虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2006年改訂版)

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2006年改訂版)
Guidelines for the primary prevention of ischemic heart disease revised version
(JCS 2006)
合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本栄養・食糧学会,日本高血圧学会,日本更年期医学会,
日本小児循環器学会,日本心臓病学会,日本心臓リハビリテーション学会,日本糖尿病学会,
日本動脈硬化学会,日本老年医学会
班
長
北
畠
班
員
大
内
清
原
小
林
近
藤
齋
藤
齋
藤
島
本
代
田
土
友
原
顕 北海道大学(名誉教授)
卜
部
裕 九州大学大学院医学研究院社会環境医学講座環境医学分野
江
頭
正
人 東京大学老年病学
正 富山大学
大
村
寛
敏 順天堂大学医学部附属順天堂医院循環器内科
和
雄 お茶の水女子大学生活環境研究センター
岡
田
知
雄 日本大学小児科
宗
靖 さいたま記念病院内科
楠
岡
英
雄 国立病院機構大阪医療センター
康 千葉大学内科学第二
久
保
和
明 札幌医科大学医学部附属病院第二内科
久保田
浩
之 順天堂大学循環器内科学
齋
藤
重
幸 札幌医科大学第二内科
居
義
典 高知大学老年病科循環器科
佐久間
一
郎 カレスサッポロ北光記念クリニック
池
仁
暢 国立循環器病センター
佐
藤
田
研
介 日本大学小児科
佐
藤
正
二 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学
田
中
伸
明 山口県立総合医療センター臨床検査科
堀
尉
義 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座
協力員
諭 京都府立医科大学産婦人科
亨 高知大学老年病科
功 山形大学循環・呼吸・腎臓内科学
啓 博医館ホスピタル内科
洋 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学
本
庄
英
雄 京都府立医科大学産婦人科
筒
井
裕
之 北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学
松
h
益
Y 山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学
能
登
信
孝 のと小児科クリニック
横
山
光
宏 神戸大学大学院医学系研究科循環呼吸器病態学
武
城
英
明 千葉大学臨床遺伝子応用医学
靖
雄 東京大学健康科学・看護学専攻健康科学講座
竹
下
玲
子 北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学
松
尾
裕
英 四国電力総合健康開発センター
心
一 東京厚生年金病院
吉
川
純
一 大阪掖済会病院
外部評価委員
大
橋
岸
木
全
彰 麻生飯塚病院
(構成員の所属は 2006 年 11 月現在)
目
改訂にあたって
1.日本人における虚血性心疾患の特徴
1)疫学的調査
2)臨床的特徴の検討
a 心筋梗塞
b 労作性狭心症
c 安静狭心症
次
d 高齢者の虚血性心疾患
e 性差と虚血性心疾患
2.日本人における冠危険因子の評価
1)高脂血症
a コレステロール
b トリグリセライド,HDL コレステロールおよびその
他の脂質
1
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
c 家族性高コレステロール血症
2)高血圧
3)糖尿病
4)メタボリックシンドローム
5)家族歴,体重,喫煙
6)精神保健
3.日本人の虚血性心疾患への対応
1)総 論
2)各 論
a 運 動
b 栄養,体重,喫煙
c 年齢と性差
d 小 児
e 脂 質
f 高血圧
g 糖尿病
h メタボリックシンドローム
i 血液凝固系
j 精神保健
附表 1.虚血性心疾患の危険因子
附表 2.虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
(無断転載を禁ずる)
改訂にあたって
平成 11 年 4 月に日本循環器学会学術委員会で,虚血
局によるグレーディングを一部改定した方法で評価した.
性心疾患の一次予防ガイドラインとして,わが国におけ
る狭心症と心筋梗塞の予防のための指針を策定すること
0 .メタアナリシス
になり,平成 13 年に公表された1).
Ⅰ.大規模なよく管理された無作為対照比較試験
同ガイドラインは,日本循環器学会,日本心臓病学会,
日本小児循環器学会,日本糖尿病学会,日本高血圧学会,
Ⅲ.よく管理されたコホート研究
日本動脈硬化学会,日本老年学会,日本更年期学会,日
Ⅳ.よく管理されたケースコントロール試験
本栄養・食糧学会,日本心臓リハビリテーション学会を
Ⅴ.非比較対照試験または対照の少ない比較対照試験
母体として推薦された班員 17 名と実務協力員 12 名,事
Ⅵ.一致しないデータであるが,治療指針作成に有用
務局 2 名により構成された班により 2 年間にわたり調
Ⅶ.専門家の意見
査,研究し,最終的に全班員の合議により策定した.ガ
当初参考とした資料は総数 450 有余にのぼったが,当
イドラインの妥当性については 5 名の外部評価委員にお
初予想したように日本人に関するエビデンスが質,量と
願いした.
もに少なく,日本人のための日本人によるエビデンスの
同ガイドラインの最大の特色は虚血性心疾患の一次予
防を目標に多くのエキスパートが一同に会し,専門領域
さらなる充実が急務であることがわかった.
同ガイドラインの策定に当たっては,現在の医療事情,
に囚われず協議し一定の結論に収束し得たことである.
医療保険制度,医療経済学などを考慮し現時点において
わが国においてはガイドライン策定の根拠とすべき臨床
日本人で虚血性心疾患を予防しうるに必要な指針を提言
試験によるエビデンスが十分でないことは周知のことで
しえたと考えるが,さらに医学的知見,臨床試験のエビ
あるが,幸いにも,疫学調査には欧米に遜色のない研究
デンス,医療技術,環境の充実を経て理想的なガイドラ
が存在する.そこでガイドライン策定の手順として 1)
インと改定されていくことが望まれた.
日本人の虚血性心疾患の集団としての特徴を欧米におけ
2
Ⅱ.小規模だがよく管理された無作為対照比較試験
平成 17 年 3 月に日本循環器学会学術委員会で,同ガ
るそれと疫学調査に基づいて比較検討し,さらに 2)虚
イドラインの部分改訂が決定され,新たに班員 16 名と
血性心疾患を心筋梗塞,労作性挟心症,安静挟心症など
実務協力員 15 名により構成された班により 1 年間にわ
各病態の観点から日本と欧米との相違を調査し,高齢者,
たり検討が行われ,本ガイドラインが策定された.ガイ
性差による修飾についても検討した.これらの予備的調
ドラインの部分改訂の妥当性については 6 名の外部評価
査に基づき日本人における冠危険因子の関与について,
委員にお願いした.
高脂血症,高血圧,糖尿病,家族歴,体重,喫煙,精神
前ガイドラインの策定後,わが国においてもガイドラ
保健について考察し,最後に日本人の虚血性心疾患の一
イン策定の根拠とすべき臨床試験が発表され,エビデン
次予防のために日本人が遵守すべき生活習慣,危険因子
スの蓄積が進んでいる.また,メタボリックシンドロー
への対応,予防的治療法,について見解をまとめ提言と
ムに関する検討が進んでおり,本ガイドラインでは新た
した.調査の段階で収集した資料は,米国医療政策研究
に一項を設けた.
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
本稿では,死亡統計ならびに疫学調査の成績から,循環
器疾患の死亡率・発症率およびその危険因子にみられる
1
日本人における虚血性心疾患の特徴
日本人の特徴を諸外国の成績と比較しながら検討する.
2.虚血性心疾患の国際比較
a.死亡率
1
1 疫学的調査
図 1 は,WHO の死亡統計2)をもとに,最近の世界各
国の虚血性心疾患(急性心筋梗塞ならびにその他の虚血
性心疾患)死亡率を年齢調整して比べたものである.そ
1.はじめに
れによると旧ソビエト連邦の構成国ならびに東欧・北欧
日本人は脳卒中の死亡率が高く,反対に虚血性心疾患
の死亡率が上位を占め,ついで西欧・北米の先進諸国が
のリスクが低いことが特徴とされてきた.しかし,戦後
続いている.これに対し日本の死亡率は先進国の中で最
国民の生活水準が向上して食生活を含む生活習慣の欧米
も低く,東欧・北欧の 1/8〜1/10,西欧・北米の 1/5 に
化が進み,循環器疾患の疾病構造に変化が認められる.
過ぎない.男女間で比較すると,いずれの国においても
図1
国別にみた虚血性心疾患死亡率,人口10万対,WHO標準人口調整
(WHO : World Health Statistics Annual 1997-2003をもとに作成)
人口 10 万対死亡率
0
ウクライナ 5)
ロシア 5)
エストニア 5)
リトアニア 5)
ラトビア 5)
スロバキア 3)
ハンガリー 5)
ルーマニア 5)
ブルガリア 5)
チェコ 5)
フィンランド 5)
アイルランド 4)
クロアチア 5)
米国 3)
ニュージーランド 3)
イギリス 5)
ポーランド 5)
オーストリア 5)
スウェーデン 4)
シンガポール 4)
ドイツ 4)
デンマーク 2)
ノルウェー 4)
カナダ 3)
イスラエル 2)
ベルギー 1)
ギリシャ 4)
ブラジル 3)
ルクセンブルク 5)
オランダ 6)
イタリア 4)
アルゼンチン 4)
スペイン 4)
ポルトガル 5)
フランス 3)
オーストラリア 4)
韓国 5)
日本 5)
50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550
ウクライナ 5)
ロシア 5)
リトアニア 5)
エストニア 5)
スロバキア 3)
ラトビア 5)
ルーマニア 5)
ハンガリー 5)
ブルガリア 5)
チェコ 5)
フィンランド 5)
米国 3)
クロアチア 5)
アイルランド 4)
シンガポール 4)
オーストラリア 4)
ニュージーランド 3)
ドイツ 4)
デンマーク 2)
イギリス 5)
スウェーデン 4)
オーストリア 5)
ポーランド 5)
カナダ 3)
イスラエル 2)
ノルウェー 4)
ブラジル 3)
ベルギー 1)
ルクセンブルク 5)
イタリア 4)
ギリシャ 4)
オランダ 6)
ポルトガル 5)
男性
スペイン 4)
アルゼンチン 4)
フランス 3)
1)
1997年,2)1999年,3)2000年,
韓国 5)
4)
2001年,5)2002年,6)2003年
日本 5)
人口 10 万対死亡率
0
50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550
女性
3
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
図2
久山町研究と Framingham 研究における心筋梗塞および脳梗塞発症率の比較,追跡各26年
心 筋 梗 塞
脳 梗 塞
対1,000人/年
対1,000人/年
15
15
久山町研究
Framingham 研究
10
10
5
5
発
症
率
0
0
男
性
女
性
男性の死亡率が女性に比べ高いが,この傾向はわが国で
も変わりはなく男性はおよそ 2 倍のリスクがある.
男
性
女
性
3.虚血性心疾患の時代的推移
a.死亡率
b.発症率
虚血性心疾患の時代的変化を把握することは,その予
死亡統計は死に至らない軽症例の実態を反映していな
防対策上きわめて重要である.わが国の人口動態統計5)
い.またその基礎となる死亡診断書の正確性にも問題が
において心血管病死亡率の推移を年齢調整してみると,
ある.したがって,世界におけるわが国の虚血性心疾患
脳血管疾患死亡率は 1970 年代より着実に減少している
の位置づけを正確に把握するにはその発症率を検討する
のに対し,心疾患死亡率は過去 40 年間ほぼ横這い,あ
必要があるが,同一基準によってわが国と他の国の発症
るいはわずかながら減少傾向にある(図 3).一方,虚
率を比較した報告はない.この問題を可及的に明らかに
血性心疾患死亡率は,男女とも 1970 年まで増加した後
するために,調査精度が比較的高い米国白人を対象にし
は今日まで減少傾向を示している.1995 年に心疾患死
た Framingham 研究
と福岡久山町の住民(久山町研
亡率が減って,脳血管疾患および虚血性心疾患死亡率が
究)をそれぞれ 26 年間追跡した成績において,急性心
増えているのは,国際疾病分類が第 9 版から第 10 版に
筋梗塞と脳梗塞の粗発症率を比較した(図 2).その結
変更になった際に死亡診断書の記載法が変更になったこ
果,久山町における心筋梗塞発症率(対 1,000 人/年)
との影響と考えられる.
3,4)
は男性 1.6,女性 0.7,Framingham 研究はそれぞれ 7.1,
4.2 で,Framingham の方が 5〜6 倍高かった.一方,久
b.発症率
山町の脳梗塞発症率(対 1,000 人/年)は男性 10.8,女
わが国では,虚血性心疾患発症率の動向について検討
性 6.4 で,Framingham の 2.5,1.9 に比べ 3〜4 倍高かっ
した疫学調査の成績は少ない.各地の地域・職域の疫学
た.つまり,日本人は脳卒中のリスクが高い代わりに虚
成績を集計した厚生省疫学共同研究班の結果 6) では,
血性心疾患のリスクが低く,欧米白人とは異なった動脈
1960 年代から少なくとも 1980 年代後半までは心筋梗
硬化のパターンを呈するといえる.
塞・突然死発症率に明らかな変動はみられなかった.福
岡県久山町の追跡調査7)でも,1961 年から 2000 年にかけ
て虚血性心疾患発症率に有意な時代的変化はなかった.
4
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
図3
わが国における心血管病の年齢調整死亡率(人口10万対)の年次推移(基準人口は1985年のモデル人口)
400
400
男
性
女
350
年
齢
調
整
死
亡
率
︵
人
口
十
万
対
︶
性
350
脳血管疾患
300
300
250
250
200
200
脳血管疾患
心疾患
150
150
100
100
心疾患
虚血性心疾患
50
虚血性心疾患
50
0
1950 55
60
65
70
75
80
85
90
95 2000
0
1950 55
60
65
70
75
年
85
90
95 2000
テロール値が高い集団で虚血性心疾患のリスクになると
4.虚血性心疾患の危険因子
わが国の代表的な疫学調査
80
年
考えられる.血清コレステロールレベルが低かった従来
と Honolulu 心臓研究
6,8−17)
(日系人男性)18−21),Framingham 研究(米国白人)22−25),
ならびに Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC)研
の日本人は,集団全体では虚血性心疾患に及ぼす高脂血
症の影響も小さく,頻度の高かった喫煙の影響も比較的
小さかったと推定される.
において虚血性心疾患の危険
近年わが国では,肥満,高脂血症,耐糖能異常など代
因子を比較し,日本人の特徴を探った(表 1).それに
謝性疾患が大幅に増えて,虚血性心疾患リスクの増大が
よると,血圧値,喫煙,血清コレステロールの 3 大危険
危惧されている.一方,前述のように死亡統計や疫学調
因子は,年齢とともに共通の要因として取り上げられて
査の成績をみる限り,虚血性心疾患が増加した証拠は得
いる.一方,耐糖能異常,肥満,飲酒(予防的)はハワ
られていない.その要因として,わが国では高脂血症な
イ日系人および米国人では有意な危険因子となるが,日
ど代謝性疾患の増加が比較的最近になって起こり,国民
本では必ずしも共通の因子とはなっていない.40〜59
全体が代謝性疾患に暴露された期間が比較的短いこと
歳の男性からなる 16 のコホートを 25 年間追跡した 7 カ
や,高血圧管理の普及や喫煙率の低下によって,虚血性
究(米国白人・黒人)
26−28)
国研究の報告 では,年齢調整後の虚血性心疾患死亡率
心疾患の増加が押さえられていることなどが推察されて
(対 1,000 人)は日本の田主丸の 45 から東 Finland の
いる.しかし,米国で食生活習慣の改善や治療法の進歩
288 までばらついており,追跡開始時の危険因子のうち
により,虚血性心疾患が著明に減少しつつあるのに対し,
血清コレステロールだけがこの死亡率の違いを説明する
横這い状態であると言うことは,実際は増加に等しいと
因子であったという.また,久山町の第 1 集団(1961
言えるかもしれない.近年わが国でも欧米と同様に,
年)を 23 年間追跡した成績 では,対象者を追跡開始
HDL コレステロール低値,中性脂肪,肥満など代謝性
時の血清コレステロール高値(≧180 mg/dL)と喫煙の
疾患と虚血性心疾患の関係を指摘した報告が散見される
有無によって 4 群に分け,年齢・性・高血圧を調整して
ようになった8,13,14,17).わが国で将来にわたり代謝性疾
虚血性心疾患発症の相対危険を求めると,両者を持たな
患が増加し続ければ,虚血性心疾患が上昇に転じる可能
い群に比べ,血清コレステロール高値のみの群と喫煙習
性は高い.今後とも虚血性心疾患とその危険因子の動向
慣のみの群ではいずれも虚血性心疾患のリスクは上昇し
を注意深く見守る必要があり,その予防対策の確立が望
ていないが,両者の合併群の相対危険は 3.9 と有意に上
まれる.
29)
8)
昇し相乗効果が認められた.つまり,喫煙は血清コレス
5
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
表 1 コホート研究における虚血性心疾患の危険因子
福 岡
新 潟 NIPPON 共同研究 共同研究
広島/長崎
(新発田) DATA
1
2
(久 山)
年
齢
血
圧
喫
煙
血性コレステロール
HDL コレステロール
中
性
脂
肪
耐 糖 能 異 常
肥
満
心 電 図 異 常
飲
酒
フィブリノーゲン
男
女
男
女
男女
男女
男
+
+
+
+
+
+
+
−
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
−
+
+
+
+
−
−
+
+
+
+*
+
−
−
−
−
+
+
−
−
−
+
+
−
−
−
男
+
−
−
−
−
女
JACC
男
女
+
+
+
+
+
+*
+†
Honolulu
Framingham
(日系人)
男
男
女
+
+
+
+
+*
+
+
+
+
+
+
+
+*
−
+
+
+
+*
+
+
+
+
+
+*
+
+
+
+
+*
+
+*
+
ARIC
study
男
女
+
+
+
+*
−
+
+
+
+
+*
+
+
+
+
+正の有意な危険因子,+*負の有意な危険因子,−有意でない危険因子, +†男女込みでの解析
共同研究1:大阪現業を中心とした研究
共同研究2:井川町(秋田県),協和町(茨城県),野市町(高知県),八尾市(大阪府)の住民による共同研究
NIPPON DATA:National Integrated Project for Prospective Observation of Noncommunicable Disease and Its Trends in the Aged
JACC:Japan collaborative cohort study for evaluation of cancer risk sponsored by monbusho
ARIC:The Atherosclerosis Risk in Communities
的特徴を総括する.
5.まとめ
わが国の虚血性心疾患死亡率および発症率は欧米先進
諸国に比べ低く,現在のところその増加の兆しはない.
2.発症前の状態
わが国においては梗塞前狭心症を伴わない心筋梗塞を
その要因として,従来日本人は高脂血症,耐糖能異,肥
41〜76 % に認め,梗塞前狭心症を伴う心筋梗塞に比し
満など代謝性疾患の頻度が低かったことがあげられる.
急性期死亡率が高率であることが報告されている 31−33).
しかし,わが国では近年,代謝性疾患が大幅に増加して
一方,欧米においてもわが国と同様に梗塞前狭心症を伴
おり,虚血性心疾患の予防対策上,その是正が高血圧管
わない心筋梗塞を 25〜75 % に認め,予後不良であるこ
理や禁煙の普及とともに大きな課題として浮上している.
とが報告されている34).
2
2 臨床的特徴の検討
3.発症時病歴
a.発症時状況
a
心筋梗塞の発症は自宅が 66.7 % と全体の約 3 分の 2
心筋梗塞
を占め,その内訳は睡眠中が 14.2 %,食事中が 12.3 %,
飲酒中が 7.4 %,安静時が 5.6 %,排便・排尿中が 4.6 %
1.はじめに
を示し,自宅外の発症は 33.3 % であった35).発症時の
わが国での 1997 年の急性心筋梗塞の死亡率は人口 10
万対で,男性 46.6,女性 42.3 であり,死亡原因第 3 位
〜12 %,嘔吐が 2〜10 %,失神が 2〜5 % であった32,36).
の心疾患の約半数を占めている .心筋梗塞は致死的な
これら典型的な症状を示さない非典型例は年齢とともに
疾患であったが,近年,検査法・治療法の進歩により急
増加することが報告されている37).また,糖尿病患者で
性期予後は著しく改善している.一方で救命率の上昇に
は非典型的な症状を示す割合が非糖尿病患者患者に比し
伴い急性期を脱した患者の日常生活活動(ADL)や生
高率であることが報告されている32).時刻別の発症頻度
30)
命・生活の質(QOL)の保持とその予後の改善が問題
は起床数時間後の 8:00〜12:00 および夜間の 20:00
となってきた.わが国でも高齢化による急性心筋梗塞で
〜22:00 あたりにピークを持つ二峰性を示し,労作時
の ADL,QOL の保持の重要性が増してくると考えられ
発症では午前中のピークが顕著で,安静時発症では夜間
る.今回,わが国における心筋梗塞に対する論文・学会
のピークのみを認めることも報告されている38,39).
発表・総説等を調査し,日本人における心筋梗塞の臨床
6
症状は胸痛・胸部絞扼感が 70〜75 %,呼吸困難感が 10
心筋梗塞発症直後に突然死する症例も存在することか
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
ら,突然死の発生率を考慮に入れることは重要である.
1992〜1994 年における日本での病理解剖症例 95,142 例
表 2 日本および米国において心筋梗塞患者が各危険因子を
有する割合
日
について検討した成績では,313 例が突然死であった.
本
欧
米
そのうち病理診断が可能であった 225 例中,140 例(56
高齢者(70才以上)
46〜49.5%
15〜37%
%)が心血管系の死亡であり,75 例(33 %)が心筋梗
男
性
55〜87.5%
60〜75%
塞による死亡であった40).
心筋梗塞の既往
9〜22.2%
15〜35%
b.年齢分布
果は欧米と同様の結果であった
,この結
28〜54%
6.1〜25%
27〜45%
6〜27%
13〜43%
27.5〜36%
28〜45%
多枝病変
は 70〜74 歳であった.どの報告も女性の平均年齢は 10
歳ほど高齢であるという結果を示しており
44〜57%
Killip Ⅲ or Ⅳ
非Q波梗塞
男性の平均年齢は 62〜65 歳であり,女性の平均年齢
36,41)
前壁梗塞
※
%は各因子を有する患者が全体の何%かを示す
.
42−46)
4.入院時臨床像
50 % であり,入院時の重症度が高値を示す程死亡率も
上昇する.すなわち,Killip Ⅰで 5〜6.3 %,Killip Ⅱで
a.冠危険因子
報告によって差を認めるが,冠危険因子としては高血
14.5〜16 %,Killip Ⅲで 25〜38.7 %,Killip Ⅳで 72〜
圧 44〜65 %,糖尿病 22〜29 %,喫煙 42〜72 %,高脂血
74.2 % と報告されている31,56).Killip Ⅰ〜Ⅲは再灌流療
症 19〜59 % および肥満 19〜27 % であった36,47−50).この
法などの治療法の進歩により死亡率は低下しているが,
ばらつきは,農村部では都市部と比較して高血圧を有す
Killip Ⅳでは依然として高値を示している.心破裂を併
る症例が高率で,高脂血症を有する症例が低率であるこ
発した症例では死亡率は非常に高く,いずれの報告にお
とで説明されている.すなわち,農村部では冠動脈疾患
いても 90 % 以上の死亡率である.降圧による心破裂予
の危険因子としての総コレステロール値よりも,高血圧
防の施行および緊急手術による救命例の増加によって
が重要である.また,危険因子は経時的に変遷している
も,死亡原因に占める割合は変化していないのが現状で
ことが示唆されている.すなわち,高血圧,糖尿病は漸
ある56).この結果は欧米と同様の結果であった42−46).
次増加しているが,高脂血症は一旦,増加したが,最近
減少傾向にあることが報告されている51).欧米の大規模
臨床試験のデータと検討すると危険因子の合併症は,高
5.予
後
a.短期予後
血圧 30〜55 %,糖尿病 16〜28 %,喫煙 16〜36 %,高脂
欧米において急性心筋梗塞による短期予後は改善して
血症 16〜31 % であり,喫煙率がわが国では高率である
いることが報告されている.すなわち,院内死亡は
と思われる42−46).実際に急性心筋梗塞に対する喫煙の影
1960 年代では 29 %,1970 年代では 21 %,1980 年代で
響における欧米と日本の差を比較した研究は存在しない
は 16 %,1990 年代では 10 % と報告されている.この
が,人種間における急性冠症候群の予後を比較した研究
理由は血栓溶解療法,抗凝固,抗血小板療法の施行率の
では欧米に比し日本で有意に喫煙率が高率であることが
上昇によると考察されている46,57,58).わが国においても
報告されている52).
CCU の開設,冠動脈内血栓溶解療法および経皮的冠動
脈形成術の開始によって急性心筋梗塞の院内死亡率は低
b.重症度
36,52−55)
下していることが報告されている 56,59).CCU 開設以前
心筋梗塞の重症度に関する検討は多く存在するため,
(表 2)にまとめる.また,欧米の大規模臨床試験のデ
の 1982 年〜1985 年までの死亡率は 30.5 % であったが,
CCU 開設から患者数は増加しているにも関わらず死亡
率は 9.4 % に低下している.その後,1986 年から PTCR,
ータも添える42−46).
1987 年から PTCA が開始され,発症 6 時間以内の症例
c.合併症
に対してはほぼ全例に PTCR もしくは PTCA が施行さ
合併症は心不全が 15〜27 %,ショックが 15〜18 %,
心破裂が 4〜5 % に認めると報告されている
.
36,52,55−57)
れ,死亡率の改善については明らかではないが心室瘤の
減少を認めている.近年,以前は禁忌とされていた急性
これらの合併症を併発した症例では死亡率が高値を示
心筋梗塞に対するステントの使用が積極的に施行される
す.入院時に心不全を合併した症例の短期死亡率は約
ようになり死亡率がさらに改善している可能性がある.
7
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
最近では入院し得た症例の死亡率は 7.5〜8.8 % と報告
る.近年,食の欧米化が進んでいることおよび心筋梗塞,
されており,院内死亡率は改善しているように思われ
重症三枝病変を有する非 Q 波梗塞の頻度が上昇してき
.また,Killip Ⅳの症例も院内死亡率は 40〜59 %
ていることから,入院時の重症度および再発率の上昇に
る
55,60)
と報告されており,改善傾向がみられる
.
61,62)
よって予後が悪化するかもしれない.一方,急性心筋梗
塞治療の進歩や CCU 等の医療基盤の整備により,重症
b.短期予後の予測因子
度が相対的に縮小する可能性もある.これら心筋梗塞対
心筋梗塞発症 28 日以内の死亡の予測因子を検討した
策の基盤となる基礎的データの収集が欠かせない.しか
報告では ,28 日以内に死亡した症例は生存した症例に
し,わが国では全国規模の大規模調査は殆ど行われてお
53)
対して,高齢者,女性,高血圧および糖尿病の既往,心
らず,1 病院ないし 1 地方の報告が主であり無作為化な
筋梗塞の既往,来院時 Killip Ⅲ以上,非喫煙者および再
ど十分に吟味された臨床試験に乏しい.基盤となる臨床
灌流療法未施行が有意に高値であった.多変量解析によ
データを欧米の大規模臨床研究に依存せざるをえず,こ
ると高齢および来院時 Killip Ⅲ以上が,独立した心筋梗
れでは疾患発症・進展の遺伝的背景および環境背景に対
塞発症 28 日以内の死亡の予測因子であることが示され
する配慮が十分とは言えない.わが国独自の大規模臨床
ている.これは欧米の報告と同様の結果であった.
研究を可能とする施策が急務であろう.
b
c.長期予後
急性心筋梗塞で入院後,生存退院した症例での長期予
後を検討した研究によると,1 年死亡率は 6.2 %,3 年
労作性狭心症
1.はじめに
死亡率は 7.6〜12 %,5 年死亡率は 18〜19.1 % と報告さ
労作性狭心症は労作によって誘発される狭心症であ
.この死亡率は,欧米の報告の 1 年死亡
る.日本人の一般集団を対象とした労作性狭心症の頻度
率:8〜14.1 %,3 年死亡率:14〜33 %,5 年死亡率:19
の報告は多くはないが,関連する記載はいくつかあ
〜39 %と比較して低い .このことは日本人が低脂肪食
る68−72).無作為抽出による全国 300 地区の 30 歳以上の
嗜好66)であること,また多枝病変67),心筋梗塞の既往54),
成人を対象とした昭和 55 年の循環器疾患基礎調査では,
非 Q 波梗塞(欧米では重症三枝病変を有する事例が多
調査対象 10,897 人のうち労作性狭心症と判定された頻
い) を有する症例が少数であることが原因であるよう
度(有病率)は男性 8.13/1,000 人,女性 9.18/1,000 人で
に思われる.
あった68).また,久山町研究では労作性狭心症の有病率
れている
63−65)
63)
52)
は,調査対象 2,551 名に対し男性 11.8/1,000 人,女性
d.長期予後の規定因子
生存退院した症例での長期予後の規定因子を検討した
よび危険因子の住民調査(1965 年の国勢調査による対
によると,長期予後規定因子は 70 歳以上の高
象人口は 7,030 人)では,1964〜83 年の間に,冠動脈疾
齢,女性,心筋梗塞の既往,非 Q 波梗塞,来院時 Killip
患の発生率(心筋梗塞,狭心症と突然死の合計)は 40
Ⅱ〜Ⅳ,多枝病変,急性期再灌流療法未施行などがあげ
〜69 歳の男女においては有意な変動がなく,脳卒中の
られる.これらの結果は欧米の報告と同様である.一方,
発生率よりも低かった70).また,検診会員 2,801 名を 5
多変量解析にて病歴,重症度を考慮しても,独立した長
年間追跡した調査では労作性狭心症の発症数は年間
期予後規定因子として急性期リハビリの未施行および飲
2.54/1,000 人であった73).
研究
63−65)
酒歴非保有者が選ばれた試験もあり,心筋梗塞後の早期
離床が長期予後を改善するという報告もある41).
6.まとめ
都市部と農村部を比較した疫学調査では,「心筋梗塞
と労作性狭心症を合わせた発生率」は都市部の 40〜50
歳で 1964〜71 年の年間 0.27/1,000 人から 1988〜95 年の
0.90/1,000 人へと増加をみとめ,60〜79 歳でも PTCA
わが国における心筋梗塞に対する論文・学会発表・総
例を含めると年間 2.62/1,000 人から 3.79/1,000 人へと増
説等を調査し,心筋梗塞の臨床的特徴を総括した.わが
加傾向を認めたが,農村部では増加傾向は明らかではな
国の心筋梗塞症例は欧米の症例と比較して,予後が良好
かったという74).
であることが示唆されている.その理由として低脂肪食
嗜好さらに,多枝病変,心筋梗塞の既往および非 Q 波
梗塞などを有する症例が少数であることがあげられてい
8
9.7/1,000 人であった69).東北地方の非都市部での疾病お
2.危険因子
先の検診データの解析で労作性狭心症の危険因子とし
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
て認められたのは,血清総コレステロール,LDL コレス
テロール,HDL コレステロール,最大血圧,最小血圧
3.症候・検査・病態生理
であった73).なお,適度の飲酒はわが国の壮年男子にお
労作性狭心症では労作時の虚血による胸痛発作が典型
いて,虚血性心疾患の発生を予防するとの報告がある .
的症状であるが,一般の人々の狭心症症状に対する理解
75)
労作性狭心症の基礎病変は主に冠動脈硬化であるが,
度は低く,狭心症の症状を単なる胸痛として取り扱うこ
日本人の冠動脈硬化の病理学的データとして久山町剖検
とには問題がある89).また,無症候性の心筋虚血も存在
例の病理疫学的検討がある76).これによれば,日本人の
し,糖尿病非合併の労作性狭心症における無症候性心筋
冠動脈硬化の危険因子は年齢,血圧,コレステロール,
虚血ではβエンドルフィンが,糖尿病合併例でのそれに
糖尿病,肥満であり ,欧米での報告とほぼ同様である.
は末梢神経の関与が示唆されている90).
76)
冠動脈硬化の進展様式は日本人も欧米人と同様と考えら
血管内視鏡による冠動脈内プラークの観察によると,
れているが,日本人高齢者では病変が軽く ,日本人の
急性冠症候群では光沢のある黄色プラークの頻度が高か
冠動脈硬化の進展速度は遅い可能性がある.しかし,動
ったのに対して,安定狭心症の患者では光択のない白色
脈硬化は若年から生じるが78,79),日本の食生活が欧米化
のプラークが観察されている91,92).
77)
した現時点では 15 歳時の動脈硬化には日米の差はなく
78)
15 歳をこえると動脈硬化に対する対策の遅れていた
また,身体的特徴としての「耳朶のしわ」が,冠動脈
疾患との関連性を認めるという報告がある93).
日本でむしろ動脈硬化性変化が強い(プラークの出現頻
有意な冠動脈病変を持つ労作性狭心症患者では頚動脈
度が高い)という .日本人の冠動脈硬化の経年変化に
洞の伸展性と圧受容体の感受性の障害が認められ,自律
ついては 1960 年代〜80 年代の報告がある80).なお,冠
神経活動が障害されている可能性がある94).
78)
動脈硬化の病態は大動脈のものとは類似性が認められる
が脳底部動脈のものとは異なる .
労作性狭心症では上腕動脈や冠動脈で内皮依存性血管
拡張反応が低下しているが95,96),その原因のひとつに酸
79)
若年のアジア系女性の労作性狭心症では,通常の冠動
化ストレスの影響が考えられている95).そして,有意狭
脈硬化症以外にも,高安動脈炎による冠動脈病変の可能
窄部位の末梢側冠動脈の内皮依存性血管拡張反応の障害
性も考えるべきという指摘もある81).
は,冠形成術により 3 ヶ月以内に改善がみられたと報告
日本人における狭心症あるいは冠動脈疾患への遺伝学
されている96).微小冠血管障害によるとされるシンドロ
的なアプローチもみられる.性差や,従来の冠危険因子
ーム X の患者でも内皮依存性冠拡張反応は低下してお
の有無などの条件にもよるが,apolipoprotein E(ApoE)
り,これが心筋灌流の調節に変化をもたらしている可能
や stromelysin-1(MMP3),また connexin-37(GJA4)の
性がある97).
特定の遺伝子多型が冠動脈疾患との関連性を示したとい
安静時心電図で遅延電位陽性を示す狭心症症例は高度
う報告がある82).また,Heme oxygenase-1 遺伝子プロモ
の器質的または攣縮性狭窄を認める頻度が高く98),運動
ーターの多型と冠危険因子を有する冠動脈疾患患者との
負荷時の心電図では Bruce のプロトコールの stageⅠで
関連性を示す報告がある83).Paraoxonase(PON)の A/B
QT dispersion が有意に大きくなる労作性狭心症では,こ
多型は冠動脈疾患の危険性との関連はみられなかった
の時の QTcd が最大 ST 低下のよい予測因子であるとの
84)
が,PON-1 については,その R/R genotype は冠動脈疾
報告もある99).
患になりにくいという報告がある85).また,アンジオテ
また,狭心症患者で運動後の異常な収縮期血圧の上昇
ンシン変換酵素(ACE)遺伝子の多型性は日本人の血清
は,運動中の重症な心筋虚血の存在を示すと考えられる
ACE 活性ならびに冠動脈疾患のリスク増加と関連する
こと100),運動誘発性 ST 上昇は側副血行路のない重症冠
とされ ,DD は冠動脈疾患の危険因子という報告があ
狭窄とそれによる重症の心筋虚血を意味すること 101)な
る87).von Willebrand 因子の受容体である血小板 GPI bαの
ど負荷に対する異常反応の重要性も報告されている.さ
大きさが異なる遺伝子多型では,日本人の心筋梗塞患者
らに,ウォームアップ現象の機序についての報告も見ら
ならびに狭心症患者においては少なくとも 1 つの 4-repeat
れる102).運動負荷による虚血閾値の判定に関して,労作
allele を持つものが多い88)という.遺伝的背景の差異や
性狭心症では ST 変化,乳酸代謝とも明確な虚血閾値が
対象症例数などにより必ずしも同様の成績が報告される
認められたが,微小血管性狭心症では明瞭な虚血閾値は
とは限らないが,今後とも検討の必要な領域である.
認めがたいという特徴があった103).
86)
心機能の面では,心筋虚血により収縮能障害とともに
拡張機能障害を生じることは知られているが,非発作時
9
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
にも局所の拡張機能は障害されている104).
冠側副血行路についても,いくつかの報告がある.冠
側副血行路が機能するかどうかは側副血管網の上流と下
流の圧較差によってきまること105),側副血行路は心筋の
安静狭心症
1.はじめに
虚血を軽減しうるが,虚血のプレコンディショニングに
わが国の虚血性心疾患患者では,欧米と比較して冠動
は左室機能を維持するほどの虚血軽減効果はないこ
脈非狭窄部における,攣縮の頻度が高いことが報告され
と106),また,十分に機能している冠側副血行路は血流速
ている117).安静狭心症には冠動脈の攣縮による狭心症の
度が速く,収縮期優位の血流パターンを示すこと
ほか重症の器質的狭窄が原因となるものも含まれると考
107)
な
えられるが,ここでは日本人における冠攣縮性狭心症に
どである.
焦点を絞り,その臨床的特徴を検討した.
4.治療と予後
日本人の狭心症の予後は欧米諸国に比べて良好である
2.冠攣縮に特徴的な症候・症状118,119)
との報告が多い108−113).1972 年の報告108)では,狭心症と
冠攣縮は安静狭心症のみでなく一部の労作性狭心症や
確定診断した 647 例のうち,純粋な労作性狭心症は 352
心筋梗塞の原因となる.冠攣縮は深夜から早朝の就寝中
例(54 %)であり,梗塞発症率は,診断 1 年後 8 %,5
に起こり易く,労作,寒冷刺激,過呼吸,バルサルバ手
年後 24 %,10 年後 37 % で,5 年生存率は 87 % であっ
技,アルコールなどで引き起こされる.発作を誘発する
た.生存率は当時の欧米の報告よりも良好であった
労作などの閾値に日内変動があり早朝で閾値が低く,午
.
108)
1973〜85 年の間の日本人の冠動脈疾患患者(狭心症 212
後には発作が起きにくい.発作はカルシウム拮抗薬にて
人,心筋梗塞 279 人)の心事故からみた予後は,当時の
極めて良好に抑制され,β遮断薬は無効であるのみでな
米国の報告よりも良好という報告もある
.同様に
く冠攣縮を誘発する.失神を来すことが稀でなく,原因
PTCA 導入以前の 1973〜84 年の,内科的治療のみの冠
不明の失神をみた場合には冠攣縮の関与を疑う必要があ
動脈疾患患者(全例冠動脈造影を施行)の追跡で,5 年
る120).
109)
生存率 92 %,10 年生存率 84 %,心筋梗塞発生率 20 %
で,日本の冠動脈疾患患者の予後は西欧諸国に比して良
3.冠攣縮の種類
好であると報告されている110).日本人で冠動脈一枝病変
異型狭心症の 4 割強に多枝冠攣縮が認められ,多枝攣
に限った長期予後は左室駆出分画低下例を除けば良好
縮を呈する患者は狭心症歴が長く,発作回数が多いとい
(狭心症群で 5 年生存率 96.5 %)である111).また,三枝
う特徴を有する121).多枝攣縮には 3 つの異なったパター
病変だが心筋梗塞の既往のない狭心症群においては,完
ンがある122).すなわち,
[1]
異なった場所に異なった時間
全閉塞枝が多いほど生存率は低下した(5 年生存率 80.9
に起こる攣縮,
[2]
二つの違った場所に引き続き発生する
%) .他施設の報告でも心筋梗塞の既往のない 97 人の
攣縮,[3]違った場所に同時に起こる攣縮の三種類であ
労作性狭心症患者を 10 年間(1981 年〜1990 年)追跡し
り,後二者が一枝攣縮と比較して高度の虚血を惹起し,
たところ,累積心事故発生率 30.3 %,死亡率 10.9 %,
かつ不整脈の合併も高率であり,多枝攣縮のうちでも重
心筋梗塞発症率 28 % であったという
篤なパターンと考えられる122).また,失神の既往を有す
112)
.
113)
また,最終的な報告を待たねばならないが,低リスク
る冠攣縮性狭心症では失神を有しない症例と比較して右
安定労作性狭心症における治療法の違いによる短期予後
冠動脈近位部の攣縮が高率である123).冠動脈造影で器質
とコスト,および長期予後に関する介入試験では,本邦
的狭窄がない症例において冠微小血管の拡張反応障害が
における低リスク狭心症の予後は予想以上に良好である
運動負荷誘発性の ST 低下と胸痛を引き起こすことが知
という中間報告がなされている .
られているが,同様に微小血管の攣縮による安静狭心症
114)
5.まとめ
日本人の労作性狭心症のエビデンスの少ない現時点で
は,欧米から出された大規模試験の結果を参考に,個々
の患者の病態を考慮し,治療の個別化を図ることが重要
であろう115).しかし,今後はわが国でも多施設における
前向き研究による検討が必要である116).
10
c
の存在が示唆されている124).タリウム心筋シンチグラム
を用いた検討によると運動負荷誘発性冠攣縮による心筋
虚血は過換気誘発性のものに比べ,より重篤である125).
4.冠動脈トーヌス
器質的狭窄のない冠攣縮性狭心症においてエルゴノビ
ン冠注後の冠血管収縮反応と硝酸薬冠注後の拡張反応を
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
検討すると,攣縮血管は非攣縮血管に比べ硝酸薬に対す
パリン投与によってフィブリノペプタイド A の上昇を
る拡張反応が大きく,非攣縮血管は対照患者の冠血管と
抑制しても,狭心発作は抑制されなかった141).すなわち
比べてエルゴノビンならびに硝酸薬に対する反応性が大
フィブリノペプタイド A の上昇は冠動脈攣縮に伴う結
であった
.冠攣縮性狭心症患者と対照群の間に硝酸薬
果であって攣縮の原因ではない.冠攣縮自体がトロンビ
投与後の血管径に差はなく,コントロールの血管径は冠
ン形成を惹起し冠動脈内血栓形成の引き金になる可能性
攣縮性狭心症で小であった
126)
.すなわち冠攣縮性狭心症
がある142).異型狭心症患者では線溶系の日内変動を認め
では攣縮血管のみならず冠動脈全体にわたり冠動脈トー
る.発作の起こり易い早朝に PAI-1(プラスミノーゲン
ヌスの基礎レベルが亢進している.硝酸薬投与による基
アクチベーターインヒビター・タイプ1)活性が最低と
礎トーヌスの評価は冠攣縮発生とその部位の予測に有用
なり線溶系が最も障害されていることや冠攣縮自体が
である.異型狭心症において白人と比べ日本人の冠動脈
PAI-1 活性を増加させ冠動脈内血栓形成に関与している
はびまん性の血管反応性の増強があり,非攣縮血管の収
可能性が示されている143).
126)
縮性も亢進している127).さらに多枝冠攣縮の頻度も高率
血小板活性化の指標であるβトロンボグロブリンと血
小板第 4 因子は異型狭心症では労作狭心症よりも高値で
である127).
あったが狭心発作による変動はないと報告されてい
5.冠攣縮の機序
る141).これに対し,自然発作冠攣縮後に小凝集塊の血小
冠攣縮の機序としてアセチルコリンによる血管内皮の
NO 生成障害説
(熊本大学)とアセチルコリンに対す
128)
る血管平滑筋の過剰反応説129)(九州大学・神戸大学)が
ある.冠攣縮性狭心症ではアデノシン冠注時の流量依存
板凝集能が亢進し,冠動脈内血栓の誘因となる可能性が
指摘されている144).
8.冠循環
性の冠血管拡張が低下しているとの報告 130)もあるが,
アセチルコリンによって心外膜側冠動脈の攣縮が誘発
冠攣縮血管で NO 産生能が低下しているか否かについて
された異型狭心症においても拡張反応は保たれている145).
は結論が出ていない131,132).血管内超音波法を用いて冠
従って,冠攣縮発作は冠動脈の局所的異常である.
動脈内部を観察すると冠攣縮を来す部位では,血管造影
DCA により切除した粥腫の組織所見から冠攣縮は血管
上明らかな狭窄を認めなくとも内膜の肥厚が認められ,
損傷を惹起し病変進行に寄与することが示されている146).
軽度の動脈硬化が冠攣縮の発生に関与している可能性が
ある133).
9.遺伝子異常
冠攣縮発生に自律神経活動が密接に関与している 134)
ACE 遺伝子の多型性については労作性狭心症と比べ
ことは疑う余地がなく,また Mg 欠乏と狭心症活動性の
冠攣縮性狭心症では DD 型が有意に多い147).eNOS 遺伝
間に関連があることが報告されている .
子変異(Glu298Asp ミスセンス)は冠攣縮性狭心症 113
135)
例中 89 例,対照群 110 例中 9 例に認められ,冠攣縮性
6.危険因子
狭心症で高率であった148).HLA 型のうち HLA-DR2 は
喫煙が冠攣縮の素地をつくる重要な危険因子である136)
ことは間違いない.喫煙の急性効果として NO 活性の低
下を介した冠動脈トーヌスの亢進が知られている137).高
コレステロール血症,糖尿病,高血圧,肥満などの影響
は少ない
.その他,インスリン抵抗性
136)
138)
やビタミン
冠攣縮性狭心症に高率に認められた149).
10.診
断
アセチルコリンおよびエルゴノビン冠注の冠攣縮診断
における臨床的有用性は確立している.薬剤の比較では
アセチルコリンの方がエルゴノビンよりも感度および特
E 欠乏139)と冠攣縮との関連が報告されている.
異度とも優れている 150)とする意見が多い.一部の症例
7.凝固線溶系・血小板活性化
でその作用が異なる場合がある.
フィブリノペプタイド A はフィブリノーゲンがトロ
異型狭心症の虚血発作は大部分が無症候性であるため
ンビンによってフィブリンに転換する際に生成される物
ホルター心電図などの連続心電図記録がその診断に有用
質で凝固系活性化の敏感な指標である.冠攣縮性狭心症
である.また過呼吸負荷は冠攣縮の特異的診断法であり
では自然発作時や過呼吸誘発発作時に血漿フィブリノペ
陽性者は発作時に致死性不整脈や多枝攣縮を高率に生ず
プタイド A が上昇することから,発作時に冠血管内で
る151).5 分間の過呼吸に引き続くトレッドミル運動負荷
凝固系の活性化が起こっていることが示唆される
が冠攣縮の非侵襲的誘発試験として優れているとの報告
.ヘ
140)
11
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
がある152).多枝攣縮は心エコー図により評価した左室壁
に比べると高値である165).糖尿病の合併も高齢者虚血性
運動異常部位と冠動脈支配領域との関連を対比すること
心疾患では高頻度である.冠血管径が細く,びまん性病
により診断可能であり
変であることが問題となる.また,高齢者虚血性心疾患
,多枝冠攣縮患者は一枝攣縮患
153)
者と比べ,器質的冠狭窄が軽度ながら,発作時には ST
では女性の比率が高くなることも知られている166,167).
上昇の程度と持続時間が長く,心室頻拍などの出現も高
b
率である153).
冠動脈病変
冠攣縮性狭心症のうち発作時に ST 上昇が生ずる異型
高齢者虚血性心疾患では,石灰化を伴ったびまん性冠
狭心症では非異型狭心症と比べ,器質的狭窄の頻度が高
動脈病変や左主幹部病変・三枝病変などの重症多枝病変
く,側副血行路が未発達で,冠攣縮を誘発するのに必要
の頻度が高い 168,169).冠攣縮性狭心症は高齢者でもみら
なアセチルコリンの量が少ない154).冠攣縮性狭心症の重
れ,その頻度や背景因子に非高齢者との違いはみられな
症群では末梢好酸球数が高く加療により正常化するとい
い170,171).
う155).
c 症
11.治療と予後
状
高齢者では胸痛を欠如したり,「労作時息切れ」,「肩
カルシウム拮抗薬が攣縮発作抑制に著効すること 156)
凝り」,「咽頭部不快感」などの非典型的な症状しか示さ
は繰り返し報告され,今日では常識となっている.また
ないことも少なくない 169,173).さらに,胸痛などの症状
喫煙が最大の危険因子であるので禁煙はとりわけ重要と
を伴わずに心筋虚血が客観的に証明される,いわゆる無
される.
症候性心筋虚血の頻度は,70 歳未満の 15 % に対して
カルシウム拮抗薬を内服している冠攣縮性狭心症患者
70 歳以上で 28 % であった173)など,高齢者では高率で
では心事故の発生率は低い157).しかし発症初期には急性
あり,加齢による疼痛閾値の上昇,高次機能の障害,糖
心筋梗塞の危険は少なくなく158),高度器質的狭窄の存在
尿病性神経障害などの関与が推定されている.無症候性
は心筋梗塞の発生率を高める
心筋虚血を有する患者の予後については,症状を有する
.突然死の危険が高いの
157)
は多枝攣縮患者や発作時重症不整脈を伴う患者であ
患者の予後とほぼ同等と報告されている174).
る .異型狭心症の予後は欧米人より日本人の方が良い
159)
が,その原因は欧米人に器質的冠動脈病変を有する症例
が多いためで,器質的狭窄を有しない症例に関しては予
1.
心電図所見
加齢に伴い安静時心電図で正常所見を示す頻度は低下
する.加齢に伴い安静時 ST 低下のみられる頻度は増加
後に差を認めないという160).
d
d
高齢者の虚血性心疾患
し175),これらの症例では冠動脈疾患の合併頻度が高いと
報 告 さ れ て い る . 一 方 , 異 常 Q 波 や poor R wave
progression は陳旧性心筋梗塞のほか,肺炎,慢性閉塞性
はじめに
肺疾患,左室肥大などでも認められ,高齢者では心電図
多くの研究において 65 歳以上を高齢者としていたが,
による陳旧性心筋梗塞の正診率は低下する176).
近年では,より高い年齢で定義する傾向がある161).
e 予
2.慢性虚血性心疾患
後
加齢は虚血性心疾患の予後不良因子である 157,177,178).
心筋梗塞後の長期予後では,生存退院後の平均 20 カ月
a 危険因子
冠動脈疾患において,加齢そのものが独立した危険因
の追跡調査において,60 歳未満の心臓死が 0.3 % であ
子である9).喫煙は高齢者では病変の進行および新たな
ったのに対し,70 歳以上では 2.6 % と高率であるなど161),
心事故発生にも関与しており162),特に多枝病変との関連
高齢者は予後不良である.高齢者のうち特に女性の予後
が示されている
は不良である.
.相対危険度より推測される心筋梗塞
163)
の発症率増加をみた研究では
,高齢者では高血圧によ
164)
る心筋梗塞発症増加の 86.5 % が軽症高血圧から発生し
ており,一次予防における軽症高血圧の重要性が示唆さ
12
3.急性心筋梗塞
a 危険因子
れている.高齢者では冠動脈疾患における高脂血症の合
急性心筋梗塞に関連する冠危険因子の頻度は,高齢者
併頻度は低くなるといわれているが,非冠動脈疾患患者
は非高齢者と比べて高血圧が多いが,高脂血症や喫煙歴
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
d
などの関与は少ない 179,180).また,高齢になるほど女性
心電図所見
高齢者では非 Q 波梗塞が少なくなく188),また,陳旧性
の罹患頻度が増加する163,181,182).
心筋梗塞の既往が多い181).そのため高齢者では心筋梗塞
b
冠動脈病変
の正診率が低く189),心電図の判別に特別の注意を要する.
高齢者では非高齢者に比べ,多枝病変が多い
.
173,183)
e
c
症
状
予
後
急性心筋梗塞の予後は左室機能,冠動脈病変度,合併
症,治療などによって規定されるが,年齢が最も強い予
高齢者では正確な病歴聴取が難しいことに加えて,典
型的症状(胸痛・胸部圧迫感)を伴う頻度が低い
後規定因子であり,入院死亡率は加齢とともに高くな
.
173,181)
高齢者の急性心筋梗塞の約 30 % には,全く無症状であ
る161,173,181,183,188).再梗塞例の予後は加齢とともに不良に
ったり非典型的症状(息切れ・めまい・嘔気など)しか
なる188).また,心不全,心原性ショック,心破裂による
訴えないため,患者や医師が急性心筋梗塞と認識しない
死亡率も加齢とともに増加する188).
症例(unrecognized myocardial infarction)がある.その
e
頻度は加齢とともに増加し184),女性や下壁梗塞において
高頻度であり,糖尿病・高血圧・喫煙などのリスク因子
性差と虚血性心疾患
1.虚血性心疾患の性差
の関与も指摘されている.その生命予後,心筋梗塞や心
不全の再発,脳卒中の発生率などは通常の recognized
すでに米国における Framingham 研究において,40 歳
infarction と同等である.
代前半までは,女性における心血管系疾患の頻度が,年
間 1,000 人あたり 1.3 人と,男性の年間 1,000 人あたり
高齢者では非高齢者に比べ,高度ポンプ失調,心破裂
.とくに高血圧
5.7 人にくらべて非常に低い水準にあるものの,40 歳代
の既往を有する高齢女性の初回心筋梗塞は心破裂のリス
後半から 50 歳代にかけて増加し,60 歳代後半では,女
クが高い
性 22.1 人と,男性の 26.7 人に匹敵するレベルに達する
の合併が多くなり重症である
173,180,181,183)
.心室頻拍,心室細動などの重症不整脈
185,186)
190)
ことが報告されている(図 4)
.
の発生頻度は高齢者と非高齢者で差を認めていない.ま
た,高齢者では,脳血管障害,腎機能障害,肺炎,不穏
などの他臓器障害の合併頻度が高い
この頻度は,心血管系疾患全般に関するものであるが,
.このことは
後の Framingham 研究における心筋梗塞の頻度の検討で
急性期の冠動脈造影や冠動脈再灌流療法などの侵襲的治
も,全く同様の傾向が示されている.すなわち,40 歳
療の適応から外れる要因となりうる.
代前半までは,年間 1,000 人あたりに換算して 0.52 人と,
183,187)
男性対照の 3.8 人と比べて非常に低いが,特に 55 歳以
図4
Framingham 研究における心血管系疾患および心筋梗塞の発生率 190)
発生数/1,000人/年
60
60
心血管系疾患(1976)
心筋梗塞(1984)
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
29-
35-
40-
45-
50-
55-
60-
65-
70-
75-79
0
30-
35-
45-
55-
65-
75-84
歳
男性/女性
13
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
図5
久山町研究における心筋梗塞の発生率 191)
発生数/1,000人/年
1962〜1970
20
1971〜1979
1980〜1988
10
0
0-29 30- 40- 50- 60- 70- 80-
図6
0-29 30- 40- 50- 60- 70- 80-
0-29 30- 40- 50- 60- 70- 80歳
男性/女性
沖縄研究および広島・長崎研究における心筋梗塞の発生率 9,170)
発生数/1,000人/年
10
10
沖縄研究(1988〜1989)
広島・長崎研究(1990)
8
8
6
6
4
4
2
2
0
0-29
30-
40-
50-
60-
70-
80-
降増加し 75 歳以上では女性は 12.8 人と男性の 11.3 人を
上回る
(図 4).
184)
14
0
-20
20-
30-
40-
50-
60-
70-
80歳
男性/女性
える.
一方,沖縄研究 170)では,全体として心筋梗塞の発生
日本における久山町研究においては,3 期間(1962〜
率がきわめて低いことが特徴的である.しかし,この沖
1970,1971〜1979,1980〜1988)の心筋梗塞発生率を検
縄研究においても,50 歳代までの女性において男性よ
討している.Framingham 研究と同様に 50 歳代までの女
りも発生率が低い傾向は全く同じである.70 歳代では,
性では心筋梗塞が非常に少なく,特に第一・第二期間で
女性において年間 1,000 人あたりに換算して 1.4 人,男
は発生率が 0 である.3 期間でばらつきはあるが,70 歳
性で 2.6 人とまだ女性で低く,80 歳代になってようやく
代になると女性では年間 1,000 人あたりに換算して 5.2
それぞれ 1.9 人,2.2 人と肩をならべる(図 6).広島・
人,男性では 4.3 人とほぼ同水準になる(第三期間)
長崎研究9)においては,40 歳代まで女性の心筋梗塞発生
(図 5)191).なお診断基準は同じではないが,これらの値
率はきわめて低い.その後増加するものの 80 歳代に至
は Framingham 研究と比較するとやはり低い発生率とい
っても男性より低い(年間 1,000 人あたり女性 5.6 人,
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
男性 9.1 人).この研究における心筋梗塞の発生率は,
胸部圧迫感,脈の乱れなどは虚血性心疾患でよく認めら
久山町とほぼ同程度と考えられる.
れる症状であり,更年期以降の女性では約半数が高脂血
以上の結果より,40 歳代ないし 50 歳代までの女性で
症を有することから,症状の有無にかかわらずまず運動
心疾患の発生が少なく,その後に発生率が男性に追いつ
負荷心電図などのスクリーニング検査をするべきと考え
く傾向は日本と米国で共通のものと考えられる.この性
られる.
差に関して,Framingham 研究では,40 歳代前半,40 歳
代後半および 50 歳代前半の女性で,それぞれ閉経をき
たした女性の方が心疾患の発生率が明らかに高いことを
2
日本人における冠危険因子の評価
示し192),閉経そのものがリスクである可能性を強く示唆
している.日本においては閉経に着目した詳細なデータ
は得られていないものの基本的に同様と考えられる.
1
1 高脂血症
2.女性における虚血性心疾患の臨床的特徴
女性の虚血性心疾患の臨床的特徴として,男性と比較
しその発生年齢が高く,その動脈硬化病巣は,63 歳程
度の女性では男性に比べて初期病変が多い.すなわち,
より進展した動脈硬化病巣である細胞成分のない線維組
a
コレステロール
1.はじめに
織は有意に男性に多く,平滑筋細胞や筋・線維芽細胞な
高コレステロール血症が冠動脈疾患の重要な危険因子
どの混在する比較的初期の線維組織は女性に多い .こ
であることは,これまでの多くの疫学的研究197−200)によ
れは女性においては閉経前まではエストロゲンの作用に
り明らかであるが,日本人における高コレステロール血
より動脈硬化の進展が男性より遅いためと考えられる.
症と冠動脈疾患の関連性は,全国的な調査としての厚生
エストロゲンと脂質,動脈硬化の関係を知るモデルと
省「原発性高脂血症」研究班の成績 201)や厚生省の第 4
し て 家 族 性 高 コ レ ス テ ロ ー ル 血 症 ( Familial hyper-
次循環器疾患基礎調査受診者の追跡調査の成績
によると
202)
(NIPPON DATA)
,第 5 次循環器疾患基礎調査203)なら
193)
cholesterolemia:FH)がある.馬渕らの報告
194)
FH 患者とその家族の血清コレステロール値の分布は,
正常者 179±26 mg/dL,ヘテロ FH では 338±63 mg/dL,
ホモ FH は 713±122 mg/dL であり,ヘテロ FH 例の中
で男性 121 例,女性 53 例に心筋梗塞が確認されている.
男性ヘテロ FH では 30 歳頃から心筋梗塞が発生し,以
びに地域における疫学的研究により示されている.
2.日本人の血清総コレステロール値と虚血性心疾
患の死亡率
日本人の血清総コレステロールの推移は,第 5 次循環
後どの年代でも同頻度で発生しているが,女性ヘテロ
器疾患基礎調査によれば(図 7),1980 年から 1990 年
FH ではその発症は男性と比べ遅く,50 歳ごろから心筋
の 10 年間に男女とも各年代で上昇したものの,2000 年
梗塞がみられ,更年期以降に男性と同じ頻度で発生する
の 10 年間で低下または横ばいの傾向である.総コレス
ようになる.平均死亡年齢は男性 58 歳に比べ女性 69 歳
テロール値 220 mg/dL 以上の高コレステロール血症者
である.これも女性ホルモンの影響によるものと考えら
の割合の推移を見てみると,1980 年には男性 15.1 %,
れる.
女性 19.2 % であったが,1990 年には男性 26.8 %,女性
急性心筋梗塞による病院に搬送される前の死亡率を男
34.7 % と増加したものの,2000 年では,男性で 25.7 %,
性 3,991 名,女性 1,551 名について調べた統計によると,
女性で 34.1 % と増加は認められていない.しかし,
死亡率は女性の方が男性より少ないと報告されてい
2000 年と 1990 年との比較で年齢階級別にみると,男性
る195).この原因として,Juhani ら196)は心筋梗塞発作時
は 30 歳代,40 歳代,女性の 30 歳代でこの割合が上昇
の迷走神経反射の亢進が女性で著しいため,これが抗不
していた.一方,日本人の虚血性心疾患による死亡率は
整脈作用を示すためと推察している.
1997 年で人口 10 万人当り 57.5 人,2003 年では人口 10
このように,女性における虚血性心疾患は女性ホルモ
万人当り 58.2 人で,今のところ著明な増加は認められ
ンの影響が強く,閉経が重大なターニングポイントとな
ていないが,アメリカ(2000 年)の 1/3,イギリス
るようである.そして,閉経期周辺,閉経後の,これま
(2002 年)の 1/4 と以前に比べ,差は減少している204,205).
で更年期障害の症状として見過ごされてきた動悸,胸痛,
15
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
図7
コレステロール値の推移(第5次循環器疾患基礎調査結果)
(mg/dl)
(mg/dl)
30〜39歳
40〜49歳
50〜59歳
60〜69歳
70歳以上
男性
230
220
230
220
210
210
200
200
190
190
180
180
170
170
160
S55(1980)
H2(1990)
H12(2000)
3.日本人における高コレステロール血症と虚血性
心疾患の関連性
160
S55(1980)
H2(1990)
30〜39歳
40〜49歳
50〜59歳
60〜69歳
70歳以上
H12(2000)
コレステロール値と虚血性心疾患死亡の相対危険度のあ
いだに正の相関が認められ,160〜179 mg/dL を基準に
すると 240〜259 mg/dL の群では相対危険度が 6.79 であ
欧米においては Framingham 研究199)や Multiple Risk
ったが,女性では死亡例が少なく,一定の関係は認めら
Factor Intervention Trial (MRFIT)200)の成績で,血清総コ
れていない202).Prospective な研究としては,Kodama ら
レステロール値が高いほど虚血性心疾患の発生率が高い
の広島と長崎で行われた研究(Hiroshima/Nagasaki
ことが示されている.日本においては血清コレステロー
Study)9),Kitamura らの大阪の男性労働者を対象にした
ル値と虚血性心疾患の関連性を示した大規模な疫学的研
研究206),Wakugami らの沖縄住民を対象にした研究207)が
究は少ない.昭和 61 年に行われた厚生省「原発性高脂
ある.Hiroshima/Nagasaki Study は 19,961 人を対象に
血症」調査研究班の retrospective な断面調査では,血清
1958 年から 1984 年まで 26 年間の観察を行ったもので,
総コレステロール値および LDL コレステロール値と虚
この間の心筋梗塞と狭心症の発症率は男性で年間 1,000
血性心疾患の関連性が示されている201).また,厚生省の
人あたり 2.1 人と 1.0 人,女性で 0.79 人と 0.5 人であっ
第 4 回循環器疾患基礎調査受診者の 14 年後の追跡調査
た.登録時の血清総コレステロール値と虚血性心疾患の
の成績(NIPPON DATA)によると,男性では,血清総
関連性は(表 3)に示すように,有意な正相関が得られ
ている.血清総コレステロール値 160〜179 mg/dL の相
表 3 初期値から見た冠動脈疾患の年齢補正後の発症率
(年間1,000人当たり)9)
男
性
血清総コレステロール値 発症率
*
女
対危険度を 1.0 とすると 240 mg/dL 以上で男性で 2.0,
性
RR
発症率
RR
*
< 120
1.5
0.4
0.9
0.7
120〜139
2.7
0.8
0.6
0.5
140〜159
3.1
0.9
1.1
0.9
160〜179
3.4
1.0
1.3
1.0
180〜199
3.3
1.0
1.9
1.4
200〜219
5.7
1.7
2.1
1.5
220〜239
4.2
1.3
1.6
1.2
≧240
6.9
2.0
2.3
1.7
RR:Relative risk * p<0.001
16
女性
女性で 1.7 であった9).Kitamura らの研究は 40〜59 歳の
男性労働者 6,408 名を対象に 7.7 年間観察したものであ
る.46 例の虚血性心疾患(心筋梗塞 21 例,心筋梗塞疑
い 11 例,狭心症 14 例)が観察され,(表 4)に血清総
コレステロール値と虚血性心疾患の関係を示すが,コレ
ステロール値の 4 分位別でみると,相対危険度は血清総
コレステロール値 173 mg/dL 以下の第 1 分位を 1.0 とす
ると,218 mg/dL 以上の第 4 分位で 4.89 と有意差が認
められている206).Wakugami らの研究は,全国一の長寿
県でもっとも心血管疾患死の少ない沖縄県で 1983 年に
18 歳以上の住民 107,192 人(1980 年の人口 111 万人)
をスクリーニングし,1988 年から 1991 年の 3 年間に沖
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
表4
40〜59歳男性の年齢補正後の冠動脈疾患発症率206)
血清総コレステロール値
発症数
発症率*
RR#
<4.50mmol/L
(<174mg/dl)
5
0.46
1.00
4.50-5.06mmol/L
(174-195mg/dl)
7
0.58
1.48
5.07-5.63mmol/L
(196-217mg/dl)
9
0.71
1.93
≧5.64mmol/L
(≧218mg/dl)
25
4.コレステロール低下療法による虚血性心疾患の
一次予防試験
高コレステロール血症と虚血性心疾患の関連性は多く
の疫学的研究で明らかにされているが,コレステロール
低下療法による虚血性心疾患の予防に関する介入試験も
数多く欧米諸国を中心に行われてきた.1970 年代から
2.02
4.89
*年間1,000人当り(p<0.001)
#RR:Relative risk. コレステロール値最低値の第1分位と最
高値の第4分位の間に有意差
1990 年代前半にかけては,食事療法,運動療法,フィ
ブラートやニコチン酸製剤を用いた薬物療法などのコレ
ステロール低下療法によって虚血性心疾患の新規の発症
や再発が抑制されることが明らかにされたが,1990 年
代になり HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン)が使
縄全域での急性心筋梗塞の発症を調査したものである.
用されるようになると,虚血性心疾患の発症が抑制され
この 3 年間の急性心筋梗塞は全域で 1,021 例で,男性
るのみならず,死亡率も抑制されることが証明されてお
674 名,女性 347 名であった.全登録者中血清コレステ
り,コレステロール低下療法の虚血性心疾患の予防にお
ロール値を測定した 38,053 人の中では 65 名(男性 41
ける意義を再認識する必要がある.
名,女性 24 名)が心筋梗塞を発症していた.人口 10 万
人あたり 3 年間の急性心筋梗塞の累積発症率は血清総コ
レステロール値が 167 mg/dL 以下で 42.1,168〜191
mg/dL で 133.5,192〜217 mg/dL で 188.9,218 mg/dL
以上で 323.0 であった
.(図 8)に男女別の成績を示
207)
海外における最近の一次予防試験では,以下の報告が
ある.
[1]WOSCOPS(West of Scotland Coronary
208)
Prevention Study)
心筋梗塞の既往のない高コレステロール血症(平均血
272 mg/dL,LDL コレステロール
す.以上のごとく日本人における血清総コレステロール
清総コレステロール
値と虚血性心疾患の関連性を検討すると,男女ともに虚
192 mg/dL)の 45〜64 歳の男性患者 6,595 名(平均 55.2
血性心疾患の相対危険度は血清総コレステロール値の増
歳)を対象に,プラバスタチン投与により非致死性心筋
加とともに上昇する.総コレステロール値 160〜170
梗塞と冠動脈疾患死を合わせた発生頻度が減少するかど
mg/dL 以下に比べ,男性では 200 mg/dL で 1.7 倍から 2
うかを検討したもので,平均 4.9 年の試験期間でこれら
倍に,220 mg/dL 以上で 2 倍から 5 倍に上昇する.女性
の relative risk は 31 % 低下,冠動脈疾患(確診+疑診)
の虚血性心疾患の発症率は男性の 1/2 であるが,男性と
による死亡は 33 % 減少し,総死亡も 22 % 低下した.
似たような関連性を示している.
[2]AFCAPS/TexCAPS(Air Force/Texas Coronary
Atherosclerosis Prevention Study)209)
図8
3年間100,000人当たりの急性心筋梗塞累積発症率 207)
冠動脈疾患のない平均的血清コレステロール値(平均
Cumulative Incidence of AMI
per 100,000 screened subjects in 3 years
総コレステロール 221 mg/dL,LDL コレステロール 150
500
mg/dL)で,血清 HDL コレステロール値が平均以下
(平均 HDL コレステロール男性 36 mg/dL,女性 40 mg/
400
dL)の 45〜73 歳の男性 5,608 名と 55〜73 歳の女性 997
men
300
women
名を対象に行なわれたもので,HMG-CoA 還元酵素阻害
薬のロバスタチンを平均 5.2 年投与することにより予防
効果を調べた試験である.Primary end point の心筋梗塞,
200
突然死,不安定狭心症は 37 % 低下したが,この試験で
は総死亡に差を認めなかった.
100
どちらの試験も HMG-CoA 還元酵素阻害薬の投与に
0
range
mean
≦167
149.3
168〜191 192〜217
218≦
179.8
203.7
245.3
Serum cholesterol, mg/dL
よって,虚血性心疾患の発症が抑制され,WOSCOPS で
はこれまで議論のあった総死亡も減少している.
これらの試験の後,糖尿病や高血圧など危険因子を持
17
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
つ者や高齢者,冠疾患や脳血管障害の既往のある者など
20.3 %,標準療法群で 11.3 % に低下した.全死亡の 6
高リスク患者を対象にした大規模臨床試験が発表されて
年発生率はプラバスタチン群 14.9 %,標準療法群 15.3
いる.
% と群間に差は認められなかった.また,二次エンド
ポイントでも群間に有意差は認められなかった.本試験
では対照をプラセボではなく通常療法としたために,実
[3]HPS(Heart Protection Study)210)
糖尿病や高血圧など危険因子を持つ者や高齢者,冠疾
患や脳血管障害の既往のある者など冠動脈疾患の高リス
薬群と対照群の TC 低下率の差が 10 %程度にとどまっ
たためと思われる.
ク患者(40〜80 歳の男女)にシンバスタチン(40 mg/
日)またはプラセボを平均 5 年間投与し,死亡率や血管
系イベントの発症率を検討した二重盲検比較試験であ
[3]ASCOT-LIA(Anglo-Scandinavian Cardiac
213)
Outcomes Trial-Lipid Lowering Arm)
る.このうち,一次予防群としては 7,150 例が含まれて
冠疾患の既往が無く,高血圧症で,総コレステロール
いる.投与前の平均総コレステロール値は 227.7 mg/dL
250 mg/dL 未満で他の危険因子や脳末梢血管障害の既往
でシンバスタチン群ではプラセボ群に比べて平均総コレ
などを 3 つ以上持つ高リスク患者(40−79 歳)10,305
ステロール値は 46.3 % 低下し,総死亡率,冠動脈イベ
名に降圧薬をランダムに振り分けられた後,アトルバス
ント,脳卒中発症率がそれぞれ有意に低下した(13 %,
タチン(10 mg/日)またはプラセボを投与し,心血管
27 %,25 %).サブ解析のうち,糖尿病患者においても
系イベント抑制効果を検討したものである.5 年の予定
シンバスタチン群ではプラセボ群に比べて主要血管系イ
が,中央値で 3.3 年の時点で実薬の効果が明らかとなり,
ベントの発症率が有意に低下した(22 %).これは非糖
すべて実薬投与に切り替えられた.投与前の平均総コレ
尿病患者の効果(25 %)と同程度であった.また血管
ステロール 213 mg/dL,LDL コレステロール 131 mg/dL
系疾患の既往がない患者(一次予防)においては 33 %
は,アトルバスタチンで 1 年後に総コレステロール 161
のリスク低下を認めている187+2).
mg/dL,LDL コレステロール 87 mg/dL と 24 %,35 %
低下し,一次エンドポイント(非致死的心筋梗塞と致死
[4]PROSPER(Pravastatin in elderly individuals at
的心筋梗塞)は 36 % 有意に低下した.二次エンドポイ
ントのなかでも全心血管系イベント 21 %,全冠動脈イ
risk of vascular disease)
211)
血管障害(冠脳末梢)の既往または喫煙,高血圧,糖
ベント 29 %,脳卒中 27 % と有意に低下した.
尿病等血管障害リスクの高い高齢者 70−82 歳の男女
5,804 名にプラバスタチン(40 mg/日)またはプラセボ
の投与で心血管イベントを平均 3.2 年見たものである.
LDL コレステロール値はプラセボに比べ 37 %低下し,
[4]CARDS(The Collaborative Atorvastatin Diabetes
Study)214)
冠疾患の既往の無い 2 型糖尿病患者で,他に危険因子
一次エンドポイント(冠疾患死,非致死的心筋梗塞,致
(高血圧症,網膜症,蛋白尿,喫煙)を一つ以上持ち,
死的または非致死的脳卒中)は 15 %,冠疾患死,非致
LDL コレステロール値 160 mg/dL 以下およびトリグリ
死的心筋梗塞は 19 % 低下したが,脳卒中では差がなか
セリド値 600 mg/dL 以下をみたす患者 2,838 名(40−75
った.冠動脈疾患による死亡リスクは 24 % 減少した.
歳)をアトルバスタチン(10 mg/日)またはプラセボ
を平均 3.9 年間投与し,死亡率や血管系イベントの発症
[5]ALLHAT-LLT
(Antihypertensive and Lipid-Lowering
Treatment to Prevent Heart Attack Trial)
212)
ALLHAT (高血圧患者を対象に冠動脈疾患や他の心
コレステロール 207 mg/dL,LDL コレステロール 119
mg/dL は,アトルバスタチンで総コレステロール 163
血管系疾患の発生率を,降圧薬間の比較試験)の対象患
mg/dL,LDL コレステロール 77 mg/dL と 26 %,40 %
者のうち LDL-C 120〜189 mg/dL (冠動脈疾患既往患者
低下し,脳卒中を含む主要心血管イベントは 37 %,全
は 100〜129 mg/dL)で TG<350mg/dL の患者 10,355 例
心血管イベントも 32 % 有意に減少した.総死亡率も有
を,プラバスタチン 40 mg/day 群と通常療法群にランダ
意差が出る前に中止されたが,27 % 減少した.
ムに割り付け,同時進行で実施された臨床試験である.
一次エンドポイントは全死亡,二次エンドポイントは非
18
率を検討した二重盲検比較試験である.投与前の平均総
5.日本における虚血性心疾患の一次予防試験
致死的心筋梗塞と冠動脈疾患死,原因別の死亡,癌の発
日本においても虚血性心疾患の一次予防試験が行なわ
生である.試験開始 6 年後に TC はプラバスタチン群で
れている.既に発表されたもの,および終了して解析中
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
図9
5
TC
4
相
対 3
危
険 2
度
1
0
相
対
危
険
度
6
5
4
3
2
1
0
J-LITの図 215)
基準群
3.0
TG
相
対 2.0
危
険 1.0
度
<180 180 200 220 240 260≦
〜199 〜219 〜239 〜259(mg/dL)
LDL-C
0
150
〜299
<150
1.5
300≦
(mg/dL)
HDL-C
相
対 1.0
危
険 0.5
度
<100 100 100 140 160 180≦
〜119 〜139 〜159 〜179(mg/dL)
0
<40
40
〜49
50
〜59
60≦
(mg/dL)
および脳梗塞初発抑制効果を 5 年間で見た一次予防試験
のものを列挙する.
である.無作為割り付けが均等に行われなかった欠点が
215)
(1)J-LIT(Japan Lipid Intervention Trial)
あるが,投与開始時の平均総コレステロール値はプラバ
高コレステロール血症患者(平均総コレステロール値
スタチン群で 254 mg/dL,従来治療法で 243 mg/dL であ
269 mg/dL)に対するシンバスタチン(5−10 mg/日)
り,それぞれ 15 %,8 % 低下した.冠動脈イベントの
投与(一次予防 42,360 名および二次予防 5,127 名)の効
発生率は 14 % 低下した.また内服が十分であった群は
果を 6 年間観察した研究である.
一次予防試験において,
十分でなった群に比べ,冠動脈イベントが少なかった.
総コレステロール値は 18.4 % 低下し,冠動脈イベント
は 209 例(0.91/1 千人年)発生した.一次予防例の冠動
脈イベントの相対危険度は,試験期間中の総コレステロ
ール値が 240 mg/dL 以上,LDL コレステロール値が
(3)PATE(The Pravastatin Anti-atherosclerosis Trial
218)
in the Elderly)
60 歳以上(平均 73 歳)で総コレステロール値が
160 mg/dL 以上,トリグリセリド値 300 mg/dL 以上,
220−280 mg/dL(平均 253 mg/dL)の患者で,男女 665
HDL コレステロール値 40 mg/dL 未満において有意に高
名(心脳末梢血管系疾患の既往のある者をそれぞれ 28
くなっていた(図 9).また虚血性心疾患の既往を有す
% および 25 % 含む)にプラバスタチン低容量(5 mg/
る者と必要なデータが欠測した者を除いた 42,360 名を
日)または通常量(10−20 mg/日)を平均 3.9 年間投与
高齢者群 9,860 名(65−70 歳),非高齢者群 32,500 名
し,心血管イベントの発生抑制効果を比較検討したもの
(65 歳未満)に分けたサブ解析では,両群とも平均総コ
である.投与一年後の平均総コレステロール値は低容量
レステロール値(271 mg/dL および 267 mg/dL)はシン
群で 221 mg/dL,通常量群で 209 mg/dL に低下した.
バスタチン投与によりそれぞれ 19.5 % および 18.1 % 低
全体で通常量投与群は低容量群に比べて有意に心血管イ
下していた.冠動脈イベントは高齢者群,非高齢者群そ
ベントを抑制し(29 例および 42 例),これは糖尿病も
れぞれ総コレステロール値で 240 mg/dL,260 mg/dL 以
心血管系疾患の既往もない症例(171 例中 4 例および
上,LDL コレステロール値で 140 mg/dL,180 mg/dL 以
163 例中 12 例)でも同様であった.
上で有意に発症率が上昇していた .
216)
これまで高齢者における高コレステロール血症の危険
性やコレステロール低下療法の有用性は十分確立されて
217)
(2)KLIS (The Kyushu Lipid Intervention Study)
いなかったが,海外での HPS や PROSPER,J-LIT サブ
総コレステロール 220 mg/dL 以上の 45−74 歳の男性
解析や PATE の結果を合わせると,非高齢者と同様に高
5,640 名を対象にしてプラバスタチンの冠動脈イベント
コレステロール血症は危険因子として挙げられ,低下療
19
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
がると考えられる.またこの効果は高齢者でも適用され
法は有用であると考えられる.
ると考えられ,今後も検討すべき課題である.
219)
(4)CLIP(The Chiba Lipid Intervention Program)
心血管疾患の既往の無い高コレステロール血症患者
(平均総コレステロール値 264 mg/dL)に対するプラバス
タチン(10−20 mg/日)投与(一次予防 2,529 名)の効果
を 5 年間観察した研究で,継続できた群(2,131 名)は
b
トリグリセライド,その他(Lp(a),
small dense LDL,HDL など)
1.トリグリセライドとわが国の虚血性心疾患の関係
継続できなかった群(398 名)と比較して,心血管イベ
血清トリグリセライド値の動脈硬化性疾患発症,進展
ント(0.84/1 千人年および 2.06/1 千人年)および死亡
さらに虚血性心疾患への関わりについては,これまでに
率(2.6/1 千人年および 16.0/1 千人年)が低下していた.
さまざまな論議がなされてきた.血清トリグリセライド
KLIS や PATE の結果も合わせると,高コレステロール
値と動脈硬化性疾患との関係は,血清コレステロール値
血症患者ではコレステロール低下療法の継続と十分な低
と虚血性心疾患との間にみられるような明確な関連性の
下率がイベントの抑制につながることが示唆される.
確立には至っていないが,臨床的に危険因子として血清
トリグリセライド値を考慮することの重要性は,多くの
220)
(5)JLIS(Japan EPA Lipid Intervention Study)
臨床および基礎研究から明らかであり,近年の冠動脈造
高コレステロール血症患者に食事指導を行い,その上
影法を用いた成績等から血清トリグリセライド値の独立
でプラバスタチンまたはシンバスタチン投与,そしてエ
した危険因子としての意義が明確にされつつある.しか
イコサペンタエン酸製剤併用群または対照群として,5
しながら,トリグリセライドに関する治療目標に関する
年間で心血管イベント発症と死亡の予防効果(一次予防
大規模介入臨床試験の成績は,わが国のみならず欧米に
15,000 名,二次予防 3645 名)を見た無作為化オープン
おいてもほとんど報告がない.このような現況を踏まえ
ラベル比較試験である.既に終了し 2005 年の解析結果
て,わが国では,動脈硬化,特に虚血性心疾患を念頭に,
の発表を待っているところである.
1997 年に
高脂血症診療ガイドライン
が日本動脈硬
化学会より報告され,欧米の高脂血症ガイドラインを参
(6)Mega Study(Management of Elevated Cholesterol in
考に,日本人について得られたデータに基づいて
221)
the Primary Prevention Group of Adult Japanese Study)
evidence-based medicine を基本方針としたガイドライン
軽症高コレステロール血症患者 8.009 例をプラバスタ
として提唱された222).従って,本ガイドラインは,現在
チン(10−20 mg/日)投与と食事療法併用群と食事療
わが国において最も普及している日本動脈硬化学会高脂
法単独群に無作為に割り付け,5 年以上の追跡期間で心
血症診療ガイドラインを背景に,改めて検証および検討
血管イベントの一次予防効果を比較検討したもので,既
する方向性で論ずる.
に終了し 2005 年の解析結果の発表を待っているところ
である.
6.まとめ
20
日本動脈硬化学会高脂血症診療ガイドラインにおける
虚血性心疾患一次予防の記述は以下のようになる.空腹
採血時の値として血清トリグリセライド値 150 mg/dL
以上を高トリグリセライド血症の診断指針とし,食事療
日本人の血清総コレステロール値と虚血性心疾患の関
法,運動療法を中心とした治療が開始されるが,リスク
連性を示した prospective な成績から,男性では総コレ
の高い症例に対しては,食事療法,運動療法とともに薬
ステロール値が 220 mg/dL 以上で虚血性心疾患を発症
物療法の開始が選択されるべきである.
する危険性が有意に上昇する.コレステロール低下療法
一方,1997 年に AHA/ACC より発表された勧告にお
による一次予防試験の成績は,今のところ観察研究だけ
ける薬物治療に関する項目は,以下のものがあげられて
であるが,虚血性心疾患の一次予防効果は総コレステロ
いる223).すなわち,LDL コレステロール値の設定値で
ール値が 240 mg/dL,LDL コレステロール値が 160 mg/
ある 220 mg/dL primary goal に次いで,secondary goal と
dL 未満で認められている.また脂質以外の冠危険因子
してトリグリセライド値 200 mg/dL,HDL コレステロ
は男性,高齢者,高血圧症,糖尿病,心電図異常,脳血
ール値 35 mg/dL 以上の数値が提唱された.AHA Step
管疾患の合併,虚血性心疾患の家族歴,喫煙習慣である
Ⅱ Diet を行っても,LDL コレステロール値が 160 mg/
ことが示された.糖尿病などの合併症を持つ高リスク患
dL 以上(危険因子 2 個合併),190 mg/dL 以上,または
者では十分なコレステロール低下療法が一時予防につな
220 mg/dL 以上(35 歳以下男性,閉経前女性)におい
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
て,薬物投与を行うが,この際にトリグリセライド値に
レステロール 40 mg/dL 以下において独立した危険因子
より第一選択薬を考慮する.200 mg/dL より低い場合,
であることが示された237).さらに,Lipid Research Clinic
200 mg/dL〜400 mg/dL,400 mg/dL より高い場合に区
Follow-up Study でも,血清トリグリセライド値と虚血性心
分し,200 mg/dL 以下でスタチン,レジン,ナイアシン,
疾患との関連が明らかにされ,特に 180 mg/dL 以上で心
200 mg/dL〜400 mg/dL ではスタチン,ナイアシン,
疾患死が増加している238).Stockholm Prospective Study に
400 mg/dL 以上でナイアシン,フィブラート,スタチン
おいては,男女共に独立した危険因子であることが示さ
による複数の薬剤による治療を考慮し,primary goal で
れた239).一方,gemfibrozil による介入試験である Helsinki
ある LDL コレステロール値に加え,secondary goal であ
Heart Study においては血清トリグリセライド値と虚血
るトリグリセライド値および HDL コレステロール値が
性心疾患との関連は否定的な成績となっている240).過去
目標値となる.
の 17 の前向き研究のメタアナリシスでは,血清トリグ
血清トリグリセライド値は,これまでに断面調査から,
リセライド値は HDL コレステロールとは独立した危険
わが国一般成人において,男性 88〜110 m/dL,女性 63
因子であり,150 mg/dL 上昇すると心血管疾患の相対リ
〜105 mg/dL と考えられる224−230).一方,冠動脈疾患罹
スクは,男 1.32,女 1.76 であることが示された241).そ
患者は 158〜180 mg/dL との報告が多い226,228,229).特に,
の後,4,849 例で行われた PROCAM Study では,血清ト
宇和島社会保険病院の後向き調査では冠動脈疾患罹患者
リグリセライド値 200 mg/dL まで,その上昇とともに
と非罹患者は,各々 180 ± 32 mg/dL と 112 ± 52 mg/
冠血管イベントが増大し,加えて Lp(a)のリスクも報
dL と有意(p<0.01)に異なり,罹患者の過半数は 190
告されている242).The Physician’s Health Study では,血
mg/dL 以上を示した228).心筋梗塞と狭心症をエンドポ
清トリグリセライド値 150 mg/dL 上昇すると心筋梗塞
イントとした前向き調査(1,110 名,12 年間)では,
のリスクが 40 % 増大することが示されると共に,small
150 mg/dL 以上で 3.7 倍の冠動脈疾患発症がみられ,と
dense LDL,食後高脂血症の重要性が示された243).また,
りわけ 150 mg/dL を境に発症率の急激な増加がみられ
Copenhagen Male Study,COLTS,BIP Study では,血清トリ
.原発性高脂血症調査班報告による 10,313 名の
グリセライド値が 100 mg/dL を超すと,すでに虚血性心
断面調査では,冠動脈疾患発症との相関は得られていな
疾患のリスクが上がることを報告している 244−246).さら
いが,家族性高コレステロール血症,重症高脂血症の症
に,Bezafibrate による介入試験では,血清トリグリセラ
る
230,231)
例で各々,150 mg/dL,300 mg/dL 以上で動脈硬化性疾
イド値低下とともに,動脈硬化病変の進展抑制,心疾患
患が増大している232,233).また,冠動脈図造影による有
イベント(二次予防)を抑制することが示され,この効
意所見群と正常群の比較(男性)で,血清トリグリセラ
果が血清トリグリセライド値低下によるものか否か今後
イド値は 166±65 mg/dL と 112±53 mg/dL と有意に有
の検討が必要とされている247,248).
意所見群が高く,心筋梗塞発症症例 97 名を対象とした
これらの成績から,血清トリグリセライド値と虚血性
解析でも,発症群(男性 158 mg/dL,女性 161 mg/dL)
心疾患との関連を考える場合,他の因子の影響を慎重に
では,対照群(男性 116 mg/dL,女性 82 mg/dL)より
考慮する必要があり,また,すべての高トリグリセライ
高値を示している
.また,1,095 名の日系人におけ
ド血症が虚血性心疾患と関連することは示していない
る解析では,心電図異常を示す群は正常群に対し,血清
が,特に最近の成績からその危険因子としての意義はほ
トリグリセライド値が有意に高値(171±90 mg/dLvs
ぼ明らかにされたと考えられる.わが国においては,日
126±103 mg/dL,p<0.01)となっている
本動脈硬化学会高脂血症診療ガイドライン診断基準値が
226,228)
.
229)
海外における成績では,Western Collaboration Group
150 mg/dL であり,AHA/ACC 勧告およびヨーロッパ動
Study では,2,966 名の対象において血清トリグリセラ
脈硬化学会の理想値である 200 mg/dL と差異がみられ
イド値と虚血性心疾患の相関が示されたが,他の因子を
るが,現在得られる成績からは,わが国における基準値
補正すると消失している234).一方で,血清トリグリセラ
150 mg/dL を肯定する結果はあるものの,改めて 200
イド値 196 mg/dL 以上では他の因子と独立した危険因
mg/dL に改変する根拠は不十分と考えられる.また,
子となるとの成績がある
AHA/ACC 勧告での secondary goal では高トリグリセラ
.Paris Prospective Study では,
235)
血清コレステロール値 220 mg/dL 未満で血清トリグリ
イド血症治療において高コレステロール値の治療意義が
セライド値が独立した虚血性心疾患の危険因子となるこ
優先されるが,現状では示唆する結果はあるものの,わ
とが報告された
.Framingham 研究では,30〜62 才男
が国における成績は十分とはいえない.今後さらに家族
性では独立した危険因子とならず,女性または HDL コ
性高脂血症の診断,動脈硬化惹起性リポ蛋白の関与を明
236)
21
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
確化する必要があり,一次予防,二次予防に分けた新た
テロール血症治療における危険因子の一つとして位置づ
な成績とともに検討が必要である.
けられ,これまでの成績を最も重視した現状における最
善の指標と考えられる.HDL コレステロールとトリグ
2.HDL コレステロール
リセライドは一般に負の相関をすることが知られてい
HDL コレステロール値が冠動脈疾患その他の動脈硬
る.低 HDL コレステロール血症は,LDL コレステロー
化性疾患罹患率と負の相関関係を示すことは,これまで
ル,トリグリセライド治療とともに上昇が期待でき,プ
の多くの疫学調査で報告され,大多数は肯定された結果
ロバスタチンとシンバスタチンは米国で高コレステロー
を示している.海外においては,Framingham 研究,
ル血症とともに低 HDL コレステロール血症の改善とし
Multiple Risk Factor Intervention Trial(MRFIT)の成績で,
ても承認されている258).今後,各々に対する介入試験の
血清 HDL コレステロール値が低い程,冠動脈疾患の発
結果を待って治療目標値を設定する必要がある.
症率が高く,男性で HDL コレステロール値が 35 mg/dL
以下の群では 54 mg/dL 以下の群と比較し,全死亡が
1.9 倍,虚血性心疾患死が 4.1 倍高い249,250).わが国
これまでに,脂質に関連した他の危険因子として,
における大規模疫学調査は,小規模ながらも同様な成績
Lp(a),small dense LDL,レムナント粒子が注目され,
が報告されている.前向き研究としては,HDL コレス
基礎研究において動脈硬化との関連が多数報告されてい
テロール値が 56.1〜63.8 mg/dL の群,48.0〜55.7 mg/dL
る242,243,259).その測定法が開発され臨床的に測定可能で
の群,48.0 mg/dL 未満の群では,64.2 mg/dL 以上の群
あるが,我が国および海外において,これらの危険因子
と比較し,冠動脈疾患の相対危険度は,各々 1.8 倍,
としての診断基準作成の十分な疫学調査は,HDL コレ
1.61 倍,4.17 倍高値となっている
.また後向き研究で
ステロールおよびトリグリセライド値と比較してまだ不
は,男性冠動脈疾患患者の HDL コレステロール値が平
十分である.また,これらの多くは,HDL コレステロ
均で 40 mg/dL 以下であることが報告されている226,252−255).
ールおよびトリグリセライド値と相関することも報告さ
原発性高脂血症調査班報告では,高脂血症患者において,
れ,今後十分な大規模介入試験の結果を基盤に,これら
HDL コレステロール値が低い程虚血性心疾患合併率が
の治療目標値の設定が検討される必要のあるものと考え
増大し,特に 40 mg/dL 以下の群は 41〜55 mg/dL の群
られる.
251)
に比べて,虚血性心疾患合併率が増大していた
.上述
256)
の AHA/ACC による勧告では,secondary goal として
4.今後の課題
HDL コレステロール基準値を 35 mg/dL と提唱してい
海外およびわが国における大規模臨床試験の成績が待
る.日本動脈硬化学会高脂血症診療ガイドラインにおけ
たれる.今後,トリグリセライド,HDL コレステロー
る虚血性心疾患一次予防に関する記述は,血清 HDL コ
ルおよび動脈硬化惹起性リポ蛋白に対するエビデンスに
レステロール値 40 mg/dL 未満を低 HDL コレステロー
もとづくガイドラインの作成が望まれる.本ガイドライ
ル血症の診断指針とし,これが HDL コレステロールを
ンは,原則的に 20〜65 才未満での検討であり,小児お
上昇させる方向での治療を行う基準となる.わが国にお
よび高齢者の成績は含まれていない.また,糖尿病など
ける一般の HDL コレステロール値は,米国の値に比較
他の動脈硬化惹起性の疾患との関連の上での治療方針の
し,男性では約 5 mg/dL 高値,女性は大きな差を認め
作成が必要とされる.わが国における一次予防に関する
ない
正確なデータに乏しい.これからいろいろな分野の意見
.これらの疫学成績から,HDL コレステロール
257)
値 40 mg/dL 未満という基準値は,現在のところ新たに
変更する根拠はないと考えられる.
HDL コレステロールおよびトリグリセライドの治療
目標値の設定については,設定を可能にする大規模臨床
介入試験の成績は,わが国のみならず欧米においても現
22
3.その他の危険因子
を集約して作り上げていかねばならない.
c
家族性高コレステロール血症
1.はじめに
在のところ発表されていない.このような現状では,米
家 族 性 高 コ レ ス テ ロ − ル 血 症 ( Familial hyper-
国同様,わが国においてこれらの薬物療法としての基準
cholesterolemia, FH)は常染色体性優性遺伝を示し,著
を設定する根拠は現在のところ不十分である.HDL コ
明な高コレステロール血症,腱黄色腫,早発性冠動脈疾
レステロールについては,日本動脈硬化学会高脂血症診
患を 3 主徴とする疾患である.FH は高コレステロール
療ガイドラインおよび AHA/ACC 勧告共に,高コレス
血症と冠動脈疾患のモデル疾患であり,しかも最も重症
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
の高コレステロール血症として特別な対応が必要であ
2.高コレステロ−ル血症
る260−263).
ホモ接合体性 FH は約 100 万人に 1 人とまれな疾患で
1996−98 年のデータベースを基にした原発性高脂血
あるが,ヘテロ接合体性 FH は約 500 人に 1 人,従って
症研究班(班長
わが国の総患者数は 25 万人以上と極めて頻度の高い疾
患者 19 例,ヘテロ FH 患者 641 例の臨床像をまとめて
患である.
いる264).(表 5).血清コレステロール値はホモ FH では
表5
ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症患者の臨床像 264)
ホモ接合体
n
19
ヘテロ接合体
男
女
296
345
年齢(歳)
26 ± 14
49 ± 13
54 ± 16
17.2 ± 3.3
23.5 ± 3.3
22.6 ± 3.2
総コレステロール(mg/dL)
686 ± 250
324 ± 70
325 ± 72
LDL コレステロール(mg/dL)
582 ± 132
249 ± 132
248 ± 69
トリグリセライド(mg/dL)
157 ± 117
153 ± 99
114 ± 65**
HDL コレステロール(mg/dL)
35 ± 21
42 ± 12
50 ± 15**
14/4
179/81
230/49*
角膜輪(%)
85
40
36
黄色腫(%)
100
88
88
腱黄色腫(%)
100
82
83
Ⅱa/Ⅱb
図 10
正常者およびヘテロ接合体家族性高コレステロール血症
(a)Total cholesterol
Total cholesterol
ヘテロ接合体
BMI(kg/m2)
高脂血症型
Total cholesterol
北徹)の発表で,Bujo らは,ホモ FH
(b)Total cholesterol
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
100 150 200 250 300 350 400 450 500 550
185.25
322.00
60
(c)Total cholesterol
50
0
100 150 200 250 300 350 400 450 500 550
185.25
322.00
60
(d)HDL cholesterol
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
3
3.5
4
4.5
5
5.5
185.25 322.00
6
6.5
7
0
100 150 200 250 300 350 400 450 500 550
185.25
322.00
23
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
図 11
ヘテロFH患者における年齢別,性別心筋梗塞累積症例数 268)
140
130
120
男性(n : 138)
110
100
90
80
70
60
女性(n : 55)
50
40
30
20
10
0
0
10
20
30
40
50
図 12
686±250 mg/dL,男性のヘテロ FH では 324±70 mg/dL,
60
70
80
90
ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症患者の
冠動脈疾患累積発症度 267)
女性のヘテロ FH では 325±72 mg/dL であった.ヘテロ
FH の男女間で総コレステロール値,LDL コレステロー
40
ル値の違いはないものの,女性のヘテロ FH 患者は男性
と比べて,トリグリセリド値が低く,HDL コレステロ
ール値が高い.Mabuchi らは ,LDL 受容体の遺伝子変
265)
Males
30
異の有無を確認した FH 患者と非 FH 患者の血清脂質値
の分布を検討し(図 10),その鑑別できるカットオッフ
値を出したところ,総コレステロール値 225 mg/dL,
20
LDL コレステロール値 160 mg/dL (感受性 99.4 %,特
異度 98.5 %)であった.
Females
10
3.黄色腫
264)
FH では高率に黄色腫を認める(表 5)
.ホモ FH では
全身性の黄色腫がみられるが,とくに指間部や臀部の黄
0
0
25
色腫は強くホモ FH を疑わせる.ヘテロ FH にみられる
50
Age(y)
75
100
黄色腫は腱黄色腫,眼瞼黄色腫,扁平黄色腫,結節性黄
色腫である.黄色腫が全く認められない FH 患者も少な
くない.腱黄色腫は FH に特徴的な黄色腫であり手背伸
筋腱とアキレス腱に好発する.アキレス腱の X 線撮影
はアキレス腱黄色腫を客観的に定量化する有用な方法で
あり,アキレス腱厚が 9 mm 以上あればアキレス腱黄色
腫と診断できる266).FH の診断基準は以下のようになる.
24
[1]腱黄色腫を伴う高コレステロール血症(通常 230
mg/dL 以上)
[2]1 親等に[1]の基準を満たす者がある高コレステ
ロール血症
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
はわずか 12 名(10 %)であった.心筋梗塞を併発した
4.動脈硬化症,とくに冠動脈硬化症
268)
ヘテロ FH 患者 193 名の性別,年齢別分布(図 11)
を
Mabuchi267)らによると経験した FH 症例のうち,ホモ
みると,男性 FH では 30 歳以降で心筋梗塞を発症して
FH 9 例,ヘテロ FH 123 例が死亡した.ホモ FH は 9 例
いるが,女性 FH では 50 歳以前は少なく,閉経期以後
中 8 例は
急速に増加している.女性 FH ではエストロゲンが抗動
心臓死
であり,平均死亡年齢は 33 歳,平
均血清コレステロールは 772 mg/dL であった.
脈硬化的に作用していると考えられる.
ヘテロ FH123 例中 82 例(67 %)は 心臓死 であり,
平均死亡年齢は男性 60 歳,女性 70 歳であった.脳卒中
図 13
心筋梗塞が認められた症例は FH 全体の 22 % であり,
50 歳以上の男性ヘテロ FH 患者では 30 %,60 歳以上の
家族性高コレステロール血症患者における冠動脈狭窄度指数(CSI)269)
CSI
60
ホモFH
50
40
y=1.57X−20.43
(r=0.956,p<0.05)
30
20
10
0
0
10
20
30
40
50
60
70
年齢
30
40
50
60
70
年齢
30
40
50
60
70
年齢
CSI
60
男性ヘテロFH
50
y=0.52X−9.11
(r=0.438,p<0.001)
40
30
20
10
0
0
10
20
CSI
60
女性ヘテロFH
50
y=0.47X−12.54
(r=0.343,p<0.01)
40
30
20
10
0
0
10
20
25
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
女性 FH 患者では 20 % が心筋梗塞を併発した.また
FH 全体で 24 % の患者が冠動脈疾患を発症し,ヘテロ
Bujo ら 267)の報告では,ホモ FH 全体で 73 %,ヘテロ
FH における冠動脈疾患累積発症度(図 12)では男性で
ホモFH,ヘテロFH患者と正常者の血清コレステロール値と平均寿命 269)
図 14
100
90
正常者
80
平均死亡年齢
70
ヘテロFH
60
50
40
ホモFH
30
20
10
0
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
血清コレステロール(mg/dL)
60
60-
55-60
50-55
250-
200-250
150-200
100-150
-100
320-
280-320
240-280
20
200-240
20
-200
20
400-
20
360-400
40
320-360
40
280-320
40
HDL-C
45-50
TG
40-45
60
LDL-C
40
-280
26
60
TC
35-40
60
ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症患者の脂質と冠動脈疾患累積発症度の関係 267)
-35
図 15
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
約 35 %,女性で約 14 % であった.
と,狭心症,心筋梗塞の発症を悉皆的に補足することが
FH 患者の冠動脈硬化症が何才頃から認められるかに
困難ことなどから,冠動脈疾患発症をエンドポイントと
は,ホモ FH 患者 5 例とヘテロ FH 患
する信頼に足る前向き疫学調査の成績は少ないと考えら
関し Mabuchi ら
269)
者 163 例(男性 105 例,女性 58 例)に冠動脈造影を行
れる.その中で,小町らは昭和 50 年頃から昭和 58 年
ない,年令(X)と冠動脈狭窄度指数(CSI)(Y)の相
(1975 年〜1983 年)までに行われたわが国 27 集団の前
関を求めたところ(図 13),ホモ FH 患者では,Y=
向き調査の成績をまとめているが271),心筋梗塞+労作性
1.57X−20.43,男性ヘテロ FH 患者では
Y=0.52X−
狭心症で定義された虚血性心疾患発症率は 40〜69 歳の
9.11(r=0.438,p<0.001),女性ヘテロ FH 患者では
男性で人口 1,000 人対約 0.9〜1.2 人,女性で約 0.3〜0.6
Y=0.47X−12.54(r=0.343,p<0.01)の相関関係が得
人であり,脳卒中の 1/5 程度であった(図 16).このと
られ,ホモ FH 患者ではヘテロ FH 患者の 3 倍の速度で
き母集団に比較して男性の虚血性心疾患発症者では収縮
冠動脈病変が進行すると推定された.これらの回帰直線
期血圧が有意に高かったことが示されている.女性の収
が X 軸と交わる点よりホモ FH 患者は平均 13 歳から,
縮期血圧および男女の拡張期血圧では有意の差は見出し
男性ヘテロ FH 患者では 17 歳より,女性ヘテロ FH 患
ていない.
者では 25 歳より冠動脈造影上確認できる程度の狭窄が
発現すると考えられ,高コレステロール血症の治療はこ
の程度の年令から開始しても遅くはないと思われる.
わが国における代表的なコホート調査である九州大学
第二内科による久山町研究は,疾患診断や死因の診断根
また FH 患者の冠動脈疾患死の頻度は一般人の約 10
拠を剖検に置く極めて信頼性の高い研究である.久山町
倍であり,高コレステロール血症と冠動脈疾患に関する
研究では 10 年間の観察における剖検例の冠動脈狭窄度
モデル疾患ともいえ,正常者,ホモおよびヘテロ FH 患
と血圧値の関連を検討し,冠動脈硬化の重症度は男女と
者の血清コレステロール値と平均寿命の関係は(図 14)
も調査開始時および死亡直前の収縮期血圧値とに有意な
のように表される.Bujo らは,ヘテロ FH 患者において,
相関が存在し収縮期血圧値と冠動脈硬化との関連を報告
LDL コレステロール値 320 mg/dL 以上,トリグリセリ
した76).拡張期血圧値との関連は見出されていない.ま
ド値 250 mg/dL 以上の症例で冠動脈疾患の発症が増え
た久山町研究では冠動脈疾患の年間発症率を 1961 年から
ること,HDL コレステロール値が高い患者ほど冠動脈
1970 年では男性 2.2/1,000 人(95 % 信頼区間 1.88〜2.52)
疾患の発症が減少することを認めている
(図 15).
267)
女性では 1.3/1,000 人(同 0.83〜1.77),1974 年から
1983 年までは男性 1.7/1,000 人(同 1.46〜1.94)女性で
2
2 高血圧
は 1.3 (同 0.93〜1.74)と報告し発症率に統計学な年代
的変化は見出されなかったとしている.また,多変量分
1.虚血性心疾患の危険因子としての高血圧
析により冠動脈疾患発症危険因子を解析した結果,収縮
期血圧値が有意な変数として採択されている(表 6)272).
Framingham 研究,Multiple Risk Factor Intervention
Trial(MRFIT),Prospective Cardiovascular Munster study
National Integrated Project for Non-communicable Disease
(PROCAM 研究)など米国,欧州などの前向き疫学研究
and its Trends in the Aged(NIPPON DATA)80273)は 1980
から高血圧は脳卒中のみならず,冠動脈疾患の危険因子
年度の循環器疾患基礎調査対象の生命予後を 14 年間追
であることは明白である.また血圧レベルは冠動脈疾患
跡した研究である.対象は全国より無作為抽出された
発症の相対リスクと連続的に相関することもメタ分析か
10,000 名を超える集団で生死の追跡率は 90 %を越え,
ら示される270).つまり高血圧は他の因子で調整しても独
わが国の国民の代表的サンプルの研究といえる.
立した冠動脈疾患の危険因子であり,血圧値の上昇に従
NIPPON DATA 80 では男性における血圧値が虚血性心
い虚血性心疾患の発生リスクが高まる量依存関係が成立
疾患による死亡の有意な危険因子となった.収縮期血圧
し,日本人においても高血圧が冠動脈疾患の発症に関与
値 120〜139 mmHg に比較して 180 mmHg 以上での虚血
することが想定される.しかしながら,わが国で疫学的
性心疾患による死亡の相対危険は全年齢で 3.05 (95 %
にこの関連を証明した成績は少ない.いずれかの因子が
信頼区間 1.27〜7.35),拡張期血圧値 70〜79 mmHg に比
疾患発症の危険因子であることを証明するためには,無
較して 100〜109 mmHg での相対危険は 3.92 (同 1.37〜
作為抽出された集団の前向き調査が必須であるが,日本
11.21),110 mmHg 以上では 4.75 (同 1.50〜15.03)で
人では欧米人に比較して虚血性疾患の発生が少ないこ
あった.
27
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
図 16
個々の集団における虚血性心疾患の発生率(男,40〜69歳)
虚血性心疾患
10
急性死(心筋梗塞の可能性が大のもの)
発
生
率
︵
人
口
千
対
/
年
︶
5
*
*
*
*
端
野
壮
瞥
井
川
石
沢
北
内
越
新
発
田
八
千
穂
協
和
国
鉄
事
務
国
鉄
現
業
北
秋
新 長 茨
東
海
田
潟 野 城
京
道
注1)*……40〜59歳
2)虚血性心疾患:心筋梗塞+労作性狭心症
表6
CHD危険因子,Cox比例ハザード・モデル(久山町)272)
男
年
齢(歳)
性
女
性
2.05(1.03-3.22)* 2.51(1.67-3.77)*
収縮期血圧(mmHg) 1.56(1.13-2.17)* 1.49(1.07-2.07)*
喫
煙
2.38(1.09-5.22)* 2.22(1.04-4.75)*
血清総コレステロール(mg/dL) 1.37(1.04-1.80)* 1.04(0.72-1.50)
比
体
重(Kg/m2) 1.30(0.92-1.85) 1.56(1.14-2.15)*
大
阪
事
務
大
阪
現
業
八
尾
大
阪
千
早
赤
阪
魚
津
農
村
魚
津
魚
家
富
山
大
洲
魚
島
愛
媛
野
市
田
主
丸
高
知
福
岡
国
富
西
米
良
椎
葉
宮
崎
心筋梗塞の断面調査では磯村らが 1990 年以降に地域
で悉皆性を考慮した循環器疾患登録調査を組織しその結
果を報告している275).北海道から沖縄までの 8 地域の年
齢調整発症率は(表 8)に示すごとくで,最低は秋田の
15.0,最高は沖縄の 26.0 であった.このうち帯広市での
心筋梗塞発症者の背景を地域対照と比較すると,高血圧
の頻度は男女ともに心筋梗塞発症者で高率であった182).
異常心電図
1.38(0.66-4.00) 2.09(0.91-4.81)
同様に断面成績から冠動脈疾患と高血圧の関連を検証し
飲
酒
0.81(0.51-1.28) 1.80(0.67-4.80)
た報告は他にも数多く見られる.
耐糖能異常
0.58(0.21-1.59) 1.53(0.44-5.35)
数字:相対危険,(
)95%信頼区間,*p<0.05
2.無作為化比較試験における高血圧治療と冠動脈疾患発症
ある因子の治療により疾患の発症が予防されることを
他に日本人を対象とした検討として Honolulu Heart
証明することは危険因子と疾患の因果関係を証明する上
Program でも高血圧が虚血性心疾患の死亡や罹患のリス
で重要である.(表 9)に欧米で行われた 17 の主な降圧
クとなることが報告されている.以上の研究を含めた内
薬治療臨床試験おけるメタ分析 276)の成績を示した.17
外における収縮期血圧値と冠動脈疾患の相対危険度を検
の臨床試験の解析対象数は 47,653 人,サンプル数で重
討した成績を(表 7)にまとめた .国内の検討では収
み付けをした平均年齢は 56 歳(38〜76 歳),男女はほ
縮期血圧 10 mmHg の上昇で冠動脈疾患の罹患,死亡が
ぼ同数で追跡期間は 4〜5 年であり,これらの検討では
1.16〜1.40 倍上昇することが示されている274).
β遮断薬が主に治療薬として用いられ実薬群の拡張期血
274)
28
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
表7
コ
ホ
ー
国内外における最大血圧と冠動脈疾患相対危険度の疫学成績 274)
ト
解析年齢層
(男性)
endpoint
10mmHgRR
信頼区間
罹患
罹患/死亡
死亡
1.27
1.17
1.24
1.20 〜 1.35
1.12 〜 1.23
p < 0.001
−
1.16
1.22
1.18
1.19
1.13
1.40
p < 0.05
p < 0.001
p < 0.01
p < 0.05
1.05 〜 1.34
1.00 〜 1.28
1.16 〜 1.69
世界
Honolulu Heart program
pooling project
MRFIT
45 〜 79
40 〜 59
35 〜
久山町
広島
秋田
大阪
新発田市
NIPPON DATA 80
NIPPON DATA 80
45 〜
40 〜 69
40 〜 59
40 歳以上
30 歳以上
30 〜 69 歳(開始時)
罹患
罹患
罹患
罹患
罹患
死亡
死亡
標準相対危険度
30 歳以上
1.15
日本
重回帰分析(他の危険因子考慮済み)
表 8 地域別にみた心筋梗塞の年齢調整発症率(初発例)
(人口10万対)275)
■
男
女
計
道
48.0
14.2
24.7
秋
田
23.8
8.0
15.0
長
野
32.1
11.3
22.6
滋
賀
39.1
8.4
22.6
大
阪
37.8
14.3
24.9
愛
媛
28.4
12.5
19.5
沖
縄
41.0
14.0
26.0
北
海
表9
試験と報告年
参加者数
Wolff and Lindeman, 1966
Veterans Administration, 1967
Veterans Administration, 1970
Carter, 1970
Barraclogh et al, 1973
Hypertension-Stroke Study, 1974
USPHS Study, 1977
VA-NHLBI Study, 1977
HDFP, 1979
Oslo Study, 1980
Australian National Study, 1980
MRC Study(younger), 1985
EWPHE Study, 1985
Coope and Werrender, 1986
SHEP Study, 1991
Stop-Hypertension Study, 1991
MRC Study(older), 1992
平均あるいは合計
87
143
380
97
116
452
389
1,012
10,940
785
3,427
17,354
840
884
4,736
1,627
4,396
47,653
圧の低下は平均 6.5 mmHg であった.この結果を(表
10)に示す.全虚血性心疾患発症数は 2,038 人と脳卒中
の約 1.5 倍高かった.プラセボ服用者に対して実薬群で
は虚血性心疾患の発症を 16 % 減少させている.本邦で
は虚血性心疾患の発症率が小さく,脳卒中と虚血性心疾
患の発症率は逆転しているのでこの成績をそのまま当て
はめることはできないが,血圧レベルが高い高血圧患者
ほど降圧薬治療の有用性が大きいことは人種を問わない
と考えられる.最近β遮断薬,利尿剤以外の降圧薬につ
いても臨床試験の結果が報告されているが,まだどの薬
物が虚血性心疾患の予防に有利であるかのコンセンサス
欧米における降圧薬治療の臨床試験 276)
組 み 入 れ
拡張期
収縮期
平均
血圧値
血圧値
年齢
(mmHg)(mmHg) (歳)
100〜130
−
49
115〜129
−
51
90〜114
−
51
≧110
−
−
100〜120
−
56
90〜115 140〜220
59
90〜114
−
44
85〜105
−
38
≧90
−
51
90〜109
−
45
95〜109 <200
50
90〜109 <200
52
90〜109 160〜219
72
105〜120 <280
69
<90 160〜219
72
90〜120 180〜230
76
<115 160〜209
70
−
−
56
平均追跡
期間
(年)
1.4
1.5
3.3
4
2
2.3
7
1.5
5
5.5
4
5
4.7
4.4
4.5
2.1
5.8
4.7
平均血圧下降度
拡張期血圧 収縮期血圧
方
法
降圧薬
二重盲検
A
二重盲検 D+A+V
二重盲検 D+A+V
オープン
D
単盲検
D/M
二重盲検
D
二重盲検
D+A
二重盲検
D
オープン
D
オープン
D
単盲検
D
単盲検
BB/D
二重盲検
D
オープン
BB
二重盲検 D+BB
二重盲検
BB/D
二重盲検
BB/D
−
−
(mmHg)(mmHg)
20
−
27
43
19
31
−
−
13
−
12
25
10
18
7
−
6
−
10
−
6
−
6
−
8
20
11
18
4
12
8
20
7
14
6.5
16
A:アルカロイド,D:利尿薬,V:血管拡張薬,M:メチルドパ,BB:β遮断薬
29
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
表 10 降圧治療による脳卒中,虚血性心疾患,心血管疾患と
全死亡に対するリスクの低下 276)
発
症
数
リスク低下率
実 薬
プラセボ
%
(n=23,487) (n=23,806) (95%CI)
全脳卒中
525
致死性脳卒中
全虚血性心疾患
3.冠動脈疾患危険因子としての糖尿病
欧米の前向き研究では,糖尿病患者では非糖尿病者に
p
比較して虚血性心疾患の頻度が 2〜4 倍に増加すること
<0.001
が明らかにされていている277−279).さらに 2 型糖尿病患
835
38(31〜45)
140
234
40(26〜51)
<0.001
者と非糖尿病者の心筋梗塞発症頻度を 7 年間にわたって
934
1,104
16(8〜23)
<0.001
追跡した研究によれば,心筋梗塞の既往のない 2 型糖尿
致死性虚血性心疾患
470
560
16(5〜26)
0.006
心血管系疾患死亡
768
964
21(13〜28)
<0.001
1,435
1,634
13(6〜19)
<0.001
全死亡
病患者の冠動脈疾患による死亡の危険率は,年齢,性,
喫煙,高血圧,LDL コレステロール,HDL コレステロ
ール,トリグリセライドを調整すると,心筋梗塞の既往
のある非糖尿病者の危険率と同等である(2.5 対 2.6/
は得られていない.しかしながら,降圧を十分にはかる
1,000 人・年)280).すなわち糖尿病患者が初めて虚血性心
こと,糖尿病患者,高齢者など患者の特性を十分に考慮
疾患を発症する頻度は,心筋梗塞の既往のある非糖尿病
した治療が必要であることが明らかである.
者が再発する頻度と同等に高率であるといえる.さらに
心筋梗塞後の死亡率も糖尿病患者では非糖尿病者に比べ
3
3 糖尿病
高く,予後が悪い281).
日本でおこなわれた前向き研究の一つである久山町研
1
日本における糖尿病の現況
究では,糖負荷試験で耐糖能を評価した 2,427 人を 5 年
間追跡し,年齢と性を調整しても糖尿病患者での初回虚
平成 14 年度糖尿病実態調査結果では,「糖尿病が強く
血性心疾患発症率は 5.0/1,000 人・年で健常者の発症率
疑われる人」は約 740 万人,「糖尿病の可能性を否定で
1.6/1,000 人・年に比し有意に高率である282).また日本
きない人」は約 780 万人で,合わせると約 1,620 万人と
人高コレステロール血症患者の 6 年間追跡による心筋梗
なり,日本は糖尿病列島とよばれるほど,患者数が増加
塞発症の相対危険率も,糖尿病で 2 倍以上に有意に増加
している.(参考:平成 9 年度糖尿病実態調査「糖尿病
している283).Japan Diabetes Complication Study(JDCS)
が強く疑われる人」約 690 万人,「糖尿病の可能性を否
による調査では,観察期間 7 年間における日本人 2 型糖
定できない人」約 680 万人)この背景には遺伝的素因の
尿病患者の心血管疾患発症数は 1,000 人年あたり虚血性
他に,食生活の欧米化による脂肪持取量の増加,また車
心疾患 8 人であり,さきの久山町研究に比べて,虚血性
の普及や坐位作業の増加などによる身体活動量の低下,
心疾患の発症率の著明な上昇を認めている.これまで日
それによる肥満者の増加といった生活習慣の変化に由来
本では,欧米に比べ脳血管障害の発症率が多い一方,虚
する環境要因が重大な影響をおよぼしている.
血性心疾患の発症率は少なかったが,最近では,日本人
2.日本における糖尿病の特性
日本では糖尿病の 95 % 以上は 2 型糖尿病である.2
型糖尿病の発症には,インスリン抵抗性の増大とインス
リン分泌低下の両者が関与している.インスリン抵抗性
は肥満や身体活動量の低下によりもたらされ,インスリ
糖尿病患者でも欧米と同程度に虚血性心疾患発症頻度が
増加していることを示唆するものであり,食習慣の欧米
化や運動不足による肥満の増加を反映していると考えら
れている.
4.血糖コントロールの影響
ン分泌の初期相の低下が特徴的であることが知られてい
糖尿病患者の罹病期間や血糖コントロール状態と,糖
るが,両者ともに遺伝的影響を受けていることが示唆さ
尿病細小血管合併症(腎症,網膜症など)の発症とは強
れている.インスリン抵抗性は糖尿病の発症前から存在
い相関があるが,虚血性心疾患の発症との相関はそれほ
し,このインスリン抵抗性自体が冠動脈疾患の危険因子
ど明確ではない.しかし最近の欧米の 2 型糖尿病患者を
と考えられている.さらに他の重要な冠動脈疾患危険因
対象にした前向き研究では糖尿病罹病期間,HbA1c,空
子である脂質代謝異常,高血圧もインスリン抵抗性と共
腹時血糖と虚血性心疾患の発症率,死亡率の増加に統計
に同時に集積していることが多く,メタボリック症候群
学的に有意な関係が認められている.
として認識されるようになっている.
わが国での久山町の糖尿病患者と循環器疾患発症に関
する 8 年間の前向き研究では,2,424 名を対象とし心筋
30
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
梗塞に脳梗塞を加えた心血管疾患の発症に対する相対危
一次予防に関する大規模研究としてはスタチンを用いた
険を検討しているが,糖尿病患者の空腹時血糖 120 mg/
CARDS293)と,フィブラートを用いた FIELD294)が報告さ
dL 以上で有意な危険率の上昇を認めている.また糖尿
れている.CARDS 試験は心臓病の既往歴がなく,コレ
病大血管障害多施設共同研究(MSDM)の 2 型糖尿病
ステロール値が比較的低い 2,800 名以上の 2 型糖尿病患
患者 899 名の断面調査によれば大血管障害合併頻度は,
者を対象に,アトルバスタチン 1 日 10 mg 投与群とプ
空腹時血糖 130 mg/dL 以上で有意に増加している.
ラセボ投与群を比較しており,アトルバスタチン投与群
一 方 血 糖 コ ン ト ロ ー ル に 対 す る 介 入 試 験 UK
では主要な心血管イベントの有意な減少(37 %)を報
Prospective Diabetes Study(UKPDS)では,2 型糖尿病
告している.また,FIELD 試験は,9795 名の 2 型糖尿
患者 3,867 人を経口剤あるいはインスリン注射による強
病患者を対象にフェノフィブラート 1 日 200 mg 投与群
化療法群と食事療法中心の通常療法群に分け 10 年間追
とプラセボ投与群を比較した試験であるが,そのうち一
跡し,通常療法群に比し強化療法群で HbA1c は 0.9 ポ
次予防(7664 名)においては,フェノフィブラート 1
イント低下した.その結果,強化療法群では細小血管合
日 200 mg 投与群において,非致死的心筋梗塞の初発ま
併症は有意に減少し(25 %),心筋梗塞の発症は有意に
たは冠動脈心疾患による死亡発生率の有意な減少(25
は至らなかったものの 16 % 減少した〈p=0.052〉 .こ
%) を 報 告 し て い る . 二 次 予 防 で は Scandinavian
れらの結果からも血糖上昇や長期の罹病期間は,糖尿病
Simvastatin Survival Study(4S)295),Cholesteroland Recurent
患者の虚血性心疾患の発症頻度を増加させるが,その影
Events(CARE)trial296),Long − Term Intervention with
響度は細小血管障害ほど強くないと考えられ,糖尿病と
PravastatininIschemic Disease〈LIPID〉297)があり,コレス
虚血性心疾患発症の間に血糖因子以外の背景因子が存在
テロール低下療法が糖尿病患者の虚血性心疾患の再発を
することが示唆されている.
予防することが示されている.従って,糖尿病患者にお
284)
いては,脂質の厳重なコントロールが,虚血性心疾患発
5.他の冠危険因子の影響
症の予防にきわめて重要であることがあきらかである.
糖尿病患者に合併している高血圧症,脂質異常(高
LDL コレステロール血症,低 HDL コレステロール血症,
高トリグリセライド血症,高アポリポ蛋白 B 血症,
6.耐糖能異常の問題
糖尿病ではない耐糖能異常者の虚血性心疾患発症頻度
small dense LDL 血症),喫煙もまた虚血性心疾患発症の
への影響は議論の余地がある.ヘルシンキの前向き研究
危険因子となり278,285−288),これらの危険因子の集積によ
では冠動脈イベントの発症率は耐糖能異常者で軽度増加
りリスクはさらに高まる
.わが国の MSDM 断面調
しているが有意ではなかった.一方日本の久山町研究で
査でも大血管障害は,高血圧(収縮期血圧 135 mmHg
は,脳卒中を含めた心血管疾患の危険率は年齢,性を調
以上,拡張期血圧 76 mmHg 以上),高コレステロール
整すると正常耐糖能者の 1.9 倍と有意に高く,この差は
278,279)
血症(総コレステロール 180 mg/dL 以上)
,高トリグリ
収縮期血圧,BMI,総コレステロール,HDL コレステ
セライド血症(120 mg/dL ノ以上)の存在で有意に発症
ロール,喫煙,アルコールで調整しても有意であった.
頻度が高くなる289).
さらに非糖尿病者での血糖値と心血管イベントの発症率
また糖尿病患者の血圧コントロールに対する臨床介入
に関するメタ分析では,血糖レベルは心血管イベント発
試験では,β遮断薬ないし ACE 阻害薬を中心に使用し
症率と関連し,空腹時血糖 75 mg/dL のレベルに比し,
た uKPDS では統計学的有意ではなかったものの 21 %
空腹時血糖 110 mg/dL レベルでは相対危険率 1.33 と報
減少し
, ま た 利 尿 薬 を 中 心 に 使 用 し た Systolic
告されている298).また経口糖負荷試験 2 時間血糖値にお
Hypertensionin in the Elderly Program(SHEP)では 54 %
いても同様の関連が認められている 298,299).これらの結
の 減 少 291) お よ び ca 拮 抗 薬 を 中 心 に 使 用 し た
果からさらなる研究は必要ではあるが,耐糖能異常者に
Hypertension Optimal Treatment(HOT)trial では 51 %292)
おいても,顕性糖尿病患者よりは低いものの虚血性心疾
の有意な心筋梗塞,突然死のリスク減少を認めている.
患の発症のリスクが正常耐糖能者より増すものと考えら
これらの結果からは,糖尿病患者において高血圧が虚血
れる.
290)
性心疾患の発症に重大な影響をおよぼすと同時に,虚血
性心疾患発症を予防する上での降庄療法の重要性が示唆
される.
糖尿病患者への脂質介入がもたらす虚血性心疾患発症
7.高インスリン血症,インスリン抵抗性の問題
2 型糖尿病患者のほとんどにインスリン抵抗性が存在
すると同時に,顕性の糖尿病発症前から存在している.
31
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
インスリン抵抗性と冠危険因子の関係は多くの前向き研
究により明らかとなっており,インスリン抵抗性ないし
高インスリン血症と耐糖能異常,高血圧,高トリグリセ
に対して効率のよい予防対策を確立することである.
日本におけるメタボリックシンドロームの診断
ライド血痕,低 HDL コレステロール血症が集積してみ
メタボリックシンドロームの第 1 の臨床的帰結
られ,メタボリック症候群と認識されている.インスリ
(Clinical Outcome)は心血管病であり,診断および治療
ン抵抗性の指標である高インスリン血症と心血管疾患発
は心血管病予防のためにおこなう.2005 年に発表され
症の関連において,12 の研究結果のメタ分析によりイ
た IDF(International Diabetes Federation)303)のメタボリッ
ンスリン値が弱いながらも正の危険因子であることが報
クシンドロームの基準は,ウエスト周囲径を基準とした
.また久山町研究でも 60 歳以上の 1,097 名
中心性肥満を絶対条件として①高トリグリセライド血症
の 5 年間の追跡で,高インスリン血症(空腹時インスリ
(>150 mg/d L)②低 HDL コレステロール血症(男性<
ン値 11μU 以上)が虚血性心疾患発症の独立した危険
40 mg/dL,女性<50 mg/dL)③血圧高値(>130/85
因子とみなされた
告された
300)
.インスリン抵抗性自体と虚血性心
mmHg)④空腹時高血糖(>100 mg/dL)または 2 型糖
疾患発症に関しての前向き研究はまだ行われていない
尿病の 4 項目のうち 2 つ以上の条件を満たすものと策定
が,インスリン抵抗性が虚血性心疾患発症の危険因子で
した.わが国では,特に以前から内臓肥満の重要性が主
あることが強く疑われ,糖尿病患者における虚血性心疾
張されてきたがウエスト周囲径や肥満の程度は欧米諸外
患一次予防では,インスリン抵抗性を改善させる治療を
国とは異なることから,わが国において独自の診断基準
301)
あわせて考慮する必要がある.PROactive 試験では,イ
を策定した.メタボリックシンドロームの概念は,糖代
ンスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾン投与によ
謝異常,脂質代謝異常,高血圧の上流に位置し,また,
り,ハイリスク 2 型糖尿病患者における総死亡,非致死
それ自身が心血管病のリスクでもあるという成因論的検
性心筋梗塞,脳卒中のリスクが有意に低下したと報告し
討に加え,予防医学上,多くの人が用いることができ,
ている302).
また疫学調査にも利用しうるような基準作成について検
討がなされ,診断基準検討委員会は,メタボリックシン
4
4 メタボリックシンドローム
ドロームを内臓脂肪蓄積(ウエスト周囲径の増大で示さ
れる)+2 つ以上の co-morbidity と定義することで合意
はじめに
血清コレステロール高値,高 LDL コレステロール血
症が動脈硬化の強いリスクファクターであることは,世
界的なコンセンサスであり,LDL,酸化 LDL をめぐる
動脈硬化の成因は,分子レベルで解明され,さらに治療
も HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン)の開発によ
って確立されてきた.一方,1980 年代後半から beyond
cholesterol の概念として,一個人に複数のリスクが集積
が得られた(表 11).
表 11
メタボリックシンドロームの診断基準
内臓脂肪(腹腔内脂肪)蓄積
ウエスト内囲怪
(内臓脂肪面積男女とも≧100 cm2 相当)
上記に加え以下のうち 2 項目以上
高トリグリセライド血症
かつ/または
低 HDL コレステロール血症
≧150 mg/dl
収縮期血圧
≧130 mmHg
した状態,つまり,マルチプルリスクファクター症候群
という病態が注目されるようになった.
メタボリックシンドロームはインスリン抵抗性や耐糖
能障害・動脈硬化惹起性リポ蛋白異常,血圧高値を個人
に合併した状態で,個々のリスクが必ずしも強くなくて
も,それらが重責すると心血管病の発症リスクが極めて
強くなる病態であり,その概念は世界共通である.高コ
レステロール血症に対する対策がほぼ確立された現在,
心血管病予防の重要なターゲットとなっている.メタボ
リックシンドロームを疾患概念として確立し,わが国に
おいて独自の診断基準を策定した目的は,飽食と運動不
足によって生じた過栄養を基盤に増加してきた心血管病
32
男性≧85 cm
女性≧90 cm
<40 mg/dl
男女とも
かつ/または
拡張期血圧
空腹時高血圧
≧85 mmHg
≧110 mg/dl
*CT スキャンなどで内臓脂肪量測定を行うことが望ましい.
*ウエスト怪は立位,軽呼吸時,臍レベルで測定する.脂肪蓄
積が著名で臍が下方に偏位している場合は助骨下縁と前上腸
骨棘の中点の高さで測定する.
*メタボリックシンドロームと診断された場合,糖負荷試験が
薦められるが診断には必須ではない.
*高 TG 血症,低 HDL-C 血症,高血圧,糖尿病に対する薬剤
治療をうけている場合は,それぞれの項目に含める.
*糖尿病,高コレステロール血症の存在はメタボリックシンド
ロームの診断から除外されない.
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
①内臓脂肪(腹腔内脂肪)蓄積:内臓脂肪蓄積はメタボ
性 559 名,女性 196 名において検討され,男性 85 cm,
リックシンドロームの各コンポーネントと深いかかわ
女性 90 cm と設定された(図 18).ウエスト径は立位,
りがあり
,腹腔内脂肪量が増加すると男女とも同様
軽呼気時,臍レベルで測定するが,脂肪蓄積が著明で
に過栄養による健康障害数が増加する(図 17)こと
臍が下方に偏位している場合は,肋骨下縁と前腸骨棘
が国内外の臨床研究によって実証されている.わが国
の中点の高さで測定する.ウエスト周囲径を NCEP
では肥満症診断基準に示されているごとく,臍高レベ
(National Cholesterol Education Program)診断基準306)
ル腹部 CT スキャンによって判定した腹腔内脂肪面積
では,男性 102 cm,女性 88 cm を,IDF 診断基準で
100 cm 以上が男女共通した内臓脂肪蓄積のカットオ
は,それぞれ 94 cm,80 cm にカットオフ値としてい
フ値である .それに対応するウエスト周囲径が,男
るが,すでに世界的な基準を定める上では民族性,特
304)
2
305)
内臓脂肪面積とリスクファクター保有数の関係 304)
図 17
男性(n=479)
2.5
女性(n=181)
2.5
P<0.001
2.0
リ
ス
ク 1.5
フ
ァ
ク
タ 1.0
ー
数
2.0
リ
ス
ク 1.5
フ
ァ
ク
タ 1.0
ー
数
0.5
0.5
0
<100
0
100
125
150 ≧175
〜125 〜150 〜175
VFA(cm2)
図 18
R=.676
女性(n=196)
R=.646
内
臓 200
脂
肪
面 150
積
︵
cm2
内
臓 200
脂
肪
面 150
積
︵
cm2
250
100
︶
100
50
50
0
55
100
125
150 ≧175
〜125 〜150 〜175
VFA(cm2)
300
250
︶
<100
内臓脂肪面積とウエスト径の関係 305)
男性(n=559)
300
P<0.001
65
75
85
95
ウエスト径(cm)
105
115
0
55
65
75
85
95
105
115
ウエスト径(cm)
33
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
に東および南アジアにおいては地域にあったカットオ
している.高トリグリセライド血症,低 HDL コレス
フ値が必要であることが述べられている303,307).WHO
テロール血症ともに複数の成因からなっており,単独
基準ではウエスト/ヒップ比が用いられているが,ウ
の危険因子としての分析のみでなく,メタボリックシ
エスト周囲径はこれを簡便化したものであり,最近の
ンドロームに伴う動脈硬化惹起性リポ蛋白異常として
疫学研究でも健康障害や心血管疾患の指標としてより
の解析が必要と思われる.
有用であることが示されてきている
メタボリックシンドロームには,レムナントや
.
308−310)
small dense LDL などの動脈硬化惹起性リポ蛋白の出
②空腹時高血糖:インスリン抵抗性はメタボリックシン
現が伴うことが知られている314).レムナントリポ蛋白,
ドロームの多くの症例に認められ主要コンポーネント
small dense LDL,アポ B の測定はメタボリックシン
と考えられる.他のリスクと相関性をもつ上に,単独
ドロームにおける動脈硬化惹起性リポ蛋白異常を診断
でも動脈硬化性疾患のリスクとされており,インスリ
する一助となるが,より的確なマーカーについても今
ン抵抗性はメタボリックシンドロームの上流因子とし
後検討する必要があるものと思われる.
て重要である.しかし,そのインスリン抵抗性と心血
管疾患とを結ぶ分子メカニズムは未だ明らかではな
④高血圧:血圧値は内臓脂肪蓄積やそれに伴うインスリ
く,さらに簡便にインスリン抵抗性を診断しうる指標
ン抵抗性と強く相関し,高血圧自体が動脈硬化性疾患
がないことから,現時点ではインスリン抵抗性を診断
のリスクとなる.日本高血圧学会の高血圧治療ガイド
基準として取り扱っていない.
ラインにおいては,120/80 mmHg 未満を至適血圧,
また,血糖値に関して糖負荷後 2 時間血糖値が動脈
120〜129/80〜84 mmHg を正常血圧,130〜139/85〜
硬化性疾患のリスクとなることが報告されている
89 mmHg を正常高値血圧,140/90 mmHg 以上を高血
が,初期の目的である健康診断などの大きな集団でメ
圧としている315).メタボリックシンドロームに関する
タボリックシンドロームの診断を可能にするために,
WHO 基準では 140/90 mmHg 以上を用いているが,
311,312)
本診断基準では 110 mg/dl 以上という空腹時高血糖の
NCEP 基準では 130/85 mmHg 以上の正常高値血圧以
みを診断基準に加えている.ただし,委員会は本診断
上としている.本邦の端野・壮瞥町研究において,血
基準においてメタボリックシンドロームと診断された
圧値の基準に 140/90 mmHg 以上を用いた場合の心イ
場合,空腹時血糖値が正常域であっても臨床医の判断
ベント発症率は,非メタボリックシンドロームに比べ
によって糖負荷試験を追加し耐糖能異常の有無を判定
て 2.1 倍,130/85 mmHg 以上を用いた場合は 1.8 倍高
することを薦めている.
値であったことから,メタボリックシンドロームの血
NCEP,WHO の基準と同様,本診断基準において
圧基準は,正常高値血圧である 130/85 mmHg 以上で
も糖尿病の存在はメタボリックシンドロームの診断
も 140/90 mmHg 以上と同様の危険因子となってお
から除外されないが,メタボリックシンドロームの
り,130/85 mmHg 以上を用いるのが妥当とされた.
病態を呈する糖尿病は心血管疾患のリスクが著しく
高 い と 考 え ら れ る 313). わ が 国 の Japan Diabetes
Complication Study(JDCS)においても,高血圧や高
メタボリックシンドロームの病因
メタボリックシンドローム成因の重要な因子として以
脂血症の合併が心血管疾患のリスクを上昇させてい
下のものがあげられる.
ることが明らかにされており,リスクの総合的評価
¡内臓脂肪蓄積
の重要性が確認されている.
¡インスリン抵抗性および耐糖能異常
¡動脈硬化惹起性リポ蛋白異常
③動脈硬化惹起性リポ蛋白異常:動脈硬化惹起性リポ蛋
¡高血圧
白異常は日常臨床検査では高トリグリセライド血症,
¡易炎症性状態
低 HDL コレステロール血症を示す.本診断基準では,
¡易血栓性状態
日本動脈硬化学会による「動脈硬化性疾患の予防と治
34
療の必要な対象を集団からスクリーニングするための
メタボリックシンドロームの発症には遺伝的素因と生
血清脂質値」に従い,高トリグリセライド血症を 150
活環境を背景に内臓脂肪蓄積が主要な役割を担ってお
mg/dl 以上,低 HDL コレステロール血症を男女とも
り,わが国における診断基準では内臓脂肪蓄積(ウエス
40 mg/dl 未満としたが,引き続き検討課題とすると
ト周囲径)が必須項目となっている.内蔵脂肪蓄積は高
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
血圧,高トリグリセライド血症,低 HDL コレステロー
能異常が生じやすくなり,さらにインスリン抵抗性の肝
ル血症,インスリン抵抗性および高血糖を生じ,それぞ
における糖産生が増大することによって,耐糖能異常が
れが心血管疾患のリスク上昇に繋がるうえに,脂肪細胞
悪化することも考えられる.また,インスリン抵抗性に
が様々な生理活性物質,アディポサイトカインの分泌異
より,交感神経活性上昇,腎臓における Na 貯留作用な
常をきたすことによって心血管病のハイリスク状態に導
ど様々な機序で血圧が上昇する.
いていく
.脂肪細胞から分泌されるアディポサイ
316−318)
トカインとしては PAI(Plasminogen Activator Inhibitor)
-I,
メタボリックシンドロームの臨床的意義
アディポネクチン,TNF(tissue necroting factor)-α,レ
繰り返しになるが,メタボリックシンドロームの臨床
プチン,レジスチンなどがあげられる.TNF-αや IL-6
的帰結は心血管病である.本来,心血管病のリスクの重
などの炎症性サイトカインは C-reactive Protein(CRP)
なりが,単独のリスクよりも危険度が増すことは当然で
上昇に関与し,脂肪組織から直接合成・分泌される
あるが,NCEP,WHO 基準によるメタボリックシンド
PAI-I も易血栓性状態に関与する可能性がある.高 CRP
ロームの心血管疾患死亡予測の意義について幾つかの報
血症はサイトカイン過剰状態,易炎症性状態を示してい
告がおこなわれている.
る可能性がある.易炎症性状態と易血栓性状態は互いに
関連し,メタボリックシンドロームでしばしばみられる
病態で,ともに心血管疾患発症のリスクと考えられてい
る
①
欧米におけるメタボリックシンドローム
30〜75 歳の 6,255 人(女性 54 %)を平均 13 年間追跡
.内臓脂肪蓄積や肥満によりアディポサイトカ
した米国 The Second National Health and Nutrition
イン分泌異常が起こるので,今後 CRP,特に高感度
Examination Survey(NHANES II)の調査研究ではウエ
CRP の測定や血漿 PAI-I 値の測定が病態把握の手段とし
スト周囲径のデータがないため,BMI 30 kg/m2 以上を
て用いられる可能性がある.また,アディポネクチンは
用いた NCEP 基準を用いているが,メタボリックシン
基礎研究,臨床研究成果から抗動脈硬化因子としての意
ドロームの罹患率は 26 % で,メタボリックシンドロー
義に将来性がある
319−321)
.特に内臓脂肪に伴う低アデ
ム群は非メタボリックシンドローム群に比べ,年齢,性
ィポネクチン血症が,糖尿病,高脂血症,高血圧に加え
別を補正した冠動脈疾患死亡のハザード比が 2.02,心血
て心血管病にも直接関連することから,今後,メタボリ
管疾患死亡のハザード比も 1.4 と高値であった325).糖尿
ックシンドロームのすべてのコンポーネントを結ぶ臨床
病症例を除いてもメタボリックシンドローム群は冠動脈
マーカーとなりうる可能性がある.
疾患死亡のハザード比が 1.65,心血管疾患死亡のハザー
317,322−324)
インスリン抵抗性はメタボリックシンドロームの多く
ド比は 1.56 と高かった.ウエスト径を測定し糖負荷試
の症例に認められ主要コンポーネントと考えられる.内
験 を 大 規 模 に お こ な っ た San Antonio Heart Study
臓脂肪蓄積に由来する遊離脂肪酸の肝臓内流入増加に加
(SAHS)
(2,815 人,平均追跡期間 12.7 年)では,NCEP,
え,インスリン抵抗性によるリポ蛋白リパーゼ活性低下
WHO の両基準で調査され,NCEP 基準のメタボリック
や高インスリン血症による超低比重リポ蛋白(Very
シンドローム群(25.2 %)では総死亡 1.47,心血管疾患
Low Density Lipoprotein, VLDL)の合成増加が,高トリ
死亡 2.53 のハザード比が,WHO 基準(メタボリックシ
グリセライド血症,レムナントリポ蛋白の増加,アポ B
ンドローム 25.2 %)では総死亡 1.27,心血管疾患死亡
増加,small dense LDL などを形成する.また,トリグ
1.63 のハザード比が得られており,両基準とも全体とし
リセライドに富むリポ蛋白がリポ蛋白リパーゼ(LPL)
て心血管死亡の予知に有用であったが,簡便な NCEP
により異化を受ける際,その表面組成物から HDL が生
基準の方がベースに糖尿病や心血管疾患の既往のない低
成されるため,LPL 活性低下がおこると HDL 生成減少
リスク群においても有用な傾向にあったとしている326).
が起こる.レムナントリポ蛋白(レムナント粒子あるい
フィンランド,スウェーデンにおける Botnia Study 327),
は,単にレムナントとも呼ばれる)は,アポ E に富む
フィンランドにおける Kuopio Ischemic Heart Study328)で
リポ蛋白であり,家族性Ⅲ型高脂血症にみられるように
は,WHO 基準を用いたメタボリックシンドロームの診
動脈硬化惹起性リポ蛋白として知られている.small
断が,心血管疾患の発症予測に有用であるとしている.
dense LDL は動脈壁内膜に侵入しやすく,また酸化され
やすい性質からマクロファージに取り込まれやすく,こ
②
日本におけるメタボリックシンドローム
れも動脈硬化惹起性リポ蛋白の一つとして考えられてい
わが国においても複合リスクの心血管疾患に対する危
る.一方,骨格筋におけるインスリン抵抗性により耐糖
険性は以前から示されている.厚生労働省作業関連疾患
35
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
総合対策研究班の企業従事者 12 万人を対象にした調査
していることが確認された.BMI 26.4 Kg/m2 以上の肥
では,3 年間で冠動脈疾患を発症した 94 例について,
満,140/90 mmHg 以上の高血圧,220 mg/dl 以上の高コ
企業での健診結果が 10 年前まで遡り調べられた
レステロール血症,110 mg/dl 以上の高血糖の 4 項目の
.発
329)
症群は性別,年齢,部署をあわせた非発症群に比べ,
うち 3 つ以上を保有すると,これらリスクをまったく保
BMI,血圧,空腹時血糖値,血清コレステロール値,血
有しないものに比べ,重回帰分析により冠動脈疾患発症
清トリグリセライド値,血清尿酸値のいずれもが,正常
リスクは 31.34 と高いオッズ比を示した(図 19).高コ
よりやや高値の範囲であるが有意に高く,10 年間持続
レステロール血症の項目を高トリグリセライド血症に置
き換えると,2 項目を保有するものの冠動脈疾患発症オ
図 19
危険因子保有数別にみた冠動脈疾患発症に
対するオッズ比(労働省調査研究班)329)
ッズ比は 5.76 であるが,3 項目以上を保有するとオッズ
比は 35.8 と著しく増加した.この解析はメタボリック
p値
シンドロームの診断基準とは異なるが,わが国における
---
複合リスクの重要性を示している.また,疫学研究であ
(1.78− 14.52)
0.0023
る久山町研究においても虚血性心疾患に対する複合リス
9.70
(2.72− 34.57)
0.0005
クの重要性が示されている.
31.34
(5.81−168.93)
0.0001
危険因子の保有数
オッズ比
0
1.00
1
5.09
2
3〜4
(95%信頼区間)
わが国の疫学研究である端野・壮瞥町研究330−332)から
メタボリックシンドロームの心血管イベントに関する成
40
冠
動 30
脈
疾
患
発 20
症
オ
ッ
ズ 10
比
0
績が報告されたが,40 歳以上の男性 808 名において,
31.3
ウエスト径を必須条件とする新基準を用いたメタボリッ
クシンドロームの頻度は 21 % であった.8 年間の心血
管イベントをエンドポイントとした Kaplan-Meier 法に
危険因子
・肥満
・高血圧
・高血糖
・高脂血症
9.7
5.1
1.0
0
1
2
よる解析では,メタボリックシンドローム群は非メタボ
リックシンドローム群に対し,1.8 倍の危険度を示した
(図 20).日本人におけるメタボリックシンドロームの
心血管疾患予測として重要な資料である.
3〜4
図 20
端野・壮瞥町研究におけるメタボリックシンドロームの
有無と心血管のイベント 332)
.3
Kaplan-Meier Hazard Curves
Metabolic syndrome
Cumulative Hazard
non-Metabolic syndrome
.2
.1
0
1
2
3
4
Follow-up(year)
5
6
40 歳以上の男性 808 名における,8 年間の心血管イベントをエンドポイントとした
36
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
糖能低下,心肥大などとは独立した冠危険因子であるこ
5
5 家族歴・体重・喫煙
とを 26 年間の観察から報告している 341).American
Cancer Society's Prevention Study では,喫煙歴がなく,
心臓病,脳血管疾患,悪性腫瘍を合併していない男性
1.家族歴
62,116 名と女性 262,019 名を 12 年以上にわたり観察し,
日本人における冠危険因子として家族歴を詳細に解析
BMI が大きいほど心血管疾患による死亡率が増加して
した報告は見当たらない.高コレステロール患者を対象
いることを報告している342).BMI が 1 だけ増加した場
とした大規模臨床介入試験である J-LIT では一次予防コ
合の心血管疾患死亡の相対危険度は男女とも若年者で高
ホートにおいて虚血性心疾患の家族歴が有意な冠危険因
く,55 歳以降低下する傾向がみられた.東 Finland の調
子となっている332).Cox 比例ハザードモデルによる相対
査では 16,113 名の男女を 15 年以上にわたり追跡観察
危険度は約 3 倍であった.
し,BMI が虚血性心疾患の独立した危険因子であると
家族歴では虚血性心疾患以外に糖尿病,高脂血症,高
血圧などの冠危険因子の家族歴も考慮される.これらの
疾患の遺伝素因が一部明らかにされてきた.
高脂血症では家族性高コレステロール血症の他,家族
報告している343).体重が 1 Kg 増加すると,虚血性心疾
患死亡の危険性が 1〜1.5 %増加している.
Nurse's Health Study では 115,000 名以上の看護婦を 14
年間以上にわたり追跡調査し,BMI が 23 を超えると冠
性複合型高脂血症,家族性高レムナント血症(家族性Ⅲ
動脈疾患の危険度が高まることを明らかにした 344,345).
型高脂血症),家族性Ⅳ型高脂血症,家族性高カイロミ
BMI が 29 以上の相対危険度は BMI が 21 未満の群と比
クロン血症,家族性低 HDL 血症などのタイプ別評価が
較すると 3.6 倍の高さであった.体重が正常基準値の範
問題となる.
囲以内であっても,体重が 18 歳以降に増加すると危険
米国ではいくつかの prospective study を含む疫学研究
で家族歴は他の危険因子とは独立した危険因子であるこ
とが報告されている
.
333−337)
スウェーデンで 21,994 組の双生児を 26 年間追跡調査
した報告によると
,55 歳以下で冠動脈疾患による死
338)
度が高まることを報告している.
日本肥満学会では BMI 25 では BMI 22 に対し健康障
害が相対危険度で約 2 倍であり,動脈硬化危険因子の合
併率の高いことが示されている.J-LIT では,性,調査
開始時の年齢,高血圧,糖尿病の有無および喫煙習慣な
亡がみられた場合の相対危険度は,一卵性双生児では男
どを補正した Cox 比例ハザードモデルによる解析の結
は 8.1,女は 15.0 と高く,二卵性双生児では男は 3.8,
果,BMI 25 以上の群で特に冠動脈イベントの相対危険
女は 2.6 と低いことが報告されている.この双生児研究
度の増加は認められなかった332).
では双生児の一方が若年で早く冠動脈疾患で死亡するほ
日本人の BMI に関する研究で,BMI と冠危険因子の
ど残った双生児の相対危険度がより高いとされ,家族歴
糖尿病,高血圧,高脂血症との関連が多施設共同研究に
が冠危険因子であることは明らかである.
より検討されている346).15 コホートから集められた 30
15,200 家族を調査した Utah 研究では,同一家族内に
〜79 歳男女約 15 万名について,性・年齢階級および
一人より二人,55 歳以上より 55 歳未満の冠動脈疾患死
BMI 区分により,高血圧,高コレステロール血症,低
亡者がいた場合の残った兄弟の相対危険度はより高いこ
HDL コレステロール血症,高トリグリセライド血症,
とが報告されている339,340).
高血糖症の出現頻度を記載し,さらに,多変量ロジステ
2.体
重
体重は身体の栄養状態をあらわす重要な指標である.
ィックモデルを用いて,性・年齢,喫煙状況および集団
間差を調製し,BMI 20.0 以上 24.0 未満(中央値 22)を
基準としたときの,各 BMI 区分(16 未満,16〜17.9,
健康を維持し生活習慣病を予防するために望ましい適正
18〜19.9,24〜25.9,26〜27.9,28〜29.9,30〜)におけ
な体重がある.その異常は肥満あるいは痩せとして問題
るオッズ比を出している.高血圧と BMI との間に最も
になる.体重をコントロールする場合の指標として
直線的(等比級数的)関連が認められた.低 HDL コレ
body mass index(BMI)が広く用いられている.
ステロール血症と高トリグリセライド血症は,BMI と
これまでに欧米諸国で行われた大規模疫学試験の結
の間で近似的パターンを示した.高コレステロール血症
果,体重と心血管疾患発症との間に関連のあることが報
は,BMI との正の関連が他と比べて最も弱かった.全
告されている.Framingham 研究では,調査開始時の肥
般的に,BMI が 24〜27.9 の区分(中央値 27)では,高
満度が年齢,喫煙,総コレステロール,収縮期血圧,耐
血圧,低 HDL コレステロール血症,高トリグリセライ
37
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
ド血症に関するオッズ比が 2 を超えることが示された.
1.6 倍高かった269).
したがって,糖尿病や心血管疾患を中心とした生活習慣
非喫煙者では受動喫煙,あるいは環境的タバコ煙が問
病の予防という観点からは,欧米の BMI 30 よりも比較
題である.自宅,職場あるいは公共の場でのタバコ煙の
的低い 25〜29.9 のレベルから,適正体重を目指した体
影響が調査されている.生活環境中のタバコ煙の量を把
重管理を行う必要があると報告している.
握することが難しいため議論のあるところであるが,受
耐糖能障害,高脂血症,高血圧は肥満のなかでも内臓
動喫煙で虚血性心疾患の相対危険度が有意に高くなって
脂肪(蓄積)型肥満で合併することが多く,皮下脂肪
いるとの報告が多い357−360).36 歳から 61 歳の非喫煙女性
(蓄積)型肥満では比較的少ない
.内臓脂肪型肥満で
32,046 名を 10 年間追跡調査したところ,虚血性心疾患
347)
,メタボリックシン
の相対危険率は時々タバコ煙に暴露されている者では
ドロームとしてとりあげられるようになった.内臓脂肪
1.58,家庭や職場で常に暴露されている者は 1.91 であっ
型肥満の診断は臍の高さでの CT 断層像で,内臓脂肪面
たと報告されている359).
は虚血性心疾患発症率も高く
348,349)
積(V)と皮下脂肪面積(S)の測定で行われ,V/S 比
タバコ煙に含まれている有害物質は,喫煙者が直接吸
0.4 以上を内臓脂肪型肥満としている.より簡便に判定
い込む主流煙よりも,火のついたところから立ちのぼる
するための指標として,ウエストとヒップの比(W/H
副流煙のほうが多いことが明らかにされている.このこ
比)あるいはウエスト周囲径が用いられている.W/H
とが受動喫煙でのリスクが高い要因とされる.
比の高いものを上半身肥満,低いものを下半身肥満とよ
禁煙による虚血性心疾患死亡の相対危険度は,喫煙を
んでいる.上半身肥満では糖尿病,高脂血症,高血圧を
続けている者を 1 とした場合に禁煙して 1〜4 年で 0.6,
合併することが多く,虚血性心疾患の発症率も高率であ
禁煙して 10〜14 年で 0.5 に減少すると計算されている.
ると報告されている.しかし日本人では,W/H 比が必
ずしも良い指標ではなく,内臓脂肪型肥満や冠危険因子
6
6 精神保健
と密接には相関していないとされる.内臓脂肪型肥満の
評価法の開発が必要である.日本肥満学会では内臓脂肪
型肥満のスクリーニングに用いる身体計測指標として,
立位,呼気時に計測した臍周囲径(ウエスト周囲径)を
用いることとし,BMI 25 以上で男性のウエスト周囲径
85 cm 以上,女性のウエスト周囲径 90 cm 以上を上半身
肥満としており350),これを採用する.
3.喫
職業性ストレスが虚血性心疾患の発症に関与する要因
の一つであることは,欧米を中心に数多くの報告がある.
2.職場のストレス要因について
健康に影響を及ぼすストレス要因としては,仕事の負
煙
荷,責任などの仕事の要求度,仕事を行なう上での裁量
喫煙と虚血性心疾患との関連について多くの調査が行
度や自己能力の発揮などの仕事のコントロール,および
われ,喫煙が虚血性心疾患の発症率および死亡率を高め
職場の人間関係としての上司,同僚の社会的支援がある.
ていることが証明されている
.一日の喫煙本数
特に仕事の要求度が高く,仕事のコントロールが低い職
に応じて冠動脈疾患の危険度が高まることが示されてい
場で精神的緊張度が高く,健康問題が生じやすい.さら
る.MRFIT 試験では一日 1〜25 本喫煙した場合の相対
に,職場での上司・同僚の支援が低いことがもっとも問
危険率は 2.1 であり,25 本以上では 2.9 と高くなってい
題を生じやすい.これらの要因のほか,長時間労働,仕
る.また喫煙を中止することで,虚血性心疾患死亡率を
事の不安定さ,仕事上の出来事,その他の物理・化学
低下させられることも報告されている.
的・人間工学的有害因子がストレス要因となりうること
272,351−356)
日本人でも同様の結果が得られており,喫煙者での虚
血性心疾患の相対危険率は非喫煙者に比し,男性 1.73,
女性 1.90 と高くなっている356).久山町研究でも,他の
38
1.はじめに
が知られている.
3.職業性ストレスの健康影響
危険因子に喫煙が加わった場合には虚血性心疾患の相対
循環器疾患とストレスに関しては,仕事要求度・コン
危険度が相乗的に増加することが示されている272).日本
トロールモデルに基づいて行われた研究361−363)のほとん
で行われた大規模臨床介入試験である J-LIT の一次予防
どで有意な関連が得られ,また疫学的に質が高いと判断
コホートにおいても,喫煙習慣は有意に相対危険度が高
された研究において,より高い相対危険度を示す傾向が
く,非喫煙者に比して冠動脈イベント発症のリスクは
あるなど301,302),心血管心疾患との強い関連性が示され
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
ている.これらの報告においては,仕事の要求度が高く,
[5]肥満は日本肥満学会の定義に従い,BMI 25 以上か
仕事のコントロールが低い高ストレイン群での虚血性心
つウエスト周囲径が男性で 85 cm,女性で 90 cm 以
疾患の相対危険度は 1.5〜5 倍である
上とする.
.
364)
職業性ストレスと循環器疾患との関連の機序について
は未解明な点が多いが,一つは循環器疾患の危険因子を
介して連関している可能性がある.たとえば血圧につい
[6]耐糖能異常は日本糖尿病学会の定義に従い,境界型
および糖尿病型を含む.
[7]高脂血症に関しては日本動脈硬化学会の定義に従い,
ては,24 時間血圧との間で有意な関連性が認められてい
高コレステロール血症(総コレステロール 220 mg/
る .また,
家庭や睡眠中での血圧にも差異が認められ ,
dL 以上,あるいは LDL コレステロール 140 mg/dL
職業性ストレスの持ち越し効果が想定される.その他,
以上)
,高グリセライド血症(150 mg/dL 以上)およ
職業性ストレスが加齢や飲酒による血圧上昇を加速して
び低 HDL コレステロール血症(40 mg/dL 未満)を
いる可能性が指摘されている .わが国においては,週
高脂血症と定義し,そのいずれをも危険因子とする.
367)
368)
369)
60 時間以上の労働や,仕事のトラブルで多いとされ,
[8]メタボリックシンドロームは診断基準検討委員会に
時間に追われる場合に高血圧の新規発症が約 2 倍となる
従い内臓肥満蓄積(ウエスト周囲径が男性で 85 cm,
こと,仕事が暇過ぎるものでも高血圧の発症率が 4 倍に
女性で 90 cm 以上)を必須にして,高トリグリセリ
なるとの報告がある 370).さらに血清脂質の上昇 371,372),
ド血症 150 mg/dL 以上かつ/または低 HDL コレス
HbA1c の増加
や線溶系の機能
テロール血症(40 mg/dL 未満),収縮期血圧 130
危険因子以外の発症機序としては,急性冠症候群発症
腹時高血糖 110 mg/dL 以上のうち 2 項目以上を持
低下
375)
,血液凝固能の亢進
373)
374)
mmHg かつ/または拡張期血圧 85 mmHg 以上,空
などの介在が示唆されている.
の危険が高まっている段階で職場ストレスが誘因として
作用し,自律神経系を介して致死的不整脈や心筋梗塞の
発症を誘発する可能性,職場ストレスが交感神経系機能
の亢進や,心筋の機能回復過程の遅延などを介して発症
を惹起する可能性が推定されている376).
[9]精神的,肉体的ストレスを危険因子とする.
2.生活習慣の改善
喫煙は,明らかに虚血性心疾患の重要な危険因子であ
また,以前よりタイプ A 行動パターンが急性心筋梗
塞発症の危険因子となることが知られている
つものとする.
.
377)
り,完全な禁煙を実施することを指導するとともに,受
動喫煙も能動喫煙以上に虚血性心疾患発症に寄与するこ
とを国民に周知徹底すべきである.
運動は,以前より中等度以上の運動を週 3〜4 回,1
3
日本人の虚血性心疾患への対応
日 30 分以上行うことにより虚血性心疾患の予防となる
ことが証明されているが,毎日の運動がより効果的であ
る.従って,本ガイドラインでは特記事項として毎日
30 分以上の運動を施行することを勧めることとする.
1
1 総
論
栄養については,2000 年に米国で新たなガイドライ
ンが公表され,それを基にわが国における食事摂取の状
1.日本人における虚血性心疾患の危険因子
本ガイドラインでは,以下の病態を日本人における虚
血性心疾患の危険因子として定める.
[1]年齢要因としては,従来通り男性は 45 歳以上とし,
女性は 55 歳以上とする.
況,栄養状態を勘案して以下の勧告を行う.
糖質の摂取は摂取エネルギーの 50 % 以上とし,最近
増加中の脂肪摂取については摂取エネルギーの 20〜25
% となるようにする.その際,脂肪酸の摂取バランス
にも留意し,飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽
和脂肪酸が 3:4:3 に,また n-6/n-3 比が 3〜4 となる
[2]冠動脈疾患の家族歴は両親,祖父母および兄弟・姉
ようにする.食物繊維を一日に 20〜25 g ほど十分に摂
妹における突然死や若年発の虚血性心疾患の既往と
取する.食塩は一日 10 g を超えないようにし,特に高
する.
血圧患者では一日の摂取食塩量を 6 g 未満とする.抗酸
[3]喫煙は虚血性心疾患の重要な危険因子である.
化物質を十分に摂取すべきであり,それにはビタミン E,
[4]高血圧は日本高血圧学会の定義に従い,140 あるい
ビタミン C,カロテノイド,ポリフェノールなどが挙げ
は 90 mmHg 以上とする.
られる.血中ホモシステインレベルが高い場合,動脈硬
39
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
化が進展することが証明されており,高値の場合は葉酸,
ビタミン B6,ビタミン B12 の摂取が必要となる.また,
ミネラルは過不足なく摂取されるべきであり,わが国で
4.治
療
閉経後女性にエストロゲンを補充するホルモン補充療
は特にカルシウム,カリウム,マグネシウム,セレンの
法(HRT)は,更年期障害や骨粗鬆症治療に有用であり,
摂取に留意するべきである.
さらにアルツハイマー病の発症を遅らせるといわれてい
体重では,内臓肥満を起点とするメタボリックシンド
る.また,Lp(a)低下,LDL コレステロール低下,HDL
ロームがわが国でも虚血性心疾患発症の重要な因子とな
コレステロール増加など脂質改善作用があり,HRT を
っていることから,日本肥満学会の肥満基準である,
長期に使用すると虚血性心疾患の発症を減少させるとの
BMI 25 以上およびウエスト周囲径が男性では 85 cm 以
報告も多くみられる.また,性差と虚血性心疾患の項で
上,女性では 90 cm 以上とならないように注意が必要で
述べられているように閉経が虚血性心疾患のリスク因子
ある.糖尿病患者の場合は体重増加が病状悪化に進展す
であることも確かである.それゆえ,HRT が閉経後女
ることがあるため,日本糖尿病学会の勧告に従い糖尿病
性の虚血性心疾患の予防に有用であると考えられるが,
患者では,目標を BMI 23 未満とする.
2003 年に報告された閉経後女性を対象とした無作為化
精神保健は,その劣悪化が急性冠症候群発症の重要な
比較臨床試験(RCT)の一つである WHI (Women's
因子となることが証明されており,労働保健的見地から
Health Initiative)の報告では逆の結果が得られている.
も,本ガイドラインに加えることとする.
その他の RCT 報告でも,乳癌や血栓症の危険が報告さ
3.危険因子の改善
れている.これらの報告には対象年齢,統計的解析など
に問題点もあり,今後さらなる検討が必要と考えるが,
血圧の目標は日本高血圧学会の定義・勧告に従い,若
現時点では,HRT は個々の症例で効果とリスクを勘案
年/中年者は 130/85 mmHg 未満,糖尿病患者/腎障害患
して投与の可否を決定すべきで,虚血性心疾患の 1 次及
者は 130/80 mmHg 未満とする.高齢者は動脈硬化の存
び 2 次予防のためには選択すべきでないと思われる.
在により収縮期高血圧を呈しやすく,また降圧により重
アスピリンは血栓予防に有用であり,特に危険因子を
要臓器の循環障害をもたらす可能性がある.収縮期高血
多数有している患者にはアスピリンは非常に有用であ
圧が 160 mmHg 以上の中等症/重症高血圧では最終降圧
る.また糖尿病の患者では,他の危険因子もあれば投与
目標を 140/90 mmHg とするものの,症状や検査所見の
を考慮すべきである.
変化に注意して 150/90 mmHg 未満を暫定的目標として
慎重に降圧させるべきである.
脂質は治療により(食事,運動,薬物など)総コレス
なお小児における動脈硬化の予防法は「3.日本人の虚
血性心疾患への対応 2」a.小児」に記載した.
テロール 220 mg/dL 未満,LDL コレステロール 140
mg/dL 未満,トリグリセライド 150 mg/dL 未満,およ
2
2 各
論
a
動
び HDL コレステロール 40 mg/dL 以上とすべきである.
高脂血症以外の冠危険因子を 2 つまで有する場合,LDL
コレステロール値 140 mg/dL 未満(総コレステロール
値 220 mg/dL 未満),糖尿病または冠危険因子を 3 つ以
上有する場合,LDL コレステロール値 120 mg/dL 未満
(総コレステロール値 200 mg/dL 未満)を脂質管理目標
1.はじめに
規則的な運動,日常生活・職業上の活発な身体活動が,
値とする.また,インスリン値が高く,トリグリセライ
高血圧,糖尿病,肥満,高脂血症などの動脈硬化の危険
ドが高く,HDL コレステロールが低いような場合には,
因子を軽減し,冠動脈疾患の発生ないし再発を予防し,
レムナントや small dense LDL が増加している場合が多
冠動脈疾患による死亡を減少させることに関して多くの
く,留意が必要である.さらに L(p)値が高い場合には
疫学的研究が行われ,運動の一次予防における有効性は
ニコチン酸や女性ホルモンを用いて低下させることがで
現在確立されている.ここではその有効性の背景および
きる.
身体活動法の実際について述べる.
糖尿病に関しては,日本糖尿病学会に準拠して,空腹
時血糖を正常化させ,HbA1c を 6.5 % 未満とすべきである.
40
運
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
や冠事故の発生を減少させることを,また Manson ら388)
2.身体活動度と一次予防
は中年女性(看護師)において身体活動度と冠事故発生
日常生活・職業上の活発な身体活動が,冠動脈疾患の
のリスクの間には負の相関があることを報告している.
発生または死亡を減らすことに関する疫学的研究が数多
わが国には欧米の大規模研究に匹敵する報告はないが,
く報告されている.それらを(表 12)にまとめて示す378).
Hsieh ら389)は人間ドック症例を対象に日常生活上の運動
古く Morris ら379)はロンドンのバス会社の運転手と車
習慣と冠リスクの関係を調べ,日本人においても身体活
掌を対象に,職業上の身体活動と冠疾患の関係を調べ,
致死的冠疾患の発生は運転手に多く,車掌には狭心症が
動が冠リスクを減らすことを明らかにしている.
3.身体運動能力と一次予防
多かった.職業上の身体活動度や精神的ストレスが冠疾
患の発生に関係することを初めて明らかにした.
日常生活・職業上の身体活動度が冠疾患の一次予防に
Paffenberger らはサンフランシスコ港湾労働者を対象と
有用であることはすでに述べたが,これに対して身体活
した職業上の身体活動度と冠疾患の関係を
,またハー
動度よりは運動能力の方がより重要な因子であるという
バード大学同窓生を対象として日常生活上の身体活動度
考え方がある.(表 13)に運動能力と冠疾患の発生また
と冠疾患の発生の関係を調べたが,どの年齢層において
は死亡に関する疫学的研究をまとめて示す378).
380)
も身体活動度と冠疾患の発生には負の相関がみられ
た
Peters390)は中年男性において運動能力が中等度以下の
群の心筋梗塞発生相対リスクは 2.2 であり,通常の危険
.その他 Epstein らの運動習慣のない上級公務員を
381)
,Slattery らの米国鉄道労働者を対象
因子を合併している場合にはさらに顕著であったと報告
とした研究383),また包括的な一次予防コホート研究の部
している.また Ekelund ら391)は運動能力の低い人は心
分研究として身体活動度と冠疾患の関係を調べた
血管死が多く,他の危険因子から独立していることを報
Framingham 研究 ,Leon らの MRFIT 部分研究 ,The
告,Blair ら392)も運動負荷試験を受けた男女を 8 年間追
対象とした研究
382)
384)
Stanford Five-City Project
385)
386)
など多くの研究もみられる.
跡した結果,最も運動能力の低い群の死亡は高い群の
これらから導かれる結論は,「日常生活・職業上の活発
7.5 倍であり,低い身体運動能力は重要な死亡の危険因
な身体活動ないし規則的な運動は,冠疾患の発生を予防
子であると報告した.これに関しても我が国のデータは
し,死亡を減少させる」である.
乏しいが,Ichihara ら393)は中年健常者を対象に心肺運動
身体活動が冠疾患の発生を予防するという点に関し
能力と冠危険因子の関係を調べ,運動能力の高い人に危
て,高齢者・女性においても同様な結果が得られている.
Wanamethee ら
387)
は高齢になってからの運動習慣が死亡
表 12
報
告
者
険因子が少ないとしている.
発表年 試験の型
身体活動度と一次予防に関する疫学的研究 378)より引用・改変
運動のレベル
対
象
結
論
Morris
1966
前向き
職業労作
白人男性
職業上の低い身体活動は冠疾患死を増加
Paffenberg
1970
後ろ向き
仕事内容から推定
港湾労働者
仕事上身体活動の低い人は致死的心筋梗
塞が 2 倍多い
Epstein
1976
前向き
身体活動度アンケート
中年白人男性
週末の激しい身体活動は心疾患に予防的
に働く
Paffenberg
1978
Kannel
1986
前向き
身体活動度アンケート
中年男女
低い身体活動は心臓死のリスクを高める
Leon
1987
前向き
身体活動度アンケート
中年男性
低い身体活動は心臓死のリスクを中等度
に高める
Slattery
1989
前向き
身体活動度アンケート
白人男性
運動不足(40 Kcal/W)の人は冠疾患死
が 50 % 多い
Lee
1995
前向き
身体活動度アンケート
ハーバード大学全同窓生
全および激しい運動によるエネルギー消
費量が全死亡と逆相関
Rosengren
1997
前向き
身体活動度アンケート
中年男性
余暇身体活動は心血管死,ガン死,およ
び全死亡を減少
後ろ向き 身体活動度アンケート ハーバード大学同窓生
週 2,000 Kcal 以下の人で死亡と心筋梗塞
多い
41
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
表 13
運動能力と一次予防に関する疫学的研究 378)より引用・改変
報告者
発表年
研究の型
追跡期間
評 価 法
対
Peters
1983
前向き
4.8 年
エルゴ
健康中年男性 2,779 人
Lie
1985
前向き
7.0 年
エルゴ
中年健常者 2,163 人
運動能力の高い人はそ冠疾患とその死亡
が少ない
Ekelund
1988
前向き
8.5 年
TM
男性 4,276 人
低い運動能力は心臓死の相対リスクが高
い
Blair
1989
前向き
8年
TM
運動負荷試験を受けた
13,344 人
低い運動能力は死亡の重要なリスクであ
る
Blair
1995
前向き
5.1 年
TM
米国空軍学校 9,777 人
5 年後運動能力改善者は死亡が少ない
Ericksen
1998
前向き
22 年
エルゴ
男性 1,756 人
低運動能力の訂正
論
RR=2.2
運動能力の増加は死亡率を減少する
る.さらに女性の冠疾患予防に関する AHA/ACC 合同
高い身体活動度あるいは運動能力が一次予防に有用で
声明397)では,女性においても毎日最低 30 分の中等度の
.運動
強さの動的な運動(例えば速足歩き)を,また心筋梗塞
の一次予防における生物学的機序として,[1]心筋への
に罹患したり血行再建術を受けた女性では監視型運動療
酸素供給を維持あるいは増加すること,[2]心筋への負
法を行うことを勧めている.NIH Consensus Conference398)
荷あるいは心筋酸素需要を減少すること,[3]心機能を
では「すべてのアメリカ人は自分の運動能力,必要性,
改善すること,
[4]心筋の電気的安定性が増加すること,
興味に応じたレベルの規則的な身体活動を行うべきであ
の 4 つが考えられる.
る.子供も大人もできれば毎日,中等度の強さの運動を
394)
心筋への酸素供給増加の機序として,脂質プロフィー
少なくとも 30 分行うことを目標とすべきである.すで
ルの改善,インスリン感受性亢進による糖代謝の改善,
に心血管疾患を有している人においては,心臓リハビリ
血小板凝集の抑制・線溶系の亢進などを介する冠動脈硬
テーションがもっと広められるべきである」としている.
化の進行の遅延,冠血流量を増加または心筋内血流分布
これらの勧告に共通している運動処方は「中等度の動的
を改善,などが考えられる.心筋酸素需要を減少させる
な運動を,1 日 30 分,週 3〜4 日できれば毎日行うこと」
機序としては,安静時および最大下運動時の心拍数・収
に要約される.ただしこれに対して,一次予防のために
縮期血圧・心拍出量・血中カテコラミンの減少があげら
はさらに多い運動量・強い運動強度が必要であるという
れる.また心機能の改善には安静時および最大下運動時
反対論388,399)があることを附記しておく.
の 1 回拍出量・駆出分画を増加,後負荷軽減に基づく心
わが国においては,心血管疾患のリスク軽減のための
筋機能の改善が,心筋の電気的安定性増加の機序には局
証拠に基づく運動のガイドラインはこれまでほとんど示
所心筋虚血の改善,心筋内カテコラミンの減少,cyclic
されていなかった.厚生省循環器病研究「循環器疾患予
AMP の減少による心室細動閾値の上昇,などが考えら
防のための運動療法に関する研究班」(村山正博班長)400)
れている.
では Karvonen 式 k=0.5〜0.6,嫌気性代謝閾値心拍数の
80〜100 %,あるいは Borg 指数 13(ややきつい)を推
5.一次予防のための運動
42
結
有する人では監視型運動療法教室に入ることを勧めてい
4.身体活動が一次予防に有効である機序
ある機序は以下のように考察することができる
象
奨している.また最近日本高血圧学会では,高血圧治療
冠動脈疾患のリスクを減らすためにはどのような運動
の手段の 1 つとして生活習慣の修正を,その中で運動と
量・運動強度が必要か,これまでの多くの報告に基づく
して最大酸素摂取量の 50 % 程度の比較的軽い運動を毎
欧米のガイドラインを参考にまとめる.
日 30 分,あるいは欧米の勧告に従って 30〜45 分の速足
アメリカスポーツ医学協会(ACSM)では科学的な根
歩きを推奨している401).厚生省は 2000 年,新たな健康
拠に基づいて「すべての米国民は 30 分以上の中等度強
づくり計画として「21 世紀の国民健康づくり運動(健
度の運動を,できれば毎日行うべきである」こと勧告し
康日本 21)」を策定し,これを実行する予定であるが,
ている
.また米国心臓協会(AHA) では,心血管死
その中に健康づくりのための運動所要量および運動指針
のリスクを減らすために中等度の強度の身体活動を 1 回
が示されている402).それによれば,健康を意識して運動
30 分,週 3〜4 回行うこと,運動能力の低い人や疾病を
する人の割合を増やすと同時に 1 日歩数として男性
395)
396)
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
9,200 歩,女性 8,300 歩を推奨している.その根拠とし
虚血性心疾患を予防し健康を維持しあるいは健康を増
て,平成 9 年度国民栄養調査における日本人の 1 日平均
進していくためには,エネルギー,蛋白質,脂質,糖質
歩数が男性 8,200 歩,女性 7,300 歩であり,これに 1,000
(炭水化物),ビタミン,ミネラルなどの栄養素を適正量
歩加えたものを当面 10 年間の努力目標としている.し
摂取するとともにバランス良く摂取することが必要であ
かしながら,一次予防という観点からはさらに詳細な運
る.さらに食物繊維,ポリフェノール,植物ステロール
動処方が望ましいと考えられ,現在の欧米のガイドライ
など非栄養素食物成分の摂取についても配慮することが
ンにしたがって「中等度の強度の運動を 1 日 30 分,で
必要である.これらの栄養素,非栄養素を含む食物成分
きれば毎日」行うことをここに勧告するものとする.中
の生体に及ぼす影響は年齢,性,体質素因などによって
等度の運動とは(表 14)に示すように,時速 4.5〜6.5
変わってくる.特に冠危険因子を合併していたり,ある
km の速足歩き,ゆっくりと泳ぐ水泳,平地を歩くゴル
いはその発症素因を有している場合にはそれに応じた栄
フ,などである.
養対策が必要である.そのために,食事調査を行うと共
日本人における一次予防に関する新たな証拠がみつか
に体重測定,腹囲,血清生化学的検査など臨床的に栄養
った段階で改訂する必要があると考えられる.またすで
評価を行いながら食事のアドバイスをすすめる.食事の
に心疾患を有する人においては,心臓リハビリテーショ
嗜好は環境や幼少期からの生活習慣によっても異なって
ンとしての運動療法を普及させ,監視型運動療法施設や
おり,そのような食文化的側面も考慮に入れて望ましい
スタッフを増やすことによってできるだけ多くの人が参
食事摂取をすすめることも必要である.
加できるような環境づくりを行うことを要望したい.
表 14 運動強度からみた各種スポーツ・日常身体活動378)
より引用・改変
軽い運動
(4 kcal/分以下)
中等度の運動
(4〜7 kcal/分)
激しい運動
(7 kcal/分以上)
ゆっくりとした歩行
(時速 1.5〜3 km)
速足歩き
(4.5〜6.5km)
坂道歩行,走行,サイ
クリング
(>16km/時)
エルゴメータ
(50w 以下)
サイクリング
(<16km/時)
エルゴ,スキー走行機
ストレッチ体操
ゴルフ
(カート使用)
座って魚釣り
軽い水泳
ゴルフ
(歩く)
水泳
(クロール)
ラケット競技
(テニス)
魚釣
渓流釣り,カヌー
(立位,キャスティング)
肥満や痩せは死亡率が高く冠危険因子の発症を促進す
ることが明らかにされており,適正な体重に維持するこ
とが必要である.適正な体重を維持するためには,運動
あるいは身体活動などによる消費エネルギー量を高める
とともに,消費エネルギー量に見合ったエネルギー量を
摂取する.
健康を維持し虚血性心疾患を予防する適正な体重は,
最も疾病の少ない BMI 22 を基準とする標準体重(理想
体重)を参考に個人ごとに決定する必要があり標準体重
が適正体重であるとはかぎらない.標準体重(Kg)は
2
「身長(m)
×22」で計算された値とする.BMI 25 以上が
肥満と判定されるが404),肥満のなかでも内臓脂肪型肥満
で冠危険因子の合併が高率であることから,内臓脂肪型
肥満の診断基準(表 15)を参考に判定し,疑わしい場
b
栄養,体重,喫煙
1.栄養,体重
合にはその改善をはかるようにする.
エネルギー所要量は一日の基礎代謝量に生活活動強度
を掛けて求められる.基礎代謝量は安静時エネルギー消
費量が実測され,それから算出される.性・年齢階級別
糖尿病,高脂血症,高血圧,高ホモシステイン血症な
基礎代謝基準値が示されているが個人差が大きいのでお
ど冠危険因子の多くは遺伝素因とともに栄養が関係して
およその目安にすぎない(図 21).生活活動強度は 4 段
いる.健常者の食事摂取基準は日本人の栄養所要量でし
階に分けられている.一部の例が目安として示されてい
めされており,最も新しいものでは第六次改訂日本人の
る.多くの人はⅡに入るが,座位が多く運動量の少ない
栄養所要量がある402).米国では食事及びその他のライフ
人ではⅠが採用される(表 16).肥満があり,減量を目
スタイルから心血管系疾患のリスクを低減させることを
的とする場合には,この表に例示されている量より少な
目的とした AHA 食事ガイドライン,2000 年改訂版がだ
めに目標を設定する.
されている403).これらは多くの栄養疫学研究や栄養臨床
エネルギー源となる栄養素は糖質,脂質,蛋白質であ
研究などをもとに基準がきめられているが日本人での臨
る.これらの栄養素摂取比率の変化は体重,血清脂質値,
床研究が少ないため,日本人の栄養摂取の現状を考慮に
血糖値などに影響を及ぼすことから,摂取比率に配慮す
いれて虚血性心疾患への対応を考察する.
ることが必要である.日本人の摂取エネルギーに占める
43
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
表 15
診
断
方
内臓脂肪型肥満の診断基準
法
論
1)
内臓脂肪型肥満のスクリーニングに用いる身体計測指標として,立位,呼気
時に計測した臍周囲径(ウエスト周囲径)を用いる.
ただし,WHO 基準でのウエスト周囲径は肋骨弓下縁と上前腸骨棘の中間点
としている 3).
BMI 25 以上で,
男性のウエスト周囲径 85 cm 以上,
女性のウエスト周囲径 90 cm 以上を
上半身肥満の疑いとする.
2)
上半身肥満の疑いと判定された例に対し,腹部 CT 法により呼気法の臍レベル
断面像を撮影し,内臓脂肪面積を計測する.
男女とも内臓脂肪面積 100 cm2 以上を
内臓脂肪型肥満と診断する.
図 21
(人)
35
男
年齢区分別安静時エネルギー消費量(REE)分布図(Kcal/日)
性
(303 例)
30
25
18
〜
29
歳
20
15
10
5
0
30
〜
49
歳
性
(1,179 例)
25
25
20
20
15
15
10
10
5
5
(人)
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
0
500
0
0
500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
(Kcal)
(Kcal) (人)
REE
REE
80
(389 例)
(569 例)
70
500
60
50
40
30
20
10
25
0
1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
0
500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
(Kcal)
(Kcal)
(人)
REE
REE
30
(187 例)
(228 例)
25
20
20
15
15
10
10
5
5
0
(人)
30
70
歳
以
上
女
30
0
50
〜
69
歳
(人)
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
0
500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
(Kcal)
(Kcal) (人)
REE
REE
35
(265 例)
(260 例)
30
0
(人)
35
0
44
結
0
500
500
1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
(Kcal)
REE
0
0
500
1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
(Kcal)
REE
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
表 16
生活活動強度の区分(目安)
間
日常生活の内容
Ⅰ
(低い)
1.3
安 静
立 つ
歩 く
速 歩
筋運動
12
11
1
0
0
散歩,買い物など比較的ゆっくり
した 1 時間程度の歩行のほか,大
部分は座位での読書,勉強,談話,
また座位や横になってのテレビ,
音楽鑑賞などをしている場合
Ⅱ
(やや低い)
1.5
安 静
立 つ
歩 く
速 歩
筋運動
10
9
5
0
0
通勤,仕事などで 2 時程度の歩行
や乗車,接客,家事等立位での業
務が比較的多いほか,大部分は座
位での事務,談話などをしている
場合
9
8
6
1
0
生活活動強度Ⅱ(やや低い)の者
が 1 日 1 時間程度は速歩やサイク
リングなど比較的強い身体活動行
っている場合や,大部分は立位で
の作業であるが 1 時間程度は農作
業,漁業などの比較的強い作業に
従事している場合
Ⅲ
(適度)
1.7
Ⅳ
(高い)
1.9
安 静
立 つ
歩 く
速 歩
筋運動
9
8
5
1
1
安 静
立 つ
歩 く
速 歩
筋運動
が,一方植物性蛋白質ではリジンやスレオニンなどが不
足する可能性があり,蛋白質を構成する必須アミノ酸組
生活活動強度
と指数(基礎 生活動作 時
代謝量の倍数)
1 日のうち 1 時間程度は激しいト
レーニングや木材の運搬,農繁期
の農耕作業などのような強い作業
に従事している場合
注) 1.生活活動強度Ⅱ(やや低い)は,現在,国民の大部
分が該当するものである.生活活動強度Ⅲ(適度)は,
国民が健康人として望ましいエネルギー消費をして,
活発な生活行動をしている場合であり,国民の望まし
い目標とするものである.
注) 2.
「生活動作」の「立つ」
「歩く」等は附表 1 のとおり,
必ずしも「立つ」「歩く」のみを指すのでなく,これ
と同等の生活動作を含む概念である.
注) 3.「時間」は 1 時間を単位としているので,20〜30 分
前後のものは「0」としての表示になっているが,例
えばⅢ(適度)での筋運動は全く行わないということ
ではない.
成や他の栄養成分を考慮して動物性蛋白質比率は 40〜
50 % の間が推奨される.蛋白質発酵食品のなかに含ま
れているオリゴペプチドには高血圧改善作用を持つもの
もある.
糖質の摂取量は総エネルギーの少なくとも 50 % 以上
とすることが望ましい.糖質エネルギー比が高くなると
VLDL の増加をもたらしやすいので,VLDL の増加を伴
う場合には糖質,特に果糖,砂糖の摂取量が過剰となら
ないようにする.糖質のなかでは穀物の摂取がすすめら
れる.穀物エネルギー比は昭和 50 年の 49.2 % から,平
成 10 年では 41.0 % まで減少している.特に米類の減少
が著しく,同じく 39.2 % に対し,29.3 % にまで減少し
ている405).主食としての穀類を毎日適量摂取することは
栄養バランス上望ましい.穀物及びその加工品は複合糖
質,ビタミン,ミネラルおよび食物繊維を含有しており,
穀物摂取量が多いと冠危険因子の発症が抑制されること
から,その摂取がすすめられる403,406,407).
炭水化物を主要成分として食物繊維が食品にふくまれ
ており,人の消化酵素で消化されない難消化性成分とし
て大切な作用をしている.食物繊維のなかでも粘調度の
高い水溶性食物繊維(ペクチン,β-グルカンなど)は
LDL コレステロール低下作用が報告されている.空腹
感を癒し,エネルギー摂取量を抑制し,耐糖能の改善に
も効果がみられる408).
食物繊維の推奨摂取量は 20〜25 g/日とされるが 402),
25 g/日以上 50 g/日程度までは安全とされる.特に冠危
険因子を合併している場合には,食物繊維を多く含有す
る食品の摂取をすすめる.穀類,野菜,豆類,果物,ナ
糖質,脂質,蛋白質の構成比は,平成 10 年度国民栄養
ッツ類などの摂取がすすめられる.
調査によると,総エネルギー摂取量が 1,979 Kcal で,糖
日本では脂質摂取量の増加に伴って,高脂血症や糖尿
質 57.7 %,脂質 26.3 %,蛋白質 16.0 % と報告されてい
病発症率の増加が認められ,また日系移民研究からも同
る405).
様な結果が報告されている.このため脂質エネルギー比
蛋白質はエネルギー産生の供給源となるだけでなく,
は成人で 20〜25 % 程度とする.AHA Dietary Guideline
組織を構成している構成蛋白質あるいは機能性蛋白質の
では 30 % 以下を推奨しているが,日本人の体質を考慮
材料となるアミノ酸を供給するために一定量は必ず摂取
してより低脂肪を一般的目標とする.エネルギー消費量
しなければならない.蛋白質摂取過剰は尿へのカルシウ
が大きい場合や小児,あるいは VLDL の増加を伴う高
ム排泄量の増大,あるいは腎障害を促進させる可能性が
脂血症では脂質エネルギー比を一般のレベルより高めに
あるため好ましくない
設定する.
.日本人成人の蛋白質所要量は,
402)
各年齢の体重に 1.01 を乗じて求められる.蛋白質必要
脂質の主要な構成成分は脂肪酸であり,各脂肪酸の摂
量の算定基準となっている窒素出納には個人差があり,
取量に配慮することも必要である.ステアリン酸を除く
また感染や手術などストレスが影響することが知られて
飽和脂肪酸(S)はコレステロールの増加作用があり,
いる.植物性蛋白質ではコレステロール低下作用が報告
代表的な一価不飽和脂肪酸(M)であるオレイン酸には
されており虚血性心疾患の予防に望ましい成分である
LDL コレステロール増加作用がなく,HDL コレステロ
45
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
ール上昇作用が認められている.多価不飽和脂肪酸(P)
ン以外に十分量摂取が求められるのは葉酸,ビタミン
は体内で生合成されず重要な働きをしていることから必
B6,ビタミン B12 などである.これらのビタミンが不足
須脂肪酸として知られている.多価不飽和脂肪酸には
すると血中ホモシステイン値が上昇して動脈硬化を促進
n-6 系脂肪酸(リノール酸,アラキドン酸)と n-3 系脂
させる可能性がある.米国での葉酸推奨量は一日 0.4
肪酸(α-リノレン酸,EPA,DHA)とがあり,この 2
mg であるが,日本では 0.2 mg で許容上限摂取量は 1
系列の脂肪酸は異なった生理作用を示すことから,それ
mg とされる402).ビタミン B6 所要量は成人男性 1.6 mg,
ぞれの摂取量に配慮することが必要である.多価不飽和
成人女性 1.2 mg で許容上限摂取量は 100 mg とされる402).
脂肪酸はフリーラジカルによって過酸化脂質に変質する
ビタミン B12 所要量は 18 歳以上で 2.4 mg と定められて
ため,過剰な摂取は好ましくなく,抗酸化物質をあわせ
いる402).
て摂取することが必要である.一般に n-6 系脂肪酸は
健康を維持し,虚血性心疾患を予防していくためにバ
LDL コレステロールを低下させるが摂取量が多いと
ランスのとれた適正量のミネラルを摂取することが必要
HDL コレステロールを低下させてしまう.n-3 系脂肪酸
である.食塩摂取量に関する疫学試験や減塩介入試験な
には VLDL 低下作用があり PPARαの関与が考えられて
どから,高血圧予防のために食塩摂取量は 6 g/日以下が
いる.さらに抗炎症作用,血液凝固抑制作用などがあり
推奨されている402,403,419).食塩摂取量が血圧に及ぼす影
動脈硬化に抑制的に作用している.
響には個人差が大きく個人レベルでの評価が必要であ
各脂肪酸の作用や日本人の栄養調査の結果などを検討
した結果,脂肪酸の摂取割合は,S:M:P で 3:4:3
が望ましいとされるが,高齢者,高血圧患者,糖尿病患
程度とし,n-6/n-3 の比は 4/1 を目安にすすめるが,n-3
者では食塩感受性者が多く減塩が望ましい.カリウム摂
系脂肪酸の抗動脈硬化作用を考慮にいれて
,その
取不足は高血圧を引き起こすことが報告されており,高
摂取量を増加させても良いと考える.これらの脂肪酸摂
血圧予防のために,日本人(15 歳以上)一人当たりの
取量は一定のもではなく体質などによって増減すべきで
カリウム摂取量目標値を 3,500 mg/日(50 mg/Kg)とす
ある.
ることが望ましい421).ミネラルと高血圧との関連につい
409,410)
トランス型脂肪酸は LDL コレステロールの上昇,
ての研究でカリウムの他にカルシウムやマグネシウムの
HDL コレステロールの低下をもたらすため過剰な摂取
摂取が高血圧の改善に効果のあることが報告されてい
は控え,総エネルギーの 2 % を越えないように注意し,
る420,422,423).セレンは重要な抗酸化物質である.セレン
飽和脂肪酸の摂取枠内に入れて計算する.
所要量は,18〜29 歳の男女で 0.9μg/Kg,30 歳以上で
一般に食事から摂取されるコレステロール量よりも体
は男女 0.8μg/Kg とされる402).
内で生合成されるコレステロール量のほうが多く,また
アルコール摂取は適量であれば虚血性心疾患発症率を
肝臓における調節機構により食物から吸収されたコレス
低下させるが,一方アルコール摂取量が多い(一日 3 杯
テロールがある程度増加しても血清コレステロール値は
以上)と血圧を高めることが報告されており424,425),冠
ほぼ一定に維持されることが多い.しかし,高脂血症の
危険因子の増悪や肝障害をもたらす可能性があるため,
素因を有している場合にはコレステロール摂取量の増加
アルコール摂取量が過量とならないようにする.米国で
に伴って,血清コレステロール値の上昇が認められる.
は,アルコールの一日摂取量として男性 30 g(2 杯)
,女
従って高脂血症素因を有している場合には一日のコレス
性 15 g(1 杯)相当量とするように制限している403).個
テロール摂取量は 300 mg 程度に抑えるようにする
人差があるが,日本人では体格,アルコール耐用量など
.
403)
抗酸化物質の摂取が虚血性心疾患の予防に効果のある
ことが報告されている 411−414).抗酸化物質としてビタミ
ン E,ビタミン C,カロテノイド(β-カロテンなど),
ポリフェノール(フラボノイド,イソフラボンなど)な
を考慮すると,米国の推奨量以下とすることが望ましい.
2.喫煙対策
喫煙が虚血性心疾患の危険因子であることは明白で,
どが知られており,野菜,果物,茶,穀物などに含まれ
J-LIT でも有意に出ており(図 22)その対策が求められ
ている.これらの食品には抗酸化物質の他,食物繊維や
ている.喫煙の弊害について喫煙者本人だけでなく,家
ミネラルが含まれており,その摂取量と虚血性心疾患発
族あるいは同室者にも受動喫煙の害があることを繰り返
症率と逆相関が報告されている
し教える.喫煙者自身の喫煙量を把握させ,ニコチン依
.
406,415−418)
ビタミンは健康を維持していくために適正量摂取しな
ければならない.虚血性心疾患と関連して抗酸化ビタミ
46
り,日本人成人には 10 g/日未満(0.15 g・体重 Kg 未満)
存度を評価する.ニコチン依存度はファガストロームの
ニコチン依存度指数で測定される426).
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
図 22
J-LITにおける一次予防症例の登録患者背景と冠動脈イベント相対危険度数
p<0.05
登録時の患者背景と冠動脈イベント
*
*
高血圧
*
糖尿病
*
心電図異常
*
脳血管疾患の合併
腎疾患の合併
肝疾患の合併
*
虚血性心疾患の家族歴
*
喫煙習慣
飲酒
*
0.5
1
2
3
4
相対危険度
冠動脈イベント:心筋梗塞(致死性・非致死性),突然心臓死
ニコチン依存症から離脱させるために,ニコチンガム,
ニコチンパッチなどを用いたニコチン置換療法も対応策
の一つにあげられる
虚血性心疾患の診断を困難にする要因にも配慮する必要
がある428).
さらに高齢者では,多くの疾患を併せ持つことが多く,
.禁煙のための個別のカウンセリ
427)
ングや集団でのカウンセリングなども行われている.病
諸臓器の予備能の低下や生理・代謝機能も低下している
院や診療所での禁煙教室,あるいは企業の健康管理室を
ため薬物の副作用も出現しやすい.高脂血症や高血圧,
中心とした集団指導も禁煙の動機づけに効果がある.イ
糖尿病などの冠危険因子の是正に際しても,QOL を含
ンターネットを使って医師と患者,あるいは患者同志で
む患者の全体像を把握しながら対応することが重要であ
のコミュニケーションも行われ禁煙の成果が報告されて
る.ここで年齢の因子をどう扱うかも問題となる.一般
いる.公共の場での禁煙や喫煙場所の設営,煙草の自動
的には,前期高齢者(65 歳〜74 歳)については 64 歳ま
販売機の禁止などを含めた公的機関による対応策も必要
での中年者への対応と同様に考えてよいものと思われる
である.
が,後期高齢者(75 歳〜84 歳)や超高齢者(85 歳以上)
c
では個人差も大きく,日常生活活動度や認知機能,うつ
年齢と性差
状態の有無,介護状況などを把握して,総合的な機能評
価に基づいて個別に対応すべきである.
1.高齢者虚血性心疾患の一次予防
a
b
高齢者における留意点
冠危険因子の包括的な是正
加齢は動脈硬化の独立した危険因子であり ,高齢者
高齢者虚血性心疾患においても生活習慣の是正,食事
ではすでに,冠動脈硬化を含めて動脈硬化性変化が全身
療法,禁煙などは大切である.ただ高齢者では長年の生
に広範に存在する可能性がある.とくに脳血管病変や胸
活習慣の変更は困難なことも多く,厳しい指導はかえっ
9)
腹部大動脈瘤については無症候であっても留意する必要
て QOL を低下させる可能性もある.以下に,主に薬剤
があり,さらに,脳・心・腎などの臓器障害をすでに有
による冠危険因子の是正について述べるが,具体的な数
することも多い.これらの全身的な病態にも配慮しなが
ら,高齢者でとくに予後不良である急性心筋梗塞などの
発症予防を目指して対応する必要がある173).
値については各項を参照されたい.
[1]高脂血症:高齢者においても食事療法や運動療法が
基本であるが,高齢者に無理のない程度に指導する
一方,高齢者では,病歴が取りにくかったり,典型的
ことが大切である.薬物治療では肝・腎機能低下や
な症状を呈さないことも多い.すなわち胸痛を欠如した
低蛋白血症など,高齢者によく合併する病態にも配
り,労作時息切れなどの非典型的な症状しか示さない無
慮した治療が必要であり,まず少量より投与を開始
症候性心筋虚血も少なくない
.また高齢者では安静心
する.高齢者では効果,安全性およびコンプライア
電図で ST-T 変化のみられる頻度が増加する.これらの
ンスのうえからも HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタ
173)
47
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
チン系)が日常臨床では使いやすい.前期高齢者で
これらの根本的な原因は,閉経とともにエストロゲン
は 64 歳までの成人の基準を目安にする429).また,後
が急激に欠落することである.そこで,動脈硬化やその
期高齢者を含めた介入試験においても,スタチン投
他の疾患を予防または治療する方法をホルモン補充療法
与が冠動脈疾患のリスクを低下させ,中年者と同様
(hormone replacement therapy;HRT)という.
の治療戦略が有効であることも示されている430,431).
[2]高血圧:高齢者では,動脈硬化を基盤とした収縮期
閉経後女性の虚血性心疾患の一次予防
閉経によるエストロゲン欠乏は冠動脈硬化の多くの危
きいこと,すでに脳・心・腎などの血管合併症を伴
険因子を増加させ,また動脈硬化の基盤を作る.したが
うことが多いこと,各種の生理・代謝機能が低下し
って,閉経は冠動脈硬化の重大な危険因子であり,特に
ていることなどの特徴があり,少量の薬剤投与を原
自然にもしくは手術により早期に閉経した女性は他の危
則としてマイルドなコントロールを目指し,さらに
険因子が認められなくてもそれ自体で日本動脈硬化学会
時間をかけてゆっくりと降圧することが大切であ
高脂血症診療ガイドライン222)のカテゴリー B とみなす
る.前期および後期高齢者とも最終的には 140/90
べきであり,虚血性心疾患の十分な一次予防をはかるべ
mmHg 未満を目標とすることが望ましい.ただ 80
きである.
歳以上の高齢者については降圧治療の有効性を示す
日本人における冠動脈危険因子の重み(オッズ比)の性
差を検討した成績 435)によれば,日本人男性におけるオ
データに乏しい.
[3]糖尿病:糖尿病の合併も高頻度となる.糖尿病合併
ッズ比の高い因子は,高血圧,喫煙,糖尿病,家族歴,高
例では冠血管径が細く,びまん性病変であることが
コレステロール血症の順であるが,女性では喫煙,糖尿
多い.複数の危険因子を合併する場合にはより積極
病,高血圧,家族歴,高コレステロール血症の順であり,
的な治療が望ましい.
女性においては禁煙指導,糖尿病・高血圧・高脂血症の
[4]喫煙:充分な禁煙指導が大切である.高齢者では病
管理が特に重要であると考えられる.したがって,閉経
変の進行および新たな心事故発生に関与するという
後女性においては,一般的な一次予防法である,禁煙,
成績があるからである162).
カロリーと脂肪の摂取制限,食塩摂取制限,運動療法な
2.女性の虚血性心疾患の一次予防
a 女性における閉経と虚血性心疾患
どのライフスタイル改善を特に強く勧めるべきである.
最近まで,欧米において行われてきたメタアナリシス
または観察研究において,HRT が閉経後女性において
「1.日本人における虚血性心疾患の特徴 2」e.性差と
虚血性心疾患の発症頻度を約 50 % に抑制されることが
虚血性心疾患」において述べたように,日本人女性にお
報告されている.ただ,全脳血管障害,脳梗塞の発症を
いても閉経前では動脈硬化による虚血性心疾患の発症頻
有意に抑制するという結果は得られていない436).このよ
度は男性に比べかなり低く明らかな性差が認められる.
うな多くの報告もあり,HRT は閉経後女性における虚
女性の卵巣機能は 50 歳をはさむ約 10 年間で急激に低下
血性心疾患の一次予防において念頭におくべき薬物療法
し,エストロゲンを初めとする女性ホルモンの欠乏が起
であると考えられてきた.実際,HRT は欧米では閉経
こる.
後女性の 30〜50 % に使用されているが,日本では殆ど
この時期を更年期とよぶが,動脈硬化性疾患の発症は
普及しておらず,45〜69 歳の女性の 1.8 % しか受けて
更年期以後次第に増加する.この背景に,閉経後の女性
いない437).しかし,これらの成績はメタアナリシスまた
において脂質代謝異常,高血圧症,内臓脂肪型肥満,イ
は観察研究によって得られたものであり,実際の虚血性
ンスリン抵抗性など,動脈硬化の危険因子が著しく増加
心疾患発症抑制効果はプラセボを対照においた二重盲検
すること,動脈硬化の発症,進展を抑制する作用のある
試験で確認する必要があった.また,日本人においては
エストロゲンの血管保護作用が低下することがあげられ
HRT の施行頻度の低さから観察研究の結果も得られて
る.実際,日本人の閉経後女性の高脂血症の頻度は同年
いないし,二重盲検試験も行われていない.
代の男性の 2〜3 倍に増加し
48
b
高血圧の頻度が高くなること,血圧の日内変動が大
,高血圧の頻度も閉経後
2002 年 5 月 31 日にアメリカ合衆国において 2005 年
に増加し 433),肥満に関しても 40〜79 歳の年代で body
を 発 表 の 目 標 と し て 行 わ れ て い た Women's Health
mass index が 26.4 以上の頻度も女性の方が約 17 % 多
Initiative Clinical Trial and Observational Study(WHI)438)
い434).閉経は動脈硬化以外にも骨粗鬆症,老年痴呆など
という前向き一次予防試験のうち,エストロゲン+プロ
の疾患が増加する基盤ともなる.
ゲスチン併用療法(平均試験期間 5.2 年)に関する試験
432)
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
がそのリスクのため中止となった439).その内訳は平均試
すべての女性に一次予防の方法として,HRT を用いる
験期間 5.2 年の時点で,浸潤乳がんは予め設定したリス
べきではなく,更年期障害に対して必要最小量を必要短
クの範囲を逸脱しており,総合評価においてもリスクが
期間使うべきである.ただ,骨粗鬆症など他の条件が合
ベネフィットを上回る可能性があると判断されている.
えば HRT を考慮する.エストロゲンは LDL コレステロ
また,冠動脈疾患の一次予防にも効果がないと判定され
ール低下作用,HDL コレステロール増加作用を有する
ている.その後この試験の一部であるエストロゲン単独
が444),閉経後の高脂血症についても第一選択にはスタチ
試験は引き続き継続されていたが,2004 年 3 月 1 日に
ン系薬剤を選ぶべきである.しかし,エストロゲンには
平均試験期間 6.8 年の時点で早期終了となった
Lp(a)低下というユニークな作用がある444)ので,Lp(a)
.主な
440)
根拠は冠動脈疾患のリスク減少目標を 15 % としていた
が著しく高く,それを低下させたい場合に一つの選択と
ところ 9 %であったこと,また,脳卒中についてはあら
はなるだろう.
かじめ設定したリスクの範囲を超えたためである.
一方,エストロゲンの二次予防効果についても日本人
を対象にした成績はない.アメリカ合衆国においては,
3.ホルモン補充療法の施行法と注意点
ホルモン補充療法(HRT)は前の「閉経後女性の虚血
この点を検討した HERS(Heart and Estrogen/progestin
性心疾患の一次予防」にもあるように,最近の RCT 調
Replacement Study)とよばれる RCT 研究441)の結果が発
査439,440,445)では心血管系疾患の一次,二次予防ともに効
表されている.その結果,心筋梗塞の再発には HRT 群
果が認められないと判断されている.しかし,閉経直後
(結合型エストロゲン 0.625 mg/日+メドロキシプロゲ
の更年期障害,骨粗鬆症の有効性は再確認されており,
ステロン 2.5 mg/日の連続同時投与法)と偽薬群の両群
これらの症状には有効である.また,RCT 調査結果に
間に有意差を認めなかった.しかし,試験開始後 3 年以
は HRT 開始年齢,肥満,投与量などまだ問題も多い.
上経過すると,HRT 群における心筋梗塞の発症は有意
現時点ですべての HRT を否定することは無理があると
に低下した.したがって,本研究の結果からは HRT が
思われる.リスクとベネフィットを考慮し,HRT を行
心筋梗塞の二次予防に有効であることが確認されなかっ
う必要があるし,現時点では心血管性疾患の予防ではな
たため,心筋梗塞の再発予防のために閉経後女性に新規
く,更年期障害に対して必要最小量を必要短期間つかう
に HRT を行うことは推奨されないが,すでに HRT を 3
べきである.
年以上受けている心筋梗塞患者においてはそれを中止す
HRT の施行法には経口投与と経皮投与がある.経口
投与は抱合型エストロゲン(プレマリン R 0.625 mg),
る必要はないと結論している.
これらの大規模 RCT とそれ以前に報告されている観
エストリオール(E3)製剤がよく用いられている.経
察研究では虚血性心疾患に対するエストロゲンの予防効
皮投与にはエストラジオール(E2)貼付剤(エストラ
果の判定はずいぶん異なっている.心血管系疾患に対す
ダーム TTSR,エストラダーム MR,エストラーナ R,
るエストロゲンの予防効果に肯定的な観察研究と否定的
フェミエスト R)などの製剤がある.経皮投与は末梢の
な最近の RCT には対象集団間に重大な差が認められる
毛細血管より直接血管内に取り込まれ 24 時間連続的に
のも事実であり,わが国自身のこのような研究もなく,
吸収されるため,卵巣からのエストロゲンの分泌に近い
人種,体重差などによりわが国では異なる結果が出る可
状態での投与が可能である.これら各種のエストロゲン
能性はあるが,現時点では HRT が女性に一次予防,二
の投与量はプレマリン R 0.625 mg で 1 錠/日,E2 貼付
次予防の方法として,有効であると判断するのは時期早
剤は 1 枚〜 2 枚を 2 日に 1 回貼りかえる.
尚と言わざるをえない
また,実際にはエストロゲン製剤と共に黄体ホルモン
HRT の適応としては,一般的に,[1]更年期障害の
を併用する必要がある.黄体ホルモンを投与する意味は
症状が強く,QOL が著しく損なわれている場合,[2]
子宮体癌の予防であり,エストロゲン単独投与では子宮
卵巣性無月経などの卵巣機能障害のある閉経前女性,
[3]
体癌の発生率は明らかに増加するので有子宮者において
卵巣機能を早期に喪失した場合(早期の自然閉経または
は黄体ホルモンを必ず投与する必要がある.しかし,筋
何らかの疾患により両側卵巣摘除を受けた閉経前女性),
腫などで子宮を摘出した者には投与の必要はないし,最
[4]閉経後の骨量減少が著しい場合,またはすでに骨粗
鬆症に罹患している場合などがあげられている
近の報告では乳がんに対しては黄体ホルモン併用のリス
.
クが高くなるとの報告もあり445),使用しない方が良いと
虚血性心疾患に関しては,一次予防の成績に乏しいこと,
考えられる.この黄体ホルモンの投与方法にはいくつか
二次予防における HERS の結果を考えると,現時点で
のパターンがあるが,連続投与と間歇的投与に大別され
442,443)
49
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
るが,乳がんのリスクを考慮し最低限の使用に心がける
も思春期例の肥満に影響を与える.肥満防止のために健
べきである.
全な生活習慣の確立が最も重要であることは言うまでも
前述の RTC 試験での結果は,経口薬のプレマリンを
ない.
使用しており,投与量も 0.625 m であった.黄体ホルモ
成人肥満では脂質異常(LDL コレステロール,トリ
ンの種類投与量にも問題があるのではないかと考えられ
グリセライドの増加,HDL コレステロールの減少),高
ている.今後 HRT の投与経路,投与量,投与開始年齢
血圧,糖尿病を合併する場合が多いが,この状況は小児
などに関して更なる検討が必要と思われ,その結果を待
でも同様に観察されている.特に中心性肥満の指標であ
たなければならないが,リスクとベネフィットを考慮し,
HRT を選択し,現時点では心血管性疾患の予防ではな
く,更年期障害に対して必要最小量を必要短期間だけ使
うべきである.
d
小
児
1.はじめに
虚血性心疾患は欧米における死亡率の主たる原因であ
るが,わが国でも近年,生活習慣の欧米化に伴い,その
罹病率と死亡率の増加が問題となっている446).生活習慣
によって冠動脈疾患をはじめとする虚血性心疾患は発
症,進展するという観点から,近年はその予防戦略とし
て小児期からの集約的かつ根本的な対応がなされる必要
性について論じられている447,448).すなわち,冠動脈疾患
の疾患基盤である動脈硬化性病変は,小児期すでにその
初期病変の危険因子の存在による進展が病理学的に証明
されている449−451).また,リスクの減少は,動脈硬化の発
症を遅らせたりその経過を変えることができることも多
くのエビデンスをもって証明されてきており,冠動脈疾
患の一次予防は小児期において始めるべきものとする認
識を持つべき時代が到来したといえるであろう447,452,453).
また,最近,生活習慣病は胎児期にその素因が作られる
という成人病胎児期発症説が唱えられはじめた.すなわ
ち,胎児期に低栄養にさらされ低体重で生まれると,
BMI が高いランクで推移し,大人になってから肥満や糖
尿病や高血圧,虚血性冠動脈疾患などの生活習慣病の発
症のリスクが高くなるという説で,最初の提唱者である
Barker にちなんで Barker 仮説と呼ばれる454).このよう
な,母体胎内因子の要因についても遺伝のみでなく,虚
血性心疾患の一次予防として考えておかねばならない.
2.肥
満
小児において肥満は栄養や身体活動などの生活習慣に
関わる健康障害であり,家族環境や家族歴が関与するこ
とも多い.ライフスタイルの変化により不必要な摂取カ
ロリーの増加と肥満との因果関係が指摘されている455).
また最近の学校での運動量の減少や運動施設の不備など
50
表 17
小児肥満症の診断基準
肥満児の判定:
18 歳未満の小児で肥満度が 20 % 以上,かつ有意に体
脂肪率が増加した状態
体脂肪率の基準値は以下のとおりである(測定法を問
わない)
男児 13 歳未満:25 %,13 歳以上:25 %
女児 11 歳未満:30 %,11 歳以上:35 %
肥満症の定義:
肥満症とは肥満に起因ないし関連する健康障害(医学
的異常)を合併する場合で,医学的に肥満を軽減する
治療を必要とする病態をいい,疾患単位として取り扱
う.
肥満症の診断:
5 歳 0 ヶ月以降の肥満児で下記のいずれかの条件を満
たすもの.
・A 項目を 1 つ以上有するもの.
・肥満度が 50 % 以上で B 項目の 1 つ以上有するもの.
・肥満度が 50 % 未満で B 項目の 2 つ以上有するもの.
肥満治療が特に必要となる医学的問題
・高血圧
・睡眠時無呼吸など肺換気障害
・2 型糖尿病,耐糖能障害(HbA1c の異常な上昇)
・腹囲増加または臍部 CT で内臓脂肪蓄積
肥満と関連の深い代謝異常など
・肝機能障害(ALT の異常値)
・高インスリン血症
・高コレステロール血症
・高中性脂肪血症
・低 HDL コレステロール血症
・黒色表皮症
・高尿酸血症
(肝障害の場合は超音波検査で脂肪肝を確認する,TG と IRI
は早朝空腹時採血)
肥満度を下げても改善がない場合は,これらの所見は肥満
によるとは考えない.
参考項目:身体的因子および生活面の問題(2 項目以上の
場合は B 項目 1 項目と同等とする)
・皮膚線条,股ズレなどの皮膚所見
・肥満に起因する骨折や関節障害
・月経異常(続発性無月経が 1 年半以上持続する)
・体育の授業などに著しく障害となる走行,跳躍能力
の低下
・肥満に起因する不登校,いじめなど
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
表 18
小児(学齢期)の高脂血症の判定基準
血清総コレステロール(TC)
正常域 ≦90 mg/dl (75 パーセンタル)
境界域 190-219 mg/dl
高 値 ≧220 mg/dl(95 パーセンタル)
血清 LDL コレステロール(LDL-C)
正常域 ≦110 mg/dl(75 パーセンタル)
境界域 110-129 mg/dl
高 値 ≧130 mg/dl(95 パーセンタル)
血清トリグイリセライド(TG)
高
値
≧140 mg/dl(95 パーセンタル)
血清 HDL コレステロール(HDL-C)
低
値
≦40 mg/dl (5 パーセンタル)
る肩甲下皮脂厚は体重/身長比などの指標より冠動脈疾
患リスクをよく反映する456,457).
表 19 冠動脈疾患の予防,治療の観点からみた日本人のコレステ
ロール値適正域および高コレステロール血症診断基準値
思春期の肥満例は若年成人の肥満に移行しやすいこ
と,さらに高脂血症や高血圧も同様の傾向をとることが
報告され,継続した警戒が思春期肥満例には必要なこと
が示されている458).インスリン抵抗性,高血圧,脂質異
常(高トリグリセライド血症,低 HDL コレステロール
総コレステロール
(mg/dl)
LDLコレステロール
(mg/dl)
適
正
域
200未満
120未満
境
界
域
200〜219
120〜139
220以上
140以上
高コレステロール血症
血症)そして耐糖能異常や 2 型糖尿病を合併するメタボ
リックシンドロームという概念は,内臓脂肪蓄積により
は,NCEP によれば,本来,家族にリスクを有する小児
もたらされるものであること,動脈硬化性心血管疾患の
への対応を主体としたものであるが,将来の冠動脈疾患
世界的に極めて大きな原因を占めることが共通した認識
発症リスクを減少させるため小児全体および個人に対し
となった
.小児においては,未だメタボリックシ
て,さらに以下の様な勧告を出している.[1]血清コレ
ンドロームの定義は確立されていないが,わが国では日
ステロール高値,喫煙,高血圧,肥満,糖尿病,運動不
本肥満学会から「小児肥満症の診断基準」に関する提案
足は冠動脈疾患の独立した危険因子である.[2]動脈硬
がだされており
459,460)
,当面はこれを代用して小児における
化は小児期より始まり,各危険因子の程度と関係してい
心血管疾患への一次予防に関する介入やスクリーニング
る.しかし,血清コレステロール値だけでは将来の冠動
ができるようにすべきと考えられる(表 17).
脈疾患発症予測は困難である.[3]バランスの良い食事
461)
最近,睡眠時無呼吸症を合併した高度肥満の思春期お
に心掛ける,特に脂肪は総摂取エネルギーの 30 %以下
よび若年成人剖検例で,刺激伝導系への顕著な脂肪組織
に,飽和脂肪酸は 10 % 以下に,またコレステロールの
の沈着が認められており,高度肥満例では重症不整脈に
摂取は 300 mg/日以下にすること.高脂血症の治療はま
よる突然死のリスクも想定されている462).
ず食事療法で,step Ⅰ diet,ついで効果がなければ step
Ⅱ diet に進む.同時に高脂血症以外の冠危険因子を取り
3.高脂血症
除く努力をする.薬物療法は 10 歳以上の児を対象に,6
1993〜1999 年にかけて,わが国の 19 都府県の 9 歳か
か月から 1 年の食事療法に反応せず,LDL コレステロ
ら 16 歳の学童期の小児を対象とした全国的な血清脂質
ール高値の場合に考慮する.NCEP によれば,コレスチ
調査の成績から,わが国で使用されている小児の高脂血
ラミンなどのイオン交換樹脂が第一選択薬とされる.ロ
症の基準値を(表 18)に示す463).一方,日本動脈硬化
バスタチン,アトロヴァスタチンの使用は,10 歳以上
学会から示された基準値は(表 19)に示すが,補足項
の,また生理発来後の小児について FDA から認可され
目で小児例にも適応できることが附記されている222).動
ているが,副作用について細心の注意を払う必要があり,
脈硬化の進展予防の観点からは小児例でも LDL コレス
小児脂質の専門家以外における一般の使用については勧
テロールに注意を払う必要があり,LDL コレステロー
められていない.
ルレベルでその後の管理を決めようとする指針が
高脂血症を合併した小児例の食事療法で懸念されるこ
National Cholesterol Educational Program (NCEP)より提
とは食事性の成長障害であるが,Dietary Intervention
示されている
Study in Children(DISC)の調査では思春期例に対する
.これを参考にして,わが国の小児の脂
448)
質値の現状に則した管理表を図 23 に示した.この基準
問題は指摘されていない464).
51
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
図 23
小児の高脂血症管理基準(文献448をもとに改変)
危険因子の評価
血清総コレステロ
ール(TC)の測定
両親のうち 1 人でも 240mg 以
上の高コレステロール血症
正常範囲
TC
<170mg/dL
5 年以内に血清総コレステロール再検
適正な食事や危険因子の減少に努める
境界領域値
TC
170〜199mg/dL
TC 再測定
前回の測定値
との平均値
<170mg/dL
≧170mg/dL
血清脂質に関する精密検査
12 時間空腹
TC,HDL-C,TG 測定
LDL-Cの計算
(LDL-C=TC−HDL-C−TG/5)
正常範囲
LDL-C
<110mg/dL
5 年以内に総コレステロー
ル再検,適正な食事や危険
因子の減少に努める
境界領域値
LDL-C
110〜129mg/dL
高脂血症教育
第 1 段階の食事療法
他の危険因子対策
1 年後の再検査
高 値
TC
≧200mg/dL
正常範囲
LDL-C
<110mg/dL
境界領域値
LDL-C
110〜129mg/dL
血清脂質の再
検査
前回の測定値
との平均値
高 値
LDL-C
≧130mg/dL
高 値
LDL-C
≧130mg/dL
薬物療法は原則として 10 歳以上になって行う
詳しくは本文参照のこと
注:両親あるいは祖父母のうち 1 人でも 55 歳以前に
発症した心筋梗塞の病歴があるもの
4.高血圧
病歴,身体検査,生化学的
検査
2 次性高脂血症の検討
家族歴
積極的な治療
家族全員のスクリーニング
治療目標
最低目標:LDL-C
<130mg/dL
理想目標:LDL-C
<110mg/dL
第 1 段階の食事療法
効果がなければ
第 2 段階の食事療法
年後に血圧上昇が認められなかったという報告があ
る
465a)
日本高血圧学会による 2004 年の高血圧治療ガイ
小児においては日内変動や白衣高血圧などの問題から
ドラインには,小児,青年期の正常高値血圧判定基準が
高血圧の診断には注意が必要である.携帯型血圧モニタ
あり,虚血性心疾患の一次予防として有益と考えられる
ーは現在使用される機会が多くなったが,その高血圧の
ので,示しておく(表 20)本態性高血圧症の小児では
基準値に明確なものはない.携帯型血圧計で測定された
まずライフスタイルの是正や食事療法の後,薬物治療が
血圧は,通常に測定された血圧より多少低めに測定され
開始されるべきである.薬物治療薬としては利尿剤,
る
ACE 阻害剤や Ca 拮抗剤などが使用される.
.小児を対象とした減塩の効果を確認した報告は本
465)
邦にはないが,外国には新生児期から減塩を行って 15
52
家族歴陽性
(注)
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
表 20
小児,青年期の正常高値血圧判定基準
収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧
(mmHg)
小
学
校
低学年
高学年
中
等
最近,全身性エリテマトーデス474),ネフローゼ症候群
に伴う高トリグリセライド血症例475),大動脈弁上部狭窄
≧ 120
≧ 125
≧ 70
≧ 70
などの先天性心疾患などで冠動脈疾患の発症が報告され
男
女
校
子
子
≧ 130
≧ 125
≧ 70
≧ 70
8.食
学
校
≧ 130
≧ 75
学
高
IgG 量などが検討されている471−473).
ているが476),いずれも稀な症例である.
事
小児肥満における食習慣の問題には,様々な要因があ
るが,乳幼児期から考えられねばならない.清涼飲料水
5.運
やファーストフード,スナック菓子類,飽和脂肪の摂取
動
過多には,十分な注意が必要である.肥満とならない食
好気的運動を定期的に行うと体重が減少し,脂質およ
習慣の育成には,単に家族における対応だけでなく広く
び糖質代謝が改善し,高血圧例では降圧が得られること
幼児の集団生活の場や学校教育においても指導啓発がな
から,運動により動脈硬化の危険因子を減少できる.こ
される必要がある.最近小児肥満とファーストフードと
れは骨格筋,脂肪組織のインスリン受容体感受性を通じ
の因果関係に関する報告がなされた477).
てリポ蛋白リパーゼ活性が上昇し,VLDL コレステロー
小児期の高脂血症管理の主体は食事と運動を中心とし
ルは低下し,HDL コレステロールは上昇する.最近発
た生活指導である.(表 21)に NCEP 勧告の食事指導
表された米国の報告では,思春期および若年成人の約半
内容を示す.各子供の発達段階に則した必要栄養素が摂
数しか十分な継続した運動を行っておらず,約 14 % の
取されることが望まれ,過度の偏った食事療法による被
者はほとんど運動しない.また毎日 20 分以上の継続し
害も報告されている478).
た運動は高校生の 19 % しか施行していないとしてい
る
2 歳までのエネルギーと栄養必要量は特に高く,この
.運動は治療法としての導入のみならず,習慣付け
年齢層に対する厳しい食事制限,特に低脂肪食,低脂肪
ることが重要であり,学校や地域社会を含めた種々の取
乳は一般的に勧められない.2 歳以降での健常な小児や
り組みが開始されている
思春期例に厳格な食事制限を科すことは好ましくない.
466)
.
467)
6.喫
煙
欧米諸国での喫煙率の低下は確実に得られているが,
思春期例での喫煙率は未だ 20 % 代である.
正常な体重と成長を維持できる十分な栄養とエネルギー
を供給すべきである.
高脂血症小児において,食事介入による冠動脈疾患発
症に対する長期成績は得られていなが,8 年間にわたる
受動的な喫煙で,小児では HDL コレステロールが低
成人例の成績を見る限り,小児例に対する同様の食事療
下すること,また内皮由来血管拡張作用が減弱すること,
法介入とその継続は,冠動脈疾患予防に有効と予想され
さらに容量依存性に内皮障害が起こる468).直接的な喫煙
ている479).
影響では,軽度の気道閉塞と肺機能低下が思春期例で報
表 21
告されている.この影響は男児より女児で顕著である469).
NCEPによる食事指導の勧告
第 1 段階
第 2 段階
総カロリー量の
総カロリー量の
30%未満
30%未満
飽和脂肪酸
10%未満
7%未満
多価不飽和脂肪酸
10%まで
10%まで
一価不飽和脂肪酸
総脂肪の残り
総脂肪の残り
コレステロール
300mg/day未満
200mg/day未満
て,川崎病が挙げられる.川崎病は原因不明の炎症性疾
糖
総カロリーの約55%
総カロリーの約55%
患で,
重症例では全身の血管炎から冠動脈障害を併発し,
蛋白質
総カロリーの15〜20%
総カロリーの15〜20%
総カロリー
正常の成長発達を促し,望ましい体重を達成維持
できる量
禁煙によって得られる医学的,社会的,経済的利益を繰
り返し教育することも小児期からの冠動脈疾患予防には
総脂肪
重要である.
7.その他疾患
冠動脈疾患を二次的に来たす可能性のある疾患とし
その後冠動脈疾患を発症する例が約 2 % に認められ
質
た470).川崎病の発症を防止する方法は現在までないため,
冠動脈障害を発生させない治療に主体が置かれている.
ガンマグロブリン超大量静注投与前のスコアリングや
53
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
e
脂
的には使用が可能である.
質
高コレステロール血症の診断基準値は,これまでの海
外および国内の疫学研究から日本動脈硬化学会の策定ど
1.はじめに
おり血清総コレステロール値が 220 mg/dL 以上,高
高脂血症は虚血性心疾患の重要な危険因子として広く
LDL コレステロール血症として 140 mg/dL 以上とする.
認められている.これまでに日本人の虚血性心疾患の予
原則として LDL コレステロール値で評価し,総コレス
防に対する高脂血症の診断と治療目標に関するガイドラ
テロール値は参考値とする.虚血性心疾患の一次予防を
インとしては,1997 年に日本動脈硬化学会から「高脂
考えた場合,まず LDL コレステロール以外の主要危険
血症診療ガイドライン」 ,2002 年には改訂版としてマ
因子を評価する(表 22).危険因子のない患者では
ルチプルリスクファクター管理を強調し,高脂血症対策
LDL コレステロール値 160 mg/dL 未満(総コレステロ
に限定しない「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」 が
ール値 240 mg/dL 未満),高脂血症以外の冠危険因子を
発表されている.また 2005 年にメタボリックシンドロ
2 つまで有する場合,LDL コレステロール値 140 mg/dL
ーム診断基準検討委員会から「メタボリックシンドロー
未満(総コレステロール値 220 mg/dL 未満),糖尿病ま
222)
480)
ムの定義と診断基準」 が発表されている.この経緯を
たは冠危険因子を 3 つ以上有する場合,LDL コレステ
ふまえて,今回のガイドライン改訂においては,LDL
ロール値 120 mg/dL 未満(総コレステロール値 200 mg/
コレステロールだけでなく,メタボリックシンドローム
dL 未満)を脂質管理目標値とする.
481)
まず食事療法(表 23)と運動療法(表 24,25)に
も念頭に入れて高脂血症を評価することとする.
よるライフスタイルの改善を行う.高脂血症治療の基本
2.高コレステロール血症
は食事療法であり,それにより効果が不十分な場合薬物
血清総コレステロール値と虚血性心疾患の発症率が正
療法を追加する.食事療法は継続することが大切で,段
相関を示すが,特に動脈硬化惹起性の LDL コレステロ
階的食事療法が効率的と考えられている.第 1 段階は,
ールの高値が重要である.従って,高コレステロール血
摂取エネルギーの制限[適正エネルギー摂取量=標準体
症を見た場合,LDL コレステロールの評価が必要であ
重 x25〜30(kcal)]と脂肪摂取量を全摂取エネルギーの
る.現在,LDL コレステロールを直接測定する方法が
20〜25 % にして,栄養素配分の適正化を行う.コレス
確立しているが,トリグリセライドが 400 mg/dL 以下
テロール摂取を 1 日 300 mg 以下にし,アルコール摂取
の場合,Friedewald の式[LDL コレステロール=(血清
量は 25 g 以下さらに,コレステロール低下作用のある
総コレテロール− HDL コレステロール−血清トリグリ
食物繊維を多めに取り,抗酸化食品を多めに取るよう奨
セライド)/5]から求めた LDL コレステロール値も臨床
める.第 2 段階では高脂血症の病型別指導を行う.高コ
表 22
患者カテゴリー
患者のカテゴリー別管理目標値 480)
脂質管理目標値(mg/dL)
LDL-C以外の
主要冠危険因子**
TC
LDL-C
A
0
<240
<160
B1
1
<220
<140
<200
<120
<180
<100
冠動脈
疾患
B2
なし
B3
3
B4
C
2
4以上
あり
HDL-C
≧40
その他の冠危険因子の管理
TG
<150
高血圧
糖尿病
高血圧学会の
糖尿病学会の
ガイドライン
ガイドライン
による
による
喫煙
禁煙
TC:総コレステロール,LDL-C:LDL コレステロール,HDLC:HDL コレステロール,トリグリセリド
*冠動脈疾患とは,確定診断された心筋梗塞,狭心症状とする.
**LDLC 以外の主要冠危険因子 加齢(男性≧45 歳,女性≧55 歳),高血圧,糖尿病(対糖能以上を含む),喫煙,冠動脈疾患の
家族歴,低 HDLC 血症(<40 mg/dL)
原則として LDLC 値で評価し,TC 値は参考値とする.
脂質管理は先ず,ライフスタイルの改善から始める.
脳梗塞,閉塞性動脈硬化症の合併は B4 扱いとする.
糖尿病があれば,他に危険因子がなくとも B3 とする.
家族性高コレステロール血症は別に考慮する.
54
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
表 23
高脂血症における食事療法の基本 480)
第 1 段階(総摂取エネルギー,栄養素配分およびコレステ
ロール摂取量の適正化)
1)総摂取エネルギーの適正化
適正エネルギー摂取量=標準体重*×25〜30(kcal)
2
*
:標準体重=[身長(m)]×22
2)栄養素配分の適正化
炭水化物 60 %
タンパク:15〜20 %(獣鳥肉より魚肉 大豆タンパク
を多くする)
脂
肪:20〜25 %(獣鳥性脂肪を少なくし,植物
性・魚類性脂肪を多くする)
コレステロール:1 日 300 mg 以下
食物繊維:25 g 以上
アルコール:25 g 以下(他の合併症を考慮して指導する)
そ の 他:ビタミン(C.E.B2.B12.葉酸など)やポ
リフェノールの含量が多い野菜,果物などの
食品を多くとる.(ただし,果物は果糖類の
含量も多いので摂取量は 1 日 80〜100 kcal
以内が望ましい)
第 1 段階で血清脂質が目標値とならない場合は第 2 段
階へ進む
第 2 段階(病型別食事療法と適正な脂肪量摂取)
1)高 LDLC 血症(高コレステロール血症)が持続する場合
脂質制限の強化 脂肪由来エネルギーを総摂取エネルギ
ーの 20 % 以下
コレステロール摂取量の制限:1 日 200 mg 以下
飽和脂肪酸/一価不飽和脂肪酸/多価不飽和脂肪酸の摂取
比率 3/4/3程度
2)高トリグリセライド血症が維持する場合
アルコール:禁酒
炭水化物の制限 炭水化物由来エネルギーを総摂取エ
ネルギーの 50 % 以下
単糖類 可能な限り制限 できれば 1 日 80〜100 kcal
以内の果物を除き調味料のみで使用とする.
3)高コレステロール血症と高トリグリセライド血症がとも
に持続する場合
1)と2)で示した食事療法を併用する.
4)高カイロミクロン血症の場合
脂肪の制限 15 % 以下
表 24
運動処方 480)
種
強
類:早歩・ジョギング・水泳・サイクリングなど
度:約 50 % 最大酸素摂取量
=138−年齢/2
・心拍数(拍/分)
・ボルグ・スケール:11〜13
(楽である〜ややきつい)
量・頻度:30〜60 分/日.3 回/週以上
表 25
20
19
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
ボルグ・スケール 480)
非常にきつい
かなりきつい
きつい
ややきつい
楽である
かなり楽である
非常に楽である
ール血症の場合に併用が必要となることが多い.また,
女性では閉経後に血清総コレステロール値が上昇する.
日本において,軽症高コレステロール患者 8009 例をス
タチン投与と食事療法併用群,食事療
法単独群に無作為に割り付けた一次予防試験(MEGA
Study)が 2004 年 3 月まで行われ,現在解析中である482).
なお,ホルモン補充療法(HRT)により LDL コレステ
ロールが 10〜15 % 低下する483)ことが知られているが,
心血管イベントの再発抑制効果は認められておらず,
HRT における乳癌や血栓症の増加を考慮すると,高脂
血症治療の選択肢として HRT は否定的である483).
レステロール血症の場合,コレステロール摂取を 1 日
3.高トリグリセライド血症
200 mg 以下にして,飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:
高トリグリセライド血症が虚血性心疾患の危険因子で
多価不飽和脂肪酸を 3:4:3 程度にする.脂肪摂取量を
あることは,以前から指摘されてきたが,高コレステロ
全摂取エネルギーの 20 %以下にする.薬物療法は 3 か
ール血症と虚血性心疾患の関連性に比べると報告は少な
ら 6 ヶ月間の食事療法によってもコレステロール値が治
く,予防試験としても,一次,二次ともに報告は少ない.
療目標に低下しない場合に行う.薬物としては,HMG-
高トリグリセライド血症における動脈硬化発症原因を考
CoA 還元酵素阻害薬(スタチン),レジン,プロブコー
えた場合,レムナント,small dense LDL,低 HDL コレ
ル等を用いる.コレステロール低下療法による虚血性心
ステロール血症,血液凝固線溶系異常をあげることがで
疾患の予防効果は,確立されているので,スタチンを第
き,また,インスリン抵抗性との関連性も指摘されてお
一選択薬とし,効果が不十分な場合レジン,プロブコー
り,原因が単純でないことも虚血性心疾患との関連性が
ル,ニコチン酸を追加する.特に,家族性高コレステロ
得られにくい理由と考えられる.1997 年以降,日本国
55
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
内で新たな報告はなく,したがって,これまでの日本人
診断基準値は「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」の
の調査結果からは,日本動脈硬化学会高脂血症診療ガイ
40 mg/dL 未満とする.メタボリックシンドロームの診
ドラインの診断基準値 150 mg/dL で妥当と考えられる.
断基準には,男女とも高トリグリセリド血症 150 mg/dL
日本人成人の血清トリグリセライド値が男性 88〜110
かつ/または低 HDL コレステロール血症 40 mg/dL 未満
mg/dL,女性 63〜105 mg/dL であり,最近報告された
が項目の一つとして加えられた481).低 HDL コレステロ
Copenhagen Male Study244),COLTS245),BIP Study484)は二
ール血症の治療としては,運動療法と肥満の是正,高ト
次予防試験ではあるが,血清トリグリセライド値が 100
リグリセライド血症の改善,糖尿病や耐糖能異常の治療
mg/dL を越すと,虚血性心疾患のリスクが上昇するこ
が大切である.薬物療法として HDL コレステロールの
とが示されている.日本はもちろん欧米諸国でも大規模
上昇作用のあるスタチン,フィブラート系薬剤やニコチ
な一次予防の介入試験のデータはなく,治療開始基準値
ン酸が有効と考えられるが,治療開始基準値や治療目標
と理想目標値については設定できない.
値を設定するには,今後,大規模臨床試験を行う必要が
高トリグリセライド血症の治療の基本は,高コレステ
ロール血症と同じく,食事療法である.血清トリグリセ
ライド値が 150 mg/dL 以上に対しては,まず食事療法
を行う.第 1 段階は摂取エネルギーの制限[適正エネル
5.他の脂質
Lp( a)や,高トリグリセライド血症,Ⅲ型高脂血症,
ギー摂取量=標準体重×25−30(kcal)]と脂肪摂取量を
複合型高脂血症における動脈硬化惹起性リポ蛋白と考え
全摂取エネルギーの 20〜25 % にする.アルコール摂取
られるレムナントと small dense LDL が虚血性心疾患の
を 1 日 25 g 以下にする.この際,肥満の是正が特に重
危険因子として広く認められつつあり,治療によって留
要であり,糖尿病や耐糖能異常の有無に注意する.第 2
意すべきものとする.レムナントは RLP コレステロー
段階では高トリグリセリド血症の場合,アルコール摂取
ルの測定が確立され,我が国における研究では虚血性心
を禁止し,糖の摂取量を 50 % 以下にし,二糖類や単糖
疾患を有する患者において,早朝空腹時の RLP コレス
類を出きるだけ少なくし,果物は 1 日 80−100 kcal 以内
テロールが高値であった群は将来の心事故の発生が高か
とする.高コレステロール血症と高トリグリセリド血症
った485).しかし,わが国においてはこれら危険因子と虚
がともに存在する時は高コレステロール血症で示した食
血性心疾患の疫学調査はまだ不十分であり,診断基準値
事療法を併用する.運動療法は高トリグリセリド血症を
や治療目標値の設定のためには,今後の大規模臨床試験
はじめメタボリックシンドロームに治療効果がある.軽
が必要である.現在我が国で,高レムナント血症患者に
い有酸素運動を毎日 30 分以上続けることが推奨される.
おける心血管イベント予防のためのスタチンまたはフィ
薬物療法はライフスタイルの改善で十分に血清トリグ
ブラート製剤を用いた大規模臨床試験が進行中である.
リセライド値が低下しない場合に行うが薬物療法開始基
準をどこに設定するか,現在のところそれを示す根拠が
なく,今の課題である.血清トリグリセライドを低下さ
せる薬物としては,フィブラート系薬剤,ニコチン酸,
f
高血圧
1.はじめに
EPA がある.BIP Study484)では血清トリグリセライド値
日本人における虚血性心疾患一次予防ガイドライン
が 200 mg/dL 以上の患者でフィブラート系薬剤の投与
のうち高血圧治療について概説する.最近の内外の高血
により,冠疾患イベントの抑制が認められた.
圧診療ガイドライン401,486,487,488)は,高血圧の管理におい
4.低 HDL コレステロール血症
血清 HDL コレステロール値が虚血性心疾患の発症率
て低いレベルの血圧値の維持が心血管病や腎疾患の予防
に重要であることを説いており,虚血性心疾患一次予防
における高血圧診療にも当てはまるものと考えられる.
と負の相関を示すことは,これまでの国内外の疫学調査
本稿は 2004 年日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライ
から明らかである.また,40 mg/dL 以下で有意に虚血
ン(高血圧学会ガイドライン)401)に準じて論述する.
性心疾患合併率が増大することも明らかであり,さらに,
一次予防試験の J-LIT では試験期間中の HDL コレステ
56
ある.
2.治療の目的
ロール値が 40 mg/dL 未満で有意に冠動脈イベントの危
高血圧治療の目的は,血圧の高値によってもたらされ
険度が上昇し,50 mg/dL 以上で有意に危険度が低くな
る心臓と血管の障害に基づく心血管病の発症とそれらに
っていた215).以上から,低 HDL コレステロール血症の
よる死亡を抑制することである.日本人でも高血圧が虚
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
血性心疾患の重要な危険因子であることは「2.日本人
野・壮瞥町研究490)では収縮期血圧 140 mmHg 以上,拡
における冠危険因子の評価 2」高血圧」の項で述べた.
張期血圧値 90 mmHg 以上で心血管病死亡および総死亡
高血圧は普遍的な危険因子であり高血圧の管理,治療は
のリスクがそれ以下の血圧値に比べて有意に上昇するこ
虚血性心疾患予防に極めて重要である.また,薬物療法
とを示し,日本人においても収縮期血圧 140 mmHg,拡
が虚血性心疾患の発症リスクを低下させることは多くの
張期血圧 90 mmHg を基準とする血圧分類に根拠を与え
国外における大規模無作為化比較試験の結果から示され
ている.なお,収縮期血圧と拡張期血圧が異なる分類に
ている276).
属する場合は高いほうの分類に組み入れる.
3.血圧測定と評価
a
c
血圧測定
高血圧の鑑別と重症度分類(リスクの評価と層別化)
まず高血圧の診療においては二次性高血圧の鑑別を行
通常は診察室(外来)での血圧測定が基本となる.血
わなければならない.二次性高血圧には根治可能なもの
圧測定の概要は以下の様になる.水銀血圧計,あるいは
があり,それぞれ特別な対処が必要なためである.二次
水銀血圧計と同程度の精度を有する自動血圧計を用い測
性高血圧の分類を(表 27)に示す.高血圧の管理には
定する.血圧測定には少なくとも 5 分以上の安静座位の
高血圧以外の危険因子の存在やその程度,高血圧に基づ
状態で行い測定 30 分以内のカフェイン含有物の摂取,
く現在の臓器障害の程度を知ることが重要である.特に
喫煙は禁止する.コルトコフ第 1 音を収縮期血圧値とし,
糖尿病は血管疾患発症に与える影響が大きい.他のリス
第Ⅴ音を拡張期血圧値とする.1〜2 分の間隔をおいて
クおよび臓器障害の程度と血圧分類(血圧の重症度)よ
複数回測定し安定した値(測定値の差が 5 mmHg 未満)
り層別化したリスクにより高血圧管理を行うものとする
を示した 2 回の平均値を血圧値とする.血圧に左右差が
(表 28).
ある場合は高い方の血圧を採用する.血圧測定には他に
表 27
家庭血圧測定,24 時間自由行動下血圧測定があるが必
二次性高血圧の分類
要に応じて採用する.
1.腎実質性高血圧
慢性糸球体腎炎,糖尿病性腎症,慢性腎盂腎炎,多発
性嚢胞腎など
b
2.腎血管性高血圧
動脈硬化,大動脈炎症候群,線維筋性異形成など
血圧値の分類
2003 年 WHO/ISH,JNC-VI および 2004 年日本高血圧
3.内分泌性高血圧
原発性アルドステロン症(腺腫・癌腫によるもの,特
発性アルドステロン症),先天性副腎皮質過形成,ク
ッシング症候群,褐色細胞腫,レニン産生腫瘍,甲状
腺機能亢進症,甲状腺機能低下症,先端肥大症など
学会ガイドラインはほぼ同一の血圧分類が採用されてい
る(表 26).収縮期血圧値 140 mmHg 以上または拡張期
血圧値 90 mmHg 以上が高血圧,正常血圧は収縮期血圧
値 130 mmHg 未満かつ拡張期血圧値 85 mmHg 未満と
4.血管性高血圧
大動脈縮窄症など
し,この間に正常高値血圧を置いている.また至適血圧
は収縮期血圧 120 mmHg 未満かつ拡張期血圧 80 mmHg
5.薬物誘発性高血圧
糖質コルチコイド,グリチルリチン製剤,漢方薬,エ
ストロゲン製剤,非ステロイド性抗炎症薬,カテコラ
ミン類似化合物,三環系抗うつ薬,サイクロスポリン,
エリスロポエチンなど
未満である.これは血圧値と心血管疾患発症のリスクは
正相関が認められるため,より低い値での血圧管理が理
想とされるためである.わが国の久山町研究 489),や端
表 26
成人における血圧の分類
分類
収縮期血圧
(mmHg)
至適血圧
<120
拡張期血圧
(mmHg)
かつ
<80
正常血圧
<130
かつ
<85
正常高値血圧
130〜139
または
85〜89
軽症高血圧
140〜159
または
90〜99
中等症高血圧
160〜179
または
100〜109
重症高血圧
≧180
または
≧110
収縮期高血圧
≧140
かつ
<90
d
リスク別の治療計画
二次性高血圧の除外診断,血圧以外の危険因子,臓器
障害,既存の血管病の有無を評価したならば(図 23)
に従い治療計画を立てる.この際正常血圧であっても高
血圧,虚血性心疾患の家族歴があるものは年 1〜2 回の
血圧測定を行う.
57
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
表 28
血圧分類
血圧以外のリスク要因
危険因子なし
糖尿病以外の 1〜2 個の
危険因子あり
糖尿病,臓器障害,心血管病
3 個以上の危険因子,のい
ずれかがある
高血圧患者のリスクの層別化
軽症高血圧
中等症高血圧
(140〜159/90〜99mmHg) (160〜179/100〜109mmHg)
重症高血圧
(≧180/≧110mmHg)
低リスク
中等リスク
高リスク
中等リスク
中等リスク
高リスク
高リスク
高リスク
高リスク
図 24
初診時の高血圧管理計画
血圧測定,病歴,身体所見,検査所見
二次性高血圧を除外
危険因子,臓器障害,心血管病,合併症を評価
生活習慣の修正を指導
血圧
130〜139/80〜89mmHg
低リスク群
中等リスク群
高リスク群
糖尿病・慢性腎疾患があれば
適応となる降圧薬治療
3カ月後に140/90mmHg
以上なら降圧薬治療
1カ月後に140/90mmHg
以上なら降圧薬治療
降圧薬治療治療
4.治療対象と降圧目標
a 治療対象
すべての高血圧は管理の対象となるが,80 歳以上の
超高齢者では血管病のリスクとならない場合がある.
なることが多く注意深い観察が必要である.
高血圧は代表的な生活習慣病であり,生活習慣の改善
による高血圧予防と降圧効果はすでに一部証明されてい
る.とくに高血圧に脂質代謝異常,糖尿病など他の危険
因子が加わっている場合は生活習慣の改善は重要な治療
b 降圧目標
若年者,中年者は至適あるいは正常血圧(130/85
mmHg),糖尿病や腎障害(慢性腎疾患)合併例では
130/80 mmHg 未満を降圧目標とし,高齢者では少なく
とも正常高値血圧(140/90 mmHg 未満)にすることが
望ましい.
法となる.生活習慣の改善として食塩摂取量の制限,適
性体重の維持,アルコール摂取量の制限,運動療法,禁
煙に注目しこれらの指導を行う(表 29).
5.降圧薬療法
降圧療法が心血管病発症を予防することは,過去の多
くの無作為化比較対照試験から明らかにされてきた.降
c 治療法の選択
58
圧薬の使用に際しては,各薬物の特徴および副作用(表
図 24 に示したように「生活習慣の修正(非薬物療法)」
30)を正しく把握し各患者の病態に合わせて最も適す
の開始と層別したリスクにより,ただちに「降圧薬療法」
るものを選択する.高血圧学会ガイドラインにおける第
の開始が必要か否かを判断する.生活習慣の修正のみで
一選択薬として推奨されるのは,Ca 拮抗薬,ACE 阻害
降圧目標に到達できる患者は少なく,薬物療法が必要と
薬,AII 受容体拮抗薬,利尿薬,β遮断薬,α遮断薬で
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
表 29
生活習慣の修正項目
るべきである.主な副作用は顔面紅潮,頭痛,動機,浮
1)食塩制限 6g/日未満
腫,便秘,歯肉増殖がある.ベンゾチアゼピン系では徐
2)野菜・果物の積極的摂取*
脈や房室ブロックにも注意が必要である.
3)適正体重の維持:BMI(体重(kg)
÷[身長
(m)]2
4)運動療法:心血管病のない高血圧患者が対象で有酸素
運動を毎日 30 分以上を目標に定期的に行う
5)アルコール制限:エタノールで男性は 20〜30 ml/日以
下女性は 10〜20 ml/日以下
6)禁煙
[2]ACE 阻害薬
降圧効果はレニン・アンジオテンシン系を阻害するこ
ととブラジキニンを増加させる作用によると考えられて
いる.臓器保護作用が強いこと,糖代謝改善作用が期待
生活習慣の複合的な修正はより効果的である
できることから糖尿病合併高血圧では有利な薬剤であ
*ただし野菜・果物の積極的摂取は重薦な腎障害を伴うもので
は高 K 血症をきたす可能性があるので推奨されない.また
果物の積極的摂取は摂取カロリーの増加につながることがあ
るので糖尿病患者では推奨されない.
表 30
積極的な適応
禁
忌
Ca 拮抗薬
脳血管疾患後,狭心 房室ブロック
症,左室肥大,糖尿 (ジルチアゼム)
病,高齢者
ARB
脳血管疾患後,心不 妊娠,高カリウム
全,心筋梗塞後,左 血症,両側腎臓脈
室肥大,腎障害,糖 狭搾
尿病,高齢者
ACE 阻害薬
利尿薬
やナトリウム・水貯留をきたすことはない.頻度の多い
副作用として空咳が,また致死的な副作用として血管神
経性浮腫による呼吸困難がある.妊婦には禁忌である.
主要降圧薬の積極的な適応と禁忌
降圧薬
る.降圧効果は末梢血管拡張に基づくが,心拍数の増大
脳血管疾患後,心不 妊娠,高カリウム
全,心筋梗塞後,左 血症,両側腎臓脈
室肥大,腎障害,糖 狭搾
尿病,高齢者
脳血管疾患後,心不 痛風
全,腎不全(ループ
利尿薬),高齢者
β遮断薬
狭心症,心筋梗塞後,喘息,房室ブロッ
頻脈,心不全
ク,末梢循環障害
α1遮断薬
高脂血症,
前立腺肥大
起立性低血圧
[3]AII 受容体拮抗薬
アンジテンシンⅡ 1 型受容体を選択的に阻害すること
により,末梢血管拡張,アルドステロン分泌抑制,末梢
神経末端からのノルアドレナリン放出抑制などにより降
圧をもたらす.AII 受容体拮抗薬は緩徐であるが確実な
降圧降下を示し,利尿薬や Ca 拮抗薬などとの併用で優
れた相加・相乗効果を発揮する.ACE 阻害薬と同様に
優れた心,腎の保護効果が期待される.
[4]利尿薬
サイアザイド系利尿薬,カリウム保持性利尿薬および
ループ利尿薬に分類される.ナトリウムと水の再吸収を
抑制し循環血液量を減少させて降圧効果をもたらし,心
血管病の予防に有用である491).降圧効果の維持は末梢血
管抵抗の低下によってなされる.サイアザイド系利尿薬,
ループ利尿薬は低カリウム血症を起こしやすく,痛風,
ある.薬剤の使用開始には,正書や薬剤添付文書にあた
高脂血症,耐糖能異常など代謝面の悪影響があり注意が
りその性質を熟知することが必要である.また降圧目標
必要である.カリウム保持性利尿薬では勃起障害,女性
を達成できない場合は,高血圧専門家の意見を求めるこ
化乳房などの副作用が知られており高カリウム血症にも
とも肝要である.
注意を要する.
選択薬剤
[1]Ca 拮抗薬
[5]β遮断薬
本薬剤は心拍出量低下,レニン産生低下,中枢からの
現在降圧薬として用いられているのはジヒロドピリジ
交感神経活動の放出抑制などの降圧機序が想定されてい
ン系 Ca 拮抗薬とベンゾチアゼピン系 Ca 拮抗薬である.
る.β遮断薬はβ 1 受容体選択性,内因性交感神経刺激
Ca 拮抗薬の特徴は比較的確実な降圧が得られ,脳,冠,
作用(ISA),脂溶性か水溶性かの差異などにより多く
腎,末梢循環を良好に保ち,糖・脂質代謝への悪影響が
に分類される.β遮断薬の中でα遮断作用が強いものは
少ないことである.しかしながら短時間作動型のジヒロ
αβ遮断薬に分類される.虚血性心疾患の予防,心不全
ドピリジン系 Ca 拮抗薬では降圧による反射性の交感神
の予後改善の面からは ISA のないβ遮断薬の使用が勧め
経活性亢進から心拍数上昇や心仕事量の増大をおこすと
られる.副作用として気管支喘息の誘発や慢性閉塞性肺
され,長期にわたる高血圧管理には長時間作動型を用い
疾患の悪化,徐脈や房室ブロック,活力の低下や運動能
59
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
力低下がある.インスリン使用中の糖尿病患者では低血
は正常域を目標とする.HbA1c は正常上限+ 1 % 以内
糖発作の発見の遅れも問題になる.β遮断薬の長期使用
を目標とする493−495).
者では急な服用中止で狭心症の誘発や一過性の血圧上昇
UKPDS ではより厳しい血糖コントロールにより心筋
を認める中断症候群をおこすことがあり注意を要する.
梗塞発症のリスクは有意ではなかったが減少している
.血糖コントロールの閾値に関しては欧米のデータで
284)
[6]α遮断薬
は,空腹時血糖,HbA1c とも明らかな閾値を認めず,
α 1 受容体を選択的に阻害することによりノルアドレ
血糖コントロールが悪ければ悪いほどリスクが高まる結
ナリン作用を遮断し血管拡張作用を発揮する薬剤であ
果が得られている 496−498).日本人大血管合併症の成績で
る.α遮断薬には糖,脂質代謝を改善し,また前立腺肥
は 2,424 名の対象者を 8 年間追跡した久山町前向き研究
大の排尿障害を改善する利点がある.また,早朝高血圧
で糖尿病患者の脳梗塞を含む初回発症危険率が,空腹時
抑制には作用時間の長いα遮断薬の就寝前投与なされ
血糖 120 mg/dL 以上になると有意に上昇した499).血糖
る.しかしながら,うっ血性心不全が増加する可能性が
の正常化により冠危険因子である脂質異常が改善するこ
指摘されている491).
と,また細小血管合併症の発症,進展が予防できること
からもできるだけ正常値に近づける厳格な血糖コントロ
ールが虚血性心疾患の一次予防のため推奨される.
[7]その他
上記以外に中枢性交感神経抑制薬(α2 受容体作動
薬),末梢性交感神経抑制薬(レセルピン類),ヒヒドラ
ラジンなどがあるが最近は使用量が減っている.
糖尿病患者における高血圧の治療に際しては,正常高
値血圧(130〜139/85〜89 mmHg)の患者では生活習慣
6.まとめ
の改善を 3〜6 ヶ月指導し,効果不十分な場合には薬物
高血圧は動脈内圧の上昇のみを来たしている疾患では
による降圧治療を開始する.140/90 mmHg 以上の高血
なく,同時に遺伝的,後天的に種々の代謝異常,構造異
圧では,生活習慣の改善を指導しながら,同時に薬物治
常が同時に存在することにより特徴づけられる疾患であ
療を開始する.目標血圧は 130/85 mmHg 未満とする.
る.従って,脂質代謝異常,耐糖能低下,インスリン抵
第一選択薬は,ACE 阻害剤,持続性ジヒドロピリジ
抗性,高インスリン血症,肥満,腎予備能の機能的低下,
ン系 Ca 拮抗剤,α1 遮断薬を用いるが,個々の症例に
平滑筋の構造異常,電解質輸送異常など高血圧に並存す
おいてこれらの薬剤の糖,脂質代謝,インスリン感受性,
る因子も当然冠動脈疾患の発症・進展に影響する.これ
心血管系や腎臓への影響を考慮すべきである.サイアザ
らを踏まえた管理が必要である.
イド系利尿薬やβ遮断薬も選択から除外されるべきでは
g
ない493−496).
糖尿病
日本高血圧学会のガイドラインでは糖尿病患者の降圧
目標血圧を 130/85 mmHg 未満としている.HOT trial292)
1.はじめに
では降圧目標血圧値が低いほど心筋梗塞発症率は低い傾
糖尿病患者の心筋梗塞初回発症リスクは,既に心筋梗
向が認められ,この傾向は糖尿病合併例で顕著であり,
塞の既往のある非糖尿病患者の 7 年間の心筋梗塞再発率
主要心血管事故のリスクは降圧目標値が高い群(達成拡
と同等に高率である
張期血圧 85.2 mmHg)に比し低い群(同血圧 81.1 mmHg)
.従って全ての糖尿病患者は,陳
280)
旧性心筋梗塞患者と同様に考えて危険因子のコントロー
では 51 % 低下した.久山町研究では脳梗塞を含む心血
ルを行うべきである.糖尿病患者の虚血性心疾患一次予
管疾患発症危険率が,非糖尿病群では収縮期血圧 140
防においては,血糖コントロールの改善に加えて,他の
mmHg 以上で有意に上昇するのに対し,糖尿病群では
共存する冠危険因子を厳格にコントロールすること,す
130 mmHg 以上で上昇した299).また糖尿病大血管障害多
なわち冠危険因子となるインスリン抵抗性などに対する
施設共同研究(MSDM)の前向き研究では拡張期血圧
有効な薬剤の使用や生活習慣の改善といった多面的なア
80 mmHg 以上で発症頻度有意な増加を認めた500).これ
プローチが必要となる492).
らの結果からも降圧目標血圧 130/85 mmHg 未満の日本
2.血糖コントロール
厳格な血糖コントロールをすべきである.空腹時血糖
60
3.血圧コントロール
人への適用は妥当なものと考えられる.
使用する薬剤については,日本高血圧学会のガイドラ
インで,糖尿病に対しての積極的な適応薬として ACE
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
阻害薬,Ca 拮抗薬,α1 遮断薬が取り入れられている.こ
疾患二次予防に関しては,HMG-CoA 還元酵素阻害剤に
れらの薬剤はインスリン抵抗性を改善し,また脂質代謝
よるコレステロール低下療法の有効性は非糖尿病者と同
にも悪影響をおよぼさないか,むしろ改善させる
等に有効であると考えられる.一次予防に関しては大規
.
501−506)
さらに欧米の前向き研究でも ACE 阻害薬や Ca 拮抗薬
模研究でコレステロール低下療法の有効性が報告されて
の糖尿病患者の虚血性心疾患発症予防に対する有用性が
いるが 208,513),糖尿病患者でのサブ解析はいずれも数が
明らかにされている 507−509).サイアザイド系利尿薬,β
少なく有意な結果には至っていない.小規模ながら糖尿
遮断薬を中心に用いた降圧でも糖尿病患者の心血管事故
病患者 164 名のフィブラート系薬剤での無作為コントロ
発症予防効果が認められている
.ただし糖尿病患
ール試験による一次予防研究 514)では,主に高トリグリ
者にこれらを使用する際には,インスリン抵抗性や脂質
セライド血症が是正され,かつ安静時心電図虚血性変化
代謝を悪化させたり,β遮断薬においては経口血糖降下
および心筋梗塞の発症危険率の有意な減少を認めてい
薬やインスリン治療中の低血糖の症状が減弱されること
る.久山町研究では,糖尿病群で総コレステロール 220
があるので注意が必要である.一方糖尿病合併高血圧患
mg/dL 以上の群および LDL コレステロール 120 mg/dL
者の心血管系事故のリスク軽減に持続型 Ca 拮抗薬に比
以上の群で脳梗塞を含めた大血管合併症発症のリスクが
し ACE 阻害剤が有益との報告があるが
有意に上昇していた499).MSDM 前向き研究では HDL コ
290,291)
,この点に
510,511)
関してさらなる研究が必要である.
4.血清脂質のコントロール
食事,運動療法に加え,血糖値コントロールがある程
度改善されても脂質異常があり,望ましい値にならない
場合には,薬物療法を考慮する.
レステロール 50 mg/dL 未満で大血管障害の有意な発症
頻度の増加を認めている500).日本人糖尿病患者において
も厳格な脂質管理が虚血性心疾患の発症を予防し得ると
考えられる.
5.生活習慣の改善
目標値は,総コレステロール 180 mg/dL 以下,LDL コ
喫煙,食生活,運動習慣などの生活習慣を改善するこ
レステロール 100 mg/dL 以下,トリグリセライド 150 mg/
とにより,冠動脈硬化の改善や心事故発症危険率を低下
dL 以下,HDL コレステロール 40 mg/dL 以上である.
させることが可能である515).
薬物療法においては,高コレステロール血症に対して
は,HMG-CoA 還元酵素阻害剤を考慮する.高トリグリセラ
イド血症に対してはフィブラート系薬剤を考慮する493−495).
糖尿病患者における高コレステロール血症の治療,特
[1]禁
煙
禁煙は虚血性心疾患の一次予防に効果があり516),糖尿
病患者においても推奨される493−495).
に加齢,冠動脈疾患の家族歴,喫煙,高血圧,高トリグ
喫煙は糖尿病患者においても独立した虚血性心疾患の
リセライド血症,低 HDL コレステロール血症のリスク
危険因子となり 278,287),さらにインスリン抵抗性を増悪
を合わせ持つ糖尿病患者の治療では,日本動脈硬化学会
させる517).
の高脂血症治療ガイドラインでの冠動脈疾患を有する患
者に対する治療目標値と同等の厳格なコレステロール管
理が求められる
.
493,495)
[2]体重の適正化
肥満の是正を行うべきであり,食事療法,運動療法で
欧米の HMG-CoA 還元酵素阻害剤による二次予防前
body mass index<22 にコントロールすべきである493).肥
向き研究,4S study295)では臨床的に診断された糖尿病患
満はインスリン抵抗性を惹起すると同時に,高血圧,脂
者 202 例のコレステロール低下療法による冠動脈疾患発
質異常を増悪させる.
症危険率の低下は 55 % で有意に低下,またアメリカ糖
久山町研究では,糖尿病患者の BMI 23 以上で,脳梗
尿病学会の 1997 年診断基準を導入しての新たなサブ解
塞を含めた大血管障害発症危険率が有意に上昇した499).
析512)では,空腹時血糖 126 mg/dL 以上で診断された患
また MSDM 前向き研究では BMI 24 以上で発症頻度の
者を含む糖尿病患者 483 名で,42 % の有意な低下を認
有意な上昇を認めた500).
めている.CARE study296)では糖尿病患者 586 名で 25 %
の有意な低下を認め,LIPID study297)では糖尿病患者 782
[3]運
動
名で 19 % 低下と有意ではなかったものの,糖尿病の存
2 型糖尿病患者においては,運動によりインスリン抵
在の有無によるリスク減少率には非糖尿病群と有意な差
抗性,血糖コントロール,脂質代謝,高血圧の改善が認
異は認めらなかった.これらから糖尿病患者の虚血性心
められるため,治療計画の一部として日常生活の中で段
61
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
減量に焦点を絞った食事・運動療法を厳重に指導,管理
階的に運動療法を行うべきである.
心血管疾患の危険性が高い場合,明らかな末梢および
することが極めて重要である.肥満度が欧米のように著
自律神経障害のある場合,進行した細小血管障害がある
しくなくとも軽度の過栄養状態で多くの健康障害を伴い
場合には,事前に運動療法の危険性を評価し,有益性が
やすい日本人においては,適正体重の維持とウエスト周
上回る場合には,特別な運動処方のもとに注意深く行う
囲径を指標にした保健指導が必要である.運動療法によ
必要がある.
りインスリン感受性が改善し,HDL-コレステロールは
運動の頻度はできれば毎日,持続時間は 20〜60 分,
強度は中等度の運動が一般的には勧められ,運動の前後
クシンドロームの個々の要因に関する現行のガイドライ
に準備運動,整理運動を行う
ンはすべて,生活習慣の改善が第一選択の治療であるこ
.
493−495)
とを強調している.原則的には内臓脂肪蓄積を減少させ
6.アスピリン療法
ることにより個々の要因は改善するが,それぞれの病態
糖尿病患者における虚血性心疾患の一次予防におい
は独自の遺伝的,後天的要因によっても調節され,各要
て,冠危険因子を合わせ持つ糖尿病患者には,禁忌でな
素の表現型としては異なることもあり,症例に応じて
い限りアスピリンの使用が考慮されるべきである
.
個々の保健指導を考慮することが望ましい.また,喫煙
アスピリンの低容量服用は心筋梗塞発症一次予防に有
は心血管イベントの独立した危険因子であり,メタボリ
効であり ,糖尿病患者を対象にしたサブ解析でもアス
ックシンドロームの患者が喫煙をすることは,動脈硬化
ピリン服用による心筋梗塞発症予防効果は,非糖尿病者
の発症や進展をさらに増大させることになる.喫煙リス
と同様に認められた518).また糖尿病網膜症を有する患者
クの教育,禁煙の目標を設定して禁煙指導を行う必要も
でも禁忌ではない
ある.
493−495)
518)
.
519,520)
h
メタボリックシンドローム
はじめに
メタボリックシンドロームに対する介入の第一目標
欧米における臨床試験では,耐糖能異常(Impaired
Glucose Tolerance: IGT)の患者を対象とした食事療法と
運動療法による積極的な生活習慣の介入によって,非介
入群と比べ新規糖尿病の発症や新規メタボリックシンド
ロームの発症を抑制する報告がされている521,522).また,
は,臨床的帰結としての心血管疾患の予防である.過体
ライフスタイルの改善は CRP 上昇や PAI-I 増加などの
重と肥満,身体活動の不足および動脈硬化促進性の食事
易炎症性状態や易血栓性状態の改善をもたらすことが報
がメタボリックシンドロームの発症を促進する第一の危
告されている523,524).
険因子であり,過剰栄養摂取の制限や身体活動度の増加
などのライフスタイル改善がメタボリックシンドローム
に対する介入手段として最も重要である.これによって,
②インスリン抵抗性に対するアプローチ
運動療法によってインスリン感受性が改善し,メタボ
内臓脂肪蓄積(腹腔内脂肪)を減少させ,インスリン抵
リックシンドロームの総合的な治療効果があることは前
抗性,耐糖能異常,動脈硬化惹起性リポ蛋白異常,高血
述した.薬物療法としてインスリン抵抗性を改善させる
圧などのマルチプルリスクを総合的に軽減し,CRP 上
薬剤としては,メトフォルミンとチアゾリジン誘導体が
昇や PAI-I 増加などの易炎症性状態や易血栓性状態を改
あげられる.日本において現在インスリン抵抗性の保険
善することが目標である.個々のリスクに対する保健指
適応があるのはチアゾリジン誘導体だけであるが,メト
導,薬物療法については各学会のガイドラインを参考に
フォルミンは IGT 患者における新規メタボリックシン
してすすめられるべきであるが,常にリスクを総合的に
ドロームの発症予防効果521)や 2 型糖尿病発症予防効果
評価して診療にあたるべきで,リスクそれぞれの治療に
のほか,肥満糖尿病患者における心血管疾患発症率を抑
のみ集中することにより,いたずらに多数の薬剤を投与
制することが報告されている525).メトフォルミンとチア
することは避けなければいけない.
ゾリジン誘導体ともにメタボリックシンドロームの心血
①ライフスタイル(生活習慣)改善
62
増加,トリグリセライドは低下する.実際にメタボリッ
管疾患抑制に関する報告は未だないが,2 型糖尿病の発
症を遅らせ心血管系リスクを軽減させる可能性があり,
内臓脂肪の蓄積を基盤として発症するメタボリックシ
現在いくつかの臨床研究が進行している.また,RA 系
ンドロームにおいては,個々の病態をそれぞれ治療する
抑制薬や,ある種のスタチンでは治療中の新規糖尿病発
ことよりも,その上流に位置する肥満,特に内臓脂肪の
症が抑えられたとする報告もある526−528).
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
糖尿病家族歴をもつ症例では,将来的にインスリン分
奨されている 130/80 mmHg 以下へのコントロールが必
泌不全をきたし糖尿病を将来する可能性があるので,た
要である.具体的な降圧剤の選択においては,いずれの
とえインスリン抵抗性の合併がなくとも充分な栄養指導
降圧剤がメタボリックシンドローム治療に特別な効果を
が必要である.糖尿病の発症はさらに心血管疾患の発症
有するか定まっていないが,インスリン抵抗性への影響
率を高める.糖尿病における心血管疾患の予防対策は未
を配慮することが必要である.実際,高用量の利尿薬,
だ充分に確立されていないが
,メタボリックシンドロ
β遮断薬の使用はインスリン抵抗性に対する悪影響が報
ームの病態を呈する糖尿病では,血糖値を適切にコント
告されている 537,538).しかし,β遮断薬は冠動脈疾患の
ロールしてガイドラインに示されたヘモグロビン A1c
確立している患者において心保護作用があり,もはや 2
レベルを保つこと
529)
に加え,ウエスト径を指標として
型糖尿病患者では禁忌ではない.一方,レニン・アンジ
ライフスタイル改善を指導し,高血圧,リポ蛋白異常を
オテンシン系(RA 系)抑制薬やα遮断薬は改善させる
総合的に管理することによって心血管疾患を予防しうる
ことが報告されている539−542).ある種のβ遮断薬では RA
可能性がある.
系抑制薬との併用によって,血糖コントロールに対する
530)
③動脈硬化惹起性リポ蛋白異常に対するアプローチ
動脈硬化惹起性リポ蛋白異常を有する患者では,生活
習慣の改善以外に加えて薬物療法を考慮する必要があ
る.具体的な治療薬としてはニコチン酸誘導体とフィブ
ラート系薬剤や,トリグリセライド低下作用を有する
EPA(エイコサペンタエン酸)およびスタチン系薬剤が
悪影響を認めずにインスリン抵抗性改善作用を示すとい
う報告もある.更に,最近 RA 系抑制薬の投与によって,
高感度 CRP の低下や尿中微量アルブミン排泄量の減少
を認める報告もされている543−546).
③その他参考となる指標
1)易炎症性状態と易血栓性状態
あげられる.しかし LDL コレステロールが脂質低下療
易炎症性状態の特徴は,急性期反応性物質(CRP と
法の第一目標であるので,臨床の現場では LDL コレス
フィブリノーゲン)とサイトカイン(TNF-αや IL-6 など)
テロール低下薬との併用療法という問題点も生じ,特に
の上昇である.易炎症性状態を評価する最も実際的な方
スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤の併用は重篤な副
法は hsCRP の測定である.スタチン系薬剤は hsCRP を
作用が発生する可能性があり,対象と薬剤選択に関して
低下させ,コレステロール低下作用とは独立した心血管
は充分な注意が必要である.フィブラート系薬剤は脂肪
イベントに対する抑制効果が報告されている 547−549).ま
酸代謝を活性化し,高トリグリセライド血症,低 HDL
た,易血栓性状態の特徴はフィブリノーゲンと PAI-1 上昇
コレステロール血症を改善させ,レムナントリポ蛋白を
で示される.フィブラート系薬剤は,CRP 低下作用も
減少,small dense LDL の生成抑制などの作用によりメ
報告されているが550),フィブリノーゲン低下や PAI-1 産
タボリックシンドロームの心血管疾患リスクを減少させ
生低下などの抗血栓作用についても報告されている551).
ることが示唆されている 531)が,さらに充分なエビデン
さらにチアゾリジン誘導体でもフィブリノーゲンや
スが望まれる.スタチンはアポ B 含有リポ蛋白を減少
PAI-1 低下作用が報告されている552,553).易炎症性状態お
させ
,サブ解析においてメタボリックシンドロームに
よび易血栓性状態を改善する目的で,低容量アスピリン
おける心血管疾患リスクを減少させることが報告されて
が一次予防においても心血管疾患予防に有用であること
いる320,533,534).また,インスリン抵抗性改善薬であるチ
が報告されている554).
532)
アゾリジン誘導体にはトリグリセライドや遊離脂肪酸低
下作用,HDL コレステロール増加作用とともに small
dense LDL の生成を抑制するなどの脂質改善作用も報告
されている
.ニコチン酸誘導体はフィブラート系
535,536)
2)微量アルブミン尿
ACE 阻害薬や ARB による微量アルブミン尿改善作用
が大規模臨床試験の結果からは報告されている555).
また,
薬剤と同様の特徴を有し,特に HDL コレステロール上
ある種のスタチンやチアゾリジン誘導体で同様の効果が
昇に有効であるが,高容量では血糖値を上昇させること
報告されている.
があるので注意が必要である.
i
血液凝固系
④高血圧に対するアプローチ
糖尿病の確立しているメタボリックシンドローム患者
の血圧管理はより重要で,高血圧ガイドラインにより推
1.虚血性心疾患における凝固系の役割
フィブリノーゲンは虚血性心疾患の危険因子になり
63
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
うることがをはじめ各種大規模試験で報告されてき
Physicians' Health Study518)などにおいて,アスピリンは
た556−558).また,第Ⅷ因子,von Willebrand factor なども
低用量でも有効であることが示されている.日本におい
同様に危険因子になりうるとした報告がなされてき
てアスピリンの用量による効果の差を検討した研究はな
た .一方,虚血性心疾患患者においては線溶系活性の
い.副作用としては,消化管出血などの出血傾向のほか,
低下が認められるという報告や,心筋梗塞患者において
胃腸障害などが見られる.日本では,虚血性心疾患での
血漿 plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の値が上
保険適応はない.
559)
昇しているなどの報告が見られている560).さらに,急性
冠症候群の発症には血栓形成の関与が大きいことが知ら
[2]ジピリダモール
.これらのことから虚血性心疾患のイベ
ジピリダモールは単独で使用されることは少なく,ア
ント発症抑制に血液凝固系を修飾することが有効である
スピリンなどとの併用で用いられることが多い.用量は
と考えられている.
200 mg〜400 mg/日である.
れている
561,562)
2.経口抗凝固剤,抗血小板薬の使用法
[3]チクロピジン
一日 200 mg 分 2 あるいは一日 300 mg 分 3 で用いら
a ワーファリン
抗凝固療法のモニタリングにはプロトロンビン時間が
れる.副作用としては,肝障害などをきたすことが知ら
用いられる.プロトロンビン時間は 4 つのビタミン K
れている.重篤な肝障害や血小板減少をきたすこともあ
依存性の凝固因子前駆体のうち 3 つ(プロトロンビンお
る.閉塞性動脈硬化症と脳血管障害後遺症で保険適応が
よびⅦ,Ⅹ因子)の低下に応じて延長する.測定は試薬
ある.
の調整法により反応性が大きく変動する
563)
ため,プロ
トロンビン時間の標準化が行われてきた.国際標準比
(international normalized ratio;INR)が定められ564),INR
を用いることにより異なる施設間でのワーファリンコン
トロールの比較が可能となっている.
アメリカの基準では INR 2.0〜3.0 を低治療域とし,
[4]シロスタゾール
一日 150 mg 分 3 ないしは一日 200 mg 分 2 で用いら
れる.閉塞性動脈硬化症に保険適応がある.
3.抗血小板剤,抗凝固薬を用いた大規模臨床試験
INR 2.5〜3.5 を高治療域としている565).日本においては
虚血性心疾患,特に心筋梗塞症の予防を目的としてい
現段階では定まった基準はない.機械式人工弁などの塞
くつかの大規模臨床試験が施行されてきた.一次予防に
栓症に対する高リスク患者での使用以外は,低治療域
関しては欧米における次に示す,4 つの試験が知られて
(ないしはそれ以下)でのコントロールとするのが出血
のリスクを低減させるのに有効と考えられる(表 31).
表 31
経口抗凝固薬の推奨治療域 432)
●
INR2.0〜3.0:静脈血栓の予防(高リスク手術)静脈血栓
の治療 肺塞栓の治療 全身性塞栓の予防(生体人工弁,
機械人工弁,急性心筋梗塞,心臓弁膜症,心房細動)
●
INR2.5〜3.5:機械人工心臓弁(高リスク)
いる.
[1]Physicians' Health Study518):22,071 名の医師をアス
ピリン群とプラセボ群にわけ,平均 60.2 ヶ月にわ
たりアスピリン 325 mg を隔日投与した無作為比較
二重盲検試験である.致死的,非致死的心筋梗塞の
発症はアスピリン群が有意に低く,アスピリンが心
筋梗塞の一次予防に有効であることが確認された.
しかし,全心血管系疾患による死亡はアスピリン群
とプラセボ群で差を認めなかった.
b 抗血小板薬
抗血小板剤は抗凝固療法と異なり,一定の用量での治
療が行われる.
[2]British Doctors' Trial566):5,139 名の医師をアスピリ
ン(500 mg 連日)群と非投与群に分け,6 年間の
追跡を行った.非致死性心筋梗塞,脳血管障害,心
筋梗塞と脳卒中による死亡率いずれも両群間で差は
[1]アスピリン
日本人においては小児用バファリン 1 錠(81 mg)か
64
認められなかった.
[3]Thrombosis Prevention trial567):虚血性心疾患のリス
ら 2 錠(162 mg)を用いるのが妥当と考えられている.
ク(喫煙,家族歴,肥満,高血圧,高脂血症,血漿
それ以上の高用量になるとアスピリンジレンマにより,
フィブリノーゲン値などのリスクを総合評価したも
血栓傾向の増大をきたす可能性が懸念される.
の)が高い男性 5,499 人をワーファリン+アスピリ
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
ン群,ワーファリン群,アスピリン群(75 mg 連日),
一次予防に関する日本人のデータはほとんどない.し
プラセボ群に分け,10 年間追跡した.アスピリン
かし欧米の臨床試験の結果をみると,日本人でも虚血性
投与群はアスピリン非投与群に比べ虚血性心疾患の
心疾患のリスクを数多く持つ患者において抗血小板薬を
発症率が 20 % 低かった.ワーファリン投与群は非
投与することは虚血性心疾患の一次予防に有効である可
投与群に比べ,虚血性心疾患の発症率は 21 % 低か
能性が高いと考えられる.しかし,すべての人に抗血小
った.ワーファリン+アスピリン群はプラセボ群に
板薬を投与することは現実的ではなくまたその必要もな
比べ虚血性心疾患発症率は 34 % 低かった.アスピ
い.どのような患者群がもっとも利益を受けるかは現時
リンは主に非致死性虚血性心疾患を,ワーファリン
点で明らかでないが,少なくとも虚血性心疾患の危険因
は主に致死性虚血性心疾患を低下させたと結論して
子を数多く有する患者においては抗血小板薬の投与を考
いる.
慮すべきであろう.
[4]Hypertension Optimal Treatment(HOT)trial
568)
:
18,790 名の高血圧患者を対象に行った試験で,75
mg のアスピリンとプラセボの比較を行った.アス
j
精神保健
ストレスが虚血性心疾患の発症に関する要因であるこ
ピリンは主要な心血管イベントを 15 % 減少させ
とは,明らかとなっている.従って,本ガイドラインに
た.この試験では脳梗塞の発症率には差が認められ
「精神保健」としてストレスへの対応を記載する事が妥
なかった.致死性の出血は,両群で同様の比率で見
当と考えられ,作業量を工夫し,長時間労働を避け,休
られたが,致死性でない大出血はアスピリン群に有
日・休息を確保することを目標としたい.さらに心理的
意に多く認められた.
緊張状態の改善を得るために,仕事の要求度と裁量の自
由度比を下げ,さらに職場における社会的支援を増やす
これらの臨床試験の結果を総合すると,ある一定以上
ことが望ましいと考えられる.ただし,職業性ストレス
のリスクのある患者においては,低用量アスピリン(ワ
の評価法については,現在米国や日本でもいくつかスケ
ーファリンを併用してもよい)は虚血性心疾患の一次予
ール評価法が出来ているが,ストレス量と健康影響との
防に有効であると考えられる.
関係は直線的であり,どの点を数値目標とするか,まだ
4.一次予防における抗血小板剤,抗凝固薬の使用
日本においては虚血性心疾患や脳血管障害を対象にし
明確な基準を決定するに至ってはいない.
また,以前よりタイプ A 行動パターンが急性心筋梗
塞発症の危険因子となることが知られている377).従って,
た一次予防の試験はないが,二次予防に有効な薬剤につ
タイプ A 行動に気づき,それをコントロールすること
いての詳細な検討があり,抗血小板剤の有用性が確認さ
を目標としたい.タイプ A 行動判定のためには,13 質
れている569).したがって,虚血性心疾患の二次予防に抗
問に答えて総合点でタイプ A 得点を計算する JAS short
血小板薬を使用することは推奨される.
from N を用いることができる.
附表 1
虚血性心疾患の危険因子
01.加齢(男性 45 歳以上,女性 55 歳以上)
02.冠動脈疾患の家族歴
03.喫煙習慣
04.高血圧(収縮期血圧 140 mmHg 以上,あるいは拡張期血圧 90 mmHg 以上)
05.肥満(BMI 25 以上かつウエスト周囲径が男性で 85 cm ,女性で 90 cm 以上)
06.耐糖能異常(境界型および糖尿病型)
07.高コレステロール血症(総コレステロール 220 mg/dL 以上,あるいは LDL コレステロール 140 mg/dL 以上)
08.高トリグリセライド血症(150 mg/dL 以上)
09.低 HDL コレステロール血症(40 mg/dL 未満)
10.メタボリックシンドローム
11.精神的,肉体的ストレス
65
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
附表 2
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
目標
欧米
日本
特記事項
欧米
日本
生活習慣
喫煙
完全な禁煙を実施
Ⅲ
Ⅲ
受動喫煙も回避すべき
Ⅲ
Ⅲ
運動
中等度の運動を週 3〜4 回,
1 回 30 分以上
Ⅲ
Ⅲ
できれば毎日行うことが望ましい
Ⅲ
Ⅶ
栄養
糖質エネルギー比を 50 % 以上に
脂肪エネルギー比を 20〜25 %に
脂肪酸摂取バランスに注意
食物繊維を十分に摂取
食塩摂取 10 g/日未満に
抗酸化物質を摂取
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅶ
Ⅶ
Ⅶ
Ⅶ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅶ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅶ
Ⅶ
Ⅲ
Ⅲ
ホモシステインを減らす
ミネラルを不足なく摂取
Ⅲ
Ⅲ
Ⅶ
Ⅲ
飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪
酸= 3:4:3,
n-6/n-3 比を 3〜4 に
20〜25 g/日
高血圧合併時は 6 g/日未満に
ビタミンE,ビタミンC,カロテノイド
ポリフェノール
葉酸,ビタミンB2,ビタミンB6,ビタミンB12
カルシウム,カリウム,マグネシウム,セレン
Ⅲ
Ⅲ
Ⅶ
Ⅲ
BMI を 25 未満に
BMI 25 以上の場合,
ウエスト周囲径を男
性では 85 cm 未満に,
女性では 90 cm 未
満に
Ⅲ
Ⅵ
糖尿病患者は BMI を 23 未満に
Ⅲ
Ⅵ
精神保健 作業量を工夫し,長時間労働を避け,
休日・休息をきちんと取る
タイプA行動に気づきコントロールする
Ⅲ
Ⅲ
仕事の要求度と裁量権のバランスを確保する
職場における社会的支援を増やす
Ⅲ
Ⅲ
若年者,
中年者では130/85mmHg 未満に, O
糖尿病患者では 130/80mmHg 未満に
Ⅲ
高齢者では 140/90 mmHg 未満が望ましい
O
Ⅲ
O
O
O
O
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
糖尿病もしくは高脂血症以外の危険因子を 3 つ
以上有する場合は総コレステロール 200 mg/dL
未満, LDL コレステロール 120 mg/dL 未満に
レムナント,small dense LDL,Lp
(a)に留意
O
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
O
Ⅲ
総コレステロールを 180 mg/dL 未満
LDL コレステロールを 100 mg/dL 未満
O
Ⅲ
O
Ⅲ
糖尿病患者では他の危険因子を合わせ持つ場合,
投与を考慮
O
Ⅲ
体重
危険因子
高血圧
高脂血症 総コレステロール 220mg/dL 未満
LDL コレステロール 140mg/dL 未満
トリグリセライド 150mg/dL 未満
HDL コレステロール 40mg/dL 以上
糖尿病
空腹時血糖 110 mg/dL 未満
HbAlc 6.5 % 未満
治療
アスピリン 危険因子を多数有する患者で投与を考慮
エビデンスのグレーディング
0 .メタアナリシス
Ⅰ.大規模なよく管理された無作為対照比較試験
Ⅱ.小規模だがよく管理された無作為対照比較試験
Ⅲ.よく管理されたコホート研究
Ⅳ.よく管理されたケースコントロール試験
Ⅴ.非比較対照試験または対照の少ない比較対照試験
Ⅵ.一致しないデータであるが,治療指針作成に有用
Ⅶ.専門家の意見
66
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン
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