IASSW理事会による災害への介入に関する方針書

災害への介入に関する方針書
はじめに
災害への介入(Disaster interventions・・・訳注:災害?)は、日常生活に大変な混乱を
引き越す、自然または人的な現象です。これらは通常深刻なものであり、外部からの介
入や支援を要します。したがって、災害後の緊急的・長期的な対応において人々を支援
するにあたり、ソーシャルワークの介入が求められます。災害への介入はこれまで、洪
水・津波・地滑り・ハリケーン・地震・火山噴火・干ばつなどに焦点を当ててきました。
これらは通常自然に関するものであり、「自然災害」と呼ばれます。産業汚染や環境悪
化(例:ルワンダの武力紛争など)に関するものは、「人的」災害と呼ばれます。
今日我々は、化石燃料の燃焼や産業化プロセスなどの人的活動と関係し、災害をもたら
す深刻な気候問題に直面しています。気候変動の影響は様々です。たとえば北極や南極
の氷が溶けて海面が大幅に上昇し、ツバルやモルジブなど、太平洋の小さな島国が消滅
の危機を迎えています。また世界の多くの地域、特にサハラ砂漠以南のアフリカでは、
干ばつやそれに伴う土地の砂漠化も深刻です。さらに気候変動によって、5 億人が食糧
不足に直面したり、ネパールの氷河が溶けることによってインドや中国の 14 億人が水
不足に陥る事態をもたらすと言われています。このような事態は、国内外のますます大
規模な移住の原因となると予測されます(UNDP, 2007, 2008, Sanders 2009)。
どのような原因であれ、災害は、個人・国・国際レベルで差し迫った解決策を要する社
会的課題です。これらの解決策は、賛否両論であったり論争を招くこともあります。そ
れは特に「支援」が該当地域の状況やしきたりを尊重せず、新たな形の植民地化として
捉えられる場合に顕著です(Mohanty, 2003)。たとえばアメリカは「ひも付き」援助を
行いました。これはつまり、総額の 70%は災害援助を行うアメリカ人「支援者」の雇
用や、アメリカ製の物品やサービス購入に使われることを要求するものです。Roger
Riddell (2007)は、このような「ひも付き」援助は、援助を受ける国の発展機会を抑
制したり歪めるものであり、長期的な復興努力に大きな影響をもたらすものであると意
義を唱えています。
様々な機関(例:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR))を通じた国連や、国際赤十
字・赤新月社連盟 (IFRC)などの市民社会団体は、特に災害直後における人道的支援
提供の主要な機関です。その中で、このような機関の活動は、食糧・水・住居・医療物
資を差別なく提供することに焦点を置いています。IFRC は 186 の全国機関で構成され、
世界中で 9700 万人のボランティアを抱えています。その前身は 1919 年から存在し、現
在の形をとったのは 1991 年からです。赤十字国際委員会(ICRC)・全国レベルの赤十
字社及び赤新月社・IFRC 間の緊張を緩和するため、1997 年にセビリア合意が定められ
ました。
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ソーシャルワークは支援プロセスを通して関わっており、その内容は、ニーズアセスメ
ント・物品やサービスの調整や提供・家族再統合への支援・生活再構築のための個人や
コミュニティへの支援・今後の災害リスクを最小限に抑えるための回復力や能力の開発
など多岐にわたっています。災害への介入は、災害の特性・地域の状況やしきたり・人
を含む使用可能な資源に左右されます。災害の影響は国によっても異なり、それぞれの
国は、災害がもたらす問題へ異なる対応能力を有しています。低所得の国や人々にとっ
て、災害への十分な対応はより困難なものとなっています。またこれらの国や人々は、
自らが気候変動などの問題をもたらしたわけではないにも関わらず、それらの災害への
対応に困難を抱えることとなります(UNDP, 2007, 2008)。また災害は女性や子供たち
に最も大きな影響を与えます(UNDP, 2008)が、災害が起こった際にどのような介入
が自らの生活に必要なのか、直接声をあげるのに最も遠い立場にいます(Pittaway et al.,
2007)。
定義
災害(disaster)とは、自然あるいは人的な現象で、その多くは予想不可能であり、生
活・財産・環境の崩壊など、すさまじい結果をもたらします。Perez と Thompson
(1994)は災害を、どのようなコミュニティの対応能力をも超え、したがって外部から
の介入を要する幅広い被害である、と定義づけています。国連と世界保健機関
(WHO)は災害の定義として、Gunn(1990)の「人と環境との関係における広範囲な
生態学的破壊であり・・・被災地域がその対応に非常な努力を必要とする規模の崩壊を
もたらすものである」というものを使用しています。Dominelli (2007)は、既存の定
義からより広めて、最大の人的災害である貧困や、他の生態学的災害と異なる気候変動
も含めることを提案しています(Dominelli, 2009)。
貧困は、人々の災害対応能力に大きな影響を与え、また災害やその影響悪化の原因とも
なり、個人的にも共同体としても、人々の災害対応能力をむしばむものでもあります。
たとえば 2005 年には、ハリケーン・カトリーナが、世界で最も裕福な国であるアメリ
カのニューオーリンズ第 9 区を襲いました。それは貧しいアフリカ系アメリカ人のコミ
ュニティへ特に大きな影響を与え、1400 億ドルという大損失をもたらし、短期的にも
長期的にもその影響に最も対応を困難とする人々を襲いました(Pyle, 2007)。自然災
害であれ人的災害であれ、災害を受ける側には、先住民族や低所得層の人々が含まれま
す。国連総会は、このような課題に対応するため、先住民族の 権利に関する宣言を採
択しました。
気候変動は、人々の日常生活・健康・環境の持続性・農業・食糧安保に大きな打撃を与
え、その影響は特に女性や子供たちにとって深刻なものとなる傾向があります(UNDP,
2008)。災害の影響は様々であり、また個人・集団・コミュニティの対応・適応能力も
様々です。IFRC (2009)の報告によると、災害による被害の 76%は途上国で起こり、
災害による影響を受ける人の 92%が途上国の人々です。また経済的損失の 65%も途上
国となっています。
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本文書は、災害を定義し、被災者への緊急及び長期的な支援を提供する国際的体制を含
む災害への介入を検討し、人道的支援を提供する際のソーシャルワーカーへの提言を行
うものです。
問題
災害への適切な対応は、事象そのもののへの短期的及び長期的な対応に加え、災害が起
きた際の不適切な対応リスクの軽減といった予防的方策を要します。これらの対応は困
難な場合もあり、特にそういった介入が地域のニーズ・状況・しきたりへの配慮を怠っ
た場合に顕著です(Hancock, 1996)。またそのような介入が、既存の武力紛争や帝国主
義的社会関係を助長させることもあります(Hoogvelt, 2007)。気温上昇をコントロー
ルする方策が前進しなければ、砂漠化や洪水が人々へ更に移住へのプレッシャーをかけ
ることとなり、気候変動による移住が大きな問題となるでしょう(Stern, 2006)。そこ
には、サハラ砂漠以南のアフリカに住む遊牧民や、バングラデシュの低平地に住む人々
も含まれます。もし気温上昇が 2 度未満に抑えられなければ、2050 年までにさらに
2500 万人が移住を迫られるだろう、と国連は推計しています。ジュネーブ条約は気候
による移住者に適用されないため、事態はさらに複雑なものとなります(Sanders, 2009;
Meo, 2009)。このような人々のニーズに対応するため、新たなプロトコールが必要で
す(UNDP, 2008)。
また、緊急支援策と経済・社会面での長期的な復興に向けた発展努力の間でも葛藤があ
ります。2000 年に合意を得た国連ミレニアム開発目標(MDG)では、貧困や低開発を
引き起こす 8 つの分野に取り組むこととなっており、これは貧困や人間の可能性実現へ
のバリアに対応する一つの方策として見られてきました。しかし現在の経済環境や
MDG の限られた目標を踏まえると、2015 年までの実現が困難であると予測されます
(Correll, 2008)。
国際的体制とその役割
第二次世界大戦の災害後、より良い世界を構築するにあたり各国が協力することを目指
して、1945 年に国際連盟は国際連合(UN)となりました。災害への介入は、1948 年に
国連加盟国の合意を得た世界人権宣言(UDHR)の第 25 条で認められています。人権
宣言の第 25 条は、人々の健康や福祉に十分な生活水準を保障するものです。このアプ
ローチは、人権の枠組み内に人道的介入を位置づけています。しかし人権を守る責任者
が、その権利を脅かす動き(あるいは動きの欠落)をする場合、個人の人権と国家主権
という原則の間で衝突が起きかねません。国家主権は、国連の強みとも限界とも捉えら
れます。それは、加盟国の内政問題に対する国際的な行為を制限する国連憲章の第 2 条
(1)で記されています。これは「内政不干渉」の原則と言われています。この条文は、
国家主権を国際関係の基盤として認識し、国際連盟の主導下で 1933 年に合意されたモ
ンテビデオ国家権利義務条約を支持するものです。
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国家そのものが人権を侵害する際に、国連が適切な支援を行えていないことが問題とな
り、「保護責任」を求める声があがっています。それはまず、2000 年の介入と国家主
権に関する国際委員会で推進されました。「主権」の原則は、国家主導者が外部からの
支援を抑えるために使われることがあります。たとえばそれは、2008 年にミャンマー
/ビルマでサイクロン・ナルギスが国の大部分を壊滅させた際に起こりました。しかし
国連安全保障理事会(UNSC)は「該当国の合意なしに、重大かつ大規模で根本的な人
権侵害による人道的災害に対応するための武力行使」を行ったり行うと威嚇することが
できます(Perez and Thompson, 1994)。UNSC は、深刻で幅広い被害・多数の死者をも
たらす災害・大規模な人権侵害が見られる地域に、人道的な介入を行う権限を与えるこ
とはできますが、その国へ単純に行動を起こすことに慎重です。支援を提供する国連ス
タッフは同時に、支援の際に自身が拉致・虐待・殺害されるリスクを冒すことになりま
す。2003 年にバグダッドの国連本部で起きた自爆テロで、Sergio Viera de Melo 特使を含
む 22 名の国連スタッフが殺害された事件は、多数の人道的支援スタッフが冒すリスク
を物語っています。
国連による災害への大規模な介入は、第二次世界大戦後に欧州で、復興の試み及び人々
の大規模な移動によって開始されました。展開の調整・監督・モニタリングの役割は、
その業務を遂行する目的で 1950 年 12 月 14 日に設立され、ジュネーブに拠点を置いた
国連人権委員会(UNCHR)が担いました。UNCHR は国連救済復興機関から改組され
たものであり、2006 年には国連人権理事会(UNHRC)となりました。
UNHRC は、人権保護に乏しい国の意思決定構造を放置しているという、主にアメリカ
とイスラエルからの批判に対応するため、国連総会の補助団体として設立されましたが、
このような変化にも関わらず、これらの国からの批判は続きました。実にアメリカ・イ
スラエルと他の小国 2 カ国は、UNHRC の設立に反対票を投じたのです。 George W
Bush はまた、この件に関する審議もボイコットしました。彼自身が招いたキューバの
グアンタナモ・ベイにおける人権侵害の論争や、その基となる米国愛国者法そのものを
考えると、実に皮肉なものです(Pearlstein and Posner, 2009)。前身組織と同様、
UNCHR は人道的支援の提供にあたり、IFRC や他の NGO に頼っています。UNCHR は
また、人権を検討する普遍的定期審査への責任も担っており、国連に加盟する全 192 カ
国の人権に関する状況を評価します。UNCHR の業務は、諮問委員会及び申立手続きに
よって推進されています。諮問委員会は、選定された 26 名の人権分野専門家で構成さ
れています。申立手続きは、国連 5 地域の各代表パネルを通じて行われます。また、人
権侵害に関する国ベースの調査を行う特別報告者もいます。2006 年には、これらの特
別報告者が世界人権デーで貧困問題について演説を行いました。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は 1951 年のジュネーブ条約における難民に関す
る内容で、迫害から逃れる人々を保護する責任を担うことにより、UNCHR の業務を支
えています。UNHCR は 3440 万人に対応しており、その大半は国内で追放された人々で
す。亡命希望者は 80 万人にとどまっています。気候変動による避難者は 1951 年のジュ
ネーブ条約でカバーされないため、UNHCR 対象の人数に全く含まれていません。
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UNHCR はまた、1951 年の 国連難民の地位に関する条約で定義される「支援対象者
(persons of concern)」で、国内での追放者にも人道的支援の範囲を広げ、同様に 1969
年の議定書や、1969 年のアフリカ統一機構条約でも拡大されました。
UDHR の第 25 条 は、気候変動による移住者へのサービス提供に使える可能性を持って
います。UDHR はまた、「環境の中の人(person in their environment)」を網羅すること
もでき、これは、個人あるいはコミュニティにウェル・ビーイングをもたらす物理的・
社会的環境の双方をカバーするものです。これは災害への介入に前向きに対応するため
の基盤を提供できるものです。またこれは、ソーシャルワークの倫理や国際定義にも一
致する要素です。我々が相互依存する社会に生きていることを考えるならば、社会連帯
は、1 つのグループが他者のウェル・ビーイングを守る基盤となると言えるでしょう。
しかしそれを実践するためには、世界的な社会政策の変革が必要です。
災害への介入に関するその他の国連機関としては、国連災害援助・調整チーム
(UNDAC)があり、これはフィリピン・ベトナム・カンボジア・サモア・トンガなど
を含む 57 カ国がメンバーとなっています。さらに国際 NGO や、国際赤十字・赤新月社
連盟(IFRC)、オックスファム、セーブ・ザ・チルドレンなど市民社会団体の一部も
積極的に活動しています。このような組織は特に災害直後において、緊急に必要とされ
る食糧・衣料・住居・医薬品を提供しています。2008 年に IFRC は、23 万 5736 名の命
を奪った 326 件の災害に対応しており、これは 2004 年のインド洋津波 以来最大の規模
です(IFRC, 2009)。
現在の国連人道問題担当事務次長は John Holmes 氏です。氏は、1998 年に人道問題局か
ら改組された人道問題調整部(OCHA)をコーディネートしています。OCHA には、 人
道問題執行委員会、緊急援助調査官及び人道機関間常任委員会(IASC)が含まれます。
IASC は最初、1992 年の総会で決議 46/92 が採択された際に権限が付託されました。こ
の決議は、①活動や資源の調整、②複雑な緊急事態に対応する際の機関間の意思決定、
③災害援助への多部門の総合的アプローチを行うより良い基盤づくりを追求したもので
す。IASC は、UNDP・UNFPA・UNHABITAT・UNHCR・UNICEF・WHO・世界銀行な
どの国連機関及び、ICRC・IFRC などの常任招待機関、そして臨時で招待されるその他
の人道支援機関 で構成されています。IASC には、災害時の介入へのガイドラインを作
成する作業部会があります。これらのガイドラインは、人権・倫理的行動・エンパワメ
ントの価値を守る指針を提供しながら、機関間の意思決定を調整・推進することを目的
としています。そこには、女性や精神保健などを含む幅広い事項がカバーされており、
ソーシャルワーカーは、社会心理的介入の創造という点で含まれています(Bragin,
2008)。OCHA はまた、統一アピールプロセス(CAP)及び国連緊急回転資金
(CERF)にも関わっています。
様々な災害への他の人道的支援の形態は、以下の通りです。まずアフガニスタン・イラ
ク・コンゴ・ダルフール・ソマリア・ケニアなど 24 カ国における平和維持活動が挙げ
られます。またキプロスの国連難民高等弁務官事務所代表は、問題を抱えるその島の
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人々の支援を担っています。中東の国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、
イスラエルの建国時から、国連のパレスチナ統治及び難民に関する事項を担当していま
す。イスラエルとパレスチナの対立は継続しており、人権侵害や土地所有権に関して解
決に至る可能性は限られています。UNRWA でカバーされないパレスチナ人は、
UNHCR による更に限定された難民認定を通じて、国連からの支援にアクセスできます。
UNHCR は、このような任務を遂行するために 110 カ国にスタッフを配置しています。
さらに国連の食糧計画は、食糧支援という形で災害に対応するための取り組みです。こ
のプログラムは現在、80 カ国で 1 億人に食糧を提供しています。
気候変動はこれまで、人道的支援の提供対象から除外されてきました。しかし、国連が
主催する気候変動に関する主要な討議では、気温が危険なレベルまで達する(2050 年
までに 2 度以上と言われる)ことにより、太平洋の小さな国々が消滅したり、多くの植
物や動物が消滅したり、何百万あるいは何億もの人々に打撃を与えることを防ごうとい
う動きがあります。このような討議には、以下のものが含まれます。
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1990 年に日本の京都で 184 カ国の合意を得た京都議定書。ここでは、1997 年か
ら合意が終結する 2012 年までに、37 カ国(付属書 1 国)が炭素排出量を年間
5%削減することとなっています。
1992 年にリオデジャネイロで開催された地球サミットでは、国連気候変動枠組
条約(UNFCCC)の合意を得ました。ここでは、気温上昇が 2 度以上とならない
よう、政府が危険な気候変動の防止策をとることとなっています。
15 回にわたる気候変動枠組条約締約国会議(COP)。最近では 2009 年 12 月にコ
ペンハーゲンで COP15 が開催されました。2010 年の会議(COP16)はメキシコ
で開催予定です。
IASSW・ICSW・IFSW の 3「姉妹」組織は、2009 年 12 月 10 日に、コペンハーゲンで初
めて議論に参加しました。
災害局面におけるソーシャルワーカーの役割
ソーシャルワーカーは、専門協会により、環境保護・人権・社会正義の視点の中で災害
に対応するよう奨励されています。ソーシャルワーカーは、災害局面において様々な役
割を担います(Desai, 2007)。それらの役割の多くは、災害直後への対応であり、以下
のものを含みます。
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ファシリテーター
コーディネーター
(人やシステムの)コミュニティ動員者
資源動員者
コミュニティと様々なレベルの政府間の交渉者・仲介者
利害対立者やグループ間(ジェンダー関係に基づくものを含む)の仲裁者
政府や他機関の相談役
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• 人々の権利や資格の擁護者
• 救済支援へのアクセス方法や、災害後に起こりかねない疾病の予防に関する情報
提供を行う教育者
• 文化的解説者
• 人々が災害の精神的影響に対応するのを支援するセラピスト(Dominelli, 2009)。
災害への対応マニュアルは従来、悪い事柄が起こるという客観的及び主観的な可能性と
定義づけられるリスクを軽減することに、焦点を置いてきました。これらのマニュアル
では、以下のような行動が災害救援の状況で極めて重要であると示されてきました。
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健康へのあらゆる悪影響の反転
発見された危険の修正
脆弱性の減少と回復力の増強
今後の災害への準備能力向上(Perez and Thompson, 1994)。
国連はソーシャルワーカーの主な役割を、状況のアセスメント・災害直後の資源分配・
社会心理的ケアの提供と見る傾向があります。IASC は、社会心理ガイドラインの作成
過程で、ソーシャルワーカーを含めています(Yule, 2008; Bragin, 2009)。文化的感受
性や公正・平等な対応という全体的なゴールの中で、上記のような目的を達成する解決
策を見出すのは、非常に困難です。解決のためには、コミュニティや個人が、回復力・
適応力・特定の状況や場所における虚弱性やリスクの判断力をつける必要があります。
このような力をつけることは、予防的方策を構築するのに役立ち、これらの方策は特に
病院・その他医療サービス・住居の短期的・長期的な提供に影響を与えます。予防的な
取り組みはまた、予防・早期警戒システム・人道的対応を主流化させる点でも役立ちま
す。これらのゴールは、2004 年のインド洋津波の影響を受けた地域でさえも、完全に
実践されたとは言えません。しかし、将来存続できる強固な解決策を創造するために、
災害の取り組みは、人権・社会及び環境正義・限られた資源の公平な分配を守らなけれ
ばなりません。公正と正義の価値は、災害援助に欠かせない基盤なのです。
Desai(2007)に大きく頼りながら、筆者は以下のように被災コミュニティにおけるス
キルやプロセスを示します。これらは必ずしも順序良く行われる訳ではなく、同時進行
であったり順不同であったりすることもよくあります。
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最初のコンタクトをとる。
介入プロセスを通じて地域の人々を引きこむ。
入手できる情報を評価し、業務エリアを特定する。
請け負う業務の契約を策定する。
必要な活動を開始する。
常に結果を評価する。
可能な解決策?
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気候変動を含む災害援助に関わるソーシャルワーカーは、政策立案や、人々を対立させ
ない解決策を見つけ出すのに、重要な役割を担っています。したがってソーシャルワー
カーは、気候変動・災害が世界各地にもたらす問題・既存解決策の限界など、災害の背
景となる科学的側面を理解し、答えをすでに迫られ、期待されている解決策を探しだす
必要があります。解決策は、個人・国・国際レベルで見出されなければなりません。
個々の実践家・教育者・研究者は個人レベルで業務に関わるとともに、同様の事を行う
ためにコミュニティを結集することができます。彼(女)らはまた共同で行動を起こし、
IASSW・IFSW・ICSW などの国際組織を活用して、国や国際レベルでの政策変更の取
組を支援したり、国連や特に地域や国際レベルで活動を行う関連機関を通じた政策変更
やその実践を支援することができます。
個人での活動
個人としては、回復力をつけたり、災害が起きた際の悪影響を最小限に抑えるために必
要とされる適切なステップを踏むことにより、災害に打ちのめされるリスクを軽減でき
ます。これらは、予測される災害の特性や使える資源によって左右されます。たとえば
洪水が起きやすい地域に住む人々は、洪水に強い家を建てる方策をとることができます。
バングラデシュでは、高床式の家を建設し、水が家の下を流れるようにする取り組みが
始まりました。またエネルギー使用削減により個人での炭素排出量を抑えることで、気
候変動が自身や他者に及ぼす影響を軽減することもできます。このようなことは、たと
えば従来の電球をエネルギー効率のよい電球に換える・家の断熱を行う・暖房の設定温
度を 1 度下げる・エアコンの使用を控える・ソーラーパネルや熱ポンプなど再生可能な
エネルギーを使って暖房を行う・電気スイッチを切って「スタンバイ」にする・公共交
通機関で旅行するといったことで実行できます。排出量全体の 40%が家庭からの排出
によるもののため、個人での取り組みは重要となります(Giddens, 2009)。個人の活動
のみでは十分ではありません。合意を得て共同で行う国や国際レベルでの解決策も必要
です。
国レベルでの活動
国レベルでの活動は、コミュニティとそこに住む人々をエンパワーし、災害による被害
を抑えるために必要な資源が必要な人に行き渡るよう保証することに重点を置かなけれ
ばなりません。それを実現するために、ソーシャルワーカーは「リスク・プーリング
(リスクの共同管理)」の政策を支持し、コミュニティがこれらのゴールを自らの力で
達成できるような結集を支援することができます。意思決定者や資源保有者が、人々の
提案を聞いたり考慮したりする準備があったり、あるいはその重要性を確信しているな
らば、地域の人々は大抵、素晴らしい案を出してくれます。ソーシャルワーカーはまた、
既存の緊急事態への対応計画の評価に関わったり、必要に応じてその変更に人々が関わ
る支援を行うこともできます。
クリーン・エネルギー技術の移譲は、気候変動の解決への一助と考えられます。加えて、
切り替えに伴う資金や環境に優しい(「グリーン」な)産業化を、グローバル・サウス
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(世界南部)の低所得国は必要としています。各国政府は、助成金の提供などにより、
企業が「グリーン」な技術を低所得国に与えるよう促すことで、上記の活動を推進でき
ます。さらに政府は資金提供を行い、途上国がその結果に適応し、地域の強みや取り組
みを活かした「グリーン」な道を展開する支援を行うことができます。EU が 2009 年の
終わりに出した推計によると、このような展開を実現するには、2020 年までに年間
1000 億ユーロが、裕福な国から貧しい国に移される必要があるとされています。この
推計では、上記の金額のうちヨーロッパの負担が年間 300 億ドル、アメリカが 250 億ド
ル、他の先進国が残りの金額を毎年負担することが提案されています。これらの金額は、
GDP の規模及び炭素排出量に基づいて計算されました。この金額は、先進国の全体所
得の 0.3%のため、 EU としては手ごろな価格であるとみています(The Week, 2009, p.
28)。ソーシャルワーカーは、国の炭素排出量削減を目指した地域・国の活動を支援す
ることにより、取組に関わることができます。
国際的活動
3 つの「姉妹」組織は、国連や人々のウェル・ビーイング向上に向けた介入・推進活動
を行う多数の国連関連機関との関わりを強化するために、これまで以上に協力体制を強
めなければなりません。これは人道的支援の議論の場で声をあげるために欠かせない事
です。気候変動に関する国際活動の枠組みはすでに整っており、IASSW・IFSW・ICSW
は、より「グリーン」な未来やその恩恵が地球市民全体に平等に行き渡るよう、協力を
強めた活動に着手することができます。温室効果ガス排出量を 2000 年から 2050 年まで
に 1.4 兆トンに抑える義務は、気温上昇を 2 度未満に抑えるために必要との合意が得ら
れています。しかし最近の現実や各国の排出量の変化をみると、「汚染者としての西
洋」「犠牲者としての途上国」という二元的な枠組みを超えた新たな国際的合意が必要
なことが示唆されます。この二元的な枠組みは、現在の国際的議論で主流となっていま
すが、行動を起こす際の大きな妨げとなっており、排出量の著しい増加の大半が新興経
済国によるものだという今の現実を考慮していません。この現実を踏まえ、世界を一つ
と捉えて人々や国々の相互依存を受け入れる代替案が必要とされています。
ソーシャルワーク教育者・実践者・政策立案者がとる行動
ソーシャルワーカーは、以下のような倫理的原則にそって、気候変動に関する議論に参
加したり行動を起こすことができます。
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•
個人・集団レベル双方での人権と尊厳
社会正義
相互依存と社会連帯
平和
環境正義。
上記の原則は、2004 年に IASSW と IFSW が合意した倫理文書の一部であり、世界各国
の倫理綱領でも明示されているため、ソーシャルワーカーにとってなじみ深いものです。
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人々の疑念(Hennessey, 2009)や人道的支援の悪用に関する論議(Duffield, 1996,
2007)、気候変動に関する拘束力を持った協定合意に至らない現実(Booker, 2009, Gray,
2009; Mason, 2009)を踏まえると、行動を起こすのは容易なことではありません。ソー
シャルワーカーは以下のような事に関与し、これまで以上に積極的に行動を起こすこと
ができます。
• 様々な状況に応じて、気候変動を含む様々な災害の影響を議論することによる認
知向上。これは個人・地方レベルで特に重要な事です。
• 地方レベルにおける予防的方策へのロビー活動(例:地方のニーズ・状況・資源
を考慮した上で崩壊を最小限に抑えるための災害に強い家の建築)。
• 災害が起きる前の予防的な取り組みや災害時に適切な介入が行えるためのコミュ
ニティ結集。
• 地方・国・国際レベルで政策を変えるための政策立案者やメディアとの対話。こ
こには、リスクの高い人々がそれを最小限に抑えるための資源や技術共有に関す
る事項が含まれます。たとえば津波による被害を受ける可能性が高い人々への早
期警戒システムにより、死者は大幅に減少するでしょう。しかし現在においても、
2004 年のインド洋津波の影響を受けたすべての人々が、このようなシステムにア
クセスできている状況ではありません。
• 災害をカバーするカリキュラムの展開。
敬意をこめて
Lena Dominelli
Durham University 教授
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