世 界 史 B

センタープレ入試・4月[世界史B]
講評
世 界 史 B
0
大問別得点率(%)
20
40
60
80
32.6
第1問
Ⅰ.全体講評
第2問
今回のセンタープレ入試世界史B・4月の平均点
は36.9点で,前回2月のセンタープレからは0.1点の
100
41.3
第3問
35.7
伸びに留まった。新学年がスタートしていよいよこ
第4問
れからが本格的な受験準備の段階である。学習計画
38.1
に従って一つ一つ確実に知識を身につけていくこと
が大切で,まだ学習が十分に及んでいない時代や分
野で得点が低くても気にする必要はない。要は着実
前述のように各大問間で得点率にそれほど極端な
に学習計画をこなして,来年の本番試験の段階で高
差はないが,各大問内での分野の違いによる数値に
得点が実現できるように,地道な努力を重ねていく
は大きなばらつきがみられるという点が今回の試験
ことである。正答率の内訳を見ると,各大問間でそ
の特徴である。第1問の得点率は32.6%で,大問の
れほど極端な差はないが,各大問内での分野の違い
中では最も低くなっているが,その一つの理由が問
による数値の開きが目立っている。具体的には中国
1∼3の中国史関係の正答率が20%台から30%台の
史関係が低い傾向にある。
前半に留まっていることである。これと符合するよ
うに第3問の問7∼9の明関連の正答率も低く,各
得点分布 世界史B
40%
大問のA∼Cの各問題文単位の正答率の中で,これ
35%
ら2つの中国史関連の正答率が最も低かった。以下,
30%
解答傾向に特色が現れた小問について,学習アドバ
受
験 25%
者
数 20%
の
割 15%
合
イスをまじえて述べていくことにする。
第1問 陶磁器の歴史
アジア,ヨーロッパにおける陶磁器の歴史がテー
10%
マであるが,前述のように4つの大問の中では最も
5%
得点率が低く,30%台前半に留まった。中でも問1
0%
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 満
% % % % % % % % % % 点
∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼
∼3の中国史関係の平均正答率は30%に届かなかっ
た。これに対し,中央アジアやムスリム商人などに
ついての問4∼6とヨーロッパ史の問7∼9は30%
得点率
台後半の正答率で,中国史中心の設問とその他の地
域・分野の設問で差が開いた。中国史関連では経済
Ⅱ.設問別分析
史に一つの弱点があるようだ。
センタープレ入試・4月の大問別の得点率は以下
のようになっている。
・設問別分析
マーク番号
1
2
3
4
5
6
正 答
②
④
①
②
③
②
正答率
マーク番号
正 答
正答率
─1─
20.9% 31.0% 26.8% 34.3% 35.7% 40.8%
7
8
9
①
①
③
26.1% 28.1% 56.1%
センタープレ入試・4月[世界史B]
問1 1
講評
正解②,正答率,20.9%
島をセットで覚えておく必要があるという教訓を
魏晋南北朝時代に関する設問で,第1問の9つ
しっかり認識しておきたい。
の小問中最も正答率が低く20.9%に留まった。選
択肢③の北魏の孝文帝についての文を正しいもの
第2問 大河川の歴史
として選択した人が最も多く30%台前半の数値で
ナイル川,ドナウ川,長江という歴史的にも重要
あった。均田制や三長制に引きずられて選択して
な大河川をテーマとする問題で,得点率は40%を超
しまったのであろうが,華北を統一したのは孝文
え,4つの大問中最も高かった。とくにドナウ川に
帝ではなく太武帝である。この選択肢③を答えた
関連する問4∼6の平均正答率は50%台後半だった
人は,孝文帝についての知識はある程度身につい
が,ナイル川関連の問1∼3,長江関連の問7∼9
ていると思われるので,惜しい誤りといえるだろ
はいずれも30%台で大きく差が開いた。その理由と
う。
しては,ドナウ川関連の設問がウィーン会議やロー
マ時代の建造物の写真選択,また十字軍についてカ
問6 6
正解②,正答率,40.8%
ルタゴの理解があれば正解できるというように,い
広州,揚州,杭州についての設問で,これらは
中国史ながら40%台に乗る正答率であった。問1
ずれも比較的正解を導きやすいという事情があった
と考えられる。
∼3の中国史関係の設問の正答率の低さとは対照
的であるが,この問6は政治史の基本的知識があ
・設問別分析
れば正解できるものであることがその理由であろ
マーク番号
う。また,節度使を市舶司と混同して選択肢①を
正 答
選んでしまった人が4人に1人の割合でいた。節
正答率
度使は唐の衰退とも関わる基本的に重要な政治的
マーク番号
16
17
18
事項である。誤って選択してしまった人はよく確
正 答
①
③
②
認しておいてもらいたい。
正答率
問7 7
正解①,正答率,26.1%
③
26.5%
11
12
13
14
15
④
④
③
④
①
③
23.9% 45.3% 34.3% 48.1% 77.4% 51.2%
32.9% 31.3% 38.8%
問1 10
正解④,正答率,23.9%
第2問 問1 各選択肢の選択率
第1問 問7 各選択肢の選択率
④
23.7%
10
④
(正答)
23.9%
①
(正答)
26.1%
③
18.2%
②
22.7%
①
29.9%
②
26.8%
オランダの通商についての設問で,ヨーロッパ
関係の問7∼9の中では最も正答率が低く,30%
マフディーの反乱についての設問で,正答率は
に届かなかった。各選択肢の選択率はほぼ25%前
20%台前半に留まり,第2問の小問中最も正答率
後に分かれたが,このことはオランダの通商につ
が低かった。近現代史分野の設問でまだ学習が十
いての理解があまり定着していないことを逆に示
分に及んでいないことが影響していると思われ
しているように思われる。選択肢④はアンボイナ
る。ウラービー(オラービー)(選択肢①)やク
事件の内容についてのもので,きわめて重要な事
ライヴ(選択肢②)をスーダンに関わる人物とみ
柄であるので,これを誤りとした人はこの機会に
なす基本的ミス,とくにクライヴは19世紀中頃か
ぜひこの事件について確実に身につけることをお
ら後半にかけてインドで活動した人物で時代も場
勧めする。選択肢①からは,バタヴィアとジャワ
所も違うが,選択肢①または②を答えた人が半分
─2─
センタープレ入試・4月[世界史B]
講評
を超えたことは残念である。しかし,近現代史分
・設問別分析
野にも学習が及べば,容易に改善できるミスであ
マーク番号
正 答
ることも事実である。
正答率
問5 14
正解①,正答率,77.4%
19
20
21
22
23
24
④
①
①
③
②
④
34.3% 49.6% 48.2% 34.9% 50.6% 28.5%
マーク番号
25
26
27
ローマ帝国の建造物の写真選択問題で,正解の
正 答
④
③
②
選択肢①はフランスのガール水道橋であり,教科
正答率
23.2% 34.6% 19.3%
書や図説には必ずといってよいほど掲載されてい
る写真なので,これを答えるのは非常に容易であ
問2 20
正解①,正答率,49.6%
ったはずである。正答率は今回の世界史の全小問
イランにおける伝統的な君主の称号のシャーを
中最高の70%台後半に達した。選択肢③はアケメ
答えさせる設問で,用語選択問題で迷うところも
ネス朝ペルシアのペルセポリス遺跡であるが,こ
ないので,第3問の小問の中では2番目に正答率
れを選択した人が約10%いた。ローマ市の中心地
が高く,約50%だった。しかし,選択肢②のツァ
域であったフォロ=ロマーノの遺跡と混同したも
ーリを答えた人も30%いた。ツァーリはロシアの
のであろうか。いずれにせよ,正解できなかった
君主の称号であり,これは基本事項である。その
人は基本的に重要な写真であるだけに,よく確認
語源はカエサルで,ビザンツ帝国の伝統を引き継
をしておかなければならない。
ぐ意味でモスクワ大公国のイヴァン3世が用い始
めたものである。ツァーリの理解はビザンツ帝国
問8 17
正解③,正答率,31.3%
とロシアの関係とも密接にからむもので,この機
江南地方について誤っている文を選択する設問
会によく把握しておきたい。
で,正答率は30%台前半であり,長江に関わる問
7∼9の中では最も正答率が低かった。正解の選
択肢③の『楚辞』は屈原ら戦国時代の詩人の作品
問4 22
正解③,正答率,34.9%
ムガル帝国の建国に関わる正しい文を選択する
などを集めたものであることはわかっていても,
問題で,建国者がバーブルであることを知ってい
それが編集された時代についての知識が定着して
るだけで正解できる設問であるが,それにもかか
いないことが原因ではないかと思われる。『楚辞』
わらず正答率が40%に達しなかったのは残念であ
が編集された時代は意外と盲点なのかもしれな
る。これは,設問に関わる下線部をムガル帝国の
い。問7が現代史分野の南京についての設問であ
成立に関わるものとはとらえず,ムガル帝国全般
るにもかかわらず,この問8よりも正答率が若干
に関わるものと解釈してしまったためかもしれな
上回ったことは注目に値する。
い。しかしそれにしても選択肢②のティムールや
④のアイバクをムガル帝国の人物ととらえた人が
第3問 16世紀のアジア
合わせて約半分いたのは基本事項が全くわかって
オスマン帝国,サファヴィー朝,ムガル帝国,明
いない証拠である。現時点ではまだ学習がカバー
をテーマとした問題で,いずれも重要な国家であり
できていないことを考えればやむをえないことで
頻出の分野である。オスマン帝国,サファヴィー朝
はあろうが,基本中の基本のミスであることはよ
に関わる問1∼3の平均正答率は40%台半ば,ムガ
く自覚しておいてほしい。
ル帝国に関わる問4∼6は30%台後半であったのに
対し,明に関わる問7∼9は20%台半ばに留まり,
大きく差が開いた。問7と問9とくに後者の難易度
が比較的高かったことがその理由と考えられる。
─3─
センタープレ入試・4月[世界史B]
問9 27
講評
正解②,正答率,19.3%
・設問別分析
マーク番号
正 答
第3問 問9 各選択肢の選択率
正答率
④
10.1%
①
40.9%
③
28.9%
29
30
31
32
33
③
④
②
②
②
①
51.7% 49.0% 51.8% 34.3% 38.9% 34.6%
マーク番号
34
35
36
正 答
②
①
④
正答率
39.1% 15.6% 32.0%
問1 28
②
(正答)
19.3%
28
正解③,正答率,51.7%
アテネ関連の問1∼3はいずれも約50%の正答
率で,相互にあまり差がない結果となった。問1
はアテネの社会情勢についての設問であった。選
イエズス会士について正しい文を選択する設問
択肢①と④を選んだ人は少なく,とくに④はダル
で,第3問の小問の中では最も正答率が低く10%
マについての記述なので,これを答えた人は
台に留まった。正解の②のヴァリニャーニ(また
5.0%のみであった。正解の次に選択率が高かっ
はヴァリニャーノ)は世界史としては細かい事項
たのは②の文で33.9%に達したが,元老院,独裁
で,難易度が高かったことが大きく影響したもの
官は当然ローマに該当する内容である。徹底した
と思われる。最も選択率の高かったのは①のフラ
民主政が実現したアテネと,元老院や名門が大き
ンシスコ=ザビエルについての文で,約40%の人
な影響力を持っていたローマ共和政との違いを明
がこれを選んだが,このことは,彼が日本に来て
確に把握しておきたい。
キリスト教を布教したことはわかっていても,そ
れ以前の彼の活動についてまではよく把握してい
問5 32
正解②,正答率,38.9%
ない人が多いことを示している。彼は新大陸には
渡っていない。次に選択率の高かったのが③の文
で,約30%の人がこれを答えたが,カスティリオ
ーネと円明園との組合せは正しいが,南京郊外と
第4問 問5 各選択肢の選択率
④
13.6%
①
15.5%
いうところが誤りで,北京郊外が正しい。これも
やや細かい事柄である。
③
31.0%
第4問 欧米の民主政治
古代ギリシアのアテネの民主政,イギリスの議会
②
(正答)
38.9%
政治の発展,アメリカ独立革命やフランス革命を事
例として欧米の民主政治を扱った問題で,第4問全
イギリスの議会制度についての文a・bの正誤
体の得点率は38.1%であった。アテネ関連の問1∼
の正しい組合せを選ぶ問題で,約40%の正答率が
3の平均正答率は50%台に乗ったのに対し,イギリ
得られたが,これはイギリスの議会関連の問4∼
スの議会関連の問4∼6は30%台後半,アメリカ独
6の中では最も高い数値であった。aのエドワー
立革命・フランス革命などの問7∼9は20%台後半
ド1世による模範議会の記述を正しいと判定でき
で,時代が下るに従って正答率が低下する傾向がは
た人は合わせて50%台半ばに達した(選択肢①と
っきりと出る形になった。
②の数値の合計)。また,bの14世紀半ばをテュ
ーダー朝時代とする内容の誤りを正しく見抜いた
人も50%台の数値(選択肢②と④の数値の合計)
があったが,a・bともに正確に正誤判定できた
人は全体の約40%に留まったということである。
言い換えると,a・bともに正しく判定できなか
─4─
センタープレ入試・4月[世界史B]
講評
った人(選択肢③を選んだ人)は約30%であった。
学習することも同様にきわめて重要である。「セン
どちらか一方の判定を誤った選択肢である①と④
タープレ入試・6月」に向けて,「できる問題」が
を選んだ人の合計も約30%という結果だった。い
少しでも増えているように,大いに努力を傾けてい
ずれにせよ,重要なテーマなので,これからの学
ってほしい。
習計画の中でしっかりと整理しておかなければな
らない。
問8 35
正解①,正答率,15.6%
フランス革命時の各議会とその時期に該当する
出来事の正しい組合せを選ぶ問題であるが,正答
率は10%台で今回の世界史の全小問中の最低の数
値となった。フランス革命の学習までまだ手が届
かないことやよく整理して勉強していないと正解
できない設問なので,この結果は現時点としては
やむをえないが,設問自体は標準的レベルのもの
で,とくに難問というべきものではない。
Ⅲ.学習アドバイス
世界史等の選択科目は英数国に比べるとどうして
も本腰を入れて準備に入るのが遅くなる傾向がある
かもしれないが,早くから準備をしておくに越した
ことはない。今回の結果については未だ平均点が40
点に届かず満足すべきものではないが,2月の段階
からみればわずかに前進していること,また4月と
いう時点を考えればとくに心配する必要もない。
「小幅でもよいから着実な得点アップを目指しても
らいたい」と前回の講評に記したことがかなってい
るとは言い難いところが少々残念であるが。今回の
試験で学習済みでしかも正解できなかったところは
よくチェックして復習すること,まだ学習が及んで
いない分野はできていなくても仕方ないが,今回の
試験を無駄にしないためにも,今回の設問と同じ内
容についてはよく答えられるようにしておくことが
非常に重要であり,効果的である。
◎「センタープレ入試・6月」に向けて
新学年が始まり,いよいよこれからが本当の勝負
の時である。前回の講評にも書いたように着実に基
礎力を養成することが大切であり,教科書を中心に
地図や図版,資料集を活用した立体的な学習に努め
てもらいたい。学校での通史の授業を着実にこなす
ことはもちろん,東進での通史の受講も,計画的に
目標を決めて終わらせよう。また根気強く反復して
─5─