計器用変成器について - JEMIC 日本電気計器検定所

参考資料1
計器用変成器について
1.変成器の分類
変成器には、変流器、変圧器及び変圧変流器があり、下記のように電気計器とともに使用され
る。
計器の用途
配電電圧
特定計量器
家庭・商店用
(変流器付計器)
低圧
電力量計
変成器の種類
変流器
(100V、200V)
単相2線式
最大需要電力計
変流器と変圧器
高圧以上
(6kV 以上)
電力量計
産業用
(変成器付計器)
変成器
名称
単相 3 線式
三相 3 線式
無効電力量計
総称
相線別
原理
変圧変流器
三相 4 線式
役割
変流器
電磁形
0A〜大電流を、0A〜5A に変流する。
変圧器
電磁形
コンデンサ形
6kV〜500kV の高電圧を、110V に変圧するもの。
変圧変流器
電磁形
変圧器と変流器が一つの箱に収納されたもの。
参考:電気計器の役割
電気計器の種類
計器の役割
需要家が消費した電力量(キロワットアワー〔kWh〕
)を計量する計器。
電力量計
1 か月の使用電力量によって「電力量料金」の算定に使用される。
需要家の 1 か月の間の 30 分平均の最大需要電力(キロワット〔kW〕
)を計量す
る計器。
最大需要電力計
検針月を含む過去 1 年間の最大需要電力が「契約電力」として「基本料金」
の算定に使用される。
需要家の負荷の無効電力量(キロバールアワー〔kvarh〕
)を計量する計器。
無効電力量計
1 か月の無効電力量(と電力量)によって「力率」を計算し、基本料金の割
引、割増し率を算定するために使用される。
力率: 負荷電圧と負荷電流の積が有効に電力として使われる割合で次
の計算式で算出する。
平均力率=電力量÷
1
電力量 2 + 無効電力量 2
2.変成器と電気計器の使用例
(1) 変流器付計器
電気の使用量を変流器を使用して計量する電気計器
商店
ブレーカ、分電盤
電力量計
200/100V
照明
冷凍ショウケース
空調
変流器
200A/5A
(2) 変成器付計器
変成器(変圧器・変流器)とともに使用して電気の使用量等を計量する
電気計器
負荷
電気機器
6600V
受電設備
変圧器
電気計器※
6600V/110V
変流器
200A/5A
※電気計器=電力量計+最大需要電力計+無効電力量計
3.変成器の外観図
①
電力量計のみとともに使用する変流器
電力量計
変流器
モーター等
電気の供給
負 荷
計量用の電流
計量用の電圧
2
②
電力量計、最大需要電力計、無効電力量計とともに使用する変成器
(変成器:変圧器と変流器が内蔵されている。)
電気計器
モーター等
負 荷
電気の
供給
計量用の 電圧、電流
注:単体の変圧器と変流器を組み合わせて使用する場合もある。
4.変成器の開発・実用の状況
4.1
電力会社における導入状況
変成器の種類
絶縁方式
電磁形
低圧
(変流器)
高圧以上
昭和 30
年代
昭和 40
年代
昭和 50
年代
平成 10
年代
絶縁カバー
保護式
24
2.4
全モールド式
218
21.8
10
1.0
748
74.8
油入式
(変圧器、
変 流 器 、 巻線モールド式
変圧変流
器)
ガス絶縁式
コンデ
ンサ形
12 年度末施設数
組数
比率
(千組) (%)
(変圧器)
油入式
0.2
0.02
0.2
0.02
電気事業連合会調査による
4.2
モールド形変成器の変遷
回路電圧
6.6kV
11kV
22kV
'62
'65
'70
'75
ブチルゴムモールド形
'80
'85
'90
エポキシモールド形
ブチルゴムモールド形
エポキシモールド形
ブチルゴムモールド形
エポキシモールド形
社団法人 日本電機工業会調査による
3
5.変成器の原理
5.1 変流器の原理
① 変流器は、負荷電流を流す一次巻線(巻数は少ない)
と、電気計器で計量するための電流を得るための
高圧又は低圧配電線
二次巻線(巻数は多い)を鉄心に巻いた構造である。
二次巻線は、電気計器の電流回路の微小な抵抗で短
一次巻線
絡したような状態にして使われる。
(巻数 N1)
② 一次巻線に電流 I1 を流すと鉄心中に磁束が発生し、
一次電流 I 1
磁束
一次電流を巻数比で割った二次電流 I2 が二次巻線に
鉄心
流れる。理想的な変流器では(巻線インピーダンス、
二次巻線
(巻数 N2)
励磁電流、二次側の負担(接続導線と電気計器の
電流回路)を無視する。)
、一次電流と二次電流の
関係は、次式となる。
二次電流I2=
変流比=
一次電流I1
巻数比
定格一次電流
定格二次電流
負荷
二次
電流 I 2
電気計器
N2
N1
但し、巻数比=
=巻数比
③ 変流器は、負荷電流を変流比分の1に正確に変流する役割をする。
変流器の定格一次電流は、計量目的によって異なるが、定格二次電流は、5Aの一種類に標準
化されている。
変流器の変流比は、公称変流比として銘板に記載される。
④ 実際の変流器では、巻線インピーダンス、励磁電流、二次側の負担(接続導線と電気計器の電流回
路)を無視できないので、誤差が発生する。
変流器の誤差は、「比誤差」、
「位相角」で表す。
「比誤差」
:一次電流と二次電流の比が、公称変流比に対してどれほどの違いがあるかを表す。
「位相角」
:一次電流と二次電流が正しく同相とならず、その間に位相差がある場合、これを「位
相角」という。
5.2 変圧器の原理
負荷
高圧配電線
(1) 電磁形の変圧器
① 電磁形は、負荷電圧(一次電圧)を印加する
一次巻線と、電気計器で計量するための電圧
(二次電圧)を得るための二次巻線を鉄心に
巻いた構造である。
② 一次巻線に電圧を印加すると、鉄心中に磁束
一次巻線
(巻数 N1 )
一次電圧 V1
磁束
鉄心
二次巻線
(巻数 N 2 )
が発生し、電磁誘導作用により二次巻線に誘導
二次
電圧 V 2
電圧が発生する。
③ 一次巻線及び二次巻線に交差する磁束の数は同じ
4
電気計器
であるから、各々の巻線1巻数当たりの電圧は、等しくなる。
理想的な変圧器では(巻線インピーダンス、励磁電流、二次側の負担(接続導線と電気計器の電圧
回路)を無視する。
)、一次電圧と二次電圧の間には、 V 1 = V 2 の関係がある。
N1
N2
次式を変圧器の変圧比といい、変圧器は、負荷電圧を変圧比分の1に正確に変圧できる。
変圧比= 定格一次電圧
← 変圧比は、巻数比で決まる。
= N 1
定格二次電圧
N 2
④ 変圧器の定格一次電圧は、送配電の線路電圧毎に異なるが、定格二次電圧は、110V の一種類
に標準化されている。
変圧器の変圧比は、公称変圧比として銘板に記載される。
⑤ 実際の変圧器では、巻線インピーダンス、励磁電流、二次側の負担(接続導線と電気計器の電圧回
路)を無視できないので、誤差が発生する。
変圧器の誤差は、変流器と同様に「比誤差」、「位相角」で表される。
「比誤差」
:一次電圧と二次電圧の比が、公称変圧比に対してどれほどの違いがあるかを表す。
「位相角」
:一次電圧と二次電圧が正しく同相とならず、その間に位相差がある場合、これを「位
相角」という。
(2) コンデンサ形(66kV 以上用)
① コンデンサ形変圧器は、静電容量分圧器の作用を
特別高圧配電
利用している。
主コンデンサ C1
一次電圧 V1
コンデンサには電流が流れる。コンデンサの両端の電圧と、
流れる電流の関係は次式である。
分圧コンデンサ C2
二次電圧 V2
電流=ω×静電容量×電圧である。
但し、ω(オメガ)=2πf(周波数)
主コンデンサと分圧コンデンサには同じ電流が流れるから次の式が成り立つ。
但し、二次側の負担(電気計器の電圧回路)を無視した理想的状態とする。
ω×C1×(V1−V2)=ω×C2×V2 → C1×V1=(C1+C2)×V2
② したがって、一次電圧と二次電圧の間には、次式の関係が成立する。
変圧比=
V
V
1
2
=
C
1
+ C
C 1
2
③ コンデンサ形変圧器は、コンデンサの静電容量を利用して、負荷電圧を変圧比分の一に正確に変圧して
いる。
電磁形と同様に二次電圧を 110V にするには、C2 を非常に大きな値にしなければならないこと
から、実際には負荷電圧を 11kV 程度に分圧して、11kV/110V の電磁形変圧器を使用している。
④ 実際の変圧器では、コンデンサインピーダンス、電磁形変圧器、二次側の負担(接続導線と電気計器の
電圧回路)などを無視できないので、誤差が発生する。
変圧器の誤差は、電磁形と同様に「比誤差」、「位相角」で表す。
5
電気計器
2 個のコンデンサ(静電容量が各々C1、C2)を直列
に接続し、右図のように負荷電圧を接続すると、
負荷
5.3 変圧変流器の原理
変圧器と変流器とをまとめて一つのケースに収納したものである。
ケースに内蔵される変圧器と変流器の
原理は、単独のものと同様である。
高圧配電線
負荷
変圧変流器
変流器
変圧変流器は、個別のものを
使用するより床面積が少なくてすみ、
変圧器
また、誤結線を防げるなどの効果が
あり多数使用されている。
電気計器
6.変成器の構造
電磁形の変成器は、鉄心に銅線(一次巻線、二次巻線)を巻いて高電圧・大電流を変圧や変流す
るため、巻線と鉄心の間及び巻線間を絶縁し、また、鉄心や巻線の変形や移動を防ぐため、鉄心や
巻線を固定する構造としている。
6.1 変流器の構造
(1) 鉄心の構造例
カットコアー
けい素鋼帯を巻き回したカットコ
アーを締め付けバンドで固定する。
積鉄心
けい素鋼帯の積鉄心を
ボルトで固定する。
リングコアー
けい素鋼帯を巻き回
したリングコアー。
(2) 巻線の構造
一般に絶縁被覆の銅線を使用し、鉄心の上に絶縁物をおいてその上にじかに巻く直巻と、巻型
に巻いた型巻コイルを鉄心に組み込む場合がある。また、一次導体を鉄心の貫通窓に通すもの
もある。
二次電流端子
(3) 全モールド形変流器(断面図)
① リング、カットコアーと巻線を樹脂
でモールドする。
② 外箱に収納のものもある。
一次電流端子
二次巻線
6
絶縁物
鉄心
(4) 巻線モールド形変流器
二次電流端子
鉄心(ワニスで保護)
一次電流端子
①巻線を樹脂でモールドする。
②積鉄心をボルトで固定又はカットコアーを
締付けバンドで固定する。
巻線を樹脂で
モールドする。
一次電流端子
(5) 油入形変流器(断面図)
絶縁油
一次巻線
① 積鉄心をボルトで、巻線をスペーサで固定。
② 絶縁油を封入した気密構造である。
絶縁物
鉄心
二次巻線
二次電流端子
(6) 絶縁カバー保護形変流器
① 外箱に収納のものもあるが、気密
構造ではない。
リングコアーを保護カバーで覆い、二次巻線を絶縁カ
バーで覆う構造。巻線モールド形の樹脂モールドが
ないものと同様。
6.2 変圧器の構造
(1) 電磁形
電磁形変圧器の構造は、変流器と同様である。
(2) コンデンサ形(66kV 以上用)
口出片
①変圧器に使用するコンデンサは、右図のように絶縁紙(コンデンサ紙)
、
アルミ箔
アルミ箔、絶縁紙、アルミ箔の 4 層として、これを連続的に巻き
込んだもので、2 枚のアルミ箔を電極とし、各々の箔から口出片
(端子)を出したコンデンサ素子を複数積み重ねた構造である。
コンデンサ紙
②二次電圧を 110V にするには、分圧コンデンサを非常に大きな値にしなければならないことから、
コンデンサ部で一次電圧を 11kV 程度に分圧し、
電磁形計器用変圧器を使用して 110V に変圧する。
がいし(絶縁油を封入。)
コンデンサ形変圧器
の構造例
一次電圧
主コンデンサ
(154kV)
分圧コンデンサ
11kV
電磁形変圧器
二次電圧(110V)
7
コンデンサ部
7.変圧変流器の構造
変流器と変圧器を一つの外箱に格納したもの。
(1) 巻線モールド形の構造
①外箱に収納するが、通気性あり。
②積鉄心をボルトで固定 している。
巻線は樹脂でモールド している。
(2) 油入形の構造
①絶縁油を封入した気密構造
②積鉄心をボルトで固定 している。
③巻線はスペーサで固定している。
(3) ガス絶縁形の構造
①絶縁油の代わりにガスを封入した気密構造。
②カットコアーを締付けバンドで固定している。
③巻線はスペーサで固定している。
8.変成器の外観
①全モールド形変流器(リングコアー使用)
②巻線モールド形変流器(カットコアー使用)
二次電流端子
一次電流端子
一次電流導線は、中心の穴に通す。
カットコアー
( 金属バンドで固
定している)
樹脂モールド
③コンデンサ形変圧器
④ガス絶縁形変圧器
一次端子
二次端子
8
⑥油入形変圧変流器(66kV)
⑤巻線モールド形変圧変流器
一次端子
ブッシング
(碍子)
二次端子
9