中国地域における航空機関連産業の振興方策 調査報告書 概要版

概要版
中国地域における航空機関連産業の振興方策
調査報告書
この事業は、競輪の補助金を受けて
実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
平成22年3月
財団法人 ちゅうごく産業創造センター
この事業
この事業は
事業は、競輪の
競輪の補助金を
補助金を受けて
実施したもので
実施したものです
したものです。
http://ringring-keirin.jp/
は
じ
め
に
航 空 機 関 連 産 業 は 、世 界 的 同 時 不 況 に よ り 航 空 会 社 の 業 績 不 振 等 で 航 空 機 の 発 注
が 落 ち 込 ん で お り 、ま た 新 造 機 新 型 機 (ボ ー イ ン グ 787,MRJ)の 開 発・納 入 が 遅 れ て
い る も の の 、中 長 期 的 に は 成 長 す る と 予 想 さ れ て い る 。国 内 で は 大 手 (重 工 業 )メ ー
カーが今後の需要に備え、複合素材ユニットの製造など生産体制を強化している。
こ の よ う な 中 、全 国 各 地 に お い て 新 規 参 入 に 向 け て 、中 小 企 業 の 動 き が 活 発 化 し
て お り 、 中 国 地 域 で は 、 共 同 受 注 グ ル ー プ の 「 ウ イ ン グ ウ ィ ン 岡 山 」 が 平 成 16 年
10 月 に 設 立 さ れ 、 広 島 で は 「 広 島 航 空 宇 宙 研 究 会 」 が 立 ち 上 が っ て い る 。
そ こ で 本 調 査 は 、中 国 地 域 の 中 堅・中 小 企 業 が 航 空 機 関 連 分 野 へ の 展 開 を 図 る た
め に 、担 う こ と が 可 能 な 分 野 、必 要 と さ れ る 技 術 レ ベ ル 等 の 課 題 を 把 握 す る と と も
に 、中 国 地 域 に お け る 航 空 機 関 連 産 業 の 集 積 を 図 る た め に 地 域 が 取 り 組 む べ き 方 向
性を定め、振興に必要な具体策とその手順について検討したものであります。
本 報 告 書 が 、今 後 中 国 地 域 に お け る 航 空 機 関 連 産 業 の 振 興・発 展 に つ な が れ ば 幸
いです。
本 調 査 の 実 施 に 当 た っ て は 、産 ・学 ・ 官 の 有 識 者 、関 係 者 で 構 成 す る「 中 国 地 域
に お け る 航 空 機 関 連 産 業 の 振 興 方 策 調 査 」委 員 会 を 組 織 し て 、ご 審 議 い た だ く な ど 、
関係各位のご協力と適切なご提言を賜りました。
また、専門的な立場から財団法人 岡山経済研究所のご協力をいただきました。
こ こ に 、ご 審 議 い た だ き ま し た 委 員 の 皆 様 を は じ め 、関 係 各 位 の ご 尽 力 に 対 し て
深く感謝するものであります。
当 セ ン タ ー は 、今 後 と も 、産 ・ 学・ 官 の 緊 密 な 連 携 の も と 、中 国 地 域 の 活 性 化 の
た め に 努 力 し て ま い る 所 存 で ご ざ い ま す の で 、一 層 の ご 支 援 、ご 鞭 撻 を 賜 り ま す よ
う お 願 い 申 し あ げ ま す 。な お 、本 調 査 は 、財 団 法 人 JKA の 機 械 工 業 振 興 事 業 の 補 助
事業として実施しました。
平成22年3月
財団法人
ちゅうごく産業創造センター
会 長
松 井 三 生
中国地域における
中国地域における航空機関連産業
における航空機関連産業の
航空機関連産業の振興方策調査
委 員 会 名 簿
委 員
(敬称略、所属50音順)
氏
名
所
属
役
職
委員長
大﨑
紘一
岡山商科大学
副学長
副委員長
岩下
英嗣
広島大学
教授
委員
夏明
正伸
㈱IHI
〃
妹尾
正己
岡山県
〃
本位田
〃
谷畑
英樹
鹿島建設㈱
〃
和泉
孝一
興南設計㈱
〃
永岡
伸善
島根県
〃
尾本
哲朗
中国経済産業局
〃
都留
良男
中国経済連合会
理事
〃
林
義之
(社)中国地域ニュービジネス協議会
常務理事
〃
大江
隆二
中国電力㈱
フィナンシャルテクノロジー担当
〃
中塚
総一郎 ㈱中塚鉄工所
代表取締役
社長
〃
田代
博造
代表取締役
社長
〃
伊賀
沙綾香 広島県
商工労働局
〃
松本
良徳
広島市
経済局
〃
神谷
幸秀
三菱重工業㈱
〃
小関
浩幸
山口県
商工労働部
商政課
産業労働部
産業振興課
大学院工学研究科
航空宇宙事業本部
産業労働部
和昭 (財)岡山県産業振興財団
中国支店
名
産学官連携センター長
呉第二工場
生産技術部
経営支援課
総括参事
経営支援部
次長
営業部
部長
次長
取締役
商工労働部
産業振興課
地域経済部
エネルギア総合研究所
㈱ヒロコージェットテクノロジー
産業振興部
地域産業創造グループリーダー
地域経済課長
新産業課
マネージャー
主任主事
産業振興部長
機械・鉄構事業本部
機械事業部
総務部
次長
主査
オブザーバー
オブザーバー
高橋
伸夫
岡山県
〃
袋井
信圭
中国経済産業局
〃
川北
英孝
東広島商工会議所
専務理事
事務局
田村
真悠
(財)ちゅうごく産業創造センター
常務理事
〃
池田
利明
〃
調査部 部長
〃
金重
信彦
〃
調査部 部長
* 〃
宮崎
哲彦
〃
地域経済部
主任
次世代中核産業クラスター担当係長
事務局
〃
〃
調査機関
シンクタンク
雄龍
清志
(財)岡山経済研究所
〃
山本
智之
〃
主任研究員
〃
宮前
善充
〃
主任研究員
*:人事異動による後任者
調査部長
中国地域における航空機関連産業の振興方策調査〔要約〕
<調査の目的>
① 背景
・国内の航空機市場は今後、世界的な航空旅客数の増加に伴って市場規模の拡大が見込まれてい
る。
・ボーイング社の次世代旅客機 B787 の量産化が本格化すると国内の航空機産業は活況を呈するこ
とが予想される。また、平成 20 年3月には三菱重工業が「MRJ」の事業化を決定し、
「YS-11」
以来、40 年ぶりとなる国産旅客機の開発・生産が期待されている。
・航空機生産の拡大期を目前にして、全国各地で中堅・中小企業(以下、中小企業)の航空機産業
への参入に向けた動きが活発化している。これを受けて、参入をめざす企業に情報の提供や受
注活動の支援などを行う連携組織が近年、相次いで設立されている。
・中国地域では、「ウイングウィン岡山」
「広島航空宇宙研究会」が活動を行っている。
Ⅰ.航空機関連産業の
航空機関連産業の現状と
現状と中国地域の
中国地域の取組状況
1.現状
・国内の航空機産業は1兆円を超える程度の規模で、自動車の
約3%、一般機械の約4%と決して大きくない規模。欧米諸
国の市場規模に比べても小さい。
・航空機メーカーは、航空機の機体を製造する機体メーカー、
航空機用エンジンを製造するエンジンメーカーがある。海外
の主な民間航空機メーカーには、機体はボーイング、エアバ
ス、エンジンはGE、RR、P&Wなどで寡占化状態にある。
国内では、三菱重工業、IHI、川崎重工業、富士重工業と
いった重工メーカー等が機体・エンジンを生産している。そ
の他に、ジャムコ、多摩川精機、住友精密工業、ナブテスコ
などの装備品・機器メーカーが存在する。
・民間旅客機の航空機産業は、海外の機体・エンジンメーカー
を頂点とした産業構造が形成されている。重工メーカー等は
そのTier1として主要部材を供給している。重工メーカー等
に航空機部品を供給する部品メーカー(協力会など)が多数
存在する。その他に、生産・整備用機材として検査機器、治
工具類や“アフターパーツ”と呼ばれる補修用部品を開発・
製造する分野がある。
・航空機産業の特徴は、現状の産業規模は大きくないこと、多
品種小ロット生産であること、長期にわたる製品サイクル、
厳格な品質保証体制が求められることなどが挙げられる。
① 背景(続き)
・実際に中小企業が航空機関連産業に参入するためには、技術・設備や品質保証の体制
づくりなど、乗り越えていかなければならない課題が数多くあり、参入に困難が伴
うといわれている。
② 目的
中国地域の中小企業が航空機関連分野で担うことが可能な分野、参入に必要とさ
れる条件等を把握する。そして、中国地域の航空機関連産業の集積を図るために地
域が取り組むべき方向性を定め、具体的な方策とそのステップを検討するなど、中
国地域における航空機関連産業の発展に有効な方策を提案する。
2.市場見通し
日本航空機開発協会の調査によると、世界の航空旅客は今後 20 年
間で年平均 4.7%の伸びを続け、2008 年の 2.5 倍に達すると予測。
サイズ別ジェット機では、60~99 席、100~119 席、230~309 席、310
~399 席などのクラスで大きな伸びを予測。
世界の航空旅客伸び率
年平均伸び率 (%)
1989-2008年 2009-2028年
北米
3.3
3.5
欧州
5.5
4.1
アジア/太平洋
7.0
5.8
その他の地域
3.3
5.6
合 計
4.6
4.7
3.中国地域の取組状況
・工業統計(平成 19 年)によると、中国地域の「航空機・同付属品製
造業」は事業者が6、製造品出荷額等が 600 億円。
・中国地域における航空機メーカーの生産拠点は、広島県内に三菱重
工業㈱名古屋航空宇宙システム製作所広島工場、㈱IHI呉第二工場、
山口県内に三菱重工業㈱下関造船所が立地。
・中国地域の地域連携組織としては、
「ウイングウィン岡山」が航空機
分野の受注開拓に向けた活動を展開、「広島航空宇宙研究会」は姉妹
都市の産業交流を通じて、広島地域の航空機関連産業の創出可能性を
探っている。
4.航空機関連産業の技術開発
(1)航空機生産技術の特徴
絶対的な安全性と高い信頼性のほか
に、
「軽量化」
「インテグレーション」
「航
空機特有の生産加工」「治具・工具の重要
性」が航空機生産技術の特徴として挙げ
られる。
(2)自動車分野との技術相互波及
航空機分野から自動車分野への技術波
及はCFRP、ABS、5軸加工機、3次元C
ADシステムなど。一方、自動車分野から
航空機分野への技術波及には、ムービン
グ・ライン、ショットピーニング加工など
がある。
(3)技術戦略マップ
航空機分野は宇宙分野とともに、
「技術
戦略マップ」に平成 18 年以降毎年掲載。
技術戦略マップでは、航空機分野の技術
課題を材料・構造技術、空力技術、装備品
技術、エンジン要素技術などの6つに分
類して整理している。
-i-
Ⅱ.地域企業
地域企業の
企業の意向
1.アンケート調査結果
中国地域に所在するプラスチック製品、金属製品、一般機械、電気機械、情報通信機器、電
子部品・デバイス、輸送用機械、精密機械、機械設計を主業種とする企業を対象。
調査対象企業は 1,526 社、有効回答企業は 378 社、有効回答率は 24.8%。
①航空機関連分野への関わり
・
「航空機分野に継続的に関わっている」が6%、
「不定期に関わっている」が7%で、
「航空機
分野に関心があり、今後進出を検討したい」は 28%。
②航空機関連分野に関わりのある企業(進出分野、進出時期等)
・航空機関連分野に関わりのある企業への質問で、進出分野としては「治工具類」「機体分野」
「エンジン」が多い。
・進出時期は「2年超~5年前」
「10 年超~20 年前」が多かったものの大きな差はみられない。
・概ね期待に近い効果が得られたものは「技術力の向上・高度化」「品質管理力の向上・高度化」
「人材育成・能力開発」「企業イメージの向上」など。
・今後の取組方針は「積極的に取り組む」が最多。
③航空機関連分野に関心があり、今後進出を検討している企業(進出理由、課題・問題点等)
・航空機分野への進出理由は「航空機市場が有望」が最多、
「既存事業の成長が見込めない」
「既
存設備が活用できる」も多い。
・進出に際しての課題・問題点は「進出のきっかけがない」が最多、「何から始めたらよいかが
わからない」「技術情報、市場情報等が入手しにくい」との回答も多い。
・航空機分野をめざすグループへの参加意向は「積極的に参加」
「参加の方向で検討」で8割超。
2.聞き取り調査結果
航空機関連産業に進出した中小企業
の参入時の状況、参入ポイント、参入時
にネックとなった点、および今後の取組
方針、行政への要望は以下のとおり
①進出のきっかけ
航空機需要の拡大期という受注好機
に、タイミング良く発注企業との取引開
始
②参入ポイント
設備、品質管理体制、参入意欲の3点
③参入時にネックとなった点
品質管理に関すること、参入時の投資
負担が大きいこと
④今後の取組方針
「積極的に取り組む」とする意見が多
い中で「現状維持」とする企業もあり
⑤行政への要望
受注開拓の支援、新規取引先の紹介等
Ⅳ.中小企業の
中小企業の参入が
参入が期待される
期待される分野
される分野と
分野と参入に
参入に必要とされ
必要とされ
る条件
1.中小企業の参入が期待される分野
・機体およびエンジンの分野では、部品生産への参入に
余地がある。国内大手メーカーが海外航空機メーカー
のTier1として国際共同開発・生産を担っているので、
その部品の生産が中小部品メーカーに回ってくる可能
性あり
・産業構造からみた中小企業の参入ポジションは、国内
大手メーカーへの「部品メーカー」を参入ターゲット
とすることが正攻法
・中小企業がいったん参入できたとしても、工程の一部
を受注するだけで不安定な受注変動を繰り返す懸念が
ある。安定した受注量確保の対策が必要
2.中小企業の参入に必要とされる条件
・設備面は、航空機部品の加工に5軸加工機の導入が必
要。業界標準の3次元CADソフト「CATIA V5」
「N
X6」の導入が必須
・今後は、JISQ9100、Nadcapの認証取得が参入の前提条
件
・長期にわたり部品を継続的に安定供給できる企業体質
の構築
・航空機の絶対的安全性を確保するために、参入する企
業、その従業員全員が“信頼”をベースにした航空機
特有のものづくり文化を理解し、企業に定着させるこ
とが航空機関連産業への参入の大前提
Ⅲ.他地域での
他地域での取組状況
での取組状況
1.地域連携組織の取組状況
他地域の連携組織の聞き取り調査により、以下の点を把握した。
・連携組織の多くは中小企業の航空宇宙分野への参入を目的に事業展開
・民間主導の連携組織は入会に一定の制限あり
・宇宙分野より航空機分野の志向が多い
・連携組織の会員は地域限定としている組織が多い。一部に会員所在地
にこだわらない組織もあり
○宇宙航空技術利活用研究会(静岡県浜松市)
・民間主導で取り組む(事務局は浜松商工会議所)
・コーディネータが会員企業の受注活動等に積極的に関与
・JAXAと連携
○航空宇宙産業フォーラム(名古屋市)
・航空機部品メーカーの海外展開を積極的に支援
・人材育成に産学官が連携して取り組む
・各支援機関と役割分担を図りながら事業推進
○次世代型航空機部品供給ネットワーク(大阪市)
・会員企業が主体的に取り組む
・会員企業によって一貫生産システムによる会社の設立
・公的支援事業を上手に活用して自らの事業展開に取り込む
○住友精密工業株式会社(兵庫県尼崎市)
<参入企業へのアドバイス・要望>
・品質管理面など航空機産業の特性を理解
・一貫生産による完成部品の納入に期待
2.先進事例調査結果
○株式会社オー・ワイ・コープ(大阪市)
中国地域の航空機関連産業の集積に向けて、参考となる事例を選定し、 ・一貫生産システムを具現化した会社の設立
先進事例調査を実施した。参考となる点は右記のとおり。
・参加企業の各社が JISQ9100 の認証取得推進
・トレーサビリティシステム構築に公的資金を活用
○三菱重工業株式会社名古屋航空宇宙システム製作所(名古屋市)
<参入企業へのアドバイス・要望>
・機体メーカーによるサプライチェーン再構築の動きに留意
・航空関連法令・規格等の熟知、品質管理体制の充実が重要
-ii-
Ⅴ.中国地域での
中国地域での取組方向
での取組方向について
取組方向について
1.中国地域での参入可能性の検討
<航空機市場の状況>
・短期的には需要増は期待できない
・中期的には新規発注の可能性が高い
<中国地域の中小企業>
・設備,技術を有する中小企業あり
・参入意向のある中小企業が多数あり
Ⅵ.中国地域の
中国地域の航空機関連産業の
航空機関連産業の発展方策
航空機関連産業の発展方策は、5つの基本方策(1)情報収集機会の提供、(2)新たな連携組織づくり、(3)既存連携組織の機能
強化、(4)中国地域内でのネットワークづくり、(5)中国地域コンソーシアムの結成、で構成される。
その5つの基本方策に沿って、それぞれの具体的方策、取り組みは次のとおりとする。
基本方策
具体的方策
主な取り組み
(1)情報収集機会の提供
a.セミナー・勉強会等の開催
○「航空機産業の動向」等の情報提供
(2)新たな連携組織づくり
a.情報収集活動
○連携組織によるセミナー・勉強会等の開催 等
(3)既存連携組織の機能強化
b.一貫生産体制づくり
<取り巻く環境>
・先発参入メーカーの存在
・地域連携組織の活動
・大手メーカーの生産拠点
中期的には参入可能性は十分にあり
c.海外市場開拓
(4)中国地域内でのネットワー
クづくり
4.中国地域での必要な取り組み
<参入に関心がある、参入を検討している中小企業>
・情報収集機会の拡大
・新たな連携組織の立ち上げ
<既に参入している中小企業>
・既存連携組織の機能強化
・海外市場等の取引開拓
・中国地域内資源の有効活用
<基本方向>
ネットワーク化による
内外の航空機関連産業への参入機会の創出
d.新機種受注の取り組み
a.連携組織の連帯による取り組み
b.産学官一丸となった取り組み
①コーディネータの設置
②一貫生産プロジェクトの推進
③研究開発プロジェクトの推進
④人材育成プロジェクトの推進
2.連携組織の有効性の検討
PR効果、情報収集、一貫生産への対応可能性など
の面からみて、地域連携組織による取り組みは有効
3.取組主体・エリアの検討
・民間企業が主体的に取り組む
・県域をベースに中国地域での取り組みも効果的
b.受注開拓活動
a.これまでの活動の充実
⑤販路開拓プロジェクトの推進
(5)中国地域コンソーシアムの
結成
○共同での受注開拓 ○国内の航空宇宙展への出展 等
○情報収集活動の強化 ○国内での受注開拓活動の強化
○参入企業の経営体力の強化
○一貫生産体制の実現化検討
○必要とされる工程への参加呼びかけ
○海外の航空宇宙展への出展
○海外航空機産業の市場調査 等
○新機種に対応した研究開発 等
○連携組織による情報交換会の開催
○勉強会等への相互参加 ○共催によるセミナー開催 等
○一貫生産に向けた研究開発 ○一貫生産人材の育成研修
○複合材の研究開発 ○共同利用設備の設置
○一貫生産人材の育成研修(再掲)
○「CATIA V5」等の研修 ○5軸加工機等の研修
○国内での展示商談会の主催 ○国内の航空宇宙展への出展
○海外の航空宇宙展への出展 ○海外へのミッション派遣
a.中国地域コンソーシアムの結成
b.コンソーシアムによる一貫生産体制づくり
c.海外市場開拓
○貿易振興機関等との連携 ○海外の航空宇宙展への出展
○海外へのミッション派遣
d.新機種獲得に向けた取り組み
○新機種受注に向けた情報収集
○新機種に対応した研究開発
Ⅶ.発展方策の
発展方策の推進に
推進に向けて
1.取組主体
2.専門機関、先進地域との連携
5つの基本方策の中で、
「新たな連携組織づくり」
「既存連
中国地域内だけでなく、他地域の高次機能を活用すること
携組織の機能強化」、さらに「中国地域コンソーシアムの結成」
によって、より充実した取り組みとする。
の取組主体は民間企業であるが、立ち上げ時には公的機関の (例)
・研究開発プロジェクトでのJAXAとの連携
関わりが求められる。参加企業が事業実施の経験を積み、運
・人材育成で中部地域の育成研修ノウハウの活用
営ノウハウ等を蓄積していくにつれて、徐々に取り組みを参
・海外航空宇宙展で他地域での出展希望者との共同出展
加企業中心に移行していくことが望まれる。
「情報収集機会の提供」
「中国地域内でのネットワークづく 3.新たな地域産業への成長を期待
り」では、行政・産業振興機関等の公的機関が取組主体となり、
中国地域の航空機関連産業の発展方策を積極的に取り組
各セクターに働きかける役割が期待される。
むことにより、当該産業が次世代産業に成長することに期待
する。
-iii-
目
次
調 査 の 目 的 ——————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 1
1 . 調 査 の 目 的 ————————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 1
2 . 調 査 の 対 象 地 域 ——————————————————————————————————————————————————————————————————————— 1
3 . 調 査 期 間 ———————————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 1
Ⅰ . 航 空 機 関 連 産 業 の 現 状 と 中 国 地 域 の 取 組 状 況 —————————————————————————————————— 2
1 . 現 状 —————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 2
2 . 市 場 見 通 し ————————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 9
3 . 中 国 地 域 の 取 組 状 況 ———————————————————————————————————————————————————————————————— 10
4 . 航 空 機 関 連 産 業 の 技 術 開 発 ——————————————————————————————————————————————————————— 15
Ⅱ . 地 域 企 業 の 意 向 ————————————————————————————————————————————————————————————————————— 17
1 . ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 ———————————————————————————————————————————————————————————————— 17
2 . 聞 き 取 り 調 査 結 果 —————————————————————————————————————————————————————————————————— 22
Ⅲ . 他 地 域 で の 取 組 状 況 ——————————————————————————————————————————————————————————————— 24
1 . 地 域 連 携 組 織 の 取 組 状 況 —————————————————————————————————————————————————————————— 24
2 . 先 進 事 例 調 査 結 果 —————————————————————————————————————————————————————————————————— 25
Ⅳ . 中 小 企 業 の 参 入 が 期 待 さ れ る 分 野 と 参 入 に 必 要 と さ れ る 条 件 ——————————— 28
1 . 中 小 企 業 の 参 入 が 期 待 さ れ る 分 野 —————————————————————————————————————————————— 28
2 . 参 入 に 必 要 と さ れ る 条 件 —————————————————————————————————————————————————————————— 33
Ⅴ . 中 国 地 域 で の 取 組 方 向 に つ い て ————————————————————————————————————————————————— 35
1 . 中 国 地 域 で の 参 入 可 能 性 の 検 討 ————————————————————————————————————————————————— 35
2 . 連 携 組 織 の 有 効 性 の 検 討 —————————————————————————————————————————————————————————— 38
3 . 取 組 主 体 ・エ リ ア の 検 討 ——————————————————————————————————————————————————————————— 41
4 . 中 国 地 域 で の 必 要 な 取 り 組 み ———————————————————————————————————————————————————— 42
5 . 基 本 方 向 —————————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 44
Ⅵ . 中 国 地 域 の 航 空 機 関 連 産 業 の 発 展 方 策 ———————————————————————————————————————— 46
1 . 基 本 方 策 —————————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 46
2 . 具 体 的 方 策 ——————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 48
Ⅶ . 発 展 方 策 の 推 進 に 向 け て —————————————————————————————————————————————————————————— 58
1 . 取 組 主 体 —————————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 58
2 . 専 門 機 関 、 先 進 地 域 と の 連 携 ———————————————————————————————————————————————————— 59
3 . 新 た な 地 域 産 業 へ の 成 長 を 期 待 ————————————————————————————————————————————————— 59
調査の目的
1.調査の目的
国内の航空機市場は約1兆円の規模を有している。今後、世界的な航空旅客数
の 増 加 に よ る 民 間 航 空 機 の 需 要 増 加 に 伴 っ て 、市 場 規 模 の 拡 大 が 見 込 ま れ て い る 。
特 に 、 ボ ー イ ン グ 社 の 次 世 代 旅 客 機 で あ る B787 に は 、 国 内 大 手 メ ー カ ー は 機 体 分
野 で 開 発 段 階 か ら 35% と い う 高 い 分 担 率 で 参 画 し て い る 。 量 産 が 本 格 化 す る と 、
国 内 の 航 空 機 産 業 は 活 況 を 呈 す る こ と が 予 想 さ れ て い る 。 ま た 、 平 成 20 年 3 月 に
は 三 菱 重 工 業 が リ ー ジ ョ ナ ル ジ ェ ッ ト 機「 MRJ」の 事 業 化 を 決 定 し 、
「 YS- 11」以
来 、 40 年 ぶ り と な る 国 産 旅 客 機 の 開 発 ・生 産 が 期 待 さ れ て い る 。
航 空 機 生 産 の 拡 大 期 を 目 前 に し て 、 中 堅 ・中 小 企 業 ( 以 下 、 中 小 企 業 と 略 す ) に
おいても、全国各地で航空機産業への参入に向けた動きが活発化している。これ
を受けて、行政や産業振興機関などが主体となって、参入をめざす中小企業に対
して、情報の提供や受注活動の支援などを行う連携組織が近年、相次いで設立さ
れ て い る 。 中 国 地 域 で は 、「 ウ イ ン グ ウ ィ ン 岡 山 」 が 航 空 機 分 野 の 受 注 開 拓 に 向 け
て本格的に活動を展開しており、広島市の「広島航空宇宙研究会」は姉妹都市の
産業交流を通じて、広島地域の航空機関連産業の創出の可能性を探っている。
し か し 、 実 際 に 中 小 企 業 が 航 空 機 関 連 産 業 に 参 入 す る た め に は 、 技 術 ・設 備 や 品
質保証の体制づくりなど、乗り越えていかなければならない課題が数多くあり、
参入には困難が伴うといわれている。
本調査では、こうした状況を踏まえて、中国地域の中小企業が航空機関連分野
への展開を図るために、担うことが可能な分野、参入に必要とされる条件等を把
握する。そして、中国地域における航空機関連産業の集積を図るために地域が取
り組むべき方向性を定め、必要とされる具体的な方策とそのステップを検討する
など、中国地域における航空機関連産業の発展に有効な方策を提案し、当該産業
の発展に寄与することを目的としている。
2.調査の対象地域
中国地域
3.調査期間
平 成 21 年 5 月 ~ 平 成 22 年 3 月
-1-
Ⅰ.航空機関連産業の現状と中国地域の取組状況
1.現状
(1)国内の航空機産業の経緯
日本の航空機産業は、第2次世界大戦までは世界の最先端にいたが、敗戦に
より航空機の製造を含むすべての航空活動が禁止された。その間、欧米先進国
では航空機のジェット化が著しく進み、日本は技術の潮流から取り残されてし
まった。
“ 空 白 の 7 年 間 ”と 呼 ば れ る 期 間 で あ る 。昭 和 27 年 の GHQ覚 書 に よ り 、
朝鮮戦争で投入された米軍機の修理や一部の部品発注が日本のメーカーに出さ
れるようになった。
朝 鮮 戦 争 時 に 投 入 さ れ た 米 国 戦 闘 機 F-86 が 日 本 に 供 与 さ れ 、 こ れ が 航 空 自 衛
隊 の 主 力 機 と な っ た 。 そ の 後 、 航 空 自 衛 隊 の 主 力 戦 闘 機 は F-104、 F-4 、 F-15
と 推 移 す る が 、 ほ ぼ 10 年 刻 み で 米 国 の 最 新 鋭 機 種 が 導 入 さ れ 、 そ の 機 種 の 国 内
でのライセンス生産が行われたことから、航空機の製造技術の発展、生産ライ
ンの充実へとつながり、日本の航空機製造基盤を築くことになった。しかしな
がら、東西冷戦が終わったこと、戦闘機の寿命が延びたこと、1機当たりの単
価 が 高 い こ と を 背 景 に 、 昭 和 51 年 に F -15 が 日 本 の 主 力 戦 闘 機 に 採 用 さ れ て 以
来、今日でも次期の主力戦闘機が決定しておらず、他機種の製造はあるものの
防衛航空機の生産は減少傾向にある。
一 方 、 民 間 航 空 機 の 分 野 で は 、 昭 和 30 年 代 か ら 40 年 代 に か け て 国 産 小 型 旅
客 機 と し て 国 際 的 に 評 価 の 高 か っ た YS-11 の 開 発・生 産 に 挑 戦 し た 。昭 和 50 年
代に入ると、海外航空機メーカーの大型旅客機の国際共同開発・生産に参画す
る時代へと発展しており、その共同開発・生産を通じて日本の航空機産業は実
力を蓄えてきた。今日では、国内航空機の生産額が1兆円を超える規模の産業
までに成長している。
(2)規模
国内の航空機産業(宇宙産業を含む)は1兆円を超える程度の規模である。
他産業と比較すると自動車の約3%、一般機械の約4%程度と、他の主要産業
に比べて決して大きくない規模である。
また、欧米主要国と比較しても日本は小規模である。主要国の中で規模が圧
倒的に大きい米国の約7%相当にすぎず、フランス、イギリスの3分の1程度
しかない。
-2-
図 表 Ⅰ .1
(兆円)
60
日 本 の 産 業 別 出 荷 額 ( 平 成 18 年 )
54.1
50
40
32.7
30
18.5
20
9.0
10
4.5
2.9
1.4
0.6
0
産業用 ロボ ッ ト
航空機宇宙
造船
コ ンピ ュータ
家電
鉄鋼
一般機械
自動車
資 料 :日 本 航 空 宇 宙 工 業 会 「平 成 21 年 版 日 本 の航 空 宇 宙 工 業 」
図 表 Ⅰ .2
各 国 航 空 宇 宙 産 業 売 上 高 ( 平 成 18 年 )
(兆円)
25
20
20.4
15
10
4.5
2.5
2.3
ドイ ツ
カ ナダ
4.0
5
1.4
0
日本
フラ ン ス
イギリ ス
ア メリカ
注 :フランス、カナダはミサイルを含 む。
資 料 :日 本 航 空 宇 宙 工 業 会 「平 成 21 年 版 日 本 の航 空 宇 宙 工 業 」
(3)生産・輸出入
a.生産動向
日 本 の 航 空 機 関 連 の 生 産 額 は 、 平 成 13 年 に 初 め て 1 兆 円 を 超 え 、 平 成 18 年
に は 過 去 最 高 の 1 兆 1,935 億 円 と 増 加 傾 向 に あ る 。 そ の 背 景 と し て は 、 三 菱 重
工業、IHI、川崎重工業などの航空機メーカーが民間航空機の国際共同開発
の参画において、複合材料技術等の高い技術力により分担比率を拡大し、機材・
-3-
エンジン等の供給が求められていることが挙げられる。担当部位も、従来から
担当してきた胴体等に加え、主翼等の高度な技術を要する部分へ拡大してきて
いる。一方、これまで生産額の大半を占めていた防衛航空機需要は防衛予算の
削 減 な ど に よ り 減 少 傾 向 に あ る た め 、平 成 19 年 に は 民 間 航 空 機 の 生 産 額 が 防 衛
航空機を初めて上回った。
民 間 航 空 機 需 要 の 高 ま り の 中 で 、平 成 20 年 3 月 に は 三 菱 重 工 業 が 国 産 初 の 小
型 ジ ェ ッ ト 旅 客 機「 MRJ」
( ミ ツ ビ シ ・リ ー ジ ョ ナ ル ・ジ ェ ッ ト )の 事 業 化 を 決 定 し 、
さ ら に は 川 崎 重 工 業 が 完 成 さ せ た XP-1( 次 期 対 潜 哨 戒 機 )、XC-2( 次 期 輸 送
機)の民間転用が検討されるなど、航空機産業は民需中心に移行しつつある。
図 表 Ⅰ .3
(億円)
14,000
国内航空機生産額の推移
防衛航空機
民間航空機
全体
12,000
9,430
8,709
8,000
11,419
9,660
10,111
9,946
9,775
8,159
10,306
9,765
9,404
10,000
11,867
11,935
9,481
8,111
6,000
4,000
2,000
0
平成6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20 (年)
注 :平 成 20 年 は速 報 値 。
資 料 :経 済 産 業 省 「機 械 統 計 年 報 」
平 成 20 年 の 国 内 航 空 機 生 産 額 よ り 航 空 機 産 業 の 構 造 を み る と 、「 機 体 」、「 エ
ン ジ ン 」、 航 空 計 器 な ど の 「 そ の 他 機 器 」 の う ち 、「 機 体 」 と 「 エ ン ジ ン 」 が 全
体 の 約 9 割 を 占 め て い る 。特 に「 機 体 部 品 」
( 31.4% )、
「エンジン部品」
( 26.0% )
の生産額の割合が大きい。航空機は部品点数が数十万から数百万点といわれ、
自動車に比べて一桁以上も多い部品から構成されている。したがって、航空機
産業は適用される技術の数や、関わる産業の幅が広いといわれている。
また、部品の定期交換、新型部品への置き換えなど、安定的な修理需要も見
込めることが特徴的である。
-4-
図 表 Ⅰ .4
国 内 航 空 機 の 生 産 額 ( 平 成 20 年 )
(単位:億円)
航空機
11,867
(100.0%)
機体
6,752
(56.9%)
本体
エンジン
3,768
(31.8%)
機体部品
・付属装置
4,260
(35.9%)
2,492
(21.0%)
機体部品
3,723
(31.4%)
その他機器
1,347
(11.3%)
エンジン用
部品
3,080
(26.0%)
本体
688
(5.8%)
通信機器
機器・部品
(航空計器等)
(レーダー等)
808
539
(4.5%)
(6.8%)
附属装置
・室内装備
537
(4.5%)
資 料 :日 本 航 空 宇 宙 工 業 会
b.輸出入動向
航空機関連の輸出額は、平成8年頃から航空機部品の輸出が増加したことか
ら 、 平 成 10 年 に は 3,333 億 円 に 達 し た 。 そ の 後 は 毎 年 2,000 億 円 を 超 え 、 平 成
19 年 の 輸 出 額 は 過 去 最 高 の 4,931 億 円 で 、生 産 額 に 占 め る 比 率 は 43% と な っ た 。
ボ ー イ ン グ 社 の B 777、 B 787 の 分 担 生 産 な ど 国 際 共 同 開 発 の シ ェ ア 拡 大 や 海 外
からの下請部品の積極的な取り込みを図ったことが、航空機部材の輸出増加に
つ な が っ て い る 。 一 方 、 輸 入 は 平 成 18 年 に 1 兆 円 を 突 破 し た 後 、 平 成 19 年 に
は 1 兆 2,007 億 円 と 過 去 最 高 を 更 新 す る な ど 増 加 傾 向 に あ る 。
図 表 Ⅰ .5
(億円)
5,000
品種別輸出額の推移
4,000
3,000
エンジン関連
2,000
1,000
機体関連
0
平成5
6
7
8
9
10
11
資 料 :財 務 省 「日 本 貿 易 年 表 」
-5-
12
13
14
15
16
17
18
19 (年)
(4)航空機メーカー
航空機メーカーは、航空機の機体を製造する企業である「機体メーカー」と
航 空 機 用 エ ン ジ ン を 製 造 す る 企 業「 エ ン ジ ン メ ー カ ー 」を 合 わ せ た 総 称 で あ る 。
民間旅客機の開発費の巨額化に伴うリスク分散のために、現在は機体メーカー
とエンジンメーカーが分かれているのが一般的である。航空会社は、機体に搭
載するエンジンを複数の候補の中から選択して直接エンジンメーカーから購入
する仕組みとなっている。
a.海外
現 在 、民 間 旅 客 機 の 機 体 メ ー カ ー は 、100 席 ク ラ ス 以 上 の 中 大 型 ジ ェ ッ ト 機 分
野 で ボ ー イ ン グ 社 と エ ア バ ス 社 の 2 大 航 空 機 メ ー カ ー 、100 席 以 下 の リ ー ジ ョ ナ
ルジェット機分野でカナダのボンバルディア社、ブラジルのエンブラエル社に
集約された。日本の航空会社もこの4社から航空機を調達している。リージョ
ナ ル ジ ェ ッ ト 機 分 野 で は 、ス ホ イ 社( ロ シ ア )が「 SSJ100」、中 国 航 空 工 業 集 団
公 司( 中 国 )が「 ARJ」を 完 成 さ せ て お り 、新 規 参 入 を め ざ し て 受 注 活 動 を 行 っ
て い る 。 三 菱 重 工 業 は 平 成 20 年 3 月 に MRJの 開 発 を 表 明 し 、 平 成 23 年 の 初 飛
行をめざしている。
ま た 、 航 空 機 エ ン ジ ン 市 場 は 、 米 国 の GE ( ゼ ネ ラ ル ・エ レ ク ト リ ッ ク ) 社 、 P
&W ( プ ラ ッ ト ・ア ン ド ・ホ イ ッ ト ニ ー )社 、英 国 の RR ( ロ ー ル ス ・ロ イ ス )社 な ど
による寡占市場となっている。
b.国内
国 内 の 航 空 機 メ ー カ ー も 概 ね 、機 体 メ ー カ ー と エ ン ジ ン メ ー カ ー に 分 か れ る 。
機 体 の 開 発 ・ 生 産 は 、 昭 和 27 年 に 航 空 機 生 産 の 再 開 以 降 、 三 菱 重 工 業 、 川 崎 重
工業、富士重工業、新明和工業などが開発・生産を担当してきた。完成機につ
いては、ライセンス生産による防衛省向け航空機が多くなっている。近年は三
菱 重 工 業 の 「 MRJ」 の ほ か に 、 自 動 車 メ ー カ ー の 本 田 技 研 工 業 が 企 業 や 個 人 が
自 家 用 と し て 使 う ビ ジ ネ ス ジ ェ ッ ト 機 の 開 発 ・生 産 を 進 め て い る 。
航空機用エンジンは、IHI、三菱重工業、川崎重工業など大手重工メーカ
ー が 長 年 、 開 発 ・生 産 を 手 掛 け て き た 。
三菱重工業、川崎重工業、富士重工業は、各社の国内生産拠点を愛知県、岐
阜 県 に 置 い て お り 、そ の 近 隣 に は 下 請 の 部 品 メ ー カ ー が 集 積 し て い る こ と か ら 、
中部地域が国内航空機産業のメッカとなっている。
航空機の機体、エンジンの開発には長い年月と多額の資金を必要とし、特に
民間機については大型化と高性能に伴うリスクの増大によって、単独民間企業
の負担能力を超えるものになっている。そのため、開発リスクの分散、市場の
確保・拡大等を目的とした民間航空機の国際共同開発は世界的な趨勢となって
-6-
いる。
国内の航空機メーカーも国際共同開発・生産に参画している。ボーイング社
の B767、 B777、 最 新 の B787、 そ し て タ ー ボ フ ァ ン エ ン ジ ン 開 発 で は 日 ・英 ・米 ・
独 4 カ 国 の 共 同 開 発 の V2500、GE社 と の 小 型 民 間 輸 送 機 用 CF34 が あ る 。こ う し
た 海 外 メ ー カ ー に 対 し て 、 主 要 構 造 部 、 主 要 シ ス テ ム ・コ ン ポ ー ネ ン ト な ど を 直
接 供 給 す る メ ー カ ー は 「 Tier1 」( テ ィ ア ワ ン ) サ プ ラ イ ヤ ー と 呼 ば れ 、 ま た 開
発段階から参画するとともに販売リスクを分担するという場合はパートナー
( も し く は リ ス ク シ ェ ア リ ン グ パ ー ト ナ ー ) と 称 さ れ て い る 。 例 え ば 、 B787 の
開 発 ・生 産 に お い て は 、 三 菱 重 工 業 、 川 崎 重 工 業 、 富 士 重 工 業 、 新 明 和 工 業 が 主
要構造部位を担当するパートナーとして参画している。
図 表 Ⅰ .6
ボ ー イ ン グ 787 へ の 日 本 企 業 の 参 画 状 況
メーカー
機種名
ボーイング(米) B787
(200~300席)
参画日本メーカー
部位
参画形態
シェア
三菱重工業
主翼
前胴部位、中胴下部構造、主翼固定後
川崎重工業
プログラム
35%
縁
(日本)
中央翼及び中央翼と主脚脚室とのインテ パートナー
富士重工業
グレーション
新明和工業
主翼前後桁
ブリヂストン
タイヤ
パナソニック・アビオニクス 客室サービスシステム、機内娯楽装置
ラバトリー、ギャレー、操縦室ドアー・内装
ジャムコ
サプライヤー
パネル・収納ボックス
角度検出センサー(5種類)、小型DCブラ
多摩川精機
シレスモーター
住友精密工業
APUオイルクーラー
ハミルトン・サンドストランドと共同
ナブテスコ
配電装置
資 料 :日 本 航 空 宇 宙 工 業 会 「航 空 宇 宙 データベース」
航 空 機 メ ー カ ー の ほ か に 、装 備 品 ・機 器 メ ー カ ー が 航 空 機 の 生 産 に 欠 か せ な い
存在である。
航 空 機 の 構 成 要 素 は 広 範 囲 で あ り 、1 機 当 た り の 装 備 品 ・機 器 類 は 大 型 機 で 数
万 点 に 及 ぶ と さ れ て い る こ と か ら 、装 備 品 ・機 器 等 の 製 造 に 携 わ る メ ー カ ー の 数
は多く、幅広い分野にまたがっている。例えば、油圧装置、操縦装置、電源装
置 、空 調 装 置 、降 着 装 置 、電 子 装 備 品 、室 内 装 備 な ど を 製 造 し て い る 。た だ し 、
1 つ の 装 備 品 ・機 器 類 の 市 場 は 大 き く は な く 、 多 品 種 少 量 生 産 で あ る た め 、 専 業
メーカーは少なく、特定企業の1生産部門であることが多い。
装 備 品 ・ 機 器 等 の 分 野 は B767 の 国 際 共 同 開 発 へ の 参 加 を 機 に 、 エ ア バ ス 社 も
含 め た 海 外 か ら の 航 空 機 メ ー カ ー か ら の 受 注 が 増 え て い る 。図 表 Ⅰ .6 の よ う に
B787 の 国 際 共 同 開 発 ・ 生 産 に は 、 ブ リ ヂ ス ト ン 、 パ ナ ソ ニ ッ ク ・ア ビ オ ニ ク ス 、
ジャムコ、多摩川精機、住友精密工業、ナブテスコといった、多数の日本メー
カ ー が 装 備 品 ・機 器 等 の 供 給 者 と し て 受 注 に 成 功 し て い る 。
-7-
(5)産業構造・特徴
a.産業構造
民間旅客機の場合、現在、世界的な機体メーカーはボーイング社など4社、
エ ン ジ ン メ ー カ ー は GE社 な ど 3 社 に 集 約 さ れ て い る 。 国 内 の 三 菱 重 工 業 、 I H
I な ど 大 手 重 工 メ ー カ ー は「 Tier1 」と し て 主 要 部 材 を 直 接 供 給 し て い る 。装 備
品 メ ー カ ー は Tier1 と し て 機 体 メ ー カ ー に 供 給 す る 場 合 、ま た は Tier2 と し て の
役割を担う場合がある。
大手重工メーカーの航空機部門に部品等を供給する部品メーカー(協力会な
ど)が多数存在し、また部品メーカーの外注先として一部に下請企業がみられ
る 。 こ の よ う に 、 民 間 旅 客 機 の 航 空 機 産 業 は 海 外 の 機 体 ・エ ン ジ ン メ ー カ ー を 頂
点としたピラミッド型の産業構造が形成されている。
その他の航空機産業の分野としては、生産・整備用機材として検査機器、治
工 具 類 や 、“ ア フ タ ー パ ー ツ ” と 呼 ば れ る 機 体 ・エ ン ジ ン 整 備 補 修 用 部 品 を 開 発 ・
製造する分野が存在する。
b.特徴
(a)産業規模が小さい
国内の航空機産業の規模は約1兆円強である。長期的にみた場合にはさらな
る需要の拡大が十分期待できる産業であるが、規模の面で日本のリーディング
インダストリーである自動車産業に追いつくことは至難である。
(b)多品種小ロット生産
航空機は数十万から数百万点といわれる部品点数から構成されて、非常に多
品種である。また、自動車の組立工場では月産数万台単位で量産しているが、
航空機は多い機種でも月産数十機単位である。そのため、航空機産業の関連メ
ーカーは多品種小ロットに対応した生産体制が求められる。
(c)長期にわたる製品サイクル
航空機が製品化されるまでには、設計から試作試験、製造組立、飛行試験、
型式証明を経て、ようやく販売に至るという長い期間を要する。
ま た 、 航 空 機 1 機 種 の 平 均 生 産 期 間 は 約 15 年 か ら 20 年 、 機 体 寿 命 は 約 30 年
といわれ、航空機産業の関連メーカーは長期にわたって製品、部材等を供給す
る義務が生じる。
(d)厳格な品質保証体制
航空機は極めて高度な信頼性と安全性が要求されている。そのため、製造技
術だけでなく、部品の加工工程に従事する作業者のレベルまでの幅広く、厳格
な 品 質 保 証 体 制 が 求 め ら れ て い る 。航 空 機 産 業 の 品 質 保 証 制 度 と し て 、JISQ9100
と 特 殊 工 程 の 認 証 制 度 で あ る Nadcap が あ る 。JISQ9100 は 航 空 宇 宙 産 業 に お け る
品 質 マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム の 規 格 で 、 ISO9001 に 航 空 宇 宙 産 業 特 有 の 必 要 な 要
-8-
求 事 項 が 追 加 さ れ て い る 。 Nadcap は 、 航 空 機 産 業 に お け る 特 殊 工 程 ( 溶 接 、 表
面処理等)の認証システムである。こうした品質保証制度の取得が新規参入の
最低の条件となりつつある。
さらに、生産履歴の追跡(トレーサビリティ)を担保するための膨大な記録
作成がメーカー側に要求される。
2.市場見通し
(1)世界の航空旅客予測
世 界 の 航 空 旅 客 ( 有 償 旅 客 キ ロ ) は 1989 年 か ら 2008 年 ま で の 20 年 間 で 、 年
平 均 4.6% で 伸 び て き た 。 日 本 航 空 機 開 発 協 会 の 調 査 に よ る と 、 今 後 20 年 間 、
2028 年 ま で 年 平 均 4.7% の 伸 び を 続 け 、 2008 年 の 2.5 倍 、 11 兆 4,310 億 人 キ ロ
に 達 す る と 予 測 さ れ て い る 。特 に 、ア ジ ア・太 平 洋 地 域 は 年 5.8% の 大 き な 伸 び
を示し、世界最大の市場になるとみられる。
な お 、 ボ ー イ ン グ 社 の 最 新 予 測 で は 、 今 後 20 年 間 で 世 界 の 航 空 旅 客 は 年 平 均
5.0% 伸 び る と し て い る 。
図 表 Ⅰ .7
世界の航空旅客予測
航空旅客 (有償旅客10億人キロ)
1989-2008年
2009-2028年
年平均伸び率 (%)
1989-2008年
2009-2028年
北米
1,441
2,885
3.3
3.5
欧州
1,292
2,911
5.5
4.1
アジア/太平洋
1,130
3,477
7.0
5.8
727
2,158
3.3
5.6
4,589
11,431
4.6
4.7
その他の地域
合 計
資 料 : 日 本 航 空 機 開 発 協 会 「 平 成 20 年 度 民 間 輸 送 機 に関 する調 査 研 究 」
(2)サイズ別ジェット機の構成予測
サ イ ズ 別 に み る と 、 99 席 以 下 の リ ー ジ ョ ナ ル ジ ェ ッ ト 機 の 市 場 で は 、 60~ 99
席クラスでターボプロップ機からの代替需要、新規開拓路線の需要等が見込ま
れている。
中 型 機 で は 、 100~ 119 席 ク ラ ス で リ ー ジ ョ ナ ル ジ ェ ッ ト 機 を 得 意 と す る ボ ン
バルディア社と、中大型機を得意とするボーイング社およびエアバス社の機体
の開発競争が予想され、経済性の良い機体が出現すれば機体数が伸びるとされ
ている。
大 型 機 で は 、 230~ 309 席 ク ラ ス 、 310~ 399 席 ク ラ ス と も に 、 今 後 、 経 済 性 の
良 い 新 機 材 の 開 発 に よ り 、 既 存 B747 の 代 替 や 新 し い 長 距 離 路 線 の 需 要 が 見 込 め
る こ と か ら 、国 内 幹 線 や 国 際 線 用 の 主 力 機 と し て 大 き な 伸 び が 予 測 さ れ て い る 。
-9-
図 表 Ⅰ .8
サイズ別ジェット機運航機数および需要予測
(単位:機)
2028年
2008年
サイズ
運航機数
既存機
新規需要
運航機数
20- 59席
1,761
973
1,108
2,081
60- 99席
1,438
807
3,167
3,974
100-119席
941
183
3,813
3,996
120-169席
7,345
3,428
9,318
12,746
170-229席
1,328
506
2,557
3,063
230-309席
1,444
531
3,563
4,094
310-399席
1,124
600
2,277
2,877
400席以上
512
94
532
626
15,893
7,122
26,335
33,457
合 計
資 料 : 日 本 航 空 機 開 発 協 会 「 平 成 20 年 度 民 間 輸 送 機 に関 する調 査 研 究 」
3.中国地域の取組状況
(1)工業統計からみた中国地域の状況
工 業 統 計 ( 平 成 19 年 ) に よ り 中 国 地 域 の 航 空 機 産 業 を 産 業 分 類 別 に み る と 、
「航空機・同付属品製造業」に分類される事業所は広島県に集中している。事
業 所 が 6 、 従 業 者 数 が 816 人 、 製 造 品 出 荷 額 等 が 600 億 円 と な っ て い る 。 事 業
所数、従業者数から推定すると、航空機・同付属品製造業のうち「航空機用原
動機製造業」のウエイトが高い。
図 表 Ⅰ .9
航 空 機 ・同 付 属 品 製 造 業 の 事 業 所 数
(単位:事業所)
産業分類
全国
中国地域 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県
航空機・同付属品製造業
295
6
-
-
-
6
-
航空機製造業
8
-
-
-
-
-
-
航空機用原動機製造業
57
5
-
-
-
5
-
その他の航空機部分品
230
1
-
-
-
1
-
・補助装置製造業
資料:経済産業省「平成19年工業統計」、各県「平成19年工業統計」
図 表 Ⅰ . 10
航 空 機 ・同 付 属 品 製 造 業 の 製 造 品 出 荷 額 等
(単位:億円)
産業分類
全国
中国地域 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県
航空機・同付属品製造業
14,723
600
-
-
-
600
-
航空機製造業
950
-
-
-
-
-
-
航空機用原動機製造業
6,601
x
-
-
-
x
-
その他の航空機部分品
7,172
x
-
-
-
x
-
・補助装置製造業
注:xは秘匿値。
資料:経済産業省「平成19年工業統計」、各県「平成19年工業統計」
-10-
(2)中国地域における航空機メーカーの生産拠点
航空機メーカーの国内生産拠点は愛知県、岐阜県に集中しているが、中国地
域においても大手重工メーカーの生産拠点で航空機の機体、エンジンの組立、
部品生産などが行われている。
中国地域には、三菱重工業、IHIの生産拠点が立地している。三菱重工業
は名古屋航空宇宙システム製作所広島工場で航空機の一部組立、下関造船所で
機体部品の生産を行っている。同社は航空宇宙事業の主要生産拠点を愛知県内
に 配 置 し て い る が 、航 空 機 生 産 の 拡 大 に 伴 っ て 生 産 移 管 が 1990 年 代 以 降 に 順 次
行われてきた。IHIは呉第二工場が航空機用エンジン関連の拠点工場となっ
ている。
図 表 Ⅰ . 11
中国地域の航空機メーカー生産拠点の位置
三菱重工業㈱名古屋航空宇宙
システム製作所広島工場
三菱重工業㈱下関造船所
① ②
①
㈱IHI呉第二工場
③
①三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所広島工場(広島市中区)
三 菱 重 工 業 名 古 屋 航 空 宇 宙 シ ス テ ム 製 作 所 広 島 工 場 は 、 平 成 4 ( 1992) 年 に
同 社 広 島 製 作 所( 現 在 は 機 械 事 業 部 )内 で 航 空 機 の パ ネ ル 生 産 を 開 始 し て 以 来 、
同 社 の 航 空 宇 宙 事 業 の 生 産 拠 点 で あ る 。 平 成 21 年 10 月 の 組 織 改 革 に 伴 い 、 同
社広島製作所の航空機部門は名古屋航空宇宙システム製作所の直轄工場という
位置づけに変更された。
現 在 、広 島 工 場 は ボ ー イ ン グ 社 の B777 お よ び B767 の 胴 体 パ ネ ル の 組 み 立 て を
手 掛 け て お り 、 同 工 場 の 年 間 生 産 能 力 は B777 パ ネ ル 組 立 83 機 、 B767 パ ネ ル 組
立 24 機 で あ る 。そ の 他 に は 、B747 の 貨 物 機 へ の 機 体 改 修 、米 シ コ ル ス キ ー 社 ヘ
リコプターのキャビン部の組み立ても行っている。
②IHI呉第二工場(広島県呉市)
I H I は 日 本 の ジ ェ ッ ト エ ン ジ ン 生 産 の 約 70% を 担 っ て お り 、 民 間 機 で は 大
-11-
型 か ら 小 型 ま で 各 種 民 間 機 用 エ ン ジ ン の 国 際 共 同 事 業 に 参 画 し 、 V2500 タ ー ボ
フ ァ ン エ ン ジ ン や GEタ ー ボ フ ァ ン エ ン ジ ン な ど の エ ン ジ ン モ ジ ュ ー ル や エ ン ジ
ン 部 品 を 開 発 ・供 給 し て い る 。
I H I 呉 第 二 工 場 は 昭 和 55( 1980)年 に 航 空 機 用 エ ン ジ ン の 生 産 を 開 始 し た 。
現 在 は 、 瑞 穂 工 場 ( 東 京 都 西 多 摩 郡 )、 相 馬 第 一 工 場 ( 福 島 県 相 馬 市 )、 相 馬 第
二工場(同)とともに、IHIの航空宇宙事業の主力工場に位置づけられてい
る。同工場は主に航空エンジンの大型部品の製造を担当しており、エンジンの
主要部品であるシャフト、ディスク、フレームなどを生産している。敷地面積
は 約 47,800 ㎡ 、 建 屋 面 積 は 約 40,100 ㎡ で 、 従 業 員 規 模 は 外 注 を 含 め て 約 600
人である。
IHI呉第二工場の協力会社組織「安芸ジェット会」が存在する。主なメン
バーは地元の呉市および周辺地域の中小企業であり、同工場の外注先として協
調体制を構築している。
③三菱重工業下関造船所(山口県下関市)
三 菱 重 工 業 下 関 造 船 所 は 昭 和 63( 1988) 年 以 降 、 ヘ リ コ プ タ ー 向 け コ ク ピ ッ
ト な ど 航 空 ・宇 宙 機 器 用 の 繊 維 強 化 プ ラ ス チ ッ ク 部 品 等 複 合 材 を 大 和 町 工 場 で
生産している。
平 成 18 年 4 月 に は 航 空 機 工 場 が 完 成 し 、ボ ー イ ン グ 社 の B787 向 け 主 翼 骨 格 材
ス ト リ ン ガ ー の 生 産 を 開 始 し た 。ス ト リ ン ガ ー は CFRP( 炭 素 繊 維 複 合 材 料 )で
つ く ら れ て お り 、 炭 素 繊 維 を 高 温 ・高 圧 で 焼 き 固 め る 複 合 材 硬 化 炉 ( オ ー ト ク レ
ーブ)や、非破壊検査装置などを備えている。生産されたストリンガーは名古
屋港まで海上輸送され、同社の名古屋航空宇宙システム製作所(名古屋市)で
主翼に組み立てられた後、米国シアトルのボーイング社に出荷されている。
図 表 Ⅰ . 12
中国地域の航空機メーカーの生産拠点
事業所名
三菱重工業㈱
名古屋航空宇宙システム製作所
広島工場
㈱IHI呉第二工場
三菱重工業㈱下関造船所
所在地
広島市中区
事業内容
B777およびB767の胴体パネル組立
B747の貨物機への機体改修
ヘリコプターキャビン部の組立
航空機用エンジンの大型部品(シャフト、ディス
ク、フレームなど)の製造
山口県下関市 B787向け主翼骨格材ストリンガー等の製造
広島県呉市
資料:各社のホームページ、企業ガイドブック、聞き取り調査結果など
(3)地域連携組織
近年、全国各地で航空機産業への参入、受注増をめざす中小企業に対して、
-12-
情報提供や受注活動を行う地域連携組織が相次いで設立されている。
中 国 地 域 に お い て も 、 岡 山 県 で は 「 ウ イ ン グ ウ ィ ン 岡 山 」、 広 島 県 で は 「 広 島
航空宇宙研究会」が設立され、様々な活動に取り組んでいる。
全国的にみても立ち上げが早かった「ウイングウィン岡山」の活動は先進的
であったこともあって、航空機産業関係者の間で知名度が高い存在となってい
る 。 一 方 、「 広 島 航 空 宇 宙 研 究 会 」 は 、 航 空 機 部 品 の 受 注 を 目 的 と す る ウ イ ン グ
ウ ィ ン 岡 山 と は 異 な り 、モ ン ト リ オ ー ル 市 の 航 空 宇 宙 分 野 と の 産 業 交 流 を 目 的 と し
ている。
a.ウイングウィン岡山
ウイングウィン岡山は航空機関連部品の共同受注のための連携組織で、平成
16 年 10 月 に 設 立 さ れ た 。組 織 名 の「 ウ イ ン グ ウ ィ ン 岡 山 」は 翼( WING)を 勝
ち 取 る ( WIN) と い う 期 待 を 込 め て 命 名 さ れ た も の で あ る 。 岡 山 県 産 業 振 興 財
団 が 委 託 機 関 と な り 、県 内 の 機 械 加 工 ・熱 処 理 ・表 面 処 理 ・組 付 け な ど 得 意 と し て い
る 中 小 企 業 を 連 携 さ せ 、航 空 機 部 品 の 複 合 加 工 受 注 体 制 を 整 え る た め に 、経 済 産 業
省の新連携対策委託事業に応募、採択されたことが設立のきっかけである。当
初 は 15 社 の 会 員 企 業 で 発 足 し た が 、 現 在 は 28 社 ま で 増 え て い る 。
会員企業の大半にとって航空機分野は手掛けたことがない分野であったこと
も あ り 、大 学 や 中 部 航 空 宇 宙 技 術 セ ン タ ー 、宇 宙 航 空 研 究 開 発 機 構( JAXA)な
どから専門家を招いて、航空機産業の将来動向、部品加工技術、品質管理等の
勉強会を発足当初にスタートさせ、毎年度6、7回のぺースで例会時に開催し
ている。また、ウイングウィン岡山は大手重工メーカー等の航空機関連工場お
よ び 航 空 会 社 整 備 工 場 の 見 学 会 、 米 国 へ の 海 外 視 察 を 実 施 、 さ ら に は 平 成 18 年
19 年 に 名 古 屋 市 内 で 開 催 さ れ た 「 岡 山 県 航 空 機 部 品 加 工 技 術 展 示 商 談 会 」 に 会
員企業が多数出展するなど、積極的に販路開拓に取り組んできた。
ウイングウィン岡山は、営業努力と当時の航空機市場の拡大期が相俟って、
最 初 の 3 年 間 で 主 翼 ・尾 翼 部 品 の 切 削 、 治 具 製 造 な ど 51 件 、 約 20 億 円 の 受 注 に
成功した。ただし、設立時からの目標に掲げている“共同受注”は表面処理等
の工程がネックとなっていることもあって、進んでいないのが現状である。
こ こ 2 年 間 は ボ ー イ ン グ 社 の B 787 の 開 発 の 遅 れ 、世 界 同 時 不 況 に よ り 航 空 機
需要が減退に転じたことから、重工メーカー等からの受注は苦戦を余儀なくさ
れているが、需要回復期に備えて受注体制を整えている会員企業も多い。切削
加工を得意とする会員企業を中心に8社が5軸加工機を導入している。航空機
宇 宙 分 野 の 品 質 管 理 規 格 JISQ9100 は 2 社 が 取 得 済 み で あ る 。 ま た 、 ウ イ ン グ ウ
ィ ン 岡 山 の 会 員 企 業 数 社 に よ っ て 、 三 菱 重 工 業 が 開 発 し て い る MRJ( ミ ツ ビ シ ・
リ ー ジ ョ ナ ル ・ジ ェ ッ ト ) の 受 注 を め ざ す プ ロ ジ ェ ク ト チ ー ム を つ く り 、MRJの
受注獲得をめざしている。
-13-
図 表 Ⅰ . 13
設立年月
設立目的
加入企業
事務局
活動実績
ウイングウィン岡山の概要
平 成 16 年 10 月
岡 山 県 内 で 、 機 械 加 工 ・熱 処 理 ・表 面 処 理 ・組 付 け な ど 得 意 と し 、 高
度な技術力を有している中小企業が連携し、航空機メーカー等か
ら航空機部品の受注をめざす。
岡 山 県 内 で 航 空 機 部 品 の 受 注 を め ざ し て い る 企 業 28 社
(財 )岡 山 県 産 業 振 興 財 団 経 営 支 援 部 取 引 支 援 グ ル ー プ
< 平 成 20 年 度 実 績 >
・例会(講演会、研修会等)の開催(6回)
・航空機メーカー等への工場見学(3回実施)
・英国ファンボロー航空ショー等の見学
・ 国 際 航 空 宇 宙 展 2008( パ シ フ ィ コ 横 浜 ) に 出 展
<その他>
・加工技術向上のための分科会活動
・ウイングウィン岡山のガイドブックやホームページによる会員
企 業 の 航 空 機 関 連 技 術 ・ 保 有 設 備 の PR
b.広島航空宇宙研究会
広 島 航 空 宇 宙 研 究 会 は 広 島 市 が 主 導 し て 平 成 20 年 6 月 に 設 立 さ れ た 団 体 で 、
広 島 市 お よ び そ の 周 辺 地 域 の 航 空 機 関 連 お よ び 自 動 車 部 品 関 連 メ ー カ ー 約 30 社
が 参 加 し て い る 。 広 島 市 は カ ナ ダ ・モ ン ト リ オ ー ル 市 と の 姉 妹 都 市 交 流 と し て 、
航空宇宙分野においても産業交流を促進することにより、広島地域の航空機関
連 産 業 の 創 出 ・育 成 を 図 る こ と が 同 会 設 立 の き っ か け で あ る 。モ ン ト リ オ ー ル 市
との航空宇宙分野の産業交流が日本貿易振興機構(ジェトロ)の「地域間交流
支 援 事 業 ( RIT)」 に 採 択 さ れ た こ と か ら 、 ジ ェ ト ロ の 支 援 に よ り 研 究 会 の 定 期
的開催やモントリオール市の航空機産業視察等を実施している。
図 表 Ⅰ . 14
設立年月
設立目的
参加企業
事務局
活動実績
その他
広島航空宇宙研究会の概要
平 成 20 年 6 月
広島市の姉妹都市モントリオール市に集積している航空機関連分
野との産業交流を促進することにより、広島地域の航空機関連産
業の創出・育成を図る。
広 島 地 域 の 航 空 機 関 連 お よ び 自 動 車 部 品 関 連 メ ー カ ー 約 30 社
広島市経済局産業立地推進課
< 平 成 20 年 度 実 績 >
・研究会の開催(4回)
・モントリオール市に本社を置くボンバルディア社等航空機関連
企業を視察
< 平 成 21 年 度 の 取 り 組 み >
・研究会の定期開催
・技術専門家をモントリオール市に派遣し、現地企業や航空機関
連機関等の調査実施
・参加企業のガイドブック作成 など
日 本 貿 易 振 興 機 構 (ジ ェ ト ロ )「 地 域 間 交 流 支 援 (RIT)事 業 」 採 択
-14-
c.その他
山口県には地域連携組織、企業グループは存在しないが、航空機関連分野に
参入意欲がある、もしくは既に参入している県内中小企業を対象に、やまぐち
産 業 振 興 財 団 が 実 施 主 体 と な っ て 、研 修 事 業 、展 示 会 出 展 な ど に 取 り 組 ん で い る 。
4.航空機関連産業の技術開発
(1)航空機生産技術の特徴
a.信頼性
航空機は他の交通システムとは異なり、トラブルや故障が発生した場合も停
止することはできない。このため、絶対的な安全性と高い信頼性が求められる
ことになる。信頼性を担保するために、航空機生産のすべての工程において、
厳 密 な プ ロ セ ス 管 理 が 求 め ら れ 、ト レ ー サ ビ リ テ ィ ( 生 産 履 歴 の 追 跡 ) が 必 要 に
なっている。
b.軽量化
航空機の開発で重要視される一つが軽量化である。個々の部品に対してグラ
ム 単 位 の 軽 量 化 が 求 め ら れ る 。そ の た め 、材 料 は チ タ ン 系 合 金 や CFRP( 炭 素 繊
維複合材料)など、軽量化を目的に難削材が大量に使われている。
c.インテグレーション
航空機は部品点数が膨大であるために、設計・生産にあたっては高いインテ
グレーション技術が求められる。インテグレーション技術とは、それぞれの部
品、機器、サブシステムを統合構築することによって目標とする性能を発揮さ
せる技術である。
d.航空機特有の生産加工
軽 量 化 の た め に 、チ タ ン 系 合 金 、CFRPな ど の 軽 量 素 材 を 使 用 す る こ と が 多 く
な っ て い る が 、こ れ ら は 加 工 が 難 し い 難 削 材 と い わ れ る 素 材 で あ る 。研 削 加 工 ・
切削加工などで高度な技術が必要である。また、主材料であるアルミ材の特性
上、熱処理、表面処理、化学処理などの特殊処理加工が必要とされている。こ
うした特殊工程を手掛ける中小企業は限られており、工程上ネックになってい
るといわれている。
e . 治 具 ・工 具 の 重 要 性
航空機生産においては、組立治具や研削・切削工具が多数必要とされる。主
材料のアルミ材料は剛性が低く、溶接性が悪い(リベット結合で対応)ことな
ど か ら 、組 立 治 具 が 必 要 で あ る 。ま た 、チ タ ン 系 合 金 、CFRPな ど 難 削 材 が 使 わ
れることも多く、工具の耐久性も大きな課題となっている。
近年の特徴としては、航空機の燃費向上に関する技術、製造コスト削減に関
する技術が従来にも増してクローズアップされている。
-15-
(2)自動車分野との技術相互波及
航空機と自動車は輸送用機器を代表するものであり、多種多様な部品から構
成されていることから、わが国の製造業が得意とする摺り合わせ技術が活かさ
れる製品である。両者は多種多様な素材、生産加工技術が必要とされることか
ら、加工技術、システム面においても多くの相互波及した事例がみられる。
航 空 機 分 野 か ら 自 動 車 分 野 へ の 技 術 波 及 と し て は 、CFRP、ABS 、5 軸 加 工 機 、
3 次 元 CADシ ス テ ム 、 モ ノ コ ッ ク ボ デ ィ な ど が あ る 。 一 方 、 自 動 車 分 野 か ら 航
空 機 分 野 へ の 技 術 波 及 と し て は 、ム ー ビ ン グ ・ラ イ ン 、シ ョ ッ ト ピ ー ニ ン グ 加 工 、
衝撃解析シミュレーションシステムなどがある。
(3)技術戦略マップ
経済産業省は、分野別に必要な技術目標や製品・サービスの需要を創造する
た め の 方 策 を 示 し た 「 技 術 戦 略 マ ッ プ 」 を 策 定 ・公 表 し て い る 。 航 空 機 分 野 ・宇
宙 分 野 は 「 技 術 戦 略 マ ッ プ 2006」 に 掲 載 さ れ て 以 降 、 毎 年 発 表 さ れ て い る 。
a.航空機分野
MRJプ ロ ジ ェ ク ト が 平 成 20 年 3 月 の 事 業 化 決 定 を 経 て 本 格 的 な 開 発 に 移 行 し
たことを受けて、経済産業省はこのプロジェクトに対して研究開発支援、技術
支援を行っている。国際共同開発を通じて蓄積した部品・素材に関する技術に
加えて、全機インテグレーション技術を獲得して、機体開発をめざすものであ
る が 、 MRJを 単 に 一 つ の プ ロ ジ ェ ク ト と い う 意 味 だ け で な く 、 航 空 機 産 業 全 体
の発展の契機とすることをめざしている。
技 術 戦 略 マ ッ プ は 、航 空 機 分 野 の 技 術 課 題 を ① 材 料・構 造 技 術 、② 空 力 技 術 、
③装備品(システム)技術、④エンジン要素技術、⑤全機インテグレーション
技術、⑥防衛省機民間転用技術の6つに分類して整理している。
b.宇宙分野
平 成 20 年 8 月 の 宇 宙 基 本 法 施 行 を 受 け て 、宇 宙 開 発 利 用 に 関 す る 施 策 の 総 合
的・計画的な推進を行うため、わが国の宇宙開発利用の司令塔として宇宙開発
戦 略 本 部 が 内 閣 に 設 置 さ れ 、現 在 、宇 宙 基 本 計 画 を 作 成 し て い る と こ ろ で あ る 。
宇 宙 開 発 に お い て は 、 技 術 開 発 の 困 難 性 ・不 確 実 性 に 加 え 、 莫 大 な 資 金 と 長 期 間
の 研 究 開 発 ・投 資 が 必 要 さ れ て い る こ と か ら 、政 府 に よ る 強 力 な 支 援 の も と で 着
実な技術の蓄積・競争力強化を図ることが重要である。
宇 宙 分 野 に お け る 技 術 戦 略 マ ッ プ は 、宇 宙 開 発 ・利 用 の 産 業 化 を 図 る 上 で 必 要
と な る 技 術 課 題 を 、衛 星 基 盤 技 術 、地 球 観 測 、通 信 ・放 送 、測 位 、地 上 シ ス テ ム ・
デ ー タ 利 用 技 術 、 輸 送 系 、 エ ネ ル ギ ー 利 用 、 デ ブ リ 対 策 ・観 測 、 宇 宙 環 境 利 用 、
宇 宙 観 測 、 月 惑 星 探 査 ・有 人 宇 宙 探 査 に 分 類 し て 抽 出 し て い る 。
-16-
Ⅱ.地域企業の意向
1.アンケート調査結果
(1)アンケート調査の概要
a.調査の目的
中 国 地 域 製 造 業 の 航 空 機 関 連 分 野 へ の 取 組 状 況 を 把 握 す る と と も に 、 課 題 ・問
題点などについて明らかにすることを目的とする。
b.調査の概要
○ 調 査 対 象 先:中 国 地 域 に 所 在 す る プ ラ ス チ ッ ク 製 品 、金 属 製 品 、一 般 機 械 器 具 、
電気機械器具、情報通信機械器具、電子部品・デバイス、輸送用
機械器具、精密機械器具、機械設計を主業種とする企業(県外本
社の工場を含む)
○ 調 査 期 間 : 平 成 21 年 7 月 27 日 ~ 8 月 21 日
○ 調査方法:郵送法
○ 回 収 状 況 : 調 査 対 象 企 業 は 1,526 社
う ち 有 効 回 答 企 業 は 378 社 ( 有 効 回 答 率 は 24.8% )
(2)航空機関連分野への関わり
航 空 機 関 連 分 野 へ の 関 わ り を 尋 ね た と こ ろ 、「 航 空 機 関 連 分 野 に 継 続 的 に 関 わ
っている」
「航空機関連分野に不定期に関わっている」
「航空機関連分野に関心が
あ り 、受 注 活 動 等 を 展 開 し て い る が 、こ れ ま で は 受 注 実 績 は な い 」と い っ た 航 空
機 関 連 分 野 に 関 わ っ て い る 企 業 を 合 わ せ る と 64 社 ( 16.9% ) で あ っ た 。 ま た 、
「 航 空 機 関 連 分 野 に 関 心 が あ り 、今 後 進 出 を 検 討 し た い 」は 105 社( 27.8% )と
なっている。
図 表 Ⅱ .1
「航 空 機 関 連 へ の 関 わ り 」の 回 答 割 合 ( n=378)
7.その他, 8社,
2.1%
1.継続的に関わっ
ている, 23社,
6.1%
2.不定期に関わっ
ている, 27社,
7.1%
3.受注活動等を展
開しているが、受
注実績は無い, 14
社, 3.7%
6.関心がなく、今
後も参入の予定は
無い, 195社,
51.6%
4.関心があり、今
後進出を検討した
い, 105社, 27.8%
5.過去に関わった
ことはあるが現在
関心は無い, 6社,
1.6%
-17-
(3)航空機関連分野に関わりのある企業の実態
a.航空機関連への進出分野
航空機関連の進出分野について尋ねると、
「 治 工 具 類 」が 25 社( 39.1% )で 最
も 多 く 、 次 い で 「 機 体 分 野 」( 22 社 , 34.5% )、「 エ ン ジ ン 」( 18 社 , 28.1% ) な
ど が 続 い て い る 。 一 方 、「 電 源 シ ス テ ム 」 や 「 飛 行 管 理 ・ 制 御 装 置 」「 航 空 計 器 」
は1社のみが進出している状況で、他の分野に比べて少ない。
図 表 Ⅱ .2
0
航 空 機 関 連 へ の 進 出 分 野 (複 数 回 答 、 n=64)
5
10
15
20
25
10.治工具類
30
(社)
25(39.1%)
1.機体分野
22(34.5%)
2.エンジン
18(28.1%)
3.油圧等
9(14.1%)
11.整備機材
8(12.5%)
7.電子装備等
5(7.8%)
4.降着
4(6.3%)
9.客室機内等
4(6.3%)
5.電源
1(1.6%)
6.飛行管理等
1(1.6%)
8.航空計器
1(1.6%)
12.その他
12(18.8%)
b.航空機関連への進出時期
航 空 機 関 連 へ の 進 出 時 期 に つ い て 尋 ね る と 、「 2 年 超 ~ 5 年 前 」 が 17 社
( 26.6% ) で 最 も 多 く 、 次 い で 「 10 年 超 ~ 20 年 前 」( 14 社 , 21.9% ) が 続 い て
いる。回答企業の進出時期はあまり偏っていない。
図 表 Ⅱ .3
航 空 機 関 連 への進 出 時 期
( n=64)
1.20年超, 8社,
12.5%
無回答, 10社,
15.6%
5.最近2年以内, 7
社, 10.9%
2.10年超~20年前,
14社, 21.9%
4.2年超~5年前, 17
社, 26.6%
3.5年超~10年前, 8
社, 12.5%
-18-
c.進出のきっかけ
航 空 機 関 連 へ の 進 出 の き っ か け に つ い て 尋 ね る と 、「 既 取 引 先 企 業 よ り 航 空 機
関 連 の 受 注 」が 28 社( 43.8% )で 最 も 多 く 、次 い で「 同 業 ・関 連 企 業 か ら の 受 注 」
「 行 政 ・支 援 機 関 か ら の 取 引 斡 旋 ・ 紹 介 」( 各 5 社 , 7.8% ) が 続 い て い る 。 既 取
引先企業より受注が群を抜いている。
d.航空機関連分野への進出に関し、期待した効果と得られた効果
進出時に期待した効果と得られた効果について、アンケートの選択肢のうち
「 は い 」 と 「 あ っ た 」 を 3 点 、「 わ か ら な い 」 を 2 点 、「 い い え 」 と 「 な か っ た 」
を 1 点 と し て 項 目 毎 に 平 均 点 を 算 出 し 、 散 布 図 を 作 成 し た と こ ろ 、「 技 術 力 の 向
上 ・高 度 化 」
「 品 質 管 理 力 の 向 上 ・高 度 化 」
「 人 材 育 成 ・能 力 開 発 」
「企業イメージの
向上」などは、概ね期待に近い効果が得られていることがうかがえる。
図 表 Ⅱ .4
期 待 し た 効 果 と 得 ら れ た 効 果 ( n=64)
9.品質管理力
の向上・高度
化
3
10.人材育成・
能力開発
得 2.5
ら
れ
た
効
果 2
1.技術力の向
上・高度化
11.その他
3.企業イメー
ジの向上
2.企画開発力
の向上・高度
化
7.受注単価の
向上
1.5
1.5
2
6.売上高の増
大
4.新規事業分
野の開拓
5.新規顧客の
開拓
8.収益率の向
上
2.5
期待した効果
3
e.今後の取組方針
航空機関連分野に関わりがある企業に今後の取組方針について尋ねたところ、
「 航 空 機 関 連 事 業 に 積 極 的 に 取 り 組 む 」 企 業 が 28 社 ( 43.8% ) と 最 も 多 く 、 次
い で 「 航 空 機 関 連 事 業 は 概 ね 現 状 維 持 と す る 」 企 業 が 17 社 ( 26.6% )、「 わ か ら
な い 」 企 業 が 13 社 ( 20.3% ) な ど と な っ て い る 。
(4)航空機関連分野に関心があり、今後進出を検討している企業の意向
a.進出を検討している理由
進 出 を 検 討 し て い る 理 由 を 尋 ね た と こ ろ 、「 航 空 機 市 場 が 有 望 な 市 場 」 が 40
社( 38.1% )と 最 も 多 く 、次 い で「 既 存 事 業 の 成 長 が 見 込 め な い 」が 27 社( 25.7% )、
-19-
「 既 存 設 備 が 有 効 活 用 で き る 」 が 26 社 ( 24.8% ) と 続 い て い る 。 こ れ ら 3 つ の
理由で全体の9割近くを占めている。
図 表 Ⅱ .5
航 空 機 分 野 へ の 進 出 理 由 ( n=105)
無回答, 2社,
1.9%
7.その他, 6社,
5.7%
1.既取引先よりの
受注量が見込め
る, 2社, 1.9%
6.既存事業の成長
が見込めない, 27
社, 25.7%
2.航空機市場が有
望, 40社, 38.1%
5.航空機分野に詳
しい人材を確保,
1社, 1.0%
3.同業他社が参入
した, 1社, 1.0%
4.既存設備が有効
活用できる, 26
社, 24.8%
b.航空機分野への進出に際しての課題・問題点
航 空 機 分 野 へ の 進 出 に 際 し て の 課 題 ・ 問 題 点 を 尋 ね た と こ ろ 、「 進 出 の き っ か
け が な い 」 が 79 社 ( 75.2% ) と 最 も 多 く 、 次 い で 「 具 体 的 に 何 か ら 始 め た ら よ
い か が わ か ら な い 」が 62 社( 59.0% )、
「 技 術 情 報 、市 場 情 報 等 が 入 手 し に く い 」
が 47 社 ( 44.8% ) と 続 い て い る 。 こ れ ら の 3 点 に 課 題 ・問 題 点 が 集 中 し て い る 。
図 表 Ⅱ .6
航 空 機 分 野 へ の 進 出 に 際 し て の 課 題 ・問 題 点 ( 複 数 回 答 ,n=105)
0
10
20
30
40
50
60
70
1.進出のきっかけがない
62(59.0%)
6.技術情報、市場情報が入手しにくい
47(44.8%)
5.品質保証が厳しい
14(13.3%)
2.技術力が不足
13(12.4%)
10(9.5%)
3.納期や機密情報などの制約等
7(6.7%)
7.開発や品質管理等を担当できる人材が不足
6(5.7%)
4.小ロット受注、単発・不定期受注など
4(3.8%)
10.その他
4(3.8%)
無回答
90 100
79(75.2%)
9.何から始めたらよいか分らない
8.研究開発や設備投資に多額の資金が必要
80
1(1.0%)
-20-
c.グループへの参加意向
航 空 機 関 連 事 業 へ の 取 組 を め ざ す グ ル ー プ( 勉 強 会 、共 同 受 注 組 織 等 )が あ れ
ば 、積 極 的 に 参 加 す る か を 尋 ね た と こ ろ 、
「積極的に参加する」
( 25 社 ,23.8% )、
「 参 加 の 方 向 で 検 討 す る 」( 61 社 , 58.1% ) の 企 業 で 8 割 を 超 え て い る 。
図 表 Ⅱ .7
勉 強 会 な ど の グ ル ー プ へ の 参 加 意 向 ( n=105)
無回答, 1社,
1.0%
4.今すぐには
参加はしな
い, 3社,
2.9%
1.積極的に参
加, 25社,
23.8%
3.分らない,
15社, 14.3%
2.参加の方向
で検討, 61
社, 58.1%
(5)行政等に要望したい施策
“ 今 後 取 り 組 み た い 分 野 ”で「 航 空 機 」を 選 ん だ 企 業 74 社 が 要 望 し て い る 施
策 を み る と 、「 販 路 ・ マ ー ケ テ ィ ン グ 支 援 」 が 34 社 ( 45.9% ) と 最 も 多 く 、 次
い で「 資 金 調 達 の 円 滑 化 」が 31 社( 41.9% )、
「 技 術 開 発 支 援 」が 30 社 (40.5% )
などと続いている。これら3つの項目に対する要望がとりわけ強い。
図 表 Ⅱ .8
行 政 等 に 要 望 し た い 施 策 ( 複 数 回 答 ,n=74)
0
10
20
30
40
1.販路・マーケティング支援
34(45.9%)
31(41.9%)
8.資金調達の円滑化
3.技術開発支援
30(40.5%)
9.企業減税の拡充
22(29.7%)
5.企業間連携の促進
20(27.0%)
7.人材育成の支援
19(25.7%)
4.産学官連携の促進
11.経営革新への支援
12(16.2%)
8(10.8%)
2.創業・ベンチャー企業への支援
3(4.1%)
10.国際化支援
3(4.1%)
6.知的財産の保護活用
12.その他
1(1.4%)
2(2.7%)
-21-
50
2.聞き取り調査結果
(1)調査の概要
航 空 機 関 連 産 業 に 進 出 し た 中 小 企 業 に 対 し て 聞 き 取 り 調 査 を 実 施 し 、「 進 出 の
き っ か け 」「 参 入 の ポ イ ン ト 」「 参 入 し た 効 果 」「 参 入 時 に ネ ッ ク と な っ た 点 ・苦
労した点」等を聴取した。その内容は以下のとおりである。
<聞き取り調査対象先>
対象先は航空機関連産業に進出した中小企業で、以下の9社である。
企業
A社
B社
C社
D社
E社
F社
G社
H社
I社
従業員規模
20 人 以 下
21~ 50 人
〃
〃
51~ 100 人
〃
101~ 300 人
〃
〃
業種分類
輸送用機械器具製造業
一般機械器具製造業
金属製品製造業
〃
〃
一般機械器具製造業
輸送用機械器具製造業
一般機械器具製造業
機械設計業
本社
所在地
岡山県
広島県
岡山県
広島県
岡山県
〃
広島県
岡山県
〃
航空機関連への
進出時期
2年超~5年前
10 年 超 ~ 20 年 前
5 年 超 ~ 10 年 前
20 年 超
2年超~5年前
〃
20 年 超
2年超~5年前
〃
(2)進出のきっかけ
航空機関連産業に進出した直接のきっかけは、発注サイドの企業が外注先を
求めた場合と、受注サイドの企業(行政、産業支援機関等の取引斡旋を含む)か
ら取引を求めた場合に大別できる。聞き取り調査先の進出時期は、いずれの場
合も航空機需要の拡大期である。そして、その好機を逸せずに、取引に結び付
けたのが進出のきっかけとなっている。
(3)参入のポイント
航 空 機 関 連 産 業 に 参 入 す る ポ イ ン ト を 大 き く 分 け る と 、“ 設 備 ”“ 品 質 管 理 体
制 ”“ 参 入 意 欲 ” が 挙 げ ら れ た 。 ま ず 、 発 注 企 業 が 外 注 先 に 求 め る 設 備 ( 工 作 機
械、測定機など)を保有していること。次に、航空機関連産業に求められる厳
重な品質管理体制が社内に整っていること。そして、経営者の航空機関連産業
への参入意欲の有無がポイントとなる意見が多かった。
(4)参入した効果
自社にとって直接的な効果としては、継続的に受注できているので航空機事
業が売上高に貢献した点が挙げられた。間接的な効果としては、航空機産業に
関わっていることで企業の対外的イメージが向上し、優秀な人材の採用に効果
があった。また、参入したことで航空機関連の品質管理の考え方、新たな技術・
ノウハウを習得する効果が挙げられた。
-22-
( 5 ) 参 入 時 に ネ ッ ク と な っ た 点 ・苦 労 し た 点
参 入 時 に ネ ッ ク と な っ た 点 ・苦 労 し た 点 は 品 質 管 理 に 関 す る こ と 、お よ び 参 入
時の投資負担が大きいことが挙げられた。
航空機産業の品質管理の特有な考え方を作業者全員が理解するまでに時間を
要したとの意見が多かった。技術面でネックとなった点は少ないが、これまで
取 り 扱 っ た こ と が な か っ た 材 料 の 加 工 に 戸 惑 い が あ っ た 意 見 が み ら れ た 。ま た 、
新規の設備投資、品質管理体制の整備など投資負担が大きかったことが挙げら
れた。
( 6 ) 現 在 の 課 題 ・不 安 に 思 っ て い る 点
聞 き 取 り 先 が 現 在 の 課 題 ・不 安 に 思 っ て い る 点 は 、 ま ず 親 企 業 と の 取 引 関 係 で
ある。親企業の外注方針変更に伴う取引量減少、工賃引き下げが懸念され、新
規取引が困難であるとする意見がみられた。
また、社内の品質管理体制の維持に負担感がある。受注継続を図るためには、
ISO9001、JISQ9100 の 認 証 取 得 が 欠 か せ な い が 、取 得 に 二 の 足 を 踏 ん で い る こ と が
挙げられた。
(7)今後の取組方針
自 社 の 航 空 機 関 連 事 業 へ の 今 後 の 取 組 方 針 は 、「 積 極 的 に 取 り 組 む 」 と す る 意
見 が 多 い 中 で 、「 現 状 維 持 」 と す る 企 業 も み ら れ た 。
「積極的に取り組む」とする主な理由は、これまでに航空機関連事業の生産
体制、品質管理体制が充実してきたこと、ノウハウの蓄積が進んだことである。
「現状維持」とする理由には航空機関連事業の収益性が低いことなどが挙げら
れた。
(8)行政への要望事項
行 政 等 に 対 し て 最 も 多 か っ た 要 望 は 、取 引 先 開 拓 の 支 援 ・新 規 取 引 先 の 紹 介 で
あった。市場別にみると国内向けと海外向けに分けられる。国内向けは航空機
メーカー、装備品メーカーへの受注開拓に行政の支援が望まれている。海外市
場の開拓には積極的な意見と慎重な意見がみられたが、いずれにしても市場開
拓に行政の支援を期待している。
長期的視点からの要望であるが、航空機部品の製造に欠かせない表面処理工
場 、 塗 装 工 場 の 誘 致 、 航 空 機 メ ー カ ー の 生 産 拠 点 ・研 究 開 発 拠 点 の 誘 致 に 向 け て
行政の働き掛けが求められている。
航空機部品の受注グループを編成する際には、行政にコーディネータ的機能
を果たすことが期待されている。
-23-
Ⅲ.他地域での取組状況
1.地域連携組織の取組状況
(1)事例にみる活動状況とその特色
航空宇宙産業の振興、中小企業の航空機関連産業への参入支援などを図るた
め、県単位あるいは県内一地域をベースに取り組む会員組織の取り組みが全国
各 地 で み ら れ る ( 本 調 査 で は 、 こ う し た 組 織 を “ 地 域 連 携 組 織 ” と 呼 ぶ )。
地域連携組織の取組状況を把握するために、
・栃木航空宇宙懇話会(栃木県)
・とちぎ航空宇宙産業振興協議会(栃木県)
・まんてんプロジェクト(京浜地域)
・飯田航空宇宙プロジェクト(長野県飯田下伊那地域)
・宇宙航空技術利活用研究会(静岡県浜松地域)
・次世代型航空機部品供給ネットワーク(大阪府)
と い う 6 つ の 連 携 組 織 に 対 し て 聞 き 取 り 調 査( 先 進 事 例 調 査 を 含 む )を 実 施 し た 。
聞き取り調査先はいずれの組織も航空宇宙産業の振興、中小企業の航空機関
連産業への参入支援などを図っているが、取り組みの共通点は各組織ともに研
究会、セミナー等を積極的に開催し、会員向けに情報提供を行っていることで
あ る 。 反 面 、 設 立 目 的 ・経 緯 等 の 違 い に よ っ て 取 り 組 み に 温 度 差 も み ら れ る 。
第1は、組織の目的が航空宇宙産業への参入、あるいは既存産業のボトムア
ッ プ に よ っ て 対 応 が 分 か れ る 。 航 空 宇 宙 産 業 の 集 積 地 ・栃 木 県 に あ る 「 栃 木 航 空
宇 宙 懇 話 会 」「 と ち ぎ 航 空 宇 宙 産 業 振 興 協 議 会 」 は 参 入 よ り も 航 空 宇 宙 産 業 の 底
上げを目的としているが、その他の4つの組織は航空宇宙分野への参入が重視
されている。
第 2 は 、 民 間 主 導 ・行 政 主 導 に よ っ て 、 取 り 組 み に 関 す る 考 え 方 、 入 会 へ の 対
応 な ど に 違 い が み ら れ る 。会 員 で あ る 民 間 企 業 が 主 導 す る「 次 世 代 型 航 空 機 部 品
供 給 ネ ッ ト ワ ー ク 」は 会 員 自 ら が 航 空 機 関 連 産 業 へ の 参 入 を 果 た す た め の 活 動 に
ポイントを絞っており、会員は参入に意欲のある企業にしか入会を認めていな
い特徴がある。一方、行政が主導する「とちぎ航空宇宙産業振興協議会」は県の
重 点 産 業 分 野 の 振 興 施 策 を 推 進 す る 団 体 で 、県 内 の 企 業 ・事 業 所 の 入 会 希 望 者 に
幅広く門戸を広げている。
第 3 は 、“ 航 空 宇 宙 ” を 名 称 に 使 っ て い る 組 織 が 多 い 中 で 、 組 織 自 体 の 志 向 を
航 空 分 野 ・宇 宙 分 野 に 分 類 す る と 、聞 き 取 り 調 査 先 の 多 く は 航 空 分 野 へ の 志 向 を
強 め て い る 。「 次 世 代 型 航 空 機 部 品 供 給 ネ ッ ト ワ ー ク 」は 目 指 す べ き 対 象 を 航 空
機 部 品 に 定 め て い る 。「 ま ん て ん プ ロ ジ ェ ク ト 」 は 設 立 当 初 は 宇 宙 志 向 で あ っ た
が 、 そ の 後 は 航 空 機 分 野 に 取 り 組 み を シ フ ト さ せ て い る 。「 宇 宙 航 空 技 術 利 活 用
研 究 会 」 は JAXAと の 連 携 を 図 っ て い る こ と か ら 宇 宙 分 野 へ の 関 心 も 強 い 。
第4は、会員の所在地が広域に分散しているか、県内もしくは県内一地域に
-24-
限 定 さ れ て い る か で あ る 。「 ま ん て ん プ ロ ジ ェ ク ト 」 は 会 員 が 北 海 道 か ら 九 州 ま
で に 及 ん で い る 。一 方 、
「 飯 田 航 空 宇 宙 プ ロ ジ ェ ク ト 」は 長 野 県 飯 田 下 伊 那 地 域 、
「宇宙航空技術利活用研究会」は静岡県浜松地域に限定されている。
図 表 Ⅲ .1
聞き取り調査先の特色
名 称
参入を目的
民間主導
航空機志向
栃木航空宇宙懇話会
とちぎ航空宇宙産業振興協議会
まんてんプロジェクト
飯田航空宇宙プロジェクト
宇宙航空技術利活用研究会
次世代型航空機部品供給ネットワーク
△
△
◎
◎
◎
◎
◎
×
◎
○
○
◎
○
○
○
◎
△
◎
広域
(会 員 所 在 地 )
○
○
◎
△
△
◎
注 : ◎ は 傾 向 が 大 き い 、 ○ は 傾 向 が あ る 、 △ は 傾 向 が 小 さ い 、 ×は 傾 向 が な い
資料:聞き取り調査をもとに作成
2.先進事例調査結果
(1)先進事例調査の概要
中国地域の中小企業が航空機関連分野への展開を図るための条件等を把握し、
航空機関連産業の集積に向けて地域が取り組むべき振興方策を検討するにあた
り 、 参 考 と な る 調 査 対 象 先 を 選 定 し 、 平 成 21 年 9 月 2 日 か ら 4 日 に か け て 先 進
事例調査を実施した。
(2)宇宙航空技術利活用研究会
a.概要
①宇宙航空技術利活用研究会は、三遠南信バイタライゼーション浜松支部の組
織 と し て 平 成 17 年 に 設 立 さ れ た 。 会 員 企 業 数 は 4 8 社 。
② JAXAと の 連 携 を 図 る な ど 、 宇 宙 分 野 の 技 術 開 発 も 視 野 に 入 れ て い る 。
③同研究会の活発な取り組みが評価されたことにより、浜松市、静岡県が平成
21 年 度 よ り 航 空 宇 宙 分 野 へ の 参 入 支 援 事 業 を 実 施 し て い る 。
b.参考となる点
①事務局は浜松商工会議所が担当するなど、民間が主体的に取り組んでいる。
②コーディネータが会員企業の受注活動、新技術開発に積極的に関わり、重工
メーカーなどとの橋渡しを行っている。
③ 自 治 体 と の 連 携 ・相 互 協 力 を 図 っ た 結 果 、自 治 体 が 航 空 宇 宙 分 野 へ の 参 入 支 援
事業を実施するまでに至った。
④ JAXAと の 連 携 を 図 っ て い る 。
-25-
(3)次世代型航空機部品供給ネットワーク
a.概要
①次世代型航空機部品供給ネットワークは、航空機産業への参入に向けた活動
に 取 り 組 む 、大 阪 を 中 心 と し た 中 小 企 業 の 連 携 組 織 で あ る 。正 会 員 数 は 33 社 。
② 目 指 す べ き 対 象 を 「 航 空 機 部 品 」、 活 動 ス テ ー ジ を 「 参 入 」、 補 完 す る 機 能 を
「 情 報 収 集 ・発 信 機 能 」 と 明 確 に し て い る 。
b.参考となる点
① 研 究 会 、フ ォ ー ラ ム の 開 催 な ど OWOの 活 動 に お い て 、 会 員 企 業 が 主 体 的 に 取
り組んでいる。
② 航 空 機 産 業 で 長 期 的 取 引 ・次 世 代 型 取 引 を め ざ し て 、航 空 機 部 品 の 一 貫 生 産 シ
ステムを構築した新会社を会員企業自らが立ち上げた。
③ 「 川 上 ・川 下 ネ ッ ト ワ ー ク 構 築 支 援 事 業 」「 関 西 国 際 航 空 機 市 場 参 入 等 支 援 事
業 」 と い う 公 的 支 援 事 業 を 上 手 に 活 用 し て 、OWOの 事 業 展 開 に 取 り 込 ん で い
る。
( 4 ) 株 式 会 社 オ ー ・ワ イ ・コ ー プ ( 大 阪 市 )
a.概要
① 株 式 会 社 オ ー ・ワ イ ・コ ー プ は OWO会 員 企 業 5 社 が 共 同 出 資 し 、平 成 20 年 2 月
に 設 立 し た 受 注 ・生 産 統 括 会 社 で あ る 。
②航空機部品の「一貫生産システム」というビジネスモデルで航空機分野への
参入をめざしている。
b.参考となる点
①航空機部品への参入をめざす意欲的な中小企業が結集し、一貫生産システム
という参入モデルを具現化した会社を設立した。
② OYCグ ル ー プ 企 業 の 各 社 が JISQ9100 の 認 証 取 得 を め ざ す こ と に よ っ て 、 OY
C全 体 の 品 質 保 証 ・管 理 体 制 を ア ピ ー ル し よ う と し て い る 。
③トレーサビリティシステム構築に経済産業省の「新連携」事業の補助金を活
用している。
(5)航空宇宙産業フォーラム(名古屋市)
a.概要
①航空宇宙産業フォーラムは、中部地域の航空機産業の振興を図るために産学
官 が 結 集 し て 平 成 20 年 4 月 に 発 足 し た 連 携 体 で あ る 。
② 事 務 局 は 中 部 経 済 産 業 局 産 業 部 航 空 宇 宙 ・バ イ オ 産 業 振 興 室
③ 技 術 高 度 化 支 援 、 人 材 育 成 支 援 、 新 規 参 入 ・裾 野 拡 大 支 援 な ど 、 航 空 機 部 品 加
工メーカーに対して幅広い支援事業を提供している。
-26-
b.参考となる点
①航空機部品メーカーの海外展開を積極的に支援している。
②製造中核人材など人材育成に産学官が連携して取り組んでいる。
③ 中 部 航 空 宇 宙 技 術 セ ン タ ー 、 VRテ ク ノ セ ン タ ー な ど の 各 支 援 機 関 と 連 携 し 、
役割分担を図りながら事業に取り組んでいる。
(6)住友精密工業株式会社(兵庫県尼崎市)
a.概要
①住友精密工業株式会社は航空機の降着装置、熱交換器などを製造する装備品
メーカーである。
②従来は防衛機向けが中心だったが、民間航空機向けの受注に積極的に取り組
んでいる。
③国内のサプライヤーを活用したいが、コスト競争力、技術力、品質管理等の
面で優位性のある海外サプライヤーより調達している部材が多い。
b . 参 入 を め ざ す 企 業 へ の ア ド バ イ ス ・要 望
①航空機産業への参入を検討する際は、まず品質管理面など航空機産業の特性
を理解することが求められる。
② コ ス ト 競 争 力 を 高 め る た め に は 、部 品 メ ー カ ー は 一 貫 生 産 体 制 を 構 築 し て 完 成
部品を納入することが今後必要となる。
③装備品メーカー等は“特殊工程”への参入が期待されている。
④航空機産業の国内市場規模が小さいために、参入できたとしても投資に見合
う回収が容易ではないことを参入の前提にする。
(7)三菱重工業株式会社名古屋航空宇宙システム製作所(名古屋市)
a.概要
①我が国の航空機産業を代表するメーカーである。
② 民 間 航 空 機 分 野 で は 海 外 航 空 機 メ ー カ ー と の 共 同 開 発 を 行 っ て お り 、 平 成 20
年 に は 独 自 の リ ー ジ ョ ナ ル ジ ェ ッ ト 機 「 MRJ」 の 事 業 化 に 着 手 し た 。
③価格競争力の向上に向けて、部品メーカーが一貫生産できるように体制の見
直しを検討している。
b . 参 入 を め ざ す 企 業 へ の ア ド バ イ ス ・要 望
① 民 間 航 空 機 の 機 体 メ ー カ ー は コ ス ト 競 争 力 の 確 保 、国 内 事 業 の 高 付 加 価 値 化 を
図 る た め に 、サ プ ラ イ チ ェ ー ン の 再 構 築 を 検 討 し て い る 。こ の よ う な 動 向 に つ
いて、参入を指向するメーカーは留意する必要がある。
② 航 空 機 産 業 へ の 参 入 に あ た っ て は 、航 空 関 連 法 令 ・規 格 ・各 種 認 定 制 度 の 熟 知 、
品質管理体制の充実が重要である。
-27-
Ⅳ.中小企業の参入が期待される分野と参入に必要とされる条件
1.中小企業の参入が期待される分野
(1)機体・エンジン
国 内 の 航 空 機 生 産 の 状 況 を み る と 、「 機 体 」 と 「 エ ン ジ ン 」 が 全 体 の 約 9 割 を
占め、航空計器などの「その他機器」は約1割である。
「機体」分野をみると、航空機は百万点以上に及ぶ多品種の部品から構成さ
れ、機体メーカーはこうした部品を機体システムとして統合する取りまとめ役
を果たしている。民間航空機の分野では、三菱重工業、川崎重工業、富士重工
業 な ど の 国 内 機 体 メ ー カ ー は ボ ー イ ン グ 社 、 エ ア バ ス 社 等 の Tier1 ( テ ィ ア ワ
ン ) と し て 、 国 際 共 同 開 発 お よ び 生 産 の 役 割 を 担 っ て い る 。 一 方 、「 エ ン ジ ン 」
分 野 を み る と 、 国 際 的 に は GE社 、 RR社 、 P&W社 の 3 社 が 世 界 の 売 上 げ の 大 半
を占めている。国内のエンジンメーカーであるIHI、三菱重工業、川崎重工
業 は 国 際 共 同 開 発 に 参 画 し 、 Tier1 と し て 重 要 部 位 を 担 当 し て い る 。
生 産 額 で み る 限 り 、「 機 体 」「 エ ン ジ ン 」 の 両 分 野 の 市 場 規 模 が 大 き い 。 た だ
し 、「 機 体 」 と 「 エ ン ジ ン 」 の 各 本 体 生 産 は Tier1 に 限 定 さ れ る の で 、 本 体 分 野
の生産となると、中小企業の参入は非常に難しい。本体だけでなく「機体部品」
「 エ ン ジ ン 用 部 品 」 に つ い て も 、 そ の 9 割 以 上 は Tier1 が 生 産 し て い る と い わ
れ て い る が 、中 小 企 業 が 担 当 で き る 工 程 が 数 多 く 存 在 し て い る と み ら れ る の で 、
部品生産は有力な参入分野として期待されている。また、部品の定期交換、新
型部品への置き換えなど、安定的な修理需要も見込めるなど、アフターパーツ
市 場 が 大 き い こ と も 「 機 体 」「 エ ン ジ ン 」 分 野 の 特 徴 で あ る 。
具 体 的 に 機 体 ・エ ン ジ ン の 生 産 部 位 を み る と 、日 本 の 重 工 メ ー カ ー 各 社 は 民 間
航 空 機 の 国 際 共 同 開 発 に 参 加 し て い る が 、 ボ ー イ ン グ 社 の B787 の 機 体 構 造 部 分
で は 日 本 メ ー カ ー の 分 担 比 率 が 約 35% を 占 め て い る 。 三 菱 重 工 業 が 主 翼 ボ ッ ク
スを、川崎重工業が前胴部位、主脚格納部および主翼固定後縁を、富士重工業
が中央翼、中央翼と主脚格納部とのインテグレーションを担当している。国内
に お い て は こ の よ う な B787 の 部 位 に 関 わ る 機 体 部 品 が 生 産 さ れ て い る と 考 え ら
れる。
B787 の エ ン ジ ン に は GE社 の GEnx と ロ ー ル ス ロ イ ス 社 の Trent1000 が 採 用 さ
れ て い る が 、 日 本 か ら は GEnx に は I H I と 三 菱 重 工 業 の 2 社 が 、 Trent1000 に
は 川 崎 重 工 業 と 三 菱 重 工 業 の 2 社 が 参 画 し て お り 、 日 本 の 分 担 比 率 は 約 15% で
あ る 。担 当 部 位 は GEnx で は 、I H I が 低 圧 タ ー ビ ン モ ジ ュ ー ル 、低 圧 タ ー ビ ン
シャフトおよび高圧圧縮機の静動翼を、三菱重工業が燃焼器ケースを担当して
い る 。Trent1000 で は 、川 崎 重 工 業 が 中 圧 圧 縮 機 モ ジ ュ ー ル を 、三 菱 重 工 業 が 燃
焼器モジュール、低圧タービン動翼を担当している。国内ではこうした担当部
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位に関連するエンジン部品が生産されている。
図 表 Ⅳ .1
B787 の 日 本 メ ー カ ー の 担 当 部 位
資 料 :日 本 航 空 宇 宙 工 業 会 「日 本 の航 空 宇 宙 工 業 」
図 表 Ⅳ .2
GEnx( 左 側 )、 Trent1000( 右 側 ) の 日 本 メ ー カ ー の 担 当 部 位
(三菱重工業)
(三菱重工業)
(IHI)
(三菱重工業)
(I H I )
(川崎重工業)
(I H I )
注 :(
)内 は日 本 の担 当 メーカー
資 料 :日 本 航 空 宇 宙 工 業 会 「日 本 の航 空 宇 宙 工 業 」
-29-
(2)その他の航空機関連分野
「 機 体 」「 エ ン ジ ン 」 製 造 分 野 以 外 の 分 野 と し て は 、「 油 圧 、 与 圧 ・空 調 シ ス テ
ム 」「 降 着 シ ス テ ム 」「 電 源 シ ス テ ム 」「 飛 行 管 理 ・制 御 装 置 」「 航 空 計 器 」「 客 室
機 内 シ ス テ ム 」 な ど の 分 野 が 存 在 す る 。 こ う し た 分 野 も 、「 機 体 」「 エ ン ジ ン 」
と同様、中小企業が直接参入することは難しい分野であり、航空機メーカーと
取 引 し て い る Tier1 の サ プ ラ イ ヤ ー に な る こ と が 一 般 的 で あ る 。
その他の航空機関連分野を概観すると、以下のとおりである。
a . 油 圧 、 与 圧 ・空 調 シ ス テ ム
航空機の油圧システムは相対的に大出力を必要とする可動部分を遠隔駆動す
る方法として、操縦系統、高揚力装置、降着装置等に使用されている。
与 圧 ・空 調 シ ス テ ム は 、 航 空 機 に 搭 乗 す る 乗 客 と 乗 員 、 搭 載 機 器 に 適 し た 気 圧
と気温を維持し、安全性と快適性を確保するためのシステムである。
b.降着システム
降着システムは、着陸時および地上走行時の衝撃の吸収、ブレーキ、地上走
行時のステアリングを行うシステムで、緩衝装置、ブレーキ、ホイール、タイ
ヤ等の機器で構成される。
世 界 の 大 型 機 用 降 着 シ ス テ ム は 、米 国 の グ ッ ド リ ッ チ 社 と 欧 州 の メ シ ェ ・ダ ウ
ティ社がほぼ独占している。
c.電源システム
電源システムは、主としてエンジンの回転を駆動源として発電し、機内に配
電 す る シ ス テ ム で あ る 。航 空 機 用 電 源 シ ス テ ム メ ー カ ー は 世 界 に 10 社 程 度 存 在
す る が 、 そ の シ ェ ア は 米 国 に 集 中 し て お り 、 中 で も ハ ミ ル ト ン ・サ ン ド ラ ン ド 社
のシェアが非常に大きいといわれている。
d.飛行管理・制御装置
飛 行 制 御 シ ス テ ム は 、 エ レ ク ト ロ ニ ク ス 技 術 を 活 用 し た F M S ( Flight
Management System:飛 行 管 理 シ ス テ ム )と ACT( Active Control Technology:自
動操縦技術)を両輪として、飛行・制御の両面から効率向上を図っている。
飛 行 制 御 関 連 機 器 ・シ ス テ ム メ ー カ ー と し て は 、 軍 用 機 、 民 間 機 と も に 欧 米 有
力メーカーが競争状態にあり、特に米国が一歩進んでいるといわれている。
e . 電 子 装 備 品 ・通 信 装 置
エ レ ク ト ロ ニ ク ス 技 術 の 進 化 に 伴 い 、航 空 機 に は 数 々 の 電 子 装 備 品 ・通 信 装 置
が搭載されている。中国地域には、不定期ながら航空機用電子機器向けに電子
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部品を納入している電子部品・デバイスメーカーが存在する。
f.航空計器
航空計器は人間工学的な見地での研究開発が必要とされ、大型液晶ディスプ
レ イ 、EVS・SVS( パ イ ロ ッ ト の 視 覚 援 助 シ ス テ ム )要 素 技 術 の 開 発 が 進 め ら れ
ている。
g.客室機内システム
客 室 機 内 シ ス テ ム に は 、 機 内 娯 楽 装 置 、 座 席 、 ラ バ ト リ ー ( 化 粧 室 )、 ギ ャ レ
ー ( 調 理 室 )、 照 明 、 カ ー ペ ッ ト 等 が あ る 。 こ の 分 野 は 、 多 数 の 日 本 の 企 業 が 進
出している分野である。機体メーカーの認証を取得したうえで、世界各国のエ
アラインに営業展開を行う形態が多い。製品のメンテナンス等のアフターサー
ビスについても国際的な展開が求められる。
h.整備機材
航空機、各種機器などのメンテナンスには、多くの整備機材・装置が必要と
される。これらの機材は、小さなモノはハンドツール、可搬型計測器、検査器
具から、大きなものは自走動力機材、精密検査装置、大型据付試験機材に至る
まで多岐にわたっている。航空機の整備機材は一部の特殊なものを除き国産で
対応している。
i.設計
航空機の設計は航空機市場の成長とともに業務量が増大しているが、繁閑の
波も大きくなっていることから、機体メーカー等は設計部隊を独立させて子会
社としている。その子会社もしくは協力企業は設計要員を機体メーカー等に派
遣させる形態が一般的になっている。
(3)産業構造からみた参入ポジション
民 間 旅 客 機 の 場 合 、航 空 機 産 業 の 産 業 構 造 は 図 表 Ⅳ .3 の よ う な イ メ ー ジ で あ
る。現在、世界的に知られている機体メーカーはボーイング社、エアバス社な
ど ほ ぼ 4 社 に 集 約 さ れ て お り 、エ ン ジ ン メ ー カ ー は GE社 、ロ ー ル ス ・ロ イ ス 社 な
どが存在する。三菱重工業、IHI、川崎重工業、富士重工業など国内大手重
工 メ ー カ ー は「 Tier1 」と し て 機 体 メ ー カ ー 、エ ン ジ ン メ ー カ ー に 主 要 部 材 を 供
給し、装備品メーカーは降着装置、油圧機器などの装備品の生産に携わってい
る。
-31-
図 表 Ⅳ .3
航空機産業の構造イメージ図
エアライン(航空会社)
航空機産業
④ニッチ部品
③アフターパーツ
整備機材
<機体メーカー>
<エンジンメーカー>
ボーイング、エアバス、
ボンバルディア、
エンブラエル 等
GE、ロールスロイス、
プラット&ホイットニー等
装備品メーカー
Tier1,Tier2
Tier1
(パートナー)
Tier1
(パートナー)
①部品メーカー (大手メーカーの協力会社など)
②下請部品
メーカー
下請部品
メーカー
下請部品
メーカー
下請部品
メーカー
資 料 :各 種 資 料 をもとに作 成
航空機産業の業界構造の中で、中小企業がどのような形で参入しているかを
みると、
① 機 体 ・ エ ン ジ ン の Tier1 、 お よ び 装 備 品 の 国 内 大 手 メ ー カ ー へ の 部 品 供 給 を
担う「部品メーカー」
②部品メーカーの外注先として、部品生産を支える「下請部品メーカー」
③ エ ア ラ イ ン( 航 空 会 社 )に 対 し て 純 正 品 の 代 替 と な る PMA(Parts Manufacturer
Approval)部 品 と 呼 ば れ て い る ア フ タ ー パ ー ツ や 、 整 備 機 材 の メ ー カ ー
その他に、
④ネジやボルト、客室内の手荷物入れに取り付けるミラーなどのニッチな部品
を海外機体メーカーに直接納入する部品メーカー
が存在する。
ただし、②については部品メーカーが外注先を使う場合は、国内大手メーカ
ー等の承認が必要であり、下請部品メーカーとしての新規参入機会は少ないの
が 現 状 で あ る 。③ は PMA部 品 を 供 給 す る た め に は 、米 国 連 邦 航 空 局( FAA)の
認証が必要である。
したがって、航空機分野への参入をめざすならば、まずは①のポジションを
第 1 の 参 入 タ ー ゲ ッ ト と し 、業 界 特 性 ・業 界 慣 行 に 慣 れ て き た と こ ろ で 他 の ポ ジ
ションへの移行を検討していくことが正攻法であろう。とりわけ、市場規模が
-32-
大 き い 「 機 体 部 品 」「 エ ン ジ ン 用 部 品 」 の 分 野 に お い て 、 大 手 重 工 メ ー カ ー か ら
の発注は、参入をめざす中小企業にとって期待度が高いものになっている。
(4)中小企業の参入課題
航空機部品は最も影響力のある米国の認証制度面での制約を受けている。部
品製造を自力で対応可能とする中小企業は極めて少ない。したがって、実質上
当面の参入ターゲットは国内の大手重工メーカー、および装備品メーカーから
の受注である。
国内の航空機産業は海外航空機メーカーの生産計画により生産量が大幅に変
動している。航空機の需要は長期的にみると右肩上がりで伸びているが、短期
的にみると他の機械産業と同様に、稼働設備と生産量とのバランスを図ること
が 難 し い 。Tier1 は フ ル 生 産 と な れ ば 工 程 の 一 部 を 同 様 の 設 備 を も つ 中 小 企 業 に
外 注 す る 。Tier1 が 繁 忙 期 に 工 程 の 一 部 を 外 注 化 す る 機 会 に 、中 小 企 業 が 取 引 を
獲 得 す る ケ ー ス が 比 較 的 多 い 。し か し 、い っ た ん 生 産 調 整 期 に 入 る と 、Tier1 は
外注していた仕事を内製化に戻すことを繰り返すことになる。中小企業は工程
の一部を受注するだけでは、いわゆる“需給の調整弁”として不安定な受注形
態とならざるをえず、安定した受注量を確保するための方策を講じていく必要
がある。
な お 、 既 に Tier1 か ら 継 続 的 に 受 注 し て い る 中 小 企 業 で は 、 次 の ス テ ッ プ と
し て Tier1 等 の 大 手 メ ー カ ー と タ イ ア ッ プ し て 海 外 か ら の 新 規 受 注 す る こ と も
考えられる。
図 表 Ⅳ .4
航空機産業の需要変動イメージ図
需要量
①
②
時間
①大手メーカーのフル生産期
②需要調整期
2.参入に必要とされる条件
(1)技術
機械加工の技術条件をみると、参入段階で求められる技術のハードルは決し
て高いものではなく、技術レベルよりもむしろ、生産に対応可能な設備の保有
-33-
状 況 、あ る い は 品 質 管 理 や 工 程 管 理 の 力 量 が 問 わ れ て い る 。も っ と も 、10 年 後 、
20 年 後 を 見 据 え た 次 世 代 航 空 機 の 部 品 へ の 参 入 を め ざ し て い る の で あ れ ば 、 大
手メーカーとのすり合わせを重ねながら先端技術の開発が必要とされる。例え
ば 、 CFRPの 加 工 技 術 の 高 度 化 が 期 待 さ れ て い る と こ ろ で あ る 。
そ の 他 の 技 術 を み る と 、 設 計 で は 業 界 標 準 の 3 次 元 CADソ フ ト 「 CATIA V
5 」「 NX6 」 の 技 術 能 力 が 要 求 さ れ て い る 。
(2)設備
メーカーにとって保有設備は技術力を支える基盤である。発注が見込まれる
加工に対応できる設備を確保すれば、参入をめざす中小企業は積極的にアピー
ルできる要素となる。特に、機械加工では複雑形状の航空機部品の加工が求め
られていることから、5軸加工機の導入が参入条件の1つであるといわれてい
る。
(3)品質管理体制
航空機は高度な信頼性と安全性が求められている。航空機部品についても厳
しい品質管理が求められ、製造工程だけでなく、部品の加工工程に従事する作
業者のレベルまでの厳格な管理体制が必要である。航空機関連産業の企業は規
模 に か か わ ら ず 、“ 決 め ら れ た 通 り ” の 工 程 を 遵 守 す る と と も に 、 加 工 し た も の
が要求水準どおりに加工されているかを検査する品質管理体制が求められる。
航 空 機 産 業 の 品 質 保 証 制 度 と し て 、JISQ9100、Nadcapが あ る 。こ れ ら の 認 証
を中小企業が取得するためのハードルは決して低くないが、認証取得は参入に
向けての有効な判断材料となる。
(4)その他
航空機の使用期間は数十年に及ぶために、中小企業といえども長期間にわた
り部品を供給しなければならない義務が生じる。航空機メーカーへの取引開拓
は、自社が長期にわたり部品を安定供給できるサプライヤーであることをアピ
ールすることがポイントである。発注サイドとしては、参入をめざす企業が安
定した経営を継続的に行っているかが判断材料の1つになっている。
また、航空機製造の本質に関わる部分であるが、航空機の絶対的安全性を確
保するために、参入する企業、およびその従事者全員が“信頼”をベースにし
た航空機特有のものづくり文化を理解し、その文化が企業に定着していくこと
が参入の大前提となることに留意しなければならない。
-34-
Ⅴ.中国地域での取組方向について
1.中国地域での参入可能性の検討
(1)航空機市場の状況
国内の航空機市場は現在、需要調整局面に入っているとみられる。その背景
には、世界同時不況による航空機需要の落ち込みでボーイング社、エアバス社
な ど 航 空 機 メ ー カ ー が 生 産 を 抑 制 し て い る の に 加 え て 、 B787 の 開 発 が 遅 れ て い
る 。 B 787 の 機 体 生 産 の 35% 分 を 日 本 の 重 工 メ ー カ ー が 担 当 し て い る が 、 B 787
の量産が開始されないことが生産抑制の大きな要因となっている。航空機産業
が需要調整期に入っている現段階において、参入機会は少なくなっている。
中長期的にみると、航空機市場は右肩上がりで成長し、世界の航空旅客は年
平 均 4 % 以 上 の 伸 び が 予 測 さ れ て い る 。 数 年 の う ち に B 787 の 量 産 化 が 始 ま り 、
三 菱 重 工 業 の MRJ事 業 が 順 調 に 進 め ば 、国 内 の 航 空 機 生 産 が 一 気 に 旺 盛 と な り 、
中小企業への外注が増加することが予想される。こうした状況になれば、中小
企業が航空機関連産業に参入できる可能性が高まることが期待される。
ただし、国内の航空機市場は予測どおりに成長するとしても、このままでは
20 年 後 に せ い ぜ い 2.5 兆 円 程 度 し か 見 込 め な い 。 航 空 機 関 連 分 野 は 全 国 各 地 で
参入意欲が高まっているが、すべての地域、企業の受注に繋がるほど市場規模
は大きくない。地域間競争となって国内市場で仕事の奪い合いをしていては疲
弊するだけであるので、部品メーカーといえども海外市場を取り込んでいく視
点が求められる。海外のターゲット先には、欧米の航空機メーカー、サプライ
ヤーが想定されるが、将来の可能性として経済発展が著しい中国、インドなど
アジア諸国の航空機産業の動向にも注視する必要がある。
(2)中国地域の中小企業の状況
a . 設 備 ・技 術
航 空 機 関 連 産 業 の 裾 野 を 広 げ て い く た め に 、中 小 企 業 の 参 入 が 求 め ら れ る が 、
参入に必要な設備、技術を有する中小企業が中国地域には多数あると推定され
る。
b.参入意向
中国地域には航空機関連分野に関心を寄せる中小企業も多い。今回実施した
ア ン ケ ー ト 調 査 に よ る と 、「 航 空 機 関 連 分 野 に 関 心 が あ り 、 受 注 活 動 等 を 展 開 し
て い る が 、 こ れ ま で は 受 注 実 績 は な い 」 と す る 企 業 は 回 答 企 業 378 社 の う ち 14
社( 回 答 企 業 割 合 3.7% )、
「 航 空 機 関 連 分 野 に 関 心 が あ り 、今 後 進 出 を 検 討 し た
い 」と す る 企 業 は 105 社( 同 27.8% )と 、両 者 の 回 答 企 業 割 合 を 合 わ せ る と 30%
を超えている。今後、何らかの形で航空機関連分野に関わっていきたいと考え
ている企業が数多く存在することが確認できた。
-35-
(3)中国地域の中小企業を取り巻く環境
a.先発メーカーの存在
中国地域において、航空機関連産業に既に参入している中小企業が少なから
ず存在している。アンケート調査結果によると、中国地域で「航空機関連分野
に 継 続 的 に 関 わ っ て い る 」 企 業 ( 大 手 メ ー カ ー は 除 く ) は 20 社 、「 航 空 機 関 連
分 野 に 不 定 期 に 関 わ っ て い る 」 企 業 は 27 社 が 存 在 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。
もちろん、アンケート調査の未回答先、および対象先として漏れた中小企業の
中にも、航空機関連産業に参入している企業も相当数あると推察される。
具体的な状況をみると、中国地域で航空機関連産業に参入している企業はI
HI呉第二工場の協力メーカー数社、ウイングウィン岡山の会員企業の一部が
中心となっているが、山口県、島根県においても航空機の部品加工等を行って
いる企業が見受けられる。こうした既に関わっている企業には、これから航空
機関連分野への参入をめざす中小企業を先導する役割が期待される。
中 国 地 域 の 中 小 企 業 が 航 空 機 関 連 に 進 出 し て い る 分 野 は 「 機 体 」「 エ ン ジ ン 」
が 多 い 。そ の 大 部 分 は 大 手 重 工 メ ー カ ー と の 取 引 が 中 心 と な っ て い る 。ま た 、
「治
工 具 類 」 に 関 わ っ て い る 中 小 企 業 も 多 い が 、 大 半 は 「 機 体 分 野 」「 エ ン ジ ン 」 と
同時に手掛けている。したがって、当面は、中国地域の中小企業が活躍できる
有 力 分 野 と し て 「 機 体 」「 エ ン ジ ン 」 が 考 え ら れ る 。
b.地域連携組織の活動
中小企業による航空宇宙分野への参入を目的とした地域連携組織が近年、全
国各地で立ち上がっている。
中 国 地 域 に お い て は 、「 ウ イ ン グ ウ ィ ン 岡 山 」「 広 島 航 空 宇 宙 研 究 会 」 と い う
2つのグループが積極的な活動を展開している。山口県では参入をめざす企業
グループは見当たらないが、やまぐち産業振興財団が参入セミナーの開催や展
示会への出展支援を行っている。
このような県単位レベルでの取り組みは、参加企業の航空機関連産業への参
入意欲を高め、企業の参入体制づくりを図ることが可能となる。同時に、参加
企業をネットワーク化し、それを束ねた窓口を設けることによって、参加企業
を国内外の航空機関連産業にアピールすることができる。
c.大手メーカーの生産拠点
中 国 地 域 に は 、 三 菱 重 工 業 、 I H I の 生 産 拠 点 が 存 在 す る 。 機 体 ・エ ン ジ ン の
生 産 ( 部 材 生 産 を 含 む ) を 行 っ て お り 、 数 百 人 規 模 の 技 術 者 ・技 能 者 が 航 空 機 生
産に従事している。また、IHI呉第二工場は部品加工、工程の一部を外部の
中小企業に外注しており、主要サプライヤーをメンバーとする「安芸ジェット
会」という協力会が組織化されている。
-36-
( 4 ) 中 国 地 域 の SWOT分 析
こ れ ま で の ア ン ケ ー ト 調 査 、 聞 き 取 り 調 査 ( 先 進 事 例 調 査 を 含 む )、 既 存 資 料
調 査 等 で 得 ら れ た 結 果 を 踏 ま え て 、 中 国 地 域 の 航 空 機 関 連 産 業 を SWOT分 析 に
よ っ て 内 部 環 境 を 「 強 み 」「 弱 み 」 に 、 外 部 環 境 を 「 機 会 」「 脅 威 」 に 分 類 し て
列 挙 し て み る と 、 図 表 Ⅴ .1 の と お り で あ る 。
図 表 Ⅴ .1
中 国 地 域 の 航 空 機 関 連 産 業 の SWOT分 析
内部環境
外部環境
強 み ( Strength)
機 会 ( Opportunity)
・航 空 機 関 連 を既 に受 注 ・生 産 している中 小 ・中 長 期 的 に世 界 の航 空 機 市 場 が拡 大
企 業 (先 発 メーカー)の存 在
・B787 の生 産 本 格 化 に期 待
・ウイングウィン岡 山 が5年 以 上 にわたって活
・航 空 機 部 材 にCFRPの使 用 比 率 が高 ま
動中
っている
・広 島 航 空 宇 宙 研 究 会 の取 り組 み
・MRJの開 発 ・生 産 に期 待
・重 工 メーカー(三 菱 重 工 業 ,IHI)の生 産 拠 ・低 燃 費 型 航 空 機 が注 目 される
点 が立 地
・長 年 にわたって航 空 機 生 産 を担 ってきた
・安 芸 ジェット会 の存 在
重 工 メーカー等 が国 内 に数 多 く存 在
・航 空 機 の部 品 生 産 に関 する設 備 ,技 術 を
・重 工 メーカー等 はサプライヤーに一 貫 生
有 する中 小 企 業 が多 数 あり
産 を期 待
・参 入 意 向 のある中 小 企 業 が多 数 あり
・米 国 、フランスなど世 界 各 地 に航 空 機 産
・自 動 車 関 連 産 業 が山 陽 側 に集 積 している
業 の集 積 地 あり
・瀬 戸 内 海 沿 岸 に造 船 ・舶 用 工 業 が集 積 し
ている
・広 島 県 立 総 合 技 術 研 究 所 で炭 素 繊 維 複
合 材 料 を研 究
・中 小 企 業 の航 空 機 産 業 への参 入 支 援 に
取 り組 む自 治 体 あり
・下 関 市 は航 空 宇 宙 産 業 を次 世 代 産 業 に
掲 げる
・中 国 経 済 産 業 局 は中 国 地 域 の航 空 機 クラ
スターを支 援 している
弱 み ( Weakness)
・航 空 機 関 連 産 業 の集 積 が中 部 地 域 に比
べて脆 弱
・中 国 地 域 に本 社 機 能 をおく Tier1がない
・航 空 機 関 連 を受 注 ・生 産 している中 小 メー
カーが少 ない
・集 積 地 の中 部 地 域 とは比 較 的 遠 い
・試 験 飛 行 ができる滑 走 路 がない
・JISQ9100 取 得 済 みの中 小 企 業 が少 ない
・Nadcap 認 定 の中 小 企 業 がない
・航 空 機 生 産 の特 殊 工 程 (表 面 処 理 ,熱 処
理 等 )を手 掛 ける事 業 所 が少 ない
・中 小 企 業 は海 外 との直 接 取 引 に慣 れてい
ない
・参 入 意 向 はあるものの中 小 企 業 は航 空 機
関 連 の情 報 が不 足 している
・航 空 機 人 材 育 成 の専 門 機 関 がない
・航 空 宇 宙 学 科 (専 攻 )を設 置 している大 学
がない
・各 自 治 体 によって航 空 機 産 業 への支 援 に
バラツキあり
-37-
脅 威 ( Threat)
・足 元 の航 空 機 需 要 は減 退
・航 空 会 社 の収 益 悪 化
・国 内 の市 場 規 模 は約 1兆 円 強 しかない
・B787 の開 発 ・生 産 に遅 れ
・欧 米 諸 国 にトップクラスの航 空 機 メーカー
(機 体 +エンジン)が集 中
・中 国 、ロシアで小 型 ジェット機 の開 発 ・生
産 が始 まる
・全 国 的 に中 小 企 業 の参 入 意 欲 が高 まっ
ている
・全 国 で地 域 連 携 組 織 が相 次 いで設 立
・中 小 企 業 の航 空 機 産 業 への参 入 支 援
に取 り組 む自 治 体 が増 えている
・国 内 の先 進 地 域 には航 空 機 部 品 向 け表
面 処 理 を手 掛 ける事 業 者 が存 在 する
(5)中国地域の中小企業の参入可能性
以上のようにみていくと、航空機関連産業への参入は足元の需要が減退して
いるので短期的には難しいものの、中期的には成長が見込める産業であること
からその可能性は広がっている。一方、中国地域の中小企業は参入に必要とさ
れる設備、技術を持っている企業が見受けられると同時に、アンケート調査結
果より参入意向のある企業が数多く存在することがわかった。そうした企業は
航空機関連分野に既に関わっている企業、地域連携組織、あるいは大手メーカ
ーとの生産拠点を積極的に活用(あるいは連携)していくことができれば、中
期的には航空機関連産業への参入可能性は十分あると考えられる。
図 表 Ⅴ .2 中 国 地 域 の 中 小 企 業 の 参 入 可 能 性
【航空機市場の状況】
・短期的には需要増は期待できない
・中期的には新規発注の可能性が高い
【中国地域の中小企業】
【中国地域の中小企業を取り巻く環境】
活用・連携 ・先発メーカーの存在
・設備,技術を有する中小企業あり
・地域連携組織の活動
・参入意向のある中小企業が多数あり
・大手メーカーの生産拠点
中期的には参入可能性は十分にあり
2.連携組織の有効性の検討
中 期 的 に は 、中 国 地 域 の 中 小 企 業 が 参 入 し て い く 可 能 性 は 十 分 あ る 。し か し 、
そのためには解決しなければならない課題がある。主な課題としては、第1に
参入意向はあるものの情報不足の企業が多い点であり、第2に発注企業が求め
ている一貫生産に対応可能な中小企業は少ない点である。
(1)参入時の課題
課題①(アンケート調査結果より)
今 回 実 施 し た ア ン ケ ー ト 調 査 で 、「 航 空 機 関 連 分 野 に 関 心 が あ り 、 今 後 進 出 を
検 討 し た い 」 と す る 企 業 105 社 に 対 し て 、 航 空 機 分 野 へ の 進 出 に 際 し て の 課 題 ・
問 題 点 を 尋 ね た と こ ろ 、「 進 出 の き っ か け が な い 」 と す る 企 業 は 79 社 ( 回 答 企
業 割 合 75.2% )、「 進 出 し た い が 、具 体 的 に 何 か ら 始 め た ら よ い か が わ か ら な い 」
が 62 社( 同 59.0% )、
「 技 術 情 報 、市 場 情 報 等 が 入 手 し に く い 」が 47 社( 同 44.8% )
と 、 こ れ ら の 3 点 に 課 題 ・問 題 点 が 集 中 し て い る 。
-38-
課題②(先進事例調査結果より)
航空機関連産業に参入した中小企業が“需給の調整弁”とならず、安定した
受 注 量 を 確 保 し て い く た め に は 、長 期 的 取 引 に 対 応 し た 体 制 の 確 立 が 望 ま れ る 。
国内の機体メーカーおよび装備品メーカーは単一工程の外注ではなく、航空
機部品の材料調達から製造、納品、メンテナンスまでの一貫生産体制をサプラ
イヤーに期待している。これまでは各サプライヤーは機体・エンジンおよび装
備品メーカーの工程を補完する機能として、例えば機械加工、表面処理、組立
といった個々の工程を受注先の仕様に従って製作し納入してきたが、この生産
形態の非効率さが指摘されており、最近では部品製作の工程すべての一貫生産
体制への移行が求められている。
一貫生産により受注サイドの中小企業は、品質管理、工程管理、コスト管理
などのために、設備、要員、情報システム投資、必要な認証取得といった大き
な投資が必要となる。しかし、一貫生産を実現することによって、大手メーカ
ーとの継続的な取引、事業の拡大が期待できる。
図 表 Ⅴ .3
大手メーカーが期待する部品調達のイメージ図
<現状>
Tier1(機体・エンジン・装備品)
材料支給
A社
(加工)
B社
(処理)
C社
(組立)
<今後>
商社・材料
メーカー
Tier1(機体・エンジン・装備品)
受注
納入
企業グループ
材料調達
A社
(加工)
B社
(処理)
C社
(組立)
(2)課題への対応
課 題 ① の 航 空 機 産 業 の 情 報 不 足 に 対 応 し て い く た め に は 、「 航 空 機 関 連 分 野 に
関心があり、今後進出を検討したい」とする企業に対して、航空機関連の基礎
-39-
知識、業界構造等の的確な情報を提供し、自社が航空機関連産業に参入できる
かどうかを判断してもらう必要がある。情報提供の主体としては行政もしくは
産業振興機関が想定される。実際に行政もしくは産業振興機関が参入セミナー
等を主催して情報提供を行っているケースが全国で散見される。ただし、一方
的な情報提供よりも、意欲のある企業同士が交流し、情報交換を行った方が理
解を深められることが多い。そのためには、航空機関連産業への参入に意欲あ
る企業の連携によるグループを結成し、これを情報収集の機能とすることが有
効な手段であると考えられる。企業グループの活動が本格化すると情報収集か
ら一歩進めて、自らの存在をアピールし、国内重工メーカーなど大手メーカー
からの受注機会をうかがうことも可能となる。
課題②の一貫生産体制への対応であるが、1社がすべての工程能力を兼ね備
えていくのが望ましい方向と思われる。しかし、中小企業が単独で一貫生産体
制を確立するならば多大な投資負担と時間を要するので、経営資源の乏しい中
小企業にとって現実的な方策とはいえない。中小企業が大手メーカーの要望に
対応していくためには、単一の工程加工メーカーを脱して、特殊工程を含めた
部品生産の一貫体制を構築できるような企業の連携を模索していく必要がある。
つまり、中小企業においては足りない分野を補完し合う企業グループの形成、
協業化への取り組みが求められており、今後の航空機産業への参入形態となる
可能性が高い。この場合、強力なリーダーシップをとる取りまとめ役の企業の
存在が欠かせないと考えられる。
「 新 素 材 の 研 究 」「 人 材 育 成 」 に お い て も 、 中 小 企 業 単 独 で 取 り 組 ん で い け ば
資金、人材、技術のあらゆる面で困難を伴うことが多い。地域連携組織により
企 業 が ま と ま っ て 行 動 す る こ と が で き れ ば 、こ う し た 課 題 を 克 服 し や す く な り 、
さ ら に は 行 政 ・産 業 振 興 機 関 、お よ び 大 学 等 研 究 機 関 と の 幅 広 い 支 援 を 得 ら れ る
可能性が広がっていく。
以上のように、航空機関連分野への参入をめざす中小企業にとって、航空機
産業の情報収集となる機能として、あるいは将来に向けて部品生産に一貫体制
を構築する足掛かりとして、企業同士のネットワーク化は必要であり、その具
体化に向けて取り組む地域連携組織の存在意義は大きいと考えられる。アンケ
ート調査結果をみても、航空機関連事業への取り組みをめざすグループへの参
加意向に前向きな企業は回答企業の8割を超えていることから、何らかの形で
の参加ニーズが高いことがうかがえる。
(3)連携組織の有効性
地域連携組織の多くはセミナー形式で航空機に関する基礎知識、航空機関連
産業の業界構造などの勉強会を実施している。一方通行的な参入セミナーだけ
-40-
で な く 、会 員 同 士 に よ る 自 主 的 な 勉 強 会 等 を 実 施 し 、こ う し た 活 動 を 通 じ て「 進
出 の き っ か け が な い 」「 何 か ら 始 め た ら よ い か 分 か ら な い 」「 技 術 情 報 、 市 場 情
報が入手しにくい」といった情報不足の解消に努めている。自主的な活動を展
開する地域連携組織は、必要な情報を獲得する情報収集の場として有効に機能
している。
さらに一歩進めて、具体的な受注活動を展開している組織もみられる。中小
企業各社の発信力は小さくても、中小企業がまとまって取り組む連携組織とな
れ ば 発 信 力 が 単 独 に 比 べ て 格 段 に 高 ま る 。 そ う し た PR効 果 は 連 携 組 織 に と っ て
有効であったし、今後も有効であると推察される。
発注メーカーが求めている一貫生産への対応は、中小企業の場合、単独では
難しく、ネットワーク化して取り組むことが近道である。そのためには、航空
機部品に既に取り組んでいる中小部品メーカー、あるいは参入に意欲的な中小
部品メーカー等による企業グループの形成が求められる。その企業グループを
組成する可能性としては地域連携組織が発展的につながっていく方向性がある。
そうした点からみても、地域連携組織は今後の展開によっては有効な機能を内
在している。
し た が っ て 、 PR効 果 、 情 報 収 集 、 一 貫 生 産 へ の 対 応 可 能 性 な ど か ら み て 、 地
域連携組織による取り組みは有効であると考える。
3 . 取 組 主 体 ・エ リ ア の 検 討
(1)取組主体
地域連携組織の取組主体は参加している民間企業となることが望ましい。組
織の性格にもよるが、航空機関連産業への参入を目的とするならば、最終的に
はビジネスが絡むことになるので、参加企業によって組織を主体的に運営して
いく方が妥当である。しかし、取引開拓では中小企業主体による組織であると
信 用 力 に 欠 け る こ と も あ る の で 、補 完 す る 意 味 で 行 政 ・産 業 振 興 機 関 が 後 ろ 盾 に
なることも必要であろう。組織の立ち上げ時には、特定の企業よりも行政が参
加希望の企業を呼び掛けた方が円滑に進めることができるかもしれない。
取 組 主 体 は あ く ま で も 民 間 主 導 を 基 本 と し な が ら も 、行 政 ・産 業 振 興 機 関 の 支
援を得て事業を進めていくことが現実的である。
(2)取組エリア
地域連携組織の取組エリアは県単位をベースとした方がまとまりやすい。
中 国 地 域 に お い て は 、「 ウ イ ン グ ウ ィ ン 岡 山 」「 広 島 航 空 宇 宙 研 究 会 」 と い う
連携組織が県単位をベースに活動している。広島航空宇宙研究会は広島市産業
立地推進課が事務局を担当しているものの、参加企業は広島市内企業だけでな
-41-
く、広島市外の広島県内企業も多数参画している。
ただし、航空機関連分野に関心がある企業数が少ない県になると、県単位を
ベースとした連携組織を立ち上げることが難しく、立ち上げたとしても参入を
目指す中小企業が少数であるために活動が制約されることが懸念される。その
際は、行政、産業支援機関等が連携組織の活動を何らかの形で支援していくこ
とが求められる。その1つの方策としては、中国地域の他の連携組織あるいは
産業振興機関との連携体制を組むことが求められる。
また、中長期的に海外からの直接受注に取り組む、一貫生産体制に取り組む
など、県単位レベルでは対応が難しい場合は県域を越えて、例えば中国地域で
のネットワーク化を検討していく必要がある。
4.中国地域での必要な取り組み
中国地域での取り組みとしては企業の参入レベルに応じた展開が求められる。
大きく分けると、
参入に関心がある、参入を検討している中小企業の取り組み
既に参入している中小企業を対象とした取り組み
に二分される。さらに中国地域の特長を活かして、
中国地域の強みを活かしたネットワークづくり
が有用である。
<参入に関心がある、参入を検討している中小企業の取り組み>
(1)情報収集機会の拡大
航 空 機 関 連 分 野 に 関 心 が あ り 、 参 入 を 検 討 し て い る 中 小 企 業 の 多 く は 、「 進 出
の き っ か け が な い 」「 何 か ら 始 め た ら よ い か が わ か ら な い 」「 技 術 情 報 、 市 場 情
報が入手しにくい」といった課題を抱えている。課題解決を図るために、企業
自らが情報収集に動くことは必要であるが、経営資源の乏しい中小企業にとっ
て情報収集の機会は少ない。参入を検討している企業に情報収集の機会を広げ
ることが求められる。
航空機関連産業への参入に積極的な地域では、航空機の基礎知識、航空機産
業の業界構造、最新技術の動向、航空宇宙産業の品質保証制度などをテーマと
し た“ 参 入 セ ミ ナ ー ”が 行 政 、産 業 振 興 機 関 等 の 主 催 に よ っ て 開 催 さ れ て い る 。
(2)新たな連携組織の立ち上げ
参入に向けて具体的な行動を起こした中小企業は、1社単独では難しい受注
活動などに、意欲ある企業同士が連携することにより取り組んでいくことが重
要である。これを具現化した形が地域連携組織である。
-42-
中国地域では、ウイングウィン岡山、広島航空宇宙研究会が航空機関連の受
注 を め ざ し て 様 々 な 活 動 を 行 っ て い る 。連 携 組 織 が 存 在 し な い 山 口 県 、島 根 県 、
鳥取県においては、航空機関連産業への参入に意欲ある企業が連携する場合、
企業同士の連携を図りやすくするために、まずは中小企業がまとまりやすい県
域 で 連 携 組 織 の 立 ち 上 げ を 検 討 す る こ と が 必 要 と な ろ う 。 ま た 、 組 織 の 性 格 ・事
情によって、岡山県、広島県の企業でも既存連携組織に入会できない場合は新
たな連携組織、企業グループの形成も想定される。場合によっては、県域を越
えた連携組織の立ち上げの可能性も考えられる。
<既に参入している中小企業を対象とした取り組み>
(3)既存連携組織の機能強化
岡山県、広島県で既に参入している中小企業の多くはウイングウィン岡山、
広島航空宇宙研究会のメンバーとなっている。したがって、これまで取り組ん
で き た 勉 強 会 、PR・広 報 活 動 、さ ら に は 共 同 に よ る 受 注 活 動 な ど の 事 業 を 強 化 す
ることが直接、個々の参加企業の取り組みを強化することにつながっていく。
そのためには参加企業各社の連携組織への積極的な参画が求められている。
また、国内の航空機部品の供給は機械加工、表面処理、組立など工程ごとの
分業体制で行われているが、国内の大手メーカーはサプライヤーに一貫生産体
制の確立を求めている。これに対応して、地域連携組織は一貫生産に向けた取
り組みを進めるとともに、その体制の確立に向けて不足している工程(表面処
理など)を取り込むことが必要である。
(4)海外市場等の取引開拓
航空機関連分野に新規参入する企業が増えても国内市場だけでは規模が限ら
れていることから、海外市場を指向することが重要である。中部地域の中堅部
品メーカーには、海外の航空機メーカーから直接受注する企業があらわれてい
る。
中国地域においても航空機関連事業を主力とする(もしくは将来に向けて主力
事 業 と す る )中 小 企 業 は 、規 模 が 大 き な 海 外 市 場 を 取 り 込 む た め の 事 業 展 開 が 求
められる。現状において、海外市場をターゲットとする中小企業は数少ない。
海 外 市 場 を め ざ す た め に は 、ユ ニ ッ ト 部 品 の 一 貫 生 産 体 制 の 構 築 が カ ギ で あ り 、
県単位での地域連携組織の枠を一歩進めて、中国地域、さらには西日本という
広域でのコンソーシアムを組成し、有力企業の参加を促していく必要がある。
一 貫 生 産 体 制 の 構 築 と と も に 、 新 素 材 の 研 究 ・技 術 開 発 、 航 空 機 に 関 す る 人 材
育成が求められる。新素材の研究をみると、例えば、新機種の航空機にはアル
ミ 合 金 に 代 わ っ て 、CFRPや チ タ ン 合 金 な ど の 軽 量 素 材 が 使 わ れ て お り 、今 後 も
-43-
こうした素材の使用比率が高まるとみられる。これらは難削材といわれる素材
で、その加工に高度な技術が要求される。したがって、安定的な取引を確保す
る た め に は 10 年 後 、20 年 後 の 新 機 種 へ の 対 応 が 欠 か せ な い 。新 機 種 に 使 わ れ る
新 素 材 の 研 究 ・技 術 開 発 へ の 継 続 的 な 取 り 組 み が 必 要 で あ る 。
航 空 機 産 業 に は 材 料 、 構 造 、 電 気 ・電 子 な ど の 技 術 者 を は じ め 、 CAD/ CAM
技術者、部品加工を担う技能者など幅広い人材が必要とされる。中国地域にお
いて、それぞれの一般的な技術を磨く研修機関は各県に存在するが、航空機関
連分野に特化した人材育成の場は見当たらない。人材育成の場を確保すること
が求められる。
(5)中国地域内資源の有効活用
中国地域の航空機関連産業の発展を図るためには、基本的にはその担い手と
なる中小企業自らが既存連携組織の取り組み、あるいは新たな連携組織の立ち
上げに主体的に関わっていかなければならない。しかし、中小企業、連携組織
が事業に取り組んでいく場合、事業の投資負担と時間軸を考慮すると、外部の
資源を有効に活用することが望まれる。
中国地域においても、有効活用できる資源が数多く存在する。行政、産業振
興機関だけでなく、例えば、研究開発面では中国地域の大学、公設試験研究機
関、大手メーカーの生産拠点などとの協力を得ながら、事業に取り組んでいく
ことも可能である。そのためには、それぞれの主体が持っている資源を活かし
たネットワークづくりが求められる。
5.基本方向
航空機関連産業への参入は短期的には期待できないものの、中期的にみると
参入余地は十分あると考えられる。ただし、中小企業になると経営資源に制約
があることから単独での参入は困難が伴う。そこで、参入に意欲ある企業をメ
ンバーとする地域連携組織の取り組みが有効である。ある種のネットワーク体
で あ る 連 携 組 織 は 対 外 的 な PR効 果 、 情 報 収 集 の 機 能 を 有 し 、 一 貫 生 産 の 可 能 性
を検討する場にもなっていることから、航空機関連産業への参入機会を創出す
る場となっている。連携組織は基本的に、参加企業による主体的活動が期待さ
れ、取組エリアは県域をベースにしながら、必要に応じて中国地域で取り組む
ことが考えられる。
地域連携組織を核にして参入機会をうかがうことになるが、既に本格的に参
入している中小企業には次なるステップとして、海外市場等を視野に入れた事
業展開が想定される。その場合は海外展開をめざす企業によるコンソーシアム
の形成が有望である。その際は中国地域でのコンソーシアムが考えられる。
-44-
しかし、販路開拓、研究開発、人材育成などのあらゆる面で、中小企業およ
び連携組織だけでは活動の領域を広げていくことは難しい。独自のネットワー
クをもつ行政、産業振興機関等からの協力を得ることが不可欠である。また、
研 究 開 発 面 に お い て も 、中 国 地 域 の 大 学 、大 手 メ ー カ ー ( 素 材 系 を 含 む ) の 生 産
拠点、公設試験研究機関などとのネットワークを構築することも必要である。
以上のことを勘案して、中小企業の航空機関連産業への参入に向けた基本方
向 を 「ネ
ネ ッ ト ワ ー ク 化 に よ る 内 外 の 航 空 機 関 連 産 業 へ の 参 入 機 会 の 創 出 」と す る 。
図 表 Ⅴ .4
中国地域での航空機関連産業振興の基本方向
中国地域での参入可能性
・中期的には新規発注の可能性が高い
・設備,技術を有する中小企業あり
参入可能性あり
・参入意向のある中小企業が多数あり
・先発メーカー,地域連携組織,大手
メーカーの生産拠点あり
参入時の課題
・航空機関連情報が不足
・一貫生産体制への対応
ネットワーク化
により対応可能
既存連携組織の取り組みは
有効に機能している
・新素材の研究
・人材育成
取組主体・エリア
・民間企業が主体的に取り組む
(課題の解消)
・県域をベースに中国地域での取り組みも
〈基本方向〉
ネットワーク化による
内外の航空機関連産業への
参入機会の創出
必要な取り組み
○ 情報収集機会の拡大
○ 新たな連携組織の立ち上げ
○ 既存連携組織の機能強化
○ 海外市場等の取引開拓
・一貫生産体制づくり
・新素材への対応
・人材育成の仕組みづくり
○ 中国地域内資源の有効活用
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Ⅵ.中国地域の航空機関連産業の発展方策
1.基本方策
(1)基本方策
基本方向「ネットワーク化による内外の航空機関連産業への参入機会の創出」
を基にして、中国地域の航空機関連産業振興方策を考えると、次の5つの基本
方策が挙げられる。
航空機関連産業の発展に向けた基本方策
○ 情報収集機会の提供
○ 新たな連携組織づくり
○ 既存連携組織の機能強化
○ 中国地域内でのネットワークづくり
○ 中国地域コンソーシアムの結成
第1の基本方策は「情報収集機会の提供」である。航空機関連分野に関心の
ある中小企業は自社の参入可否を判断するための情報を収集する必要がある。
中 小 企 業 で は 自 ら の 情 報 収 集 力 に 限 界 が あ る こ と か ら 、行 政 ・産 業 振 興 機 関 等 は
自らのネットワーク、外部機関とのネットワーク等を駆使して、最新の航空機
関連情報を収集し、参入に関心のある企業に提供していくことが求められる。
第2は「新たな連携組織づくり」である。中小企業単独では困難とされる受
注 活 動 な ど が 、 連 携 組 織 に 参 加 し て い る 企 業 、 行 政 ・産 業 振 興 機 関 の ネ ッ ト ワ ー
ク等を駆使することによって可能となることがある。実際、ウイングウィン岡
山などの先行グループは、ネットワーク化により新規受注を獲得している。連
携組織が存在しない地域では、参入に意欲ある中小企業を主要メンバーとする
新 た な 連 携 組 織 を 立 ち 上 げ 、航 空 機 関 連 産 業 へ の 参 入 に 向 け た 活 動 に 取 り 組 む 。
第3は「既存連携組織の機能強化」である。既存連携組織では、さらなる受
注拡大のための仕組みづくりが求められる。そのためには、既存連携組織が参
加企業同士のネットワーク、外部機関とのネットワークをフルに発揮して、特
に 一 貫 生 産 体 制 づ く り 、 海 外 市 場 ・新 機 種 の 取 引 開 拓 に 向 け た 検 討 を 行 う 。
第4は「中国地域内でのネットワークづくり」である。中国地域の連携組織
同士によるネットワーク、および航空機関連分野の産学官によるネットワーク
の構築を図る。ネットワーク化に伴う連携強化を通じて、中国地域の航空機関
連産業の底上げを図る。
第5は「中国地域コンソーシアムの結成」である。中国地域で航空機関連産
業に既に参入している企業の中から、実力企業のみによってコンソーシアムを
結 成 す る 。 そ し て 、 参 加 企 業 に よ る 一 貫 生 産 ネ ッ ト ワ ー ク を 構 築 し 、“ 一 貫 生 産
-46-
可能な企業集団”を国内外にアピールして海外からの受注獲得活動を積極的に
展開していく。
(2)基本方策の展開
5つの基本方策を時間軸に沿って説明すると、まずは「情報収集機会の提供」
で あ る 。航 空 機 関 連 分 野 に 関 心 の あ る 中 小 企 業 に 有 用 情 報 を 行 政 ・産 業 振 興 機 関
等が提供する。
次に「新たな連携組織づくり」である。航空機関連分野の情報を得て、参入
に意欲をもった中小企業等は新たな連携組織を立ち上げ、独自に情報収集、受
注開拓に取り組む。
「既存連携組織の機能強化」では、既存連携組織はこれまでの取り組みに加
えて、一貫生産体制づくり、海外市場等の取引開拓を検討する。
そ し て 、「 中 国 地 域 内 で の ネ ッ ト ワ ー ク づ く り 」 で あ る が 、 中 国 地 域 の 航 空 機
関連産業の底上げを図るために、新たな連携組織、既存連携組織のほかに、中
国地域の産学官が一体となって活動していく仕組みをつくる。具体的事業とし
て は 、一 貫 生 産 プ ロ ジ ェ ク ト 、研 究 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト 、人 材 育 成 プ ロ ジ ェ ク ト 、
販路開拓プロジェクトを想定している。
最 終 的 に は 、「 中 国 地 域 コ ン ソ ー シ ア ム の 結 成 」 で あ る 。 一 貫 生 産 プ ロ ジ ェ ク
トの事業プロセスから発展的に結成されたコンソーシアムは、中国地域の実力
企 業 集 団 と し て 海 外 市 場 ・新 機 種 等 の 新 市 場 開 拓 を め ざ す 。
図 表 Ⅵ .1
情報収集機会の
提供
関心ある企業
に働きかけ
基本方策展開のフロー図
時間軸
県・産業振興機関等
「コーディネータ」による働きかけ
参入意欲ある企業による
新たな連携組織
づくり
・鳥取県
・島根県
・岡山県
・広島県
・山口県
各県内の企業
既存連携組織
の機能強化
・岡山県
・広島県
・山口県
中国地域内での
ネットワークづくり
各種プロジェクトの
推進
○ 一貫生産
○ 研究開発
○ 人材育成
○ 販路開拓
中国地域
コンソーシアム
有力企業による
一貫生産チーム
深化度
県・国 (分担と連携により強力に支援)
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の結成
2.具体的方策
5つの基本方策を基に、それぞれの具体的方策、取り組みを検討すると、図
表 Ⅵ .2 の 体 系 図 の よ う に な る 。
図 表 Ⅵ .2
発展方策の体系図
(1)情報収集機会の提供
具体的方策
a.セミナー・勉強会等の開催
(2)新たな連携組織づくり
a.情報収集活動
基本方策
b.受注開拓活動
(3)既存連携組織の機能強化
a.これまでの活動の充実
b.一貫生産体制づくり
c.海外市場開拓
d.新機種受注の取り組み
(4)中国地域内でのネットワー
クづくり
a.連携組織の連帯による取り組み
b.産学官一丸となった取り組み
①コーディネータの設置
②一貫生産プロジェクトの推進
③研究開発プロジェクトの推進
④人材育成プロジェクトの推進
⑤販路開拓プロジェクトの推進
主な取り組み
<提供する情報の一例>
・航空機産業の動向
・品質認証システムの概要と認証取得
・その他
○連携組織によるセミナー、勉強会等の開
催
○テーマ毎の分科会活動
○航空機関連工場の見学
○共同での受注開拓
○国内の航空宇宙展への出展
○情報発信ツールの作成
○情報収集活動の強化
○国内での受注開拓活動の強化
○参入企業の経営体力の強化
○一貫生産体制の実現化検討
○必要とされる工程への参加呼びかけ
○海外の航空宇宙展への出展
○海外航空機産業の市場調査
○参加企業の「JISQ9100」「Nadcap」の認
証取得推進
○新機種受注に向けた情報収集
○新機種に対応した研究開発
○連携組織による情報交換会の開催
○勉強会等への相互参加
○共催によるセミナー開催
○一貫生産に向けた研究開発
○一貫生産人材の育成研修
○複合材の研究開発
○共同利用設備の設置
○一貫生産人材の育成研修(再掲)
○「CATIA V5」「NX6」の研修
○5軸加工機・3次元測定機等の研修
○国内での展示商談会の主催
○国内の航空宇宙展への出展
○海外の航空宇宙展への出展
○海外へのミッション派遣
(5)中国地域コンソーシアムの a.中国地域コンソーシアムの結成
b.コンソーシアムによる一貫生産体制づくり
結成
c.海外市場開拓
d.新機種獲得に向けた取り組み
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○貿易振興機関等との連携
○海外の航空宇宙展への出展
○海外へのミッション派遣
○新機種受注に向けた情報収集
○新機種に対応した研究開発
(1)情報収集機会の提供
<目的>
航空機産業特有の品質管理や設備等が存在し、未参入の中小企業にとって航
空機産業はまったく未知の分野であり、情報に乏しい場合が多い。そこで、航
空機関連分野に関心のある中小企業に情報収集の機会を提供する。情報収集の
場を充実させることは、中小企業にとって参入の可否を判断しやすくなるメリ
ットがある。
a.セミナー、勉強会等の開催
中国地域の各県の行政、産業振興機関等が実施主体となり、航空機関連分野
に関心のある中小企業に対して、入門編的なセミナー、勉強会等を通じて航空
機産業に関する情報収集機会を継続的に提供する。参加希望の中小企業が少な
いことが想定される場合は、中国地域の複数県合同によるセミナー開催が考え
られる。
<提供すべき情報の一例>
航空機産業の動向、品質認証システムの概要と認証取得、航空機の部品生産
に関する情報、必要とされる設備に関する情報、難削材加工に関する情報、3
次 元 CADに 関 す る 情 報 、 航 空 機 関 連 産 業 に 参 入 し た 中 小 企 業 の 事 例 紹 介 な ど
(2)新たな連携組織づくり
<目的>
ウイングウィン岡山、広島航空宇宙研究会といった地域連携組織が存在しな
い 山 口 県 、島 根 県 、鳥 取 県 に お い て も 、航 空 機 関 連 分 野 に 関 心 の あ る ( も し く は
参入を検討している)中小企業が存在する。参入に意欲のある数社が結集して、
新たな連携組織もしくは企業グループを立ち上げ、グループ力を結集して航空
機 関 連 産 業 へ の 参 入 に 必 要 な 情 報 を 収 集 す る と と も に 、国 内 の 機 体 ・エ ン ジ ン メ
ーカー、および装備品メーカーに対して共同で受注開拓に取り組む。
連携組織の立ち上げ当初は運営を各県の行政、産業振興機関等が主導するこ
とも考えられるが、最終的には参加企業が自主的に運営を行っていくことが望
まれる。また、連携組織に参加する企業のエリアは基本的には県域とするが、
県域だけでは参加企業が少ない場合は隣県の中小企業にも参加を呼び掛けて連
携組織を立ち上げる。
a.情報収集活動
新たな連携組織は航空機関連分野への参入に向けた取り組みとして、第1に
自らが情報収集を行う。
<主な取り組み>
-49-
○ 連 携 組 織 に よ る セ ミ ナ ー ・勉 強 会 等 の 開 催
地域連携組織が主体となって、参加企業を対象にしたセミナー、勉強会等を
定期的に開催し、航空機関連分野に参入するために必要な情報を収集するため
の場を提供する。情報のテーマ、講師の選定等については、参加企業の要望を
重視しなければならないが、行政もしくは産業振興機関等からのアドバイスを
求めることも必要である。
○テーマ毎の分科会活動
参加企業が具体的な参入方法を検討するためには、航空機市場に対して取組
分野を明確化した「分科会」を立ち上げ、そのメンバーが自主的に集まり、勉
強会を開催する。
○航空機関連工場の見学
航 空 機 関 連 工 場 の 見 学 の 対 象 と な る の は 機 体 ・エ ン ジ ン メ ー カ ー お よ び 装 備
品メーカーの工場、航空会社の整備工場、大手部品メーカーなどである。工場
見学は情報収集活動と同時に、参加者にとって見学受け入れ側と接触できる機
会であり、自らをアピールする場になる。
b.受注開拓活動
新たな連携組織は情報収集活動と同時に、受注開拓に取り組んでいく。
<主な取り組み>
○共同での受注開拓
31 ペ ー ジ の 「 産 業 構 造 か ら み た 参 入 ポ ジ シ ョ ン 」 で は 、 参 入 ポ ジ シ ョ ン は 機
体 ・エ ン ジ ン 、 装 備 品 の 国 内 大 手 メ ー カ ー で あ る と し た 。 し か し 、 大 手 メ ー カ ー
への売り込みを図るためには、中小企業1社のみでは商談の席に着くことが難
し い 。 地 域 連 携 組 織 ・企 業 グ ル ー プ と し て 、 意 欲 あ る 企 業 が ま と ま っ て 共 同 で 受
注開拓を行うことが有効である。
○国内の航空宇宙展への出展
日本国内においても、毎年のように航空宇宙関連産業の展示会が開催されて
い る 。 航 空 宇 宙 展 へ の 共 同 出 展 は 出 展 ノ ウ ハ ウ に 乏 し い 中 小 企 業 に と っ て PR効
果が大きく、また行政、産業振興機関等の支援を得られやすい方法である。
○情報発信ツールの作成
受注活動に有効な情報発信ツールとなるガイドブック、ホームページを作成
する。
(3)既存連携組織の機能強化
<目的>
既に国内大手メーカー等との受注実績をもつウイングウィン岡山、本格的な
活動を開始した広島航空宇宙研究会は、これまでに取り組んできた活動を継続
-50-
し、事業を充実させていく。
と り わ け 、Tier1 等 大 手 メ ー カ ー と の 取 引 拡 大 を 求 め て 、参 加 企 業 に よ る 一 貫
生産を視野に入れた活動を行う。一貫生産に応えることは取引拡大につながる
可能性がある。また、可能性という意味では需要が見込める海外市場を指向す
ることも選択肢の1つである。中小企業単独では取り組みにくい海外市場開拓
を地域連携組織として取り組む。しかし、一貫生産体制の実現、海外市場開拓
は 一 朝 一 夕 で は 成 果 が 出 な い こ と が 予 想 さ れ る の で 、継 続 的 ・長 期 的 な 取 り 組 み
が望まれる。こうした取り組みに対して、各県の行政、産業振興財団、公設試
験研究機関等は積極的に支援する。
a.これまでの活動の充実
地域連携組織は共同での情報収集、受注開拓を中心とした活動に取り組んで
お り 、よ り 大 き な 成 果 を 得 る た め に も 、現 在 の 活 動 に 今 後 も 継 続 的 に 取 り 組 む 。
<主な取り組み>
○情報収集活動の強化
○国内での受注開拓活動の強化
○参入企業の経営体力の強化
航空機産業は中長期的にみて市場拡大が期待されているものの、短期的には
恒常的に需要変動を繰り返している。航空機部品の参入企業は需要変動の影響
を受けやすく、受注量の振幅が大きくなる傾向にある。参入企業は外部環境の
悪化に伴う受注減に対応するために、企業の基盤となる経営体力を強化する。
b.一貫生産体制づくり
既存連携組織は、参加企業による一貫生産体制の実現に向けた検討、一貫生
産に必要とされる工程に参加する企業への呼び掛けを行っていく。
<主な取り組み>
○一貫生産体制の実現化検討
地域連携組織の参加企業による一貫生産を行うため、一貫生産を希望する企
業メンバーを中心に、生産品目、設備、要員、品質保証体制、およびトレーサ
ビリティに対応した情報システムなどの問題点を洗い出し、一貫生産体制の実
現 化 に 向 け た フ ィ ー ジ ビ リ テ ィ ・ス タ デ ィ 等 を 行 う 。企 業 メ ン バ ー だ け で は 検 討
が 進 ま な い 場 合 は 、航 空 機 メ ー カ ー OBな ど 専 門 家 に 協 力 を 求 め 、指 導 を 受 け る 。
○必要とされる工程への参加呼びかけ
一貫生産を行うためには、機械加工、表面処理、組立といった個々の工程を
担当することができる企業が揃わなければならない。地域連携組織は一貫生産
体 制 に 必 要 と さ れ る 工 程 を 担 当 で き る 企 業 の 参 加 、も し く は 連 携 を 呼 び 掛 け る 。
-51-
c.海外市場開拓
既存連携組織は海外航空機市場に向けた取引開拓に取り組む。
<主な取り組み>
○海外の航空宇宙展への出展
国際航空宇宙展はイギリスのファンボロー航空ショー、フランスのパリ国際
航空宇宙ショーが有名である。こうした展示会に連携組織が実施主体となって
参加し、欧米の航空機メーカーと直接接触を図ることによって海外市場開拓の
可能性を探ることができる。
○海外航空機産業の市場調査
海外には、欧米を中心として航空機産業の集積地が存在する。そうした集積
地にある航空機関連産業との連携の可能性を探るために、地域連携組織が実施
主体となって現地市場調査を実施する。
○ 参 加 企 業 の 「 JISQ9100」「 Nadcap」 の 認 証 取 得 促 進
海外の航空機メーカー等に参入する場合、認証取得は必須条件であるといわ
れ て い る 。ま た 、JISQ9100 を 認 証 取 得 す れ ば 、IAQG( 国 際 航 空 宇 宙 品 質 グ ル ー
プ )が 構 築 し た 世 界 共 通 デ ー タ ベ ー ス( IAQG-OASIS)に 登 録 さ れ 、海 外 の 航
空機メーカー等との取引が容易になる。したがって、海外市場開拓においては
参加企業の認証取得の促進が不可欠となる。
d.新機種受注の取り組み
新機種(もしくは派生型機)の開発時期に長期継続的な新規取引の可能性が
期 待 さ れ る 。し か し 、新 機 種 の 開 発 は 10 年 、20 年 と 長 期 に わ た る の で 、長 期 的
な視点に立った活動が求められる。主に、次のような取り組みが考えられる。
<主な取り組み>
○新機種受注に向けた情報収集
地 域 連 携 組 織 は 、航 空 機 メ ー カ ー 、業 界 団 体 、JAXA、行 政 等 あ ら ゆ る 関 係 機
関との接点を保ち、情報収集に取り組む。
○新機種に対応した研究開発
地域連携組織は、新機種に対応した新技術に備えて研究開発に取り組む。た
だし、新技術開発は中小企業だけでは難しいので、公設試験研究機関、大学な
どの協力を得て進めていく。
(4)中国地域内でのネットワークづくり
a.連携組織の連帯による取り組み
<目的>
中 国 地 域 の 連 携 組 織 ・企 業 グ ル ー プ が 連 帯 で き る 関 係 を 構 築 し 、場 合 に よ っ て
-52-
は歩調を合わせた事業に取り組んでいく。情報交流の場があれば、他の連携組
織の取り組みと比較することによって自らの状況を確認することができ、相互
研鑚を積むことができる。連帯事業の際には、連携組織間の橋渡し役として、
行 政 ・産 業 振 興 機 関 等 の 協 力 が 求 め ら れ る 。
<主な取り組み>
○連携組織による情報交換会の開催
中 国 地 域 の 各 連 携 組 織 ・企 業 グ ル ー プ に よ る 情 報 交 換 会 を 定 期 的 に 開 催 し 、そ
れぞれの連携組織の活動内容、課題、成果などの情報交換を行う。
○勉強会等への相互参加
連 携 組 織 は 参 加 企 業 を 対 象 に し た セ ミ ナ ー 、勉 強 会 等 を 各 自 開 催 し て い る が 、
そのセミナー、勉強会等の開催予定等を相互に開示し、他組織メンバーの聴講
を受け入れる。
○共催によるセミナー開催
中国地域の連携組織共催によるセミナーを開催する。大手メーカーの生産拠
点、行政、産業振興機関などの担当者、大学の研究者に呼び掛けて、セミナー
開催を中国地域における航空機関連の産学官交流の場とする。
b.産学官一丸となった取り組み
<目的>
航 空 機 関 連 産 業 へ の 参 入 に 向 け た 取 り 組 み は 、 10 年 、 20 年 と い う 長 期 と な る
場 合 が あ り 、 受 注 開 拓 ・技 術 開 発 ・資 金 な ど で 越 え な け れ ば な ら な い ハ ー ド ル も
多い。中国地域の課題を克服するためには、航空機関連の中小企業による連携
組 織 だ け で な く 、 中 国 地 域 の 行 政 ・産 業 振 興 機 関 等 、 大 学 ・公 設 試 験 研 究 機 関 な
どの研究機関、大手メーカーの生産拠点など、航空機関連の各セクターが一丸
となったネットワークをつくる。
中小企業が航空機メーカーからの単発的受注ではなく、長期的な取引、特に
海外市場を狙うためには、航空機部品の一貫生産が求められている。これには
産学官が積極的に関与した「一貫生産プロジェクト」事業として取り組む。ま
た、一貫生産だけではなく、新素材加工等の研究開発、人材育成、販路開拓に
ついても、産学官のプロジェクト事業として取り組む。
航空機関連プロジェクト事業を推進するためには、事務局的な役割をもつセ
ンター機能が求められる。中国地域においては、当面は岡山県、広島県、山口
県をはじめとする各県が主体となって県内企業間の連携強化や受注活動の支援
等に取り組む。県域を越えて複数県が連携するプロジェクト事業については中
国経済産業局が支援する形で展開する。将来的には、中国地域の産学官が各セ
クターの機能を発揮できる連携体を構築し、その連携体によるプロジェクト事
-53-
業の推進も視野に入れておく必要がある。
①コーディネータの設置
中国地域の行政等は、中国地域内のネットワークづくりを各セクターに呼び
掛け、プロジェクト事業推進を働き掛ける“コーディネータ”を産業振興機関
内 に 置 き 、 助 言 ・指 導 で き る 体 制 を 整 備 す る 。 コ ー デ ィ ネ ー タ は 航 空 機 産 業 に 精
通している適任者を任命する。
②一貫生産プロジェクトの推進
一 貫 生 産 の 実 現 化 、生 産 性 向 上 を 支 援 す る た め に 、事 業 化 ベ ー ス に 向 け た「 一
貫生産プロジェクト」を推進する。
<主な取り組み>
○一貫生産に向けた研究開発
一貫生産の実現をめざしている連携組織、航空機関連企業が実施主体となっ
て、航空機部品の一貫生産に求められる技術的課題をクリアするための研究開
発を行う。素材調達、担当工程、品質保証、トレーサビリティに関するシステ
ム 開 発 な ど 様 々 な 課 題 が 想 定 さ れ る の で 、行 政 ・産 業 振 興 機 関 等 が 橋 渡 し 役 と な
り、大学、公設試験研究機関、大手メーカーの生産拠点等の協力を得ながら課
題解決に取り組んでいく。
○一貫生産人材の育成研修
航空機部品の一貫生産を推進するためには、素材の調達から完成部品の納入
までの工程設計を行い、品質保証、原価、工程などの多面にわたって管理でき
る 人 材 が 求 め ら れ て い る 。中 国 地 域 の 産 業 振 興 機 関 、大 学 、公 設 試 験 研 究 機 関 、
大手メーカー等が一体となって短期集中型講座をつくり、中国地域の航空機関
連企業に受講を呼び掛ける。
③研究開発プロジェクトの推進
航空機部品、特に新機種の部品の生産技術を確立していくためには、地域連
携組織、個別の中小企業だけでは対応できない可能性がある。技術的課題を克
服するためには、新たに設置されるコーディネータや地域連携組織等が中国地
域の大学、公設試験研究機関などの“学官”や航空機関連企業に働き掛け、有
効な研究開発テーマを設定し、研究開発のための資金を確保する必要がある。
公 的 資 金 の 助 成 獲 得 や 、 参 加 企 業 の 負 担 金 捻 出 な ど に よ り 、“ 学 官 ” の 協 力 を 得
ながら研究開発プロジェクトとして取り組んでいく。
<主な取り組み>
○複合材の研究開発
航 空 機 部 品 向 け CFRP、 チ タ ン 合 金 な ど 複 合 材 の 研 究 、 あ る い は そ の 加 工 に 関
-54-
す る 技 術 開 発 、 工 具 ・切 削 油 等 の 開 発 な ど を テ ー マ に 、 地 域 連 携 組 織 、 個 別 の 中
小 企 業 等 が 中 国 地 域 の 大 学 、公 設 試 験 研 究 機 関 と の 共 同 研 究 に 取 り 組 ん で い く 。
○共同利用設備の設置
地 域 連 携 組 織 、 個 別 の 中 小 企 業 等 の ニ ー ズ を 踏 ま え て 、 行 政 ・産 業 振 興 機 関 等
が研究開発用の共同設備を中国地域の大学、公設試験研究機関等に設置して、
利用を促していく。
④人材育成プロジェクトの推進
中国地域の航空機関連企業の人材育成ニーズを汲み上げ、そのニーズに応じ
た育成システムを、中国地域を挙げた「人材育成プロジェクト」として推進す
る。中国地域には現状、航空機関連分野の専門人材を育成する場がない。育成
の場を中国地域で提供することにより中小企業の人材育成をサポートしていく。
中国地域の産業振興機関等が実施主体となり、大学、公設試験研究機関、大手
メーカー等の協力を得ながら取り組んでいく。
<主な取り組み>
○一貫生産人材の育成研修(再掲)
○ 「 CATIA V5 」「 NX6 」 の 研 修
中国地域の産業振興機関等が実施主体となり、航空機産業の業界標準的な3
次 元 CADソ フ ト 「 CATIA V5 」 お よ び 「 NX6 」 の 操 作 を 習 得 で き る 研 修 講 座
を 開 設 す る 。 対 象 は 航 空 機 関 連 企 業 の 技 能 者 ・技 術 者 、 航 空 機 業 界 を め ざ す 人 材
で 、 中 国 地 域 の 大 学 も し く は 産 業 振 興 機 関 等 に 設 備 機 材 を 設 置 し 、「 CATIA V
5 」「 NX6 」 の 研 修 を 開 催 す る 。
○ 5 軸 加 工 機 ・3 次 元 測 定 機 等 の 研 修
中 国 地 域 の 産 業 振 興 機 関 等 が 実 施 主 体 と な り 、5 軸 加 工 機 ・3 次 元 測 定 機 等 の
研修講座を開催する。
⑤販路開拓プロジェクトの推進
航空機関連産業への参入に向けた取引開拓の実施主体は地域連携組織、後述
の 中 国 地 域 コ ン ソ ー シ ア ム 、 お よ び 個 別 の 航 空 機 関 連 企 業 と な る が 、 行 政 ・産 業
振興機関等は積極的に支援する「販路開拓プロジェクト」を推進する。公的機
関が支援することにより、実施主体は資金助成だけでなく信用補完を得ること
ができる。特に、海外での販路開拓は言語、商習慣等の違いもあって、中小企
業 に と っ て ハ ー ド ル が 高 い の で 、行 政 ・ジ ェ ト ロ 等 産 業 支 援 機 関 等 の 支 援 が 欠 か
せない。
<主な取り組み>
○国内での展示商談会の主催
中 国 地 域 の 行 政 ・産 業 振 興 機 関 等 が 商 談 会 を 主 催 し 、 地 域 連 携 組 織 、 個 別 の 航
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空機関連企業に参加を促す。
○国内の航空宇宙展への出展
国内の航空宇宙展への出展を希望する地域連携組織、航空機関連企業に対し
て 、 行 政 ・産 業 振 興 機 関 等 は 出 展 希 望 者 に 航 空 宇 宙 展 の 情 報 提 供 、 あ る い は 出 展
費用等の助成といった形で、国内航空宇宙展の出展を支援する。
○海外の航空宇宙展への出展
海外での航空宇宙展への出展を希望する連携組織、後述の中国地域コンソー
シ ア ム 、 個 別 企 業 に 対 し て 、 行 政 ・ジ ェ ト ロ 等 産 業 振 興 機 関 は 航 空 宇 宙 展 の 情 報
提 供 、 も し く は 出 展 ・渡 航 ・通 訳 等 に か か る 費 用 を 助 成 と い っ た 形 で 、 海 外 航 空
宇 宙 展 へ の 出 展 を 支 援 す る 。ま た 、他 地 域 と の 連 携 に よ る 共 同 出 展 を 支 援 す る 。
○海外へのミッション派遣
行 政 ・ジ ェ ト ロ 等 産 業 振 興 機 関 等 が 、 海 外 の 航 空 機 メ ー カ ー 、 お よ び 現 地 サ プ
ライヤーとの直接取引をめざして、ミッションを組成し現地に派遣する。国内
大手メーカーは現地企業の情報提供等で協力を行う。また、行政が他地域に呼
び掛けて、他地域と合同でミッションを組成する。
(5)中国地域コンソーシアムの結成
<目的>
航空機分野での受注実績を積み上げている中小企業が結集し、航空機関連分
野の受注、特に海外の航空機関連メーカーからの受注開拓を図る。海外メーカ
ーとの取引を行うためには、単工程の受託加工ではなく部品での納入が求めら
れ、航空機部品の一貫生産が前提となっている。したがって、中国地域の意欲
あ る 中 小 企 業 を 中 核 メ ン バ ー と し て 、一 貫 生 産 を 対 応 可 能 と す る 共 同 受 注 体「 中
国地域コンソーシアム」を結成し、海外市場での本格的な受注獲得に動く。
a.中国地域コンソーシアムの結成
中国地域の航空機分野で継続的取引のある有力中小企業が発起人となって、
一貫生産の各工程を担当できる企業への参加を呼び掛けていく。その際は各プ
ロジェクト事業推進のコーディネータからも参加を促していく。コンソーシア
ム を 立 ち 上 げ る 前 ま で に 、 そ の 基 本 理 念 ・活 動 方 針 、 一 貫 生 産 を 行 う 対 象 分 野 な
どを明確にする必要がある。中国地域コンソーシアムの参加資格として、例え
ば JISQ9100 を 既 に 取 得 し て い る な ど 、 具 体 的 に 明 示 す る 。
中国地域コンソーシアムの主体となるのはあくまで参加企業であるが、参加
呼 び 掛 け 、結 成 時 に お い て は 情 報 提 供 、参 加 企 業 の 紹 介 等 で 行 政 ・産 業 振 興 機 関 、
地域連携組織等に協力を求めていく。また、参加企業は中国地域の有力企業が
想 定 さ れ る が 、 中 国 地 域 外 、 特 に 西 日 本 の 意 欲 あ る 企 業 か ら の 参 加 ・提 携 の 要 望
が あ れ ば 、 対 応 可 能 な 分 野 、 技 術 ・設 備 等 を 勘 案 し な が ら 応 じ て い く 。
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b.コンソーシアムによる一貫生産体制づくり
中国地域コンソーシアムは海外市場での受注獲得を主眼に置いていることか
ら、対象分野の一貫生産を前提としている。したがって、取り組みは一貫生産
体 制 の フ ィ ー ジ ビ リ テ ィ ・ス タ デ ィ の 実 施 だ け で な く 、具 体 的 に 担 当 分 野 の 割 り
当て、対外的な品質保証の確立、活動費の捻出方法、および受注、金銭決済等
のコンソーシアム内取引ルールの確立などを取り決める。
c.海外市場開拓
中国地域コンソーシアムの主たる目的は、海外の航空機関連メーカーとの直
接 取 引 の 開 拓 で あ る の で 、さ ま ざ ま な 方 法 で 海 外 市 場 開 拓 に 積 極 的 に 取 り 組 む 。
<主な取り組み>
○貿易振興機関等との連携
中 国 地 域 コ ン ソ ー シ ア ム は ジ ェ ト ロ に 協 力 を 求 め 、継 続 的 ・長 期 的 な 連 携 づ く
りに取り組む。また、海外航空機メーカーとの直接取引を行っている国内大手
メーカーから海外情報を入手できる関係を構築することも必要である。
○海外の航空宇宙展への出展
中国地域コンソーシアムが実施主体となって、イギリスのファンボロー航空
シ ョ ー 、フ ラ ン ス の パ リ 国 際 航 空 宇 宙 シ ョ ー な ど の 展 示 会 ・見 本 市 に 積 極 的 に 参
加する。
○海外へのミッション派遣
海外の航空機メーカー、および現地サプライヤーとの直接取引をめざして、
中国地域コンソーシアムはミッションを組成し、現地に派遣する。
d.新機種獲得に向けた取り組み
<主な取り組み>
○新機種受注に向けた情報収集
中 国 地 域 コ ン ソ ー シ ア ム は 、航 空 機 メ ー カ ー 、業 界 団 体 、JAXA、行 政 等 あ ら
ゆる関係機関との接点を保ち、情報収集に取り組む。そして、機会ある毎に一
貫生産に対応できる“中国地域コンソーシアム”の売り込みを図っていく。
○新機種に対応した研究開発
中国地域コンソーシアムは、新機種に対応した新技術に備えて研究開発に取
り組む。ただし、新技術開発は参加する中小企業だけでは対応できないことも
想定されるので、公設試験研究機関、大学などの協力を得て進めていく。
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Ⅶ.発展方策の推進に向けて
1.取組主体
参 入 に 意 欲 あ る 中 小 企 業 が 航 空 機 関 連 分 野 で 長 期 的 ・継 続 的 な ビ ジ ネ ス を 獲
得するには、取り組みを始めてから相当の時間がかかると思われるが、第Ⅵ章
で み た と お り 、必 要 と さ れ る 方 策 に 中 国 地 域 を 挙 げ て 積 極 的 に 取 り 組 ん で い く 。
取 組 主 体 別 に み る と 、 民 間 企 業 が 主 体 と な っ て 取 り 組 む 方 策 と 、 行 政 ・産 業 振 興
機関等の公的機関が主体となって取り組む方策がある。それぞれの主体が他の
セクターと連携しながら取り組んでいくことによって効果的なものとなる。
5つの基本方策の取組主体を確認すると、以下のように区分される。
民間企業が主体で
・新たな連携組織づくり
・既存連携組織の機能強化
・中国地域コンソーシアムの結成
公的機関が主体で
・情報収集機会の提供
・中国地域内でのネットワークづくり
地域連携組織は自主的な勉強会という性格もあるが、究極的には取引獲得を
目的とした組織をめざすので、参加する民間企業による主体的運営が行われる
べ き で あ る 。 そ の 意 味 で 、「 新 た な 連 携 組 織 づ く り 」「 既 存 連 携 組 織 の 機 能 強 化 」
の取組主体は民間企業となる。ただし、連携組織への参加企業の呼び掛けなど
立 ち 上 げ 時 、 情 報 収 集 ・取 引 開 拓 な ど 活 動 の 初 期 段 階 に お い て は 、 各 県 の 行 政 ・
産業振興機関等による積極的な関わりが期待される。その後、参加企業が事業
実施の経験を積み、運営ノウハウを蓄積していくにつれて、取組主体を参加企
業中心に徐々に移行していくことが望まれる。
中国地域コンソーシアムは一貫生産対応によって海外市場等の取引獲得を目
的とした組織であるから、その取組主体は連携組織と同様に基本的には参加企
業である。結成当初は公的機関の関与が求められるが、徐々に取り組みを参加
企業中心に移行していく。
「 情 報 収 集 機 会 の 提 供 」 を 行 う 主 体 は 、 各 県 の 行 政 ・産 業 振 興 機 関 等 で あ る 。
特に、地域連携組織が存在しない地域においては、参入に意欲ある企業を見出
し、新たな連携組織づくりにつなげていく役割を果たす。
「 中 国 地 域 内 で の ネ ッ ト ワ ー ク づ く り 」、 特 に 産 学 官 一 丸 と な っ た 取 り 組 み は
中国地域の産学官の各セクターに参画を働き掛ける必要があるので、そのセン
タ ー 機 能 を 中 国 地 域 の 行 政 ・産 業 振 興 機 関 等 に 置 き 、ネ ッ ト ワ ー ク づ く り の 取 組
主体として活動することが期待される。
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2.専門機関、先進地域との連携
中国地域の航空機関連産業の発展のためには、中国地域内資源を有効に活用
しながら地域を挙げて方策に取り組む必要はあるが、中国地域内だけでなく他
地域の高次機能を活用することによって、より充実した取り組みとなる可能性
が あ る 。例 え ば 、研 究 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト の 推 進 に あ た っ て は 、JAXAと の 連 携 が
期待されるところである。
ま た 、航 空 機 関 連 産 業 の 集 積 地 ・中 部 地 域 の 事 業 に 相 乗 り さ せ て も ら う こ と も
中国地域の参入意向企業にとって有効である。可能となれば、先進地域が取り
組んでいる人材育成、販路開拓などの仕組みを活用できるメリットがある。
人材育成でみると、中部地域では航空機関連の産学官を挙げて、製造現場の
職長クラスの人材、航空機設計に関わる専門人材を養成する研修カリキュラム
を作成、育成研修を定期的に開催している。中国地域の人材を育成するために
中部地域の育成研修に参加させる方法も1つである。可能ならば産業振興機関
等が中部地域の人材育成機関に協力を要請して講師を迎え、同じ研修カリキュ
ラムの講座を開催する。受講者は近くでの開催となり、費用、時間の節約につ
ながる。
海 外 の 航 空 宇 宙 展 へ の 出 展 で は 、中 国 地 域 の 出 展 希 望 者 ( 地 域 連 携 組 織 、中 国
地 域 コ ン ソ ー シ ア ム 等 ) は 他 地 域 の 出 展 希 望 者 と 共 同 で 出 展 で き れ ば 、海 外 か ら
は“日本”の航空機部品サプライヤーとしてアピールできるメリットがある。
3.新たな地域産業への成長を期待
中国地域の航空機関連産業の集積状況をみると、中部地域に比べて脆弱であ
ることは否めない。航空機関連産業の発展、裾野拡大を図るには中小企業の参
入行動が欠かせないが、中国地域では比較的最近になって参入を果たした先行
グループもあり、中小企業の航空機分野への参入可能性は十分にある。
しかし、参入にあたっては設備投資、品質管理体制の整備、人材育成、さら
に JISQ9100 な ど の 認 証 取 得 が 前 提 と さ れ 、 そ の 背 景 に あ る “ 信 頼 性 ” を ベ ー ス
にした航空機特有のものづくり文化を理解する必要があるなど、参入へのハー
ドルは高い現実がある。これを乗り越えて本格的参入を果たすために、意欲あ
る 中 小 企 業 が 主 体 的 に 参 入 行 動 を 起 こ す 場 で あ る 「 地 域 連 携 組 織 」「 中 国 地 域 コ
ン ソ ー シ ア ム 」、ま た 中 国 地 域 を 挙 げ た 産 学 官 一 丸 と な っ た 取 り 組 み な ど を 提 起
した。こうした取り組みを足掛かりとしていくことで、中国地域の航空機関連
産業が次世代産業に成長していくことが期待される。
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中国地域における航空機関連産業の
振興方策調査報告書
発行
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