論文 日本企業に見るウェブサイトのマーケティング利用

Japan Marketing Academy
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論文
日本企業に見るウェブサイトのマーケティング利用
1)
笊 ――― 技術の非決定論的性格
笆 ――― 調査分析
笳 ――― 結論
栗木 契
● 神戸大学大学院 経営学研究科 准教授
笊――― 技術の非決定論的性格
水越 康介
● 首都大学東京大学院 社会科学研究科 准教授
1.ウェブ・テクノロジーのマーケティング利用
新しいテクノロジーは,社会を変える。イ
宮本 次郎
ンターネットのもととなったのは,1969 年に
● 大阪ガス株式会社
米国防総省高等研究計画局(ARPA)が,同
国内の 4 カ所(カリフォルニア大学ロサンゼ
本稿の概要
ルス校,スタンフォード研究所,カリフォルニ
本研究は,現在わが国の主要企業が,ウェ
ア大学サンタバーバラ校,ユタ大学)の分散し
ブをマーケティングに活用するために,どの
たコンピュータをつないで開通した,パケッ
ようなウェブサイトを構築し,どのような運
ト交換方式のネットワークである。
(Hafner
営を行うようになっているかを把握し,その
and Matthew 1996 訳 pp.1-2, pp.147-152,
構造を実証的にとらえようとするものである。
pp.222-236, & pp.245-252,Hanson 2000 訳
以下では,まず,①われわれがこの調査と分
p.11,西垣 2001 p.12 アスキーメディアワーク
析を行うねらいとその位置づけを,技術の非
ス 2008)
。
決定論的性格に言及しながら,述べる。続い
1980 年代の後半,主要なインターネットの
て,②調査と分析の結果として,わが国の主
基盤は,NSF(全国科学基金)によって維持
要企業におけるウェブサイトの利用は,顧客
管理されており,ネットワーク上での直接的
維持,販売・宣伝,情報収集,窓口づくりとい
なビジネス活動は禁止されていた。1990 年代
った目的のもとで展開されており,これらの
の前半に転機が訪れた。規制は取り払われ,
マネジメントの枠組み(Plan-Do-See の組み立
インターネット上でのビジネス活動が認めら
て)には,市場型/コミュニティ型という分
れるようになったのである。併行して,イン
化の生成が見られることを提示する。最後に,
ターネット接続のための新たな基盤も構築さ
③この発見物の意義と今後の課題を述べる。
れた (Hafner and Matthew 1996 訳 pp.185187,& pp.252-256,Hanson 2000 訳 pp.11-12,
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論文
西垣 2001 pp.29-30)
。
モーションのためのツールとして利用すると
その後,世界におけるウェブのビジネス利
いう道筋と,④顧客相談の窓口として利用す
用は,急速に広がっていった。商用トップ・
るという道筋,そして,⑤顧客の購買や利用
レベル・ドメイン(com)の総数は,ウェブ
をサポートするツールとして利用するという
のビジネス利用の一つの指標となる。1995 年
道筋がある。
1 月には 2 万 7 千に過ぎなかったその数は,
ウェブサイトのマーケティング利用のモデ
1997 年 7 月には 76 万 4 千に急増した。また,
ルは,比較的早い時期に明確に提示されてい
1997 年に北米,ヨーロッパ,アジアの大企業
た 3)。上述したハンソンとほぼ同じ構成によ
を対象として行われた調査では,早くも対象
るウェブサイトの収益モデルは,R. フロスト
企業の 98 %が何らかのウェブサイトをもって
と J. シュトラスが 1999 年に,さらにさかの
いたことが報告されている(U.S. Department
ぼれば E. シュラクターが 1995 年に提示して
of Commerce 1998 訳 p.136)
。
いる 4)。特にシュラクターは,ウェブがビジ
これらの企業は,ウェブをどのようにマー
ネスの表舞台に登場してまだ間もない時期に
ケティングに利用していたのだろうか。1999
ウェブサイトの収益モデルの基本構成を提示
年に出版された著作のなかで,W.ハンソンは,
している。時期的な問題もあり,彼は,成功
企業のウェブサイト利用がその利益へと結び
したウェブサイトの事例は提示していない。
ついていく道筋や回路は,大別すると直接収
とはいえ,彼のモデルの基本構成は,ハンソ
益型と間接収益型に区分できる述べている
ンのものとほぼ同じである(Schlachter 1995,
Frost and Strass 1999 訳 pp.16-20)。5)
(Hanson 2000 訳 pp.167-184)。第 1 の直接収
益型は,企業が,自社のウェブサイトで製
2.テクノロジーによる社会変化の非決定性
品・サービスあるいはコンテンツを販売し,
直接収益をあげるというモデルである。企業
インターネットが,われわれの日々の生活
に直接的な収益をもたらすウェブサイトのマ
やビジネスにおける情報のやり取りの基本条
ーケティング利用には,①自社の製品やサー
件を変えるものであったことは,間違いない。
ビスの販売のツールとしてサイトを利用する
インターネット利用の拡大の引き金となった
という道筋と,②他社の製品やサービスなど
ウェブというテクノロジーの物理的・物質的
の販売を支援する広告や取引仲介のツールと
な諸特性については,インターネットのマー
してサイトを利用しその手数料や仲介料を得
ケティング利用が急拡大し始めた 1990 年代の
るという道筋がある。
なかばの時点で,すでに確立しており,これ
第 2 の間接収益型は,企業が,ウェブサイ
らの条件に基づいて,その後のウェブサイト
トを利用して,自社のマーケティング活動の
のマーケティング利用の可能性を推論し,一
効果や効率を高めることで,事業の収益性を
定の範囲で見通すことが可能だった。シュラ
高めるというモデルである。企業に間接的に
クターたちは,このような可能性をとらえて,
収益をもたらすウェブサイトのマーケティン
先駆的な議論を提示したのである。
だが一方で,われわれには次のような課題
グ利用には,③自社の製品やサービスのプロ
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日本企業に見るウェブサイトのマーケティング利用
が残されている。シュラクターの先駆性は,
3.見通せたものと,見通せなかったもの
新しいテクノロジーが社会におよぼす影響の
ウェブサイトのマーケティング利用につい
すべてを,その萌芽期に見通せてしまうとい
うことを意味するわけではない。われわれが,
ては,すでに多くの先行文献がある。初期の
わが国の産業社会における,ウェブサイトの
文献の課題は,ウェブというテクノロジーの
マーケティング利用の様式の分化をあらため
物理的・物質的な特徴をとらえて,それらの
て検証するべきだと考えた背景には,技術社
条件のもとでのマーケティング上の利用可能
会論による以下のような知見がある。
性を推論し,見通すことだった(たとえば,
C. S. フィッシャーは,電話という,百年以
Schlachter 1995,Peterson, Balasubramanian
上前に登場し,社会に大きな影響をおよぼし
and Bronnenberg 1997)。続いて,企業によ
てきたテクノロジーの歴史を振り返り,「電話
る実際のウェブサイトのマーケティング利用
のような生活の基盤レベルに物質的な変化が
が拡大し始めると,その先駆的な成功事例や
起きた場合,日常生活の条件は変わるには変
試行錯誤の結果を分析し,利用のモデルを特
わる」と述べる。しかしフィッシャーによれ
定化しようとする,事例ベースのアプローチ
ば,この条件面での変化が,社会のあり方を
が盛んになった(たとえば,Timmers 1998,
決定するとの見方は単純すぎる。なぜなら,
Frost and Strass 1999,Mahadevan 2000,
「人びとは,新しい技術をさまざまな目的に合
Hanson 2000,石井,厚美 2002,池尾 b 2003,
わせて使いこなしていく」からであり,さら
村本,菊川 2003,松岡,市川,竹田 2003,
に「新技術の発明者たちが予測もしなければ
木村 2005,石井,水越 2006)
。
望んでもいなかったものまで考え出す」から
対象が,萌芽的な少数事例に限定される段
である。その結果,「新しいテクノロジーによ
階では,当然ながら,主流となるのは,規範
って変化した環境に人びとが適応していくの
的研究や事例記述のスタイルによる研究であ
に応じて,今度は人びとがテクノロジーを生
る。しかし現在では,ウェブサイトのマーケ
活に適応させていく」ということが起こる。
ティング利用は,多数の企業に広がっており,
(Fisher 1992 訳 p.7, p.25。同様の指摘として,
各々の試行錯誤を通じた改編も進んでいる。
これら各企業の試行錯誤の結果は,一定の方
佐藤 1996 pp.81-94)
。
向に収斂し,何らかの新しい様式や秩序が形
同じことは,ウェブというテクノロジーが,
成されつつあるのではないかと思われる。
消費者行動や企業活動におよぼす影響につい
ても,繰り返される可能性が高い。技術社会
ではこのとき,われわれは,ウェブサイト
論が提起する,テクノロジーによる社会変化
のマーケティング利用のどのような局面に注
の「非決定性」や「社会的・文化的条件との
目しながら,実証を行うべきなのだろうか?
相互作用」の問題は,技術による社会変化を
この問いに答えるためには,われわれはさら
的確に理解するには,経験的・歴史的な追跡
に,技術社会論が,どのような局面で,衝撃-
調査を繰り返し行う必要があることを示して
刷り込みモデル(Impact-Imprint Model)や
いる(Fisher 1992 訳 pp.23-27)
。
徴候的分析(Symptomatic Analysis)といっ
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た決定論的なアプローチではなく,社会構築
米各地で実現していった。特にブタペストで
主義(Social constructivism)という,テク
は,第 1 次世界大戦までの期間とはいえ,ニ
ノロジーと社会の相互作用プロセスを重視す
ュースや音楽を電話回線で流すサービスが,
るアプローチを必要とすることになったかを,
事業として大きく発展を遂げた。わが国でも,
振り返っておく必要がある(Fisher 1992 訳
第 2 次世界大戦後から 1960 年代初頭までの時
pp.7-28)
。
期に,農村部では電話兼用の有線放送施設の
電話は,1876 年に A.G.ベルによって発明さ
利用が広がっていた。これは,空襲警報用の
れたといわれる。この年にベルは公開実験を
有線放送設備の転用から始まったもので,ピ
行い,彼の特許が正式に登録された。この
ーク時には,全国で 2600 カ所を超える有線放
「遠くに離れた人と人との間で音声を受送信す
送電話施設があったという(吉見 1992,水越
るための装置」は,同年のフィラデルフィア
1992)。だが,その後の電話は,ニュースや音
建国百年祭博覧会に出品され,人びとの注目
楽ではなく通話を,複数間ではなく個人間の
と関心を集めた。同様のデモンストレーショ
コミュニケーションを主に担う,地域や国境
ンは,イングランドやスコットランドでも行
を越えたユニバーサルなメディアへと収斂し
われ,電話はその利用をめぐって欧米の各地
ていった。現在われわれが馴染んでいる電話
の人びとの想像力をかき立てていった(Fish-
(有線電話)というメディアの使用方法は,テ
er 1992 訳 p.48,水越 1992)
。
クノロジーの必然ではなく,社会的プロセス
水越伸によれば,ベルが特許を取得した 2
の産物なのである。
年後の 1878 年には,『パンチ』誌上に,電話
また,電話が個人間のコミュニケーション
の可能性を絵入りで語る次のような記事が登
を担うメディアだとはいっても,そのすべて
場している。そこには,想像上の電話の 4 つ
を担うわけではなく,たとえば対面による会
の可能性が描かれている。①寝室の壁のラッ
話などの他の手段との棲み分けや使い分けが
パ状の電話で,遠く離れたセイロンの友人と
生じる。この使い分けの境界も,テクノロジ
話す婦人,②同じくラッパ状の電話を持って,
ーの物理的・物質的な特徴によって必然的に
遠くで歌う男友達にためにピアノ伴奏をして
定まるわけではなく,文化の影響を無視でき
欲しいと母親に頼む娘,③各地で演奏されて
ない。たとえば,佐藤俊樹は,1994 年に行わ
いる音楽を自宅で楽しむために,どのような
れた郵政省郵政研究所による調査をもとに,
時間割で電話を切り替えていくかを,召使い
当時日米では電話と対面のコミュニケーショ
に指示している女主人,そして,④ワインの
ンに関して,異なる使い分けの境界が形成さ
ようなボトルに詰められた音楽 ―これを電話
れ て い た こ と を 指 摘 し て い る ( 佐 藤 1996
の回路に組み込むことで音楽が再生される―
pp.140-142)6)。
このテクノロジーの利用の様式をめぐる分
を,来客に聞かせるために倉庫で念入りに選
化とその変容のプロセスは,テクノロジーの
ぶ男主人(水越 1992)
。
素材性を理解するだけでは,予断のつかない
ここで描かれた「ラジオのような電話」は,
問 題 と な る 7 )。すなわち,上述したように,
単なる空想の産物ではなく,実際にその後欧
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日本企業に見るウェブサイトのマーケティング利用
電話というテクノロジーの素材性にもとづく
ウェブモールが相次いだ一方で,コミュティ
利用の可能性については,テクノロジーが登
型のサイトであるアマゾンが成功を納めたこ
場して間もない時点においても想像したり,
ともあり,マーケティングの領域では,急速
その一部を実行に移したりしてみることが可
にコミュティ型のサイトが関心を集めるよう
能だった。しかし,そこでとらえられていた
になっていった(赤木 1999, pp.22-46,Werry
のは,可能性の集合― 何が実現可能かのリス
2000)
。
ト― であって,その帰結 ―社会的プロセス
また,テクノロジー面では,インターネッ
のなかで,どのような利用の様式の分化が生
ト基盤の高速・大容量化,ブログや SNS など
成し,時間とともにどのような分化の形態が
が登場したことも,コミュニティ化の流れを
支配的になっていくかの探究― ではなかった。
後押ししたとされる。そのなかで,企業の多
くが自社ウェブサイトへの登録をユーザーに
4.企業サイトのコミュニティ化
求めるようになり,登録ユーザーたちとの持
同様の指摘は,ウェブサイトのマーケティ
続的なコミュニケーションを,企業とユーザ
ング利用に対しても行うことができるだろう
ーの間,そしてユーザーとユーザーの間の 2
か? なるほど,シュラクターやハンソンが
つの方向で展開し,マーケティングに利用し
見いだした利用のモデルもまた,素材性に依
ようする動きが生じた(池尾 a 2003,水越
拠した利用可能性の集合であって,「それらの
2007)
。
なかの何が,どのような組み合わせで,産業
まとめよう。直接収益型/間接収益型とい
社会のなかで普及し,利用されるようになっ
う区分は,ウェブサイトのマーケティング利
ていくか」をとらえ尽くしたものではない。
用の分化をとらえるうえでの,一つの枠組み
ウェブサイトは,不特定多数の人が利用可
であり,この問題を論じる際に,早い時期か
能な「人類共通の広場」ともなれば(Kim
ら用いられていた。しかし,市場型/コミュ
2000 訳, p. xi),登録を行い ID やパスワード
ニティ型という新たな区分が,ウェブ・テク
をもった人だけが参加可能な「会員制のクラ
ノロジーのマーケティング利用が進展してい
ブ」ともなる。この 2 つの可能性が,どのよ
くプロセスのなかで,マーケティング利用の
うに利用され,定着していくかを,あらかじ
分化をとらえる新たな枠組みとして注目され
め見通すことは難しく,初期のインターネッ
るようになってきている 9)。
トの商業利用においては,ある種の混乱が見
5.本稿の課題
られたとの指摘がある。赤木昭夫や C. ウェリ
ーによれば,会員制のクラブである「コミュ
このように,コミュニティ型のウェブサイ
ニティ型」のウェブサイト 8)は,黎明期のオ
トは,マーケティング利用の新しいモデルに
ンライン・ショッピングやウェブモールの主
光をあてることになった。しかし,その指摘
流ではなく,初期のウェブモールの多くは,
は定性的な観察に基づくものだった。一方で,
市場の効率性を信奉した「市場型」のウェブ
従前からの規範モデルについていえば,その
サイトだった。しかし,短期間で行き詰まる
直接収益型と間接収益型という区分は,テク
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ノロジーの物理的・物質的な特徴を踏まえた
か,そしてこのウェブ・サイトのマーケティ
論理的な推論から,設定されたものであって,
ング利用のマネジメントの枠組みにどのよう
テクノロジーと社会の相互作用のプロセスの
に分化が生じているのかはわからない。
結果をとらえたものではない。企業の試行錯
そこで,以下では,われわれが 2007 年 6 月
誤の歴史的プロセスは,国によって異なる文
に実施したサーベイにもとづき,わが国の主
化や歴史,そして産業構造や競争環境の影響
要企業が,どのようなモデルのもとでウェブ
を受けながら展開していくはずである。すな
サイトをマーケティングに活用しているかを
わち,わが国のウェブサイトのマーケティン
検討する。そのために,上述した赤木やウェ
グ利用の様式がどのように分化していくかは,
リーらによる「コミュニティ型」あるいは会
すでに解明された問題ではなく,現在進行し
員制のサイトについての定性的な観察に基づ
つつある歴史のなかでの検証が待たれる,残
く分化の指摘が,わが国の主要企業のウェブ
された課題なのである。
サイトにどの程度当てはまるかを定量的に検
わが国の産業社会における,ウェブサイト
証する。具体的には,①「コミュニティ型」
の利用は,どのような状態にあるのだろうか。
のサイトは,「市場型」あるいは一般ウェブサ
『インターネット白書』は,その手がかりを提
イトに遅れて普及していったか,をまず確認
示してくれる。わが国の企業のウェブサイト
する。次に,②この「コミュニティ型」は
の用途で最も多いのは,「会社概要の掲載・告
「市場型」とはマネジメント枠組みが異なるサ
知」(85.0 %)であり,次いで「製品・サービ
イトなのか,すなわち両者のマーケティング
ス情報の掲載・告知」(72.7 %),「人材募集」
利用における目的(Plan)の違いが,サイト
(49.3 %),「製品・サービスの資料受付・キャ
上の運営方式(Do)の違い(会員制の導入の
ンペーン」(39.6 %),「製品・サービスのアフ
有無),および成果指標(See)の違いに結び
ターケア・クレーム受付などの顧客対応窓口」
ついているかを検討する。
(30.3 %),「製品・サービスの販売予約・受付
笆――― 調査分析
(EC)」(26.2%)となる(862 社の企業ウェブ
サイト管理者による回答による。財団法人イ
1.調査概要
ンターネット協会 2005, p.213)。現在のとこ
本調査は,2007 年 6 月 5 日から 6 月 20 日の
ろ,企業はウェブサイトをマーケティングの
間に,郵送留置調査法を用いて実施された。
領域で利用することが多いようである。
調査対象企業は,市販の上場企業職員録デー
とはいえ,このデータは,ウェブサイトを
利用して企業が何を行っているかをとらえた
タベース(『会社職員録 全上場企業 2007』,
ものであって,どのような利用のモデルのも
ダイヤモンド社)より,東証一部上場企業で
とでウェブサイトを企業がマーケティングに
消費者向けのウェブサイトを有するメーカー,
活用しているかをとらえたものではない。す
流通・サービス企業を選出し,広報,営業企
なわち,企業がこれらの用途をどのような
画,総合企画もしくはそれに相当する部門長,
Plan-Do-See の組み立てのもとで用いているの
部長級に向けて調査票の郵送,および FAX
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日本企業に見るウェブサイトのマーケティング利用
による案内を行った 10)。700 社を対象に調査
サイトでは,開設時期が 2000 年以前に集中し
票を発送し,回収できたのは 125 社,うち有
ているのに対し,会員制ウェブサイトでは開
効回答を得られたのは 120 社であった(回収
設時期の分散が大きく,かつ一般ウェブサイ
率 17.1 %)。
トに遅れた展開となっていることがわかる 11)。
赤木やウィリーの指摘と同様の傾向が確認さ
回収サンプルの概要は以下のとおりである。
れる。
業種内訳については,食品 13 社,繊維・紙パ
ルプ 4 社,化学 9 社,電気機器 5 社,その他
会員制ウェブサイトの開設数,会員数,一
製造業 7 社,商業 24 社,銀行・その他金融 20
ヶ月間のページビュー,一か月間のユニーク
社,証券・不動産 11 社,陸・海・空運・倉庫
ユーザー数については, 図− 3 ∼ 6 に示す 12)。
6 社,情報通信 4 社,電気・ガス 4 社,サービ
会員数やページビュー,ユニークユーザー数
ス 13 社であった。企業規模については,従業
については,小規模なウェブサイトと大規模
員数 500 人未満 15 社,501-999 人 18 社,1000-
なサイトの二極化が見られる。また,一般・
4999 人 58 社,5000-9999 人 16 社,1 万人以上
会員制ウェブサイトを運営する主管部署は多
13 社であった。
岐にわたるが,広報・ IR,マーケティング,
。
営業が中心を占めている(図−7)
2.ウェブサイトの基本状況
3.ウェブサイトの目的
120 サンプルのウェブサイト管理の基本状
況を確認しよう。市場型と見なされる「一般
次に,ウェブサイトの「目的・狙い」がど
ウェブサイト(非会員制ウェブサイト)」の開
のように設定されているかについて確認しよ
設時期,およびコミュニティ型と見なされる
う。ウェブサイトの目的については,全 12 項
目の設問(直接記入による「その他」を除く),
「会員制ウェブサイト」の開設時期は,それぞ
れ図− 1,図− 2 のとおりである。インターネ
に対して,「当てはまらない(1)」から「当て
ットのビジネス利用が始まった 1993 年から
はまる(5)」までの 5 点尺度で回答を得た
2007 年までの時期を振り返ると,一般ウェブ
( 表− 1 )。これらの回答をもとに主成分分析
■図―― 1
一般ウェブサイトの開設時期
25
20
15
10
5
0
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 不明 欠損
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■図―― 2
会員制ウェブサイトの開設時期
51
25
20
15
10
5
0
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 不明 欠損
■図―― 3
■図―― 4
会員制ウェブサイトの開設数
会員制ウェブサイトの会員数
10 15 20
15 20 万
万 万 人
人 人 未
未 未 満
満 満
-
1
9
万
人
未
満
-
1つ 2-3つ 4-5つ 5つ以上 なし 欠損
1
5
万
人
未
満
-
1
万
人
未
満
-
50
40
30
20
10
0
60
50
40
30
20
10
0
未
公
開
欠
損
■図―― 5
■図―― 6
会員制ウェブサイトの月間ページビュー
会員制ウェブサイトの月間ユニークユーザー数
20
15
10
5
0
20
15
10
5
0
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万
人
未
満
10 15 20
15 20 万
万 万 人
人 人 未
未 未 満
満 満
-
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万
人
未
満
-
1
万
人
未
満
欠
損
-
未
公
開
-
50 100
万
100 pv
万
pv 以
未 上
満
-
20
50
万
pv
未
満
-
5
20
万
pv
未
満
-
5
万
pv
未
満
未
公
開
欠
損
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日本企業に見るウェブサイトのマーケティング利用
■図―― 7
一般・会員制ウェブサイトを運営する主管部署(複数回答)
その他,2
欠損値,1
営業,20
専任セクション,14
宣伝・PR,14
マーケティング,23
社長室,2
経営企画,13
お客様相談室,5
IT・情報システム,13
広報・IR,36
総務・管理,8
を行い,固有値 1 以上となる 4 つの成分を抽
向と関連している。第 4 成分は「窓口づくり」
出した(表− 2) 。累積成分寄与率は 68.22%
である。「窓口づくり」は,企業の地名度の向
である。第 1 成分は「顧客維持」である。「顧
上や,お客様相談などのコミュニケーション
客維持」は,既存顧客を中心とした関係強化
をウェブサイトの目的としようとする志向と
をウェブサイトの目的としようとする志向と
関連している。
13)
関連している。第 2 成分は,「販売・宣伝」で
4.
「一般・会員制ウェブサイト」と「ウェ
ある。「販売・宣伝」は,製品・サービスの販
ブサイトの目的」の関係
売や広告をウェブサイトの目的としようとす
る志向と関連している。第 3 成分は「情報収
赤木やウェリーが指摘したように,一般ウ
集」である。「情報収集」は,市場からの情報
ェブサイトと会員制ウェブサイトでは,異な
収集をウェブサイトの目的としようとする志
った目的が設定され,両者の分化が生じてい
■表―― 1
ウェブサイトの目的・狙いに関する質問項目の平均と標準偏差 14)
平均値
標準偏差
12-1会社の認知度・知名度向上
3.82
1.41
12-2新規顧客の開拓
3.71
1.35
12-3既存顧客の囲い込み
3.91
1.30
12-4顧客の製品購買サービス利用頻度の向上
3.78
1.29
12-5ウェブサイトの固定ファンづくり
3.85
1.20
12-6緊密な関係作りのためのコミュニケーション
4.01
1.09
12-7新製品開発のためのマーケティングリサーチ
2.79
1.23
12-8既存製品・サービス改良のための顧客の声収集
3.13
1.24
12-9インターネットを通じての自社製品・サービスの直販
2.78
1.78
12-10インターネットを通じての他社製品・サービスを含めた直販
1.81
1.37
12-11インターネットを利用したお客様相談窓口
3.15
1.51
12-12ネットやメールでの広告の積極展開
3.07
1.44
53
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マーケティングジャーナル Vol.29 No.1(2009)
Japan Marketing Academy
★
論文
■表―― 2
ウェブサイトの目的・狙いに関する因子抽出
ウェブサイトの目的・狙いに関する質問項目
情報収集 窓口づくり
顧客維持
販売・宣伝
12-3既存顧客の囲い込み
0.90
-0.15
0.04
-0.05
12-6緊密な関係作りのためのコミュニケーション
0.80
-0.04
-0.05
0.12
12-5ウェブサイトの固定ファンづくり
0.79
0.08
-0.05
-0.10
12-4顧客の製品購買サービス利用頻度の向上
0.58
0.25
0.10
0.04
-0.09
0.88
-0.18
-0.10
12-9インターネットを通じての自社製品・サービスの直販
0.02
0.76
0.11
-0.14
12-12ネットやメールでの広告の積極展開
0.10
0.64
-0.02
0.21
12-7新製品開発のためのマーケティングリサーチ
0.04
-0.09
0.93
-0.09
-0.05
-0.03
0.92
0.06
0.04
-0.23
-0.14
0.88
-0.08
0.25
0.19
0.68
12-10インターネットを通じての他社製品・サービスを含めた直販
12-8既存製品・サービス改良のための顧客の声収集
12-1会社の認知度・知名度向上
12-11インターネットを利用したお客様相談窓口
α
.78
.66
.79
.44
累積成分寄与率は68.22%。
成分相関行列
顧客維持
販売・宣伝
情報収集
顧客維持
1.00
0.36
0.33
0.11
1.00
0.39
0.16
販売・宣伝
情報収集
窓口づくり
1.00
0.23
窓口づくり
1.00
るのだろうか。そこで,サンプルを一般ウェ
なるのに対し,「窓口づくり」の成分得点につ
ブサイト群(会員制ウェブサイトを開設して
いては,一般ウェブサイト群の方が高くなっ
いない企業)と会員制ウェブサイト群(会員
ている。一般ウェブサイトと会員制ウェブサ
制ウェブサイトを 1 つ以上開設している企業)
イトでは,その運営にあたって異なる目的が
に分割し,ウェブサイトの目的に関する 4 成
設定されるとの傾向が確認できる。
分の成分得点を比較した(表− 3)。T 検定の
5.ウェブサイトの評価指標
結果,4 成分すべてにおいて有意差が確認さ
以上の分析より,ウェブサイトのマーケテ
れた。すなわち,一般ウェブサイト群よりも
ィングにあたっては大きく 4 つの異なる目的
会員制ウェブサイト群の方が,「顧客維持」
が存在すること,そしてどのような目的が設
「販売・宣伝」「情報収集」の成分得点が高く
■表―― 3
通常・会員制ウェブサイトにおける目的の違い
通常ウェブサイト
会員制ウェブサイト
t値
自由度
有意水準
顧客維持
-0.53
0.33
-4.32
61.98
**
販売・宣伝
-0.28
0.16
-2.33
109
*
情報収集
-0.27
0.16
-2.22
109
*
0.46
-0.30
4.15
109
**
窓口づくり
** p<.01 * p<.05
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マーケティングジャーナル Vol.29 No.1(2009)
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日本企業に見るウェブサイトのマーケティング利用
定されやすいかは一般・会員制ウェブサイト
かを成果指標としようとする志向と関連して
において異なっていることが示された。続い
いる。あわせて,この成果指標に関する 3 成
て,ウェブサイトの「成果指標」がどのよう
分と,先に分析した目的に関する 4 成分,そ
に設定されているかについて確認しよう。先
して実際のページビューやユニークユーザー
の目的に関する分析と同様に,成果指標につ
。
数との相関を確認した(表− 6)
いても全 13 項目の設問に対して 5 点尺度で回
以上の分析から,大きく次のような傾向が
答を得た(表− 4)。これらの回答をもとに主
指摘できる。まず「窓口づくり」という目的
成分分析を行い,固有値 1 以上となる 3 つの
の特異性が指摘できる。4 つの目的のなかに
成分を抽出した( 表− 5 ) 。累積成分寄与率
おいても,「窓口づくり」は他の目的との相関
は 69.41%である。第 1 成分は,「積極反応」
が弱く,会員制ウェブサイトの目的となるこ
である。「積極反応度」は,「アンケート回収
とは少ない。また,「窓口づくり」は成果指標
数」や「キャンペーン応募数」「メルマガ登録
の 3 つの成分との相関も相対的に弱く,ウェ
者数」など,ウェブサイトで閲覧者の能動的
ブサイトの成果を多面的に評価しようとする
な反応がどれだけ得られたかを成果指標とし
姿勢に乏しいことが指摘できる。
15)
ようとする志向と関連している。第 2 成分は,
まとめると,わが国の主要企業のウェブサ
「閲覧数」である。
「閲覧数」は,
「アクセス数」
イトでは,大きく区分すると 2 つの利用の様
や「訪問者数」など,ウェブサイトがどれだ
式への分化が定着しつつあるのではないかと
け閲覧されたかを成果指標としようとする志
考えられる。すなわち,「顧客維持」「販売広
向と関連している。第 3 成分は,「製品改善」
告」「情報収集」という目的でマーケティング
である。「製品改善」は,「製品の改善数」や
利用されることが多い「コミュニティ型(会
「製品への情報反映数」など,ウェブサイトが
員制)のウェブサイト」と,「窓口づくり」と
実際の製品の改善や改良にどれだけ貢献した
いう目的でマーケティング利用されることが
■表―― 4
ウェブサイトの成果指標に関する平均・標準偏差
ウェブサイトの成果指標
平均値
標準偏差
Q29-1アクセス数
4.06
1.18
Q29-2訪問者数
4.00
1.28
Q29-3会員数
3.55
1.55
Q29-4メルマガ登録者数
2.91
1.62
Q29-5キャンペーン応募数
2.89
1.54
Q29-6資料請求数
2.43
1.47
Q29-7アンケート回答数
2.52
1.45
Q29-8書き込み数
2.04
1.38
Q29-9反映した開発数
2.09
1.28
Q29-10改善数
2.42
1.40
Q29-11売上
2.43
1.64
Q29-12リアルへの貢献
2.62
1.55
Q29-13ブランドロイヤルティ
3.10
1.45
55
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論文
■表―― 5
ウェブサイトの成果指標に関する因子抽出
ウェブサイトの成果指標
積極反応度
閲覧数
製品改善
α
29-7アンケート回答数
0.94
-0.25
0.02
.81
29-5キャンペーン応募数
0.86
0.02
0.01
29-4メルマガ登録者数
0.79
0.16
-0.11
29-3会員数
0.54
0.23
0.07
29-8書き込み数
0.48
0.06
0.07
29-1アクセス数
-0.03
0.95
-0.03
29-2訪問者数
0.05
0.92
-0.03
-0.03
-0.01
0.95
0.06
-0.09
0.94
-0.01
0.38
0.46
29-10製品の改善数
29-2製品への情報反映数
29-13リアルへの貢献
.90
.76
累積成分寄与率は 69.41%。
成分相関行列
積極反応度
積極反応度
閲覧数
1
製品改善
0.43
0.35
1
0.30
閲覧数
製品改善
1
■表―― 6
成分間の相関分析
相関係数
1.顧客維持
2.販売・宣伝
1.顧客
維持
1.00
2.販売
宣伝
3.情報
収集
4.窓口
づくり
5.積極
反応度
6.閲覧
数
0.36**
0.33**
0.11
0.31**
0.25**
0.16
0.24*
0.26*
1.00
0.39**
0.16
0.35**
0.36**
0.49**
0.40**
0.51**
1.00
0.23*
0.43**
0.20*
0.45**
0.41**
0.34**
1.00
0.09
0.18
0.21*
0.29**
0.15
1.00
0.43**
0.35**
0.17
0.28**
1.00
0.30**
0.11
0.17
1.00
0.15
0.15
1.00
0.91**
3.情報収集
4.窓口づくり
5.積極反応度
6.閲覧数
7.製品改善
7.製品
改善
8.ページビュー
9.ユニークユーザー数
8.ペー 9.ユニーク
ジビュー ユーザー数
1.00
**p<.01 *p<.05
多い「市場型(非会員制)のウェブサイト」
も多くなる傾向が見られる。
という 2 つの利用の様式への分化である。前
笳――― 結論
者様式では,「積極反応度」「閲覧数」「製品改
善」などの成果指標を多面的に評価に用いよ
うとする姿勢が強くなる傾向が見られる。ま
本稿では,わが国におけるウェブサイトの
た,実際の成果についても,前者では,ペー
マーケティング利用の様式を分析してきた。
ジビューだけではなく,ユニークユーザー数
ウェブサイトのマーケティング利用について
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日本企業に見るウェブサイトのマーケティング利用
は,その黎明期より,テクノロジーの素材性
この市場型/コミュニティ型の 2 つの利用
に依拠した予想がなされてきた。実際,この
の様式は,相互に相容れない(一つの企業ウ
予測は大枠では現実のものとなっており,テ
ェブサイト上で並び立たない)ものではない
クノロジーの物理的・物質的な特徴にしたが
が,マネジメント上の要点となるウェブ利用
って社会が変わりつつあるようにも見える。
の「目的」「運営方式」および「成果指標」の
その一方で,電話の普及に関する先行研究
組み合わせが大きく異なる。このわれわれの
が明らかにしてきたように,テクノロジーの
調査からの発見は,今後の実務にあたって
物理的・物質的な特性が社会を規定するだけ
Plan-Do-See の組み立てを検討する際の参照枠
ではなく,社会のなかでの実際の利用を通じ
組みの一つとなるだろう。
て,テクノロジーの物理的・物質的な特性の
また,将来的に,この分化したウェブサイ
なかの何がどのような組み合わせで利用され
トのマーケティング利用が,一つの様式に収
るかの方向性が見出されていくという局面が
束していくか,あるいは併存していくか,そ
ある。本稿では,ウェブサイトのマーケティ
れともさらに細分化していくかについては,
ング利用においても同様の二重の展開が見ら
これからのウェブ・マーケティングの研究が注
れることを,部分的にではあるが確認できた。
目していくべき一つの課題となるだろう。最
すなわち,われわれの調査によれば,わが
後に,本稿は探索的な現状分析を中心とした
国の主要企業のウェブサイトのマーケティン
研究であり,明らかになっていない問題も多
グ利用においては,直接収益型/間接収益型
く残されていることを確認しておきたい。今
とは独立の市場型(非会員制ウェブサイ
後は,以上の分析結果を参照しながら,マー
ト)/コミュティ型(会員制ウェブサイト)
ケティングにおけるウェブサイトの意義や,
という利用の様式の分化と,そのもとでのマ
その可能性を,さらに問い直していくことが
ネジメントの枠組みの分化が生じている。こ
必要となるはずである。そのためには,まず
の分化は,ウェブサイトのマーケティング利
今回発見されたウェブサイトのマーケティン
用の初期の見通しにはなかったものである。
グ利用の様式の分化が,各企業のどのような
「市場型」とは,不特定の相手に対する情報交
行動を通じて生み出されてきたかを記述し分
流を試みるウェブサイトである。「コミュニテ
析する,ダイナミックな事例研究を蓄積する
ィ型」とは,特定可能な参加者による情報交
ことが必要だろう。あるいは,なぜ,
「市場型」
流を試みるウェブサイトで,前者と比較する
「コミュニティ型」という様式が,ウェブサイ
と,そのマーケティング上の成果を多面的な
トのマーケティング利用における新たな秩序
指標で評価しようとする姿勢が強くなる。ま
を形成しつつあるかについても,マーケティ
た,「市場型」のウェブサイトは,企業の窓口
ング分野の多様なマネジメント諸理論,すな
づくりという目的で利用される傾向が強く,
わち営業管理やブランド管理,あるいは CRM
「コミュニティ型」のウェブサイトは,顧客維
や新製品開発管理の諸理論を踏まえた解釈や
持,販売・宣伝,情報収集の 3 つの目的で利用
検討を重ねていくいく必要があるだろう。加
される傾向が強く見られる。
えて,現在の企業のウェブサイトのマーケテ
57
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★
論文
ラクターやハンソンと同様のラインナップや構成
がしばしば用いられてきた。たとえば木村達也は,
2005 年の著作で,わが国の事例をベースにしなが
ら,マーケティングにおけるウェブサイト利用の
モデルを提示している。そこに挙げられているの
は,ハンソンとほぼ同じモデルのラインナップと
構成である。ハンソンの直接収益型に対応するの
が,木村の「ネット上の四つの価値モデル」であ
り,間接収益型に対応するのが,「インターネット
をマーケティングに活かす」の章で木村が提示す
る諸活動である(木村 2005 pp.67-110)。その他に
も,同様のモデルのラインナップと枠組みでウェ
ブサイトのマーケティング利用をとらえるものと
して村本,菊川 2003 pp.196-271,西村 2003,須藤
2003,栗木 2006 がある。
なお,シュラクターが提示したウェブサイト利用
のモデルは,ハンソンや木村たちのように詳細にそ
の道筋や回路を特定しているわけではない。たとえ
ば,他社の製品,サービスなどの販売の支援には,
ハンソンによれば,広告の他に取引仲介があり,さ
らに木村によれば,ウェブ上での取引仲介は,顧客
紹介型,価格比較型,オークション型,モール型の
4 つのタイプに分けることができる(木村 2005
pp.42-53)。しかし,こうした細分化ではなく,その
基本的な構成の異動に目を向けると,彼らが提示す
るモデルの基本的は同じ枠組みを共有していること
に気がつく。
6)この調査によれば,企業内のプロジェクトのメン
バー選定について,上司に意見を求めようとする
際に,上司が 30 分以内で行ける場所にいるのであ
れば,ニューヨークのビジネスパーソンも,東京
のビジネスパーソンも,大多数が,対面での会話
を選択する。ところが,上司が 30 分以上離れた場
所にいる場合は,ニューヨークのビジネスパーソ
ンの多くが,電話での会話に切り替えるのに対し
て,東京のビジネスパーソンでは,電話の利用が
増えるものの,依然として大多数が対面での会話
を選択するという傾向が見られた。
7)「素材性」の概念については,郡司 2006, pp.22-30
を参照。
8)コミュニティは,「関心や価値を共有する人々の集
まり」「共同の意思に導かれたコミュニケーション
の流れ」と定義される。この「関心の共有」や
「連接するコミュニケーション」を要件とするコミ
ュニティの定義は,ネット・コミュニティを論じ
る際に広く採用されてきた(金子 1997,Werry
2000,石井 2002 2006,池尾 2003,栗木 2006,水
越 2007)
。しかし,この定義では,市場とコミュニ
ィング利用の様式の分化が,今後どのように
変化していくかを定性的,定量的に把握して
いくことも必要だろう。このような探求を通
じて,現在進行形で進んでいるウェブサイト
のマーケティング利用の秩序形式をとらえる
理論枠組みが構築されていくはずである。
注
1)本稿の執筆にあたり,平田直子さんにはデータ収
集面でご助力をいただいた。また,西谷和博,木
全崇仁,川野達也,岸谷和広,西川英彦,棚橋豪,
山本奈央,侯聡聡の各氏からは貴重なご助言をい
ただいた。記して感謝したい。なお,あり得る誤
りは本稿の誌筆者に帰するものである。
3)一方で,意外なことに,こうしたウェブの利用の
多様な可能性やその影響力を,ビル・ゲイツやス
ティーブ・ジョブスといった IT 界の大物たちは,
当初は見逃していた(Hafner and Matthew 1996
訳 p.260,Hanson 2000 訳 p.41)。
4)この文献でシュラクターは,ウェブで収益をあげ
るには,明確なモデルが必要だと述べる。そして,
定期購読モデル,商店街モデル,広告モデル,コ
ンピュータ・サービス・モデル,補完事業モデル
の 5 つの基本類型を挙げている(Schlachter 1995)
。
シュラクターの定期購読モデルは,ウェブサイト
上で提供されるコンテンツの利用料・購読料から収
益をあげるというモデルである。商店街モデルは,
ウェブサイト上での製品・サービスの販売や,販売
サイトへの出店料や利用料から収益をあげるという
モデルである。広告モデルは,興味や関心の絞り込
まれたウェブサイト・ユーザーを対象にしたサイト
上の広告から収益をあげるというモデルである。コ
ンピュータ・サービス・モデルは,サーバー上のデ
ータ格納スペースの販売や,サイト・デザインのサ
ービスなど,ウェブサイト上で提供されるようにな
った新しいサービスやコンサルティングから収益を
あげるというモデルである。以上の 4 つのモデルは,
ハンソンが直接収益型に区分するモデルと重なり合
う。
最後の補完事業モデルは,ウェブサイト上で,無
料の情報やコンテンツを利用できるようにすること
で,既存事業の売上げや効率を高めることで収益を
得るというモデルである。これは,ハンソンが間接
収益型に区分するモデルに対応している。
5)その後,わが国でも,マーケティングにおけるウ
ェブサイト利用のモデルを俯瞰する際には,シュ
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日本企業に見るウェブサイトのマーケティング利用
ティの境界が不明瞭となる。誰でも参加が可能な,
不特定多数の参加者による情報交流の場もまた ,
コミュニティだということになってしまうからで
ある。
一方,根来龍之は,ビジネスの論理(市場経済メ
カニズム)とコミュニティの論理(情報民主化の論
理)という区分を用いている。この区分は,ネット
ビジネスの歴史的変化を規定する対立論理であると
されており(根来 2007,54 頁),ウェブサイトのマ
ーケティング利用を歴史的にとらえようとするわれ
われの議論にも通じるところがある。ただし,この
区分もまた,マーケティングの領域で関心を集めて
いる「コミュニティ型」のウェブサイト(ウェブモ
ールの会員制クラブなど)と,それ以前からの「市
場型」のウェブサイトを,操作的に区分しようとす
る際の指標としては適さない。市場経済メカニズム
と情報民主化の論理の双方を併せもつという点では,
「コミュニティ型」のウェブサイトも,「市場型」の
ウェブサイトも変わらないからである。
そこで,本稿では,W.ハンソンや大西潔にならっ
て,コミュニティへの参加には,「入会」手続きと
いう要件があることに注目する。すなわち,この
「特定された参加者」による情報交流の場が,コミ
ュニティであり,不特定の参加者による情報交流の
場が,市場である。このような対照によって,本稿
では,コミュニティの定義の操作性を確保する
(Hanson 2000 訳 p.381,大西 2002)。
9)直接収益型/間接収益型という区分と市場型/コ
ミュニティ型という区分は,独立の概念である。
コミュニティ型のウェブサイトをマーケティング
に利用する諸モデルは,先述した直接収益型/間
接収益型という区分とそのサブカテゴリから成る
枠組みのなかに位置づけることができる。(大西
2002,村本,菊川 2003 pp.196-271,西村 2003,須
藤 2003,栗木 2006)。たとえば,野島美保によれ
ば,オンラインゲームを対象としてではあるが,
その収益性にはコミュニティ(社会性)が影響を
与えることが示されている(野島 2007)。
とはいえコミュニティ型サイトのモデルは,シュ
ラクターやハンソンのモデルに対して新規性がある。
彼らのモデルでは,ウェブサイトを主に企業から情
報を発信するツールとしてとらえており,上述した
ようなユーザーの参加や双方向型のコミュニケーシ
ョンをマーケティングに利用することはほとんど考
えられていない。コミュニティ型の積極的な効果に
ついては,当初は想定されていなかったといえる。
10)ウェブサイトを実際に持っているかどうかの判断
についてはデータベース上でのアドレスにより行
った。
11)会員制ウェブサイトの欠損値は,会員制ウェブサ
イトを有していない企業の数,すなわち一般ウェ
ブサイトしか有していない企業の数を指している
と考えられる。
12)会員制ウェブサイトを有していると回答した企業
71 社を元にした。逆に一般ウェブサイトしか有し
ていない企業は 49 社である。
13)分析過程において,成分寄与率が複数の成分にお
いて 0.4 以上となった「12-2 新規顧客の開拓」を削
除している。なお,本来的に「目的」は合成的な
概念であるという想定の下で主成分をまずもって
求め,その上で解釈のために回転を加えるという
処理を行った。
14)いわゆる天井効果とフロア効果がみられる項目が
含まれているものの,そのこと自体が特定の成分
の存在を示している可能性があること,また実際
に,そのように分析結果が解釈可能だったことか
ら,いずれも除外せずに分析を行った。
15)
「Q29-3 書き込み数」
「Q29-11 売上」「Q29-13 ブラ
ンドロイヤルティ」については,成分負荷量が 0.4
以下,あるいは複数の成分に対して 0.4 以上の値を
とったため削除した。
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栗木 契(くりき けい)
1991 年 神戸大学経営学部卒業。
1997 年 神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程
修了。博士(商学)
。
同年 岡山大学経済学部講師。同助教授を経て。
2003 年より 神戸大学大学院経営学研究科助教授。
水越 康介(みずこし こうすけ)
2000 年 神戸大学経営学部卒業。
2005 年 神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程
修了。博士(商学)
。
同年 首都大学東京・都市教養学部経営学系研究員。
2007 年 首都大学東京大学院・社会科学研究科准教
授。
宮本 次郎(みやもと じろう)
1990 年 慶應義塾大学商学部卒業。
同年,大阪ガス株式会社に入社。
情報通信部門,事業開発部門を経て現在,コンタク
トセンターのゼネラルマネージャー。
2008 年 神戸大学大学院専門職学位課程修了(MBA)
。
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http://www.j-mac.or.jp
JAPAN MARKETING JOURNAL 113 ●
マーケティングジャーナル Vol.29 No.1(2009)