(G4‐63 三井‐1) G4‐63. 我が国におけるカーシェアリング事業の実態

(G4‐63 三井‐1)
G4‐63.
我が国におけるカーシェアリング事業の実態
三井
亨保
1.目的
近年、自動車利用の増加に伴い、大気汚染や CO2 排出量増加などの地球環境問題や都市の交通渋滞や
駐車場不足などの都市交通問題が発生している。これらの対策として、カーシェアリングが提案されて
おり、世界をはじめ、日本各地でも実験や事業が行われている。カーシェアリングの効果について、太
田 1) はEV等の低公害車を用いた自動車共同利用の環境上の効果は自明であり、通常の自動車を用いた
場合でも、従前に車を所有していた人の車による移動量は約 72%減少したスイスの例を紹介している。
また、我が国におけるカーシェアリング事業の実態を整理したものには八木らの研究 2) 等があるが、対
象事例は実験段階のものばかりで、研究例も少ないのが現状である。
を考えるため、実験段階から実用化を目指す段階の事業までを
含めた、我が国におけるカーシェアリング事業について調査・
各実施主体
2005年11月上旬
2005年11月下旬~12月中旬
郵送配布・郵送回収
事業規模、目的、
貸出方法、料金体系、
年間の収支状況、
自動車の稼働状況など
18/31
調査内容
分析し、これまでの事業の実態と問題点を把握する。
2.内容
回収数/配布数
研究対象と研究方法
3
7
(19%)
(43%)
研究対象は、我が国におけるカーシェアリング事業 31
例である。交通エコロジー・モビリティー財団のHP 3)、
アンケート調査(表1参照)及び E メールや電話でのヒ
アリング等でデータを収集した。
2.2
アンケート調査の概要
調査対象
配布日
回収日
調査方法
そこで、本研究では、今後のカーシェアリング事業の在り方
2.1
表1
アンケート調査結果の時系列的比較
ラウンドトリップ型
計15例
計16例
ワンウェ イトリップ
可能型
その他(P&R)
6
15
(38%)
前半
図1
(100%)
後半
運行形式の時系列的比較
事業開始時期が早いものから 16 事業を前半、残り 15 事業を後半として、時系列的比較を行った。図
1より、前半はラウンドトリップ型とワンウェイトリップ可能型の割合は同程度だが、後半はラウンド
トリップ型のみになっている。これは、近年、事業規模が縮小している傾向にあり、ワンウェイトリッ
プを行うには車両数やST数が不十分なためであろう。
2.3
カーシェアリング事業タイプの分類
事業タイプの分類を行いカーシェアリング事業の特徴を把握するた
めに、場所の特性・車種・車両台数・会員対象・会員限定性・ST数・運行
形式・24 時間貸出の 8 項目を用いて数量化Ⅲ類及びクラスター分析を
行った。クラスター分析により4つの事業タイプに分類し、上記の項
目の特徴を捉えた上で、各タイプの名称を決定した。
(表2、表3参照)
2.4
タイプ別の稼働率
アンケート調査で回答があった例について、稼働率(表4参照)を
タイプ別に整理した。No.14 の事業主体にヒアリングした結果、損益
分岐点は 120(h/月/台)であることが分かった。事業規模により差は
表2
名称
タイプ別の名称と特徴
特徴
商業地・住宅地の混在地に
おいて限られた個人と法人
①混在地限定
を対象に行われる中規模事
タイプ
業であり、EVを使用して
いる。
商業地において個人と法人
を対象に行われるワンウェ
②商業地
イトリップ可能型の中規模
タイプ
事業であり、EVと低公害
車を使用している。
住宅地において個人を対象
③住宅地
に行われるラウンドトリッ
タイプ
プ型の小規模事業である。
住宅地において限られた個
人を対象に行われるラウン
④住宅地限定
ドトリップ型の小規模事業
タイプ
であり、ガソリン車と低公
害車を使用している。
あるが、No.9 を除く全事業がこの損益分岐点を下回っている。No.9 は実験として行われ、ほぼ無料で
利用できるため、稼働率が高くなっている。相対的に稼働率の高い No.10・18 は会員限定性の有無に違
いはあるが、共に住宅地でのラウンドトリップ型の小規模事業である。
2.5
海外のカーシェアリング事業
経営が安定している海外の事業を5つ調査した。その1つで、アメリカの Washington,D.C.等で行わ
(G4‐63 三井‐2)
表3
タイプ
我が国におけるカーシェアリング事業のタイプ別一覧
実験名、事業名(左の数字はサンプル番号)
ST数
運行形式
99/1~3,00/11~01/3 神奈川県海老名市
エコ・パークアンドライド推進協議会
EV18台
5ヶ所
他
14人,法人6社,市役所
2 自動車交通社会実験ふじさわ2001
01/10~02/3
神奈川県藤沢市
エコ・パークアンドライド推進協議会
EV15台,ガソリン車5台
2ヶ所
他
12人,法人9社,NPO
3 厚木エコ・パークアンドライドプロジェクト
02/8~05/3
神奈川県厚木市
エコ・パークアンドライド推進協議会
EV15台
1ヶ所
他
12人,法人3社,行政3所属
13 大川端・リバーシティ21超小型電気自動車共同利用実験
02/9~03/3
東京都中央区
都市基盤整備公団
EV1台,低公害車1台
1ヶ所
R
31人
14 特定非営利活動法人カーシェアリングネットワーク
02/10~05/9
福岡市
西日本リサイクル運動市民の会
EV11台,HV10台,低公害車3台
6ヶ所
R
477人,4法人9団体
5 ITS/EVシティカーシェアシステム
99/9~02/3
横浜市
(財)自動車走行電子技術協会
EV30台
10ヶ所
O
113人
6 ITS/CEVシティカーシステム
02/4~
横浜市,川崎市,千代田区 シーイーブイシェアリング(株)
EV21台,低公害車23台
20ヶ所
O
600人
7 電気貨物自動車共同利用システムモデル実験
99/12~02/3
大阪市
(株)都市交通問題調査会
EV28台
8ヶ所
O
270社
8 京都パブリックカーシステム
00/9~12,01/8~11
京都市
(財)日本電動車両協会
EV10台
2ヶ所
O
217人
9 豊田市小型電気自動車等共同利用実験
01/3~06/3
愛知県豊田市
豊田市役所
EV17台
5ヶ所
O
1424人
1 海老名エコ・パークアンドライド社会実験
①
②
③
④
期間
実施場所
実施主体
車種・台数
会員数
22 カーシェアリング「ちょいのりクラブ」
04/4~
新大阪駅,新神戸駅
(株)駅レンタカー関西
ガソリン車6台
2ヶ所
R
100人
24 りんくるカーシェアリング
04/10~
名古屋市
東海求人サービス(株)
低排出ガス車12台
7ヶ所
R
158人
4 ITS/EV住宅地セカンドカーシステム
99/9~02/2
東京都稲城市
(株)自動車走行電子技術協会
EV30台
6ヶ所
R
53人
12 OUR CAR
03/1~
東京都三鷹市
(有)移動サポート
ガソリン車2台
1ヶ所
R
30人
15 けいはんなITS
02/11~12,03/6~11 京都府相楽郡精華町
(株)関西文化学術研究都市推進機構
HV10台
3ヶ所
O
88人
18 汐見台団地カーシェアリング予備実験
04/1~3
横浜市
汐見台団地自治会連合会
ガソリン車3台
1ヶ所
R
15人
25 UPRカーシェアリングシステム
04/11~
東京都港区
ウベパレットレンタルリーシング(株)
ガソリン車3台
3ヶ所
R
4人
28 カーシェア24
05/2~
広島市
(株)マツダレンタカー
超低排出ガス車34台
12ヶ所
R
241人
31 石川でのカーシェアリング実験
05/8~10
石川県金沢市
シーイーブイシェアリング(株)
EV3台
3ヶ所
R
50人
10 コスモ王子ガーデンズ・カーシェアリング社会実験
01/9~12
東京都北区
交通エコロジー・モビリティ財団
ガソリン車4台
1ヶ所
R
43人
11 シティーコート下連雀カーシェアリング
01/10~02/1
東京都三鷹市
交通エコロジー・モビリティ財団
ガソリン車2台
1ヶ所
R
28人
16 京都大学キャンパスカー実用化実験
04/7~06/10
京都市,宇治市
京都大学キャンパスカー運用管理委員会
HV10台
3ヶ所
R
17研究室(人数不明)
17 若葉台グリーンカーシェアリング
03/10~04/2,05/8~ 鳥取市若葉台
鳥取環境大学環境デザイン学科吉村研究室
ワゴン車1台
1ヶ所
R
人数不明
19 「パークシティ東京ベイ新浦安」カーシェアリングシステム
04/3~08/3
千葉県浦安市
三井不動産(株)
ガソリン車6台
3ヶ所
R
240人
20 「マークスプリングス」カーシェアリング
04/3~
横浜市
シーイーブイシェアリング(株)
ガソリン車2台
1ヶ所
R
6人
21 彩都カーシェアリングシステム
04/4~
大阪府茨木市彩都あさぎ 阪急電鉄(株)
ガソリン車3台
1ヶ所
R
35人
23 志木「手作りカーシェアリング」
04/5~
埼玉県志木市
NPO法人「志木の輪」
ガソリン車1台
1ヶ所
R
15人
26 「オリゾンマーレ」カーシェアリングシステム
04/12~07/12
東京都江東区
プロパスト
ガソリン車2台
1ヶ所
R
25人
27 タウンモービルネットワーク北九州
05/1~
北九州市
タウンモービルネットワーク北九州
低排出ガス車2台
1ヶ所
R
19法人(100人)
29 Windcar(ウインドカー)
05/3~
札幌市
ウインド・カー(株)
ガソリン車5台,HV1台
2ヶ所
R
30人
30 「大森プロストシティレジデンス」自動車共同利用サービス
05/3~08/3
東京都大田区
東急不動産
ガソリン車1台,HV1台
1ヶ所
R
80人
(注)Rはラウンドトリップ型を、Oはワンウェイトリップ可能型を、他はその他(P&R)を、
EVは電気自動車を、HVはハイブリッド車を、STはステーションを表す。
れている Flexcar は、ガソリン車 458 台・ST151 ヶ所・会員 28000 人+500 社を
有するラウンドトリップ型の事業で、King County Metro Transit 等の公共交通
機関やレンタカー会社との連携を図っている。また、40km 四方内のST密度を
日本の事業と比較(図2参照)しても、はるかに高密度である。公共交通機関等
と連携している点やST密度が高い点は、他の4事業にも共通して言える。
3.結論
運行形式にはラウンドトリップ型が採用され、事業規模は縮小している傾向に
ある。また、現在継続中の事業の約6割が、タイプ④の住宅地限定タイプである。
表4
タ
イ
プ
①
②
③
④
稼働率
サンプル
稼働率
番号
(h/月/台)
13
14
7
9
24
15
18
10
11
16
21
27
3.7
64.8
71.7
232.9
44.2
58.0
92.7
75.4
49.2
7.4
40.0
30.0
これより、住宅地、限られた個人を対象、ラウンドトリップ型、小規模という特
徴を持った、住宅地限定タイプが増加する傾向にあると言える。
我が国におけるカーシェアリング事業の問題点は、会員数が少なく稼働率が低いことである。この原
因として、ST密度が低いこと、公共交通機関やレンタカー会社等との連携が図れていないことが考え
られる。また、海外の事業では複数の都市での利用が可能であることも会員数確保に繋がっている。日
本でも、2005 年 11 月から No.6・22・24 の事業が提携し、ビジター制度が開始され、各事業の会員は東
京都・神奈川県、大阪市・神戸市、名古屋市での利用が可能となった。このような連携を築いていくこと
が会員数確保に繋がり、我が国におけるカー
シェアリング事業の発展にも繋がると考え
られる。
参考文献
1)太田勝敏:マイカーに代わる新しい交通
手段―カーシェアリングの意義―、交通工学、
Vol.36 No2、2001
2)八木麻未子、森川高行:土木学会第 56 回年
次学術講演会、2001
3)交通エコ ロジー ・モビ リティ 財団 HP
図2
http://www.ecomo.or.jp/
ST密度 左:Flexcar(Washington,D.C.)右:No.14(福岡)
(G4‐63
M.M)
G4‐63.The actual situation of Car Sharing businesses in our country
Michibo Mitsui
In late years, with increase of the use of a car, global environment problems such as air
pollution, and increase of CO2 discharge and urban traffic problems such as a traffic jam ,and
lack of parking lot in a city occurs. As these measures, Car Sharing is suggested and many
experiments and businesses are performed in not only many parts of the world but also all parts
of Japan.
In this research, car sharing businesses in our country, including businesses of stage aiming at
practical use from businesses of experiment stage, were investigated and analyzed. The
purpose is to grasp the actual situation and problems of conventional businesses and think
about what future Car Sharing businesses should be like.
We got data about 31 Car Sharing businesses in our country by questionnaire survey and
listening comprehension investigation. With the data, we performed quantification theory type
Ⅲ and cluster analysis and were able to classify them in 4 business types to show blow . Type
① is “Mixture area’s type with definitiveness” , type ② is “Commercial area’s type” , type ③
is “Residential area’s type” and type ④ is “Residential area’s type with definitiveness”. In
addition, we investigated ST density and tie-up companies of five overseas Car Sharing
businesses that management was stable.
As a result, it became clear that a small business of round trip type in a residential area such
as type ③ and ④ tended to increase in future. The problems of car sharing businesses in our
country are fewness of their membership and lowness of their rates of operation. As these
causes, it is thought that lowness of ST density and lack of cooperation with public transport.