2007 年度 社会医学フィールド実習 報告書 別冊 開業医の生活時間調査 医学生アンケート分析 2007 年 12 月 20 日 泉谷桜 大瀬琢也 伊勢由佳子 大竹玲子 中川嘉宏 村上義彦 ・フィールド実習報告会での発表と並行して、聴衆である医学生から以下のとおりのアンケートを取っ た。保険医協会のデータはあくまで現役医師のみを対象としたものであり、医学生の考えは反映されて いない。聴衆の意見は発表後の質問からあるていどくみ取れると思われるが、たかだか数人の限られた 人物のものに過ぎない。そこで、今回の発表を聞いてくれた聴衆から定量的なデータを集め、その結果 の分析を試みた。 アンケート 社会医学フィールド実習開業医の生活時間調査班 2007 年 12 月 12 日(水) 性別(男・女) 年齢(~25・26~30・31~40・41~50・51~) 1.将来開業したいですか。 yes no 2.将来進みたい診療科を1つ書いてください。 ( 科) 3.医師は私生活を犠牲にしてでも働くべきだと思いますか。 <発表前> yes no その理由があればお聞かせください。 ( ) yes <発表後> no その理由があればお聞かせください。 ( 4.自分自身は私生活を犠牲にしてでも働きますか。 ) yes no yes no 5.女性開業医の診療時間をこれ以上増やすことに賛成ですか。 その理由があればお聞かせください。 ( ご協力ありがとうございました。 ) アンケート結果 医学科4回生 女性 45 名、男性 45 名、他1名、計 91 名に以下のアンケート調査を行った。 性別 1 男性 女性 未記入 45 45 全体の年齢構成、男女別年齢構成は以下のグラフの通りで、20 代前半が圧倒的多数を占めている。 3 9 男性 年代 女性 年代 年代 2 3 9 1 6 2 25歳以下 25歳~30歳 31歳~40歳 未記入 25歳以下 25歳~30歳 31歳~40歳 未記入 25歳以下 25歳~30歳 31歳~40歳 未記入 7 32 70 38 開業したいという人とそうでない人は同じ人数であった。男女別にみると、男性のほうが開業志向をも っていることがわかる。 開業したいですか 女性 開業したいですか 男性開業したいですか 15 6 9 38 38 16 はい いいえ その他 はい いいえ その他 20 22 17 はい いいえ その他 開業希望者の目指す診療科は次に示す通りである。内科系が多いほかは、いろいろな科に分散している のがわかる。 開業希望者の診療科 内科系, 9 外科系, 3 未記入, 15 皮膚科, 2 精神科, 2 他, 38 麻酔科, 2 その他, 20 いいえ, 38 発表前に医師は私生活を犠牲にすべきと考えていた人は約4分の1で、男性のほうが女性より 10 人多 かった。 発表後に意見が変わった人は男性で目立った。男性では私生活を犠牲にすべきという問いに「いいえ」 であった人が減り、「その他」の人が増えた。迷った跡が覗える。 医師は私生活を犠牲にすべき(発表前) 女性 医師は私生活を犠牲にすべき(発表前) 3 男性 医師は私生活を犠牲にすべき(発表前) 6 22 3 16 はい いいえ その他 はい いいえ その他 はい いいえ 26 66 39 医師は私生活を犠牲にすべき(発表後) 7 女性 医師は私生活を犠牲にすべき(発表後) 20 5 7 15 はい いいえ その他 64 男性 医師は私生活を犠牲にすべき(発表後) はい いいえ その他 はい いいえ 40 23 はいと答えた人の理由 ・医師数が増えないなら仕方ない。ただある程度であって、全てを投げ打つ必要はない。 ・仕事が回らなくなる。 ・普通の仕事と同じくらいには。 ・国立大の学生は特に税金で育ててもらっているから、そのことは自覚すべき。 ・人の命がかかっているから ・それが日本における医師のあるべき姿だから。 ・給料が高いのでその分は働くべき。 ・私生活がヒマだから。働いていたほうが楽しそう。 いいえと答えた人の理由 ・家族まで不幸にするのは忍びない。 ・仕事は手段。 ・自分の健康が保たれていない状態で診察しては、患者に不利益がでる。 ・強要することはない。 ・家庭が 1 番大切。(~25女性、皮膚科志望) ・医師も私生活のための労働である。 ・私生活を犠牲にするには、今の社会では、楽しいことが回りにたくさんありすぎるから犠牲にできな いのではないか。 ・自己管理ができない人は、医師として失格だと思う。自分のことがちゃんとできた上で、患者のこと を考えるべきだ。 ・医師の労働条件悪くなると、医師を辞める人が増し、国民が安全に診察を受けられなくなる。 ・労働力不足を医師一人一人の労働時間を延長することでカバー使用という方針は間違っている。 ・国民は医師に求める負担の程度がわからないので、医師が積極的に国民と話し合うことで線引きすべ きだと思う。 はいと答えた人の理由で目立ったのは、ある程度は仕方ない、そういう仕事だからといった消極的な 理由であった。しかし、やる気に燃え、患者の命のためにという人も少なくなかった。 いいえと答えた人の理由で目立ったのは、医師も人間である、医師の QOL も大切だという意見であ った。中には、自分はやる気はあるが全員に強制すべきではないという考えの人もいた。 さまざまな意見がでていたが、いずれにしても、楽を求めたいという人は少ないといえる。また、 まだいろいろ悩み考えている段階であるように思われる。まだ4回生で、多くの人が 20 代前半で あるため、これからもっと考えが変わっていくかもしれない。 医師は私生活を犠牲にすべきという人が 20 人であったのに対し、自分自身が私生活を犠牲にして でも働くつもりでいる人は 30 人であった。そのうち、男性は 19 人であり、男性の働く意識の高さ が目立った。 自分自身は私生活を犠牲にしてでも働きますか 男性 自分自身は私生活を犠牲にしてでも働 きますか 女性 自分自身は私生活を犠牲にしてでも働 きますか 3 2 1 30 11 はい いいえ その他 はい いいえ その他 58 19 24 はい いいえ その他 33 私たちのテーマのひとつである、女性開業医の診療時間については、増やすべきと考えているひとは少 数派であることがわかった。 女性 女性開業医の診療時間をこれ以上増や すことに賛成ですか 女性開業医の診療時間をこれ以上増やすことに賛成ですか 7 男性 女性開業医の診療時間をこれ以上増 やすことに賛成ですか 19 4 14 はい いいえ その他 65 3 5 はい いいえ その他 はい いいえ その他 28 36 はいと答えた人の理由 ・男女平等と言われる以上は特別視するようなのは逆に失礼。 ・増やすというよりは、途中でやめる人に対するサポートシステムを確立して労働人口を増やしたらよ い。 ・問題は診療時間ではなく、女性特有の事情の時休みやすくするなどの工夫が必要。 ・必ずしも、女性が家庭にいないと家族崩壊するわけではない。夫や親の援助や国・制度のサポートに よって女性医師の働きやすい環境を早急に作って欲しい。 ・増やす余地があるならば増やすべき。 ・ただ、開業医に限るのは疑問。勤務医の形式で女性が短い時間だけ働けるようにすれば、今の勤務医 の過酷さを軽減させる助けにはなる。発表中の女医さんは一般的な例とは言えない。もっと時間に余裕 のある女医さん(離職者含め)に働きかけるべき。 ・育児休暇をとっても復帰しやすい状況を作るべき。 ・男女同権ではあるが同等ではない。 ・女性医師の活躍する場(科)が増加してきているから。 いいえと答えた人の理由 ・医師自体の労働時間が労働基準法をオーバーしている現状で、どんな医師も増やすべきでない。 ・忙しい女医さんの家事をサポートした上で、もっと働けるなら働いて欲しい。女性医師は医学部に入 った時点で一生働く覚悟を持つべき。1 人の医師を養成するのに 1 億くらいかかっている。国は育児に 対するサポートが足りなさすぎる。 ・今いる医師がこれ以上働くのではなく、医師の絶対数を増やして欲しい。 ・子供をきちんと育てたい。家庭を大切にしたい。 ・開業医の責任は個人の問題。 ・家事の問題では、理想論として男性にもっとグローバルスタンダードに近づいて欲しい。男性が家事 をしないことが問題なのではないか。男性医師は、女性医師と結婚するなら家事時間を半々にする腹を くくって欲しい。議論はそれからだ。 ・家庭での時間を確保するために、大きなリスクや出費を負って開業している人もいると思うので、そ の人達の診療時間を強引に増やすのは本末転倒だと思うから。 ・家庭は女性が内から守るもの。(~25女性、皮膚科志望) ・医師の数そのものが少ないから問題が起きているのであって、女性が働いていないからというわけで はないから。 ・外国の成功例等で良い医療システムを導入してみてはどうか。 女性にしかできないこと(育児など)もあるし、それによって離職が増えたり、診療時間が減るのは仕 方ない。 ・地域での協力を強固にする。 ・時間を増やすと女性医師が減るかもしれないから。 女性医師がかなりの割合を占めている中で、家庭と両立しない勤務を強いては離職が進み、さらに医師 不足が進むのではないか。 ・1 つの家庭で必要な家事時間は減らせない。 ここでは、男女差が出ており、男性のほうが、女性開業医の診療時間を増やしてほしいと感じているよ うだ。しかし、全体的にこの意見は少数派であり、女性の働きやすい環境が求められていることがわか る。 アンケート全体を通して伝わってきたのは、医学科4回生のやる気に満ちた気持ちであった。また、将 来のことを真剣に考え、どのように生きるべきかを模索しているものの、その答えが出せていない様子 もみられた。 以上
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