナログとディジタル Web ページの基礎 HTML で「自己紹介 Web ページ」の作成 ホームページ作成ソフトで Web ページの作成 各自のテーマで Web ページの作成 Web ページアップロード,自己評価,相互評価 情報通信ネットワークの仕組み,歴史 身近なコンピュータ機器,自己評価,相互評価 携帯電話について考える 討議「情報社会を生きるために」 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 1.5 1 1 1 1.5 1 1 1 1.5 1.5 1 1 0.5 0.5 1.5 「情報化の問題点」に関するテーマ探し 2 1.5 Web ページまたはプレゼンテーションソフトで 制作物作成 同上 2 1.5 2 1 発表,自己評価,相互評価,レポート作成 2 1 年間総授業時間数(実習時間数 57%) 70 40 項目名 課題・概要 (1) ア 問題解決の工夫 1・2 (1) イ 情報伝達の工夫 1・2 (1) イ 情報伝達の工夫 3・4 (1) ア 問題解決の工夫 3・4 (1) ア 問題解決の工夫 5・6 (2) ア 情報の検索と収集 1・2 (2) ア 情報の検索と収集 3・4 (1) イ 情報伝達の工夫 5・6 (2) イ 情報の発信と共有に適した 情報の表し方 1・2 (2) ウ 情報の収集・発信における問題点 1・2 (2) ウ 情報の収集・発信における問題点 3・4 (1) イ 情報伝達の工夫 7∼12 (2) イ 情報の発信と共有に適した 情報の表し方 3・4 (2) イ 情報の発信と共有に適した 情報の表し方 5・6 (3) ア コンピュータによる情報の統合 1・2 (3) ア コンピュータによる情報の統合 3・4 (3) ア コンピュータによる情報の統合 5・6 (3) ア コンピュータによる情報の統合 7・8 (3) ア コンピュータによる情報の統合 9・10 (4) ア 情報機器の発達とその仕組み 1・2 (3) イ 情報の統合的な処理 1・2 (3) イ 情報の統合的な処理 3・4 (3) イ 情報の統合的な処理 5・6 (3) イ 情報の統合的な処理 7・8 (3) イ 情報の統合的な処理 9・10 (4) ア 情報機器の発達とその仕組み 3・4 (4) イ 情報化の進展が生活に及ぼす影響 1・2 (4) イ 情報化の進展が生活に及ぼす影響 3・4 (4) ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 1・2 (4) ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 3・4 (4) ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 5・6 (4) ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 7・8 (4) ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 9・10 オリエンテーション,コンピュータの基本操作 ワープロソフトウェアの基礎(以下,ソフトウ ェアはソフトと略記) 表計算ソフトの基礎 経路探索問題 発表,自己評価,相互評価 検索システムと情報検索の効率化 様々な情報検索,課題,自己評価 電子メール データの圧縮,解凍 − 3 − 計 10 22 22 16 70 新教科「情報」の指導についての一試み 4.2 「情報A」の指導内容 表1を基に,更に具体的な指導内容を以下のように考えた。なお,作成に当たっては,1 回の授業 は2単位時間連続の 100 分で行うことを前提としている。 表2 「情報A」指導内容 単元名 1 情報を活用するための工夫と情報機器 目標 ◎問題解決を効果的に行うためには,目的に応じた解決手段の工夫とコンピュータや 情報通信ネットワークなどの適切な活用が必要であることを理解させる。 ◎情報を的確に伝達するためには,伝達内容に適した提示方法の工夫と,コンピュー タや情報通信ネットワークなどの適切な活用が必要であることを理解させる。 時間 指導内容 第1・2時 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 ア 問題解決の工夫 ・情報Aを学ぶ目的の説明。 ・コンピュータ室の利用の仕方の説明。 ・コンピュータの基本操作をしながら,アンケートに記入。 ・実習時のグループ分け。 第3・4時 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 ・ワープロソフトの活用。 ・文字入力,簡単な単語・文章の入力,通信文書の作成。 ・タイピングソフトの利用。 第5・6時 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 ・表計算ソフトの活用。 ・表の作成,数式,関数の使い方。 ・良いグラフ,悪いグラフ例の提示。 ・グラフの種類,作成。 ・適切なデータを Web ページ上から探し,適当な表とグラフの作成。 (例:過去5年間の高校生の就職率の推移) 第7・8時 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 ア 問題解決の工夫 ・課題については,新聞記事等を利用し,タイムリーな話題を提示。 (課題例:「仙台を出発し長崎県諫早湾の調査に行くことになった。4日以内で旅行 をするに当たり,最適なコースを選ぼう」 ) ・グループごとに,初めにコンピュータを使わないで情報収集した資料,次にコンピ ュータを使って情報収集した資料を作成。 ・各自の仕事は「進ちょくカード」に記入。 第9・10 時 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 ア 問題解決の工夫 ・第9時は,グループごとにまとめ, 「発表原稿シート」に記入。 ・第 10 時は,代表者が発表。感想を一人一人発表。 ・自己評価表,相互評価表に記入。質問。 ・授業の感想は「感想シート」に記入。 − 4 − 新教科「情報」の指導についての一試み 単元名 目標 2 情報の収集・発信と情報機器の活用 ◎情報通信ネットワークやデータベースなどの活用を通して,必要とする情報を効率 的に検索・収集する方法を習得させる。 ◎情報を的確に伝達するためには,伝達内容に適した提示方法の工夫と,コンピュー タや情報通信ネットワークなどの適切な活用が必要であることを理解させる。 ◎情報を効果的に発信したり,情報を共有したりするためには,情報の表し方に工夫 や取決めが必要であることを理解させる。 ◎情報通信ネットワークやデータベースなどを利用した情報の収集・発信の際に,起 こり得る具体的な問題及びそれらを解決したり回避したりする方法の理解を通して, 情報社会で必要とされる心構えについて考えさせる。 時間 指導内容 第 11・12 時 (2) 情報の収集・発信と情報機器の活用 ア 情報の検索と収集 ・情報収集の手段について考える。 ・知っている検索エンジンの発表。 ・インターネット,検索エンジンについての説明。 ・ディレクトリ型,ロボット型エンジンの検索結果数比較。 ・グループごとにテーマを決め,検索エンジンを使って調べたことをまとめ,代表者 が発表。感想を一人一人発表。 ・各自テーマを決めて Web ページを検索し,分かったことをプリントに記入。 ・画像検索サイトの紹介。 第 13・14 時 (2) 情報の収集・発信と情報機器の活用 ア 情報の検索と収集 ・私たちの生活に身近なデータベースの発表。 ・データベース,電子百科事典,検索システムの説明。 ・教師の与えた課題を,検索エンジンを利用し,二人一組で解決。代表者が発表。 ・発表結果について自己評価。 第 15・16 時 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 ・電子メールについての説明。 ・電子メールの仕組みについての役割演技。 (送信先,発信先,SMTP,POP,DNS に役割分 担し,実際の流れを役割演技) ・メールソフトの使い方。 ・電子メールの送受信の仕方。 ・メールソフトの設定の仕方。 ・電子メールにファイルを添付して送信。 ・電子メールでのトラブルの例。 第 17・18 時 (2) 情報の収集・発信と情報機器の活用 イ 情報の発信と共有に適した情報の表し方 ・圧縮,解凍の意味。 ・アーカイバソフトの使い方。 ・様々なデータを圧縮する実習を通したファイル容量の確認。 第 19・20 時 (2) 情報の収集・発信と情報機器の活用 ウ 情報の収集・発信における問題点 ・個人情報が漏れることの危険性。 ・情報モラルに関するクイズ。 ・著作権についての説明。 第 21・22 時 (2) 情報の収集・発信と情報機器の活用 ウ 情報の収集・発信における問題点 ・出会い系サイトを介して起こった実際の事件についてのグループ討議。 ・コンピュータウイルスについての実際の事件についてのグループ討議。 − 5 − 新教科「情報」の指導についての一試み 第 23・24 時 第 25・26 時 第 27・28 時 第 29・30 時 第 31・32 時 単元名 目標 時間 第 33・34 時 第 35・36 時 第 37・38 時 第 39・40 時 第 41・42 時 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 ・実際の制作物を見てプレゼンテーションについての理解。 ・プレゼンテーションをする際に注意することの説明。 ・プレゼンテーションソフトの基本操作。 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 ・プレゼンテーションソフトの基本操作。 ・教師がプレゼンテーションソフトで作成した制作物を参考に作成。 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 ・テーマ,目標,序論,本論,結論等の「プログラムワークシート」への記入。 ・テーマに基づき情報収集。 ・テーマと目標に沿って,プレゼンテーションソフトで制作物を作成。 (2) 情報の収集・発信と情報機器の活用 イ 情報の発信と共有に適した情報の表し方 ・テーマと目標に沿った制作物の作成。 ・ 「発表原稿シート」に記入。 ・グループ内発表。自己評価,相互評価。 (2) 情報の収集・発信と情報機器の活用 イ 情報の発信と共有に適した情報の表し方 ・前時間の自己評価・相互評価を基に制作物の改善。 ・ 「発表原稿シート」に記入。 ・グループ内発表。自己評価,相互評価。 3 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 ◎コンピュータの機能とソフトウェアとを組み合わせて活用することを通して,コン ピュータは多様な形態の情報を統合できることを理解させる。 ◎収集した多様な形態の情報を目的に応じて統合的に処理する方法を習得させる。 指導内容 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 ア コンピュータによる情報の統合 ・カメラとディジタルカメラとの違い。 ・ディジタルカメラの基本操作。 ・ディジタルカメラで素材収集。 ・ワープロソフトへの画像貼り付け。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 ア コンピュータによる情報の統合 ・画像ファイルの形式,拡張子(BMP,JPEG,GIF 等)の説明。 ・イメージスキャナで画像を取り込む練習。 ・画像編集ソフトを用いて画像を加工。 ・グループ内で自己評価,相互評価。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 ア コンピュータによる情報の統合 ・ディジタルカメラで撮った画像等を利用したはがき作成。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 ア コンピュータによる情報の統合 ・動画ファイルの形式,拡張子(AVI,MPEG,RM,WMV 等) ,動画再生ツールの説明。 ・ディジタルビデオの使い方。 ・ストリーミング技術の説明。 ・ストリーミング技術を用いた動画,使わない動画を比較し,その違いを確認。 ・ストリーミング技術を使った Web ページを検索。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 ア コンピュータによる情報の統合 ・サウンドレコーダー等で自分の声の取り込み。 ・波形編集ソフトでグループ内の声をつなぐ。 ・音が出る Web ページの作成。 − 6 − 新教科「情報」の指導についての一試み 第 43・44 時 第 45・46 時 第 47・48 時 第 49・50 時 第 51・52 時 第 53・54 時 単元名 目標 時間 第 55・56 時 第 57・58 時 第 59・60 時 第 61・62 時 (4) 情報機器の発達と生活の変化 ア 情報機器の発達とその仕組み ・アナログとディジタルについて。 ・音楽 CD から MP3 ファイルの作成。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 イ 情報の統合的な処理 ・Web ページ作成の知識。 ・Web ページに貼り付ける画像の作成。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 イ 情報の統合的な処理 ・HTML を使用した自己紹介の Web ページ作成。リンクの設定。 ・教師が作った Web ページをモニタに映し,それと同じものを生徒が作成。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 イ 情報の統合的な処理 ・ワープロソフトでも Web ページが作成できることの紹介。 ・ホームページ作成ソフトによる各自の部活動または学校の Web ページ作成。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 イ 情報の統合的な処理 ・テーマを決めた,Web ページの作成。 ・ 「テーマシート」に記入。 ・調べたことを「情報収集シート」に記入。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 イ 情報の統合的な処理 ・テーマを決めた,Web ページの作成。 ・FTP ソフトを利用した Web サーバーへのアップロードの実習。 ・グループ内発表。自己評価,相互評価。 4 情報機器の発達と生活の変化 ◎情報機器の発達の歴史に沿って,情報機器の仕組みと特性を理解させる。 ◎情報化の進展が生活に及ぼす影響を身のまわりの事例などを通して認識させ,情報 を生活に役立て主体的に活用しようとする心構えについて考えさせる。 ◎個人が情報社会に参加する上でコンピュータや情報通信ネットワークなどを適切 に使いこなす能力が重要であること及び情報技術の活用能力を高めていくことが必 要であることを理解させる。 指導内容 (4) 情報機器の発達と生活の変化 ア 情報機器の発達とその仕組み ・情報機器の発達について説明。 ・情報機器の歴史を調べ,これからどのように変化するかをグループごとに話し合い 代表者が発表。 ・コンピュータの五大装置について,実際にコンピュータの部品を見せて説明。 (4) 情報機器の発達と生活の変化 イ 情報化の進展が生活に及ぼす影響 ・家庭や地域のどんなところでコンピュータが使われているかをグループごとに調 べ, 「調べたことシート」に記入。 ・代表者が発表。感想を一人一人発表。 (4) 情報機器の発達と生活の変化 イ 情報化の進展が生活に及ぼす影響 ・携帯電話について考えていることを発表。 ・グループごとに携帯電話について調査。 ・携帯電話の長所,短所についての話合い。 ・代表者が発表。感想を一人一人発表。 (4) 情報機器の発達と生活の変化 ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 ・情報化の進展により日本経済は活性化するかどうかについて討論。 ・電子メールの普及で人間関係は豊かになるか希薄になるかについて討論。 − 7 − 新教科「情報」の指導についての一試み 第 63・64 時 (4) 情報機器の発達と生活の変化 ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 ・ 「情報化の問題点」に関するテーマを各自考え, 「テーマシート」に記入。 ・インターネット,新聞,雑誌等から情報収集。 「情報収集シート」に記入。 第 65・66 時 (4) 情報機器の発達と生活の変化 ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 ・テーマに沿って Web ページ作成,またはプレゼンテーションソフトで制作物を作成。 ・情報収集したものを「情報収集シート」に記入。 第 67・68 時 (4) 情報機器の発達と生活の変化 ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 ・情報収集と制作物の作成。 ・ 「発表原稿シート」に発表原稿を記入。 第 69・70 時 (4) 情報機器の発達と生活の変化 ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 ・一人一人発表。自己評価,相互評価。 ・年間授業の感想等,個人レポートの作成。 4.3 各単元指導の留意点 各単位時間ごとの指導計画を立案する際には,以下の点に留意して作成した。 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 ア 問題解決の工夫 具体的な問題を解決するために,グループごとに,情報機器を使わず情報収集したもの,情報機器 を使って情報収集したものの両方で資料を作成させ,比較させる。また,それぞれの特徴,作業効率の 違いが認識できるよう配慮する。 イ 情報伝達の工夫 情報を伝達するときには,それに適した方法がある。表現のツールやプレゼンテーションソフトを 通して簡単な実習を行う。 (2) 情報の収集・発信と情報機器の活用 ア 情報の検索と収集 情報通信ネットワークにおける検索システム,データベース,電子百科事典などを活用して,課題 の解決に必要となる情報を効率的に検索,収集するための方法を習得できるようにする。 イ 情報の発信と共有に適した情報の表し方 情報を効果的に発信したり共有したりするには,工夫や取決めが必要である。例えば大量の情報を 圧縮して送るといったことや,加工や再利用できるようにテキスト形式や表計算形式で保存するなど の工夫が必要なことが理解できるようにする。 ウ 情報の収集・発信における問題点 プライバシーの保護や著作権の保護,情報発信が情報の受け手に及ぼす影響といった情報モラルの 問題がある。主体的に問題点や対処方法を考えることができるようにする。 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 ア コンピュータによる情報の統合 情報機器を利用して情報収集活動を行わせる。ディジタルカメラやディジタルビデオカメラ等の活 用を通して,次のイの実習に必要となる技能を習得できるようにする。 イ 情報の統合的な処理 アで体験した情報収集活動を発展させて,Web ページを作成させる。また,具体的な活動に即して 著作権等を意識できるようにする。 (4) 情報機器の発達と生活の変化 ア 情報機器の発達とその仕組み 情報機器の発達の歴史や仕組み,特性を実習等を通して理解させる。 − 8 − 新教科「情報」の指導についての一試み イ 情報化の進展が生活に及ぼす影響 情報化の進展が生活に及ぼす影響の具体例を,情報通信ネットワークや新聞などから収集し,調べ た結果を発表したり,それを基に討議したりする学習を取り入れる。 ウ 情報社会への参加と情報技術の活用 個人が情報社会に参加する上で,コンピュータや情報ネットワークを適切に使いこなす能力が重要 であること,及び情報技術の活用能力を高めていくことが必要であることを理解させる。 4.4 評価の観点について 教科「情報」は,「関心・意欲・態度」 「思考・判断」 「技能・表現」 「知識・理解」の四つの観点を 考慮した上で評価を行うことになる(表3) 。そのための評価方法には,観察,制作物,レポート,発表, ノート,質問紙,ペーパーテスト,生徒自身の自己評価や生徒同士の相互評価等がある。実際には,生 徒の活動に応じて,様々な方法を取り入れる必要があると考える(具体的な例は次項) 。 表3 教科「情報」の評価の観点及びその趣旨(文部科学省「小学校児童指導要録,中学校生徒指導要録, 高等学校生徒指導要録,中等教育学校生徒指導要録並びに盲学校,聾学校及び養護学校の小学部児童指導要録,中学部 生徒指導要録及び高等部生徒指導要録の改善等について(通知) 」別添3) 観 点 趣 旨 関心・意欲・態度 情報や情報社会に関心をもち,身のまわりの問題を解決するために進んで情報 及び情報技術を活用し,情報社会に主体的に対応しようとする。 思考・判断 情報活用の方法を工夫したり改善するとともに,情報モラルを踏まえた適切な 判断をする。 技能・表現 情報の収集・選択・処理を適切に行うとともに,情報を目的に応じて表現する。 知識・理解 情報及び情報技術を活用するための基礎的・基本的な知識を身に付けるととも に,現代社会における情報の意義や役割を理解している。 4.5 指導展開例の作成 表1に基づいて,年間 70 時間の指導展開例を作成した。補助教材を作成した部分は, (資料)と表 記した。さらに,授業を行う上で参考となる Web ページの URL も記載した。なお,作成した指導展開 例,補助教材については,宮城県教育研修センターの Web ページ http://www.edu-c.pref.miyagi.jp/long_res/data/h13a12ak.pdf を参照されたい(2002 年4月以降) 。表4∼8は,作成した指導展開例の一部である。なお,○は教師 の指導,●は生徒の活動として表記した。 − 9 − 新教科「情報」の指導についての一試み 表4「情報A」 (第7・8時/70 時間)の指導展開例 単元・項目名 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 ア 問題解決の工夫 本時の目標 ◎「仙台を出発し長崎県諫早湾の調査に行くことになった。4日以内で旅行をするに 当たり,最適なコースを選ぼう」という課題について,グループ実習を通じて,問題 の解決方法が多岐にわたることを,様々な学習手段を試すことによって理解させる。 また,情報の収集,表現の仕方を身に付けることを通して,コンピュータだけでなく, 手作業で情報を収集することの重要性を認識させる。 評価の観点 関心・意欲・態度 問題を解決するために様々な学習手段を活用している。自分の役 及び方法 割を果たしている。 (観察,進ちょくカード) 思考・判断 情報収集の方法を工夫している。 (観察) 技能・表現 情報の収集,表現の仕方を身に付けることができる。(観察,旅行 日程表) 知識・理解 コンピュータで情報収集するだけでなく,手作業で情報を収集す ることの重要性を理解している。 (旅行日程表) 留意点 ◇情報の収集では,コンピュータや情報通信ネットワークを使う際に,使う場面や使 い方によっては効率を悪くすることもあることを認識させる。 ◇グループ全員で協力し合うように声掛けをする。 ◇条件によって結果が変わることに気付かせる。 第7・8時 導入(5分) ○本時の課題の説明 ・ 「仙台を出発し長崎県諫早湾の調査に行くことになった。4日以内 で旅行をするに当たり,最適なコースを選ぼう」 ・往復のどちらかで,必ず関西地方の都市から一箇所を選んで立ち 寄ることを条件とする。予算は 12 万円以内とする。 (新聞記事等を 提示し,タイムリーな場所や生徒が興味をもつようなテーマを考え る。また,他教科との連携を考えたテーマでもよい。 ) 展開(90 分) ○コンピュータを使って調べた資料と使わずに調べた資料の両方を 作成することを話す。(5分) ・コンピュータは情報収集するには確かに便利であるが,手作業で 時刻表等を調べることの重要性も認識させる。 ●グループで役割分担(班長・副班長・発表者・調査係・資料作成 係等)をする。(10 分) ・どのような旅行にするかを班長中心にグループごとに話し合い, 構想を練る。 ●コンピュータを使わずに調べた旅行日程表を作成する。 (45 分) ・時刻表や地図帳等を使って調べる。 ・自分が行った係の活動を「進ちょくカード」に記入する。 (資料) ・旅行日程表には日程,予算,使った資料,なぜそのコースを選ん だのか,感想等を書く。 (資料) ●コンピュータを使って調べた旅行日程表を作成する。 (30 分) ・Web ページ,アプリケーション・ソフトウェア等を使って調べる。 (資料) まとめ(5分) ○コンピュータは情報収集するには確かに便利であるが,手作業で 時刻表や観光地図等を調べることの重要性も認識させる。 ○次回発表会を行うことを話す。グループごとに発表者を決める。 <参考サイト> 駅前探検倶楽部(http://ekimae.toshiba.co.jp/) (2002 年2月) − 10 − 新教科「情報」の指導についての一試み 表5「情報A」 (第 21・22 時/70 時間)の指導展開例 単元・項目名 (2) 情報を活用するための工夫と情報機器 ウ 情報の収集・発信における問題点 本時の目標 ◎出会い系サイトやコンピュータウイルスに関する問題を,実際の事件を通して理解 させる。主体的に問題点や対処方法を考えることができるようにさせる。 ◎実際に起こった事件と合わせながら,情報モラルについて考えさせる。 評価の観点 関心・意欲・態度 課題に興味をもち,グループ活動に積極的に取り組んでいる。(観 及び方法 察,感想シート) 思考・判断 実際に起こった事件を基に,必要とされる情報モラルや対処方法 を考えることができる。 (観察,感想シート,発表原稿シート) 技能・表現 知識・理解 実際に起こった事件を頭に入れながら,また課題について理解し ている。 (感想シート) 留意点 ◇様々な事件について生徒自身に考えさせる。 ◇実際に起こった事件について考えることによって,Web 上でも実際の世の中でも慎 重に行動しなければならないことを理解させる。 第 21・22 時 導入(10 分) ○出会い系サイトの存在を知っているかどうか,無記名で事前調査 をしておく。 ○出会い系サイトは,本来異性との出会いの機会を探るのが目的で あることや,利用者の中には結婚相手を探している人から,重大な事 件につながるものまで含まれていることを説明。 展開(80 分) ●出会い系サイトについて考える。 (40 分) ・出会い系サイトを介して実際に起こった事件の記事を読み,グル ープで討議する(グループごとに違う事件を扱う) 。全員「感想シー ト」に感想を書き,グループの代表者がそれを「発表原稿シート」に まとめて発表する。 (資料) (例:2001 年 2 月6日記事「メル友が窃 盗」等) ・チャットや掲示板に書き込むときも個人情報を流さないこと,Web 上も一般社会と同じでいろいろな人がいるということ,また,活字 (言葉)が必ずしも真実を表しているとは限らないことを話す。 ●コンピュータウイルスについて考える。 (40 分) ・ 「コンピュータウイルスに注意」 (http://www.net-walking.net/) (2002 年 2 月)を見て,実際どのような被害に遭うのか,遭わないよ うにするためにはどうしたらよいか理解する。 ・コンピュータウイルスに関する実際の事件の記事を読み,グルー プで討議する(グループごとに違う事件を扱う) 。全員「感想シート」 に感想を書き,グループの代表者がそれを「発表原稿シート」にま とめて発表する。 (資料) (例:2000 年5月 17 日記事「ウイルス・ 高校生を書類送検」等) ・自分のコンピュータが感染していることに気付かないと,周囲の 人にも迷惑をかけることになるので,適切な対処法が必要となるこ とを話す。 まとめ(10 分) ○面白半分でウイルスやワームを作る不正行為は許されないこと, マナーを守らなければならないことを話す。 <参考サイト> 99’インターネット事件簿(http://www3.tky.3web.ne.jp/ rapeed/index.html) (2002 年2月) − 11 − 新教科「情報」の指導についての一試み 表6「情報A」 (第 23・24 時/70 時間)の指導展開例 単元・項目名 (1) 情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 本時の目標 ◎伝達する相手によく分かってもらうために,表現を工夫する必要があることを理解 させる。プレゼンテーションの組立てを理解させる。 ◎プレゼンテーションソフトの基本操作を習得させる。プレゼンテーションソフトで 制作物を作る際の配慮事項を理解させる。 評価の観点 及び方法 関心・意欲・態度 プレゼンテーションという表現方法に関心をもち,意欲的に活動 している。 (観察) 思考・判断 二つの制作物を見比べながら,プレゼンテーションソフトで制作 物を作成する際の配慮事項を考えることができる。 (観察,制作物) 技能・表現 プレゼンテーションソフトの基本操作ができる。 (観察) 知識・理解 プレゼンテーションについて理解できる。プレゼンテーションソ フトの基本操作の仕方が理解できる。 (観察,制作物) 留意点 ◇プレゼンテーションについて理解させる。 ◇制作物を作成する際の配慮事項(著作権等)について気付かせる。 ◇著作権・肖像権・プライバシーなど生徒に意識させるようにする。 第 23・24 時 導入(5分) ○プレゼンテーションとは何か,大学や社会に出てから知識・経験と もに役立つ技術であることを話す。 展開(90 分) ○プレゼンテーションについての理解を深めるためプレゼンテーシ ョンソフトで作成した二つの制作物「ネチケットについて」を見せ, それぞれの良い点,悪い点を考えさせる。 (資料)(10 分) ・配置,配色,大きさ,文字数,素材の適切さ,簡潔さ,表現の正 確さ等に注目させる。 (一つ目は,内容は簡潔でよいが,音やアニメーションがたくさん入 っているもの。二つ目は,背景色が濃い,文字色が薄い,文が長い が音やアニメーションは適切に入っているもの。 ) ○「プレゼンテーションについて」というプレゼンテーションソフト で作成した説明資料を用いて説明する。 (資料)(10 分) ・プレゼンテーションの組立,話し方の技術,自己評価,相互評価の 仕方, プレゼンテーションソフトで何ができるか等。 ・生徒は資料を印刷したプリントに気付いたことを書く。また,大事 なところに線を引かせる。 ●プレゼンテーションソフトの使い方を知る。(70 分) ・プレゼンテーションソフトの基本操作。 (文字の入力,新しいスラ イド,テキストボックス,クリップアート,デザインテンプレート, ファイルの保存,スライドショー,印刷) まとめ(5分) ○受け手に正しく分かりやすく伝えることが重要であることを,互 いの発表を聞くことにより実感させる。 <参考サイト> 「コンピューティングとプレゼンテーション」で学ぶこと (http://www.isc.meiji.ac.jp/ sakai/doc/isc/edu/minimum/minimum2.html) (2002 年2月) − 12 − 新教科「情報」の指導についての一試み 表7「情報A」 (第 33・34 時/70 時間)の指導展開例 単元・項目名 (3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用 ア コンピュータによる情報の統合 本時の目標 ◎カメラとディジタルカメラの違いを理解させる。また,グループごとにディジタル カメラを利用して,情報収集活動を行わせる。ディジタルカメラの活用を通して,多様 な形態の情報を統合するために必要となる技能を習得させる。 評価の観点 関心・意欲・態度 カメラとディジタルカメラとの違いに関心をもちながら,グルー 及び方法 プで協力し合い,情報収集活動を行っている。 (観察,発表) 思考・判断 適切な表現方法や手段を考えることができる。 (制作物) 技能・表現 ディジタルカメラを使い,適切に処理できる。(観察,制作物) 知識・理解 ディジタルカメラの特徴と取り扱いについて理解できる。 (観察) 留意点 ◇カメラとディジタルカメラとの違いを理解させる。 ◇グループで協力し合うようにさせる。 ◇ディジタルカメラの取扱いに気を付けさせる。 第 33・34 時 導入(20 分) ○ディジタルカメラは写真と比べてどんなところが便利なのか発言 させる。 (すぐに見ることが出来る。スマートメディア,メモリースティッ ク等に保存するのでフィルムなどの消耗品がいらない。保存形式を 変えることができる等) ○ディジタルカメラについて説明する。 (資料) ・生徒には資料として配布し,重要な部分には書き込ませる。 展開(75 分) ○ディジタルカメラの操作の仕方の説明。(10 分) ・取扱いには十分気を付けさせる。 ●ディジタルカメラの操作練習。(20 分) ・グループに一台ディジタルカメラを与える。 ・ディジタルカメラの設定を 320(幅)×240(高さ) (ピクセル) に設定する。(後でワープロソフトで作成した文中に貼り付けるた め。 ) ・ディジタルカメラで互いを写す。必ず一人一回操作をするように 指示する。 ・撮った写真をコンピュータに取り込む実習をする。(JPEG 形式で 保存する。 ) ●学校の敷地内で,ディジタルカメラを利用し素材を集める。(20 分) ・グループごとに活動し,一人2,3枚ずつ撮ることを話す。 ●撮ってきた写真をワープロソフトで作成した文書中に貼り付け て,説明文を付ける。(20 分)(資料) ・画像の挿入の仕方を説明する。 ・記憶媒体に保存する。 ●グループごとに自己評価,相互評価をする。 (5分) ・印刷して提出する。 まとめ(5分) ○次回イメージスキャナを使うので,写真を持ってくるように話す。 (例:小さい頃の写真等) <参考サイト> Digital Camera Basics(http://www.nature-n.com/dgcmr/index-j.htm) (2002 年2月) デジタル&モノクロ写真技法(http://www.asahi-net.or.jp/ mr2y-knst/) (2002 年2月) − 13 − 新教科「情報」の指導についての一試み 表8「情報A」 (第 55・56 時/70 時間)の指導展開例 単元・項目名 (4) 情報機器の発達と生活の変化 ア 情報機器の発達とその仕組み 本時の目標 ◎情報機器の発達の歴史やその仕組みに関心をもたせ,これからどのようにコンピュ ータが発達していくかをグループごとに考えさせる。 評価の観点 関心・意欲・態度 情報機器の発達について関心をもち,グループ活動の際に進んで 及び方法 意見を出すことができる。 (観察,発言) 思考・判断 これからのコンピュータの発達について適確に考えることができ る。 (観察,発表原稿シート) 技能・表現 知識・理解 情報機器の発達,仕組みについて理解できる。 (観察,発言) 留意点 ◇高度な技術内容に深入りしないように気を付けさせる。 ◇どのようにコンピュータが発達していくと思うか考えさせる。 第 55・56 時 導入(5分) ○情報機器について簡単に説明する。 展開(90 分) ○情報機器の発達について簡単に説明する。(30 分) ・戦艦大和の話を例に,レーダーについての話をする。 ・膨大な数の真空管を使った ENIAC が 1946 年に完成。 ・1948 年に誕生したトランジスタによって電子機器が発達する。 ・その後のコンピュータの発達について。 ●これからどのようにコンピュータが発達していくと思うか,グル ープごとに考えて「発表原稿シート」にまとめる。(40 分)(資料) ・昔の生活と現在のような多くの電化製品にコンピュータが埋め込 まれている世の中の比較を通して,いかに便利になったかを理解さ せる。 ・グループの代表者が発表する。 ○コンピュータの五大装置について説明する。(30 分) ・周辺機器にはどういうものがあるか思いつくものを発言させる。 ・入力,出力機器,記録媒体等具体的に答える。 ・入力,出力,記憶,演算,制御装置の説明。 ・ハードウェア,ソフトウェア,OS,ネットワーク等。 ・実際にコンピュータの内部を見せることによって,コンピュータ の仕組みを理解させる。 (CPU,マザーボード,メモリ,ハードディ スク,サウンドカード,グラフィックカード,CD/RW,DVD 等) ・それぞれの部品はどんな役割を果たしているかを説明する。 まとめ(5分) ○情報化の進展が私達の生活に影響を与えていることを確認する。 ○情報技術の活用能力を自らの研さんにより高めていくことを意識 させる。 <参考サイト> 日本のコンピュータの歴史(http://contest.thinkquest.gr.jp/tqj1999/20204/) (2002 年2月) − 14 − 新教科「情報」の指導についての一試み 4.6 授業で利用できる補助教材の作成 指導展開例の作成を行うと同時に,補助教材の作成を行った(表9)。なお,補助教材(プリント,説 明資料等)を必要としない時間は空欄とし,ゴシック体で表記したものについては作成したものを次 項に例示した。 表9 補助教材一覧表例 第1・2時 アンケート 3・4 キーボード表 かな,ローマ字対応表 練習プリント,通信文書 グラフ作成例 5・6 7・8 旅行日程表(図2) 進ちょくカード 9・10 発表原稿シート 自己評価表,相互評価表 感想シート 11・12 情報検索について 調べたことシート (説明資料) 13・14 課題解決クイズ 自己評価表,相互評価表 15・16 電子メールとは(説明資料) 17・18 19・20 情報モラルクイズ 21・22 発表原稿シート 感想シート 23・24 プレゼンテーション例 プレゼンテーションとは (図3,図4) (説明資料) 25・26 基本操作プリント プレゼンテーション例 27・28 プログラムワークシート 情報収集シート(図5) 自己評価表,相互評価表 29・30 発表原稿シート (図6,図7) 31・32 発表原稿シート 自己評価表・相互評価表 33・34 ディジタルカメラの基本 ディジタルカメラ実習例 自己評価表,相互評価表 (説明資料) (図8) (図9) 35・36 基本操作プリント 自己評価表,相互評価表 37・38 はがき作成プリント 39・40 Web ページ例 41・42 Web ページ例 43・44 基本操作プリント Web ページ作成の知識 45・46 (説明資料) 47・48 HTML で Web ページ作成 Web ページ作成例 49・50 ワープロソフトで Web ページ ホームページ作成ソフト 作成 で Web ページ作成 51・52 テーマシート 情報収集シート 53・54 自己評価表,相互評価表 55・56 発表原稿シート 57・58 調べたことシート 感想シート 59・60 調べたことシート 感想シート 61・62 討論用ワークシート 63・64 テーマシート 情報収集シート 65・66 情報収集シート 67・68 発表原稿シート 69・70 自己評価表,相互評価表 レポート用紙 − 15 − 新教科「情報」の指導についての一試み 4.6.1 第7・8時/70 時間で利用できる補助教材 単元・項目名 (1)情報を活用するための工夫と情報機器 ア 問題解決の工夫 ○「仙台を出発し長崎県諫早湾の調査に行くことになった。4日以内で旅行をするに当たり,最適なコ ースを選ぼう」という実習において,コンピュータを使って調べた「旅行日程表」と使わない「旅行 日程表」の両方をグループごとに作成する。 (コンピュータを使って調べてみましょう!) 旅行日程表(生徒記入例) 13年12月12日(水)∼13年12月15日(土) (3泊4日) 1年 3組 2班 氏名 宮城 太郎 仙台 一郎 白石 愛 大河原 桜子 石巻 香 ①日程表(時間・交通手段等を記入) 仙台(やまびこ 8 号 10:51 発)→上野(JR京浜東北線乗り換え 12:26 着 13:32 発)→東京 1 (ひかり 157 号 13:37 着 13:46 発)→新大阪(ひかり 385 号 16:46 着 16:58 発)→博多(J 日 Rかもめ 43 号 19:41 着 20:02 発)→諫早(21:32 着)→宿泊 目 29,770 円(交通費)+8,000 円(宿泊費) 2 宿泊先(9:00)→諫早湾調査→宿泊先(18:00) 日 8,000(交通費,昼食)+5,000 円(宿泊費) 目 3 日 目 4 日 目 宿泊先→諫早(JRかもめ 10 号 9:49 発)→博多(ひかり 370 号 11:18 着 11:53 発)→新神 戸(神戸市営地下鉄西神・山手線(普通)14:23 着 14:41 発)→三宮(神戸市営) (14:43 着 14:43 発)→三宮(阪急) (徒歩 14:47 着)→神戸ルミナリエ観光→宿泊 15,690 円(交通費,土産代)+10,000 円(宿泊費) 宿泊先→三宮(阪急) (徒歩 10:56 発)→三宮(神戸市営) (神戸市営地下鉄西神・山手線(普 通)11:00 着 11:00 発)→新神戸(ひかり 154 号 11:02 着 11:18 発)→東京(こまち 19 号 14:33 着 15:04 発)→仙台(16:51 着) 20,690 円(交通費) ②予算 ( 97,150 )円 ③使った資料(Web ページの題名・URLを書く) 駅前探検倶楽部(http://ekimae.toshiba.co.jp/) ④なぜこのコースを選んだのか,その理由を書きましょう。 ・なるべくお金のかからない方法を選んだ。 ・飛行機など使うと時間は短縮できるが,お金がかかる。 ・調査は一日あればすむと思った。 ・神戸ルミナリエに行ってみたかった。 ⑤感想(コンピュータを使わないで調べたときと使ったときとの比較をして) ・地図を見て,諫早湾の位置が分かっていたので,Web ページで簡単に検索することができた。 ・旅行ガイドで見所を探したほうが,たくさんの情報があり,分かりやすかった。 図2 旅行日程表(コンピュータを活用した資料) 4.6.2 第 23・24 時/70 時間で利用できる補助教材 単元・項目名(1)情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 ○プレゼンテーションについての理解を深めるために,プレゼンテーションソフトで作成した二つの 制作物を見せて,それぞれの良い点,悪い点を考えさせる。 配置,配色,大きさ,文字数,素材の適切さ,簡潔さ,表現の正確さ等に注目させ,それぞれの良 い点,悪い点を挙げさせる。良い点を組み合わせて,制作物を作成することが大事なことを理解させ る。 − 16 − 新教科「情報」の指導についての一試み 図3 「ネチケットについて」 (制作物1) 図4 「ネチケットについて」 (制作物2) ・文章表現は簡潔である。 ・音やアニメーションがたくさん入っている。 ・背景色が濃く文字がよく見えない。 ・一つの文章が長いため,文字が小さい。 ・音やアニメーションが適切に入っている。 − 17 − 新教科「情報」の指導についての一試み 4.6.3 第 27・28 時/70 時間で利用できる補助教材 単元・項目名 (1)情報を活用するための工夫と情報機器 イ 情報伝達の工夫 ○プレゼンテーションソフトで制作物を作成するに当たり,情報収集したことを記入する。 【調べて分かったこと。感想】 情報収集シート 6月22日(水) 1年 3組 7番 (テーマ)犬の病気について 氏名 蔵王 花子 【情報収集方法】 書籍で調べる・インターネットで調べる・新聞やパンフレット で調べる・人に聞く・その他( ) 【使った資料】 本(書名,著者名,出版社名) ・インターネット(Web ペ ージのタイトルと URL) ・その他の資料名 【使った資料名はここに書こう!】 本 かわいいワンちゃん(ドッグ出版,犬田たま子) ・犬の病気にはいろんな種類があるということが分かった。 ・犬もバランスの良い食事をしないとだめなことが分かった。 ・犬や猫が感染したときは症状が出なくとも,人が感染すると 症状が現れる病気もあることが分かった。 【感想】 家で飼っていた犬が昨年亡くなり,とても悲しかった。次に 飼う機会があったら,もっと健康状態に気を付けてあげようと 思い,このテーマにしました。 インターネットや本で調べたり,ペットショップの店員さんに 聞いたりして今まで知らなかったことがよく分かりました。な かでも一番びっくりしたのは,犬も人間と同じ病気にかかると いうことです。 【次回までにやっておくこと】 インターネット ・もっとたくさんの Web ページを探しておく。 ・図書館で本を調べておく。 犬の病気(http://www.・・・・) その他 ペットショップの店員さんに聞きました。 図5 情報収集シート 4.6.4 第 29・30 時/70 時間で利用できる補助教材 単元・項目名 (2) 情報の収集・発信と情報機器の活用 イ 情報の発信と共有に適した情報の表し方 ○プレゼンテーションソフトで作成した制作物をグループ内で発表し,自己評価,相互評価する。 発表者 発表者 発表時間 年 組 番 氏名 テーマ 実施日時 A大変良い B良い C普通 Dもう少し ■取組状況 1.意欲的に取り組んだか A B C D 2.創意工夫につとめたか A B C D 3.プレゼンテーションの出来栄えはどうか A B C D 4.知識を身に付けるよう頑張ったか A B C D ■進ちょく管理について シナリオ通り進行できたか A B C D ■話し方について 強弱・スピード・メリハリ・ユーモア・間 A B C D などはどうだったか ■その他 質疑応答は的確にできたか,機械操作は 適切にできたか A B C D 年 組 番 氏名 分 A大変良い B良い C普通 【評価項目:内容について】 ■テーマに合っていたか ■話の構成は適切だったか ■ポイントを3項目程度に絞っていたか ■疑問をそのままにしていないか 【評価項目:表現方法について】 ■話し方について メリハリのある話し方だったか 間の取り方は適切だったか スピードは適切だったか 単純明快に表現していたか ボディランゲージは適切だったか 結論を強調していたか 視線移動は適切だったか ■質問などへの対応は適切だったか ■アニメーションの使い方はよかったか ■機械の操作は適切だったか 総合評価 A B C 感想 感想 評価者 図6 自己評価表 年 組 番 氏名 図7 相互評価表 − 18 − A A A A B B B B C C C C A A A A A A A A A A B B B B B B B B B B C C C C C C C C C C 新教科「情報」の指導についての一試み 4.6.5 第 33・34 時/70 時間で利用できる補助教材 単元・項目名(3)情報の統合的な処理とコンピュータの活用 ア コンピュータによる情報の統合 ○ディジタルカメラについて,プレゼンテーションソフトで作成した資料を用いて説明する。また, ディジタルカメラで撮った写真をワープロソフトで作成した文書中に貼り付け,説明文を付ける。 年 組 番 氏名 妹です。こんな写 真しかありません でした。 校舎です。ちょ 図8 ディジタルカメラについて [一部抜粋] っと曲がっち ゃいました。 図9 ディジタルカメラ実習例 5 研究のまとめと今後の課題 5.1 研究のまとめ 平成 15 年度から普通教科「情報」が実施されるに当たり,新教育課程の趣旨を踏まえて,この研究を 進めてきた。 系統的・発展的な学習ができるよう年間指導計画を工夫し,生徒が興味・関心をもち,「情報A」の 目標が達成できるような指導展開例や補助教材を一試案として作成した。 本研究は,実施前ということもあり,いまだ検証には至っていない。しかし,本研究で作成した年間 指導計画, 指導展開例及び補助教材を学校や生徒の実態に応じて活用することにより,生徒の 「情報A」 に関する興味・関心が高まるものと考える。 もちろん,この年間指導計画,指導展開例及び補助教材は,まだまだ再考する余地があり,時代的要 請からも変更を余儀なくされるものである。したがって,評価の見直しと合わせ,常に改善していく姿 勢をもち続けたい。 今後は, 以下の点について継続研究を行い,情報化の進展に主体的に対応できる生徒の育成を目指し, 教師と生徒が共に充実感を味わうことができるような指導展開例や補助教材を検討していきたいと考 えている。 5.2 今後の課題 (1) 年間指導計画に関しては,実施時に使用される教科書の内容と照らし合わせ,単元名・項目名につ いて整合性を図っていく必要がある。 (2) 指導展開例と補助教材に関しては,学校や生徒の実態に合わせたものを作成する必要性がある。 また,情報化の進展に合わせ,その都度,学習課題やアプリケーションソフト等の見直しを行う必要 がある。 − 19 − 新教科「情報」の指導についての一試み (3) 評価に関しては,単元の目標に即したより具体的な評価規準を設定していく必要がある。また,評 定に関しても,各学校や生徒の実態に合わせた評価の在り方を検討していくことが必要であろう。 主な参考文献 全般的な参考書 [1] 文部省: 「高等学校学習指導要領」 大蔵省印刷局 1999 [2] 文部省: 「高等学校学習指導要領解説 情報編」 開隆堂 2000 第4章 [3] 文部省: 「平成 12 年度新教科「情報」現職教員等講習会 テキスト(1),(2)」 2000 [4] 高等学校普通教科「情報」の試作教科書: 2000 http://www2.ics.teikyo-u.ac.jp/InformationStudy/(2002 年2月) [5] 宮城県教育研修センター:教科「情報」指導案: http://www.edu-c.pref.miyagi.jp/infonet/jyoho.html(2002 年2月) [6] 社団法人 日本教育工学振興会:http://www.japet.or.jp/(2002 年2月) [7] 新教科「情報」授業アイデア集:http://www.johoka.net/(2002 年2月) [8] 岐阜県生涯学習センター:http://cscns.csc.gifu.gifu.jp/syozo/center/(2002 年2月) [9] 愛知 県総合教育 センター: 新設教科「 情報」にお ける指導の 在り方に関 する研究: http://www.apec.aichi-c.ed.jp/project/joho/(2002 年2月) [10] 茨城県立磯原高等学校: http://www.isohara-h.kitaibaraki.ibaraki.jp/index.htm(2002 年2月) [11] 岡本敏雄,山極隆ほか 12 名: 「新課程対応 情報 IT リテラシー」 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