特別講演 JAPANESE SOCIETY OF RADIOLOGICAL TECHNOLOGY 記念講演 ランチョンセミナー 公益社団法人 日本放射線技術学会 近畿支部 第60回学術大会抄録集 CT・MRセミナー フレッシャーズセミナー 一般演題 1月28日(土曜日) 第1会場 X線検査:乳腺・トモシンセシス 放射線治療:線量 核医学:収集・処理 第2会場 CT検査:被ばく① CT検査:被ばく② MR検査:物理特性 1月29日(日曜日)第1会場 放射線治療:位置精度 放射線治療:治療計画・他 核医学:SPECT・PET CT検査:逐次近似再構成 第2会場 X線検査:IVR・他 MR検査:臨床 CT検査:臨床応用 MR検査:臨床(腹部) 第3会場 X線検査:撮影(技術・他)・超音波・骨塩 X線検査:撮影(散乱線) 特別講演① 『 ロボットと未来社会 』 石黒 浩 大阪大学基礎工学研究科 システム創成専攻 ATR石黒浩特別研究所客員所長 教授 パーソナルコンピュータとスマートフォンに続いて,新たな情報メディアとなるのが,パーソナ ルロボットである. このパーソナルロボットは,パーソナルコンピュータが情報化社会をもたらしたのと同様に,ロ ボット化社会をもたらす可能性がある. 本講演では講演者のこれまでの研究を紹介しながら,ロボット化社会の可能性と,その社会にお いて我々人間が学ぶことを議論する. ご略歴 1991年,大阪大学基礎工学研究科博士課程修了.工学博士.2009年より大阪大学大学院基礎工 学研究科システム創成専攻教授.ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー). 研究対象は,人とかかわるロボットやアンドロイドサイエンス.主要な科学雑誌や国際会議で発 表し掲載された論文は300本以上.また,ロボビー,リプリー,ジェミノイド,テレノイド,エル フォイドといった,人とかかわるヒューマノイドやアンドロイドを開発.これらのロボットは, ディスカバリーチャンネルやNHK,BBCほか,500を超える番組で取り上げられている.さらに, YouTubeでのアンドロイドのダウンロード回数は1,000万回以上.また,2009年には,メディア アートの世界的なイベントの1つであるアルス・エレクトロニカ・フェスティバルのメインゲスト として招待された.2011年,大阪文化賞を受賞.2015年,文部科学大臣表彰受賞およびシェイ ク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム知識賞受賞. 特別講演② 『 胸部CT画像バイオマーカ ~医療画像の定量化に向けて~ 』 富山 憲幸 大阪大学大学院医学系研究科 放射線統合医学講座 放射線医学 教授 これまでCTは,新技術の開発や診断能の向上により,医療において大きな役割を果たしてきた. 現在では,CT画像診断において主として行われてきた形態診断(良悪性診断など)はある一定の高い レベルに達したと考えられる.次のステップとしてCT画像に含まれる様々な情報を定量化して取り 出し,これをバイオマーカとして活用しようとする動きがある.CTを用いた最も初歩的なバイオ マーカといえば,腫瘤のサイズである.一般に大きい腫瘤ほど悪性腫瘍の可能性が高く,また大き い悪性腫瘍ほど予後が悪いことが知られている.よって,腫瘤のサイズは結節の状態を知るうえで 定量的な指標であり,大変有用なバイオマーカとなる.がんの化学治療効果判定には通常RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)が用いられる.これは解剖学的なサイズ縮小率 に基づいた評価法であり,腫瘤の長径を2次元で測定する.しかし,2次元のサイズ測定は,誤差が 大きく,再現性が悪いことが指摘されてきた.特に小さな腫瘤ほど影響が大きい. 近年,コンピュータの進歩に伴って,コンピュータ支援画像診断(CAD: computer assisted diagnosis)が急速に発展している.胸部CTで用いる代表的なCADとして,肺結節の体積を計算する 三次元体積測定ソフトがある.すでに日常臨床において,いくつかの市販の三次元体積測定ソフト ウエアが利用可能である.これらのソフトウエアを用いると結節の体積を3次元的に計算可能で, 肺癌の病期分類・肺癌の治療効果判定・悪性腫瘍の診断(体積倍加時間:Doubling Time)に応用が 期待される.体積倍加時間とは結節の増大速度の評価指標であり,腫瘍の体積が2倍になるために 要する時間である.多くの悪性腫瘍の体積倍加時間は20日から400日であることが知られており, 典型的な悪性腫瘍の体積倍加時間は約100日である.三次元体積測定ソフトの利点は,再現性が良 好で客観的な評価が可能であることが挙げられる.しかし,三次元体積測定ソフトは使用上の注意 点がいくつかある.それは,三次元体積測定ソフトでの計測はCTの撮像条件や画像再構成条件など により計測値が異なる.また造影剤の有無や撮影線量も,測定値に影響を与える. これらの留意点はあるが,現在ではモニターでの画像診断が主流となってきており,三次元体積 測定ソフトなどのCADによる読影サポートが今後増加すると予想される.三次元体積測定ソフトの 他にも,肺腺癌のCT画像からスリガラス影と充実部分を三次元的に抽出し,充実部分体積と % solid (結節に占める充実成分の割合)を計算して,肺腺癌の悪性度評価や予後評価に用いるソフトウ エアが開発されている. 画像の定量化を推進するために,2007年に北米放射線学会(RSNA)でQIBA(Quantitative Imaging Biomarkers Alliance)が設立された.QIBAでは,様々なモダリティ(CT,MRI,RI,超 音波)画像における定量化に関してそれぞれ委員会が設置され,これまでいくつかの項目について詳 細な検討を重ねてきた.日本医学放射線医学でもこの動きに歩調をあわせるために,一昨年前より JAPAN QIBAを立ち上げた.講演においては,この活動についても少し紹介したい. コンピュータの進歩によって最近なにかと話題になっている人工知能(AI: Artificial Intelligence)であるが,将来,医学・医療においても人工知能が大きく関わってくることが予想さ れる.講演最後に,人工知能と放射線医学・放射線科医の関係についても触れてみたい. ご略歴 昭和62年 3月 62年 7月 平成 元年 4月 5年 3月 5年 4月 9年 4月 11年 6月 12年10月 14年 7月 18年 1月 19年 4月 21年 4月 22年 4月 大阪大学医学部医学科卒業 医員(内科・放射線科研修医)(大阪大学医学部附属病院) 大阪大学大学院医学研究科博士課程入学(放射線医学教室) 同上修了 大阪船員保険病院 放射線科医員 大阪大学医学部助手(放射線医学教室) British Columbia大学附属Vancouver総合病院放射線科客員研究員 国立療養所愛媛病院 放射線科医師 大阪大学大学院医学系研究科 講師 大阪大学大学院医学系研究科 助教授 大阪大学大学院医学系研究科 准教授 大阪大学医学部附属病院 病院教授 大阪大学大学院医学系研究科 教授 免許・資格: 昭和62年 5月28日 平成 5年 3月25日 5年 6月 1日 17年 3月 6日 17年 5月29日 23年 3月 1日 医師免許証 医学博士の学位授与(大阪大学) 日本医学放射線学会専門医 検診マンモグラフィー読影認定医 日本核医学会 PET核医学認定医 日本医学放射線学会放射線診断専門医 所属学会: 日本医学放射線学会,日本呼吸器学会,日本肺癌学会,日本呼吸器内視鏡学会, 日本核医学会,日本IVR学会,日本磁気共鳴医学会 Radiological Society of North America(RSNA),Fleischner Society 役職: 平成24年4月 平成27年9月 平成28年4月 日本医学放射線学会 監事 胸部放射線研究会 代表幹事 日本医学放射線学会 理事 記念講演 『 未来が来る前に考えたい事 - 技術の夢,心の夢 - 』 船橋 正夫 大阪府立急性期・総合医療センター 医療技術部 部長 昔,診療放射線技師になって初めて学会に参加したとき,自分のように自堕落な人間が,学会の 会員であることに驚くとともに誇りと喜びを感じ,同業者と覚しき人たちが,真摯に議論をしてい る姿に素直に感動しました.もちろん,自分が発表者として演壇に立つなどとは思いもよらず, 只々学会という場の雰囲気や人々の様子が嬉しかったのです.そうこうするうちに学会に発表する 機会をもらい,今日までバタバタと研究なるものを手掛けてきました. 私は学術研究の第一歩は好奇心だと考えています.自己の好奇心を満足させるための環境が身近に 有り,満足させた好奇心の成果を人に聞いてもらえるシステムがある.こんなに幸せなことはあり ません.私にとって日本放射線技術学会はそんな存在でした.皆さんは如何ですか? 現在は大学教育が高度化し,学生時代から既に海外発表を経験している方がおられますが,臨床 現場に出ると学術研究に長けた教官は存在しません.黙っていても研究テーマが割り振られるとい うこともありません.そんな中でも,自分を突き動かしてくれるものがあるとすれば,少なくとも そのひとつは好奇心だと思います.学生時代にどのような成果を上げていても,真の自分の成果は, 誰にも頼れないところから,好奇心という武器一つで達成するものです.もしも,あなたに共に研 究してくれる仲間や同僚,指導してくれる先輩が居るならば,それは素晴らしい環境と理解すべき です.たとえその環境があっても無くても,自己の好奇心をしっかり実現するという気概がなけれ ば,何も成すことはできません.その気概こそがあなたを前に進ませてくれるのです. 技術学会は,その好奇心を育てていくシステムを作りたいと日々激論を繰り返しています.好奇 心は作れませんが,疑問や発想が生まれたとき,それを具現化するための方法論や道具を組織とし て確立していこうとしているのです. あなたの好奇心を学術研究で試してみてください. そこには思いもよらないあなた自身の「夢」が生まれて来ることでしょう. ご略歴 公益社団法人 日本放射線技術学会 平成17年~18年 平成19年~22年 平成21年~24年 平成23年 平成25年~26年 平成27年~ 活動歴 近畿部会(現支部) 部会企画委員長 近畿部会 部会長(現支部長) 本部役員就任 本部企画委員長 第39回秋季学術大会 大会長 本部教育委員長 本部 副代表理事 ランチョンセミナー① 『 本邦におけるVARIAN社製医療用直線加速器のビームデータ多施設解析 - Golden beam dataの精度および取り扱い方に関する検討 - 』 田中 義浩 京都第一赤十字病院 放射線治療科部 放射線治療では患者へ投与される線量の精度と治療効果が直接関連しており,それらは治療計画 装置で線量分布を計算するときに使用されるビームデータの精度に依存する.このデータは医療用 直線加速器(リニアック)の導入に伴う作業工程の1つであるビームモデリングにおいてユーザー責任 のもと取得され,治療計画装置に登録し患者治療に用いられるだけでなく,今後の品質保証および 品質管理の基準値となる極めて重要なデータである.ところが,WHOから報告された Radiotherapy Risk Profile 2008によるとビームデータ測定を含むコミッショニングでのインシデ ント発生率は2番目に多いとされている.これは取得すべきデータ量およびスタッフの労働量が莫 大であることや測定データの是非を確認できないことなどが原因と予測できる. 近年,リニアックの製造工程の安定化から各治療装置が同一のビーム特性を備える,すなわち, 治療装置の標準化が製造業者によって図られている.そして,ベンダーは各治療装置の標準データ とされるGolden beam data(GBD)を所有しており,ユーザーもそれを入手することが可能である. AAPM Task Group 106の報告ではGBDの臨床使用に対して慎重を要する意見が多くある一方,取 得したビームデータを検証するには非常に優れた参考データであるとしている.しかし,多施設間 のビームデータ解析については一部の治療装置かつ特定の測定条件下による報告しか存在しない. そこで,放射線治療システム研究分科会では汎用型リニアックにおけるGBDの信頼性を調査および 確認するためGBD Working group(GBD-WG)を発足させた.本プロジェクトの一環として,まず は本邦で臨床使用されているリニアックのビームデータの平均値およびばらつきを調査することに 焦点を絞り,数十施設にご協力いただきリニアック導入時のビームデータの収集および解析を行っ た. 本講演では本邦で使用されているVARIAN社製リニアック (Clinac-iXおよびNovalis-Tx) の装置 間にみられたビームデータのばらつきをGBD-WGの解析結果に基づき報告するとともに,最新型リ ニアックであるTrue Beamのビームデータに関する論文を紹介する. ランチョンセミナー②-1 『 当社全身用マルチスライス スペクトラルCT装置の最新情報 』 早坂 和人 株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン ISビジネスグループ CTフィールドマーケティングスペシャリスト デュアルエナジーCTは臨床応用されて久しく有用性も確認できている検査であるが,二つのエッ クス線を照射して撮影するその仕組のため,撮影条件の設定が複雑であったり,被ばくに見合った検 査結果の保証が完全でなかったり,また施設によっては特別な許可や同意が必要な検査としてルーチ ン検査とは少し距離のある特殊な位置づけがなされていた.当社ではそれらの運用上の不便を解決す べくビーム側でなく,受光側でのエネルギー分離を目指して長期にわたる開発期間を費やしていたが, ようやく2016年4月,全身用マルチスライス スペクトラルCT装置を発売するに至った.CT装置は検 出器に二層シンチレータを用いることにより,受光側でエネルギー分離を可能とする機構を有してい る.そのためデュアルエナジーCT検査が日常的に行われることを可能とし特別なトレーニングや撮 影条件,患者への説明などを必要としていない. 今回は分光方式の全身用マルチスライスCT「IQon Spectral CT」についての概要とワークフロー, 及び生成されるスペクトラルデータについて紹介する. ランチョンセミナー②-2 『 Spectral is Always on - IQon spectral CTの有用性- 』 本田 恵一 熊本中央病院 放射線部 Dual Energy CTは,2005年登場より研究分野では大きな関心を集めている一方で,日常の検査 においては広く普及しているとは言い難い.これは検査前にDual Energy撮影を行うという意思決定 が必要であり,通常のCT検査を同時に行えないことが理由と思われる.さらに通常のCT検査で得ら れていた管電圧(120kVp)の画像が得られないため,これまでの診断基準やフォローアップという面 においても検査の施行を妨げる要因となっている. またDual Energy CTはX線スペクトルのエネルギー差は可能な限り大きく,収集データの時差は可 能な限り小さくできるようなスキャナデザインが望ましいとされている. フィリップス社が新しく開発した「IQon spectral CT」は上記のような問題を解消するべく,検 出器の構造を2層にしたNanoPanel Prismを導入している.このシステムは通常の検査で用いられる 120kVpの連続X線を検出器側で分離することで位置的,時間的ミスレジストレーションのない2種 類のエネルギーのプロジェクションデータ取得を行う.これにより通常のCT検査とスペクトラルイ メージングが全て検査で可能となる. 本セミナーではスペクトラルイメージングにより得られるデータの基礎評価と臨床的有用性につい て解説する. ランチョンセミナー③ 『 東芝Vantage Titan 3Tの使用経験と今後の展望 - まだまだ私,“ひよこ”ですが・・・.- 』 渡邊 博隆 育和会記念病院 中央放射線科 当院は平成27年12月に東芝社製MRI装置Vantage Titan 3Tを導入して,約1年が経過した.以前 使用していた1.5T装置に比べて,空間分解能及びコントラスト分解能が著しく向上しており,診療 医及び放射線科医からの日々高まる要求を満たすべく,撮影条件の最適化も検討中である.また画 質向上を含めた撮像時間の短縮など,患者に優しい検査環境を提供するための様々な工夫も行って いる. 当セミナーでは,当院にて条件検討したVantage Titan 3T画像より,有用であった症例を提示す ると共に,今後の展望について紹介する.「百聞は一見に如かず」という諺があるように,一昔前 の評判のみで判断せず,ぜひ一度現在の装置に触れて,その「画像」を確認していただく機会とな れば幸いである. CT基礎セミナー 『 救急CT撮影における基礎理論 ‐撮影技術と臨床技術‐ 』 藤村 一郎 りんくう総合医療センター 放射線技術科 外傷初期診療において,CTによる正確かつ迅速な診断は治療方針の決定の欠かせない. CTは診 断感度がradiographyと比較し高く,検査件数も増加しているため,多発外傷患者の死亡率減少を 目的としたprimary surveyへの適応に期待がもたれているが,人や設備など初期診療を取り巻く環 境に大きな変革がない限り,CTはsecondary surveyに使用されるのが基本原則である. CTは効果 のない開腹術の件数を減らし,脾臓,肝臓などの実質臓器損傷に対する非手術的な治療件数を増加 させ,治療方針の決定に重要な役割を果たすが,不十分な臨床知識と撮影技術は重大な損傷を見逃 す要因となる. 多発外傷患者の早期全身観察にCTを用いる手法は,外傷全身CT撮影やトラウマパンスキャン (以下全身CT)と称され, 1997年,Löw Rらにより報告されて以降,病変検出能の向上,治療方 針決定に要する時間の短縮,死亡リスクの低減など,有意義なエビデンスが明らかにされた.本邦 においても平成 22 年(2010年)度の診療報酬改定にて新設の保険点数加算が認められたが,適応対 象,被ばく線量,incidental findings(偶発的所見)への対応,コスト,撮影プロトコールについて は,未だ十分なエビデンスは得られていない. 全身CTの被ばく線量は14.9~34 mSvとされ,軽症患者への不必要な被ばくや発がんリスクを考 慮すると, 全ての外傷患者にpan scanを行うのは正しいとは言えない.2013年,Harvey JJらは, 全身CTの適否を決定する条件として,過度に厳密になりすぎないこと,重症患者に利益があること, 被ばく・造影剤のリスク・経費がバランスされていることを挙げ,危険性の高い受傷機転,解剖学 的所見,生理学的所見を基準とすることで,重症外傷や時間的緊急度の高い患者に対する全身CTの 適用を限定できるとしている.さらに所見の採取が困難な意識レベル低下患者,多発外傷患者およ びdistracting injury(痛みで本質的な症状や所見がマスクされる損傷)患者は病変の見落としが 発生し易く,全身CTの適用を検討すべきである,その他,primary surveyで緊急手術となるよう な重症患者も生命に関わる重要臓器に関心が向き易く,蘇生に成功した後の全身検索の必要性は高 い. 標準的な全身CTの撮影プロトコールの一例を以下に示す.頭部単純CTをヘリカルスキャンで撮 影した後,上肢を拳上させ体幹の造影CTを行う.造影CTの撮影時相は血管損傷や実質臓器損傷に 対し検出感度が高い動脈優位相と実質相(門脈相)の2相撮影が基本となる.動脈相の撮影範囲は 頸部から骨盤まで,実質相(門脈相)は胸部から骨盤までが基本となるが,鈍的脳血管損傷が疑われ る所見や大腿部に変形や腫脹を認める場合,頭部と大腿部を撮影範囲に含める.頭部を含めて撮影 する場合,ストリークアーチファクト対策として,上肢を腹部の前で枕やタオルを下に挟み固定す る.バックボード装着時はバックボードの下にX線透過性のスペーサーを挟み底上げし,上肢を バックボードの両端からCT寝台上に降ろし固定する. 体幹の単純CTは活動性出血と骨片との鑑別が困難な場合の支援画像として有効活用可能であるが, 単純CTの実質臓器損傷に対する検出率は8~54%と低いため,欧米では省略される傾向にある.動 脈優位相撮影における造影剤注入から撮影開始時間(以下scan delay)の決定は固定法とbolus tracking法とがある.海外の論文では固定法のscan delayは18~25sとされ,心拍出量差を考慮し 年齢によりscan delayを変えるプロトコールも存在する.bolus tracking法における造影剤のトリ ガーCT値(計測位置)は100HU(椎骨動脈のC6レベル))とする報告や150HU(大動脈)とする報告が ある.このように血管や臓器損傷を診断するために2相(動脈相+門脈相)あるいは3相(動脈相+門 脈相+遅延相)の多時相造影CTが行われているが,多重撮影による被ばく線量の増加が問題であり, この対策としてsplit bolus contrast infusion techniqueが考案され,海外では全身CTの造影技術 として普及している.本造影法は2~3回の順次的な造影剤のボーラス注入で構成され,造影剤もし くは生食の注入終了後,体幹のsingle-pass scanが引き続き行われる.1回の撮影で動脈相と静脈 相もしくは動静脈,排泄相を取得できるため,被ばく線量は少なく済む.その他の細かい撮影パラ メータはX線CT撮影における標準化(改訂2版)の推奨値が参考となる. 外傷CTの読影において損傷の見逃しを防ぐためには,受傷機転や身体所見などの事前情報は欠か せない.特に,先にも述べた意識レベル低下患者などの所見の採取が困難な患者ではより注意が必 要である.異常所見の隣接箇所も損傷を受けている可能性があり,検索を怠らないよう心掛ける. さらに,現在,日本外傷学会の新規事業である「CT所見を加味した臓器損傷分類」の標準化が進め られているが,臓器損傷分類を決定する重症度や治療方針に関する知識を習得し,診断精度を念頭 に置いたさらなる撮影技術や読影技術の研鑽が求められるのは間違いない. MR基礎セミナー 『 わたしの基礎的研究論 - 高津編 - 』 高津 安男 大阪赤十字病院 放射線診断科部 はじめに 私にとって大変おこがましいタイトルを頂いたことに恐縮と不安を感じています.しかし,我々 の専門分野である放射線技術に関して少しでも何らかの貢献ができるなら何も惜しむものはありま せん.ただし,タイトルからも,これは個人の価値観や考え方が強い内容となっており,もしかす ると偏った見方や極端な考えと感じられるかもしれません.さらに,研究に精通された先輩や先生 方におかれましてはお叱りを受ける可能性があることに恐怖も感じています.これはあくまでも私 自身が持っている考え方として捉えていただきたいと思います. 1.研究について 興味をもって診療業務をされていますか.モチベーションはなんでしょうか.研究とはノーベル 賞をもらえるような活動だけが研究ではありません.日頃,業務に対して工夫や改善をしていませ んか?ほとんどの意識ある診療放射線技師の方々は大なり小なり何らかを考えを持って業務にあ たっておられると思っております.業務改善や技術向上に尽力するのは当然でしょうし,おそらく, 意識的にやられている方と無意識にやっている方がおられると思います.なぜそれをするのでしょ うか.診断や治療に有用な情報・技術を提供するのは我々診療放射線技師しかいないのではないで しょうか.技師の人生で何が貢献できたと感じるのでしょうか.私も常に自問自答しているところ です. 2.情報共有と共同活動 自分の考えが本当に世の中の役に立つのか,また,診療に貢献できるなら情報共有を考えるのは 当然です.研究の最終形態は論文です.といいたいですが,実は自分の論文が引用されることです. 論文に到達するまでには色々と考え方もあり,私なりのアプローチに関しては,講演内で提示させ ていただきます. 私が活動する上で大変重要視していることに仲間づくりがあります.誤解のないように,これは 損得勘定ではありません.研究の良し悪しの判断はなかなか難しいですが,自分が主張したいこと を上手に構成するために良い手段として,他からの意見を受ける,ということがあります.つまり アドバイスをもらえる人脈づくりは大切ですし,また楽しいです.逆に,仲間の研究に関わらせて いただける機会は本当に貴重で,光栄に感じます.自分自身が成長するには様々な検討に関わるこ とだと思います.お互いに研鑽してこそ良いものができる.私も随分,様々な方々の協力を得まし た(現在もお世話になっております).その一つ一つに感謝しています. 3,方法論と“いつやるの?”的な考え方 よく,お聞きする事の中には,「研究したいけどやり方がわからない」「やる暇がない」という ことがあります.これについては上記項目1と2に記述したことに全て含まれます.つまり,今回 の講演テーマに興味のある方々は業務改善や技術向上に関して大変興味があり,意識も高い方々で す.よって,方法に不安がある場合はアドバイスを受けてはいかがでしょうか.放射線技術学会, 近畿支部では様々な学術的な取り組みがされています.学会を活用することも重要だと思います. する時間がないと考えておられる方,再度ご自分の日頃の業務を見直してみてください.おそらく, 常に行動していると思います.向上心のある方々は業務改善や技術向上は常時意識しているはずで す.時間がないといいながらすでに行動しているのだということを,まず認識してください.あと はモチベーションと優先順位,さらに時間の使い方で,これは個人差があります.効率をよくする 方法の一例は講演内で提示します. 4.わからないことをどうするか 私の研究に関してのモチベーションの中に“疑問”があります.業務にあたって,また本などを読 んでいて,疑問を感じたことがありませんか.疑問解消には“調査”が必要です.調べることで理解 できれば大きなメリットとなります.しかし,自分に納得いく回答がなければ?それは自分が導く しかないと思います.つまり答えを自分が作るのです.世間一般として間違っているかどうかはこ の時点では問題ではありません.自分の答え(確証)を持つことが重要です. おわりに このような形式の講演はあまりないと思います.近畿支部のイベントとして,興味深く,かつ チャレンジングだと感じています.今回の内容が何らかの参考になれば幸いと思います. CT臨床応用セミナー 『 Metal artifact reductionの基礎から応用 』 大橋 一也 名古屋市立大学病院 中央放射線部 X線CTにおけるMetal artifact(金属アーチファクト)とは,撮影範囲内に金属などの高吸収体が含 まれる場合に,透過するフォトンが著しく少なくなり画像再構成が正常に行われなくなる現象で, 主にビームハードニングアーチファクトやストリークアーチファクトが金属によっておこる現象で ある.Metal artifactの発生は,原因となる高吸収体の成分に関係しており,X線減弱係数(密度)が 低い場合にはメタルアーチファクトは少なくなる. Metal artifact reduction(金属アーチファクト除去:以下MAR)は,これまで高電圧撮影やスト リークアーチファクトの低減や広いCT値のレンジなどで対応してきた.しかし,ここ数年で各社か らそれぞれオリジナルのMARアルゴリズムを使用した画像再構成方法が搭載され臨床応用されてい る.MARは大きくわけてDual energyを用いたものと,サイノグラムの金属部分の補間や, Tissue-class modelingを応用するサイノグラムペインティングを主とした画像処理との2つの手 法がある.2管球CTのSOMATOM Definition Flashに搭載されているFAST DE(Fully Assisting Scanner Technologies for Dual Energy)によるMARでは,低電圧の画像と高電圧の画像の差分に よる画像処理でイメージベースのビームハードニング補正である.この方法でチタンなど比較的X 線の吸収の少ない金属に対してほぼ完全にアーチファクトを除去することができる. サイノグラムペインティングを応用したMARは各社オリジナルの画像再構成方法であり,さまざ まな手法を使用している.東芝メディカルシステムズのSEMAR(Single Energy Metal Artifact Reduction )ではサイノグラムの線形補間,Tissue-class modeling,Ray driven algorithmなどを 使用してかなり精度の高いMARを実現している.MARは完全なビームハードニング補正を行うこと が最終目標あると考えるので,SEMARでは,線形補間を初期段階のアートファクト除去に使用する だけで,真の線積分量を求めるRay driven algorithmをメインの補正方法として使用した優れた再 構成方法であると考える. またシーメンスヘルスケアのiMAR(Iterative Metal Artifact Reduction)では対象とする金属を選 択することができ,それぞれの金属に対して閾値や正規化補間(Normalized interpolation),周波 数分離(Frequency split),ビームハードニング補正の割合を最適化して金属アーチファクト除去を 行う画像処理である.SOMATOM Definition FLASHでは,iMARとDual energyによる2つの方法 を合わせて使用することも可能となっている.チタンおよびコバルトクロムに対する従来のDual energyによるFAST DEによるものとiMAR(spine metal)を併用したものとの比較ではDual energy のみの画像処理よりもiMAR(spine metal)を併用した画像の方が,よりアーチファクト低減が可能 である. 本講演では,いくつかあるMARの手法を論文や実験データから解説し,実際の臨床応用とMARの 使い分けについて紹介する.またMARは多くの画像処理を併用しているので,その画像評価を行う 場合にはファントムデザインに注意が必要である.2管球 CTを使用したイメージベースのDual energyではビームハードニング補正やサイノグラムペインティングを応用したMARを併用可能と いう利点があり,今後も新たな画像処理を併用した技術に期待したい. MR臨床応用セミナー 『 東海大学医学部付属病院の教え – 現場で遭遇するアーチファクト – 』 渋川 周平 東海大学医学部付属病院 MRIが臨床現場に登場してから30年あまりが経過し,ハードウェア,ソフトウェアともに大きな 進歩を遂げてきた.かつては多大な撮像時間を費やしていたが,現在の最新機種ではさまざまな高 速化技術により,より短時間で臨床のニーズに応える情報を提供できるようになった.しかし,一 方でシークエンスは複雑になり,新たなアーチファクトも増えている.例えば,今では誰もが知っ ているFSE(Fast Spin Echo)法におけるブラーリングアーチファクトやパラレルイメージングによ るリップアーチファクトは,開発当初には無かったものである.我々MRIを操作するスタッフはこ れら多岐にわたるアーチファクトを理解し,その対策を知っておかなければならない.なぜならば, 臨床現場においてアーチファクトが診断の妨げになることは言うまでもなく,場合によっては偽陽 性の診断につながるためである.そこで,本稿では私が経験してきたアーチファクトとその対策に 加えて,これまで東海大学医学部付属病院で諸先輩方が検討してきたアーチファクトを「頭部」 「腹部」「胸部」と領域別に解説したい. まず,頭部という部位は他の臓器に比べて生理的な動きが少なく,アーチファクトは生じにくい 領域と言われている.しかし,わずかながらに存在する「流れ」によってしばしば診断を困難にす る場合がある.頭蓋内には脳脊髄液と動静脈が存在し,常に流れているためFLAIRやT1WIでflow アーチファクトを生じる.これは古くからあるflow compensationと呼ばれる流速補正技術の使用 などで緩和することが可能である.また,経験のある読影医であればその規則性のあるアーチファ クトを認識することも容易い.ただし,現在ではPROPELLER法に代表される体動補正技術を用い るとそのアーチファクトの生じ方はこれまでとは異なったものになることが知られており,注意が 必要である.つまり,新たな撮像法を理解しておかなければ誤診につながるということが言える. 頭部領域 は代表的なflowアーチファクトに加え,頭蓋底に生じるB0不均一やコイリング後のメタル アーチファクトなども交えて解説する. 腹部領域は頭部と比較して「呼吸」という大敵が存在する.上腹部ではもちろん,下腹部に至る まで呼吸を制することが,良好な画像を得るためのステップの一つである.一般的には呼吸停止法, 呼吸同期法,ナビゲーター法が挙げられるが,先に述べたようなPROPLLER法などの体動補正技術 も多く利用されている.このとき,重要となるのは最も適する撮像法を選択すること,そして利用 する撮像法によって変化するアーチファクトを理解しておくことである.例えば,T1WIのコント ラストを得るならば,呼吸同期法は不向きである.また,腹部では頭部よりも脂肪組織が多いため, 脂肪抑制を使用することが多い.しかし,対象組織が大きくなることでB0不均一の影響も強くなり, 脂肪抑制不良が生じやすい.特に脂肪抑制が必須であるEPI(Echo Planar Imaging)収集の DWI(Diffusion weighted Image)においてこのアーチファクトは重要である.腹部のDWIは病変 検索に優れるが,脂肪はケミカルシフトを起こし,病変部位に重なることもある. さらに近年,3.0T MRIが普及しつつある.3.0T装置では高いSNRが魅力であるが,アーチファ クトが増大する場合も少なくない.特にRFの波長が短くなることによって生じる「B1不均一」は体 幹部で顕著となり,信号ムラを作り出す.多チャンネルRF送信コイルの登場によってそのアーチ ファクトは改善されつつあるが,未だ完璧というわけではない.このB1不均一について,当院が 3.0T装置を初期に導入し,多チャンネル送信に切り替えるまでの苦労と経緯についてアーチファク トを中心に解説する. 胸部領域では「心拍動」という関門がある.心臓の動きはねじれの動きもあるため,スライス面 内のみの体動補正技術では克服するのは難しい.そこで,心拍動の影響がある場合には心電図同期 を利用して,毎回同じタイミングで信号収集することが必要となってくる.さらに呼吸の影響も加 味しなければならない場合には呼吸停止や呼吸同期の併用も必要であり,難易度が高い.胸部につ いては,多岐にわたる縦隔領域と心臓を含めて心拍動と肺野によるB0不均一について解説する. 筆者がMRIに興味を持った一因として「アーチファクトの理解」ということがあった.今回, MRIにとって難敵であるアーチファクトを克服することで様々な発見があることを少しでも伝える ことが出来れば幸いである. フレッシャーズセミナー① 『 学会倫理規定について 』 前田富美恵 京都市立病院・近畿支部 倫理審査相談員 日本放射線技術学会の倫理規定は,2011年4月に設置された倫理規定・ガイドライン作成特別委 員会によって作成され,2012年度事業より運用が開始されました.翌年には,倫理規定を理解する ために,倫理規定取り扱いのためのガイドラインが公開されています.その後,2015年に倫理規定 が改訂され,2016年にはガイドラインの改訂が公開されました.総会・秋季学術大会での演題倫理 審査適用が開始された当初は,倫理関連で不採択であった演題数は1%に満たない数でしたが,最 近3年では4%近くにまで増加しています.これは倫理審査がより厳密になったからだといえるで しょう.演題申請時に倫理承認が必要な研究内容であるにもかかわらず,倫理承認を得ていない演 題や,倫理的に問題がないことを確認できない抄録の演題は無条件で不採択とされてしまいます. 今年度近畿支部学術大会では,抄録のみでは倫理承認の必要性について判断が困難な場合は発表 者に問い合わせ,問題がないことを確認することにしました.抄録の不備のために不採択となれば, 研究者本人はもちろん共同研究者や倫理審査担当員も本当に残念な思いをするからです.しかしな がら,今後,支部においても倫理審査の環境が変化し,より厳密になっていくことは明らかです. 研究者にとって不本意な結果になってもらいたくありません.そのためには,以下の5項目の研究 倫理についての理解が必要となります. 1)研究を計画する,または始める前の倫理 2)所属施設の倫理審査委員会への承認申請 3)研究を実地する際の倫理 4)研究を発表する際の倫理 5)利益相反 今回は,演題申請時に関連することを中心に,研究倫理について概論を述べさせていただきます. 内容を理解し,正々堂々と研究成果を発表していただくことを願います.本学会の倫理規定は易し いものでありません.論文投稿や海外の学会での演題申請の時でもきっと役に立つでしょう.本講 演を通して,倫理規定とはどのようなものなのか知り,なぜ必要なのか,なぜ従わなければならな いのかの考え,研究倫理への理解を深めるきっかけとなれば幸いです. フレッシャーズセミナー② 論文塾成果報告 『 3T乳腺MRIにおけるsection select gradient reversal法 併用拡散強調画像の脂肪抑制法の検討 』 竹森 大智 大阪市立大学医学部附属病院 Section select gradient reversal (SSGR)法はスライス方向の水と脂肪のケミカルシフトを利用 したパルスシーケンスであり,90°パルスと180°パルスを印加する際のスライス選択傾斜磁場極性 を逆にする脂肪抑制技術である.今回の検討として,3T装置における乳腺MRIの拡散強調画像につ いて従来の脂肪抑制法にSSGR法を併用したシーケンスを用いることで画質を改善する検討を行っ た.結語として,SSGR法併用拡散強調画像は磁場不均一の影響を受けやすい乳腺3TMRIにおいて 有用な脂肪抑制技術であることを明らかにした. 論文塾ではチューターの先生方のお世話になり,日本放射線技術学会雑誌に掲載されました. チューターの先生方から,論文の構成方法や解析方法等について教えていただき,論文を書く上で のたくさんのアドバイスを頂きました.また,論文塾で聞けなかったことや分からなかった内容に 関しましては,メールで早い返信で対応していただきました.今回は,論文塾での感想を含めてお 話しいたします. SPAIR SPAIR + SSGR STIR STIR + SSGR 一般演題 1月28日(土曜日) 第1会場 01 X線検査:乳腺・トモシンセシス (演題番号1-4) 乳房撮影領域におけるガラス線 量計による線量測定の有用性の 検討 A study on the usefulness of glass dosimeter measuring low energy X-rays necessary for mammography 14:00-14:40 02 座長:藤原芳美(大阪府立急性期・総合医療センター) 谷口正成 (住友病院) デジタルマンモグラフィにおけ るノイズ抑制処理の物理評価 The physical value of noise reduction processing in digital mammography 大阪大学 医学部保健学科 ○大森 望未・岡崎 貴大 大阪大学大学院 松本 光弘 大阪市立総合医療センター 医療技術部 中央放射線部 ○八木 祥子・竹綱 猛・伊泉 哲雄・ 宮嶋 郁実・工藤 ゆか 【目的】 蛍光ガラス線量計(GD-302M・GD-352M) を用いて乳房撮影領域の吸収線量や深部量百分 率(PDD)を計測できるかどうかを,平行平 板形電離箱線量計と比較することで検討した. また吸収線量を比較する際の蛍光ガラス線量計 の補正係数も求めた. 【方法】 10mm厚のアクリルファントムを4枚と 20mm厚で中心部に電離箱やガラス線量計を はめこむことのできるファントムを用意し,乳 房撮影カセットホルダ上にファントムを設置し た.ファントムの組合せを変化させ,表面・ 10・20・30・40mmの深さについて電離箱・ 302M・352Mで測定した.焦点-フィルタは Mo-Mo,Mo-Rh,管電圧は26・28・30kVと した. 【結果】 補正係数はMo-Moで302Mが0.7205, 352Mが2.872,Mo-Rhで302Mが0.6443, 352Mが2.469となった. 【結論】 電離箱との吸収線量の相違が補正係数を考慮 することで302Mで-0.19~1.16mGy (Ave0.38mGy),352Mで-0.30~1.21mGy (Ave0.38mGy),%誤差が302Mで-2~49%, 352Mで-3~83%となった.表面吸収線量は電 離箱と±3%以内で一致した.深部吸収線量は 乖離が大きくなり,表面線量と深部線量との比 をとるPDDは有用でない.深部吸収線量測定 に関しては概ね1mGy以内で一致した. 【考察】 蛍光ガラス線量計は線質依存性が大きく,特 に30keV以下では急峻なレスポンス領域である. その為ファントム深度が深くなるにつれ線質が 硬化し,エネルギー補正が容易ではなく電離箱 との乖離が起こったと推測される. 【背景】 平成28年6月に当院で使用しているデジタル マンモグラフィ撮影装置AMULET Innovality にノイズ抑制処理Fine Structure Control (以 下,FSC) が導入された. 【目的】 FSC処理による鮮鋭性の低下が懸念されたた め,FSC処理画像と非処理画像の物理評価をお こない比較検討したので報告する. 【方法】 富士フイルムメディカル社製AMULET Innovality を使用した.IEC規格に準拠した W/Rh の線質でFSC処理画像と非処理画像の試 料を2.0~160mAs で作成し,以下の物理評価 をおこなった. 1.入出力特性 2.NNPS (二次元フーリエ変換法) 3.MTF (エッジ法) 【結果】 NNPS は同一線量であれば1 cycles/mm 以 上の周波数領域において,FSC処理画像が良好 となった.また,100mAs (FSC非処理画像) と71mAs (FSC処理画像) を比較すると高周波 数領域では71mAs (FSC処理画像) がNNPS は 低下し,40mAs (FSC非処理画像) と20mAs (FSC処理画像) を比較すると2~6 cycles/mm の周波数領域でほぼ同等となった.MTFは全周 波数領域においてFSC処理画像がFSC非処理画 像と比較して高い値となった. 【結論】 物理評価の結果,FSC処理による鮮鋭性の低 下がなく,ノイズが抑制される.また今回の結 果より,撮影線量が低減可能であることが示唆 された. 第1会場 03 X線検査:乳腺・トモシンセシス (演題番号1-4) 整形領域のトモシンセシス撮影 における被ばく線量低減の検討 Investigation of X-ray dose reduction in tomosynthesis in the field of orthopedics 14:00-14:40 04 座長:藤原芳美(大阪府立急性期・総合医療センター) 谷口正成 (住友病院) トモシンセシスにおける再構成 高さ中心の違いによる断層厚の 測定 Study to measurement of slice thickness to variable reconstruction height for tomosynthesis 大阪府立成人病センター 放射線診断科 ○坂元 彩乃・伊泉 哲太・山根 康彦・ 川眞田 実・小林 正弥・岡本 英明 大阪府立急性期・総合医療センター 医療技術部門 放射線部門 ○魚澤 里奈・藤原 芳美・香川 智彦・ 西田 崇・船橋 正夫 【背景】 当院における整形トモシンセシス撮影の件数 は増加しているが,X線単純撮影と比較して被 ばく線量が高く,一回の撮影における線量を低 減する必要がある. 【目的】 付加フィルタとノイズ低減処理を用いて,画 質を担保しつつ被ばく線量の低減が可能である か検証を行った. 【方法】 ①骨盤撮影時の条件Ⅰ(80kV,2.5mAs, Cu0.1mm)と,付加フィルタをCu0.2mmに変 更したときの条件Ⅱで入射表面線量を測定し比 較した. ②CDRADファントムを10cmのアクリル板で 挟み,条件Ⅰと条件Ⅱで撮影した.条件Ⅱで得 られた画像にノイズ低減処理を施した画像 (0.2mm(+))を作成し,3つの画像について SD,CR,CNRを求め比較した. 【結果】 ①条件Ⅰと比較し,条件Ⅱでは約70%の値と なった. ②SD:0.1mmと比較し0.2mmで高い値とな り,0.2mm(+)で最も低い値となった.CR: 0.1mmと比較し0.2mmでわずかに低い値とな り,0.2mm(+)で最も低い値となった. CNR:0.1mmと比較し0.2mmで低い値とな り,0.2mm(+)では0.1mmと近い値となった. 【考察】 付加フィルタ厚を0.2mmにすることで軟線 成分がよりカットされ入射表面線量を低減する ことができたが,X線の到達線量が減少しSDが 高くなった.そこで,ノイズ低減処理を用いる ことにより0.1mmと同等の画質を得ることが できた.ノイズ低減処理を用いるとわずかなコ ントラスト低下が見受けられるが,階調処理で 改善できるため,被ばく線量の低減は可能であ ると考えられる. 【目的】 近年FPDの採用によりデジタルX線撮影シス テムの応用技術として,一回の撮影で複数の連 続断層画像が作成できるトモシンセシス (Tomosynthesis)が臨床応用されるように なった.今回はトモシンセシス撮影において, 撮影時の断層中心と再構成画像中心が異なる場 合の断層厚について検討したので報告する. 【方法】 直径が0.28mmのタングステンカーバイト 球(以下ビーズ)を0.5mm厚アルミ板上に設置 し,以下の方法で測定を行った.①50mm厚 のアクリル板2枚で挟み,ビーズの高さを固定 し撮影断層中心を変更した.②撮影断層中心を 固定しビーズの位置を変更した.①②それぞれ 撮影した画像をビーズ位置中心の50mmで再 構成し,再構成画像の最も低い値を持つ画素を ビーズの位置とし,その位置の画素値を画像ご とに測定しImage-Jを用いてプロファイルカー ブを作成しFWHMを算出した. 【結果】 ①撮影中心の位置が高くなるほど断層厚は厚く なった. ②ビーズの高さが高くなるほど断層厚は薄く なった. 【考察】 トモシンセシスでは再構成画像の断層高さに よって,実効的な振り角度が異なり,断層厚も 高さによって変化する.したがって撮影範囲の 中心高さに断層中心を設定して撮影するべきで ある. 第1会場 05 放射線治療:線量 (演題番号5-9) 14:40-15:30 蛍光ガラス線量計を用いた放射 線治療時における照射範囲外へ の被ばく線量に関する研究 Study on the radiation dose of the nonirradiation site at the external beam radiotherapy using glass dosimeter 大阪大学医学部保健学科 ○岡﨑 貴大・大森 望未 大阪大学大学院 松本 光弘 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 井ノ上 信一 06 座長:井上裕之 (兵庫医科大学病院) 上田悦弘(大阪府立成人病センター) 自作ファントムを用いた乳房放 射線治療における皮膚線量の基 礎的評価 Fundamental evaluation of skin dose by use of self-made phantom in breast radiation therapy 滋賀医科大学医学部附属病院 放射線部 ○西原 明日香・柳 勇也・原田 直樹・ 福井 悠介・中野 芳貴・田中 広輝・ 野間 和夫・木田 哲生 放射線部門 【目的】 リニアック治療時における照射範囲外への被 ばく線量について蛍光ガラス線量計(GD302M 旭ガラス社製:以下,GD)を用いて実 測した. 【方法】 リニアック治療装置(ARTISTE,シーメンス 社製:大阪大学医学部附属病院)を用い,乳房 温存接線照射および中咽頭癌IMRT(7門照射)を 対象に,水晶体他の部位における被ばく線量を GDにより実測した.頭頚部から腹部までのラ ンドファントムと骨盤部用としてI’mRTファン トムを治療台に設置した.事前にファントムを CT撮影し治療計画(RTPs)し照射条件を求め た.評価点は乳房温存接線照射では左右水晶体, 検側および被検側乳房,縦隔,被検側腋,骨盤 前後左右,さらに中咽頭癌IMRTでは左右水晶 体,左右甲状腺,左右乳房,縦隔,左右腋窩, 背中左右および中心,骨盤前後左右とし,ファ ントム表面にGDを3本ずつ設置し,内部線量 評価として,I’mRTファントム中心(子宮位置 相当)にもGDを設置した.それぞれPTVに2Gy 照射を施し,被ばく線量を測定した.乳房温存 接線照射では25回照射(50Gy),中咽頭癌 IMRTでは35回照射(70Gy)として.GDで求め た1回線量に25および35を乗じて総線量に対 する被ばく線量を算出した. 【結果】 乳房温存接線照射において,検側乳房の表面 は約30Gy(60%線量域)となり,RTPsの計 算結果と矛盾しない.被検側乳房中央付近の皮 膚がおよそ1Gy被ばくしているが,子宮部は約 10mGy程度であった.中咽頭癌IMRTにおいて, 照射野辺縁部の甲状腺皮膚面が約20Gy(約 30%)水晶体が約1Gy,子宮部は約40mGyで あった. 【背景・目的】 当院では乳房温存術後の放射線治療を行う場 合の線質は多くの症例で4 MVを多く選択して いるが,機器の都合や患者のPTVの大きさに よってより硬質な線質を用いることもあり, ボーラスを用いて皮膚線量を補っている.本研 究では,線質やPTVの違い,およびウェッジや ボーラスの使用の有無により皮膚線量にどのよ うな影響が生じるか,また,等価の皮膚線量を 得るために必要なボーラスの使用回数を自作 ファントムで検討する. 【方法】 胸部ファントムに乳房に見立てたゲルを0~ 700 ccまで50 ccずつ添付し,15種のPTVの ファントムをCT撮像した.各々のCT像に対し 4, 6, 8 MVで同一の照射野にてウェッジなし, 15゜,30゜を使用し,接線照射の治療計画を 立案した.各エネルギー,ウェッジにてボーラ スなしと5 mmボーラスを用いた場合を立案し, 各々の皮膚の平均線量を比較した.また,50 Gy/25 fr.を投与する際,4 MVボーラス不使用 時の皮膚線量と等価となるボーラス使用回数を 他のエネルギーで算出した. 【結果】 PTVと皮膚線量にはウェッジに依存した相関 を示した.皮膚線量はボーラスの使用により有 意に変化し,ウェッジを使用した場合はウェッ ジ角が大きいほど有意に低下した.4 MVボー ラス不使用時と比較し,6 MVでは5 mmボー ラスを3.2±0.3 fr.,8 MVでは6.9±0.2 fr.使 用すると皮膚線量が等価となった. 【結論】 今回の評価にて皮膚線量はPTVやウェッジ角 度が影響することが示唆された.また,ボーラ スの皮膚線量増強効果を適切に把握できた. 第1会場 07 放射線治療:線量 (演題番号5-9) 14:40-15:30 画像誘導放射線治療における CBCT撮影時の体表面線量の評価 と撮影条件の検討 Measurement of surface dose and verification of the setting in CBCT for image guided radiation therapy 08 座長:井上裕之 (兵庫医科大学病院) 上田悦弘(大阪府立成人病センター) コリメーター角度が4D円筒型 検出器アレイでの線量分布検証 に及ぼす影響 The influence of collimator angular dependence on evaluation of dose distributions with 4D measurement array 近畿大学医学部附属病院 中央放射線部 ○田村 命・松本 賢治・奥村 雅彦・ 宇都 辰郎 近畿大学大学院 門前 一 大阪府立急性期・総合医療センター 医療技術部 放射線部門 ○小野坂 哲・谷 正司・山下 祐美恵・ 米屋 勇佑・大島 徹也 【目的】 画像誘導放射線治療(IGRT)において, Cone-Beam CT(CBCT)は,治療精度を担保す るために非常に重要な役割を担っている,しか し,位置の照合精度を担保できる画質と最適な 撮影条件についてはあまり検討されていない. 本研究では,体表面線量の評価を行い,適切な 撮影条件を検討した. 【方法】 骨盤ファントム(BrainLab)を用いて,半導 体検出器(NOMEX マルチメータ: PTW FREIBURG)にて腹部正面の体表面線量の評価 を行った.CBCT撮影条件は,スキャン時間を 1分,管電圧を125 kVとし,mAs値を101.25 から1080 mAsに変化させた.また,同条件下 において,CATPHANTOMの撮影を行い,幾何 学的変化,ノイズ,均一性,コントラスト,解 像度の評価を行った.CATPHANTOMの解析に は,SNC machine(Sunnuclear)を用いた.撮 影で得られた骨盤ファントムの画像を用いて, 基準画像に対して画像照合を行い,位置照合精 度に対する影響を評価した. 【結果】 骨盤ファントムにおける体表面線量とmAs 値の関係は,ほとんど線形であり (R2=0.99964),1080,810,405,101.25 mAsのときの体表面線量は,それぞれ10.72, 8.3,4.3,1.4 mGyであった.画質評価にお いては,ノイズが大きく影響しており,mAs の低下に伴い6.1から17.1までノイズが大きく なったが,照合精度への影響はなかった. 【結論】 デフォルトのmAs値の半値でもノイズ成分 は増加するが,十分に画像照合を行えることが わかった. 【目的】 回転型強度変調放射線治療(VMAT)において Tongue and Groove効果を減少させるため回 転方向に対しコリメータ角度をつける方法はよ く行われる手法である.当院においても前立腺 のVMATに対しコリメーター角度を主に10°に 設定した治療計画を行い,その線量分布を2次 元検出器(Matrixx)を用い検証を行っていた. 4D円筒型検出器アレイ(ArcCheck)が導入さ れ今までのMatrixxから線量分布検証を ArcCheckへと移行した.ArcCheckを使用した 線量分布検証では従来のMatrixxを使用したも のに比べ3mm,3%のγ解析においてPass率の 低下がみられた(98.44±1.17%→ 93.31±1.62%).我々はコリメータ角度が ArcCheckの線量分布検証に影響を及ぼしてい ると考え,その影響を調べたので報告する. 【方法】 ①過去に行った前立腺VMATの5名の患者の輪 郭を用い,線量制約は同じでコリメータ角度を 0°から60°まで変化させ最適化した計画を作成 し,おのおのの計画に対し,線量分布検証を行 い,γ解析の結果を比べた. ②同様に5名の患者のコリメーター角10°で最 適化されたプランをコリメーター角度が0°か ら60°まで変化させた検証プランを作成し検証 を行った. 【結果】 方法①,②ともに0°から30°にコリメーター 角度を大きくしていくにつれArcCheckのγ解 析のPass率の値はよくなり30°以上で安定した. 【結論】 ArcCheckを使用し線量分布検証を行う場合, 機器自体のコリメーター角による影響を避ける ため,コリメータ角度は30°以上で治療の計画 を立てることでこの影響を避けることができる. 第1会場 09 放射線治療:線量 (演題番号5-9) 14:40-15:30 円筒型検出器アレイの実用的な 深さスケーリング係数決定方法 Practical depth scaling factor determination method of the cylindrical detector array 大阪府立急性期・総合医療センター 医療技術部 放射線部門 ○米屋 勇佑・谷 正司・小野坂 哲・ 山下 祐美恵・中邑 友美・菊谷 奈央・ 大島 徹也 市立貝塚病院 放射線科 放射線治療部門 大谷 侑輝 【目的】 当センターでは,円筒型検出器アレイ (ArcCHECK)が導入され,VMAT等の線量検証 に用いている.ArcCHECKの材質はPMMAであ り,線量分布検証,評価点線量検証において, 深さスケーリング補正を行う必要がある.通常, 深さスケーリング係数(Cpl)は,エネルギーご とに,水とファントムの実効線減弱係数の比に より決定される.しかし,標準仕様の ArcCHECKには,実効線減弱係数を測定するた めのファントムは用意されていない.我々は実 用的な手法として,ArcCHECK内での減弱曲線 を基にスケーリング係数を求めた.今回, ArcCHECKと同素材のPMMAファントムによる 実効線源弱係数を測定する機会を得たので, 我々の手法と比較を行った. 【方法】 我々の手法は,ArcCHECK付属のPMMAスラ ブを組み合わせ,指頭型電離箱を深さ方向に移 動し減弱曲線を得る.治療計画装置に登録され たArcCHECKファントム上で,この減弱曲線に 一致する相対電子濃度(CT値)を設定する.こ の際の相対電子濃度をCplとした.一方で,実 効線源弱係数により求めたCplと比較を行う. 【結果】 我々の手法で求めた結果は10×10 cm2の照 射野で6 MV,10 MVともにCpl=1.150であっ た.一方,実効線減弱係数による結果は6 MV はCpl=1.130,10 MVはCpl=1.133であった. 【結論】 実用的な手法として,円筒型アレイ内の PMMAスラブの組み合わせによる減弱曲線と RTPsにより求めたが,臨床上問題となる差は ないと考えられる.また,測定方法が簡便なた め,定期的なQAにおいても有用な手法と言え る. 座長:井上裕之 (兵庫医科大学病院) 上田悦弘(大阪府立成人病センター) 第1会場 10 核医学:収集・処理 (演題番号10-14) エッジ保持平滑化フィルタを 用いた骨シンチグラフィ検査 の画質改善効果の評価 Evaluation of image quality improvement effect of bone scintigraphy applying the edge retention smoothing filter 16:40-17:30 11 座長:神谷貴史(大阪大学医学部附属病院) 核医学画像に対する超解像の 最適なパラメータの検討 Consideration of the optimal parameters of the super-resolution for the nuclear medicine images 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 ○小野 雅史・横井 萌子・片山 豊・ 山永 隆史・押川 千恵・中間 翔太・ 岸本 健治・市田 隆雄 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 〇片山 豊・木村 大輔・高尾 由範・ 山永 隆史・岸本 健治・市田 隆雄 古河電工 ブロードバンドシステム部 上田 健太郎 広島市立大学大学院 情報科学研究科 日浦 慎作 【目的】 ディジタルカメラの画像には,受光素子に入 射される光のゆらぎに伴うノイズが含まれる. 近年,撮像素子の微細化が進みノイズは増加し た.増加したノイズにはエッジ保持平滑化フィ ルタを適用し,画像の詳細を保持したノイズ低 減処理が行われている. 一方,放射線検査の画像には,放射線のゆら ぎに伴うノイズが含まれる.特に,核医学検査 の画像は統計量が少なくノイズが多い. そこで今回,骨シンチグラフィの画像に対し てディジタルカメラのノイズ除去に用いられて いる2種類のエッジ保持平滑化フィルタを適用 し,画質改善に適したフィルタの決定を目的と した. 【方法】 骨シンチグラフィ検査のうちスタティック背 面像に対し,総カウント数を100~2000 kcountsと変化させてノイズの割合が様々な画 像を取得した.総カウント数が100~1000 kcountsの画像を対象画像,通常の臨床検査で 目標総カウント数としている800kcountsの画 像を臨床画像,2000kcountsの画像を目標画 像とした.また,対象画像に対して,Bilateral Filter (BLF),Non-Local Means Filter (NLM) を適用し,物理評価および視覚評価により目標 画像とフィルタを適用した画像を比較した. 【結果】 物理評価では,BLFとNLFが同程度の評価で あった.視覚評価では,総カウント数が多くな るほど高評価であった.また,総カウント数が 500kcounts以上でBLFが臨床画像に対し高評 価となった. 【結論】 骨シンチグラフィの画質改善に用いるエッジ 保持平滑化フィルタにはBLFが有用であった. 【背景】 旧来より画像のマトリクスサイズの向上に用 いられてきた線形補間処理では,標本化により 失われた高周波数帯域の情報を復元することが できない.一方,近年生物の視覚処理に基づい たスパースコーディングを用いた信号処理が注 目されている.Sparse coding SuperResolution(ScSR) はスパースコーディングを 用いた画像処理手法の一つであり,汎用性の高 いことから多岐にわたる画像に対して適用され ている.ScSR では標本化により失われた高周 波数帯域の情報を復元することができる.しか し,ScSR の医用画像に特化した処理パラメー タの最適化の検討を行った研究は未だ少ない. 【目的】 臨床条件にて撮像・再構成した SPECT 画像 に対して ScSR を適用し高解像度画像の再構 成を行う.ScSR の強さを調整するパラメータ の最適な値を客観的な物理指標の値から決定す ることを目的とした. 【方法】 臨床検査を模した実験系をホフマンファント ムにて作成し,フィリップス社製 BrightView にて concurrent scan を用いて 128×128 お よび 256×256 のマトリクスサイズで撮像し た.128×128 で撮像した投影像を再構成した 画像に超解像を適用し,256×256 で撮像した 投影像を再構成した画像に最も類似する ScSR の処理パラメータの最適値を,PSNR および PSD を用いて決定した. 【結果】 臨床条件にて撮像・再構成した SPECT 画像 に ScSR を適用し高解像度画像を再構成する 際の最適なパラメータを決定することができた. 第1会場 12 核医学:収集・処理 (演題番号10-14) ノイズ低減処理(Pixon変法)を 用いた低カウント画像における 画質の評価 Evaluation of image quality in the low count image using noise reduction processing 16:40-17:30 13 座長:神谷貴史(大阪大学医学部附属病院) 201TlClの検定日変更における 心筋血流シンチグラフィの画像 再構成条件の検討 Optimization of reconstruction parameters in 201Tl myocardial perfusion imaging duo to the decrease of administered dose 大阪府立成人病センター 放射線診断科 〇大野 歩果・國下 皓平・伊泉 哲太・ 白井 清教・澤田 孝人・福島 英治・ 岡本 英明 兵庫医科大学病院 放射線技術部 〇櫻井 大輔・槌谷 達也・榎 卓也・ 駒居 柚哉・高橋 良幸・光家 千恵美・ 小田 雅彦・前田 善裕 【目的】 今回ノイズ低減を目的とした画像処理である PlanerProcessing(P.P.)を使用することを試み た.P.P.の混合率を変化させたときの画像への 影響を評価する. 【方法】 1.ファントム内部に陽性像のモジュールを挿 入し,Tl線源を希釈した溶液で満たす.100, 250,500,10000kcountの収集条件で収集 を行いstatic像を得た. 2.1で得た像の 混合率を20%ごととメーカー 推奨値の30%に変化させ,画像中のhotspotの うち1箇所にROIを作成しC.V.,コントラスト 比,NMSEを求めた.NMSEのリファレンスは 500k0%とした. 3.低カウント像について混合率を0%,30%, 60%に設定した像を無作為に並べ,10000kの 像をリファレンスとし正規化順位法による視覚 評価を行った. 【結果】 コントラスト比,C.V.:混合率の上昇により 見かけ上のノイズの減少によりコントラスト比 は上昇,C.V.は低下した. NMSE:混合率の変化では規則性のないわず かな変化しか見られなかった. 視覚評価:核医学に携わる技師5人によって 正規化順位法で解析すると,尺度は数値が高い 順から250k60%,250k30%,100k60%, 250k0%,100k30%,100k0%となった. 【考察】 結果から,人間の目はコントラスト比やC.V. を重視して画像を認識している.よって,カウ ント数は同じでも混合率の高い画像の方がリ ファレンス画像と近いと認識されたのは,P.P. による平滑化で側抑制によるマッハバンド効果 が生じ,辺縁がよりくっきりしているように錯 覚したことが原因の一つに考えられる. 【背景】 本来,検定日の2日前に納入されていた 201TlClは,放射性医薬品の安全かつ適正な使用 のため,平成28年4月より検定日当日に納入さ れるようになった.この変更に伴う投与放射能 量の減少により画質が低下する. 【目的】 当院における201Tl心筋血流シンチグラフィ の最適な画像再構成条件を検討する. 【方法】 PHILIPS社製BrightView X with XCTを用い て,京都科学社製RH-2型心臓静態ファントム を撮像した.ファントムには前壁と後壁に2 cmの欠損を作成した.収集条件は,マトリッ クスサイズ64×64,拡大率1.46,回転角度 180度,サンプリング数32,収集時間40秒 /viewとした.Butterworth filterのcutoff値 (以下,cutoff値),更新回数(iterationと subsetの積)をそれぞれ変化させ,画像再構成 を行った.心筋と欠損部のコントラスト,欠損 部の%uptakeを算出し,QPS解析により左室 容量を計測した. 【結果】 cutoff値を大きくすると,コントラストが上 昇し,%uptakeが減少した.0.50 cycle/cm 以上で変化はなかった.また,cutoff値0.50 cycle/cmにおいて左室容量が真値に最も近い 値を示した.更新回数を増加させると,コント ラストが上昇し,%uptakeが減少した.更新 回数約40以上で変化はなかった.また,更新 回数約40において左室容量が真値に近づき, それ以上の更新回数において変化はなかった. 【結論】 cutoff値0.50 cycle/cm,更新回数約40にお いて良好な画像が得られた. 第1会場 14 核医学:収集・処理 (演題番号10-14) ソマトスタチン受容体シンチグ ラフィにおける散乱線補正ウィ ンドウの検討 Evaluation of scatter correction window for Somatostatin receptor scintigraphy using 111In-Pentetoreotide 大阪府済生会中津病院 放射線技術部 〇中島 健吉・森西 亮介・下敷領 哲也・ 関 真一 富士フイルムRIファーマ株式会社 山下 康輔・石川 寧・河上 一公 【目的】 ソマトスタチン受容体シンチグラフィは,神 経内分泌腫瘍に発現しているソマトスタチン受 容体を画像化する検査である.今回,撮像条件 として散乱線補正ウィンドウを変化させた場合 の画質に与える影響を検討した. 【方法】 撮像機器はDiscovery NM/CT670 (GE社製) を使用した.ファントムはJS-10 (京都科学社 製) を使用し,3層構造とした.1層目は111In の濃度を変化させ,2層目はロッド径を変化さ せ,3層目は散乱体を入れ,作成した.撮像条 件はコリメータをMEGP,メインウィンドウを 171keV±7.5%,245keV±7.5%とし,30分 間収集を行った.散乱線補正ウィンドウは ±2.5%と±3.5%で変化させ,比較検討した. 再構成法はOSEM法 (iteration : 15 , subset : 6 ),減弱補正はCTAC法を用いた. 再構成画像から濃度別描出能,サイズ別描出能, ノイズの評価を行った. 【結果】 散乱線補正ウィンドウ±2.5%と±3.5%で比 較した場合,濃度別描出能では濃度直線性で評 価し,またサイズ別描出能はリカバリ係数で評 価を行ったが,共に両者の差は見られなかった. ノイズの評価では変動係数,散乱線の割合で評 価し,変動係数が12.0,14.2%,散乱線の割 合が6.9,3.1%となった.追加検討としてコ ントラスト比の評価し,コントラスト比は 17.7,20.6となった. 【結論】 今回の検討では,ソマトスタチン受容体シン チグラフィにおける散乱線補正ウィンドウは ±2.5%よりも±3.5%で描出能が向上する可能 性が示唆された. 16:40-17:30 座長:神谷貴史(大阪大学医学部附属病院) 第2会場 15 CT検査:被ばく① (演題番号15-18) 当院におけるCTプロトコルと 診断参考レベル(DRLs 2015) との比較 Comparison between conventional CT protocol and DRLs 2015 大阪警察病院 医療技術部 放射線技術科 〇中岡 大輔・藤沢 康雄・田中 淳司 【背景】 わが国は放射線を利用した検査装置の数,受 診回数ともに多いため,被曝線量低減のための 努力が進められている. 【目的】 2015年6月に国内実態調査結果に基づく診 断参考レベル(DRLs)が設定された.そこで, 当院で使用しているCTプロトコルにおける CTDIとDLPに関して,DRLs との比較を行っ た. 【方法】 使用機器:GE社製 Discovery CT750HDSS,Light speed VCT vision 期間:2016年9月1日から9月30日 488件 対象プロトコル:頭部,胸部,胸腹部,腹部, HCCルーチン,冠動脈 1.各装置で検査を行った症例から,撮影部位 毎に標準体格の範囲内から無作為に抽出し,装 置に表示されているCTDIとDLPの平均を算出, DRLs との比較を行った. 2.装置間の比較を行った. 3.対象患者の体重制限を設けずに調査した. 4.冠動脈の撮影範囲(CABG後とablation用) の違いによる比較を行った. 【結果】 1.頭部撮影ではCTDI:42.58mGyとなり, DRLsで定められた値(CTDI:85mGy)よりも 低値を示した.その他のプロトコルも同様に DRLsよりも低値を示した. 2.装置間では,各プロトコルともDiscovery 側でCTDIとDLPともに高値を示した. 3.体重制限を設けず各平均値を算出したとこ ろ,各プロトコルでDRLsの値よりも低値を示 した. 【考察】 当院では,各プロトコルにおけるCTDIと DLPの平均値が,DRLsで提唱された値よりも 低値を示したため,各装置における線量は最適 化されていると考えられる. 14:00-14:40 16 座長:藤原 健(堺市立総合医療センター) 腹部CT検査におけるSSDE算出 精度の検証~患者実効直径法と 水等価直径法の比較~ Comparison of Size-Specific Dose Estimates between effective diameter and water-equivalent diameter methods 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門 〇矢畑 勇武・佐藤 和彦・遠地 志太 【目的】 近年,CT検査における被ばく線量の指標と して,患者体格を考慮に入れたSSDE(SizeSpecific Dose Estimates)の使用が提言されて いる.しかし,この指標の算出方法は複数提案 されており,その精度については検討の余地が ある.本研究の目的は,腹部単純CT検査を対 象として,線量管理システムを用いた被ばく線 量解析を行い,患者実効直径法(ED:Effective Diameter)と水等価直径法(WED:Water Equivalent Diameter)のSSDE算出精度を検証 することである. 【方法】 線量管理システム(Radimetrics:Bayer)に 自動登録されたデータから,2014年4月1日~ 2016年3月31日の2年間に,CT装置Discovery CT750 HD(GE)で撮影された腹部単純CT検 査を対象とする線量情報(CTDIvol,SSDE, ED,WED)を抽出した.抽出したデータから SSDE/CTDIvolを計算し,米国医学物理学会 (AAPM-220)で報告されたSSDE算出の補正係 数と比較した. 【結果および考察】 EDおよびWEDに対するSSDE/CTDIvol値は, AAPM-220における補正係数の近似値に相当 し,WEDの方が高い相関を示した.この結果 から,SSDE算出には,CT横断像からX線吸収 を考慮し求めたWED法を採用する必要がある と考えられる.また,この関係を性別で比較す ると,女性の場合にその偏差が大きくなった. これは,性差による筋肉量や脂肪量の違いであ ると考えられ,提案されている補正係数の再考 の必要性が示唆された. 第2会場 17 CT検査:被ばく① (演題番号15-18) X線CT装置における半導体線量 計を用いた新しい線量測定法の 検討 Investigation of new dosimetry of X-ray CT 14:00-14:40 18 座長:藤原 健(堺市立総合医療センター) X線CT装置における出力検証 ~CTDIvolと実効エネルギーの 装置間比較~ A comparison of volume computed tomography dose 近畿大学医学部附属病院 中央放射線部 〇村田 大輔・河野 雄輝・小坂 浩之・ 山田 浩司 近畿大学高度先端総合医療センター PET分子イメージング部 渡邊 翔太 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門 〇髙倉 一馬・川畑 秀一・遠地 志太・ 佐藤 和彦 【目的】 半導体式線量計(Piranha)で使用するcentral point method(CPM)法の線量測定精度を検証 する. 【方法】 従来,X線CT装置の線量測定にはCTDI測定 ファントム (32cm) 内5点の測定により CTDIw を算出していた(標準法).CPM法では CTDI測定ファントム中心の1回測定結果に装 置固有の値として設定されているk-factorを乗 じることにより,CTDIwを算出可能となる. GE社製X線CT装置LightSpeed VCT VISIONと CTDI測定ファントムを使用し,rotation time を0.4,0.7,1.0(sec))と変化させて標準法に て線量を測定した.さらに,スキャンFOVを Small Body,Medium Body,Large Bodyと 変化させ同様に線量を測定した.CPM法でも 同様の条件にて線量測定を行い,測定値を標準 法と比較した. 【結果】 Rotation timeの変化による測定値差に一定 した傾向は確認できなかった.スキャンFOVが Medium Body,Large Bodyの条件下では, 測定値差は1.8%から4.6%であった.しかし, Small Bodyでは,測定値差は7.7%から 14.1%であり標準法に比べてCPM法がより大 きい値を示した. 【結語】 CPM法を用いた線量測定は可能であるが, スキャンFOVの考慮が必要である. 【目的】 X線光学系の技術革新に伴い,CT検査におけ る被ばく線量は大幅に低減されてきた.これは, 新たな検出器系の導入のみならず,線質利用効 率を考慮したX線系の改良による要素も大きい. CT装置の精度管理の観点から,使用装置の出 力値を把握することが重要となる.そこで本研 究では,旧型式及び最新型のCT装置について, 被ばく線量の指標であるCTDIvolと線質の測定 を行い,各装置で比較した. 【方法】 異なる型式のCT装置(Aquilion ONE)3台を 対象とした.各装置に対して,半導体検出器 (CT Dose Profiler)をCTDIファントム(直径: 16cm,32cm)の中心孔に挿入し,ヘリカルス キャンを行った.撮像条件は,管電圧:80~ 135kV,管電流:100~300mA,スキャン FOV:S,M,Lに設定し,各条件におけるCT 線量プロファイルを取得した.取得結果から, 検出器付属のQAソフトウェア(Ocean)を用い てCTDIvol値を算出し,各CT装置の表示値と 比較した.さらに,X線出力アナライザ (Piranha)を使用して,X線管を固定させた状 況下でAl半価層の測定を行い,Al半価層と線減 弱係数の関係曲線から実効エネルギーを求めた. 【結果及び考察】 全装置においてCTDIvolの実測値は,表示値 より高くなり,管電圧,管電流が大きくなるに つれて高くなる傾向を示した.また,スキャン FOVはサイズSで最も高い値となった.最新型 装置では旧型式に比べて,CTDIvolは低くなり, 実効エネルギーは高くなった.以上より,最新 型装置では,X線出力における低エネルギー成 分の抑制効果が明らかとなった. 第2会場 19 CT検査:被ばく② (演題番号19-21) 胸部領域における臓器適用型mA 変調機能:Organ Dose Modulation (ODM)の基礎的検 討 Effect of organ dose modulation in chest CT image 14:40-15:10 20 座長:小坂浩之(近畿大学医学部附属病院) CT-AEC使用下で位置決め画像 の拡大率が与える被ばくと画質 の関係性について The evaluation of CT image quality and exposure , using CT auto exposure control 大阪警察病院 医療技術部 放射線技術科 〇野中 翔太・藤沢康雄・田中淳司 近畿大学医学部附属病院 小坂浩之・中西順子・山田浩司 アクロバイオ株式会社 由井和茂 GEヘルスケア・ジャパン株式会社 鍾 灝 大阪府立急性期・総合医療センター 医療技術部 放射線部門 〇森川 智美・西田 崇・中 智章・ 伊藤 正博・安部 勝人・船橋 正夫 【背景】 わが国は放射線を利用した検査装置の数,受 診回数ともに高く,X線の被曝線量低減のため の努力が進められている.また,社会的にも CTの被曝線量の関心が極めて高い. 【目的】 今回,我々は体表組織に対して管電流変調に よって被曝を低減させる臓器適用型mA変調機 能:Organ Dose Modulation(ODM)を使用し 被曝線量低減効果や画質について検討した. ODMは臓器線量を考慮し,設定範囲内で眼窩 部では前面90°,乳腺部では前面180°で管電 流を変調させることで被曝を低減させる機能で ある. 【方法】 装置はDiscovery CT750HD-SSを使用し, I‘mRT ファントム(IBA Dosimetry社製)にシ ンチレーション光ファイバー線量計:MIDSOF (アクロバイオ社製)を各方向(A,R,L,RAO, LAO,P)において,ODM 有と無(以下, ODM(+),ODM(-))で撮影を行い,吸収線量 の変調について検討した.CT撮影用全身ファ ントムPBU-10(京都科学社製)に MIDSOFを各 方向において,ODM(+),ODM(-) で撮影を行 い,撮影管電流,吸収線量の変調について検討 した.QAファントムをODM(+),ODM(-)で 撮影を行い,各方向でのSD値,CT値について 検討した. 【結果】 ODMを使用することにより,前面で最大 35%の吸収線量が低減した.撮影管電流はA, R,L方向において低減し,吸収線量は全方向 において低減した.SDは最大で18%増加した. 【結語】 ODMは乳腺などの感受性が高い臓器に対し て有効であるといえる. 【目的】 CT-AECは位置決め画像から水透過径を算出 しているため,ジオメトリによる位置決め画像 の拡大,縮小が,撮影時の管電流変調に影響す ることが課題であった.しかし,新規導入され た寝台の高さ補正機能は,寝台の高さに対応し, FOV中心での管電流変調に近くなる機構を有す る.そこで,当院で行われている被検者のポジ ショニング位置を基に,CT-AECを用いて撮影 した画像を比較して,寝台の高さ補正機能の有 用性を検証した. 【方法】 1.体幹部単純CTまたは,造影CTを行った被 検者の横断像で腹側,背側の座標から,FOV中 心からの距離を測定し,最大値,平均値を算出 した. 2.それを基に,ファントムをFOV中心部から 変遷させてCT-AECを使用して撮影し, CTDIvolの記録と横断像における5点平均でSD 値を算出した. 3.さらに,位置決め画像の拡大率補正ありの 装置と,無しの装置で検証を行った. 【結果】 腹側,背側ともに20mm程度,FOV中心か ら離れていた.そのポジショニング位置を基に して撮影し,拡大率補正ありのCT-AECのSD 値,CTDIvolと拡大補正なしのCT-AECのSD値, CTDIvolを比較すると,腹側で拡大率補正無し の方が高くなる傾向にあった.背側は拡大率補 正が無い方が低くなる傾向にあった. 【考察】 CT-AECにおいて,被検者のポジショニング 精度が画質の安定性と被ばくの増減に影響する ことが分かった.高精度なポジショニングが最 も重要であるが,被検者によって中心に設置で きない場合もある.そのような場合でも,寝台 の高さ補正機能を有することで,適正な照射線 量と画質を担保できるため有用である. 第2会場 21 CT検査:被ばく② (演題番号19-21) 14:40-15:10 CT撮影における寝台が画質に 与える影響の検討 Investigation of the effects of bed in CT imaging has on the image quality 大阪府立急性期・総合医療センター 医療技術部 放射線部門 〇鈴木 宏卓・中 智章・宮原 哲也・ 伊藤 正博・魚谷 宗司・安部 勝人・ 船橋 正夫 【目的】 体幹部のCT撮影において,寝台によるX線吸 収は少なからず存在し,CT寝台と被写体間の 距離を離すことで均一性が向上するとの報告が ある.本研究の目的は被写体と寝台間の距離が 画質に与える影響を検討し,CT撮影時の最適 な寝台高さについて検討することである. 【方法】 1.CT寝台直上に水ファントムをガントリーの 中心となるよう配置し,ファントム‐寝台間距 離0cmとした.そこからファントム‐寝台間距 離を3,7.5,12,16.5 cmと変化させ,各 ファントム‐寝台間距離において管電圧を80~ 135kV(4段階)に変化させて撮影を行った. また,管電圧120kVにおいてCalibrationFOV(C-FOV)をS,M,L,LLとそれぞれ変化 させて,各ファントム‐寝台間距離(0cm~ 16.5cm)の撮影を行った.撮影したファント ム画像の中心と上下左右の計5点にROIを設定 し,それぞれのCT値の標準偏差(SD)を測定, 各ファントム‐寝台間距離でのSD値を比較した. 2.各ファントム‐寝台間距離(3~16.5cm)に おいて,ファントム‐寝台間距離 0cmと同等の SD値となるように線量を変化させて,線量低 減率を算出した. 【結果】 1.ファントム‐寝台間の距離が大きくなるにつ れて,SD値が低下する傾向であった.管電圧 を変化させたときも同様の傾向であり,低管電 圧ほどSD値が低下する傾向であった.C-FOV を変化させた時も同様にSD値が低下する傾向 であった. 2.ファントム‐寝台間距離を7.5 cmとした場 合,ファントム‐寝台間距離0cmと比較して約 5%の線量が低減できた. 座長:小坂浩之(近畿大学医学部附属病院) 第2会場 22 MR検査:物理特性 (演題番号22-26) 2 point DIXON TSE法における 画像特性の検討 Examination of image characteristics in Turbo Spin-echo method which used 2 point DIXON 加古川中央市民病院 〇田中 康晴・中間 放射線室 康夫・栗山 由紀治 【目的】 当院では新たにDIXON法を併用したMRI撮 影が可能となった.DIXON法を併用した高速 スピンエコー(TSE)法は従来のTSE法や他の脂 肪抑制(STIR,SPAIR,SPIR)併用TSE法と比 較し,どのような画像特性を持つのか検討を 行った. 【方法】 装置はPhilips社製Ingenia 3.0Tを使用. 1.従来からの脂肪抑制法と比較するために, 幾つかの試料とその周囲を油で満たした自作 ファントムを用いてセンター,オフセンター位 置でそれぞれ同条件で撮像し脂肪抑制効果を検 討した. 2.画質評価のために自作ファントムを用いて 撮像パラメータのエコースペースを変化させた 場合(8~24ms)とETL数を変化させた場合(10 ~40)のSNR,コントラスト,解像特性を比較 した. 3.当院倫理委員会の承認を得た健常ボラン ティアに対して,上記同様の条件で頸部を撮像 し臨床画像での視覚的な評価を行った.なお, 加算回数はそれぞれDIXON法:1回,TSE法: 1回と2回,他の脂肪抑制法:2回で撮像した. 【結果】 脂肪抑制効果においてDIXON法は他法と比 較しファントム実験,臨床画像共に高い効果を 示した.しかし,オフセンターの場合はSTIR の方が効果が高かった.コントラストと解像特 性においては従来のTSE法及びSPAIR,SPIR 併用TSE法と同様の結果を示した.SNRにおい てDIXON法の水画像はSPAIR,SPIR併用TSE 法と同等であったが,同位相画像は加算回数2 回のTSE法の画像より劣っていた. 【結論】 mDIXON TSE法における画像特性とその有 用性が確認できた. 16:40-17:30 23 座長:垂脇博之(大阪大学医学部附属病院) pencil beam型pre-saturation pulse MRAにおけるスラブ数が 画質に与える影響の検討 Influence on the image quality of the number of slabs in the MRA using pencil beam type pre-saturation pulse 神戸大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部 〇吉田 直碁・竹本 洋太・京谷 勉輔 神戸大学医学部附属病院 脳神経外科 田中 潤・細田 弘吉 【背景及び目的】 pencil beam型pre-saturation (beam SAT) pulseが使用可能となった.通常の頭部 MRAにbeam SAT pulseを付加したMRAを差 分することによって,血管造影検査のように選 択的な血管描出が可能であり,臨床応用が期待 されている.しかし,通常臨床で使用している MRAの撮像シーケンスにbeam SAT pulseを 付加するだけでは,差分エラーが発生し,良好 な選択的MRAを取得することが出来なかった. 本稿ではbeam SAT MRAの差分エラーの原因 として,マルチスラブ法が要因ではないかと仮 説を立て,シングルスラブ法と比較し,画質検 証を行った. 【方法】 MRI装置は日立社製ECHELON Vega 1.5Tを 用い,撮像コイルはRapid head coil (8ch)を 使用した.5名の健常ボランティア (28y±9.8y)を対象とし,マルチスラブ法とシ ングルスラブ法で通常の頭部MRA,beam SAT MRAを撮影した.得られた画像より, mean値,signal noise ratio (SNR)及び画像 ノイズを測定し比較した. 【結果及び考察】 シングルスラブ法の方がmean値及びSNRが 優位に高く,画像ノイズが優位に低いという結 果であった.よって,差分エラーの原因に画像 ノイズが大きく影響していると考えられる.シ ングルスラブ法では差分後の画像のSNRが高い ためノイズによる差分エラーが生じにくいと考 える. 【結語】 beam SAT MRAにおいて,差分エラーの要 因は仮説のとおりマルチスラブ法によるもので ある. MR検査:物理特性 (演題番号22-26) 第2会場 24 圧縮センシングMRIにおける 撮像シーケンスと計算アルゴリ ズムに関する検討 Reconstruction analyses depend on magnetic resonance sequence in compressed sensing: a simulation study 友紘会 〇松尾 彩都友紘会病院 放射線部 真奈美・上山 毅 【目的】 現在臨床では種々のシーケンスを用い,多様 なコントラストを持つ画像を撮影している.圧 縮センシング技術において,コントラストの違 いによって計算の収束が異なると考えられるが, それらに関する評価は少ない.本研究では,各 種のコントラストを持つ画像について,圧縮セ ンシングによる再構成の傾向を調べた. 【方法】 健常者の頭部のT1強調画像,T2強調画像, FLAIR画像を撮像し,コンピューターを用いた シミュレーションで圧縮センシングによる高速 化を再現した.高速化は約3倍速を想定し,70 パーセントのk空間を間引き,圧縮センシング 再構成により復元した.T1強調画像,T2強調 画像,FLAIR画像それぞれに対し,圧縮センシ ング再構成の計算の繰り返し回数を変化させた 画像を作成し,RMSEおよびSSIMにより評価 した. 【結果】 RMSEは,T2強調画像でT1強調画像, FLAIR画像より比較的早く収束した.繰り返し 回数100回以上ではそれぞれの画像において差 は小さくなる傾向がみられた. SSIMではすべてのコントラストについて収束 に必要な繰り返し回数に大きな差は見られな かった.T1強調画像では,間引き方によって SSIM値の変動が大きい結果となった. T2強調画像はRMSEが収束しやすく,SSIMで も比較的安定しており,圧縮センシングによる 高速化に向いていると考えられる. 本研究のシミュレーションにより.再構成にお ける計算収束違いが各種のシーケンスに依存す ることが示唆された. 16:40-17:30 25 座長:垂脇博之(大阪大学医学部附属病院) MRIにおけるRFパルスの振幅変 化が画像に及ぼす影響について Amplitude variation of RF pulse affect to MRI image 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 〇木村 大輔・東田 満治・山田 英司・ 片山 豊・久住 謙一・市田 隆雄 【背景・目的】 RFパルスとはプロトンの共鳴周波数に一致 した周波数帯域を持つ電磁波であり,MRI信号 の発生とスライス断面の選択を行う.しかし, その振幅を任意に変化させた時の詳細な報告は 無く,影響は明らかになっていない.今回, 我々はRFパルスの振幅を変化させて,MRI画 像に及ぼす影響について検討を行った. 【方法】 使用機器と使用コイルはIngenia3.0T (Philips)・Body coilを用いた.RFパルスの最 大振幅を設定できるB1 amplitude(B1 amp) を13.5,10.0,7.0uTの三段階に変化させ, スライス厚およびB1mappingをファントムに て解析した.スライス厚は3,5,7mmをそれ ぞれ撮像して,半値幅と1/10幅を測定した. 次に,実効スライス厚とdB/dT・B1+rms・ Max B1+rmsについて重回帰分析を行った. また,TEを9.2,14,30msに変化させて異な るTEによるスライス厚の変化も検討した. B1mappingは得られた画像の標準偏差を比較 した. 【結果】 各B1 ampごとの実効スライス厚(半値幅)は, 設定スライス厚±10%に納まる値となった. 1/10幅は,B1 amp 7.0uTで悪くなり,TEを 30msに設定した場合は矩形のプロファイルに 近づき1/10幅が向上した.重回帰分析では, 各項目は実効スライス厚に影響していなかった. B1mappingでは,B1 ampが高い程,RFパル スの均一性が向上した. 【結語】 B1 ampを低く設定すると,クロストークの 影響が大きくなり,RFパルスが不均一となる. 最短TEを選択するとスライスプロファイルは 低下する. 第2会場 26 MR検査:物理特性 (演題番号22-26) 3T乳腺MRI SSGR法併用拡散強 調画像のB1 amplitudeの影響 Influence of B1 amplitude of diffusionweighted imaging using SSGR on 3T breast MRI 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 〇竹森 大智・木村 大輔・山田 英司・ 東田 満治・市田 隆雄 【背景・目的】 Section Select Gradient Reversal (SSGR) 法はスライス方向のケミカルシフトを利用した 撮像法で,高磁場において特に有効な脂肪抑制 技術である.しかし,磁場強度を強くするとケ ミカルシフトが増加し,SSGR法の脂肪抑制効 果に変化を与える可能性が考えられる. 本研究では,3T乳腺MRIにおけるSSGR法併用 拡散強調画像のB1 amplitudeを変更した際の 脂肪抑制効果の検証とそれに伴う画像の影響に 着目し,物理評価を行った. 【方法】 MR装置はPhilips社製Ingenia 3Tを使用し, 受信コイルは32ch Headコイルを使用した. また,撮像対象は正常乳腺のT1,T2値に近似 するように模擬乳腺を作製し,周囲を人体の皮 下脂肪を模したピーナッツオイルで充填させた 自作ファントムを使用した. 撮像条件は,SSGR法を併用させたShort Inversion Time Inversion Recovery (STIR) 法を用いた脂肪抑制法とし,B1 amplitudeが 7.5,8.5,9.5,10.5,11.5,12.5,13.5の ときの脂肪抑制効果,模擬乳腺とオイルの CNRについて物理評価を行った. 【結果】 脂肪抑制効果はB1 amplitudeが低くなるほ ど低下する傾向が見られた.また模擬乳腺とオ イルのCNRはB1 amplitudeが低くなるほど低 下する傾向が見られた. 【結語】 3T乳腺MRIにおけるSSGR法併用拡散強調画 像においてB1 amplitudeを強く設定すること で脂肪抑制効果は向上する. 16:40-17:30 座長:垂脇博之(大阪大学医学部附属病院) 一般演題 1月29日(日曜日) 第1会場 27 放射線治療:位置精度 (演題番号27-30) Hancock MLC Testによる Multi-leaf CollimatorのQA/QC Investigation of multi-leaf collimator positioning accuracy by use of Hancock MLC Test 10:20-11:00 28 座長:宮﨑雄司(和歌山県立医科大学附属病院) 高線量率密封小線源治療の線源 停留位置検証におけるX線透視 装置の活用 The use of X-ray fluoroscopy device in the source stop position verification of high-dose rate brachytherapy 兵庫医科大学病院 放射線技術部 〇髙月 将希・ 田ノ岡 征雄・井上 裕之・ 酒井 敏行・若山 司・石田 敏久・ 田和 光・村上 雄一 奈良県立医科大学附属病院 〇松浦 修平・石見 浩 【目的】 当院ではFence TestによってMLCの静的位 置精度のQA/QCを行っているが,各Leafの停 止位置の定量的な評価は困難である.今回,各 Leafの停止位置および静的位置精度の定量的解 析が可能であるHancock MLC Testを用いて, MLCQA/QCの評価と有用性について検討した. 【方法】 LinacはEelekta社Synergy(MLCi搭載:40 対:80枚;MLC幅:10 mm)を使用した. Hancock MLC Testは,EPID(iViewGT: Elekta社)を用いて,スリット間隔105mm, スリット幅10mmを中心と左右に照射し撮影 を行った.次に,撮影画像をQAソフトウェア (Sun Nuclear)に転送し,解析を行った.解析 結果より,MLCの停止位置再現性,停止位置の エラー検出能,Leaf Bankのエラー検出能を評 価した. 【結果】 Leaf停止位置再現性の標準偏差は0.119mm であった.3units(1unit=0.077mm)以上のエ ラーを付加した全てのLeafでエラーが検出され た.Leaf Bankを3units以上変化させた場合, 全40対のLeafの半数以上でエラーが検出され た. 【考察】 一般的にFence Testの視覚評価では, 0.5mm程度の位置ずれの確認は可能であるが, Hancock MLC TestによりLeaf位置精度の定量 的解析が容易となり,視覚評価より高精度な解 析が可能であった. 【結論】 MLCのLeaf位置精度の解析には,Hancock MLC Testが高精度で有用であった. 【背景】 直接変換方式FPD搭載の天井走行式Cアーム 型X線透視装置(以下,X線透視装置)が導入さ れ,以前のI.I.搭載X線透視装置に比べ192Ir線 源使用時における線源停留位置の評価が容易と なった. 【目的】 X線透視装置を用いて,密封小線源治療にお ける192Ir線源停留位置の評価および,日々の精 度管理が可能かを検証した. 【方法】 20cm厚の固体ファントムの中心にカーテテ ルを設置し,その中に模擬線源と192Ir線源を通 し撮影を行った. 1.透視条件はオートモードとマニュアルモー ドを使用し,線源とFPDの距離を変化させ,線 源計測に最適な透視条件とジオメトリを検討し た. 2.撮影した模擬線源画像からMAP画像を作 成し,192Ir線源使用時の透視画像にMAP画像 を重ね合わせ,模擬線源中心と192Ir線源中心の 距離を画面上で計測した. 【結果】 1.透視条件はマニュアルモードを使用し透視 管電圧が高く,且つ,線源とFPDの距離が長い 程明確に描出できた. 2.MAP機能により模擬線源と治療中の192Ir 線源との距離を同一画面上で計測することが可 能となった.また重ね合わせた画像を保存する ことによって,照射終了後に位置精度の検証が 可能であり,その計測の結果はファントム検証 において概ね1mm程度であった. 【結語】 X線透視装置のMAP機能を用いることで, 192Ir線源の目視確認が可能となると共に,線源 停留位置精度の事後検証が行えるようになった. また,簡便であるため日々の精度管理としても 有用な方法であると考える. 中央放射線部 第1会場 29 放射線治療:位置精度 (演題番号27-30) 声門上癌に対する骨構造を指標 とした画像誘導放射線治療時の 腫瘍位置の検討 Setup errors of laryngeal tumor and multiple neck levels in image guided radiotherapy 大阪府立成人病センター 放射線診断科 〇廣瀬 麻子・上田 悦弘・正岡 祥・ 五十野 優・大平 新吾・辻井 克友・ 宮崎 正義 【目的】 頭頸部癌の放射線治療において,3軸による 骨照合ではセットアップエラー(setup error; SE)によってターゲット全体に十分な線量が投 与できない可能性がある.本研究では声門上癌 に対するvolume modulated arc therapy (VMAT)での6軸照合を施行した際のSEについ て評価した. 【方法】 対象は当院にて声門上癌に対してVMATを施 行した20名である.ARIAのRegistrationソフ トを用いて,治療時週1回撮影したコーンビー ムCTと治療計画CTの照合において,頸椎(C3– C5)を基準として6軸照合を施行後,頸椎(C1, C7),腫瘍それぞれで関心領域を設定して3軸 で照合を行った. 【結果】 腫瘍の大きさの平均±標準偏差は5.7 ± 4.1 ccであった.基準骨からのSEの平均±標準偏差 [mm]は左右,背腹,頭尾方向において,C1 で−0.4 ± 0.5,0.0 ± 0.6,0.7 ± 2.1,C7 で−0.2 ± 0.5,−0.1 ± 0.6,0.2 ± 0.7,腫 瘍で−0.2 ± 0.6,0.1 ± 1.5,−1.5 ± 2.1で あった.頭尾方向における腫瘍のSEはC1,C7 に比べて有意に大きく,頭方向に5 mm以上ず れる割合は3 %,足方向では15 %であった. 頭尾方向における腫瘍のSEと顎のSEには弱い 相関が確認された(相関係数 0.36). 【結論】 声門上癌の放射線治療では,6軸補正によっ て頸椎のSEは補正可能であるが,腫瘍のSEの 補正は比較的難しいと示唆された. 10:20-11:00 30 座長:宮﨑雄司(和歌山県立医科大学附属病院) 体幹部定位放射線治療における 金属マーカーの検討 Optimization of metal markers in the trunk stereotactic radiation therapy 大阪大学医学部附属病院 医療技術学部 放射線部門 〇苅田 裕之・深尾 真理・井ノ上 信一・ 太田 誠一・山田 幸子 大阪大学大学院 医学系研究科 水野 裕一・鈴木 修 【目的】 サイバーナイフによる体幹部定位放射線治療 では,体内に留置した金属マーカーをもとに位 置照合を行う事がある.しかし,使用する金属 マーカーによっては治療時に自動照合で誤認識 する場合があった.そこで,複数の金属マー カーを比較し,認識精度に関する検討を行った. 【方法】 放射線治療用金属マーカーGold Anchor(5, 10,20 mmの線状,約5 mm径の球状), VISICOIL (5, 10 mm),アンギオ用塞栓コイ ル(5 mm)をI’mRT Phantom内に長軸がS-I方 向になるよう留置し,サイバーナイフを用いて 各マーカーのX線撮影を50回行った.さらに ファントムを3軸方向にそれぞれ5 mm移動し た位置でも同様に撮影し,各マーカーの認識位 置誤差を算出し,マーカーの種類,長さ及び形 状について比較検討した.また,ファントム厚 を変えて同様の測定を行った. 【結果】 3軸方向すべてにおいて,5 mmの3種類の マーカーの位置誤差は同等で種類による差はみ られなかった.Gold Anchorの5,10,20 mmを比較するとS-I方向における誤差は約0.1 mm,0.5 mm,5 mm以上であり金属マー カーが長くなるとともに誤差は大きくなった. また,5 mm毎に移動した位置で撮影を行うと, S-I方向に対してばらつきが大きくなった. Gold Anchorの5 mm の線状と5 mm径の球状 を比較すると位置誤差は同等であったが,ファ ントムが厚いほど線状と比較して球状のほうが ばらつきの少ない傾向にあった. 第1会場 31 放射線治療:治療計画・他 (演題番号31-35)11:00-11:50 院内における放射線治療情報の 利用実態:アクセスログ解析と アンケート調査 Actual usage of radiation therapy information in our hospital: Access log and questionnaire survey 32 座長:霜村康平(近畿大学医学部附属病院) 前立腺がん対する回転型強度変 調放射線治療における直腸線量 の推測 Estimation of rectal dose in volume modulated arc therapy for prostate cancer 大阪府立成人病センター 放射線診断科 ○辻井 克友・上田 悦弘・正岡 祥・ 狩野 司・宮崎 正義 大阪府立成人病センター 看護部 榎本 数美・松村 栄子 大阪府立成人病センター 放射線治療科 手島 昭樹 大阪府立成人病センター 放射線診断科 ○上田 悦弘・正岡 祥・辻井 克友・ 乾 翔輝・五十野 優・大平 新吾・ 宮崎 正義 【目的】 放射線治療情報システム(以下,RTIS: Radiation Therapy Information System)に は院内端末から治療情報を閲覧できるWeb参 照機能を有している.しかし院内における治療 情報の利用実態を調査した報告はない.本研究 では,アクセスログ解析およびアンケート調査 をもとに,院内における放射線治療情報の利用 実態を調査する. 【方法】 2015年4月から9月におけるRTISのWeb参 照画面へのアクセスログを取得した. Web ページには診断情報,RTプラン情報,RT進捗 情報が表示されている.Web参照画面へのア クセス数をログイン職種別,ログイン部署別, アクセス日別で解析した.また,アクセスが あった部署にアンケート調査を実施した.回収 したアンケートを単純集計,クロス集計方法で 解析した. 【結果】 総ログイン者数は428名,総アクセス数は 9891回であった.期間中の治療新患数は587 名でうち496名(84.5%)にアクセスがあった. 職種別アクセス率は看護師,医師,薬剤師でそ れぞれ52.8%,16.3%,9.8%であった.部 署別アクセス数では,耳鼻咽喉科病棟,脳神経 外科病棟,薬局でそれぞれ25.4%,11.3%, 9.3%であった.”放射線治療情報をどの業務で 利用していますか?”という回答では,看護師, 医師,薬剤師でそれぞれ”診察”, “患者観 察”, ”化学療法レジメンの確認”業務が最も多 い回答であった. 【結論】 院内における7職種の医療従事者の放射線治 療情報の利用頻度および目的を明らかにした. 放射線治療情報は多くの職種で業務に必要であ る. 【Purpose】 For quality assurance of the planning for volume modulated arc radiotherapy (VMAT), the estimation of organ doses from positions the organ and planning target volume (PTV) is required. The aim of this study is to evaluate the method predicting the dose of rectal wall using the overlap volume between the PTV and the rectum. 【Methods】 The subject was 147 patients treated with VMAT prescribed with Dmean of PTV. In 62 cases, the prescription dose was 78 Gy (C78) and in 85 cases, the prescription dose was 74 Gy (C74). We have developed the software which couples the patient list with dosimetric parameters exacted from their dose-volume histogram files. Based on dose calculation, V90%, V80%, and V50% of the rectal wall were analyzed with respect to the rate of the overlap volume to the whole rectal wall volume (R_O/R [%]) using the quadratic regression. With the fitting models, the dosimetric parameters, such as V90%, V80%, and V50%, of rectal wall were calculated in each case when R_O/R was changing from 5% to 30% in 5% step size. 【Results】 The range of R_O/R was from 7% to 46.7%. In the V90%, V80%, and V50% of the rectal wall, coefficients of determination for the regression curves were 0.69, 0.75, and 0.26 in C78 and 0.79, 0.64, and 0.14 in C74. The difference of estimate dose values between C78 and C74 was 0.3%, 1.6%, and 2.2% when R_O/R was 10%, 1.2%, 5.1%, and 3.9% when R_O/R was 25%. The difference of V80% and V90% was in proportion to R_O/R. 【Conclusion】 In V90% and V80%, calculated formulas were regressed to R_O/R with the strong the coefficients. The difference of estimated V90% was the smallest in the other dosimetric parameters. 第1会場 33 放射線治療:治療計画・他 (演題番号31-35)11:00-11:50 CBCTを用いた適応放射線治療に 関する基礎的検討 A feasibility study of adaptive radiation therapy using cone-beam computed tomography 34 座長:霜村康平(近畿大学医学部附属病院) 膵臓癌放射線治療における Field- in-field法の有用性 Usefulness of the field-in-field technique in radiation therapy for pancreatic cancer 兵庫医科大学病院 放射線技術部 ○真鍋 綾夕奈・田ノ岡 征雄・井上 裕之・ 酒井 敏行・若山 司・石田 敏久・ 田和 光・村上 雄一 大阪府立成人病センター 放射線診断科 ○新田 雄也・五十野 優・上田 悦弘・ 乾 翔輝・狩野 司・大平 新吾・ 宮崎 正義 大阪府立成人病センター 放射線治療科 手島 昭樹 【目的】 新しく導入された治療計画装置 (RayStation: Ray Search)は,CBCT(conebeam computed tomography)による線量分 布計算が可能である.当院では画像誘導放射線 治療を行う際,毎回CBCTを撮影しており,こ のCBCTを用いた適応放射線治療(ART: adaptive radiation therapy)に関する基礎検 討を目的とした. 【方法】 模擬組織を配置したI’mRTファントム(1.立 方体, 2.人体型, IBA Dosimetry社)を,治 療計画CT(以下CT)及びCBCTの撮影条件(管電 圧: 120kV, mAs値: low; high)を変化させ て撮影する.照射条件はエネルギー6MV,1門 及び4門照射,投与線量: 200cGy, FOV:15×10 cmで線量計算を行った.線量計 算結果より,CTとCBCT間,CBCT撮影条件間 の違いについて,線量分布及びDVH (dose– volume histogram)より評価を行った. 【結果】 CTとCBCT間の線量分布をガンマ解析で評価 した結果では,ファントム1の2 mm/2%パス 率は99.94±0.08%であった.また,ファント ム2はCBCTのFOVを超える大きさであるが, パス率は98.7±0.63%であった.撮影条件を 変化させた場合では,各撮影条件の線量分布, DVHに差は認められなかった.また,ファン トムの大きさがCBCTのFOVを超える大きさの 場合であっても,体輪郭補正が有効に機能して いることが確認できた. 【結語】 本研究により,CBCTを用いたARTが可能で あることが示された. 【目的】 術前膵臓癌放射線治療では腫瘍・後腹膜領域 (ReP)と神経周囲の浸潤の高リスク領域である 傍大動脈節(Ao)をターゲットとしている.本 研究では,従来の照射法に加えAoに対して小 照射野を用いたField-in-field(FIF)法により, 正常組織の線量増加なく,Aoへの線量増加が できているか,線量指標を用いFIF法の有用性 を検討した. 【方法】 対象は2015年4月~2016年4月までに術前 膵臓癌放射線治療をうけた72例である.腫 瘍・ReP領域に50Gy/25 fractionで処方し, FIF法によりAoに対しアイソセンターに60 Gy/25 fractionとなるよう治療計画を行った. 腫瘍・ReP領域に5門,Aoに小照射野で3門の 計8門を使用している.本検討では小照射野を 除いた5門でアイソセンターに50 Gy/25 fractionで処方した治療計画を作成し,線量の 比較を行った. 【結果】 8門,5門において,胃のV45Gy,V50Gy (cc)は7.1 ± 11.9, 6.5 ± 11.0,2.3 ± 4.6 , 1.3 ± 3.7であり,十二指腸のV45Gy, V50Gy(cc)は22.2 ± 11.6, 21.9 ± 12.0, 11.1 ± 7.4, 9.6 ± 8.7,右腎臓のV18Gy (%)は14.2 ±8.6,12.4 ± 8.9,左腎臓の V18Gy(%)は18.4 ± 9.0 15.7 ± 9.1であった. 【結論】 小照射野を用いたFIF法により,正常組織の 各線量指標は若干上昇したが,臨床的に問題で はなく安全に線量増加が可能であり,有用性を 確認できた. 第1会場 35 放射線治療:治療計画・他 (演題番号31-35)11:00-11:50 Planning study for esophageal cancer: A dosimetric comparison of conformal radiotherapy, VMAT and Hybrid-VMAT 食道癌放射線治療におけるHybrid VMATの 有用性 Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases Radiation Oncology ○Masayoshi Miyazaki・Yoshihiro Ueda・ Katsutomo Tsujii・Shingo Ohira Masaru Isono・Akira Masaoka・Shouki Inui・ Teruki Teshima 【Purpose】 The aim of this study was to compare dosimetric parameters of conformal radiotherapy (CRT), volumetric modulated arc therapy (VMAT) and Hybrid-VMAT (HyVMAT) plans for the treatment of patients with esophageal cancer. 【Methods】 Twenty treatment plans were generated by means of each dose delivery technique using a commercial planning system (Eclipse; Varian Medical Systems). Respective dose prescriptions were 40 and 20Gy for the PTVelective and PTVboost (2Gy/ fraction). For CRT, doses were prescribed at isocenter. For VMAT and Hy-VMAT, doses were prescribed at the mean dose of PTV. The 3DCRT plans consisted of opposite two fields (anterior-posterior, AP) to deliver prescription dose to the isocenter. The VMAT plans used 2 full arcs while lateral treatment beams (250-290 and 70-110 degree) were turned off to minimize doses to the lung tissue. Dosimetric parameters of the PTV and surrounding organs at risk (OARs) were compared. 【Results】 All plans had sufficient in Dmean and D2 of PTV, no significant differences were observed except D98 of PTV. The lung V5, V20 and Dmean were 45.6 ± 14.6%, 19.3 ± 8.1% and 10.0 ± 2.8%, in CRT, 64.5 ± 19.8%, 10.1 ± 4.4%, and 9.4 ± 2.6% in VMAT and 57. 3 ± 15.4%, 9.3 ± 4.2%, and 8.6 ± 2.4% in Hy-VMAT, respectively. The doses of lung except V5 were lower in Hy-VMAT. The Dmax of Spinal cord was lower in VMAT than in other plans. 【Conclusion】 Regarding the dosecoverage of the PTV, there was no significant difference except D98 of PTV in the three treatment techniques. The larger the size of PTV is, the greater the lung V5 trends to. VMAT and Hy-VMAT can decrease the volume of lung receiving high doses, but increase low doses to lung. In comparison to VMAT, Hy-VMAT is a useful scheme that decreases dose of lung. 座長:霜村康平(近畿大学医学部附属病院) 第1会場 36 核医学:SPECT・PET (演題番号36-40) 14:30-15:20 ドパミントランスポータシンチ グラフィ解析ソフトにおける角 度補正ツールの精度評価 Accuracy of the software for angle correct in dopamine transporter scintigraphy 37 座長:小川敦久(神戸市立医療センター中央市民病院) SPECTにおけるSUV定量解析の 基礎的検討 Fundamental study of SUV quantitative analysis in SPECT 天理よろづ相談所病院 放射線部 ○上村 健太・北村 一司・寺口 昌和 京都府立医科大学附属病院 放射線部 ○新居 健・堂本 宏志・清水 麻吏子・ 棚田 康友 【目的】 ドパミントランスポータシンチグラフィにお いては前交連上端―後交連下端結合線(以下 AC-PC)を画像再構成の基準線とすることが推 奨されているが,SPECT-CT像のみでAC-PCを 同定することは困難である.DatView (AZE VirtualPlace 隼 Ver.3)の角度補正ツールであ るAC-PC Assist(以下Assist )を用いることで, 容易かつ自動的にAC-PCの同定を行うことがで きると期待されている.今回はAssistの正確性 と再現性を検証した. 【方法】 当院で実施した臨床画像を後ろ向きに解析し た.正確性の検証として,Assistによる角度補 正画像と,MRIとSPECT-CTのFusion画像より AC-PCを同定した基準画像における,矢状断頭 尾方向の角度の差と,SBR値の差を求めた.再 現性の検証として,同一症例に対してのAssist を3回繰り返し,それぞれの補正結果について 矢状断頭尾方向角度とSBR値のばらつきを標準 偏差で評価した. 【結果】 正確性の検証の結果,基準画像とAssistとの 差は矢状断角度で平均-2.17度,SBR値で平均 0.24であった.SBR値に関しては目視による マニュアル補正と比較しても有意に差が小さ かった.再現性の検証の結果,角度のばらつき は平均すると4.65度だったものの最大では 24.4度であり,症例によってはばらつきの大 きい結果となった.SBR値のばらつきは小さ かった. 【結語】 AC-PC Assistは角度補正の正確性には優れ るものの,再現性が低いことが明らかになった. またSBR値にはいずれも影響はなかった. 【目的】 腫瘍の集積度を示すstandardized uptake value(以下,SUV)は放射性医薬品が均一に体 内に分布した場合の放射能濃度をSUV=1とし て,その何倍の放射能が集積しているかを示す 指標である.PETにおいて普及しているこの指 標をSPECTに適用できるソフトウエアを使用 するにあたって,放射性核種を均一に封入した プールファントムを用いて基礎的検討を行った. 【方法】 本ソフトウエアはウェルカウンターとガンマ カメラの校正をプラナーデータを用いて行うシ ステムである.Tc-99m,Tl-201,I-123, In-111の4核種について,ガンマカメラの感度 測定のためのプラスチック製の皿状の容器を用 いたプラナーデータと均一にRIを封入した プールファントムのSPECT/CTデータを収集し, 均一ファントムにおけるSUVを求めた.なお SPECTデータは散乱線補正,減弱補正,コリ メータ開口補正を行った.算出されたSUVにつ いて,核種ごとに感度測定における散乱線補正 の有無とSUVについて検討した. 【結果】 均一ファントムにおけるSUVはTc-99mでは 1.15,Tl-201では1.16,I-123では0.99,In111では1.01であった.また感度測定におけ る散乱線補正の有無はTc-99m,Tl-201,In111では散乱線補正無しを,I-123は散乱線補 正有りを用いる方が理論値のSUV=1に近かっ た. 【まとめ】 本ソフトウエアを用いることにより, SPECTにおいてもSUV値が算出できる可能性 が示唆された. 第1会場 38 核医学:SPECT・PET (演題番号36-40) 14:30-15:20 SPECT単体機を用いたSUVによ る定量解析の基礎的検討 A fundamental study of quantitative analysis for SUV using SPECT without CT 39 座長:小川敦久(神戸市立医療センター中央市民病院) 性能の異なる装置による脳FDGPETの標準化 Harmonization of brain FDG-PET between different devices 姫路医療センター 診療放射線科 ○寺井 篤・藤崎 宏・喜田 真一郎・ 松下 朋弘・上田 梨菜・佐合 正義 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門 ○佐分 翔太朗・神谷 貴史・佐々木 秀隆・ 荻原 良太・上田 淳平・大串 岳・ 藤埜 浩一 【目的】 近年,SPECT/CT装置を用いたSUVによる定 量評価が普及しつつある.しかしSPECT/CT装 置を保有する施設は少なく,CT吸収補正を装 備していないSPECT単体機においても,SUV による定量評価が行えれば臨床的価値は高い. 今回,我々は,SPECT単体機を用いたSUV による定量解析の基礎的検討を行った. 【方法】 NEMA Body Phantomを用いてHot球:B.G. が4:1等となるように線源(Tc-99m)を封入し, 装置E.CAM(東芝)を用い,当センター骨 SPECT臨床使用条件(180度非円軌道連続収集, 30view,12sec/view)にて撮像を行った.再 構成も臨床使用条件(3D-OSEM,吸収補正な し)とし,定量解析ソフトウエアGI-BONE (AZE)を使用して,各球のSUVを算出した. VOI設定はThreshold40%手動で行い,また, 再構成条件(Iteration,Subset,Butterworth フィルタ)の変更によるSUVの変動を確認し, 比較検討を行った. 【結果】 Hot球:B.G.が4:1における実験では, 37mm Hot球 のSUVmaxは,2.32程度となり, 真値4に対し約40%の過小評価となった.以下 のHot球も吸収減弱および部分容積効果による 過小評価が認められ,13mm以下のHot球は検 出できなかった.また,再構成条件の変更によ り37mmHot球 のSUVmaxは0.9~3.6程度に 変化した. 【結論】 SPECT単体機におけるSUVによる定量解析 値と真値の差異を把握することができ,定量評 価の可能性が示唆された. 【目的】 当院では現在,non-TOF装置で脳FDG-PET の撮像を行っているが,TOF補正が可能な装置 の導入により標準化を行う必要がある.本研究 の目的は脳FDG-PETに関して収集条件,画像 再構成条件などの標準化を行うことである. 【方法】 収集装置は島津社製Eminence,GE社製 Discovery 710(D710)である.ファントムに はHoffman 3D Brain phantom,pool phantomおよびBrain Tumor phantomを用 いた. ファントム実験においてD710でのエ ミッション収集開始時間に基準放射能濃度とな るようF-18を封入し,収集を行った. Eminenceのエミッション収集は収集開始時間 の差によるF-18の減衰を考慮して収集時間の 補正を行った.現在のEminenceにおける脳 FDG-PETの臨床条件と比較し,D710で得られ た画質が同等となる条件の検討を行った. 【結果】 Pool phantomの実験においてEminenceで はエミッション収集時間12分の変動係数 (C.V.)の値が6.2%であった.D710では収 集時間12分,画像再構成条件subset= 8, iteration= 6,Gaussian Filter= 2 mmのとき C.V.=6.3%が得られ,Eminenceとほぼ同値 が得られた. 【結論】 当院の脳FDG-PETに関して,標準化を行う ことができた. 第1会場 核医学:SPECT・PET (演題番号36-40) 14:30-15:20 11C-Cholineを用いた前立腺 40 PET/CT撮像における再構成条件 の検討 Study of the reconstruction conditions in prostate PET/CT imaging using a 11Ccholine 兵庫医科大学病院 放射線技術部 ○駒居 柚哉・榎 卓也・槌谷 達也・ 櫻井 大輔・高橋 良幸・光家 千恵美 小田 雅彦・前田 善裕 【目的】 11C-CholinePET/CTは,前立腺がんや全身 の転移検索に有用であると言われており,昨年 の学術大会で,全身撮像における収集時間に関 する検討を報告した.今回,11C-Choline PET/CTにおける前立腺撮像の再構成条件につ いて検討したので報告する. 【方法】 PET/CT装置は,PHILIPS社製GEMINI TFを 使用した.NEMA IEC Body Phantomに,投 与10分後の撮像を想定し,投与量3.7MBq/kg の11C-Cholineを満たしたファントムを作成し た.再構成ボクセルサイズ(4mm,2mm)と緩 和係数(λ=1.0,0.7,0.6,0.5)を変化させ, リカバリー係数(以下,RC),ファントム画像 による10mmホット球の%コントラスト(以下, QH.10mm),%バックグラウンド変動性(以下, N10mm),%コントラストノイズ比(以下, QH.10mm/N10mm)の比較および視覚評価, 臨床画像による視覚評価を行った. 【結果】 緩和係数は,再構成ボクセルサイズが4mm ではλ=1.0が,2mmではλ=0.5が良好であっ た.RCは2mmが良好であった.QH.10mmは 2mmが良好で,N10mm, QH.10mm/N10mm及びファントム画像によ る視覚評価では4mmが良好であった.臨床画 像による視覚評価では,2mmを用いることで 前立腺部分の11C-Choline集積部の視認性が向 上した. 【結語】 前立腺撮像では,コントラストがより重視さ れるため,再構成ボクセルサイズは2mm,緩 和係数はλ=0.5が有用である. 座長:小川敦久(神戸市立医療センター中央市民病院) 第1会場 41 CT検査:逐次近似再構成(演題番号41-43) 15:20-15:50 逐次近似再構成法によるダーク バンドアーチファクト低減効果 の評価 Quantitative evaluation of dark band artifact reduction using iterative reconstruction on computed tomography images 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門 ○土谷 崇史・遠地 志太・佐藤 和彦 【目的】 X線CT装置において,新たな逐次近似を取り 入れた再構成法は,従来の再構成法に比べ,低 線量で高画質な画像の提供が可能となった.そ れゆえ,CT画像上に発生する様々なアーチ ファクトに対しても改善効果が期待できる.そ こで本研究では,上肢下垂位によって画像診断 の障害と成り得るダークバンドアーチファクト を対象として,画像再構成法が及ぼすアーチ ファクトの低減効果についてGumbel評価法を 用いて検討した. 【方法】 東芝社製CT装置Aquilion ONEに,人体ファ ントムを上肢下垂位で配置し,撮影条件 120kV,5~50mAsの下,ヘリカルスキャン を行った.その後,通常の再構成法であるFBP に加え,逐次近似を用いた再構成法である AIDR 3D,FIRSTによって画像を作成し,画 像上に発生したアーチファクトに対してCT値 プロファイルを80個取得した.このプロファ イル上の「背景領域からの最大変動量」をダー クバンドアーチファクトの特徴量として定義し, Gumbel評価法を用いて定量的に解析した. 【結果】 全ての再構成画像において,アーチファクト に起因する特徴量をGumbelプロットした結果, 高い相関関係が得られた.また,Gumbel分布 から算出される位置パラメータはmAs値の増 大と共に小さくなった.各再構成法で比較した 場合,低線量領域において位置パラメータの大 きさはFIRST<AIDR 3D<FBPとなり,視覚的 にもアーチファクトが低減する傾向がみられた. 以上の結果から,逐次近似再構成法FIRSTで, ダークバンドアーチファクトの低減効果が示さ れ,低線量撮影における有用性が明らかとなっ た. 42 座長:西田 崇(大阪府立急性期・総合医療センター) 逐次近似応用再構成法を用いた 内臓脂肪CT測定の基礎的検討 Basic consideration of fat CT measurement of iterative reconstruction 近畿大学医学部堺病院 放射線部 ○田川 翼・黒川 敏昭・兵藤 充・ 小野 芳文 【目的】 内臓脂肪CT測定においてFBP法および逐次 近似応用再構成法が脂肪測定に及ぼす影響に関 して,撮影線量との関係も含めて基礎的検討を 行う. 【方法】 CT装置はAquilion ONE(東芝メディカルシ ステムズ社)を使用した.肝臓ファントーム BLS形(京都科学社製)の肝臓部分をサラダ油で 満たし,その中に希釈造影剤(77HU)と砂糖水 (45HU)の管を配置した.肝臓周囲は水で満た し,脊椎を模擬した希釈造影剤(500HU)の円 柱容器を配置した.撮影条件は管電圧120kV, 管電流はVolume ECを用いて設定SD値を7か ら21まで変化させた.画像再構成はFBP法と AIDR3D(Weak/Mild/Standard/Strong)で 行った.各画像における脂肪部分の面積値およ びヒストグラム(FWHM)を算出した.脂肪, 希釈造影剤,砂糖水,水のCT値およびSD値を 計測した. 【結果・考察】 脂肪面積値は撮影線量が低くなるほどFBP法 では高値,AIDR3Dでは低値となる傾向を示 したが大きな差は認められなかった.脂肪面積 のヒストグラムは撮影線量が低くなるほど裾野 が広がった形状となり,FBP法よりもAIDR3D の方がFWHMは小さくシャープな形状となっ た.CT値は線量および再構成法による変動は 小さく,SD値は低線量ほどAIDR3Dによる低 減効果が大きくなった. 【結論】 内臓脂肪CT測定において,逐次近似応用再 構成法は被ばく低減に寄与できることが示唆さ れるが,撮影線量が低すぎると逐次近似応用再 構成法の強度によっては面積値が低くなるため, 撮影線量レベルに応じた再構成法の選択が必要 である. 第1会場 43 CT検査:逐次近似再構成(演題番号41-43) 15:20-15:50 CT画像を用いた標的体積計測に 与える画質の影響 Influence of target volume measurement on CT image quality 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門 ○田中 景子・遠地 志太・佐藤 和彦 大阪大学大学院医学系研究科 放射線統合医学講座 渡邉嘉之 【目的】 CT画像を用いた体積の測定は,臓器の機能 診断や治療の効果判定に有用である.しかし, その測定精度は画質の影響を受けるため,逐次 近似再構成法の登場以来,多様化するCT画像 への対応が求められている.そこで本研究では, 神経線維腫を対象として,中コントラスト領域 の腫瘍体積計測に与える画質の影響について基 礎的検討を行った. 【方法】 CT装置としてGE社製Discovery CT750 HD を使用した.この装置に,-100HU,200mm 径の基材に40HU,10mm径の球状構造の標的 を埋入した円柱状ファントムを配置し,撮影条 件120kV,CTDIvol 1.15~42.81mGyにて, ヘリカルスキャンを行った.その後,D-FOV :100mm,スライス厚:0.625mmに設定し, 3種の再構成法(FBP,ASiR,MBIR)により画 像を作成した.この画像から,装置付属のワー クステーションを用い,標的体積の測定を行っ た.体積の測定には閾値法を採用し,標的の内 部を含めた体積を求めた.さらに,測定された 標的体積とその表面体積から簡易的な球形度を 定義し,形状の再現性についても検討を行った. 【結果】 CTDIvol 10.69mGy以上において,全ての 再構成で標的体積は真値と同程度となり,球形 度も高く,形状の再現性の高さが推測された. 一方,5.34mGy以下ではCTDIvolの低下に伴 い,標的体積はMBIRと比較してFBP,ASiRが 真値より大きな値となった.また,球形度は MBIRでFBP,ASiRと比較して高くなった.以 上より,低線量領域の体積の測定において, MBIR画像の有用性が示唆された. 座長:西田 崇(大阪府立急性期・総合医療センター) 第2会場 44 X線検査:IVR・他 (演題番号44-48) CTガイド下IVRにおける術者 被ばく低減の基礎的検討 A fundamental study of operator exposure reduction for CT guided interventional procedures 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 ○山下 将宏・山口 和也・東 丈雄 放射線部門 【目的】 CTガイド下IVR,特に腎臓がんの凍結療法は 凍結針を複数本穿刺するため,CT透視時間の 増加が避けられず,術者被ばくがより課題の1 つとなる. 今回,我々はCT透視の撮影条件(以下,CT撮影 条件)を見直すことで,術者被ばくの低減と画 質の両立について検討を行った. 【方法】 使用装置はSIEMENS社製 SOMATOM Sensation Open ICTである.CT撮影条件は現 行の管電圧120kV,管電流時間積12mAsと管 電圧100kV,80kVにおける同等の線量となる 管電流時間積(100kV-20mAs,80kV-40m As)を設定した.体幹部ファントム(PBU-50, 京都科学)を用いて,各管電圧における①術者 位置での散乱線量の測定.②術者手指被ばく低 減機能(設定方向の±50度の管球位置からX線 を発生させずにCT透視する機能)を併用した場 合の術者位置での散乱線量の測定.③凍結針を 同ファントム体表面に配置して凍結針からの アーチファクトを評価した. 【結果】 ①術者位置の散乱線量は管電圧120kVに比べ, 100kVで約10%,管電圧80kVで約27%の低 減を認めた. ②管電圧120kV(術者手指被ばく低減機能 OFF)に比べ,100kV(同機能 ON)で術者位置 の散乱線量は約35%低減した. ③低電圧ほど凍結針からのアーチファクトが増 強したが,術者手指被ばく低減機能を併用する ことでアーチファクトの低減を認めた. 【結論】 術者被ばくの低減と画質の両立という観点か ら,CTガイド下IVRにおけるCT撮影条件は, 管電圧100kVで術者手指被ばく低減機能を併 用したものが有効である. 10:20-11:10 45 座長:高尾由範(大阪市立大学医学部附属病院) 被ばく線量の可視化に関する一 提案:CT画像を用いたX線照射 野のマッチング精度評価 A Method of exposure dose visualization: evaluation of matching accuracy of the X-ray radiation field with CT images 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門 ○荻原 良太・東 丈雄・日高 国幸・ 柳川 康洋・山口 和也 【目的】 血管造影・IVRの手技中にX線照射された部 位とその被ばく線量を正確に把握することは放 射線皮膚障害を防止する目的で重要である.C アームと寝台位置は手技中に絶えず変化するた め被ばく線量の測定は難しい.我々は実患者モ デルを反映した被ばく線量可視化の汎用自作プ ログラムの開発を試みている.本研究ではCT 画像から抽出した実患者モデルにおけるX線照 射野のマッチング精度を評価した. 【方法】 自作プログラムの開発にはImageJを使用し た.まず,寝台の高さ,視野サイズ,SIDを変 化させた時の照射野を明らかにするためにX線 不透過の定規の撮影画像からそれぞれの関係を 調べた.人体ファントム(PBU-50,京都科学) をCT撮影し血管撮影画像と重ねることで両画 像の座標を対応させた.Cアーム角度や装置条 件が表示されるモニタをビデオカメラで録画し, 録画データから各条件の経時変化を自動取得し 照射野を推定した.使用機器はToshiba Aquilion ONEおよびPhilips Allura Clarity FD20/20である.さらに,Cアーム角度と視野 サイズを変化させた時の実照射野と作成したX 線照射野のマッチング精度を位置のズレで評価 した. 【結果】 重相関分析よりX線照射野は寝台の高さ,視 野サイズ,SIDと強い相関があった(R=0.98). X線入射方向が正面の時の照射野は3軸方向と もに精度良く一致していたが,側面では寝台の 高さ方向に約2cmの乖離が見られた. 【結論】 自作プログラムによる実患者モデルの照射野 は,実際の照射野とマッチング精度が高くX線 照射部位を正確に把握できることが示唆された. 第2会場 46 X線検査:IVR・他 (演題番号44-48) 血管撮影装置に表示される空気 カーマ値と実測値における多施 設実態調査 Multicenter study on the accuracy of indicated air kerma by the angiography equipments 兵庫医科大学病院 放射線技術部 ○中野 伸哉・松本 一真・池内 陽子 友紘会 彩都友紘会病院 近畿大学医学部附属病院 福西 康修 川浪 亮太 関西労災病院 奈良県立医科大学附属病院 小林 潤 森田 展弘 【背景】 昨年,医療被ばく研究情報ネットワークから 日本初となる医療被ばくの診断参考レベル (Diagnostic Reference Level: DRL)が公表さ れた.今回のIVRにおけるDRLは,PMMA 20cmをファントムとした,患者照射基準点に おける透視線量率(mGy/min)が採用された. しかし,DRLの設定・見直しのための調査は継 続されており,IVRに関しては,実臨床におけ る血管撮影装置に表示される空気カーマ値(以 下装置表示値)を収集し,更新されることが考 えられる. 【目的】 IVRにおけるDRLの更新に,装置表示値が利 用されることを見据え,複数施設における血管 撮影装置の装置表示値と実測値の誤差及び,各 機器メーカーの校正方法を調査し,その問題点 について検討を行った. 【方法】 1.患者照射基準点に線量計を配置し,一定時 間照射した際の装置表示値と実測値を比較した. 2.各施設における各装置の校正方法について 調査した. 【結果】 対象とした施設における装置表示値と実測値 の誤差は,JIS規格で定められている±35%以 内であった.校正方法はメーカー間で異なり, 本来,患者照射基準点にて測定し校正されるべ き計測点も様々であった. 【考察】 装置表示値をDRLの更新に用いる場合,実測 値との誤差を把握し,係数を乗ずるなどの対策 が必要である.また,誤差を小さくするために は,メーカー間での校正方法を統一するなどの 対応が望まれる. 【結論】 血管撮影装置の装置表示値と実測値の誤差に ついての調査を多施設共同で行い,装置間,施 設間,機器メーカー間の誤差を把握することが できた. 10:20-11:10 47 座長:高尾由範(大阪市立大学医学部附属病院) オーバーチューブ型X線TV装置 に据えつけた鉛ガラス遮蔽板の 有用性 Usefulness of a lead glass for radiation protection which is attached with radiography/fluoroscopy system 天理よろづ相談所病院 放射線部 ○楠 聡介・東 慎之介・西岡 宏之・ 林 秀隆・錦 成郎 【目的】 当院でオーバーチューブ型TV装置を用いて 行うPICC(peripherally inserted central venous catheter:末梢挿入型中心静脈カテー テル)挿入術の件数は年々増加している.また, 眼の水晶体に対する被曝対策の重要性が近年指 摘されているが,PICC挿入術のような清潔下 検査で有効な防護方法として新たに遮蔽板の保 持を工夫した防護器具を考案した.今回はこの 防護器具の性能評価およびスタッフの作業への 影響や患者へ与える心理的影響などについて検 討したので報告する. 【方法】 寝台にアクリル(厚さ15cm)を配置し,PICC 挿入術時の透視条件下にて,防護器具使用時と 未使用時の空間線量を測定した.また,医師の 防護に対する意識,および防護器具が検査に与 える影響,患者に対する圧迫感や不快感などの 心理的影響について,同意の得られた医師・患 者を対象にアンケート調査した. 【結果・考察】 新たな防護器具を使用することで術者の水晶 体位置における空間線量を低減できた.医師の 防護に対する意識調査では,少ない被ばく線量 であっても防護を希望する意見が多く,防護 ゴーグルは重く不快感があるため,空間線量を 減少できる防護法を標準化してほしいという意 見もあった.また,防護器具が検査や視認性に 影響しないことと,患者が圧迫感や不快感を感 じていないことが確認できた.よって,本防護 器具は有用性が高いと考える. 第2会場 48 X線検査:IVR・他 (演題番号44-48) 脳卒中におけるdoor to puncture短縮に向けた取り組み Efforts to shorten "door to puncture time" in stroke 神戸市立医療センター中央市民病院 ○宇草 賢二 放射線技術部 【目的】 急性期脳梗塞を発症した場合一刻も早い再灌 流が必要とされているのは周知の事実であるが, 実際に超早期に再灌流療法を行っていくには脳 卒中診療に関わる各職種で緊密な協力体制をと ることが非常に重要となっている.当院では 2015年3月末より,これまで用いられてきた 脳卒中ホットラインのプロトコールを変更し, rt-PA静注もしくは血管内治療へより早期の導 入を目指して治療を行ってきた.本研究では当 院の脳卒中ホットライン症例において,来院か ら穿刺までの時間(door to puncture:D2P) の短縮にむけて技師としてどのような取り組み や工夫を行っているのかを,各所要時間ととも に検討,考察する. 【方法】 ホットラインのプロトコール改善以前の症例 30例(変更前群)と改善後55例(変更後群)に分 類し,比較検討した. 【結果】 プロトコール改善にあたって大きな変更点と なったのは,CT(A)の撮影とMRI撮影を短縮し ての治療への移行である.まず単純CTを撮影 し,出血所見等なければそのままCTAの撮影へ と移行するため,救急の撮影を行う技師全員に 対しCTA撮像のトレーニングを行った.また一 早く閉塞血管の確認を行うために,thin slice 画像を自動でワークステーションに転送,単純 とCTA画像をサブトラクションさせることで 3D画像による血管確認を撮影後短時間で行え るようになった.撮影範囲に関しても,内頚動 脈閉塞や大動脈解離による虚血の除外のため, 大動脈までの撮影としている.実際の所要時間 を比較するとD2Pは変更前101.5±38.5分から 変更後66.2±42.2分と短縮することに貢献し た. 10:20-11:10 座長:高尾由範(大阪市立大学医学部附属病院) MR検査:臨床 (演題番号49-52) 第2会場 49 3D 加算融合画像 (PDWI+T2WI)の膝関節におけ る有用性 Usefulness of 3D additional fusion image(PDWI+T2WI) that was created from dual echo 3D TSE in the knee joint 若弘会 ○土井 夏日 田中 座長:山谷裕哉(奈良県立医科大学附属病院) 11:10-11:50 若草第一病院 医療技術部 診療放射線課 賢悟・小野 充保・濵口 直・ 勇人・森田 光樹・山本 誠也・ 茂子・領家 幸治 【目的】 我々は3DTSE(VISTA)でPDWIとT2WIを同 時収集するDual Echo VISTA(DE-VISTA)撮像 条件の基礎的検討について発表してきた.今回 はDE-VISTA-PDWIとDE-VISTA-T2WIをボク セル毎に加算した3D isotropic volume data であるDE-VISTA additional fusion image (DE-VISTA-AFI)の膝関節軟骨検出能を検討す る. 【方法】 96例(男性48例女性48例平均年齢49歳)膝関 節軟骨と関節液,関節軟骨と脂肪組織とのコン トラスト比(CR)をDE-VISTA-AFI,DE-VISTA -PDWIと従来方法の2D-PDWI,脂肪抑制 T2*WIを比較した. 【結果】 関節液/関節軟骨CRは脂肪抑制T2*WI: 2.08(1.04-4.78),2D-PDWI:2.03(0.772.96),DE-VISTA-PDWI:1.58(1.05-2.71), DE-VISTA-AFI:2.74(1.19-11.9)で,DEVISTA-AFIは有意に高かった.(p<0.0001) 脂肪組織/関節軟骨CRは,DE-VISTAPDWI:2.23(1.52-3.28),DE-VISTA-AFI: 2.85(1.23-4.22)で,DE-VISTA-AFIはDEVISTA-PDWIに対して有意に高かった. (p<0.0001) 【結論】 DE-VISTA-AFIは従来法に比して関節液と関 節軟骨のCRが定量評価上良好だった.視覚的 にもMPR可能でDE-VISTA-AFIは膝関節軟骨損 傷の診断に優れている. 50 麻酔科による鎮静MRI検査の有 用性について Utility of MRI under sedation performed by anesthesiolosists 大阪市立総合医療センター 医療技術部 中央放射線部 ○宮嶋 郁実・池田 茂信・沢井 敦史・ 芝口 大介・久島 昌巳・逸見 正博・ 松村 幸雄・前田 知香 【背景・目的】 2013年にMRI検査時の鎮静に関する共同提 言が発表された.これはMRI検査のための鎮静 をより安全にするための基準であり,当院では 2015年5月より提言に沿った鎮静MRI検査の運 用を開始した.今回,運用開始より1年以上経 過し,安全基準の再確認および麻酔科による鎮 静MRI検査の有用性について検討したので報告 する. 【方法】 1.提言されている基準(A)必ずしなければな らない(25項目),(B)強く推奨する(21項目), (C)望ましい(10項目)について実施されている か確認した. 2.麻酔科による鎮静開始前の2014年5月~ 2015年4月と運用開始後の2015年5月~2016 年4月までを対象に鎮静MRIの件数を調べ,鎮 静方法を分類し,実施数と中止の割合を調べた. 【結果】 1.MRI検査時の鎮静に関する提言の項目につ いては,概ね実施されている. 2.麻酔科による鎮静開始前の2014年5月~ 2015年4月において鎮静を要した検査数は 1255件であり中止の割合は5.5%であった. 運用開始後の2015年5月~2016年4月におい て自科で行う鎮静の検査数は1134件であり中 止の割合は6.2%,麻酔科鎮静では検査数212 件のうち中止の割合は0.9%であった. 【考察】 MRI検査時の鎮静に関する提言の基準を満た すことで,より安全な環境での検査が可能と なった.また,麻酔科鎮静では安定した深い鎮 静にて患者を不動状態で維持することが可能で ある.これらにより,自科で行う鎮静よりも麻 酔科による鎮静では中止になる件数が減少した. したがって,麻酔科鎮静MRIの有用性が確認で きた. 第2会場 51 MR検査:臨床 (演題番号49-52) 座長:山谷裕哉(奈良県立医科大学附属病院) 11:10-11:50 造影TOF-MRAによる頭蓋内ステ ントの内腔描出能の基礎的検討 A preliminary study of the visibility of stent in cerebral vessels with Contrast Enhanced TOF – MRA 52 頭部角度が異なる際のASLPerfusionにおけるCBFの検討 Variation in cerebral blood flow measured using arterial spin labeling among different head positions 兵庫医科大学病院 放射線技術部 ○桐木 雅人・池田 崇・琴浦 規子・ 源 貴裕・城本 航・柴山 弘寛・ 松本 利浩・津田 恵美 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門 ○西村 真由子・小山 佳寛・垂脇 博之・ 幾嶋 洋一郎・橋渡 貴司 【目的】 当院では,脳動脈瘤に対する血管内治療後の 経過観察でTime of flight(TOF)-MRAを撮像し ている.ステント内腔の評価にはアーチファク トが伴うため,造影剤を使用している.今回, TOF-MRAにおける造影剤の有無による血管内 ステントの内腔描出能の変化をステントの種類 ごとに比較した. 【方法】 機器はSIEMENS社製MAGNETOM Skyra 3.0Tを使用した.模擬血管ファントムは血管 を模したストロー内に数種類のステント (Open-Cell,Closed-Cell)を留置し周囲を寒天 で固定し作成した.流体ファントムには水と希 釈造影剤を使用しそれぞれ TOF-MRAを撮像し た.撮像条件は臨床で用いている条件のうち TR,スライス厚,TE,バンド幅を変化させた. 各画像から模擬血管腔(ステント外)とステン ト内腔,寒天にROIをとり取得した信号値から Contrast Ratio(以下,CR)を算出した. 【結果・考察】 撮像条件を変えたときのステント内腔のCR の変化は,造影剤の有無に関わらず模擬血管内 腔とほぼ同様の傾向を示し造影剤によるCRの 上昇は低かった.またOpen-Cellのステント内 腔のCRはClosed-Cellよりも高い値を示した. これはステント構造の違いによるRFパルスの 遮断に起因すると考えられる.いずれのステン トにおいてもTEとバンド幅の違いによるCRの 変化はなかったことから,ステントからの金属 アーチファクトがステント内腔の信号強度に及 ぼす影響は少ないと考えられる. 【結語】 TOF-MRAによるステント内腔描出において, 造影による顕著な効果は得られなかった. 【背景】 Arterial Spin Labeling(ASL))は非造影にて 脳血流量 (Cerebral Blood Flow: CBF)を得る ことができる.しかし,MR装置によっては, ASLは横断面の撮像に限定され,さらに撮像範 囲に対して頸部のラベリング位置が固定される ため,撮像時の頭部角度に依存してCBFが変動 する可能性がある. 【目的】 本研究ではASL撮像時の頭部角度の違いによ るCBF の変化について検討した. 【方法】 本研究に同意を得た健常人を対象として頭部 角度を中間位(AC-PCラインを寝台に対して垂 直),前屈位,後屈位の3体位に変化させてASL を撮像し,CBF画像を作成した.前および中大 脳動脈領域に関心領域を設定しCBFを測定した. また,ラベリング位置の内頸動脈の角度を評価 するためにMR Angiographyを撮像し,各体位 における内頸動脈の角度を計測した.MR装置 はDiscovery 750 3.0T(GE社製)を使用した. 【結果と考察】 ASL撮像時の頭部角度の変化によってCBFに 変動が認められた.しかし,この変動の傾向は 被験者毎で異なり,頭部角度とCBFとの間には 明確な関係がなかった.この要因として,各被 験者の内頸動脈の解剖学的構造の相違が考えら れる.また,今回の検討には含まれていない項 目 (撮像時の開閉眼,覚醒入眠,歯科治療の有 無等) もCBFに影響を及ぼした可能性がある. 【結論】 今回の検討においてASL撮像時の頭部角度の 相違によってCBFが変化する可能性が示唆され た. 第2会場 53 CT検査:臨床応用 (演題番号53-56) 座長:関谷俊範(神戸大学医学部附属病院) 14:30-15:10 Dual Energy CTによる急性期 脳梗塞診断への有用性 Usefulness to the acute cerebral infarction diagnosis by Dual Energy CT 54 脚ブロック症例の冠動脈CTでの 静止位相の検討 Consideration of stationary phase at coronary CT by bundle-branch block case 近畿大学医学部附属病院 中央放射線部 ○服部 翔太 近畿大学医学部堺病院 北口 茂聖・橋本 直美・小野 芳文 名古屋大学大学院医学系研究科 今井 國治 愛仁会 ○三島 【目的】 Dual Energy CTがCT装置に搭載されてから, 肺梗塞や腎結石など様々な疾患の診断に用いら れてきたが,急性期脳梗塞の診断にDual Energy CTを使用したという報告はほとんどな い.我々は,Dual Energy CTを用いることで, 頭蓋骨によるビームハードニングが低減し,脳 梗塞病変の検出能が高くなると考え,今回 Dual Energy CTから得た仮想単色X線画像が 急性期脳梗塞の診断に有効であるか脳梗塞模擬 ファントムを用いて検証した. 【方法】 脳梗塞模擬ファントムを東芝メディカルシス テムズ社製CT:Aquilion OneでVolume撮影 (120kV,135kV)とDual Energy CT (80/135kV,100/135kV)の撮影を3回ずつ 行った.Dual Energy CTから得た仮想単色X 線画像のkeVを80~135keVと変化させて,最 もCNRが高くなる画像とVolume撮影画像の CNRを比較した.なお,ROIのばらつきを考慮 するためCT値とSDはGauss法により求めた. また,これらの画像を放射線技師5名による視 覚評価を行った. 【結果】 Dual Energy CTから得た仮想単色X線画像 のCNRは80/135kV・100/135kVともに 95keVあたりでピークとなった.このBest CNRの仮想単色X線画像とVolume撮影画像を 比較したところ,模擬梗塞部位で仮想単色X線 画像のCNRがVolume撮影より平均約20%高く なった.また,放射線技師による視覚評価でも 仮想単色X線画像の方が検出能が高く,有用で あると思われた. 【目的】 脚が障害されることで心室内伝導障害が起こ ることを脚ブロックという.伝導時間が延長す ることにより冠動脈CTで静止位相への影響が 考えられたため,静止位相が存在した症例の中 で脚ブロック症例とその他の症例の拡張中期で の静止位相を比較検討した. 【方法】 1.2016年2月~2016年9月にガントリ回転速 度275msにて拡張中期での撮影を行い,胸部 誘導データが存在した171例を対象とした. 2.診療放射線技師1名により右冠動脈起始部 から鋭縁部まで3等分した断面にて5ms間隔で 非分割ハーフ再構成を行い,その断面全てで静 止している位相の範囲を調べた. 3.QRS幅が100ms以上かつV5またはV6で結 節を伴うR波,これを左脚ブロックとした. QRS幅が100ms以上かつV1でrSR'波形,これ を右脚ブロックとした.その他をotherとした. 4.統計処理にはSteel-Dwassの多重比較検定 を用いた. 【結果】 静止位相が存在したのは左脚ブロックが5例 中4例,右脚ブロックが14例中11例,otherが 152例中126例だった.曝射開始,終了の位相 で静止している症例は除外し,静止開始位相の 平均は相対値で左脚ブロックが75.1±0.9%, 右脚ブロックが74.5±2.2%,otherが 70.3±3.8%だった.左脚ブロックと右脚ブ ロックともにotherより遅れており,有意差が あった.静止終了位相の平均は相対値で左脚ブ ロックが78.0±2.4%,右脚ブロックが 77.2±2.1%,otherが76.7±3.3%だった.こ れらに有意差はなかった. 高槻病院 放射線診断科 綱太・伊澤 一郎・北田 直宏 CT検査:臨床応用 (演題番号53-56) 第2会場 CPRの精度の検討 55 56 Study of CPR of accuracy 座長:関谷俊範(神戸大学医学部附属病院) 14:30-15:10 CT colonographyにおける炭酸 ガス送気方法の比較:症例対象 研究 Comparison of CO2 insufflation methods for assessment of colonic dilatation: a case-control study 高清会 ○塚本 會下 高井病院 放射線科 岳夫・土`井 司・西久保 明弘 直嗣・ 【目的】 心臓CT検査における冠動脈の解析は,ワー クステーション技術の発展によってvolume rendering(VR)像やcurved planer reconstruction(CPR)像,slub maximum intensity projection(Slub MIP),stretched view多方向表示など比較的手軽に三次元画像 描出が可能になり,疾患部位の同定とその程度 が診療情報として容易に提供できるようになっ た.しかしながら,これには狭窄部位の分岐部 からの距離や狭窄程度の評価に利用するCPRや stretched viewの信頼性を確立しておく必要 がある.そこで今回我々は,三次元ワークス テーションで作成されたCPRの距離計測の正確 性について検討した. 【方法】 CPR処理した画像から測定する距離が正確な 距離を表示しているかを確かめるために,血管 を模したチューブ型ファントムに一定間隔で マーキングを施し,球形ファントムに屈曲させ て張り付けた.そのファントムを撮像面に対し て多方向からCT撮影を行いCPR画像を作成し た.そのCPR画像上のマーキング間距離と実際 のマーキング間距離と比較した. 【結果】 CPR上のマーキング間距離と実際のマーキン グ間距離を測定すると,2cmでは±約2.5%, 4cmならびに8cmでは±約1.5%の誤差があっ た.また,狭窄があると内腔部分を選んでCPR が作成されるので実距離よりも長く描出される 傾向があった.しかしながらステントは,18・ 24・32・38mmなどのサイズ長で販売されてい るのでこの誤差が大きく影響を及ぼすとは考え られない. 友紘会 ○上浦 彩都友紘会病院 放射線部 広太・上山 毅・福西 康修 【目的】 CT colonography(CTC)では腸管内圧が瞬 間的に140mmHg以上に達する場合,穿孔の 恐れが報告されているため,設定圧は十分に低 い20mmHg以下が推奨されている.しかし 20mmHgの設定圧では腸管の拡張不足が多く みられ,再撮影を多く経験した.また近年の自 動送気装置は閾値圧に達すると,一時的に外部 に炭酸ガスを流し流量を調整することで圧力を 設定圧に保つ機能を有しており,25mmHgま での設定が可能となっている.そこで,本研究 では推奨圧よりも高い25mmHgにおいて腸管 の拡張の程度と再撮影の頻度を評価した. 【方法】 2013年9月より当院でCTCを施行した患者 110名(男性74名 女性36名)平均年齢60.2歳を 比較対象とした.炭酸ガス送気装置は根元杏林 堂社製KSC-130,CT装置はGE社製 Blightspeed Elite16,ワークステーションは GE社製Advantage Workstation Ver4.6 Colon VCARを使用した.検討項目は腸管拡張 度(大腸体積・平均断面積)と再撮率を推奨圧群 と25mmHg群で比較しstudent t検定(有意水 準:0.05)にて評価した. 【結果】 25mmHg群では推奨圧群に比べ大腸体積, 平均断面積ともに大きく有意差が認められた. また推奨圧群に比べ約30%の再撮率が減少し た.25mmHgは従来の推奨圧よりも高い設定 ではあったが,穿孔などの到底起こりうる条件 ではないと考えており,腸管の描出能が優れる 期待が示唆される.本研究では25mmHgの設 定圧において,良好な腸管の拡張と再撮率の減 少を示した. 第2会場 57 MR検査:臨床(腹部)(演題番号57-61) 前立腺癌および良性前立腺過形 成におけるADC値の分布と腫瘍 悪性度の関係 Relationship between ADC distribution and cancer grade at prostate cancer and benign prostatic hyperplasia 大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 医用物理工学講座 ○齋藤 茂芳 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 小山 佳寛・橋渡 貴司 放射線部門 【目的】 前立腺癌および良性前立腺過形成おいて ADC値ヒストグラム解析と組織生検から得た グリソンスコア・腫瘍悪性度との関係を比較検 討した. 【方法】 対象は平成26年3月1日から平成28年6月1日 までに前立腺癌疑いでMRIを施行した58名70 腫瘍とした.前立腺組織針生検結果をもとに良 性前立腺過形成 2群(stromal hyperplasia (SH) 間質過形成 15名,glandular hyperplasia(GH)腺過形成 16名),Gleason scoreGS6 (7名),GS7(16名),GS8以上(16 名)の 5群に分け,ADC画像上に関心領域を設 定しヒストグラム解析を行った.平均値,中央 値,最小値,最大値,10,25,75,90パーセ ンタイル値の8つのパラメータを算出し多重比 較検定により群間の差,ROC解析で鑑別能評 価,GSと各パラメータとの相関を評価した. 【結果】 8つすべてのパラメータにおいてSHとGH, SHとGS8,GHとGS6 ~ 8,GS6とGS8, GS7とGS8との間で有意な差が確認され,他群 に比べGH群は有意に高値,GS8群は有意に低 値を示した.一方,GS6とGS7の比較において 10,25パーセントタイル値のみ有意な差が確 認され,パーセントタイル値の有用性が確認で きた.一方,SHとGS6,SHとGS7の比較おい て多重検定で有意差が見られず,ROC曲線下 面積が低値を示したことから,間質過形成SH と比較的悪性度の低い腫瘍の鑑別は困難と言え る.ADC値の分布を用いることで2種類の過形 成評価および前立腺癌腫瘍悪性度評価の可能性 を示した. 15:10-16:00 58 座長:城本 航(兵庫医科大学病院) 可変フリップ角3DTSE法を用い た女性骨盤T2強調撮像における パラメーターの最適化 Optimization of the parameters for female pelvis T2-weighted imaging with variable frip angle 3D TSE method 大阪府立急性期・総合医療センター 医療技術部 放射線部門 ○倉田 省吾・西山 大輔・清水 隆一・ 船橋 正夫 【目的】 骨盤用3DView法では,ViewMode,可変 Reforcusの最小Flip角(RFA),Reference組織 の設定によりSweepPattern及び equivalentTE(epTE)の調整が可能となった. 今回,各条件の設定による子宮内T2コントラ ストの至適条件を検討した. 【方法】 1.5Tにおける子宮内3層それぞれに近似した T1,T2値を持つファントムを作成し,それら についてViewMode,RFA,Reference組織を 変化させ撮像した.得られた各層のCNRから 至適条件を求めた. 【結果】 各ViewModeでは汎用骨盤用に比べ女性骨盤 用の方が高いCNRを示した.各ViewModeによ るeqTEの変化はなかった.しかし,RFAの増 加に伴いeqTEは延長した.CNRも同様に上昇 したが,RFA=80°以降大きな上昇は見られな かった.またReference組織のT2値を長く設 定するほどプリセット条件のFemalePelvisと 比較しeqTEは延長し,CNRは低下した. 【考察】 女性骨盤用のViewModeではよりT2コント ラストのつくSweepがされていると考える. RFAの増加によるCNRの上昇は,信号の増加と eqTEの延長によるT2コントラストの向上が寄 与したためと考える.また,80°以降のRFAで CNRの上昇が妨げられたのはMT効果の影響, eqTEの延長による信号低下と考える.長いT2 値の入力によるCNRの低下は同様にeqTEの延 長による信号低下が主な要因と考える. 【結語】 ViewModeは女性骨盤,RFAは80°, Reference組織はFemalePelvisが至適条件と なった. 第2会場 59 MR検査:臨床(腹部)(演題番号57-61) 女性骨盤T1強調画像に対する体 動補正法を用いた画像の検討 Examination of the image using the body motion correction method for the T1 weighted image about women`s pelvis 15:10-16:00 60 座長:城本 航(兵庫医科大学病院) 3.0T MRIを用いた肝血管種にお ける最適Inversion Timeの基礎 検討 Study of optimum Inversion Time in hepatic hemangioma with 3.0T MRI 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 ○財家 俊幸・木村 大輔・山本 恭仙・ 矢菅 葵・奈良澤 昌伸・山田 英司・ 東田 満治・市田 隆雄 大阪市立大学附属病院 中央放射線部 ○松井 大易・木村 大輔・竹森 大智・ 財家 俊幸・矢菅 葵・山田 英司・ 東田 満治・市田 隆雄 【目的】 当院では定時外に女性骨盤を中心とした時間 外MRI撮像を行っている.その際,腸管の蠕動 運動抑制剤(抗コリン剤)を投与せず撮像を行う 為,腸管の蠕動や呼吸性運動によるモーション アーチファクトが問題となる.今回,我々は時 間外MRI撮像におけるT1強調画像に体動補正 法を用いて画質向上を試みたので報告する. 【方法】 使用機器はPhilips社製Ingenia3.0Tで受信コ イルはds – Torso Coilを用いた.子宮筋層と 内膜のT1値を模擬する為,ボースデルと生理 食塩水の混合物をスピッツに充填し,その周囲 をピーナッツオイルで満たした自作ファントム を作成した.次に,自作ファントムを血圧計の カフの上に配置して,カフを拡張・収縮させな がらファントムを並進および回転運動させなが ら撮像を行った.検討項目はリフォーカシング アングルとk空間収集割合で,それぞれ 「30~150°」,「150~300%」に変化させて 撮像した.得られた画像と静止状態のT1強調 画像(基準画像)に対して,視覚評価を行った. 【結果】 基準画像のコントラストに近いのは,リ フォーカシングアングルを50~70°程度にした 画像であった.また,一番アーチファクトの目 立たない画像は,K空間収集割合を300%にし た画像であった. 【結語】 女性骨盤撮像におけるモーションアーチファ クトに対して体動補正法を用いてT1強調画像 の画質向上を試みた.体動補正法のリフォーカ シングアングルは30~50°,K空間収集割合は 300%にすることでモーションアーチファクト の影響を低減でき,良好な画像コントラストが 得られる可能性が示唆された. 【背景・目的】 肝疾患における良性腫瘍の中でも血管種は最 も頻度が高く,無症状であれば治療の必要性は 無い事から,非侵襲的に診断できる画像検査の 役割は大きい.Atmanらは,1.5TMRI装置を 用いて肝血管種と肝嚢胞を鑑別する為, Inversion Recovery (IR)法により肝血管種の null pointを用いて良好な結果を得ている.し かし,3.0TMRI装置において肝血管種の最適 なInversion Time(TI)の報告は無い.今回, 我々は3.0TMRI装置における肝血管種の Inversion Timeの基礎検討を行った. 【方法】 使用機器と使用コイルはIngenia3.0T (Philips)・ds - Torso Coilを用いた.90-401 型ファントム内に肝血管種のT1値に模擬した ボースデルと生理食塩水の混合液のスピッツを 封入した.ファントムに対して,TRを最短~ 5000ms,TIを400~800msまで変化させて, 肝血管種と肝実質を模擬した試料のコントラス トを比較した. 【結果】 TRは長くするほど,肝血管種と肝実質との コントラスト差が大きくなり,バラツキも少な くなった.TIは600~700msでコントラスト が高くなった. 【結語】 3.0TMRIにおける肝血管種のTIは600~ 700msで肝実質との良好なコントラストが得 られる可能性が示唆された. 第2会場 61 MR検査:臨床(腹部)(演題番号57-61) 3T 腹部MRI撮像における息止め 画像の画質改善について For image quality improvement of breath-hold image in 3T abdominal MRI imaging 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 ○山本 恭仙・木村 大輔・竹森 大智・ 山田 英司・東田 満治・市田 隆雄 【背景・目的】 腹部領域におけるMRI撮像では,短時間で T2強調画像が得られる撮像法としてHalffourier Single-shot Turbo spin Echo (HASTE) と呼ばれる技術がある.従来,この 技術は呼吸停止下での撮像を目的として設定パ ラメーターが調整される.しかし,臨床症例に て設定パラメーターの違いによる画像コントラ ストの変化を経験した. そこで,今回我々はコントラストファントム を用いてHASTEにおける撮像パラメーターの 最適化を行った. 【方法】 MRI装置はPhilips社製Ingenia 3Tを使用し, 受信コイルはds Torso Coilを使用した.撮像 対象は90-401型MRIファントムで,脂肪・脳 脊髄液・肝臓・悪性腫瘍を想定した自作ファン トムを作成し,TR:5000msecを基準として 最短時間~1500msecまで変化させてDRIVE 無し・有りをそれぞれ撮像した.得られた画像 の各試料に50mm2以上のROIを置き,各試料 と肝臓とのCNRを比較した. 【結果・考察】 各資料と肝臓のCNRはTRが延びるほど変化 が見られた.純粋なT2強調コントラストをも つと考えられるTR:5000msecのCNRと同様の 傾向が認められたTRは,DRIVEの有無に関係 なくTR:1400msec~1500msecとなった. 【結語】 腹部3T MRIにおける息止めHASTE画像にお いてTRを1400~1500msecに設定すると画像 コントラストが改善されることが示唆された. 15:10-16:00 座長:城本 航(兵庫医科大学病院) 第3会場 X線撮影:撮影(技術・他) ・超音波・骨塩 (演題番号62-68) 62 Exposure Indexを用いた臨床 画像での画質管理の試み Attempt of quality management in the clinical image by Exposure Index 10:20-11:30 63 座長:中前光弘(奈良県立医科大学附属病院) 甲山精二 (神戸大学医学部附属病院) オフセンターグリッドの有用性 についての検討 Study of the usefulness of the off center grid 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 ○石橋 舞・奈良澤 昌伸・阪井 裕治・ 有田 圭吾・吉田 麻弥・高尾 由範・ 久住 謙一・岸本 健治 大阪市立総合医療センター 医療技術部 中央放射線部 ○堀山 貴史・番所 久彦・伊泉 哲雄・ 竹綱 猛・宮嶋 郁実・八木 祥子・ 工藤 ゆか 【背景・目的】 Exposure Index:EIは,国際電気標準会議が 提唱する検出器入射線量の指標であり,目標線 量指標target EI:EITとの偏差指標である Deviation Index:DIと共に画質管理の指標と なることが期待されている.今回,EIおよび DIを用いて当院の現状把握を行うとともに, これらを用いた画質の管理が可能か検討したの で報告する. 【方法】 Flat Panel Detector:FPDシステムはコニカ ミノルタ社製Aero DRを用いた.対象は自動露 出機構(AEC)を用いた胸部立位正面・側面像, 腰椎臥位正面・側面像とAECを用いない頸椎正 面・側面像,肩関節正面像とした.各部位100 例の臨床画像の平均EIをEIT と定義した.さら に各画像のEIおよびEITを用いてDIを算出し, 米国医学物理会議(AAPM)に提唱される管理幅 (-3<DI<3)ならびに当施設の目標とする管理 幅(-1<DI<1)と比較した. 【結果・考察】 管理幅(-3<DI<3)には,すべての部位にお いて95%以上が含まれた.管理幅(-1<DI<1) には,AECを用いた胸部正面:90%,胸部側面 :62%,腰椎正面:89%,腰椎側面:69%, AECを用いない頸椎正面:59%,頸椎側面: 65%,肩関節:50%が含まれた. AECを用いた 部位ではAECの精度によりDIの変動が小さく, AECを用いない部位では被写体厚に合った撮影 条件で撮影できておらずDIの変動が大きく なったと考える. 【結論】 EIおよびDIを用いて当院の現状把握を行い, DIを用いた画質の管理が可能である可能性が 示唆された. 【背景】 当センターではTHA(全人工股関節置換術)の ルーチン撮影に股関節軸位像を撮影している. 長いステムの場合に現状の四切サイズではステ ム先端が欠損して再撮影することも少なくない. 今回,当センターではグリッド中心をずらした 17×17インチ用グリッド(以下オフセンターグ リッド)を特注し導入した.このグリッドによ りカットオフが生じることなく大きいサイズで の撮影が可能になると考えられ,再撮影の減少 を期待している. 【目的】 オフセンターグリッドの画質を評価しその有 用性を検討する. 【方法】 オフセンターグリッドを使用して撮影した画 像と,従来の17×17インチ用グリッドでオフ センターグリッドと同一の入射点で撮影した画 像について比較した.それぞれの画像から鮮鋭 性,粒状性,IQFinv.による物理評価と骨盤 ファントムによる視覚評価を行った. 【結果】 鮮鋭性はほぼ同等の結果であったが,粒状性, IQFinv.,視覚評価は従来グリッド画像よりも オフセンターグリッド画像が高い結果となった. 【考察】 グリッド中心と入射点が異なった従来グリッ ド画像ではカットオフが生じて粒状性, IQFinv.,視覚評価が低い評価となった.一方, オフセンターグリッド画像ではグリッド中心と 股関節軸位像を想定した入射点がほぼ同じ高さ であるため,カットオフが生じず高い評価が得 られたと考えられる. 【結論】 オフセンターグリッドを使用することで,高 い画質を担保しながら17インチでの股関節軸 位像を得られることがわかった.この結果より ステムの長いTHA患者における股関節軸位像の 再撮影が減少できることが示唆された. 第3会場 X線撮影:撮影(技術・他) ・超音波・骨塩 (演題番号62-68) 64 乳幼児胸部撮影における撮影 条件の検討 -グリッドの必要性についてStudy of expose condition for chest radiography in infants-necessity of Grid 10:20-11:30 65 座長:中前光弘(奈良県立医科大学附属病院) 甲山精二 (神戸大学医学部附属病院) 膝関節における超低周波強調 処理によるコントラスト改善 効果について Physical evaluation of extremely-lowspacial-frequency image processing in examination of knee joint 大阪府立母子保健総合医療センター 放射線科 ○西尾 優介・厚東 大智・狩野 智之・ 福岡 恵里佳・西村 健太郎・島田 真・ 阿部 修二・横井 章容 奈良県立医科大学附属病院 中央放射線部 ○間井 良将・中前 光弘・宮島 祐介・ 下口 翼 富士フイルム株式会社 高橋 知幸 富士フイルムメディカル株式会社 網本 直也 【目的】 当センターの乳幼児胸部撮影は,75kV, 1.8mAs,150cmグリッド(集束距離150cm, グリッド比8:1,line rate40/cm,カーボン 製)を用いて撮影を行っている.しかし,乳幼 児の体格では,散乱線による画質への影響は小 さいと考えられる.そこで,グリッドを使用し ない方が,撮影線量を低減できるため有用では ないかと考えられた. 本研究では,乳幼児胸部撮影のグリッドの使 用について検討を行った. 【方法】 ファントムは1歳児を想定し,タフウォー ター(実質部)と発泡スチロール(空気層)を組み 合わせ,肺野は実質部を3cm,空気層を10cm とし,縦隔は実質部のみで13cmとした.散乱 線含有率の測定には,鉛ディスク法を用いた. 肺野を想定した高コントラスト分解能の視覚評 価はハウレットチャートを,縦隔部を想定した 低コントラスト分解能の視覚評価はバーガーズ ファントムを用いた.視覚的評価により Image Quality Figure(IQF)を求めた.撮影条 件は.日常撮影条件の75kV, 1.8mAs, 150cm(+),および同等の線量となる75kV, 1.1mAs,150cm(-),また比較のために同等 の線量になる病室撮影条件50kV,4.0mAs, 100cm(-)で行った. 【結果】 散乱線含有率は,50kVと75kVのグリッド (-)では肺野部,縦隔部ともに,同等の含有率 となった.グリッド(+)は約30%少なかった. 肺野部の視覚評価は,グリッドの有無に関わら ず同等の評価となった.縦隔部の視覚評価は, グリッド(+)の方が優れていた. 【目的】 一般X線撮影のディジタル化に伴い,様々な 画像処理が開発され,画像の視認性を向上させ る技術が普及している.しかし,骨構造の重な りや骨硬化の程度,Total Knee Arthroplasty (TKA)等の医療人工物の存在によって,従来の 処理では安定的に骨構造を描出する事が困難な 場合が少なくない.そこで今回,従来よりも低 い周波数帯域から強調できる新しい画像処理 (新処理)が開発され,骨構造の視認性改善が期 待される.本研究の目的は,CD−RADファン トムを用いてコントラストの改善効果を検証す ることである. 【方法】 膝関節を想定した10cmアクリルをCD-RAD ファントムに重ね,管電圧が50,60,70kV, 被写体透過後の検出器到達線量が0.25mRから 1.00mRとなる線量で撮影した.撮影には,X 線発生装置として島津製作所製RADspeed Pro, 検出器として富士フイルム製CALNEO MTを用 いた.従来処理画像と新処理画像に対し,メー カー推奨パラメータを適用し,解析ソフトを使 用してIQF-invを計測した.また,CD-RAD ファントムの直径と深さが8mmの穴の内外の 画素データに基づき,コントラストとCNRを 計測した. 【結果】 両処理において,管電圧によらずIQF-invと CNRは,到達線量が多いほど評価が高く,コ ントラストは到達線量にもよらず,ほぼ同じで あった.新処理は従来処理と比較して,IQFinvでは,やや高く,CNRでは3割程度,コン トラストでは5割を超えて向上した. 【結語】 新処理は骨構造が重なり合う膝関節を想定し たCD-RADファントムにおいて,コントラスト 改善効果が検証できた. 第3会場 X線撮影:撮影(技術・他) ・超音波・骨塩 (演題番号62-68) 66 超低周波強調処理による腰椎手 術における穿刺針の視認性向上 に関する検討 Investigation for visibility of needle in lumbar spine surgery by extremely low spatial frequency image processing 10:20-11:30 67 座長:中前光弘(奈良県立医科大学附属病院) 甲山精二 (神戸大学医学部附属病院) 超音波動画像における新たな 定量評価指標についての検討 A study of new quantitative analysis methods for image perception of ultrasound real-time pictures 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門 ○志賀 仁美・松澤 博明・廣瀬 慎一郎・ 高尾 友也・川本 清澄・藤埜 浩一 富士フイルムメディカル株式会社 網本 直也 富士フイルム株式会社 高橋 知幸 大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門 ○髙尾 友也 名古屋大学大学院 医学系研究科 医療技術学専攻 医用量子科学分野 島本 佳寿広・葛原 弘樹 名古屋大学 医学部保健学科 放射線技術科学専攻 飯田 直人・関根 優佳・森谷 大貴 【目的】 腰椎の手術において正確な椎体のラべリング を行うことは医療事故防止において重要である. その手法にX線撮影装置を用いて背部に穿刺し た注射針を撮影して行う方法があるが,腹臥位 で腰椎側面撮影を行うため画質が充分ではない. そこで穿刺針の視認性の向上を図るべく超低周 波強調処理(以下,ダイナミック処理)の活用を 試みた. 【方法】 FUJIFILM社製CR装置を用い,アクリル板の 間にCNR測定用ファントムを配置して撮影し た.18G針の半分をアクリル板に重ねて,受像 器面に対し垂直方向に傾き(0~20度)を変えて 撮影した.以上を,アクリル板厚(15~30cm) を変えて行った.得られたデータから従来のマ ルチ周波数処理(以下,従来処理)とダイナミッ ク処理の画像を作成し,ImageJを用いてCNR 算出,目視可能な穿刺針の長さ(視認長)の計測 を行った.また,穿刺針に直交したプロファイ ルカーブの最大及び最小値からコントラストを 算出し比較検討した. 【結果】 両処理ともにアクリル厚増加に伴いCNRは 低下するが,厚さに依らずダイナミック処理が 従来処理を上回った.穿刺針の全長計測では従 来処理は直接線領域の針を描出できず,ダイナ ミック処理の半分以下であった.アクリル透過 部分における視認長は針の傾きによる違いはな く,厚さ30cmにおいてダイナミック処理が従 来処理の2倍以上となった.コントラスト値は どのアクリル板の厚さにおいても従来処理に比 べダイナミック処理が2倍以上であった. 【結論】 ダイナミック処理は散乱線を多く含む画像や 直接線領域における画像に対しても視認性が向 上するため,術中椎体同定への活用が期待でき る. 【目的】 現在,超音波動画像を始めとした動画の医用 画像の評価に特化した解析方法は確立されてい ない.そこで本研究では,液晶モニタ(LCD)の リフレッシュレートに着目して,超音波動画像 における新たな定量指標について検討するとと もに,視覚評価観察実験においてリフレッシュ レートが観察者の視認性に与える影響を確認し た. 【方法】 超音波診断装置評価用ファントムの正円形 ターゲットを低輝度側から高輝度側にかけてプ ローブ走査することで,超音波動画像を作成し た.これを暗室環境でLCDに表示し,2種類の リフレッシュレート(60Hz,120Hz)で再生し た.再生画面をデジタルカメラの動画モード (30fps)で撮影し,収集した動画像を1フレー ム毎の静止画像に分解した.この際,分解画像 内にある低輝度円形ターゲットの形状を定量評 価の指標として採用し,その円形度を算出した. さらに,超音波動画像の円形ターゲットの動き を視覚的に観察し,観察者がターゲットの移動 を視認するまでの反応時間を測定した. 【結果】 低輝度ターゲットの円形度は60Hzで0.61, 120Hzで0.77となり,120Hzの方が形状を正 確に表示できることが明らかになった (p=0.000).視覚評価観察実験において,同 一観察者での平均反応時間は,120Hzの方が 60Hzよりも約0.002秒短かった. 【結論】 今回定量指標に採用した円形度は,形状を正 しく表示できるかにおいて有用な検討項目であ ることが示唆された. 第3会場 X線撮影:撮影(技術・他) ・超音波・骨塩 (演題番号62-68) 68 人工肩関節骨密度測定における アーチファクトの原因と対策 Cause and countermeasure of artifact within measurement of bone mineral density at total shoulder arthroplasty 奈良県立医科大学附属病院 中央放射線部 ○山本 恭子・田邊 真理奈・中前 光弘 【背景】 整形外科医より人工肩関節の術後経過を骨密 度で評価したいとの要望があった.過去の研究 から,体厚に適した撮影モードとしてハンド モードを採用していたが,臨床画像に段差状の ズレ(アーチファクト)が生じることがあった. 【目的】 アーチファクトの原因を究明し,骨密度値の 測定誤差を最小限に抑える対策を検討する. 【方法】 骨密度測定装置は,GE社のPROGIDY ADVANCEを使用した.骨密度値が 1.254g/cm3と既知で許容範囲が±2%の腰椎 ファントムの上に,ポリ容器に入れた水 (8.5cm)を乗せ,ハンドモード(Hm),腰椎低 体厚モード(Lm),人工股関節低体厚モード (THAm)で測定した.また,各モードで寝台腰椎ファントム間距離(距離)を0cmから1cm間 隔で離し,10cmまで測定した. 【結果】 Hmでは,距離が離れるにつれて骨密度値が 減少し,2cmで許容範囲から外れた.Lmでは, Hmよりも緩やかな減少傾向となり,5cmで許 容範囲から外れた.THAmでは,最も減少が緩 やかになり,10cmでも許容範囲から外れな かった.また,Hmでは距離が5cmでアーチ ファクトが出現したが,他モードでは確認でき なかった. 【考察】 今回使用した装置では,オーバーラップ計測 したデータの拡大率による誤差を画像再構成技 術にて修正している.したがって,測定部位の もつ特徴が測定モードと大幅に乖離する場合に, アーチファクトが出現すると考えられる.天板 と骨の距離が比較的近い部位(手や腰椎)の測定 モードを使用した場合には,骨密度値に修正誤 差の影響が大きく反映される. 【結語】 Hmにおけるアーチファクトの原因のひとつ は,距離だと解明できた.また,対策として最 もアーチファクトが少なく測定誤差の小さな THAmを使用することとした. 10:20-11:30 座長:中前光弘(奈良県立医科大学附属病院) 甲山精二 (神戸大学医学部附属病院) 第3会場 69 X線撮影:撮影(散乱線) (演題番号69-73) ディジタル散乱線補正処理を用 いた被曝線量低減に関する検討 Reduction of exposure dose for scatter correction technology using digital image processing 14:30-15:20 70 座長:岸本健治(大阪市立大学医学部附属病院) 散乱X線補正処理を用いた撮影 処理パラメータ変更による胸部 ポータブル撮影の画質評価 Image quality evaluation depending on the Scattered X-ray correction processing system for chest bedside radiography 市立岸和田市民病院 中央放射線部 ○角谷 隆介・木村 徹・武輪 里織・ 中島 直 市立岸和田市民病院 放射線科 藤澤 一朗 金沢大学 医薬保健研究域 保健学系 量子医療技術学講座 澁谷 孝行 兵庫医科大学病院 放射線技術部 ○藤井 亮輔・藤川 慶太・尾崎 隆男・ 藤田 知子・中村 満・杉田 敏幸・ 濱 康彦・琴浦 規子 【目的】 当院ではVirtual Grid(VG)とIntelligent Grid (IG)システムが導入された.今回はそれぞれの ディジタル散乱線補正処理を用いて胸部撮影時 の被曝線量低減が図れるかを検討した. 【方法】 アクリルファントム上に銅板を配置し,アク リルファントム厚を7~15cmに変化させ, SID100cm,80kV,1~8mAsの撮影条件でグ リッドあり(Regular Grid:RG)とグリッドなし (VGとIG処理)で撮影した.Image Jを用いて ROIを設定してContrast-to-Noise Ratio (CNR)を計測し,各撮影条件で測定した入射線 量からFigure of Merit(FOM)値を算出した. また,同条件で CDRADファントムを撮影し, Image Quality Figure(IQF)invを算出した. それぞれのCNR,FOM値,IQFinvについて臨 床撮影条件をリファレンスとして比較検討した. 【結果】 アクリル厚および撮影条件を変化させた際の CNR,FOM値は散乱線補正処理よりもRGの方 が高値となった. IQFinvはVGでリファレンス 条件の,約1/2以下の条件でもRGより高い値 となった.IGではアクリル7cm厚の場合のみ 従来の半分の撮影条件でもRGより高い値を示 した. 【結論】 VGとIGはアクリル厚に傾向が異なるが,約 1/2以下の線量でもRGと同等以上の画質を担 保でき,胸部撮影での被曝線量低減の可能性が 示唆された. 【目的】 当院の胸部ポータブル撮影では,散乱X線補 正処理によりノングリッドでグリッド使用時と 同等の画質が得られるコニカミノルタ製 Intelligent grid(以下:IG)を使用している.IG は撮影処理パラメータ(設定管電圧・グリッド 比)を変更可能である.今回,IG撮影処理パラ メータ及び撮影管電圧を変更した場合の画質評 価を行い比較した. 【方法】 アクリル板及びアクリルステップでFPDに到 達する線量を一定とし,設定管電圧を70kVか ら90kV,設定グリッド比を3:1,6:1,8:1と 変化させて, CNR,コントラストなど物理特性 を測定した.さらに,鉛ディスク法を用いて散 乱線含有率を測定した.また,肺野ファントム (PBU-SS-2型)を用いて,照射線量を一定とし, グリッド比及び撮影管電圧(設定管電圧から ±10kV)変化させた場合の肺野と気管支,縦隔 と気管のコントラストとCNRを測定した. 【結果】 散乱線含有率は高グリッド比ほど減少した. アクリルステップ,肺野ファントムを用いた評 価は高グリッド比になるほどコントラストがよ くなったが,CNRには大きな差は見られな かった.撮影管電圧は,高くなるほどコントラ ストは僅かに減少したが,CNRは向上した. 肺野ファントムでは,設定管電圧と撮影管電圧 の不一致によるコントラスト及びCNRの差は 見られなかった. 【考察】 90kVでFPDの感度特性が良くなるため,ア クリルステップ,肺野ファントムのCNRが向 上したと考えられる.設定管電圧と撮影管電圧 の不一致によるコントラスト及びCNRの差が 見られなかったのは,FPDに到達する線量の差 が僅かだったためと考えられる. 第3会場 71 X線撮影:撮影(散乱線) (演題番号69-73) ディジタル散乱線除去処理を用 いた胸部ポータブル画像におけ る撮影条件の検討 Study of exposure conditions with digital scattered x-ray removal proceeding in portable chest images 14:30-15:20 72 座長:岸本健治(大阪市立大学医学部附属病院) 散乱線除去処理における中間物 質の選択が画質に及ぼす影響 The effects on image quality caused by interspace materials in the use of digital scattered X-ray removal processing 大阪府立急性期・総合医療センター 医療技術部 放射線部門 ○中前 仁志・樫山 和幸・榎本 善文・ 中邑 友美・松浦 義弘・船橋 正夫 富士フィルム株式会社 メディカル事業部 岩木 健 富士フィルム株式会社 MS部 網本 直也 大阪府立成人病センター 放射線診断科 ○小林 正弥・伊泉 哲太・山根 康彦・ 川眞田 実・坂元 彩乃・岡本 英明 【目的】 近年,胸腹部領域においてディジタル画像処 理の手法を用いた散乱線除去処理(以後Virtual Grid:VG処理と表記)が発表され,当センター でも用いられている.今回,胸部画像における VG処理の撮影条件を検討したので報告する. 【方法】 胸部ファントムを用いてSIDを110cm一定 とし,管電圧を70~100kvまで10kVずつ4段 階に変化,撮影線量は0.5~12mAsの間で16 段階に変化させて撮影した.撮影した画像に対 し,VG処理の仮想格子比は3:1,6:1,8:1, 10:1の4段階で処理を行い,試料を作成した. 得られた試料に対して,肺野部と縦隔部にROI を設定し,コントラスト,SD,CNRをそれぞ れ計測した. 【結果】 管電圧が高くなるに従ってコントラストは低 下し,同一管電圧においては,VG処理の仮想 格子比が大きいほどコントラストは向上し, SDも増加する傾向であった. 管電圧およびVG処理の違いに関わらず,撮影 線量が増加するに従いCNRは向上したが,肺 野部ではVG3:1,縦隔部ではVG6:1以上の格 子比で高い値となる傾向であった. 【考察】 肺野部においては,高格子比のコントラスト 改善効果よりSD増加の影響が大きく,SDを抑 制できる低格子比においてCNRが高くなった と考えられる.しかし,縦隔部においては,管 電圧,被写体の厚み,SD変化の影響により, VG処理のコントラスト改善効果に影響を及ぼ したと考えられる.今後,臨床画像に適応する 上で,VG処理と撮影線量の最適化を図りたい と考える. 【背景・目的】 実グリッドにおいて中間物質をAlからFiber に変更した場合,撮影線量を低減することがで きる.また,散乱線除去処理であるVirtual Grid(以下,VG)においても中間物質の選択が 可能であり,実グリッドと同様にVGでも中間 物質を変更することで撮影線量を低減できるか 比較検討した. 【方法】 ①胸部を想定したアクリル9 cmに対して,実 グリッド(Al,Fiber),VG(Al,Fiber)を使用し てEDRをFixモードにて撮影を行った.得られ た画像に対してimageJを用い,NNPSを求め た.なお,グリッドは集束距離110 cmの8:1, 40本で統一した.NNPSの測定には二次元フー リエ変換法を採用した. ②アクリル9 cmの間にCDRADファントムを挟 み,方法①の条件下でEDRをSEMI-Xモードに して撮影を行った.得られた画像に対して CDRAD Analyserを用い,IQFinv.を求めた. 【結果】 ①NNPSはVG(Fiber),VG(Al),実グリッド (Fiber),実グリッド(Al)の順で良くなった. しかし,VG(Al,Fiber)では大きな差はみられ なかった. ②IQFinv.はVG(Al,Fiber)では同等の値とな り,実グリッド(Al)よりも高く,実グリッド (Fiber)よりも低い値となった. 【考察】 NNPS及びIQFinv.の結果から,VGでは中間 物質の違いによる影響が少なく,線量低減を安 易に行えない可能性がある. 第3会場 73 X線撮影:撮影(散乱線) (演題番号69-73) 散乱線補正処理は実グリッドを 上回っているか ~臨床画像での検証~ Does scatter correction exceed real grid at clinical images? 奈良県立医科大学附属病院 中央放射線部 ○下口 翼・間井 良将・中前 光弘 【目的】 散乱線補正処理(Virtual Grid;VG)が商品化 され,先行的にファントム評価を行ってきたが, 臨床画像における評価は行えていない.そこで 今回,VGはグリッド(RG)と同様に使用が可能 なのか,臨床画像を用いて比較検討した. 【方法】 評価画像は,富士フイルム社製FPD CALNEO Cにて,2014年6月1日から12月31 日の期間でVGまたはRGで撮影された胸部臨床 画像を用いた.一見して肺占拠性病変がない体 厚20±5㎝の患者からランダムに各10枚を選択 した.臨床評価は,京大法を用いた視覚評価に ておこなった.観察者は,経験年数3~23年の 診療放射線技師7名とし,試料をランダムに提 示し,同一条件下の2M白黒モニタにて評価を 行った.評価項目は,解剖学的評価7項目(肺野 部末梢側2か所,肺野部縦隔側2か所,縦隔部3 か所),物理学的評価3項目(粒状性,鮮鋭性, コントラスト)の計10項目で,それぞれを5段 階で評価し,各項目に重み付けをして総合評価 を100点とした.また,両者の撮影条件(kV, mAs),EI,S値,L値の比較も行った. 【結果】 VG,RGの順に総合評価69.7,72.1点,解 剖学的評価46.3,49.5点/70点,物理的評価 23.6,22.6点/30点となり有意な差は見られ なかった.また,VG,RGの順に平均80, 80.7kV,3.8,5.0mAs,L値2.4,2.3,S値 305,431,EI(中央値)560,474となり,EI においては大きなばらつきが見られた. 【結語】 今回の視覚評価と先行研究からVGはRGとほ ぼ同等の使用が可能であることが検証できた. 14:30-15:20 座長:岸本健治(大阪市立大学医学部附属病院)
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