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【件名】「自殺総合対策大綱の見直し(改正)に向けての提言 第二次案」に

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【件名】「自殺総合対策大綱の見直し(改正)に向けての提言 第二次案」に対す
る意見
【氏名】早川 東作(日本精神衛生学会理事長)
【意見】
表記案の作成過程では日本精神衛生学会も意見を求められたところですが、
このたび提案された表記案について、日本精神衛生学会では下記のような意見
を取りまとめましたので、提出します。
表記案は多くの学会等からの意見を取り入れて作られたもので、自殺対策に
関する現時点での知見が要領よくまとめられています。その集約までにはワー
キンググループが非常な労をお取りになったものと拝察し、敬意を表するもの
です。ただし、(4)「我が国で必要な科学的根拠に基づく自殺予防活動につい
ては、特に以下の点に関連していま少しの改訂を図ることが必要ではないかと
考えます。
(ア)「自殺防止に直接関わる専門領域」と(イ)「自殺の直接的な背景にあ
る問題(精神保健上の問題)に関わる専門領域」という表現は、裏を返せば「こ
れ以外の領域は自殺防止に直接関わらない」
「これ以外の領域は自殺の直接的な
背景にある問題に関わらない」という理解を与えかねないので、その指し示す
範囲を慎重に定める必要がある。したがって、提案されている本文には、次の
点において再考の余地があると考えられる。
(ア)
「自殺防止に直接関わる専門領域」としては、i)自殺防止を目的とした
相談支援、ii)精神科医療・一般救急医療と精神保健福祉、及び iii)自殺多発地
域や頻用自殺手段への規制という 3 項目があげられている。しかし、iii)を「専
門領域」と呼んでよいかどうかはともかくしても、i)及び ii)は、
(イ)
「自殺の
直接的な背景にある問題(精神保健上の問題)に関わる専門領域」で挙げられ
ている領域と重複する。したがってここでは、
「自殺防止に直接関わる専門領域」
ではなく、
「自殺行動の直前・直後に関わる可能性が高い専門領域」と呼ぶ方が
正確なのではないか。
次に、(イ)「自殺の直接的な背景にある問題(精神保健上の問題)に関わる
専門領域」としては、i)精神科医療、ii)地域精神保健、iii)心理士、及び iv)
様々な組織内における精神保健という 4 項目が挙げられているが、記述の大半
は i)と ii)に費やされている。ここでの問題の一つは、
「自殺の直接的な背景に
ある問題」と「精神保健上の問題」がイコールなのかということである。もう
一つの問題は、i)と ii)以外の記述がきわめて乏しいことである。
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他方、(ウ)「精神保健上の問題を介して、もしくは間接的に自殺の背景にあ
る問題に関わる専門領域」では、i)精神科以外の医療、ii)地域保健全般、iii)
労働福祉、iv)学校教育など、多様な領域に関して言及がある。もし「精神保健
上の問題」を広義に解釈すれば、i)~iv)の領域で援助を受ける人々の多くは、
結果として「精神保健上の問題」を有する人々である、とも言えるのではない
か。また、厚労省はこれまで、これらの領域で専門的役割を担う従事者に対し
て「ゲートキーパー養成を」と呼びかけてきたにもかかわらず(ゲートキーパ
ーという呼称の適切性は別の問題)、(ウ)の分類では“これら自殺対策におけ
る「ゲートキーパー」の役割はあくまで間接的なものである”と位置づけたこ
とになる。しかし、これら諸領域が自殺対策に果たし得る役割は大きく、それ
を「間接的な」ものと言ってしまうのは適切ではない。むしろ、これらの役割
を(ウ)に分類してしまったがために、
(イ)において i)と ii)以外の記述が乏
しくなってしまったものと考える。
ここで改めて(イ)と(ウ)を比較すると、
(イ)は厚生労働行政の一定範囲
に収まる活動に限定されているようにも見える。少なくとも、
「自殺の直接的な
背景にある問題」と「精神医学の問題」はイコールでないことを考えると、
(イ)
と(ウ)の項目配列は「精神医学の問題」に偏りすぎ、あるいは医療者向けの
記述に偏りすぎであり、再考の必要がある。また、
(ウ)の iii)で産業保健関連
の課題にも言及しているが、産業保健推進センターの活動が国の「事業仕分け」
によって縮小傾向にあること、その活動(相談機能など)が一般勤労者に十分
知られていないこと、既に退職した(させられた)人が利用できる相談窓口が
十分確保されていないこと、等も視野に入れる必要があるだろう。さらに、
(ウ)
の v)以下も内容が抽象的であるが、少なくとも、自死遺族支援、周産期うつ病
対策や障がい児をもつ親たちの支援、及び多重債務者への法的支援については、
これまでの実績をふまえて記述を充実させることが可能と考える。
なお、(イ)(ウ)に示された領域の多くは、自殺予防以外に本来の目的を有
しており、その目的のために従来から努力を傾けてきたはずである。そこで、
ある施策が自殺予防に資するというエビデンスは不十分だとしても、その施策
が当該領域の本来の目的に適うものであるならば、実施することに何ら妨げは
ない。こうした施策を否定するかのごとき表現にならないよう、敬意と注意を
払うことも大切である。
最後に、
(カ)として挙げられた調査研究の推進のためには、研究費を確保す
るだけで十分ではなく、これを支える専従人員と組織体制が欠かせない。第 4
項で述べている「科学的根拠の収集、提言を行う機関・・・実施に移す過程を
モニタリングする上位機関」という表現はやや弱いように思われる。行政が「科
学的根拠を収集する」と言うとき、必ずしも「自ら研究を実行する」ことを意
味しないからである。ただし自殺対策の場合、息長く基礎研究を続けるだけで
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は済まされず、
「実施に移す過程をモニタリングする」ことが欠かせない、この
記述を入れたことは重要である。研究にしてもモニタリングにしても、省庁の
垣根を越えて行うべき国の仕事があることを、追加言及してはどうか(この点
において内閣府が十分な役割を果たしているかどうかも疑問ではあるが、大綱
に名指しで書き込むこともできないので、工夫は必要である)。同時に、疫学的
な「根拠」を得るための自殺研究だけでなく、文化人類学・宗教学・哲学など
人文科学的視座からの研究(例えば、自殺行動と関連すると言われる飲酒行動
の文化的意義の検討、自殺防止の実存的アプローチなど)も重要なので、この
ような視座を軽視しない研究体制を維持構築することが望まれる。
以上は、日本精神衛生学会「自殺対策検討委員会」の影山隆之理事(座長)、
吉川武彦理事、高塚雄介理事、津川律子理事、福島眞澄理事を中心にまとめた
ものです。
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