平成26年度 事業報告書 一般財団法人 NHKエンジニアリングシステム 目 Ⅰ.主要事業の概況 次 ・・・・・・・・・ 2 1.研究開発事業 ・・・・・・・・・ 6 2.システム事業 ・・・・・・・・・ 6 3.技術調査事業 ・・・・・・・・・ 8 4.放送技術受託事業 ・・・・・・・・・ 9 5.技術の周知・普及事業 ・・・・・・・・・ 11 6.技術者の教育事業 ・・・・・・・・・ 11 Ⅱ.分野別事業報告 - 1 - Ⅰ.主要事業の概況 平成 26 年度は平成 24~26 年度の 3 ヶ年事業計画の最終年度であり、一般財団移行後の 機関運営の定着、放送のデジタル化完全移行後の普及推進、8K/4K スーパーハイビジョ ンの普及促進、次世代を見据えたデジタル新メディアおよび新技術の研究開発等に重点的 に取り組んだ。 平成 28 年度の8K 試験放送の開始に向けて放送制作・送出設備および受像機の開発が 急ピッチに進められているが、カメラや音響機器の小型・軽量化等の課題克服には未だ時 間を要する状況にあり、重点事業として掲げた8K 技術の応用展開については高く広い障 壁を越えていく必要があることから、重点技術研究開発項目の絞り込みと重点事業への経 営資源の集中化、要員の効率的運用等によりコストの抑制の徹底を図り、総じて順調に事 業を遂行して財団目的の達成に努めた。 1.放送のデジタル化の推進、普及推進 平成 27 年 3 月 31 日、地デジ難視対策衛星放送(セーフティーネット)が終了し、当財 団が担当してきた絶対難視の調査および対策支援についてもほぼ終了した。平成 26 年度 はセーフティーネット終了後の恒久対策を必要とする約 800 世帯を対象に、絶対難視世帯 の周知・調査・対策支援業務を受託し、豪雪地帯の自治体設備や使用頻度の少ない別荘等 を除き、対策まで終了した。平成 27 年度は少数の未調査残存難視世帯についての対策を 継続していく。 新たな課題となっているラジオ等音声メディアの難聴については、平成 25 年度の集 合・個別住宅受信調査に続いて、平成 26 年度は全国の高速道路に沿った地域のラジオ受 信状況移動調査を実施した。 超高層建造物によるテレビ受信障害予測業務、風力発電施設によるテレビ受信障害予測 業務、低層ビル用デジタル放送受信障害予測ソフト(ビルエキスパート)の普及頒布を継 続して実施した。また、デジタル化後の超高層建造物による電波障害予測について、新た な予測手法の検討を開始した。 2.8K スーパーハイビジョンの普及促進 東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定される平成 32 年度に本格普及とのロ ードマップを受け、数々のスーパーハイビジョンの普及促進に向けた展示、パブリックビ ューイングが実施された。平成 26 年度は FIFA ワールドカップサッカー、宇宙博覧会 2014 での長期間にわたるパブリックビューイングをはじめ、NAB2014、IBC2014、N 響、大相撲、 日本オープンゴルフ、文楽、風神雷神図屏風や故宮美術館および国宝展など、多様なコン テンツの展示、全国 3 か所での紅白歌合戦のライブパブリックビューイングが実施された。 このうち FIFA ワールドカップサッカーの国内パブリックビューイングのうち 2 か所につ いては、総務省の「超高精細映像技術を活用した新事業の確立に向けた実証に係る請負」 の一環として実施した。また、技術普及の観点から、海外では SPORTEL(モナコ) 、ABU 総 会(マカオ) 、PTC2015(ハワイ) 、IBC 中東展示(ドバイ)など、また国内ではケーブル 技術ショー、CEATEC2014、RIPE 国際会議レセプションなどで技術展示を行った。さらに - 2 - 全国の NHK の会館公開等における展示など、のべ 54 回、463 日間の公開展示が開催され、 当財団はその技術運営を担当した。こうした普及活動と連携して、平成 26 年度は 8K スー パーハイビジョンのコンテンツ制作において、2K ハイビジョンとの計画的な一体化制作 に向けた取り組みが開始されたことも特徴的なことであった。 また、医療・産業応用として、平成 22 年から取り組んできた「東京ハートラボ」にお いては、当財団が開発した小型 8K カメラにより榊原記念病院で撮影した大動脈弁形成術 の映像を品川グランドホール会場にライブ伝送したほか、総務省の「超高精細映像技術を 活用した新事業の確立に向けた実証に係る請負」の一環として、12 月から 2 月にかけて 東京大学附属病院において胃食道外科(食道がん切除術) 、肝胆膵外科(肝臓がん切除術) 、 心臓外科(補助人工心臓植え込み手術)の手術を撮影し、学内のカンファレンスで上映し、 8K 映像の医療応用についての検証を行った。今後、東京大学附属病院においては、泌尿 器科、顎口腔外科、大腸肛門外科での撮影が検討されている。また、2 月には京都大学附 属病院において、脳外科手術の 8K 顕微鏡撮影を世界で初めて実施し、4 月に国立京都国 際会館で開催された第 29 回日本医学会総会 2015 関西において学術展示された。これらの 取り組みにおいて、8K 撮影・表示機材についてさらなる高感度化・小型化が強く要望さ れているものの、8K スーパーハイビジョンの高精細映像が医療分野での応用において大 きな可能性を持つものとして高い評価を受けた。 3.システム・機器の開発、整備、運用 平成 26 年度は、メーカーと共同開発した 8K 映像用音響透過型スクリーンを導入して、 放送センターCD-606 のスクリーン整備、および CD-607 のウォブリングプロジェクターと スクリーンの整備を行い、放送センターの MA 制作スタジオの 8K 音響制作機能の強化に貢 献した。平成 25 年度から開発を開始した 8K リアプロジェクターについては、平成 26 年 度の技研公開前に整備し、その後、技研との共同開発により高品質化改修を実施した。ま た、放送博物館の“シアター愛宕”の 8K スーパーハイビジョン化整備を受注し、音響透 過型スクリーンの採用および 2K/5.1 サラウンド音響と併用するシステムとして整備し た。 “シアター愛宕”は放送技術研究所、放送センター以外では九州国立博物館以来の 8K 常設展示会場であり、200 インチ級音響透過型スクリーンによる本格的 22.2 立体音響を 実現した初めての常設展示シアターとして、特にその音響特性のすばらしさは大きな評価 を得ている。また、8K 映像の医療撮影用 PL マウント対応特殊レンズおよび操作・運用性 の向上を図った新型医療撮影用アームを開発し、制約の大きい手術室等での撮影をスムー ズに実施した。 特殊撮像機器の開発整備においては、深海用小型カメラの整備を実施した。平成 24 年 度から開発してきた国際宇宙ステーションに搭載予定の低消費電力高感度 CMOS カメラに よる宇宙からの流星撮影システムについては、運搬ロケットの打ち上げ失敗という不測の 事態に至ったが、平成 27 年度の再打ち上げに向けて準備が進められている。 この他、技研の放送体験システムの整備を実施したほか、九州国立博物館をはじめ全国 の美術館、博物館等 12 施設および NHK 各放送局の放送体験クラブ、NHK 千代田放送会館 の設備保守、改補修業務を実施した。 - 3 - 4.研究開発 平成 25 年度に引き続き、スーパーハイビジョン単板 3300 万画素のカラーイメージセン サーを用いた、放送用および産業用の 2 種類のカメラの研究開発を進めた。イメージセン サーの特性に由来する色再現やシェーディングによるムラの改善について電気的補正を 進めてフィールド実験を重ねてきており、実用化に近づいてきている。これらについては、 さらなる感度の向上および画質の改善が見込まれることから、引き続き研究開発を継続し ていく。スーパーハイビジョン音響については、NHK が開発した 22.2 チャンネルヘッド フォンプロセッサの技術を応用して、プライベートな空間で臨場感あふれる三次元音響を 実現する“スーパーハイビジョン音響プレミアムシート”を技研公開において展示し、家 庭のリビングにおける立体音響の新しい視聴形態としてプレゼンを行った。頭部伝達関数 を用いた立体音響の提示方法として、大型 LCD モニターによる直視型ディスプレイの枠に 複数のスピーカーを組み込んだ枠型スピーカーアレイによる手法が試みられており、平成 26 年度はこれについての研究開発を進めた。 8K スーパーハイビジョンについてはデュアルグリーン方式によるものが実用化されて いるが、今後の高品質化のために 4:2:2 コンポーネント方式が主流となると考えられてい る。インターフェースの高度化を含め、番組の制作段階においては高画質化が求められて いるが、ポスプロ作業において、特にコピー作業に膨大な時間を要している現状を克服す るため、高速度なコピーシステムの研究開発を実施した。また、高画質映像の記録には膨 大な記録メディアを必要とし、半導体メモリーによる記録では必要なコンテンツを永く残 しておくことが経済的に不可能である現状を克服するため、LTO による経済的なアーカイ ブスを可能とする 8K バックアップシステムの研究開発を実施した。 また、新技術の調査研究の一環として、133M 画素イメージセンサーの超高速駆動技術、 環境反映型 AR 生成技術、自動翻訳技術、表情モーションデータの CG への組み込み技術(手 話 CG/TVML) 、仮想空間と現実空間の情報連携技術についての調査を行った。 国や公的機関の実施するプロジェクトについては、総務省 SCOPE の「複合撮像面による 空間情報取得システムの研究開発」への継続参画、東京藝術大学ほかの文科省 COI への継 続参画のほか、総務省「超高精細映像技術を活用した新事業の確立に向けた実証に係る請 負」の受注、総務省「4K・8K を活用した放送サービスの実用化に係る技術の検証」 (次世 代放送推進フォーラム関連:安全な伝送技術検証)への参画、8K スーパーハイビジョン 地上波による長距離伝送実験における測定業務に参加した。 5.放送技術受託事業 受託研究事業として、スーパーハイビジョン映像・音響の実用化研究開発および応用展 開、ハイブリッドキャストシステム、撮影環境情報を用いた映像生成技術、スーパーハイ ビジョンシステムの小型化・高性能化、話速変換・音声合成技術および高齢者対応音声技 術、大画面効果等の映像評価技術、地上デジタル放送の送受信技術、マイクロ波・ミリ波 等の電波利用技術、スーパーハイビジョン無線伝送システム、磁性細線を応用した記録方 式、3 次元撮像デバイス、シート型ディスプレイ、スーパーハイビジョン用イメージセン サー技術の研究を継続して実施した。また、高齢者音声処理技術の一部について平成 26 年 6 月をもって終了するとともに、新たに、触覚提示技術の研究業務を受託した。また、 - 4 - NHK 放送技術研究所の研究支援業務を継続して受託した。 特許関係受託業務については、NHK 保有特許の出願業務および特許維持管理業務、NHK 保有特許・ノウハウの周知と実施許諾および技術協力業務を引き続き実施した。 受信技術関係受託業務については平成 25 年 7 月から対象地域を全国に拡大した放送の 受信環境維持改善に係る調査業務を平成 26 年度は通年化して受託した。この調査は、 ① 課題地区の受信環境の状況等を調査する「受信状況調査」 ② アンテナ方向を目視調査する等の「受信形態調査」 ③ 家庭の受信機の所有状況や受信設備等を調査する「受信実態調査」 ④ 市販されている受信機の性能等を調査する「受信機性能調査」 ⑤ 調査データをシステム的に管理する「i-Map システムの運用管理」 の 5 項目であり、それぞれ数値目標を掲げて実施し、すべての項目において目標を達成し た。 6.技術の周知・普及、技術者の教育 技術の周知普及事業については、継続して“ハイビジョン・システム評価用標準動画像 第 2 版”等の標準画像の頒布業務を実施した。また、地上デジタル放送用新 RMP の技術コ ンサル業務および RMP テスト信号の制作・頒布を実施した。技術者の教育事業については、 「4K・8K 放送の ARIB 標準規格」 、 「4K・8K 放送の新技術と受信機規格」の技術セミナーを 開催したほか、機関誌 VIEW を刊行した。 その他、平成 26 年度は一般財団法人として新会計基準に準拠した新財務システムによ り財務管理、人事管理を行うとともに、NHK グループの財務・総務管理システムと連動し た事務・経理処理を導入し、人事原議処理等の一部において新方式による運用を開始した。 - 5 - Ⅱ.分野別事業 1.研究開発事業 スーパーハービジョン用高感度イメージセンサーおよびスーパーハイビジョン単板カ メラの研究開発、スーパーハイビジョン番組制作システムの研究開発、国等の研究開発プ ロジェクトへの参画等により、研究開発事業を実施した。 (1)新技術の研究開発 ・3300 万画素スーパーハイビジョンイメージセンサーの研究開発 ・放送用および産業用スーパーハイビジョンカメラの研究開発 ・スーパーハイビジョン映像・音響の家庭内システムの研究開発 (8K モニターおよび枠型スピーカーアレイによるシステム) ・8KV ロケ用カムコーダ(RAW レコーダー)の研究開発 ・8K アーカイブス用 LTO レコーダーの研究開発 ・DPG 変換技術による 8K 高速コピーシステムの研究開発 ・医療撮影用 8K カメラアームおよび 8K 顕微鏡撮影システムの研究開発 ・8K リアプロジェクションシステムの高品質化の研究開発 (2)新技術の調査研究 ・133M 画素イメージセンサーの超高速駆動技術の調査 ・環境反映型 AR 生成技術の調査 ・表情モーションデータの CG への組み込み技術(手話 CG/TVML)の調査 ・自動翻訳技術の調査 ・テレビとネットを同期した現実空間情報と仮想空間情報の連携技術の調査 (3)国等公的機関の研究開発事業への参画 ・複合撮像面による空間情報取得システムの研究開発(インテグラル立体映像技術) ・東京藝術大学共感覚イノベーションセンターの研究開発(超高精細映像技術) ・超高精細映像技術を活用した新事業の確立に向けた研究開発(8K 映像音響技術) ・4K・8K を活用した放送サービスの実用化に係る研究開発(4K/8KCAS 技術) ・周波数有効利用に資する次世代放送基盤技術の研究開発(偏波 MIMO 技術) 2.システム事業 スーパーハイビジョンなど超高精細映像・音響システムの開発・整備および技術展示運 営、美術館・博物館および放送局等の映像・音響システムの設計・整備・技術運営などの 事業を実施した。 (1) スーパーハイビジョン関連事業 ① 設備・システムの開発・整備 ・放送センターCD606 および CD607 スタジオの 8K リニューアル化整備 ・8K ウォブリングプロジェクターおよび音響透過型スクリーンの導入 ・放送博物館“シアター愛宕”の 8K 化整備 ・8K プロジェクターと 200 インチ級音響透過型スクリーンによる高音質シアターの整備 ・8K 立体映像提示用ウォブリングプロジェクターの整備 - 6 - ・技研エントランス 8K リアプロジェクターの開発整備 ・放送用カメラの消音化整備 ② パブリックビューイング、技術展示の設計および技術運営 ・2014FIFA ワールドカップサッカーのパブリックビューイング ・国内(イオン港北、芝浦工大、グランフロント大阪、アスティ徳島)および海外(ブラジル CBPF、Sofitel、IBC)で設営、技術運営。国内回線として初めて商用回線(ビジネスイーサ・ ワイド)を使用(6 月 12 日~7 月 13 日) ・宇宙博覧会 2014“NASA・JAXA の挑戦”の 8K シアター展示 ・幕張メッセ国際展示場(7 月 19 日~9 月 23 日) ・日本オープンゴルフ、日本女子オープンゴルフパブリックビューイング ・千葉 CC、琵琶湖 CC、放送センタースタジオパーク ・大相撲秋場所、大相撲福岡場所パブリックビューイング ・両国国技館、福岡国際センター、イオンシネマ幕張、イオン港北、NHK 福岡放送局 ・紅白歌合戦パブリックビューイング ・横浜赤レンガ倉庫、イオンシネマ幕張、NHK 広島放送局 ・長岡花火大会パブリックビューイング ・アオーレ長岡 ・その他のパブリックビューイング、展示技術協力 ・技術展示:NAB2014、IBC2014、IBC ドバイ、CEATEC2014、InterBEE2014、ABU 総会(マカオ) 、 ケーブル技術ショー、産総研つくばセンター、放送センター番組技術展、RIPE 国際会議レ セプション、オーディオホームシアター展、サイエンススタジアム 2014 など ・スーパーハイビジョンコンテンツの会館等での展示:NHK 札幌放送局、NHK 富山放送局、NHK 水戸放送局、NHK 甲府放送局、NHK 津放送局、NHK 熊本放送局、NHK 宮崎放送局、東京国立 博物館(風神雷神屏風、国宝展、故宮展) 、岡山シティーミュージアム、グランフロント大 阪(文楽) 、イオン港北(N 響) 、九州国立博物館(故宮展) 、パシフィコ横浜(CP+) 、東京 タワー(放送 90 周年イベント)など ③ 医療・産業応用システムの設計・技術運営 ・第 9 回“東京ハートラボ”での大動脈弁形成術の 8K 手術映像撮影・伝送、および品川グラ ンドホールでの展示とカンファレンス ・東京大学附属病院において胃食道外科(食道がん切除術) 、肝胆膵外科(肝臓がん切除術) 、 心臓外科(補助人工心臓植え込み手術)の手術を撮影し、学内のカンファレンスで上映 ・京都大学附属病院において脳外科手術の 8K 顕微鏡撮影を世界で初めて実施し、第 29 回日 本医学会総会 2015 関西(国立京都国際会館)で学術展示 (2)その他のシステム事業 ① 地方自治体・公共機関等の博物館・美術館ハイビジョン設備の整備・保守 ・九州国立博物館「スーパーハイビジョンシアター」技術運用・保守など 13 施設の設備保守、 改補修を実施 ・NHK 放送体験クラブ機材の保守 ・NHK 千代田放送会館設備の保守 ② 特殊カメラの設計・整備、音声処理関係設計・整備等 - 7 - ・国際宇宙ステーション流星撮影用超高感度カメラの開発整備(24 年度から継続) ・ハイブリッドセンサーを用いた VR システムの開発整備(NHK 長野放送局) ・深海撮影用高感度カメラの改修整備 ・超小型水中撮影カメラの整備・改修 ・水滴防止フィルタの開発整備 ・NHK 研究共用設備の管理運用 3.技術調査事業 平成 27 年 3 月末の衛星放送によるセーフティーネット終了後の恒久対策を必要とする 約 800 世帯について、絶対難視世帯の周知・調査・対策支援業務を受託し、豪雪地帯の自 治体設備や使用頻度の少ない別荘等を除いて対策を終了した。平成 27 年度は少数の残存 世帯について夏までを目途に調査・対策支援を継続していく。 新たな課題となっているラジオ等音声メディアの難聴については、平成 25 年度の関東 地域での 201 ヶ所の集合・個別住宅受信調査に続いて、平成 26 年度は全国の高速道路に 沿った地域のラジオ受信状況移動調査を実施した。 超高層建造物によるテレビ受信障害予測業務、風力発電施設によるテレビ受信障害予測 業務、低層ビル用デジタル放送受信障害予測ソフト(ビルエキスパート)の普及頒布を継 続して実施した。ビルエキスパートについてはソフトウェアを機能追加するとともに Windows8 対応に改修した。また、デジタル化後の超高層建造物による電波障害予測につ いて、新たな予測手法の検討を開始した。 流星撮影を目指して開発した国際宇宙ステーション搭載候補カメラについて開発を継 続したほか、高齢者が聴きやすい音声・音響を得るための調査実験、および話速変換・抑 揚変換技術を用いた音声処理技術を電子出版や語学学習に活用し、スマートフォンなどの 携帯端末にも適用するための調査・プログラム開発を行い、出版アプリ、中国語学習アプ リとして関係機関に提供した。 (1)送信・受信技術関連業務 ・絶対難視世帯の受信技術調査および恒久対策支援業務 ・平成 26 年度末の衛星放送によるセーフティーネットの終了に備え、約 800 世帯の受信状況 について受信電界のほか、ワンセグ受信も含めたダイバーシティアンテナによる改善効果 等について周知・調査を行い、適切な対策方法を推奨するとともに、助成金の申請手続き 等を含めて工事等の対策全般について支援 ・ラジオ難聴の受信技術調査 ・北海道から沖縄まで、全国 41 の高速道路において、NHK および民放の中波ラジオおよび FM ラジオの電界強度を、連続走行時の移動受信データを測定するとともに、あわせてパーキ ングエリア等で固定受信データを測定 ・超高層建造物によるテレビ受信障害予測業務 ・風力発電施設によるテレビ受信障害予測業務 ・低層ビル用デジタル放送受信障害予測ソフト(ビルエキスパート)の普及頒布 ・ビルエキスパートの Windows8 対応バージョンアップ更新 - 8 - (2)新技術の調査、技術試験、画像・音響の評価関連業務 ・国際宇宙ステーション搭載候補カメラ、伝送設備の宇宙環境試験 ・高齢者に聴きやすい音声の調査実験 ・8K スーパーハイビジョン V ロケの技術支援 ・ミリ波モバイルカメラの運用技術支援 ・ハイブリッドキャスト番組制作環境の構築支援 ・スーパーハイビジョン展示コンテンツの編集、技術調整 ・3300 万画素イメージセンサーの試験提供 ・話速変換技術、抑揚変換技術のネットラジオおよび電子出版・語学学習応用(iOS・ Android 版アプリの開発) ・新 RMP(コンテンツ権利保護専用方式)のサンプルプログラム等の提供 ・民間シアターの建築音響試験 ・撮像系電子回路の研究試作業務 ・研究開発プロジェクトにおける外部機関との連携業務 4.放送技術受託事業 NHK から受託研究業務、特許関係業務、受信技術業務および研究開発支援業務を継続し て受託した。 (1)受託研究業務 平成 26 年度は新たに「触覚提示技術の研究」を受託し、 「高齢者用音声処理技術の 研究」の一部について受託を終了した。 《映像関係の研究》 ・スーパーハイビジョン映像・音響の実用化研究開発および応用展開(平成 18 年度開始) ・撮影環境情報を用いた映像生成技術の研究(平成 22 年度開始、25 年度名称変更) ・スーパーハイビジョンシステムの高性能化の研究(平成 20 年度開始、26 年度テーマ変更) ・人にやさしい放送システム(不快映像の映像評価技術)の研究(平成 25 年度開始) 《音響関係の研究》 ・話速変換・音声合成技術および高齢者対応音声技術の研究(平成 19 年度開始) ・スーパーハイビジョン音響技術の研究(平成 22 年度開始) 《無線関係の研究》 ・地上デジタル放送受信技術の研究(平成 20 年度開始) ・マイクロ波・サブミリ波の無線伝送技術の研究(平成 22 年度開始、26 年度名称変更) ・ミリ波・サブミリ波帯の電波利用技術の研究(平成 24 年度開始、25 年度名称変更) 《デバイス関係、システム関係の研究》 ・スーパーハイビジョン用イメージセンサーの研究(平成 24 年度開始、25 年度名称変更) ・磁性細線による次世代記録技術の研究(平成 25 年度開始) ・3 次元撮像デバイスの研究(平成 25 年度開始) ・シート型ディスプレイ技術の研究(平成 25 年度開始) ・ハイブリッド放送システム技術の研究(平成 25 年度開始) - 9 - ・触覚提示技術の研究(平成 26 年度開始) (2)特許関係業務 NHKの研究開発に基づく成果を広く一般の利用に供し、その社会還元をはかるため、 NHKの研究開発に基づく技術移転 およびNHK保有の特許等の周知、斡旋業務を受託し て実施した。 ・NHK の保有する特許の出願、維持管理、実施許諾、周知斡旋業務 ・NHK の保有するノウハウ等による技術協力業務および電磁環境試験の実施受付 ・技術周知斡旋のための展示(技研公開、番組技術展のほか以下を実施) ・テクノトランスファーin かわさき 2014(かながわサイエンスパーク) ・テクニカルショウヨコハマ 2015(パシフィコ横浜) ・自治体等と連携したビジネスマッチングイベントやセミナーでの周知斡旋 ・川崎市知的財産交流会 in ビジネスリゾート 2014(川崎市) ・大手企業の開放特許活用セミナー(横浜市) ・かわさき知的財産シンポジウム(川崎市) ・貸まっせ!大企業の技術 KRP Idea & Patent Business Village(京都市) ・知的財産活用フォーラム(川崎市) ・知的財産交流会 in かわしんビジネスフェア(川崎市) ・徳島ビジネスチャレンジメッセ 2014“技術シーズ ビジネスマッチング” (徳島市) ・ビジネスフェア from TAMA(東京都) ・あおもりビジネスアイデア・技術シーズ交流会 2014(青森市) ・開放特許活用セミナー&技術交流マッチング会(東京都) (3)受信技術業務 平成 25 年 7 月から対象地域を全国に拡大した放送の受信環境維持改善に係る調査 業務について、平成 26 年度から通年化して実施し、すべての項目において年間数値 目標を達成した。 ① 受信状況調査 課題地区の受信環境状況等の調査で、デジタル混信等の調査のほか、大規模災害時の避 難所指定地区の受信状況、中波・FM ラジオ放送の受信状況調査等を実施し、年度当初 の実施計画策定における遅滞を克服して、目標の 2100 日の出向調査を達成 ② 受信形態調査 複数の送信所を受信可能な地域において、世帯毎にアンテナ受信方向を目視調査する等 の調査を実施し、当初目標の 150 万棟に加え、新たに発生した茨城・新潟等の地上デジ タル放送局間の混信地域での追加調査を実施し、約 167 万棟の調査を達成 ③ 受信実態調査 NHK が昭和 24 年から実施している調査で、訪問による面接・宅内調査により家庭の受 信機保有状況、放送受信状況、家庭内インターネット整備状況等の調査を実施。約 6000 世帯の無作為抽出を行い、同意を得られた約 3000 世帯のサンプル調査を実施し、1 世 帯あたりの受信機平均所有数 3.4 台などの基礎データを取得 - 10 - ④ 受信機性能調査 NHK が昭和 43 年から実施しているもので、市販されている受信機の性能を調査してデ ータを蓄積するとともに、受信機メーカーとの情報交換を通じて受信機性能の維持向上 を図ることを目的としている。平成 26 年度は 7 メーカーの新機種 8 台を中心に調査を 実施し、隣接チャンネル妨害特性や LTE など放送波帯域外信号による影響などの継続調 査のほか、放送通信連携サービスに関わる調査、内蔵基板・部品の調査、スピーカー特 性の調査などを新規に加えて実施。また、放送の強靭化に対応し、ラジオ受信機 9 機種 の調査を 15 年ぶりに実施 ⑤ i-Map システムの運用管理 上述の各調査の結果をデータベースとして管理するシステムの運用管理業務 (4)NHK 放送技術研究所等の研究開発支援業務 ・ITU 協会事務局業務の支援 ・ARIB 規格化業務の支援 ・技研機関誌編集関連業務 ・研究資料室管理運営業務、技術研究資料情報検索システムの運用・管理 ・研究機器試作関連業務 5.技術の周知・普及事業 継続して以下の事業を実施した。 (1)映像情報メディア学会標準画像(ハイビジョン等、システム評価用)の頒布 (2)技術紹介ビデオの制作 (3)新技術の規格化関連業務、コンサル業務など ・新 CAS 協議会準備会事務局業務 ・CAS 鍵更新に際しての技術運用手法のコンサル ・ハイブリッドキャストデモシステムのコンサル ・当財団が保有する特許・商標等の取得・維持管理、実施許諾、技術協力 6.技術者の教育事業 (1)スーパーハイビジョン等、技術セミナー等の開催 規格化段階となっているスーパーハイビジョン技術について、NHK 等の協力を得て、 講演およびデモ機器展示を含めて普及促進に向けたセミナーを開催した。 ① 技術セミナー「4K・8K 放送の ARIB 標準規格」 【講演内容】 ・4K・8K ロードマップ ・超高精細テレビジョン放送の ARIB 標準規格の概要 ・高度広帯域衛星伝送方式(STD-B44) ・映像符号化方式(STD-B32 第 1 部) ・音声符号化方式(STD-B32 第 2 部) ・マルチメディア符号化方式(STD-B62) - 11 - ・多重化方式(STD-B32 第 3 部、STD-B10) ・MMT によるメディアトランスポート方式(STD-B60) ・権利保護・アクセス制御方式(STD-B61) ② 技術セミナー「4K・8K 放送の新技術と受信機規格」 【講演内容】 ・4K・8K 映像と映像符号化技術 ・22.2ch 音響と音声符号化技術 ・4K・8K 放送の多重化技術 ・衛星伝送符号化、誤り訂正技術 ・ARIB 受信装置標準規格(STD-B63) (2)友の会関係業務、機関誌「VIEW」の発行 当財団の活動状況と主要技術の解説、最新の技術の動向・紹介、最新の特許・ノウ ハウ等の知財情報等を掲載した機関誌「VIEW」を年間 6 回刊行・配布した。 - 12 - 7.理事会および評議員会 (1)理事会の開催状況 区 分 年月日 議 題 26.5.30 1 平成 25 年度事業報告(案)及び決算報告(案)に ついて 2 執行役員の選任について 3 第 3 回評議員会の附議議案について 4 財団の活動状況について 第 5 回理事会 26.6.20 1 役員の選任について 2 評議員の選退任について 3 理事長の選定について 第 6 回理事会 26.7.15 1 第 4 回評議員会の議案承認 第 7 回理事会 26.7.23 1 評議員の選退任 2 役員の選退任 第 8 回理事会 26.9.8 1 第 5 回評議員会の附議議案 第 9 回理事会 26.9.26 1 役員の選任について 2 常勤理事の選定について 27.3.10 1 平成 26 年度収支決算見込について 2 財団の活動状況について 3 平成 27 年度事業計画書(案)、収支予算書(案)に ついて 4 第 6 回評議員会の附議議案について 第 4 回理事会 第 10 回理事会 (2)評議員会の開催状況 区 分 年月日 議 題 第 3 回評議員会 26.6.20 1 2 3 4 5 平成 25 年度事業報告について 執行役員の選任について 平成 25 年度決算報告(案)について 評議員の選退任について 役員の選任について 第 4 回評議員会 26.7.23 1 評議員の選退任 2 役員の選退任 第 5 回評議員会 26.9.26 1 役員の選任について 第 6 回評議員会 27.3.19 1 平成 26 年度収支決算見込について 2 平成 27 年度事業計画書、収支予算書について - 13 - (3)役員および評議員の異動 区 理 分 事 年 月 日 退 任 26. 6. 20 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 河口 林 浅見 伊関 加藤 國谷 髙田 廣瀬 松井 正人 知之 洋 洋 俊彦 実 範雄 通孝 房樹 26. 6. 20 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 26. 7. 23 26. 10. 評 議 員 監 事 就 河口 林 浅見 伊関 加藤 國谷 髙田 廣瀬 松井 浅見 洋 任 正人(重任) 知之(重任) 洋(重任) 洋(重任) 俊彦(重任) 実(重任) 範雄(重任) 通孝(重任) 房樹(重任) 喜安 拓 藤澤 秀一 1 26. 6. 20 〃 永井 研二 藤澤 秀一 浜田 泰人 黒田 徹 26. 7. 23 〃 青木 和之 半田 力 野津 正明 長尾 尚人 26. 6. 20 〃 長谷波一史 - 14 - 長谷波一史(重任) (4)評議員および役員(平成 27 年 3 月 31 日現在) 評 議 員 石 黒 一 郎 一般財団法人NHKサービスセンター 理事長 久保田 啓 一 株式会社NHKアイテック 代表取締役社長 黒 田 徹 髙 畑 文 雄 早稲田大学理工学術院 教授 長 尾 尚 人 一般社団法人電子情報技術産業協会 専務理事・代表理事 野 津 正 明 羽 鳥 光 俊 一般財団法人テレコム先端技術研究支援センター 専務理事・事務局長 東京大学 名誉教授・国立情報学研究所 名誉教授 浜 田 泰 人 日本放送協会 理事・技師長 溝 口 明 秀 株式会社NHK出版 代表取締役社長 甕 昭 男 YRP研究開発推進協会 会長 日本放送協会 放送技術研究所長 - 15 - 役 理 員 事 長 河 口 正 人 理 事 林 理 事 藤 澤 秀 一 知 之 理事(非常勤) 伊 関 洋 早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 教授 理事(非常勤) 加 藤 俊 彦 一般財団法人デジタルコンテンツ協会 常務理事 理事(非常勤) 喜 安 拓 一般社団法人日本CATV技術協会 副理事長 理事(非常勤) 國 谷 実 公益社団法人 科学技術国際交流センター 理事 理事(非常勤) 髙 田 範 雄 一般社団法人電子情報技術産業協会 理事 理事(非常勤) 廣 瀬 通 孝 東京大学大学院情報理工学系研究科 教授 理事(非常勤) 松 井 房 樹 一般社団法人電波産業会 専務理事・代表理事 監事(非常勤) 長谷波 一 史 日本放送協会 関連事業局 専任部長 理事および監事に支払った報酬等の額 当事業年度における当財団の理事および監事に対する報酬等の内容は、以下の通りです。 対象者 人数 報酬の額 理 事 10 名 35 百万円 監 事 1名 - 注) 1.上記のうち、非常勤の理事 7 名、非常勤の監事 1 名には報酬は支払っていません。 2.上記には、従業員兼務理事の従業員分給与が含まれます。 - 16 - 8.組織および従業員数(平成 27 年 3 月 31 日現在) (1)組織 先 端 開 発 研 究 部 特 評 議 員 許 部 会 シ ス テ ム 技 術 部 理 事 会 理 事 長 送受信技術センター 監 事 ( 企 画 ) ( 推 進 ) 企画・開発推進部 総 (2)従業員数 77 名 (常勤役員 3 名を含む) - 17 - 務 部
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