487 砥粒加工学会誌 12回連載 技 術 エ ッ セ イ 第 10 話 球 レ ン ズ に よ る 再 帰 反 射 球体のはなし 柴田順二(芝浦工業大学名誉教授) マイクロ球 レンズ レーザや光 ファイバなどを 経 た後 、入 光 方 向 に比 較 的 近 い角 度 で出 光 絡 めての 光 通 信 技 術 が 急 速 な 進 歩 、普 及 を 遂 する。これが水 滴 の場 合 には、入 射 光 に対 して げている昨 今 、オプトエレクトロニクスの果 たす 約 40 ~ 42 ° の 偏 り 角 度 で 出 光 す る が 、 こ れ が 役 割 は ますます高 まっている。このような情 報 化 大 気 中 の水 滴 に入 射 した太 陽 光 が反 射 し、虹 社 会 の中 でマイクロ球 レンズはファイバカップリ が見 える原 理 である。出 光 方 向 が入 光 方 向 と ング、集 光 レンズ、コリメータ、マイクロ光 スイッ チ 完 全 に一 致 したときに再 帰 反 射 光 と なる訳 だが、 などに欠 くことのできない光 学 素 子 として広 く認 ガラス球 レンズの屈 折 率 N:2 の場 合 にのみ完 識 されている。 全 再 帰 反 射 が実 現 される。なお、一 般 的 光 学 ところで、球 レンズは 再 帰 反 射 とい う魅 力 ある もう1つの可 能 性 を秘 めている。本 稿 ではこの話 ガラスの屈 折 率 N は 1.50~1.85 程 度 である。 再 帰 反 射 ガラス球 の� � 用 途 交通事故 防 止 のために、道 路 の標 識 や区 画 線 には「必 題 を取 り上 げることにする。 再 帰 反 射 ミラー 再 帰 性 反 射 とは、入 射 光 を 要 に応 じて反 射 材 料 を用 いること」と法 令 に定 入 光 方 向 へ正 確 に出 光 (反 射 )させる光 学 特 められている。そのため道 路 標 示 用 塗 料 ・イン 性 のことである。静 的 再 帰 反 射 ミラーの開 発 途 キ 1 ℓ の 中 に 径 0.01 ~ 0.15 mm φ の ガ ラ ス 球 上 においてこれまで、コーナーキューブプリズム 500g~800g が再 帰 性 反 射 材 として混 入 されて 型 と球 面 レンズ型 が考 案 され、中 でも前 者 はレ いる(� 1)。この再 帰 反 射 用 ガラスビーズのアイ ーザ測 量 などに見 られるようにポピュラーな再 帰 デアは、米 国 メーカが 40~50 年 前 に考 案 したも 反 射 原 理 となっている。路 肩 や分 離 帯 に設 置 さ の で あ る 。 し か し 、 ガ ラ ス ビ ー ズ ( N:1.5 前 後 ) で れ てい る 視 線 誘 導 標 識 や 自 転 車 のリ フレク タ に は実 効 率 が極 めて乏 しいため、車 線 数 の多 い 使 わ れてい る反 射 部 材 、 自 動 認 識 コード 用 のリ 高 速 道 路 あるいは霧 などの環 境 下 にあると再 フレクティブカラーコードなどもその応 用 例 であ 帰 反 射 効 果 が低 下 し、その性 能 改 善 が望 まれ る。ただし、視 覚 (入 光 可 能 な角 度 範 囲 )が狭 く、 てきた。従 来 の 2 倍 の反 射 率 のロードマーキン 反 射 体 構 造 の設 計 ・製 作 にも多 くの技 術 難 題 グ 用 特 殊 組 成 ガ ラ ス ビ ー ズ ( N : 1.93 ) が 開 発 さ が残 されている。そこで登 場 したのが、再 帰 反 れ 、 空 港 滑 走 路 用 に 提 供 さ れ てい ると い う 話 題 射 ガラス球 である。 も聞 かれる。 ガラス球 の再 帰 反 射 原 理 マイクロガラス球 その他 、マイクロガラス球 を塗 布 したスクリー に入 射 された光 は 2 回 の屈 折 と 1 回 の反 射 を ンも再 帰 反 射 特 性 の応 用 である。平 面 散 布 さ 54 Journal of the Japan Society for Abrasive Technology Vol.56 No.7 2012 JUL. 487-488 砥粒加工学会誌 488 再 帰 反 射 球 レ ンズ 超 広 角 レーザ再 帰 反 射 ミラ ラーとして、半 半 径 の異 なる る 2 つの半 半 球 を貼 り合 合 わ せ た レ ン ズ構 造 が ラ イ カ グ ル ー プ( 独 ) に よ っ て開 開 発 された。 しかし、この の半 球 貼 り合 合 わせ型 再 帰 反 射 レ ン ズ( キ ャ ッ ツ ア イ ) は 、 製 造 技 術 の 立 場 から見 か ると煩 煩 わしい設 計 であった。 図 1 ロードマー ーキング用 ガラスビーズ ガ そこで発 そ 想 されたのが、 、真 球 型 キ ャッツアイで で ある る(図 2)。屈 屈 折 率 N=22 の特 殊 ガラス素 ガ 材を れた 微 小 球 の 再 帰 反 射 に よっ て 、 映 画 やス ラ イ 開 発 す る こ と に よっ て ガ ラ ラス 球 の 内 面 を そ の ま ま ド用 スクリー ーン画 面 を明 明 るくする効 効 果 が発 揮 さ され 反 射 ミ ラ ー とし て 利 用 で き れ ば 、 視 覚 を 原 理 的 るのである。 には は 360 度 まで拡 ま 大 でき き、これによっ って 3 次 元 超 広 角 レ ーザ再 帰 反 射 ミラー 固 定 され た 座 標 の あ ら ゆる 角 度 か ら レ ー ザ ト ラ ッ キ ン ッ グ 干 複 数 の基 準 点 からリトロリフレクタ(レーザ測 長 渉 計 により位 置 座 標 測 定 が可 能 となり、かつ、 用 反 射 ミラーを取 り付 け、レーザ光 を正 確 に その方 向 調 整 の手 間 を省 くことが出 来 るように 180 ° 方 向 転 換 さ せ る 光 学 部 品 ) ま で の 距 離 を な る 。 真 球 型 キ ャ ッ ツ ア イ は 、 既 に 1995 年 に ッキング干 渉 計 によって て動 的 に追 尾 し、 レーザトラッ He -Ne レーザ 光 に対 して て屈 折 率 :2 という大 きな な その測 距 離 から目 標 物 の位 置 座 標 や運 動 経 値 を有 する特 殊 ガラス素 材 で試 作 された実 績 路 を 3 次 元 的 に同 定 する光 す 学 系 を構 築 でき きる。 がある。真 球 キャッツアイ の構 造 では 、球 レンズ この測 距 離 システム用 リトロリフレクタとして、 超 の 真 球 度 が 再 帰 反 射 精 度 の 決 め 手 になるた め、 め 広 角 レーザ ザ再 帰 反 射 ミラーや球 ミ レンズが注 レ 目さ 極 めて高 め い幾 何 精 度 が要 要 求 される。 具 体 例 とし し れている。その用 途 としては、次 のようなもの が て、 その球 レン ンズの直 径 38mm に対 対 して、真 球 挙 げられる。 。 度 0.05μm 以 下 であっ た。その結 果 、計 測 距 ・高 精 度 な 3 次 元 座 標 測 定 0nm 程 度 と 離 精 度 は 絶 対 距 離 に 関 係 な く 、 400 ・マシニング グセンタやロ ボットアーム ムの 3 次 元 運 評 価 された。た ただし、その の素 材 コストは は一 般 の光 光 動軌跡の の座 標 測 定 学 ガラスの ガ 1 桁 以 上 も高 価 となった。 。 ・ ASV ( Advvanced Saffety Vehiclle ) 用 の セ ン サ (車 間 距 離 測 定 装 置 など) 従 来 一 般 に用 いられて来 た超 広 角 レーザ 再 帰 反 射 ミラ ーの光 学 系 には、凸 レンズと反 レ 射 ミラ ーの組 合 せ (凸 レンズの焦 点 をミラー面 に一 致 させることで、入 射 角 方 向 に反 射 光 を返 す こと ができる)、 および直 角 3 面 プリズ ズムがある。し しか し、これらの光 学 系 は運 動 精 度 や振 動 の影 響 を受 けやす すいばかりか 、視 覚 も 90 0°以 下 と比 比較 的 狭 いのが が弱 点 である る。 図 2 キャッツア アイと真 球 度 (材 質 :特 特 殊 ガラス、 屈 折 率 N:1.999、芝 N 芝 浦 工 大 19 995 年 ) Journal of the Japan Society for Abrasive Technology Vol.56 No.7 2012 JUL. 487-488 55
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