電子情報通信学会ワードテンプレート (タイトル)

社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE
OFT2004-47(2004-10)
パルス・プリポンプ方法を用いた高分解能ブリルアン計測の理論検討
岸田
欣増† 李
哲賢† 林
縄繽†
西口
憲一‡
†ニューブレクス(株) 〒650-0045 兵庫県神戸市中央区港島 9-1 KIO315
‡三菱電機(株) 〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町 8-1-1
E-mail:
†[email protected], ‡[email protected]
あらまし パルス幅が従来よりも一桁小さい 1ns までの BOTDA 計測の可能性が Bao らにより実験的に示された.
ただし,その手法では,(a) 計測対象によって計測条件の設定を変えなければならない,(b) 長距離計測時には信
号が埋もれてしまう,という問題点がある.本報告では,これらの問題を克服するために,通常の光パルスに先立
ち一定の長さを持つプリポンプパルスを送出させるブリルアン計測方式を提案する.このプリポンプ光を用いる方
法により,計測する距離に依らず常に高分解能のブリルアン計測が可能になることを,解析的に明らかにする.さ
らに,この方法を用いた場合の歪み計測精度,計測距離などについてもシミュレーションにより検討する.
キーワード プリポンプ,ブリルアン線幅,高分解能 ,フォンノン遅延時間
Pulsed pre-pump method to achieve cm-order spatial resolution in Brillouin
distributed measuring technique
Kinzo KISHIDA†
LI Che-Hien† Shengbin LIN† and Ken’ichi NISHIGUCHI‡
†Neubrex Co., Ltd
KIO315 9-1 Minatojima, Chuou-ku, Kobe, Hyougo 650-0045 Japan
‡Mitsubishi Electric Co. 8-1-1 Tsukaguchihonmachi, Amagasaki-shi, Hyogo,661-6881 Japan
E-mail:
†[email protected], ‡[email protected]
Abstract Distributed Brillouin scattering sensing that uses a pulse width down to 1ns, which is one order of magnitude
lower than currently available commercial BOTDA, was successfully examined in experiments by Bao et al. However, there
are two problems in commercializing this technique: a) experimental settings must be changed each time the measurement is to
be carried out on different objects, and b) the signal gets buried in the noise in long-range measurements. This paper
introduces a method using a pre-pump pulse in front of a traditional laser pulse. Theoretical analysis of this new method
shows that a cm-order distributed measurement can be realized that is free of fiber length. Accuracy of strain, distance limit,
etc, are also quantitatively evaluated.
Keyword pre-pump, Brillouin band width, cm-order distributed measurement, phonon relaxation time
は解析的に検討し,理論的にその理由を明らかにした
1. は じ め に
光ファイバのブリルアン散乱を利用する歪み分布
[ 4]. 要 約 す れ ば 次 の よ う に な る : 漏 れ 光 が あ る 場 合
計測において,近年,センチオーダの空間分解能の実
に は 信 号 中 に (1) 漏 れ 光 と プ ロ ー ブ 光 と の 相 互 作 用
現 を め ざ し た 研 究 が 進 め ら れ て い る [1]∼ [4]. こ の 試
に よ る フ ォ ノ ン の 励 起 , (2) パ ル ス と プ ロ ー ブ 光 の 間
み の 一 つ と し て 著 者 ら は BOTDA ( Brillouin optical
でのエネルギーの授受,の2つの過程が結合した成分
fiber
が出現して高解像度の歪み計測が可能になる.しかし
time
domain
analysis ) や
BOTDR ( ̶
reflectometry)の 信 号 を 解 析 し て 分 解 能 を 上 げ る 方 法
ながら,信号中には他の抑圧したい成分も含まれてお
を 提 案 し た[ 1].一 方 ,Bao ら[ 2,3]は ,信 号 計 測 値
り,特に,漏れ光とプローブ光とのエネルギーの授受
か ら 直 接 ,分 解 能 が 10cm 以 下 の 局 所 的 な 歪 み 情 報 を 取
による成分は光ファイバの長さと関係する.そのため
得する方法を提案し,実験的に検証している.
漏 れ 光 を 利 用 す る だ け で は , (a) 計 測 対 象 が 異 な る と
Bao ら の 方 法 は 従 来 か ら BOTDA に 使 用 さ れ て い る 光
設計パラメータをチューニングし直す必要がある,
パ ル ス に 加 え て 漏 れ 光( light leakage)を 積 極 的 に 利
(b) 長 距 離 の 場 合 に は 抽 出 し た い 信 号 が 埋 も れ て し ま
用するものである.この漏れ光はパルスと同じ周波数
う,という問題点がある.実験上でもこのような現象
を も つ CW 波 に な る .何 故 こ の よ う な 方 法 で 分 解 能 が 向
が観察されている.
上する効果が得られるのかということについて著者ら
本報告では,このような問題点を克服するために,
階段状のパルスをポンプ光として用いる方法を提案す
V (t , Ω) =
る.階段状のパルスは,解像度に見合った短い光パル
1
βACW 2 H (t , Ω) + c.c.
2
(4)
スとそれに先だって送出するある長さをもつプリポン
プパルスからなる.この方法を用いることにより,計
(1) 式 の ポ ン プ 光 を 用 い た 時 ,(4) 式 の 右 辺 に 含 ま れ る 成
測対象の長さによらず,センチオーダの高分解能の歪
分 は 次 の よ う に 4 つ の 項 に 分 解 さ れ る [4] .
み計測が可能になることを解析によって明らかにする.
H (t , Ω) = H 1 (t , Ω) + H 2 (t , Ω) + H 3 (t , Ω) + H 4 (t , Ω)
また,この方法で実現できる歪み計測精度,計測距離
ただし、
についてもシミュレーションにより検討する.
H 1 (t , Ω)
2. パ ル ス ・ プ リ ポ ン プ 方 法 の 基 礎 理 論
= AP2 ∫
本報告で提案する歪み計測方式を図1に示す.ポン
プ光に階段状のパルスを用いることがこの方式の特徴
υ g (t − D pre + D ) / 2
t − D pre + D − 2 z / υ g
∫0
υ g (t − D pre ) / 2
h( z , s )dsdz
(6.1)
H 2 (t , Ω)
である.
ポンプ光(階段状パルス)
= AP C P ∫
プローブ光(CW)
AP+CP
D
CP
0
(5)
光ファイバー
Dpre t
z
図1
t
= AP C P ∫
z=L
D pre − D ≤ t ≤ D pre
0 ≤ t ≤ D pre − D
υ g (t − D pre ) / 2
h ( z , s )dsdz
(6.2)
υ g (t − D pre + D ) / 2
υ g (t − D pre ) / 2
t − D pre + D − 2 z / υ g
∫0
h ( z , s )dsdz
(6.3)
H 4 (t , Ω)
提案する歪み計測方式
= C P2 ∫
プリポンプ光として用いる光を
⎧Ap + C p ,
⎪
AP (t ) = ⎨ C p ,
⎪
0,
⎩
t −2 z / υ g
∫0
H 3 (t , Ω)
ACW
0
z=0
υ g ( t − D pre + D ) / 2
υgt / 2
υ g ( t − D pre ) / 2
t − 2 z /υ g
∫0
h ( z , s )dsdz
(6.4)
ただし,
h( z , s ) = Γe −[ Γ + i (Ω B ( z ) − Ω )]s
(1)
(7)
elsewhere
で あ り , L は 光 フ ァ イ バ の 長 さ を , Ω B (z ) は Brillouin
と 表 わ す . こ こ で , AP と CP は そ れ ぞ れ ポ ン プ 光 と パ
散 乱 の 中 心 周 波 数 を 表 わ す .ま た ,Γ = ΓB / 2 で あ り ,ΓB
ル ス・プ リ ポ ン プ 光 の 振 幅 を 表 す . AP (t ) の 消 光 比 は (2)
は ス ペ ク ト ル の 半 値 全 幅 ( FWHM:full width at half
式で表す.
maximum ) に 等 し く , フ ォ ノ ン の 寿 命 と は
⎛ A + CP
R p = ⎜⎜ P
⎝ CP
⎞
⎟⎟
⎠
τ B = 1 / ΓB
2
(2)
(8)
で 関 係 付 け ら れ る . 以 降 , 典 型 的 な ΓB = 35MHz と い
う値を用いて検討を進める.
光ファイバに歪みがある場合の散乱光の振幅は,
(5) 式 の 各 項 は (6) 式 か ら わ か る よ う に ,す べ て 時 間 ・
Brillouin 散 乱 方 程 式 系 を 摂 動 法 で 解 く こ と に よ り
空間の2次元平面での積分で表わされ,積分域は図2
E CW (0, t ) = ACW [(1 + βH (t , Ω)]
に示すようになる.時間方向の積分はフォノンの励起
(3)
に,空間方向の積分はパンプ光からプローブ光へのエ
ネ ル ギ ー の 転 移 に 対 応 す る [4] .
H1 と H 3 で は フ ォ ノ ン は ポ ン プ 光 の パ ル ス と プ ロ ー
と 表 わ さ れ る [4] . た だ し 、 こ こ で ECW ( z, t ) は cw 光 の
振 幅 、 β は 摂 動 パ ラ メ ー タ で , H (t , Ω ) は 後 述 す る よ
ブ光により励起される.したがって,もしポンプ光の
パルス幅 D が音波の立ち上がり時間 τ B よりも短けれ
うな時間と周波数の関数である.これらの意味は文献
ーである.誘導ブリルアン散乱の利得は散乱がない場
ばパルス内で音波は十分に成長することができない
( 図 2(a) , (c) 参 照 ). 一 方 , H 2 と H 4 に お い て は フ ォ
合のプローブ光のパワーからの増加分として次のよう
ノンはポンプ光のプリポンプパルスとプローブ光によ
に表わされる.
って励起される.したがって,プリポンプパルスが一
[4] に 示 し た .実 際 に 観 測 さ れ る の は プ ロ ー ブ 光 の パ ワ
16
定のパワーと十分な幅を持っていれば,フォノンはい
つでも十分に励起された状態になる.
(d) H 4
図2
H n ,n= 1,2,3,4 の 積 分 範 囲
各成分の分解能は,z 方向への積分幅で決まる.す
な わ ち , H1 と H2 は D の 大 き さ の 分 解 能 に な る .
V(a.u.)
(a) H1
(b) H 2
図3
パルス幅とブリルアンスペクトル
以 上 の こ と か ら ,H2 と い う 成 分 は D の 大 き さ の 分
解 能 を 持 ち な が ら , Dpre の 時 間 幅 で フ ォ ノ ン を 励 起
さ せ る よ う に な っ て い る . し た が っ て , D << Dpre と
な る よ う に 設 定 す れ ば ,H2 は 局 所 的 な 情 報 だ け を 含
み か つ ス ペ ク ト ル の 線 波 が ひ ろ が ら な い と い う ,歪 み
計 測 /温 度 計 測 に 極 め て 望 ま し い 性 質 を 持 つ こ と が わ
かる.
Dpre を ど の 程 度 長 く す れ ば 良 い か 調 べ る た め に ,
(4) 式 の ス ペ ク ト ル の 広 が り 方 を 計 算 し た の が 図 3 で
あ る . た だ し , こ こ で は D = 1ns ( 10 cm の 分 解 能 に
対 応 )と し て 計 算 を 行 な っ た .こ の 図 か ら ,Dpre = 28
ns と す れ ば フ ォ ノ ン が ほ ぼ 完 全 に 励 起 さ れ , ス ペ ク
(c) H 3
ト ル の 線 幅 は 自 然 な 線 幅 の 35 MHz に な る こ と が わ
17
か る . 実 際 に は , 完 全 に 35 MHz ま で 線 幅 を 抑 え る
必 要 は な く ,Dpre を 長 く し す ぎ る と H2 以 外 の 成 分 が
ス ペ ク ト ル を 歪 ま せ る 可 能 性 も あ る か ら , Dpre は 調
(b)
整して適切な値に設定することに なる.
図5
H の波形
3.05m の 計 算 結 果
結 果 を 見 や す く す る た め に ,図 6 (b) に は 図 5 (b) の 利
解 析 例 と し て , D=1ns , D pre =13ns , R P =25dB の 条 件
を 使 っ て ,図 4 に 示 し た 計 測 フ ァ イ バ で 解 析 を 行 っ た 。
得 ス ペ ク ト ル を 対 数 ス ケ ー ル で プ ロ ッ ト し て あ る .ま
3.05m 所 の 局 所 的 な 情 報 ( 誘 導 ブ リ ル ア ン 散 乱 光 の ス
た , 図 6 (a) に は プ リ パ ン プ 光 を 使 わ な い 場 合 , す な
ペ ク ト ラ ム ) を (2) , (5) , (6) 式 を 用 い た 計 算 し た . 図
わ ち , Rp = ∞ の 場 合 の ス ペ ク ト ル を 対 数 ス ケ ー ル で
5 (a) は 各 要 素 に 対 応 す る ス ペ ク ト ル で あ り , 図 5 (b)
プ ロ ッ ト し て あ る .な お ,図 6 で は , 従 来 の 実 験 結 果
はそれらの和としてのブリルアン利得スペクトルを示
との比較によりレベルに補正を加えて,縦軸の値が実
す.
測する際の絶対 レベルと等しくなるようにしてある.
ポンプ光
100mW
Strain 0%
Strain 0.2%
Strain 0%
図 6 の 2 つ の 図 を 比 較 す る こ と に よ り ,従 来 の 単 一 の
プローブ光
1mW
パ ル ス で は 達 成 で き な か っ た 10 cm の 空 間 分 解 能 が
プリパンプ方式を用いる ことで達成できることがわ
%
Fiber under test
かる.
0.2
0
10cm
Distance (m)
誘導ブリルアン散乱光の強度(dBm)
5cm
3.05m
Length=10m
解析条件
Re( )
Re( )
図4
相対ブリルアン周波数シフト(MHz)
(a) 3.05m の 誘 導 ブ リ ル ア ン 散 乱 光 の ス ペ ク ト ラ ム
H n ,n= 1,2,3,4 の 解 析 結 果
Re( )
(a)
誘導ブリルアン散乱光の強度(dBm)
Re( )
Re( )
(従来の方式)
相対ブリルアン周波数シフト(MHz)
(b) 3.05m の 誘 導 ブ リ ル ア ン 散 乱 光 の ス ペ ク ト ラ ム
(パルス・プリポンプの方式)
図6
18
絶対レベルの解析結果
を占めるから,スペクトルを空間的に平均化したスペ
ク ト ル 成 分 H 4 の 中 心 は 0MHz の と こ ろ に あ り ,そ の 半
3.歪 み 計 測 精 度 の 検 討
ブリルアン周波数シフトの大きさは歪みの大きさ
に比例することから,歪み計測精度はブリルアン周波
値 幅 は 100MHz 程 度 に な る . H 2 の ス ペ ク ト ル 成 分 は ,
数シフトの計測精度に比例する.受光回路の雑音のみ
そ の 上 に の る 形 に な る が ,H 4 の ス ペ ク ト ル の 傾 き が 一
を考慮したときのブリルアン周波数シフトの計測精度
番 急 な 50MHz の あ た り に の る と き に ,バ イ ア ス 誤 差 が
は 次 式 で 表 わ さ れ る [ 5 ].
最大になるはずである.そこで,各歪み区間の周波数
シ フ ト 量 は 50MHz と 仮 定 し て あ る .こ の よ う な 最 悪 の
ΓB
δν =
2 × 4 SNR
条件のもとで,周波数シフトの計測値を求めたものを
(9)
図 7 (b) に 示 す .な お ,こ こ で は ス ペ ク ト ル の ピ ー ク の
こ こ で SNR は 受 光 回 路 の 信 号 対 雑 音 比 で あ る .パ ル ス
幅 が 1ns の 場 合 , 図 6 (b) の 結 果 か ら ΓB は 60MHz に な
位置を周波数シフトの計測値としてある.この図から
り , SNR が 45dB で あ れ ば , δν は 2.5MHz ( 50 μ ε )
スをもち,そのバイアスは歪み区間の幅が狭くなるほ
となる.
ど 大 き い . 歪 み 区 間 の 幅 が 10cm の 場 合 に は , 計 測 し
た 周 波 数 シ フ ト は 46MHz に な る .d Ω B / d ε = 500MHz
わかるように,計測した周波数シフト量は下にバイア
(9) 式 で 表 わ さ れ る 誤 差 は ラ ン ダ ム 誤 差 で あ る .プ リ
ポ ン プ パ ル ス を 使 う 方 式 で は ,こ の 誤 差 以 外 に H 4 と い
/ %と い う 関 係 を 用 い て 歪 み に 換 算 す る と , 計 測 誤 差
は ±0.0025%か ら ±0.0082%に 増 大 す る .
う空間的な情報を平均化した要素が存在するために,
このように,歪み区間が狭い場合には歪みの計測値
ブリルアン周波数シフトの測定値がバイアスをもつこ
最悪条件下でのシミュレーションを行なった.その条
にバイアスがのる傾向があり,何らかの対策が必要で
あ る .こ の 対 策 と し て は 例 え ば フ ァ イ バ セ ン サ( H 4 の
件と結果を図7に示す.
拡散信号を小さくさせる)に工夫する,スペクトラム
と が 予 想 さ れ る .そ の バ イ ア ス の 程 度 を 調 べ る た め に ,
の 形 ( 3dB ダ ウ ン 所 の レ ベ ル 差 を 利 用 す る ) を 用 い て
ポンプ 光
100mW
Fiber under test
5cm
ΩB
10m
10cm 20cm
10m
10m
50cm
10m
1m
10m
2m
10m
1mW
5m
10m
補正をかける,といったことが考えられる.
プローブ光
4.漏 れ 光 の 影 響
10m
前節までの解析モデルの階段状パルスでは,漏れ
50MHz
光の影響は考慮していなかった.光ファイバがそれほ
0
ど長くなければ漏れ光の影響は無視できるが,長距離
Distance (m)
の計測に際しては累積効果のために無視できないもの
(a)
条件
になる.そこで,定常的な漏れ光の影響を考慮して,
図8のモデルで検討を行なった.
ポンプ光(階段状パルス)
プローブ光(CW)
AP +CP+CL
D
CP+CL
CL
ACW
0
Dpre
t
z
z=0
図8
光ファイバー
0
t
z=L
漏れ光を考慮した解析モデル
この場合,ポンプ光は次式のように表現される.
(b)
図7
結果
⎧ AP + C P + C L ,
⎪
AP (t ) = ⎨ C P + C L ,
⎪
CL ,
⎩
解析の条件と結果
図 7 (a) に 示 す よ う に ,光 フ ァ イ バ に は 10m お き に 歪
D pre − D < t < D
0 < t < D pre − D
(10)
elsewhere
み の あ る 区 間 を 設 け , 各 区 間 の 幅 は 5cm か ら 5m ま で
こ こ で ,C L は 使 用 す る 光 ス イ ッ チ の 漏 れ 光 の 振 幅 と す
変化させてある.光ファイバ全体としては歪みのない
る.
( ブ リ ル ア ン 周 波 数 シ フ ト が 0MHz )の 区 間 が 大 部 分
この場合の消光比は次式で定義する.
19
RX
⎛ A + CP + CL
= ⎜⎜ P
CL
⎝
⎞
⎟
⎟
⎠
(c)
2
C X = 65dB の 解 析 結 果
(12)
図9
長 距 離 計 測 を 模 擬 す る た め に ,図 9 (a)に 示 し た よ う
定常漏れ光を考慮した
解析の条件と結果
に ポ ン プ 光 端 に 1km の 歪 み の な い 区 間 を 付 加 し た . こ
の 条 件 の も と で 2 通 り の RX ( a: RX = 45dB,b: RX
このように,長距離の計測を行なう場合には漏れ光
= 65dB)に 対 し て 各 々 に シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 な っ た .
は低く抑える必要がある.距離が長くなるほど許容で
そ の 結 果 を 図 9 (b),(c)に 示 す .図 9 (a)か ら わ か る よ
う に , RX = 45dB の 時 に は 局 所 的 な 情 報 が CL に よ っ て
きる漏れ光の水準は低くなるから,いかに漏れ光を抑
拡散されて,局所的な情報は埋もれてしまい,周波数
5.ま と め
えるかということが今後の課題になる.
シ フ ト 量 を 計 測 す る こ と が で き な い . 一 方 , 図 9 (b)
か ら わ か る よ う に , RX = 65dB ま で CL を 抑 え る と ,
る 方 法 と し て , パ ル ス ・ プ リ ポ ン プ BOTDA 方 式 を 提
局所的な情報が保たれて漏れ光がない場合と同じ計測
案し,その性能を解析的に評価した.その結果,以下
結果が得られる.
のようなことがわかった.
ポンプ光
センチオーダの高分解能ブリルアン計測を実現す
(1)
100mW
Fiber under test
5cm 10cm 20cm
ΩB
10m 10m
10m
10m
50cm
10m
1m
2m
10m
の階段状パルスを用いるが,これによりフォノ
プローブ光
1mW
ンを十分に励起させ,かつ光ファイバ内の局所
5m
10m
提 案 し た パ ル ス・プ リ パ ン プ 方 式 で は 2 段 階
10m
1km
的な情報を取り出すことができる.
50MHz
(2)
こ の 方 法 で は ,2 段 階 の パ ル ス の そ れ ぞ れ の
長さや振幅パワーが設計パラメータとなるが,
0
それらを定量的に検討して,実現性があること
Distance (m)
を明らかにした.
(a)
1km を 追 加 し た 解 析 条 件
今 後 , 高 分 解 能 ( 10cm ) と 高 精 度 ( ± 25 μ m ) の
PPP-BOTDA ( Pulsed Pre-pump Brillouin Optical Time
Domain Analysis ) の 装 置 化 を 図 る と 共 に , 装 置 に 適 合
するファイバセンサの開発,施工,解析などへ力を注
ぐ予定である.
謝辞
本研究を進めるうえで有益な助言を頂いた
OTTAWA 大 学 X.Bao 教 授 に 深 謝 致 し ま す .
文献
(b)
[1] Xin-Zen,Li, and Shiro Takada , A new technique
for fine special resolution BOTDA , OFS-2000 ,14 ,,
pp.839-842 ,2000. (Xin-Zen Li is the same person as
Kinzo Kishida).
[2] X.Bao
and
A.Brown,M.DeMerchant,J.Smith,
"Characterization of the Brillouin-loss spectrum of
single-mode
fibers
by
use
of
very
short(<10ns)pulse",OPTICS
LETTERS.Vol.24,No.8,April 15,1999
[3] V.Lecoeuche,D.J.Webb,C.N.Pannell,and
D.A.Jackson,"Transient response in high-resolution
Brillouin-based
distributed sensing using probe
pulses shorter than the
acoustic relaxation
time",OPTICS LETTERS,Vol.25,No.3
[4] 西 口 憲 一 , 岸 田 欣 増 ,” 光 フ ァ イ バ に お け る 漏 れ 光
を 考 慮 し た 誘 導 ブ リ ル ア ン 散 乱 の 摂 動 解 析 ”, 信 学
技 報 OFT , Oct. 2004 ( 本 研 究 会 )
T.Kurahima,
and
[5] T.Horiguchi,
M.tateda,”Nondestructive
measurement
of
optical-fiber tensile strain distribution based on
Brillouin
spectroscopy,”
Trans.
IEICE
Japan,vol.J73-B_I,no.2,pp.144-152,1990
C X = 45dB の 解 析 結 果
20