【冊子】PDF版 - 飯野海運株式会社

経営報告書 2 011
CSR & Annual Report
新 し い 価 値 を 創 造 し 、未 来 へ と つ な ぎ ま す
明治 32 年、舞鶴港で曳船による石炭輸送を始めたことが、飯野海運グループの事業のスタートでした。
それから 112 年の歴史の中で、海運業を発展させるとともに、
それに並ぶ事業の柱として不動産業を展開してきました。
海運業ではオイルタンカー、ケミカルタンカー、ガスタンカー、ドライバルクキャリアーなど100 隻あまりの
船舶を運航し、人々の生活や経済活動に欠かせないさまざまな物資を、全世界に輸送しています。
不動産業では、2 011 年秋に開業する飯野ビルを含め、東京都心部に 6 棟のオフィスビルを所有し、
快適なオフィス空間を提供しています。
経営理念
行動憲章
安全の確保が社業の基盤
当社ならびに飯野グループとその役職員は、
よいサービスと商品を社会に適正な価格で
企業活動を行う場合、
安定的に供給
この憲章に従って行動するものとする。
顧客ニーズに迅速・的確に対応
法令を遵守し社会と環境に十分配慮
株主、そして役職員へのリターン充実を目指し
企業価値向上を志向
1. 社会への貢献と企業価値の向上
2. 法令遵守と社会秩序の維持
3. 差別の廃絶・人権の尊重
4. 安全の重視
5. 環境保護
6. 顧客尊重
7. 情報開示とコミュニケーション
1
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
目次
社長メッセージ
社会とともに成長、進化するために
= 新中期経営計画で飛躍を目指す飯野海運 =
3
特集
人と環境を守るビジネス拠点 = 飯野ビル =
サプライチェーンの一翼を担う = 紙ができるまで =
9
13
経営報告
財務ハイライト
17
グループ事業の全体像
19
飯野海運 at a Glance
21
部門別事業概況
23
設備の概況
30
運航船腹リスト
31
コーポレートガバナンス
33
安 全・環 境 性 報 告
編集方針
当社グループでは、2009 年度から投資家向けの「アニュアルレポー
ト」と、より幅広いステークホルダー向けの「安全環境報告書」を統
合し、総合的な「経営報告書」として発行しています。
本報告書では、当社グループの活動全体をバランスよく報告し、す
海運業の安全・環境マネジメント
35
海運業の安全・環境についての施策
37
不動産業の安全・環境マネジメント
39
不動産業の安全・環境についての施策
40
マテリアルフロー / 安全・環境会計
41
べてのステークホルダーの皆様に分かりやすくお伝えすることを目指
しています。そのため、全体の内容を
「経営」
「安全・環境性」
「社会性」
「財務」のカテゴリーに分類して編集しています。
なお、
原則として本文中で「飯野海運グループ」および「当社グルー
プ」は飯野海運グループ全体(67 社)
、
「飯野海運
(株)
」および「当社」
は飯野海運株式会社単体を指します。また、報告書の構成は「GRI サス
テナビリティレポーティングガイドライン 2006」を参考にしています。
本報告書に掲載されていない、より詳細な情報に関しては、以下の資
料をご参照ください。どちらも当社ホームページでご覧いただけます。
web
財務情報 : 有価証券報告書、決算短信
http: // www. iino.co.jp/kaiun/ir/index.html
CSR 関連情報 : 経営報告書【CSR詳細報告編】
http: //www.iino.co.jp/kaiun/csr/report.html
将来見通しに関してのご注意
本報告書には、飯野海運グループの今後の計画、戦略、業績予想に関する記
述が含まれています。これらは、本報告書の作成時点で把握可能な情報に基
づくもので、経済動向、市場環境、為替レート、税制などさまざまな要因によ
り異なる結果となる可能性があります。
社会性報告
文化・社会活動
42
海上で働く人のために
43
陸上で働く人のために
44
財務報告
主要財務データ
45
飯野海運(株)役員一覧
47
グループ組織体制
48
会社概要
49
投資家情報
50
ステークホルダーからのコメント
51
第三者意見
52
飯野海運グループの沿革
53
コミュニケーション
54
飯野海運 経営報告書 2011
2
社長メッセージ
社 会とともに成 長、
進 化するために
=新中期経営計画で飛躍を目指す飯野海運=
飯野海運グループは 2011 年 4 月、海運事業での新たな成長と
不動産事業での収益基盤の強化を目指し、向こう3カ年の新
中 期 経 営 計 画「IEG14」(Iino's Evolutionary Growth Plan to
2014−成長と進化 )を発表しました。海運による物流とオ
フィスビルの賃貸という経済を支える事業を担いながら、社会
にどのように貢献し、成長を遂げていくのか。
飯野海運(株)社長へのインタビューを通して、ステークホル
ダーの皆様に当社グループの今をお伝えします。
飯野海運株式会社
代表取締役社長
東日本大震災の復興支援
として義援金 1000 万円を拠出し、日本赤十字社に寄付
し ま し た。ま た 当 社 グ ル ー プ の 社 員 に も 募 金 へ の 協 力
東日本大震災から2カ月が経過しました。大震災を受けて、
を 呼 び か け て い ま す。こ れ か ら も 本業の海運業を通じ
飯野海運グループはどのように対応しましたか。
日本国内にさまざまな物資を輸送することで、東日本大
震災からの復興を支えたいと考えています。
このたびの東日本大震災で亡くなられた方、また被災
また社員が被災地でのボランティア活動に従事しやす
された皆様へ心からお見舞い申し上げます。この大震災
いように、ボランティア休暇制度を新設しました。若手
では、当社グループ社員のご家族にも亡くなられた方、
社員が手を挙げ、4月末に1週間、宮城県気仙沼市で活
行方不明となられている方もいらっしゃいます。悲しい
動し、活動を通じて多くのことを学んだようです。私と
思いをしている方々のことを思うと、胸が痛みます。
しても、ボランティアという形で、自発的に活動する社
大震災発生当日に、当社グループ内で緊急対策本部を
員がいたことを非常にうれしく思います。
立ち上げ、まずは被災の状況を確認しましたが、当社グ
ループが運航している船舶や所有しているビルでは、ほ
大震災からの復興には時間を要することが予想され、さ
とんど被害はありませんでした。
らに日本経済全体への影響も懸念されます。飯野海運グ
それから被災地の復興に役立てていただこうと、会社
3
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
ループの業績への直接的な影響はあるのですか。
当社は電力会社と発電用石炭の輸送契約を締結してい
新中期経営計画「IEG14」を発表しました。海運業全般
ます。震災を受けて契約の一部見直しの要請などもあり
の市況が弱含む中で、飯野海運も 11 年 3 月期に減収減益
ましたが、業績に大きく影響するものではありません。
となっています。このような状況で、どのような問題意
しかしながら、今回の大震災は今後の日本経済に大きく
識で計画を作ったのですか。
影響していくでしょう。その結果、海運業では復興需要
もあるかもしれませんが、経済の低迷によって物資の動
2011 年 3 月期決算では、内航・近海海運業と不動産業
きが鈍ることも懸念されます。現時点では当社の事業に
では前期比プラスの営業利益を確保したものの、外航海
直接的な影響を与えてはいませんが、今後の動きを注視
運業では市況低迷などの影響で、連結業績は減収減益を
していきたいと考えています。
余儀なくされました。
この他には東京電力福島第1原子力発電所での事故の
2007年に策定した前中期経営計画「ISG12」は12年 3 月
影響も懸念されます。当社グループで運航する船舶には
までの計画でした。しかし 0 8年のリーマンショック以降
外国人船員も乗船しており、また海外の企業と多くの取
の世界経済の低迷に伴う海上輸送量の減少、円高や燃料
引があります。そうした人々の間から、関東や東北地方
費の高騰など、当初の想定から経営環境が大きく変わり
に寄港する際の放射能の影響を心配する声が出ていま
ました。そのため前計画は現状に合わなくなったと判断
す。当社グループとしても安全性について継続的に確認
し、期間終了の前ではありましたが新しい中期経営計画
し、正確な情報を提供して取引先や当社グループで働く
を策定したのです。
「ISG12」は海運市況と不動産市況がともに好調だった
人々に安心してもらえるよう努力しています。
時に策定したこともあって、右肩上がりの成長拡大路線
新中期経営計画でさらなる成長
を描いていました。今回の「IEG14」では、現実を見据え
て構造改革を行い、足場をしっかりと固めていく、という
飯 野 海 運 グ ル ー プ は 、2 0 1 1年 4 月 に 、向 こ う 3 カ 年 の
IEG14 のコンセプト
= Iino's
ことを基本的なコンセプトにしています。
Evolutionary Growth Plan to 2014−成長と進化 =
Reformation
Stabilization
Growth
改革
安定
成長
ケミカル船事業
の構造改革
安定収益基盤
の強化
中東航路の収益性向上
ビル運営・管理業務の
品質の向上
新興国需要を
取り込んだ
中小型船の事業展開
新基幹航路の育成
J / V を通じた集荷力向上
組織力の強化
資産の有効活用
パナマックス・
スモールハンディの拡充
専用船事業の拡充
中小型ガス船事業における
アジア域内配船の強化
不経済船の減船
船腹調達の多様化
市況変動に対する
耐性強化
財務基盤の強化
質的転換
安全の徹底
環境負荷低減への
取り組み
飯野海運 経営報告書 2011
4
数値目標としては、売上高を 2011 年 3 月期の 745 億円
から 14 年 3 月期に 860 億円、10 年代半ばには 1000 億円
新興国では石油化学製品の需要が着実に増加してお
へと伸ばし、営業利益については 11 年 3 月期の 24 億円
り、それらの国々への輸送ビジネスも取り込みたいと考
から、14 年 3 月期に 62 億円、10 年代半ばには 100 億円を
えています。また中東や新興国以外でも、ビジネスチャ
達成できる体制を整備していくことを目標としています。
ンスのあるところには積極的に参入します。当社グルー
前回の計画は、主に石油化学製品を運ぶケミカル船事
プは米国現地資本との合弁会社である Allied Chemical
業と不動産事業を計画の柱に据え、3 つ目の柱としてガ
Carriers 社の経営に参画しています。同社の営業力を活
ス船事業の育成を図るというものでした。その中でもケ
用し、北米・南米航路や欧州航路の輸送量を増やすつも
ミカル船にかなり投資してきたこともあり、海運業の他
りです。
の部門が手薄になった面もありました。一方で、重点戦
2011 年 3 月末で当社グループが運航するケミカル船
略部門の位置づけではなかったドライバルクキャリアー
は 38 隻でしたが、13 年 3 月末で 45 隻前後、10 年代半ば
(ばら積み貨物船)の分野で、収益力が大きく拡大しまし
た。同船の市況は、ケミカル船市況との相関性が比較的
低いと言えますので、ケミカル船、不動産に続いて力を
入れていきたいと考えています。
で 50 隻前後に増やす予定です。
既存事業の見直し、新規投資に
よる堅実成長
それでは新中期経営計画「IEG14」の個別の方針を教えて
ドライバルクキャリアーの収益力が拡大したということで
ください。この計画では「成長と進化」をテーマに掲げま
すが、それをケミカル船、不動産に続く「第 3 の柱」にし
した。ここでは「市況変動に対する耐性強化」をはじめと
ていくのでしょうか。またケミカル船以外の海運業での新
す る 5 つの土台とな る 考 え 方 に 基 づ き 、
「改革」
「安定」
しい取り組みについて教えてください。
「成長」という 3 つの柱が立てられています( 4 ページ図
参 照)。「改 革」の 項 で は ケ ミ カ ル 船 事 業 の 構 造 改 革 を
挙げましたが、具体的にはどのように取り組みますか。
ケミカル船は当社グループの主力事業であり、前回の
中期経営計画でもさらなる飛躍を目指していました。こ
の分野の海上輸送需要は今後も世界的に拡大すると予想
されますので、新計画でもさらに強化する予定です。当
社グループの基幹航路は中東からアジア向けであり、中
東から出荷される石油化学製品の海上輸送量では世界
トップシェアを誇っており、この強みを一段と伸ばした
いと考えています。
ケミカル船に限らず外航海運業全般に言えることです
が、当社グループは市況や為替といった外的要因に左右
されない強固な事業基盤を確立することを目指していま
す。具体的には、収益力を高めるために不経済船を減ら
し、航路によっては船舶の大型化を進め、輸送効率を向
上させるといった施策を行います。中東やアジア航路で
は、中東で石油化学製品を積んだ船舶が極東で貨物を揚
げた後、中東に戻る航海での集荷力も上げなければなり
ません。極東からインド・パキスタン向けの植物油や
5
潤滑油の輸送などで、既に取り組みを始めています。
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
これまで当社はケミカル船と不動産への集中投資を進
安 定 した需要があります。これらの需要やその変化に
めてきましたが、ここでいったん投資の分散を図りつつ、
注目し、LNG、LPG の輸送についても大型船・小型船と
またその中で、経営資源を投入する分野を慎重に見極め
もに拡大を図ります。
ていきたいと考えています。柱は必ずしも3本でなくて
もよいのですが、「IEG14」の取り組みを進める中で、3
「IEG14」で は、新 し い 事 業 と し て 新 興 国 の 需 要 を 取 り
本目の柱が具体的に見えてくることを期待しています。
込 ん だ 中 小 型 船 の 事 業 展 開 を 掲 げ て い ま す。こ う し た
世界経済の足踏みで、海運業全般の成長は総じて一服
国々でのビジネスは、日本のさまざまな業界が注目して
しています。しかし一口に海運業と言ってもその中で多
います。飯野海運グループは、こうした国々の成長をど
くの分野に分かれており、当社が収益を確保している分
のように取り込もうとしているのですか。
野もあります。足元で重点的に投資比率を増やしている
の は、ド ラ イ バ ル ク キ ャ リ ア ー で す。「IEG14」で は、
世界の海運業は、人口の増加や経済の多極化に伴う物
その他にも特定の会社と長期契約を結ぶ形の専用船の拡
流量の増加で緩やかな成長が続くと予想しています。日
充を図ります。
本国内では、少子高齢化や東日本大震災の影響で景気回
当社は、原油や LPG(液化石油ガス)
、LNG(液化天然ガ
復 が 遅 れ て い ま す が、世 界 全 体 を 見 渡 す と 中 国 や イ ン
ス)
、石炭、木材チップといった専用船の輸送契約を持っ
ド、ブラジル、南アフリカといった新興国地域では成長
ており、これらが安定収益源になっていますので、これ
が 続 い て い ま す。「IEG14」は 海 運 市 況 が 下 降 し て い る
からも伸ばしていきたいと考えています。こうした長期
環境下で策定しましたが、そのような新興国の需要を取
契約を維持するには、荷主のニーズをしっかり受け止め、
り込んだ海運業の新しい展開を考えています。
安全運航を重ね、相互に利益を共有し、信頼関係を構築
特に着目しているのは小型のドライバルクキャリアー事
することが必要です。お客様との間で、こうした良い関
業です。今までも肥料や鋼材の輸送を小型ドライバルク
係を一つひとつ積み上げていきたいと考えています。
キャリアーで行ってきましたが、さらに隻数を増やし、事
原発の停止の影響で、日本では発電用 LNG 需要が増え
業を拡大することを検討しています。日本から中東へ鋼材
るでしょう。また米国では、新しいエネルギー源として
を輸送し、その戻りの航海で中東からアジア向けの塩や肥
シ ェ ー ル ガ ス が 注 目 さ れ、LNG 輸 送 の 流 れ も 大 き く 変
料、硫黄の輸送を取り込むなど、効率的な運航を行うこと
わりました。また LPG は、燃料や石油化学原料として
で収益を確保していきたいと考えています。
IEG14 数値目標
1,000
(億円)
(億円)
900
830
800
80
700
62
600
売上高(左軸)
営業利益(右軸)
760
745
100
860
経常利益(右軸)
60
54
500
40
400
300
200
100
0
32
24
20
40
20
11
2
2011 年度 3 月期 注
2012 年度 3 月期
2013 年 3 月期
2014 年度 3 月期
0
注:2011 年 3 月期は実績値、2012 年 3 月期以降は計画値です。
飯野海運 経営報告書 2011
6
ま た 中 国 の 河 北 省 唐 山 市、位 置 的 に は 北 京 か ら 東 に
ビ ル に 比 べ て 46% の エ ネ ル ギ ー を 削 減 で き る 仕 様 に
220 キロの渤海湾に面した位置に曹妃甸という天然の良
なっています。日本の建築物の環境性能評価基準である
港 が あ り ま す が、こ の 港 湾 事 業 へ の 出 資 を 決 定 し ま し
「CASBEE」や、米国の環境建築認証「LEED」で、高評価
そう ひ でん
た。これをきっかけに中国からの鋼材輸送、中国向けの
石炭、鉄鋼原料輸送に参入したいと考えています。
さらに小型 LPG 船はこれまで日本国内や中国、韓国な
を獲得できるよう申請を進めています。
イイノホールも「イイノホール&カンファレンスセン
ター」という新しい形で営業を再開します。これまでの
どの近海水域での航路が多かったのですが、需要が拡大
よ う に 音 楽 会、映 画 試 写 会、落 語 会 な ど だ け で は な く、
している東南アジア域にも事業を拡大したいと考えます。
カ ン フ ァ レ ン ス ル ー ム を 併 設 し て、セ ミ ナ ー や パ ー
ティー、展示会など幅広い用途でご活用いただけるよう
2011年秋に新たな飯野ビルが開業
に し て い ま す。さ ま ざ ま な 形 で ご 利 用 い た だ く こ と を
「IEG14」の柱の一つに、安定収益基盤の強化を挙げてい
の文化創造の拠点として社会貢献活動につながること
ます。その中でも、今年秋に開業する飯野ビルディング
(以下、飯野ビル)が目玉となりますね。
旧飯野ビルは 1960 年に建てられ、2008 年の閉館まで、
通じて当社グループのイメージアップや、さらには東京
を願っています。
「IEG14」では、財務基盤の強化も掲げています。
テナントの皆様とよい関係を結び、その運営を支えてい
飯野ビルの建設費用は借入金で調達しましたので、今
ただきました。また併設されたイイノホールは、演奏会な
年から来年にかけては有利子負債が増加します。将来の
どで芸術家の皆様、利用者の皆様に親しんでいただきま
安定的な収益につながる投資であり、負債が増えること
した。こうしたステークホルダーの皆様との良い関係を
自体は決して悪いことではありませんが、財務上の健全
飯野ビルでも築いていきたいと考えています。
性を維持する上で、今後一定のレベルに負債を落として
東日本大震災を受けて、都市の防災に改めて関心が向
いきます。
け ら れ て い ま す。ま た 地 球 温 暖 化 や 電 力 不 足 の 問 題 か
また、当社グループは自社船比率が高いので、それを
ら、省エネへの関心も高まっています。飯野ビルは、防
見直して用船比率を高めることで、有利子負債の削減を
災と環境への配慮の点で、考えられる最高品質のビルを
図ります。これは同時に、海運市況変動への耐性を強化
作ろうと取り組んだ結果、耐震性能はもちろん、省エネ
することにもなります。
ルギーをはじめとする環境性能でも、現時点で国内ナン
バーワンのビルを建築できたと自負しています。
また飯野ビルは、日比谷公園に接し、霞が関の官庁街
にも近いという都内でも有数の立地の恵まれた場所にあ
具体的に言うと有利子負債は 12 年 3 月期末に 1400 億
円程度まで増える見込みですが、10 年代半ばには資本の
部を積み上げる一方、負債は 1200 億円台まで圧縮した
いと考えています。
ります。テナントの皆様にもきっとご満足いただけると
思います。不動産市況が低迷しているにもかかわらず、
2011 年 3 月期中にすべてのオフィスフロアでテナントの
入居が決まったのは、立地と環境性能が評価されたもの
と考えています。
飯野ビルの環境性能の高さを示す例を紹介しましょ
収益拡大でステークホルダーの
期待に応える
「IEG14」を 踏 ま え、海 運・不 動 産 事 業 で の 安 全 の 徹 底
に関わる取り組みについて教えて下さい。
う。建 物の 外装 をガ ラ ス で 二 重 化 す る こ と で 熱 負荷を
7
低減させ、エネルギー使用量を抑えられるダブルスキン
海運業では、自社で船舶を所有する他に、船主から船を
工法を採用しました。また従来の蛍光灯に比べ消費電力
借りる「用船」と呼ばれる仕組みがあります。当社グルー
を大幅に抑制できる LED 照明もビルの主要部に導入し
プの船舶管理会社イイノマリンサービス(株)では、2011
ま し た 。こ の 一 連 の 取 り 組 み の 結 果 、 通 常 の 同 規 模 の
年 2 月に当社グループが用船し管理している外航船の
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
船主との交流会、情報交換会である「船主会」を開催
不動産営業部門と当社グループのビル管理会社であ
しました。
る イイノ・ビルテック(株)の組織改編を飯野ビルの開
これまで、本社の営業部門を中心として船主とのセミ
業に先立って行いました。
ナーや交流会を行ってきましたが、今後は船舶管理部門
による船主会も継続開催し、より一層交流を深め、安全
関根社長は 2010 年 6 月に社長に就任して 1 年になります。
運航に努めてまいりたいと思います。
それを振り返って、どのような感想を抱かれますか。また
またソマリア沖での 海賊の増加が問題にな っていま
2011 年 4 月から「IEG14」が始まります。ステークホルダー
す。凶悪化、巧妙化するとともに、インド洋やアラビア
の皆さんに、それに向き合う意気込みを聞かせて下さい。
湾にも活動範囲を広げています。当社グループも情報収
集に努め、運航する船が海賊の襲撃に遭遇しないように
注意しています。
海 運 業 で は、航 海 の 安 全 を 確 保 で き な け れ ば、船 体
2011 年 3 月期は、海運市況の低迷や円高といった厳し
い外部環境にあって、なかなか満足のいく経営成績を残
せませんでした。
「IEG14」での目標を達成するためには、
だ け で な く、乗 組 員 の 生 命 や 積 荷、海 洋 環 境 に 影 響 を
初まりである 2012 年 3 月期にある程度の道筋をつけら
及ぼす可能性があります。当社グループは海運会社とし
れるよう取り組まなければならないと思っています。計
て、常に安全の確保を社業の基盤として事業を行うこと
画を策定する過程で私も議論の場に入って社員と何度も
を最優先に考えてきました。この考え方は不動産業でも
話し合いました。今後は実践です。ともに汗を流し、計
貫かれています。東日本大震災では、安全・安心なオフィ
画が現実の成果に結びつくように努力を重ねます。そし
ス環境の重要性が改めて浮き彫りになりました。
て結果を出すことで、ステークホルダーの皆様のご期待
当 社 グ ル ー プ の 所 有 ビ ル で も、地 震 な ど の 天 災 が
に応えたいと思います。
発生した際にテナントの皆様が事業を継続できるよう、
支 援 体 制 や 情 報 共 有 、連 携 を 強 化 し ま す 。そ の た め 、
(インタビュー)2011 年 5 月11日実施
関根社長とLNG タンカー「SK SUNRISE」の模型
飯野海運 経営報告書 2011
8
特 集・1
人 と環境 を守 る
ビ ジネス拠 点
最 新 の 防災・エ コ 技 術 を持つ飯野ビル
飯野海運グループは 2011 年秋、東京・内幸町に飯野ビルディング(以下、飯野ビル)を開業します。地震などの災害に備えるため
に防災と環境に対応する時代の最先端の技術が使われています。ここに集う人すべてに安全と安心を提供し、命と仕事を守りたい。
そうした願いが織り込まれたビルの姿を紹介します。
1. 災 害 か ら 人 々を 守 る
「安全を常に配慮」海運業の思想をビルに
2011 年 3 月 11 日に起こった東日本大震災による地震
と 津 波 は、甚 大 な 被 害 を 与 え ま し た。東 京 で は 電 車 が
止まり、帰宅困難者が発生するなど、都市機能が止まる
という問題が浮上しました。私たちの生活は脆弱な基盤
の上に成り立っているという事実に、一人ひとりが改め
て気づいたのではないでしょうか。
当社グループは、物流を担い日本経済を支える海運会
社として、そして 6 つのビルの所有者として、日ごろか
ら災害への備えを行ってきました。「安全を常に配慮す
る」という思想は、グループ内の隅々に行きわたってい
ま す。不 動 産 事 業 に お い て も そ う し た「会 社 の DNA」
を継承し、お客様の安全と安心を守ろうと努力を重ねて
きました。さまざまな安全をめぐる知恵と工夫が飯野ビ
ルに織り込まれています。
自家発電で外部電源の遮断に対応
9
石油配送会社との間で自家用発電設備の燃料である重油
の優先供給契約を結び、電力供給の維持を図ります。
また耐震性能は、通常の超高層ビルと比べて約 25%
向上させています。設計上の配慮や最新工法の導入によ
るものです。災害時には、ビル内にいる人はその場にと
どまることで安全が確保されます。
さらに水害にも配慮しています。地球温暖化による海
面上昇や津波、都市のゲリラ豪雨など、海岸から離れた
飯野ビルにも危険はあります。洪水時には建物出入口に
設置されたパネルが跳ね上がる仕組みを取り入れまし
た。仮に東京湾の海水面が平均値より 5 メートル上昇し
ても、その水害に耐えられます。
飯野ビルはテナントの皆様に加えて、街そのものを災
害から守ります。このビルの中には水や非常用食料を備
えた防災倉庫が設置されており、千代田区に提供してい
ます。災害時には公的な拠点の一つになる予定です。災
害があった場合には、前面道路のマンホールを防災トイ
レにするなどの取り組みも行われます。またビルの入り
飯野ビルに取り入れられた防災の工夫を紹介しましょ
口までのスペースには「イイノの森」と呼ばれる数十本の
う。このビルでは外部電源が断たれても、電力を供給で
木の植えられた前庭が第2期工事(14 年竣工予定)で完
き る 非 常 時 の 自 家 用 発 電 設 備 を 準 備 し て い ま す。地 上
成します。この空間は道路を隔てて向き合う日比谷公園
27階、地下 4 階のビルの主要部分に、約72時間供給され
と一体となり、密集した都会の不安感を低減してくれる
ます。共用部分の灯りや空調、エレベーターなどの最低
でしょう。このような工夫を重ねることで、飯野ビルは都
限の主要なビル機能は維持されます。さらに緊急時には
心の防災拠点としてここに集う人、そして街を守ります。
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
特
集
飯野ビルの防災とエコの工夫
○
非常時用に72 時間の
自家発電を用意
○
高い耐震性で都市防災の拠点
○
水害への備え
○
既存ビル比で 46%の省エネ
○ 「ダブルスキン」
「 デシカント空調」
など最新エコ技術導入
飯野海運 経営報告書 2011
10
2. 省 エ ネ で 地 球 を 守 る
エネルギーを46%削減
東日本大震災では発電所などの被災で電力供給が減少
しました。それは長期化する見込みで今後は節電や省エ
ネが日本の企業にも、個人にも一段と求められます。世
減らしました。オフィスゾーンにはガラス窓が多く、自
然光も取り入れやすくなっています。エコボイドは、中
空の空間であるため、採光の役割も果たします。
世界最高クラスの環境基準に
現在では大型ビル向けに、環境基準をめぐるさまざま
界情勢に目を転じても、温暖化や化石燃料価格の高騰が
な指標が作られています。東京都の「建築物環境計画書
深 刻 な 問 題 に な っ て い ま す。こ れ ま で の よ う に エ ネ ル
制度」、国土交通省の運営 す る「CASBEE」
( 建築物総合環
ギーを浪費し続けることはできません。
境性能評価システム)、アメリカの「LEED」
( Leadership
飯野ビルでは「エネルギーをできるかぎり使わない」、
in Energy & Environmental Design)などです。飯野ビル
そして「利用者が快適にすごせる」という相反しがちな
では客観的な評価を得るために、いずれの指標でも、最
二つの課題を、最新の技術によって解決しています。ま
高の評価を得るべく申請を進めています。また最新の省
ず全体ではビルのエネルギー消費を、通常の同規模ビル
エネ設備の導入が評価され、新エネルギー・産業技術開
に比べて 46%も削減しました。空調、照明というビル
発機構(NEDO)の都市部モデル省エネ事業の対象に認
のエネルギー消費の大半を占める分野で、最新の技術を
定されました。
取り入れ、その削減を可能にしました。
大型ビルでは、エネルギー使用のさまざまな公的な規
空調の工夫を紹介しましょう。ビル 4 面すべてに二重
制が今後強化される見込みであり、ビル入居者にも負担
の外壁「ダブルスキン」を設置しました。外の壁や窓と
が加わることが予想されます。飯野ビルは、ビル自体の
の間に空気を貯める構造です。冬は保温、夏は内部の熱
省エネ性能がとても高いため、入居者の環境対策の負荷
気を外に逃がす効果があり、換気もしやすいのです。外
が軽減される利点があります。そしてビル内部のオフィ
壁から取り入れた空気は、ビルの中央部にある「エコボ
スゾーンは、天井高 3 メートル、1 フロア当たり 712 坪
イド」と呼ばれる吹き抜けや非常階段を利用した風の通
という広々とした空間が提供されています。ゆったりし
り道によって、外部へ排出されて、ビルの換気が行われ
たスペースで快適さも確保されます。
ます。また設計では周囲の街の姿にも配慮しており、日
飯野ビルは、ビジネス、イイノホールや商業ゾーンの
比谷公園の緑地など周辺部から流れ込む風も利用しま
利 用 な ど、多 く の 人 が 集 う 場 に な り ま す。社 会 で は 今、
す。自然の力で、あたかも呼吸するように、ビルの空気
災害への備え、そして地球環境への配慮が一段と求めら
が入れ換わるのです。
れています。飯野ビルにはビルに集う人を守り、地球環
冷暖房では「デシカント空調」と呼ばれる最新設備を
境を守り、そして街を守る工夫を数多く込めました。人々
導入しました。温度と湿度を別々に制御することで、快
が安心してサステナブル(持続的)な営みを送れる場と
適な体感温度を室内の人に提供するものです。
して、このビルは活動を始めます。ステークホルダーの
照明では、ビル内 の 主 要 部 に 電 力 使 用 の 少 ない L E D
照 明 を 使 い 、明 る さ を 保 ち な が ら エ ネ ル ギ ー 消 費 を
皆様と、ビルを通じてより良い関係を作り出したいと、
当社グループは願っています。
二重の外壁で換気を行う「ダブルスキン」
( 左)
。ビル中央で風の出入りをうながす中空の「エコボイド」
( 中)
。屋上には木を植え、緑化を進めた(右)
11
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
特
集
美 術 作 品がビルを支える
当社グループは不動産事業の中で、所有する建物に、芸
展 示 さ れ ま す。2008 年 の ビ ル 解 体 時 に 取 り 外 し、再 展 示
術作品を展示する取り組みを行っています。これは芸術を
するために 50 年前と同じマケドニア産の大理石を使って
支えるという社会貢献に加えて、建物の価値を高め、さら
補修しました。
にビルの利用者など多くのステークホルダーの皆様と芸術
の喜びを共有することを目的にした取り組みです。
2011 年秋に開業する飯野ビルでは、6 人の気鋭の現代
またコンペで選出された芸術家の作品が展示されます。
印象的な空間を作り出すレアンドロ・エルリッヒ(アルゼ
ンチン)
、独特な形象で印象に残る作品をつくるスザンナ・
美術作家の作品を展示します。そして過去からの継承も
ニーデラー(スイス)
、動物の骨を使うオブジェで知られ
大切にしました。
る 小 谷 元 彦(日 本)
、渋 谷 清 道(日 本)、山 本 一 弥(日 本)、
おだに・もとひこ
1960年(昭和35年)に竣工した旧飯野ビルでは、イイノ
ホールをコンサートなどで多くの皆様に利用していただき
しぶや・きよみち
平田五郎(日本、第2期工事 2014年竣工時に展示)
、これら
6 氏の芸術家です。
むらい・まさなり
ま し た。そ の 入 口 に は 現 代 美 術 家・村 井 正 誠 氏 の レ リー
例えば、小谷氏の作品は、シュモクザメの独特な形の頭骨
フ作品が展示されました。幾何学模様が彫り込まれた大理
を多く使い、不思議さに満ちたデザインになる予定です。飯
石が並び、鑑賞者を不思議な感覚にいざなうこのレリーフ
野ビルは船を想起させる丸みの帯びたデザインや木目の色
は、縦 7 メートル、横 9 メートルの大作です(上記写真)
。
彩が多く使われるビルになります。海とのつながりを示す
来場者の方々に、芸術が作る新しい世界に足を踏み入れる
その作品は3階のオフィス入口に置かれます。
期待を提供していました。
新しいイイノホールでも、入口部分にこの作品が再び
新しい飯野ビルは、感性の点でも、訪れるステークホルダー
の皆様に心地よい刺激を提供する場になるでしょう。
飯野海運 経営報告書 2011
12
特 集・2
サプライチェーンの
一翼 を担う
= 紙 が で きる ま で =
飯野海運グループは石油や石油化学製品、LNG、LPG、
石炭、鋼材、肥料などの原料・素材を運ぶ海運業を行っています。
それに加えて、輸送する物資の原料調達を含む
サプライチェーンにかかわる事業も展開しています。
例えば、紙の原料となる木材チップについては、
植林事業への参画からその輸送に至るまでを担っています。
日常生活や経済活動に欠かせない物資の安定供給を支える
当社グループの仕事ぶりを、木材チップの輸送を例に紹介します。
飯野海運(株)が運航するチップ輸送船「SHIN CHUETSU」
13
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
つながっています。世界的な資源価格の高騰で木材チッ
特
ベトナムでの森づくりに参加
日本の製紙業界では 1990 年代以降、紙の原料となる
上 げ、08 年 に は 黒 字 化 し て 累 積 損 失 を 解 消 し ま し た。
木材チップを安定的に確保するために、海外での植林を
10 年 に は中越パルプ工業(株)様が合弁会社に単独で増
積極的に展開してきました。大手製紙メーカー各社は
資して植林面積を増やしました。
ブラジルやオーストラリア、南アフリカなどで植林事業
を行っています。
集
プ価格も上昇基調にあるため、この事業は順調に収益を
ちかみつ・まもる
当社取締役常務執行役員の近光護は「当社グループが
森林の保全、そして木材資源の日本での安定供給という
当社グループのお客様である中越パルプ工業(株)様
社会的な意義のある事業にかかわれることをうれしく
は、伊藤忠商事(株)様や日本の海運会社 3 社、香港の企
思っています。木材チップの価格は高値で安定している
業とともにベトナムでアカシアの植林事業を行うため
ので、長期的に利益も確保できるでしょう」と、事業へ
2005 年 7 月に現地法人 Acacia Afforestation Asia(AAA)
の期待を語ります。
社を設立しました。飯野海運
(株)
も海運 3 社の 1 社として
同社に出資し、ベトナムでの森づくりに参画しています。
プロフェッショナルが支える船の運航
A A A 社 は こ の 植 林 事 業 で 、同 国 南 部 に 計 1 5 5 0 ヘ ク
タールに及ぶアカシアの森を作り出しました。アカシア
こうして伐採された木は細かく砕かれて木材チップ
は 7 年間で成木になります。現地では森を 7 区画に区分
と な り、日 本 ま で 船 で 運 ば れ 紙 の 原 料 に な り ま す。飯
して、1 年に 1 区画ずつ伐採して植林するサイクルをつ
野海運(株)では、木材チップ専用船を4隻運航しており、
くり、毎年一定の収穫を得ながら持続可能な木材供給を
うち 2 隻が中越パルプ工業(株)様向けです。1隻は木
続けています。
材チップ専用船として標準的な船倉の容量が約 350
植林と伐採は森林の破壊につながると捉えられるかも
万 立 方 フ ィ ー ト の 船 で す が 、も う 1 隻 は 港 湾 施 設 が
しれませんが、必ずしもそうではありません。計画的な
小さいアジア諸国での積み込みが多い同社のニーズに
管理と伐採によって森は維持されます。また木は一定以
応えて、小回りの利く容量約 180 万立方フィートの小
上成長すると地球温暖化の一因である CO₂(二酸化炭素)
型船です。
の 吸 収 量 が 少 な く な り ま す。新 し い 木 を 増 や す ほ う が
中越パルプ工業(株)様 向けをはじめとする木材チッ
プ専用船の運航は、海運営業第 4 グループ専用船チーム
CO₂を多く吸収するのです。
よしいり・あきら
現 地 で は 、1 0 0 名 以 上 の 人 々 が 植 林 や 伐 採 、木 の 加
の 義 煎 亮 が 担 当 し て い ま す。義 煎 は「荷 主 様 の 意 向 に
工 に 携 わ っ て い ま す。新 た な 雇 用 の 創 出 に 貢 献 す る
そって、船長、港湾関係者をいかにコーディネイトする
だけでなく、貴重な外貨収入の機会を提供することにも
か、常に気を配っています」と話します。
常務執行役員・近光護
木材チップ専用船の運航業務を担当する義煎亮
「SHIN CHUETSU」の船長・坂井利春
飯野海運 経営報告書 2011
14
船の運航という業務は一般にはあまり知られていませ
んが、船は船長をはじめとする乗組員だけでは動きませ
チップヤード(チップの保管場所)までチップを効率的
ん。義煎ら運航担当者は荷主と連絡を取って船の航海計
に運ぶことができるようになっています。
画を作ります。それに従って、船長に対して行き先や貨
物の内容などを指示します。また燃料など消耗品の船へ
中越パルプ工業(株)様向け専用船「SHIN CHUETSU」
(新中越、182 万立方フィート型)船長の坂井利春は、海上
の補給を行います。貨物を積み込む港、荷揚げする港に
勤務が 25 年に及びます。「木材チップは乾燥物なので、
ある船舶代理店に依頼し、税関、入管、検疫などの入出
ダスト(ほこり)や臭気によって大気や海洋に汚染を生
港に関わる手続きを手配します。時には新たな輸送の姿
じ さ せ な い よ う、細 心 の 注 意 を 払 い ま す。ま た 航 海 中
について荷主に提案を行うこともあります。
は事故を起こさないことを常に考えて行動していま
海運業では、輸送する貨物によってその性質や形状が
す」と語ります。ベテランの坂井でも木材チップ輸送に
↙
↙
ベトナムの植林されたアカシアの森
伐採されたアカシア
飯野海運(株)が運航する「PAX SILVA」に
木材チップを積み込む様子(豪、アルバニー港)
異なり、荷主からの要求も変わってきます。木材チップ
特化した「SHIN CHUETSU」の運航には難しさを感じる
専用船は、軽くてかさばるチップを多く積み込めるよう
場面もあるそうです。
船倉の容積が通常の貨物船より大きく取られています。
本船が就航するベトナム‐日本間は台風の影響を受
そのために物資を積む港ではこの大きな船倉にできるだ
け や す い 航 路 で す。ま た 可 燃 物 で あ る チ ップを積むた
け早く、多くのチップを積むための工夫が求められます。
め、船 内 で の 火 気 の 取 り 扱 い の 注 意 や 禁 煙 も 船 員 に 徹
一方で、荷揚げする港では、クレーンやベルトコンベア
底させる必要があります。これまで「SHIN CHUETSU」
中越 パル プ工 業株 式会 社東 京事
当社が飯野海運と関係を持っ
たのは
1988年に「M OMO SHIM A MAR
U」
( 桃島 丸)
で、 中 国・ 海 南 島 か ら ユ ー カ
リチップを
輸送 して いた だ い た の が 最 初
の取引でし
た 。 そ の 後 に 1992 年で 当社 がベ
トナ ムで
のアカシアチップ資源を開発
した時に協
力 い た だ き、 と も に 資 源 開 発
を進めてま
い り ま し た。 飯 野 海 運 は 当 社
の「 盟 友」
とい える 大切 な存 在で す。
1998 年に はア ジア 向け では 一番
15
な ど と、陸 上 の 荷 役 設 備 を 組 み 合 わ せ て 使 う こ と で、
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
大き な
務所
近藤 博氏
飯野 海運 は資 源開 発の「盟 友」です
チ ッ プ 専 用 船 で あ る「SH IN CHU
ETSU 」を
建 造 し て い た だ き ま し た。 現
在もアジア
材の輸送で最も重要な役割を
担っていま
す。 本 船 は 業 界 で も 唯 一 の 船
型 で、 そ の
機動的な運航で当社の事業に
大変役立ち
ま し た。 ベ ト ナ ム の ア カ シ ア
は今では当
社の 製紙 原料 の 30% 以上 を占
める 主要 樹
種 で す。 資 源 争 奪 戦 が 苛 烈 と
な る 中 で、
これからもご協力いただける
ことを期待
しま す。
せん。無事故は坂井をはじめ関係者の不断の努力があれ
のみならず世界に視野を向けて、ビジネスの拡大を図る
ばこそです。
予定です。
船 の 安 全 は 陸 上、海 上 の プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル た ち に
よって支えられているのです。
集
今後もこれまでつちかってきたノウハウを生かし、日本
特
は大きな事故を起こしたり、巻き込まれたことはありま
私 た ち 日 本 人 は「モ ノ」が あ る こ と を 当 た り 前 と 思 う
生活をしていますが、原料や素材の安定供給はそれを維
持するための重要な要素です。「海運業、そして飯野海
小型船・短距離運航は当社グループの強み
運グループが資源輸送という形で日本の生産活動を見え
ないところから支えています。それをステークホルダー
現在では日本の製紙会社の植林事業はアジア全域に広
の皆様に知っていただきたいのです」(義煎)。
がりました。ベトナム、さらにはラオスやカンボジアで
木材チップ専用船を含むドライバルクキャリアー
↙
↙
木材チップを積み出すベルトコンベア。
粉塵が飛び散らないように霧状の水をかける
チップヤードにたまった木材チップの山
植林が行われ、木材チップが日本に運ばれます。近光は
「当社グループは小型船による短距離運航を強みにして
きました。近距離の木材チップ輸送の活発化は、私たちの
ロールにまかれた出荷前の紙
(中越パルプ工業(株)様提供)
(ばら積み貨物船)部門は、当社グループを支える重要
部 門 の 一 つ で す。新 し い 中 期 経 営 計 画「IEG14」で も、
この部門の拡大を目標に掲げています。
強みを活かせるビジネスチャンスです」と見ています。
近光は「当社グループは、生活に不可欠なものの輸送
当社グループでの木材チップ専用船の歴史は比較的新
を手掛けています。日本の製造業をわれわれが支えてい
しく、1989 年建造で、現在も活躍中の小型チップ専用船
るという自負を持ってこれからも事業を進めます」と、
「RAISHU」( 雷州、97 万立方フィート型)に始まります。
抱負を語っています。
日 本 経 済 を 支える 飯 野 海 運 グ ル ー プ
当社グループは 1899 年(明治 32 年)に
事 業 で、当 社 グ ル ー プ は 特 に 中 東 か ら
舞鶴港での石炭運送業を行う会社として
極東地区ではトップシェアを占めてい
誕生しました。創業以来、日本の海運業
ま す。日 本 の 海 運 業 界 の 中 で は 09 年 度
の中で大きな役割を果たしてきました。
の実績で、輸送量で 7 位。ドライバルク
今回の特集で紹介した木材チップ専
で 7 位、石炭で 6 位、木材で 5 位、穀物
用 船 は、世 界 で 約 100 隻 が 運 航 さ れ、
当社グループはそのうち 4 隻を運航し
ています。
石油化学製品を運ぶケミカルタンカー
で 7 位などを占めます。
このように、当社グループは物流を通
じて日本と世界の経済活動に貢献して
います。
飯野海運(株)が運航する
木材チップ専用船「RAISHU」
飯野海運 経営報告書 2011
16
経営報告
財 務 ハ イ ラ イト( 連 結 )
2006 年
3 月期
2007 年
3 月期
2008 年
3 月期
2009 年
3 月期
2010 年
3 月期
20 11 年 3 月期
(円)
(米ドル) ※1
売上高
(億円)
734
805
951
945
770
745
866
(百万ドル)
営業利益
(億円)
124
133
165
119
41
24
28
(百万ドル)
経常利益
(億円)
110
116
161
113
22
11
12
(百万ドル)
当期純利益
(億円)
84
39
55
56
2
7
8
(百万ドル)
総資産
(億円)
1,567
1,667
1,762
1,758
1,807
1,848
2,148
(百万ドル)
純資産
(億円)
484
520
526
534
527
529
614
(百万ドル)
自己資本比率
(%)
30.9
31.2
29.7
30.2
28.9
28.3
28.3
(%)
1 株当り当期純利益
(円)
76.13
35.36
50.39
51.54
1.69
6.13
0.07
(ドル)
1 株当り純資産
(円)
440.75
474.66
477.08
497.64
489.78
490.04
5.70
(ドル)
配当
(円)
15
15
15
15
12
6
0.07
(ドル)
配当性向 ※2
(%)
19.7
42.4
29.8
28.9
711.8
97.9
97.9
(%)
1.55
1.59
1.69
1.76
1.81
1.85
1.85
ネット D E レシオ ※3
※1 2011 年 3 月期の米ドル表示金額は、円建て金額を期中の当社グループの社定レートの平均( 1 米ドル = 86.04 円)で換算したものです。
※2 配当性向= 1 株当たり配当額÷ 1 株当たり当期純利益
※3 ネット DE レシオ=(有利子負債−現金及び現金同等物)÷ 純資産額 [ 期末 ]
17
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
売上高・営業利益・経常利益・当期純利益
売上高(左軸)
1,000
営業利益(右軸)
経常利益(右軸)
当期純利益(右軸)
(億円)
951
900
165
805
800
734
700
110
500
770
119
120
100
80
56
60
41
39
200
07 年 3 月期
08 年 3 月期
総資産・純資産・自己資本比率
1,800
純資産(左軸)
30.9
自己資本比率(右軸)
1,567
1,667
1,762
29.7
1,758
1,807
1,848
30
28.9
28.3
800
26
400
0
06 年
3 月期
520
07 年
3 月期
526
08 年
3 月期
534
09 年
3 月期
527
10 年
3 月期
529
11 年
3 月期
1 株当たり純資産
520.00
29
27
600
484
100
80
(円)
76.13
60
40
20
25
24
51.54
50.39
35.36
0
15
15
15
15
06 年
3 月期
07 年
3 月期
08 年
3 月期
09 年
3 月期
10 年
3 月期
6.13 6
11 年
3 月期
1.85
1.81
497.64
489.78
480.00
1.69 12
1.90
474.66
0
11 年 3 月期
ネット DE レシオ
(円)
500.00
20
配当
28
1,000
200
32
31
30.2
1,200
10 年 3 月期
1 株当たり当期純利益
%
31.2
09 年 3 月期
7
1 株当たり当期純利益・配当
(億円)
1,600
1,400
11
2
06 年 3 月期
40
24
22
100
経営報告
55
総資産(左軸)
140
113
84
300
2,000
745
116
400
0
180
160
161
133
124
600
(億円)
945
490.04
1.80
477.08
1.70
1.69
1.76
08 年
3 月期
09 年
3 月期
460.00
1.60
440.00
1.59
1.50
420.00
400.00
1.55
440.75
06 年
3 月期
07 年
3 月期
08 年
3 月期
09 年
3 月期
10 年
3 月期
11 年
3 月期
1.40
06 年
3 月期
07 年
3 月期
10 年
3 月期
11 年
3 月期
飯野海運 経営報告書 2011
18
グル ー プ 事 業 の 全 体 像
当社グループは、外航海運業と内航・近海海運業からなる海運業と不動
産業を主な事業としています。海運業では、船舶の運航や所有(船舶貸渡業)、
船舶管理業のほか、海運代理店、船用品販売などを行っています。不動産業
では、オフィスビルを中心とした不動産賃貸業、ビル管理業、倉庫業、フォト
スタジオ経営などを行っています。海運業、不動産業のいずれにおいても、
貨物の運送やビルの賃貸のみにとどまらず、船舶やビルの管理などの関連
する事業を一貫して行うことで、質の高いサービスを提供しています。
船用品販売業 他
倉庫業
イイノエンタープライズ(株)
倉庫業
泰邦マリン(株)
これからも、私たちは海と陸での事業を通じて、人々の暮らしや産業を
支え、社会へ貢献していきたいと考えています。
船舶管理業
船舶貸渡業
大型ガスタンカー
イイノマリンサービス(株)他
Lodestar Navigation S.A.
海運営業第 2 グループ
Nestor Lines S.A.
Methane Navigation S.A.
Daimon Carriers S.A.
Chemroad Echo Navigation S.A.
Jipro Shipping S.A.
Tri-Tiger S.A.
他
船用品販売業
合同船舶工業(株)
Iino Shipping Asia Pte.Ltd.
小型ガスタンカー
イイノガストランスポート(株)
Iino Shipping Asia Pte.Ltd.
イイノガストランスポート(株)
19
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
ドライバルクキャリアー
海運営業第 4 グループ
Iino Shipping Asia Pte.Ltd.
不動産関連事業
ビル管理業
(株)イイノ・メディアプロ
イイノ・ビルテック(株)
経営報告
不動産賃貸
不動産関連事業
不動産営業グループ
ケミカルタンカー
海運営業第 5 グループ
代理店業
Iino Singapore Pte.Ltd.
Iino UK Ltd.
オイルタンカー
この図は、当社グループが行っている事業と、
それらを担当する会社・部門、サービスの流れを
図式化したものです。
海運営業第 1 グループ
飯野海運(株)
凡例
外航海運業、内航・近海海運業セグメントで行う事業と
その担当会社・部門
不動産業セグメントで行う事業とその担当会社・部門
外航海運業、内航・近海海運業のサービスの流れ
不動産業のサービスの流れ
飯野海運 経営報告書 2011
20
飯 野 海 運 a t a G l a n c e 部門別事業概 要( 連 結)
事業
売上高・営業利益構成比(2011 年 3 月期)
売上高・営業利益推移(2006 年 3 月期〜2011 年 3 月期)
売上高
海運業
※
外航海運業
内航・近海海運業
(億円)
1,000
750
外航海運業
売上高
営業利益
500
250
0
44.4%
626
06年
3 月期
698
07年
3 月期
849
08年
3 月期
83
83
635
609
10 年
3 月期
11 年
3 月期
878
09年
3 月期
81.7%
営業利益
海運業
※
外航海運業
内航・近海海運業
(億円)
140
120
100
80
60
40
134
102
108
112
3
20
0
内 航・近 海
海運業
売上高
営業利益
31
06年
3 月期
07年
3 月期
08年
3 月期
09年
3 月期
10 年
3 月期
4
11
11 年
3 月期
※:2011 年 3 月期より前年分を含めて
海運業を外航と内航・近海のセグメントに分割しました。
19.2 %
11.2 %
売上高
100
75
不動産業
売上高
営業利益
50
(億円)
36.5%
7.1%
88
90
0
06年
3 月期
07年
3 月期
52
53
09年
3 月期
10 年
3 月期
11 年
3 月期
7
7
9
09年
3 月期
10 年
3 月期
11 年
3 月期
営業利益
30
10
(億円)
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
08年
3 月期
55
40
20
21
88
25
0
22
25
06年
3 月期
07年
3 月期
31
08年
3 月期
部門
事業概要
30 万重量トン級の大型原油タンカー(VLCC)
をはじめ、中・小型原油タンカー、
オイルタンカー
プロダクト(石油製品)タンカーなどからなる船隊を運航しています。運航船
の多くは中長期の用船契約に基づき、世界中に広がる航路で原油や石油製品を
輸送しています。また、海洋環境保全に配慮して、保有するすべての船舶はダ
ブルハル(二重船殻)構造となっています。
ステンレスタンクを有するケミカルタンカー、メタノール専用船など、業
界でも最大級の船隊を擁しています。石油化学製品輸送に要求される高度な船
舶管理ノウハウを駆使して、全世界にわたる航路で石油化学製品、植物油、メ
経営報告
ケミカルタンカー
タノールなどを輸送しています。特に中東からアジア向け航路での石油化学製
品の輸送量は、トップクラスのシェアを誇っています。
冷凍式の大型ガスタンカーを中心とした船隊で、液化石油ガス
(LPG)
、液化天
大型ガスタンカー
然ガス
(LNG)
などを輸送しています。LPG タンカーは、中長期契約に基づき、主
に極東向け輸送に携わるとともに、アンモニアなど石油化学ガスの輸送にも取
り組んでいます。LNG タンカーでは、日本向けおよび三国間の輸送プロジェクト
への共同参画をしています。また LNGタンカーの船舶管理業務も行っています。
大型〜小型ドライバルクキャリアー、木材チップ専用船といった多様な船種
ドライバルクキャリアー
からなる船隊により、
石炭、
鋼材、
肥料、
木材チップなどを輸送しています。石炭、
木材チップ輸送では、専用船を提供し、顧客の安定輸送体制の一翼を担うと
ともに、肥料輸送では小型ドライバルクキャリアーによるフレキシブルな輸送
を提供するなど、
貨物によって異なる顧客ニーズにきめ細かく対応しています。
加圧式の小型ガスタンカーを中心とした船隊で、日本国内から東アジア、東
小型ガスタンカー
南アジアなどの近海水域で、LNG、LPG といった燃料系ガスやプロピレン、塩
ビモノマーなどの石油化学ガスなどを輸送しています。LPG、石油化学ガスの
国内輸送シェアは業界トップクラスであり、近海水域でも有数の運航規模を誇
ります。また、国内では数少ない内航 LNG タンカーを運航しています。
1960 年の旧飯野ビルの竣工に始まり、現在は東京都心部に飯野ビルを含め
不動産賃貸
6 棟のオフィスビルを所有しています。所有ビルに関しては、プランニング
から運営、管理、メンテナンスまでを一貫して行い、快適なオフィス空間を
提供しています。
東京都心部に 2 棟のフォトスタジオとレタッチオフィスを運営するととも
に、ロンドンにも支店を開設しています。この 2 つの都市を拠点とし、スタジ
不動産関連事業
オ経営のほか、グラフィックデザインやレタッチ業務などのクリエイティブ
部門も拡充させ、撮影・制作から納品まで一貫したサポートサービスを提供し
ています。
注:各部門の売上高には内部売上が含まれており、その合計値は連結売上高とは一致しません。
飯野海運 経営報告書 2011
22
部門別事業概況
外航海運業
オイルタンカー
海運営業第 1 グループ
KIHO
2011 年 3 月期の市況について
① オイルタンカー市況
新興国を中心に原油の需要が回復しつつあるものの、
新造船の竣工による船腹供給量の増加によって、総じて
船腹需給は緩く、市況は弱含みで推移しました。
② プロダクトタンカー市況
洋 上 備 蓄 船 へ 転 用 さ れ る 船 舶 が 減 少 し た こ と や、新
造船の竣工による船腹供給量の増加により市況は弱含
みで推移しました。
2011 年 3 月期の事業について
当社グループは、運航する船舶の大半を数年以上の
中長期契約に投入しています。当期においても、期中に
契約更改期を迎えた船舶においては市況の低下を反映
した更改を余儀なくされたものの、全体としては安定
した収益を維持しました。
2012 年 3 月期の見通しについて
ものと思われます。
このような状況下において、当社グループは、既存の
長期契約の維持により、引き続き安定収益の確保に努め
るとともに、今後成長が見込まれるアジアの石油需要を
見据え、船隊の整備に積極的に取り組んでいきます。
オイルタンカー(VLCC)運賃率
150
100
50
0
2009 年
4月
200
2010 年
4月
2010 年
10月
2011年
3月
中東積み / 極東揚げ
(WS)※
150
100
ングルハルタンカーでの輸送が全面的に禁止されるこ
50
原油需要の増加に伴って、長期的には需給が引き締ま
2009 年
10月
プロダクトタンカー(LR2)運賃率
オイルタンカー市況は、国際規則により 2015 年にシ
とや、米国の景気回復や中国をはじめとする新興国の
中東積み / 極東揚げ
(WS)※
0
2009 年
4月
2009 年
10月
2010 年
4月
2010 年
10月
2011年
3月
り、緩やかに回復すると見込まれます。
プ ロ ダ ク ト タ ン カ ー 市 況 は、2 0 0 8 年 の リ ー マ ン
ショックによる経済危機から立ち直り、中国など一部
の地域で石油化学原料の需要が増えていますが、プロ
ダクトタンカーの主流船型である MR 型(45000 重量ト
ンクラスのプロダクトタンカー)の新造船の竣工量が
需要を上回っているために、船腹の供給過剰の状態が
続いています。しかしながら 2012 年以降新造船の竣工
が少なくなることから、長期的には市況は回復に向かう
隆邦丸
※ WS:Worldwide Tanker Nominal Freight Scale
国際的なタンカー運賃指標
23
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
外航海運業
ケミカルタンカー
海運営業第 5 グループ
CHEMROUTE BRILLIANT
期初は前期に引き続き低調な市況でしたが、第 2 四
半期ごろから中国と東南アジアの好景気に支えられ海上
輸送量が回復し 運 賃 市 況 は 上 昇 に 転 じ ま し た。さ ら に
当期後半から原油価格の高騰に連動して燃料価格も大
幅に値上がりし た こ と が 影 響 し て、運 賃 市 況 は 堅 調 に
推移しました。
なお 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は東日
本 の 石 油 化 学 プ ラ ン ト の 一 部 に 被 害 を 与 え ま し た が、
期末時点では海上輸送の需要に影響を及ぼすには至っ
てはいません。
2011 年 3 月期の事業について
当社グループの主要航路である中東からアジア向けの
輸送では、アジアの堅調な石油化学の製品需要に支えら
も 調 整 局 面 を 迎 え る 可 能 性 が あ り ま す。そ の 中 で 経 済
成 長 を 続 け る 東 南 ア ジ ア、イ ン ド お よ び 南 ア メ リ カ の
需 要 は お う 盛 で、そ れ ら の 近 隣 諸 国 の 供 給 量 に 限 度 が
あ る こ と か ら、欧 米 な ど 遠 隔 地 か ら の 輸 送 が 増 え る 傾
向 に あ り ま す。こ の よ う な 長 距 離 輸 送 の 増 加 が 船 腹 の
需 給 バ ラ ン ス を 引 き 締 め、徐 々 に 運 賃 市 況 が 回 復 し て
いくと予想されます。
このような状況の中で、当社グループは最適船型や船
腹調達方法の再検討、不経済船の処分および運航コスト
の削減などを実施しながら、主要航路である中東航路で
の優位性を維持・拡大することで引き続き安定収益源を
確保します。それとともに、将来を見据えて新規航路の
開拓に努め、さらなる収益の拡大を目指します。
ケミカルタンカー運賃率(10,000 トン積み)
100
州向けの輸送では毎月2航海の配船が定着し、安定的な
80
輸送量を確保しました。運賃市況が好転し始めた夏場以
60
降には極東から南米向けの輸送にも取り組みました。
40
料価格高騰によるコスト増加のために収益は圧迫され
ま し た が、減 速 航 海 に よ る 燃 料 消 費 量 の 節 減 や、不 経
中東積み / 極東揚げ
($/トン)
れて、ほぼ計画通りの数量を確保しました。中東から欧
ま た 同 期 の 間 を 通 じ て 円 高 に よ る 収 入 の 減 少 や、燃
経営報告
2011 年 3 月期の市況について
中東積み / 欧州揚げ
20
0
2009 年
4月
2009 年
10月
2010 年
4月
2010 年
10月
2011 年
3月
済船・老齢船の 処 分 に よ る 船 腹 調 整 を 実 施 し て 採 算 の
向上に努めました。また 2010 年 8 月に新造 47000 重量
トン型のケミカルタンカー 1 隻を、メタノール輸送の長
期用船契約に投入しました。
2012 年 3 月期の見通しについて
世界経済の緩やかな回復に伴い石油化学製品の海上輸
送量は増加傾向に転じています。しかし依然として景気
下振れリスクが残っており、一部の航路では運賃の上昇
RABIGH SUN
飯野海運 経営報告書 2011
24
外航海運業
大型ガスタンカー
海運営業第 2 グループ
SK SUNRISE
2011 年 3 月期の市況について
① 大型 LPG 船市況
前年までの恒常的な船腹過剰は解消されつつありま
す。また 2008 年以降の世界景気の低迷によって、建設
が遅れていた中東、特にカタールやアラブ首長国連邦を
中心とする新規プラントからの LPG の出荷が開始されま
新造船の需要が見込まれます。そうした需要を捉えて、
引き続き輸送力の増強に取り組みます。
大型 LNG 船市況も堅調に推移することが見込まれま
す。外 航 船 の み な ら ず、日 本 国 内 の 内 航 船 を 含 め て、
長 期 契 約 に よ る 安 定 収 益 を 確 保 す る こ と を 目 指 し、事
業の拡大を目指します。
した。アジアを中心とした新興諸国のおう盛な需要も重
なって、総じて堅調に推移しました。
② 大型 LNG 船市況
大型 LPG タンカー(VLGC)運賃率
60
中東積み / 極東揚げ
($/トン)
LNG の開発プロジェクトの遅延や、新エネルギーと
し て 注 目 さ れ る シ ェ ー ル ガ ス の 開 発 や 増 産 に 伴 っ て、
米国の LNG 輸入は大幅に減りました。そのため期初は、
40
20
余剰船腹の増加により用船料は低水準で推移しました
が、その後は世界的 な 猛 暑 の 影 響 や 北 半 球 の 冬 季 の 暖
房の需要により一転して船腹不足となり用船料は高騰
0
2009 年
4月
2009 年
10月
2010 年
4月
2010 年
10月
2011年
3月
しました。
2011 年 3 月期の事業について
大型 LPG と大型 LNG の二つの事業ではともに中長期
契約への投入によって、安定的な収益を確保しました。
ま た期中に契約を更 改 し た 船 舶 に お い て も、有 利 に 契
約を更改することができました。さらに大型 LPG 船で
は、堅 調 な 市 況 を 背 景 に、船 価 情 勢 を 考 慮 し な が ら、
国内荷主向けに新造船における中長期の契約を獲得し
ました。
2012 年 3 月期の見通しについて
大 型 LPG 船 市 況 に お い て は、新 造 船 の 流 入 が 限 ら れ
る一方、高齢船のスクラップが見込まれることから、今
後 も 船 腹 需 給 は 引 き 締 ま り、堅 調 に 推 移 す る と 思 わ れ
ます。このような事業環境の下で、最新鋭の競争力のある
25
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
豊洲丸
外航海運業
ドライバルクキャリアー
海運営業第 4 グループ
Iino Shipping Asia Pte. Ltd.
AMAKUSA ISLAND
経営報告
2011 年 3 月期の市況について
2012 年 3 月期の見通しについて
当期の初頭は中国をはじめとする新興国向けの鉄鋼原
ドライバルクキャリアーの市況は、船腹供給面では過
料や穀物などの高い輸送需要によって堅調に推移しまし
去 2 - 3 年間に発注した船舶の竣工により、供給量の増加
た。しかし、その後は第 2 四半期にかけてのオーストラ
が見込まれます。一方で需要面においては、引き続き中
リアにおける大雨の影響などによって、鉄鋼原料用石炭
国を中心とする新興国向けの鉄鉱石や穀物などのおう盛
の出荷が縮小したことで、大型船の市況が低迷し、それ
な輸送需要に支えられ、比較的堅調に推移するものと予
に影響されて中小型船の市況も次第に低下しました。
想されます。
2010 年末から 11 年の初頭にはリーマンショック以来
このような状況のなかで、当社グループは、数量輸送
の低い水準まで下落しましたが、その後期末に向けて急
契約を中心とする中長期契約による安定収益の確保を基
速に回復し、比較的堅調な水準で期末を迎えました。
本に、市況リスクの反面で好況時には利益を拡大できる
短 期 契 約 を 織 り 交 ぜ、市 況 に 応 じ た 収 益 を 確 保 で き る
2011 年 3 月期の事業について
製紙会社向け木材チップ専用船、電力会社向け石炭専
ポートフォリオを継続します。また効率配船と安全運航
に努め、収益の拡大を目指します。
用船によって安定収益を確保する一方で、肥料や石炭な
どの数量輸送契約を中心に積極的に集荷を行い収益の確
大に努めました。日本を中心とするアジア・太平洋水域
に加えて、中東、南米などにも配船し、航路の多角化を
進めました。さらに運航コストの削減や効率的配船など
に努め、収益を向上させました。
ドライバルクキャリアー(パナマックス型)用船料
太平洋水域
( 1 日当たり / $)
40,000
30,000
20,000
10,000
0
PAX SILVA
2009 年
4月
2009 年
10月
2010 年
4月
2010 年
10月
2011 年
3月
飯野海運 経営報告書 2011
26
内航・近海海運業
小型ガスタンカー
イ イ ノ ガ ス ト ラ ン ス ポ ー ト( 株 )
Iino Shipping Asia Pte. Ltd.
DAIMON
2011 年 3 月期の市況について
厳冬の影響もあり民生用 LPG の需要は堅調で、石油化
学原料用 LPG も競合原料であるナフサの価格高騰により
需 要 は 安 定 的 に 推 移 し ま し た。そ の 結 果、当 期 の 国 内
LPG 需要はここ数年の減少傾向に歯止めがかかりました。
石油化学ガス需要は、中国向け石油化学製品の需要が
前期に引き続きおう盛であったため、東日本大震災によ
る一部のプラントの停止はあったものの、国内の石油化
学プラントは総じて順調に稼働しました。
このような状況で、内航・近海ガスタンカー市況は、
船腹需給は前期に比べ引き締まりました。近海では、中
国、東南アジア域内での石油化学ガス輸送が堅調に推移
して市況は次第に改善しました。
2011 年 3 月期の事業について
前期に続き、内航部門では、荷動きに合わせ LPG や石
油化学ガス輸送へバランス良く船腹を投入して船腹需
給 の調整をはかるな ど、期 中 を 通 じ 効 率 的 な 運 航 を 行
う こ と で、採 算 の 向 上 に 努 め ま し た。一 方 で 近 海 部 門
では円高での売り上げ減少はあったものの船腹の大半
が中長期契約であるために安定した収益を確保しまし
た。また期中に2隻の新造船を船隊に加えました。
2012 年 3 月期の見通しについて
内航のLPG 輸送においては、他エネルギー体への転換、
LPG 元売り各社の統合による物流合理化などから輸送量
東南アジア域での海上輸送需要も底堅く推移すると見込
まれるため、回復基調になると思われます。
当社グループとしては、内航においては隻数・船型の
最適化を進め、荷主ニーズに応じた効率的な運航を行い
ます。日本を起点とした物流では、内外航併用船を活用
し、日本国内と中国・韓国など近隣国との物流を融合し
たサービスを充実させます。
近海においても、国内荷主の海外展開をサポートする
とともに、アジア域内の市場調査を実施の上、海外荷主
との取引を強化しながら、シェアの拡大を目指します。
そのために老齢船の代替を含め、環境への配慮にも対応
した高品質な輸送サービスを提供するため、新造船の建
造など設備投資にも積極的に取り組みます。
内航 船舶 業務 支援 シス テム を展
示会 に出 品
IP
市 に お い て 海 事 展「 BAR I-SH
海運業の盛んな愛媛県今治
、飯野 シス テム(株 )が開 発し たイ
2011 」が 2011 年 5 月に 開催 され
eb
業 務 支 援 シ ス テ ム「 WIN G(W
ン ター ネッ ト利 用 型 の 内 航 船 舶
展
出
に
と
も
の
力
協
」を 浅 川 造 船(株 )様 の
Integ rated Grou pwa re)
電話
FAX、
や
と船 との 連絡 は紙
しま した 。内航 海運 業で は事 務所
携業 務に 手間 と時 間が かか っ
の連
、そ
など で行 われ るこ とが 多く
ター ネッ トに つな がっ たパ ソコ
てい まし た。 WIN G は船 内の イン
事
船用 品の 発注 など を行 い、船と
ン上 で書 類の 作成・提出 、部品・
を実
率化
の効
、業務
とし
有を 可能
務所 が一 体化 する こと で情 報共
し
ンス トー ルし たパ ソコ ンを 配備
Gをイ
WIN
では
会場
現し まし た。
作
と操
便性
組み 込ん だ」 とい う利
「現 場が 本当 に必 要な 機能 のみ
。
どに 実演 を交 えて 紹介 しま した
者な
性の 良さ を、 内航 海運 関係
は減少傾向が続くと予想しています。また石油化学ガス
輸 送 に つ い て は、メ ー カ ー 生 産 拠 点 の 海 外 移 転 な どに
よって、物流は国内にとどまらず、アジア域まで範囲を拡
大した動きになると見込まれます。
近海域の市況は、石油化学ガスを中心に、中国向けや
ム実演 の様子
「BA RI-SH IP 2011 」での システ
27
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
不動産業
不動産賃貸
不動産営業グループ
汐留芝離宮ビルディング
東京都心部(都心 5 区)オフィスビル 平均賃料推移
東京都心部のオフィスビル賃貸市況は、本格的な景気
40,000
回復が足踏みしている中で、空室率が高止まりしていま
30,000
す。賃料についてもテナントの誘致競争の激化から、い
まだに底打ちを感じられない状況にあります。
2011 年 3 月期の事業について
経営報告
2011 年 3 月期の市況について
都心 5 区平均
(円 / 坪)
都心 5 区新築ビル
20,000
10,000
0
2009 年
4月
2009 年
10月
不動産業をめぐる事業環境には厳しいものがありま
2010 年
4月
2010 年
10月
2011年
3月
※ 資料は三鬼商事(株)によります。
したが、当社グループの不動産事業における既存オフィ
スビルの賃貸では、テナントへの質の高いサービス提
供によって空室の増加を回避しており、総じて高い稼
働率を維持しました。
2012 年 3 月期の見通しについて
2011 年 3 月に発生した東日本大震災によりオフィス
ビル賃貸市況の先行きが不透明になっています。また
今後数年間にわたって、東京都心部では大量の大規模
ビルの竣工によるオフィスの供給の増加が予想されて
東京都心部(都心 5 区)オフィスビル 空室率推移
都心 5 区平均
(%)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
2009 年
4月
2009 年
10月
2010 年
4月
都心 5 区新築ビル
2010 年
10月
2011年
3月
※ 資料は三鬼商事(株)によります。
い ま す。オ フ ィ ス 需 要 の 回 復 が 遅 れ る よ う で あ れ ば、
過剰供給による空室率上昇で賃料がさらに低下する懸
念もあります。
こ う し た 事 業 環 境 の 下 で、当 社 グ ル ー プ で は、引 き
続きテナントに対して質の高いサ−ビスを提供するこ
と に よ り 既 存 ビ ル 稼 働 率 の 維 持・向 上 を 目 指 し、安 定
収益の確保を図ります。
また 2011 年秋の開業を予定している飯野ビルについ
ても、全オフィスフロアで入居テナントが内定してい
ます。最新鋭の設備や高品質の管理・運営体制により、
他 の 既 存 ビ ル 同 様 に「安 全」と「安 心」を 提 供 で き る
ように全力をつくします。
笹塚センタービル
飯野海運 経営報告書 2011
28
不動産業
不動産関連事業
不動産営業グループ
( 株 )イ イ ノ ・ メ デ ィ ア プ ロ
イイノ・広尾スタジオ
2011 年 3 月期の市況・事業について
2012 年 3 月期の見通しについて
景気悪化に伴う広告の不振、およびデジタル化の進展
前期においては、企業業績回復の期待が高まっていま
によって出版業界におけるコスト削減の動きが一層強ま
したが、3 月 11 日に発生した東日本大震災によって、再
りました。そのため、撮影のためのスタジオ利用時間は
び景況感の悪化が予想され、企業の広告関連費用もより
増加したものの、一件当たりの単価は減少しました。こ
一層削減される懸念が出てきています。
うした中で当社グル−プが運営しているフォトスタジオ
このような状況の中、スタジオの利用率の大幅な回復
では、広告・CD ジャケットなどのデザイン制作、デジ
は期待できないものの、コストの削減とデザイン制作部
タルフォトのレタッチングなど、関連サービスを幅広く
門やレタッチング部門をさらに拡充し、総合的なサ−ビ
提供することにより収益の維持に努めました。
スを提供することで、収益の確保を目指していきます。
(株 )イイ ノ・ メディア
(株 )イイ ノ・ メデ ィア
イイノ・南青山スタジオ
29
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
中嶋道太郎
皆様の支えに感謝
やモデルのマネジメ
ント事務所が近くに
多 い 広 尾、 南 青 山 に
位
置する利便性があ
だ き、 会 社 が 成 長 で
き ま し た。 こ れ は 多
り ま す。 さ ら に 設 立
当 初 か ら、 デ ジ タ ル
くの利用者の皆様の
支 援 に よ る も の で、
写真に対するさまざ
ま な 技 術 で、 専 門 家
心か ら感 謝を いた しま
す。
を 養 成 し て き ま し た。
それが利用いただ
当社 はイ イノ ・広 尾ス
タジ オで の雑 誌や
いた 理由 の一 つに あっ
たと 思い ます 。
広告 向け の写 真撮 影に
使わ れる フォ トス タ
今後はインターネッ
トを通じた写真や
ジオ 事業 から 始ま りま
した 。そ して デザ イ
映像の利用がさらに
増
え、 当 社 の 活 動 す
ンや 「レ タッ チ」 と呼
ばれ るデ ジタ ル画 像
る範囲も一段と広が
る で し ょ う。 こ れ ま
修正 、映 像・ 写真 撮影
など に事 業を 広げ て
での実績をさらに伸
ば し て、 成 長 を し て
いき まし た。 いず れも
優れ た技 術を 持つ と
ほし いと 願っ てい ます
。
利用 者の 方か ら評 価を
いた だい てい ます 。
200 2 年に はイ イノ・南
青山 スタ ジオ の営 業
を開 始し まし た。さら
に 06 年に 設立 した ロ
ンド ンオ フィ スは 、海外
から 日本 へ、そし
て日 本か ら海 外へ の撮
影コ ーデ ィネ ーシ ョ
ンを 行っ てい ます 。
私は 、元は 船乗 りで した
が不 動産 事業 に
異動 し、 この 会社 の立
ち上 げか らか かわ っ
て昨 年に 常務 を退 きま
した 。船 会社 の不 動
産部 門が まっ たく 違う
分野 で成 功で きた の
は、多く のプ ロの フォ
トグ ラフ ァー の皆 さ
んに 支え てい ただ いた
ため です 。当社 のス
タジ オは 、デ ザイ ン事
務所 、ク リエ イタ ー
月 の 設 立 以 来、 多 く
イイノ・広尾スタジオ
プロ は、199 7 年 6
プロ 顧問
の皆様に支えていた
設備の概況
運航船腹( 2011 年 3 月 31 日現在 )
社船
保有形態
船種
隻数
外航海運業
重量トン数
隻数
合計
重量トン数
隻数
重量トン数
4
951,928
4
299,724
8
1,251,652
ケミカルタンカー
9
292,430
29
841,095
38
1,133,525
大型 LNG タンカー
12
860,573
0
0
12
860,573
大型 LPG タンカー
1
49,651
2
79,595
3
129,246
13
910,224
2
79,595
15
989,819
ドライバルクキャリアー
4
344,827
12
500,457
16
845,284
木材チップ専用船
3
85,246
1
46,900
4
132,146
小計
7
430,073
13
547,357
20
977,430
大型ガスタンカー
ドライバルク
キャリアー
小型ガスタンカー
小型 LNG タンカー
1
1,938
0
0
1
1,938
小型 LPG タンカー
14
18,683
13
41,998
27
60,681
溶融硫黄船
小計
合計
1
1,704
0
0
1
1,704
16
22,325
13
41,998
29
64,323
49
2,606,980
61
1,809,769
110
4,416,749
経営報告
オイルタンカー
小計
内航・近海
海運業
用船
※社船には、グループ会社が所有する船腹を含みます。
※社船のうち、大型ガスタンカー 12 隻およびドライバルクキャリアー 2 隻は他社と共有しており、その共有相手持分は 798,110 重量トン (K/T) です。
賃貸ビル
名称
所在地
延床面積(㎡)
東京桜田ビル
東京都港区西新橋
17,762.63
東京富士見ビル
東京都千代田区富士見
10,674.86
飯野竹早ビル
東京都文京区小石川
笹塚センタービル
東京都渋谷区笹塚
11,973.11
汐留芝離宮ビルディング
東京都港区海岸
32,702.37
汐留芝離宮
ビルディング
4,736.37
77,849.34
合計
飯野ビルディング(完成予想図)
※東京桜田ビル,東京富士見ビルおよび汐留芝離宮ビルディングは、
他者と共有しており、延床面積には他者持分を含めて記載しています。
2011 年秋開業予定
飯野ビルディング
東京都千代田区内幸町
約 104,000(予定)
笹塚センタービル
フォトスタジオ
名称
所在地
東京富士見ビル
東京桜田ビル
飯野竹早ビル
主要設備
イイノ・広尾スタジオ
東京都渋谷区広尾
白ホリゾント スタジオ × 5 面
ゲストルーム × 1 室
デザインルーム
レタッチルーム
イイノ・南青山スタジオ
東京都港区南青山
白ホリゾント スタジオ × 4 面
外光 スタジオ × 1 面
ゲストルーム × 1 室
イイノ・グラフィックイメージ
表参道オフィス(フォトレタッチ)
東京都港区南青山
レタッチブース × 7 室
ミーティングルーム × 2 室
イイノ・広尾スタジオ
イイノ・南青山スタジオ
飯野海運 経営報告書 2011
30
運 航 船 腹 リ スト( 2 011 年 3 月 3 1日 現 在 )
飯 野海運(株)
大型 L N G タ ン カ ー
オイルタンカー
船
名
KOHO Ⅰ
KIHO
隆邦丸
DIAMOND CHAMP
GLORY CRYSTAL
PACIFIC BRAVERY
FREJA SELANDIA
FREJA FIONIA
8隻
重量トン数(K/T)
竣工
301,045
300,866
281,050
107,198
84,997
68,967
53,815
53,714
2002
2006
1999
2003
2000
1999
2007
2007
SK SUNRISE
アル ズバーラ
ブルーク
ゼクリート
アル レイヤーン
アル ワックラ
アル ホール
アルビダ
アル ワヂバ
ドーハ
アルジャスラ
エルエヌジーヴェスタ
12 隻
1,251,652
ケミカルタンカー
重量トン数(K/T)
竣工
MAGELLAN ENDEAVOUR
GULF ELAN
TAMIAT NAVIGATOR
CARIBBEAN SPIRIT
CHEMWAY ARROW
CHEMWAY LARA
PACIFIC HORIZON Ⅱ
JIPRO ISIS
CHEMWAY GAIA
CHEMROAD QUEST
CHEMROAD LILY
CHEMROAD ECHO
CHEMROAD HAYA
CHEMROAD FUJI
CHEMROAD DITA
CHEMROAD JOURNEY
CHEMROAD ROSE
CHEMROAD WING
MADONNA
CHEMROAD NOVA
CHEMROAD VEGA
CHEMROAD MEGA
RABIGH SUN
CHEMROUTE SUN
CHEMROUTE BRILLIANT
CHEMROUTE SKY
CHEMSTAR MASA
CHEMSTAR MOON
CHEMSTAR YASU
CHEMSTAR BRAVE
SKY DREAM
CHEMSTAR SEVEN
CHEMSTAR BELLE
CHEMSTAR KING
VICTORY OCEAN
CHEMSTAR DUKE
LODESTAR GRACE
船
名
47,931
46,891
46,625
46,383
38,065
37,982
37,981
37,946
37,300
34,832
33,944
33,944
33,916
33,888
33,554
33,526
32,046
32,000
30,561
30,407
30,383
30,364
30,001
25,615
25,594
25,401
20,819
19,949
19,896
19,884
19,807
19,700
19,662
19,508
19,481
19,441
14,298
2006
2007
2010
2004
2007
2007
2007
2008
2007
2010
2006
2004
2004
2006
2009
2009
2005
2005
1999
2002
2003
2000
2008
2008
2009
2010
2009
2002
2008
2003
2010
2005
2003
1998
1997
2000
2002
LODESTAR GENESIS
14,000
2005
38 隻
31
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
1,133,525
船
名
タンク容積(㎥)
138,270
135,509
135,466
135,420
135,358
135,310
135,294
135,279
135,249
135,202
135,169
127,547
竣工
2003
1996
1998
1998
1997
1998
1997
1999
1997
1999
2000
1994
1,619,073
大 型 L PG タ ン カ ー
船
名
タンク容積(㎥)
LOTUS GAS
豊洲丸
ROSE GAS
3隻
80,186
78,462
35,204
竣工
2008
1997
2007
193,852
ドライバルクキャリアー
船
名
重量トン数(K/T)
BLUE ISLAND
JP CORAL
AMAKUSA ISLAND
PEGASUS ISLAND
ATLAS ISLAND
DANNAN ISLAND
NEW CREATION ※1
152,398
81,887
81,887
77,830
76,554
75,637
35,283
32,258
32,154
28,611
28,556
28,418
28,398
28,202
JA FRONTIER
CRANE ISLAND
JA ALADDIN DREAMⅡ
LAUREL ISLAND ※1
AURORA ISLAND
DIANA ISLAND
PHOENIX ISLANDⅡ
14 隻
竣工
2000
2007
2005
2002
2008
2006
2006
2008
2009
2003
2005
2009
2010
2011
788,073
木材チップ専用船
船
名
重量トン数(K/T)
竣工
47,002
46,900
25,331
12,913
1991
2007
1998
1989
SHINTONAMI
PAX SILVA
SHIN CHUETSU
RAISHU
4隻
飯野海運(株)
132,146
合計
79 隻
イイノガストランスポー ト(株)
Iino Shipping Asia Pte. Ltd.(2010 年12 月 31 日現在)
小型 LN G タンカ ー
船
名
ドライバルクキャリアー
タンク容積(㎥)
NORTH PIONEEER
2,513
1隻
竣工
2005
2,513
名
タンク容積(㎥)
海神
26 隻
重量トン数(K/T)
竣工
28,655
28,556
1996
2005
竣工
8,712
3,543
3,520
3,519
3,517
3,512
2,522
1,830
1,830
1,830
1,830
1,829
1,826
1,723
1,721
1,554
1,524
1,507
1,498
1,450
1,443
1,413
1,310
1,260
1,207
2007
2010
1991
2006
2010
1996
1998
2004
2004
2002
1999
2007
1996
1996
1995
1996
1986
1990
1982
2002
2009
2006
1999
2008
1987
1,159
1991
57,211
小 型 L PG タ ン カ ー
船
名
タンク容積(㎥)
5,020
ORIENTAL OKI
1隻
Iino Shipping Asia Pte. Ltd.
飯野海運グループ運航船腹
竣工
2006
5,020
合計
合計
経営報告
KENTMERE
ORIENTAL HAWK
PETRO MILLENNIUM
ORIENTAL MIHO
DAIMON
GLOBAL EXPRESS No.2
ゼウス
俊邦丸
FORTUNE QUINTET
第二十一光邦丸
第百三菱化丸
秀邦丸
瑞陽丸
成邦丸
第十八光邦丸
大建丸
第十神福丸
平成丸
第二太華山丸
瑞光丸
桃邦丸
久邦丸
太平丸
海邦丸
菱邦丸
名
2隻
小型 LPG タンカ ー
船
船
PHOENIX ISLAND
LAUREL ISLAND ※1
3隻
110 隻
58,589
溶融硫黄船
船
名
タンク容積(㎥)
硫邦丸
1隻
イイノガストランスポート(株) 合計
785
竣工
1992
785
28 隻
※1 2011 年 3 月 31日(Iino Shipping Asia Pte. Ltd. は 2010 年 12 月 31日)
現在で、他の海運会社から短期的に用船していた船舶で、
当社グループが実質的に支配している船腹ではありません。
飯野海運 経営報告書 2011
32
コ ー ポ レ ー ト ガ バ ナ ンス
3つの軸で構成する
コーポレートガバナンス体制
当社グループでは、コーポレートガバナンス(企業統
に行うことができます。
三様監査:監査のための体制
当社では、監査役、会計監査人、内部監査室の三者が
治)を「企 業 を 構 成 す る さ ま ざ ま な 主 体(ス テ ー ク ホ ル
連携して監査を行う、三様監査の体制をとっています。
ダー)間の利害を調整し、効率的な企業活動を実現する
監査役は、取締役会や経営執行協議会なども含めた企業
ための枠組み」と考えています。
活動全体の監査を行い、会計監査人は、財務諸表を監査
当社のコーポレートガバナンスを構成する内部統制
します。内部監査室は社長直属の部署で、当社グループ
システムは、「取締役会・経営執行協議会」「三様監査」
の事業活動、および三委員会(後述)の監査を行います。
「三委員会」の三つの軸を中心に構成されています。
取締役会・経営執行協議会:業務執行のための審議機関
原則として毎月 1 回、取締役および常勤・非常勤監査
役により構成される取締役会が開催され、業務の執行
を 監 督 し、重 要 事 項 を 決 定 し て い ま す。ま た 取 締 役 お
よ び 常 勤 監 査 役 に よ り 構 成 さ れ る 経 営 執 行 協 議 会 が、
監査役と内部監査室は月 1 回のミーティングで情報交換
を行い、監査役と会計監査人も密な情報交換に努めるこ
とで、それぞれの監査の品質向上を図っています。
三委員会:リスク管理のための体制
グループ全体のリスクを管理するため、グループの横
断的な組織として、コンプライアンス委員会、安全環境
原則として毎週 1 回開催されています。経営執行協議
委員会、品質・システム委員会の三つの委員会を設けて
会 は、取 締 役 会 に 付 議・報 告 さ れ る 事 項、あ る い は 業
います。これらの三委員会には飯野海運(株)の役職員の
務執行に関するその他の重要事項について、取締役会
ほか、関係するグループ会社社長もメンバーとして参加
の 権 限 の 一 部 を 委 譲 さ れ て 審 議 を 行 い ま す。毎 週 開 催
することで、それぞれのテーマに基づいたリスク管理が
することにより、経営に関する意思決定をスピーディー
グループ全体で徹底されるよう図っています。
コーポレートガバナンス体制図
ISO マネジメントシステム
の活用
株主総会
選任・解任
選任・解任
監査役会
選任・解任
監査
品質・システム
委員会
取締役会
選任・解任
当社グループを構成する主要4社<飯野海運
(株)、イイノマリンサービス(株)、イイノ・ビルテッ
ク(株)、イイノガストランスポート(株)> は、全
付議
社 規 模 で ISO9001( 品 質 マ ネ ジ メ ント シ ス テ ム)
と ISO14001(環境マネジメントシステム)の認証
代表取締役
会計監査人
付議
監査
経営執行協議会
指示
安全環境委員会
を取得しています。
ISO の 規 格 で は、PDCA(Plan-Do-Check-Action:
計画 - 実行 - 検証 - 改善)のサイクルを実施し、継
指示
付議・報告
続的な改善を図ることが求められています。当社
指示・報告
グループでは、認証を取得した品質や環境の分野
内部監査室
監査
海運・不動産
各部門
グループ各社
報告
指示
コンプライアンス
委員会
だ け で な く、経 営 全 体 の 基 本 的 仕 組 み と し て
PDCA サイクルを活用しています。
具体的には、各社・各グループにて実際に行っ
監査
33
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
ている業務プロセスを「マネジメントマニュアル」
にまとめ、具体的な業務の進め方の
コンプライアンス構造図
基準としています。
当社のコーポレートガバナンスも、
この ISO のマネジメントマニュアル
やそれを基盤とした業務によって実
現されています。さらに両者を支え
るインフラとして、文書管理や情報
インフラ」の三層構造で経営管理を
経営報告
内部統制システム
金融商品
取引法
この「コーポレートガバナンス - ISO -
コーポレートガバナンス
社内ルール
諸法令
み が ありま す。当 社 グ ル ー プ で は、
会社法
システム、情報セキュリティの仕組
行っています。
また、上記の三層を通じて、会社
法や金融商品取引法を含む諸法令と
金融商品
取引法
マネジメントマニュアル
社内ルール
諸法令
令遵守の体制を確立しています。
ISO
会社法
社内ルールを遵守し、それにより法
A
P
C
D
リスクマネジメント
ERM の手法を取り入れた
事業リスクマネジメント
インフラ
文書管理/情報システム/情報セキュリティ
市 況、為 替、事 業 コ ス ト 等 の 外 部
変 動 要 因 を 含 め た事業リスク全般
に つ い て は、ERM(Enterprise Risk
Management、全 社 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト と も 呼 ば れ る)
本社内に、緊急時に必要な機器等を備えた緊急対策室を
の手法を取り入れ、総合的に管理し、変動要因に対する
設置し、有事に速やかに対応できるよう、ハード面の環
耐性強化を図っています。
境も整えています。
ハザードリスクへの取り組み方針
緊急時の対応策と事業継続計画(BCP)の充実
当社グループでは、経営理念の最初に「安全の確保が
今回の東日本大震災では、3 月 11 日の地震発生当日に
社業の基盤」とうたい、安全の確保と維持を、経営の重
緊急対策本部を設置し、従業員と家族の安全、事業への
要課題と位置づけて取り組んでいます。安全第一で事業
影響、避難ルートの確認、義援金、風評被害対策などに
を遂行することが、人命や顧客資産の安全確保、環境保
ついて対応しました。
全につながると考えているからです。
平常時・緊急時の体制
当 社 グ ル ー プ で は、大 規 模 自 然 災 害 や 事 故、パ ン デ
ミック(感染症の世界的流行)など、企業としての事業
継続を危うくするリスクを対象として、BCP(Business
平常時には経営執行協議会および三委員会がリスクマ
Continuity Plan)の 検 討 を 進 め て い ま し た が、今 回 の
ネジメントの核となります。緊急事態発生時には、当社
震災対応の経験を活かし、非常時の通信連絡手段の整備
社長を本部長とする緊急対策本部を組織して対応します。
など、より有効に機能するよう見直しています。
飯野海運 経営報告書 2011
34
安 全・環 境 性 報 告
海 運 業 の 安全・環 境 マネジ メ ント
安全運航の重要性
海運業では、その事業の中で安全運航を維持すること
は、何よりも重要です。当社グループでは事業を推進す
る に 当 た り、「船 舶 の 安 全 運 航 に よ る 貨 物 の 安 全 輸 送」
を重視しています。
なかでも、顧客の資産である「積荷の安全」、乗組員ら
② 廃棄物削減:
廃棄物の削減・適正処理(船舶・事務所 )
③ 天然資源の消費削減:
電力と紙の使用量削減(事務所)
④ 大気汚染防止:
燃料消費の効率化、各種ガスの排出削減(船舶)
の「人命の安全」
、船主の資産である「船体の安全」、社会
全体の資産である「環境の安全」の 4 つを追求しています。
安全の確保が、顧客満足の基盤であり、業務品質の維持・
向上につながります。また、環境負荷を低減し、環境を保
安全・品質・環境マネジメント
システムの認証取得状況
全するうえでも、安全の維持は不可欠の条件となります。
そのために当社グループでは、2011 年 6 月から、本社
安全と品質、環境に対する取り組みを継続し、改善を
の中に海務安全グループを設置しました。これらの安全
続 け る た め、当 社 グ ル ー プ の 海 運 業 で は ISO の 取 得 と
についてグループ内での対策の企画、調整、監査を強化
それに基づく事業運営を推進しています。飯野海運(株)
するためです。そして船舶の管理を行うグループ内企業
に加えて、船舶管理会社のイイノマリンサービス(株)、
のイイノマリンサービス(株)
と連携しながら、安全運航
内航・近海のガス輸送を行うイイノガストランスポート
を推進していきます。
環境保全への
グループとしての取り組み
船舶は、その運航の過程で、環境に対しさまざまな負
(株)の3社が、ISO9001 と ISO14001 を取得しています。
ISO と は 国 際 標 準 化 機 構 に よ る 規 格 で あ り、9001 は
品質マネジメントシステム、14001 は環境マネジメント
システムについてのものです。これを取得した組織は、
品質や環境についての目標設定、活動、評価、是正の取り
組みを行うことになります。
荷を与えます。当社グループでは海運業で、次の4つの
また、イイノマリンサービス(株)とイイノガストラン
環境側面について目的と目標を設定し、環境保全に取り
スポート(株)は、海運業で必ず必要な ISM コード(国際
組んでいます。
安全管理規則)に基づく安全管理システムの認証も取得
しています。ISOとISMコードを一体的に運用することで、
① 海洋汚染防止:
漏油やケミカル品の漏洩防止など(船舶)
35
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
安全・環境の問題に関して、さらに向上・改善すること
を目指します。
安全・品質・環境マネジメントプログラム
当社グループで船舶管理業務を行っているのは、イイノマリンサービス(株)とイイノガストランスポート(株)
で す。以 下 の 表 は、イ イ ノ マ リ ン サ ー ビ ス(株)が 実 施 し て い る「安 全・品 質・環 境 マ ネ ジ メ ン ト プ ロ グ ラ ム」の
2010 年度の達成状況と、2011 年度の目標を示したものです。安全や環境に関する活動の進捗状況を表します。
分野
目的
健康
職務傷の防止
︼
H
安全
衝突・座礁事故の防止
機関故障防止
目標項目
2010 年度目標値
(2009 年度実績)
2010 年度結果
2011 年度目標値
タンカー 0.863 以下
(0.863)
0.817
0.817 以下
貨物船 0.712 以下
(0.712)
0.000
0.000
0.001 以下(0.00274)
0.0044
0.0030 以下
設備・機器の故障・損傷 < 1 航海当たり件数>
0.010 以下(0.015)
0.006
0.010 以下
荒天遭遇による船体損傷事故 < 1 航海当たり件数>
0.0010 以下(0.0014)
0.0006
0.0010 以下
外部審査( PSC, MOI 等)の指摘項目数
<検査・審査1回当たり項目数>
0.020 以下(0.030)
0.033
0.025 以下
海難事故(衝突・火災・座礁・漏油)件数
<1航海当たり件数>
0.0025 以下(0.0032)
0.0044
0.0030 以下
6.00 以下(6.3)
5.8
6.00 以下
労働損失を伴う死傷の発生数
<船員の百万労働時間当たりの発生数>
衝突・座礁事故(岸壁接触、船底接触含む)
< 1 航海当たり件数>
︼
S
荒天回避
保安
保安侵害の
未然防止
石油メジャーによる検船(MOI )指摘事項
<受検当たり項目数>
品質
︼
Q
設備・機器の故障・損傷件数(運航スケジュール・
環境・荷役に影響を与えるもの)<船舶1隻当たり>
0.05 以下(0.053)
0.102
0.05 以下
2 年超の全士官のリピーター率
80%以上(81.44%)
83.41%
80% 以上
2 年超の幹部船員(トップ 4 )のリピーター率
80%以上(82.77%)
82.54%
80% 以上
3.8 以上(2.9)
2.8
3.0 以上
0(0.00046)
0
0
前年実績以下(10%増大)
15%削減
前年実績以下
顧客満足度評価点の平均点
海洋汚染の防止
船舶から甲板・海上への漏油と
ケミカル漏洩事故の件数 <1航海当たり件数>
船内ゴミ・廃棄物の発生処理量(対前年比較)
廃棄物の低減
プラスチック・ビニール廃棄物の陸揚げ(対象船舶)
全量陸揚げ
(全量陸揚げ)
全量陸揚げ
全量陸揚げ
事務所における月間紙購入枚数 <1人当たり枚数>
805 枚以下(830 枚)
814 枚
前年実績以下
187.6kWh 以下
(193.4kWh)
174.8kWh
171.3kWh 以下
3.0% 以下(2.96%)
2.94%
2.96%以下
燃料消費量削減効果のある装置・システム
<管理隻数当たりの採用実績>
20% 以上(20%)
22.45%
25% 以上
潤滑油消費量削減効果のある装置・システム
<管理隻数当たりの採用実績>
40% 以上(40%)
37.78%
40% 以上
環境
︼
E
5.00%未満
石油メジャーによる検船での不合格率
顧客の満足度向上
天然資源の
消費削減
事務所における月間電気使用量 <1人当たり使用量>
船舶燃料油の硫黄分
大気汚染防止
詳し くは 飯野 海運(株
)のホ ーム ペー ジ
経営 報告 書【C SR 詳細
報告 編】
P.20 ~27 をご 覧く ださ
い。
安全・環境性報告
︼
S
web
飯野海運 経営報告書 2011
36
海 運 業 の 安 全・環 境 についての施策
激化する海賊への対応
海賊対策の推進
当 社 グ ル ー プ は、ア デ ン 湾 通 航 時 に 全 船 に 元 英 国
海賊発生件数の増加と地域の拡大
軍 人 な ど で 構 成 さ れ る セ キ ュ リ テ ィ ガ ー ド(保 安 要
2007 年ごろから急増したアデン湾・ソマリア沖での
員)3 名 を 乗 船 さ せ、海 賊 監 視 態 勢 の 強 化、乗 組 員
海賊行為が件数・地域とも拡大しています。2010 年の
の 保 安 教 育、非 常 時 に お け る 乗 組 員 へ の 適 切 な 対 処
国際海事局のアニュアルレポートによると、2010 年の
支 援 体 勢 を 図 っ て い ま す。ア デ ン 湾 で は 単 独 航 行 を
全 世 界 の 海 賊 発 生 件 数 は 445 件、人 質 に な っ た 人 数 は
禁 止 し、で き る だ け 自 衛 隊 や 他 国 の 艦 船 護 衛 の も と
1181 人で、2007 年と比較すると件数で 70%増加、人質
で 運 航 し て い ま す。日 程 の 都 合 で 艦 船 護 衛 が な い 場
の数で 4 倍です。増加のほとんどはソマリアの海賊が関
合 は 多 国 籍 軍 に 集 中 的 に 監 視 さ れ る 船 団 へ 参 加。ア
係 し て い る と 見 ら れ ま す。海 賊 発 生 海 域 も 拡 大 し、
デン湾以外の危険海域は迂回する航路を設定しつつ、
2008 年にはアデン湾に集中していましたが、2010 年夏
定時連絡および通航船の位置情報の確認を強化して
を過ぎたころには、ケニア・タンザニア沖・西インド洋
います。
全域にまで達するようになりました。
また年々凶暴化する武装海賊に乗船されると、危険性
以前の小型ボートによる沿岸部のみの海賊行動が変化
が極度に高まるので、海賊を船に上げないことが重要で
し、奪った漁船や商船を海賊母船とし、攻撃用の高速の
す。当社グループでは、船体周囲にレーザーワイヤーや
小型ボートを伴って、海が荒れる季節風期に遠洋でも活
熱水を放出する専用パイプ、夜間監視鏡を標準装備し、
動するようになっています。船舶に対して重火器を使用
自助努力で防衛しています。
するケースが多くなり手口も凶暴化しています。
詳し くは 飯野 海運(株
)のホ ーム ペー ジ
経営 報告 書【C SR 詳細
報告 編】
P.10 をご 覧く ださ い。
事故原因の分析と予防対策の徹底
web
海賊発生件数
500
(件)
世界合計
400
アラビア海全般・
インド洋合計
300
継 続 的 に デ ー タ を 測 定 、分 析 し て い ま す 。2 0 1 0 年 度 は
昨年度までより小さな事故までデータを抽出するよ
う に 変 更 し ま し た。抽 出 デ ー タ を 広 げ た 理 由 は、一 見
小さなトラブルでもそれが大きな事故につながる可
能 性 が あ り、よ り 小 さ な 事 故 も 含 め て 分 析 す る こ と
200
100
アルメニア
アゼルバイジャン
が、大 き な 事 故 を 防 止 す る こ と に つ な が る と 考 え た
トルクメニスタン
からです。
タジキスタン
トルコ
0
キプロス
当 社 グ ル ー プ で は 、安 全 運 航 の 最 終 目 標 で あ る 事
故 ゼ ロ を 目 指 し、重 要 な 業 績 評 価 指 標( K P I )を 設 定 し、
ユー
2006
フラ イラク
テス
シリア
川
レバノン
2007
ティ
イラン
グリ
イスラエル
2008
2009
2010年度の事故発生件数は58件で、主因別に分ける
2010
アフガニスタン
ス川
と、MANAGEMENT(管理)
9 件、MEDIA
(情報・環境)
1 件、
アデン湾・ソマリア沖の海賊多発地域
ヨルダン
インダス川
2010 年 1 月
海賊発生地点
パキスタン
オ マー ン
サウジアラビア
インド
紅海
スーダン
2011 年 1 月
海賊発生地点
MACHINE(機械)41 件、MAN(人)7 件でした。一航海当
たりの種類別事故発生率は、他船との接触 0.15%、船底
接触 0.15%、機器損傷 2.06%、その他 0.55% です。
事故の特徴は粗悪油の影響を含む主機や発電機の故障
イエメン
が目立った一方、乗組員の油濁防止に対する意識が高ま
ソマリア
り、漏油事故が 0 件でした。
エチオピア
スリランカ
ケニア
また、組織・人員・運営に関する改革提言をミッショ
ンとした「事故トラブル防止検討委員会」を発足させ、
事故調査有資格者の育成に取り組んでいます。
マラウイ湖
37
コモロ
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
地球温暖化と大気汚染の防止
温室効果ガスの排出抑制
事業の発展と環境保全の両立を目指しています。2010
年度は 2009 年度よりも、稼動延べトン当たりの温室効
果ガス排出量を削減することができました。
船舶の運航は、燃料である重油の燃焼により、CO₂な
ど の 温 室 効 果 ガ ス の 排 出 を 伴 い ま す。当 社 グ ル ー プ で
は、燃 料 重 油 の 性 状 の 改 善、計 画 的 な 保 守 整 備 に よ る
船 体 抵 抗 の 低 減 等 に よ り、温 室 効 果 ガ ス の 排 出 削 減 に
窒素酸化物(NOx)
・ 硫黄酸化物(SOx)の
排出抑制
国際条約によって、大気汚染や酸性雨の原因の一つとさ
れている NOx や SOx の排出規制は、将来の技術水準の向
取り組んでいます。
もともと船舶は、航空機や自動車に比較して、単位輸送
上を踏まえて、段階的に厳しくなることが決まっています。
量当たりのエネルギー消費量が少なく、環境にやさしい
NOx に関しては、2000 年 1 月から実施されている第 1 次
輸送機関です。社会の輸送ニーズに効率的に応えることで、
規制が、2011 年 1 月から第 2 次規制に厳格化されました。
SOxでは、2010 年 1月に欧州で EU 加盟国の港湾内、2012
燃料消費量の推移 <当社グループ運航船舶>
(千トン)
350
300
16.5
250
216
200
(kg)
16.4
261
16.3
292
295
309
20.0
15.0
14.9
14.1
150
10.0
5.0
50
2006 年度 2007 年度 2008 年度 2009 年度 2010年度
A 重油(左軸)
以内の海域において、硫黄分 0.1%以下の低硫黄燃料油の
C 重油(左軸)
使用が義務付けられます。
稼働延べトン当り
燃料消費量
[A・C 重油合計(右軸)]
進 めています。2010 年 度 稼 動 延 べトン 当 たりの 排 出 量
800
600
400
100.0
818
913
925
966
80.0
675
60.0
51.7
40.0
51.3
50.9
46.5
44.1
200
0
2006 年度 2007 年度 2008 年度 2009 年度 2010年度
排出量合計
[CO 換算(左軸)]
²
稼働延べトン当り
温室効果ガス
排出量(右軸)
(千トン)
に愛知・名古屋で開催されました。この条約は「地球上の
0.0
多様な生物をその生息環境とともに保全すること」を一
20
22.7
25.4
25.7
26.9
18.8
2.0
1.5
1.44
1.43
1.41
1.29
5
0
3.0
2.5
15
10
つの目的としています。
(kg)
30
1.22
2006 年度 2007 年度 2008 年度 2009 年度 2010年度
NOx 排出量合計
(左軸)
稼働延べトン当り
NOx 排出量(右軸)
1.0
(千トン)
系 に 悪 影 響 を 与 え る と し て 問 題 に な っ て い ま す。2016
年には、バラスト水処理装置の設置や外洋でのバラスト
3.0
15
13.4
16.1
18.0
18.0
18.6
5
0
2.0
1.5
1.0
10
1.02
1.01
1.00
0.90
0.85
2006 年度 2007 年度 2008 年度 2009 年度 2010年度
港で排水しています。バラスト水に含まれる小動植物や
0
2.5
20
海水(バラスト水)を船内タンクに注入して運航し、積荷
有害病原体などの海中生物が移動し、積荷地の海洋生態
水交換等の規制に関する条約発効が見込まれており、当
(kg)
25
船舶は、空荷時の船体の安定性確保のため、揚荷港で
0.5
硫黄酸化物排出量推移 <当社グループ運航船舶>
30
生物多様性の保全
「生物多様性条約第10 回締約国会議」が、2010年10 月
20.0
窒素酸化物排出量推移 <当社グループ運航船舶>
25
では、NOx、SOx とも 2009 年度より減少しています。
(kg)
1,200
1,000
エンジンの採用、SOx の発生を防ぐ硫黄含有量の少ない
重油の使用等、国際的な取り決めを順守するように対応を
0.0
温室効果ガス排出量の推移(CO ² 換算)<当社グループ運航船舶>
(千トン)
当 社グ ル ープで は、NOx の 発 生 を 軽 減 する電 子 制 御
安全・環境性報告
100
0
年 1 月には米国・カリフォルニア州の沿岸から 24 マイル
0.5
0
SOx 排出量合計
(左軸)
社グループではこの条約への対応のために、生物多様性
におよぼす影響の低減に配慮した対応を進めています。
稼働延べトン当り
SOx 排出量(右軸)
)のホ ーム ペー ジ
詳し くは 飯野 海運(株
報告 編】
経営 報告 書【C SR 詳細
P.14 をご 覧く ださ い。
web
飯野海運 経営報告書 2011
38
不 動 産 業 の 安全・環 境マネジ メ ント
安全・品質・環境管理への取り組み
当社グループは、不動産事業で安全と環境への取り組みを進めています。ビル内の安全と快適さを維持しながら、
顧客の満足につながる品質管理を行っています。さらに環境マネジメントにも取り組み、ビルによる環境負荷の低減
を図っています。具体的には、ビルでの省エネや廃棄物の排出の抑制についての取り組みです。
実 際 に、ビ ル 管 理 の 現 場 で こ う し た 業 務 を 推 進 し て い る の は 当 社 グ ル ー プ の イ イ ノ・ビ ル テ ッ ク(株)
( IBT)で す。
2011 年秋に開業する東京・内幸町の飯野ビルでも、こうした安全や環境に配慮した、ビルの運営を行います。
以下の表は、IBT が実施している「環境・安全マネジメントプログラム」の 2010 年度の達成状況と、2011 年度の目標
を示したものです。なお当社グループの不動産業では、飯野海運(株)の不動産部門と、IBT の 2 社が、ISO9001・14001
の統合認証を取得しています。
分野
目的
目標項目
2010 年度目標値
2010 年度結果
2011 年度目標
貢献度比率
東京桜田ビル:1.0%以上、
東京富士見ビル:2.0%以上
貢献度比率
東京桜田ビル:1.36%、
東京富士見ビル:2.32%
前年度に同じ
0件
発生件数:0 件
前年度に同じ
工事実施件数に
対する事故・クレーム
発生率:0.9%以下
発生率:1.0%
(年間発生件数:3 件)
前年度に同じ
指摘件数比率:
5%以内
指摘件数比率:0%
(竣工検査実施件数
上期 40 件、下期 48 件中の
指摘件数:0 件)
前年度に同じ
改善指摘件数:
点検項目数の 6%以下
上期は目標達成
下期未達成:1 ビル
達成:3 ビル
前年度に同じ
内部統制環境の整備
・全社統制
・業務プロセス統制
内部統制環境の整備
1. 全社的統制
2. 業務プロセス統制
全社統制、
業務プロセス統制とも、
シートや文書内容の
チェックと見直しを実施
前年度に同じ
グリーン購入の推進
12 品目以上の購入
12 品目の購入
13 品目以上の購入
環境に配慮した建材の使用。
塗装・接着剤での
F☆☆☆☆製品の
使用率100%を維持する
使用率:100%
前年度に同じ
省エネルギーに配慮した
設備機器の使用
省エネルギーに配慮した
設備機器の採用比率を
91% 以上にする
上期:100%
下期:91.7%
前年度に同じ
共用部照明の消灯による
消費電力量の削減
共用部照明による
消費電力量の削減。貢献度で
東京桜田ビル 1.5% 以上、
東京富士見ビル 3.0%以上を
維持する
東京桜田ビル
上期:2.2% 下期:2.1%
東京富士見ビル
上期:4.2% 下期:4.0%
共用部照明による
消費電力量の削減。貢献度で
東京桜田ビル 1.5% 以上、
東京富士見ビル 3.25%以上
を維持する
管理ビル内の
安全・環境保全の維持
労務災害発生件数
設備工事における事故・
クレームの未然防止
品質
顧客の満足度向上
︼
Q
竣工検査における
指摘(是正)件数の削減
清掃業務の品質向上
(清掃点検時の
改善指摘件数の削減)
環境に配慮した建材の使用
環境
︼
E
天然資源の消費低減
及び省エネルギーの
実施
熱源機器の
エネルギー使用量
使用済み A4 版コピー用紙
の裏面の利用
前年度比
1% 以上削減
裏紙利用率 30%以上
未達成:1 ビル
達成:4 ビル
詳し くは 飯野 海運(株
)のホ ーム ペー ジ
経営 報告 書【C SR 詳細
報告 編】
P.20 ~27 をご 覧く ださ
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39
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
web
不動産業の安全・環境についての施策
防火・防災・安全への対応
またビル管理のスペシャリストとして、経験豊富な警
備員の採用を進めるとともに、業務に必要な資格の取得
東日本大震災への対応
や講習の受講を奨励しています。
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災による、当社
グループ所有の賃貸ビルへの影響は、塗装の一部がはが
れる程度の軽微なものにとどまりました。一級建築士の目
視による検査の結果、建物の安全性に問題はないと判断。
今後、念のために、一部建物において構造設計者に確認
を依頼する予定です。
震災直後の対応では、電話がつながりにくくなる状況
下で、東京桜田ビル監視センターと各ビルの現場事務所
間をつなぐ非常用無線が有効に機能し、本部から現場へ
の 指 示を円滑 に伝 達 することができました。また 当 社グ
ループが所有する賃貸ビル 5 棟のエレベーターは、汐留
芝離宮ビルディングの一部、東京桜田ビル、笹塚センター
ビルがその日のうちに、その他は翌日の早朝までに復旧
ク(株)では、万が一に備え、防災訓練や救命訓練などを
定期的に実施する一方、事故・トラブル発生に関するデー
タを継続的に追跡・調査し、改善に努めています。
事故・トラブル 発生件数
2009 年度
2010 年度
26 件
11 件
設備的要因
3件
5件
外部要因・不明
1件
3件
30 件
19 件
合
計
削減義務が生じます。2010 年度、当社グループでは汐留
芝離宮ビルディングがこれに該当し、夏季の記録的な猛
暑のなか、テナントの皆様方の協力を仰ぎながら、温室効
果ガスの排出を前年度比で 3.84% 削減しました。また、
東日本大震災後は、更なる節電のために、照明の間引き
や、空調の短縮なども行っています。
当ビルは、設計時からトップクラスの環境性能を目指
設置されている環境設備
[導入設備]
[温室効果ガス削減の仕組み]
ハイブリッド型
自然換気システム
窓を開けず外部の騒音を遮断したままで、
風の力で外気をビル内に取り込むことで、
空調設備の運転時間を短縮。
Low-E ガラス
熱貫流率が低く、日射遮蔽係数が高い外装材を
利用することで建物の断熱性能を高める。
コージェネレーション
システム
ガスによる発電で生じる排熱を空調用の冷水、
温水に再利用することで、ガスや電気を単独で
消費するよりも資源を有効に活用。
氷蓄熱タンク
CO の排出が極端に少ない原子力発電が大きく
²
占める夜間電力で氷を作り、昼間の冷房に利用。
結果的に化石燃料による発電量が減少。
共用部入り口に
空冷パッケージ設置
入り口にファンを設置することで、
自動ドアの開閉による夏季の空調負荷
(外気熱による室温の上昇など)を軽減。
安全対策および省エネ改修工事
資格の保有率/講習の受講率
資格名/講習内容
保有率/受講率
防火・防災管理者
100.0%
上級救命技能認定証(含む指導員)
100.0%
自衛消防技術認定証
合計が原油換算で一定量以上の事業所には温室効果ガス
のための改修工事を計画的に行っています。
当社グループのビル管理会社であるイイノ・ビルテッ
対策の内容
2010 年 4 月 1 日に施工された「改正省エネ法」と「東京
都環境確保条例」によって、年間のエネルギー使用量の
して環境設備を設置し、営業を開始してからも、省エネ
防火・防災・安全活動
人的要因
汐留芝離宮ビルディングでの取り組み
安全・環境性報告
することができました。
計画的な地球温暖化対策
当社グループは「安全」を社是に、ビル運営においても
長期的な予防保全の考えに立脚し、計画的に改修工事を
行っています。
87.5%
2010 年度は、東京富士見ビルの天井を補強する耐震性
防災センター要員講習
75.0%
工事を行うと同時に、室内照明器具を全面的 に 省 エ ネ
防火対象物点検資格者
37.5%
型に切り替えました。2011 年度は、笹塚センタービル
施設警備業務 2 級検定
37.5%
の氷蓄熱ユニット設備の取り替えを計画して おりまし
防災管理点検資格者
25.0%
たが、震災の影響で制御機器等が納品されないため、6
警備員指導教育責任者
25.0%
月取り替えの計画の見直しを検討しています。
飯野海運 経営報告書 2011
40
マ テ リ ア ル フ ロ ー / 安全・環境会計
マテリアルフロー
当 社 グ ル ー プ で は、海 運 業 と 不 動 産 業 に お け る 資 源
のインプットと環境負荷物質のアウトプットを物量で
企 業 活 動 で は、原 材 料 や 燃 料 と い う 形 で 貴 重 な 資 源
算 定 す る こ と で、事 業 活 動 に よ っ て 生 じ る 環 境 負 荷 レ
を消費します。また、商品やサービスを生み出す過程で、
ベ ル を 定 量 的 に 把 握 す る と と も に、環 境 マ ネ ジ メ ン ト
廃 棄 物・排 水・排 ガ ス と い っ た 形 で 自 然 環 境 に 負 担 を
シ ス テ ム の 活 動 を 通 じ て、継 続 的 な 環 境 負 荷 の 低 減 に
与えています。
努めています。
↙
インプット
アウトプット
燃料油
C 重油
464 千 t(481千㎘)
A 重油
15 千 t(17 千㎘)
重油合計
479 千 t(498 千㎘)
電気(昼間)
8,419 千 kWh
電気(夜間)
3,363 千 kWh
都市ガス
628 千㎥
A 重油
62 ㎘
上水・井水・湧水
海運業
19 千㎥
1,500 千 t
42 千 t
SO x
29 千 t
船上生活系廃棄物
運航船+管理船
廃棄 物 は 管 理 船 のみ(注)
不動産業
85 千㎥
再生水
(注)運航(Operation)
温室効果ガス(CO 換算)
²
NO x
賃貸ビル合計
テナント分含む
プラスチック系
365 ㎥
ビン・缶など
248 ㎥
食物屑
181 ㎥
CO
6,060t
²
NO x
1,206kg
SO x
105kg
一般廃棄物
630t
産業廃棄物
276t
下水排水
73 千㎥
自社グループ保有または船主から用船した船舶について、荷主から依頼された海上運送を行うために、積荷の内容、
積・揚地港、積・揚荷役の期日などを定め運航スケジュールを船舶に指示するとともに、運航に必要な諸手配を行うこと。
(積・揚荷役の手配、燃料の補給など、船舶管理者に指示して実施することを含む。)
管理(Management) 自社グループ保有または船主から受託した船舶について、運航に必要な人材・物資など全ての条件を整え、運航中を含め
船舶を運航者の指示通りの海上運送を行える状態に保ち続けること。
(船舶整備・船用品の手配、船員の配乗手配などを含む)
なお、当社グループで運航及び管理両方を行っている船舶がある一方、運航、管理のいずれか片方のみ行っている船舶もあります。
安全・環境会計
当社グループは経営理念の最初に「安全の確保が社業
「予防コスト」、事故発生時の損失を小さくする活動にか
かる「軽減コスト」、発生した事故に対応する活動にかか
る「保有・移転コスト」を集計しています。
の基盤」と掲げています。この理念の実現にあたり、安
環境会計では、環境損失の発生防止・軽減のための費
全確保のために行っている活動を定量的に把握すること
用である「環境保全および環境評価コスト」、環境保全
が企業経営において必要と考え、環境会計と合わせて、
対策の充実により削減を図るべき費用である「内部負担
2003 年度から独自の考え方に基づく「安全・環境会計」
環境ロス」、環境保全対策が不十分なため社会や住民が
を集計し、公表しています。安全・環境活動の費用と効
被る損失である「外部負担環境ロス」に分類し、測定・
果を、金額あるいは物量で、定量的・統合的に開示する
集計しています。
ことを目的にしています。
安全会計では、リスクマネジメントの考え方を採用して
います。事故の発生率を下げる活動にかかる「回避コスト」
2010 年度は、海運業の予防コストの合計は、約 19 億
円、不動産業の環境保全および環境評価コストの合計は
約 2 億円でした。
詳し くは 飯野 海運(株
)のホ ーム ペー ジ
経営 報告 書【C SR 詳細
報告 編】
P.28 ~33 をご 覧く ださ
い。
41
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
web
ル
バ
ー
ニ
コ
社会性報告
5
(8
ン
ウ
ラ
B1
ジ
㎡)
80
)
5㎡
文 化・社 会 活 動
om
D
Ro
㎡
50
バ
ニ
コ
ル
ー
(
D2
25
E
om
o
R 0㎡
)
㎡
エ
イ
ワ
ホ
2
(
D1
om
Ro
(
B B2
㎡)
5㎡
24
B
B
)
0㎡
8
3(
室
授乳
C
m
o
Ro ㎡
6
㎡
80
安全・環境性報告
受付
売店
A3
(
ン
イ
メ ビー
ロ
ア
ド
動
自
ア
ド
動
自
ーク
クロ
―
都市
の
知
的
創
造
の
拠
点
ル
新
し い イイノホ ー ル & カン ファレン ス セン タ ー
接続
0
30
へ
エ
イ
ワ
ホ
5F
「イイノホール&カンファレンスセンター」が 2011 年
します。また12 路線が走る5つの駅に近く、地下鉄駅か
秋 に、新 し い 飯 野 ビ ル 内 で 開 業 し ま す。芸 術 活 動 や 講
ら専用の入口を通じてホールまで行ける便利なロケー
演に使われるホ ー ル と、会 議 や 新 製 品 の 発 表 会 な ど さ
ションです。ホールの内部には外に開かれた空間を設け、
まざまな目的に使えるカンファレンスルームが一体と
そこから高層ビルと都心の緑が同時に望めます。内部の A
な っ た 施 設 で す。東 京 の 中 心 で 人 が 集 い、語 り 合 い、
デザインは帆船のイメージで統一され、曲線と木目で構
新しいことを創 造 す る 場。そ の 存 在 は 社 会 に 役 立 つ と
成された心地よい空間です。
この場は500席の段床式のホールと、可動間仕切りのあ
当社グループは考えています。
るルーム 3 つ、独立したルーム 2 つで構成されます。複数の
旧イイノホールは 1960 年から 2007 年まで、音楽や講
演 に 使 わ れ て、多 く の 方 に 親 し ん で い た だ き ま し た。
ジ 部屋を一体利用して、さまざまな利用法が考えられます。例
ー
新 ホ ー ル で は「知 と 芸 術 の 拠 点」と い う 伝 統 を 受 けテ
ス継
えば、ホールで中心となる講演・会合を行った後で、それぞ
ぎながら、利便性と快適さを兼ね備えた、クリエイティ
れのルームで分科会、飲食を伴うバンケットを行うなど、利
ブな活動を支える工夫を盛り込みました。
用者のニーズに合わせて人々の集い方を設計できるのです。
新 た な イ イ ノ ホ ー ル&カ ン フ ァ レ ン ス セ ン タ ー は、
r
e
t
n
利用者の皆様と共に新しい動きを「イイノホール&カ
e
C
e
霞 が 関 の 官 庁 街、大 手 町 な ど の オ フ ィ ス 街、そ し て 日
ンファレンスセンター」から生み出したいと、当社グルー
比谷公園から皇居外苑につながる東京の緑地帯に隣接
プは願っています。
売店
エ
イ
ワ
ホ
ル
ー
ホ
en
r
e
nf
o
C ide
&
ll r Gu
a
H o
c
飯野海運 経営報告書 2011
42
社会性報告
ホービー
ロ
A
m
o
㎡
Ro
海上で働く人のために
船員の労働安全衛生の確保
患者を巡視船に移し、その後 ヘリコプターで北海道釧路
市 内 の 病 院 に 搬 送 し て、生 命 が 救 わ れ ま し た。こ れ は
当社グループの外航部門では、船員として 2010 年度
に 1255 人が働いています。それらの人々が安心して働
当社グループの緊急事態対応マニュアルに沿ったもの
で、訓練通り救急救命に成功した事例となりました。
くことができるように取り組んでいます。
船 員 の 仕 事 は 特 殊 で す。長 期 間 に わ た っ て 家 族 と 離
れ、船内の限られた空間で数カ月働き続けます。また海
上では医療援助に制約があります。船員が心身ともに健
船員の多様性への配慮
当 社グ ル ープ の 外 航 船 員 は 日 本 人 に 加 え、韓 国 人、
康であり続けるために、船員の労働環境、そしてストレ
フィリピン人、ミャンマー人と 4 カ国になります。そして
スの軽減に細心の配慮を重ねています。
運航では日比など 2 カ国の組み合わせで混乗しています。
2 0 1 0 年 8 月 、当 社 グ ル ー プ 所 有 の 木 材 チ ッ プ 専 用 船
「SHINTONAMI」が 千 島 列 島 沖 を 航 行 中 に、42 歳 の フ ィ
その取り組みは 1975 年に始まりましたが、日本の海運会
社ではもっとも早い取り組みでした。
リピン人船員が脳梗塞で倒れる事案がありました。日本
船 員 同 士 の 国 籍 が 異 なると、文 化 や 習 慣 の 違 い によ
到着まであとわずかでしたが、キャプテンは船員の救命
るトラブルが起こりかねません。当社グループは、各船員
を第一に考えて洋上救急を海上保安庁に要請しました。
の相互理解を進める努力を行っています。
こうした取り組みによって、各国籍の船員の融和が一段
)のホ ーム ペー ジ
詳し くは 飯野 海運(株
報告 編】
経営 報告 書【C SR 詳細
P.34 をご 覧く ださ い。
と進み、安全な運航が実現されています。
web
Direc tor
Poba r Mari ne Serv ices, Inc. /
傷病発生状況(傷病による下船者数)
35
20
19
15
7
16
8
22
14
13
2006 年度
2007 年度
12
2005 年度
労働災害の発生頻度率
6
2008 年度
TRC
20
20
2009 年度
2010 年度
1.11
1.08
ィリ ピン 人船 員の 労務 マネ ジメ
私は マニ ラの ポバ ール 社で 、フ
リ
の会 社を 通じ て約 830 人の フィ
ント を行 って いま す。 現在 、こ
る
で明
従順
働い てい ます 。彼 らは
ピン 人船 員が 、当 社グ ルー プで
ー
サポ
のみ なら ず一 族を 経済 面で
い性 格で す。 また 仕送 りで 家族
費
の子 供が ガン にか かり その 治療
トし てい る方 が大 半で す。 一族
き
ると いう 方も いま す。 下船 して
のた めに 乗船 して 仕送 りを 続け
えな
もい
何と
れば
かけ
)」と 声を
た船 員に 「サ ラマ (あ りが とう
は人 間同 士、 心に 余裕 を持 っ
的に
基本
す。
れま
てく
い笑 顔で 応え
国
然に 防げ ます 。グ ルー プ内 の各
た気 遣い があ れば トラ ブル も未
んで いま す。
船員 によ る相 互理 解は 着実 に進
LTI
1.33
1.10
1.0
0.92
0.5
0.74
0.35
2005 年度
2006 年度
0.67
0.78
0.86
0.72
鈴木氏(最後 列中央 )の誕生 祝い
0.17
2007 年度
2008 年度
2009 年度
2010 年度
LTI (Lost Time Injuries):労働災害を伴う死傷の発生頻度率
TRC (Total Recordable Cases):LTI に業務上支障が出て治療を受けた
負傷の発生頻度を加えた比率
43
組ん でい ます
(件数 / 百万時間)
1.5
0
26
9
2
10
2.0
28
7
22
鈴木哲也
フィ リピ ン人 船員 の雇 用に 取り
29
25
0
職務傷
(件)
30
5
疾病
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
陸 上 で 働 く 人 の た めに
若 手 社 員 の 育 成 と キ ャ リ ア 支援
ネイティブスピーカーの講師1人に対して、生徒 2 〜 3 人
の少数のクラスに参加し、電話応対やプレゼンテーション、
当社グループの特色の一つであるケミカルタンカー
商談方法などを英語で実践的に学ぶことが出来ます。受講
の運航はシンガポールの現地法人が中心的な役割を
の前後に英語力を測定するテストを行うことで研修の効果
担 っ て お り、新 中 期 経 営 計 画「IEG14」で は ケ ミ カ ル タ
を測定し、受講者にフィードバックしています。
ンカー以外の事業においても海外の営業要員・管理要員
また、当社グループの社員を対象に TOEIC 試験を年
を増強することをうたっています。飯野海運(株)では、
1回実施し、希望者 20 〜 30 名が参加しています。昼休
若手のうちからグローバルな事業に適応できる社員を
みなどを利用した勉強会を開催するなど、英語力を向上
育成するために、多様なプログラムを設けています。
させる自主的な活動も行われています。
乗船研修
入社 2 年目以降の陸上若手総合職の社員全員を対象
災害ボランティア休暇の取得支援
に毎年実施しています。海運・不動産・管理部門の配属
東日本大震災の発生で、被災地では厳しい状況が続い
先にかかわらず、現場を知ることで会社全体の理解と一
ており、多くの方たちが救援活動を行っています。当社
体感を醸成します。実習では、主に当社グループの代表
では、災害ボランティア活動を特別休暇とする支援策を
的航路である極東とペルシャ湾の間を約 5 0 日かけて往
策定しました。
復します。当社グループの海上職員(船員)が乗船する
特別休暇は、参加する災害ボランティア活動団体名、
外航船に見習いとして乗り組み、航海当直、甲板、機関
活動場所、内容、日程、緊急連絡先を届け出、上司の承認
や司厨(船内の食事担当)など船内の作業に数日ずつ配
を得ることで、連続した5日間を特別枠の有給休暇とし
属され、現場の海上職員の業務を学びます。
て認めるものです。また費用の一部を補助します。この
2010 年度は 3 名が参加し、それぞれ異なるタイプの船
に乗船しました。参加者からは、「全長 300m を超える
制度を利用し、2011 年 4 月 22 日から 27 日まで1名が宮
城県気仙沼市でボランティア活動に従事しました。
船の安全運航が 26 名ほどの人員に支えられていること
安全運航の最前線を体感する場となりました。
web
社会性報告
ージ
)の ホ ーム ペ
野 海 運( 株
詳しくは飯
編】
告
報
細
詳
【 CS R
経営報告書
さい。
をご覧くだ
P. 35 、 P. 37
を肌で感じた」という感想も聞かれ、海運会社の現場、
英語研修
若 手 社 員 のビ ジ ネスにおける基 礎 的な英 語 力向上を
目的に、
外部英会話スクールの受講費用を補助しています。
海外駐在員の
声
Iino Sin gap ore Pte .
Ltd .
福岡孝之
現地 スタ ッフ と共 に働
くこ とで 、当 社グ ルー
プの 得意 分野 が広
がっ てい ます 。
例え ば中 国の 港湾 事情
を調 査す る場 合、現地
スタ ッフ は英 語と
中国 語を 自由 に扱 うた
め、日本 人が 調べ るよ
りも さら に詳 細な 情
報を 入手 する こと がで
きま す。一方 、船舶 の建
造や 管理 とい った
技術 的な 情報 は、日本
人スタッフがサポート
するケースが多く、こ
のように情報が当社グ
ループで共有されると
、重要なノウハウに変
わります。
異なる文化の方と
サポートし合うこと
で、 広 い 視 野 で 働 け
てい ると 実感 しま す。
隆邦丸カーゴコントロールルームでの実習風景
飯野海運 経営報告書 2011
44
財務報告
2002 年 3 月期
2003 年 3 月期
2004 年 3 月期
2005 年 3 月期
62,572
55,961
58,265
63,763
44,433
44,600
47,651
52,968
不動産業
9,479
8,971
8,666
8,795
流通小売業 ※2
8,660
2,390
1,948
2,000
49,608
6,852
6,112
45,518
5,278
5,165
47,368
4,962
5,935
48,846
5,372
9,545
3,642
2,394
3,632
7,427
不動産業
2,527
2,747
2,303
2,128
流通小売業 ※2
△ 57
24
△0
△ 10
3,523
2,325
1,430
△ 557
123
1,329
3,113
4,187
1,244
365
63
2,515
3,557
3,701
1,548
△ 41
△ 67
2,261
8,274
8,013
3,710
△ 575
23
4,855
22,851
89,855
129,473
29,913
25,668
86,138
19,961
107,829
143,520
23,543
27,652
100,651
15,684
109,070
142,676
39,874
30,101
95,016
18,918
107,349
147,777
23,282
39,525
88,025
8,914
△ 3,405
5,509
9,323
8,836
△ 23,563
△ 14,727
9,909
8,132
△ 5,322
2,810
7,834
12,139
△ 5,287
6,852
10,831
13.01
254.85
5.00
24.81
274.13
6.00
22.24
302.64
8.00
47.23
360.22
10.00
(百万円)
【連結損益計算書項目】
売上高
海運業
外航海運業 ※1
内航・近海海運業 ※1
売上原価
販売費及び一般管理費
営業利益
海運業
外航海運業 ※1
内航・近海海運業 ※1
経常利益
税金等調整前当期純利益
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
少数株主損益
当期純利益
(百万円)
【連結貸借対照表項目】
流動資産
有形固定資産
資産合計
流動負債
純資産/資本
有利子負債 ※3
(百万円)
【連結キャッシュ・フロー計算書項目】
営業活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フロー
フリー・キャッシュ・フロー ※4
現金及び現金同等物の期末残高
(円)
【 1 株当り情報】
1 株当り当期純利益
1 株当り純資産
配当金
※1
※2
※3
※4
45
2011 年 3 月期より「海運業」のセグメントを「外航海運業」
「内航・近海海運業」に分割しました。
2010 年 3 月期より「流通小売業」セグメントを廃止しました。
有利子負債 = 社債 + 借入金
フリー・キャッシュ・フロー = 営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
主 要 財 務 デ ータ( 連 結 )
本主要財務データは、当社グループの 10 年間にわたる財政状況の推移をご覧いただくため、当社グループが独自に作成
したもので、独立監査人の監査を受けたものではありません。
利用に際しては、有価証券報告書に掲載しています連結財務諸表および注記事項を併せてご参照下さい。
2006 年 3 月期
2007 年 3 月期
2008 年 3 月期
2009 年 3 月期
2010 年 3 月期
2011 年 3 月期
73,382
80,516
95,090
94,496
77,031
74,472
64,047
61,374
7,765
7,790
69,760
84,863
87,627
8,697
8,906
8,744
5,500
5,219
5,307
2,056
1,850
1,483
1,369
-
-
55,728
5,224
12,430
61,278
5,956
13,282
72,074
6,492
16,524
75,534
7,036
11,926
66,433
6,512
4,086
65,830
6,250
2,393
10,156
10,782
13,376
11,196
3,051
1,062
306
459
2,220
2,510
3,141
749
727
873
54
△ 10
7
△ 20
-
-
11,038
13,269
4,723
84
45
8,417
11,639
6,439
4,576
△ 2,009
△3
3,875
16,062
8,732
4,625
△ 1,420
6
5,521
11,256
9,301
534
3,176
△ 14
5,605
2,225
1,817
179
1,409
50
180
1,059
1,253
779
△ 185
5
654
18,296
113,318
156,659
24,865
48,372
83,851
19,804
119,773
166,736
31,348
52,008
89,712
24,670
134,460
176,228
47,501
52,591
98,049
24,790
135,501
175,808
32,498
53,395
104,916
25,115
137,904
180,735
25,191
52,727
109,227
24,945
143,142
184,842
32,798
52,871
110,860
12,553
△ 7,350
5,203
8,669
11,910
△ 18,168
△ 6,258
6,890
12,780
△ 18,946
△ 6,166
9,237
8,648
△ 10,591
△ 1,943
11,087
12,353
△ 12,784
△ 431
13,728
10,993
△ 13,187
△ 2,194
13,091
76.13
440.75
15.00
35.36
474.66
15.00
50.39
477.08
15.00
51.54
497.64
15.00
1.69
489.78
12.00
6.13
490.04
6.00
飯野海運 経営報告書 2011
財務報告
62,629
46
飯 野 海運(株)役 員 一 覧
取締役
代表取締役社長
代表取締役
関根知之
取締役
星野憲一
中上良彦
取締役
近光 護
取締役
安齋容一郎
取締役
取締役
三宅茂樹
常勤監査役
監査役(社外)
取締役
大橋恵明
取締役
當舍裕己
監査役
大野伸二
取締役
根本 滋
常勤監査役
岡田俊雄
河原一夫
鈴木進一
監査役(社外)
石井信彦
監査役(社外)
廣岡三喜雄
執行役員
社長執行役員
常務執行役員
中上良彦
総務企画グループ管掌、財務グループ管掌
および人事グループ担当
常務執行役員
星野憲一
不動産営業グループ担当
常務執行役員
近光 護
海運営業第 2 グループ担当および
海運営業第 4 グループ担当
常務執行役員
安齋容一郎
海運営業第 1 グループ担当、
海運営業第 5 グループ担当および海外担当
常務執行役員
根本 滋
船員グループ担当、海務安全グループ担当
およびイイノマリンサービス(株)代表取締役社長
大橋恵明
財務グループ担当および
ステークホルダーリレーションズマネジメント・
調査グループ担当
常務執行役員
47
関根知之
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
執行役員
大野伸二
経理グループ担当および
イイノマネジメントデータ(株)代表取締役社長
執行役員
三宅茂樹
イイノガストランスポート(株)代表取締役社長
執行役員
宮下和友
海務安全グループ担当補佐および
イイノマリンサービス(株)常務取締役
執行役員
當舍裕己
総務企画グループ担当、
海運営業第 5 グループ担当補佐および
総務企画グループリーダー
執行役員
岡田明彦
財務グループリーダー
執行役員
小薗江隆一
海運営業第5グループリーダーおよび
Iino Singapore Pte. Ltd. 取締役社長
グループ組織体制
飯野海運(株)組織図
総務チーム
企画チーム
総務企画グループ
取締役会
管理チーム
広報・IR 室
海運営業支援室
経営執行協議会
代表取締役
取締役
常勤監査役
監査役会
常勤監査役
監査役
人事チーム
人事グループ
研修チーム
船員グループ
船員チーム
海務安全グループ
海務安全チーム
財務グループ
財務チーム
経理グループ
経理チーム
安全環境室
ステークホルダーリレーションズ
マネジメント・調査グループ
法務・保険チーム
調査チーム
海運営業第 1 グループ
オイルタンカーチーム
LPG チーム
海運営業第 2 グループ
LNG チーム
海運営業第 4 グループ
専用船チーム
一般不定期船チーム
海運営業第 5 グループ
ケミカルタンカーチーム
ビル事業チーム
開発チーム
不動産営業グループ
飯野ビルプロジェクトチーム
ドバイ
海外事業所
シンガポール(現地法人)
内部監査室
ロンドン(現地法人)
コネチカット(現地法人)
主なグループ会社
外航海運業
内航・近海海運業
不動産業
船舶の運航および貸渡
Chemroad Echo Navigation S.A.
船舶管理
イイノマリンサービス(株)
海運仲立業および船用品販売
イイノエンタープライズ(株)
船舶の運航・貸渡および管理
イイノガストランスポート(株)
ビル管理
イイノ・ビルテック(株)
倉庫業
不動産関連事業
泰邦マリン(株)
(株)イイノ・メディアプロ
飯野海運 経営報告書 2011
48
会 社 概要( 2 0 11 年 3 月 3 1日 現 在 )
会社概要
商号
飯野海運株式会社
IINO KAIUN KAISHA,LTD.(略称 : IINO LINES)
創業
1899(明治 32 ) 年 7 月
資本金
13,091,775,488 円
本店
〒100-8506 東京都千代田区内幸町二丁目 1 番 1 号
本社
〒105-0011 東京都港区芝公園一丁目 7 番 13 号(芝大門フロントビル)
※実際の業務は本社で行っています。
※ ※ 2 0 11 年 秋 よ り 、本 社 を 本 店 所 在地( 東 京 都 千 代 田 区 内 幸 町 二 丁 目 1 番 1 号)に 移 転 す る 予 定 で す 。
事業所
ドバイ
(海外現地法人)シンガポール、ロンドン、コネチカット
事業内容
海運業、不動産業
グループ会社
連結対象子会社
49 社
持分法適用関連会社
4社
連結対象外関係会社
14 社
合計
67 社
上場取引所
東京、大阪(各第一部)、福岡
主要取引先
アストモスエネルギー(株)、出光興産(株)、伊藤忠商事(株)、JX 日鉱日石エネルギー(株)、
全国農業協同組合連合会、
(株)T&D ホールディングス、電源開発(株)、
東京ガス(株)、東ソー(株)、日本ゼオン(株)、三井物産(株)、三菱商事(株)、
Saudi Basic Industries Corporation、 SK Shipping Co., Ltd.
主要取引銀行
(株)日本政策投資銀行、
(株)みずほコーポレート銀行、
中央三井信託銀行(株)
、
(株)三井住友銀行
従業員数
単体 138 名( 陸上 88 名 海上 50 名 )
連結 611 名
49
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
他
他
投 資 家 情 報( 2 0 11 年 3 月 3 1日 現 在 )
投資家情報
事業年度
4 月 1 日から翌年 3 月 31日まで
定時株主総会
6 月下旬開催
株式数
会社が発行する株式の総数
440,000,000 株
発行済株式の総数
111,075,980 株
単元株式数
100 株
上場取引所
東京、大阪(各第一部)、福岡
公告の方法
電子公告
た だ し 、電 子 公 告 に よ る こ と が で き な い 事 故、そ の 他やむを得ない事由が生じたときは、
日本経済新聞に掲載して行うこととします。
株主数
大株主
10,864 名
株主名
持株数
(千株)
持株比率
(%)
東京海上日動火災保険株式会社
6,264
5.87
川崎汽船株式会社
5,940
5.56
4,521
4.23
株式会社みずほコーポレート銀行
4,296
4.02
三井物産株式会社
4,200
3.93
ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505041
3,899
3.65
日本トラスティ・サービス 信託銀行株式会社(CMTB 信託口)
3,622
3.39
飯野海運取引先持株会
3,446
3.23
ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー
3,016
2.82
日本生命保険相互会社
2,507
2.35
ザ チェース マンハッタン バンク エヌエイ ロンドン
スペシャル アカウント ナンバー ワン
(注)大株主および持株比率からは、自己株式(4,417 千株)
を除く。
所有者別
株式分布状況
個人
その他
15.8%
その他法人
25.6 %
金融機関
38.2 %
外国人
20.1%
金融商品取引業者 0.3 %
株価および
出来高の推移
20,000
(千株)
(円)
1,400
18,000
1,200
16,000
出来高(左軸)
終値(右軸)
1,000
14,000
12,000
800
10,000
600
8,000
6,000
400
4,000
200
2,000
0
4月
7月
2008年
10 月 1 月 4 月
2009年
7月
10 月 1 月 4 月
2010年
7月
10 月 1 月 3 月
2011年
0
飯野海運 経営報告書 2011
50
ス テ ー ク ホ ル ダ ー か らのコメント
75 回の無事故航海記録
SK Sunrise の過去 7 5 回の無事故航海を通して、飯野
海運殿は世界でもトップクラスの海運企業であることを
韓国に拠点を置く S K 海運(SK Shipping)はワールド
証明していることは言うまでもありません。
クラスの海上輸送能力と世界中に広がるネットワークを
有する海運業のパイオニアです。
顧客の期待とニーズに迅速かつ的確に応える飯野海運
殿のような会社とともに活動できることを、S K 海運は
現在、SK 海運は「海運大手を超越した企業」を目指し
心より喜んでいます。
てさらに飛躍しようとしています。このビジョンは、よ
りよい企業価値の向上・より良き未来・さらなる幸福の
実現に向けて 2011年に設定されたものです。
SK 海運と飯野海運殿が現在のように密接な関係を持
つようになったのは、飯野海運殿が当社の LNG タンカー
である SK Summit、SK Supreme、SK Splendor の持分 10
パーセントを取得した 2000 年を嚆矢とします。
その後、SK 海運と飯野海運殿は韓国ガス公社向けの
輸送の落札に成功し、LNG 輸送におけるパートナーとし
て一層強固な協力関係を築きあげて参りました。
SK Shipping Co., Ltd.
飯野海運殿には、SK 海運が 2003 年から長期用船して
本 部長
いる LNG タンカー SK Sunrise を管理して頂き、優れた
Kyu Bong Lee
サービスを安定的に提供して頂いております。
【SK 海運 企業概要】
設立
1982 年 6 月 29 日
本社
韓国
従業員
約 500 人
管理船舶数
52 隻、760 万重量トン
海外拠点
イギリス(ロンドン)
ソウル
シンガポール
日本(東京)
SK Shipping Europe Ltd. (London)
Antwerp Office
Beijing Office
Shanghai Office
SK Shipping Greece Ltd. (Athens)
Kaohsiung Office
ギリシャ(アテネ)
SK Shipping Singapore Pte Ltd.
中国(上海、北京)
米国(ヒューストン)
台湾(高雄)
ベルギー(アントワープ)
51
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
SK Shipping Japan (Tokyo)
現地法人
オフィス
Houston Office
第三者意見
価値観を問う転換点に企業経営は直面
先の大震災を受けて、日本国内で長らく続いてきた制度や
価値観が問い直されています。生活のスタイルの見直しと、
ビジネスの場での安全・安心をステークホルダーにもたら
で、一段の安心安全の貢献が行えるでしょう。
ステークホルダーとの対話強化を期待
ビル事業のなかでも、防災の機能と環境負荷の低減を両
すようなサプライチェーンの再構築が急がれています。また、
立させることが急務となっています。2011年秋には新ビルが
何といっても電力とエネルギーに対するまなざしが、生活
開業しますが、エネルギー使用という環境の側面と、災害か
でもビジネスの場面でも大きく変化しました。
ら人々を守るという目的の両立に向けて、CASBEE や LEED
さらに海外から日本への視線でも、安心・安全のブラン
ドが揺らいでいるという厳しい指摘もなされています。防
の基準での最高クラスの水準を追求した省エネルギーの構
造、デシカント空調、二重ガラスなどは評価できます。
災の機能を満たしながらも、効率性と環境への配慮を達成
ただしハード面だけではなく、役職員と利用者の防災意
できるようなビジネスモデルへの転換とイノベーションが
識の向上のための啓発活動や、サマータイムなどの勤務時
待たれます。企業経営はこうした転換点に直面しています。
間の見直しといったソフト面での工夫についても数値目標
時代の流れに飯野海運グループが積極的に対応することを
を掲げて活動を行っていくことも必要です。この点での有
期待します。
意義な活動に期待します。
飯野海運グループは、ケミカルタンカーを中心として、産
こ の CSR&ア ニ ュ ア ル レ ポ ー ト を 通 じ た ス テ ー ク ホ ル
業を支えるサプライチェーンの一翼を担っています。また
ダーとのコミュニケーションでは、海運という自社の取り組
原 油 や LPG(液 化 石 油 ガ ス)
、LNG(液 化 天 然 ガ ス)
、石 炭
みだけではなく、クライアントの紙の製造に焦点を当てて
という直接のエネルギー源も運搬する役割が増してきてい
説明をしていました。消費者にとって分かりやすい最終商
ます。その事実は、国際産業のサプライチェーンとエネル
品と、森林保全という環境の活動を紹介している点などは
ギー供給に深く関わるようになってきていることが本報告
分かりやすい試みであったと評価できるでしょう。ステー
書からも、新中期経営計画である IEG14 からも読み取るこ
クホルダーとの対話では、今後も他社とも連携しながら、
とができます。
防災や環境の活動について一般の方々に伝えていくことが
一 方 で、諸 外 国 と 国 民 の 安 心 感 や 日 本 の 安 心・安 全 の
必要であると思います。
ブ ラ ン ド の 再 構 築 の た め に は、各 社 が 基 本 に 立 ち 返 り、
2011 年 6 月
地道に安全や品質などの各項目の改善を行う以外にあり
ま せ ん。イ イ ノ マ リ ン サ ー ビ ス( 株 )
( I M S)が 提 供 し て
い る「安 全・品 質・環 境 マ ネ ジ メ ン ト プ ロ グ ラ ム」
(本 書
名古屋市立大学大学院
経済学研究科 准教授
p36)で は、安 全 で は 衝 突・座 礁 事 故、外 部 審 査 の 指 摘 項
香坂 玲
目数、海難事故の発生件数などで 2010 年度の目標が達成
さ れ ず、2011 年 度 の 目 標 が 設 定 さ れ な お さ れ て い ま す。
IMS は ISO の国際規格を厳格に実行した上で厳しい目標設
定を行っていますが、未達成部分の項目をクリアすること
第三者 意見を 受けて
ご指摘の 通り、先 般の震災 では、当 社グルー プ
の被害は 比較的軽 微だった とはいえ 、海運事 業者
としても 賃貸ビル 事業者と しても、 安全・安心 に
ついて色 々と考え るところ がありま した。緊 急時
であれば こそ、資 源・エネル ギーを安 全かつ効 率
的にそれ らが必要 とされる 場所まで 、いかに して
届けるか 、またビ ルのテナ ントの皆 様、来館 者の
皆様に安 全と快適 さを継続 して提供 するため には
何が必要 か、当社グル ープの真 価を問わ れる状況
経営報告書 編集事務局 長
法務・保険 チームリー ダー
久末 昇
に 直 面 し て も 慌 て る こ と な く 対 応 で き る よ う、
ハード面 だけでは なくソフ ト面でも より高い 目標
を掲げて 努力を続 けていき たいと思 います。
企業とし て安定し た収益基 盤を築き 、維持し
ていくこ とはもち ろんです が、持続 可能な社 会
の実現を 目指すた め、ステ ークホル ダーの皆 様
との対話 を重視し 、今後の 企業活動 に生かし て
いきたい と考えて おります ので、よ ろしくお 願
い致しま す。
飯野海運 経営報告書 2011
52
飯 野 海 運 グ ル ー プ の 沿革
2011 年( 平成 23 年)秋
新「飯野ビル」開業(予定)
2009 年( 平成 21 年)
バイオ ETBE 輸送開始
2008 年( 平成 20 年)
旧「飯野ビル」閉館(翌年、新「飯野ビル」建設工事に着工)
2007 年 ( 平成 19 年)
小型ガスタンカー部門をイイノガストランスポート株式会社に統合
2006 年( 平成 18 年)
Iino Singapore Pte. Ltd. にて運航業務開始
2004 年( 平成 16 年)
海上運送業において ISO9001、14001 同時認証を取得
(翌年、ビル賃貸業においても同認証を取得)
2003 年( 平成 15 年)
2001 年 ( 平成 13 年)
当社グループ初の自主運航 LNG タンカー「SK SUNRISE」竣工
世界最大級のサウジアラビアメタノール製造プロジェクトに参画
( 2004 年操業開始)
1999 年( 平成 11 年)
当社グループ初のダブルハルタンカー「隆邦丸」竣工
1997 年 ( 平成 9 年)
貸フォトスタジオ運営会社「株式会社イイノ・メディアプロ」設立
1991 年 ( 平成 3 年)
インドネシア産 LNG プロジェクトに参画、LNG 輸送に進出
(翌年当社グループ初の LNG タンカー「エルエヌジー ヴェスタ」の共有船主となる)
1974 年( 昭和 49 年)
イイノマリンサービス株式会社設立、船舶管理業務を行う
翌年、わが国初の仕組船混乗化を実現する
1970 年( 昭和 45 年)
1964 年( 昭和 39 年)
当社グループ初のパナマックス型ドライバルクキャリアー「第五全購連丸」竣工
海運集約に際し、定期航路部門を分離し、新たに設立した「飯野汽船株式会社」に譲渡
(同社は川崎汽船株式会社と合併。以来当社グループはタンカー、不定期貨物船経営を主力とする)
53
1960 年( 昭和 35 年)
旧「飯野ビル」竣工(同ビルに本社移転、イイノホール営業開始)
1949 年( 昭和 24 年)
東京証券取引所に上場(1952 年までに順次、大阪証券取引所ほか国内全証券取引所に上場)
1944 年( 昭和 19 年)
社名を現在の商号である「飯野海運株式会社」と改称
1931 年 ( 昭和 6 年)
わが国初の本格的外航タンカー「富士山丸」竣工
1929 年( 昭和 4 年)
当社グループ初のタンカー「第一鷹取丸」竣工
1899 年( 明治 32 年)
飯野寅吉、京都府舞鶴市に「飯野商会」を創立(曳船による石炭運送業および港湾荷役業に着手)
飯 野 海 運 経 営 報 告 書 2 011
コミュニケーション
編集事務局より
3 月 11 日の東日本大震災で被災された皆様へ心よりお見舞い申し上げます。また未曾有の大震災
にもかかわらず、多くの方々のご協力を得て経営報告書 2011 を発行できたことに感謝します。
この報告書はステークホルダーの皆様に当社グループの事業戦略から CSR 活動にいたる幅広い情
報をお伝えするために発行しています。2009 年より、それまで別個に発行しておりましたアニュア
ルレポートと安全環境報告書を統合して、当社グループの活動全体を掲載する媒体として刊行して
おり、今回で 3 回目となります。統合以前から引き続き、開示情報の継続性を重視し、膨大なデー
タをほぼ同一の形で集計してきましたが、世の中における環境会計や CSR に関する報告書の位置づ
けや期待感が随分と変化してきたと感じています。
本報告書をご覧になった読者の皆様方には、当社グループの今後の事業や CSR 活動、さらには次回
の報告書作成の参考にさせていただくため、ぜひとも率直なご意見・ご感想を賜りますようお願い申
し上げます。
事務局メンバー
編集事務局
飯野海運(株)総務企画グループ:保木裕二、伊藤夏彦
ステークホルダーリレーションズマネジメント・調査グループ:
久末昇、羽山晶子、鎌田英佑、浅野美奈子
イイノリサーチアンドパソナ(株):鈴木康昭
問い合わせ先
飯野海運株式会社
〒105-0011 東京都港区芝公園一丁目 7 番 13 号
芝大門フロントビル
総務企画グループ 広報・IR 室
電話:03 (5408) 0356 FAX:03 (5408) 0443 電子メール:ikk ̲[email protected]
ステークホルダーリレーションズマネジメント・調査グループ 安全環境室
電話:03 (5408) 0373 FAX:03 (5408) 0383 電子メール:[email protected]
※2011 年秋より、飯野ビル(東京都千代田区内幸町二丁目 1 番 1 号)に移転する予定です。
※※新本社での電話・FAX 番号は、決定次第当社ホームページに掲載致しますので、そちらをご覧下さい。
その他の発行媒体
1. 有価証券報告書
2. 事業報告
3. 株主通信
【入手方法】 上記総務企画グループまでお問い合わせください。
当社グループのホームページ( www.iino.co.jp )からもご覧いただけます。
経営報告書 2011
発行日:2011 年 6 月 発行:飯野海運株式会社 制作協力:株式会社感響舎
デザイン:イクシノ イメージ ラボラトリィ イラストレーション:渡辺浮美生
次回発行予定:2012 年夏
飯野海運 経営報告書 2011
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www.iino.co.jp