沖縄県座間味村:きれいな海の島のごみと水道問題

月刊『地方財務』2016 年 6 月号掲載
財政再建への道のりーどん底からどのように抜け出したのか
第 13 回 沖縄県座間味村:きれいな海の島のごみと水道問題
キヤノングローバル戦略研究所主任研究員 柏木恵
はじめに
第 13 回は沖縄県座間味村を取り上げる。沖縄県座間味村にはケラマブルーと言われる、
きれいな海があり、国内外からダイバーが押し寄せる。最近ではホエールウォッチングも
人気である。
このようにきれいな海が自慢の座間味村は、実質公債費比率が平成 20 年度決算において
27.4%と早期健全化基準である 25%を上回り財政健全化団体となり、平成 21 年度から平成
24 年度の 4 年間の財政健全化計画を策定した。また同時に、簡易水道事業特別会計の資金
不足比率も経営健全化基準の 20%を大きく上回る 57.2%となり、平成 21 年度から平成 23
年度の 3 年間の経営健全化計画を策定した。
実質公債費比率と簡易水道事業特別会計の資金不足比率が基準以上になった主な要因は、
3 つの有人島(座間味島、阿嘉島および慶良間島)と空港所在地の外地島から成り立っている
ため、それぞれに社会基盤整備(上下水道やごみ処理)を行う必要があり、多額の地方債
発行が財政に影響したことである。特に大型の公共事業が平成 11 年度から平成 15 年度の
間に集中したために借金が膨れ上がり、それが三位一体改革による地方交付税の削減と一
致した。簡易水道事業特別会計については、これらの要因に加えて、9 年連続渇水状態が続
いたことによる渇水対策経費の増加の影響も大きい。
地理的要因と観光産業が中心という産業構造から、水道施設や下水道事業、ごみ処理施
設、道路等の社会基盤整備は必要不可欠であるということは理解できる。しかし、最も財
政に影響を与えたのは、
平成 14 年度から平成 15 年度にかけて整備した、総事業費 8 億 8500
万円、起債額 4 億 100 円の溶融炉整備事業である。4 年ほど稼働した後に故障が生じ、修
理ができず再稼働を断念し、現在では、沖縄本島にごみ焼却を委託している。この溶融炉
整備事業をはじめ、集中した公共事業のために発行した地方債が財政に大きな影響を与え
た。
座間味村は平成 16 年度からの集中改革プランから財政再建を開始しており、財政健全化
団体に陥ったが、財政健全化計画の終了 1 年前の平成 23 年度に財政健全化団体から脱却し
た。本稿では、座間味村の財政悪化の要因と財政再建策について概観する。
1.座間味村の財政の変遷
平成 11 年度から平成 20 年度の座間味村の財政状況(歳入、地方債残高、積立金残高)
の推移は図 1 のとおりである。歳入が最も大きいのは、平成 14 年度の 27 億 1500 万円で
1
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あり、最も小さいのは、13 億 7400 万円である。歳入の内訳をみると、2.4%~6%と自主
財源がとても小さい。残りは地方交付税や国庫支出金、県支出金、地方債の依存財源であ
る。歳入と地方債残高を比べると、平成 16 年度を境に地方債残高が歳入を上回っている。
地方交付税は平成 12 年度の 9 億 4400 万円をピークに平成 17 年度には 7 億 3900 万円まで
減少した。積立金残高をみても年々減少し、平成 19 年度には 3800 万円にまで減少した。
表 1 は平成 9 年度から平成 26 年度の座間味村の財政の変遷を示している。図 2 は地方債
発行額の推移である。平成に入るまでは、ほとんど地方債を発行していなかったが、平成
に入って徐々に増え始め、平成 9 年度には、阿嘉ゴミ焼却炉建設と阿嘉中学校改築で 4 億
6470 万円の地方債が発行された。平成 10 年度には座間味コミュニティセンター建設の地
方債が発行された。ピークの平成 14 年度には、溶融炉「座間味クリーンセンター」建設と
慶留間小中学校改築、漁港待合所や農村村広場などの整備が行われ、6 億 8630 万円の地方
債が発行された。
図 1 座間味村の財政状況の推移(平成 11 年度~平成 20 年度)
出所:座間味村資料。
2.溶融炉整備の変遷
座間味村の実質公債費比率悪化の最大要因であった溶融炉について概観する。
(1)概要
座間味村は、平成 13 年ごろから、国によるダイオキシン規制の強化に対処するために、
2
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表 1 座間味村の財政の変遷(平成 9 年~平成 26 年)
年月
平成9年1月
平成10年3月
平成10年4月
内容
前厚生省「ごみ処理に係るダイオキシン類の削減対策について」を都道府県に通知
阿嘉中学校改築
阿嘉ごみ焼却炉稼働
慶留間団地建設
平成11年3月
阿嘉中学校屋内運動場整備
平成11年11月 座間味コミュニティセンター開業
平成12年6月 「循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)」成立
平成12年
環境省「廃棄物処理施設整備費国庫補助金」(平成16年度まで)
阿嘉船舶離着場開業
平成13年3月
公営企業(船舶事業)に2億円の繰出
慶留間小中学校改築
平成15年3月
平成15年9月
平成16年4月
漁排公園整備(阿嘉島)
溶融炉「座間味クリーンセンター」完成
体験滞在施設(阿佐大浜)開業
環境省「循環型社会形成推進交付金」交付開始
集中改革プラン「座間味村行財政改革推進計画(平成17年度から平成21年度)」の
策定
平成19年3月 座間味村財政調査特別委員会による裏通帳の調査報告
平成19年10月 溶融炉、故障で稼働停止
平成20年2月 議会で村長不信任決議がなされる→否決
平成20年4月 沖縄県那覇市・南風原市のごみ処理場での委託焼却開始
平成21年1月 簡易水道事業・下水道事業の料金見直し
平成21年4月 財政健全化団体へ
平成21年6月 現村長誕生
会計検査院が環境省に是正改善措置を求めた。「溶融固化施設の運営及び維持管
平成26年9月
理並びに溶融スラグの利用について」
平成17年4月
図 2 地方債発行額の推移(昭和 54 年度~平成 21 年度)
800,000
(千円)
700,000
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
昭和54
昭和55
昭和56
昭和57
昭和58
昭和59
昭和60
昭和61
昭和62
昭和63
平成元
平成2
平成3
平成4
平成5
平成6
平成7
平成8
平成9
平成10
平成11
平成12
平成13
平成14
平成15
平成16
平成17
平成18
平成19
平成20
平成21
0
出所:座間味村資料。
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廃棄物処理施設の整備を検討した。当初は「焼却方式」を検討したが、最終処分場(埋立
地)の候補地選定の過程で住民の反対があり、焼却方式は頓挫した。その後、最終処分場
を必要としない「高炉式ガス化溶融システム」が検討され、平成 15 年 8 月に、総事業費 8
億 8500 万円、起債額 4 億 100 円(国が半分補助)の溶融炉「座間味クリーンセンター」が
完成した。完成後、断続的に操業していたが、4 年ほど稼働した後に故障が生じた。しかし、
施設稼働の作業請負会社(工事発注会社)との間で請負契約の内容を巡って意見が食い違
い、係争に発展したため、修理ができず、平成 19 年 7 月以降、稼働を停止し、それ以降は、
沖縄本島にある那覇南風原クリーンセンターにごみ焼却を委託している。
座間味村の溶融炉整備は国の動向をふまえて行っているので、座間味村の溶融炉を理解す
るために、国の動向も把握しておく。
(2) 環境省(前厚生省)の動向
平成 26 年 9 月 30 日、会計検査院は、環境大臣に対し、意見書「溶融固化施設の運営及
び維持管理並びに溶融スラグの利用について」を提出し、会計検査院法第 34 条の規定によ
り是正改善の処置を求めた。
その意見書にそって、環境省(前厚生省)の動向をみると、環境省(前厚生省)は、
「循環
型社会形成推進基本法(平成 12 年法律第 110 号)
」と「廃棄物の処理及び清掃に関する法
律(昭和 45 年法律第 137 号)
」に基づき、廃棄物を適正に処理し、循環型社会の形成を推
進するために、市町村に対して、平成 16 年度まで、「廃棄物処理施設整備費国庫補助金」、
平成 17 年度からは、
「循環型社会形成推進交付金」を交付してきた。
この背景には、ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類の社会問題化があり、環境
省(前厚生省)は、平成 9 年 1 月に、都道府県に対して、
「ごみ処理に係るダイオキシン類
の削減対策について(厚生省生活衛生局水道環境部長通知)
」を通知した。ダイオキシン類
の排出削減のために、ごみ焼却施設の新設にあたっては、溶融固化施設を設置することと
いう内容であった。
溶融固化施設は、高温でごみを加熱し溶融した後に冷却してガラス質の固化物を生成し、
ダイオキシン類を分解し、廃棄物の容積を減容するものである。この通知により、全国の
ダイオキシン類は削減された。
(3) 会計検査院の検査内容
会計検査院は、上記の背景をふまえて、平成 9 年度から平成 24 年度までに交付金等の交
付を受けて設置された溶融固化施設 102 施設(事業費計約 4412 億 7788 万円、交付金等相
当額系約 1392 億 1604 万円)を対象に検査を行った。
その結果、16 の溶融固化施設が、1 年以上の長期にわたって使用されていないことがわ
かった。使用予定年数は 15 年とされていたが、実際の使用年数は 1 年 1 か月から 9 年であ
った。16 施設の事業費は 163 億 3378 万円であり、交付金等相当額は 31 億円 1672 万円、
使用停止時点における残存価額は 99 億 1743 億円であった。
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16 施設のうち、11 施設は溶融固化せずに最終処分場へ埋め立てる方式に変更していた。
残り 5 施設は、危機の故障等の不具合が生じて、溶融固化できなくなったにもかかわらず、
補修等を実施しておらず使用していなかった。その 5 施設の事業主体の 1 つが座間味村で
あった。残りの 4 事業主体は、大月都留広域事務組合、嘉麻市、徳之島愛ランド広域連合、
伊平屋村であった。
(4) 個別外部監査による指摘と意見
このように、補修ができずに使用を停止した施設は座間味村だけではないことがわかっ
たが、財政健全化法に基づく個別外部監査で、事業計画と契約内容の甘さが指摘された。
指摘内容は以下のとおりである。
① 維持管理費の見通しの甘さ
まず、個別監査人は、委託先の調査会社が作成した『座間味村廃棄物循環型社会基盤設
備整備事業計画』に記載された想定年間維持管理費の積算方針や根拠の記載がないこと、
そして座間味村が想定維持管理費を検証した履歴がないことも指摘した。稼働開始後に、
座間味村は燃料のコークスに相場の価格変動があることに気づき、コークスの高騰に悩む
ことになるのだが、価格高騰のリスクに対応していなかったことを指摘された。
② ごみ需要量の見込みの甘さ
次に、ごみ排出量の推計の甘さを指摘した。
図 3 はごみ排出量の推計と実績を示している。事業計画によるごみ排出量の推計値と実
績を比較すると、平成 17 年度以降、推計値に比べ実績が小さく、ごみの排出量は減少し続
けている。1 人あたり 1 日ごみ排出量をみても、推計は横ばいだが、実績では減少し続けて
いる。その理由は、算定するために行った人口推計が人口と観光入込客数を右肩上がりに
見積もったからである。実績をみると、人口も減少し、観光入込客数は伸び悩んでいた。
この算定ベースとなる人口推計を見誤ったことが大きく影響していた。
③ 発注会社に対する見通しの甘さ
座間味村の工事請負会社と作業請負会社は同じであり、溶融炉の故障をきっかけに係争
に発展した。溶融炉建設の「工事請負契約」と施設稼働に係る「作業請負契約」の締結の
際に、契約内容に関する弁護士等のリーガルチェックを行っていれば訴訟リスクを避ける
ことができたかもしれない。また、この企業が発注先にふさわしいかどうか事業者信用情
報の調査が不十分だったという意見があった。事業計画以前には県内業者との間で、溶融
炉完成後にも県内の他自治体との間に訴訟が起きている。事前に調査会社を利用して、企
業の事業内容や体質を調べていたら稼働停止や訴訟は防げたかもしれない。
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図3 ごみ排出量の推計と実績(平成 13 年度~平成 21 年度)
出所:座間味村資料
3.簡易水道事業に関する指摘
簡易水道事業特別会計の資金不足比率が経営健全化基準の 20%を大きく上回る 57.2%と
なった要因についても、個別監査報告でコスト(給水原価)が高いことが指摘された。
図 4 は沖縄県内自治体の平成 19 年度の簡易水道事業を比較したものであるが、座間味村は
給水原価が高い上に、供給単価(水道料金)が低い。これは、給水人口が伸び悩んでいる
からである。計画給水人口 1,760 人に対して、平成 19 年度の給水人口は 1,017 人である。
そして、9 年間に及ぶ渇水対策にコストがかかっており、企業債発行による金利負担も大き
く影響していた。さらに、水道料金の滞納が 1600 万円にも及んでいた。
4.座間味村の財政再建
平成 9 年度以降の起債の増加により、座間味村の財政は財政健全化法以前から厳しかっ
たため、座間味村は平成 16 年度からの集中改革プランで財政再建を進めていた。表 2 は集
中改革プランの効果を示したものである。平成 16 年度から平成 20 年度の 5 年間で 2 億円
近い効果があった。効果が高かったのは、物件費の削減(4583 万円)
、職員数の削減(4178
万円)
、地方税等の滞納整理による回収(2355 万円)、一般職員の給料削減(2142 万円)、
特別職の報酬削減と助役の廃止(1497 万円)であった。
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図 4 簡易水道事業比較(平成 19 年度)
(単位:円)
表 2 集中改革プランの方策と効果(平成 16 年度~平成 20 年度)(単位:千円)
歳
入
歳
出
方策
公共施設使用料の減免見直し
有料ごみ袋の導入
地方税等の滞納整理
不要株(琉球エアーコミューター)の売却
住民健診自己負担額の引上げ
有料広告の導入
職員数の削減
議員数の削減(10→8名)
一般職員の給料削減(3%)
一般職員の管理職手当削減(8→3%)
特別職の報酬削減と助役の廃止
補助金等の整理合理化
基準外繰出しの削減(簡易水道事業)
基準外繰出しの削減(下水道事業3会計)
議員報酬の削減
物件費の削減
合計
実施時期
平成19年度~
平成17年度~
平成16年度~
平成20年度
平成17年度~
平成19年度~
平成18年度~
平成18年度~
平成18年度~
平成19年度
平成16年度~
平成17年度~
平成20年度
平成20年度
平成16年度、平成20年度
平成16年度~
効果額
2,193
7,070
23,550
10,000
2,356
2,000
41,782
5,475
21,424
3,944
14,968
10,405
1,250
250
4,462
45,833
196,962
出所:座間味村資料。
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こうして財政再建を進めていたが、座間味村は平成 20 年度決算で実質公債費比率が
27.4%となり、簡易水道事業特別会計の資金不足比率も 57.2%となり、財政健全化団体と
なった。
早期健全化の基本方針は、①公債費に関し、現在計画している公的資金補償金免除繰上
償還(簡易水道事業特別会計)を実施するとともに、減債基金や決算剰余金等を勘案しつ
つ縁故資金の繰上償還を積極的に行うこととし、②繰出しを行っている特別会計において、
料金の見直し(簡易水道事業、下水道事業:平成 21 年 1 月から実施済み、航路事業:平成
21 年 4 月実施済み)や収納率の向上に努め一般会計からの繰入に頼らないよう独立採算制
による経営の原則に努めることとした。
歳入については、徴収対策プロジェクトチームを設置し、徴収率の向上を目指すことと
した。座間味村のホームページへのバナー広告や封筒への有料広告を継続実施し、資源ご
みも売却することとした。
歳出については、園長手当(36 万円)を廃止し、幼稚園を 3 園から 2 園にすることとし
た。公営企業に対する基準外繰出金について、基準内繰出額の 75%を限度するという基準
を新たに設けることとし簡易水道事業 2000 万円、下水道事業(3 会計)の 400 万円の削減
を図ることとした。
そして、地方債の繰上償還を実施し、支払利息の軽減を行うこととした。平成 21 年度に
は、旧資金運用部資金(簡易水道事業)1200 万円、平成 22 年度には縁故資金(一般会計)
510.3 万円、縁故資金(簡易水道事業)726 万円、平成 23~25 年度には、縁故資金(一般
会計)3732.4 万円の繰上償還を行うこととした。
さらに、平成 23 年度に縁故資金 9 件について借り換えを行うこととした。借換条件は 10
年無利子後 15 年償還であり、利子分 3312 万円を軽減することができる。
このような計画に基づき、
財政再建を行った結果、平成 23 年度には実質公債費率が 21.8%
となり、平成 24 年度の最終年度を待たずして、財政健全化計画を終了した。
5.簡易水道特別会計の経営健全化計画
簡易水道特別会計については、実績報告を入手できたため、計画値でなく、実績値で検
討する。
(1)浄水場の維持経費の削減
職員配置を1名と最小限の配置にし、旧施設等の動力費、高熱費、通信運搬費等の契約見
直しや節電に努め、浄水場稼動の見直しにより、平成 22 年度には 780 万円節減した。その
他需用費も 250 万円節減した。
施設機器の修繕は莫大な費用がかかることから、急を要する修繕など優先度が高
い順に行い、外部委託は水道法に定められている水質検査や、電気事業法に定められてい
る自家用電気工作物の管理についてのみ事業を委託し、それ以外は直営で対処することと
し、高額な費用が係る弁類やポンプ等資機材修繕はオーバーホールにて再利用を図った。
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(2) 料金徴収の自動振替の徹底
口座振替の促進を促し、平成 22 年度は 29 世帯、平成 23 年度は 46 世帯、平成 24 年度も 3
世帯の増加を図った。
(3)滞納者への給水停止措置の徹底
平成 22 年度には、3 件の給水停止措置を実施し 17 万円を徴収した。また、20 世帯に対し
て、夜間個別訪問を実施しところ、212 万円を徴収した。平成 23 年度も 3 件の給水停止を
行い、16 万円を徴収した。滞納の徴収額は 143 万円であった。
(4)繰上償還を実施
長期的に係る元利金等の支出を抑えるために、沖縄県振興資金 22,039 千円(平成 30 年
度まで毎年 282 万円の削減効果)、縁故資金(銀行)5,280 千円(平成 26 年度まで毎年 132
万円効果)を繰上償還した。
このように財政再建を実行したところ、簡易水道事業特別会計については、経営健全化
計画の実行中、資金不足比率は発生せず、経営健全化計画を終えた。
おわりに
第 13 回は沖縄県座間味村を取り上げた。沖縄県は海がきれいで有名だが、座間味村のあ
る慶良間諸島は、ケラマブルーと言われる有数のダイビングスポットである。訪問時にも
多くの外国人観光客がのんびりと村を歩き、カフェでお茶を飲んでいるところを見かけた。
素朴な島である。そのような自慢の海を持つ座間味村の財政難の理由がごみだったという
のは皮肉である。
以前の座間味村では、ごみは阿佐の崖から海に投げ捨てていたという。東京に住む筆者
には思いもつかないことだが、現実だったという。タンカーが座礁して、積んでいた重油
が海に流れても、自然と浄化されるように、ケラマブルーに投げ捨てられたごみも、偉大
な海が浄化してくれていたのだろう。それが当時の常識で、特に公害も起きなかった。そ
の後 20 年ほど前に、座間味村でもきれいと言われる古座間味ビーチの外れに簡単な焼却炉
ができたそうだ。そんなにきれいな海岸にごみ焼却炉が作られるなんて、東京に住む筆者
には想像がつかない。東京であれば、人目につかないところに焼却炉を作るであろう。そ
して、溶融炉が建設された。
当時の座間味村は、国の循環型社会の形成の方針に基づき、溶融炉を建設した。しかし、
計画の甘さから、稼働してから高コストであったことに気づき、隔月で稼働し、その後一
定程度のごみが貯まってから稼働していた。議会議事録をみていくと、ごみ処理は議会の
大きな争点であった。燃料コークスの高騰化や委託業者との係争などが議論されていた。
そして平成 20 年 2 月には、前村長が議会の承認を通さず燃料コークスを発注したことに鑑
み、前村長への不信任決議案が出され、否認されていた。新聞にもさまざまな局面で取り
上げられた。
きれいな海に囲まれて村民が静かに暮らしていた座間味村に、この溶融炉は本当に必要
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だったのだろうか。現在では、沖縄本島にある那覇南風原クリーンセンターに委託料を支
払って、ごみ処理をお願いしている。この方法が座間味村の身の丈に合った方法なのでは
ないか。
財政難のもう一つの要因だった簡易水道についても、平成 30 年には沖縄本島に近い離島
を中心とした水道の広域化が始まる。これまでの施設を売却して、広域連合から水を購入
する仕組みである。これも座間味村に合った方法なのではないか。
そして、平成 6 年から存在したという裏通帳も平成 19 年 3 月の座間味村行財政調査特別
委員会の調査後に廃止された。不透明だった座間味村は透明な海のように、クリーンにな
った。
ここ数年はごみ問題で騒がしかったが、これまでの膿を出し、南国らしい明るい新庁舎
も今年の 3 月に完成し、ニュー座間味村に生まれ変わった。さらに今年は、長崎県にある
造船会社に発注していたフェリーが就航予定である。新しい庁舎、新しいフェリーに象徴
されるように、クリーンで新しい座間味村として、これまで以上に国内外の観光客を迎え
て、発展していってほしい。
参考文献
会計検査院(2014)
「溶融固化施設の運営及び維持管理並びに溶融スラグの利用について」
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/26/h260930_2.html
座間味村個別外部監査人(2010)
『財政健全化法に基づく個別外部監査報告書』
座間味村議会(2007a)
『平成 19 年第 1 回臨時会議事録』平成 19 年 3 月 6 日
座間味村議会(2007b)
『平成 19 年第 3 回定例会議事録』平成 19 年 9 月 20 日
座間味村議会(2007c)
『平成 19 年第 4 回定例会議会議事録』平成 19 年 12 月 19 日
座間味村議会(2008)
『平成 20 年第 1 回臨時会議会会議録』平成 20 年 2 月 18 日
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