ハーバー法の方程式

第 1 回 2月センター試験本番レベル模試[化学Ⅰ]講評
化 学 Ⅰ
理論分野を早期に固めよう
Ⅰ.全体講評
Ⅱ.設問別分析
2013 年度のセンター試験は昨年度と比べて出題
2013 年度のセンター試験化学Ⅰは、大問 4 題の
形式に大きな変化はなく、出題分野も例年通りで、
構成であった。第 1 回 2 月センター試験本番レベル
第 1 問に物質の構成、第 2 問に物質の変化、第 3
模試もその方針に従って出題した。各大問の出題分
問に無機物質、第 4 問に有機化合物が出題された。
野は例年固定されている。今回、第 1 問の得点率
ただし、マーク数は 5 つ増え、計算問題も増加し
は 57.7%、第 2 問の得点率は 44.3%、第 3 問の得点
た。全体的に昨年度よりやや難化し、平均点は 63.7
率は 39.5%、第 4 問の得点率は 35.4% であった。
点であった。なお、第 3 問の複数選択式の設問や、
例年通りではあるが、まだ第 3、4 問の無機物質・
第 4 問の有機化学分野でグラフを選択させる設問
有機化合物は学習が進んでいない。焦る必要はない
など、目新しい出題もあった。また、過去に出題さ
ので、以下の傾向と対策を踏まえ、しっかりと復習
れた問題と同様の問題が多く出題された。今回の第
に取り組んでほしい。
1 回 2 月センター試験本番レベル模試の平均点は
44.2 点であった。まだ全範囲の学習を終えていない
受験者も多かったことと思われる。この差はこれか
ら試験当日までに十分に埋められるものなので安心
して今後の学習に取り組んでほしい。
第1問
第4問
受 20
験
者
数
の 15
割
合
(%)10
100
57.7
44.3
39.5
35.4
第 1 問 物質の構成
物質の構成と構成粒子について、正確な知識
をつけておこう
5
第 1 問では、物質の構成などに関する小問集合、
満点
90
∼
80
∼
得点率(%)
70
∼
60
∼
50
∼
40
∼
30
∼
20
∼
10
∼
0∼
0
大問別得点率(%)
40
60
80
第3問
平均 44.2%
25
20
第2問
得点分布 化学Ⅰ
30
0
物質量に関する計算問題、身のまわりの物質に関す
る問題が出題される。小問集合では、化合物の性
質、化学結合、電子配置などが出題され、身のまわ
りの物質に関する問題では、種々の無機物質や、有
機化合物についての性質や反応性についての知識が
問われる。今回は、価電子、イオン結合、酸化物、
モル濃度、元素、身のまわりの物質などについて出
題した。
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第 1 回 2月センター試験本番レベル模試[化学Ⅰ]講評
マーク番号
1
2
3
4
5
6
正 答
③
⑤
④
④
③
②
正答率
53.3% 55.5% 74.4% 76.3% 47.7% 54.5%
マーク番号
7
正 答
④
正答率
44.8%
第 2 問 物質の変化
熱化学方程式の計算を確実にしよう
第 2 問では、熱化学方程式、酸と塩基の反応、
酸化還元反応、電池と電気分解などの理論化学分野
が出題される。化学反応式やグラフを用いて物質を
定量的に扱う問題が頻出である。今回は、熱化学方
程式、塩、酸、還元剤、電池などついて出題した。
マーク番号
問 6 7 各選択肢の選択率
⑤
①
6.5% 9.9%
④
(正答)
44.8%
正 答
正答率
②
9.5%
③
28.9%
※注)無回答・マークミスは割愛したため、
選択率の合計は 100% にならないことがある。
以下同様。
8
9
10
11
12
13
④
①
③
③
③
②
61.1% 27.6% 40.9% 55.2% 47.5% 41.4%
マーク番号
14
正 答
④
正答率
39.0%
問 2 9 各選択肢の選択率
④
17.4%
問 1a は、価電子の数が最も多いものを選ぶ問
題。希ガス元素は価電子の数を 0 とすることに注
意が必要である。問 1b は、イオン結合をもつ化
合物を選ぶ問題。金属元素と非金属元素はイオン
結合、非金属元素同士は共有結合で結びついてい
①
(正答)
27.6%
③
23.6%
②
30.8%
ることが多いことを確認しておこう。問 2 は、
希ガス元素の特徴に関する正誤問題。2012、2011
問 1 は、グルコースの発酵に関する計算問題。
年のセンター試験でも、図やグラフを読み取る問
熱化学方程式を用いて反応熱を求める問題は、
題が出題されている。教科書に記載のある図やグ
2010~2013 年のセンター試験で出題されている
ラフはしっかりと確認しておこう。問 3 は、酸
頻出の項目である。エネルギー図を用いた計算
化物の組成から、原子量を決定する問題。2013、
や、熱化学方程式を組み合わせて計算する方法な
2012 年のセンター試験でも同様の出題がある。
ど、さまざまな状況に対応できるように演習を積
あわせて確認しておいてほしい。問 4 は、モル
んでおこう。問 2 は、熱化学方程式に関する正
濃度に関する計算問題。濃度計算はセンター試験
誤問題。2013 年のセンター試験でも反応熱につ
で頻出の内容である。計算する際は、取り扱う量
いて問われている。今回、正答率が 27.6% と第 2
の単位を必ず書きながら行い、ミスを無くすよう
問の中で最も低かった。誤答の ② ~ ④ の選択率も
にしよう。問 5 は、元素に関する正誤問題であ
25% 前後で、熱化学に関する理解の低さが表れ
る。非常に基礎的な内容ではあるが、物質の構成
ている。生成熱や燃焼熱、物質の状態変化と熱の
について正しい理解が求められる。教科書の徹底
出入りについて、正しい理解が必要である。問 3
理解を心がけよう。問 6 は、身のまわりの物質
は、塩の水溶液の液性に関する問題。正塩、酸性
に関する問題。センター試験では毎年出題されて
塩、塩基性塩について、塩の構成と水溶液の液性
いる。身のまわりの事柄、出来事、物質、材料な
を正しく理解しておこう。問 4 は、酸と金属の
ど、様々な視点から問われる。幅広い分野からの
反応に関する問題。グラフを読み取る問題は、セ
出題であるので、普段から生活と化学の関係に興
ンター試験で頻出である。なお、センター試験も
味をもって学習を進めよう。
本設問も計算内容は平易なものである。焦らずに
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第 1 回 2月センター試験本番レベル模試[化学Ⅰ]講評
対応しよう。問 5 は、酸化還元に関する問題。
素、窒素とリンというようにまとめて記載されて
センター試験では同様の問題が 3 年連続で出題さ
いる。個々の知識を独立して覚えるのではなく、
れている。酸化数の変化を調べることが基本であ
複数項目を関連付けて覚えていくようにしよう。
る。問 6a は、ダニエル電池に関する問題。セン
問 2 は、窒素とリンに関する正誤問題。リンは
ター試験では毎年必ず電池または電気分解の問題
同素体に関する問題で出題されることもある頻出
が出題されている。教科書に記載のある全ての電
の元素である。問 3 は、炭素とケイ素に関する
池について、両極での反応を書けるようにしてお
正誤問題。フラーレンはセンター試験で取り上げ
こう。また、単なる暗記ではなく、電池の原理に
られることが多いので、しっかりと確認しておこ
ついて理解しておこう。問 6b は、ダニエル電池
う。問 4 は、製鉄に関する計算問題。工業的製
の放電に関する計算問題。同様の内容が、グラフ
法については毎年センター試験で出題されてい
選択形式で出題されることもあるが、本質は変わ
る。アンモニアソーダ法、ハーバー・ボッシュ法
らない。両極での反応を正しく理解することが大
などについても、あわせて確認しておこう。問 5
切である。
は、金属イオンの沈殿に関する問題。センター試
験では 2007 年以降、毎年必ず金属イオンの沈殿
第 3 問 無機物質
について出題されている。沈殿する組合せや沈殿
金属イオンの沈殿についてまとめていこう
の色など、覚える事柄は多岐にわたる。資料集で
第 3 問では、無機物質全般について出題される。
沈殿の写真を見る、音読する、一覧にしてまとめ
無機物質の分野は範囲が広いため、受験生にとって
るなど、さまざまな情報を関連付けて、記憶する
は「どこをどう覚えればよいのかわからない」とい
工程を繰り返し、定着を図ってほしい。問 6 は、
う印象の強い分野であろう。しかし、出題の中心と
ナトリウムとカルシウムに関する正誤問題。アル
なっているのは、金属の性質、気体の製法および性
カリ金属、アルカリ土類金属それぞれの特徴を正
質であり、これらはほぼ毎年出題されている。今回
しく覚えておこう。問 7 は、アンモニアソーダ
は、これらの分野から総合的に出題した。
法に関する問題。本問のような計算問題、反応経
マーク番号
15
16
17
18
19
20
正 答
③
①
③
③
⑤
②
正答率
マーク番号
30.7% 29.6% 37.6% 54.8% 30.0% 53.0%
21
正 答
②
正答率
36.4%
路を図で示してある問題など、様々な出題形式が
考えられる。アンモニアソーダ法の各工程におい
てどのような反応が起こっているのか理解し、自
分で化学反応式が書けるようにしておこう。
第 4 問 有機化合物
有機化合物の合成実験を確実にしよう
第 4 問では、有機化合物に関して出題される。
問 5 19 各選択肢の選択率
⑥
16.4%
⑤
(正答)
30.0%
①
10.2%
センター試験の化学Ⅰでは、脂肪族化合物と芳香族
化合物や有機化合物の合成実験が頻出であるが、合
成高分子化合物、油脂、セッケンについても出題さ
②
13.5%
③
14.0%
④
14.7%
問 1 は、ハロゲンに関する正誤問題。センター
試験の第 3 問では、無機物質から各論的に出題
される。教科書でも、ハロゲン元素と希ガス元
れることがあるので、これらの知識も整理しておこ
う。今回は、アルコール、ケトン、芳香族化合物、
元素分析を中心に幅広く出題した。
マーク番号
22
23
24
25
26
27
正 答
④
⑤
⑥
⑤
③
⑤
正答率
マーク番号
61.9% 47.3% 29.5% 20.2% 33.0% 29.8%
28
正 答
⑥
正答率
32.1%
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第 1 回 2月センター試験本番レベル模試[化学Ⅰ]講評
問 4 25 各選択肢の選択率
⑤
(正答)
20.2%
Ⅲ.学習アドバイス
◆センター試験の特徴を知っておこう
①
15.3%
センター試験の化学 I は、基本的な知識があれば
②
15.1%
④
22.6%
③
24.2%
解ける問題で構成されている。
「物質の構造」の分
野から 1 題、
「熱化学」
、
「酸と塩基」
、
「酸化還元・
電池・電気分解」の分野から 1 題、無機物質から 1
題、有機化合物から 1 題という出題形式は毎年ほぼ
同じで、物質の性質や反応に関する記述の正誤判定
問題と計算問題が比較的多く出題される。ただし、
問 1 は、炭化水素に関する正誤問題。一般式
知識を問うだけの単純な問題は少なく、出題の仕方
CnH2n で示される化合物には、鎖状不飽和炭化水
が工夫されているので、すべてが容易に解けるわけ
素と環状飽和炭化水素の 2 種類があることがポイ
ではない。2013 年度に出題された、有機化合物の
ントである。問 2 は、アルコールに関する正誤
沸点のグラフを選ぶ問題のような新傾向の問題が出
問題。エタノールの脱水反応は、反応温度によっ
題されることがある一方、過去問の類似問題が出題
て生成する物質に違いがある。実験問題として取
されることもある。まずは、全範囲の学習を終える
り扱われることもあるので、教科書巻末などの課
ことが先決だが、その後の学習では過去問を解くこ
題研究までしっかりと学習しておこう。問 3 は、
とでセンター試験の形式に慣れていくことが必要と
ケトン、アルデヒド、アルコールに関する問題。
なる。
金属ナトリウムとの反応やヨードホルム反応は、
有機化合物の構造決定で重要である。ヨードホル
◆理論化学を早期に固めよう
ム反応を示す部分構造について、しっかりと学習
センター試験では 60 分間で約 30 問を解く必要が
しておこう。問 4 は、有機化合物の反応に関す
あり、迅速な判断力と計算力が要求される。セン
る問題。今回、正答率は 20% と極めて低かった。
ター試験直前期は、無機・有機化学の復習に多くの
どの反応も代表的なものであるので、確実に理解
時間を要するため、計算問題などは早期の対応が必
しておいてほしい。問 5 は、有機化合物の分離
要となる。
に関する問題。このような問題の場合、各操作で
どのような反応が起こり、分離されているのか、
◆計算は単位に注意
簡単でよいのでフローチャートにまとめると取り
センター試験の化学Ⅰでは、各大問に 1 問程度の
組みやすい。解説にも記載してあるので、あわせ
割合で計算問題が出題される。密度や物質量を取り
て確認しておこう。問 6 は、サリチル酸に関す
扱った問題は、ほぼ毎年出題されている。単なる数
る問題。化合物の名称ではなく、構造式で書かれ
値の取り扱いではなく、単位の取り扱いを含め、何
ていても、同様に対応できるようにしておきた
のためにこの計算をするのかまで考えて取り組んで
い。問 7 は、炭化水素の構造決定の問題。構造
おきたい。また、試験会場で単純なミスを無くすた
決定を行うときは、与えられた条件をしっかりと
めに、計算をする際は取り扱う量の単位を必ず書く
考えて解いていこう。センター試験第 4 問の最
ようにしてほしい。なお、熱化学、中和、酸化還
後の設問は計算問題であることが多い。最後に時
元、電池、電気分解など物質の変化の分野について
間が無くなることがないように、試験が開始した
解法のポイントをおさえ、十分な演習を積んでおこ
ら問題全体を確認し、時間配分に気をつけるよう
う。
にしよう。
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